2021年02月28日

【今週の風考計】2.28─真鯛とサンマ漁と「常磐もの」にエールを送りたい!

年とともに肉より魚を好むようになった。住まいから約1キロのところに、新潟・寺泊より鮮魚を直送してくるチェーン店がある。行くたびに生きのいい真鯛やサワラ、サヨリ、メバルなど、旬の魚を買う。
なかでも3月から6月頃にかけて産卵を控えた真鯛は、もっとも脂がのって美味しい。まさに色といい「桜鯛」の名がふさわしい。
 「春告魚」の名があるメバルは、刺身・塩焼きもいいが、煮付けが一番。身が反り返り、美しい白身がホロホロと骨離れも良く、非常に食べやすい。正岡子規も病床で綴った日記随筆「墨汁一滴」に、その旨さを書いている。
何も日本海側の魚ばかりではない。もう並ぶ巻貝のナガラミや5月ごろにはシッタカ、夏には宮城産のホヤも買うことができる。酒のアテにはもってこいだ。

さて、日本を取り巻く海の水温は、年々、高くなり、冬季の日本海中部では 6〜7℃も高くなっているという。魚種も変化し漁獲量も大幅に減っている。
 2017年8月に始まった暖かい日本海流・黒潮の大蛇行が、いまだに特異な潮流を作りながら日本近海を北上している。その影響で三陸沖合の漁場は、前年よりさらに沖合の公海域に移り、沿岸域にはほとんど魚群が来遊してこないという。

日本のサンマ漁が、その典型だ。今や漁獲量は10万トンを切り、昨年の水揚げ量は約3万トン・前年比27%減、2年連続で過去最低を更新している。
 深刻化するサンマ漁の実態に、北太平洋に出漁する世界8カ国は資源回復に向け、現在の漁獲枠55万6250トンを33万3750トンへ、40%削減する。このほど北太平洋漁業委員会(NPFC)で、2年間の合意として決着した。
 また日本とロシアの排他的経済水域(EEZ)でのサンマ漁獲量は13万5750トンとなった。少しでもサンマ漁が好転するのを願うばかりだ。

そこへ<「常磐もの」で、いわきの海に再び活気を!>という全面広告(朝日新聞・2/27付け)が目に入った。
 東日本大震災による津波と原発事故から10年、「3・11フクシマ」を克服し、福島の水産業の復活に向け新たな挑戦が始まっている。福島県いわき市最北の港町・久之浜に、昨年2月1日にオープンした鮮魚店「おさかなひろば はま水」の活動だ。
常磐地域の沖合は、北上する黒潮・日本海流と南下する親潮・千島海流とが合流する「潮目の海」となり、質のいい魚がたくさん獲れる。漁獲できる魚種も増え、現在は約180種類ほどの「常磐もの」を水揚げしている。
 なかでも「常磐もの」といえば、今が旬の「メヒカリ」だという。体長15cmほどの小さな深海魚だが、目が非常に大きく青緑色に光る。いわき市が市の魚として制定している。皮が薄くて、お刺身や唐揚げ、どれもイケるという。さっそく、あのチェーン店にいって買い求めよう。(2021/2/28)
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2021年02月21日

【今週の風考計】2.21─<小林多喜二と伊藤千代子>2人の生涯に思いをはせる

昨日20日は、“多喜二祭”─今から88年前、1933年2月20日、都内の路上にいたプロレタリア文学の旗手・小林多喜二が、スパイの通報によって特高警察により逮捕。同日夕方、東京・豊多摩刑務所で殴る蹴る、歯や指を折るなどなど、凄惨な拷問により虐殺。29歳の短い生涯が閉じられた。

この虐殺に至る背景には、1925年制定の治安維持法と特高警察による、人民弾圧の暴虐の歩みがある。
 制定3年後の1928年3月15日未明、特高は全国で数千人の反戦主義者を逮捕する大弾圧をおこなった。多喜二は、この「3・15事件」で行われた過酷な拷問を聞き、世間に国家の横暴を訴える作品『一九二八年三月十五日』を完成させている。
 実は、これによって多喜二は特高から恨みをかい、以来、尾行が着きスパイが送り込まれることになる。

名作『蟹工船』を刊行した1929年には、皇軍を批判したとの理由から治安維持法違反で起訴され、豊多摩刑務所に収容。1931年1月22日、保釈出獄。多喜二は、3月から約1カ月間、密かに丹沢・七沢温泉に滞在し、作品『オルグ』を執筆。
 今から2年前、わが山仲間と丹沢・鐘ヶ嶽を登った時、帰りに訪れた七沢温泉「福元館」、その離れにある多喜二が執筆していた部屋を思い出す。そして投宿してから僅か2年後の1933年には虐殺される。

さて多喜二の虐殺から遡ること3年7カ月、1929年9月24日、特高による弾圧・拷問の影響で24歳の短い生涯を閉じた女性がいる。その名は伊藤千代子。
 諏訪の農家に生まれた伊藤千代子は、アララギ歌人・土屋文明の薫陶を受けた少女時代を経て、東京女子大学で学び、男女平等、女性の自立、反戦平和の活動に青春をささげる。紡績工場で働く女工の過酷な労働環境の改善に向けた闘いに取り組む。
そして運命の「1928年3月15日」朝、23歳の伊藤千代子は、重要文書のガリ切り原紙などを、届けに出かけた印刷所の玄関先で、特高に逮捕される。
 市ヶ谷刑務所に収監、拷問により転向を強要されるが拒否し続ける。拷問で痛めつけられるものの、侵略戦争に反対し、主権在民、ジェンダー平等の社会を目指して志を貫く。その生涯や尊し。
 いま劇映画「こころざしつつたふれし少女よ 伊藤千代子の生涯」の製作が進む。(2021/2/21)
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2021年02月14日

【今週の風考計】2.14─日本版「マグニツキー法」が必要となる理由

いまや世界のコロナ感染者は1億820万人、死者は237万人に上る。というのに人権弾圧や専制政治が世界各地で横行し、ワクチン争奪が起き、ワクチン外交・世界支配の醜い野望すら蠢いている。
 なかでも中国の動きは、奇怪きわまりない。習近平政権はアジアやアフリカの発展途上国を中心とした計52カ国・地域を対象に、コロナ・ワクチンを無償提供し、その引き換えに中国への批判を封じ込める戦略を描いている。

12日、中国政府は、英国BBCの国際放送を禁止する処分に出た。BBCが新疆ウイグル自治区の「再教育」施設で、ウイグル族の女性が拘束され、性的暴行や虐待・拷問を受けていたとの報道への対抗措置とみられる。
 新疆ウイグル自治区の収容施設では、ウイグル族などの少数民族100万人以上が拘束されているという。中国は否定に躍起になっているが、米国バイデン政権は厳しい姿勢を取り、国際世論からは「ジェノサイド」の疑いまで指摘されている。
 東京新聞<本音のコラム>で、師岡カリーマさんが「ウイグル強制収容所」と題して、鋭い指摘をしている(2/13付)。

また中国政府の意向を受けた香港政府の動きも過酷さが増している。この6日には、立法会(議会)の元議員ら民主派53人および米国人弁護士を、「国家政権転覆罪」容疑で一斉に逮捕した。
 今年9月の選挙に向けた準備が、なぜ「国家転覆の企て」に当たるのか、異論や異議を許さない、民主派つぶしの暴挙は断じて許されない。
 この事態は、香港人にとどまるものではない。香港では日本人を含め世界の人々の「自由と人権」が脅かされかねないのだ。世界中の人々が中国政府に、香港の自治と人権を尊重するよう、粘り強く働きかける責任がある。

