2021年01月17日

【今週の風考計】1.17─国会紛糾で菅首相に向かうブーメラン=<自滅の刃>

国内で初めてコロナ感染者が確認されてから1年。いまや感染者は32万6千人、死者は4500人、恐るべき拡大の惨状が続く。遅れに遅れて発出した2度目の「緊急事態宣言」、11都府県に拡大したものの、収束すら見通せない。
東京都内では「自宅待機」感染者は週に3千人を超え、6700人が入院・療養先すら決まらない。単身者からは「コロナで死ぬか餓死で死ぬか」の悲鳴があがっている。

感染拡大を抑え込めない菅内閣の支持率は33.7%、「危険水域」に近い。これまで菅首相は5人以上の会食に参加し、さらには「緊急事態宣言」の対象県・福岡を静岡と言い間違え、「国民皆保険制度」の見直しすら示唆する発言など、挙げて責任は「ガースー」自身にある。
18日からの通常国会では、後手後手のコロナ対策に加え、感染症対策特措法の改定に向けたゴリ押し審議が始まる。
 入院を拒否した感染者に科す罰則を「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」「コロナ感染者の受け入れ勧告を拒否した病院名の公表」など、法案の内容を巡って紛糾するのは間違いない。
当然だ。コロナ感染で入院したくても入れない実態を放置して、罰則のみ優先するなどトンデモナイ。また民間病院にしろ、受け容れたくとも看護師や施設の補充・援助などの裏付けがなければ、どうやって責任ある医療ができるのか。医者の苦衷も理解できる。

長野県の松本モデルが示すように、症状に応じた受け入れ態勢を各種病院との間で計画を作り、コロナ治療への広域な医療体制を敷いている自治体もある。政府は各自治体に援助・アドバイスし広域医療の構築を強化すべきでないか。
それにしても肝心のPCR検査、いまだに軽視するのは重大な誤りだ。ノーベル賞受賞の本庶佑教授が「羽鳥慎一モーニングショー」で、改めて「PCR 検査能力の大幅な拡充と無症状感染者の隔離の強化」を訴えている。
 人口1000人あたり検査数を見ても、いまだに日本は0.5人、米国は3.9人。なぜ自動PCR検査システムを活用しないのか。これをトレーラーに搭載し、各地を回れば12時間で2500件の検査ができるという。
 これを1000台用意すれば1日250万件の検査が可能だ。トレーラーは1台1億円、自動PCR検査システムの設置も含め、この国会で企てる新たな「GoTo」追加予算1兆860億円の1割1086億円を投入すれば実行できる、と力説している。

厚労省は昨年5月、「検査拡大」によってコロナ擬陽性の多発が弊害を呼ぶとの文書を作り、政府中枢に説明して回っていたという。こんな文書に固執し、感染を広げてきた責任は誰がとるのか。
 やっと政府は、この11日になって都市部で不特定多数を対象にした1日数百〜数千件のPCR検査を実施すると公表したが、なんと実施時期は3月だ。
業を煮やした自治体の中には、自主的にPCR検査に取り組むケースが増えてきた。東京都・世田谷区を始め、広島県が広島市民80万人を対象にした集中的な検査を実施する。
 感染拡大を抑え込めない現状では五輪開催にも赤信号がともり、菅政権の窮地どころか菅首相自身、党総裁選での再選もおぼつかない。まさに<自滅の刃>が迫っている。(2021/1/17)
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2021年01月10日

【今週の風考計】1.10─「果物と野菜」が2021年<国際年>テーマになる理由

★今年2021年、国連は<国際年>(International Year)のテーマとして、以下の4つを挙げ、世界の国々で取り組みを強めるよう呼びかけている。
 @平和と信頼 A持続可能な開発のための創造的な経済 B児童労働の根絶 C果物と野菜
★そもそも<国際年>とは、特定のテーマを設定し国際社会の関心を喚起し、取り組みを強めるのを目的に、国連総会で採択・決議される。1957年の<国際地球観測年>が最初だ。
 今年の4つのテーマを見ているうちに、オヤと思ったのが、C果物と野菜である。2019年12月の国連総会で採択され、2021年のテーマに加えられている。

★この64年間、<国際年>に取り上げられたテーマをネットで調べてみると、果物や野菜に関連するものは、きわめて珍しい。2004年にコメ、2008年にポテト、2016年にマメの3例しかない。
 「果物と野菜」を採択するにあたって、グテーレス国連事務総長は、食料の生産と消費との関係を再考し、食品ロスなどフードシステムを再検討し、果物や野菜など必要とする多様な栄養に誰もがアクセスできるよう、健康的で強靭で持続可能な世界にしようと強く訴えた。それほどに重要なテーマになっていたのだ。

★果物や野菜は、ビタミン、ミネラル、フィトケミカルが豊富で、人体に豊富な栄養素を提供し、免疫システムを強化し、さまざまな病気のリスクを減らすのに役立つ。
 世界保健機関(WHO)は、健康を維持するうえで食事の一部に果物・野菜を1日1人400グラム以上摂るよう促している。世界の貧困地域では半分にも満たない。わが日本でも一人当たり摂取量は1日約280グラム、120グラムも不足している。
 さらに生産された果物と野菜が消費されるまでの間に、途上国からの輸入や国内での流通分も含め、食べ残しや消費期限などから廃棄されるロスは最大40%にのぼるといわれ、大きな課題となっている。

★いまコロナ感染拡大の影響で、自宅での料理づくりが増えている。巣ごもりの身には、食卓に並ぶ毎日の料理が楽しみだ。野菜炒めを食べイチゴやキウイを味わいながら、ふと年末に短時間審議で可決された「種苗法」に想いが及ぶ。
 俳優の柴咲コウさんがツイッターで日本の農家・農業の将来に触れ、懸念を表明していたが、農家の自家採種・増殖の権利が制限され、公共の種子すら種苗会社に譲渡されたらどうなるか。海外のメジャーが果物や野菜の種苗を支配することになれば、遺伝子組み換えなど、食の安全さえ脅かされ、まさに「果物と野菜」<国際年>を侵害する事態が進むのは明らかだ。(2021/1/10)
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2021年01月03日

【今週の風考計】1.3─コロナ禍への対応に必要な「ワンヘルス」という考え方

あけましておめでとうございます。
 新年を迎えてもコロナ感染拡大は止まず、いつ収束するか不安が続きます。対応に手をこまねいているうちに変異種まで生まれ、私たちは深刻な人類文明の危機に直面しています。
 “巣ごもり”の身であるだけに、新聞やテレビなどの情報に接し、いろいろ考えることがありました。

新型コロナがヒトへ感染したのはコウモリからだといわれ、世界で見つかる新たな感染症の7割近くが動物に由来するそうです。
 地球温暖化により永久凍土が融解したため、埋もれていたトナカイの死骸が地上に露出。そこから炭疽菌やウイルスが発散し周辺の住民に甚大な病害をもたらした例もあります。南極大陸の氷に閉じ込められた病原菌が再活動する可能性だって十分にあるとのこと。
米国の研究者は2015年、アラスカやチベット高原の地下50メートルの氷をとり出したところ、未知のウイルスが28群も発見されたと報告しています。
 ウイルスは環境によっては、100万年くらい生き残るそうです。いま人類は未知のウイルスに脅迫されているのが現実でしょう。
 森林火災や陸地の砂漠化により、野生動物が人間の生活圏にまで進出し、捕食せざるを得ない事態も生まれています。こうした動物からのウイルス感染も視野に入れなければなりません。

どうしたら良いのでしょうか。感染症対策のキーワードとして、「人の健康・動物の健康・自然環境の保全」を一つのものとしてとらえる、「ワンヘルス」という考え方が浮上してきています。
 人の健康は、生物の健康と健全な自然環境の保持によって維持されるという考え方です。私たちはさまざまな生き物の恩恵を受けて生きています。生物の健康が脅かされ、多様性が急速に失われれば、人類や社会の健康も損なわれます。
だからこそ「人類・生物・環境」を三位一体として、ひとつの健康「ワンヘルス」を大切にする対策をとるべきときです。
 まず「ワンヘルス」を脅かす原因は、地球温暖化による気候変動、そして私たちが営む経済活動による環境破壊にあります。コロナウイルスによるパンデミックの発生は、この手痛い代償でもあるのです。

「地球温暖化に効くワクチンなど存在しない」以上、自分たちの手で、まずCO₂の排出量を削減し、ゼロに向かって手を打っていくことから始めねばなりません。やっと日本政府も、昨年10月下旬、「2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」と表明しました。
 菅政権は待ったなし、クリーンエネルギーへ切り替える具体策が急がれます。(2021/1/3)
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2020年12月27日

【今週の風考計】12.27─「桜」前夜祭への虚偽答弁とハグラカシを許すな!

