2019年07月14日

【今週の風考計】7.14─いま迫ってくる「報道の自由」への牙

★「報道の自由のための国際会議」が、10日と11日、ロンドンで開催された。100以上の国から閣僚級の代表者や学者、報道関係者など約1500人が参加。サウジアラビア人記者カショギ氏殺害事件やミャンマーでの記者収監など、報道の自由の侵害状況や改善策について意見交換したという。
★だが英国とカナダ政府が主催する会議で、「権力を監視・批判するメディアが報道の自由」を、権力者とともに論ずる居心地の悪さは、ぬぐえなかったと漏らす参加者も多かったという。

★さて「国境なき記者団」の調査によると、昨年、報道によって殺害されたジャーナリストは少なくとも99人、前年より15%増えている。新たに投獄された被害者は348人、人質となった者60人。しかし殺害犯が責任を問われることはほとんどない。
★4月半ばには、2019年の「報道の自由度ランキング」も発表している。180カ国・地域のうち、トップはノルウェー、2位がフィンランド。米国は「報道の自由度」が、初めて「問題あり」に格下げ、「トランプ大統領のフェイク・コメント」やジャーナリストへの敵対的な風潮が要因となり、45位から48位に順位を落とした。

★日本は前年と同じ67位だが、沖縄の米軍基地などを取材するジャーナリストへのバッシング攻撃が指摘されている。とりわけ安倍政権の報道対応が国際的な関心事となり、官邸における新聞記者への質問制限について、米紙「ニューヨーク・タイムズ」が、<日本は報道の自由が憲法で保障されている民主国家だが、時には独裁政権のように振る舞っている>と批判している。
★記事は、これまでの官邸における経過を紹介したうえで、<情報が取得できなくなることを恐れ、多くの記者が当局との対立を避ける中、「日本の報道の自由」にとって東京新聞の女性記者は庶民の英雄になっている>と指摘。
 さらに、記者クラブ制度について、<多くの記者の調査意欲をそぎ、国民が政治について知ることを妨げている>という識者らの声を伝えている。同感だ。映画「新聞記者」がヒットしているのも頷ける。(2019/7/14)
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2019年07月07日

【今週の風考計】7.7─参院選の焦点、鋭く深く捉えよう!

安倍1強政治に、審判を下す参議院選挙が始まった。6年半という異例の長期政権の実態を明らかにし、人間の尊厳が大切にされ、希望を持って働き生活できる日本へ、どうすべきか真剣に考えたい。

この間の国会運営は、あまりにも議会制民主主義を無視した、強権・横暴の連続だった。官邸は内閣人事局を通じて各省庁の人事を掌握、官僚による改ざん・忖度が蔓延した。
 森友問題では財務省による公文書改ざん、加計学園問題では「総理の意向」を忖度し、厚労省・総務省では毎月勤労統計の不正が発覚、これらいずれも検証は不十分、説明責任は果たさず、「不都合な事実」の先送りに終始した。
さらに異常なのは、国会での強行採決のオンパレードである。知る権利が侵害される「特定秘密保護法」(2013年12月)、集団的自衛権の行使を可能にする「安全保障関連法」(2015年9月)、犯罪を計画段階から処罰できる「共謀罪処罰法」(2017年6月)、残業代ゼロをもくろむ「働き方改革法案」(2018年6月)、カジノ賭博を認める「IR法案」(2018年8月)、外国人労働者の受け入れを拡大する「改定出入国管理法」(2018年12月)などなどだ。

与党が圧倒的多数の国会審議は結論ありきで進み、政策論議は深まらないどころか、首相は批判に耳を貸さず、予算委員会すら開かず、国会を空洞化させて恥じない。自民党国会議員の暴言もきりがない。
会期末に野党が提出した安倍首相問責決議案に対し、参議院の本会議で自民党の三原じゅん子参議院議員は「安倍首相に感謝こそすれ、問責決議案を提出するなど、愚か者の所業、恥をしりなさい」と、言い募る。
 自民党の二階俊博幹事長までが、参院選・立候補予定者の激励会で「選挙を頑張ったところに予算をつけるのは当たり前」と、国民の税金による露骨な利益誘導に走る。この議員モラルの崩壊は底なしだ。

さらには野党やメディアを乱心・偏向などと漫画入りで攻撃する、発行元が出所不明の自民党パンフレットを自党の国会議員に各20部も配布。首相の遊説日程まで、街頭の有権者から浴びる叱声を恐れて隠す。
今回の選挙に備え、自民党の党利党略から参議院の議員定数を6つ増やし、そのうち4つは「特定枠」として、選挙運動をしない比例候補者を優先的に当選させる仕組みを作った。そこに自民党は2人を当てた。有権者の審判を仰がないまま、国会議員が誕生する悪法がまかり通る。

重大な関心テーマである老後の生活費が2000万円不足する年金問題も、<年金100年安心・消費税10年無用>などというだけで、根本的な議論から逃げ回っている。ある試算では65歳までに2000万円貯めるには、金利3%として、30歳から毎月2万8千円を充当させなければ不可能という。
しかし2人以上の世帯では貯蓄ゼロが急増、非正規雇用者が300万人も増え、労働者の4割を占める。賃金は上がらず、どうやって毎月3万円近くの原資を捻出できるのか。
 かつ現行のマクロ経済スライドでは7兆円も年金資金が削減される。ならば高額所得者も均等負担をし、負担と給付の総合的な見直しを通して、減らない年金額にするのが緊急テーマとなっている。
少子高齢化が進む上に、6年後の2025年には団塊世代が後期高齢者となり社会保障費の急増は待ったなし。どうするのか。