さらに中国は海警局に武器使用を認める「海警法」を施行した。さっそく海警局が活動する領域を一方的に拡大し、とりわけ尖閣諸島周辺の領海に侵入し、日本漁船に接近するなど、国連海洋法条約を無視し、国際法に違反する事態が頻発している。
 日本政府は、毅然として中国の国際法違反を指摘し、尖閣諸島周辺への威嚇侵入に抗議、すぐ止めるよう申し入れるべきだ。
やっと日本でも、世界各地での言論弾圧や拷問、虐殺などの人権侵害に関わった個人や団体に対して、制裁を求める日本版「マグニツキー法」の検討が始まった。
 議員立法をめざし、近く超党派の国会議員連盟が発足する。G7(主要7カ国)でマグニツキー法がないのは日本だけ。隣国への配慮ばかりが優先し、大事な人権や国際法が踏みにじられて、良いわけがない。(2021/2/14)
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2021年02月07日

【今週の風考計】2.7─高瀬庄左衛門から三屋清左衛門を経て上杉鷹山へ

■感動した本に出合うと、水溜まりに落ちた水滴が波紋を広げるように、思いが連鎖状につながっていく。まさに、砂原浩太朗『高瀬庄左衛門御留書』(講談社)は、その1冊である。
 本書は、齢50を前に妻を亡くし、息子まで不慮の事故で失った高瀬庄左衛門の寂寥と悔恨の日々を描く時代小説だ。神山藩の郡方として農村を見回る老いた身、死んだ息子の嫁・志穂と共に、手すさびの墨絵を描きつつ、若き頃の友情や諍いを思い浮かべる。
■しかし藩の政争の嵐が襲いかかり、村人に強訴を仕掛けたとの罠にはまりかける。だが志穂が描いた似顔絵から真実が明らかになる。まさに謎ときの筆が冴える。
 加えて昔の道場仲間が落ちぶれ、カネの無心から始まる斬り会いで腕に傷を負い、絵筆を持つこともままならなくなる。また息子の死の真相も知ることとなる。抑えた静謐な筆致ながら、この緊迫感の迫力は抜群だ。

■そして場面を彩る野鳥と草木・花の描写が心憎いほど冴えている。拾っただけでも、蕗の薹、山雀、海鵜、蝉、目高、燕、瑠璃びたき、梅、雪兎、百合、油蝉、行行子、時鳥、烏瓜、桔梗、百日紅、椋鳥、紅梅、鵯、秋海棠、楮、蝉、春告鳥、鶯、桜などなど。
 香りや色・鳴き声を取りまぜ、庄左衛門の心の揺曳を際立たせる。庄左衛門の最後のシーンには、「そろそろと矢立を出し、震える指先で筆を取る。庭さきに、気の早い山雀が降り立っていた。虫でも探しているのか、首を上下させて土のおもてをつついている。」とある。見事だ。

■続く連想が、藤沢周平『三屋清左衛門残日録』(文春文庫)。52歳にして隠居生活に入った三屋清左衛門が、悠々の日々を送るはずが、町奉行が抱える事件の解決に奔走、さらには藩を二分する政争にも巻き込まれていく。その日々を「残日録」と題して綴る時代小説。
 おなじみ北大路欣也が、時代劇専門チャンネル・スカパーで毎週土曜日19:00から放映中だ。
 藤沢周平とくれば『漆の実のみのる国』(文春文庫)に思いが及ぶ。江戸時代中期の米沢藩主・上杉鷹山の生涯を描く。財政破綻に陥っていた事態を、倹約・殖産興業を柱とする改革に取り組み、領内に100万本の漆の木を植え、その実によって藩を豊かにするなど、名君としての評価は今でも変わらない。

■そこへ小関悠一郎『上杉鷹山─「富国安民」の政治』(岩波新書)に目がいく。なんと著者は1977年生まれ、44歳の気鋭の歴史学者。さっそく読んでみると、積み重ねてきた研究の成果がふんだんに盛り込まれた<目から鱗>の好著。
 殖産計画の一つ、「漆」植立ての実際を資料から明らかにし、いかに実施させていったか、その苦労も指摘している。
 著者は、「上杉鷹山は、<人民のため>の君主という考えを深く内面化した<名君>とみることができるだろう」と結ぶ。現在の為政者よ学ぶべし。(2021/2/7)
「高瀬庄左衛門御留書」.jpg
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2021年01月31日

【今週の風考計】1.31─「終末時計」は残り100秒、迫る人類・地球の危機

核兵器と気候変動による人類滅亡を午前0時に見立て、それまでの残り時間を示す「終末時計」の針が、昨年に引き続き、残り「100秒」を表示したと、米国の科学雑誌が発表した。
 世界で1億人がコロナに感染しパンデミックに陥るなか、核廃絶と気候変動という地球規模の課題に、いまだに国際社会が協調して対処できていない事態は、深刻だと指摘している。

まず核廃絶。22日に発効した核兵器禁止条約は、その後ベナン、カンボジアも批准し計52カ国となった。インドネシアやブラジルも批准に向け手続きが進んでいる。
 だが唯一の被爆国・日本が、米国の「核の傘」を理由に批准しないどころか、オブザーバー参加できる締約国会議にもソッポを向くとは、悲しくて悲しくて言葉も出ない。
米国ではバイデン大統領が、オバマ元大統領の掲げた「核なき世界」を継承するため、2月5日に期限を迎える米ロの新戦略兵器削減条約(新START)を、5年間延長することで合意した。
 これにより、2019年8月の中距離核戦力(INF)全廃条約が失効して以降、唯一残されていた核軍縮の枠組みが維持されることになった。

気候変動の課題はどうか。すでにバイデン大統領は就任初日、地球温暖化に対処する「パリ協定」への復帰に署名し、2030年までのCO2削減目標の新たな策定に着手した。
 さもあろう。南極の巨大な氷山が次々に分裂している。三重県の面積にも相当する世界最大級の氷山が割れて、サウスジョージア島に向かって流れだし危機感が増す。
 地球から消えた氷の量は、この20年間で28兆トン。かつ融解の速度は加速し、年に1.3兆トンという。
 今後も地球温暖化が進み、氷山が解け、海面上昇が続けば、東京は水の都ベネチアになるとの予測すら出ている。

今年は、世界各国が気候変動への取り組みが問われる重要な年。11月には英国で国連気候サミットが開かれ、重要な対策プランの討議が始まる。
 世界50カ国120万人を対象に行った国連の世論調査によると、回答者の8割近くが気候変動を「地球規模の緊急事態」と捉えている。
国籍・性別問わず、老いも若きも、全世界の人々が再生可能エネルギーの活用増大、森林と土地の保全、気候に優しい農業技術の採用、クリーンな電気自動車やバス・自転車の利用拡大など、具体的なテーマを挙げて気候変動に対する取り組みを求めている。
 同感、当然! CO2排出による気候変動・地球温暖化は、「終末時計」の針を加速させる元凶なのだから。(2021/1/31)
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2021年01月24日

【今週の風考計】1.24─「深大寺そば」と「武蔵野うどん」に想いを込めて

東京・府中に住む友人が、自分のブログで「深大寺そば」の名店、「深山茶屋」が閉店した悲しみを綴っている。
 <ぼくはかき揚げ付きの中盛り蕎麦、カミさんはとろろ蕎麦が定番だった。このなじみの店に行くと、シャッターに「当店は12月25日をもちまして閉店することになりました」の貼り紙。
 年末年始といえば、蕎麦屋にとっては最大の書き入れ時。それを前にして閉店だなんて…。 ガッカリしながらトボトボと家へ帰るしかなかった>と。
コロナ禍による経営難が進み、由緒ある店の休業・閉店が相次ぐ。創業231年、江戸時代から続く東京・葛飾柴又の川魚料理の名店「川甚」も、1月末で閉店する。創業39年の東京・三鷹市のラーメン店「味の彩華」も今月末の廃業を決めた。

