辺野古新基地建設事業を巡っては、沖縄県が国と、これまで14件もの訴訟を争ってきた。しかし、訴えは、和解・取下げの4件を除き、いずれもほとんど本論に入ることなく、門前払いされてきた。
一方、辺野古周辺住民らの抗告訴訟も、原告適格の壁にぶつかってきた。しかし那覇地裁は本年8月7日、防衛局の設計変更申請を不承認とした県の処分を取り消した国土交通大臣の裁決取り消しを求めて周辺住民18人が提起した抗告訴訟で、一部の原告適格を認定、次回から工事の適法性そのものについての審理に入るとしたのだ。
日本の行政訴訟は、原告適格のハードルがきわめて高く、実質審理に入ることはほとんどない。今回はその壁を突破したのだから画期的だ。
今回の軟弱地盤改良工事は、技術的に多くの課題があり、大浦湾の自然環境を破壊し、沿岸住民の生活環境に深刻な影響を与える。原告には、周辺地域居住者や、大浦湾でエコツーリズムを営む者等がいる。工事で周辺住民の生活環境が著しく悪化したり、大浦湾の汚濁がエコツーリズムに影響を与えると認められれば、国交相裁決は違法とされる可能性がある。その場合、辺野古の工事は完全にストップする。決して、「事業は順調に進んでいる」とは言えないのだ。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年9月25日号
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