2020年03月29日

【今週の風考計】3.29─猫も感染した新型コロナウイルスの脅威

新型コロナウイルスの猛威は、ついにWHOが「何百万人の死亡もある事態に」と警告を発した。これまで新型肺炎を引き起こしているウイルスは、コウモリの体内で培養され、ヘビやハクビシン、ヒトコブラクダなどの中間宿主を経て、ヒトに感染するようになったといわれている。
 しかし最新の研究によれば、新型コロナウイルスの中間宿主はセンザンコウではないかとの研究も発表されている。
センザンコウは哺乳類で南アジアから中国、台湾、アフリカなどに分布し、中でもマレーセンザンコウは中国南部で食用にされ、そのウロコはリウマチに効く漢方薬として珍重されている。
 中国市場の需要によって密猟され、個体数が激減して絶滅危惧種に指定されている生物だ。センザンコウの体内ウイルスを調べ、その分子構造から治療対策に生かすといい。

さらにペットの猫にも新型コロナが感染するという事実が判明した。これまで飼い犬への感染は報告されていたが、世界で初めてベルギーで飼い猫への感染が確認された。まさに飼い主である人間から猫へ、コロナウイルスを感染させた珍しい事例だ。
 となれば<人間からペットへ、ペットから人間へ>の悪循環だって起きうる。「特に自分自身が感染している可能性がある場合は、ペットとの濃厚接触を避け、自分の顔をなめさせるような行為も控えるべきだ」としている。いや、もし知らずに感染したペットを抱いて、顔でもなめられたら、自分も感染する脅威が待ち受ける。まさに犬・猫・人類が共有するパンデミックとなりかねない。

対策はないのか。新型コロナウイルスを殺す薬はないのか。いま注目されている治療薬は「アビガン」だ。新型のインフルエンザが流行した場合に備えて、国内に200万人分が備蓄されている。
 さらに抗エイズウイルス薬の「カレトラ」、エボラ出血熱の治療薬「レムデシビル」なども、ウイルスの増殖を抑える効果が期待されている。
4月には各国で有効性が確認され、その投与が進めば、一定の抑制効果を発揮することができる。だがこれらの既存薬は検証例が少なく、副作用の問題もある。どうしても新型コロナウイルス感染症の克服には、ワクチンや新薬の開発が求められている。
 EUや 英米などの製薬企業や研究所が連携してワクチンの臨床試験に踏み出し、ワクチンの生産を目指している。日本でもワクチンの開発を急ぎ、「順調に進めば、ヒトでの臨床試験を今年8月までに開始するため、当局と協議したい」(田辺三菱)という。待ち遠しい。(2020/3/29)
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2020年03月22日

【今週の風考計】3.22─<3・11フクシマ>と東京オリンピック

◆新型コロナウイルスが世界各国に拡大し、4か月後に迫る東京オリンピックにも暗雲が広がっている。日本国民の7割が期日に「開催できない」と、世論調査に答えている。
 今から6年半前の2013年9月7日、安倍首相がIOC総会で行った、「フクシマについてはアンダーコントロールされている。東京オリンピックは安心安全」とのトンデモ演説を思い出してほしい。あらためて、そのフェイクの重大さを忘れてはならない。

◆2011年3月11日に起きた東日本大震災・福島原発爆発事故─「3・11フクシマ」からの復旧もままならないなか、嘘と金をばらまいて、無理筋で招致した東京オリンピック。先日、麻生財務相が発言した「呪われたオリンピック」も、コロナは去っても放射能は残る「3・11フクシマの逆襲」と捉えたら正解かもしれない。
◆実際に、破損した福島原発の原子炉は、今もって「アンダーコントロール」などされていない。かつ漏れ出る放射性廃水は巨大なタンクに貯蔵されたまま。満杯で収容しきれず、2022年からは福島の海から太平洋へ放出する計画だ。放射性残土を詰めた20万袋に及ぶ<フレコンバッグ>も、いまだに野ざらしになっている。

◆かつ汚染廃棄物の処理費や貯蔵費が想定以上にかさみ、2014年から年間350億円、2017年からは470億円、2020年からは700億円、それ以降も、ますます膨らむという。
 政府はその財源ねん出のため、再生可能エネルギーの普及などに使い道が限られている税金を、流用できるよう法改正に躍起だ。本来の自然エネルギー開発費を、まさに原発政策の失敗の穴埋めに充てるとは、言語道断である。
◆さらにテロ対策の新基準が導入されて以降、各地の原発は再稼働に向けた安全対策費や施設の維持費、廃炉費用がかさむ。その総額は電力11社で約13兆5千億円という。もはや原発に依存せず、再生可能エネルギーを拡大するのは、世界の流れだ。
 関西電力の汚職まみれの<原発マネー>3億6千万円の還流といい、電気料金の値上げの裏で役員報酬カット2億6千万円の補填など、信じられない退廃の源となっている「原発」、元から立たなきゃダメ。

◆それにしても福島で、7月22日、東京オリンピックのソフトボール試合が、東京での開会式に先駆けて2日も早く開かれる意味は、どこにあるのか。またも「復興神話」を広げたい安倍首相のパフォーマンス? ゴメンこうむりたい。(2020/3/22)
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2020年03月15日

【今週の風考計】3.15─休校の孫2人を預かって痛切に感じる事

安倍首相が突然「小中高の一律休校」を指令してから、1週間たった8日、都心に住む息子から小学校に通う2人の子供を預かってほしいと、泣き言が入った。
 共働きの中やりくりしてきたが、どうしても昼間の面倒が見られない事態になったという。郊外の拙宅で預かるのを承諾し、この1週間、老夫婦で面倒を見てきたが、3度3度の食事だけでなく、宿題をやらせゲーム時間を抑えるなど、その大変さが実感できた。
 預ける場所や親類のいない親は、どれほど苦しんでいるか、察して余りある。

まず朝、2人の孫の体温を測り、宿題の進捗を報告せねばならない。小学3年の孫には、国語の漢字書き取り、童話の感想文。算数はドリル、理科はキッドで「おもちゃ作り」、社会はタブレットを使った新聞づくりなどが並ぶ。
これを2週間ほどで、こなさねばならないのだから、老爺心ながら子供のシンドサは思いやられる。さらに宿題一覧表の最後には、「あまった時間は読書やスタディアプリなどを使って学習しましょう。おうちですごせる工夫をしましょう。みんなで協力してこのくなんをのりこえましょう!」の一文まで書かれている。

小学3年の孫に宿題をやらせるうえで最も苦しんだのが、貸与されたB5版タブレットの小さい画面を使っての新聞づくりだった。文字入力の仕方から、割り付け、写真の取り込み、見出しづけの工夫、どれも中途半端な理解をしている孫だけに、時間のかかること甚だしい。
 四苦八苦、キーッとなる孫をなだめながら、やっと仕上がった新聞は、タブレットから担任の先生に直接送信する。いまやパソコン教育がここまで進んでいることに驚かされた。
と同時に3年生すべてが、ここまでタブレットを使いこなせるのか、疑問に思った。授業についていけず、親も手助けできなければ、落ちこぼれが進むのは必然だ。子供をパソコンン教室に通わせている親もいるという。その費用が払らえる親ならいい。貧しき者はどうなる。
 誰もが等しく教育を受け、能力が身につくよう、学校もカリキュラムへの配慮や落ちこぼれをなくす補習教室の開催など、検討してしかるべきだ。

おっと学校から「読書」の宿題もあった。図書館は閉鎖されているので、小生の書架から探し、2冊の本を引っ張り出した。かしわ哲『茅ケ崎のてっちゃん』(講談社)と中沢啓治『はだしのゲン』(全8巻 汐文社)。小学3年の孫は手に取って、字の多い本より、後者のマンガを選んだ。1週間で4巻まで読み終えた。きっと何か心に残るものがあるだろう。(2020/3/15)
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2020年03月08日