さて筆者の住む東京・多摩北部地域では、「武蔵野うどん」を看板にする店が多い。この「武蔵野うどん」は、やや茶色みを帯びて太くコシが強い。「ざる」か「もり」にして、かつおダシをベースに、豚肉の細切れやネギを具にした熱い「肉汁」につけて食べる。
 冠婚葬祭などの祝い事や親戚が集まる時には、手打ちの「武蔵野うどん」が「本膳」として出されることが多い。
<大寒>が過ぎたとはいえ、木枯らしの吹く日は、コシの強い「武蔵野うどん」を、アツアツの「肉汁」につけて食べたい。その旨さを想うとヨダレが出てしまう。

東村山市の北西部にも「うどん屋」の名店が数多くあるが、残念ながら我が家からは遠い。「不要不急の外出は控えよ」とあっては、ままならない。
 9月中旬に開かれる東村山「どんこい祭」は、「武蔵野うどん」と「よさこい」を掛け、「どんと来い!」の意気込みを込めて名付けられたという。これも昨年は、コロナ拡大のあおりを受けて中止。
我が町の「うどん・蕎麦屋」が閉店・休業に追い込まれてはいないか、心配がよぎる。
 かつては良く行った「しなの」を思い出し、向かってみる。西武新宿線・久米川駅から線路沿いに小平駅の方向へ徒歩5分、踏切のそばにある。暖簾が出ている、やってた! うれしくて、店の引き戸を開けるのも心がこもる。
熱い「肉汁」に漬ける「武蔵野うどん」はないが、代わりにアツアツの「鍋焼きうどん」を注文する。大きなエビ天に半熟卵半分、しいたけ、ネギ、ほうれん草、ナルト、筍、お麩が盛り上がるように入って、うどんが見えない。
 岩手出身の84歳の主人と奥さんで切り盛りして50年。調理場と客席を隔てるカウンターには、宮沢賢治の「雨ニモマケズ…」の詩すべてが白抜きされた、紺色の水引暖簾がかかる。その心意気や良し、頑張って! と店を出る際にエールを送った。(2021/1/24)
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2021年01月17日

【今週の風考計】1.17─国会紛糾で菅首相に向かうブーメラン=<自滅の刃>

国内で初めてコロナ感染者が確認されてから1年。いまや感染者は32万6千人、死者は4500人、恐るべき拡大の惨状が続く。遅れに遅れて発出した2度目の「緊急事態宣言」、11都府県に拡大したものの、収束すら見通せない。
東京都内では「自宅待機」感染者は週に3千人を超え、6700人が入院・療養先すら決まらない。単身者からは「コロナで死ぬか餓死で死ぬか」の悲鳴があがっている。

感染拡大を抑え込めない菅内閣の支持率は33.7%、「危険水域」に近い。これまで菅首相は5人以上の会食に参加し、さらには「緊急事態宣言」の対象県・福岡を静岡と言い間違え、「国民皆保険制度」の見直しすら示唆する発言など、挙げて責任は「ガースー」自身にある。
18日からの通常国会では、後手後手のコロナ対策に加え、感染症対策特措法の改定に向けたゴリ押し審議が始まる。
 入院を拒否した感染者に科す罰則を「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」「コロナ感染者の受け入れ勧告を拒否した病院名の公表」など、法案の内容を巡って紛糾するのは間違いない。
当然だ。コロナ感染で入院したくても入れない実態を放置して、罰則のみ優先するなどトンデモナイ。また民間病院にしろ、受け容れたくとも看護師や施設の補充・援助などの裏付けがなければ、どうやって責任ある医療ができるのか。医者の苦衷も理解できる。

長野県の松本モデルが示すように、症状に応じた受け入れ態勢を各種病院との間で計画を作り、コロナ治療への広域な医療体制を敷いている自治体もある。政府は各自治体に援助・アドバイスし広域医療の構築を強化すべきでないか。
それにしても肝心のPCR検査、いまだに軽視するのは重大な誤りだ。ノーベル賞受賞の本庶佑教授が「羽鳥慎一モーニングショー」で、改めて「PCR 検査能力の大幅な拡充と無症状感染者の隔離の強化」を訴えている。
 人口1000人あたり検査数を見ても、いまだに日本は0.5人、米国は3.9人。なぜ自動PCR検査システムを活用しないのか。これをトレーラーに搭載し、各地を回れば12時間で2500件の検査ができるという。
 これを1000台用意すれば1日250万件の検査が可能だ。トレーラーは1台1億円、自動PCR検査システムの設置も含め、この国会で企てる新たな「GoTo」追加予算1兆860億円の1割1086億円を投入すれば実行できる、と力説している。

厚労省は昨年5月、「検査拡大」によってコロナ擬陽性の多発が弊害を呼ぶとの文書を作り、政府中枢に説明して回っていたという。こんな文書に固執し、感染を広げてきた責任は誰がとるのか。
 やっと政府は、この11日になって都市部で不特定多数を対象にした1日数百〜数千件のPCR検査を実施すると公表したが、なんと実施時期は3月だ。
業を煮やした自治体の中には、自主的にPCR検査に取り組むケースが増えてきた。東京都・世田谷区を始め、広島県が広島市民80万人を対象にした集中的な検査を実施する。
 感染拡大を抑え込めない現状では五輪開催にも赤信号がともり、菅政権の窮地どころか菅首相自身、党総裁選での再選もおぼつかない。まさに<自滅の刃>が迫っている。(2021/1/17)
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2021年01月10日

【今週の風考計】1.10─「果物と野菜」が2021年<国際年>テーマになる理由

★今年2021年、国連は<国際年>(International Year)のテーマとして、以下の4つを挙げ、世界の国々で取り組みを強めるよう呼びかけている。
 @平和と信頼 A持続可能な開発のための創造的な経済 B児童労働の根絶 C果物と野菜
★そもそも<国際年>とは、特定のテーマを設定し国際社会の関心を喚起し、取り組みを強めるのを目的に、国連総会で採択・決議される。1957年の<国際地球観測年>が最初だ。
 今年の4つのテーマを見ているうちに、オヤと思ったのが、C果物と野菜である。2019年12月の国連総会で採択され、2021年のテーマに加えられている。

★この64年間、<国際年>に取り上げられたテーマをネットで調べてみると、果物や野菜に関連するものは、きわめて珍しい。2004年にコメ、2008年にポテト、2016年にマメの3例しかない。
 「果物と野菜」を採択するにあたって、グテーレス国連事務総長は、食料の生産と消費との関係を再考し、食品ロスなどフードシステムを再検討し、果物や野菜など必要とする多様な栄養に誰もがアクセスできるよう、健康的で強靭で持続可能な世界にしようと強く訴えた。それほどに重要なテーマになっていたのだ。

★果物や野菜は、ビタミン、ミネラル、フィトケミカルが豊富で、人体に豊富な栄養素を提供し、免疫システムを強化し、さまざまな病気のリスクを減らすのに役立つ。
 世界保健機関(WHO)は、健康を維持するうえで食事の一部に果物・野菜を1日1人400グラム以上摂るよう促している。世界の貧困地域では半分にも満たない。わが日本でも一人当たり摂取量は1日約280グラム、120グラムも不足している。
 さらに生産された果物と野菜が消費されるまでの間に、途上国からの輸入や国内での流通分も含め、食べ残しや消費期限などから廃棄されるロスは最大40%にのぼるといわれ、大きな課題となっている。

