2019年09月15日

【今週の風考計】9.15─「嫌韓」をけしかけているのは誰だ!

★この2カ月、ほぼすべてのワイドショーが「嫌韓報道」に狂奔し、韓国ヘイトをあおってきた。武田邦彦・中部大学教授などは、「日本男子も韓国女性を暴行しなけりゃ」(ゴゴスマCBCテレビ)とまで言い募る。元駐韓大使の武藤正敏氏を含め、他のコメンテーターにしても、隣国を罵るヘイト発言を頻発している。
★韓国の「玉ねぎ男」=゙国(チョ・グク)氏をめぐる蓄財疑惑や娘の不正入学スキャンダルを、朝・昼のべつ幕なし、一週間以上も取り上げている。陰に陽に「嫌韓」をあおっているのは間違いない。もういい加減にしたらどうか。

★放送だけに限らない。出版でも<嫌韓炎上商法>が大手を振っている。「週刊ポスト」(9/13号)は「怒りを抑えられない韓国人という病理」、「週刊文春」(9/12号)も「文在寅の自爆が始まった」、「週刊新潮」(同)も「韓国大統領の『玉ねぎ男』大臣任命強行で検察が法曹を逮捕する日」という特集をやっている。

★こうしたメディア状況や社会の風潮を憂慮し、新聞労連が6日付で<「嫌韓」あおり報道はやめよう>との声明を発表した。大切な視点と提起が込められている。要点を挙げておこう。
<他国への憎悪や差別をあおる報道をやめよう。
 国籍や民族などの属性を一括りにして、「病気」や「犯罪者」といったレッテルを貼る差別主義者に手を貸すのはもうやめよう。(中略)
「国益」や「ナショナリズム」が幅をきかせ、真実を伝える報道が封じられた末に、悲惨な結果を招いた戦前の過ちを繰り返してはならない。そして、時流に抗うどころか、商業主義でナショナリズムをあおり立てていった報道の罪を忘れてはならない>

★メディアは、視聴率稼ぎや販売部数増を狙って、韓国ヘイトに血道をあげ、「玉ねぎ男」スキャンダルの追っかけに走る前に、わが国の足元にある消費税10%増税、年金問題、さらには内密にされている日米経済交渉の中身を追跡したらどうか。
 外交面でも、安倍首相はトランプ米大統領にこびへつらい、ロシアのプーチンには騙され続け、中国の習近平からは三等国扱いされている。この体たらくを、もっと追究したらどうか。
★もう8年近く安倍政権が続く。一向に景気は良くならず、生活の苦しさだけがつのる。国民の不満は高まるばかり。それをそらすには、安倍首相お気に入りの学者・作家・タレントらを動員し、韓国バッシングに走るのが得策と踏んでいるのだ。この策謀にメディアが手を貸す愚はない。(2019/9/15)
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2019年09月08日

【今週の風考計】9.8─重陽の節句から「憲法99条」への想い

重陽の節句には、菊を浮かべた<菊湯>に入り、<菊酒>を酌む習慣がある。山形では食用菊「もってのほか」のおひたしが食卓を飾る。このシャキシャキ感がいい。
もう一つ加えれば、9日は<「チョロQ」の日>。タカラトミーが“チョロチョロ走るキュートな車”をキャッチコピーに1980年に発売。子供にも大人にも広がる大ブームを起こした。わが本棚にも飾ってある。

お隣の朝鮮半島に目を向ければ、9日は朝鮮民主主義人民共和国の建国記念日。朝鮮半島の支配権をめぐる米ソの対立から、38度線以南の地域を単独で収める大韓民国が、1948年8月15日に李承晩を首班として樹立される。朝鮮半島の分断が決定的となった。
これに対抗して38度線以北でも独立運動が加速し、同年9月9日に金日成首相の下で朝鮮民主主義人民共和国が樹立された。しかし、70年以上が経過しても統一の悲願は遠のくばかり。

こうして9と9をたどってくると、日本の憲法9条、さらには99条に目を向けざるを得ない。安倍政権の動きを見るにつけ、今ほど99条が大事な条項に浮上している秋はない。
 日本国憲法第99条には「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と明記している。
この条文の主語は「公務員」とあるのが重要だ。「公務員」とは国家権力の行使を担う人たちである。だからこそ「国家権力の横暴を戒め、監視と抑制を行う最高の法律である」憲法の99条に、「憲法尊重擁護義務」を明記したのだ。
 この規定は、単に憲法を尊重するだけでなく、違反行為を防ぎ、憲法を守るために積極的に努力することを含んでいる。

ところが行政府の長である内閣総理大臣という「公務員」が、国会の施政演説や自衛隊観閲式の場で、改憲を勧める所信を表明し訓示を垂れるなど、99条に背く憲法違反を平気で行う事態だ。
 もともと内閣は憲法改正の提案や意見表明はできない。憲法の定める三権分立を侵しても、立法府に干渉するという異常さは極まる。さらには参議院本会議で「愚か者、恥を知れ!」と野党を罵る、自民党・女性議員まで入閣するとの噂が立つ第5次安倍改造内閣、さらなる改憲策動を許してはならない。(2019/9/8)
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2019年08月25日

【今週の風考計】8.25─2つのアマゾン、焼失と支配の恐ろしさ

●ブラジル・アマゾンで大規模な森林火災が発生している。年初からの8か月間で7万5000件も発生し、昨年比185%、過去10年で最大となっている。その主要な原因は、同国のボルソナロ政権が、環境保護より開発を優先し、森林を焼いて家畜の放牧地や畑を作るための意図的な放火を奨励したことにあると指摘されている。
●アマゾンの熱帯雨林は二酸化炭素を吸収し地球温暖化を防ぐ大事な要となっている。まさに「地球の肺」とも呼ばれている。だがそこでの火災で、1億7千万トン相当もの二酸化炭素が、逆に排出される事態となった。

