2021年06月06日

【今週の風考計】6.6─いま必要な“変異ウイルスの災典”を避ける決断

『オリンピック 反対する側の論理』(作品社)という本が注目されている。著者のジュールズ・ボイコフは元五輪選手で、米パシフィック大学政治学教授を務める。
 五輪開催に伴う膨大な経費、開催都市の再開発がもたらす環境破壊、選手を使い捨てにする過度な商業化など、その弊害を告発し、世界に広がる五輪反対の動き、その論理と背景を明らかにしている。

7月23日の東京五輪開会式まで50日を切る中、世界各国のメディアが「東京五輪中止」の記事や論評を発信する度合いが加速している。
 この3日には、英国の高級紙「ガーディアン」が東京五輪中止を報道。同日、フランスのニュース専門放送局「LCI」が、新型コロナ禍での東京五輪について「大失敗のリスクがある」と強い警鐘を鳴らし中止を強く要請した。
それも当然、様々な変異ウイルスが東京五輪に持ち込まれるリスクは否定できない。平和の祭典のはずの東京五輪が、“変異ウイルスの災典”になりかねない。IOC“ぼったくり男爵”バッハ会長への批判も強まるばかりだ。

東京五輪・パラに世界各国から選手が1万5千人、そして大会役員・報道陣など7万8千人が一緒にやってくる。海外の選手・大会関係者9万3千人は「特例入国」扱いとなり、コロナ検疫のための施設隔離、すなわち「停留」が免除され、入国後ただちに練習などができる。
 開催中は東京・晴海の「選手村」やホテルに選手・関係者を隔離し、外部との接触を制限する「バブル方式」で感染を防ぐという。
だがこの隔離「バブル方式」に、延べ30万人の通訳、警備、運転、清掃などに携わる国内関係者が、公共交通機関で自宅などから通い仕事に就くことが判明した(東京新聞6/4付)。30万人中、ワクチンの用意は2万人分しかない。
 これでは「停留」免除されている選手や関係者が、新たな変異株を持ち込む可能性に加え、外部と隔離する「バブル方式」のほころびが、会場や「選手村」などに出入りする国内関係者に感染を広げる危険性は避けられない。

コロナ感染対策・分科会の尾身茂会長は、「パンデミックの状況では、普通は五輪開催はない…、なぜやるのか、国がはっきりとしたビジョンと開催理由を述べることが重要だ」と、菅首相による説明のみならず、JOCの責任についても言及した。
 さらに海外から来た「選手や大会関係者が日本で感染し、医療制度や検査体制が非常に脆弱な発展途上国に持ち帰るリスクがある」とも指摘した。
コロナ対策の専門家らが、近日中に開催に伴うリスク評価の提言をする。感染爆発の「ステージ4」では開催は難しい。感染急増の「ステージ3」なら最低でも無観客にというのが、大勢になってきた。
「観客もいない、選手は隔離の五輪って、塀の中の運動会みたいじゃない!」─これじゃあ、中止!それしかない。(2021/6/6)
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2021年05月30日

【今週の風考計】5.30─住民を監視する「土地規制法案」の危ない内容

自分が持っている土地・建物は自分のものだ。なぜ政府が調査・監督に入り、個人情報を収集のうえ、売買までチェックするのか。
 6月16日の会期末まで残りわずか。ワクチン接種で大変な最中、国会では基本的人権を制限するトンデモナイ法案が、強行採決されようとしている。「土地規制法案」だ。

政府は、同案の目的は「安全保障の点から重要な施設の機能阻害行為が行われるリスクに対応する」ため、海外からのスパイ潜入や拠点づくり、破壊行為を未然に防ぐ目的で、土地や建物の購入・売買に規制をかけるという。
 自衛隊や米軍の基地、海上保安庁の施設、原発などの「重要施設」がある、周囲1キロ以内の土地や建物、さらには国境の離島などを加え計450カ所以上を「注視区域」に指定し、区域内の土地・建物を利用・売買する場合には、所有者や法人などに調査が入り、売買・利用の中止について勧告や命令を出すことができる。
さらに司令部機能を有する基地や施設周辺150カ所以上は「特別注視区域」に指定し、一定規模の土地・建物を売買する際には、事前の届け出を義務づけ、監督官庁からの査察や調査を受けなければならない。従わなければ、懲役2年以下または罰金200万円以下の刑事罰を科す。

しかも集めた個人や法人の調査情報を、内閣情報調査室や公安調査庁など政府機関の協力のもと必要な分析に回す扱いを否定しない。名前や住所、国籍、土地の利用状況にとどまらず思想・信条や所属団体、交友関係、海外渡航歴など、際限なく広がる恐れがある。
 肝心の「機能を阻害する行為」の内容がアイマイだからだ。法成立後に「基本方針」を閣議決定し、その内容に基づき施行するという。これでは国会のチェック機能は働かず、恣意的な運用のみならず、日常的に市民が監視され、人権侵害につながる危険は極めて大きい。

防衛省本庁のある東京・市ケ谷を考えてみよう。まず周辺1キロ以内は「特別注視区域」に指定されるから、既存のコンビニやビルを売買する際には、事前の届け出が義務づけられ、政府官庁から売買の相手先などの調査が入る。
 個人の土地や建物の売買だって、スパイの購入防止という目的からすれば、事前提出・調査のプロセスは免れない。それを懸念して、すでに不動産の売却価格が下落している。
 埼玉県にある米軍・所沢通信基地の周辺1キロには、並木通り団地800戸の住宅が密集している。その住民を国が情報収集の対象にして監視するのだから、穏やかではない。

多くの米軍基地や自衛隊施設がある沖縄県民に至っては、誰もが調査規制対象となり、知らないうちに監視下に置かれる。
 あの自民党の杉田水脈議員が、鉄面皮にも「土地規制法案」を審議する委員会で、「辺野古基地建設に反対する市民の食べた弁当ゴミが、米軍基地の機能を阻害する恐れがある」と、同法案の拡充を求める発言までしている。狙いがはっきりした、廃案しかない。(2021/5/30)
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2021年05月23日

【今週の風考計】5.23─自民党・政治家の暴言や“逆ギレ”弾圧を許すな

★菅政権の幹部や自民党議員から、驚くべき内容の発言が続く。しかも説明責任は果たさず、メディアへ抗議や圧力をかけるとは何事か。政治家たるもの、事実を無視し、無知による誤った認識に基づく発言は許されない。

★山谷えり子参議院議員は、LGBT法案をめぐる自民党の会合で、「体は男だけど自分は女だから女子トイレに入れろとか、アメリカなんかでは女子陸上競技に参加してしまってダーッとメダルを取るとか、ばかげたことが起きている」などと、性自認に対する悪質な発言をした。
★さらには「道徳的にLGBTは認められない」「人間は生物学上、種の保存をしなければならず、LGBTはそれに背くもの」など、性的マイノリティを差別する驚くべき発言が、他の自民党議員から繰り返された。

★自民党・林幹事長代理も、「根掘り葉掘り、党の内部のことまで踏み込まないでもらいたい」と、参院選の広島選挙区・河井案里陣営へ提供した1億5千万円問題にフタをした。資金提供を決めたのは誰か。自民党・二階幹事長は「自分は関与していない」という。
 当時の甘利明・選挙対策委員長も、「私は1ミクロンも関わっていない」と否定。裁判中の河井克行被告も、「妻の選挙買収には1円も使わなかった」という。
 誰が決め、何に使ったのか、そのうち1億2千万円が国民の税金からなる政党交付金である以上、その使い道を国民の前に明らかにするのは当然だ。フタをさせないためにも、「根掘り葉掘り」糺す必要がある。