★いまコロナ感染拡大の影響で、自宅での料理づくりが増えている。巣ごもりの身には、食卓に並ぶ毎日の料理が楽しみだ。野菜炒めを食べイチゴやキウイを味わいながら、ふと年末に短時間審議で可決された「種苗法」に想いが及ぶ。
 俳優の柴咲コウさんがツイッターで日本の農家・農業の将来に触れ、懸念を表明していたが、農家の自家採種・増殖の権利が制限され、公共の種子すら種苗会社に譲渡されたらどうなるか。海外のメジャーが果物や野菜の種苗を支配することになれば、遺伝子組み換えなど、食の安全さえ脅かされ、まさに「果物と野菜」<国際年>を侵害する事態が進むのは明らかだ。(2021/1/10)
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2021年01月03日

【今週の風考計】1.3─コロナ禍への対応に必要な「ワンヘルス」という考え方

あけましておめでとうございます。
 新年を迎えてもコロナ感染拡大は止まず、いつ収束するか不安が続きます。対応に手をこまねいているうちに変異種まで生まれ、私たちは深刻な人類文明の危機に直面しています。
 “巣ごもり”の身であるだけに、新聞やテレビなどの情報に接し、いろいろ考えることがありました。

新型コロナがヒトへ感染したのはコウモリからだといわれ、世界で見つかる新たな感染症の7割近くが動物に由来するそうです。
 地球温暖化により永久凍土が融解したため、埋もれていたトナカイの死骸が地上に露出。そこから炭疽菌やウイルスが発散し周辺の住民に甚大な病害をもたらした例もあります。南極大陸の氷に閉じ込められた病原菌が再活動する可能性だって十分にあるとのこと。
米国の研究者は2015年、アラスカやチベット高原の地下50メートルの氷をとり出したところ、未知のウイルスが28群も発見されたと報告しています。
 ウイルスは環境によっては、100万年くらい生き残るそうです。いま人類は未知のウイルスに脅迫されているのが現実でしょう。
 森林火災や陸地の砂漠化により、野生動物が人間の生活圏にまで進出し、捕食せざるを得ない事態も生まれています。こうした動物からのウイルス感染も視野に入れなければなりません。

どうしたら良いのでしょうか。感染症対策のキーワードとして、「人の健康・動物の健康・自然環境の保全」を一つのものとしてとらえる、「ワンヘルス」という考え方が浮上してきています。
 人の健康は、生物の健康と健全な自然環境の保持によって維持されるという考え方です。私たちはさまざまな生き物の恩恵を受けて生きています。生物の健康が脅かされ、多様性が急速に失われれば、人類や社会の健康も損なわれます。
だからこそ「人類・生物・環境」を三位一体として、ひとつの健康「ワンヘルス」を大切にする対策をとるべきときです。
 まず「ワンヘルス」を脅かす原因は、地球温暖化による気候変動、そして私たちが営む経済活動による環境破壊にあります。コロナウイルスによるパンデミックの発生は、この手痛い代償でもあるのです。

「地球温暖化に効くワクチンなど存在しない」以上、自分たちの手で、まずCO₂の排出量を削減し、ゼロに向かって手を打っていくことから始めねばなりません。やっと日本政府も、昨年10月下旬、「2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」と表明しました。
 菅政権は待ったなし、クリーンエネルギーへ切り替える具体策が急がれます。(2021/1/3)
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2020年12月27日

【今週の風考計】12.27─「桜」前夜祭への虚偽答弁とハグラカシを許すな!

心穏やかに<2020回顧>などしていられない。24日、東京地検特捜部は「桜を見る会」前夜祭をめぐる疑惑に関し、安倍前首相を不起訴、公設第1秘書を略式起訴したが、罰金100万円が即日納付され、一連の捜査が終結。
 だが、その後の記者会見や国会での安倍前首相の弁明は、ハグラカシに終始。すべて責任を秘書に押しつけ、自身の関与は全否定。この1年あまり国会でつき続けたウソは118回、ますます疑惑は深まるばかりだ。

疑惑1─なぜ「前夜祭」の収支明細を隠すのか。
 安倍氏は「前夜祭の費用は全て参加者の自弁」「個々の参加者がホテルと契約」などと、大見得を切ってきたが、大ウソ。なんと一人当たり3000円もの金額を、安倍晋三後援会が補填していた事実が明らかとなった。これこそ「利益供与」じゃないか。
 さらにホテル側が発行した領収書のあて先は、安倍氏の資金管理団体である「晋和会」。この事実は「晋和会」が主催者・契約者そのもの。安倍晋三後援会なのか「晋和会」なのか。補填資金の出どころが新たな疑惑として浮上する。
しかも特捜部が捜査を終える直前の23日、突如、安倍事務所は訂正した政治資金収支報告書を山口県選挙管理員会に提出した。そこに添付されている「領収書等亡失等一覧表」を見ると、2017年〜2019年の「前夜祭」の領収書が、3回とも「全て紛失」と記されている。こんな事態はあり得ない。
 しかも、この「領収書亡失届」は、なんと「前夜祭」が国会で大問題となっている最中の今年5月に提出されている。一方、訂正報告書に記載された補填金額は詳細に最後の1桁まで記されている。「なぜ領収書がないのに、細かい数字まで書けるのか」、ホテル側からの領収書自体を隠している疑いも出てきた。

疑惑2─補填の原資はどこからか。
 2016年から19年までの4回にわたる「前夜祭」分の補填額は約700万円。しかし政治資金報告書では、その原資の出どころは不明のまま。安倍氏は「私が預ける共有資金の中から立て替えた」と答弁したが、立て替え払いした総理のお金はきちんと戻されたのか。その資料は提示されない。
 「秘書が金庫に入っていた総理のお金を勝手に差額補填に使った」というのなら、業務上横領罪が成立する。告訴しないという以上、安倍氏自身も補填に関わり了解していたことになる。

疑惑3─なぜ政治資金報告書に記載しなくなったか。
 安倍氏の政治資金報告書を見ると、2013年度は「前夜祭」に関する項目として、領収書も含め記載されていた。だが翌2014年以降からは報告書には記載されなくなった。「前夜祭」に参加した地元有権者への「利益供与」を隠すためではないか。
 「前夜祭」の費用補填は、このほど提出された訂正後の政治資金収支報告書では、「会場費」ではなく「宴会料」の項目で計上されている。公職選挙法に照らせば「会場費」を超えて補填額が膨れ上がると、「利益供与」に当たる可能性がある。
 「前夜祭」は、首相主催の税金を使った「桜を見る会」とセット。地元有権者に「おもてなし」という「利益供与」を図る意図を込め、「桜を見る会」も私物化していたのは間違いない。(2020/12/27)
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2020年12月20日

【今週の風考計】12.20─SNS上の「捨て垢」による誹謗・中傷を削除せよ!

ネット上の誹謗・中傷・差別に満ちた書き込みは深刻さを増している。「即刻死ね」「消えろ」などと特定の個人や団体を相手に、敵意むき出しの書き込みが集中し、甚大な人権侵害や悲劇が起きている。
 しかも「架空の人物」が作った「捨てアカウント」、これを「捨て垢」というそうだが、そこからの誹謗・中傷が圧倒的だ。
国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」では電凸に加え、SNSでは「捨て垢」からの攻撃にさらされ“炎上”状態になり、中止に追い込まれた。
 「捨て垢」はいつでも削除・放棄できるので、投稿者を特定するのは極めて難しい。

「誹謗・中傷がいやならSNSをやめればいい」というが、いまやSNSは生活に欠かせないツール、使わざるを得ないのが実態だ。
 ツイッターやインスタグラムなどを運営する主要なSNS会社では、わいせつ画像の送信や個人へのなりすまし、ヘイトスピーチや差別的内容などについては、被害者からの削除依頼やアカウントの凍結要請を受け付けている。
 ただし、これらの対応も書き込みが残っている場合のみに有効なので、アカウントが削除されると、対応は難しい。