●さらに煙はアマゾン地域から3200キロも離れたブラジルの最大都市サンパウロの空を覆い、街は暗闇に包まれる被害も出ている。ヴェネズエラやボリヴィアにも森林火災は広がっている。
●ボルソナロ大統領の怠慢や対策を取らない姿勢に、世界から抗議が起きている。フランスのマクロン大統領は、G7でもアマゾン問題を取り上げると言明し、ついにボルソナロ大統領は、消火活動に軍の出動を指示した。

●さてアマゾン問題は、もう一つある。26日閉幕するG7首脳宣言が見送られる背景には、アマゾンを含む米国の巨大IT企業を対象とした、フランスの「デジタル課税3%」に対し、トランプ大統領が、2020年末のOECD合意を待たずに先行導入するとは何事か、と猛反発した経緯がある。

●なにもアマゾンへの課税だけでなく、大規模通信障害を始め、膨大な個人情報の収集は、きわめて深刻な問題をはらんでいる。アプリを使い検索・閲覧・買い物まですれば、自分の個人情報は全て分析されて、そのデータが時には第3者に売買されるに至る。
●現に、就職情報サイトの大手会社が、学生の閲覧履歴を分析し、内定辞退率の予測データを企業に400万〜500万円で売っていた。知らぬ間に自分が売り買いされている、オソロシイ事態が来ているのだ。

●日本の公正取引委員会も、アマゾンなど巨大IT企業による個人情報の収集に対して新しいガイドラインを策定した。8月にも公表し年内にも実施するという。まずはSNSやネット検索を控えるのも一法だ。(2019/8/25)
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2019年08月18日

【今週の風考計】8.18─『放射能測定マップ』の地道な成果!

17日、第62回JCJ賞贈賞式が日本プレスセンターで行われた。JCJ大賞は東京新聞の「税を追う」キャンペーンに、またJCJ 賞は4作品に贈られた。なかでも受賞した『図説17都県 放射能測定マップ+読み解き集』(みんなのデータサイト出版)への受賞理由や受賞者スピーチには、感銘を受けた。
「市民による市民の調査が結実した貴重な特筆すべき成果。我々が見習うべき調査報道の在り方を示す」と、選考委員のメンバーが絶賛する。この本に目を通していた筆者には、改めて認識を新たにした。少し、この本の内容を記しておくべきだろう。

「市民放射能測定室」のネットワークである「みんなのデータサイト」のメンバーが、なんと東日本の青森県から静岡県までの17都県3400地点の土壌サンプルを、延べ4000人の協力で採取し、セシウム134とセシウム137の測定結果から得たデータを、地図上に分かり易くカラーでマッピングし、合わせて各県ごとに解説を加えた画期的な本なのだ。

8年前の3・11福島事故以降、政府は放射能汚染の影響を軽視し、その正確な実態調査を怠ってきた。福島事故の放射能汚染の実態は、今どうなっているか、多くの人々が知りたいと思っている。
国は、空間線量を測って公表はしているものの、長期に放射線の影響を調べるには、土壌の汚染調査は欠かせない。だがこの調査はしていない。にもかかわらず避難者へ、帰還するよう煽り急かせている。こうした事態に危うさを感じた上記メンバーが、「避難する人、しない人、すべての人に被ばくを避け、人間らしく生きる権利を!」と、土壌調査プロジェクトをスタートさせ、2014年から3年かけて測定した数値を、2011年3・11時点に合わせて汚染状況を再現した。

この取り組みの趣旨を表現した横断幕を用意し、6人のメンバーとともに登壇した受賞者代表の女性は、こう語る。
「縦10センチ、横20センチ、深さは地上から5センチ下の土壌を測ります。これはロシアのチェルノブイリと同じ深さです。採取法マニュアルを分かりやすく漫画で作り、WEBサイトに公開し多くの人に理解を促しました。根気よく呼びかけていくと、測定ポイントが増えていく喜びは格別。集まった東日本全域のデータの貴重さ、これをいかにわかりやすく市民に伝えるか、ここからみんなの議論が始まりました」

議論を重ねるうちに、測定データだけでなく、注意の必要な食品についてのデータも分析し加えることになった。そしてクラウドファンディングを活用し、自分たちの出版社を立ち上げるまでになった。その結果、A4版・オールカラー200ページ、チェルノブイリとの比較も視野に「日本版アトラス」を目指し、20年後・100年後の状況も加えて仕上がった。 ぜひ読んでほしい。発行所:みんなのデータサイト出版 https://minnanods.net/map-book/ (2019/8/18)
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2019年08月11日

【今週の風考計】8.11─脅迫の電凸が、憲法21条をつぶす危機!

<あいちトリエンナーレ2019>の企画展「表現の不自由展・その後」が、脅迫の電凸・メル凸、さらには「撤去しなければガソリン携行缶を持ってお邪魔する」というテロ予告FAXまで送られる事態に及んで、ついに中止を余儀なくされた事件は、国内外に大きな波紋を呼んでいる。

慰安婦問題に焦点を当てる「平和の少女像」や憲法9条をテーマにした俳句、天皇に関する作品など、各地の美術館から撤去させられた20数点を展示。それを主催側の会長代行である河村たかし名古屋市長自らが、展示場に乗りこんで「日本国民の心を踏みにじる行為」などと言い、展示物を検閲するかのように、自分ひとりの判断で中止を求めるなど言語道断だ。「言論・表現の自由」を保障する憲法21条を踏みにじる、まさに最悪の違憲行為だ。
そのうえ、官邸や一部の政治家が悪のりし、主催団体や自治体などに圧力をかけ、補助金の支給にまで言及するなどして、ヘイトを増長させる。

今回の展示がこのまま中止となれば、「脅せば表現は封印できる」前例となり、同様の事件が急増するのは必定だ。また事件を恐れて萎縮が広がる可能性は高い。芸術家や日本ペンクラブ、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)、憲法・歴史学者、市民らが抗議と展示の再開を求めて行動に立ちあがっている。

にもかかわらず神戸市が、9〜11月に開催する「現代美術の祭典」の関連行事として、いま渦中にある津田大介氏を加え、3人による鼎談シンポジウムを中止すると決めてしまった。理由は抗議電話ばかりでなく、自民党市議からも津田氏の参加を断るよう要請されていたからだという。
「抗議電話によって催しが潰れることが続けば、気に入らない言論・表現活動は潰してしまおうとする人たちは勢いづき、次のターゲットを探すだろう」(江川紹子)。
 
自治体や主催団体は、とりわけ右派からの動きを忖度し、次なるターゲットにならないよう、物議をかもすような人物やテーマ、企画表現は除外しておこう、という空気が広がるのは目に見えている。こうして日本の「言論・表現の自由」が骨抜きにされていく。それが怖い。(2019/8/11)
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2019年08月04日

【今週の風考計】8.4─制裁が席巻する世界、おかしくないか?