【今週の風考計】3.8─ジェンダー平等へ「#手を取り合おう」

3月8日は国際女性デー。国連開発計画が、世界人口の8割を占める75か国で、女性たち自身も含めてジェンダー調査を行ったところ、10人中9人が女性に対する偏見や先入観を持っているとの報告を発表した。
 とりわけ性差別的な偏見の割合が多かったのは、ワースト1位のパキスタンで99.81%、続くカタールとナイジェリアが99.73%だった。ジンバブエでは96%の人が、女性への暴力を容認できると答えている。

日本はどうか。女性に何らかの偏見を持つ人が、男性では73%、女性では65%いるという。先進7か国では、日本が男女ともに最高の割合でワースト1位となっている。
 驚くのは、日本の女性は女性に偏見を持つ割合が高いという現実である。そこには、これまでの古い社会通念や家族観が反映しているのは間違いない。「女は家にいるもの」「女性は男性の3歩後ろを歩く」とか、「社会のことには口を挟まない」などと説き、また積極的に立ち上がる女性に対し、女性の中から「足を引っ張る」言動も起きている。
 いまだに目に見えない枷が女性の間で浸透し作用しているのだ。もちろん男性たちが、こうした風潮を助成している責任の重大さは計り知れない。

昨年12月、世界経済フォーラムが発表した「ジェンダー・ギャップ指数」では、なんと日本は対象国153カ国中121位、過去最低ランクを記録した。106位の中国、108位の韓国よりも劣る。
 分野別にみると、男女間の年収格差108位、管理職の男女比の差131位。最も深刻なのは政治参画の順位で、国会議員の男女比では135位、閣僚の男女比では139位、安倍政権下では19人の閣僚中、女性はわずか3人、世界のワースト10に入ってしまった。
 昨年11月、フィンランドで世界最年少・34歳の女性首相が誕生している。2年半前にはニュージーランドで、当時38歳の女性が首相に就いている。日本は世界の流れから遠く引き離されている。
いま大事なのは、女性に靴のヒール6センチとか4センチのパンプスなどと義務づけるより、スニーカー全てOKを求める「#KuToo」の取り組みが象徴するように、身近なところから職場内のジェンダー平等を求める運動を、着実に広げていくことだろう。

3月に入って、新聞やテレビ、ウエブメディアなど10社が会社の枠を超えて連携するプロジェクトを始めた。「#手を取り合おう」「#メディアもつながる」のハッシュタグをつけて、女性の地位向上を目指し、だれもが尊重され、自由に生きられる社会に向けて、企画や情報を発信している。ここからシスターフッドが広がるよう応援したい。(2020/3/8)
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2020年03月01日

【今週の風考計】3.1─NO! 安倍政権の思いつき・ゴリ押し手法

★「なぜ、なぜ、やらないの? なんでだろー」の声が満ち溢れている。厚労省の新型コロナウイルスのPCR検査は1日平均約900件。1日約3800件の目標に遠く及ばない。韓国では延べ4万件以上も実施。さらに中国から無償提供された1万2500人分のPCR検査キットも棚ざらし。
 政府は「感染者の数字」を抑えるに躍起で、民間の知見者の意見も仰がず、国民を不安と混迷に陥らせたままだ。

★保険適用も遅々として進まず、いまだ休業補償もあいまいだ。韓国では14日以上に及ぶ入院隔離者に対し、4人世帯で月123万ウォン(11万4千円)の生活費を支援する。またシンガポールは新型コロナ対策に約5000億円、台湾は約2200億円を計上している。日本は153億円で事足りるとし、新規予算すら組もうとしない。
 その上、突如として小中高の全国「一律休校」の号令だ。学校は混乱し、生徒や保護者らの不安は募る。休校ショックは親ばかりでなく、労働の現場にまで広がる。

★さらには検察官の定年延長を決める政府や法務省の手法もゴリ押し極まりない。「法の番人」を自認する法務省が、「検察庁法」を口頭採決で改変する暴挙に手を貸すとは、「なんでだろー」。
 2月7日に定年退官する東京高検検事長をめぐって、官邸の意向を受けた法務省や人事院は、急遽、1月の半ばになって6か月間の定年延長を画策していた。その狙いは現在の東京高検検事長は<官邸の守護神>とも呼ばれ、7月には彼を次期の検察トップ・検事総長に据えたいからだといわれる。
 また自らの政治資金規正法に抵触する「桜疑惑」や「カジノ汚職」に連なる側近政治家たちに、特捜検察の刃が向かわないようにするためと見られている。
★1981年当時の政府見解では、「檢察官の任免については、一般の国家公務員とは異にすべきであり、国家公務員法は適用されない」とされ、それが踏襲されてきた。にも関わらず急遽1月末になって、安倍首相は「一般法である国家公務員法が適用される」と変更し、強引に定年延長を閣議決定したのだ。

★その後の法務大臣や人事院の答弁は、「つじつま合わせ」の発言訂正や「口頭採決」なる荒唐無稽な言いわけなど、噴飯ものだ。
 検察官の中からも「今回の定年延長で、国民から政権と検察の関係に疑いの目が向けられている。検察は不偏不党、公平でなければならない。この人事について国民に丁寧な説明をすべき」との声が挙がっている。
 霞が関からの反乱や起こるべし。いや永田町の自民党の先生方、国を亡ぼすまで安倍さんにつき従うのですか。(2020/3/1)
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2020年02月23日

【今週の風考計】2.23─千利休と古田織部が辿った数奇な運命

4年に一度の閏日の前日28日は「利休忌」でもあり、また「織部の日」でもある。まず「利休忌」で偲ばれる千利休は、武野紹鴎らに茶の湯を学び、信長、秀吉に仕えながら茶道の基となる「わび茶」を完成させ、<茶聖>とも称された。
 秀吉に理不尽な切腹を命じられ、天正19(1591)年2月28日自刃、享年70。今でも切腹は歴史的事実として流布している。

だが、1年前に読んだ中村修也『千利休─切腹と晩年の真実』(朝日新書)では、利休は切腹していないとの新説を打ち出している。というのも利休没後とされる1592年の秀吉の書状に、肥前・名護屋城(現在の佐賀県唐津市)で利休の茶を飲んだと書いてあるのを根拠に、利休は九州にかくまわれたのではないかという。
 秀吉が「朝鮮征伐」のために築いた名護屋城跡から、茶室の遺構が発見されている。しかも見つかった茶室は素朴でつつましく、利休が好んだ茶室にそっくりだったと推測されている。
2年前だったか、この名護屋城跡を見学したとき、高台から見晴らす玄界灘の沖には、青い海のかなたに対馬から釜山まで見通すことができた。こうした展望のある居室に座す秀吉は、思わしくない朝鮮の戦況に心鎮めるため、利休の点てる「わび茶」を喫したとの想像は、否が応でも真実味を帯びて広がってくる。
思えば千利休に魅せられて、唐木順三『千利休』(筑摩叢書)、野上弥生子『秀吉と利休』(新潮文庫)、井上靖『本覚坊遺文』(講談社文庫)、さらには山本兼一『利休にたずねよ』(PHP文芸文庫)など渉猟してきたが、中村修也さんの新説には驚かされた。

さて「織部の日」だが、千利休亡き後、秀吉の茶頭となった古田織部が、慶長4(1599)年、自分で焼いた茶器を用いて京都・伏見で茶会を開いた日に当たる。今から33年前に岐阜県土岐市が「織部の日」と制定した。
 ともあれ安土桃山時代に活躍した「へうげもの(瓢軽者)」戦国武将が、後に茶の湯の“天下一の宗匠”となるのだから驚く。だが織部は<大阪冬の陣>頃から徳川方の軍議秘密を豊臣側に漏らしたとして捕らえられ、慶長20(1615)年に切腹、享年72。流布されている千利休の運命と、くしくも同じ道を辿った。
興味津々、最新刊の伊東潤『茶聖』(幻冬舎)は、千利休をどう描いているのだろうか。利休と秀吉、二畳の茶室でどんな会話や駆け引きが展開されたのだろうか、さっそく読んでみよう。(2020/2/23)
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2020年02月09日