心穏やかに<2020回顧>などしていられない。24日、東京地検特捜部は「桜を見る会」前夜祭をめぐる疑惑に関し、安倍前首相を不起訴、公設第1秘書を略式起訴したが、罰金100万円が即日納付され、一連の捜査が終結。
 だが、その後の記者会見や国会での安倍前首相の弁明は、ハグラカシに終始。すべて責任を秘書に押しつけ、自身の関与は全否定。この1年あまり国会でつき続けたウソは118回、ますます疑惑は深まるばかりだ。

疑惑1─なぜ「前夜祭」の収支明細を隠すのか。
 安倍氏は「前夜祭の費用は全て参加者の自弁」「個々の参加者がホテルと契約」などと、大見得を切ってきたが、大ウソ。なんと一人当たり3000円もの金額を、安倍晋三後援会が補填していた事実が明らかとなった。これこそ「利益供与」じゃないか。
 さらにホテル側が発行した領収書のあて先は、安倍氏の資金管理団体である「晋和会」。この事実は「晋和会」が主催者・契約者そのもの。安倍晋三後援会なのか「晋和会」なのか。補填資金の出どころが新たな疑惑として浮上する。
しかも特捜部が捜査を終える直前の23日、突如、安倍事務所は訂正した政治資金収支報告書を山口県選挙管理員会に提出した。そこに添付されている「領収書等亡失等一覧表」を見ると、2017年〜2019年の「前夜祭」の領収書が、3回とも「全て紛失」と記されている。こんな事態はあり得ない。
 しかも、この「領収書亡失届」は、なんと「前夜祭」が国会で大問題となっている最中の今年5月に提出されている。一方、訂正報告書に記載された補填金額は詳細に最後の1桁まで記されている。「なぜ領収書がないのに、細かい数字まで書けるのか」、ホテル側からの領収書自体を隠している疑いも出てきた。

疑惑2─補填の原資はどこからか。
 2016年から19年までの4回にわたる「前夜祭」分の補填額は約700万円。しかし政治資金報告書では、その原資の出どころは不明のまま。安倍氏は「私が預ける共有資金の中から立て替えた」と答弁したが、立て替え払いした総理のお金はきちんと戻されたのか。その資料は提示されない。
 「秘書が金庫に入っていた総理のお金を勝手に差額補填に使った」というのなら、業務上横領罪が成立する。告訴しないという以上、安倍氏自身も補填に関わり了解していたことになる。

疑惑3─なぜ政治資金報告書に記載しなくなったか。
 安倍氏の政治資金報告書を見ると、2013年度は「前夜祭」に関する項目として、領収書も含め記載されていた。だが翌2014年以降からは報告書には記載されなくなった。「前夜祭」に参加した地元有権者への「利益供与」を隠すためではないか。
 「前夜祭」の費用補填は、このほど提出された訂正後の政治資金収支報告書では、「会場費」ではなく「宴会料」の項目で計上されている。公職選挙法に照らせば「会場費」を超えて補填額が膨れ上がると、「利益供与」に当たる可能性がある。
 「前夜祭」は、首相主催の税金を使った「桜を見る会」とセット。地元有権者に「おもてなし」という「利益供与」を図る意図を込め、「桜を見る会」も私物化していたのは間違いない。(2020/12/27)
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2020年12月20日

【今週の風考計】12.20─SNS上の「捨て垢」による誹謗・中傷を削除せよ!

ネット上の誹謗・中傷・差別に満ちた書き込みは深刻さを増している。「即刻死ね」「消えろ」などと特定の個人や団体を相手に、敵意むき出しの書き込みが集中し、甚大な人権侵害や悲劇が起きている。
 しかも「架空の人物」が作った「捨てアカウント」、これを「捨て垢」というそうだが、そこからの誹謗・中傷が圧倒的だ。
国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」では電凸に加え、SNSでは「捨て垢」からの攻撃にさらされ“炎上”状態になり、中止に追い込まれた。
 「捨て垢」はいつでも削除・放棄できるので、投稿者を特定するのは極めて難しい。

「誹謗・中傷がいやならSNSをやめればいい」というが、いまやSNSは生活に欠かせないツール、使わざるを得ないのが実態だ。
 ツイッターやインスタグラムなどを運営する主要なSNS会社では、わいせつ画像の送信や個人へのなりすまし、ヘイトスピーチや差別的内容などについては、被害者からの削除依頼やアカウントの凍結要請を受け付けている。
 ただし、これらの対応も書き込みが残っている場合のみに有効なので、アカウントが削除されると、対応は難しい。

悪質な書き込みで、5月にプロレスラー木村花さんが、22歳の若さで自死したのをきっかけに、政府は被害者がSNS運営会社に、投稿者の電話番号を開示請求できるよう省令を改正する。
 また弁護士を通じ、投稿者の氏名と住所についても照会できるようにし、被害者が受けた損害への賠償について請求しやすくする改正も、検討されている。
 来年の通常国会に、開示ルールを定めた「プロバイダー責任制限法」の改正案を提出する予定だ。
一方、消費者や有権者からの指摘・批判、内部告発などを受けた企業や政治家が、投稿者に圧力をかけようと、この開示制度を悪用する危険もある。政治や行政、企業に対する正当な批判まで封じ込めるなど絶対にあってはならない。

ドイツではネット上のヘイト表現に対して、法律で24時間以内の削除を義務付け、違反した場合、最大5000万ユーロ(約60億円)の罰金を課す。
 日本はどうか。自主規制のみで、法律による削除は謳われていない。今なお、ヘイト投稿は後を絶たない。この11月、化粧品会社DHCが自社の公式サイトに、吉田嘉明会長の名で以下のような文章を掲載した。
 「サントリーのCMに起用されているタレントはどういうわけかほぼ全員がコリアン系の日本人です。そのためネットではチョントリーと揶揄されているようです。DHCは起用タレントをはじめ、すべてが純粋な日本人です」
この文章が12月16日朝のツイッター上で拡散され、在日コリアンへの差別的発言として批判が相次いだ。吉田会長は過去にもDHC公式サイトで在日コリアンへの差別的表現を行っていた。
 れっきとした会社組織が、ヘイトや人種差別につながる文章をホームページに掲載し、恬として恥じない。日本の企業の無責任さを、笑ってすますわけにはいかない。(2020/12/20)
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2020年12月13日

【今週の風考計】12.13─コロナ感染拡大の火に油を注ぐ追加3119億円の無謀

■コロナ感染拡大を防ぐ「勝負の3週間」最終日が16日にやってくる。だが12日、1日の新規感染者が3041人まで拡大し、最多を更新する事態に至った。重症患者も増え、北海道と大阪府には医療施設へ自衛隊の看護師まで派遣せざるを得なくなった。
■医療崩壊の危機は、日に日に増している。この間の「ガースー」首相の無策に対する怒りは、募るばかりだ。謙虚に科学者や専門家の意見に耳を傾け、時には厳しい提言も尊重する姿勢が全く感じられない。
 米国やブラジルではコロナ禍の悲惨な事態が続く。これも大統領が科学者の助言を軽視し、科学的根拠のない言葉や対策を重ねてきたからだ。