■地球規模の気候変動によって、世界各地で「史上最も暑い月」が続く。そのせいだろうか、制裁・除外・失効・離脱─なんとも知恵のない非生産的な言動や措置が、いま世界各国で乱舞し<いがみ合いのルツボ>と化している。

■まずは日本政府が下した2日の閣議決定である。韓国を輸出管理の優遇対象「ホワイト国」から除外する措置は、日韓両国の関係を根本的な危機に陥れかねない。元徴用工への賠償問題に端を発した日韓外交の頓挫が、韓国民衆の反日感情を煽り、さらに観光・文化・スポーツ交流の中止に加え、東京五輪ボイコットの動きすら出ている。
■8月下旬には更新期限を迎える、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が破棄される可能性も含め、東アジアの安全保障まで不安定となりかねない。北朝鮮のミサイル発射、ロシア・中国の両国軍機による竹島領空侵犯も、日韓対立のスキをついた揺さぶりとみられている。

■続くは米国・トランプ大統領の中国への経済制裁だ。新たに中国の輸出産品3千億ドル(約32兆2千億円)に、9月1日から10%の追加関税を課すと表明。トランプ大統領による対中制裁は1年半に及ぶ。米国の小売業界も衣料品や玩具、家庭用品、パソコンなど日用品の価格が上昇し、家計が圧迫されると反発。加えて原油相場は8%近く下落し、世界経済への影響は計り知れない。

■31年前、米ソ冷戦後の核軍縮の柱となった「中距離核戦力(INF)廃棄条約」すら、2日失効してしまった。「核なき世界」を目指す国際的な軍縮の機運が後退するのは必定だ。現に米国の国防長官が、「中距離ミサイルの開発を加速させる」と表明した。
■被爆から74年、今週8・6広島と8・9長崎を迎える。いま日本政府にとって最も緊急な課題は、核兵器禁止条約に参加し、核兵器廃絶に向けて世界の先頭に立つ、これに尽きる。(2019/8/4)
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2019年07月28日

【今週の風考計】7.28─「祇園祭」に厄除・無病息災への願いを込め

今年の祇園祭は、創始1150年のアニバーサリーイヤー。平安時代初期の貞観11年(西暦869年)、京の都に疫病が大流行したとき、厄災の除去を祈ったことから始まる。7月1日から1カ月間続く。

念願かなって、7月24日の後祭・山鉾巡行を観にいくことができた。山鉾巡行は、八坂神社に鎮座の牛頭天王を楽しませる神賑わいとしての行事。
蝉が御池通りの街路樹でうるさいほどに鳴いている。この日、朝9時にして32度を超える真夏日。烏丸御池をスタートした「橋弁慶山」を先頭に、山鉾11基が、それぞれの町の伝統と歴史と誇りをかけて、意匠を凝らした金糸銀糸のきらびやかな前・胴・見送り懸けや欄縁が台車に巡らされている。

最重量は12トンにおよび、最高は地上から山鉾のてっぺんまで25メートルになる。巡行に就く者は、武士の正装によるお供が二十数名、鉾に乗る人形方数名、コンチキチンと祇園囃子を奏でる鉦・笛・太鼓の囃子方40人、曳き手46人、そのほか約30人。
とりわけ北観音山、南観音山、掉尾の大船鉾、この3山鉾の壮観さには圧倒された。御池河原町の四つ辻で、竹を敷きならべて車輪を90度回す辻回しの掛け声や一気に力を合わせる曳き手の捌きは見事だ。

続く花傘巡行も2年ぶりの開催。色とりどりの花傘の女性や4花街の芸妓・舞妓が載る屋台、子ども神輿が練り歩く。
 翌日、帰宅して玄関口に粽を飾った。厄除けと幸せを祈願する「蘇民将来子孫也 大船鉾」の護符が添えてある。

その後、祇園祭の大切な神事は、山鉾巡行後の夕刻より始まるのを知った。24日夜の「還幸祭」である。17日から四条御旅所に鎮座していた3基の神輿を、白い法被姿の担ぎ手たちが、「ホイット、ホイット」の掛け声とともに、頭上に掲げて激しく揺さぶり、飾り金具の音を響かせながら八坂神社へ戻す神事。
さらに28日夜8時からの神輿洗い。四条大橋の中ほどで鴨川から汲みあげた水で、神輿を清める。31日は疫神社夏越祭(えきじんじゃなごしさい)。八坂神社内の摂社・疫神社で祇園祭を締めくくる最後の行事。
 神前に粟餅を供え、鳥居に茅の輪(ちのわ)を設けて厄除・無病息災を祈願する。茅の輪を八の字を描くように合計3回くぐると、厄除けのご利益があるという。(2019/7/28)
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2019年07月21日

【今週の風考計】7.21─参院選後、すぐに襲ってくる3つの危機

参院選が終わったとたん、安倍首相が封印し、国民の前に明かさなかった安倍・トランプ密約″が暴かれる。日本の「農産物や自動車・サービス」へ、米国から要求される法外な内容を、暗黙に受け入れるという疑惑取引である。
TPPを離脱したトランプ政権が、日本を2国間交渉のFTAに引きずり込み、8月中にも、日本が輸入拡大で大幅に譲歩する日米合意へもっていく狙いだ。24日にはワシントンで日米両国の事務レベル交渉が始まる。

