2021年07月25日

【今週の風考計】7.25─大会経費が3兆円を超える<東京五輪の闇>

★「東京五輪」が開幕した。コロナの再パンデミックが猛威を広げ、東京でも4回目の緊急事態宣言が発令、第5波の襲来がいわれている。その最中に開催を強行した。
 政府やIOCは、医療従事者や専門家の意見を無視し、中止や再延期を求める国内外からの大きな声にも、耳を傾けず突っ走った。
★閉幕する8月8日までに、コロナ変異株が若い世代へ急拡大するのは間違いない。とりわけ今夏の異常な暑さに、熱中症の頻発も重なり、医療従事者の負担や病床のひっ迫は避けられない。

★「安心・安全の祭典」どころか、入国した選手や関係者の間で、もう123人ものコロナ感染者が出ている。「バブル方式」で防ぐなど幻想だ。いかに拡大させないか、国名や氏名の公表も含め厳重管理が不可欠になっている。
 閉幕して帰国する際には、「東京五輪発」の変異株ウイルスを持ち帰らないよう、細心のチェックも必要だろう。もしアスリート人生に支障でも生じ、損害賠償などの請求が来たら、どうするのか。杞憂で済まされない。

★さらに見過ごしてならないのは、「東京五輪」の開催費用である。<#五輪の「闇」>というハッシュタグまでついて、その不明朗な実態を追究する動きが起きている。
 2013年に日本の招致委員会がIOCに行った説明では、競技会場や選手村を集約し、「世界一コンパクト」な会場による開催を計画し、開催費用も7300億円程度としていた。
★しかし、何度も経費の上積みを重ね、2019年末で1兆3500億円、2020年末には新型コロナによる延期と感染防止対策の2940億円を加え、約1兆6440億円に膨れ上がった。なんと当初の2.2倍だ。
 関連経費を加えると大会経費は3兆円を超え、五輪史上もっとも経費のかかる大会となる。この赤字の尻拭いは税金。つまり背負わされるのは国民だ。

★大会経費が膨張した背景には、IOC「五輪貴族」からの要請、電通やパソナグループなどの大企業による五輪経費の中抜き、ピンハネの横行がある。開閉式の費用に限ってみても、電通による制作に5輪史上最高額の165億円を支払う。
 メイン会場・新国立競技場の建設費用は1530億円。当時の猪瀬直樹都知事が「40年前の五輪施設を使うので世界一コンパクトな会場」との公言は、どこにいったのか。
 競技場の維持運営費だって年間24億円という。五輪が終わったら、あまりにも高い経費がネックとなり、閉鎖となりかねない。

★今や五輪は、コロナ禍でもやめられないほど、利権が絡む「巨大なスポーツ興業」と化した。IOCと契約する米国のテレビ局NBCや巨大スポンサーの意向は無視できない。開催するだけで約1300億円のテレビ・マネーが懐に入る。こうした「五輪の闇」を晴らさなければ、五輪の未来はない。(2021/7/25)
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2021年07月18日

【今週の風考計】7.18─<世界最悪の経営者>ベゾスの地球帰還を許すな!

amazonのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)が、7月5日付で退任した。退任して会長に就くや否や、20日には有人宇宙船「ニューシェパード」で宇宙旅行へ出発する。この「ニューシェパード」は、ベゾス自身が起こした会社が開発し、今回が処女飛行となる。
 すでに11日には、米国の大富豪リチャード・ブランソンが自分の企業グループ・バージンが開発した有人宇宙船で、いち早く宇宙旅行に出ている。大富豪同士の意地の張り合い、どうぞ宇宙で好き勝手にやってチョウダイ!

それより問題なのは、地球上で繰り広げるamazonのアコギな税逃れと劣悪な労働条件の押しつけである。その事態が深刻になるにつれ、amazon やベゾスへの反感は募るばかりだ。
 米国で「ベゾスの地球帰還を許すな」と銘打った、怒りの署名運動が展開され、1カ月も経たずに14万人を超す署名が集まっている。宇宙旅行をするなら、どうぞそのまま「もう戻ってくるな、地球外で遊覧していてくれ」そんな気持ちの表れだろう。
無理もない。2014年に国際労働組合総連合(ITUC)が、ベゾスを<世界最悪の経営者>に認定して以来、少しも改善されていないからだ。
 2年前までamazonの倉庫で働く人々はロボット同然の扱い、トイレに行く自由もなく、持参した飲料ビンへの用足しや紙おむつの着用を強いられていた。これが暴かれ世界各地で問題化した。今年4月には米国アラバマ州の物流倉庫の労働者に圧力をかけ、労働組合の結成を阻害している。

amazon創業は1994年、書籍のネット通販からはじめ、30年足らずで時価総額185兆円を超す巨大企業に発展した。今では2億人を超える通販会員を擁し、クラウドサービスなど新たな事業開発に注力している。
 ベゾスの総資産は日本円で21兆円。ペルーやギリシャ、ニュージランドのGDPに匹敵する。だが法人税や消費税などの税金は払わず、慈善事業が嫌いで“守銭奴”の異名がつく。
フリーランスの横田増生さんが、神奈川・小田原にあるamazonの巨大物流センターに潜入し、監視カメラが設置され、秒刻みで仕事がチェックされる作業員の実態や5年間で5人も死亡事故が起きた過酷な労働現場を告発している(『潜入ルポamazon帝国』小学館)。
 世界では175カ所以上の物流センターがある。日本国内では2020年現在20カ所、7年間で倍増している。その売り上げは1兆5千億円をこえる。日本で最大の物流会社になっている。

24時間の受付、翌日には配送してくれるamazon サービスの裏に、過酷な労働による犠牲があることを忘れてはならない。しかもベゾスは米国の新聞ワシントン・ポストも所有し、amazonに批判的な記事は徹底的に排除し、メディア支配を狙っていることも肝に銘ずべきだ。(2021/7/18)
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2021年07月11日

【今週の風考計】7.11─「ソーバーキュリアス」の陰で居酒屋の悲鳴

「ソーバーキュリアス」なる語句を知った。英語で「Sober Curious」。酒は飲めるのだが、あえて飲まない人たちを指す。「Sober=しらふ」「Curious=ふりをする」を組み合わせた造語だ。
 欧米の若者を中心に、トレンドになっているそうだ。日本も例外ではないという。日本の若者の半分以上は、ソーバーキュリアス的なライフスタイルを選択しているとか。
「本当にそうかい?」─疑問に思ってしまう。緊急事態宣言が発せられ、酒類の販売禁止が要請されているのに、渋谷や歌舞伎町など繁華街の路上で、缶酎ハイや缶ビールを座り飲み、酔っぱらっている若者の映像が、テレビから流れる。これは例外か。

それにしても巣ごもり″を強いられる我が身にあっては、家での晩酌、ビールのロング缶は欠かせない。サラリーマンや労働者だって、帰りがけに「ちょっと一杯」の息抜きは必要だろう。ストレスの多い毎日にあって、「ソーバーキュリアス」などと洒落ている<優雅な一日>はないだろう、それが実態だと思う。

東京都に4度目の緊急事態宣言が発令された。12日から8月22日までの6週間だ。再び飲食店に酒類提供の全面禁止が要請される。
 居酒屋は「また酒が悪者にされるのか」と怒りの声を挙げる。「五輪をやるなら、居酒屋もやらせてくれ、酒がダメなら潰れるしかない」と憤るのも無理はない。
 しかも政府は、金融機関に対し、酒の提供禁止に歯向かう居酒屋・酒卸業者に「金を貸すな」みたいな脅し・締め付けを依頼しようなどという。まさに言語道断、撤回するのは当然だ。

