2007年12月04日

原案修正でも放送へ行政が介入する仕組みはなくなっていません。

――私たちはあくまでも放送法「改正」法案の廃案を要求します――

 先の通常国会で継続審議となっていた放送法改定案が、この臨時国会に再提出されました。自民・民主の修正合意でいくつかの点に修正が加えられましたが、NHKの経営委員会の権限を強化し、総務省の意向で間接的にNHKを管理統制しようというねらいが見え見えです。JCJを含む7団体が、この改定案に反対するアピールを出しました。

2007年12月2日

NHK問題京都連絡会
NHK問題を考える大阪の市民の会
NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ
東北NHK問題ネット
日本ジャーナリスト会議
放送を語る会
メディアの危機を訴える市民ネットワーク事務局

1.先の通常国会で継続審議となった「放送法等の一部改正」法案が11月29日から衆議院で審議入りしました。審議開始にあたっては、@民放に対する行政処分条項を削除する、ANHKのガバナンス強化に関しては、経営委員会による番組編集への関与を禁止する文言を追加する、B命令放送を「要請放送」とする点は変更せず、実施にあたって付帯条件を付ける、C認定放送持株会社への出資上限を原案の「2分の1以下」から、「3分の1未満」に引き下げる、といった原案修正をすることが前提になっていると伝えられています。

2.原案と対比すると、上記の修正が改善といえることは確かです。特に、@によって民放の番組のすべての分野(報道番組やドラマも含む)について、放送内容が「事実かどうか」、「国民生活に悪影響を及ぼす(おそれがある)かどうか」を行政が判定するという途方もない行政検閲体制を敷く条項を残さず削除といいますが、そもそも現行法には存在しないものであり、当然のことです。

3.しかし、私たちは上記のような修正が施されたとしても、それを以て今回の「改正」法案の成立を評価できるものではありません。それは、AやBのような文言の追加・修正だけでは放送の自主自立を守るのに十分な実効性があるとは考えられないことに加え、Aの修正だけでは私たちが原案について指摘してきた危惧――NHK経営委員会の権限強化の名の下に行政がNHKの業務運営に間接介入する仕組み――を排除することにならないと考えるからです。
 なぜなら、「改正」法案はNHK経営委員の一部を常勤化することに加え、同委員会の中に新設される監査委員会に、いつでも役職員の職務の執行に関する事項の報告を求めることができる等の強い権限を与えています。さらに、最近の経営委員会はこうした法「改正」を先取りするかのように、委員会の本来の職務であるNHKの重要事項の議決機能、監督機能を手掛けるにとどまらず、経営計画に関する企画、立案、発議の機能にまで権限を拡大しようとしています。こうした状況を見るとき、オールマイティに近い権限を一部の経営委員に与える法「改正」はNHKのガバナンスの強化どころか、責任と権限の混同によるガバナンスの混乱、弱体化を生む恐れが強いといえます。
しかも、「改正」法案は監査委員会あるいは経営委員会の職務執行に関わる事項を、国会審議を経ないで制定できる総務省令で定めるものとする条項を随所に盛り込んでいます。これでは、NHKのガバナンスの強化と称して実際は、一部経営委員への権限の集中と、これら経営委員を通じて行政(総務省)がNHKへ際限なく介入できる仕組みを導入するものにほかなりません。

4.次に民放に関わるCの修正ですが、これまでの放送行政は放送局への出資規制である「マスメデイア集中排除原則」を掲げ、言論の多様性、多元性、地域性の確保をめざしてきました。放送持株会社を解禁するということはこの原則を踏みにじり、メデイアの寡占化を促す重大問題なのであって出資比率云々の問題ではありません。


結び
私たちは、民放かNHKかを問わず、放送制度の整備と放送内容の検証は権力の意思を介さず、制作現場の自主性を尊重しながら視聴者主権の立場に立って、政府から独立した行政委員会が担うものとする真の放送法の改正が本来は必要と考えています。その点で、放送法の民主的改革と逆行する今回の「改正」法案にはあくまでも反対し、廃案とするよう、関係各位に強く訴えます。

以 上

posted by JCJ at 17:14 | TrackBack(0) | パブリック・コメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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