【今週の風考計】2.9─いまも思いだす石牟礼道子さんのオーラ

◆『苦海浄土─わが水俣病』(講談社)の出版から50年、著者の石牟礼道子さんが90歳で亡くなって、この10日で丸2年になる。石牟礼さんは、チッソという会社が熊本不知火の海″を有機水銀で汚し、人間と自然を破壊した水俣病のおぞましさを告発し続けてきた。かつ苦しむ人々に寄り添い、一緒に悶えながら、見捨てられた魂の救済に生涯をささげてきた。
◆8日に開かれた講演会<石牟礼道子の世界>に参加し、語る米本浩二さんの話に聴き入りながら、あらためて「人間の尊厳とは、命の回復とは、…」考えこまざるを得なかった。
 水俣病の発生が公式に確認されたのが1956年5月、いまから64年前だ。『苦海浄土』の第三章<ゆき女きき書き>の「もう一ぺん人間に」と題された掌作の中に、次のような「ゆき」がつぶやく叙述がある。

◆<人間な死ねばまた人間に生まれてくっとじゃろうか。うちゃやっぱり、ほかのもんに生まれ替わらず、人間に生まれ替わってきたがよか。うちゃもういっぺん、じいちゃんと舟で海にゆこうたる。うちがワキ櫓ば漕いで、じいちゃんがトモ櫓ば漕いで二丁櫓で。漁師の嫁御になって天草から渡ってきたんじゃもん。>

◆「ゆき」が語る、この「じいちゃん」茂平も、そして不知火の海″沿岸の住民も、長い間なにも知らされずに、サワラやコノシロなどの魚を朝昼晩とわず食べてきた。それが猫の狂い死にから漁民の手足の痺れへと広がり、ついには足腰が立たず、目も弱くなり、言葉ももつれるようになった。まさに神経系疾患を発症し「水俣死民」を誕生させたのだ。
◆他人の苦しみに深く感応し、見過ごせない石牟礼さんは「悶え神」として患者に寄り添い、漆黒ののぼり旗に白抜きで「怨」の文字を刻み、水俣病闘争に「加勢」する。
<水俣病事件の全様相は、…公害問題あるいは環境問題という概念ではくくりきれない様相をもって、この国の近代の肉質がそこでは根底的に問われている>
との認識に立ち、3年にわたって水俣―東京間を往復し、座り込みや「死民」のゼッケンをつけての街頭行進に投入する。しかし金銭的解決に矮小化されていく道筋に、満たされぬ石牟礼さんの「魂」は、新たな地平に向けて歩みだす。

◆さて『苦海浄土』が講談社文庫に収載・刊行されたのは、1972年12月15日。「水俣病闘争」の激しい時期だ。この文庫化作業にあたった女性編集者から、「石牟礼さんは、原本に赤字をいっぱい入れてきた。それを整理して送り返すと、またも赤字を入れてくる」苦労を聞いた。それだけ文字に「魂」を、入れ込もうとしていたことが分かる。
◆その後、彼女から引き継いで担当することになり、重版の連絡や読者からの問い合わせなど、電話や手紙でコンタクトしていたが、1990年代中頃だったか、石牟礼さんが講演で上京した折、お会いすることになった。短い時間、何を話したかなど問題でなく、石牟礼さんの体から、何かオーラのような光が発しているのを感じてしまい、身がすくんだことが、今でも忘れられない。(2020/2/9)
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2020年02月02日

【今週の風考計】2.2─危ない! 「豚コレラ」に「ピーファス汚染」

新型肺炎に対するWHOの動きにヤキモキしていたが、ついに30日「緊急事態宣言」を発した。だが遅きに失したとの批判は免れない。
 この1週間ほどで中国国内での感染者は1万3700人を超え、死者も304人と幾何級数的に増大し、国外でも26カ国・地域に拡大している。
日本では感染者20人、人から人への感染が確認されている。やっと政府は「指定感染症」と定め、入国時には診察検査を行い、従わないときは罰則も課すこととなった。さらに強制的な入院や一定期間の休業指示も可能になる。合わせて感染予防と受け入れ態勢、診療・医療へのフォローが、きわめて緊急になっている。

「新型コロナウイルス」だけではない。遅きに失しないよう、緊急にとり組まねばならぬウイルス対策は他にもある。群馬・岐阜・沖縄など、日本で広がる「豚コレラ」(CSF)への対処だ。先月末に成立した家畜伝染病予防法によって、「豚コレラ」の蔓延を防ぐ「予防的殺処分」が可能になった。
 いまアジア地域に広がる「アフリカ豚コレラ」の侵入は、有効なワクチンが存在しないだけに、なんとしても防がねばならない。

もっと深刻なのは、後手に回っている「ピーファス(PFAS)汚染」への対策である。日本の米軍基地から高濃度の有害物質がダダ洩れし、地下水の汚染や飲料水に深刻な影響をもたらしている。
 これまで指摘されてきた沖縄の米軍基地周辺で深刻化する有機フッ素化合物「ピーファス」(PFAS)による地下水の水質汚染が、東京の横田基地周辺でも確認されたのだ。
 東京都は昨年1月、横田基地に近い4カ所の井戸を調査。立川市の井戸では、米国の飲料水の適正値から超えること、19倍という数値が検出された。これを受け都は飲料水の水源を、地下水から川の水などに切り替え、「ピーファス」濃度を下げる措置を取った。
有機フッ素化合物「ピーファス」は、耐熱・撥水に優れ、紙皿や調理道具のテフロン加工材として、また軍事訓練や防災訓練での消火剤としても使われてきた。「ピーファス」は数千年もの間、分解されずに水中や空気中を漂う。摂取すれば体内に「永遠の化学物質」として残る。しかも人体への影響が研究され、がん、肝機能障害、甲状腺疾患、発達障害との関連性が明らかとなってきた。
横田の米軍基地では「ピーファス」を含む泡消火剤を、2010年から7年間で、総計3161リットルも使用している。これが地下水に流れ込み、汚染を招いたとの疑念はぬぐえない。
 現に沖縄では、7つの市町村45万人の水が「ピーファス」で汚染され、その源は基地内から漏出する真っ白な泡の消火剤にあるといわれている。

「日米地位協定」に阻まれ、米軍基地内で調査ができない以上、すでに沖縄県が実施しているように、横田基地周辺を包囲する形で、井戸水のモニタリング調査をし、汚染源を特定し、被害状況や今後の影響を予測するのは不可欠だ。
 WHOでも「ピーファス」の人体への影響をとらえ、国際的に製造や使用の禁止が謳われている。だが遅れに遅れる日本の厚労省は、やっと「ピーファス」汚染を防ぐためのガイドライン値までは、この春、出すまでになった。一刻も早く製造・使用の禁止へ踏み出せ。(2020/2/2)
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2020年01月26日

【今週の風考計】1.26─‶新型肺炎"阻止にWHOと日本は全力を

猛威を振るっている「新型コロナウイルス」による肺炎は、昨年12月8日、中国の湖北省・武漢で最初の感染者が出て以降、いまや中国全土に広がり、感染者は1300人、死者は50人を超える。日本国内でも3人目の患者が確認されている。さらに東南アジアや米仏諸国へ14カ国・地域に広がる。