筆者も時には行く、東京・新宿のビア&カフェ「ベルグ」副店長・迫川尚子さんの<酒に罪はない─新宿駅最後の小さなお店の悲鳴>という一文を読んだ。
 「時短営業、酒類の提供自粛は本当に厳しく、赤字は何百万円にも上ります。創業して50年たちますが、最も危機的な状況です。…コロナ対策は万全を期したうえ、…うちは仕事帰りの労働者が立ち飲みで、さくっと飲んで、ちょっと摘まんでさっと帰るというスタイルの店、お酒に罪はないですし、軽く一杯、というささやかな楽しみまで奪わなくても良いのではないかと思うのです」(「女性のひろば」8月号)

顧みれば、コロナ感染防止を目的に飲食店や居酒屋に発令された規制は、時短要請や酒類の販売自粛・禁止など、昨年11月28日から今年の8月22日まで、連続して6か月間に及ぶ。
 コロナ対策の全てが「現場に尻ぬぐいさせる」対応では、誰も政府の緊急事態宣言など、信用しなくなるのは当たり前。
 「ああいえば上祐」じゃないが、「いずれにせよガースー」の菅政権の発令など、信頼はもう吹きとんだ。退場してもらうしかない。(2021/7/11)
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2021年07月04日

【今週の風考計】7.4─日本を襲う「線状降水帯」と気候崩壊への対応

ちょうど1年前の7月4日、熊本県南部地域を襲った集中豪雨は甚大な被害をもたらした。今なお多くが仮住まい生活だ。これも「線状降水帯」が原因だという。その長さは約277キロ、総降水量は最大値633.3ミリに及んだ。
 そして今年もまた、集中豪雨が太平洋側に沿って、沖縄から四国、近畿、伊豆半島、熱海、箱根、房総地方まで連続して襲っている。
「線状降水帯」とは、発達した複数の積乱雲が線状になって並び、数時間にわたり同じ地域に停滞するか、通過しながら数百ミリの大雨をもたらす。台風を除けば、日本で起きた集中豪雨の約3分の2が「線状降水帯」によるものだという。
 なぜ発生するのか、大まかには地球温暖化による気候変動によるものの、詳細なメカニズムの解明や予測はできていない。

目を転じれば、カナダ西部が熱波による記録的な猛暑に見舞われ、6月29日の気温は49.6℃に上昇。ブリティッシュコロンビアでは1週間に719件の突然死が報告されている。もともと6月の当地域は平均気温が25℃ほど、2倍の暑さが襲ったことになる。
米国・北西部のオレゴン州ポートランドでも6月28日の気温が46.7℃、63人が死亡。ワシントン州シアトルでも42℃超を記録し、アスファルト道路が歪み、送電線が溶けたという。
 このような異常気象がカナダや米国北西部を襲い、熱波と干ばつの影響で山火事の発生数が今年、過去最高を更新するとの警告まで出ている。
昨年、シベリアの気温が過去最高の38℃まで上昇し、北極圏の永久凍土が急速に融解している。地球の冷却機能は失われ、平均気温の上昇につながっている。

いまや世界は異常気象に包まれ、気候変動どころか気候崩壊にさらされているのが実態だ。これも私たち人類が、無制限に二酸化炭素CO2を排出し続けた結果なのだ。
 米国のジャーナリストであるデイビッド・ウォレス・ウェルズが著わした『地球に住めなくなる日─「気候崩壊」の避けられない真実』(NHK出版)が、世界で大反響を呼んだ。
現状の温室効果ガス・CO2の排出ペースが続けば、今世紀末までに平均気温は4℃上昇するという。今でも2030年には地球の気温が1.5℃上昇するといわれる。
 さらに2050年までには、世界で100都市以上が浸水し、熱波、大洪水、大気汚染、経済破綻などが広がり、数億人が貧困にあえぐ壊滅的な危機に至ると予測している。 

それでは私たちはどうしたらよいか。この6月初旬に刊行された宇佐美誠『気候崩壊─次世代とともに考える』(岩波ブックレット)が、「気候正義」という概念を提起して、グローバルな視点から示唆に富む提言をしている。
 しかも次の世代を担う若い人びととの対話を通じて、理解と認識を共有する作業は貴重だ。ぜひ読んでほしい。(2021/7/4)
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2021年06月27日

【今週の風考計】6.27─<赤木ファイル>─公文書改ざん「指揮・命令」の闇を暴け!

★近畿財務局に勤務した赤木俊夫さんの死から3年。いまだに麻生太郎財務相は線香すらあげに来ない。安倍前首相の夫人・昭恵さんも、昨年5月中旬、残された妻の雅子さん宛てに「いつかお線香をあげに伺わせてください」とのメッセージを、LINEで発したまま。その後はナシの礫だという。
 「赤木ファイル」が、やっと妻の雅子さんや国会に開示された。赤木俊夫さんが「森友学園」に関する公文書改ざんを苦に、2018年3月7日、自死する間に財務省と交わされた518ページに及ぶ記録には、貴重な記述が並ぶ。

★財務省が2017年2月26日、係長名で近畿財務局に「森友学園」関連文書の改ざんに関するメールを発信。安倍首相の妻・昭恵氏や政治家などの記述に、「削除した方が良いと思われる箇所があります。マーキングしておきました」と、この箇所を「できる限り早急に」削除するよう求めている事実が記されている。
 この指示を受けた赤木俊夫さんは「既に意思決定した調書を修正することに疑問が残る」と、財務省本省に直接抗議し、かつ「今回の対応は、本省理財局が全責任を負う」などと説明されても納得できないとして、「備忘として記録しておく」とファイル作成の経緯を記していた。
★改ざん指示のメールがくる9日前の2月17日。安倍首相は国会で、国有地を8億円も値引きして森友学園に売却した「森友問題」に、自分や妻が関係していた場合は「首相も国会議員も辞める」と答弁した。この答弁が契機となり、慌てふためいた官邸や財務省が、公文書の改ざんに猛進した構造が浮かび上がる。
 当時の佐川宣寿理財局長も、3月20日には「国会答弁を踏まえたうえで、修正するよう」直接指示している。この「国会答弁」とは、安倍首相の答弁を指すのは言うまでもない。
 そもそも「森友問題」は、開校予定の小学校の名誉校長に就いた安倍昭恵さんが、国有地売却に絡む打合せの際、<「2014年4月25日、安倍昭恵総理夫人を現地に案内し、夫人からは『いい土地ですから、前に進めてください』とのお言葉をいただいた」との発言あり(森友学園籠池理事長と夫人が現地の前で並んで写っている写真を提示)>との記述が発端なのだ。

★開示されたとはいえ「赤木ファイル」の写しは、幹部職員以外の名も含め墨塗りが400ケ所もある。別添の資料は開示されていない。財務省「調査報告」との食い違いはもとより、公文書改ざんの指揮・命令系統は、いまだ「闇」のままだ。第三者委員会の設置など、再調査は不可欠だ。
 その際、肝心なのは、最初に改ざんを指示したのは誰か、その解明である。すべてを佐川宣寿理財局長におっかぶせているが、一介の理財局長が独断で、このような大規模な公文書改ざんという作業を指示できるわけがない。
★2017年2月17日の「首相も国会議員も辞める」との<安倍答弁>から、5日後の22日、当時の菅義偉官房長官は、財務省の佐川理財局長、中村稔・総務課長、太田充・大臣官房総括審議官と面談し、改ざんを命じた可能性が濃いとの報道もある(LITERA6/22付)。
 この糸口に切り込み、公文書改ざんへの指揮・命令の道筋と全容を暴いてほしい。(2021/6/27)
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2021年06月20日

