2025年11月14日
【25年JCJ賞贈賞式記念講演】犠牲を犠牲で終わらせない 「黒川の女たち」監督 松原文枝さん
私も9年前にワイマール憲法の教訓をテーマにした報道番組で、JCJ賞をいただいたことをとても誇りに思っています。今回の受賞者の皆さんが、社会に対して影響を持っていくことはとても大切なことだと思います。
「黒川の女たち」は岐阜県の旧黒川村から満州に開拓団として渡った女性たちの受けた性暴力の話です。団員を守るために未婚の女性15人がソ連兵に差し出しされました。帰国後も70年近く隠され、なかったことにされたことを、10年ほど前から当事者の女性たちが語り出しました。
戦時下に女性を道具のように使う構造を知って欲しい。それを公にした女性たちの意思を引き継ぎ、当事者が語ったことの大きさを、本人たちを傷つけずに伝えていきたいと思いました。
「満州にいる時よりも帰国してからの方が哀しかった」と話す女性の言葉から、社会の受けとめ、今にもつながる被害者がレッテルを貼られる構図についてもわかってほしいと思いました。
また彼女たちの子どもたちの世代にあたる人たちが、親の世代の責任を引き受けて謝罪し、碑文に加害性についても記しました。
次の世代にきちんと歴史に向き合う、向かい合うことができる人たちがいることも映画の中で伝えたかったことです。
一度は匿名でしか出てくれなかった女性が、証言をしたことで、再び会った時には笑顔でカメラに顔を出してくれました。まったく想像もしなかったことで、過去を引き受けることは未来を切り拓くことなのだと感じました。
戦後80年を意識する中で、私は去年、証言をした女性が亡くなるその瞬間に偶然立ち会いました。
この女性たちが成し遂げたことを残していく責務がある。女性たちの犠牲を犠牲だけで終わらせてはいけないのです。
映画は思考を促す媒体で、見る人の問題意識を覚醒します。戦争を自分事として考えてほしい、為政者による歴史の書き換えをさせない、実在する当事者の証言は揺るぎない事実です。
戦争の加害と被害を教訓にしていく、歴史の修正をさせてはいけない、それを映画という形で残していけたならと思いました。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年10月25日号
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