2026年01月31日

【オピニオン】「対話」で新たな運動の構築を=難波健治(広島支部)

 被爆80年・戦後80年の今年、社会のあり方をめぐり各地でさまざまな活動が展開された。その節目の年がまもなく終わろうとしている。被爆地広島支部のこの1年間の取り組みを振り返りながら、今、ジャーナリズムと市民の運動に何が求められているのかを考えた。
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 私たちは今、大きな不安の中にいる。ジャーナリズムや平和、文化などの分野で、これまで通りの取り組みを続けていけば、日本が戦争の当事国になることを避けられるのだろうか。
 日本被団協へのノーベル平和賞授賞が決まり核兵器廃絶への期待が膨らんだ1年前、今のような世界のありようを想像できた人はどれくらいいただろうか。
 国際秩序は音を立てて崩れつつある。日本の政治は混迷を極め、米国が求める戦争準備を加速させるばかりだ。国会に目を転じれば、本来あるべき与野党の対決軸がどこにあるのかも定かでないありさまだ。
2面_不戦のつどい・顔写真用DSCN1746●●石井暁さんアップ.jpg

 そんな中、私たちは毎年開いてきたJCJ広島「不戦のつどい」を、今年は9月から12月13日に変更し、共同通信の石井暁編集委員=写真=を講師に迎えた。
 今年の8・6を前に、防衛省担当30年を超すベテラン記者が暴いた事実はこうだ。
 日米両政府が有事を想定した机上演習をこれまで複数回実施し、そこで米軍が核兵器を使用するシナリオが議論された。昨年の机上演習で自衛隊は米軍に「台湾有事」に際し、中国に「核の脅し」をかけるよう再三求め、米軍も最終的に同意した――。この特ダネは私たちの記憶に新しい。
 石井さんは「つどい」で、「今、目の前で進む対中戦争の現実」と題し、取材で得た事実を丁寧につないだ特ダネの裏側を公開した。
 100人を超す市民が集まり、ジャーナリストも少なからずいた会場からは「報道で次々と知らされる事柄が一つにつながった。『台湾有事』とは何か、政府が何をしようとしているのか理解できた」との声をはじめ、35人から質問や意見が文書で寄せられた。その中には、現場の記者からの「『本当のことを書く記者』になるため、組織の内部に協力者をつくるやり方を教えてほしい」という要望もあった。

 広島支部は今年の「不戦のつどい」を、戦後80年の「12・8」を見据えて企画した。日本が真珠湾とマレー半島で米英を奇襲攻撃し、侵略戦争をアジア・太平洋に拡大した「12・8」は突然起きたのではない。
 それは明治以降、日清、日露、日中の戦争で日本が積み上げた領土拡張、権益拡大が行きついた先にほかならない。だが、高市早苗内閣は、この歴史の事実と真摯に向き合おうとしない。

 昨今の大軍拡や首相の台湾発言、さらには与野党挙げての「スパイ防止法」制定の動きなど、戦争に向けてひたすら走り続ける現実とその危険性を、メディアはどれほど伝えているか。私たちはそんな思いを込めて「不戦のつどい」を準備し、今後の課題を得ることができた。
 それは「対話」することの大切さだ。対話するには、相手の思いにしっかり耳を傾けなければならない。21世紀のこの時代が持つ、さまざまなファクト(事実)を共有し、自らの思想をかたちづくる決意を新たにした。

 私たちは、高市政権や同調勢力の国家観に基づく社会とは異なる社会のあり方を、主権者として示す必要に迫られている。それは市民一人ひとりが自らの希望を語りあい、その希望の中にこそ生きるための根拠があることを示すということだ。
 私たちには、そのためにお互いの要求を確かめ合い、対話を通して一致点を見つけ、共に動く運動のあり方を構築することが求められている。
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年12月25日号 
posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | オピニオン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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