消費税10%の増税も、2度延期した時よりも経済指標の数字も傾向も悪化しているのに、断行すれば日本経済をメチャクチャになる。改憲どころではない。
10月22日の「天皇即位パレード」は、自民党本部前を通過するコースに変更され、安倍総理、菅官房長官がパレードの車列に加わる。改元「令和」や天皇即位の政治利用も注意が肝心。21日の投票に向け、しっかり政権の動きを見極め、悔いのない1票を行使しよう!(2019/7/7)
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2019年06月30日

【今週の風考計】6.30─「捏造」を免罪する植村裁判 その忖度判決

「植村裁判」とは何か。元朝日新聞記者・植村隆さんが執筆の紹介記事「元朝鮮人従軍慰安婦/重い口開く」(「朝日」大阪版1991年8月11日付)に対し、23年も経過した2014年2月6日号「週刊文春」で、西岡力氏が「事実を捏造して書いた記事」だと執拗に誹謗したのを機に、植村さんへの執拗なバッシングが集中し、かつ家族の命まで危険に晒されたため、やむを得ず2015年1月、法的手段に訴えた事案である。

その「植村裁判」の判決が、26日、言い渡された。傍聴していて、東京地裁103号法廷に響く女性裁判長の<相当性とか真実性とか公益性>とかいう言葉に、何度も首を傾げざるを得なかった。

異動した原克也裁判長に代わって、判決主文を代読しているのだが、被告西岡力氏と文藝春秋の表現と記事は「名誉毀損に該当する」が、その責任は免ぜられるとして請求を棄却したのである。
「理由の要旨」は、<各表現は、公益性を考えて行われ、意見論評の前提としている摘示事実には真実性があり、また真実であると信ずる相当の理由がある、かつ意見ないし論評の域を逸脱したものでもないから、被告は免責される>というのだ。

待てよ、「○○性」の連発だが、その判断はどういう基準でなされたのか。市民感覚からして、納得がいかないモヤモヤ感が堆積していた。その後、植村訴訟東京弁護団や原告・植村隆さんの声明を読んで、疑問が晴れると同時に事の本質について、理解を深めるのに役立った。ここにまとめておきたい。
相手を「捏造」などの激しい表現で非難した場合、その表現や論述に妥当性があり、かつ公益性や真実相当性を認めるには、それを裏付ける取材とそこで得られた確実な資料が必要である。これが、これまでの判決の前提である。
 だが本件の判決には、そのような根拠・資料がないばかりか、植村さんの執筆意図などについて確認取材すらせず、「捏造」と表現した西岡氏の記事を免責する。何事か。
 かつ西岡氏自身が、自ら名乗り出た元慰安婦の金学順氏の証言を、勝手に創作して自説を補強していたという。まさに自ら「捏造」行為をしていたことも、法廷で明らかとなった。

なのに、なぜか免責する。「慰安婦問題は解決済み」という政権の姿勢を忖度した判決としか言いようがない。(2019/6/30)
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2019年06月16日

【今週の風考計】6.16─争点隠して「年金詐欺」に奔る愚の行方

「年金が毎月5.5万円ほど不足するから、老後に備え2000万円貯蓄せよ」―金融庁の報告書が波紋を呼び、「<100年安心の年金>なんて大ウソ」と、怒りの声が安倍政権を直撃している。

しかも5分で読める報告書を、麻生担当大臣は「冒頭部分に一部、目を通しただけで、全体を読んでいるわけではない」と開き直り、あげくに、この報告書は受け取らないという愚挙に出た。
みずから諮問した市場ワーキング・グループが、昨年9月から12回も議論を重ね、「政府の政策スタンス」に沿って、かつ金融庁内部の了承を得てまとめあげた報告書まで、ついに「消してしまう」のだから呆れる。

ネット上は<年金詐欺(笑)ホント、そうだよな>であふれ、「#年金詐欺」というハッシュタグまで作られるほどだ。なかには「2000万円って、麻生さんの1年に使う“飲み代”だろ」―政治資金の使い途から推し量った意見まで、登場してきた。
現に、麻生氏が代表を務める資金管理団体「素淮会」の17年度・政治資金収支報告書によると、有名寿司店に高級和食店、馴染みの会員制サロンなどに支払った、飲食を伴う「会合」費は、1年間だけで計2019万6547円にも及ぶ。

この政治資金の使いみちからして、庶民とはかけ離れた感覚の持ち主である78歳の麻生さん、自分が年金を受給しているかどうかすら「記憶がない」のだから無理もない。

さらに許せないのは、5年ごとに年金の給付水準の長期的な見通しを示す、財政検証の結果を公表しないことだ。従来では6月初めに公表しているのだが、見通しによると約15兆円もの運用損が出るといわれている。参院選の投票に及ぼす影響が大きいから、「公表を参院選後に回す」争点隠しに躍起だ。
昨年の森友学園への国有地売却を巡る財務省の公文書改ざんといい、厚労省のデータ統計不正が発覚するなど、「都合の悪いことは全て隠滅・改ざん・破棄し、現場に押しつける」安倍政権の退廃ぶりは極まる。(2019/6/16)
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2019年06月09日

【今週の風考計】6.9─「キムリア」3350万円が投じた複雑な波紋

白血病で闘病している競泳女子の池江璃花子選手が、5日、1カ月ぶりに自分の公式サイトを更新し、「先日、数日間の一時退院をしました」と明かした。
「治療は続いており、体調が優れない日もあります。(中略)一日一日を何とか乗り越えています」と綴っている。白血病やリンパ腫の治療に役立つ画期的な新薬「キムリア」の投与は、検討されているのだろうか。早い復帰を願うだけに、いらぬ心配までしてしまう。