【今週の風考計】6.20─下田・本土寺・明月院のアジサイをめぐる対話

10日ほど前、思い切って伊豆・下田公園のアジサイを見に行った。安政元(1854)年、日米和親条約を結んだ了仙寺の境内に咲く、アメリカン・ジャスミンに足を止める。
 さらに柳しなだれるペリーロードを歩き、日本初の商業写真家・下岡蓮杖の像を脇にして、アジサイ群落の広がる山道を登る。
その数、なんと約15万株300万輪! 種類もウズアジサイ・ガクアジサイ・墨田の花火など、100種以上。山肌に広がる薄い青・紫・黄・ピンクの大輪の先に、下田市街や下田内港・稲生沢川に舫う舟が一望できる。穏やかな山容の下田冨士も望める。
 下田城址をめぐるアジサイロードを南へ下ると、お茶ケ崎展望台に出る。左手に犬走島、眼下にイルカが遊泳する海中水族館、さらに右には赤根島や和歌の浦が見渡せる。

帰ってきて数日後、地元の一膳めし屋に行く。「カツ煮定食」ができるまでの間、こあがりの壁にかかる、額に入った2枚の大きなカラー写真に見入った。
 五重塔の前にアジサイのピンクの大輪が咲き誇る。もう1枚は広い屋根を持つ建物の前に広がる、青いアジサイの群落だ。こんなに見事にアジサイの大輪が咲く寺は、どこなのか。分からないだけに興味津々。

来客が途切れたのを捉え、訊いてみると、「松戸のホンドジ」だという。調理場から出てきた親爺の説明により、JR常磐線北小金駅から徒歩10分にある、日蓮宗・本土寺であるのが分かった。境内には1万株が植栽され、松戸のアジサイ寺として有名だという。
店の老いた親爺は大のカメラ好き。このアングルが最高で、何枚も取った中のベストを伸ばしたものという。ひとしきりカメラと風景写真の蘊蓄を聞いた後、下田のアジサイに話を振ると、得たりや応と、「あそこはいいアングルがたくさんある」と頷く。

さらには「鎌倉のアジサイ、ここも外せない」と、話を続ける。とりわけ北鎌倉の明月院、そこのアジサイは「明月ブルー」といわれ、カメラ好きには腕の見せ所。構える角度やシャッターに神経を集中する、という。
 6月ごろから、自生するタマアジサイが、大きな丸い蕾が弾けるように開花する。その澄んだ藍色は吸い込まれそうなほど。今年はコロナで行けないのが悔しくて…という。
鎌倉には建長寺や長谷寺、浄智寺、妙本寺、稲村ケ崎などなど、アジサイの名所は尽きない。コロナが終息したら、ぜひ回ってこいと勧められる。

さて14日、関東甲信地方にも梅雨入り宣言が出た。だが今年の梅雨は梅雨前線の活動が活発で大雨が多くなるという。まさに、<紫陽花や壁のくづれをしぶく雨─正岡子規>となろうか。梅雨晴れを狙って、近在の寺や公園に咲くアジサイでも見物に行こうかと思うが、それも容易ではなそうだ。(2021/6/20)
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2021年06月13日

【今週の風考計】6.13─「墨汁一滴」から田辺聖子「十八歳の日の記録」へ

<ねんてん先生の文学のある日々>を、いつも楽しみに読んでいる。俳人・坪内稔典が「赤旗」文化欄に、毎月第一金曜日、執筆している。
 この4日付の75回では、正岡子規の「墨汁一滴」に触れて、子規と漱石との交遊を綴っている。
興味を覚え、書棚から170ページの岩波文庫を引っ張り出して再読。あらためて脊椎カリエスに苦しみながら、毎日、「墨汁一滴」分の文章を、一年半も書き続けてきた精神の強靭さに心打たれる。
<この頃は左の肺の中でブツブツブツブツといふ音が絶えず聞える。これは「怫々々々」と不平を鳴らして居るのであらうか。あるいは「仏々々々」と念仏を唱へて居るのであらうか。あるいは「物々々々」と唯物説でも主張して居るのであらうか。>(四月七日)
 東京市下谷区上根岸の寓居で書く、この一文は鬼気迫る。

子規への想いを膨らましているところに、<田辺聖子「18歳の日の記録」没後2年、押し入れから出てきた一冊のノート>というニュースである。そういえば6月6日が命日、享年91。今年は3回忌に当たる。
見つかった日記ノートは、田辺聖子が18歳になったばかりの昭和20年4月1日から書き初め、22年3月までの日々を綴った記録である。とりわけ昭和20年6月1日の「大阪大空襲」に遭った際の詳細な記録は、その後の「聖子の原点」を彷彿とさせる。
10日発売の雑誌「文藝春秋」7月号に掲載された田辺聖子「十八歳の日の記録」から、恐縮だが引用させていただくと、
<お父さんも、私が帰ったときいて、ぬれしょぼれた格好で向うからやって来られた。「そうか、帰って来たのか、家、焼けたよ。ははっは。これも戦争じゃ戦争じゃ、仕様がないわい、しかしこれで皆、無事に揃うて、まず目出度いとせなあかん」とお父さんは、快活に言った。私はたとえ、それが不自然であっても、しおれた皆を元気づけようとする心がうれしかった。>(六月二日)
 とあり、大阪市此花区にあった父が経営する田辺写真館が燃え落ち、家族は一睡もできない夜を過ごした状況が描かれている。

また敗戦の「八月十五日」には、万年筆で丁寧に書かれた他のページとは違い、「墨汁一滴」墨文字が一気呵成に躍っているという。
<何事ぞ! 悲憤慷慨その極を知らず、痛恨の涙滂沱として流れ肺腑はえぐらるるばかりである。我等一億同胞胸に銘記すべき八月十四日。嗚呼、遂に帝国は無条件降伏を宣言したのである。>
愛国心いっぱいの軍国女学生の思いが、ほとばしる。だが翌年の大晦日には、二十歳を前にして、こう綴る。
<来年も、勉強して小説を書こう。私はもう、この道しか、進むべき道はない。そう、信じている。来年もまた、幸福な精神生活が送れますように。>

さて、ここまで書いてきた筆者の誕生日は6月12日。もう一度「墨汁一滴」を繰ってみる。今からちょうど120年前の同日、34歳の子規は病床から、次のように書いている。
<植木屋二人来て病室の前に高き棚を作る。日おさへの役は糸瓜殿夕顔殿に頼むつもり。碧梧桐来て謡曲二番謡ひ去る。曰く清経曰く蟻通。>(六月十二日)
 猛暑に備えて、梅雨どきの庭の植栽に心を配る子規、そこへ見舞いに訪れた俳人・河東碧梧桐が謡う能「清経」「蟻通」の一節が響く。おお、この情景と余韻、サイコー!(2021/6/13)
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2021年06月06日

【今週の風考計】6.6─いま必要な“変異ウイルスの災典”を避ける決断

『オリンピック 反対する側の論理』(作品社)という本が注目されている。著者のジュールズ・ボイコフは元五輪選手で、米パシフィック大学政治学教授を務める。
 五輪開催に伴う膨大な経費、開催都市の再開発がもたらす環境破壊、選手を使い捨てにする過度な商業化など、その弊害を告発し、世界に広がる五輪反対の動き、その論理と背景を明らかにしている。