★自民党の細田博之元官房長官は、党内の会合で沖縄でのコロナ感染拡大に関連して、「緊急事態とか、まん延防止とか、そんなものに頼っても駄目。沖縄県こそ来県する人への規制、県境封鎖などコロナ対策は独自に取るべきだ。国に頼るべきではない」と、国の責任は棚上げにして、沖縄県に特別な対策を強いる差別的発言をしている。

★岸信夫防衛大臣は、<ワクチン予約システムに欠陥>と指摘する数多くの報道に対し、「悪質な行為であり、極めて遺憾だ」と語り、抗議文を朝日新聞出版と毎日新聞の2社に限って郵送した。
 河野太郎・ワクチン接種担当大臣も「面白半分」の妨害行為であるかのような発言を口にしている。
 さらに岸防衛相の実兄・安倍晋三前首相が、ツイッターに「朝日、毎日は極めて悪質な妨害愉快犯と言える。防衛省の抗議に両社がどう答えるか注目」と投稿。
★これには開いた口が塞がらない。呆れるばかり。安倍前首相こそ森友問題で139回、「桜を見る会」関連で118回の虚偽答弁をおこない、国会審議を1年以上も空費させた「極めて悪質な妨害愉快犯」ではないか。「もり・カケ・桜」の疑惑に答えるのが先だ。

★政治家として、欠陥が明らかにされたら真摯に反省し、解決に向けてどう対応するか、国民に開示すべきで、メディアへ抗議するとは筋違いも甚だしい。驕りたかぶった“逆ギレ”弾圧や発言・投稿を許してはならない。(2021/5/23)
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2021年05月16日

【今週の風考計】5.16─ワクチン接種をめぐるドロナワ処方箋の行方

<7月末までにワクチン2回接種、1日の接種100万回!>─政府の大号令ラッパが鳴り響く。だが「ワクチン狂騒曲」に翻弄される自治体や65歳以上の高齢者3600万人は、テンワヤンワの騒動に放り込まれた。
 接種券が届いても、予約の電話がつながらず、ネットのサイトも停止、役所の窓口には予約を求めて高齢者が殺到し、右往左往するばかり。

世界各国は、1年前からワクチン接種へのロードマップを作り、スムーズな実施に向け全力を挙げてきた。米国では、18歳以上の約1億900万人がワクチン接種を終え、接種率は45.8%だ。
 日本はどうか。ワクチン接種率は2.1%、世界で129位、OECD加盟国37カ国の中で最下位。韓国は7.1%の世界98位、日本はミャンマーの3.2%よりも低い。
緊急事態宣言3回目になって、大慌てでワクチン接種の大号令、だが対策はドロナワで混乱を招くばかり。医療従事者への先行接種すら終わらず、1回でも接種を受けた高齢者は1%程度にすぎない。
 接種の遅れや政府の対応に、楽天・三木谷社長も東京五輪の開催は「自殺行為だ」と声を上げる事態。さらに専門家の怒りも爆発、1道2県に緊急事態宣言が追加発令された。

急きょ防衛省が東京・大阪に設けたワクチン接種大規模センター、17日から予約を受け付ける。自衛隊の医官・看護官280人が中核を担うとはいえ、会場の衛生保持のノウハウがないので、結局は民間3事業者に計36億8千万円で委託する。
 大手町の東京会場は「日本旅行」と約19億5千万円で、中之島の大阪会場は「東武トップツアーズ」と約9億7千万円で契約し、会場運営などを委託。民間看護師1日200人の確保は、人材派遣会社「キャリア」と約7億6千万円で入札契約している。
1日当たり東京で1万人、大阪で5千人へ認可申請中の米国モデルナ社製ワクチン接種を見込むが、どこまでスムーズに対応できるか予断を許さない。2重予約や異なる製造会社のワクチン接種による副反応の心配もある。
 さらに政府はコロナ・ワクチン確保のため、5120億円の追加支出を決定した。米国のファイザー、モデルナ、ノババックス3社から計2億5千万回分のワクチン購入に充てるという。だがその配分や使い分けは見えてこない。

変異株の英国型や南ア型に続きインド型の猛威が広がり、従来のワクチンが効くか不安が増している。ある研究機関の抗体検査によると、2回ワクチン接種した人の9割には、変異型の感染にも予防効果があるとのうれしい報告も発表された。
とはいえ「ワクチン狂騒曲」が終演するのはスズ虫が鳴く秋ごろと、予測する有識者の意見は無視できない。ワクチン接種のドロナワ対応のツケに他ならない。(2021/5/16)
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2021年05月09日

【今週の風考計】5.9─「シフト制・ギグ労働」の劣悪な事態を直ちに是正せよ!

3回目の緊急事態宣言が、またも延長。約束は守れず、出口は示せず、ただただ自粛と休業要請を押しつけるだけ。もういい加減にせよ。
 とはいえ筆者もまた“巣ごもり”に逃避し、市井の人々の苦しみや実態に、どれだけ目を向けてきたか、高見からの物言いに終わっていなかったか、忸怩たる思いや反省がつのる。
コロナ関連倒産は、この4月末までに1400件を突破。飲食業に限れば、この1年間で230件が倒産した。解雇・雇い止めも10万人を超える。完全失業者数は198万人、失業率2.9%、非正規労働者は2066万人に及ぶ。

ここにきて、一定期間ごとに仕事日を決めるシフト制で働く飲食店従業員やデリバリーらが立ち上がった。休業手当の適用拡大や最低シフト保障などを求めて、厚労省に要請書を提出した。
 理由は、政府の休業要請に対応するとして、会社が一方的にシフトカットを進め、シフトが未確定を理由に、本人に休業手当を支払わないケースが増えてきているからだ。
 これまで厚労省はシフトが未確定の期間は、会社には休業手当を支払う義務はないとしてきた。この是正を求める要請だ。
昨年7月、「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」が創設され、コロナを理由とする休業には、8割の賃金補償がされる。だが会社は休業手当を払う範囲が広がると、将来的に困るので申請したがらない。政府から支給される休業手当金なのに、それをもらわず犠牲だけをシフト制労働者に強いている。

その結果、統計上には表れない「実質的失業」「隠れ休業」とも呼ぶ「見えない失業者」が146万人となった。雇用関係はあっても仕事が激減のシフト制勤務の非正規労働者が、この状態に陥りやすい。
 「完全失業者」198万人、「休業者」244万人、「見えない失業者」146万人、これらを加算すれば失業率は2.9%どころか、6%に上るのは間違いない。

さらに「ウーバーイーツ」が、料理などをデリバリーする配達員への報酬を、3割も削減する新体系を10日から全国に拡大する。しかも報酬の基準・内訳が示されず、「1回の配達が100円台」「距離にかかわらず一律300円」といった事例が頻発している。
 「ウーバーイーツ」の配達員は、いわゆるギグワーカーと呼ばれ、会社と雇用関係にある労働者ではなく、個人事業主扱いにされる。そのため労働法や最低賃金が適用されない上に、解雇に関する制限もない。
また会社の福利厚生や社会保険制度が使えず、事故にあっても労災保険すら適用されない。まさに会社にとって低報酬で好きなように働かせられる「捨て駒」として、位置づけられているのが実態だ。
 米国バイデン政権が進める「PRO Act」法案、すなわちギグワーカーなどの労働組合結成や労組活動を促進し、生活水準向上を目指す労働法改革が、日本でも急がれる。(2021/5/9)
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2021年05月02日

【今週の風考計】5.2─小惑星「リュウグウ」の石に有機物が含有!