この「キムリア」、スイスの製薬会社ノバルティスファーマが開発した特効薬といわれる。だが価格は投与1回で3349万円もする。「キムリア」を使う患者は年間200人ほどといわれ、販売額は約72億円と見込まれる。
5月22日、日本での公的医療保険の対象となった。保険適用になれば、高額の新薬も一定の自己負担で利用できる。「キムリア」の場合、年収370万〜770万円なら自己負担は40万円程度。残りは公的医療保険から支払われる。
これまたノバルティスが開発した「ソルゲンスマ」も、難病の脊髄性筋萎縮症の遺伝子治療薬として、早ければ年内にも日米で承認される見込み。価格は2億3200万円ともいわれる。

それにしても新薬の価格算定をめぐる不透明さはぬぐえず「まるでブラックボックス」との批判が噴出している。
いま日本の年間医療費は42兆円を超える。そのうち7兆7000億円が薬代。がん治療薬の「オプジーボ」など保険適用される高額な薬が年々増えていることも関係している。飲み忘れなどの残薬は、年間500億円ともいわれ、過剰な処方による投薬を減らす対策も必要だ。
合わせて東京新聞のシリーズ<税を追う>が告発する、製薬会社71社で288億円という大学病院や学会への寄付など、「製薬マネー」にも、メスを入れなければならない。

<団塊の世代>が後期高齢者となる2022年以降、ますます医療費の増加に拍車がかかる。この10年で個人が負担する健康保険料は年間38万円が50万円となり、2022年には55万円となる。医療保険制度の抜本的な改善は待ったなし。(2019/6/9)
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2019年05月19日

【今週の風考計】5.19─市民感覚からズレる裁判官の「常識」

女性に対する“性暴力”への無罪判決が相次いでいる。父親からの性的虐待や泥酔させての準強姦事件などに、どう裁判官は向き合ったのか。市民感覚からのズレの大きさには呆れる。

21日は裁判員裁判が始まって10年になる。9万人という多くの市民が、重大な刑事事件を扱う裁判員裁判に参加してきた。20歳以上の有権者から抽選で選ばれた裁判員6人が裁判官3人と合議で審理にあたる。
もし強姦致傷罪に当たる事件を、裁判員裁判で担当したら、「防御・抵抗することは可能であった」などの理由で、無罪判決が出せただろうか。職業裁判官ならではの矜持、詭弁を弄した法解釈と訴訟テクニック、さらには上昇志向からくる行政への配慮・忖度などが、審理では働きがちである。

そんなことは気にせず、新鮮な気持ちで裁判に向き合える市民の参加は意義が大きい。これまでの書面中心の審理から法廷での証言が重視され、社会常識とかけ離れた判決を出させないうえで、裁判員制度は刑事裁判に大改革をもたらした。
こうした経過を踏まえるとき、元朝鮮人慰安婦をめぐる「植村裁判」についても、触れざるを得ない。いま捏造記者とバッシングされた元朝日新聞記者・植村隆さんの名誉棄損回復裁判は、札幌地裁での不当判決に抗し、札幌高裁で控訴審が行われている。

先月末の第1回口頭弁論で、植村裁判弁護団は、
<櫻井よしこ氏は、1992年ごろ元慰安婦の強制連行体験や境遇に、心を寄せた記事を書きながら、突然22年後になって、明確な根拠を示さずに「人身売買説」を主張し、植村バッシングを始めた。しかも櫻井氏は植村氏への裏付け取材を怠り、また資料の引用や理解で誤りを繰り返している。なのに「捏造」と思いこむ「真実相当性」があるから、名誉棄損に当たらないとする免責判断は、あまりにも公正さを欠き、歴史に残る不当判決だ>
と訴えている。

少なくとも櫻井氏がジャーナリストを標榜する以上、テーマが重大であればあるほど、論評や記事の裏付け取材は、常識も常識。裁判官がこの社会常識すら無視して判決を下すなら、非常識も極まる。(2019/5/19)
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2019年05月12日

【今週の風考計】5.12─追加関税25%が世界経済にもたらす弊害

米中での関税制裁をめぐる激しい攻防は、チキンレースの様相を呈してきた。米国は昨年7月以降、中国製品2500億ドル(約27兆円)に対する追加関税を、3回にわたって発動している。10日には、昨年9月、2000億ドル(約22兆円)の中国製品に課した10%の追加関税率を、さらに税率25%へ引き上げる「制裁第3弾」を発動した。

その制裁に加え、トランプ大統領は、立て続けに過酷な中国への関税制裁を拡大し、まだ制裁対象になっていない3000億ドル(約33兆円)規模の製品にも、追加関税を課す準備を始めた。この「制裁第4弾」まで発動されれば、中国からの輸入品には全て追加関税が課されることになる。
米国の市民に身近なハイテク製品、スマホやノートパソコン、デジカメ、玩具などにも25%の関税が上乗せされる。値上がりは必至、生活を直撃する。これらのハイテク製品は、いずれも世界中から部品を調達し、中国で組み立てている。米国アップルが25%の追加関税を小売価格に転嫁した場合、主力モデルのアイホンは160ドル(約1万7600円)の値上げになると試算している。

日本や韓国、台湾などアジアに広がるサプライチェーンへの影響も避けられない。ユニクロも中国の工場から米国市場に衣類などを輸出している。主力の衣類が25%関税の対象となれば、大きな影響を受けるのは避けられない。中国での自動車やスマホ需要、ハイテク製品の輸出が縮小すれば、日本の電子部品や工作機械の受注も、「リーマン・ショック級」の打撃をこうむりかねない。

米中の貿易戦争が激しくなればなるほど、両国が排他的な「ブロック経済圏」を築き、世界経済が混乱する事態に追い込まれる。とりわけトランプ大統領が、国際的な枠組みからの「離脱」、そして「制裁」に走り、この2年ほどの間に<TPP、パリ協定、イランとの核合意、ユネスコ>の全てから離脱した。最悪のWTO離脱までささやかれる始末。自らの覇権のために世界を巻き込むことは許されない。(2019/5/12)
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2019年05月05日

