2007年09月02日

広がる格差、生活の危機 再起の基盤は確保されているか?!

 窓口で生活保護受給の対象者を絞ってしまう「水際作戦」が北九州市などの事例で問題となっている。 大阪市の福祉事務所でのやりとりの録音で詳細が明らかになった。また、ネットカフェで寝泊まりしている「ワーキングプア」 の実態が厚生労働省の調査で明らかになった。全国で約5400人に上る「ネットカフェ難民」の約4分の1が20代の若者、50代も23% に上る。一人ひとりの再起、それをささえる基盤こそが日本社会の再生の原動力となる。大切なのは集団的自衛権の行使でもなく、 テロ特措法によるインド洋での軍艦へのオイル供給でもない。国民の生活の安全保障である。それはいったい、 どこまで確保されているのだろうか。(JCJふらっしゅ:Y記者の「ニュースの検証」速報版)

 生活保護を申請するため大阪市の福祉事務所を訪れた内縁の夫婦と、福祉事務所職員とのやりとりを録音したテープを、 生活保護問題に取り組む弁護士が公開した。朝日新聞によると、録音を公開したのは、「生活保護問題対策全国会議」 事務局長の小久保哲郎弁護士。「申請者が違法な理由で追い返される例が多く、証拠保全のため」(→朝日新聞) として申請者の了解を得て録音し、26日に東京であった同会議主催の全国集会で公開した。
 夫婦の住居の家賃が高額であることを理由に、職員が「(申請は)無駄」などと申請書交付を渋る様子が録音された。 夫婦は多重債務を抱えて家賃を滞納しており、安いところへ引っ越すにも手持ち金がなかったためだった。食事も友人からの差し入れだった。
 厚生労働省は大阪市の福祉事務所の対応を「保護受給権を侵害する行為」とみている。申請者は50代の夫と30代の妻。 夫は目が悪くなって仕事ができなくなった。心身に病気があり、仕事や収入もない。こうした事態を促進し蔓延させる役割を果たしてきたのが、 小泉〜安倍政権の無能・非道な「弱肉強食改革」路線だ。地方自治体も財政基盤の脆弱化や逼迫にともない、 国民個々の生活の安全保障を切り捨ててきた。その顕著な例が北九州市だ。大阪市のこの事例も、厚生労働省は「保護受給権を侵害する行為」 とみているというが、参院選の自民惨敗がなければ役所の対応のひどさは暴露されず、 またまわりの支援も得にくい状況がつづいていた可能性もあるのではなかろうか。
 非正規雇用の蔓延による「ワーキングプア」の増大を、具体的に顕著にしたものが「ネットカフェ難民」と呼ばれる現象とえる。 個々の生活にも、さまざまなものを犠牲にして経済効率を優先させねばならない実情が反映されている。 つまり小泉〜安倍自公連立政権の独りよがりの政策と無責任がそのまま、社会に深刻なひずみを生み出しているのである。
 これを報じた朝日新聞の記事と、いわゆるネットカフェ難民にかかわる厚生労働省の調査結果は下記で読める(PDF)。

・日雇い派遣労働者の実態に関する調査及び住居喪失不安定就労者の実態に関する調査の概要(厚生労働省8月28日付)
 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/08/h0828-1.html
・生活保護「申請は無駄」 交付渋る職員とのやりとり公開(朝日新聞)
 http://www.asahi.com/life/update/0831/SEB200708300014.html
生活保護問題対策全国会議
http://seihokaigi.com/default.aspx