地上から約400キロメートル上空に建設された巨大な国際宇宙ステーション、日本の上空を光りながら横切る航跡は、肉眼でもとらえることができる。
その船長に宇宙飛行士の星出彰彦さんが就任した。日本人としては2人目だ。1周約90分のスピードで地球を廻りながら、地球に帰還するまでの6カ月、実験・研究、地球や天体の観測などの指揮をとる。この観測を通して未知の領域に迫り、新たな成果を積み上げてほしい。

ここにきて中国も29日、独自の宇宙ステーションのコアモジュール「天和」を打ち上げた。来年には総重量約66トンのT字型の施設になる予定だという。完成から10年以上の寿命を持つ計画で、3名から最大6名までの宇宙飛行士が6カ月間滞在できる。
 3年後に国際宇宙ステーションが退役した場合、これに代わる唯一の有人宇宙施設になる。中国政府は2030年までに米国と並ぶ「宇宙強国」となる目標を掲げ、今年6月には火星に無人探査機を着陸させる予定だ。

宇宙の覇権争いにならぬよう、科学者の国際的な協力や責任・良心に期待するところが大きい。まだまだ宇宙の謎は尽きない。その解明に向けて、日本の宇宙科学者が積み上げてきた成果も見逃してはならない。
 昨年12月、日本の宇宙探査機「はやぶさ2」が、地球から約3億キロメートル離れた小惑星「リュウグウ」から、小石や砂を採集し持ち帰った。打ち上げから6年の旅路を経て、もたらされた試料の解析が進んでいる。
とりわけ有機物に富む天体とみられる小惑星「リュウグウ」は、直径900メートルの“おだんご”のような球形で、表面は黒っぽく、地球と火星の間を公転する軌道を、7時間半ほどの自転をしながら動いている。
 また30万年〜800万年前のある期間に、現在よりも太陽に近づく軌道にあり、太陽光に焼かれて表面の物質は赤く変化し、表面の物質分布の状況が火星に似ているという。

このほど宇宙航空開発機構(JAXA)は、小惑星「リュウグウ」から採集した石に、さまざまな波長の光を当てて観察したところ、吸収光の波長から炭素を含む有機物や含水鉱物の特徴を確認した。
 また小惑星「リュウグウ」の石に、波長の長い光を当てると、最大で直径3ミリ程度の色が異なる粒子が発見された。こうした粒子は含水鉱物の特徴を示し、小惑星「リュウグウ」の成り立ちに迫る鍵ともなる。
太陽系が誕生した約46億年前の様子を知る手掛かりを得るのはもちろん、小惑星「リュウグウ」の有機物が、どうやって地球にもたらされたか、そのメカニズムが分かれば、地球上に存在する海水や生命の起源を探ることにもつながる。さらなる研究の成果に期待がつのる。(2021/5/2)
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2021年04月25日

【今週の風考計】4.25─コロナ禍の陰で目白押しの「悪法」、拙速採決を許すな!

▼3度目の緊急事態宣言が発せられた! 国民が対応に追われるなか、国会では6月16日の会期末をにらみ、目白押しに並ぶ問題法案の拙速審議や強行採決への策動が強まっている。政府が提出した法案は63本、そのうち3本以上を束ねた法案が26本に上る。
デジタル監視法案─新規に制定する法案4本と59本の関連法案を束ねる法案1本を加え、すべて一括審議するという乱暴な国会運営が進んでいる。
 それもデジタル庁を9月に設置したいがため、衆議院では27時間の拙速審議を強行、かつ28項目の付帯決議を付けて6日に衆議院を通過させるや、14日から参議院で審議入り。連休明けには強行採決に持っていく構えだ。 
▼そもそもこの法案、個人情報を企業や政府などが、本人の同意も得ずに利活用できるようにするのが狙いだ。憲法が保障するプライバシー権を侵害し、個人情報の恣意的な利用、さらには国が一元管理し、国民監視のツールとして悪用する危険が、きわめて大きい。

入管法改正案─16日から審議入りしたが、その内容が問題だ。この3月には名古屋市の入管施設で体調が悪化した33歳のスリランカ人女性が死亡した。また在留資格を失い強制退去の不安にさらされる人の中には、過酷な労働を強いられた技能実習生、学費が払えず退学を余儀なくされた留学生もいる。
 さらに難民申請を3回以上行った申請者は強制退去の対象となる。日本は難民認定率が極端に低い。年間0.4%、50人に満たない。ドイツや米国は25%以上の認定をしている。この法案は移民・難民の排除につながり、「国際的な人権基準を満たしていない」と指摘されている。

75歳以上の医療費・窓口負担2倍化法案─単身で年収200万円〜383万円未満、あるいは夫婦ともに75歳以上・年収合計320万円以上の該当者は、医療施設での窓口負担が1割から2割となり、合計約370万人が自己負担は2倍になる。
 負担増は年間で2万2千円と試算される。年収が383万円以上の高齢者はすでに3割負担だ。とにかく老人保健制度の国庫負担が35%では少なすぎる。せめて45%に戻すべきだ。
 
改憲手続法・国民投票法─自民が5月6日に採決を提案。トンデモナイ。コロナ感染拡大を受けて、菅首相を初め「緊急事態条項の創設」を求める声が大きくなっている。しかも、これを機に改憲へもっていこうとは、まさに火事場泥棒″ではないか。
 政府のコロナ対応の失敗を憲法の不備にするのは、御門違いも甚だしい。十分な補償や抜本的な検査拡大に全力を挙げれば、憲法を変えなくても対応できる。
 まず多くの国民は、憲法改正論議など望んでいない。やってほしいのはコロナ対策であり、私たちの命と生活を守る施策であり、公文書改ざんや官僚接待、さらには「政治とカネ」で地に堕ちた議員モラルを正すことだ。
 まずは広島・長野・北海道の選挙結果を、よく汲みあげるのが先。(2021/4/25)
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2021年04月18日

【今週の風考計】4.18─トリチウム汚染水に潜む深刻な未解決問題

ついに政府は、「3・11フクシマ」原発の汚染水を、海に放出する方針へと舵を切った。いま福島原発には処理水タンクが約1000基(容量137万トン)、すでに貯蔵量は125万トン、9割を超え1年後の秋には満水になる。これ以上タンクの増設は敷地の確保も含め、限界だとして海洋放出するという。
トリチウムは体内に取り込んでも排出しやすく健康被害は起こりにくい、海外でも原発から出る「トリチウム水」は海へ放出され、問題ないと、政府は主張している。

だが福島原発の汚染水は、トリチウム以外の放射性核種が見つかった経過がある上に、通常運転の原発から排出される処理水とは性質が異なる。
 通常の原発から海に放出される「トリチウム水」は、無機トリチウムのため、魚は摂取しても、どんどん排出するため、生体内半減期は12日と短い。
 福島原発の「トリチウム水」は、はじめは無機トリチウムでも、時間の経過とともに、タンク内の微生物に取り込まれて有機結合型トリチウムに変化している。これが海に放流されると、魚が栄養源として摂取し体内に蓄積される。
この有機結合型トリチウムの濃度は、海洋にある有機物の百万倍にもなる。生体内での半減期は40日から1年に及ぶ。国内や海外の原発から放出される「トリチウム水」とは、全く違うのだ。