悪質な書き込みで、5月にプロレスラー木村花さんが、22歳の若さで自死したのをきっかけに、政府は被害者がSNS運営会社に、投稿者の電話番号を開示請求できるよう省令を改正する。
 また弁護士を通じ、投稿者の氏名と住所についても照会できるようにし、被害者が受けた損害への賠償について請求しやすくする改正も、検討されている。
 来年の通常国会に、開示ルールを定めた「プロバイダー責任制限法」の改正案を提出する予定だ。
一方、消費者や有権者からの指摘・批判、内部告発などを受けた企業や政治家が、投稿者に圧力をかけようと、この開示制度を悪用する危険もある。政治や行政、企業に対する正当な批判まで封じ込めるなど絶対にあってはならない。

ドイツではネット上のヘイト表現に対して、法律で24時間以内の削除を義務付け、違反した場合、最大5000万ユーロ(約60億円)の罰金を課す。
 日本はどうか。自主規制のみで、法律による削除は謳われていない。今なお、ヘイト投稿は後を絶たない。この11月、化粧品会社DHCが自社の公式サイトに、吉田嘉明会長の名で以下のような文章を掲載した。
 「サントリーのCMに起用されているタレントはどういうわけかほぼ全員がコリアン系の日本人です。そのためネットではチョントリーと揶揄されているようです。DHCは起用タレントをはじめ、すべてが純粋な日本人です」
この文章が12月16日朝のツイッター上で拡散され、在日コリアンへの差別的発言として批判が相次いだ。吉田会長は過去にもDHC公式サイトで在日コリアンへの差別的表現を行っていた。
 れっきとした会社組織が、ヘイトや人種差別につながる文章をホームページに掲載し、恬として恥じない。日本の企業の無責任さを、笑ってすますわけにはいかない。(2020/12/20)
posted by JCJ at 07:53 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年12月13日

【今週の風考計】12.13─コロナ感染拡大の火に油を注ぐ追加3119億円の無謀

■コロナ感染拡大を防ぐ「勝負の3週間」最終日が16日にやってくる。だが12日、1日の新規感染者が3041人まで拡大し、最多を更新する事態に至った。重症患者も増え、北海道と大阪府には医療施設へ自衛隊の看護師まで派遣せざるを得なくなった。
■医療崩壊の危機は、日に日に増している。この間の「ガースー」首相の無策に対する怒りは、募るばかりだ。謙虚に科学者や専門家の意見に耳を傾け、時には厳しい提言も尊重する姿勢が全く感じられない。
 米国やブラジルではコロナ禍の悲惨な事態が続く。これも大統領が科学者の助言を軽視し、科学的根拠のない言葉や対策を重ねてきたからだ。

■いま日本では医者や医療従事者、さらには専門家・有識者で組織された政府分科会までが、人の出入りを抑え感染を防ぐために、「Go Toトラベル」の一時停止を提言している。それにも関わらず、追加の3119億円もの予備費支出を決め、アクセルを吹かすというのだから呆れる。
 その理由が「Go Toトラベルによりコロナ感染が拡大したとのエビデンス(根拠)は存在しない」からだという。
■だが11月下旬には、東京大学など研究チームが「Go Toトラベル利用者はコロナへの感染リスクが高い」という調査報告を発表した。
 また英国の科学者たちも、コロナ・ウイルスのDNA分析をしたところ、旅行によって国の内外から持ち込まれたと結論づけ、警鐘を鳴らしている。
 こうした科学的根拠が出てきたにも関わらず、まだGo Toを続けるのなら、人命は二の次だと言っているのも同然ではないか。

■安倍・菅政権へと続く今の政治には、慰安婦問題への無反省、公文書改ざんや虚偽答弁の連発、歴史や科学を無視する「反知性主義」がはびこり、人命まで軽視する事態にあるのを直視しなければならない。
 日本学術会議が推薦した会員候補6人の研究者を、政権の恣意的な選別で任命拒否する事態は、その典型ではないか。しかも公開された内部文書には「外すべき者(副長官から)」との文字が手書きで記され、その下の部分は黒塗りになっている。
 都合の悪いエビデンスは、ノリ弁にして隠ぺいしてしまう。国会での説明も拒否し、事実すら抹消しかねないところまで来ている。
 政府の諮問会議にしたって、政権の志向する政策や方針に沿うような有識者を最初から組み入れ、諮る以前に方針が決まっているケースすらある。
■「国民のために働く内閣」と、大見得を切った「ガースー政権」、24日のクリスマスイブには発足100日を迎える。国民へのプレゼントがコロナ感染拡大では、支持率が43.1%、2カ月連続して急落するのも無理はない。(2020/12/13)
posted by JCJ at 07:55 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年12月06日

【今週の風考計】12.6─「政治とカネ」の腐敗、虚偽答弁は野放し、コケにされる国会

ついに安倍前首相の<桜を見る会・前夜祭>疑惑に、東京地検特捜部は捜査のメスを入れた。政治資金規正法違反の容疑で、「安倍晋三後援会」公設第1秘書への事情聴取のみならず、安倍前首相本人にも要請している。
時効が成立しない直近の5年間分だけで、参加者の会費で賄えなかった費用計900万円の補填、さらに会費分の収入も含めれば約4000万円が収支報告書に記載されていなかったことになる。
 かつ開催場所のホテル側は、補填された金額を記した領収書を、安倍氏が代表を務める資金管理団体「晋和会」宛てに発行していたことも判明した。

6年にわたって秘書が、補填について安倍首相に報告しないできたなど、ありえない。安倍氏自身、参加費の補填が公選法違反の「寄付」行為だという認識があったからこそ、記載しない扱いを是認してきたのは間違いない。
 安倍前首相は、国会での珍妙な答弁を1年間も繰り返し、「参加した各個人がホテルに直接払い込んだ。後援会としての収入、支出は一切ない」などのウソをついて国会を愚弄してきた。
「きわめて悪質な違反、強制捜査をしてもおかしくない」のは当然。だが安倍前首相は国会招致や委員会での説明すら拒否し、5日の国会閉会で逃げ切ろうとしている。
 焦点は安倍前首相に、違反事件に関し「共謀共同正犯」の適用が図れるかどうかだ。特捜部のメンツもかかる。もし適用されて立件され、有罪判決を受けたら公民権が停止される。

「政治とカネ」をめぐる腐敗事件は、安倍・菅政権、自民党では後を絶たない。またも自民党の吉川貴盛元農水相が鶏卵生産会社「アキタフーズ」(広島県福山市)の元代表から、在任中に3回にわたって総計500万円の現金を、大臣室などで受け取った疑惑が浮上。
「アキタフーズ」の元代表は、日本の養鶏「ケージ飼育」への国際的な批判を抑え込む対策や鶏卵価格が下落した際の補填を図ってもらう目的で贈呈したという。
 また彼は、元法相の河井克行被告と妻の案里被告とは懇意で、6年間で約2000万円の政治献金をしている。両被告の参院選買収事件に絡み、関係先として家宅捜索すら受けている。
 さらに所有する豪華クルーズ船で複数の農水族議員らを接待、現金を渡した疑いも指摘される。
受け取った吉川議員は、昨年の北海道知事選では党道連会長として、菅官房長官の意中の候補だった鈴木直道知事の擁立を主導。また9月の総裁選では、いち早く後継首相に菅官房長官を推し、選対の事務局長まで務めている。
 その功が認められ自民党の選対委員長代行に就いたが、自分への疑惑を受けて辞任、二階派の事務総長も返上、不整脈を理由にして入院してしまった。

