2025年12月13日

【月刊マスコミ評・放送】放送局の「ガバナンス」をめぐって=岩崎 貞明

 読売新聞など各紙は10月23日、民間放送事業者のガバナンス(企業統治)のあり方を検討する総務省の有識者会議が「国の監督機能を強化する骨子案を示した」と報道した。不祥事で経営が悪化した事業者に対し、国が事案の報告を求める制度を新たに設ける、という。報道によると「業界の自主的な取り組みを尊重しつつ、行政として一定の関与ができる枠組みが必要と判断した」。

フジテレビではタレントによるアナウンサーへの性暴力事件の発覚を契機にCMの中止・出稿見送りが相次ぎ、経営が悪化して、いまだに回復しきれていない。有識者会議では「財務基盤の弱い地方局で同様の事案が起きれば、放送事業の継続が難しくなる恐れ」があることから、国の監督機能を強化するよう求める意見が出たようだ。

 石破茂内閣当時の総務大臣は村上誠一郎氏で、自民党内ではリベラル派として知られた。フジテレビをめぐる一連の問題が発生した際にも、村上総務相は放送法の趣旨に則って「放送局の自律」を重視し、比較的慎重な対応を心がけていたように思われた。

  村上総務相当時に発足したこの有識者会議ではあるが、これが高市早苗首相による自民・維新「連立」政権の下ではどうなるのか、目が離せない。何と言っても、総務相だった2016年、政治的公平性に問題ありと政府が認定した放送局を放送法違反として処分する「停波発言」で物議を醸した張本人が内閣総理大臣になったわけだ。「国の監督機能を強化」する方向性はやむを得ないのかもしれないが、放送内容への介入になればやはり「表現の自由」との軋轢が生じよう。

 そもそも放送局の「ガバナンス」を強化するということは、局の経営が放送内容への関与を強めることになり、それは番組編集の自由への制約につながる。そこへさらに行政の関与がかぶさってくれば、制作現場への締め付けが一層厳しくなるのは必至だ。自由にモノが作れないからテレビを離れてネット配信に行きます、というクリエイターが一段と増加することになるかもしれない。

 究極のところ、表現の自由との衝突が起きるのは放送の直接免許制がネックなのではないか。しかし有識者会議の議論を見る限り、先進諸国にならった独立行政機関による間接免許制の是非が論じられた形跡は見当たらない。まあ、高市政権下では無理な注文か。
         JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年11月25日号 
posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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