2007年12月27日

NHK経営委員会による福地氏の会長選出に抗議する声明

2007年12月26日
日本ジャーナリスト会議

 12月25日、NHK経営委員会は古森重隆委員長の主導の下、2委員の反対をも押し切って、次期NHK会長にアサヒビール相談役の福地茂雄氏を決定する人事を強行した。
 日本ジャーナリスト会議は、古森氏が今回の会長人事を、視聴者や学識経験者らの意見を無視し、経営委員会での非公開、非民主的な手続きによって決定したこと、公共放送の経営委員長、会長という二つの重要ポストを財界人が独占する結果になったことに強く抗議する。

 古森氏が福地氏の経営手腕を買ったとしても、それは経営効率を至上命題とする私企業の場合には不可欠であっても、ジャーナリズムと放送文化に対する高い見識が求められる、言論報道機関の、ましてや国の公共放送を預かるNHK会長の資質とは無縁である。
 さらに古森氏は、安倍前首相を囲む財界人グループ「四季の会」のメンバーであり、安倍前首相の強い後押しで経営委員長になった経緯がある。その古森氏が、こともあろうに、同じ会のメンバーと報道された(12月21日付・サンケイ紙)福地氏を会長に据えたのは、NHK会長人事を私物化するもので、言語道断と言わざるをえない。

 アジア・太平洋戦争における日本の戦争責任を認めず、6年前のNHK・ETV番組にも政治介入した安倍晋三氏と極めて近い関係にある2人が、何にもまして政治権力からの自主自立が求められるNHKを率いることに、強い危惧を感じるものである。
 最近、NHKが、「日本国憲法 誕生」、「ハゲタカ」など、優れた番組作りを通して、視聴者の信頼を取り戻しつつある中、新任の会長が、財界の考え方や経営効率を押し付けることにでもなれば、制作現場に戸惑いや混乱をもたらし、ひいては、憲法改正問題などを巡る番組制作に悪影響を及ぼすことにつながり、視聴者からの信頼をも失うことにもなりかねない。

 日本ジャーナリスト会議は、報道・制作現場の自主性・創造性を尊重する立場から、会長や経営委員会などが、番組内容に介入しないよう強く要求する。
 また、今回の会長人事を通して露呈した会長候補の人選や選考過程の秘密主義、非民主的運営について、我々は断じて容認することはできない。本来、NHKは視聴者・市民の受信料で経営が支えられているにもかかわらず、主権者としての意見が反映、考慮されず、選考過程が公開されないのは、全く道理に合わない。

 我々は、今回の会長人事に先立って11月26日に経営委員会に対し、@ジャーナリズムについての高い見識を持つ人物を選ぶこと A選出過程を詳らかに公開すること B会長候補を公募制で選ぶこと──の3点の申し入れをしたが、今後の会長選出についても、視聴者・市民に開かれた形で、活発な論議を経て行われるよう、引き続き要求する。

posted by JCJ at 09:49 | TrackBack(0) | パブリック・コメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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