2026年01月26日

【寄稿】「解散権」への不信が噴出 自己都合の運用見直すべし!=木下寿国

 高市早苗首相の自己都合解散で首相の「解散権」への不信が噴出している。首相は高支持率のうちに解散して議席を確保し、党内基盤の強化を図ろうとしている。しかしそれはとても解散の大義と呼べるようなものではない。

 さらに統一教会との関連隠しも疑われ、予算審議もすっ飛ばしてのいきなりの解散には新聞各紙は強く反発。発表の翌日には「時の首相が与党に有利なタイミングで衆院を解散できる現在の運用を見直すべきだ」「『大義なき解散』が繰り返されぬよう、解散権のあり方も、衆院選で議論してもらいたい」(朝日)、「今回の衆院解散は憲法7条の『天皇の国事行為』として行われる、いわゆる『7条解散』だが、内閣が自由な裁量を持つようにふるまうことには批判も多い」(毎日)。解散から投票まで16日間と戦後最短について「大義なき権力の乱用だ」「重要課題で論戦を深めるには十分な期間とは言い難い」(東京)などとこぞって解散の問題点を指摘した。政府に好意的な日経も社説で「予算を後回しにしてまでなぜ解散しなければいけないのか。首相の説明を聞いても胸にすとんと落ちない。解散の大義が見えない」と批判的だ。いずれの主張も首相の解散権にかかわるものとみてよいだろう。

 解散権については、九州大学の南野森教授(憲法学)も、「九州大学学術情報リポジトリ」(2023年8〜11月号)において「衆議院解散権は首相の伝家の宝刀か」との論考で「学説は、無制約で好き勝手な解散など認めていないし、正当な理由のある解散に限定すべしと主張している」と、自分らに有利というだけで解散することを強くけん制し、説得力のある根拠を求めていた。解散は首相の専権事項と言われ、いつの間にかそれが法的根拠に基づいたものであるかのようにみなされてきた。ところがそうではないということがアカデミズムの分野からも指摘されているのだ。

 恣意的な解散は有権者の投票行動にも深刻な影を落としている。今回の選挙は真冬における実施となり、雪国では除雪の関係で掲示板が減らされることや、足元の悪い中での投票となり投票率低下が懸念されている。産経20日付によると、札幌市は「準備期間の短さに加え、除雪に時間がかかる」ため、昨年の参院選より掲示板を6割減らすことを検討、青森県では「雪道や凍っている道など足元が悪い中を(投票に)行かなければならない」、秋田県有数の豪雪地帯、仙北市の選管担当者は「除雪しても路面はアイスバーンになる。有権者の投票行動に影響が出ないか心配だ」と話している。
 また、広島県福山市は、封筒で郵送してきた投票所の入場券を準備期間が短いためはがき送付に切り替えた。「印刷のやり直しには莫大な金額がかかる」と懸念する。

 松林哲也・大阪大学大学院国際公共政策研究科教授は「選挙に行くことは(国民の)権利」であり、「国政への参加を保障する」もの(「法学セミナー」26/2・3)だという。その国民が投票する権利、参政権が時の首相の恣意的な判断で左右されていいはずがない。

 保坂展人東京都世田谷区長ら自治体の首長5人は、有権者の参政権を制約し実際に選挙実務を担う自治体職員に過度な負担を押しつけかねない事態を憂慮。1月19日付で「政権による解散権の行使の在り方、乱用を防ぐための制度や議論を、社会全体で改めて行う事を強く求めます」と緊急声明を出した。
 私たちはこの選挙後も、選挙のあり方をめぐる議論を忘れてはならないと思う。有権者が政治に参加し、それを変革していくための貴重な機会なのだから。
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 寄稿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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