肺炎を起こす「新型コロナウイルス」は、タケネズミやヘビなどの動物に寄宿している。中国での発生源は武漢の海鮮市場だが、この海鮮市場では他にもアナグマ、ハクビシン、キツネ、野ウサギ、クジャク、サソリ、ワニなど100種以上の動物が「食品」として日常的に売られている。
 しかも目の前で殺して、調理もしない生肉を売っている。ここの価格表には生きたタケネズミ1匹85元(約1400円)、クジャク1羽500元(約8000円)、シカ1頭6千元(約9万6千円)などと記されている。
野生動物の捕獲や売買、摂取を取り締る法律はあるが、その法をかいくぐってでも、「机と飛行機以外は、なんでも食べる」中国人の食生活に加え、あえて野生動物を食べる「野味」という習慣も関係している。
 タケネズミやヘビを食べて感染したのは間違いない。しかも武漢市当局は、感染の事実を中央政府に報告せず隠ぺいしたため、ますます感染者は広がり、さらに23日の武漢「封鎖令」が出る直前には、いち早く武漢を脱出した者が数千人とも数万人とも言われる。

今回の「新型コロナウイルス」は、2002年に中国南部の広東省から広がった重症急性呼吸器症候群(SARS)のコロナウイルスに近い。世界30カ国8,422人が感染、916人が死亡した。また2012年の中東呼吸器症候群(MERS)も、このコロナウイルスが関係し、中東諸国や韓国など2,070人が感染し712人が死亡した。
 この二例とも感染源はコウモリ、かつコウモリを捕食した野生のヘビが第2次感染源となっている。武漢市の海鮮市場ではヘビも売られていたから、コウモリからヘビに感染した「新型コロナウイルス」が人へとうつり、今回の流行を引き起こした可能性が高い。

恐ろしいのは「新型コロナウイルス」には効く薬がないことだ。感染を防ぐワクチンもない。感染した場合は、安静にして熱・せきを和らげる「対症療法」しかない。
 しかも「新型コロナウイルス」には、すでに「スーパー・スプレッダー」が存在しているといわれる。すなわち多くの人への感染拡大の源となった患者からの「アウトブレイク」(集団感染)が起きている危険である。
1月25日の「春節」を挟むおよそ40日間、中国では延べ約30億人が国内のみならず世界中を大移動する。「新型コロナウイルス」による“大規模肺炎”の拡大は、SARSの再来を招きかねない。
 今のところ死亡率がSARSより低いことが救いだが、感染拡大を封じ込めないと、「新型コロナウイルス」に変異が生じて、さらに毒性が強くなるかもしれない。
 日本とWHO は検疫体制を強化し、各国共同の水際作戦で感染拡大を阻止しなければならない。(2020/1/26)
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2020年01月19日

【今週の風考計】1.19─60年前の258万人スト・13万人国会デモ

★19日は「60年安保」から60年となる。若い人たちに伝えたい。60年前、「昭和の妖怪」と言われた岸信介首相、なにあろう今の安倍首相のお爺さんが、米国のアイゼンハワー大統領と会談し、日本に米軍基地を置き米兵の駐留を認める「60年日米安保条約」に調印したのだ。
★「へちまに歯が生えた顔」とも比喩される岸信介さんは、東条内閣の商工大臣として太平洋戦争を始める詔書に署名し、軍備増強に辣腕を振るい、敗戦後、A級戦犯容疑で巣鴨プリズンに3年も拘束された人物だ。その戦争責任は極めて重い。だが1953年には政界に復帰し、わずか4年で首相になった。
 その岸首相が、意気揚々と帰国して「60年安保条約」案を国会に上程し承認を求めた。だが国会審議は「核の持ち込み」や「日米地位協定」の内容など、判然としない答弁が続き、未曾有の混乱をもたらした。

★5月19日には自民党は単独で「60年安保条約」案を強行採決。火に油を注ぐ暴挙に、国会外での安保闘争は、いっそう激しくなり、国会周辺は連日デモ隊に包囲された。昨年から続く「香港200万人デモ」を、思い浮かべてほしい。これとそっくりな熱い闘いが、日本でも繰り広げられたのだ。
★6月4日には560万人を超える組合員がストに入り、2万の商店がシャッターを下ろし閉店ストを行う。15日には580万人のスト、13万人の国会請願デモが展開された。
 その際、警官隊の暴行やヤクザ・右翼団体の襲撃で多数の負傷者を出し、大学生・樺美智子さんが死亡するや、反対運動は頂点に達した。しかし19日、「60年安保」が自然成立。

★「60年安保」の期限は10年、以後は1年前の予告により一方的に破棄できると定めてある。しかし60年間、同時に締結された「日米地位協定」も含め、破棄どころか全く変更も修正もされていない。核兵器を積んだ戦艦や航空機の通過には事前協議すら適用しない旨の密約まで継続されている。
★日本に米軍基地が131か所もある。その施設内での米軍特権、税金の免除、兵士・軍属の犯罪に対する裁判権放棄など、日本の法律が適用されない事態が放置されたままなのだ。そのうえ日本が提供する米軍への「思いやり予算」は、この43年間で10兆円にのぼる。

★安倍政権は19日、外務省の飯倉公館で「60年安保」60周年記念行事を開く。待てよ!まずは米兵犯罪の裁判権を日本に取り戻すのが先ではないか。 EU諸国では実現しているにもかかわらず、米国から兵器の爆買いばかりに血道をあげる、真逆な愚は、もう止めたらいい。(2020/1/19)
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2020年01月12日

【今週の風考計】1.12─「エレファント・カーブ」と我が老後!

松が取れた途端、妻が新聞を見ながら、「もう年に1回の旅行は止め! 外食も贅沢、貯金はガタ減りよ」とのたまう。12日付の朝日新聞5面<長寿時代 財布のひも固く>への反応である。この紙面には、同社の世論調査の結果がまとめられている。
 年金世代は、貯蓄の目的が「老後の生活費」88%、「病気介護の備え」71%がずば抜けて高く、「旅行・レジャー」は22%だった。
 年金生活の我が身に置き換えて、妻の叱声に耳を傾けざるを得ない。晩酌も週に2回するか3回にするか、ここが思案のしどころ。

この機会に、世界や日本の経済格差や貧富について、おさらいをすることにした。まずは世界的規模で格差が拡大している実態である。2019年の「世界のビリオネア」(10億ドル以上の資産保有者)は2153人、総額8兆7千億ドル、32年間で29倍、アフリカのGDPの4年分に匹敵する。
アマゾンのCEOジェフ・ベゾスが2年連続のトップ。保有資産額を前年から190億ドル(約2兆1300億円)増やし1310億ドル(約14兆6600億円)となった。日本ではユニクロの柳井正会長が41位、資産額222億ドル(約2兆4600億円)。
 世界の1%の富裕層が強欲に遂行する資産増加ぶりは、この20年の世界経済格差を象徴的に示す「エレファント・カーブ」そのものだといえる。

金持ちの話はいい。貧富の貧に目を向けよう。日本の貧困率は、1人当たりの年間可処分所得によって算定する。最新データによる日本の可処分所得は年間245万円、その額の半分しか所得のない世帯を貧困層と呼んでいる。世界第3位の経済大国でありながら、貧困率は15.6%となり7人に1人が貧困にあえぎ、1人親世帯での貧困率は50.6%まで上昇し、半数以上が貧困に苦しんでいる。
高齢者世帯の貧困状態も深刻だ。65歳以上の高齢者のいる世帯の貧困率は27.0%になる。しかも、単身世帯での貧困率はさらに深刻で、男性単身世帯で36.4%、女性の単身世帯では実に56.2%にもなる。65歳以上の女性の一人暮らしは、2人に1人以上が貧困の状態に置かれている。

家計調査年報(2017年)によると、無職の高齢者世帯が得る収入の平均は月額で12万2千円、年換算で147万円となっている。その一方で、勤労している高齢者世帯の平均貯蓄額は70歳以上で2385万円、60代で2382万円と、現役世代に比べて圧倒的に高く、40代の2倍以上となっている。つまり高齢者世帯になればなるほど、貧富の格差が拡大しているという現実がある。
 さてさて我が老後資金は、本当に大丈夫か。正直いって現実に目を向けるのが怖い。(2020.1.12)
posted by JCJ at 12:34 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月05日

