――東京新聞の連載企画第一部が終了
東京新聞が9月4日からスタートした連載企画【メディア市民革命 米国の最前線から】の第一部が8日で終了した。「メディア市民革命」は私たちのすぐそばで起きている―それを教えてくれる好企画だと一部で評判になっていた。【編集部】
第一部の内容をタイトルで追ってみる。<1>政治ブロガー 政界揺るがす行動力(2007年9月4日)、<2>市民記者 真実発信 『壁』を崩せ(2007年9月5日)、<3>ネットTV 世界の人 つなぐ橋に(2007年9月6日)、<4>読者発 プロ・アマ連携カギに(2007年9月7日)、<5>動画投稿サイト 『素人』装い世論操作も(2007年9月8日)。
そもそも「メディア市民革命」との通しタイトル自体、最初からひきつけられるが、「米国の最前線から」とあるわりには、人も題材も米国にしばられているわけではなさそうだ。最前線からその源流をたどってみると、そのまま世界へ直結していくということなのかもしれない。その意味でも、ネット社会の広がり、奥行きは、口先のスローガンや理屈ではなく、実態として進行する「メディア市民革命」に行き着く。
ここでは、9月4日の<1>「政治ブロガー 政界揺るがす行動力」の内用をざっと紹介するにとどめよう。
<1>では、「ワシントンが最も恐れる男」(メディア関係者)と称されるマルコス・モーリツァス氏を取材。5年前は定職を持たない一人のブロガーにすぎなかったが、いまや50万人の読者を有し、政治に絶大な影響力を持つインターネットのブログ「デーリー・コス」の主催者だ。書き始めたのは、既存政党やメディアへの不満から。米中枢同時テロ以降、「政権批判は愛国的でないとみなされ、野党の民主党も新聞もブッシュ大統領に何もいわなかった」。
マルコス氏はイラク戦争への反対や政権批判を展開し、反戦派やリベラル派のよりどころとして読者を急速に増やしていく。単に自身の「論」を書くだけでなく、読者に参加してもらうための工夫も施し、投稿者は主婦、学生から法律家、科学者まで急増した。取り扱うテーマも外交、地球温暖化、選挙や議会の動きまで。知恵や情報を持ち寄り発信するリベラル派の巨大なネットワークへと成長した。
「行動するブロガー」となった彼らは、昨秋の中間選挙で資金や票集めで威力を発揮、多数の無名民主党候補を当選させるまでになった。マルコス・モーリツァス氏を発火点に、大きく膨らんだ「行動するブロガー」の拠点をささえるエネルギーとは何か。そのエネルギーはどこから生まれてくるのか。
またこの企画では、一話ごとの主人公やそのグループの取材にとどまらず、そうした「メディア市民革命」と呼ぶべき動きをウォッチする評論家や学者のコメントもとっている。たとえば<1>では評論家ジェフ・ジャベス氏の「みんながトーマス・ペインになれる時代がきた」「今、ネットにより市民一人一人が印刷機を得たように自分の意見を大勢に伝えることが可能になり、政治の停滞を変える起爆力になる」という説。
もう一つ、シカゴ大の憲法学教授キャス・サンステイン氏の「人々は自分の声のこだまを聞くようにブログでは聞きたい意見しか聞かない傾向が強い。民主主義が危うくなる心配もあるのではないか」との"警鐘"も加えている。
さっそくこのシリーズの大ファンとなった「Daily JCJ 」編集委員の一人、O氏は言う。
「この企画に注目してます」
そして、次のように続ける。
――イラク戦争批判に端を発した個人ブログが50万人の読者を持ち、政治への影響力を強めている話。中国語と英語のサイトが中国政府の規制の壁を抜けて、毎日20万人の閲覧者と市民数千人の記事送信がある話。ネット利用の市民TV局の続々の誕生、対抗する大手のプロ・アマ連携、「情報センター」化の話。それとネットの動画投稿サイトで「素人」を装った演出に60万人がだまされた話。そして5回目の最後に出てきたアンドリュー・キーン氏の「われわれ一人一人が情報発信のルールを学び、情報選別の目を養う必要がある。でないと、メディア革命どころか、玉石混交の膨大な情報の奴隷になってしまいかねない」との指摘。もっともだ、と思った。
そのときになって、すっかりこのシリーズにのめりこんでいた自分に気づいたという。それほどに「メディア市民革命」は、私たちのすぐそばにあるということの証明なのだろう。
■東京新聞【メディア市民革命 米国の最前線から】第一部(1〜5=連載(9/4〜9/8)終了は、下記で読める。
<1>政治ブロガー 政界揺るがす行動力
http://www.tokyo-np.co.jp/feature/media/news/070904.html
記事の下段に<1>〜<5>の目次があり、それぞれに記事へのリンクが張ってあります。
【Daily JCJ 編集部】