二階派の「政治とカネ」をめぐるスキャンダルが目立つ。買収事件の河井案里議員を始め、カジノ汚職の秋元司議員も二階派。永田町でも眉をしかめる自民党幹部は多い。
 強引な選挙戦略も批判を浴びている。山口県での二階派・志帥会と岸田派・宏池会の血肉の争い、宏池会の牙城である広島県では菅首相や二階幹事長とも気脈を通じる公明党が、志帥会の応援を計算に入れ候補者を擁立する。
<菅・二階>コンビ政権は、コロナ感染の深刻な事態にもかかわらず、「Go To トラベル」実施を来年6月まで延長、見直しなど視野にない。
 さもあろう観光立国を目指す菅首相、全国旅行業協会会長でもある二階幹事長、業界から4200万円もの政治献金を受け、1兆3000億円の税金を「Go To トラベル」に計上するのだから。
さらに国土強靭化推進の名目で5年間15兆円の税金を注ぎこむ。その使い途は極めてあいまい、二階幹事長のサジ加減に委ねられている。「税金は使い勝手自由」とばかりに私益化されてはたまらない。<菅・二階>コンビ政権の恐ろしさが身に迫る。(2020/12/6)
posted by JCJ at 07:52 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月29日

【今週の風考計】11.29─「釣りキチ三平」など画業50年の矢口高雄さんを偲ぶ

漫画「釣りキチ三平」を始め数多くの名作を手掛け、11月20日、すい臓がんで81年の生涯を閉じた矢口高雄さん。心からご冥福をお祈りします。
 思えば筆者が矢口高雄さんと出会ったのは、今から27年前になるだろうか。『ボクの学校は山と川』(白水社)を文庫に収めたくて、東京目黒区自由が丘のご自宅をお訪ねし、2階の仕事場で懸命に矢口さんを口説いたときを思い出す。

その後、矢口さんや白水社の承諾を得て、実際に文庫化する作業に入り、打ち合わせを重ねていくうちに、文字だけでは飽き足らなくなった。
 思い切って提案した。矢口さんの漫画から本文の叙述にあったカットを、できるだけ多く取り入れたいと。矢口さんは頷かれ、文字叙述の魅力を倍加させることができた。1993年10月15日に刊行、今も版を重ねている。
続けて『ボクの手塚治虫』『ボクの先生は山と川』、さらには『蛍雪時代─ボクの中学生日記』(全5巻)を文庫に収載するなど、担当して10年近く「矢口ワールド」に浸ることができた。
 とりわけ矢口さんが、生まれ故郷の秋田・西成瀬村(現横手市)の山村や自然の厳しさを語るエピソード話は今でも耳に残る。また人の営みや山と川の姿を精彩なタッチで描く巧みさに驚かされてきた。
 それだけではない。いつも笑顔で人と接し、談論風発、愉快な仲間が良く集まる。

毎年7月20日前後の休日には、矢口さんの自宅の庭を会場にして「鮎祭り」が開催される。矢口さんが釣った天然鮎が庭の炭火炉で焼かれ、かぶりつきながら生ビールを飲む。里中満智子さんを始め数十人が、入れ代わり立ち代わり集まり、鮎に食いつき、飲む、喋る。
つまみにはナスの一夜漬けが人気だった。秋田では「なすがっこ」と呼ばれる。一口大で濃い紫色をした丸ナスは皮が薄く、漬けるとパリッと歯触りが良い。
 横手から送ってくる定番の一品が、砕氷を敷いた大皿に盛られている。ついつい手が伸びる、あの味は忘れられない。

「三平 四季を往く」.JPG手元に矢口高雄『三平 四季を往く─矢口高雄マンガ家生活25年記念画集』(双葉社)がある。1995年11月24日に記念パーティーが開かれ贈呈されたものだ。
 ページを開けば、<秋の章>─木の実落つ夜来の風や里の秋─と詠い、真っ赤に色づいたモミジ、夕日に映えて躍る鮎、ススキを背にして吊り竿を操る三平の姿が、色鮮やかに描かれ目の前に迫ってくる。
 そして今、矢口さんが創設に尽力した秋田県の横手市増田まんが美術館では、来年1月11日まで矢口さんの画業50周年を記念した企画展が開かれている。(2020/11/29)
釣りキチ三平.JPG
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2020年11月22日

【今週の風考計】11.22─武蔵野の湧水が作り出す美しい景観を堪能

「小春日和」とはいえ、歩くと汗ばむほどの陽気。この週末、東京郊外にある庭園を訪ねた。
 一つは滄浪泉園。JR武蔵小金井駅南口から連雀通りを西へ、高等学校の前に入口がある。武蔵野・国分寺崖線の「ハケ」という立地特性を活かし、湧水を取り入れ深山の趣そのまま生かした、実業家・波多野承五郎の別荘庭園だ。
まだ青いモミジで覆われた門をくぐり、丸石がびっしり敷き詰められた道を行くと、視界が開け東屋に着く。そのわきに水琴窟がある。ツクバイから湧水を柄杓で掬い足元の石積みにかける。キンコンと余韻を残して響く。

さらに急な細い道を蛇行しながら下ると、ブナやケヤキ、アカマツ、モミジなどの樹木の間から、きらめく水面が見えてくる。こんこんと湧く武蔵野の清水を湛え、モネが描く水連の池を思い出させる。
 クヌギ、コナラ、シイの黄色い葉が、木漏れ陽を浴びてキラキラ光りながら池面に散っていく。周辺の高い樹木の間からもれる光が、何本もの細い柱となって天から差し込んでいるような幻想にかられる。
 ふと高校生時代に取り組んだメルヘン劇、フーケーの「オンディーヌ」がよみがえり、妖精が躍っているような気配に、あたりを見回してしまった。

モミジが真っ赤に色づくのは、あと2週間後だという滄浪泉園を後にして、脇の坂を南へ下り、右折すると新小金井街道にぶつかる。目の前に「大勝軒」の看板が。あの元祖つけ麺で有名な店。すぐ飛び込む。懐かしい「特製中華そば」が空腹を満たす。
 午後は野川沿いの遊歩道を、ゆっくり西へ西へと歩く。カモが5匹ほど川べりで水遊び。しばらくすれば東経大の構内にある新次郎池、だがコロナ禍で閉鎖。がっかりしながら国分寺方面へ。

二つ目は殿ヶ谷戸庭園。大正時代に江口定條が<随♂>と名づけ、三菱財閥・岩崎彦弥太が別荘とした近代日本庭園だ。高低差を楽しむ回遊式林泉庭園と茶室<紅葉亭>がある。
 これまた国分寺崖線の「ハケ」を活かし湧水を取り入れた「次郎弁天池」の周辺には、モミジの木が多い。色づくと圧倒されるような景色が、高台にある<紅葉亭>から眺めると、眼下に広がるという。だが、またまたモミジは青いまま。
さらに武蔵国分寺跡に向かう道の周辺には、「お鷹の道」や「真姿の池」があり、湧水「ハケ」が群がる名所となっている。ここにも足を延ばしたいが、もう疲れた。またの機会に譲ろう。(2020/11/22) 写真:滄浪泉園内にある湧水池

滄浪泉園内にある湧水池.JPG
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2020年11月15日

【今週の風考計】11.15─コロナ・ワクチンへの過剰な期待に潜む陥穽

■国内のコロナ感染者が、新たに1日1700人を超え、週末3日連続で過去最多を更新し、全国で11万8千人・死者1900人となった。コロナ感染拡大「第3波」の襲来に他ならない。
 冬の乾季が進むにつれ、感染者の受け入れや重症者の病床確保など、医療体制のひっ迫は深刻な事態をもたらす。「Go Toトラベル」の中止も含め、拡大防止への対策が急がれる。

