東京から1900qの日本最南端の小笠原諸島・南鳥島が今年2026年、注目される。というのは小さな島内で2つの国家事業が展開されるからだ。一つは内閣府が進める「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の一環としてレアアース(希土類)を含む泥の処理施設が設置される。SIPは、探査船を用いて、1月から南鳥島沖合で泥を回収する試験採鉱を行う。レアアース泥を積んだ運搬船は島まで運ぶ。施設では泥の塊からレアアースを分離・精錬。内閣府は27年2月から本格スタートするこうした実証試験の整備費として25年度補正予算で164億円をSPIに計上した。
南鳥島沖合にはレアアースを含む豊富な泥があることが判明している。EV自動車などハイテク産業に必須のレアアースは、世界の生産量の7割を中国が占める。日米の貿易交渉で有利に進める武器≠ニして中国は利用しようとしている。国産レアアースが安定的に得られたら、中国主導の貿易から逃れられる可能性が高い。
もう一つ、防衛省は陸上自衛隊が保有する「12式地対空ミサイル」の射撃場を整備する。このミサイルは地上から海上の艦艇に攻撃するもので、射程100`を超える射撃場の整備は国内で初めて。すでに小笠原村へは計画を説明済みで、2026年以降、年数回訓練を実施する見込み。台湾有事を視野に入れた演習だ。
実はこの南鳥島は、核のゴミの地層処分の適地に挙げられたことがある。
4年前、文化庁芸術祭優秀賞を受賞したドキュメンタリー番組「ネアンデルタール人は核の夢をみるか〜核のごみ≠ニ科学と民主主義〜」の制作した北海道放送報道部デスクの山ア裕侍氏は、22年1月号のJCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」の寄稿で、こんな秘話を明かしている。
<あるイベント会場で顔を合わせたルポライターの鎌田慧さんが「核のごみの文献調査が進んでいるけど、南鳥島が適地だという説があるのを知っているかい?」と山アさんに尋ねた。山アさんが初めて知ったと答えると、数日後、鎌田さんがファックスで送ってくれたのは南鳥島が適地と紹介した静岡県立大学の尾池和夫学長のエッセイだった。>
番組では南鳥島案を最初に提案した平朝彦・前海洋研究開発機構理事長を取材し、経済産業省と原子力発電環境整備機構(NUMO)がその提案を蹴ったことを明らかにした。
レアアース回収施設とミサイル射撃場を備える南鳥島。核のゴミの地層処分の適地としては残念ながら幻に終わった。
2026年01月02日
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