【今週の風考計】1.5─トランプ大統領の無謀なイラン先制攻撃

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。年末年始、子供や孫に囲まれ、年越しそばを啜り、「おせち」に舌鼓を打ちながら、若い世代の息吹を感じとらせてもらった。

年末はNHK紅白歌合戦、小中学生5人組ユニット・Foorinが “パプリカダンス”に合わせて歌いだすと、小学1年の孫も歌いつつノリノリでステップを踏み始める。知らなかったのが恥ずかしい。いま2020年応援歌として、<パプリカ花が咲いたら…種をまこう…ハレルーヤ…この指とまれ>と、ダンスと共に大ブームであるのが分かった。
その後に続く歌唱も初めて聴くものばかり。半ば頃になって、これも初めて耳にする「白日」の歌唱に釘づけになった。ラフな服装だが熱のこもった裏声を響かせる。テレビ画面の下に載る<時には誰かを…傷つけてしまったり…後悔ばかりの人生だ…降りしきる雪よ、全てを包み込んでくれ…>の歌詞を追う。
 何か琴線に触れる情感とシンパシーが交錯しつつ聴き入る。脇で40歳になった息子が、4人組バンド「King Gnu」の大ヒット曲だという。
後で調べてみると、「King Gnu」は東京芸大出身の4人で構成され、1年前にメジャーデビューしたばかりだ。「白日」は配信限定のシングルだが、すでに再生回数は1億回を突破している。この15日に、初CD「ceremony」 (アリオラ・ジャパン)が発売される。待ち遠しい。年始はスポーツ観戦にふけった。孫とのチャンネル争いも忙しかった。

さて、その間、IRカジノ汚職で自民党議員が逮捕され、他にも特捜部から事情聴取されている政治家5人、さらに疑われる政治家は15人ともいわれる。強行採決までして成立させた安倍政権の目玉政策が、ワイロまみれだったとは呆れはてる。
さらに新年3日、トランプ大統領の命令で、米軍はイラクの首都バグダッドを空爆し、隣国のイラン革命防衛隊「コッズ部隊」を率いるガセム・ソレイマニ司令官を殺害した。イラクの主権すら侵害する前代未聞の作戦は、中東地域に深刻で危険な事態を生み出し、戦争への導火線に火を近づける無謀な挑発となった。
イランの最高指導者ハメネイ師は「厳しい復讐」に言及し、国内では3日、各地で総勢10万人が「米国に死を!」と叫んで司令官の殺害を非難し、反米デモが広がっている。
 米国は、昨年12月末に約750人の米部隊を増派したが、それに加え、4日には3500人の部隊を追加増派し、イランの52か所の重要施設を爆撃すると脅す。これに対抗するイランは、すぐにでもホルムズ海峡の封鎖に踏み切ることも視野に入るだろう。
 またイラン近隣諸国も、一斉に「犯罪的な米国の攻撃」を非難し始めている。湾岸諸国の米軍基地やホルムズ海峡を航行する石油タンカーや貨物船への攻撃が始まる可能性すらある。

だが日本の安倍首相は、この間、フィットネスクラブ通いと映画鑑賞と4日で4回のゴルフ三昧に興じていた。あまつさえイランに対する米国の先制攻撃について一言も言及せず、自衛隊の中東派遣がもたらす深刻な事態への対応にも触れない。
 安倍首相はイランのハメネイ師やロウハニ大統領と昨年6月・12月に会談して、「イランの最高指導者とサシで話せる関係を築いた」と、米国・イランの仲を取り持つ日本の外交を誇っていたが、トランプ大統領に今回の暴挙を諫める覚悟はあるのか。1月中旬の中東訪問は、逆に手痛いしっぺ返しを食らう公算は大きい。(2020/1/5)
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2019年12月29日

【今週の風考計】12.29─見過ごせない中国の人権弾圧と覇権主義

★今年を振り返る各種<10大ニュース>、そこには天皇陛下即位・令和改元、ラクビーW杯・日本ベスト8、消費税10%、などの項目が上位に並ぶ。
 だが「徴用工」問題で日韓関係が悪化した事態こそ、トップにおいてよい重大なニュースだ。いまだに解決しないのも、日本が朝鮮を侵略し、「徴用工」として韓国人労働者を強制的に働かせてきた「加害責任」に、安倍政権が向き合わないことに根源がある。

★また隣の中国で起きている事態も、見過ごしてはならない。今年は中華人民共和国が誕生して70年(10/1)、チベット民衆が中国の支配に抵抗して蜂起した「チベット動乱」から60年(3/10)、中国の学生・市民の民主化要求を武力弾圧した「天安門事件」から30年(6/4)。
 重大な出来事が起きた銘記すべき年なのに、中国政府は、中国辺境地域のチベット族やウイグル人、そして香港の学生や市民への弾圧を、今もなお続けている。
★新疆ウイグル自治区では100万人のウイグル人住民が、中国当局の手で強制収容所に入れられていると、国連は懸念を強めている。「香港問題」への中国の介入も、6月に起きた200万人・平和デモの当初から、「組織的暴動」とレッテルを貼って抑圧のうえ、さらに丸腰の若者に向かって実弾を撃つまでに至った。これを習近平国家主席の督励のもとで実行している。まさに人権弾圧そのもの。
★日本が実効支配している尖閣諸島の周辺海域では、中国公船による領海侵入など延べ1053隻、去年の1・7倍の過去最多。威嚇による現状変更は海洋法違反だ。中国の覇権主義は露骨さを増している。そこへ習近平主席の来春「国賓訪日」が上積みされれば、どうなるか。過去にも中国で天皇陛下の政治利用がなされた歴史を踏まえれば、手放しで喜べるものではない。

★台風や火災による被害・文化財の消失も記憶しておきたい。発生した台風は29個に及ぶが、中でも台風19号は、東日本および東北地方に記録的な豪雨をもたらした。7県71河川の128箇所で堤防が決壊した。
 また10月31日、沖縄・首里城から出火、正殿など計8棟が焼損した。政府は再建に全力を挙げる方針だが、このバーターに辺野古基地埋め立ての加速を強いるのはゴメンこうむる。
★パリのノートルダム大聖堂も、4月15日夕から16日朝にかけて発生した大規模な火災で、高さ約90メートルの尖塔が焼失。幸いにも大聖堂正面の鐘楼は焼け残り、聖遺物「キリストのいばらの冠」は無事だった。現在も修復作業が続き、恒例のクリスマスミサは、216年ぶりに中止。

★その代わり、ギヨーム・ド・マショー作曲「ノートルダム・ミサ曲」に耳を傾ける。9月に発売されたCDは、ベルギーのシュメルツァーが率いる古楽集団グランドラヴォアの歌唱演奏(Glossa/PGCD-P32110)。<聖母マリア>を讃える荘厳な歌声に浸りながら除夜を迎えたい。皆さん、よいお年をお迎えください。(2019/12/29)
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2019年12月22日

【今週の風考計】12.22─伊藤詩織さん勝訴が問いかける重い内容

ジャーナリストの伊藤詩織さんが、性的暴行を受けたとして元TBS記者・山口敬之氏を訴えた裁判で、18日、東京地裁は「酒を飲んで意識を失った伊藤氏に対し、合意のないまま性行為に及んだ」と認め、330万円の賠償を命じる画期的な判決を言い渡した。
地裁は、タクシー運転手やホテルドアマンの証言、そしてホテルの監視カメラの映像などを検証し、山口氏の「性行為には合意があった」とする主張を退け、「重要部分の陳述には不合理な変遷があるとし、合意のないまま本件行為に及んだ事実、意識を回復して性行為を拒絶したあとも体を押さえつけて性行為を継続しようとした事実は認めることができる」と認定した。
さらに「伊藤氏は性犯罪の被害者を取り巻く法的・社会的状況の改善につながると考え、自身の体験を明らかにした」と述べ、その行動には公益を図る目的があったと認め、山口氏が名誉毀損を訴え1億3千万の賠償金を求めるスラップ訴訟も退けた。

だが、こともあろうに判決の翌日、加害者の山口氏は日本外国特派員協会で記者会見を開き、内外からの記者50人近くが出席した場で、即日控訴した理由について、「伊藤さんの発言はすべて嘘、本当の性犯罪被害者は会見で笑ったりしない」などのトンデモない発言を弄した。
会見の司会は花田紀凱・「月刊Hanada」編集長、同席者は弁護士に加え小川榮太郎氏。このメンバーは<安倍応援団>、伊藤さんバッシングを繰り広げてきた面々だ。
そもそも、山口氏はTBS時代から“安倍の太鼓持ち”と呼ばれるほど、安倍首相と個人的に親しく、自分の結婚披露宴に安倍首相を招き、また2016年参院選挙の1か月前には、山口敬之『総理』(幻冬舎)を刊行してヨイショ!

