本年度JCJ大賞を受賞した熊本日日新聞が、同じくJCJ賞を受けた沖縄タイムスの長期連載企画を「沖縄戦『集団自決』を考える」と題して転載し始めた(9月5日から)。きっかけは8月のJCJ賞贈賞式である。受賞のために上京した両紙のデスクが会場で知り合い、散会後も選考委員などを交えて遅くまで話し合っていた。その後1か月足らずで話がまとまり、沖タイの足かけ3年、80数回の連載をすべて熊日に掲載するという。
沖タイの企画は、沖縄戦における住民の「集団自決」は日本軍の命令など強制によるものではなかったとする一部の策動と、それをうけて文部科学省が教科書検定で「集団自決」に関する記述から軍関与の部分を削除させた歴史改ざん、および「大江健三郎・岩波書店」の関連記述を消し去ろうと裁判を起こしていることなどへの真正面からの具体的な反論・反証である。こうしたキャンペーンは、同県の琉球新報や電波メディアも一貫しておこなっている。
10日には沖縄側の強い要望などもあって、「裁判」は現地沖縄に出張しておこなわれ、大勢の市民や記者が集まった。月末(29日)には95年の大集会以来という大規模な改ざん抗議の県民大会が開かれる。
しかし、沖縄県民の熱い思いはなかなか「本土」には届かず、沖タイの謝花直美デスクは「厚い壁」を感じていた。そこへ、熊日の転載開始である。転載初日に熊日は「本土からこの問題を共に考えるために」と前文をつけた。謝花さんは「胸が熱くなりました」と打ち明ける。「新聞の力ってまだまだ捨てたものではないと思いました。これもJCJの皆さんが地方紙の企画をもきっちり評価していただいていることが大きな力になっていると思います」
JCJにとってもこの上はない励ましである。
<関連情報>
大弦小弦 (沖縄タイムス 2007年9月9日 朝刊 1面)
http://www.okinawatimes.co.jp/col/20070909m.html
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亀井淳 「遠近法」日録
http://kamei.cside.com/
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