■一晩1000〜2000円のネットカフェ、
 もっと安く過ごせるファストフード店や路上

 なおこの件に関連する業界団体「日本複合カフェ協会」(JCCA)は、7月17日付で<いわゆる「ネットカフェ難民」 について>という声明文を出している。要旨は、―深夜ネットカフェをご利用されるお客様を「ネットカフェ難民」と称して、 センセーショナルに報道されるケースが散見されますが、私ども複合カフェにとっては皆さん大事なお客様です。 私たちはそのようなお客様を決して「難民」とは考えておりません。私たちは複合カフェ業界の健全な発展のために日々努力しておりますので、 私たちのお客様を「ネットカフェ難民」と呼ぶのはお止め下さい。―という内容だ。
 JCCA加盟企業は8月末で235社、各社が運営する店舗は全国に1361店あるというインターネットカフェやマンガ喫茶の業界団体 (→impress watch)。前述の厚生労働省調査では、JCCAにも協力の打診があったが、「ネットカフェ難民ありき」 の調査だとしてJCCAでは協力を断わったという。
 その後、8月28日、厚生労働省が調査報告を発表するとメディアが一斉に「ネットカフェ難民」との表現で報道、同協会は8月30日、 7月17日付声明を基礎に「あたかも浮浪者風情の人が夜な夜なネットカフェに集まっているかのような報道」との表現で、「ネットカフェ難民」 と呼ぶのは止めてほしいとのコメントを出すなどしたが、その際に、「浮浪者」との表現も差別的ではないかとの指摘が出たという。 同協会ではその発言について「確かに不適切な表現と反省して訂正・削除し、お詫び申し上げます」と訂正の告知を出している。いわゆる 「ネットカフェ難民」報道の「風評被害」で実際に利用者が減っている店舗もあるとの情報もある(→impress watch)。
 これが緻密なやり取りなのか、日本型の役所と事業者団体とのあいだの慣習や軋轢からくるものなのかは不明だが、 複合カフェにとっては大事な顧客であることは間違いなさそうだ。しかし厚生労働省の調査によって、 一晩1000〜2000円のネットカフェだけでなく、 もっと安く過ごせるファストフード店や路上にまで泊まる場所を求めている実態もわかっている。ここまでくると、 8月29日付中国新聞社説がいうように、「ネットカフェ難民 自助努力では済まない」問題ではなかろうか。
 中国新聞社説は次のように言う。
<まず必要なのは「住居の保障」だろう。一時金の貸し付けなどとセットにした家賃の補助を考えてもいい時期ではないか。 あるいは若い単身者向けの公営住宅も選択肢にあがっていい。今や若い人のある層については「弱者」ととらえる発想が、行政に必要だろう。 もちろん根本的には、企業がちゃんとした賃金を支払い、非正規雇用を減らす政策が求められることは言うまでもない>
 賛成である。政府や行政の姿勢を早急に、根本的に変える必要がある。だが、 これは小泉〜安倍米戦争追従自公連立政権がとった政治の根本的な間違いと直結した問題である。早急な当面の措置が必要であるのとともに、 政権の責任が早急に問われねばならない問題であもる。政権の早期の交代が求められる。

・「お客様は難民ではない」ネットカフェの業界団体が声明(impress watch)
http://news.goo.ne.jp/article/internet/business/iw2007082904-internet.html
・ネットカフェ難民 自助努力では済まない(8月29日付中国新聞社説)
http://www.chugoku-np.co.jp/Syasetu/Sh200708290116.html
日本複合カフェ協会
http://www.jcca.ne.jp/


■取引先に言われた言葉で再起を決意

 8月31日付の毎日新聞「ひと」欄が、事件乗り越え再起した番組制作会社代表を取り上げた。 問題となっている放送の番組制作会社の実態を知る意味でも、また、いま私たちが直面している「再起」というテーマにおいても、 この記事にはひきつけられた。
 92年に、社長を務めていた番組制作会社のスタッフが、受託した放送局(大阪市)の情報番組で、女子大生や黒人米兵として、 モデルを登場させていたことが発覚し、「やらせ社長」と新聞に書かれ、ワイドショーに連日追いかけられることになる。 世論の激しい非難を浴び、番組は打ち切りになり、経営責任を取って社長を辞任し、会社名も改めた。売り上げは半減以下に減少、 従業員も100人から40人になり、結局、銀行の「貸し剥(は)がし」などで99年に倒産。債権者におわびに回った。
「やり直す気持ちがあるのなら(債権は)我慢する」
 取引先に言われた言葉で再起を決意、01年に、たった一人で制作会社を設立し放送番組の制作に携わるようになる。その傍らで、 資金難にもめげすに、広島と長崎の両方で被爆した人の証言を集めた記録映画「二重被爆」を06年に完成させた。高い評価を得た。
 「発掘!あるある大事典2」の捏造(ねつぞう)について、この「事件乗り越え再起した番組制作会社代表」がどのように感じたか。 それは制作会社の実感そのものといえよう。そして、<もともと「いいドキュメンタリーを作りたい」と飛び込んだ映像の世界>であるが、 その世界がいまどうなろうとしているか。その危機感も広く共有されるべきものだと思う。一読をおすすめしたい。

 この毎日新聞の記事は下記で読める。

稲塚秀孝さん=事件乗り越え再起した番組制作会社代表(毎日新聞:ひと)
<文と写真・北林靖彦>
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/hito/

 

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
JCJふらっしゅ Y記者の「ニュースの検証」
小鷲順造
http://blog.mag2.com/m/log/0000102032/
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

posted by JCJ at 03:30 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック