『地平』1月号には@困窮ニッポン―物価高騰と排外主義、A軍拡からの脱出、Bソーシャリズム復活―連帯と自由のNYの特集3本が並ぶ。
@の東海林智氏(毎日新聞記者)の「排外主義と低賃金―労働者の連帯と分断」は、長年、労働と貧困・格差の現場を取材してきた記者の含蓄のある論考である。
参政党の街頭演説を聞いていた30代前半の男性の話を紹介している。「外国人にうまいことやられている感覚がある」と語る男性は参政党支持者ではなく、SNSがきっかけという。食事の配送の仕事を外国人に横取りされたと思い込み、今は隙間バイトと宅配で生計を立てているという。その男性が口にした「何かが変わる」という期待感が、参政党の街頭演説に足を運ぶ理由になっているらしいことに気づく。2009年のヘイトデモでも東海林氏は同じ出来事に出くわしたことを思い出す。
不安定雇用のもとで、10年以上前から生活を変える何かを求める心情が、マグマのようにたまっていたのではないかと考察している。低賃金で放置された非正規労働の現場の取材は重要だ。
『前衛』1月号に掲載された本吉真希氏(「しんぶん赤旗」日曜版記者)の「長生炭鉱遺骨収容―問われる歴史に向き合わない日本政府の態度」にも注目した。山口県宇部市の床波海岸にある長生炭鉱跡地は、1942年2月3日に大規模な水没事故(水非常)が発生し、朝鮮人136人、日本人47人の計183人が犠牲になった。
今年8月、民間のダイバーの協力により頭蓋骨や大腿骨などの遺骨が収容された。事故から83年も経過したが、日本政府は長生炭鉱の遺骨収容をしてこなかったのである。
水没事故の犠牲者は、アジア太平洋戦争における石炭増産の国策と人命軽視が原因だった。「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」と韓国遺族会は、日本政府に遺骨の発掘と返還を求めたが、政府は「海底のため…発掘は困難」として戦争加害国の責任と誠意を示していない。戦前の日本政府が犯した朝鮮人の強制連行・強制労働の象徴としての長生炭鉱の歴史に、少なくない市民が向き合い、遺骨の収容と返還を願って募金をしているという。
「韓国の市民も長生炭鉱をいく度も訪れ、日本の市民との連帯を強めて」いる姿を本吉記者は現場取材で見てきたという。来年(2026年)2月には日本と世界からダイバー7人が長生炭鉱跡地で遺骨収集のために集まる。現場取材から希望が見える。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年12月25日号
2026年01月07日
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