【今週の風考計】5.5─見えぬ<ネット・ゼロ・エミッション>の姿

フランス本土の広さを持つ南極最大のロス棚氷が、これまでの3倍近い速度で融解している。昨年夏、世界を襲った異常気象は、北半球の上空1万メートル付近を吹くジェット気流の変化が原因─科学者の国際グループが、相次いでショッキングな見解を発表した。まさに地球温暖化による気候変動、海水と大気の温暖化が原因だと指摘している。

8日から気候変動に関する政府間パネル(IPCC)総会が、「京都議定書」誕生の地・京都で開かれる。2015年に採択されたパリ協定の実現に向け、シンポジウムをはじめ各種の討議が12日まで重ねられる。
特に昨年10月、IPCCが2050年までに「地球の気温上昇を1.5℃までに抑える」<ネット・ゼロ・エミッション>という目標を提起した。これは人間活動による温室効果ガスの排出量を、実質的にゼロにする目標であり、脱化石燃料へと舵を切る大々的な経済・社会の抜本的転換が必要となる。

ところが日本政府は、大規模排出国の一員であるにもかかわらず、石炭火力の廃止について明言せず、石炭火力発電所を国内の各地に新設する計画まで打ち出した。かつ途上国の火力発電建設には、莫大な融資を続けている。こうした措置は世界から厳しく批判されている。
あげくには「低炭素電源」の要になるとして、原発の活用まで声高に唱えている。脱炭素経済へ移行するうえで核となる炭素税と排出量取引についても、取り組みは不十分だ。現行の日本の炭素税率は、世界と比較して非常に低く、排出1トン当たり289円でしかない。フランスは5600円だ。世界レベルの炭素税を導入しなければ、温室効果ガスの抑制にはつながらない。

6月28日から大阪で開かれるG20では、日本政府としての「2050年への長期戦略」を、どのような内容で明らかにするのか、提出が義務付けられているだけに、G20議長国となる日本の真価が問われる。
9月23日にはニューヨークで国連気候変動サミット、11月にはチリで気候変動枠組条約・締約国会議COP25が開催される。もう待ったなしの日程が迫っている。(2019/5/5)
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2019年04月28日

【今週の風考計】4.28─AIやロボットを超える「余暇」の大切さ

10連休のゴールデンウイークが始まった。旅行、スポーツ、孫と遊ぶ、ボーッと充電もあろう。仕事を離れて自由に使える時間=余暇を楽しみたい。
だが休みをとれない人もたくさんいる。4月から施行された「働き方改革法」は、残業時間の罰則付き上限規制が導入されたとはいえ、働かせ放題につながる「残業代ゼロ制度」の導入など、長時間や過密労働の解消にはほど遠い。

そのうえ、急速に進化する「人口知能(AI)」やロボットの導入によって、「自分の仕事がAIなどで自動化され、失職するのではないか」─そんな危機感を覚えている人も増えている。あるシンクタンクのレポートでは、「今後20年以内に、労働人口全体の49%が人工知能(AI)やロボットに仕事を奪われる」という。

いかに対抗するか。まずロボットが持てないスキルを身につけることが、自分の仕事を守る鍵となる。ロボットは想定外の動きに対応できない。人間はチームワークよろしく、臨機応変に対処できる能力に優れている。異常な事態に直面しても状況を見極め、複数の仕事をこなしながら、協力して事態を解決する。
これは人間だけが持つ「社会性」にあるという。他人の感情を理解し、自分とは違う他人の視点から物事を観察し、状況に対処する能力に優れる。この社会性と柔軟な対応力を発揮すれば、ロボットにはできない仕事がこなせる。それには「しっかり余暇を楽しむこと」であると、欧米の科学者は指摘している。

余暇を楽しむという行為は、ロボットやAIにはできない。すでに多くの企業や組織は、社員の「燃え尽き症候群」を防ぎ、生産性を向上させるには、余暇が重要であるという認識を持ちつつある。私たちは余暇を楽しむことで、よりよい思考が生まれ、創造性のある仕事ができるようになる。
その「余暇」を、上からの押しつけでなく、みずからが望むときに有効に使えるよう、メーデーを前にして、「政労使」は真剣に考えてほしい。(2019/4/28)
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2019年04月21日

【今週の風考計】4.21─ブレグジットと女性ジャーナリストの死

★ついに英国の「EU離脱」問題=ブレグジットは、女性ジャーナリストの死にまで行き着いた。英国の領土である北アイルランド・第2の都市ロンドンデリーで、18日深夜に暴動が起き、取材していた女性ジャーナリスト(29歳)が被弾し死亡した。
★警察が市内の複数の過激派拠点を家宅捜索したところ、反発を招き暴動に発展。銃撃戦での悲劇である。21日のイースターを前に、アイルランド独立につながった<1916年イースター蜂起>を祝い、英国への帰属に反発する武装グループ「新IRA」が関与したテロ事件とみて捜査している。

★英国の「EU離脱」問題が、再び北アイルランド内で、英国からの独立・アイルランドへの帰属を望むカトリック教徒と英国残留を望むプロテスタント教徒の対立を誘発させかねない。さらに国境管理にも複雑な暗い影を落としている。
★アイリッシュ海を隔てて、英国の向いにあるアイルランドは、れっきとした独立国である。かつEUの加盟国である。だが、アイルランドの北の一部は、英国の領土・北アイルランドが占める。同じ島の中にアイルランドと北アイルランドの国境が500キロにわたって存在している。