■ここにきてコロナ・ワクチンへの期待が急速に高まる。米国のファイザー社が開発しているワクチンの治験結果が公表され、有効性がはっきりしたという理由で、その輸入も含め、菅首相が「来年前半までに全ての国民に提供できる数量を確保する」と宣言した。
 すでにワクチン購入費として予備費から6714億円の支出を閣議決定している。ワクチンを国の全額負担で接種できるよう予防接種法改正案も審議入りした。
■とりわけ頭痛や倦怠感、筋肉痛など副作用のリスクと予防効果との兼ね合いが重要な課題であるだけに、「安全性、有効性が確認され、承認されたワクチンについて、本人の意思に基づき接種してもらう」との厚労省の考えは、大切にしたい。

■現在、世界では合計200種類以上のワクチンの開発が進んでいる。そのうち40種類ほどが人間を対象とした治験の段階に入っている。だが安全性に関しては100パーセントの保証は、いまだ一つとしてない。
 かつワクチンの保存はマイナス70℃の環境が必要なため、保管・運搬などに困難が生じやすく、どこでも接種できるかとなれば、そう容易ではない。
■ワクチンを接種したからといって、体内に免疫ができるまでには6週間ほどかかる。ワクチンが実用化されても、ソーシャルディスタンスを保ちマスクの着用は続けなければならない。世界中で効果を発揮するには、数年かかるという。

■いま米国は、コロナ感染者が1日に16万人を超え1080万人、死者は24万人にのぼる。世界で最悪のコロナ汚染国だ。
 その原因を作ったトランプ大統領が、大統領選での敗北は認めず「ワクチン配布」を声高に叫んでいる。ただし民主党知事のニューヨークは除くなどと、ここにも党派対立・差別を持ち込む始末だ。
■国民皆保険の「オバマケア」の廃止を説く張本人であるトランプ大統領が、コロナに感染し治療に要した費用は総額10万ドル(約1000万円)にのぼるという。
 米国民は高い治療費の支払いに苦しんでいる。トランプ大統領だけは国費で治療とくれば、誰だって頭にくるのは間違いない。敗北の要因の一つであるのは間違いない。(2020/11/15)
posted by JCJ at 07:33 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月08日

【今週の風考計】11.8─羽田増便でオスプレイとの衝突・落下事故の危険!

米国から海兵隊型オスプレイ17機も爆買い″し、陸上自衛隊に配備される同機の試験飛行が始まった。
 千葉県・木更津の駐屯地に暫定配備されている2機のうち1機が、駐屯地上空でホバリングを行い、10日からは駐屯地の外に出て東京湾や相模湾の上空で飛行モードへの転換、さらに来年1月からは関東一円での本格的な操縦訓練が展開される。
 かつ木更津駐屯地にオスプレイ17機がそろった場合、離着陸回数は1日に15回、年4500回となる見通しだという。騒音だけでなく、増便となる羽田発着の飛行機とのニアミスや落下事故の危険性は、いやがうえにも増す。

もともと陸上自衛隊のオスプレイ17機は、長崎県・佐世保にある相浦駐屯地に設けた「水陸機動団」すなわち自衛隊版海兵隊と連携し、「南西諸島」への出撃に一体となって活用する計画に組み込まれ、佐賀空港への配備が前提だった。
 しかし地元との協議が整わず、まず2機を木更津駐屯地に5年という期限付きで暫定配備した。
 佐賀空港は自衛隊とは共用しないことが明記され、かつノリ養殖にかかわる有明海に面し環境汚染・海への墜落など、事故への不安は尽きない。佐賀空港へのオスプレイ配備もかなわず、木更津に恒久配備となる危険性は高い。現に整備能力を3倍、格納庫も倍贈、10機は配備できる体制を整えている。

そもそもオスプレイは陸上自衛隊に必要不可欠な装備なのか。木更津から2000キロも離れた「南西諸島」へ出撃するには、厄介な空中給油が必要になる。災害地への救援にというが、プロペラの風害などで、吊り下げ救助はできないといわれる。
 しかもオスプレイをめぐる重大事故は数知れず、原因も解明されていない。米国では「ウィドウ・メーカー」(未亡人製造器)の汚名が付けられている。だからこそ米国以外の世界の国々は、オスプレイの購入には踏み出さないのだ。
 なんと日本だけが前トランプ大統領に媚びてオスプレイ17機を爆買い″した。購入費は部品なども含め計約30億ドル(約3600億円)、世界の笑いものになっている。

自衛隊のオスプレイだけが問題なのか。いや日本の空を支配している米軍のオスプレイこそ重大だ。米軍は空軍・海軍・海兵隊用の各種オスプレイを、沖縄・普天間飛行場に海兵隊型24機、東京・福生にある横田基地に空軍型5機、さらに5機を追加して配備する。海軍型オスプレイも神奈川県・厚木基地に配備するという。
 先月下旬には、横田基地から米軍オスプレイに自衛隊幹部が塔乗し、四国沖の海上自衛隊の護衛艦「かが」に着艦し、日米共同統合演習「キーン・ソード」に参加している。
 事故も多発している。普天間基地を飛び立ったオスプレイが、空中給油訓練中にプロペラが破損して海岸に不時着・大破した。伊計島の海岸にオスプレイが落とした重さ13キロもある部品が漂着。
 横田基地でもオスプレイからの降下訓練でパラシュートが住宅地域の施設に落下、潜水用の足ヒレが福生市の牛浜駅の駐輪場近くに落ちている事故が続く。さらに横田基地から三沢基地へ飛来するオスプレイの数は、19年夏までの1年間で計40回、しかも米軍からの通告は一切ない。

東京23区を含む首都圏上空に、米軍優先の「横田空域」がある。そこをわが物顔に安全性に疑問があるオスプレイが飛び交う。日本の航空機は、米軍の許可なしには飛べないため、東京上空は超過密状態だ。
 そこへ羽田空港の増便により、ますます騒音は増え、落下事故や空中衝突の危険が高まる。日本にはオスプレイはいらない。(2020/11/8)
posted by JCJ at 08:01 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月01日

【今週の風考計】11.1─核廃絶に向けて75年─実る人類史の成果に乾杯!

3月3日の「スーパーチューズデー」から、ちょうど8カ月、トランプ対バイデンの決戦は、この3日に決着がつく。米国のコロナ感染者908万人・死者23万人、世界最悪の状況でも、トランプ大統領は手立てをとらず、バイデン候補へ罵詈・雑言の攻撃を浴びせ続けてきた。
あげくに落選しても結果を認めず、裁判に持ち込む事態まで予測されている。急きょ強引に連邦最高裁判事にバレット氏を送り込んだ結果、最高裁は保守派が3分の2を占める。
 最後のあがきに翻弄され、ホワイトハウスは大混乱に陥るのは間違いない。民主主義の根幹が崩れた米国などあてにせず、世界は平和に向けて大きなうねりを作りだしている。そこに目を向けよう。

核兵器禁止条約の批准が50カ国・地域に達し、史上初めて核兵器を禁止する国際条約が、来年1月22日に発効する。
 広島・長崎への原爆投下から75年を経て、「非人道性」や「核なき世界」を訴え続けてきた被爆者の願いが、条約誕生への原動力となった。さっそく政府に対し条約への署名・批准を求める署名活動が全国各地で展開される。

第2次大戦直後に設立された国連は、1946年1月10日、初の総会で採択した第1号決議が「核兵器など全ての大量破壊兵器を各国の軍備から廃絶すること」を求める内容であった。
 決議を提案したのは米国、ソ連、英国、フランス、中国、カナダの6カ国。当時、唯一の核保有国だった米国でさえ、広島・長崎の非人道的な被害を目の当たりにして、核廃絶を求めたのだ。
その後、米ソ冷戦など東西の緊張から、核兵器の開発が加速し、2020年1月現在、核兵器保有数は米国6185、ロシア6500、英国200、フランス300、中国290、世界全体で1万3400にまで膨れあがった。

