10月30日に続いて11月2日に行われた福田首相・小沢民主党主のトップ密談で、「自・民大連立」の話を首相が持ちかけた。直後の民主党役員会がこれを拒否したので、話は「幻」に終わった。清冽さを増す秋の夜にふさわしくない、濁った政界怪談である。
「首相の賭け失敗」「小沢氏も孤立」と毎日は2、3面ぶち抜きで大見出しをつけた。たしかに唐突きわまる首相の提案であり、それを受けて小沢代表は「決めてきます」と言い残して会談の席を立ったというのだ。会談の要点を「新体制」と記者団に説明した時の首相の表情は明るかった。
「大連立」の話は2人にとっては唐突ではなかったようだ。会談には仲介者がいて、それは渡辺恒雄読売グループ会長だったと産経が書いている。福田首相も「参院選の敗北以来考えていた構想だ」と明らかにしている。小沢氏は会談の以前から「連立の打診を受ければ、民主党内を説得する考えを首相に伝えていた」(読売)という。
小沢氏は新進党党首だった97年、沖縄の米軍用地期限切れで窮地に立った橋本龍太郎首相をウイスキーのお湯割りを酌み交わしながら延長で救い、自由党党首時代の98年には自自連立で小渕恵三首相を助けた。自自連立政権は「日米防衛ガイドライン」「国旗国歌法」「盗聴法」などを成立させ、対米安保強化とナショナリズムの推進のためならなんでもやるという姿勢をはっきりさせた。「改憲」は持論だし、今回のテロ特措法よりも自衛隊海外出動がしやすい恒久法の支持者だ。
今回の党首会談のタイミングは、10月29日に防衛省守屋前事務次官の証人喚問があって疑惑が深まり、野党が一気に政界要人の疑惑に攻め込む条件ができたところで、それに水を差す形で行われた。しかも、31日に予定されていた初めてのクエスチョン・タイム(党首討論)をキャンセルして。
政治は「表」から「裏」に回って、ナベツネや中曽根など10年以上前の親分衆が仕掛けをした。
奇妙なドラマで政界の様相は混沌とするが、「大連立」の幻は1回の失敗で雲散霧消したのではなく、たぶん今後も何かの節目に首をもたげるだろう。なにしろ、それを一番望んでいるのがアメリカ親分だからだ。
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亀井淳
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