★今は国境が開かれているので、自由にアイルランドに行けるが、もし英国が「EU離脱」すれば、チェックの厳しい国境に一変し、大きな影響が出るのは間違いない。こうして小さな地域に押し込められる北アイルランドの人々にとって、国境付近に監視塔や軍の検問所が乱立する「ハード・ボーダー」への逆行は、美しい風景が破壊され、民兵組織の攻撃で多くの血が流れた日々を思い出させるのだ。
★ようやく1998年のベルファスト合意で、アイルランドと北アイルランドの国境が開放され、物と人が自由に往来できるようになった。だが20年後に、またも紛争が再燃するかと慄く北アイルランドの人々は、多くがEUに残り今の平和と自由を維持したいと思っている。

★くしくもイースターの21日は、エリザベス女王93歳の誕生日。在位は世界最長の67年に及ぶ。この英国を混乱の極みに追い込んでいる「EU離脱」問題は、10月31日まで期限が延長されたものの、深刻な分断の傷が、ますます鋭く深く英国の人々や心を痛めつけている。(2019/4/21)
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2019年04月14日

【今週の風考計】4.14─「F35」147機・6兆円購入と政治の荒廃

岩屋防衛相は、日本の軍事費が「今後5年の間に、GDP比で最大約1.3%に達する」旨の見解を、9日の昼、国会で明らかにした。
これまで日本は軍事大国化への歯止めとして、軍事費を国内総生産GDP比で1.0%以内に抑えるのが原則である。しかし米国トランプ大統領の増額要請に抗しきれず、今年の軍事費は5兆円を超え、過去最高を更新した。それでもGDP比では0.929%と1%以内に収まっていた。

ところがここにきて、さらなる最新鋭ステルス戦闘機「F35」の爆買いなど、軍事費の予算総額を約27兆円も積み増す動きが急だ。いよいよ自民党が掲げる軍事費のGDP比2%へと舵が切られ始めている。

9日の夜、「F35A」が青森県三沢基地から東へ135キロの太平洋上に墜落した。すでに5日が立つ。今なお水深1.5キロの海底に沈んでいる機体は、1機116億円。米国の軍事史上、「最も高価な最新鋭ステルス戦闘機」である。
オッとどっこい、米国政府の監査院はF35戦闘機シリーズには、966件の未解決の欠陥があると指摘していた。昨年9月の墜落に始まり、パイロットの生命維持装置である酸素レベル低下事態が6回、タイヤの耐久性への疑念、一時は飛行中止の措置まで取られている欠陥戦闘機だ。カナダでは「F35」65機の購入を白紙に戻している。

だが安倍政権は、この欠陥戦闘機「F35」43機の購入に加え63機の追加発注、さらにヘリ空母「いずも」と「かが」に搭載する「F35B」42機の調達まで決めた。1機あたり運用30年とみて、その整備費307億円を合わせると、なんと合計147機の購入・整備費は6兆2000億円に達する。
人の命を奪うだけの軍事費の増額に向け、躍起の政治家、次の事実にどう顔を向けるのか。「F35A」1機分116億円あれば、日本全国に90の認可型保育所が新設できる。また福島県から原発事故で自主避難した人たちへの住居支援、このほど打ち切られたが、その額は約80億円、給付型奨学金だって105億円、1機分の額より少ない。どちらが命に貢献するか、はっきりしている。(2019/4/14)
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2019年04月07日

【今週の風考計】4.7─一刻も早く消費税10%中止を決断せよ!

もう消費税増税10%は止めるしかない! 10月に実施すれば、日本経済も国民生活もズタズタだ。
このほど日銀が発表した企業の景況感を示す業況判断指数は、企業規模を問わず軒並み7〜10ポイントも下がった。8年前の東日本大震災直後の11ポイント低下に匹敵する。

勤労者の実質賃金は2カ月連続で前年比1・1%減少。消費の冷え込みは続くうえに、米中の貿易摩擦や英国のEU離脱による輸出の不振が、日本経済を揺さぶり、国民生活にしわ寄せがきている。
そこへ消費税増税10%を浴びせたら、「令和」の世に東京オリンピック開催などと、浮かれてはいられなくなる。

あるシンポジウムで、岩田規久男・前日本銀行副総裁までが「日本は年金生活者や非正規労働者といった消費税増税に弱い人が多い」と語り、デフレ脱却のため「増税は凍結すべきだ」と訴えるに至った。これまでの消費税アップが、ことごとく個人消費の冷え込みを促進し、国民が貧困化していく事実を直視すべきだという。
安倍政権のもと「アベノミクス」を担当した、元内閣官房参与の藤井聡・京大教授も「消費税増税自体が景気を悪化させ、財政の基盤を破壊する。消費税増税は影響が半永久的に続く」と懸念している。

そもそも消費税は経済を不安定化し、貧しい者ほど負担が重くなる逆進性を持つため、国内の所得格差は拡大し、しかも消費を減退させ、デフレを継続させる欠陥税制であるのは、はっきりしている。
いくら軽減税率の導入とかポイント還元だとか、弥縫策を取ろうとも、その本質は変わらない。10月の消費税10%の凍結・延期の判断は、5月20日前後がデッドラインと言われるが、安倍首相は、もう一刻も早く中止を決断すべきだ。(2019/4/7)
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2019年03月31日

【今週の風考計】3.31─続く「琉球処分」の非道と自己決定権!