7月23日の東京五輪開会式まで50日を切る中、世界各国のメディアが「東京五輪中止」の記事や論評を発信する度合いが加速している。
 この3日には、英国の高級紙「ガーディアン」が東京五輪中止を報道。同日、フランスのニュース専門放送局「LCI」が、新型コロナ禍での東京五輪について「大失敗のリスクがある」と強い警鐘を鳴らし中止を強く要請した。
それも当然、様々な変異ウイルスが東京五輪に持ち込まれるリスクは否定できない。平和の祭典のはずの東京五輪が、“変異ウイルスの災典”になりかねない。IOC“ぼったくり男爵”バッハ会長への批判も強まるばかりだ。

東京五輪・パラに世界各国から選手が1万5千人、そして大会役員・報道陣など7万8千人が一緒にやってくる。海外の選手・大会関係者9万3千人は「特例入国」扱いとなり、コロナ検疫のための施設隔離、すなわち「停留」が免除され、入国後ただちに練習などができる。
 開催中は東京・晴海の「選手村」やホテルに選手・関係者を隔離し、外部との接触を制限する「バブル方式」で感染を防ぐという。
だがこの隔離「バブル方式」に、延べ30万人の通訳、警備、運転、清掃などに携わる国内関係者が、公共交通機関で自宅などから通い仕事に就くことが判明した(東京新聞6/4付)。30万人中、ワクチンの用意は2万人分しかない。
 これでは「停留」免除されている選手や関係者が、新たな変異株を持ち込む可能性に加え、外部と隔離する「バブル方式」のほころびが、会場や「選手村」などに出入りする国内関係者に感染を広げる危険性は避けられない。

コロナ感染対策・分科会の尾身茂会長は、「パンデミックの状況では、普通は五輪開催はない…、なぜやるのか、国がはっきりとしたビジョンと開催理由を述べることが重要だ」と、菅首相による説明のみならず、JOCの責任についても言及した。
 さらに海外から来た「選手や大会関係者が日本で感染し、医療制度や検査体制が非常に脆弱な発展途上国に持ち帰るリスクがある」とも指摘した。
コロナ対策の専門家らが、近日中に開催に伴うリスク評価の提言をする。感染爆発の「ステージ4」では開催は難しい。感染急増の「ステージ3」なら最低でも無観客にというのが、大勢になってきた。
「観客もいない、選手は隔離の五輪って、塀の中の運動会みたいじゃない!」─これじゃあ、中止!それしかない。(2021/6/6)
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2021年05月30日

【今週の風考計】5.30─住民を監視する「土地規制法案」の危ない内容

自分が持っている土地・建物は自分のものだ。なぜ政府が調査・監督に入り、個人情報を収集のうえ、売買までチェックするのか。
 6月16日の会期末まで残りわずか。ワクチン接種で大変な最中、国会では基本的人権を制限するトンデモナイ法案が、強行採決されようとしている。「土地規制法案」だ。

政府は、同案の目的は「安全保障の点から重要な施設の機能阻害行為が行われるリスクに対応する」ため、海外からのスパイ潜入や拠点づくり、破壊行為を未然に防ぐ目的で、土地や建物の購入・売買に規制をかけるという。
 自衛隊や米軍の基地、海上保安庁の施設、原発などの「重要施設」がある、周囲1キロ以内の土地や建物、さらには国境の離島などを加え計450カ所以上を「注視区域」に指定し、区域内の土地・建物を利用・売買する場合には、所有者や法人などに調査が入り、売買・利用の中止について勧告や命令を出すことができる。
さらに司令部機能を有する基地や施設周辺150カ所以上は「特別注視区域」に指定し、一定規模の土地・建物を売買する際には、事前の届け出を義務づけ、監督官庁からの査察や調査を受けなければならない。従わなければ、懲役2年以下または罰金200万円以下の刑事罰を科す。

しかも集めた個人や法人の調査情報を、内閣情報調査室や公安調査庁など政府機関の協力のもと必要な分析に回す扱いを否定しない。名前や住所、国籍、土地の利用状況にとどまらず思想・信条や所属団体、交友関係、海外渡航歴など、際限なく広がる恐れがある。
 肝心の「機能を阻害する行為」の内容がアイマイだからだ。法成立後に「基本方針」を閣議決定し、その内容に基づき施行するという。これでは国会のチェック機能は働かず、恣意的な運用のみならず、日常的に市民が監視され、人権侵害につながる危険は極めて大きい。

防衛省本庁のある東京・市ケ谷を考えてみよう。まず周辺1キロ以内は「特別注視区域」に指定されるから、既存のコンビニやビルを売買する際には、事前の届け出が義務づけられ、政府官庁から売買の相手先などの調査が入る。
 個人の土地や建物の売買だって、スパイの購入防止という目的からすれば、事前提出・調査のプロセスは免れない。それを懸念して、すでに不動産の売却価格が下落している。
 埼玉県にある米軍・所沢通信基地の周辺1キロには、並木通り団地800戸の住宅が密集している。その住民を国が情報収集の対象にして監視するのだから、穏やかではない。

多くの米軍基地や自衛隊施設がある沖縄県民に至っては、誰もが調査規制対象となり、知らないうちに監視下に置かれる。
 あの自民党の杉田水脈議員が、鉄面皮にも「土地規制法案」を審議する委員会で、「辺野古基地建設に反対する市民の食べた弁当ゴミが、米軍基地の機能を阻害する恐れがある」と、同法案の拡充を求める発言までしている。狙いがはっきりした、廃案しかない。(2021/5/30)
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2021年05月23日

【今週の風考計】5.23─自民党・政治家の暴言や“逆ギレ”弾圧を許すな

★菅政権の幹部や自民党議員から、驚くべき内容の発言が続く。しかも説明責任は果たさず、メディアへ抗議や圧力をかけるとは何事か。政治家たるもの、事実を無視し、無知による誤った認識に基づく発言は許されない。

★山谷えり子参議院議員は、LGBT法案をめぐる自民党の会合で、「体は男だけど自分は女だから女子トイレに入れろとか、アメリカなんかでは女子陸上競技に参加してしまってダーッとメダルを取るとか、ばかげたことが起きている」などと、性自認に対する悪質な発言をした。
★さらには「道徳的にLGBTは認められない」「人間は生物学上、種の保存をしなければならず、LGBTはそれに背くもの」など、性的マイノリティを差別する驚くべき発言が、他の自民党議員から繰り返された。

★自民党・林幹事長代理も、「根掘り葉掘り、党の内部のことまで踏み込まないでもらいたい」と、参院選の広島選挙区・河井案里陣営へ提供した1億5千万円問題にフタをした。資金提供を決めたのは誰か。自民党・二階幹事長は「自分は関与していない」という。
 当時の甘利明・選挙対策委員長も、「私は1ミクロンも関わっていない」と否定。裁判中の河井克行被告も、「妻の選挙買収には1円も使わなかった」という。
 誰が決め、何に使ったのか、そのうち1億2千万円が国民の税金からなる政党交付金である以上、その使い道を国民の前に明らかにするのは当然だ。フタをさせないためにも、「根掘り葉掘り」糺す必要がある。

★自民党の細田博之元官房長官は、党内の会合で沖縄でのコロナ感染拡大に関連して、「緊急事態とか、まん延防止とか、そんなものに頼っても駄目。沖縄県こそ来県する人への規制、県境封鎖などコロナ対策は独自に取るべきだ。国に頼るべきではない」と、国の責任は棚上げにして、沖縄県に特別な対策を強いる差別的発言をしている。

★岸信夫防衛大臣は、<ワクチン予約システムに欠陥>と指摘する数多くの報道に対し、「悪質な行為であり、極めて遺憾だ」と語り、抗議文を朝日新聞出版と毎日新聞の2社に限って郵送した。
 河野太郎・ワクチン接種担当大臣も「面白半分」の妨害行為であるかのような発言を口にしている。
 さらに岸防衛相の実兄・安倍晋三前首相が、ツイッターに「朝日、毎日は極めて悪質な妨害愉快犯と言える。防衛省の抗議に両社がどう答えるか注目」と投稿。
★これには開いた口が塞がらない。呆れるばかり。安倍前首相こそ森友問題で139回、「桜を見る会」関連で118回の虚偽答弁をおこない、国会審議を1年以上も空費させた「極めて悪質な妨害愉快犯」ではないか。「もり・カケ・桜」の疑惑に答えるのが先だ。

★政治家として、欠陥が明らかにされたら真摯に反省し、解決に向けてどう対応するか、国民に開示すべきで、メディアへ抗議するとは筋違いも甚だしい。驕りたかぶった“逆ギレ”弾圧や発言・投稿を許してはならない。(2021/5/23)
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2021年05月16日

【今週の風考計】5.16─ワクチン接種をめぐるドロナワ処方箋の行方

<7月末までにワクチン2回接種、1日の接種100万回!>─政府の大号令ラッパが鳴り響く。だが「ワクチン狂騒曲」に翻弄される自治体や65歳以上の高齢者3600万人は、テンワヤンワの騒動に放り込まれた。
 接種券が届いても、予約の電話がつながらず、ネットのサイトも停止、役所の窓口には予約を求めて高齢者が殺到し、右往左往するばかり。

世界各国は、1年前からワクチン接種へのロードマップを作り、スムーズな実施に向け全力を挙げてきた。米国では、18歳以上の約1億900万人がワクチン接種を終え、接種率は45.8%だ。
 日本はどうか。ワクチン接種率は2.1%、世界で129位、OECD加盟国37カ国の中で最下位。韓国は7.1%の世界98位、日本はミャンマーの3.2%よりも低い。
緊急事態宣言3回目になって、大慌てでワクチン接種の大号令、だが対策はドロナワで混乱を招くばかり。医療従事者への先行接種すら終わらず、1回でも接種を受けた高齢者は1%程度にすぎない。
 接種の遅れや政府の対応に、楽天・三木谷社長も東京五輪の開催は「自殺行為だ」と声を上げる事態。さらに専門家の怒りも爆発、1道2県に緊急事態宣言が追加発令された。

急きょ防衛省が東京・大阪に設けたワクチン接種大規模センター、17日から予約を受け付ける。自衛隊の医官・看護官280人が中核を担うとはいえ、会場の衛生保持のノウハウがないので、結局は民間3事業者に計36億8千万円で委託する。
 大手町の東京会場は「日本旅行」と約19億5千万円で、中之島の大阪会場は「東武トップツアーズ」と約9億7千万円で契約し、会場運営などを委託。民間看護師1日200人の確保は、人材派遣会社「キャリア」と約7億6千万円で入札契約している。
1日当たり東京で1万人、大阪で5千人へ認可申請中の米国モデルナ社製ワクチン接種を見込むが、どこまでスムーズに対応できるか予断を許さない。2重予約や異なる製造会社のワクチン接種による副反応の心配もある。
 さらに政府はコロナ・ワクチン確保のため、5120億円の追加支出を決定した。米国のファイザー、モデルナ、ノババックス3社から計2億5千万回分のワクチン購入に充てるという。だがその配分や使い分けは見えてこない。

変異株の英国型や南ア型に続きインド型の猛威が広がり、従来のワクチンが効くか不安が増している。ある研究機関の抗体検査によると、2回ワクチン接種した人の9割には、変異型の感染にも予防効果があるとのうれしい報告も発表された。
とはいえ「ワクチン狂騒曲」が終演するのはスズ虫が鳴く秋ごろと、予測する有識者の意見は無視できない。ワクチン接種のドロナワ対応のツケに他ならない。(2021/5/16)
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2021年05月09日

【今週の風考計】5.9─「シフト制・ギグ労働」の劣悪な事態を直ちに是正せよ!

3回目の緊急事態宣言が、またも延長。約束は守れず、出口は示せず、ただただ自粛と休業要請を押しつけるだけ。もういい加減にせよ。
 とはいえ筆者もまた“巣ごもり”に逃避し、市井の人々の苦しみや実態に、どれだけ目を向けてきたか、高見からの物言いに終わっていなかったか、忸怩たる思いや反省がつのる。
コロナ関連倒産は、この4月末までに1400件を突破。飲食業に限れば、この1年間で230件が倒産した。解雇・雇い止めも10万人を超える。完全失業者数は198万人、失業率2.9%、非正規労働者は2066万人に及ぶ。

ここにきて、一定期間ごとに仕事日を決めるシフト制で働く飲食店従業員やデリバリーらが立ち上がった。休業手当の適用拡大や最低シフト保障などを求めて、厚労省に要請書を提出した。
 理由は、政府の休業要請に対応するとして、会社が一方的にシフトカットを進め、シフトが未確定を理由に、本人に休業手当を支払わないケースが増えてきているからだ。
 これまで厚労省はシフトが未確定の期間は、会社には休業手当を支払う義務はないとしてきた。この是正を求める要請だ。
昨年7月、「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」が創設され、コロナを理由とする休業には、8割の賃金補償がされる。だが会社は休業手当を払う範囲が広がると、将来的に困るので申請したがらない。政府から支給される休業手当金なのに、それをもらわず犠牲だけをシフト制労働者に強いている。

その結果、統計上には表れない「実質的失業」「隠れ休業」とも呼ぶ「見えない失業者」が146万人となった。雇用関係はあっても仕事が激減のシフト制勤務の非正規労働者が、この状態に陥りやすい。
 「完全失業者」198万人、「休業者」244万人、「見えない失業者」146万人、これらを加算すれば失業率は2.9%どころか、6%に上るのは間違いない。

さらに「ウーバーイーツ」が、料理などをデリバリーする配達員への報酬を、3割も削減する新体系を10日から全国に拡大する。しかも報酬の基準・内訳が示されず、「1回の配達が100円台」「距離にかかわらず一律300円」といった事例が頻発している。
 「ウーバーイーツ」の配達員は、いわゆるギグワーカーと呼ばれ、会社と雇用関係にある労働者ではなく、個人事業主扱いにされる。そのため労働法や最低賃金が適用されない上に、解雇に関する制限もない。
また会社の福利厚生や社会保険制度が使えず、事故にあっても労災保険すら適用されない。まさに会社にとって低報酬で好きなように働かせられる「捨て駒」として、位置づけられているのが実態だ。
 米国バイデン政権が進める「PRO Act」法案、すなわちギグワーカーなどの労働組合結成や労組活動を促進し、生活水準向上を目指す労働法改革が、日本でも急がれる。(2021/5/9)
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2021年05月02日

【今週の風考計】5.2─小惑星「リュウグウ」の石に有機物が含有!

