2008年05月18日

北京五輪は「秋天」の10月に=亀井 淳

 巨大災害。ミャンマーをサイクロンが、中国・四川省を大地震が襲い、それぞれ数万の死者を出している。時間が経てば負傷者や未確認の被災者が命を失い、結果として各10万人台が犠牲になる大惨事ということになりかねない。軍事独裁政権が「鎖国」しているミャンマーとは違って、中国は地震発生から4日目に日本の国際緊急援助隊の入国を受け入れ、続いてロシア、台湾、韓国、シンガポールなどからも援助隊が現地に入っている。

 国内外からの義援金も相当額が集まっている様子だ。日本の各地では阪神や新潟地震の被災者をはじめ、中高生などを含む市民の自発的な募金活動が行われている。
 中国のメディアは日本援助隊のすぐれた装備や機材、そして献身的な活動ぶりを積極的に伝え、ネットには日本人に感謝するメッセージがあふれているという。

 地震発生直前までの日中間の国民感情はどうだっただろうか。「有害餃子」事件からチベット問題と続いて、胡錦濤国家主席来日の前後には右寄り週刊誌などメディアとネットの上ではヘイト・チャイナ(中国嫌悪)の情報があふれ、それを反映して中国側にも「反日」の声が盛んだった。小泉政権以来6年も続いた日中間の国民感情の冷え込みは、胡・福田の首脳会談だけでは十分な修復には至らなかった。それが不幸な災害をきっかけにして一挙に温かいものに変わろうとしている。

 北京オリンピックの公式サイトを見ると「One World One Dream」(一つの世界、一つの夢)とある。その実現が、五輪を前に始まろうとしている。
 私はこの際、北京五輪の当局者と中国政府の指導者たちに提案したい。8月8日に予定されている北京五輪の開幕を2か月ほど延期していただきたい。

 被災者が1千万人と伝えられる今次の大地震。間もなく雨期に入りダムの決壊など二次災害が懸念される状態から被災地住民がある程度の落ち着きを回復するのに、3カ月では短すぎる。悲痛や苦悩を抱える人びとを横目に見ながらの「平和の祭典」では、出場する選手や観客も割り切れないだろう。

 中国は首脳らが被災現地に張り付くなど、救済と復旧に懸命の姿を見せているが、今は国力のすべてを被災地に集中するべきだ。北京での五輪準備も中止して、人力も技術も資金も四川省に向ければいい。むろん外国からの協力もできるだけ受け入れて、「復旧オリンピック」の様相が展開されたらどうだろう。それこそ「一つの世界、一つの夢」への道ではないか。

 情報も極力公開する。外国からのメディアに自由に取材させれば、北京や上海などの「繁栄」ぶりと四川省など内陸部との経済格差がむき出しになるだろう。チベット問題や少数民族問題などの実態を世界に公開することになるかもしれない。
 いいではないか。それが大革命から60年経った中国の偽らぬ姿なのだと、胸を張るだけの度胸と度量を北京の指導者たちに求めたい。中国にはそういう意味での「21世紀革命」が必要なのだ。

 五輪を中止する必要はない。2か月延期し、「北京秋天」の10月に行えばいい。スポーツに詳しい人は、それは無理だという。五輪級の選手は何年も前から開幕日に合わせて心身の準備をしているから、コンディションがすっかり狂ってしまって、力を発揮できないという。観客も集まらないかもしれない。

 しかし、それでもいい。たとえ記録が軒並みに貧弱でも、それも記録なのだ。そして選手も世界のスポーツファンも、改めて五輪とはスポーツとは何なのか、誰のための、何のためのスポーツなのかを考えるだろう。

 そうすれば2008年の北京五輪は、1936年のベルリン五輪とは対照的に、人民と世界平和のための祭典であったと歴史に記憶されることであろう。それこそが、震災で失われた数万人民の霊に報いる途であろう。


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亀井淳
URL http://kamei.cside.com
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posted by JCJ at 20:00 | TrackBack(0) | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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