講談社発行の書籍『僕はパパを殺すことに決めた』における少年事件の調書引用で、奈良地方検察庁が10月14日、京都の精神科医を「秘密漏示罪」で逮捕した。日本雑誌協会と日本書籍出版協会は17日、抗議の緊急声明を発表した。【編集部】
地検は9月14日に著者宅と医師宅に対して異例の強制捜査を行った。任意で事情聴取を重ね、医師もそれに応じていたが、地検は14日医師の逮捕に踏み切った。取材協力者やメディアへの威嚇以外のなにものでもなく、国民の知る権利の行使に関わる者にとって看過することはできないとして、日本雑誌協会と日本書籍出版協会は下記URLの声明を出した。
緊急声明 社)日 本 雑 誌 協会 社)日本書籍出版協会(2007年10月17日)
http://www.jbpa.or.jp/nara-seimei.htm
上記声明で両協会は、「少年犯罪について、原因の究明、事態の推移、今後の対策など広く情報を開示するため、様々な角度から取材・報道し、事件の解明にあたることは、われわれに課せられた大きな使命」であり、「報道・出版に際してプライバシー、人権等に十全な配慮をおこなうことが重要であることは論を待たない」としつつ、地検が、任意ではあるが著者や編集者に長時間の事情聴取、資料の押収、指紋の採取など異例なまでの捜査を行ったうえ、医師逮捕にまで踏み込んだことについて、「取材協力者やメディアへの威嚇以外のなにものでもない」と糾弾。再来年の5月までに実施が決まっている「裁判員制度」をにらみ、言論機関への抑止効果を狙ったものであるのは明らかとして、「検察当局の一連の捜査、言論への介入に対し強く抗議」を表明している。
また講談社は17日、出版の経緯や意義について第三者を含む調査委員会を設けて検証を行うと発表した。
講談社から皆様へ 『僕はパパを殺すことに決めた』について(講談社、2007年10月17日)
http://www.kodansha.co.jp/emergency2/
本書で扱った事件について、「まことに痛ましく、かつ重大な事件にもかかわらず、少年審判が公開されないこともあって、事件の真相はほとんど明らかにならないまま風化」しようとしていたこと、著者は取材の過程で少年や父親の供述調書をふくむ捜査資料を入手し、資料を引用しつつ、少年が事件を引き起こした動機や心理状態を描き、「事件の背景には常識をこえた勉強の強制、過熱する受験戦争が横たわっており、どの家庭でも起こりうる普遍性があることを明らかにした」ことを指摘、取材活動は正当であったとしている。
また、この事件の真相を伝えることは社会的に大きな意義があると判断して本書を刊行したとして、「今回の捜査の目的はメディアの取材活動を萎縮させることにあり、到底容認できるものではない」とする一方、「本来あってはならない出版・報道に対する権力の介入を引き起こしてしまった社会的責任を社として痛感」、遺族や逮捕された鑑定医、取材にご協力いただいた少年の祖父など関係者に対しては「まことに申し訳なく思っております」とおわびの言葉を表明している。
今回の本作りについて、さまざまな指摘が出ているが、真相を明らかにするためとはいえ、(1)捜査資料を引用することによって少年法に定められた審判の非公開原則を破ってよいものかどうか、(2)人権に対する配慮が欠けていたのではないか、(3)もっとも大切にすべき取材源を危険にさらすものではなかったか、などの批判については、謙虚に耳を傾けの本作りを問い直す必要があるとし、出版の経緯、形態、意義について第三者を含む調査委員会を設けて詳細に検証を行い、その結果を公表するとしている。
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調書引用:雑誌協などが鑑定医逮捕に抗議(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20071018k0000m040056000c.html
調書引用:医師逮捕…内部告発萎縮招き、表現の自由侵害も(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20071015k0000e040034000c.html
【Daily JCJ 編集部】