■いま日本では医者や医療従事者、さらには専門家・有識者で組織された政府分科会までが、人の出入りを抑え感染を防ぐために、「Go Toトラベル」の一時停止を提言している。それにも関わらず、追加の3119億円もの予備費支出を決め、アクセルを吹かすというのだから呆れる。
 その理由が「Go Toトラベルによりコロナ感染が拡大したとのエビデンス(根拠)は存在しない」からだという。
■だが11月下旬には、東京大学など研究チームが「Go Toトラベル利用者はコロナへの感染リスクが高い」という調査報告を発表した。
 また英国の科学者たちも、コロナ・ウイルスのDNA分析をしたところ、旅行によって国の内外から持ち込まれたと結論づけ、警鐘を鳴らしている。
 こうした科学的根拠が出てきたにも関わらず、まだGo Toを続けるのなら、人命は二の次だと言っているのも同然ではないか。

■安倍・菅政権へと続く今の政治には、慰安婦問題への無反省、公文書改ざんや虚偽答弁の連発、歴史や科学を無視する「反知性主義」がはびこり、人命まで軽視する事態にあるのを直視しなければならない。
 日本学術会議が推薦した会員候補6人の研究者を、政権の恣意的な選別で任命拒否する事態は、その典型ではないか。しかも公開された内部文書には「外すべき者(副長官から)」との文字が手書きで記され、その下の部分は黒塗りになっている。
 都合の悪いエビデンスは、ノリ弁にして隠ぺいしてしまう。国会での説明も拒否し、事実すら抹消しかねないところまで来ている。
 政府の諮問会議にしたって、政権の志向する政策や方針に沿うような有識者を最初から組み入れ、諮る以前に方針が決まっているケースすらある。
■「国民のために働く内閣」と、大見得を切った「ガースー政権」、24日のクリスマスイブには発足100日を迎える。国民へのプレゼントがコロナ感染拡大では、支持率が43.1%、2カ月連続して急落するのも無理はない。(2020/12/13)
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2020年12月06日

【今週の風考計】12.6─「政治とカネ」の腐敗、虚偽答弁は野放し、コケにされる国会

ついに安倍前首相の<桜を見る会・前夜祭>疑惑に、東京地検特捜部は捜査のメスを入れた。政治資金規正法違反の容疑で、「安倍晋三後援会」公設第1秘書への事情聴取のみならず、安倍前首相本人にも要請している。
時効が成立しない直近の5年間分だけで、参加者の会費で賄えなかった費用計900万円の補填、さらに会費分の収入も含めれば約4000万円が収支報告書に記載されていなかったことになる。
 かつ開催場所のホテル側は、補填された金額を記した領収書を、安倍氏が代表を務める資金管理団体「晋和会」宛てに発行していたことも判明した。

6年にわたって秘書が、補填について安倍首相に報告しないできたなど、ありえない。安倍氏自身、参加費の補填が公選法違反の「寄付」行為だという認識があったからこそ、記載しない扱いを是認してきたのは間違いない。
 安倍前首相は、国会での珍妙な答弁を1年間も繰り返し、「参加した各個人がホテルに直接払い込んだ。後援会としての収入、支出は一切ない」などのウソをついて国会を愚弄してきた。
「きわめて悪質な違反、強制捜査をしてもおかしくない」のは当然。だが安倍前首相は国会招致や委員会での説明すら拒否し、5日の国会閉会で逃げ切ろうとしている。
 焦点は安倍前首相に、違反事件に関し「共謀共同正犯」の適用が図れるかどうかだ。特捜部のメンツもかかる。もし適用されて立件され、有罪判決を受けたら公民権が停止される。

「政治とカネ」をめぐる腐敗事件は、安倍・菅政権、自民党では後を絶たない。またも自民党の吉川貴盛元農水相が鶏卵生産会社「アキタフーズ」(広島県福山市)の元代表から、在任中に3回にわたって総計500万円の現金を、大臣室などで受け取った疑惑が浮上。
「アキタフーズ」の元代表は、日本の養鶏「ケージ飼育」への国際的な批判を抑え込む対策や鶏卵価格が下落した際の補填を図ってもらう目的で贈呈したという。
 また彼は、元法相の河井克行被告と妻の案里被告とは懇意で、6年間で約2000万円の政治献金をしている。両被告の参院選買収事件に絡み、関係先として家宅捜索すら受けている。
 さらに所有する豪華クルーズ船で複数の農水族議員らを接待、現金を渡した疑いも指摘される。
受け取った吉川議員は、昨年の北海道知事選では党道連会長として、菅官房長官の意中の候補だった鈴木直道知事の擁立を主導。また9月の総裁選では、いち早く後継首相に菅官房長官を推し、選対の事務局長まで務めている。
 その功が認められ自民党の選対委員長代行に就いたが、自分への疑惑を受けて辞任、二階派の事務総長も返上、不整脈を理由にして入院してしまった。

二階派の「政治とカネ」をめぐるスキャンダルが目立つ。買収事件の河井案里議員を始め、カジノ汚職の秋元司議員も二階派。永田町でも眉をしかめる自民党幹部は多い。
 強引な選挙戦略も批判を浴びている。山口県での二階派・志帥会と岸田派・宏池会の血肉の争い、宏池会の牙城である広島県では菅首相や二階幹事長とも気脈を通じる公明党が、志帥会の応援を計算に入れ候補者を擁立する。
<菅・二階>コンビ政権は、コロナ感染の深刻な事態にもかかわらず、「Go To トラベル」実施を来年6月まで延長、見直しなど視野にない。
 さもあろう観光立国を目指す菅首相、全国旅行業協会会長でもある二階幹事長、業界から4200万円もの政治献金を受け、1兆3000億円の税金を「Go To トラベル」に計上するのだから。
さらに国土強靭化推進の名目で5年間15兆円の税金を注ぎこむ。その使い途は極めてあいまい、二階幹事長のサジ加減に委ねられている。「税金は使い勝手自由」とばかりに私益化されてはたまらない。<菅・二階>コンビ政権の恐ろしさが身に迫る。(2020/12/6)
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2020年11月29日

【今週の風考計】11.29─「釣りキチ三平」など画業50年の矢口高雄さんを偲ぶ

漫画「釣りキチ三平」を始め数多くの名作を手掛け、11月20日、すい臓がんで81年の生涯を閉じた矢口高雄さん。心からご冥福をお祈りします。
 思えば筆者が矢口高雄さんと出会ったのは、今から27年前になるだろうか。『ボクの学校は山と川』(白水社)を文庫に収めたくて、東京目黒区自由が丘のご自宅をお訪ねし、2階の仕事場で懸命に矢口さんを口説いたときを思い出す。

その後、矢口さんや白水社の承諾を得て、実際に文庫化する作業に入り、打ち合わせを重ねていくうちに、文字だけでは飽き足らなくなった。
 思い切って提案した。矢口さんの漫画から本文の叙述にあったカットを、できるだけ多く取り入れたいと。矢口さんは頷かれ、文字叙述の魅力を倍加させることができた。1993年10月15日に刊行、今も版を重ねている。
続けて『ボクの手塚治虫』『ボクの先生は山と川』、さらには『蛍雪時代─ボクの中学生日記』(全5巻)を文庫に収載するなど、担当して10年近く「矢口ワールド」に浸ることができた。
 とりわけ矢口さんが、生まれ故郷の秋田・西成瀬村(現横手市)の山村や自然の厳しさを語るエピソード話は今でも耳に残る。また人の営みや山と川の姿を精彩なタッチで描く巧みさに驚かされてきた。
 それだけではない。いつも笑顔で人と接し、談論風発、愉快な仲間が良く集まる。

