2007年10月15日

REPORT:放送を語るつどい「今、テレビ“力”を問う」 水上一郎

「今、テレビ“力”を問う」をテーマに、9月22日東京で開かれた「放送を語るつどい」で、テレビマン・ユニオンの今野勉氏は、『あるある大事典U』事件などを例に、いま日本のテレビ界が抱える病理を指摘し、番組制作の質の低下に警鐘を鳴らした。

 放送を語る会が主催し、JCJとメディア総研が協賛して開かれた集会では、今野氏がテレビ制作会社から見た番組制作現場の実情について、また、元NHKエグゼクティヴ・プロデューサーの桜井均氏が、この夏の戦争を題材にしたテレビドキュメンタリーについて、それぞれ核心をついた話を展開し、参加者に感銘を与えた。

 このうち今野氏は、『あるある大事典U』の捏造事件や、NHK職員による横領事件などを契機に、コンプライアンス=法令遵守を声高に叫ぶ風潮が蔓延する中、日本のメディア全体が萎縮しているのではないかと疑問を投げかけた。その上で、番組制作者たちがタブーに挑戦し権力からの圧力に抗して番組作りを貫徹するためには、強い意志と好奇心を持ってさまざまな規制を巧みにかいくぐる知恵と、制作者同士の連帯が不可欠だと力説した。

 また今野氏は、良質な番組作りを妨げている制度的要因として、番組制作費をめぐるテレビ局と制作会社のいびつな関係を挙げた。イギリスBBCでは、番組を制作会社に委託(下請けに出す)場合、会社の利益に相当する分を管理費として、委託制作費とは別枠で支払う仕組みになっているのに対し、日本では、込み込みで支払われるのが通例で、会社はこの中から利益分をピンはねするため、結局制作費にしわ寄せが来ることになっているという。
 今野氏は、こうした制度が現場の過労や、やる気のなさなど深刻な実態を生んでいると報告。

 さらに、テレビ局の企画会議で企画内容の十分な検討が行われないまま制作会社に委託され、制作会社のスタッフは局から与えられた企画に沿って、機械的に取材を当てはめる作業を繰り返す結果が、今回の『あるある』事件となって象徴的に表れたと厳しく指摘した。


 今野氏は最後に、かつて自分が大学で教えた学生の中で、テレビを目指す若者が皆無だったことに言及し、テレビ局で働く制作者たちがジャーナリズムについて真剣に考えることをしなければ、今後メディアとしての存在意義を失い、このところ急速に力量をつけつつある市民メディアに、その席を譲ることになると警告した。

 

posted by JCJ at 12:51 | TrackBack(0) | 放送 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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