2026年02月14日

【Bookガイド】2月の“推し本”紹介=萩山 拓(ライター)

ノンフィクション・ジャンルからチョイスした本の紹介です(刊行順・販価は税別)

◆武井彩佳『ホロコースト後の機能不全━ドイツ、イスラエル、犠牲と加害の関係』角川新書 2/10刊 980円
なぜドイツはイスラエルを批判できないのか? イスラエルのガザ攻撃はホロコーストの記憶とも結びつけられる。ドイツによるイスラエル支援は、補償にとどまらず武器供与まで及んだ。イスラエルへの安全保障は「国是」となっていた。ナチズムの克服は、より良い世界をつくるためではなかったのか。ドイツとイスラエルの特殊な関係を明確に分析し、ガザ紛争を防げなかった世界構造のねじれを解く。
 著者は1971年、愛知県生まれ。早稲田大学比較法研究所助手などを経て学習院女子大学教授。専攻はドイツ現代史、ホロコースト研究。著書に『歴史修正主義』(中公新書)など。
           
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◆高橋信雄『裁かれた<偽りの科学>━原爆訴訟判決文から見えた真実』 花伝社 2/10刊–2700円
この国は、被爆者たちとどのように向き合ってきたのか。国の被爆者対策として成立した被爆者援護法。しかし援護申請は一方的に却下されるようになり、また残留放射線による被爆も認められず、被爆者たちは不合理に沈黙を強いられることになる。司法に正義を求め、国との裁判に挑んだ被爆者たち。〈科学〉の名の下に被爆者の訴えを退けようとした国は、いかにして裁かれたのか。救済を求めて闘った、被爆者たちを追うドキュメンタリー。
 著者は1950年生まれ。九州大学経済学部卒。元長崎新聞論説委員長。現在はノンフィクション作家。著書に『鈴木天眼 反戦反骨の大アジア主義』など。
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◆松谷満『「右派市民」と日本政治━愛国・排外・反リベラルの論理』朝日新書2/13刊 870円
突然の<自己チュウ解散>そして総選挙の顛末に現れているように、異形の右派勢力が日本を動かす!? 安倍政権を熱狂的に支持した「岩盤保守層」。安倍氏の死後、かれらがよりどころにしたのは高市氏やトランプ氏。さらには参政党、日本保守党といった新たな右派アイコンの台頭だった――。いま日本政治を左右する、新しい「右派」の実像に迫る。
 著者は1974年、福島県生まれ。名古屋大学文学部を卒業後、大阪大学大学院人間科学研究科で博士課程修了。中京大学教授。共編著に『外国人へのまなざしと政治意識』など。
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◆平田オリザ『寂しさへの処方箋━芸術は社会的孤立を救うか』集英社新書 2/16刊 960円
いま日本は他国とは違う独特の「寂しさ」「いらつき」「不安」に覆われている。終わりの見えない不況、アジア唯一の先進国からの転落と国力の衰退などが、その背景にある。いかにして克服できるか、「日本再生のカギは芸術文化立国をめざすところにある!」と提案し、その試みを現代に合わせてさらに進化させ、モノが飽和しコトの消費が求められる時代に芸術と観光が果たせる役割、社会的孤立を救うための文化による社会包摂の動き、教育や地方が実現可能な少子化対策など、新しい処方箋を再提案する。
 著者は1962年、東京都生まれ。劇作家・演出家。芸術文化観光専門職大学学長、青森県立美術館館長。著書に『新しい広場をつくる 市民芸術概論綱要』など。
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◆上月豊久『プーチンの歴史認識━隠された意図を読み解く』 新潮選書 2/18刊 1650円
権力者にとって歴史は「政治の道具」そのもの! 決して頭の中を覗かせない男の本音は、彼が発表してきた論文やスピーチの中にある。ロシアの成り立ち、正教の役割、統治の基本概念――難解とされる彼の論文の数々に、何が省かれ、歪曲されているのか。プーチンの「洗礼の十字架」とは何か。なぜ「大動乱の時代」を嫌悪するのか。前ロシア大使が独裁者の「内なる思考」を浮き彫りにする。
 著者は1956年、東京都生まれ。外務省欧州局長などを経てロシア連邦駐箚特命全権大使を務める。現在、東海大学平和戦略国際研究所所長・国際学部教授。
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◆大塚真祐子ほか『書店員の怒りと悲しみと少しの愛』knott books 2/20刊 1900円
出版不況といわれて久しい。売り上げがピークの半分になっても、いまだ改善する兆しは見えない。書店員のやる気を削ぐような無駄や理不尽がまかり通っている。いまどれほど書店の現場が疲弊しているか、書店員が何を考えて仕事をしているのか、何に怒っていて、何に不満があるのか、知られざる実態を明かす。さまざまな立場の書店員による、書店の苦境や書店員であることへの思い、出版業界の不満や出版社への不信感、本や読者への思いを一人称で綴った怒りと悲しみと愛の記録である。
 著者・大塚真祐子のほかに、水越麻由子/篠田宏昭/前田隆紀/笈入建志/モーグ女史/小国貴司/嶋田詔太の7人による現場からレポート。
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◆江原由美子『フェミニズム』岩波新書 2/25刊 1060円
いったい「フェミニズム」とは何なのか。どのように生まれ、何を主張してきたのか。「女性である」という「普通」のことに差別や抑圧を見出すという「常識外れ」な主張は、どのように生まれ、いかなる変革を成し遂げてきたのか。共感と反感の嵐にさらされながら、多様な展開を生んでいる思想・運動。そのあゆみを長期的な視点から振り返り、フェミニズムとはいったい何なのか、わかりやすく語りかける。
 著者は1952年、神奈川県生まれ。東京都立大学名誉教授。神奈川人権センター理事長。日本のフェミニズム理論に大きな功績をあげる。著書に『持続するフェミニズムのために』など。
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posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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