福島原発の処理水に含まれるトリチウムは、総量が約860兆ベクレル。それを年間の放出水準22兆ベクレル以下、すなわち処理水1リットル当たり1500ベクレルまで薄める再処理をして海に流す。
 タンク1基分1370トンを再処理・希釈するには、なんと500倍の68万トン、原発敷地を埋めるタンクの半分500基分の海水が必要となる。そして1年間に3万1000トンの処理水を、40年かけて海に流すのだ。
海水で薄めて海へ流す? いくら薄めたってトリチウム全体の放出量は変わらない。海にはそれ以上の排出先がない以上、海や魚に累積され海の生態系を汚す。

その間、福島原発から1日140トンの汚染水が発生する。タンクに貯蔵するしかない。40年たっても住めない土地だってある。そこの地権者と話し合って、タンク設置用の土地を取得することも可能だが、検討すらしない。
さらには40年もあれば、半減期12年のトリチウムは、大幅に減衰する。トリチウム除去の開発も進むだろう。なぜ海への放出を急ぐのか。
 しかも肝心の汚染水の発生をゼロにする道のりが見えてこない。汚染水の発生元である原子炉内デブリは、なんと880トン。人も近づけない高レベルの放射線量が壁となり、取り出す見通しすら立たない。

漫画家・やくみつるの風刺絵(朝日・4/17付け)ではないが、過去のいざこざをなかったこととして和解することを、<「海」に流す>と書いた子供が、「ちがうの? ニュースで言ってたのに」と、ぶつぶつ母親に言うのを笑えない。本当に原発汚染水の処理を、「水」に流してはいけないのだ。(2021/4/18)
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2021年04月11日

【今週の風考計】4.11─コロナ「まん延防止」と大阪・吉村府知事の破綻

ついに政府は「まん延防止の重点措置」を6都府県に要請せざるを得なくなった。緊急事態宣言の解除から1カ月も経たない。
 すでに大阪、兵庫、宮城は5日から、続いて東京、沖縄、京都が12日からの実施だ。さらに地方の各県へと広がるのは確実。
期間は、東京が5月11日までの30日間、京都と沖縄は5月5日までの24日間。飲食店の営業時間を午後8時までとし、不要不急の都道府県間の移動も、極力控えるよう促す。
 だが緊急事態が解除されたかと思うと、今度は「まん延防止」、しかも自治体によっては対象外の地域もあるから、混乱ばかりでなく「コロナ慣れ」など緊張感は薄れるばかり。「まん延防止の重点措置」で、感染拡大が抑えられるのか、不安は尽きない。

ここにきて連日、テレビや新聞各紙は、トップにコロナ変異株を取り上げ、その特徴を解説し感染拡大に警鐘を乱打している。
 英国由来のコロナ変異株が猛威を振るっているからだ。従来株と比べて感染力が1.32倍も強い。南アフリカ型やブラジル型なども加え、変異株感染者が日本全体で1040人を超える。5月1日ごろには変異株の割合が7割になると言う。
 だが変異株の監視強化に必要な陽性者に対するスクリーニング検査は、全国平均32%、目標の40%に達していない。先が思いやられる。

それにしても大阪府の感染者数の急拡大は異常としか言いようがない。8日の新規感染者数が905人、9日883人、10日は過去最高の918人と続く。
 これも吉村知事が経済を最優先したいがために2月末に下した、緊急事態宣言の前倒し解除が招いた結果だ。この7日には、2度目の医療非常事態宣言を出したものの、すでに病床運用率は重症患者用で9割を超えている。
 整備費約37億円を投じ、確保病床60床・設置期間2年の「大阪コロナ重症センター」も、昨年12月中旬にオープンしたものの、その後の医療従事者の確保が困難で、やっと14床ほどが機能しているだけだという。

そこに加えて、驚くなかれ、3月初めに吉村知事は、大阪にある最大236床の重症病床を150床まで減らすよう医療機関に促していたことまで明らかとなった。これでは医療崩壊が起きるのも当然だ。
 こう見てくれば「維新の会」橋下・松井・吉村知事が続けてきた、新自由主義による地域医療システムの改変による人災なのは、明らかではないか。
吉村知事 よく耳を傾けよ! コロナ変異株が拡大する中、オール大阪で力を発揮すべき時、二度も否決された大阪都構想を焼き直す、府・市の広域行政一元化プランに執着し、これ以上地域医療をないがしろにするのはよしなさい。(2021/4/11)
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2021年04月04日

【今週の風考計】4.4─最高裁 孫の世話に励む祖母の「監護者」申し立てを却下!

■誰しもオヤッと首をかしげたのではないか。娘の離婚で長い間、孫の親代わりをしてきた祖母が、孫の世話をする「監護者」として申し立てた裁判に対する判決内容である。
 最高裁は「父と母以外は監護者の申し立てはできない」と、祖母の訴えを却下した。さらに別事案での「孫との面会交流」を求める申し立てにも、「父母以外には認めない」との判決を下した。
■とりわけ「監護者」の申し立てには、下級審の判断を覆し、裁判官5人全員一致の意見による判決とくるから驚く。
 1審の大阪家裁は、子供が母親の再婚相手を拒否しており、母親らに監護させれば精神状態が悪化する恐れがあると判断。同居している祖母に「監護者」を指定している。さらに2審の大阪高裁では、「子の利益のためなら、父母以外も申し立てができる」との判断を示していた。
 それもそのはず、「監護者」とは、未成年の子供と生活し、身の回りの世話や教育をする「監護権」を持つ人、と定義されているのだから、1審・2審の判決は極めて真っ当だ。

■子どもの福祉や権利、意思の尊重を第一に置けば、最高裁が民法上の規定にある第三者への権限移譲に神経をとがらせ、実情を無視した判決で却下するのは許されない。
 すでに家族法制の見直しを議論している法制審議会や有識者らの研究会でも、子への虐待が絡むケースや父母の監護能力が欠ける場合、祖父母に「監護者」の申し立て権を与えることなど提言している。それを最高裁は、なぜ踏まえないのか。
■また離婚したら子どもの親権は、父母のどちらか一人しか認めない、今の民法の「単独親権制度」をめぐる裁判も各地で起きている。つい最近、「共同親権」を求めて起こされた裁判で、東京地裁は「単独親権制度は憲法に反するとは言えない」との判決を下した。
 憲法上の平等な権利の保有に抵触しないか、またも古い家族観で議論を深めない判決には、大いなる疑問が湧く。とりわけ最高裁を始め各級裁判が、憲法判断を避けた判決を繰り返しているのも問題だ。

■2017年当時、安倍内閣に対し野党が求めた臨時国会の召集に、3カ月以上応じなかったのは、憲法53条に違反するとして提訴した裁判の判決が出された。これまた東京地裁は憲法判断をせずに請求棄却した。
 憲法53条は、衆参いずれかの総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は臨時国会召集を決定しなければならないと定めている。
 同種訴訟は岡山など全国3地裁で提起されているが、昨年6月の那覇地裁判決では、憲法53条の要求に基づく召集は「憲法上の法的義務だ」と明言した。だが召集の時期を巡っては憲法違反かどうか、その判断を避けている。
■このほど最高裁が下した、沖縄・嘉手納基地を発着する米軍機の夜間・早朝の飛行差し止め裁判への判決も、騒音への金銭的賠償は認めるが、肝心の騒音を発する米軍機の飛行差し止めは却下した。
 米軍の勝手放題な行動が、独立国家としての日本で許されるのか、深い議論もなく憲法判断を避けた判決を下しているようでは司法の独立が泣く。(2021/4/4)
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2021年03月28日