★平成が終わる。改元を機に沖縄の歩みに目を向け、自己決定権の大切さを考えてみたい。
★140年前の3月27日、明治政府は軍隊や武装警官600人を、琉球本島の首里城へ動員し、武力を背景に琉球国王・尚泰へ廃藩置県の通達を突きつけ、「沖縄県」を設置した。450年続いた琉球王国は終焉を迎えた。いわゆる「琉球処分」である。

★この「琉球処分」から140年たつ今もなお、沖縄の自己決定権は阻害され、政府の強権的な問答無用の押しつけがまかり通っている。
★米軍の<鉄の暴風>にさらされ、20万の犠牲者を出した沖縄は、日本の敗戦後も、米国の戦略的拠点と位置づけられ、1952年のサンフランシスコ講和条約で日本から切り離され、米軍の統治下に置く「第2の琉球処分」扱いを受けた。
★さらに20年後の1972年の沖縄返還は、民意を無視した米軍基地つきの本土復帰であり、「第3の琉球処分」に他ならない。

★その後50年近く、一貫して沖縄県民は、日本政府と米国に対し基地の整理・縮小を求め、1996年のSACO合意からは普天間基地の早期返還、そして辺野古移設の撤回と県外移設を要求している。
★<美ら海に、ジュゴン死すとも、土砂礫>─「辺野古への土砂投入」は、いわば「第4の琉球処分」の強行である。「国益」の名の下で沖縄を国防の道具にする手法は、140年前から続く植民地主義の極まりだ。

★これは自然災害による「苦難」でもなければ、他国からの侵略や戦争による「惨苦」でもない。自国の為政者や行政から押しつけられた「苦境」である。民意を汲んでほしい、自分たちの声を意思決定過程に反映してほしい、それが蹂躙され続けた歴史が刻む「苦境」の深刻さであり、重さである。
★新基地ノーの民意を示した県民投票から1カ月。政府は3月25日、再び沖縄の訴えを無視し、新たな区域への土砂投入を強行した。
★「主権は国民にある」と謳う憲法下で、沖縄だけは埒外とされ、本土の政府から自己決定権まで奪われる事態に、本土の我々が立ちあがらずんば、民主主義は死ぬ!(2019/3/31)
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2019年03月24日

【今週の風考計】3.24─梶井基次郎<檸檬忌>と春霞の甲斐路の旅

今日24日は<檸檬忌>だと気づいた。梶井基次郎が今から87年前、31歳の生涯を閉じた3月24日を偲んで命名されている。
思い出すのだが、筆者が若かりし頃、魅了された高村光太郎の<レモン哀歌>にある「トパーズ色の香気が立つ」檸檬を、梶井基次郎は、「私は埃っぽい丸善の中の空気が、その檸檬の周囲だけ変に緊張しているような気がした。…(略)丸善の棚へ黄金色に輝く恐ろしい爆弾を仕掛けて来た」と、代表作の短編『檸檬』で表現した。強烈な仕掛けに、何か恐ろしく不安な気持ちになったことが忘れられない。

3日後の27日は<さくらの日>だそうだ。3×9(さくら)=27の語呂合せだという。<さくら>といえば、これも梶井基次郎の『櫻の樹の下には』が、すぐ思い浮かぶ。
『檸檬』から3年後の作品だが、あの有名な冒頭の一文、「櫻の樹の下には屍体が埋まつてゐる!」から始まる、薄気味悪いショートストーリーには、ど肝を抜かれた。爛漫と咲き乱れている櫻の樹の下に薄羽かげろうの屍体が満ちているという。
 しかも「今こそ俺は、あの櫻の樹の下で酒宴をひらいている村人たちと同じ権利で、花見の酒が呑めそうな気がする。」と、最後の1行を締めくくる。この神経の強靭さと繊細さ、20年後に坂口安吾が『櫻の森の満開の下』で、受け継ごうとしたのも頷ける。

さて先週、桜が三分咲きの甲斐路を、身延線を使って旅をした。久遠寺の枝垂れ桜も蕾のまま、奥之院へのロープウェイ下には群生するミツマタが、レモン色の花で山肌を覆いつくす。
武田信玄の隠し湯・下部温泉の源泉館では、31℃の低温泉浴20分、それを2回繰り返す初めての体験。夕食にはヤマメの塩焼きをあてに、山梨の銘酒「春鶯囀」大吟醸を汲む。ここには『山椒魚』で有名な井伏鱒二さんも投宿している。
翌日は信玄が建立した甲斐善光寺へ。金堂天井の鳴き龍とお戒壇巡りを体験。東南に櫛形山、その上には富士山、西へと目を向ければ、まだ雪をかぶる鳳凰山から甲斐駒ヶ岳へ続く山並みが一望できる。3日ほど歩いた甲斐路は春霞に包まれていた。(2019/3/24)
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2019年03月10日

【今週の風考計】3.10─「ダブル選挙」など、やってる場合か!

■東に「トーケイ不正」の隠蔽あれば、西に「トーリ党略選挙」が現れる。なんと大阪維新の会の府・市両首長は、<大阪都構想>のゴリ押しを狙い、同じ穴のムジナよろしく、府知事・市長を入れ替えて、ダブル選の「党利党略・住民不在・私物化」選挙の奇策に打って出た。
■4月7日に投開票される議会選に合わせて、前倒し実施する。それぞれが同じポストでの出直し選挙では、半年の任期しかないが、ポストを変えてのダブル選で勝てば新たに任期4年が確保でき、<大阪都構想>の再住民投票に向けた、コズルイ作戦が仕組める。

■この<大阪都構想>─すでに4年前、「府と市を合わせてもフシアワセ」と、住民投票で否決されたシロモノ。なのに大阪人らしくもなく、ウダウダとしがみつく。安倍政権も貴重な「改憲勢力」である維新の代表・松井一郎氏の立場を擁護し、ダブル選を容認している。
■だが地元の自民党・大阪府連は怒り心頭だ。ついに対抗馬として俳優の辰巳琢郎氏を知事選候補として擁立する最終調整に入った。

■いま大阪は、6月28〜29日のG20開催、さらには大阪万博の会場建設やその内容をめぐって、大きな関心と議論が沸き起こっている。とりわけ2025年5月3日から6カ月間、大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)で開催される大阪万博は、会場建設費1250億に運営費830億の経費を要する。「地盤沈下」の激しい大阪経済にとって、その財政負担に耐えられるのか、懸念されている。
■しかも万博会場に併設されるIR複合リゾート施設の内容が問題だ。巨大なカジノ建設が計画されている。このカジノ売り上げ、いわば賭博のテラ銭(客の負ける金額)を年間3800億と見込み、IR全体の年間売り上げ4800億の8割を賄うとしている。
 かつカジノ客の75%は日本人と想定しているから恐ろしい。まさに万博に必要なインフラ整備をカジノ事業者が行う図式が成り立つ。これこそカンジンの問題。(2019/3/10)
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2019年03月03日

【今週の風考計】3.3─<サ行変格活用>で日本と世界を見通す

春はあけぼの。陽はサンサン。スタートした3月にちなんで、今週は<サ行変格活用>で見通してみたい。

まず─4日は「三線(さんしん)の日」、琉球に古くから伝わる伝統楽器「三線」を皆で弾いて、その音色を響き渡らせる。うるま市民芸術劇場で開かれる「ゆかる日まさる日さんしんの日」は第27回を迎える。
 5日は「サンゴの日」、沖縄の美ら海に生きるサンゴ礁が危機に瀕している。恩納村では「サンゴの村宣言」を発し、サンゴ礁の保全・再生へのプロジェクトを推進している。
は7日の「消防記念日」、今から71年前に消防組織法が制定された日にちなむ。春の火災予防運動の締めくくりの日でもある。
は9日の「スロバキア大統領選挙」─1993年にチェコと分離独立したスロバキア共和国はEUに加盟、人口450万、首都はブラチスラヴァ、国家元首は任期5年の大統領アンドレイ・キスカが務める。今度の選挙には出馬しない。15人が立候補、激戦の結果はどうなるか。

は5日の「山本宣治暗殺の日」─ちょうど90年前だ。「やません」と呼ばれ親しまれた労農党の衆議院議員が、国会から帰ってきた神田神保町の宿舎「光榮館」で、右翼に刺殺された。反戦平和を貫き、治安維持法の害悪と官憲の拷問を追及してきた。
 暗殺前日の3月4日には、全国農民組合大会で、「山宣ひとり(反対の)孤塁を守る。だが、背後には多くの大衆が支持している」と演説。翌日、国会で論陣を張るつもりだった。それもかなわず39歳の生涯を閉じた。

最後は─「曽我梅林」、実は陽気にほだされ、2日は梅見に出かけた。御殿場線・下曽我駅から徒歩10分。曽我物語の十郎・五郎の史跡や、梅やみかんの産地として知られる曽我の郷。
 箱根連山を背景に延々と広がる田園風景の中に、十郎や白加賀、紅や白の枝垂れ梅が満開だ。梅が枝に下がる短冊に「白梅に触れて老人光りけり─秋光」の句あり。あいにく富士山は雲に隠れて望めず。素朴な梅香うどんで腹を満たす。満足の一日だった。(2019/3/3)
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2019年02月24日

【今週の風考計】2.24─「三・一独立運動」から米朝会談への歩み

今週は、沖縄・辺野古埋め立ての是非を問う県民投票、東京・半蔵門の国立劇場で開催の「天皇在位30年記念式典」、さらには27日からベトナム・ハノイで始まる米朝首脳会談、そして韓国・ソウルや北朝鮮・平壌での「三・一独立運動100周年記念」行事の共同開催など、あわただしい内外の動きに目が離せない。

とりわけ「三・一独立運動」の内容など知らず、日本とは関係ないと思っている人々が多い。とんでもない。ちょうど100年前の1919年3月1日、朝鮮の学生や民衆5千人が、日本の植民地支配からの独立を目指し、京城のパゴダ公園に集まり「朝鮮独立万歳」を叫んだ。さらに動きは全土へと拡がるに及んで、日本の朝鮮総督府は武力を行使して弾圧、死者6千人・逮捕者5万人の悲劇を生みだしたのである。

「三・一独立運動」の1カ月前、1919年2月8日、 東京でも朝鮮からの留学生たちが、当時にして30年ぶりの大雪に見舞われるなか、東京西神田小川町の朝鮮YMCA会館に集まり、早稲田大学学生だった李光洙(当時26歳)が起草した<朝鮮青年団独立宣言>を採択し、日本政府・各国大使館・朝鮮総督府などへ送付している。
だが「朝鮮独立」はかなわず、その後も日本の植民地支配は1945年まで続いた。さらに5年後には朝鮮戦争が勃発し、朝鮮半島の分断は150年に及ぶ。

こうした歴史に翻弄されてきた韓国・北朝鮮の両国が、27日からの米朝会談によって朝鮮戦争の終戦宣言など、朝鮮半島の統一した平和づくりに向けて、新たな地平に踏み出す道が切り拓かれようとしている。

ひるがえって日本は、どうか。いまだ朝鮮に対する植民地支配や慰安婦・徴用工問題など、侵略の被害にあった朝鮮の人々への心のこもった深い謝罪や清算をしていない。いっそう日韓関係は悪化する中で、安倍政権は「明治150年」を礼賛するだけで、東北アジアの平和構築に背を向けている。(2019/2/24)
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2019年02月17日

【今週の風考計】2.17─小惑星「リュウグウ」についての一夜漬け

5年前に打ち上げられた小惑星探査機<はやぶさ2>が、地球から3億キロ先にある小惑星「リュウグウ」に、22日の朝8時15分ごろ着地する。パネルを広げれば14畳にもなる探査機<はやぶさ2>を、どう着地させるのか、ハラハラドキドキする。