地上から約400キロメートル上空に建設された巨大な国際宇宙ステーション、日本の上空を光りながら横切る航跡は、肉眼でもとらえることができる。
その船長に宇宙飛行士の星出彰彦さんが就任した。日本人としては2人目だ。1周約90分のスピードで地球を廻りながら、地球に帰還するまでの6カ月、実験・研究、地球や天体の観測などの指揮をとる。この観測を通して未知の領域に迫り、新たな成果を積み上げてほしい。

ここにきて中国も29日、独自の宇宙ステーションのコアモジュール「天和」を打ち上げた。来年には総重量約66トンのT字型の施設になる予定だという。完成から10年以上の寿命を持つ計画で、3名から最大6名までの宇宙飛行士が6カ月間滞在できる。
 3年後に国際宇宙ステーションが退役した場合、これに代わる唯一の有人宇宙施設になる。中国政府は2030年までに米国と並ぶ「宇宙強国」となる目標を掲げ、今年6月には火星に無人探査機を着陸させる予定だ。

宇宙の覇権争いにならぬよう、科学者の国際的な協力や責任・良心に期待するところが大きい。まだまだ宇宙の謎は尽きない。その解明に向けて、日本の宇宙科学者が積み上げてきた成果も見逃してはならない。
 昨年12月、日本の宇宙探査機「はやぶさ2」が、地球から約3億キロメートル離れた小惑星「リュウグウ」から、小石や砂を採集し持ち帰った。打ち上げから6年の旅路を経て、もたらされた試料の解析が進んでいる。
とりわけ有機物に富む天体とみられる小惑星「リュウグウ」は、直径900メートルの“おだんご”のような球形で、表面は黒っぽく、地球と火星の間を公転する軌道を、7時間半ほどの自転をしながら動いている。
 また30万年〜800万年前のある期間に、現在よりも太陽に近づく軌道にあり、太陽光に焼かれて表面の物質は赤く変化し、表面の物質分布の状況が火星に似ているという。

このほど宇宙航空開発機構(JAXA)は、小惑星「リュウグウ」から採集した石に、さまざまな波長の光を当てて観察したところ、吸収光の波長から炭素を含む有機物や含水鉱物の特徴を確認した。
 また小惑星「リュウグウ」の石に、波長の長い光を当てると、最大で直径3ミリ程度の色が異なる粒子が発見された。こうした粒子は含水鉱物の特徴を示し、小惑星「リュウグウ」の成り立ちに迫る鍵ともなる。
太陽系が誕生した約46億年前の様子を知る手掛かりを得るのはもちろん、小惑星「リュウグウ」の有機物が、どうやって地球にもたらされたか、そのメカニズムが分かれば、地球上に存在する海水や生命の起源を探ることにもつながる。さらなる研究の成果に期待がつのる。(2021/5/2)
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2021年04月25日

【今週の風考計】4.25─コロナ禍の陰で目白押しの「悪法」、拙速採決を許すな!

▼3度目の緊急事態宣言が発せられた! 国民が対応に追われるなか、国会では6月16日の会期末をにらみ、目白押しに並ぶ問題法案の拙速審議や強行採決への策動が強まっている。政府が提出した法案は63本、そのうち3本以上を束ねた法案が26本に上る。
デジタル監視法案─新規に制定する法案4本と59本の関連法案を束ねる法案1本を加え、すべて一括審議するという乱暴な国会運営が進んでいる。
 それもデジタル庁を9月に設置したいがため、衆議院では27時間の拙速審議を強行、かつ28項目の付帯決議を付けて6日に衆議院を通過させるや、14日から参議院で審議入り。連休明けには強行採決に持っていく構えだ。 
▼そもそもこの法案、個人情報を企業や政府などが、本人の同意も得ずに利活用できるようにするのが狙いだ。憲法が保障するプライバシー権を侵害し、個人情報の恣意的な利用、さらには国が一元管理し、国民監視のツールとして悪用する危険が、きわめて大きい。

入管法改正案─16日から審議入りしたが、その内容が問題だ。この3月には名古屋市の入管施設で体調が悪化した33歳のスリランカ人女性が死亡した。また在留資格を失い強制退去の不安にさらされる人の中には、過酷な労働を強いられた技能実習生、学費が払えず退学を余儀なくされた留学生もいる。
 さらに難民申請を3回以上行った申請者は強制退去の対象となる。日本は難民認定率が極端に低い。年間0.4%、50人に満たない。ドイツや米国は25%以上の認定をしている。この法案は移民・難民の排除につながり、「国際的な人権基準を満たしていない」と指摘されている。

75歳以上の医療費・窓口負担2倍化法案─単身で年収200万円〜383万円未満、あるいは夫婦ともに75歳以上・年収合計320万円以上の該当者は、医療施設での窓口負担が1割から2割となり、合計約370万人が自己負担は2倍になる。
 負担増は年間で2万2千円と試算される。年収が383万円以上の高齢者はすでに3割負担だ。とにかく老人保健制度の国庫負担が35%では少なすぎる。せめて45%に戻すべきだ。
 
改憲手続法・国民投票法─自民が5月6日に採決を提案。トンデモナイ。コロナ感染拡大を受けて、菅首相を初め「緊急事態条項の創設」を求める声が大きくなっている。しかも、これを機に改憲へもっていこうとは、まさに火事場泥棒″ではないか。
 政府のコロナ対応の失敗を憲法の不備にするのは、御門違いも甚だしい。十分な補償や抜本的な検査拡大に全力を挙げれば、憲法を変えなくても対応できる。
 まず多くの国民は、憲法改正論議など望んでいない。やってほしいのはコロナ対策であり、私たちの命と生活を守る施策であり、公文書改ざんや官僚接待、さらには「政治とカネ」で地に堕ちた議員モラルを正すことだ。
 まずは広島・長野・北海道の選挙結果を、よく汲みあげるのが先。(2021/4/25)
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2021年04月18日

【今週の風考計】4.18─トリチウム汚染水に潜む深刻な未解決問題

ついに政府は、「3・11フクシマ」原発の汚染水を、海に放出する方針へと舵を切った。いま福島原発には処理水タンクが約1000基(容量137万トン)、すでに貯蔵量は125万トン、9割を超え1年後の秋には満水になる。これ以上タンクの増設は敷地の確保も含め、限界だとして海洋放出するという。
トリチウムは体内に取り込んでも排出しやすく健康被害は起こりにくい、海外でも原発から出る「トリチウム水」は海へ放出され、問題ないと、政府は主張している。

だが福島原発の汚染水は、トリチウム以外の放射性核種が見つかった経過がある上に、通常運転の原発から排出される処理水とは性質が異なる。
 通常の原発から海に放出される「トリチウム水」は、無機トリチウムのため、魚は摂取しても、どんどん排出するため、生体内半減期は12日と短い。
 福島原発の「トリチウム水」は、はじめは無機トリチウムでも、時間の経過とともに、タンク内の微生物に取り込まれて有機結合型トリチウムに変化している。これが海に放流されると、魚が栄養源として摂取し体内に蓄積される。
この有機結合型トリチウムの濃度は、海洋にある有機物の百万倍にもなる。生体内での半減期は40日から1年に及ぶ。国内や海外の原発から放出される「トリチウム水」とは、全く違うのだ。

福島原発の処理水に含まれるトリチウムは、総量が約860兆ベクレル。それを年間の放出水準22兆ベクレル以下、すなわち処理水1リットル当たり1500ベクレルまで薄める再処理をして海に流す。
 タンク1基分1370トンを再処理・希釈するには、なんと500倍の68万トン、原発敷地を埋めるタンクの半分500基分の海水が必要となる。そして1年間に3万1000トンの処理水を、40年かけて海に流すのだ。
海水で薄めて海へ流す? いくら薄めたってトリチウム全体の放出量は変わらない。海にはそれ以上の排出先がない以上、海や魚に累積され海の生態系を汚す。

その間、福島原発から1日140トンの汚染水が発生する。タンクに貯蔵するしかない。40年たっても住めない土地だってある。そこの地権者と話し合って、タンク設置用の土地を取得することも可能だが、検討すらしない。
さらには40年もあれば、半減期12年のトリチウムは、大幅に減衰する。トリチウム除去の開発も進むだろう。なぜ海への放出を急ぐのか。
 しかも肝心の汚染水の発生をゼロにする道のりが見えてこない。汚染水の発生元である原子炉内デブリは、なんと880トン。人も近づけない高レベルの放射線量が壁となり、取り出す見通しすら立たない。