核廃絶という目標はどうなったのか。1970年3月に核不拡散条約(NPT)が発効したものの、すでに核を保有していた米国、ソ連(ロシア)、英国、フランス、中国の5カ国は除外し、以外の国には「原子力の平和利用」を除いて、核保有を禁止にした。
この核をめぐる不平等がネックとなり、NPTは30年後になって、核保有国に「自国の核兵器の完全廃絶を達成する」よう、明確な約束を求めることとなった。それでも核拡散の状況は改善されず、かつ米国・ロシア・中国は核兵器を改良し質的な核軍拡に突き進んでいる。
 実戦配備に適した核の小型化によって、核使用の脅威は高まっている。米国とロシアの中距離核戦力(INF)廃棄条約も失効するなど、核なき世界は遠のくばかりだ。

だが核兵器禁止条約が発効すれば、核保有は「国際法違反」となり核廃絶への圧力となるのは確実である。
 日本政府は「唯一の戦争被爆国」でありながら、米国の「核の傘」に身を委ね、「橋渡し」役などと詭弁を弄し、核兵器禁止条約に背を向ける。国際的にも見放されるのは間違いない。(2020/11/1)
posted by JCJ at 07:46 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月25日

【今週の風考計】10.25─ベラルーシの「勇気ある女性」3人とタイの「黒シャツ」3本指

ロシアとポーランドに挟まれたベラルーシ共和国の首都ミンスクで、ルカシェンコ大統領の選挙不正を糾し退陣を求める大規模デモが、10週連続して日曜日ごとに開かれ、数万人が参加している。
 治安部隊が浴びせる放水やゴム弾にもめげず、「白・赤・白の旗」を掲げ、「パルチザンの行進」と名づけたデモが繰り広げられている。日本でも連帯のデモが始まった。
いま66歳のルカシェンコ大統領は、1994年に就任以来、この8月には不正選挙で6選を果たし26年間も君臨する。
 「ヨーロッパ最後の独裁者」が組閣する「残忍な政権」の弾圧に抗し、人権擁護と民主化を追求している活動には頭が下がる。
 EU議会は、活動のリーダーであるチハノフスカヤ氏、支援するノーベル文学賞受賞者アレクシエービッチ氏、当局に拘束された音楽家コレスニコワ氏らに、人権擁護に貢献した人に贈る「サハロフ賞」を授与した。「勇気ある女性」3人である。退陣に応じなければ26日からはゼネストに入るという。

眼を東南アジアに転じよう。タイでもプラユット首相の退陣と民主化を求めるデモが拡大している。
 これまた66歳のプラユット首相は、2014年の軍事クーデターを主導し、昨年3月の総選挙で民政に移行したとはいえ、そのまま首相の座につき政権を維持している。
 だが経済の低迷は続き格差は拡大し、さらに野党「新未来党」への解党命令や市民に対する軍兵の無差別殺害事件も起き、バンコクでは連日、2万人規模のデモが続いている。
とくに注目されるのは、「黒シャツ」を着た若者たちが3本の指を掲げ、これまでタブーとされてきた王室批判、すなわち王室関連予算の透明化や不敬罪・最長15年の禁錮刑の見直しなど、王室改革を求める行動にまで踏み込んでいる点だ。
ワチラロンコン国王は68歳、ドイツの高級ホテルを借り切って「ハーレム」を作り、若い女性20人ほどと一緒に暮らしている。全て税金で賄われている。
 しかも国民投票で承認された新憲法案を拒否し、政府に条文の修正を要求するなど、政治への介入は度を超す。国民からの信望は薄れる一方。王室改革を求める声が大きくなるのも無理はない。

アフリカでも大西洋・ギニア湾に面したナイジェリアで、汚職撲滅や市民の安全を求めるデモの隊列に、治安部隊が発砲し死者は50人を超す。長期に市民を虐待してきた警察の特殊部隊(SARS)への怒りは頂点に達し、2週間ほど前から各地で大規模なデモが行われていた。
 デモの拡大を受け、第2次ブハリ政権は首都ラゴスに無期限の都市封鎖を発令した。その数時間後、平和的なデモをしていた約1000人に向けて、またも武装した男たちが発砲した。
政権による人民弾圧に限らず、イエメン内戦、ナゴルノ紛争など、やっている時か。いまやコロナ感染者は世界で4220万人・死者114万人。全てが協力して、コロナウイルスと闘うのが先だろ!(2020/10/25)
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2020年10月18日

【今週の風考計】10.18─菅政権1カ月:<2人の杉田>が象徴する監視・差別の怖さ

首相動静によると、朝は6時45分から官邸内を散歩。1時間後には永田町のホテル内レストランで首相好みの有識者と朝食懇談。そして昼も夜も連日、赤坂や紀尾井町の料理店で政官財の関係者と会食。午後9時前後には議員宿舎に帰宅。
 会食や面会で確認された民間人は70人を超えるという。だが9月16日の就任会見から、1カ月たっても記者会見は開かず、所信表明すらない。18日からはコロナ感染者が日本の4倍35万人もいるインドネシアなど、4日間も外遊する。

この間にやることがエゲツナイ。日本学術会議が推薦した名簿を「見ていない」のに、6人を任命拒否。政府方針に異を唱えた学者を排除し、憲法が保障する「学問の自由」を侵害する暴挙に手を染める。
 首相は「総合的、俯瞰的に決めた」と、説明にもならぬ説明ではぐらかす。あげくに自民党は「任命拒否」から目をそらすため、学術会議の制度見直しに論議をすり替える。
 政権の意に沿えば重用し、盾突けば冷や飯を食わせる―安倍政権下での強権的な手法まで、菅首相は「継承」する。森友問題の再調査は拒否。桜を見る会は中止する一方、サクラ疑惑にはフタをする。

その陰で動く、官邸内に君臨するもう一人の人物の存在がクローズアップされた。杉田和博官房副長官である。学術会議105人の推薦名簿から排除する6人を選別、任命拒否の筋書きを用意し、決裁前に菅首相に報告、名前は確認されていたことが明らかとなった。
杉田官房副長官は、東大法学部卒、警察庁で警備・公安畑を歩み警備局長を務めた“公安のドン”といわれるエリート。2012年の第2次安倍内閣が誕生と同時に官房副長官として官邸入り。菅政権誕生後も引き続き同ポストを務めている。
官房長官時代から官僚支配に力を注いできた菅首相だが、その中心的役割を担ったのが、杉田官房副長官である。2017年からは官僚人事を掌握する内閣人事局の局長も兼務。これまでに公安警察を使って官僚を監視下に置いてきた。
 さらには政権と敵対するメディアや政権批判の学者・知識人にも、介入の隙を伺い監視の目を光らせている。代表的なのがNHK「クローズアップ現代」のキャスター降板事件だ。また東京新聞の望月衣塑子記者の身辺を、公安が探っていたというのも有名な話。

さてもう一人、杉田姓を持つ人物がいる。自民党の杉田水脈・衆議院議員である。女性の身でありながら、女性への性暴力に関連し「女性はいくらでもウソをつける」と発言し、総スカンを食らっている。
 これまでにも性的少数者のカップルに「生産性がないから問題だ」などの差別発言や伊藤詩織さんへのバッシングを繰り返してきた。
 杉田議員は、17年総選挙に際し安倍首相の推薦で「維新」から自民党に鞍替えし、比例中国ブロック単独候補に格上げして当選。
「性暴力の根絶」を掲げる菅政権・自民党にもかかわらず、女性への差別発言を繰り返す自党の議員に、厳しい対応するどころか、「本人の言葉づかい」の問題と矮小化する。
 さらには「フラワーデモ」主催団体が13日、杉田議員の議員辞職などを求める13万6000筆の署名すら、受け取りを拒否する始末。
 <2人の杉田>が示す、国民に対する監視と差別を放任する仕組みは、はからずも菅政権の本質をあぶりだしている。(2020/10/18)
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