2008年05月09日

「中国嫌い」/どこまでやるの=亀井 淳

 福田首相と胡錦濤・中国国家主席との首脳会談が行われ、共同声明が発表された翌日(8日)発売の「週刊新潮」と「週刊文春」(各5月15日号)の新聞広告は、切り抜いて取っておくと、時代の1面を記録する資料として価値が出るかもしれない(雑誌を買うのがもったいないという人はとりあえず広告だけを)。まず、「新潮」。トップワイドの総タイトルは「『パンダ下賜』に平伏する『胡錦濤』来日」。これだけで相当なイメージが浮かぶでしょう。中国たたきのために準備万端、満を持して待ちかまえていたという姿だ。

 

 で、12本もある個別のタイトルを拾うと、「晩餐会メニューに餃子は出るのか」「5日も滞在なら靖国神社を訪問したら?」「チベットだけではなかった中国/猫の大虐殺」、そして「タイミングが良すぎるので流れるリンリン暗殺説」ときた。

 うーん、さすがにと感嘆すべきか、この鍛え抜いた底意地の悪さ。在日の中国人が見たらいちばん感情を逆なでされる言葉を選りすぐったあげく、「リンリン」をわざわざ「暗殺」して、来日する胡主席から次なるパンダが「下賜」される状況を演出したのではないかという「説」まで紹介しているのだ。むろん根拠らしいものは何もない。

「文春」はどうか。総タイトルを「胡錦濤の『笑顔』にスリ寄る福田政権『大パニック』/新聞・TVが報じない『訪日』全内幕」として、「毒入りギョーザ」「コビへつらい」「土下座外交」「二頭で年一億円/パンダなんかいらない」などと並べ、番外として「徹底討論/櫻井よしこ×富坂聰」を加えている。

 そのタイトルが「首脳会談は『大失敗』…」。首脳会談は7日午前、「文春」の発売は翌8日早朝からである。印刷の高速化が進んだとはいえ、首脳会談を終えてから二人の論客が対談して原稿化し、校正して印刷し、流通に乗せるという時間はないからどう見ても来日前に作った予定稿である。はじめから「大失敗」と決めてかかって組んだキャンペーンなのだ。

  このヘイト・チャイナ(中国憎悪)ぶりを読んでいたら、数日前に見た例のドキュメンタリー映画「靖国/YASUKUNI」(李纓・監督)の中のシーンを思い出した。…05年8月15日の靖国境内。右派の改憲集会に抗議の声を上げた一青年を取り囲んで暴行する男たちが根拠もなしに「中国に帰れ」と叫びだした。とたんに右派はみな青年が中国人だと思ったようだ。しつこく、そして全身の憎悪をたぎらせて「中国に帰れ」と追い続ける…。実は青年は日本人なのだ。

 一部の日本人の中にある中国嫌いのDNA。それを絶えず培養し増殖させるメディア。いったい何ごとであろうか。

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亀井 淳
http://kamei.cside.com
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posted by JCJ at 15:30 | TrackBack(0) | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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