漫画家・やくみつるの風刺絵(朝日・4/17付け)ではないが、過去のいざこざをなかったこととして和解することを、<「海」に流す>と書いた子供が、「ちがうの? ニュースで言ってたのに」と、ぶつぶつ母親に言うのを笑えない。本当に原発汚染水の処理を、「水」に流してはいけないのだ。(2021/4/18)
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2021年04月11日

【今週の風考計】4.11─コロナ「まん延防止」と大阪・吉村府知事の破綻

ついに政府は「まん延防止の重点措置」を6都府県に要請せざるを得なくなった。緊急事態宣言の解除から1カ月も経たない。
 すでに大阪、兵庫、宮城は5日から、続いて東京、沖縄、京都が12日からの実施だ。さらに地方の各県へと広がるのは確実。
期間は、東京が5月11日までの30日間、京都と沖縄は5月5日までの24日間。飲食店の営業時間を午後8時までとし、不要不急の都道府県間の移動も、極力控えるよう促す。
 だが緊急事態が解除されたかと思うと、今度は「まん延防止」、しかも自治体によっては対象外の地域もあるから、混乱ばかりでなく「コロナ慣れ」など緊張感は薄れるばかり。「まん延防止の重点措置」で、感染拡大が抑えられるのか、不安は尽きない。

ここにきて連日、テレビや新聞各紙は、トップにコロナ変異株を取り上げ、その特徴を解説し感染拡大に警鐘を乱打している。
 英国由来のコロナ変異株が猛威を振るっているからだ。従来株と比べて感染力が1.32倍も強い。南アフリカ型やブラジル型なども加え、変異株感染者が日本全体で1040人を超える。5月1日ごろには変異株の割合が7割になると言う。
 だが変異株の監視強化に必要な陽性者に対するスクリーニング検査は、全国平均32%、目標の40%に達していない。先が思いやられる。

それにしても大阪府の感染者数の急拡大は異常としか言いようがない。8日の新規感染者数が905人、9日883人、10日は過去最高の918人と続く。
 これも吉村知事が経済を最優先したいがために2月末に下した、緊急事態宣言の前倒し解除が招いた結果だ。この7日には、2度目の医療非常事態宣言を出したものの、すでに病床運用率は重症患者用で9割を超えている。
 整備費約37億円を投じ、確保病床60床・設置期間2年の「大阪コロナ重症センター」も、昨年12月中旬にオープンしたものの、その後の医療従事者の確保が困難で、やっと14床ほどが機能しているだけだという。

そこに加えて、驚くなかれ、3月初めに吉村知事は、大阪にある最大236床の重症病床を150床まで減らすよう医療機関に促していたことまで明らかとなった。これでは医療崩壊が起きるのも当然だ。
 こう見てくれば「維新の会」橋下・松井・吉村知事が続けてきた、新自由主義による地域医療システムの改変による人災なのは、明らかではないか。
吉村知事 よく耳を傾けよ! コロナ変異株が拡大する中、オール大阪で力を発揮すべき時、二度も否決された大阪都構想を焼き直す、府・市の広域行政一元化プランに執着し、これ以上地域医療をないがしろにするのはよしなさい。(2021/4/11)
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2021年04月04日

【今週の風考計】4.4─最高裁 孫の世話に励む祖母の「監護者」申し立てを却下!

■誰しもオヤッと首をかしげたのではないか。娘の離婚で長い間、孫の親代わりをしてきた祖母が、孫の世話をする「監護者」として申し立てた裁判に対する判決内容である。
 最高裁は「父と母以外は監護者の申し立てはできない」と、祖母の訴えを却下した。さらに別事案での「孫との面会交流」を求める申し立てにも、「父母以外には認めない」との判決を下した。
■とりわけ「監護者」の申し立てには、下級審の判断を覆し、裁判官5人全員一致の意見による判決とくるから驚く。
 1審の大阪家裁は、子供が母親の再婚相手を拒否しており、母親らに監護させれば精神状態が悪化する恐れがあると判断。同居している祖母に「監護者」を指定している。さらに2審の大阪高裁では、「子の利益のためなら、父母以外も申し立てができる」との判断を示していた。
 それもそのはず、「監護者」とは、未成年の子供と生活し、身の回りの世話や教育をする「監護権」を持つ人、と定義されているのだから、1審・2審の判決は極めて真っ当だ。

■子どもの福祉や権利、意思の尊重を第一に置けば、最高裁が民法上の規定にある第三者への権限移譲に神経をとがらせ、実情を無視した判決で却下するのは許されない。
 すでに家族法制の見直しを議論している法制審議会や有識者らの研究会でも、子への虐待が絡むケースや父母の監護能力が欠ける場合、祖父母に「監護者」の申し立て権を与えることなど提言している。それを最高裁は、なぜ踏まえないのか。
■また離婚したら子どもの親権は、父母のどちらか一人しか認めない、今の民法の「単独親権制度」をめぐる裁判も各地で起きている。つい最近、「共同親権」を求めて起こされた裁判で、東京地裁は「単独親権制度は憲法に反するとは言えない」との判決を下した。
 憲法上の平等な権利の保有に抵触しないか、またも古い家族観で議論を深めない判決には、大いなる疑問が湧く。とりわけ最高裁を始め各級裁判が、憲法判断を避けた判決を繰り返しているのも問題だ。

■2017年当時、安倍内閣に対し野党が求めた臨時国会の召集に、3カ月以上応じなかったのは、憲法53条に違反するとして提訴した裁判の判決が出された。これまた東京地裁は憲法判断をせずに請求棄却した。
 憲法53条は、衆参いずれかの総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は臨時国会召集を決定しなければならないと定めている。
 同種訴訟は岡山など全国3地裁で提起されているが、昨年6月の那覇地裁判決では、憲法53条の要求に基づく召集は「憲法上の法的義務だ」と明言した。だが召集の時期を巡っては憲法違反かどうか、その判断を避けている。
■このほど最高裁が下した、沖縄・嘉手納基地を発着する米軍機の夜間・早朝の飛行差し止め裁判への判決も、騒音への金銭的賠償は認めるが、肝心の騒音を発する米軍機の飛行差し止めは却下した。
 米軍の勝手放題な行動が、独立国家としての日本で許されるのか、深い議論もなく憲法判断を避けた判決を下しているようでは司法の独立が泣く。(2021/4/4)
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2021年03月28日

【今週の風考計】3.28─尖閣諸島をめぐる中・日・米の危ない軍事行動

沖縄県石垣市・尖閣諸島の周辺が緊迫している。中国は海警局の船舶に、武器使用を認める「海警法」を施行して2カ月、海上警備と称して尖閣諸島周辺の領海侵入をやめない。23日には中国海警局の船4隻が、1隻は機関砲のようなものを搭載して、相次いで領海侵入した。すでに今年に入って10回目となる。
 4年半前には中国公船が20隻以上、さらに400隻以上の中国漁船が共に押し寄せ、尖閣諸島の周辺を航行し、威嚇行動を繰り返した。漁船には退役軍人や漁民らで組織している「海上民兵」が100人ほど乗り込んでいたという。
国連海洋法条約など、沿岸各国に認められた権限を侵犯しているにも関わらず、中国国防省は「釣魚島(尖閣諸島の中国名)は中国固有の領土だ。海警局の活動は正当で合法だ」と述べ、領海侵入を正当化している。