許せないのは伊藤さんが、勇気をふるって告発すると、山口氏に同調するネトウヨたちが「あなたにも落ち度があったとか、ハニートラップとか、枕営業とか」などとバッシングし、セカンドレイプで二重三重に傷つけた行為である。この責任はどうとるのか。
 思いおこしてほしい。今から4年半前、当時TBSのワシントン支局長だった49歳の山口氏が、就職活動のアドバイスを求め訪問してきた26歳の伊藤さんを、酒に酔わせて強姦するなど、社会常識からみても許されることではない。
ネット上には、伊藤さんを擁護し、判決を支持する痛烈な書き込みがあふれている。
「性被害にあったら、暗く俯いて隅っこで暮らしとけ、とでも言いたいのか? じゃあ山口氏は、妻子がいる50代の男性なのに20代女性と性的な関係を持った人らしく、申し訳なさそうな顔していてくださいよ。妻子側から見たら、合意があろうがなかろうが、あなたのやったことは不貞行為で妻子に対する裏切りであることに間違いないでしょ」

さて伊藤さんは、この判決が出る前に、準強姦容疑で刑事告訴したにも関わらず、山口氏の逮捕状が取り消されたり、不起訴処分にされたりしている。その背景には、捜査への圧力があったのではないかという、疑惑は今なお消えない。
実際、「週刊新潮」が山口氏へ送った<伊藤問題>での質問メールに、山口氏が<北村さま、週刊新潮より質問状が来ました。 伊藤の件です。取り急ぎ転送します。 山口敬之>と、誤送信を「週刊新潮」編集部にしている。
この「北村」とは誰か。山口氏は「弁護士だった父親の知人の北村さん」と釈明しているが、内閣情報調査室のトップだった北村滋内閣情報官(現・国家安全保障局長)ではないのか、彼に取材の対応を相談したのではないか、今や確実な筋書きだという。ああ、山口さん!(2019/12/22)

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2019年12月15日

【今週の風考計】12.15─自衛隊の中東派遣etc.トンデモ閣議決定

国会が閉会したとたん、トンデモ閣議決定が頻発している。まずは10日の閣議決定、その中身は噴飯ものだ。「反社会的勢力の定義」について「その時々の社会情勢に応じて変化し得るものであり、限定的・統一的な定義は困難だ」とする答弁書を閣議決定したのだ。
 安倍総理主催の「桜を見る会」の参加者をめぐる疑惑を隠すため、ついに政府指針まで捻じ曲げたのである。

12年前の第1次安倍政権時に、政府の<犯罪対策閣僚会議幹事会>が決めた指針には、「反社会的勢力」とは、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である」と明確に定義している。
 この定義をもとに金融庁は各金融機関や業界団体に「反社データベース」の充実などを求め、また芸能プロダクションを含め民間企業でも反社会的勢力との関係遮断に、懸命に取り組んできた。
 定義が曖昧になってしまえば、「反社」勢力が復活・伸長するだけでなく、政府に都合の悪い人物や団体が、「反社」勢力に仕立て上げられる危険だって、ありうるのだ。

20日には、2020年度予算案102兆円を閣議決定する。そのうち防衛関係費は、8年連続して増額の5兆3223億円と過去最大。
 日本主導の下で自衛隊F2戦闘機の後継機を開発する費用100億円、地上配備型迎撃ミサイルパトリオット改修費に加え、最新鋭ステルス戦闘機F35の取得費、宇宙やサイバー空間などの新領域の防衛力強化などへの対策費、米国からの装備品の調達費なども盛り込まれている。国会に上程するからいいというものではない。
続いて27日には、海上自衛隊の中東派兵を、国会の審議にもかけず、閣議決定に持ち込む算段である。中東海域へ自衛隊270人、海上自衛隊の護衛艦1隻の派遣に加え、ジブチに駐留しているP3C哨戒機1機を転用する。派遣海域はオマーン湾、アラビア海北部の公海、バベルマンデブ海峡の東側の公海が中心になる。
 来年1月下旬にも活動が本格化する米国主導の有志連合「センチネル作戦」に対応して、情報収集などでトランプ大統領にイイ顔するためだ。もし自衛隊員や民間人の命にかかわる不測の事態が起きた場合には、海上警備行動を発令し、日本関連船舶の保護も想定するという。
 いくら派遣期限1年と区切っても、 憲法9条を無視し集団的自衛権の行使、実戦協力へ踏み込む閣議決定の無謀さは変わらない。

閣議決定とは何ぞや。国政に関する重要事項に関して、内閣の意思決定が必要なものについて、全閣僚の賛成を得て政府の方針を決定する手続きである。
 だが待てよ、国会や両院での委員会の招集は拒否して審議を妨げ、国会が閉会すれば閣議決定で事を進める、こんな手法がまかり通っていいのか。三権分立が踏みにじられ、内閣が国会や司法を抑え込む官邸政治の横暴は極まりない。
首相官邸内にある閣議室は広さ110u、そこにある5.2メートルの円卓を、閣僚が取り囲むように着席するという。決定文書に花押を記す墨汁入り硯と細筆が用意されている。会議は非公開だが、その議事録は5年前から作成が義務づけられている。
 10日に閣議決定した<「反社」勢力の定義変更の文書>に、一人でも「おかしい」と異議を唱える閣僚は、いなかったのか。警察・公安を統べる国務大臣、また下駄の雪と揶揄される公明党の閣僚は、どんな発言をし、どんな顔で署名・花押を認めたのだろうか。議事録の公開が待たれる。(2019/12/15)
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2019年12月08日

【今週の風考計】12.8─いま鋭く問われている日本の加害責任

★78年前の12月8日、日本は太平洋戦争に突入した。それ以前からの中国侵略を含め、アジア諸地域や南洋諸島への戦争拡大は15年に及ぶ。もたらした戦争被害はアジア諸国で2000万人以上、国内でも310万人を超えるといわれる。

★この6日、ドイツのメルケル首相は、ポーランドにあるアウシュビッツ強制収容所を訪問。来年1月27日にソ連軍による解放75年を迎えるにあたり、数多くのユダヤ人を銃殺した「死の壁」といわれる塀の前で献花し、黙とうした。
★さらにメルケル首相は、数多くの犠牲者の写真が掲げられた部屋で演説し、アウシュビッツで「ドイツ人が犯した蛮行を、深く恥じる」と謝罪した。人種差別や不寛容が広がる現代こそ、「反ユダヤ主義と闘うためには、絶滅収容所の歴史が共有され、語られる必要がある」と指摘。アウシュビッツは「この記憶を生かし続けることを要求している」と述べた。
 メルケル首相が訪問する前日の5日、ドイツ政府は同収容所の関連財団へ新たに6000万ユーロ(約72億円)を寄付すると発表した。