毎年7月20日前後の休日には、矢口さんの自宅の庭を会場にして「鮎祭り」が開催される。矢口さんが釣った天然鮎が庭の炭火炉で焼かれ、かぶりつきながら生ビールを飲む。里中満智子さんを始め数十人が、入れ代わり立ち代わり集まり、鮎に食いつき、飲む、喋る。
つまみにはナスの一夜漬けが人気だった。秋田では「なすがっこ」と呼ばれる。一口大で濃い紫色をした丸ナスは皮が薄く、漬けるとパリッと歯触りが良い。
 横手から送ってくる定番の一品が、砕氷を敷いた大皿に盛られている。ついつい手が伸びる、あの味は忘れられない。

「三平 四季を往く」.JPG手元に矢口高雄『三平 四季を往く─矢口高雄マンガ家生活25年記念画集』(双葉社)がある。1995年11月24日に記念パーティーが開かれ贈呈されたものだ。
 ページを開けば、<秋の章>─木の実落つ夜来の風や里の秋─と詠い、真っ赤に色づいたモミジ、夕日に映えて躍る鮎、ススキを背にして吊り竿を操る三平の姿が、色鮮やかに描かれ目の前に迫ってくる。
 そして今、矢口さんが創設に尽力した秋田県の横手市増田まんが美術館では、来年1月11日まで矢口さんの画業50周年を記念した企画展が開かれている。(2020/11/29)
釣りキチ三平.JPG
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2020年11月22日

【今週の風考計】11.22─武蔵野の湧水が作り出す美しい景観を堪能

「小春日和」とはいえ、歩くと汗ばむほどの陽気。この週末、東京郊外にある庭園を訪ねた。
 一つは滄浪泉園。JR武蔵小金井駅南口から連雀通りを西へ、高等学校の前に入口がある。武蔵野・国分寺崖線の「ハケ」という立地特性を活かし、湧水を取り入れ深山の趣そのまま生かした、実業家・波多野承五郎の別荘庭園だ。
まだ青いモミジで覆われた門をくぐり、丸石がびっしり敷き詰められた道を行くと、視界が開け東屋に着く。そのわきに水琴窟がある。ツクバイから湧水を柄杓で掬い足元の石積みにかける。キンコンと余韻を残して響く。

さらに急な細い道を蛇行しながら下ると、ブナやケヤキ、アカマツ、モミジなどの樹木の間から、きらめく水面が見えてくる。こんこんと湧く武蔵野の清水を湛え、モネが描く水連の池を思い出させる。
 クヌギ、コナラ、シイの黄色い葉が、木漏れ陽を浴びてキラキラ光りながら池面に散っていく。周辺の高い樹木の間からもれる光が、何本もの細い柱となって天から差し込んでいるような幻想にかられる。
 ふと高校生時代に取り組んだメルヘン劇、フーケーの「オンディーヌ」がよみがえり、妖精が躍っているような気配に、あたりを見回してしまった。

モミジが真っ赤に色づくのは、あと2週間後だという滄浪泉園を後にして、脇の坂を南へ下り、右折すると新小金井街道にぶつかる。目の前に「大勝軒」の看板が。あの元祖つけ麺で有名な店。すぐ飛び込む。懐かしい「特製中華そば」が空腹を満たす。
 午後は野川沿いの遊歩道を、ゆっくり西へ西へと歩く。カモが5匹ほど川べりで水遊び。しばらくすれば東経大の構内にある新次郎池、だがコロナ禍で閉鎖。がっかりしながら国分寺方面へ。

二つ目は殿ヶ谷戸庭園。大正時代に江口定條が<随♂>と名づけ、三菱財閥・岩崎彦弥太が別荘とした近代日本庭園だ。高低差を楽しむ回遊式林泉庭園と茶室<紅葉亭>がある。
 これまた国分寺崖線の「ハケ」を活かし湧水を取り入れた「次郎弁天池」の周辺には、モミジの木が多い。色づくと圧倒されるような景色が、高台にある<紅葉亭>から眺めると、眼下に広がるという。だが、またまたモミジは青いまま。
さらに武蔵国分寺跡に向かう道の周辺には、「お鷹の道」や「真姿の池」があり、湧水「ハケ」が群がる名所となっている。ここにも足を延ばしたいが、もう疲れた。またの機会に譲ろう。(2020/11/22) 写真:滄浪泉園内にある湧水池

滄浪泉園内にある湧水池.JPG
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2020年11月15日

【今週の風考計】11.15─コロナ・ワクチンへの過剰な期待に潜む陥穽

■国内のコロナ感染者が、新たに1日1700人を超え、週末3日連続で過去最多を更新し、全国で11万8千人・死者1900人となった。コロナ感染拡大「第3波」の襲来に他ならない。
 冬の乾季が進むにつれ、感染者の受け入れや重症者の病床確保など、医療体制のひっ迫は深刻な事態をもたらす。「Go Toトラベル」の中止も含め、拡大防止への対策が急がれる。

■ここにきてコロナ・ワクチンへの期待が急速に高まる。米国のファイザー社が開発しているワクチンの治験結果が公表され、有効性がはっきりしたという理由で、その輸入も含め、菅首相が「来年前半までに全ての国民に提供できる数量を確保する」と宣言した。
 すでにワクチン購入費として予備費から6714億円の支出を閣議決定している。ワクチンを国の全額負担で接種できるよう予防接種法改正案も審議入りした。
■とりわけ頭痛や倦怠感、筋肉痛など副作用のリスクと予防効果との兼ね合いが重要な課題であるだけに、「安全性、有効性が確認され、承認されたワクチンについて、本人の意思に基づき接種してもらう」との厚労省の考えは、大切にしたい。

■現在、世界では合計200種類以上のワクチンの開発が進んでいる。そのうち40種類ほどが人間を対象とした治験の段階に入っている。だが安全性に関しては100パーセントの保証は、いまだ一つとしてない。
 かつワクチンの保存はマイナス70℃の環境が必要なため、保管・運搬などに困難が生じやすく、どこでも接種できるかとなれば、そう容易ではない。
■ワクチンを接種したからといって、体内に免疫ができるまでには6週間ほどかかる。ワクチンが実用化されても、ソーシャルディスタンスを保ちマスクの着用は続けなければならない。世界中で効果を発揮するには、数年かかるという。

■いま米国は、コロナ感染者が1日に16万人を超え1080万人、死者は24万人にのぼる。世界で最悪のコロナ汚染国だ。
 その原因を作ったトランプ大統領が、大統領選での敗北は認めず「ワクチン配布」を声高に叫んでいる。ただし民主党知事のニューヨークは除くなどと、ここにも党派対立・差別を持ち込む始末だ。
■国民皆保険の「オバマケア」の廃止を説く張本人であるトランプ大統領が、コロナに感染し治療に要した費用は総額10万ドル(約1000万円)にのぼるという。
 米国民は高い治療費の支払いに苦しんでいる。トランプ大統領だけは国費で治療とくれば、誰だって頭にくるのは間違いない。敗北の要因の一つであるのは間違いない。(2020/11/15)
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2020年11月08日

【今週の風考計】11.8─羽田増便でオスプレイとの衝突・落下事故の危険!