直径900メートルほどの小惑星「リュウグウ」は、周辺温度は100度を超える上に、岩だらけ。そこに「ピンポイントタッチダウン」方式で、岩が少ない6メートル四方の地点を選んで接地し、弾丸を発射。飛び散った表面物質を探査機の採集装置に取り込み、わずか数秒間に0.1グラムのサンプルを採取した後、すぐ離脱するという。そしてホームポジションへ向かった後、今年の12月ごろ地球へ向けて出発し20年末に地球に帰還する計画だ。

老いた身では、寒い夜空を見上げる勇気はないが、太陽系誕生の謎を解き明かす、約290億円かけた壮大なプロジェクト。小惑星「リュウグウ」について、恥ずかしながら、さらに勉強させていただいた。

20年前に発見され、日本で「リュウグウ」と名付けられたソロバン玉に近い形状の小惑星は、地球に接近する軌道を持つ小惑星群のひとつだそうだ。しかも「リュウグウ」は太陽に近い軌道をめぐり、地球の約3倍もの速さで自転しているという。
かつ太陽系が作られたころの有機物や炭素を含む化合物、また水が多く存在し、太陽系の起源や生命誕生の秘密に迫ることが期待されている。まさに貴重な小惑星なのだ。

だが一方、地球に衝突する可能性が大きく、かつ衝突時に地球に与える影響が大きい潜在的に危険な小惑星にも分類されている。孫に教えるための勉強の一文となり、どうぞご容赦を!(2019/2/17)
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2019年02月10日

【今週の風考計】2.10─官邸の報道規制と基地へのドローン規制

★昨年末、首相官邸は東京新聞の記者が、沖縄・辺野古基地の埋め立て区域に「赤土が広がっている」状況について質問したところ、その質問を「事実誤認」と断定し、内閣記者会に記者の質問権を制限するような申し入れを行っていた。
★年が明けて、その内容が明らかになるにつれ、市民団体でも抗議の署名活動が進み、新聞労連も抗議声明を発表、続いてJCJも抗議声明を発表した。

★記者が質問中に、官邸報道室長は数秒おきに「簡潔にお願いします」と繰り返して妨害し、質問内容が事実誤認であるかのような誹謗中傷に近い内容を記した申し入れは、記者への個人攻撃につながる行為であると指摘。報道の自由、取材の自由、国民の「知る権利」に対する攻撃であり、その危険な狙いを糾弾している。
★内閣記者会の毅然とした対応が求められる。だが、動きは鈍い。そこには安倍政権に与する「産経」も所属するので、なかなかまとまらないのか心配でならない。

★10日付の「琉球新報」が<基地にドローン規制 沖縄を狙った報道弾圧だ>と題する社説を掲載している。今国会での成立を目指すドローン規制法改正案について、新聞協会が「自衛隊や在日米軍基地上空のドローン飛行禁止に反対する」旨の意見書を政府に提出したことに賛同しつつ、米軍基地が飛行禁止対象施設に加えられると、最も影響を受けるのは、在日米軍の専用施設の約70%が集中する沖縄の報道機関であることを指摘している。
★立ち入ることのできない米軍基地内で、たびたび起きる米軍機の重大な事故を取材するには、小型無人機ドローンを使っての撮影取材は欠かせない。ドローンの「飛行禁止は沖縄を狙い撃ちにした報道弾圧だ。米軍基地を対象施設に加えてはならない」と。(2019/2/10)
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2019年02月03日

【今週の風考計】2.3─消えた「返せ!北方領土」の裏側にあるもの

7日は<北方領土の日>だが、これまで続けてきた「返せ!北方領土」のタスキもハチマキも、シュプレヒコールも消える。
なんと地元の根室市では、「平和条約の早期締結を」に統一するという。おそらく同日、東京で開催の全国大会でも、今年は「返せ!」の声や文字は、目にも耳にもすることはないだろう。

なぜか。安倍首相のレガシーづくりに貢献すべく、いらぬ忖度がはびこっているからだ。昨年末からロシアとの平和条約締結交渉に前のめりになっている安倍首相のホンネは、「北方四島返還」という従来の政府方針を投げ捨て、択捉島と国後島の返還は断念し、色丹島と歯舞群島の2島「引き渡し」で決着させるという、プーチン大統領とのディールが狙いだ。
6月末に大阪で開かれるG20での首脳会談で決着を目指す。そして成果を誇示して参院選に突っ込む。こんな絵図を描いているのに、国民はおろか北方領土関係者にも、「外交交渉」を理由に口を閉ざす。

7日に国立劇場で開催の「北方領土返還要求全国大会」での安倍首相のスピーチが注目される。「領土問題」の言い回しで、「北方四島返還」のへの字も言わず、あいまいな言辞を弄してウソをつくつもりか。
すでに「日本会議」は、新元号の事前公表に対し、安倍首相に「遺憾」のクレームをつけ、さらにロシアに屈服するなら、右翼だって黙ってはいられまい。

あらためて原点を確認しよう。1855年2月7日、日本とロシアとの間で日魯通好条約が調印され、国後島・択捉島は日本の領土であることが両国間で確認された。だが、1945年8月28日〜9月5日 ソ連が「北方四島」に侵入し不法占領のうえ、そこに居住する日本人1万7千人が、ソ連の命令で強制的に退去させられた。
さらに日本政府は、1951年のサンフランシスコ平和条約で、ソ連の不当な領土併合を認める形で、樺太の一部と国後・択捉両島を含む千島列島を放棄してしまう。こうした歴史的経過を踏まえれば、もともと日本領であった「北方四島」の返還要求は、国際的にも道理ある要求なのだ。(2019/2/3)
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