★それに引き換え、日本の安倍首相はどうか。南京事件、日本軍「慰安婦」問題、中国からの強制連行・朝鮮半島からの「徴用工」問題などなど、日本軍の加害責任や反省に触れた真摯な言葉もなければ、誠意ある実践もない。いまや贖罪意識すらないといってよい。
★とりわけ韓国の「徴用工」問題について、「被害者個人の請求権は存在している」と公式に認められている以上、「非人道的労働に対する慰謝料」として、日本政府・企業は誠実に向きあい、支払う努力をするのは当たり前ではないか。
★なぜしないのか。そこには安倍首相自らが、A級戦犯合祀の靖国神社へ玉ぐし料・真榊の奉納を続け、過去の侵略戦争と植民地支配に対する責任を放棄するどころか、逆に正当化する立場に固執し、ネトウヨや右派人脈が煽る<反中嫌韓>の露骨なヘイトに同調しているからに他ならない。メルケル首相の態度や覚悟、政策と比べ、天と地の開きだ。

★首相在任2900日を超す、憲政史上最長となった安倍首相、この約8年の間、中国や韓国の戦争被害者を記念する施設に訪問したことがあるだろうか。例えば中国の平頂山殉難記念館や韓国・天安市にある独立記念館はどうだろうか。
★前者は日本軍が中国・撫順炭鉱近くの平頂山の住民3000人を機銃掃射により集団虐殺、村を焼き払った事件を記念する。後者は日本軍が韓国人にした拷問や慰安婦の話など、韓国が自由と独立を勝ち取る闘いの歴史を記録した記念館だ。訪問したという話は聞かない。

★ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇は、先月24日、長崎・広島の両被爆地を訪問し、核の廃絶を求めるメッセージを発した。
 米国のオバマ大統領も、3年前、被爆地・広島を訪れ、原爆資料館を見学した後、原爆死没者慰霊碑に献花した。その場で所感を読みあげ、「核兵器なき世界」への決意を強調した。
★ちなみに原爆資料館や平和記念公園を訪れた世界の大統領や首相は、2009年から2019年の10年間で19人、外国からの賓客や要人は598人にのぼる。安倍首相も、海外に行くのなら、もっともっとアジア諸国の戦争被害者を祀る施設を行脚したら良い。(2019/12/8)
posted by JCJ at 09:28 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月01日

【今週の風考計】12.1─ほっかぶりの安倍首相に桜が泣いている

先週末、遅まきながら「桜を見る会」に夫婦で参加した。新宿御苑のそれではない。旅行会社が企画した観光ツアーに組み込まれていたもの。もちろん自費で参加。名づけて<小原の四季桜を見る会>。場所は愛知県・豊田市の北東、岐阜県との県境近くにある小原地区、そこに咲く四季桜を堪能するのが目的。
約1万本の四季桜が、国道419号線に沿って山の斜面を淡くピンクに、光の加減では白く、びっしりと彩る。しかもその斜面に、ぽんぽんと絵筆を挿すように、色づいた紅葉が赤のマダラ模様をつけていく。さらに銀杏の大木が、枝の黄葉を横に広げて、アクセントをつける。その彩りの見事さ。

「四季桜公園」では店も出て、ふるさと自慢のグルメや特産品が並ぶ。五平餅の匂いが食欲をそそる。興味しんしんで食べたのが<へぼ飯>、蜂の子を炊き込んだご飯といったら良いか、醤油味のきいた、ほのかに甘みが広がる不思議な味だ。
ほかにも、きわめて細長い天然自然薯やアユの干物を見ると買いたくなる。だが、なんといっても驚いたのは<愛宕ナシ>、そのジャンボぶりといったらない。1個で1キロはあるだろう。値段も1300円と高い。スライスしたのを試食すると、果汁が多くシャキシャキして歯切れがよい。重いのも構わず2個購入した。

桜を堪能したら、次は紅葉となる。おなじ観光バスで香嵐渓に向かった。足助町を七曲りにくねって流れる巴川に沿い、まるで山が燃えるように紅葉で包まれる。巴橋、待月橋を経て吊り橋の香蘭橋まで北側の道は紅葉のトンネルが続く。
手にした観光マップを見ながら中ほどにある山門をくぐって香積寺へと歩く。応永34 (1427) 年に白峰禅師によって開創された曹洞宗の古刹。一帯はもみじや杉木立が生い茂り、もみじの開祖・三栄和尚が植えたとされる杉も、いまだ2本残っている。
 本堂のわきを回って十六羅漢像や装束塚を見ながら、飯盛山へ足を延ばす。下っては足助八幡宮・足助神社をお参りし、香嵐渓の紅葉に別れを告げた。

さらに下って新城市にある鳳来寺山に向かう。ここも紅葉の名所として名高い。1300年前に利修仙人が開山したと伝わる霊山で、山全体が国の名勝・天然記念物に指定されている。緑の杉木立の間から赤く色づいた広葉樹の葉が光を受けて輝く。
 断崖絶壁・鏡岩の直下にある鳳来寺本堂に到着。ここで放浪の俳人・種田山頭火が16首ほど句を詠んだという。その扁額がある休み処から、奥三河の山々を望む。この山には“声の仏法僧”とも呼ばれる愛知県の県鳥・コノハズクが棲息しているという。

桜・紅葉を満喫し、家に帰ってさっそく、香嵐渓・香積寺の山門から本堂へと続く参道に広がる、鮮やかな紅葉の写真を、わがパソコンのデスクトップの背景に貼りつけた。
 安倍首相が毎回5500万円もの税金を使い、反社会的勢力メンバーまで招待し、8回も開催していた「桜を見る会」よりも、ずっとずっと素朴で純心に桜や紅葉を愛でるツアーだった。新宿御苑の桜が泣いている。(2019/12/1)
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2019年11月24日

【今週の風考計】11.24─またも沖縄に配備の米軍弾道ミサイル!

先週、沖縄県宮古島市の海岸で、「ウランペレット(核燃料棒)」と記されたプラスチック製の筒状容器が発見された。すぐ自衛隊が出動し放射線量を測定したが検知されなかった。ホッと一安心。
 その後、メルカリに「教育用燃料見本キット」が出品されていて、それと類似しているのが分かった。イタズラでやったとしたらトンデモナイことだ。
ただでさえ沖縄には、返還時の「核抜き」合意が反故にされ、米軍の「核弾頭」貯蔵への疑念も、いまだに払拭されていない。
 あまつさえ米国と中国との緊張は続き、この2、3年のうちに日本が実効支配している尖閣諸島付近で、米中間での艦船攻撃など、紛争が起きると想定されている。そのため米国は沖縄の米軍基地を強化する対策を急いでいると、琉球新報(10/3付)が報じている。その概要について補足を加え紹介しよう。

この8月、中距離核戦力(INF)廃棄条約が失効した。その結果、中距離弾道ミサイルの開発・製造禁止のタガがなくなり、米中ロによる開発競争が始まった。いま新たな緊張状態が生まれている。とくに米国は2020年末から21年にかけて、新鋭ミサイルを沖縄や北海道など日本本土に大量配備する計画を立てている。
米国が開発中の弾道および巡航ミサイルには、車載移動式ミサイルと潜水艦搭載用新型トマホークがある。いずれも「核弾頭」装備が可能だ。威力は10〜50キロトン、最低でも広島に投下された原爆12キロトン級の威力がある。発射すれば数分で目標に到達し、迎撃は困難を極める。純然たる先制攻撃用の兵器だ。
こうした能力がある地上発射型の中距離弾道ミサイルを日本に配備するとなったら、すでにPAC3が配備されている嘉手納基地はうってつけ、すぐにも配備したいのが本音だ。さらには新型トマホーク搭載の原子力潜水艦も、沖縄うるま市・ホワイトビーチに寄港させたいのは明らかだ。

先月18日、玉城デニー沖縄県知事は、米軍高官に対して、沖縄への新型ミサイル配備について問い質したところ、「開発にまだ時間がかかり、どこに配備するか発表できる段階ではない」と、述べたという。
 だが、沖縄へのオスプレイ配備の際には、日米両政府は直前まで秘匿していた経緯があり、どこまで信用できるか油断はできない。
すでに日本の陸上自衛隊は、奄美大島に地対艦ミサイルを配備し、さらに宮古島や石垣島でも導入を進め、米軍の作戦に主体的に関与している。ますます米国の核弾頭搭載ミサイルによって引き起こされる「核戦争」に巻き込まれる危険が増す。

沖縄だけではない。近いうちにイージス・アショアの配備が予定される秋田市・新屋演習場、山口県・むつみ演習場にも中距離弾道ミサイルが追加配備されるだろう。新型トマホーク搭載の原潜も神奈川県・横須賀、長崎県・佐世保などへ、頻繁に寄港するだろう。
 まさに「日米安保条約」が文字通り「核戦争同盟」へと全面的に転換しかねない事態だ。(2019/11/24)
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2019年11月17日

【今週の風考計】11.17─160年前の「日米通商条約」の轍を踏む!