米国から海兵隊型オスプレイ17機も爆買い″し、陸上自衛隊に配備される同機の試験飛行が始まった。
 千葉県・木更津の駐屯地に暫定配備されている2機のうち1機が、駐屯地上空でホバリングを行い、10日からは駐屯地の外に出て東京湾や相模湾の上空で飛行モードへの転換、さらに来年1月からは関東一円での本格的な操縦訓練が展開される。
 かつ木更津駐屯地にオスプレイ17機がそろった場合、離着陸回数は1日に15回、年4500回となる見通しだという。騒音だけでなく、増便となる羽田発着の飛行機とのニアミスや落下事故の危険性は、いやがうえにも増す。

もともと陸上自衛隊のオスプレイ17機は、長崎県・佐世保にある相浦駐屯地に設けた「水陸機動団」すなわち自衛隊版海兵隊と連携し、「南西諸島」への出撃に一体となって活用する計画に組み込まれ、佐賀空港への配備が前提だった。
 しかし地元との協議が整わず、まず2機を木更津駐屯地に5年という期限付きで暫定配備した。
 佐賀空港は自衛隊とは共用しないことが明記され、かつノリ養殖にかかわる有明海に面し環境汚染・海への墜落など、事故への不安は尽きない。佐賀空港へのオスプレイ配備もかなわず、木更津に恒久配備となる危険性は高い。現に整備能力を3倍、格納庫も倍贈、10機は配備できる体制を整えている。

そもそもオスプレイは陸上自衛隊に必要不可欠な装備なのか。木更津から2000キロも離れた「南西諸島」へ出撃するには、厄介な空中給油が必要になる。災害地への救援にというが、プロペラの風害などで、吊り下げ救助はできないといわれる。
 しかもオスプレイをめぐる重大事故は数知れず、原因も解明されていない。米国では「ウィドウ・メーカー」(未亡人製造器)の汚名が付けられている。だからこそ米国以外の世界の国々は、オスプレイの購入には踏み出さないのだ。
 なんと日本だけが前トランプ大統領に媚びてオスプレイ17機を爆買い″した。購入費は部品なども含め計約30億ドル(約3600億円)、世界の笑いものになっている。

自衛隊のオスプレイだけが問題なのか。いや日本の空を支配している米軍のオスプレイこそ重大だ。米軍は空軍・海軍・海兵隊用の各種オスプレイを、沖縄・普天間飛行場に海兵隊型24機、東京・福生にある横田基地に空軍型5機、さらに5機を追加して配備する。海軍型オスプレイも神奈川県・厚木基地に配備するという。
 先月下旬には、横田基地から米軍オスプレイに自衛隊幹部が塔乗し、四国沖の海上自衛隊の護衛艦「かが」に着艦し、日米共同統合演習「キーン・ソード」に参加している。
 事故も多発している。普天間基地を飛び立ったオスプレイが、空中給油訓練中にプロペラが破損して海岸に不時着・大破した。伊計島の海岸にオスプレイが落とした重さ13キロもある部品が漂着。
 横田基地でもオスプレイからの降下訓練でパラシュートが住宅地域の施設に落下、潜水用の足ヒレが福生市の牛浜駅の駐輪場近くに落ちている事故が続く。さらに横田基地から三沢基地へ飛来するオスプレイの数は、19年夏までの1年間で計40回、しかも米軍からの通告は一切ない。

東京23区を含む首都圏上空に、米軍優先の「横田空域」がある。そこをわが物顔に安全性に疑問があるオスプレイが飛び交う。日本の航空機は、米軍の許可なしには飛べないため、東京上空は超過密状態だ。
 そこへ羽田空港の増便により、ますます騒音は増え、落下事故や空中衝突の危険が高まる。日本にはオスプレイはいらない。(2020/11/8)
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2020年11月01日

【今週の風考計】11.1─核廃絶に向けて75年─実る人類史の成果に乾杯!

3月3日の「スーパーチューズデー」から、ちょうど8カ月、トランプ対バイデンの決戦は、この3日に決着がつく。米国のコロナ感染者908万人・死者23万人、世界最悪の状況でも、トランプ大統領は手立てをとらず、バイデン候補へ罵詈・雑言の攻撃を浴びせ続けてきた。
あげくに落選しても結果を認めず、裁判に持ち込む事態まで予測されている。急きょ強引に連邦最高裁判事にバレット氏を送り込んだ結果、最高裁は保守派が3分の2を占める。
 最後のあがきに翻弄され、ホワイトハウスは大混乱に陥るのは間違いない。民主主義の根幹が崩れた米国などあてにせず、世界は平和に向けて大きなうねりを作りだしている。そこに目を向けよう。

核兵器禁止条約の批准が50カ国・地域に達し、史上初めて核兵器を禁止する国際条約が、来年1月22日に発効する。
 広島・長崎への原爆投下から75年を経て、「非人道性」や「核なき世界」を訴え続けてきた被爆者の願いが、条約誕生への原動力となった。さっそく政府に対し条約への署名・批准を求める署名活動が全国各地で展開される。

第2次大戦直後に設立された国連は、1946年1月10日、初の総会で採択した第1号決議が「核兵器など全ての大量破壊兵器を各国の軍備から廃絶すること」を求める内容であった。
 決議を提案したのは米国、ソ連、英国、フランス、中国、カナダの6カ国。当時、唯一の核保有国だった米国でさえ、広島・長崎の非人道的な被害を目の当たりにして、核廃絶を求めたのだ。
その後、米ソ冷戦など東西の緊張から、核兵器の開発が加速し、2020年1月現在、核兵器保有数は米国6185、ロシア6500、英国200、フランス300、中国290、世界全体で1万3400にまで膨れあがった。

核廃絶という目標はどうなったのか。1970年3月に核不拡散条約(NPT)が発効したものの、すでに核を保有していた米国、ソ連(ロシア)、英国、フランス、中国の5カ国は除外し、以外の国には「原子力の平和利用」を除いて、核保有を禁止にした。
この核をめぐる不平等がネックとなり、NPTは30年後になって、核保有国に「自国の核兵器の完全廃絶を達成する」よう、明確な約束を求めることとなった。それでも核拡散の状況は改善されず、かつ米国・ロシア・中国は核兵器を改良し質的な核軍拡に突き進んでいる。
 実戦配備に適した核の小型化によって、核使用の脅威は高まっている。米国とロシアの中距離核戦力(INF)廃棄条約も失効するなど、核なき世界は遠のくばかりだ。

だが核兵器禁止条約が発効すれば、核保有は「国際法違反」となり核廃絶への圧力となるのは確実である。
 日本政府は「唯一の戦争被爆国」でありながら、米国の「核の傘」に身を委ね、「橋渡し」役などと詭弁を弄し、核兵器禁止条約に背を向ける。国際的にも見放されるのは間違いない。(2020/11/1)
posted by JCJ at 07:46 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月25日

【今週の風考計】10.25─ベラルーシの「勇気ある女性」3人とタイの「黒シャツ」3本指

ロシアとポーランドに挟まれたベラルーシ共和国の首都ミンスクで、ルカシェンコ大統領の選挙不正を糾し退陣を求める大規模デモが、10週連続して日曜日ごとに開かれ、数万人が参加している。
 治安部隊が浴びせる放水やゴム弾にもめげず、「白・赤・白の旗」を掲げ、「パルチザンの行進」と名づけたデモが繰り広げられている。日本でも連帯のデモが始まった。
いま66歳のルカシェンコ大統領は、1994年に就任以来、この8月には不正選挙で6選を果たし26年間も君臨する。
 「ヨーロッパ最後の独裁者」が組閣する「残忍な政権」の弾圧に抗し、人権擁護と民主化を追求している活動には頭が下がる。
 EU議会は、活動のリーダーであるチハノフスカヤ氏、支援するノーベル文学賞受賞者アレクシエービッチ氏、当局に拘束された音楽家コレスニコワ氏らに、人権擁護に貢献した人に贈る「サハロフ賞」を授与した。「勇気ある女性」3人である。退陣に応じなければ26日からはゼネストに入るという。

眼を東南アジアに転じよう。タイでもプラユット首相の退陣と民主化を求めるデモが拡大している。
 これまた66歳のプラユット首相は、2014年の軍事クーデターを主導し、昨年3月の総選挙で民政に移行したとはいえ、そのまま首相の座につき政権を維持している。
 だが経済の低迷は続き格差は拡大し、さらに野党「新未来党」への解党命令や市民に対する軍兵の無差別殺害事件も起き、バンコクでは連日、2万人規模のデモが続いている。
とくに注目されるのは、「黒シャツ」を着た若者たちが3本の指を掲げ、これまでタブーとされてきた王室批判、すなわち王室関連予算の透明化や不敬罪・最長15年の禁錮刑の見直しなど、王室改革を求める行動にまで踏み込んでいる点だ。
ワチラロンコン国王は68歳、ドイツの高級ホテルを借り切って「ハーレム」を作り、若い女性20人ほどと一緒に暮らしている。全て税金で賄われている。
 しかも国民投票で承認された新憲法案を拒否し、政府に条文の修正を要求するなど、政治への介入は度を超す。国民からの信望は薄れる一方。王室改革を求める声が大きくなるのも無理はない。