さらにトランプ大統領はイラン包囲網を視野に、「有志連合」構想をブチあげた。19日には日本も含む世界60か国の外交関係者を招いて、非公開の説明会を開いた。ホルムズ海峡の安全確保に向けて、各国は護衛艦や要員の派遣あるいは経済的な支援を選択肢として挙げている。さっそく日本の防衛省が検討に入った。
それにしてもトランプ大統領の「自作自演」ぶりには呆れる。イランとの緊張を高めたのは、イランとの核合意を離脱し、イラン産原油の禁輸報復に加え、戦争ボタンを押す寸前までの冒険をしたトランプ本人にある。その責任はどうなるのか。
日本は25日のフロリダで開かれる、「有志連合」オペレーション検討会議に、どのような顔して参加するのか。大いに気になる。

日韓関係も緊張が深まるばかり。日本は徴用工問題と絡めての半導体材料の輸出規制など、韓国への経済制裁がエスカレート、対立は長期化しそうだ。G20大阪サミットで、自由貿易の原則を再確認したばかりなのに、政治的テーマに絡めての経済制裁は「禁じ手」とのそしりは免れない。韓国は日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)も再検討カードに入ると示唆する。
徴用工問題は、1965年の日韓基本条約で国家間の請求権は放棄されても、被害者個人の請求権は残っている。日本企業に補償を求める行為は、裁判所の判決でも認められている。この前提で、被害者の名誉や尊厳を回復するため、人道上の解決に向け、両国政府は全力を挙げるべきだ。(2019/7/21)
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2019年07月14日

【今週の風考計】7.14─いま迫ってくる「報道の自由」への牙

★「報道の自由のための国際会議」が、10日と11日、ロンドンで開催された。100以上の国から閣僚級の代表者や学者、報道関係者など約1500人が参加。サウジアラビア人記者カショギ氏殺害事件やミャンマーでの記者収監など、報道の自由の侵害状況や改善策について意見交換したという。
★だが英国とカナダ政府が主催する会議で、「権力を監視・批判するメディアが報道の自由」を、権力者とともに論ずる居心地の悪さは、ぬぐえなかったと漏らす参加者も多かったという。

★さて「国境なき記者団」の調査によると、昨年、報道によって殺害されたジャーナリストは少なくとも99人、前年より15%増えている。新たに投獄された被害者は348人、人質となった者60人。しかし殺害犯が責任を問われることはほとんどない。
★4月半ばには、2019年の「報道の自由度ランキング」も発表している。180カ国・地域のうち、トップはノルウェー、2位がフィンランド。米国は「報道の自由度」が、初めて「問題あり」に格下げ、「トランプ大統領のフェイク・コメント」やジャーナリストへの敵対的な風潮が要因となり、45位から48位に順位を落とした。

★日本は前年と同じ67位だが、沖縄の米軍基地などを取材するジャーナリストへのバッシング攻撃が指摘されている。とりわけ安倍政権の報道対応が国際的な関心事となり、官邸における新聞記者への質問制限について、米紙「ニューヨーク・タイムズ」が、<日本は報道の自由が憲法で保障されている民主国家だが、時には独裁政権のように振る舞っている>と批判している。
★記事は、これまでの官邸における経過を紹介したうえで、<情報が取得できなくなることを恐れ、多くの記者が当局との対立を避ける中、「日本の報道の自由」にとって東京新聞の女性記者は庶民の英雄になっている>と指摘。
 さらに、記者クラブ制度について、<多くの記者の調査意欲をそぎ、国民が政治について知ることを妨げている>という識者らの声を伝えている。同感だ。映画「新聞記者」がヒットしているのも頷ける。(2019/7/14)
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2019年07月07日

【今週の風考計】7.7─参院選の焦点、鋭く深く捉えよう!

安倍1強政治に、審判を下す参議院選挙が始まった。6年半という異例の長期政権の実態を明らかにし、人間の尊厳が大切にされ、希望を持って働き生活できる日本へ、どうすべきか真剣に考えたい。

この間の国会運営は、あまりにも議会制民主主義を無視した、強権・横暴の連続だった。官邸は内閣人事局を通じて各省庁の人事を掌握、官僚による改ざん・忖度が蔓延した。
 森友問題では財務省による公文書改ざん、加計学園問題では「総理の意向」を忖度し、厚労省・総務省では毎月勤労統計の不正が発覚、これらいずれも検証は不十分、説明責任は果たさず、「不都合な事実」の先送りに終始した。
さらに異常なのは、国会での強行採決のオンパレードである。知る権利が侵害される「特定秘密保護法」(2013年12月)、集団的自衛権の行使を可能にする「安全保障関連法」(2015年9月)、犯罪を計画段階から処罰できる「共謀罪処罰法」(2017年6月)、残業代ゼロをもくろむ「働き方改革法案」(2018年6月)、カジノ賭博を認める「IR法案」(2018年8月)、外国人労働者の受け入れを拡大する「改定出入国管理法」(2018年12月)などなどだ。

与党が圧倒的多数の国会審議は結論ありきで進み、政策論議は深まらないどころか、首相は批判に耳を貸さず、予算委員会すら開かず、国会を空洞化させて恥じない。自民党国会議員の暴言もきりがない。
会期末に野党が提出した安倍首相問責決議案に対し、参議院の本会議で自民党の三原じゅん子参議院議員は「安倍首相に感謝こそすれ、問責決議案を提出するなど、愚か者の所業、恥をしりなさい」と、言い募る。
 自民党の二階俊博幹事長までが、参院選・立候補予定者の激励会で「選挙を頑張ったところに予算をつけるのは当たり前」と、国民の税金による露骨な利益誘導に走る。この議員モラルの崩壊は底なしだ。

