沖縄施政権返還(復帰)50年の2022年、沖縄県内の報道は占領下の様々な事象を取材した。
沖縄基地問題の源流となった、復帰闘争や政治分野からのアプローチに加え、人々の暮らしにも焦点をあてた企画が登場した。だがどれも「アメリカ世(ゆー)」を懐か しさという視点から取り上げる傾向は、「復帰」を人々の生活から捉えることの難しさを、つくづく感じさせた。
占領下の人々の生存は、いかに書くことができるのだろうか。私にとっての長年の問いに応えたのが、立命館大学准教授の著者が刊行した本書である。
沖縄がからめとられた米軍の軍事占領下で、日本と米国がふるう主権権力の暴力に、さらされていた多くの人々の「生への意志」を描きだした著作である。
一例として公衆衛生看護婦がある。沖縄戦で多くの医療者が失われた中で、米軍占領とともに登場した専門職は、地域の医療に大きな貢献した。沖縄の人々の生存を支える一方で、米兵の健康管理の公衆衛生策に沿うものでもあった。軍事優先に対する複雑な思いを抱きながら、女性たちは眼前の人々を救うことで、占領が強いる限界を超えようとした。
米軍は沖縄を反共の砦として「復帰」運動を反米的とし弾圧し、占領施策に協力する沖縄の人々の分断を試みた。その結果、占領下の事態は現在も語りにくさが残る。当時、声を上げられなかった人々がほとんどだ。しかし、著者は指摘する。
「こうした人々の日常的な『気付き』や『抗い』は、一般的な『抵抗』とはみなされなかったかもしれないし、『革命』の瞬間へと結実することはなかったかもしれない。それでもその言葉と行動は私たちが『あったかもしれない』現在を想像しその地点から未来を構想できるような『裂け目』を示してくれるのである」
沖縄戦に続く占領、「復帰」後に「軍事化される福祉」のような仕組みが、沖縄で継続し続けているのを気付かせる。(インパクト出版会3200円)
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