【今週の風考計】3.28─尖閣諸島をめぐる中・日・米の危ない軍事行動

沖縄県石垣市・尖閣諸島の周辺が緊迫している。中国は海警局の船舶に、武器使用を認める「海警法」を施行して2カ月、海上警備と称して尖閣諸島周辺の領海侵入をやめない。23日には中国海警局の船4隻が、1隻は機関砲のようなものを搭載して、相次いで領海侵入した。すでに今年に入って10回目となる。
 4年半前には中国公船が20隻以上、さらに400隻以上の中国漁船が共に押し寄せ、尖閣諸島の周辺を航行し、威嚇行動を繰り返した。漁船には退役軍人や漁民らで組織している「海上民兵」が100人ほど乗り込んでいたという。
国連海洋法条約など、沿岸各国に認められた権限を侵犯しているにも関わらず、中国国防省は「釣魚島(尖閣諸島の中国名)は中国固有の領土だ。海警局の活動は正当で合法だ」と述べ、領海侵入を正当化している。

一方、日本政府は領海に侵入した船舶に対し、海上保安庁の巡視船が行う「危害射撃」を認めるとの見解を発表している。船舶に銃口を向けず引き金を引く「警告射撃」と、乗員に危害が生じないよう注意しながら船体を狙う「船体射撃」に加え、相手に死傷者が出ることも想定して銃撃する「危害射撃」も可能とする。
「危害射撃」の要件は、あくまで正当防衛であり、相手が撃ってこなくても、領海侵犯だけで武器使用の要件を満たすのか。また不用意な「危害射撃」が、外国政府の船への「先制攻撃」と受け取られ、国際問題に発展しかねない。

さらに、ここにきて日本政府は、日米間の安全保障協議委員会(2プラス2)で合意した、尖閣諸島周辺の安全確保に向けた実践的な日米共同訓練の具体化を急いでいる。
 尖閣有事を想定した訓練には、米側は海兵隊と陸海空軍が参加するとはいえ、最前線に出て主体的に対処するのは自衛隊。米軍は側面から支援・補完する枠組みになる。その場合の実地訓練はどこでやるのか。
尖閣諸島のうち北東にある久場島と大正島は、日米地位協定に基づき、米軍が管理する演習場として提供されている。米軍が了承すれば、自衛隊との共同訓練に使うことが可能になる。
 沖縄では相次ぐ米軍機の低空飛行訓練も、尖閣情勢を念頭に中国の動きをにらんだ訓練、そして日米共同作戦への地ならしとみて、警戒を強めている。

この秋には陸上自衛隊が隊員14万人を総動員して、尖閣諸島周辺などでの有事を想定した、28年ぶりの大演習を検討している。沖縄に駐屯する第15旅団も参加する予定だという(「沖縄タイムス」3/23付)。いや増す緊迫に目が離せない。(2021/3/28)
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2021年03月21日

【今週の風考計】3.21─「直美」と「なおみ」の深い気持ちに心を寄せて

タレントの渡辺直美さんを「ブタ」に見立て、東京五輪の開会イベントに「オリンピッグ」なるキャラクターとして、登場させようというのだから呆れる。人の容姿を侮辱し嘲るルッキズムは「差別」そのもの。
 それを平気で舞台化する案をLINEに流したディレクターが辞任した。当然だ。
当の渡辺直美さんは、「私がブタになる必然性ってありますか?」と、目に涙を浮かべて語っている。
 「デブとか言ってくる人に屈したくないの。私のことは私が決める。人の見た目で、ものを決める時代じゃない」と言い切り、「同じようにコンプレックスに悩む人、乗り越えた人に…自分に自信を持って、自分のことを愛して欲しいし、自分のことを誇って欲しいと思う」と訴えている。
彼女は米国の歌姫ビヨンセのモノマネでブレイクしたが、その後、ファッションリーダーとしても支持を集め、SNSのフォロワー数は930万人を超える。3月いっぱいで日本のレギュラー番組を卒業し、4月から米国に活動拠点を移す。しかも契約した米国のエージェントは、ビヨンセも所属する会社だ。

ビヨンセといえば、大坂なおみ選手を挙げねばならぬ。昨年10月16日に、23歳の誕生日を迎えた彼女は、かねてから大ファンを公言していた歌姫ビヨンセから、バースデイメッセージをもらい大感激! あの強さの原動力にもなっている。
白人警官による黒人男性フロイドさん死亡事件を機に、人種差別や警察暴力に対する抗議の声を上げ、事件現場のミネアポリスにも出向いて抗議に参加した。
 その理由を語り、こう訴えた。「『人種差別主義者ではない』だけでは不十分だ。反人種差別主義者でなくてはならない」と。全米オープンでは、警察の手で亡くなった黒人の名前が書かれたマスクを着用して試合を続けた。
まさに「ブラック・ライブズ・マター」運動を牽引するスポーツプレイヤーであり、かつ「社会正義の活動家」とも呼ばれ、昨年の米国タイム誌<世界で最も影響力のある100人>の1人に選ばれている。
 意見すべき時は声をあげる芯の強さ、自信を持って自分らしく振る舞う姿、まさに「イケてる」とでも表現する格好良さ、素晴らしい。

今週は、人種差別と闘う人々との連帯週間である。1960年3月21日、南アフリカでアパルトヘイト反対を訴える平和的デモ行進に警官隊が発砲。69人が死亡したことから、21日を「国際人種差別撤廃デー」とし、それから1週間、世界中で人種差別の撤廃を求める運動が展開される。
 二人の「ナオミ」が提起した問いかけを、わが身に置き換え深く考え続けたい。(2021/3/21)
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2021年03月14日

【今週の風考計】3.14─コロナ禍のなか東京都は14病院を切り捨てるな!

コロナ禍が深刻を極め、感染力の強い変異株ウイルスまで広がっている。PCR検査や保健所への支援、病床の確保など地域医療の拡充は喫緊の課題だ。にもかかわらず都道府県が運営する病院を再編し、削減する動きが加速している。
厚労省は再編・統合する440病院のリストを公表し、病床削減に協力する病院には、全額国庫負担で補助金を出すという計画だ。
 さらに、この病床削減に対する支援給付金は、病床の稼働率が高いほど、すなわち地域に貢献している病院ほど補助単価が高くなり、高額の給付金がもらえるという内容には呆れる。公立病院ツブシじゃないか。

とりわけ東京都は、コロナ感染者が11万5千人と全国トップ、日本全体の25%を占めるのに、厚労省のプランを小池都知事自ら受け入れ、東京都が直接運営する14の病院を全て採算重視に切り替える。
 そのため地方独立行政法人に一括して譲渡する計画を発表した。今年度予算案には39億円もの準備経費を計上し、実行に移そうとしている。
まず人口1千4百万人の東京に、都立病院は8つ・公社病院は6つ、計14病院しかないのも驚きだ。大学病院を含め民間病院は650近くあるというのに、コロナ感染者の受け入れに積極的に応じたのは、この都が直営する14病院だ。なんと都が確保した病床4900の35%を占める。
 それも無理ないか。民間病院は採算重視で、コロナ感染者を下手に受け入れれば、経営が成り立たない。敬遠するのは目に見えている。

だからこそ民間病院では採算が取れない災害・感染症医療や救急医療、離島医療など、自治体の責任で行う「行政医療」は、都立・公社病院の重要な役割だ。だが都は予算の0.5%約400億円しか支出していない。
 都立病院は1879年(明治12年)に設立された長い歴史がある。赤痢・コレラなどの感染症、精神疾患、生活困窮者への医療機関として、「社会的弱者のために、その時代の最高の医療を提供する病院」として、地域の人々から大切にされ愛されてきた。

