2007年12月16日

放送法改定とNHK会長後任人事=水上一郎

 捏造放送を口実にした、総務省による放送局への行政処分などで物議を醸した放送法改正案が、いくらかの修正を加えた上で、この臨時国会で成立しようとしている。
 政府・ 自民党が、放送・通信分野での管理統制を強化する目的で出した放送法改正案は、世論などの批判を受けて、先の通常国会で継続審議となり、今臨時国会で民主党との合意によって、修正を加えたうえ再提出された。しかし、その中身を見ると、(1)捏造放送などを理由にした行政処分の条項を削除、(2)NHK経営委の野放しの権限強化のニュアンスを弱める、(3)NHK国際放送への放送命令の文言を「要請」に変える、(4)放送持株会社の出資上限を厳しくする、など、一見、批判の声に配慮したように見せかけた内容であるに過ぎない。
 このうち、(1)については、総務省が放送局の番組内容に対して、事あるごとに厳重注意などの行政指導を繰り返している現状からすれば、その強権的な姿勢は変わらないと見るべきだ。
 また、(2)の経営委の権限強化に関しては、経営委員の中に常勤の委員を置き、さらに、監査委員会を作るなど、一部の委員に権限を集中させる仕組みには、全く手をつけておらず、委員会での民主的な合議制が損なわれる懸念がある。
 (3)については、「要請」という言葉は使っていても、総務省の要請に協会が応じるよう強いている点では、実質的には変わりがない。
 (4)に関して言えば、マスメディア集中排除原則を実質的に無効にし、認定放送持株会社の制度を導入して巨大メディアの実現を図る政府・財界の意図は貫かれており、子会社への出資比率を制限するなどの措置が、どれほどの意味を持つものか疑問だ。

 このように見てくると、改正案の中身は、民主党に譲歩した形をとっていても、実質的には修正前と殆んど変わっていないと言わざるを得ず、放送メディアの政治権力からの自主・自立を保障した憲法や放送法の精神に照らしても、その精神に逆行する内容をはらんでいる。
 政府与党がこうした改正を目論むのは、竹中懇や総務省が敷いた路線に沿って、将来の放送・通信の融合を図り、放送、インターネットを含む情報を総務省が一元的に管理統制しようとしうねらいがあるからで、我々はそのことを肝に銘じておく必要がある。

■NHK会長後任人事、古森経営委員長は選出基準について明快な説明を

 来年に任期が切れるNHK橋本会長の後任人事について、今月13日のNHK経営委員会は結論を持ち越したものの、古森委員長は経済界から次期会長を選ぶ可能性を示唆したと伝えられ、公共放送の会長と経営委員長が共に財界人で占められるという異常な事態も危惧される。
 今年6月、安倍前首相の後押しで、富士フィルムホールディングス社長から経営委員になった古森氏は、執行部が作った次期経営計画を白紙に戻すなど強引な手法をとり、経営委員会と執行部の関係が悪化している。こうした状況の下、会長の任命権をもつ経営委がどのような人選をするのかに注目が集まり、公共放送を支える視聴者・市民の立場から開かれた会長選出のあり方を求める声が高まった。

 松田浩・元立命館大教授らの研究者と、放送を語る会、JCJなどの5団体が先月26日、経営委に対して、会長選出に当たっては、ジャーナリズムと放送の文化的役割についての高い見識を持つ人物を選ぶことや、会長候補の公募制を採用することなど3点を申し入れた。続いて、今月10日には、文化人、メディア研究者などで作る「原さん、永井さんを会長候補に推薦する会」が、60人余りの著名な推薦人の名簿を添えて、両氏の推薦を申し入れた。
 しかし、古森氏はこうした願いに一顧だにせず、財界人の中から会長を選ぶことを示唆している。受信料不払いなどによる経営危機を招いたNHKにとって、真の改革を実現するためには、視聴者の声に耳を傾けることが不可決だ。さらに、優れた番組を送り出し、言論・報道機関として政治権力からの自主・自立の立場を貫くためにも、公共放送を担う会長には放送についての高い見識と独立の気概が求められる。
 古森委員長は、今月25日にも結論を出したいようだが、誰を選ぶにせよ、その選出基準について、視聴者・市民に明快な説明をする責任がある。
posted by JCJ at 02:49 | TrackBack(0) | 放送 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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