2025年11月01日

【月刊マスコミ評・出版】矛盾と危機が臨界点を超えた自民党政治=荒屋敷 宏

 「とても首班指名で『高市早苗』と書くことはできない」(公明党の斉藤鉄夫代表)。10月10日、筆者が『高市早苗のぶっとび永田町日記』(サンドケー出版局、1995年)を読んでいる最中に自公連立解消のニュースが飛び込んできた。

 自民党総裁選前から極右雑誌の高市氏応援キャンペーンの過熱ぶりは異常だった。『WiLL』11月号の高市早苗氏「日本を強く豊かに 初の女性総理誕生へ!」では、「特に、自民党の選挙公約に『スパイ防止法』の文言が入った意義は大きい」と、統一教会と同じ政策を掲げたことを自画自賛した。『Hanada』では文芸評論家の小川榮太カ氏が「高市早苗戦闘宣言」で「高市早苗よ、政策暴走族として花と散れ」と時代錯誤の檄を飛ばしている。世論と乖離した議論が痛々しい。同誌の公明党前衆議院議員・伊佐進一氏による「自公連立解消!?公明党は高市さんともやっていけます」との太鼓判は何だったのか?

 『サンデー毎日』10月19・26日合併号で倉重篤郎氏は「高市早苗新総裁に3つの壁」として衆参両院での少数与党という壁、トランプ米国の壁、安倍政治がもたらした政治・経済の歪みという壁を鋭く指摘した。しかし、公明党の連立解消という壁はベテラン政治記者の予想を超えていたようだ。
 同誌の鈴木哲夫氏の「とんだ茶番劇だった自民党総裁選 今から始まる多党化戦国時代」の記事が参考になる。「公明から手厚く選挙協力をしてもらっている自民党議員は、公明の意向に沿って林氏に入れた者もいる」(自民党2回生議員)と、公明党は自民党総裁選で林芳正氏を応援していたとの証言がある。
 選挙では自公政権を批判しても、選挙が終わったら自民と組む政治状況が続いてきた。野党がまとまって政権交代をすべきだという声も多くなっている。

 日本共産党の志位和夫議長が『サンデー毎日』で倉重氏のインタビューに答えている。「『戦争国家』の暴走を許さない」との見出しがついているが、安保法制10年をどう総括するか、参院選結果と政治の排外主義化をどう見るか、マルクスブーム再燃の中で資本論から何を学ぶかの三つの問いかけが面白い。「自民政治には大企業・財界中心と対米従属という二つの歪みがあるが、その矛盾と危機が臨界点を超えた状態だ」との志位氏の話に耳を傾けるべき時代になってきたのかもしれない。 
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年10月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 出版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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