その病院を「独立行政法人化」すると、どうなるか。病院は「効率性」と「独立採算」が求められるため、あらゆる面で経費削減や医療の見直しが始まる。
 まずは病床の大幅削減、有料の個室病床へ切り替えたうえ使用料や差額ベッド代の引き上げ、入院保証金10万円の納入など、患者・利用者に負担を強いるのは明らかだ。
 さらに議会の監督機能・チェック機能が限りなく縮小されるので、特別室料・分娩料・診断書料など、都議会の審議なしに変更も可能となる。
病院は全て儲かればいいのか。神奈川県は早々と10年前に県立5病院を「独立行政法人化」した。ところがどうか。2018年度には25億1200万円の経常赤字を出し、繰越欠損金は94億6700万円に及んでいる。
 成功例とされた大阪でも、いま「独立行政法人化」病院の現場は、コロナ禍への対応で人員不足・医療体制のひっ迫、マスクや手袋、防護服の不足に悩む。
 <急いては事を仕損じる>の典型ではないか。小池都知事よ、これを教訓とし、コロナ感染対策に専念し、東京五輪の中止を決断するのが先ではありませんか。(2021/3/14)
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2021年03月07日

【今週の風考計】3.7─福島原発にたまる核ゴミ880トン、どう処理するの?

◆10年目の「3・11フクシマ」を迎える。筆者は東日本大地震が起きた2011年3月11日(金)14時46分、奈良の寺社を回る旅のなか、東大寺二月堂で行われる、<修二会>の「お水取り」を見るため、鹿のいる奈良公園のそばにいた。
 早めの夕食を取ろうと、町中に戻って蕎麦屋に入ったところ、店のテレビ画面に津波の襲来が大写しにされている。何事が起きたのか、携帯電話で東京の息子に連絡してみるがつながらない。
◆東北地方に大地震が起きたのは分かった。ともかく「お水取り」法要のハイライト、火のついた松明が夜空に舞い、火の粉が舞台から下へと降り注ぐのを見たく、大地震の様子は後回し、松明の燃えがらを大事に持ち帰ってきた。

◆あれから10年、福島第一原発事故はなぜ起きたのか。そして今は、どうなっているのか。NHKメルトダウン取材班『福島第一原発事故の「真実」』(講談社)が、タイミングよく明らかにしてくれる。
◆「3・11フクシマ」の被害は、半径250キロ・3千万人が被ばくする「東日本壊滅」に及ぶという最悪のシナリオまで想定されていた。1号機から4号機まで爆発し、大量の放射性物質が放出され、東日本全体がチェルノブイリ原発事故に匹敵する壊滅状態に行き着くという。これらの地域が自然放射線レベルに戻るには、数十年かかると予測された。
 また大津波の襲来を軽視したため、波をかぶって「電源喪失」事態に陥り、運転中の原発1〜3号機の全てが炉心溶融(メルトダウン)し、さらに地震発生後、1日から4日の短期間に連続して水素爆発などを起こしたのは、世界でも初めてだ。

◆福島原発4つの原子炉や格納容器内で何が起きていたのか。まずメルトダウンである。核燃料に含まれる金属ジルコニウムと水が高温状態に置かれると化学反応を起こし、水素を発生させるだけでなく炉心がメルトダウンに至る速度を速める。
 2号機が残した核燃料や金属のゴミ「デブリ」を分析すると、そこには溶け残っている金属が多く、高温に達していない事実がわかってきた。水が入らなかった2号機は、水─ジルコニウム反応が鈍くなり、1号機や3号機に比べて原子炉温度が上昇せず、メルトダウンが抑制された可能性があるという。
 1〜3号機の「デブリ」の分析から、メルトダウンや爆発の原因が、さらに明らかにされる期待が強くなっている。

◆さて厄介な核燃料ゴミ「デブリ」は、いま原発格納容器内に880トンもたまっている。遠隔操作によるロボットアームの作業1回で取り出せるデブリ量は、わずか1グラム。どうやってスピードアップさせるか、思案投げ首の状態だ。
 もっと深刻なのは、今も1号機の格納容器の奥底から延びるサンドクッション管から、放射能汚染水が、勢いよく漏れ出ていることだ。しかも1号機の原子炉建屋の1階周辺では、いまだに1時間当たり630ミリシーベルトという高濃度の放射線が拡散している。2号機周辺は5.8ミリ、3号機は22ミリ、比較にならないほどの高さだ。
◆これも高さ120メートルの排気筒に伸びる配管、これは放射性物質を含む蒸気や水素ガスを外に放出する「ベント」のための配管だが、これが10年以上も前から根元で切れ、放射線などが排出されずに地表にたまったと考えられている。
 東京電力のお粗末、杜撰さは極まりない。(2021/3/7)
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2021年02月28日

【今週の風考計】2.28─真鯛とサンマ漁と「常磐もの」にエールを送りたい!

年とともに肉より魚を好むようになった。住まいから約1キロのところに、新潟・寺泊より鮮魚を直送してくるチェーン店がある。行くたびに生きのいい真鯛やサワラ、サヨリ、メバルなど、旬の魚を買う。
なかでも3月から6月頃にかけて産卵を控えた真鯛は、もっとも脂がのって美味しい。まさに色といい「桜鯛」の名がふさわしい。
 「春告魚」の名があるメバルは、刺身・塩焼きもいいが、煮付けが一番。身が反り返り、美しい白身がホロホロと骨離れも良く、非常に食べやすい。正岡子規も病床で綴った日記随筆「墨汁一滴」に、その旨さを書いている。
何も日本海側の魚ばかりではない。もう並ぶ巻貝のナガラミや5月ごろにはシッタカ、夏には宮城産のホヤも買うことができる。酒のアテにはもってこいだ。

さて、日本を取り巻く海の水温は、年々、高くなり、冬季の日本海中部では 6〜7℃も高くなっているという。魚種も変化し漁獲量も大幅に減っている。
 2017年8月に始まった暖かい日本海流・黒潮の大蛇行が、いまだに特異な潮流を作りながら日本近海を北上している。その影響で三陸沖合の漁場は、前年よりさらに沖合の公海域に移り、沿岸域にはほとんど魚群が来遊してこないという。

日本のサンマ漁が、その典型だ。今や漁獲量は10万トンを切り、昨年の水揚げ量は約3万トン・前年比27%減、2年連続で過去最低を更新している。
 深刻化するサンマ漁の実態に、北太平洋に出漁する世界8カ国は資源回復に向け、現在の漁獲枠55万6250トンを33万3750トンへ、40%削減する。このほど北太平洋漁業委員会(NPFC)で、2年間の合意として決着した。
 また日本とロシアの排他的経済水域(EEZ)でのサンマ漁獲量は13万5750トンとなった。少しでもサンマ漁が好転するのを願うばかりだ。

そこへ<「常磐もの」で、いわきの海に再び活気を!>という全面広告(朝日新聞・2/27付け)が目に入った。
 東日本大震災による津波と原発事故から10年、「3・11フクシマ」を克服し、福島の水産業の復活に向け新たな挑戦が始まっている。福島県いわき市最北の港町・久之浜に、昨年2月1日にオープンした鮮魚店「おさかなひろば はま水」の活動だ。
常磐地域の沖合は、北上する黒潮・日本海流と南下する親潮・千島海流とが合流する「潮目の海」となり、質のいい魚がたくさん獲れる。漁獲できる魚種も増え、現在は約180種類ほどの「常磐もの」を水揚げしている。
 なかでも「常磐もの」といえば、今が旬の「メヒカリ」だという。体長15cmほどの小さな深海魚だが、目が非常に大きく青緑色に光る。いわき市が市の魚として制定している。皮が薄くて、お刺身や唐揚げ、どれもイケるという。さっそく、あのチェーン店にいって買い求めよう。(2021/2/28)
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2021年02月21日