アフリカでも大西洋・ギニア湾に面したナイジェリアで、汚職撲滅や市民の安全を求めるデモの隊列に、治安部隊が発砲し死者は50人を超す。長期に市民を虐待してきた警察の特殊部隊(SARS)への怒りは頂点に達し、2週間ほど前から各地で大規模なデモが行われていた。
 デモの拡大を受け、第2次ブハリ政権は首都ラゴスに無期限の都市封鎖を発令した。その数時間後、平和的なデモをしていた約1000人に向けて、またも武装した男たちが発砲した。
政権による人民弾圧に限らず、イエメン内戦、ナゴルノ紛争など、やっている時か。いまやコロナ感染者は世界で4220万人・死者114万人。全てが協力して、コロナウイルスと闘うのが先だろ!(2020/10/25)
posted by JCJ at 09:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月18日

【今週の風考計】10.18─菅政権1カ月:<2人の杉田>が象徴する監視・差別の怖さ

首相動静によると、朝は6時45分から官邸内を散歩。1時間後には永田町のホテル内レストランで首相好みの有識者と朝食懇談。そして昼も夜も連日、赤坂や紀尾井町の料理店で政官財の関係者と会食。午後9時前後には議員宿舎に帰宅。
 会食や面会で確認された民間人は70人を超えるという。だが9月16日の就任会見から、1カ月たっても記者会見は開かず、所信表明すらない。18日からはコロナ感染者が日本の4倍35万人もいるインドネシアなど、4日間も外遊する。

この間にやることがエゲツナイ。日本学術会議が推薦した名簿を「見ていない」のに、6人を任命拒否。政府方針に異を唱えた学者を排除し、憲法が保障する「学問の自由」を侵害する暴挙に手を染める。
 首相は「総合的、俯瞰的に決めた」と、説明にもならぬ説明ではぐらかす。あげくに自民党は「任命拒否」から目をそらすため、学術会議の制度見直しに論議をすり替える。
 政権の意に沿えば重用し、盾突けば冷や飯を食わせる―安倍政権下での強権的な手法まで、菅首相は「継承」する。森友問題の再調査は拒否。桜を見る会は中止する一方、サクラ疑惑にはフタをする。

その陰で動く、官邸内に君臨するもう一人の人物の存在がクローズアップされた。杉田和博官房副長官である。学術会議105人の推薦名簿から排除する6人を選別、任命拒否の筋書きを用意し、決裁前に菅首相に報告、名前は確認されていたことが明らかとなった。
杉田官房副長官は、東大法学部卒、警察庁で警備・公安畑を歩み警備局長を務めた“公安のドン”といわれるエリート。2012年の第2次安倍内閣が誕生と同時に官房副長官として官邸入り。菅政権誕生後も引き続き同ポストを務めている。
官房長官時代から官僚支配に力を注いできた菅首相だが、その中心的役割を担ったのが、杉田官房副長官である。2017年からは官僚人事を掌握する内閣人事局の局長も兼務。これまでに公安警察を使って官僚を監視下に置いてきた。
 さらには政権と敵対するメディアや政権批判の学者・知識人にも、介入の隙を伺い監視の目を光らせている。代表的なのがNHK「クローズアップ現代」のキャスター降板事件だ。また東京新聞の望月衣塑子記者の身辺を、公安が探っていたというのも有名な話。

さてもう一人、杉田姓を持つ人物がいる。自民党の杉田水脈・衆議院議員である。女性の身でありながら、女性への性暴力に関連し「女性はいくらでもウソをつける」と発言し、総スカンを食らっている。
 これまでにも性的少数者のカップルに「生産性がないから問題だ」などの差別発言や伊藤詩織さんへのバッシングを繰り返してきた。
 杉田議員は、17年総選挙に際し安倍首相の推薦で「維新」から自民党に鞍替えし、比例中国ブロック単独候補に格上げして当選。
「性暴力の根絶」を掲げる菅政権・自民党にもかかわらず、女性への差別発言を繰り返す自党の議員に、厳しい対応するどころか、「本人の言葉づかい」の問題と矮小化する。
 さらには「フラワーデモ」主催団体が13日、杉田議員の議員辞職などを求める13万6000筆の署名すら、受け取りを拒否する始末。
 <2人の杉田>が示す、国民に対する監視と差別を放任する仕組みは、はからずも菅政権の本質をあぶりだしている。(2020/10/18)
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2020年10月11日

【今週の風考計】10.11─「レジ袋」有料化が招いた思わぬ波紋からの考察

「かごパク」なる困った事態が起きている。7月1日から「レジ袋」が有料化となったせいか、スーパー備え付けのかごに、買った品物を入れたまま、かごごと持ち帰る事例だ。
 とりわけカートに乗せて駐車場まで運び、自分の車に乗せて帰ってしまう人が多いという。店長は頭を抱えている。
そういえばスーパーのレジで精算後、そばのカウンターで、マイバックに入れ直す場面を見ていたら、ホルダーに巻かれた無料の「ポリ袋」を適当に切り、その中に生鮮食品を入れるだけでなく、缶詰やカップ麺まで一つ一つ「ポリ袋」に入れる御仁がいる。
 さらには「ポリ袋」だけ、ぐるぐる巻きとって持ち帰る主婦もいる。「レジ袋」が家庭内になくなったため、この無料の「ポリ袋」を生ゴミの収容に使うのだという。まさに庶民の知恵だ。

「レジ袋」を有料化したのは、プラスチックゴミを減らすためである。日本では年間900万トンのプラごみが発生し、再利用や焼却などの処理に苦しみ、プラスチック製品の生産削減が進む。
 世界全体では、プラごみが海に年間800万トンも流れだし、ストローを鼻につまらせて苦しむウミガメやビニールを飲みこんだセグロカモメが見つかり、また魚の内臓に蓄積された微小プラなど、生態系や漁業に深刻な悪影響を及ぼしている。
これまで先進国から排出されたプラごみは「リサイクル資源」として、主に中国に輸出されてきたが、3年前に中国は輸入を中止した。
 代わりにベトナムやマレーシアへ輸出先が変わったものの、すぐに各国の処理能力が限界に達し、洗浄・選別が不十分なまま海などに捨てられる事態となっている。日本は昨年90万トンものプラごみを輸出している。

少しでも事態を改善するため、このほど「バーゼル条約」が改訂され、来年1月から運用されることになった。「バーゼル条約」は、有害廃棄物の輸出入を制限する法的拘束力のある国際条約で、1989年に採択されている。
この条約にプラごみを新たな対象に加え、海外輸出を規制する。とりわけ汚れたプラごみ─飲食物や泥・油が付着し分別・粉砕処理もされず、リサイクルしにくい弁当容器やペットボトルなどは輸出ができない。
 だが、この「バーゼル条約」にはプラごみ排出1位の米国が加盟していない。輸出削減にどこまで効果があるか、不安も広がる。
さてさてスーパーなどで、私たちが無料をいいことに無制限に巻き取る「ポリ袋」、これもまた自然には分解しないプラごみと同じもの。
 ただ「ポリ袋」は、燃やしても有害ガスは発生しないとはいえ、「レジ袋」はいらないと断って「ポリ袋」を乱用すれば、結局はプラごみを増やしている事実には変わりがない。よくよく考えて使おう。(2020/10/11)
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2020年10月04日

【今週の風考計】10.4─学術会議6人の任命拒否は、菅首相の赤狩り″だ!