さらには野党やメディアを乱心・偏向などと漫画入りで攻撃する、発行元が出所不明の自民党パンフレットを自党の国会議員に各20部も配布。首相の遊説日程まで、街頭の有権者から浴びる叱声を恐れて隠す。
今回の選挙に備え、自民党の党利党略から参議院の議員定数を6つ増やし、そのうち4つは「特定枠」として、選挙運動をしない比例候補者を優先的に当選させる仕組みを作った。そこに自民党は2人を当てた。有権者の審判を仰がないまま、国会議員が誕生する悪法がまかり通る。

重大な関心テーマである老後の生活費が2000万円不足する年金問題も、<年金100年安心・消費税10年無用>などというだけで、根本的な議論から逃げ回っている。ある試算では65歳までに2000万円貯めるには、金利3%として、30歳から毎月2万8千円を充当させなければ不可能という。
しかし2人以上の世帯では貯蓄ゼロが急増、非正規雇用者が300万人も増え、労働者の4割を占める。賃金は上がらず、どうやって毎月3万円近くの原資を捻出できるのか。
 かつ現行のマクロ経済スライドでは7兆円も年金資金が削減される。ならば高額所得者も均等負担をし、負担と給付の総合的な見直しを通して、減らない年金額にするのが緊急テーマとなっている。
少子高齢化が進む上に、6年後の2025年には団塊世代が後期高齢者となり社会保障費の急増は待ったなし。どうするのか。

消費税10%の増税も、2度延期した時よりも経済指標の数字も傾向も悪化しているのに、断行すれば日本経済をメチャクチャになる。改憲どころではない。
10月22日の「天皇即位パレード」は、自民党本部前を通過するコースに変更され、安倍総理、菅官房長官がパレードの車列に加わる。改元「令和」や天皇即位の政治利用も注意が肝心。21日の投票に向け、しっかり政権の動きを見極め、悔いのない1票を行使しよう!(2019/7/7)
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2019年06月30日

【今週の風考計】6.30─「捏造」を免罪する植村裁判 その忖度判決

「植村裁判」とは何か。元朝日新聞記者・植村隆さんが執筆の紹介記事「元朝鮮人従軍慰安婦/重い口開く」(「朝日」大阪版1991年8月11日付)に対し、23年も経過した2014年2月6日号「週刊文春」で、西岡力氏が「事実を捏造して書いた記事」だと執拗に誹謗したのを機に、植村さんへの執拗なバッシングが集中し、かつ家族の命まで危険に晒されたため、やむを得ず2015年1月、法的手段に訴えた事案である。

その「植村裁判」の判決が、26日、言い渡された。傍聴していて、東京地裁103号法廷に響く女性裁判長の<相当性とか真実性とか公益性>とかいう言葉に、何度も首を傾げざるを得なかった。

異動した原克也裁判長に代わって、判決主文を代読しているのだが、被告西岡力氏と文藝春秋の表現と記事は「名誉毀損に該当する」が、その責任は免ぜられるとして請求を棄却したのである。
「理由の要旨」は、<各表現は、公益性を考えて行われ、意見論評の前提としている摘示事実には真実性があり、また真実であると信ずる相当の理由がある、かつ意見ないし論評の域を逸脱したものでもないから、被告は免責される>というのだ。

待てよ、「○○性」の連発だが、その判断はどういう基準でなされたのか。市民感覚からして、納得がいかないモヤモヤ感が堆積していた。その後、植村訴訟東京弁護団や原告・植村隆さんの声明を読んで、疑問が晴れると同時に事の本質について、理解を深めるのに役立った。ここにまとめておきたい。
相手を「捏造」などの激しい表現で非難した場合、その表現や論述に妥当性があり、かつ公益性や真実相当性を認めるには、それを裏付ける取材とそこで得られた確実な資料が必要である。これが、これまでの判決の前提である。
 だが本件の判決には、そのような根拠・資料がないばかりか、植村さんの執筆意図などについて確認取材すらせず、「捏造」と表現した西岡氏の記事を免責する。何事か。
 かつ西岡氏自身が、自ら名乗り出た元慰安婦の金学順氏の証言を、勝手に創作して自説を補強していたという。まさに自ら「捏造」行為をしていたことも、法廷で明らかとなった。

なのに、なぜか免責する。「慰安婦問題は解決済み」という政権の姿勢を忖度した判決としか言いようがない。(2019/6/30)
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2019年06月16日

【今週の風考計】6.16─争点隠して「年金詐欺」に奔る愚の行方

「年金が毎月5.5万円ほど不足するから、老後に備え2000万円貯蓄せよ」―金融庁の報告書が波紋を呼び、「<100年安心の年金>なんて大ウソ」と、怒りの声が安倍政権を直撃している。

しかも5分で読める報告書を、麻生担当大臣は「冒頭部分に一部、目を通しただけで、全体を読んでいるわけではない」と開き直り、あげくに、この報告書は受け取らないという愚挙に出た。
みずから諮問した市場ワーキング・グループが、昨年9月から12回も議論を重ね、「政府の政策スタンス」に沿って、かつ金融庁内部の了承を得てまとめあげた報告書まで、ついに「消してしまう」のだから呆れる。

ネット上は<年金詐欺(笑)ホント、そうだよな>であふれ、「#年金詐欺」というハッシュタグまで作られるほどだ。なかには「2000万円って、麻生さんの1年に使う“飲み代”だろ」―政治資金の使い途から推し量った意見まで、登場してきた。
現に、麻生氏が代表を務める資金管理団体「素淮会」の17年度・政治資金収支報告書によると、有名寿司店に高級和食店、馴染みの会員制サロンなどに支払った、飲食を伴う「会合」費は、1年間だけで計2019万6547円にも及ぶ。