【今週の風考計】2.21─<小林多喜二と伊藤千代子>2人の生涯に思いをはせる

昨日20日は、“多喜二祭”─今から88年前、1933年2月20日、都内の路上にいたプロレタリア文学の旗手・小林多喜二が、スパイの通報によって特高警察により逮捕。同日夕方、東京・豊多摩刑務所で殴る蹴る、歯や指を折るなどなど、凄惨な拷問により虐殺。29歳の短い生涯が閉じられた。

この虐殺に至る背景には、1925年制定の治安維持法と特高警察による、人民弾圧の暴虐の歩みがある。
 制定3年後の1928年3月15日未明、特高は全国で数千人の反戦主義者を逮捕する大弾圧をおこなった。多喜二は、この「3・15事件」で行われた過酷な拷問を聞き、世間に国家の横暴を訴える作品『一九二八年三月十五日』を完成させている。
 実は、これによって多喜二は特高から恨みをかい、以来、尾行が着きスパイが送り込まれることになる。

名作『蟹工船』を刊行した1929年には、皇軍を批判したとの理由から治安維持法違反で起訴され、豊多摩刑務所に収容。1931年1月22日、保釈出獄。多喜二は、3月から約1カ月間、密かに丹沢・七沢温泉に滞在し、作品『オルグ』を執筆。
 今から2年前、わが山仲間と丹沢・鐘ヶ嶽を登った時、帰りに訪れた七沢温泉「福元館」、その離れにある多喜二が執筆していた部屋を思い出す。そして投宿してから僅か2年後の1933年には虐殺される。

さて多喜二の虐殺から遡ること3年7カ月、1929年9月24日、特高による弾圧・拷問の影響で24歳の短い生涯を閉じた女性がいる。その名は伊藤千代子。
 諏訪の農家に生まれた伊藤千代子は、アララギ歌人・土屋文明の薫陶を受けた少女時代を経て、東京女子大学で学び、男女平等、女性の自立、反戦平和の活動に青春をささげる。紡績工場で働く女工の過酷な労働環境の改善に向けた闘いに取り組む。
そして運命の「1928年3月15日」朝、23歳の伊藤千代子は、重要文書のガリ切り原紙などを、届けに出かけた印刷所の玄関先で、特高に逮捕される。
 市ヶ谷刑務所に収監、拷問により転向を強要されるが拒否し続ける。拷問で痛めつけられるものの、侵略戦争に反対し、主権在民、ジェンダー平等の社会を目指して志を貫く。その生涯や尊し。
 いま劇映画「こころざしつつたふれし少女よ 伊藤千代子の生涯」の製作が進む。(2021/2/21)
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2021年02月14日

【今週の風考計】2.14─日本版「マグニツキー法」が必要となる理由

いまや世界のコロナ感染者は1億820万人、死者は237万人に上る。というのに人権弾圧や専制政治が世界各地で横行し、ワクチン争奪が起き、ワクチン外交・世界支配の醜い野望すら蠢いている。
 なかでも中国の動きは、奇怪きわまりない。習近平政権はアジアやアフリカの発展途上国を中心とした計52カ国・地域を対象に、コロナ・ワクチンを無償提供し、その引き換えに中国への批判を封じ込める戦略を描いている。

12日、中国政府は、英国BBCの国際放送を禁止する処分に出た。BBCが新疆ウイグル自治区の「再教育」施設で、ウイグル族の女性が拘束され、性的暴行や虐待・拷問を受けていたとの報道への対抗措置とみられる。
 新疆ウイグル自治区の収容施設では、ウイグル族などの少数民族100万人以上が拘束されているという。中国は否定に躍起になっているが、米国バイデン政権は厳しい姿勢を取り、国際世論からは「ジェノサイド」の疑いまで指摘されている。
 東京新聞<本音のコラム>で、師岡カリーマさんが「ウイグル強制収容所」と題して、鋭い指摘をしている(2/13付)。

また中国政府の意向を受けた香港政府の動きも過酷さが増している。この6日には、立法会(議会)の元議員ら民主派53人および米国人弁護士を、「国家政権転覆罪」容疑で一斉に逮捕した。
 今年9月の選挙に向けた準備が、なぜ「国家転覆の企て」に当たるのか、異論や異議を許さない、民主派つぶしの暴挙は断じて許されない。
 この事態は、香港人にとどまるものではない。香港では日本人を含め世界の人々の「自由と人権」が脅かされかねないのだ。世界中の人々が中国政府に、香港の自治と人権を尊重するよう、粘り強く働きかける責任がある。

さらに中国は海警局に武器使用を認める「海警法」を施行した。さっそく海警局が活動する領域を一方的に拡大し、とりわけ尖閣諸島周辺の領海に侵入し、日本漁船に接近するなど、国連海洋法条約を無視し、国際法に違反する事態が頻発している。
 日本政府は、毅然として中国の国際法違反を指摘し、尖閣諸島周辺への威嚇侵入に抗議、すぐ止めるよう申し入れるべきだ。
やっと日本でも、世界各地での言論弾圧や拷問、虐殺などの人権侵害に関わった個人や団体に対して、制裁を求める日本版「マグニツキー法」の検討が始まった。
 議員立法をめざし、近く超党派の国会議員連盟が発足する。G7(主要7カ国)でマグニツキー法がないのは日本だけ。隣国への配慮ばかりが優先し、大事な人権や国際法が踏みにじられて、良いわけがない。(2021/2/14)
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2021年02月07日

【今週の風考計】2.7─高瀬庄左衛門から三屋清左衛門を経て上杉鷹山へ

■感動した本に出合うと、水溜まりに落ちた水滴が波紋を広げるように、思いが連鎖状につながっていく。まさに、砂原浩太朗『高瀬庄左衛門御留書』(講談社)は、その1冊である。
 本書は、齢50を前に妻を亡くし、息子まで不慮の事故で失った高瀬庄左衛門の寂寥と悔恨の日々を描く時代小説だ。神山藩の郡方として農村を見回る老いた身、死んだ息子の嫁・志穂と共に、手すさびの墨絵を描きつつ、若き頃の友情や諍いを思い浮かべる。
■しかし藩の政争の嵐が襲いかかり、村人に強訴を仕掛けたとの罠にはまりかける。だが志穂が描いた似顔絵から真実が明らかになる。まさに謎ときの筆が冴える。
 加えて昔の道場仲間が落ちぶれ、カネの無心から始まる斬り会いで腕に傷を負い、絵筆を持つこともままならなくなる。また息子の死の真相も知ることとなる。抑えた静謐な筆致ながら、この緊迫感の迫力は抜群だ。

■そして場面を彩る野鳥と草木・花の描写が心憎いほど冴えている。拾っただけでも、蕗の薹、山雀、海鵜、蝉、目高、燕、瑠璃びたき、梅、雪兎、百合、油蝉、行行子、時鳥、烏瓜、桔梗、百日紅、椋鳥、紅梅、鵯、秋海棠、楮、蝉、春告鳥、鶯、桜などなど。
 香りや色・鳴き声を取りまぜ、庄左衛門の心の揺曳を際立たせる。庄左衛門の最後のシーンには、「そろそろと矢立を出し、震える指先で筆を取る。庭さきに、気の早い山雀が降り立っていた。虫でも探しているのか、首を上下させて土のおもてをつついている。」とある。見事だ。

■続く連想が、藤沢周平『三屋清左衛門残日録』(文春文庫)。52歳にして隠居生活に入った三屋清左衛門が、悠々の日々を送るはずが、町奉行が抱える事件の解決に奔走、さらには藩を二分する政争にも巻き込まれていく。その日々を「残日録」と題して綴る時代小説。
 おなじみ北大路欣也が、時代劇専門チャンネル・スカパーで毎週土曜日19:00から放映中だ。
 藤沢周平とくれば『漆の実のみのる国』(文春文庫)に思いが及ぶ。江戸時代中期の米沢藩主・上杉鷹山の生涯を描く。財政破綻に陥っていた事態を、倹約・殖産興業を柱とする改革に取り組み、領内に100万本の漆の木を植え、その実によって藩を豊かにするなど、名君としての評価は今でも変わらない。

■そこへ小関悠一郎『上杉鷹山─「富国安民」の政治』(岩波新書)に目がいく。なんと著者は1977年生まれ、44歳の気鋭の歴史学者。さっそく読んでみると、積み重ねてきた研究の成果がふんだんに盛り込まれた<目から鱗>の好著。
 殖産計画の一つ、「漆」植立ての実際を資料から明らかにし、いかに実施させていったか、その苦労も指摘している。
 著者は、「上杉鷹山は、<人民のため>の君主という考えを深く内面化した<名君>とみることができるだろう」と結ぶ。現在の為政者よ学ぶべし。(2021/2/7)
「高瀬庄左衛門御留書」.jpg
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2021年01月31日

【今週の風考計】1.31─「終末時計」は残り100秒、迫る人類・地球の危機

核兵器と気候変動による人類滅亡を午前0時に見立て、それまでの残り時間を示す「終末時計」の針が、昨年に引き続き、残り「100秒」を表示したと、米国の科学雑誌が発表した。
 世界で1億人がコロナに感染しパンデミックに陥るなか、核廃絶と気候変動という地球規模の課題に、いまだに国際社会が協調して対処できていない事態は、深刻だと指摘している。

まず核廃絶。22日に発効した核兵器禁止条約は、その後ベナン、カンボジアも批准し計52カ国となった。インドネシアやブラジルも批准に向け手続きが進んでいる。
 だが唯一の被爆国・日本が、米国の「核の傘」を理由に批准しないどころか、オブザーバー参加できる締約国会議にもソッポを向くとは、悲しくて悲しくて言葉も出ない。
米国ではバイデン大統領が、オバマ元大統領の掲げた「核なき世界」を継承するため、2月5日に期限を迎える米ロの新戦略兵器削減条約(新START)を、5年間延長することで合意した。
 これにより、2019年8月の中距離核戦力(INF)全廃条約が失効して以降、唯一残されていた核軍縮の枠組みが維持されることになった。

気候変動の課題はどうか。すでにバイデン大統領は就任初日、地球温暖化に対処する「パリ協定」への復帰に署名し、2030年までのCO2削減目標の新たな策定に着手した。
 さもあろう。南極の巨大な氷山が次々に分裂している。三重県の面積にも相当する世界最大級の氷山が割れて、サウスジョージア島に向かって流れだし危機感が増す。
 地球から消えた氷の量は、この20年間で28兆トン。かつ融解の速度は加速し、年に1.3兆トンという。
 今後も地球温暖化が進み、氷山が解け、海面上昇が続けば、東京は水の都ベネチアになるとの予測すら出ている。

今年は、世界各国が気候変動への取り組みが問われる重要な年。11月には英国で国連気候サミットが開かれ、重要な対策プランの討議が始まる。
 世界50カ国120万人を対象に行った国連の世論調査によると、回答者の8割近くが気候変動を「地球規模の緊急事態」と捉えている。
国籍・性別問わず、老いも若きも、全世界の人々が再生可能エネルギーの活用増大、森林と土地の保全、気候に優しい農業技術の採用、クリーンな電気自動車やバス・自転車の利用拡大など、具体的なテーマを挙げて気候変動に対する取り組みを求めている。
 同感、当然! CO2排出による気候変動・地球温暖化は、「終末時計」の針を加速させる元凶なのだから。(2021/1/31)
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2021年01月24日

【今週の風考計】1.24─「深大寺そば」と「武蔵野うどん」に想いを込めて

東京・府中に住む友人が、自分のブログで「深大寺そば」の名店、「深山茶屋」が閉店した悲しみを綴っている。
 <ぼくはかき揚げ付きの中盛り蕎麦、カミさんはとろろ蕎麦が定番だった。このなじみの店に行くと、シャッターに「当店は12月25日をもちまして閉店することになりました」の貼り紙。
 年末年始といえば、蕎麦屋にとっては最大の書き入れ時。それを前にして閉店だなんて…。 ガッカリしながらトボトボと家へ帰るしかなかった>と。
コロナ禍による経営難が進み、由緒ある店の休業・閉店が相次ぐ。創業231年、江戸時代から続く東京・葛飾柴又の川魚料理の名店「川甚」も、1月末で閉店する。創業39年の東京・三鷹市のラーメン店「味の彩華」も今月末の廃業を決めた。

さて筆者の住む東京・多摩北部地域では、「武蔵野うどん」を看板にする店が多い。この「武蔵野うどん」は、やや茶色みを帯びて太くコシが強い。「ざる」か「もり」にして、かつおダシをベースに、豚肉の細切れやネギを具にした熱い「肉汁」につけて食べる。
 冠婚葬祭などの祝い事や親戚が集まる時には、手打ちの「武蔵野うどん」が「本膳」として出されることが多い。
<大寒>が過ぎたとはいえ、木枯らしの吹く日は、コシの強い「武蔵野うどん」を、アツアツの「肉汁」につけて食べたい。その旨さを想うとヨダレが出てしまう。

東村山市の北西部にも「うどん屋」の名店が数多くあるが、残念ながら我が家からは遠い。「不要不急の外出は控えよ」とあっては、ままならない。
 9月中旬に開かれる東村山「どんこい祭」は、「武蔵野うどん」と「よさこい」を掛け、「どんと来い!」の意気込みを込めて名付けられたという。これも昨年は、コロナ拡大のあおりを受けて中止。
我が町の「うどん・蕎麦屋」が閉店・休業に追い込まれてはいないか、心配がよぎる。
 かつては良く行った「しなの」を思い出し、向かってみる。西武新宿線・久米川駅から線路沿いに小平駅の方向へ徒歩5分、踏切のそばにある。暖簾が出ている、やってた! うれしくて、店の引き戸を開けるのも心がこもる。
熱い「肉汁」に漬ける「武蔵野うどん」はないが、代わりにアツアツの「鍋焼きうどん」を注文する。大きなエビ天に半熟卵半分、しいたけ、ネギ、ほうれん草、ナルト、筍、お麩が盛り上がるように入って、うどんが見えない。
 岩手出身の84歳の主人と奥さんで切り盛りして50年。調理場と客席を隔てるカウンターには、宮沢賢治の「雨ニモマケズ…」の詩すべてが白抜きされた、紺色の水引暖簾がかかる。その心意気や良し、頑張って! と店を出る際にエールを送った。(2021/1/24)
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