「ガースー」といわれる菅首相が、1月も経たずに、6人の赤狩り″に着手! 憲法23条に手を突っ込み、強権政治をスタートさせた、この怖さ! 「しんぶん赤旗」(10/1付)がスクープした日本学術会議・新会員6人の任命拒否は、前代未聞の暴挙だ。

日本学術会議は210名の会員(任期6年)によって組織され、3年ごとに半数が改選される。今年は半数改選の年で、8月末には同会議が責任をもって新会員105人を選考し、総理大臣に推薦、そのまま任命されるのが常識だった。2004年度以降、新会員が任命されなかったケースは一度もない。
ところが内閣府は、菅政権発足後の9月24日、同会議から提出された推薦名簿から6人を外した案を用意し、それを受けた菅首相は、28日に99人の任命を決裁したという。任命拒否の理由や経緯についてはダンマリだ。
 任命を拒否された6人は、安倍政権が強行した安保法制や共謀罪、辺野古新基地建設などに対し、その学問的な見識や研究から、反対の意見を表明してきた。それを理由に任命しないのだとすれば、憲法第23条が保障する「学問の自由」を侵害するのは明白である。

安倍政権の7年8カ月、集団的自衛権の行使容認に向け内閣法制局長官の交代、黒川検事長定年延長など、人事に介入して強引に政策を進めてきた。安倍政権時の9月2日ごろにも、内閣府は内閣法制局に、学術会議の会員任命に関する法解釈を巡り、問い合わせをしている。
 その時々の政府の都合で、法解釈を変えてしまう手法を、菅政権でも継承し、「学問の自由」を踏みにじる暴挙へと、その本質をむき出しにした。
「学問の自由」を保障する憲法23条は、明治憲法時代に起きた滝川事件や天皇機関説事件など、学者の研究や論説が国家権力に侵害された歴史を踏まえて作られている。
 これを冒してでも、政府に批判的な学者は狙い撃ちで排除し、さらには組織に対しても、研究活動の萎縮や忖度を浸透させる効果も視野に入れる、その悪どさは極まりない。
 現に日本学術会議は2017年3月、軍事研究には手を染めないとの新声明を出すなど、軍事技術の開発に科学者の協力を求める安倍政権に釘を刺していた。政権の意に添わない同会議は目の上のタンコブ、掣肘したくてたまらないのがホンネ。さっそく同会議の人事に介入してきたのだ。

菅首相が記者会見したのは、就任した9月16日以降、2週間で2回の計40分だけ。学術会議6人の任命拒否についても理由など記者の質問には答えないまま。
 その一方、これまで記者会見は、「新型コロナの感染防止策」を理由に1社1人の参加制限を設けているにもかかわらず、テレビ・新聞19社の首相番記者60人とオフレコ朝食会を、3日・10日の2回も計画している。3日は、都内・渋谷のレストランで記者(朝日新聞、東京新聞、京都新聞は欠席)と90分ほどパンケーキを食べながらオフレコ懇談会を開いた。
 また首相補佐官(年収約2300万円)に、柿崎明二・共同通信社前論説副委員長を起用した。裏で繋がる政治記者を側近に引き立てるなど、メディア支配の巧妙さはズバ抜けている。
こうして「官僚・メディア・学者の支配が進むうちに、私たち一般市民も『怖いからデモやSNSの政府批判をやめよう』という空気になりかねない」と、社会全体の萎縮を指摘する学者の発言は、傾聴しなければならない。(2020/10/4)
posted by JCJ at 07:51 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月27日

【今週の風考計】9.27─今こそ必要なコロナに立ち向かう世界の連帯

◆新型コロナウイルスの感染者が、中国・武漢で最初に見つかってから9カ月が経過した。武漢で何が起きていたのか。1月20日に都市封鎖令が出されて以降の状況を伝えるドキュメントが刊行された。
◆方方『武漢日記─封鎖下60日の魂の記録』(河出書房新社)である。一気に読んだ。
 武漢に住む65歳の高名な女性作家が、自身のブログで武漢の実情を、当局の手で削除されたり、中国の極左分子「ネトサヨ」から攻撃されたり、様々な圧力や妨害にもめげず、日記の形で綴った感動にあふれる書だ。
 ⾝近な⼈が次々と死んでいく悲惨な状況、医療現場の疲弊と焦燥、とりわけ殉職医師・李文亮への思い、事実を隠ぺいした当局者への怒り、メディアの怠慢など、著者の目線の厳しさが、ひしひしと伝わってくる。
 武漢だけで感染者5万人、死者3800人という深刻な結果となったが、それに立ち向かった庶民の苦労や悲哀へ注ぐ目線は極めて温かい。

◆いま武漢はコロナ感染が収束し、10月1日から8日までの「国慶節」の連休には、武漢の名所「黄鶴楼」への旅行が人気トップだという。中国内を6億人も移動するが、コロナ感染拡大の懸念はないのか。いま中国全体で感染者9万人・死者4700人に上るというのに。
◆さらに深刻なのは世界全体で感染者3257万人、死者98万人を超えたことだ。感染者が最も多いのは、先進国ナンバーワンの米国で703万人、2位インド590万人、3位ブラジル468万人となる。上位3カ国に世界の感染者の54%が集中する。
 しかも米国は死者が20万人を超え、今もなお1日に新規感染者が5万人もふえ、かつ1日に960人近くが死亡するという、世界各国の中でも最悪の事態が続いている。

◆だがトランプ大統領は、国連総会の演説で「武漢肺炎によるパンデミックを引き起こした原因は中国にあり、責任を取らせねばならない」と激しい言葉で各国に同調を促した。
 その背景には、トランプ大統領が11月3日の選挙で再選を狙うため、感染防止対策を軽視した責任を中国に転嫁し、自らの「コロナの影響は大きくない、8月にも沈静化する」との発言を取り繕うためといわれている。
◆75周年となる国連のグテーレス事務総長は「コロナの感染拡大は医療危機、経済不況と大量失業、さらに人権侵害という脅威を同時にもたらしている」と述べ、危機打開に向け各国に結束と連帯の必要性を訴えた。
 自国第一主義による他国非難や経済制裁をやめるよう促し、さらにはコロナ・ワクチンの自国向け独占取引・ウラ取引など、いわゆるワクチン国家主義へ警鐘を鳴らした。

◆いま欧州ではコロナ感染がフランスやスペインで1日に3万人の規模で増え、集会や外出の禁止など、再規制に躍起となっている。
 ところが菅政権は「Go Toキャンペーン」を拡大し、さらに全世界から外国人の入国受け入れを決めた。当面は3カ月以上滞在する医療従事者、スポーツ選手、留学生などに限るとはいえ、解禁で感染拡大の危険が強まるのは火を見るより明らかだ。止めたほうがいい。(2020/9/27)
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2020年09月20日

【今週の風考計】9.20─コロナ禍で進む「ふるさと納税」の歪み

コロナ禍での「ふるさと納税」が、菅義偉首相の誕生により再び注目を集めている。この制度は、菅氏が総務相時代の2007年に制度創設を表明し、翌年からスタートさせた。2012年には官房長官に就任、その3年後には税額控除を倍増させた。

「ふるさと納税」は、自治体に寄付すると、額に応じた魅力あふれる返礼品がもらえる。かつ自己負担の2000円を除いた寄付金は、そのまま住民税から控除される。寄付をすればするほど寄付者が“もうかる”仕組みだ。
 現に高額所得者が、自分の住んでいる自治体には税金を払わず、地方から贈られる高級和牛やカニなどを堪能している。こんな不合理がまかり通るようになった。居住する地域の医療や図書館など、公共施設の運営に要する税を負担しないとは。
 日本に在住している外国人が、子供を日本の学校に通わせながら、「税金は母国に払う」と言ったらどうするか。
 まさに「ふるさと納税」は税制度の根幹を揺るがしている。