この政治資金の使いみちからして、庶民とはかけ離れた感覚の持ち主である78歳の麻生さん、自分が年金を受給しているかどうかすら「記憶がない」のだから無理もない。

さらに許せないのは、5年ごとに年金の給付水準の長期的な見通しを示す、財政検証の結果を公表しないことだ。従来では6月初めに公表しているのだが、見通しによると約15兆円もの運用損が出るといわれている。参院選の投票に及ぼす影響が大きいから、「公表を参院選後に回す」争点隠しに躍起だ。
昨年の森友学園への国有地売却を巡る財務省の公文書改ざんといい、厚労省のデータ統計不正が発覚するなど、「都合の悪いことは全て隠滅・改ざん・破棄し、現場に押しつける」安倍政権の退廃ぶりは極まる。(2019/6/16)
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2019年06月09日

【今週の風考計】6.9─「キムリア」3350万円が投じた複雑な波紋

白血病で闘病している競泳女子の池江璃花子選手が、5日、1カ月ぶりに自分の公式サイトを更新し、「先日、数日間の一時退院をしました」と明かした。
「治療は続いており、体調が優れない日もあります。(中略)一日一日を何とか乗り越えています」と綴っている。白血病やリンパ腫の治療に役立つ画期的な新薬「キムリア」の投与は、検討されているのだろうか。早い復帰を願うだけに、いらぬ心配までしてしまう。

この「キムリア」、スイスの製薬会社ノバルティスファーマが開発した特効薬といわれる。だが価格は投与1回で3349万円もする。「キムリア」を使う患者は年間200人ほどといわれ、販売額は約72億円と見込まれる。
5月22日、日本での公的医療保険の対象となった。保険適用になれば、高額の新薬も一定の自己負担で利用できる。「キムリア」の場合、年収370万〜770万円なら自己負担は40万円程度。残りは公的医療保険から支払われる。
これまたノバルティスが開発した「ソルゲンスマ」も、難病の脊髄性筋萎縮症の遺伝子治療薬として、早ければ年内にも日米で承認される見込み。価格は2億3200万円ともいわれる。

それにしても新薬の価格算定をめぐる不透明さはぬぐえず「まるでブラックボックス」との批判が噴出している。
いま日本の年間医療費は42兆円を超える。そのうち7兆7000億円が薬代。がん治療薬の「オプジーボ」など保険適用される高額な薬が年々増えていることも関係している。飲み忘れなどの残薬は、年間500億円ともいわれ、過剰な処方による投薬を減らす対策も必要だ。
合わせて東京新聞のシリーズ<税を追う>が告発する、製薬会社71社で288億円という大学病院や学会への寄付など、「製薬マネー」にも、メスを入れなければならない。

<団塊の世代>が後期高齢者となる2022年以降、ますます医療費の増加に拍車がかかる。この10年で個人が負担する健康保険料は年間38万円が50万円となり、2022年には55万円となる。医療保険制度の抜本的な改善は待ったなし。(2019/6/9)
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2019年05月19日

【今週の風考計】5.19─市民感覚からズレる裁判官の「常識」

女性に対する“性暴力”への無罪判決が相次いでいる。父親からの性的虐待や泥酔させての準強姦事件などに、どう裁判官は向き合ったのか。市民感覚からのズレの大きさには呆れる。

21日は裁判員裁判が始まって10年になる。9万人という多くの市民が、重大な刑事事件を扱う裁判員裁判に参加してきた。20歳以上の有権者から抽選で選ばれた裁判員6人が裁判官3人と合議で審理にあたる。
もし強姦致傷罪に当たる事件を、裁判員裁判で担当したら、「防御・抵抗することは可能であった」などの理由で、無罪判決が出せただろうか。職業裁判官ならではの矜持、詭弁を弄した法解釈と訴訟テクニック、さらには上昇志向からくる行政への配慮・忖度などが、審理では働きがちである。

そんなことは気にせず、新鮮な気持ちで裁判に向き合える市民の参加は意義が大きい。これまでの書面中心の審理から法廷での証言が重視され、社会常識とかけ離れた判決を出させないうえで、裁判員制度は刑事裁判に大改革をもたらした。
こうした経過を踏まえるとき、元朝鮮人慰安婦をめぐる「植村裁判」についても、触れざるを得ない。いま捏造記者とバッシングされた元朝日新聞記者・植村隆さんの名誉棄損回復裁判は、札幌地裁での不当判決に抗し、札幌高裁で控訴審が行われている。

先月末の第1回口頭弁論で、植村裁判弁護団は、
<櫻井よしこ氏は、1992年ごろ元慰安婦の強制連行体験や境遇に、心を寄せた記事を書きながら、突然22年後になって、明確な根拠を示さずに「人身売買説」を主張し、植村バッシングを始めた。しかも櫻井氏は植村氏への裏付け取材を怠り、また資料の引用や理解で誤りを繰り返している。なのに「捏造」と思いこむ「真実相当性」があるから、名誉棄損に当たらないとする免責判断は、あまりにも公正さを欠き、歴史に残る不当判決だ>
と訴えている。

少なくとも櫻井氏がジャーナリストを標榜する以上、テーマが重大であればあるほど、論評や記事の裏付け取材は、常識も常識。裁判官がこの社会常識すら無視して判決を下すなら、非常識も極まる。(2019/5/19)
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2019年05月12日

【今週の風考計】5.12─追加関税25%が世界経済にもたらす弊害

米中での関税制裁をめぐる激しい攻防は、チキンレースの様相を呈してきた。米国は昨年7月以降、中国製品2500億ドル(約27兆円)に対する追加関税を、3回にわたって発動している。10日には、昨年9月、2000億ドル(約22兆円)の中国製品に課した10%の追加関税率を、さらに税率25%へ引き上げる「制裁第3弾」を発動した。

その制裁に加え、トランプ大統領は、立て続けに過酷な中国への関税制裁を拡大し、まだ制裁対象になっていない3000億ドル(約33兆円)規模の製品にも、追加関税を課す準備を始めた。この「制裁第4弾」まで発動されれば、中国からの輸入品には全て追加関税が課されることになる。
米国の市民に身近なハイテク製品、スマホやノートパソコン、デジカメ、玩具などにも25%の関税が上乗せされる。値上がりは必至、生活を直撃する。これらのハイテク製品は、いずれも世界中から部品を調達し、中国で組み立てている。米国アップルが25%の追加関税を小売価格に転嫁した場合、主力モデルのアイホンは160ドル(約1万7600円)の値上げになると試算している。