一方、日本政府は領海に侵入した船舶に対し、海上保安庁の巡視船が行う「危害射撃」を認めるとの見解を発表している。船舶に銃口を向けず引き金を引く「警告射撃」と、乗員に危害が生じないよう注意しながら船体を狙う「船体射撃」に加え、相手に死傷者が出ることも想定して銃撃する「危害射撃」も可能とする。
「危害射撃」の要件は、あくまで正当防衛であり、相手が撃ってこなくても、領海侵犯だけで武器使用の要件を満たすのか。また不用意な「危害射撃」が、外国政府の船への「先制攻撃」と受け取られ、国際問題に発展しかねない。

さらに、ここにきて日本政府は、日米間の安全保障協議委員会(2プラス2)で合意した、尖閣諸島周辺の安全確保に向けた実践的な日米共同訓練の具体化を急いでいる。
 尖閣有事を想定した訓練には、米側は海兵隊と陸海空軍が参加するとはいえ、最前線に出て主体的に対処するのは自衛隊。米軍は側面から支援・補完する枠組みになる。その場合の実地訓練はどこでやるのか。
尖閣諸島のうち北東にある久場島と大正島は、日米地位協定に基づき、米軍が管理する演習場として提供されている。米軍が了承すれば、自衛隊との共同訓練に使うことが可能になる。
 沖縄では相次ぐ米軍機の低空飛行訓練も、尖閣情勢を念頭に中国の動きをにらんだ訓練、そして日米共同作戦への地ならしとみて、警戒を強めている。

この秋には陸上自衛隊が隊員14万人を総動員して、尖閣諸島周辺などでの有事を想定した、28年ぶりの大演習を検討している。沖縄に駐屯する第15旅団も参加する予定だという(「沖縄タイムス」3/23付)。いや増す緊迫に目が離せない。(2021/3/28)
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2021年03月21日

【今週の風考計】3.21─「直美」と「なおみ」の深い気持ちに心を寄せて

タレントの渡辺直美さんを「ブタ」に見立て、東京五輪の開会イベントに「オリンピッグ」なるキャラクターとして、登場させようというのだから呆れる。人の容姿を侮辱し嘲るルッキズムは「差別」そのもの。
 それを平気で舞台化する案をLINEに流したディレクターが辞任した。当然だ。
当の渡辺直美さんは、「私がブタになる必然性ってありますか?」と、目に涙を浮かべて語っている。
 「デブとか言ってくる人に屈したくないの。私のことは私が決める。人の見た目で、ものを決める時代じゃない」と言い切り、「同じようにコンプレックスに悩む人、乗り越えた人に…自分に自信を持って、自分のことを愛して欲しいし、自分のことを誇って欲しいと思う」と訴えている。
彼女は米国の歌姫ビヨンセのモノマネでブレイクしたが、その後、ファッションリーダーとしても支持を集め、SNSのフォロワー数は930万人を超える。3月いっぱいで日本のレギュラー番組を卒業し、4月から米国に活動拠点を移す。しかも契約した米国のエージェントは、ビヨンセも所属する会社だ。

ビヨンセといえば、大坂なおみ選手を挙げねばならぬ。昨年10月16日に、23歳の誕生日を迎えた彼女は、かねてから大ファンを公言していた歌姫ビヨンセから、バースデイメッセージをもらい大感激! あの強さの原動力にもなっている。
白人警官による黒人男性フロイドさん死亡事件を機に、人種差別や警察暴力に対する抗議の声を上げ、事件現場のミネアポリスにも出向いて抗議に参加した。
 その理由を語り、こう訴えた。「『人種差別主義者ではない』だけでは不十分だ。反人種差別主義者でなくてはならない」と。全米オープンでは、警察の手で亡くなった黒人の名前が書かれたマスクを着用して試合を続けた。
まさに「ブラック・ライブズ・マター」運動を牽引するスポーツプレイヤーであり、かつ「社会正義の活動家」とも呼ばれ、昨年の米国タイム誌<世界で最も影響力のある100人>の1人に選ばれている。
 意見すべき時は声をあげる芯の強さ、自信を持って自分らしく振る舞う姿、まさに「イケてる」とでも表現する格好良さ、素晴らしい。

今週は、人種差別と闘う人々との連帯週間である。1960年3月21日、南アフリカでアパルトヘイト反対を訴える平和的デモ行進に警官隊が発砲。69人が死亡したことから、21日を「国際人種差別撤廃デー」とし、それから1週間、世界中で人種差別の撤廃を求める運動が展開される。
 二人の「ナオミ」が提起した問いかけを、わが身に置き換え深く考え続けたい。(2021/3/21)
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2021年03月14日

【今週の風考計】3.14─コロナ禍のなか東京都は14病院を切り捨てるな!

コロナ禍が深刻を極め、感染力の強い変異株ウイルスまで広がっている。PCR検査や保健所への支援、病床の確保など地域医療の拡充は喫緊の課題だ。にもかかわらず都道府県が運営する病院を再編し、削減する動きが加速している。
厚労省は再編・統合する440病院のリストを公表し、病床削減に協力する病院には、全額国庫負担で補助金を出すという計画だ。
 さらに、この病床削減に対する支援給付金は、病床の稼働率が高いほど、すなわち地域に貢献している病院ほど補助単価が高くなり、高額の給付金がもらえるという内容には呆れる。公立病院ツブシじゃないか。

とりわけ東京都は、コロナ感染者が11万5千人と全国トップ、日本全体の25%を占めるのに、厚労省のプランを小池都知事自ら受け入れ、東京都が直接運営する14の病院を全て採算重視に切り替える。
 そのため地方独立行政法人に一括して譲渡する計画を発表した。今年度予算案には39億円もの準備経費を計上し、実行に移そうとしている。
まず人口1千4百万人の東京に、都立病院は8つ・公社病院は6つ、計14病院しかないのも驚きだ。大学病院を含め民間病院は650近くあるというのに、コロナ感染者の受け入れに積極的に応じたのは、この都が直営する14病院だ。なんと都が確保した病床4900の35%を占める。
 それも無理ないか。民間病院は採算重視で、コロナ感染者を下手に受け入れれば、経営が成り立たない。敬遠するのは目に見えている。

だからこそ民間病院では採算が取れない災害・感染症医療や救急医療、離島医療など、自治体の責任で行う「行政医療」は、都立・公社病院の重要な役割だ。だが都は予算の0.5%約400億円しか支出していない。
 都立病院は1879年(明治12年)に設立された長い歴史がある。赤痢・コレラなどの感染症、精神疾患、生活困窮者への医療機関として、「社会的弱者のために、その時代の最高の医療を提供する病院」として、地域の人々から大切にされ愛されてきた。

その病院を「独立行政法人化」すると、どうなるか。病院は「効率性」と「独立採算」が求められるため、あらゆる面で経費削減や医療の見直しが始まる。
 まずは病床の大幅削減、有料の個室病床へ切り替えたうえ使用料や差額ベッド代の引き上げ、入院保証金10万円の納入など、患者・利用者に負担を強いるのは明らかだ。
 さらに議会の監督機能・チェック機能が限りなく縮小されるので、特別室料・分娩料・診断書料など、都議会の審議なしに変更も可能となる。
病院は全て儲かればいいのか。神奈川県は早々と10年前に県立5病院を「独立行政法人化」した。ところがどうか。2018年度には25億1200万円の経常赤字を出し、繰越欠損金は94億6700万円に及んでいる。
 成功例とされた大阪でも、いま「独立行政法人化」病院の現場は、コロナ禍への対応で人員不足・医療体制のひっ迫、マスクや手袋、防護服の不足に悩む。
 <急いては事を仕損じる>の典型ではないか。小池都知事よ、これを教訓とし、コロナ感染対策に専念し、東京五輪の中止を決断するのが先ではありませんか。(2021/3/14)
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