2007年09月06日

年金着服再調査へ 社会保険庁による調査では不十分

 9月3日、社保庁が明らかにした年金横領の実態。犯行は同庁職員ほか44市区町村職員に及んでいた。先の通常国会での関連法成立で、 社保庁は2010年に日本年金機構に衣替えする。年金の徴収業務を民間に委託する。 新組織になればこうした年金横領の横行が見逃されなくなるのか。年金資産をエサにしたさらなる「巨悪」は根絶できるのか。<追記: 9月7日>社保庁は年金横領額さらに2600万円多く修正、市町村職員分と合わせた横領総額は3億6927万円となった(→朝日新聞 「年金横領額、さらに2600万円 社保庁が修正」)。

総務省行政評価局年金記録問題検証委員会
http://www.soumu.go.jp/hyouka/nenkinmondai.html
社会保険庁職員による横領等事案調査結果
http://www.soumu.go.jp/hyouka/nenkinmondai/pdf/190903_1_2-3.pdf
市町村職員等による年金保険料の着服事案調査結果
http://www.soumu.go.jp/hyouka/nenkinmondai/pdf/190903_1_2-4.pdf

 社保庁が明らかにした年金横領の長年にわたる驚くべき実態は、巨大な年金保険資産をめぐる政治的巨悪の横行を想起させる。 政治家による際限のない年金の政治利用などずさんな悪習は、社保庁や市区町村職員の末端にまで浸透し蝕んできた。 少子高齢社会の到来で制度疲労を起こすどころか、皆保険制度スタートからほどなくして政治家と役人天国をささえる「無尽蔵の財源」 とみなされ、年金横領癖を蔓延させるほどにいいかげんな制度と組織だったことを指し示している。

 それを暴けなかったメディアの責任も重大だ。徹底して暴かれるまでは、国家の存亡にかかわる重大問題だとして、 与野党の区別なく事に当たるべきだと論を貼り、当面の手当てのみに議論を引き寄せ、 過去の実態をメディアの手で暴くことをセーブするような社説・論説の類には十分注意して、これからも厳しく目を注いでいかねばならない。

 以下、5日付東京新聞社説をもとに整理すると、判明した横領総額は99件3億4300万円。 50件の横領のうちには今回初めて公表した18件が含まれるが、社保庁がこれまでに自発的に公表したのは24件に過ぎない (残りは報道機関の取材などで明らかになった)。50件のうち刑事告発したのは27件、15件は警察に相談することもなく告発見送り。 懲戒免職・停職処分に至ったのは44件で、その他は処分前退職や行方不明で処分を免れた。被害弁済もすべて済んでいるわけではない。

 9月5日付社説で、東京新聞は「社会保険庁が公表した年金保険料などの横領の実態は、 長い間身内意識で不正が表面化しないようにしてきた隠蔽(いんぺい)体質を示している。さらに調査を続け、 不正を働いた職員を厳正に処分すべきだ」と指摘している。
 毎日新聞社説は「底が抜けたような不正連鎖にはあいた口がふさがらない。同時に犯罪行為が明確と思えるのに、 これまで公表すらしなかった事例が半分近く占めていることにあきれる。『公』が保持すべき倫理がマヒしているのではないか」。
 朝日新聞社説は「保険料の無駄づかいや不正免除、職員による年金記録ののぞき見など、 これまで社保庁のずさんな管理が次々と明るみに出てきた。しかし、ここまで堕(お)ちていたとは、あきれてしまう。もはや何をか言わんや、 である」と書いている。

 舛添要一厚生労働相は6日午後、総務相に対して年金着服の処分内容や刑事告発の有無などの徹底的な調査への協力を要請したが、 自民党政権でどこまでやれるのか。本来、徹底的にこの問題について「ウミ」を出し切るべきなのは、自民党そのものではないのだろうか。
 なお毎日新聞が6日付「<年金記載漏れ>40年前から修正困難 適切措置せず」の記事で、ずさんな事務処理の実態を報じている。 「40年以上前から、修正が困難なことを既に把握していながら適切な措置を取らなかったことで、 不明記録が5000万件にまで膨れ上がったとみられる」と指摘している。
 さらに企業年金連合会によると、「企業年金」についても、受け取る資格があるのに支払いを受けていない人が124万人、 総額1544億円に上るという。こうした事態の原因は、年金を受け取るには自分で申請する必要があるが、そのことを知らない人が多く、 さらに加入者の現住所などを把握するシステムがないため、88万人以上の住所が不明で、 給付申請書を送ることさえ出来ない状態になっていたからだという。TBSが報じている(TBS Newsi)。

企業年金の未払い、124万人に上る(TBS Newsi)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3651319.html
企業年金連合会
http://www.pfa.or.jp/

<関連情報>
職員処分内容など再調査へ 年金着服で総務相も合意(西日本新聞)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/politics/20070906/20070906_007.shtml
年金横領 徹底した調査と処分を(東京新聞5日付社説)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2007090502046491.html
年金着服 告発で厳然たる姿勢を示せ(毎日新聞5日付社説)
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20070905ddm005070089000c.html
年金の横領―ここまで堕ちていたとは(朝日新聞5日付社説)
http://www.asahi.com/paper/editorial20070905.html
<年金記載漏れ>40年前から修正困難 適切措置せず(毎日新聞)
http://www.excite.co.jp/News/society/20070906150100/20070906E40.076.html
<追記分>
年金横領額、さらに2600万円 社保庁が修正(朝日新聞)9月7日(金)22:30
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/politics/K2007090703830.html


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JCJふらっしゅ Y記者の「ニュースの検証」速報版
小鷲順造
http://blog.mag2.com/m/log/0000102032/
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posted by JCJ at 18:53 | TrackBack(0) | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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