◆低山ハイクを楽しむ仲間と、伊豆半島・下田にある寝姿山を歩いた。黒船見張所跡や復元された大砲を確かめ、ついた山頂から大島や利島を望む。眼下の下田港に黒船サスケハナ号が入ってくる。
◆165年前の光景が立ちのぼる。米国のペリー提督が7隻からなる艦隊を率い、煙突から煙を吐き、礼砲を響かせ、海岸へと迫ってくる。人々が恐れ慄いたのも無理はない。ついに幕府は鎖国をやめ、「日米和親条約」を結び、この下田港への出入りを認めた。
◆4年後には、ハリスが米国総領事として下田に赴任。「日米通商条約」が結ばれた。とりわけ関税自主権を放棄したため、低い関税率に固定され、かつ米国には特権的優遇措置を約束、安い外国商品が日本に流入し、貿易不均衡が生じる事態となった。

◆はからずも、読み終えたばかりの木内昇『万波を翔る』(日本経済新聞出版社)には、黒船来航から明治維新へのドラマが生き生きと描かれている。外からは老獪な欧米列強の貿易交渉に攻められ、内からは尊王攘夷に煽られ、業を煮やした幕府は、関税や取引通貨の交換レートの折衝などにあたる外国局を新設した。
 この仕事に就いたのが田辺太一という男、今でいう外務省ノンキャリア官僚、彼の奮闘が目覚ましい。オビに「この国の岐路を、異国にゆだねてはならぬ」とある。改めて今だからこそ、同感!

◆帰りの伊豆急線が伊豆高原駅を通過した際、これまた不意に、佐藤雅美『大君の通貨』を思い出した。本書は作家としてのデビュー作で、かつ新田次郎賞を受賞した。その後は『恵比寿屋喜兵衛手控え』で直木賞受賞。江戸時代の町奉行や公事宿を描き、物書同心居眠り紋蔵シリーズが評判だった。
◆佐藤さんは伊豆高原に住んでいた。そして今年の7月末に78歳で亡くなられた。打ち合わせなどで会った佐藤さんの話ぶりや表情などが思い出される。

◆さて『大君の通貨』には、ペリーの来航以来、欧米との貨幣交換レートを巡る交渉に明け暮れた水野筑後守忠徳たちの姿が描かれている。
 幕末の日本では金よりも銀の値打ちが5倍も高い。しかし海外では逆で、金が高く銀の16倍も高い。そこに目をつけた米国のハリス総領事は、銀貨で日本の小判(金)を買いつけ、上海に持っていっては小判(金)を売り、儲けを増やす。また日本に来ては小判(金)を買う。こうした繰り返しにより莫大な利益を貪ったのだ。
◆その結果、日本から大量の小判(金)が流出し、物価の高騰・インフレにつながり、武士階級が困窮、幕府崩壊へと行きついた。まさに自滅である。

◆今の日本はどうか。日米貿易交渉ひとつとっても、安倍首相は「ウィンウィンの関係」だと自画自賛した。だが米国から輸入する牛肉・豚肉・農産物などの関税は引き下げ、かつ余剰トウモロコシまで買う約束をしたのに、米国へ輸出する自動車への関税については、「撤廃に向け、さらなる交渉を続ける」との口約束だけ。
 まさにトランプひとり「ウィン」じゃなかったのか。この「日米貿易協定」を、19日にも衆院で強行採決するに至っては、160年前の「日米通商条約」と同じ轍を踏んでいるのではないか。(2019/11/17)
posted by JCJ at 10:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月10日

【今週の風考計】11.10─ますます深まる「桜を見る会」への疑惑

大臣の連続辞任に続いて、河井案里・参議院議員が広島県議へ配った現金疑惑など、政治スキャンダルが相次ぐなか、安倍首相が主催する「桜を見る会」への疑惑が浮上した。安倍首相自らが先頭にたち、公的行事・税金を私物化している疑惑である。8日の参院予算委員会で、共産党の田村智子議員が追究して明らかとなった。
「桜を見る会」の参加者数・支出額は、安倍首相になってから年々増え続け、主催して8回目となる今年4月13日の参加者数は18,200人、支出額は5,518万円、予算額の3倍。参加者一人当たり、飲食・お土産・警備などの費用を含む3,000円の税金が使われている。

参加資格は「功労・功績のある方を各府省が推薦する」とある。議員の後援会員や支持者は、招待範囲に含まれていない。税金が使われる公的行事である以上、当然だ。だが、自民党は党内で役職ごとに後援会や支援者の招待枠を割り振り、各議員は名簿を提出し、内閣府から各人へ招待状が届いている。
稲田朋美、世耕弘成、松本純、萩生田光一議員らの後援会ニュースや議会報告には、<地元後援会や女性支援グループの皆さん、選挙のうぐいす嬢の皆様、後援会の中の常任幹事などと、思いで深い「桜を見る会」となった>の記載があるという。
とりわけ安倍首相の地元・山口県の友田有県議のブログでは、<“後援会女性部の7人と同行”“ホテルから貸し切りバスで会場に移動”>と記され、安倍事務所が取りまとめ役になって前日「下関からは毎年数百人が上京する」との証言まである。こうした事実から、「桜を見る会が『安倍首相後援会・桜を見る会前夜祭』とセットになっている」と、田村議員は追及した。

さらに重大なのは、「新宿御苑で一般招待客は並んで手荷物検査がある。しかし“下関組”はバスの駐車場がある“裏口”から入るのが恒例だ」「(新宿御苑に)到着すると、安倍事務所の秘書らがバスの座席をまわって、入場のための受付票を回収する。その秘書が受け付けを済ませ、参加者用のリボンを配る。まとめてのチェックインで手荷物検査はなかった」という。安倍後援会の約850人がスルーで入園していたことになる。
当日の「首相動静」欄には<午前7時48分、東京・内藤町の新宿御苑着。午前7時49分から同8時31分まで、昭恵夫人とともに前田晋太郎山口県下関市長、地元の後援会関係者らと写真撮影>─まぎれもない証拠がある。
 「桜を見る会」の開門・受付開始は午前8時30分なのに、30分も前に安倍首相が地元後援会の人と、新宿御苑内で記念撮影をしている。田村議員の追究に「セキュリティー」を持ち出して、答弁を拒否し続けてきた安倍首相、自らが「セキュリティー」を犯している事態に、噴飯ものだとの声が挙がる。

ちなみに850人が、<バスの駐車場がある新宿御苑の“裏口”から入る>としたら、大型観光バスで17台にもなる。新宿御苑の“裏口”にあたる大木戸駐車場には、大型車は全長5m、重量2.5トンなどの駐車条件があり、かつ予約はできない。これらの条件を、どうやってクリアーしたのだろうか。(2019/11/10)
posted by JCJ at 11:29 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする