2022年05月01日

【今週の風考計】5.1─憲法9条をズタズタにする悪乗り提言≠フ怖さ

許すな! 9条つぶしの策動
★今年は日本国憲法が施行されて75年。私たちが守り育ててきた平和憲法、そのなかでも最も大切な<第9条:戦争の放棄、戦力および交戦権の否認>が、ズタズタにされようとしている。
★自民党がまとめた「敵基地攻撃能力の保有」に向けた提言は、専守防衛をかなぐり捨て、敵ミサイルの発射地点だけでなく、国の指導部や軍司令部の「指揮統制機能等」まで攻撃対象に加え、その攻撃能力を拡充するため、軍事費を5年以内にGDP比2%・10兆円に倍増するという。
 戦争を放棄し戦力は持たないとする国が、米国と中国に次ぐ第3位の軍事大国になるとは、正気の沙汰ではない。

★今から8年前の安倍政権時代、なんと臨時閣議で米軍との「集団的自衛権の行使容認」を決めてしまい、さらに翌年には、時の政権が「存立危機事態」と認定すれば、自衛隊が武力行使や米軍などへの後方支援まで可能にしてしまった。
 この現実がある上に、さらに「敵基地攻撃能力の保有」が上積みされれば、日本が攻められていなくとも、自衛隊が米軍と一体となって敵基地や国や軍の中枢部を攻撃できることになってしまう。まさに先制攻撃も可能なのだ。
★ロシアのウクライナ侵攻や中国の台湾有事、北朝鮮のミサイル開発を理由に、外国への先制攻撃をも企てる悪乗り提言だ。これに日本維新の会が「核共有」も含め同調し、国民民主党まで9条改悪を唱えている。
 憲法99条には、<国会議員は憲法を尊重し擁護する義務がある>と明記されている。それを破るだけでなく、憲法破壊に手を出すとは、腹立たしいこと極まりない、許せない!

「核抑止論」から核の廃絶へ
★軍事に軍事で対応すればどうなるか。ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻に際し、口にする発言が、はっきり証明しているではないか。プーチンは、他国がウクライナに介入するなら電光石火の対応を取るといい、<核の使用という恫喝>を口にしている。
 しかもプーチン自身が、核使用によってこうむる悲惨が、自国民のみならず世界人類に及ぶことを承知しての発言だから恐ろしい。
★こうした現実を踏まえれば、「核抑止論」に基づく軍事均衡・戦争抑止など、いまや砂中の楼閣であるのがはっきりした。しかも核を持たない日本が、米国と「核共有」して自衛力の強化を図るなど、その結果に対する無責任さは極まりない。
 まず米国の核兵器が日本に置かれ「核共有」となれば、米国の敵対国からは日本が攻撃対象になるのは歴然だ。しかも米国に核兵器使用の決定権が握られ、日本の主権が及ばないとなれば、もろに国民は悲惨な事態に置かれるのは自明ではないか。
★唯一の戦争被爆国である日本こそ、核兵器禁止条約を批准すべきだ。60カ国・地域が批准した核兵器禁止条約の締約国会議が6月21日から3日間、ウィーンで開かれる。批准していない日本は、オブザーバーで参加し核廃絶の声を汲み上げるべきだ。(2022/5/1)
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2022年04月24日

【今週の風考計】4.24─日本の「敵基地攻撃能力」とロシアの「ワグネル」

先制攻撃につながる悪乗り提案
自民党の安全保障調査会が、「敵基地攻撃能力」の保有に向けた提言をまとめた。いくら「攻撃」を「反撃」と言い換えても本質は変わらない。
 一つは、専守防衛をかなぐり捨て、敵ミサイルの発射地点だけでなく、国の指導部や軍司令部を視野に入れ、「指揮統制機能等」も攻撃対象にして機先を制する。
 二つは、軍中枢部の動向を把握・監視する衛星の拡充、監視範囲外から攻撃できる「スタンド・オフ・ミサイル」の補強など、さらにはハイブリッド戦争に備え、新たに膨大な装備が必要になるゆえに、防衛費をGDP比2%・倍増の10兆円にする。

とりわけ中国が人民解放軍の創設100年にあたる2027年までに台湾を侵攻する可能性が高いと判断し、防衛費倍増を5年以内に実現する。財源については全く触れず、財政難でも防衛費を「聖域化」するハラだ。
 三つは、武器輸出のルールを定めた「防衛装備移転三原則」を緩和し、殺傷力のある「武器・弾薬の輸出」を可能にする。
こう見てくると、ロシアのウクライナ侵攻や中国の台湾有事を利用して、憲法9条の改悪から核共有に始まり、敵基地攻撃、武器輸出など、短絡的な悪乗り提案を行う自民党の策動は、極めて悪質だ。

ウクライナ侵攻の陰で動く「ワグネル」
ロシア軍がウクライナに侵攻して2カ月、やっと南東部の要衝マリウポリを制圧したと誇る。だが今もって市内のアゾフスタール製鉄所を拠点に、ウクライナ政府の直轄部隊となった「アゾフ大隊」が抵抗を続けている。
 この「アゾフ大隊」こそ、2014年にロシアがクリミア半島を併合する際、激しく抵抗し闘った部隊だ。ロシアは「アゾフ大隊」を「民族主義に凝り固まったネオナチ」と決めつけ、ウクライナ侵攻の正当化に利用し、「アゾフ大隊」制圧に躍起となっている。

その陰で、プーチン政権と密接なロシアの民間軍事会社「ワグネル」の汚い動きが、いっそう明らかとなってきた。ロシア軍には「ワグネル」に雇われた傭兵が千人ほどいて、その混成部隊がマリウポリをはじめ、ウクライナ東部・ドンバス地方に移動し戦線に就いている。
 「ワグネル」の正体」とは何か。プーチンの料理人を務め実業家となった親友エフゲニー・プリゴジンが資金提供しているロシアの民間軍事会社(PMC)である。軍事の仕事を請負い、雇った傭兵からなる特殊部隊を組織し、サイバー戦争、プロパガンダ工作、ハイブリッド戦争に従事させている。
アフリカでの人権侵害やリビアおよびシリアでの戦闘にも関与したといわれる。マリやモザンビーク、スーダンにも派遣され、代理戦争を担ってロシアの影響力を行使し、油田などの戦略的利益を手にしたという。
ウクライナでは、ロシア軍正規兵の死を少なく抑えるため、プーチンは<捨て駒>として「ワグネル」の傭兵を投入、人権侵害に対する国際的非難からも、国としての責任はないと距離が置ける。まさに一石二鳥の役を担わされている。
 月給は2,650ドル(29万円)、3カ月任務をこなすと1万5000ドル(165万円)のボーナス。指揮官の給料は3倍。年収に換算すると一戦闘員で1000万円ほどになるという。

日本軍が辿った道への反省
日本でも、ロシアに見習い「ワグネル」まがいの民間軍事会社が設立される可能性だって、否定できないのが現実だろう。給料に惹かれて入社する人たちも出てくるだろう。
 加えて、日本政府自体が「敵基地攻撃能力」の保有・開発のために、この民間軍事会社を使うことにでもなったとしたら、どうなるか。
アジア・太平洋戦争へと突っ込む契機となった日本軍の「満州事変」を思い起こすべきだ。「満鉄」や馬賊などの民間組織を活用しつつ、中国東北部・満州にまで関東軍を派遣して満鉄爆破事件を起こし、さらには市民虐殺に奔り、南京政府の「指揮統制機能」を壊滅し戦争拡大へと突っ走った。
 プーチンのウクライナ侵攻のシナリオにそっくりではないか。いま自民党が企てる「敵基地攻撃能力」保有の危険性は、見過ごすわけにはいかないのだ。(2022/4/24)
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2022年04月17日

【今週の風考計】4.17─国が進める原発・汚染水処理や再稼働へ募る疑問

原発汚染水の海洋放出─政府が、11年前に起きた福島原発事故による放射能汚染水を、海洋に放出すると決めて1年がたつ。汚染水を希釈処理したうえ、海底トンネルを作って1キロ先の三陸沖・水深12メートルの海洋に放出する計画だ。
 漁業従事者の怒りは収まらない。魚介類に対する放射能汚染という風評被害が、再び起きる事態を考え、海洋放出に猛反対している。だが政府は、来年春の実施に向け、一連の海底トンネル工事を進める。その費用350億円、漁業者向けの風評対策基金300億円を大きく上回る。
東京電力は、貯蔵タンクに保管された処理水に、さらに大量の海水を注入してトリチウム濃度を希釈し、排出基準値の40分の1未満に薄めて海へ流すという。
 待てよ、肝心のタンク内のトリチウムは、すでにタンク内に生息するプランクトンなど有機物の体内に取り込まれている。それが海洋に放出され、海洋で他の魚に食べられ濃縮していく。この食物連鎖による生物濃縮まで絶つことはできない。
 海洋放出という浅はかな決断が、さらにトリチウムによる健康被害を広げる結果を招くことになる。

執着する原発再稼働─北海道・積丹半島の西側付け根にある泊原発が、運転を3基全て停止してから10年がたつ。いまだに北海道電力は再稼働に執着し、無駄な労力を費やしている。原発が立地する泊地域の活断層の存在を巡って議論が紛糾し、地震や津波への対策が不十分で、再稼働に向けた審査が9年近くにおよび、1年遅れの来年9月に、結論を出すことになった。
いま新規制基準に則った再稼働申請がされている原発は、全国で16原発27基。そのうち審査が続く7原発10基は、想定される地震や津波の大きさを巡る議論が難航し、結論を出せる時期すら見通せない。これも地震多発国である日本で、原発再稼働にこだわった国の思慮の浅さの結果だ。

チェルノブイリ原発への銃撃─26日は、ウクライナのチェルノブイリ原発事故が起きてから36年となる。爆発を起こした4号機は「石棺」で覆われ、さらに「石棺」を覆う巨大なシェルターも設置された。しかし、今もなお大量の使用済み核燃料があり、放射性物質の飛散を防ぐ対策が続いている。
ウクライナに侵攻したロシア軍は市民虐殺に加え、チェルノブイリ原発周辺を1カ月ほど占拠し、高圧送電線を破壊し停電が発生、使用済み核燃料を収めた冷却プールの冷却が停止する危機に陥ったといわれる。さらに同原発から高レベルの放射性物質を盗み出したとの情報もある。
プーチンの国策プロパガンダに煽られ、チェルノブイリ原発に加えたロシア兵の暴挙は、原発へのテロや軍事攻撃に対処する難しさを浮き彫りにした。原発再稼働よりグリーン・エネルギーに力を入れるべきとの声が大きくなっている。政府も原発に頼るエネルギー政策を改めよ!(2022/4/17)
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2022年04月10日

【今週の風考計】4.10─なぜ日銀は「異次元緩和」をやめないのか?

日本銀行の総裁が白川方明氏から黒田東彦氏に交代したとき、オセロにたとえ「白が黒にひっくり返った」といわれ、その後<く清いい泥に呑み込まれた>事態が続き、9年がたつ。
 黒田総裁は安倍元首相の意を汲んで<アベノミクス>の実現を目指し「異次元緩和」へと突っ走った。「異次元緩和」で投資が進み経済が成長すれば、賃金も上がるという「トリクルダウン」理論にしがみついたが、賃金は上がらず、景気は低迷したまま。
「2%の物価上昇」も幻だ。いま日本の全国消費者物価指数は0.8%。来年2023年度の物価指数でも1.0%にとどまる。
 「異次元緩和」を開始した当初、日銀は「必要な施策をすべて講じて、2%の物価上昇を2年以内に達成する」と豪語した。だが一度も達成されず。しかもいまだに「粘り強く金融緩和を続ける」と言うのだから呆れる。

「異次元緩和」は何をもたらしたか。本来、日銀は「物価の安定を図り、国民経済の健全な発展に資する」ため、時の政権からは自立して、正常な「金利」を維持する役目がある。ところがその姿勢を放棄してまで、ゼロ金利政策を23年も続け、6年前にはマイナス金利すら導入した。
 それは大量の国債を発行するだけでなく、株式市場にまで介入し大企業の株式で構成する投資信託(ETF)を買い集め、資金注入するという<アベノミクス>のためだった。
その結果、今や国債の発行残高は1000兆円を超え、先進国では最悪の残額だ。その半分を超える国債を所有する日銀の返済が、国家破産につながりかねない状況にある。
 日銀が保有するETF残高も36兆円に膨らみ、東証1部時価総額の約7%を占める。まさに日銀が日本株最大の株主、「ここまで中央銀行が株式市場を支配する資本主義国はない。企業の新陳代謝が進まず、成長率が低下する一因」とまで指摘されている。

もう一つは、日本経済に投機とバブルをつくり出し、潤ったのは大企業・大株主と富裕層ばかりという事態だ。大企業(資本金10億円以上)は内部留保を、この8年間で130兆円増やし、今や466兆円にのぼる。
 その陰で、政府の進める労働法制の規制緩和により、ギグワークやシフト制などの非正規労働者が増加し、賃金は上がるどころか逆に低下を招き、経済格差は広がるばかり。
また「異次元緩和」のうちでもマイナス金利は、銀行や金融機関の経営を圧迫し、顧客から手数料を徴収するなど、銀行への預貯金の魅力が薄くなっている。年金運用にも支障が生じるなど、副作用が深刻になっている。怖いのは日銀が管理する通貨への信頼が揺らぎ、「仮想通貨」への換金など様々な歪みをもたらしていることだ。

マイナス金利が続く日本の金融市場では、円を売ってドルを買う動きが加速し、さらなる円安が進む。円安は海外進出企業には利益をもたらす半面、輸入に頼る国内産業や国民の食生活に打撃を与え、食料や電気などの相次ぐ値上げが続き、弊害があらわになってきた。
 米国の経済学者が、「金利の低下政策は、いずれ生産性上昇率を低下させ、経済全体の活力を弱める」と述べている。日銀も肝に銘ずべきだ。(2022/4/10)
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2022年04月03日

【今週の風考計】4.3─自衛隊が敵視する「反戦デモ」と国民監視の危険

★今から6年半前の2015年9月19日、安倍政権は憲法9条をズタズタにする「安保法制」を強行成立させた。だが政府は、「武力攻撃事態」に対処する「集団的自衛権の行使」を発動する際、「グレーゾーン事態」に遭遇した時の判断については、法律的な担保や基準もなく、これまできわめて不明瞭だった。
★この間、防衛省は「グレーゾーン事態」の事例につき研究を重ねてきたのだろう。その事例の一つに、市民による「反戦デモ」を挙げて敵視していたことが判明した(「赤旗」3/31付)。恐るべき判断事例だ。すなわち「反戦デモ」は「武力攻撃事態」につながると想定し、テロやサイバー攻撃と同一視していたのだ。

★2年前の2月4日に陸上幕僚監部が、「陸上自衛隊の今後の取組み」と題する資料を、記者を対象とした勉強会に配布した。その中で「1予想される新たな戦いの様相」という章名で、「グレーゾーンの事態」を取り上げ、「武力攻撃に至らない様々な手段により、自らの主張を受け入れるよう相手に強要」する事態と説明し、それぞれ個別に写真付きで「報道」、「テロ等」、「反戦デモ」などの事例を挙げていたのだ。
 さすが参加した記者から「反戦デモを挙げるのは不適切ではないか」と指摘され、翌日に回収、「暴徒化したデモ」と書き換えて再配布した。しかも元の資料は廃棄してしまったという。
★デモなどの集会は、憲法21条「表現の自由」により保障されている。テロと同じように敵視するのは憲法に抵触するだけでなく、「反戦デモ」が「国を脅かす」と考えること自体、極めて危険な内容を持ち許されることではない。
 さらに「報道」も「グレーゾーンの事態」に該当する事例として挙げている。なぜ挙げているのか、その説明がないだけに、権力の恣意的な判断で「国を脅かす」とみなされ、新聞や放送メディアに「安保法制」を適用する危険性は十分にある。

★いまロシアのウクライナ侵攻に抗議する「反戦デモ」は、世界じゅうに広がっている。だがロシア本国では「戦争反対」のデモは弾圧され、市民の反戦行動には新KGBの監視が就く。ウクライナ侵攻に関する「報道」も禁止され、ノーベル平和賞を受賞したムラートフ氏の独立系新聞も停止を与儀なくされている。
 平和を求める「反戦デモ」や「報道」さえ敵視する自衛隊の事例判断は、あのプーチンと同じではないか。日本の自衛隊はロシアを踏襲するつもりか。いや実際は、これが日本の自衛隊のホンネではないか。
★現に自衛隊は、国民を監視する情報保全隊を組織し活動を展開している。2003年に自衛隊がイラクに派兵される際、それに反対する市民の行動を監視し、記録を取り保管していた。裁判所は、情報保全隊による市民監視がプライバシー権を侵害した違法な監視だとして国に賠償を命じている。
 これにも懲りず、昨年7月には沖縄の宮古島と与那国に情報保全隊が配置され、団体・個人の活動を監視し、個人情報を集めている。

★6月に施行される土地利用規制法も、住民を監視する危険な狙いがある。国は自衛隊や米軍の基地・施設周辺200カ所以上を「特別注視区域」に指定し、その区域内の土地建物の利用者情報を提供するよう住民や法人に求め、従わない時は最大で懲役2年以下、または罰金200万円を科す。
 しかも日常的に市民を監視し、集めた個人や法人の調査情報を必要な分析に回すという。人権侵害も甚だしい。市民監視に躍起の自衛隊、その危険性に目を向けよう。(2022/4/3)
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2022年03月27日

【今週の風考計】3.27─見過ごすな! 「教育勅語」を持ち出す政治的潮流

この23日、参議院の憲法審査会が開かれ自由討議が行われた。その中で聞き捨てならない発言が飛び出した。
 自民党の西田昌司議員が、わざわざ戦前の「教育勅語」をもちあげ、「日本人の伝統的な価値観だ」と礼賛し、「日本の文化で一番大事なのは教育勅語に書いてある家族主義、家族と伝統を大事にすることだ」と述べたのだ。
すでに「教育勅語」は、日本が敗戦後3年目の1948年、衆参両院で排除・失効が決議されている。それも当然、戦前の軍国主義教育と結びつき、国家危急の事態では「天皇のために命を捨てるべし」と定め、国家に対する個人の絶対服従と犠牲を求めたシロモノだからだ。
 しかも「教育勅語」に謳われる道徳の内容は、天皇を頂点とする身分序列を維持するため、臣民は天皇に忠義を誓い、家族の間では家長に従えとの習いで固められていたのだ。

もともと西田昌司議員は、現行憲法すらGHQによる「占領基本法」だとして破棄を要求し、明治憲法を復活させる「廃憲論」を唱えているゴジン。
 そのゴジンが憲法審査会の自民党幹事になっているうえに、戦後の平和日本を築いた国民の歩みを、憲法9条だけでなく、「日本国憲法」まるごと葬ろうというのだから怖い。現に「軍事力の一つとして核武装の議論もすべき」などと述べて憚らない。
さらに西田昌司議員は、自民党の京都府連会長を務め、この2月末に“選挙買収疑惑”で刑事告訴されているご本人でもある。当選目的で府議らに選挙運動への報酬として、1人につき現金50万円を配っていたという疑惑である。
 加えて自民党の京都府連に寄付された金が、地元の府議らに還流させる形で選挙資金を渡す、いわば「マネーロンダリング」システムが構築されていたという。
まず自分にまつわるスキャンダルについて、きちんと説明責任を果たすのが先決だろう。政治倫理もへったくれもない不道徳の極みについて、潔く処することもできず、大仰に道徳や家族倫理を持ち出し「家族と伝統を大事にする」も何もあったものではない。よくも恥ずかしく居直っていられるものだ。

31日は、教育基本法が学校教育法とともに公布されて75年になる。戦前の教育の反省から「教育勅語」に代わって、憲法26条に掲げる「教育を受ける権利、教育の義務」に則って、個人の尊厳を重んじ、人格の完成を目ざし、真理・平和・正義を希求する人間の育成を図り、個性豊かな文化の創造を目ざす教育を確立するために制定された。
この教育基本法には、もう一つの重要な柱がある。「教育は、不当な支配に服することなく」(10条)と謳い、国や行政権力が教育に不当・不要に介入することを禁じた。それにもとづき教育行政の目標は、施設整備や教員配置などの教育条件の整備確立においている。
 西田議員の発言は教育基本法の精神を踏みにじるものでもある。再度言おう。戦前の軍国主義教育への深い反省など無視して、「教育勅語」を礼賛する発言が、声高に出てくる政治的潮流を見過ごすわけにはいかない。(2022/3/27)
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2022年03月20日

【今週の風考計】3.20─ゼレンスキー大統領夫妻が心こめて歌う「Endless Love」

ウクライナのゼレンスキー大統領夫妻が、それぞれギターをつま弾きながら、デュエットで歌う映像が、YouTubeやスマホなどSNSで拡散されている。
 しばらく前の映像だが、歌っているのは名曲「Endless Love」(エンドレス・ラブ)。ジージャンを着て、見事にハモッて歌う2人の表情が、なんとも美しい。
 この名曲は、1981年にリリースされたライオネル・リッチーとダイアナ・ロスによるデュエット曲。タイトルと同名の映画「Endless Love」の主題歌である。

いまテレビで見るゼレンスキー大統領は、濃いモスグリ−ンの半袖・丸首シャツを着て、カメラの正面に向かい、ロシアの侵攻に抗して戦う国民や世界の人々に呼びかける姿ばかり。だが、その姿の奥深くには秘めた<限りない祖国愛>が漲っているのだと、いまさらながら気づく。
 コメディ俳優出身の44歳とはいえ、国民の心に響くような語り口で勇気づける「戦時指導者」として、求心力を高めているのも頷ける。「政治信条がないポピュリスト」との批判など吹っ飛んで、いまや支持率は91%、昨年末から3倍に跳ね上がっている。
3年前の春に行われた大統領選の決選投票で、ポロシェンコ前大統領に圧勝。その後ウクライナ東部の紛争が長期化し、また汚職のまん延で支持率は低迷していたが、ロシアの侵攻を受けると状況が一変した。

ゼレンスキー大統領の妻オレナ・ゼレンスカ夫人も44歳、2人の子供を持つ母親として、「ロシアが子どもを含む民間人の<大量殺人>を行っている。あと何人子どもが死ねばいいの!」と、必死にロシア軍の侵攻に抗議の声を挙げ、反撃の闘いへ参加するよう呼びかけている。
 ウクライナはロシアがクリミアを併合した2014年以降、女性も戦闘任務に就くことが可能になり、全体の15%・3万人以上が女性兵士という。
ゼレンスキー大統領と共にキエフに残る国会議員で「声の党」党首、キラ・ルディクさんは、国際女性デーの3月8日、こう述べている。
 「今年、私たちが手にしているのは花だけではありません。銃も手にしています。狂気の独裁者プーチンと彼が持ち込んだ戦争に対し、ウクライナの女性たちに『立ち上がって戦いましょう』と何度もお伝えします」

なぜか昔、仲間と演出・上演したドイツの作家・ブレヒトの演劇<カルラールのおかみさんの銃>に思いが走った。「汝、人を殺すなかれ」の教えに立つ母親が、夫だけでなく愛する息子まで独裁者に殺されたのを契機として、自ら銃をもって闘いに参加するドラマだ。セリフの言い回しや時代背景の解釈をめぐり、議論を重ねたのが懐かしい。
 ひるがえってウクライナに戻れば、銃を手に取り闘いに参加する女性たちがいる一方、国境付近では父や夫らと別れ、悲しみに暮れながら子を連れて逃れていく女性が数多いのも現実だ。
16日にはロシア軍が、南東部マリウポリ市の中心部にある劇場を空爆した。この演劇舞台がある劇場の地下は、住民の避難場所になっていた。千人を超える避難者には多くの子供や女性がいて、多数が生き埋めになっている。プーチンよ、この<罪と罰>は、永久に汝のもとに降りかかるのを忘れるな。(2022/3/20)
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2022年03月13日

【今週の風考計】3.13─今もなお続く「3・11フクシマ」の現実を直視せよ!

あの「3・11」が11年目を迎えた。「あの」とは、2011年の福島第一原発の爆発事故である。有識者が津波の襲来を予測し、原発を守る防潮堤のかさ上げを進言したにも関わらず、東京電力は無視した。こうした経過を見れば、「3・11フクシマ」は正に人為災害に他ならない。
現に今もなお「原子力緊急事態宣言」は発せられているままなのだ。忘れてはいけない。原発事故が収拾したわけではない。自然災害の東日本大震災とは区別して考えねばならぬ。

現場はどうなっているのか。敷地内の放射線量はかなり下がったものの、原発の廃炉作業は大幅に遅れ、約30年後に完了させる目標は風前の灯だ。
 炉内で溶けた核燃料が周りの金属などと混ざりあい固まったデブリは、高濃度の放射線を放ったまま、1号機から3号機内に合計880トン、膨大な量が溜まっている。
この2月8日、11年目に入る1カ月前、やっと2号機の内部にロボットを入れ、デブリの量や形状などの調査が始まった。長さ約22メートル、重さ約4・6トンの特殊鋼製ロボットアームの先端に付けた金属ブラシを操作し、年末までにデブリを数グラム取り出すという。
880トンのデブリを取り出すなど、100年かけても無理。人体に有害な放射性物質セシウム137の半減期は30年、ストロンチウム90の半減期は28年。100年待てば放射能は10分の1に、200年待てば100分の1に減る。
 1986年のチェルノブイリ原発事故の時に実施したように、福島原発もまた、原子炉建屋全体をコンクリート製の構造物「石棺」で封じ込めて、ジッと待つしかない。

さらに原発事故で全町民の避難が続く大熊町、双葉町、浪江町の人びとの苦悩は、極限にまで来ている。ようやく双葉町は6月以降、中心部の避難指示が解除される見込みで、町民の準備宿泊も始まったが、希望するのはわずか15世帯。
いまや多くが避難先での生活を築いている。「帰りたい」と思っても「帰れない」現実に、セメントと鉄で作った「復興ハコモノ」など、なんの役にも立たない。周りに知る人もいない高台にある家に、高齢者が「ぽつんと一人」、どうやって暮らし、生きていったらよいのか。
 「復興」の陰で「棄民」扱いされる住民の苦しみは尽きない。

写真家の豊田直巳さんが『福島 人なき「復興」の10年』(岩波ブックレット)で、被災住民の現実をレポートしている。
 とりわけ第3章<人間としての「生」を取り戻すために>にある「自分らしく生き抜いた酪農家の死」に綴られた15ページは、胸に迫ってくる。放射能汚染がひどい飯舘村で乳牛や肉牛を飼い続けたが、とうとう避難を強制され離村。その後、村に戻り「売ることのできないソバの栽培」で農地保全に邁進する。だが甲状腺がん発覚、そして死…。
いまでも飯舘村の放射線量は高い。小宮字萱刈庭では毎時0.689マイクロシーベルトが観測されている(3月11日8:50現在)。国が決めている放射能汚染の基準である毎時0.23マイクロシーベルトを、いまだに超えている。(2022/3/13)
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2022年03月06日

【今週の風考計】3.6─「維新の会」は大阪府民の命よりも「核共有」が大事なのか

★ロシアのウクライナ侵略に対する非難決議が141カ国の賛成で採択された。またプーチン大統領が、核戦力の態勢強化を命じ核兵器の使用を示唆した言動にも、13カ国が非難の共同声明を出している。
 4日にはロシアがウクライナの原発まで爆撃した。人類史上初めての暴挙、「ロシア軍の即時撤退」が喫緊になっている。

★こうした世界の国々や人々が、ロシアの暴挙に怒りの声を挙げているさなか、こともあろうに「日本維新の会」は、プーチンが仕掛けた「核の使用」という脅しに呼応し、「日本も『核共有』を論議すべきだ」とぶち上げ、驚くべき内容の提言を政府に提出した。
 要約すれば、@米軍の核兵器を日本に配備し、日米で共同運用する「核共有」へ A防衛費をGDP(国内総生産)の2%まで増額する─これに尽きる。
★ちょっと待て。「日本維新の会」は、日本国憲法の精神や国是としてきた非核三原則について、きちんと勉強したのだろうか。とってつけたようにタブーを廃し議論を促すためだと、強弁してはばからない。その恐ろしさ。

★唯一の戦争による核被爆国である日本で、被爆者団体が怒りの声を挙げている。
 「核兵器は『絶滅』だけを目的とした狂気の兵器。人間として認めることができない絶対悪の兵器。日本国民を核戦争に導き、命を奪い国土を廃墟と化す危険な提言」と。
 さらに田中熙巳代表委員が、「核兵器についての知識、核兵器が使用された惨劇、非人道的な悪魔の兵器であることを知らない政治家集団ではないか。憲法改悪もねらう維新政治の本質でもある」と指摘しているのは痛烈だ。
★国連で採択された核兵器禁止条約が発効して一年。維新の提言は、条約をつくった核廃絶と平和を求める世界中の人たちに敵対する行為であるのは間違いない。

★この慌ただしい「日本維新の会」の動きには、隠された背景がある。まず2月27日朝のフジTV系番組に出演した維新の創設者・橋下徹氏が、対談相手の安倍晋三・元首相に対し、プーチンの「核使用」発言に触れて、日本でも米軍との「核共有」を議論すべきだと提起し、安倍氏も同意し双方の意見が一致した。
 翌28日には維新の松井一郎代表が記者会見で、「非核三原則は昭和の価値観か」と揶揄し、その4日後には提言まで提出する速さだ。

★これこそ、いま検討されている「敵基地攻撃論」を補強する援護射撃ではないか。これまで安部氏は「相手をせん滅するような打撃力を持つべきだ」と主張している。また安倍氏の実弟である岸信夫防衛相は、「自衛隊機が他国領空に入って軍事拠点を爆撃する手段を持つことを排除しない=vと明言している。
 米軍と自衛隊で「核共有」ができれば、専守防衛どころか核を使う先制攻撃すら可能となる。

★いま安倍氏がやるべきことは、27回も会談し仲の良さを誇るプーチン大統領に電話して、「ウクライナへの侵攻はすぐにやめよ」と説得することではないか。
 また橋下氏や松井氏など、「日本維新の会」がやるべきことは、足もとの大阪府・市で広がるコロナ感染による死者増大への対策だ。3/4現在、人口822万人の大阪で死者4048人。日本全国で最多。2位は人口1396万人の東京で死者3767人。コロナ感染者数も人口比で見たら、全国平均の約2倍と最悪だ。
★これも公立病院の病床を削減してきた結果ではないか。「核共有」の提言やカジノ建設に790億円の税金投入など止めて、まず府民の命を守る仕事に専念せよ。(2022/3/6)
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2022年02月27日

【今週の風考計】2.27─戦火にさらされるキエフとスターリンの亡霊

ロシアはウクライナ侵略を直ちにやめよ! まず怒りをもって抗議する。
 ロシア軍がウクライナの首都キエフ市内に侵攻し、ロシアのミサイルが住宅地を直撃、市中心部を流れるドニエプル川の東岸では、高層マンションが炎に包まれ住民が負傷したという。

今から41年前、ソ連が崩壊する10年前、所用と観光を兼ねて訪れたキエフの市街が思い出される。モスクワから寝台特急に乗り、着いたキエフの町は朝もやに包まれていた。
 ガイドの案内で聖ソフィア大聖堂へ。緑色の玉ネギ型をした鐘楼の上に金色の十字架がそびえる。またペチェールスカ大修道院・洞窟内には美しいイコンが並び、地下墓地には高名な僧がミイラとなって安置されている。
ドニエプルの丘には、10世紀末にウラジーミル公国を建国したウラジーミル聖公の銅像が、ドニエプル川に向かって左手に剣、右手に十字架をもって立つ。市の中心部を通るフレシチャーティク大通りには、レーニン・コムソモール広場があった。
 いまは「マイダン広場」と名前が変わっている。2014年2月、ヤヌコビッチ大統領が率いる政府に抗議する人民デモが行われ、鎮圧する部隊により、多くの人がこの広場で命を落とした。

思い出のキエフが、いま戦火にさらされている。気が気でない。プーチン大統領は、何を考えているのか。彼のフルネームはウラジーミル・プーチンという。
 このウラジーミルになぞらえて、2016年11月、プーチン大統領は、モスクワのクレムリン近くにウラジーミル大公の巨大なブロンズ像を建立し、その除幕式に臨んで、大公はロシアの精神的基盤となったと述べ、国家の結束の重要性を訴えている。
しかし、その独裁・強権政治はとどまるところを知らない。KGB出身だけに国内の反体制派への弾圧はもとより、自由な報道機関への脅迫、独立を目指すグルジアやチェチェンへの侵攻・介入、クリミヤ半島の領有など、旧ソ連大国の復活を目指し、版図拡大に躍起となっている。

図らずもロシア軍がウクライナに侵攻する中、リュドミラ・ウリツカヤ『緑の天幕』(新潮クレスト・ブックス)を読み終えた。
 本書は、独裁者ヨシフ・スターリンが死んだ1953年から、亡命詩人ヨシフ・ブロツキーが亡くなる1996年までの40年を丹念に描いた700ページに及ぶ大作だ。
ソ連が崩壊へと向かう激動の時代を背景に、詩や小説、音楽を愛する少年3人組が、文学の教師からの薫陶を得て、サミズダート(自主的な地下出版)に携わる結果、KGBの尾行や逮捕、ラーゲリ収容など過酷な生活が強いられる。
 自由を制限され抑圧された反体制知識人たちが何を考え、どう振舞ったか、その生きざまが浮かび上がる。女性である著者もまた1943年生まれ、この激動の時代を生き、今でも活躍している作家だ。

もう一つ、映画「金の糸」が岩波ホールで、この26日から上映されている。ジョージア映画界を代表する女性監督ラナ・ゴゴベリゼ監督91歳の27年ぶりの最新作である。
 ジョージア(旧グルジア)激動の時代を生きた女性作家とその人生に関わった人々を、過去との和解をテーマに、日本の“金継ぎ”に着想を得て、“未来を見るために過去を金で修復する”という意味がこめられたドラマ作品。
ゴゴベリゼ監督の母もスターリンの大粛清で流刑された経験を持つが、監督自身の経験も投影しながら撮影している。

グルジアといえばスターリンの生地。そのグルジアのゴリ中央広場に建っていたスターリン像が、2010年6月27日、撤去された。ゴリは2008年のプーチン率いるロシア軍によるグルジア侵攻の際に攻撃された都市だ。
こうしてみると、不思議とプーチンとスターリンがタブって見えてくるのが怖くなる。一刻も早くロシアの侵攻をやめさせ、ウクライナとの停戦合意に向け、世界が力を合わせるべきだ。(2022/2/27)
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2022年02月20日

【今週の風考計】2.20─教科書の記述書き換えと「日本維新の会」の策動

いま学校で使う教科書が危機にさらされている。時の政権が閣議決定すれば、歴史的事実すら、教科書の記述を書き換えることができるからだ。
昨年4月27日、菅政権は日本軍が徴用した「従軍慰安婦」や朝鮮人の「強制連行」について、教科書に「従軍」や「強制」の文字を使うのは不適切との閣議決定をした。「日本維新の会」幹事長・馬場伸幸議員が、政府に提出した質問主意書に対する回答である。
 この経過を見ると、自民党・政府・「日本維新の会」の連携による、保守層が唱える「歴史戦」への同調とあわせ、巧みな<教科書攻撃>が仕組まれていたとみたほうが良い。

それ以降、この閣議決定に基づき、文科省は教科書会社に「従軍」や「強制」の文字を削除するよう指示し、次々と教科書会社が検定済みの教科書の記述を書き換える事態が続いている。
 これまでも領土問題などで執拗に政府見解が書かされ、「改定」検定基準の他の規定を用いて、南京虐殺事件、関東大震災の被害者数など、学問研究の知見に基づいての記述ができなくなっていた。
ここにきて「従軍慰安婦」や「強制労働」など、日中・日韓にかかわる歴史問題について、「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解」という教科書検定基準を使いだしたのだ。
 しかも悪質なのは「日本維新の会」と歩調を合わせ、質問主意書に回答するという形で閣議決定に持ち込む。そして、その閣議決定を活用し、政権が望む愛国教科書に改訂する流れを加速させているのだ。

17日には日本弁護士連合会が「教科書の記述内容が時々の政権によって決定できることとなり、事実上の国定教科書に極めて近くなる。その根拠となる2014年の改定教科書検定基準の撤回を、改めて求める」との見解を発表した。

「日本維新の会」は、異様とも思える教育内容への介入を続けている。改憲という政治的意図もあらわに、教育現場へトンデモナイ圧力を加えている。
2日の衆院予算委員会では、山本剛正議員が日教組の教育研究集会で披露された憲法教育にかかわる報告を取り上げ、「意図的に子どもたちに護憲を浸透させようと、各地で授業を進めている」と名指しで攻撃までする始末だ。
 国会議員に課せられている憲法99条の憲法順守義務など、どこ吹く風。「憲法」の意義を伝える教師の活動すら攻撃して恥じない。「改憲」まっしぐら。「敵基地攻撃論」も大賛成。

さらに他の野党議員への懲罰動議や名誉棄損の訴えを乱発し、お笑い芸人への恫喝や批判的言論への強硬措置など、正気の沙汰ではない。しかも今回の懲罰動議を提出した足立康史議員は誹謗中傷発言で過去6回も懲罰動議を受けてきた本人だ。自らの誹謗中傷は棚に上げ、道義礼節を欠き不見識極まりない(東京新聞「こちら特報部」2/19付)。
<佐渡金山の世界文化遺産登録>をめぐっても、戦時に朝鮮人の「強制労働」が行われていた歴史的事実があるにもかかわらず、松井一郎代表は、「『強制労働』とはいえない」と主張。岸田首相が政府内に「歴史戦チーム」を立ち上げたというのは、「聞く力」を発揮したからだという。もうつける薬はない。(2022/2/20)
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2022年02月13日

【今週の風考計】2.13─多聞院の「身代わり寅」とクマガイソウを巡って

旧正月の風もなく雲一つない晴天の日、“巣ごもり”で鈍った体を動かそうと、寺にでも行ってみようかと思い立った。今年は36年に一度の「五黄の寅」年。前に友人から勧められていた、「寅」とゆかりのある多聞院毘沙門堂を訪れることにした。
 多聞院は、埼玉県所沢市の北部・中富町にある。西武新宿線「航空公園駅」東口からバスが出ているのだが、それが発車したばかり。次は2時間後、あきらめてタクシーに乗る。近いと思いきや、25分もかかった。

多聞院の入り口には、【武田信玄公 守本尊 毘沙門天】の幟旗が並ぶ。武田信玄が戦陣に臨むときは、いつも兜の中に、この毘沙門天像を納めていたと伝わる。武田信玄が亡くなった後、川越藩主の柳沢吉保の手に渡り、元禄9年(1696年)に近隣の鎮守寺として創建した多聞院の毘沙門堂に、安置されるようになったという。
12年に1度の「寅年」には、本尊の毘沙門天が開帳される。コロナ禍とはいえ、新年からお参りに訪れる人が例年以上に多いのは、このせいでもある。

毘沙門堂に向かって歩くと、すぐ一対の石像に出会う。なんと狛犬ではなく虎の石像だ。これは毘沙門天の御使いが虎であることに由来するというが、左の石像は首が長く、どうもチーターのように見えてならない。その台座にも、「張り子の虎」がびっしり置かれている。
武田菱の入った白い幔幕の下がる前で参拝すると、例の「張り子の虎」が、ずらり置かれている。身に降りかかる災いを、いわば「身代わり寅」に託して奉納すれば避けられるからだ。
 この「身代わり寅」、小さくてかわいい。大きさは鶏卵ぐらい。首に結ばれた赤い組み紐を垂らして、階段や手すり、外廊下など所かまわず、どこでも置かれている。

境内を巡ると、笠をかぶった5体とホッカムリした1体の地蔵が、すべて赤い「よだれかけ」を着けて立つ。その前に野菜やサツマイモ、米俵が並ぶ。これも石造り。
 他にも「カワラケ投げ」や土俵に乗せられた「力石」などに出会い面食らう。さらに苔むした石の上で、力こぶ漲らせた力士が胡坐をかいて踏ん張っている。その石像には、「鬼の悟り」の銘版が置かれている。
見上げれば黄色い花の咲くロウバイの枝という枝に、白いおみくじの紙が無数に結ばれ垂れ下がっている。さらに今は咲いていないが、500本を超えるクマガイソウ(熊谷草)やボタン300本が、4月半ばから5月に入って、それぞれ順番に見ごろを迎えるという。

そういえば行きのタクシーの運転手が、多聞院に着くまでクマガイソウの話をしていたのを思い出す。葉は緑色のプリーツスカートをラッパ状に広げた形で、その葉の中心部から一本の茎を伸ばし、その先に白地に紫の斑点を散らばした袋状の花房が、下むきに垂れるようにして咲くそうだ。高さは約40cmという。
 和名の由来は、膨らんだ袋状の花房を、源平<一ノ谷の戦い>で平敦盛を討った熊谷次郎直実が、矢を防ぐために背負った母衣(ほろ)に見立てたものといわれる。自生地が減少し、絶滅危惧種に指定されている。帰宅した後のにわか勉強を披露した次第。(2022/2/13)

※交通アクセス:西武新宿線「航空公園駅」東口から「ところバス」北路線(富岡循環コース)左まわりの11:55発に乗車、「多聞院通り西」に下車12:29着。東方向に約500メートル、多聞院まで徒歩約7分。帰りはバスの便が少ないので、「多聞院通り西」14:05便に乗車、「航空公園駅」14:45着。
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2022年02月06日

【今週の風考計】2.6─EUが取り組む「ギグワーカー」従業員化法の意義

★いま「ギグワーカー」をめぐって、大きな取り組みが始まっている。まず「ギグワーカー」とは何か。インターネットを経由して企業から単発の仕事を請け負う働き手を指す。
 料理配達員や配車サービスの運転手、フリーの技術者などが該当する。個人事業主として報酬を得るゆえに、企業による最低賃金や労働災害、年金などの保護が一切ない。
 日本ではウーバーイーツの料理配達員が顕著だが、その他も含めると1千万人が「ギグワーカー」にあたるという。
★「ギグワーカー」は世界各国で急増し、3年後には1億5千万人に達するとの予測まである。その経済規模はEUに限ってみても、2016年から2020年までのわずか5年で、4・7倍の140億ユーロ(約1兆8千億円)にまで成長している。だが「ギグワーカー」の得る報酬は、その半分以上が最低賃金以下だという。
 この3日にはトルコのイスタンブールで、食品デリバリー企業の配達員「ギグワーカー」が、最低月額報酬の引き上げを求めて、ストライキや街頭での抗議行動に立ち上がっている。

★ここにきて「ギグワーカー」を保護すべく、彼らを正規雇用化する動きがEUで高まっている。
 EUは、現在2800万人をこえる「ギグワーカー」を、一定の基準に基づく限り「従業員」と同等に扱い、最低賃金や傷病手当、休日などを保障するよう、企業側に義務づける新法案を公表した。
★その主な内容は、企業が、@報酬および上限の規則を設定している A電子機器などで労働状況を監督する B服装にルールを設ける――などの基準を設定。少なくとも2つに合致していれば従業員として認定される。
 EUは、この法案を2025年までに成立させるべく、加盟国に対し徹底的な議論を要請している。

★「ギグワーカー」ばかりでない。昨年12月上旬、米国のニューヨーク州にあるコーヒーチェーン・スターバックスの店舗で、初めて労組が結成された。今年に入って労組結成の波は、東海岸のボストンから西海岸のシアトルまで、合わせて19州28都市・町の54店舗にまで広がっている。
 会社側は執拗な「ユニオン・バスティング」(組合つぶし)を行っているが、労組結成の勢いは止まらない。民主党進歩派のサンダース上院議員は1月29日、「全国的な組織運動を展開している彼らに強く連帯する」と、エールを送っている。

★こうした世界の流れを見ていくと、春闘を前に「連合」は何をしているのか首をかしげてしまう。
 とりわけ新しく連合会長となった芳野友子さんは、岸田首相が臨席する「新年会」開催のみならず、「新しい資本主義実現会議」のメンバーにおさまり、政府と「連合」の関係は急接近。いまコロナ禍で呻吟している「ギグワーカー」やフリー労働者への対応は、どうなっているのか。顔を向ける方向が違ってはいないか。(2022/2/6)
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2022年01月30日

【今週の風考計】1.30─大阪府・市政の実態を知るにつけ思い起こす政治家

立憲民主党の菅直人・元首相が、一民間人・橋下徹氏について「弁舌の巧みさではヒトラーを思い起こす」と指摘するや、ご本人の橋下氏が「ヒトラーにたとえるのは国際的にはご法度」とかみついた。
 何を思ったか、維新のお歴々を初め国会議員までもが「人権問題だ」と騒ぎ出し、「民間人の橋下氏」に代わって、公党として抗議文を立憲民主党へ提出するなど、頓珍漢な攻撃をしている。
過去にさかのぼるが、橋下氏に対し、石原慎太郎・元東京都知事から「彼の演説のうまさ、迫力っていうのは若いときのヒトラーですよ」「ヒトラーの伝記を読んでもそうだけどね、彼に該当する政治家だね、橋下徹ってのは」と称賛された際には反論せず、橋下氏の「ダブルスタンダード」が問われている。

さて、この橋下氏が率いた維新主導の大阪府・市が進める「カジノを中核とする統合型リゾート」計画(IR)が、“泥沼”化している。人工島・夢洲の用地がヒ素やフッ素で汚染しているだけでなく、地震による液状化を防ぐ対策が必要になり、790億円もの公費を支出する事態に陥ったからだ。
 松井一郎市長は、知事時代の住民向け説明会で「IR、カジノに税金は一切使いません。民間投資で行う観光振興策だ」と大見得を切った。だが過去の約束にそむいて、大阪市民の税金を投入してまで、米国のカジノ企業MGMとオリックスに優遇措置をしてやる理由は、どこにあるのか。

新たに790億円もの支出を図るカジノ「整備計画案」が出たのが、昨年12月23日。府・市民への告知もゆきわたらぬまま、年明け直後の1月7日から「公聴会」と「説明会」を開催している。
 「公聴会」には政策決定権者が出席せず、問題点を指摘する公述人しかいない。参加者も少なく4回開いて、この29日に終了。市民への「説明会」といっても、2月14日には終了という性急さだ。
松井市長は、税金投入の批判を避けるため、借地権契約とか特別会計の港営事業会計からの支出だとか、言いつくろっているが、巨額な市民負担である事実に変わりはない。算定資料すら「黒塗り」では、790億円で収まる保障すらない。

こうも強引な大阪府・市政が続けられるのは、「二重行政」の解消を口実に、維新の会・知事と市長が歩調を合わせ、府・市民の税金や有形無形の資産を、私物のように処分する事態が常態化しているからだ。例えば大阪の二つの大学合併はどうか。
まず府・市長の権限で予算・決算を専決処分ができる実態を見てほしい。吉村大阪府知事や松井大阪市長の専決処分の行使率は、大阪府46.8%(2位の埼玉県が19.8%)、大阪市86.9%(2位は市長が維新の堺市84.2%)、ともに全国ワースト・ワン。これを見ても議会を軽視し、府・市長の権限で予算・決算を専決処分している事態が分かるというもの。

いま大阪府議会は定数88、大阪維新の会が51人、圧倒的過半数を握る。大阪市議会は定数83、大阪維新の会が40人、過半数までに2人足りない。加えて昨年10月の総選挙では、大阪府内の19全選挙区で、日本維新の会が立候補した14人が全員当選。まさに維新の会の独壇場となっている。
 加えて2月の大阪市議会には、定数83を2つ削減の81とし、大阪維新の会が絶対過半数を握るべく、来春の市議選からの適用を目指す。大阪府議会も定数88を9減らし79へともくろむ。この事態こそ、あの独裁政治家が目指した絵図ではないか。(2022/1/30)
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2022年01月23日

【今週の風考計】1.23─直木賞受賞の今村翔吾さんと出版界

いま大型書店に行くと、「直木賞」を受賞した今村翔吾『塞王の楯』(集英社)と米澤穂信『黒牢城』(KADOKAWA)が、うず高く積まれている。町の本屋さんにとっても、『鬼滅の刃』以降、本の売れ行きがパッとしなかっただけに恵みの雨だ。
 筆者も夢中になって読んだ。とりわけ『塞王の楯』は迫力満点。琵琶湖畔・大津城を舞台に、崩れない石垣を作る石工とどんな城でも落とす鉄砲づくりが、職人の意地を賭けて挑む戦国小説だ。
今村翔吾さんは1984年京都府生まれ。2017年デビューから5年足らずのうちに、ノミネート3回で受賞。「受賞の一報に号泣してしまった。しかも憧れの作家、池波正太郎先生と同い年37歳での受賞は感慨深い。これからも面白い小説を届けていく」と、語っている。

37歳の若さとは知らなかった。2020年の直木賞候補作『じんかん』(講談社)も、戦国の梟雄・松永久秀のイメージを覆す圧巻の歴史ドラマだが、そこで叙述される松永久秀の信念、その道を貫き通すには謀反も辞さず、この高邁な精神を織田信長は認めたとして展開する筆の冴えは、もう老大家の域だ。
しかも今村さんは元ダンス講師で、現在は書店経営も行う異色の作家。大阪・箕面駅近くの書店「きのしたブックセンター」の社長である。昨年4月に閉店寸前までいった書店の事業を引き継ぎ、11月にリニューアルオープンした。今村さんは「ここで100年続く書店を目指したい」と語っている。

書店をめぐる状況は深刻だ。ネットで本を買う人が増えたため、町の本屋さんに行く人が激減している。全国の書店数は2001年に2万1千店あった書店が2020年には1万1024店と半減した。
 本屋さんに来てもらおうと、店頭でイベントを開催したり陳列を工夫したり、懸命な努力が続いている。また取次からのパターン配本でなく、自らの選択による本揃えで営む「独立系書店」も増え、それぞれ健闘している。
その一つが、<Readin' Writin' BOOK STORE>(リーディン・ライティン・ブックストア)だ。2017年4月にオープンした。東京・台東区寿2丁目4−7にある。店主兼従業員の落合博さんは、1958年甲府市生まれ。毎日新聞社での論説委員(スポーツ・体育担当)を最後に退社し本屋を開業。
 昨年9月中旬、『新聞記者、本屋になる』(光文社新書)を出版した。「定年目前58歳、子どもは3歳、書店員経験0からの本屋開業記!」という帯の効果もあって、すぐに重版となった。また本屋を続けていくには「低く、長く、遠く」をモットーにしているという。

何も書店だけではない。小さな出版社も同じだ。永江朗『小さな出版社のつづけ方』(猿江商會)が、10社11人へのロングインタビューから、外からは覗い知れない「小さな出版社」の内幕に迫っていて参考になる。(2022/1/23)
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2022年01月16日

【今週の風考計】1.16─「EABO」で南西諸島にもくろむ危ない日米の軍事計画

通常国会が明日17日から始まる。会期は6月15日までの150日間。コロナ変異株「オミクロン」の急拡大に、どう対応するのか論戦となる。
 政府・与党は7月10日投票の参院選をにらみ、野党の反発が強い法案は見送り、61本に絞り込んで22年度予算の早期成立を目指し、実績づくりに躍起だ。

さらに沖縄は秋まで連続する県・市の首長選挙や議会選挙など、「選挙イヤー」を迎える。その初戦となる名護市長選が16日告示され23日投票に向けて闘われる。
 与党が推薦し辺野古の米軍新基地建設を容認する現職の渡具知武豊氏と玉城デニー知事が支援し辺野古新基地建設に反対する岸本ようへい氏による一騎打ちの「天王山」の戦いとなる。
とりわけ在沖米軍基地内のコロナ感染者が急拡大し、累計6700人(1/13現在)を超える。辺野古の米軍新基地建設への怒りや疑問のみならず、「日米地位協定」の改定を求める声が噴出するのは当然だ。

政府は、ここにきて露骨な「アメと鞭」を使い分けた交付金の支給操作を繰り広げている。たとえば沖縄振興予算を前年度より約300億円も削り、10年ぶりに3千億円を下回る露骨な「玉城県政」ツブシを仕掛ける。これも9月末の沖縄県知事選挙を視野に入れての、汚い対応に他ならない。
過去にも、2010年の名護市長選で、辺野古への基地移設に反対する稲嶺進氏が当選すると、交付金の支給を止めている。そして4年ほど前の2018年4月、辺野古基地建設を容認する現職の市長が当選するや、米軍再編交付金2年分まとめて約30億円を支給した。
 以降、毎年15億円に近い交付金が支給されている。ここまで沖縄を愚弄した「金で面をひっぱたく」差別を続けるとは、怒りも極まる。

沖縄県や名護市だけではない。南西諸島に連なる鹿児島県・馬毛島や沖縄県・石垣市にも及ぶ。
 種子島の西12キロにある約8平方キロの無人島・馬毛島に、米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)を移す計画および自衛隊基地整備に伴い、防衛省が米軍再編交付金を支給する計画だ。「アメと鞭」の交付金支給を餌に、反対する現在の西之表市長に受け入れを迫る。
 石垣市でも、昨年6月、平得大俣に陸上自衛隊のミサイル基地建設の容認への報償として、防衛予算からゴミ焼却施設の改修費用が支給されている。

台湾有事を視野に、日米両国は鹿児島県の大隅諸島から沖縄県の先島諸島へと連なる南西諸島に軍事網を広げるため、自衛隊と米軍の基地増強・一体化を図る「遠征前進基地作戦」(EABO)の具体化が急速に進んでいる。
 石垣島へ陸自の地対艦・地対空ミサイル両部隊を配備するだけでなく、奄美大島や宮古島にも地対艦ミサイル部隊を置く動きが強まる。今や南西諸島が米中の軍事衝突の最前線、戦場になる危険が迫っている。(2022/1/16)
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2022年01月09日

【今週の風考計】1.9─コロナ「第6波」と米軍基地そして日米地位協定

★コロナ感染拡大は「第6波」に突入した。今日から沖縄・山口・広島の3県に、「まん延防止・重点措置」が、31日まで適用される。
 沖縄県では6日の1日だけで、コロナ新規感染者が981人。昨年12月12日〜18日の1週間を累計した新規感染者は27人、この数字を見ても急拡大の恐ろしさは桁はずれだ。
★沖縄にある米軍基地で発生した昨年12月末のクラスター(感染者集団)は、1月6日現在、合計4027人に達した。米国でクリスマスを過ごし、沖縄の9基地に帰ってきた海兵隊員は、PCR検査もないまま、マスクもつけず基地外に出て飲食を続けてきた。
 沖縄県民の新規感染も、この米軍基地からの「染み出し」感染によるとみられ、基地周辺の住民からは怒りの声が噴出している。

★この事態は、沖縄だけでなく日本全国の米軍基地周辺で広がる。6日までの米軍基地内の感染者は、山口県・岩国基地で529人、静岡県・御殿場の「キャンプ富士」46人。神奈川県の横須賀基地213人、東京都・横田基地85人、青森県・三沢基地133人、ここからの「染み出し」感染が、「第6波」に拍車をかけている。
★これまで米兵や軍関係者には、日本での検疫が免除されていた。まさに「穴の開いたバケツ」状態で入国し、在日米軍基地に着任していたのだ。
 昨年末になってやっと、日本政府の申し入れにより、米軍は日本到着後24時間以内のPCR検査を実施するようになった。

★こうした事態を招いたのも「日米地位協定」があるからだ。在日米軍に対しては、日本の国内法が適用されず、警察の捜査や裁判権が及ばない特権を保障している。1960年に制定されたまま、以来62年間、改定されていない。
 米軍は世界中の80カ国に800カ所を超える軍事基地を持つが、ドイツ・イタリア・ベルギー・イギリスなどの国々は、米軍基地に対して国内法を適用させている。日本だけが唯一、国内法の適用外とは、あまりにも日本の主権を疎かにしてはいないか。
★いまから18年前、日本の全国市長会が<日米地位協定の見直しに関する要望書>を国へ提出している。沖縄県もドイツやイタリアに調査団を派遣し、「日米地位協定」の不平等性を告発し、見直しを強く求めている。

★「日米地位協定」に基づき設置されている日米合同委員会もクセモノだ。日米幹部が米軍や基地の具体的な運用を図るため、実務者協議を隔週で行っている。
 そこでの合意事項は日米双方に拘束力をもつが、協議の内容は非公開、国会への報告義務もない。国民の知らない密約が数多く結ばれているといわれる。
★まさに「日米地位協定が憲法の上にあって、日米合同委員会が国会の上にある」のが実態だ。その実態を、吉田敏浩『追跡! 謎の日米合同委員会』(毎日新聞出版)が、明らかにしている。とりわけ本書の第5章で、<新型コロナと検疫と日米合同委員会の合意と米軍特権>を詳述していて参考になる。(2022/1/9)
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2022年01月02日

【今週の風考計】1.2─年初に起きた歴史的事件から今を考える大切さ

あけましておめでとうございます。4日から開催の第10回核不拡散条約(NPT)再検討会議が、コロナ感染拡大で延期される。
 核保有国も含め191カ国・地域が加盟し、「核兵器のない世界」の早期実現に向け、具体的な行動へ踏み出す重要な会議が、7年近く開かれていない。残念でならない。
昨年1月22日、核兵器禁止条約に51カ国・地域が批准し発効した。その後、署名・批准は加速し、昨年12月15日までに計144カ国・地域に及んでいる。唯一の戦争被爆国である日本が、いまだに核保有国への「橋渡し役」や「核の傘」論を振り回し、署名も批准もしていないのは腹立たしい限りだ。

さて新年となれば<温故知新>、日本や世界が歩んできた歴史が気になる。手もとにある年表やクロニクルから、90年前にさかのぼり10年ごとに下りつつ辿ってみる。
 まず日本を見てみよう。
1932年1月3日:関東軍、錦州(中国東北部)占領─前年の柳条湖事件デッチ挙げ以降、ハルピンなど満洲の主要都市を占領し、溥儀を擁立して傀儡国家・満州国を強引に建国。さらに軍部の暴走は5・15事件、国際連盟からの脱退へと突っ走る。
1942年1月2日:日本軍、フィリピン・マニラ占領─前年の12・8真珠湾攻撃による日米開戦と同時に、日本軍はフィリピン上陸作戦を始め、年が明けるやマニラを占領。捕虜兵に強いた「バターン死の行進」で約1万人が死亡。また日本軍はフィリピン女性を「慰安婦」に強制動員し、その数は千人を超える。

 次に世界を見てみよう。
1952年1月4日:イギリス軍、エジプトのスエズ運河を封鎖─エジプト政府は、第二次世界大戦後も居すわるイギリス軍の撤退を要求。国民の間でも反イギリス行動が拡大。イギリス軍は住民デモへの発砲やスエズ運河封鎖、施設占領などの強行策に出る。
 その後、国王による妥協策で事態は収拾したが、民衆運動の高揚はエジプトの社会・経済体制の矛盾を浮き彫りにし、6カ月後にはナセルが率いる「エジプト革命」へと発展する。
1962年1月1日:南ベトナム人民革命党の結成─米軍と闘う南ベトナム民族解放戦線の中核となる。ベトナム戦争が激しくなる68年のテト攻勢で、米軍とサイゴン政権軍に大打撃を与え、翌年6月には臨時革命政府樹立への道を開いた。

 最後に50年前の日本に戻ろう。
1972年1月6日:佐藤・ニクソン会談、沖縄返還5月15日決定─3日前の「日米繊維協定」で、日本は米国から大幅な譲歩を強いられ、「糸(繊維)を売って縄(沖縄)を買う」とまで言われる。しかも沖縄返還に際し「核抜き本土並み」はタテマエ、「沖縄への核持ち込み密約」まで押しつけられるに至った。
沖縄の人々が本土復帰に込めた願いは、日本国憲法の下での基本的人権の保障と「基地のない平和な島」の実現だった。
 だが今もって日米両政府は「本土」にある米軍施設面積の7割を沖縄へ押しつけ、さらに県民の民意すら足蹴にして、辺野古に米軍新基地建設を強行する。どこまで沖縄を苦しめれば気が済むのか。新年に際し新たな怒りがわく。(2022/1/2)
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2021年12月26日

【今週の風考計】12.26─ソ連崩壊30年と「大祖国戦争」への想い

ソ連が崩壊して30年。1991年12月25日、69年間続いたソ連が解体した。そのきっかけの大きな一つはチェルノブイリ原発事故にある。1986年4月26日に起きた未曾有の大惨事が、あまりにもひどい情報統制によって、その実態が国民から隠され、政権への大きな怒りへと爆発した。
ゴルバチョフら新指導部は、「情報の公開・言論の自由」を保障するグラスノスチを進めつつ、さらなる根本的な改革・ペレストロイカの必要性を痛感し、秋には知識人や勤労者に向けて大胆に立ち上がるよう呼びかけた。
 1988年末には大統領制を導入し、共産党の一党支配を廃止した。米ソ間の冷戦も終結し、1991年7月には戦略兵器削減条約(START)も調印され、世界の緊張緩和が一段と進んだ。
その結果、ソビエト連邦が解体され、緩やかな国家同盟を形成するロシア連邦が成立したのだ。一党独裁を明確に否定した上で自由選挙を行う共和制多党制国家となった。
 ソビエト連邦のゴルバチョフ大統領は辞任し、これまでの国旗「鎌と鎚の赤旗」に代わって、ロシア連邦の「白・青・赤の三色旗」の国旗がクレムリンに揚げられた。

いまロシアはどうなっているか。2000年に就任したプーチン大統領は、ソ連崩壊後の混乱を収束させ、ロシアを再興に導いたと自信満々。チェチェン共和国の独立紛争も、欧米諸国が企てたロシア解体策動であり、その紛争も終結させロシア解体を防いだと自負する。
 だがプーチン大統領は、国内では政敵への弾圧、独立系メディアへの規制など、強権的な政治姿勢を強め国民との対立が激しくなっている。
国際的にもロシアがウクライナ南部クリミアを強制的に編入し、欧米からの強い非難や制裁を呼んでいる。さらにロシアは、NATOが進めるウクライナでの軍事活動への対抗措置を言い分に、国境へロシア軍を集結させ緊張を高めている。

もともとプーチン大統領は、ソ連崩壊を「20世紀最大の地政学的悲劇」と呼び、「千年以上かけて獲得した領土の4割を失った」と憤慨している。
 現にロシア国民の間では約6割が、「ソ連崩壊を後悔している」と答えている。高齢者では、さらに強まる。いまから80年前、ナチ・ドイツと闘い祖国を守った「大祖国戦争」がよみがえるのだろう。特に1942年6月から8カ月に及ぶスターリングラード攻防戦≠ヨの想いは格別だ。

その想いを私たち日本人が理解するに絶好の新刊本がある。逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』(ハヤカワ書房)だ。舞台は「大祖国戦争」、主人公はソビエト赤軍の女性狙撃兵18歳。ある日、モスクワ近郊の農村がナチスに襲撃され、彼女一人だけ生き残った。
母や村人を殺したナチスに復讐するため、狙撃兵としての特訓を受け、スターリングラード攻防戦≠フ最前線に出ていく。だが戦いの中で、兵士による女性への性暴力、生死をさまよう戦場の地獄を目の当たりにする。
 そんな女性狙撃兵が、地獄巡りの果てに辿りついた先は何か。
 手に汗握るサスペンス、年末年始の休みに、ぜひ読んでほしい。(2021/12/26)
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2021年12月19日

【今週の風考計】12.19─「森友公文書改ざん」裁判に対する卑劣な仕打ち

森友公文書改ざん問題で自死に追い込まれた赤木俊夫さんの国家賠償請求訴訟で、国は急に「認諾」へと舵を切り、1億700万円の賠償金を支払うことで真相究明にフタをした。
 この訴訟裁判は、公文書改ざんの真相を解明するためで、賠償金を目的にしたものではない。1億円以上という高額請求にしたのも、国が裁判での審議を避け「認諾」へ逃げようとするのを防ぐためだった。
妻の赤木雅子さんは、「ふざけるなと思いました。夫は国に殺されて、また何度となく殺されてきましたけど、きょうもまた打ちのめされてしまいました」
 「お金を払えば済む問題じゃないです。私は夫がなぜ死んだのか、何で死ななければならないのか知りたい。そのための裁判でしたので、ふざけんなって思います」と、怒りの声を挙げている。

はっきり言って岸田政権は、安倍晋三・元首相と妻が絡んだ森友問題の「不都合な事実」が暴露されるのを恐れ、「真相」を闇に葬り、安倍夫妻を守ったことに他ならない。こんな卑劣なやり方が、許されていいのか。
 しかも賠償金というが、安倍元首相のみならず、関係した閣僚や官僚は一銭も払わず、1億を超える金額は国民の税金で支払うのだから、開いた口がふさがらない。
 「赤木ファイル」の開示や第三者による再調査は拒否され、いまだに安倍元首相は、改ざんへ至った責任についてはシラを切り、赤木俊夫さん・雅子さんの人権を冒涜し続けてきている。 
だが諦めてはならない。国賠訴訟は終わっても、まだ佐川元理財局長との裁判が残っている。国会も真相解明に力を尽くせ。ましてや野党は、安倍政権時代の「公文書改ざん」を徹底追及し、「第三者による再調査」の実現にむけて全力を挙げるべきだ。

さらに国土交通省が、国の基幹統計の一つである「建設工事受注動態統計」のデータを書き換え、二重計上していた不正問題も、GDPの数値につながる重要統計だけに極めて深刻だ。
 第2次安倍政権下の2013年以降、国交省の官僚自らがデータを改ざん、さらに数値を二重計上までするという、トンデモナイ不正を今年3月まで8年間も続けていたというから驚きだ。
 これも「アベノミクス」の成果を誇るため、GDPを大幅にかさ上げさせる改ざん、すなわち“アベノミクス偽装”ではないかと言われている。

約8年の安倍政権下で繰り広げられた政治の「闇」は深い。<桜を見る会>参加者名簿の廃棄、自衛隊イラク派遣の日程改ざん、2018年末の厚労省「勤労統計」データ偽装など、続発した。
 ここへきて国交省の「建設工事受注統計」データの改ざんまで加わった。さらに国会での<桜を見る会>虚偽答弁は118回にも及び、野党の要求にも関わらず国会を開かす、予算委員会を開けばヤジで応酬するなど、政治の私物化は極まった。
その背景には、<なんでも官邸団>と揶揄されるほど、「一強政治」「官邸支配」がはびこり、安倍元首相への忖度あるいは「アベノミクス」への迎合・配慮が、各省官庁内に陰に陽に働いていたからではないか。
 再度言いたい。野党は「提案型」などと言っている場合ではない。国会で厳しく「真相」を追究し、「迎合・忖度政治」を廃絶しなければダメだ。(2021/12/19)
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