2008年01月29日

NHKは言論報道機関としての責任を果たせ=石井 長世

 1月17日に発覚したNHK現役記者らの株のインサイダー取引をめぐって、メディアなどから、報道情報端末の管理のずさんさや、職場の気の緩み、コンプライアンス意識の欠如が指摘されているが、形式的な精神論では済まされない、もっと根本的な問題が根底にあるように思えてならない。

 その最たるものは、多くの放送関係職場や職員にジャーナリストとしての意識と気概が感じられないことだ。仕事上知りえた情報を自己の経済的利益のために使うなど、絶対にしないのがジャーナリストとしての矜持であり、ごく初歩的な常識でもある。しかし、NHKの報道職場では、ジャーナリズム論やジャーナリストのあり方などについて、口にすることさえ憚られる雰囲気が実際にあると聞く。

 取材・制作の目的や規範について、ジャーナリストとしてどう考えるかを日常的に自己点検しない記者、ディレクターが、果たして放送を担う立場に居ていいのか疑問に思う。NHKでは従来から、取材や番組制作などを目指して入局してくる新人に対して、それぞれの仕事のノウハウについての研修は行ってきたが、外国では新人からベテランにいたるまで現場で繰り返し行われるのが通例になっているジャーナリスト教育は、ほとんど行っていないのが実態だ。

 これはNHKに限らず日本の殆んどのメディアにいえることで、いわば、ジャーナリスト教育の不在という構造的欠陥が、今回のお粗末な事件を生む背景にあるともいえよう。問題が発覚し、報道端末に接することのできる職員からの聞き取り調査が始まって、職場は沈痛で重苦しい雰囲気に包まれているという。

 しかし、ただ首をすくめて批判の嵐が通り過ぎるのを待ったり、総ざんげしたりすることで問題が解決する訳ではない。「ジャーナリストとしての信念と勇気をもって、問題の本質はどこにあるのかに正面から向き合い、真実の放送・報道に徹してほしい」、それこそが視聴者・市民が言論報道機関としてNHKに期待することではないだろうか。

(JCJ会員)

posted by JCJ at 01:49 | TrackBack(0) | 放送 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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