日本や韓国、台湾などアジアに広がるサプライチェーンへの影響も避けられない。ユニクロも中国の工場から米国市場に衣類などを輸出している。主力の衣類が25%関税の対象となれば、大きな影響を受けるのは避けられない。中国での自動車やスマホ需要、ハイテク製品の輸出が縮小すれば、日本の電子部品や工作機械の受注も、「リーマン・ショック級」の打撃をこうむりかねない。

米中の貿易戦争が激しくなればなるほど、両国が排他的な「ブロック経済圏」を築き、世界経済が混乱する事態に追い込まれる。とりわけトランプ大統領が、国際的な枠組みからの「離脱」、そして「制裁」に走り、この2年ほどの間に<TPP、パリ協定、イランとの核合意、ユネスコ>の全てから離脱した。最悪のWTO離脱までささやかれる始末。自らの覇権のために世界を巻き込むことは許されない。(2019/5/12)
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2019年05月05日

【今週の風考計】5.5─見えぬ<ネット・ゼロ・エミッション>の姿

フランス本土の広さを持つ南極最大のロス棚氷が、これまでの3倍近い速度で融解している。昨年夏、世界を襲った異常気象は、北半球の上空1万メートル付近を吹くジェット気流の変化が原因─科学者の国際グループが、相次いでショッキングな見解を発表した。まさに地球温暖化による気候変動、海水と大気の温暖化が原因だと指摘している。

8日から気候変動に関する政府間パネル(IPCC)総会が、「京都議定書」誕生の地・京都で開かれる。2015年に採択されたパリ協定の実現に向け、シンポジウムをはじめ各種の討議が12日まで重ねられる。
特に昨年10月、IPCCが2050年までに「地球の気温上昇を1.5℃までに抑える」<ネット・ゼロ・エミッション>という目標を提起した。これは人間活動による温室効果ガスの排出量を、実質的にゼロにする目標であり、脱化石燃料へと舵を切る大々的な経済・社会の抜本的転換が必要となる。

ところが日本政府は、大規模排出国の一員であるにもかかわらず、石炭火力の廃止について明言せず、石炭火力発電所を国内の各地に新設する計画まで打ち出した。かつ途上国の火力発電建設には、莫大な融資を続けている。こうした措置は世界から厳しく批判されている。
あげくには「低炭素電源」の要になるとして、原発の活用まで声高に唱えている。脱炭素経済へ移行するうえで核となる炭素税と排出量取引についても、取り組みは不十分だ。現行の日本の炭素税率は、世界と比較して非常に低く、排出1トン当たり289円でしかない。フランスは5600円だ。世界レベルの炭素税を導入しなければ、温室効果ガスの抑制にはつながらない。

6月28日から大阪で開かれるG20では、日本政府としての「2050年への長期戦略」を、どのような内容で明らかにするのか、提出が義務付けられているだけに、G20議長国となる日本の真価が問われる。
9月23日にはニューヨークで国連気候変動サミット、11月にはチリで気候変動枠組条約・締約国会議COP25が開催される。もう待ったなしの日程が迫っている。(2019/5/5)
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2019年04月28日

【今週の風考計】4.28─AIやロボットを超える「余暇」の大切さ

10連休のゴールデンウイークが始まった。旅行、スポーツ、孫と遊ぶ、ボーッと充電もあろう。仕事を離れて自由に使える時間=余暇を楽しみたい。
だが休みをとれない人もたくさんいる。4月から施行された「働き方改革法」は、残業時間の罰則付き上限規制が導入されたとはいえ、働かせ放題につながる「残業代ゼロ制度」の導入など、長時間や過密労働の解消にはほど遠い。

そのうえ、急速に進化する「人口知能(AI)」やロボットの導入によって、「自分の仕事がAIなどで自動化され、失職するのではないか」─そんな危機感を覚えている人も増えている。あるシンクタンクのレポートでは、「今後20年以内に、労働人口全体の49%が人工知能(AI)やロボットに仕事を奪われる」という。

いかに対抗するか。まずロボットが持てないスキルを身につけることが、自分の仕事を守る鍵となる。ロボットは想定外の動きに対応できない。人間はチームワークよろしく、臨機応変に対処できる能力に優れている。異常な事態に直面しても状況を見極め、複数の仕事をこなしながら、協力して事態を解決する。
これは人間だけが持つ「社会性」にあるという。他人の感情を理解し、自分とは違う他人の視点から物事を観察し、状況に対処する能力に優れる。この社会性と柔軟な対応力を発揮すれば、ロボットにはできない仕事がこなせる。それには「しっかり余暇を楽しむこと」であると、欧米の科学者は指摘している。

余暇を楽しむという行為は、ロボットやAIにはできない。すでに多くの企業や組織は、社員の「燃え尽き症候群」を防ぎ、生産性を向上させるには、余暇が重要であるという認識を持ちつつある。私たちは余暇を楽しむことで、よりよい思考が生まれ、創造性のある仕事ができるようになる。
その「余暇」を、上からの押しつけでなく、みずからが望むときに有効に使えるよう、メーデーを前にして、「政労使」は真剣に考えてほしい。(2019/4/28)
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2019年04月21日

【今週の風考計】4.21─ブレグジットと女性ジャーナリストの死

★ついに英国の「EU離脱」問題=ブレグジットは、女性ジャーナリストの死にまで行き着いた。英国の領土である北アイルランド・第2の都市ロンドンデリーで、18日深夜に暴動が起き、取材していた女性ジャーナリスト(29歳)が被弾し死亡した。
★警察が市内の複数の過激派拠点を家宅捜索したところ、反発を招き暴動に発展。銃撃戦での悲劇である。21日のイースターを前に、アイルランド独立につながった<1916年イースター蜂起>を祝い、英国への帰属に反発する武装グループ「新IRA」が関与したテロ事件とみて捜査している。