今や寄付額は08年度81億円から18年度は395万人が5127億円まで急増し、税金の控除額は3265億円に達した。こうなると各自治体は、何が何でも寄付額を増やそうと、自治体間での返礼品競争が激しくなる。
 地方の特産品どころか、アマゾンのギフト券を返礼品として配る大坂・泉佐野市も出てきた。事実上の現金還元だ。
 最近では長野県御代田町が、町内の遺跡から出土した縄文土器の実物大レプリカを、「ふるさと納税」の返礼品にした。5万円以上の寄付が前提にもかかわらず即完売。神奈川県南足柄市への寄付額が2019年は27億円、前年の約8倍に激増した。これも丹沢山系の水を利用したビールを返礼品に加えたためである。

財政が逼迫している地方の自治体には、「ふるさと納税」は降ってわいた財源、よだれが出るほど欲しい。地方自治体間で「ふるさと納税」の取り合いである。「地方創生・産業振興」への取り組みなど、すっ飛んでしまう。
その一方、「ふるさと納税」に流れて税収が減った、首都圏を中心にした自治体の悲鳴は深刻になるばかり。東京・渋谷区は26億円もの住民税が流出する、いわば“ふるさと納税貧乏”状態だ。同じ杉並区では2019年度25億円近くの財源が流出した。
 コロナ感染拡大に対応しての緊急な財政支出がかさみ、そのうえ税収が減れば、道路や公園など公共空間や施設の維持・管理は滞る。街灯の電球が交換されなくなり、廃棄物の収集回数は減るなど、深刻な事態が進む。

コロナ禍で巣ごもり需要による「ふるさと納税」の伸びが目立つ背後で、所得の高いものほど税額控除が大きくなる矛盾、そして自治体間の無用な競争をあおり、<税の応益負担>へ不信が募る、ここに目を向けなければダメ。(2020/9/20)
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2020年09月13日

【今週の風考計】9.13─憲法の「非戦・平和主義」を骨抜きにしてきた7年8カ月

<最後っ屁>とはいうが、安倍首相が放ったのはイタチよりひどい。あと7日もない首相の座から「敵基地攻撃能力」の保有を促す談話を発表した。自民党内の討議も経ず、閣議決定もなし。自民党内ですら「辞めていく首相が方針を決めるのはおかしい」と、反発の声が出ている。
これまで政府は、「敵基地攻撃能力」について、憲法上は保有を認められるが、専守防衛の観点から政策判断として持たないとの立場を維持してきた。
 こうした方針を大転換させる談話で、よしみを通じるとはいえ、次期の「菅政権」に年内という期限付きで政策決定を求めるのは言語道断だ。
 「ミサイル反撃」と言うが、他国の領域を標的にする兵器の使用は、専守防衛を逸脱するのは明白なうえ、先制攻撃にもなりかねない。まさに憲法9条が死滅する。

「ミサイル反撃」への対応にしても、まず他国から発射されるミサイルを正確に予測し把握せねばならず、宇宙空間での監視が不可欠。そのため早期警戒衛星の打ち上げが必要になる。日本が独自に持つと年間850億円かかる。さらなる地対空誘導弾パトリオットの拡充も迫られる。
いま防衛省が準備している「敵基地攻撃」の一つには、北朝鮮や中国、ロシア沿岸部に到達する射程500キロの弾道ミサイル「スタンド・オフ・ミサイル」(ノルウェー製)がある。それを2022年3月までに購入し、航空自衛隊のF-35Aステルス戦闘機に搭載して運用する計画だ。
 これも専守防衛との整合性について議論を尽くさずに導入を決定した。
さらに敵基地のレーダーや通信などの防空網をかいくぐって攻撃するには、電子戦機やステルス戦闘機が必要になる。電子戦機もステルス戦闘機も1機100億円。その維持費や要員の訓練なども含む経費を考えれば、年5兆円の防衛予算が、さらに拡大の悪循環に陥る。

安倍政権の7年8カ月、日本の安全保障を脅かす暴挙が、どれだけ繰り返されてきたか。
 2014年4月には「積極的平和主義」の名の下、武器輸出の禁止を解除。7月には憲法解釈の変更で、集団的自衛権の行使容認を、国会での議論を経ずに、閣議決定で一方的に決定した。翌年9月には学者や国民の反対にもかかわらず、安保関連法を強行採決で成立させた。
 自衛隊が地理的な制限もなく海外に派遣される攻撃部隊と化し、米軍との一体化が加速、憲法の「平和主義」が骨抜きにされた。
その間、トランプ大統領のご機嫌を伺い、兵器の爆買いに奔った。核兵器禁止条約には背を向け、「東アジア平和共同体」構想など視野にもない。
 安倍政権の一強支配による権力行使の7年8カ月は、日本を「戦争する国」へと歩ませる道程だったといっても過言ではない。(2020/9/13)
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2020年09月06日

【今週の風考計】9.6─またも「大阪都構想」を住民投票に付す愚の行き着く先

◆人口270万の大阪市をつぶし、4つの特別区に分割する「大阪都構想」が、5年前に住民投票で否決されたにも関わらず、再び是非を問う住民投票が、18歳以上の大阪市民を対象に11月1日に行われる。公明党は都構想に反対してきたが、大阪府内で得た4議席に、維新が対抗馬をぶつけると脅し、無残にも賛成に転じたためだ。
 コロナ禍が拡大する中、なぜ今再び? の疑問や批判の声は大きく広がる。

◆北区、中央区、天王寺区、淀川区に分割される特別区といえども、その業務遂行には、膨大なコスト・経費がかかる。そのうえ大阪市という大きな財源を背景に実施してきた独自の住民サービスが、維持できなくなる危険は大きい。
 これまで大阪市は、18歳までの医療費助成、地下鉄・市バスの敬老パス、ひとり親家庭への医療費助成、新婚・子育て世帯向けに分譲住宅の購入には利子補助など、数多くの住民サービスを実施してきた。それが脅かされるのだ。
◆「水道」「消防」「都市計画」にかかわる権限も全て府に奪われ、特別区の住民の生活環境の保全が危うくなり、経済政策と連動した税収確保にも大きな影響が出てくる。
 「介護保険」についても、その事務作業は「府」と「特別区」に分けられないので、年間予算6400億円、400人の職員を抱える「一部事務組合」を新設して、そこで一括して担うというのだ。こんなムダはいらない。
◆国からの地方交付税も、4つの「特別区」それぞれが必要経費を算出して交付を受けるのではなく、今後も「大阪市」が存続しているとみなして計算し、大阪府が交付を受けるという。これでは「特別区」が実際に必要とする額には、200億円も不足するといわれる。

◆特別区の区役所はどこになるのか。はじめは4つの特別区に新庁舎を設置するとしていたが、600億円も必要となり、公明党の要望を受け、いまの大阪市役所・中之島庁舎を北区とともに合同で使う案が浮上した。淀川区の職員は8割、天王寺区の職員は5割が、中之島庁舎へ通い、間借りして仕事をこなすことになる。
 行政サービスは、「ニア・イズ・ベター」が鉄則だが、災害時の復旧・復興の拠点ともなる市役所が、そばにないとなれば、住民の不安は増すばかりだ。住民の住む自治体の区域外に本庁舎がある例は、鹿児島と沖縄の離島だけ。

◆「大阪都構想」の問題を深く掘り下げるオンライン講演会が開催されます。ぜひ参加を!
JCJオンライン講演会:大阪都構想 七つの大罪
日時:9月13日(日)午後2時〜3時30分
講演@「大阪都構想、七つの大罪」ジャーナリスト・幸田 泉さん
講演A「維新の歴史と大阪のたたかい」大阪市をよくする会・中山直和さん

参加費:500円

【参加ご希望の方は https://peatix.com/event/1606843をパソコンなどで開きpeatixを通じてお支払い手続きをしてください。講演前日の9月12日にZoomのURLをメールでお送りします】
(JCJ会員とメディアを考える会・大阪の会員は無料。onlinejcj20@gmail.comに別途メールで申し込んでください)
主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)関西支部、メディアを考える会・大阪
お問い合わせ:03・6272・9781(JCJ事務所) または090・6673・7377(清水)へ

posted by JCJ at 07:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする