2025年12月27日

【焦点】「2国家解決」困難 ガザ 無力な対米追従の日本 毎日新聞 大治朋子氏講演=橋詰雅博

 
★大治朋子記者(毎日新聞).jpg

 ガザ紛争の停戦はまやかしか、それともかの地に希望の光が差し込こむのか――イスラエルによるガザ地区でのパレスチナ人のジェノサイド(集団殺害)に国際社会は非難。これに呼応し英、仏、加、豪のG7がパレスチナ国家承認を国連総会で表明した。日米は非承認だが、国連加盟約8割はパレスチナ国家を承認。トランプ米大統領もノーベル平和賞欲しさからかガザ紛争に和平介入し恒久的停戦に向けて進んでいるかのように見える。国連で採択のパレスチナとイスラエルが共存する「2国家解決」は結実するのか。エルサレム支局長とテルアビブ大学大学院時代などを含めイスラエルに約6年半暮した毎日新聞専門編集委員・大治朋子氏=写真=は10月25日JCJオンラン講演で和平の実現性やイスラエル人の国家観、日本にできることはなどを報告した。

旧約聖書を信じる

 ガザ紛争の根源はイスラエルがパレスチナに建国し、パレスチナ人は土地を奪われ難民に―これが一般的な歴史認識だろう。イスラエルは「占領した」に対し二つの理由を挙げて反論していると大治氏はいう。ユダヤ系イスラエル人(人口の約73%)は、ユダヤ教の経典、旧約聖書から立ち上げられた独自の物語の歴史認識を小学生低学年から学んでいる。簡単に言えば、古代イスラエル王国(紀元前1000年ごろから同922年、今と同じエルサレムが首都)は、現在のパレスチナ自治区ヨルダン川西岸にユダヤ民族が築いたのだから、ユダヤ人が住む権利があるという信仰だ。
大治氏は「来日のイスラエル経済産業大臣に『西岸地区でイスラエル軍が破壊行為していますね』と尋ねると、『旧約聖書ではこの土地はユダヤの民のものです』と答えました。イスラエルではこの歴史認識が共有されている」と述べた。 
これが一つ目の理由だが、事実と物語がミックスの旧約聖書が根拠では、非ユダヤ民族は納得できないだろう。

悪いのはどっち?

 二つ目は1948年イスラエルの独立に反発したアラブ諸国との第一次中東戦争を止めるため国連で採択されたパレスチナの分割案をアラブ側が拒否したこと。イスラエルは国連案に従わなかった「アラブ側が悪い」としている。しかしこの案はイスラエル側の土地の方が多く、「『いきなり来て建国し、土地を半分も取っちゃって』とパレスチナが思うのは当然でしょう」と大治氏は語った。
 この案を作った国連を批判すべきではないか。
第4次まで続いた中東戦争に勝つたびにイスラエルは土地を拡大。93年のイスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)がパレスチナ国家建設に協力して取り組む「オスロ合意」は守られず、事実上、破綻。かくしてパレスチナ自治区ヨルダン川西岸とパレスチナ組織ハマスが実行支配するガザ地区の2カ所がイスラエルに点在した。

日本の現実を痛感

23年10月7日のハマス戦闘員による越境攻撃でイスラエルも「安住の地」とは言えなくなったとするユダヤ人のハマスとガザ住民への怒りは消えない。「『ガザに無実の民間人はいない』と回答した人が約3分の2占めたイスラエルの世論調査結果もあります」(大治氏)。
「2国家解決」について、大治氏は「イスラエルのネタニヤフ連立極右政権も国民も「『国家として承認しパレスチナが軍隊を持ったらもっと危なくなるじゃないか』という感覚を持っています。2国家解決の選択肢は全くない」と指摘した。
イスラエルとは経済交流し、パレスチナには資金・物資・人材の支援をする日本は解決に向けて何かできないのか。大治氏は「対米従属の日本が独自にやるというのはまずない」と断言した。
日本の対米追従の現実を改めて思い知らされた。
      JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年11月25日号 
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