★英国の「EU離脱」問題が、再び北アイルランド内で、英国からの独立・アイルランドへの帰属を望むカトリック教徒と英国残留を望むプロテスタント教徒の対立を誘発させかねない。さらに国境管理にも複雑な暗い影を落としている。
★アイリッシュ海を隔てて、英国の向いにあるアイルランドは、れっきとした独立国である。かつEUの加盟国である。だが、アイルランドの北の一部は、英国の領土・北アイルランドが占める。同じ島の中にアイルランドと北アイルランドの国境が500キロにわたって存在している。

★今は国境が開かれているので、自由にアイルランドに行けるが、もし英国が「EU離脱」すれば、チェックの厳しい国境に一変し、大きな影響が出るのは間違いない。こうして小さな地域に押し込められる北アイルランドの人々にとって、国境付近に監視塔や軍の検問所が乱立する「ハード・ボーダー」への逆行は、美しい風景が破壊され、民兵組織の攻撃で多くの血が流れた日々を思い出させるのだ。
★ようやく1998年のベルファスト合意で、アイルランドと北アイルランドの国境が開放され、物と人が自由に往来できるようになった。だが20年後に、またも紛争が再燃するかと慄く北アイルランドの人々は、多くがEUに残り今の平和と自由を維持したいと思っている。

★くしくもイースターの21日は、エリザベス女王93歳の誕生日。在位は世界最長の67年に及ぶ。この英国を混乱の極みに追い込んでいる「EU離脱」問題は、10月31日まで期限が延長されたものの、深刻な分断の傷が、ますます鋭く深く英国の人々や心を痛めつけている。(2019/4/21)
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2019年04月14日

【今週の風考計】4.14─「F35」147機・6兆円購入と政治の荒廃

岩屋防衛相は、日本の軍事費が「今後5年の間に、GDP比で最大約1.3%に達する」旨の見解を、9日の昼、国会で明らかにした。
これまで日本は軍事大国化への歯止めとして、軍事費を国内総生産GDP比で1.0%以内に抑えるのが原則である。しかし米国トランプ大統領の増額要請に抗しきれず、今年の軍事費は5兆円を超え、過去最高を更新した。それでもGDP比では0.929%と1%以内に収まっていた。

ところがここにきて、さらなる最新鋭ステルス戦闘機「F35」の爆買いなど、軍事費の予算総額を約27兆円も積み増す動きが急だ。いよいよ自民党が掲げる軍事費のGDP比2%へと舵が切られ始めている。

9日の夜、「F35A」が青森県三沢基地から東へ135キロの太平洋上に墜落した。すでに5日が立つ。今なお水深1.5キロの海底に沈んでいる機体は、1機116億円。米国の軍事史上、「最も高価な最新鋭ステルス戦闘機」である。
オッとどっこい、米国政府の監査院はF35戦闘機シリーズには、966件の未解決の欠陥があると指摘していた。昨年9月の墜落に始まり、パイロットの生命維持装置である酸素レベル低下事態が6回、タイヤの耐久性への疑念、一時は飛行中止の措置まで取られている欠陥戦闘機だ。カナダでは「F35」65機の購入を白紙に戻している。

だが安倍政権は、この欠陥戦闘機「F35」43機の購入に加え63機の追加発注、さらにヘリ空母「いずも」と「かが」に搭載する「F35B」42機の調達まで決めた。1機あたり運用30年とみて、その整備費307億円を合わせると、なんと合計147機の購入・整備費は6兆2000億円に達する。
人の命を奪うだけの軍事費の増額に向け、躍起の政治家、次の事実にどう顔を向けるのか。「F35A」1機分116億円あれば、日本全国に90の認可型保育所が新設できる。また福島県から原発事故で自主避難した人たちへの住居支援、このほど打ち切られたが、その額は約80億円、給付型奨学金だって105億円、1機分の額より少ない。どちらが命に貢献するか、はっきりしている。(2019/4/14)
posted by JCJ at 13:39 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月07日

【今週の風考計】4.7─一刻も早く消費税10%中止を決断せよ!

もう消費税増税10%は止めるしかない! 10月に実施すれば、日本経済も国民生活もズタズタだ。
このほど日銀が発表した企業の景況感を示す業況判断指数は、企業規模を問わず軒並み7〜10ポイントも下がった。8年前の東日本大震災直後の11ポイント低下に匹敵する。

勤労者の実質賃金は2カ月連続で前年比1・1%減少。消費の冷え込みは続くうえに、米中の貿易摩擦や英国のEU離脱による輸出の不振が、日本経済を揺さぶり、国民生活にしわ寄せがきている。
そこへ消費税増税10%を浴びせたら、「令和」の世に東京オリンピック開催などと、浮かれてはいられなくなる。

あるシンポジウムで、岩田規久男・前日本銀行副総裁までが「日本は年金生活者や非正規労働者といった消費税増税に弱い人が多い」と語り、デフレ脱却のため「増税は凍結すべきだ」と訴えるに至った。これまでの消費税アップが、ことごとく個人消費の冷え込みを促進し、国民が貧困化していく事実を直視すべきだという。
安倍政権のもと「アベノミクス」を担当した、元内閣官房参与の藤井聡・京大教授も「消費税増税自体が景気を悪化させ、財政の基盤を破壊する。消費税増税は影響が半永久的に続く」と懸念している。

そもそも消費税は経済を不安定化し、貧しい者ほど負担が重くなる逆進性を持つため、国内の所得格差は拡大し、しかも消費を減退させ、デフレを継続させる欠陥税制であるのは、はっきりしている。
いくら軽減税率の導入とかポイント還元だとか、弥縫策を取ろうとも、その本質は変わらない。10月の消費税10%の凍結・延期の判断は、5月20日前後がデッドラインと言われるが、安倍首相は、もう一刻も早く中止を決断すべきだ。(2019/4/7)
posted by JCJ at 10:16 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする