2020年06月29日

【リレー時評】 「大阪都」・カジノ問題いよいよ正念場=清水正文

  新型コロナウイルスが拡大して以来、やたらとカタカナ表記の単語が多くなった。今まで聞いたこともないものばかりである。
 PCR(ポリメラーゼ・チェーン・リアクション)検査、クラスター、オーバーシュート、ロックダウン、ソーシャルディスタンス、パンデミック、そして東京アラートなど、テレビや新聞に頻繁に登場する。漢字・ひらがな表記のほうが分りやすいのではと思ってしまう。
 さて、一応「第1波」の感染流行が収まった地域もあるが、「第2波」がすでに始まっているといわれる地域もある。東京ではアラートが解除されて以降、40人を超える感染者が出ている日もある。
 このような中で東京都知事選が行われようとしている。小池百合子知事は再選を目指して立候補している。コロナへの対応では、かなりの評価を受けており、世論調査でも「大阪モデル」を打ち出した吉村洋文大阪府知事に次いで、2位の支持率である。立候補している宇都宮健児氏、れいわ新鮮組の山本太郎氏などとの選挙戦になる。
 大阪府の吉村知事も、コロナ対策では「はっきりものを言う」「頼りになる」と、府民からの評価は高い。しかしPCR 検査で重要な役割を果たすべき保健所を減らし続けてきたのは維新府・市政である。大阪市は24区あるが、保健所は今では1カ所しかない。
  大阪では知事選・市長選はないが、大阪維新の会が大阪市を廃止・分割するいわゆる「大阪都」構想の住民投票を11月に強行しようとしている。
 この住民投票は5年前に、すでに否決されたものであり、再び出してくること自体が、大問題である。新型コロナウイルス感染症の拡大で苦しむ市民への支援に全力をあげるべき時であり、「こんな時に大阪市をなくすのか」「不要不急の大阪市廃止の作業は中止すべきだ」という市民の声が挙がるのも当然である。
 6月11日には「都構想」の制度設計を話し合う「法定協議会」が開かれ、松井一郎市長は「一般のみなさんの不安・懸念はよくわかります」と言いながら、「長年議会にいるみなさんが『今ではない』と言うのは、非常に残念だ」と言って、あくまで11月に「住民投票」を行うことに固執している。
  また、大阪維新の会は2025年の大阪・関西万博の開会前に、カジノを中心とする統合型リゾート(IR)を開業しようと動いてきた。今回のコロナの影響で開業の時期を万博後にせざるをえなくなったが、吉村知事も「全面開業は1〜2年後ろ倒しになる状況だ」と述べ27〜28年度の開業に執念を燃やしている。
 コロナ対策で評価が高い吉村知事の影響で「住民投票」でも賛成票を投じる市民が多いのではないかとの見方もあるが、「都構想・カジノ」とは別という調査もある。「住民投票」そのものを断念させる取り組みはこれからである。
清水正文(JCJ代表委員)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年6月25日号

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2020年06月05日

【リレー時評】 近づく沖縄県議選 二つの大きな変化=米倉外昭

            米倉外昭201504.JPG
 新聞編集の現場では全国各地の注目選挙をどう扱うかで悩む。結果にもよるが、それなりの扱いをと考えている。しかし、ゲラを見てため息をつくことが多い。投票率があまりにも低いからだ。
昨年8月の埼玉県知事選は4野党が支援した大野元裕氏が当選した。投票率はやや上向いたというが、32・31%だった。
 与野党相乗りの現職が当選した2月の京都市長選は、共産とれいわ新選組推薦の新人が善戦したことで注目されたが、投票率は40・71%。前回を5ポイント上回ったという。そして、コロナ禍のさなかの4月26日投開票の衆院静岡4区補選は34・10%だ。
  地方の選挙でも、国政の行方や全国世論に新しい潮流が生まれるかどうかを占えそうな場合は注目される。しかし、はっきりしているのは、都市部の選挙では有権者の過半数、ひどい場合は3分の2強が投票に行かないという事実だ。
 沖縄県議選(定数48)が5月29日告示、6月7日投開票で実施される。県知事選に次いで、沖縄の進路を決定づける重要選挙である。
 沖縄県議会は現在、辺野古新基地に反対する玉城デニー知事の与党が25議席で過半数を維持し、野党14、中立6、欠員2という状態である。
 今回、二つの大きな変化がある。自民党が辺野古新基地容認を明確に掲げる。これまでの知事選や国政選挙、昨年2月の県民投票で示された辺野古新基地反対の民意が、どう県議選に表れるのか注目だ。
 もう一つは、県議会で4議席を有する公明党が立候補予定の4人のうち2人の出馬を見送ったことである。コロナ禍の中で選挙運動はできないという理由だ。自民党が狙っていた与野党逆転が難しくなったことは間違いない。
 沖縄の公明党の選択は、県政奪還より命が大事というもの。安倍長期政権の下で改憲などを巡り自公のずれが目立ってきている。自公連立体制の行方に影響を与える動きかもしれない。
 沖縄県議選の投票率は近年、かろうじて50%台を維持している。これ以上下がってほしくない。投票率を上向かせることも、沖縄の民意を全国、世界に示すために重要だ。
 新聞はじめメディアは、民主主義の根幹をなす選挙の投票率向上を使命としてきた。今回も、若い世代にも関心を持ってもらえる紙面にしようと努力している。
 しかし、若者の新聞離れと選挙離れは連動しているようだ。沖縄県選管の抽出調査でも、若い世代ほど投票率が低く、20代は40%を切っている。
 そんな中、今回、深刻なコロナ禍の中で新聞が熱心に読まれている。また検察官定年延長に反対する世論が大きく盛り上がっていることにも希望を感じる。正確な情報を、批判精神を持って伝える健全なジャーナリズムが復権するチャンスにし、選挙の投票率向上にもつなげたいものである。
米倉外昭(JCJ沖縄世話人)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年5月25日号

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2020年05月08日

【リレー時評】 「放送と通信の融合」で地域情報保護が課題=隅井孝雄

 NHKの番組がネット上で見られるネット同時配信(NHKプラス)が4月1日から本格配信を始めた。先立って、3月1日から試験的配信を行っていたが、一ヵ月の試行期間内に33万件の利用申し込みがあり、NHKはほくほく顔だ。
 主要民放キー局はこれまで、NHKの巨大化に警戒感を抱き、予算に一定の限度を設けるなど上限を主張してきた。ところがいよいよ迫った段階で、日本テレビなどキー5局が秋以降ネット同時送信を開始しようとしていることが明らかになった(2/12共同)。若者層のスマテレビ離れを食い止めるためスマホなどネットで見られるようにしようというのだ。
 ネット同時配信とは、テレビ番組を電波で送りだすと同時にインターネットにも配信するもので、テレビと同じ画像を同時に視聴できる。今までは放送とは別に個別の番組をユーチューブなどで送り出してきたが、今後はネットでテレビチャンネルそのものが視聴できることになる。NHKと民放が同時配信で足並みをそろえる。
 この結果「放送と通信の融合」が本格化することになるが、しかしローカルニュース、ローカル番組が置き去りにされるという問題が残る。
 今のところNHKプラスは受信料を支払っている家庭のみに限り午前6から午前0時までおよそ18時間の総合、ETVの番組をなにもかも丸ごとネット上で同時間視聴できるほか、追いかけ再生、一週間見逃し視聴もある。
 といっても東京を中心とした関東広域圏での放送がネット上に流れ全国で視聴されることになる。
 民放キー局で最も積極的な日本テレビの場合、午後7時から午後11のプライムタイムの番組をネットに流す計画だ。TBS、フジテレビ、テレビ朝日などでもプライムタイムに限らず、若者が多い深夜帯のドラマ、バラエティーなども配信対象と見ている。TVerという見逃し番組を見る仕組みと連動することになるだろう。
 テレビ放送とは別の視聴者の属性に合わせたターゲットCMをネット上に挿入、新しい収入源にしたいと考えているようだ。視聴者に当面、課金はない。
 民放の本格的送信は一番早い日テレは秋以降とされていたが、試験配信する予定だった東京五輪が消えたので、実施は繰り延べになるかもしれない。
 民放テレビが地方局とキー4局の組み合わせで全国ネットワークとなったのは1960年前後だった。それから60年にわたり地域の情報文化と全国的な情報文化を組み合わせたメディアに成長した。それが「放送と通信の融合」の完成によって、東京情報、東京文化一色になる。地方局は視聴率が低下するおそれにさらされる。
 NHKと民放キー5局に地域情報、地域番組をどう守るのか真剣に検討することを求めたい。
隅井孝雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号

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2020年03月26日

【リレー時評】コロナ猛威で出版界思いがけない事態に=守屋龍一

 新型コロナウイルスの感染拡大が、出版界にも思わぬ事態を引き起こしている。文学賞の贈呈式やイベントの中止だけでなく、「小中高の一律休校」以降、「小学生向けの学習参考書やドリル」「読みもの系児童書」への特需が勃発。「うんこドリル」シリーズは、通常の4倍を超える注文が殺到しているという。
 吾峠呼世晴『鬼滅の刃』(第19巻)が、集英社から初版150万部で刊行され、シリーズ累計4千万部を超えた。しかもコロナ肺炎の拡大が自宅での読書を喚起し、この2カ月で1500万部の売れ行き、今もなお品切れ店が続出。本屋の特設コーナーには1冊もなく、増刷に追われ、いつ入荷するかも不明だ。
 さらに出版社は、ここぞとばかり自宅待機の子供向けに電子書籍や旧刊漫画誌の無料配信を始めている。ゆくゆくは有料の定期配信へつなげたいのは目に見えている。
 2019年出版界の売り上げは1兆5432億円(前年比0・2%増)。だが紙版は4%減、電子版は24%増、出版社は電子書籍やネット配信などへシフトしている。
 紙媒体では週刊誌の落ち込みが激しく、「週刊現代」「週刊ポスト」は、月に3回刊の健康「旬刊」誌へ変更。高齢者向けだから、サラリーマン対象の地下鉄・JR車内広告は止めた。「週刊文春」「週刊新潮」はネット配信に傾注し、ページビューは2億、広告収入も急増。
 コミックや電子書籍が伸びて、集英社は前年の4倍98億7700万円、講談社は72億3100万円(前年比152・9%増)という 驚異的な利益を揚げている。
 この〈2強多弱〉の出版界に、コロナ脅威のおかげでネット販売が急伸しているアマゾンが、さらなる殴り込みをかける。2019年度アマゾンの日本売り上げは1兆7442億円(前年比15・7%増)。そのうち出版物の売り上げは3000億円と推計され、日本の出版物総販売額の約20%を占める。
 膨張するアマゾンが、出版物を出版社から直接仕入れ、取次・書店抜きで読者にネット販売する事業に乗り出す。今でも出版社との直接取引は、3631社(前年比689社増)に及ぶが、さらに拡大。かつ9カ所の物流拠点を増やし、「買切り」による廉価販売も含め、出版界の「アマゾン支配」へ拍車をかける。
 その余波で、日本の書店は、次々につぶれている。昨年650店が閉店し、今や1万800店、この10年間で最大の減少となった。大型書店の閉鎖も目立つ。昨年9月のフタバ図書MEGA岡山青江店1100坪の閉店、今年2月末にジュンク堂京都店とロフト名古屋店が閉店。状況は深刻さを増している。
  新型コロナの脅威で、にわか特需があるとはいえ、根本的な出版界の危機が、解消されたわけではない。
守屋龍一
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年3月25日号
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2020年02月21日

【リレー時評】気候変動に鈍感きわまりない小泉環境相=中村梧郎

 パリの地球温暖化防止会議。「化石賞」は再び日本に来た。小泉進次郎の演説は「具体性のかけらもない」と嘲笑された。
 小泉大臣は1月末、ベトナムでの石炭火力発電に反対だと突然ブチあげた。CO2問題で世界が日本を批判するからと。
 だがその真相に驚く。三菱商事によるブンアン石炭火力発電所計画は日本が融資するが、建設は中国や米国の企業が担うから(ウマ味がない)というだけのことなのだ。
 ベトナムは、福島を教訓に日本の原発を拒んだ。ならば石炭火力発電がお得だと、三菱、丸紅、住友が5か所の建設計画を進めた。温暖化批判に応えるというのなら日本はその全てを撤回すべきなのだ。インドネシアへの輸出もやめるしかない。
 より容易なのは進次郎氏の地元、横須賀での石炭火力計画をまずは止めること。そのうえで国内13基の停止、25か所で進む計画の破棄だ。
 ベトナムは日本の原発予定地だったニントゥアンを、太陽光と風力発電のメッカに変えている。

 おりしも1月17日、広島高裁は伊方原発3号機の運転禁止を命じた。原子力規制委員会の判断は誤りと。判決は、瀬戸内の中央構造線や阿蘇噴火の危険想定が過小だとした。伊方3号機は1月末、電源ミスで冷却が43分間止まる重大事故を起こした。12日には制御棒1体が7時間も炉から抜かれていたりもした。
 伊方原発は愛媛県・佐多岬にある。事故は真夜中でも起こり得る。電気のない暗闇で5千余の岬の住民は逃げ場がない。高齢者や病人はどうなるのか。福島では強い放射能で自衛隊が出動を躊躇、双葉病院の患者50人が死亡した。伊方は廃炉にするしかないのだ。
 アメリカの規制委は住民の避難路が不十分、となれば稼働を禁止する。一方、日本の規制委は「それは自治体の責任。住民避難には関知しない」という。再稼働を認めるだけの規制委。‶寄生∴マだとの揶揄も囁かれる。
 今後30年以内に80%の確率で発生する南海トラフ地震。首都直下地震もある。まさに地震大国日本なのに、3・11の苦痛を教訓としない。
 昨年、大飯や玄海、川内原発の稼働が先送りされた。対テロ施設である送水ポンプが未完成だから、との理由だった。だがこれも子供だましだ。テロリストの兵器は今や無人攻撃機。米軍はアフガンなどでの殺戮をこれで続けた。イランのソレイマニ司令官殺害も無人機のロケット弾だ。
 無人機を量産輸出するのは中国である。SIPRIによれば中国は世界第二の武器輸出国。中国航空工業集団がその主役だ。テロリストが無人機を入手して原発を狙えば核爆発を誘発しうる。「送水ポンプで安全」というのはほぼ幻想である。
 核兵器と原発、CO2は地球環境を危機に曝している。だが小泉環境相は事態を無視したままパフォーマンスばかり。それ結婚だ、妊娠だ、育休だ、にはもうウンザリなのだ。
中村梧郎

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2020年02月11日

【リレー時評】 「サンデーモーニング」新春特集は出色=吉原功

 1月5日、TBSサンデーモーニングは時間を延長して特集「幸せになれない時代―分断と格差 深まる世界」を放映。お笑いやオリンピック企画の多い新春番組の中で、現代社会を深く見つめた硬派番組として出色だった。
 特集は、チリ、フランス、メキシコ、香港などの大規模な街頭デモの様子を流したあと、「国民所得が上がっているのに幸福度は低下」している米国を、街頭インタビューを交えながら紹介。
そのなかで保守系ラジオのDJ A・ジョーンズの場面は衝撃的だ。「私は25年間、情報戦争で闘い、叫んできた」という彼の叫びはSNSやケーブルTVでも流れ、数百万人の視聴者がいるという。「トランプ大統領には民主党を脅かす独裁者になってほしい」「彼の番組は人生を変えてくれます。真実を教えてくれるからです」との声を拾う。
「情報戦争」という用語は日本右翼の「歴史戦」を彷彿とさせる。いずれも事実や真実は問題ではなく「勝つ」ことが目的。
 ドイツで急激に支持を広げている、経済格差に苦しむ旧東独に基礎をおく右翼政党AfDも同じく衝撃的だ。「ヒトラーは絶対悪ではない」と、かつて発言した党首は「我々が国境を守らなければ歴史的に価値の高い文化が破壊される」という。
 哲学者内山節氏は「どう展開するか解らない混沌の時代へ歴史は向かっている」という。番組はその主な要因に次の5点をあげる。
 「経済格差」「移民と難民」「人種差別」「民主化要求」「温暖化問題への対応」。これを受けコメンテーターの寺島実郎が<冷静終了後30年、民族・宗教・格差問題が吹き荒れている。とりわけトランプ政権下で株価が4割上がったが、金融経済の肥大化で、実質GDPの4倍を超すマネーゲームが展開され、その恩恵を受ける人と全く関係のない人のギャップが格差を生んでいる>
と核心をつく。
 資産上位26人の資産総計150兆円が世界の下位38億人の総資産に相当(オックスファム、2019年)するという、目の眩むような格差を生んだのはアメリカ起源の新自由主義と番組は指摘、トリクルダウンという喧伝はウソだったと指摘、このようなシステムを変えなければいけないと結論する。
 さらに、S・フロイトやE・フロムの「成長欲求」と「退行欲求」の葛藤理論を紹介しつつ、「いままでの成長の流れから退行の流れに歴史の逆行が始まった」「今は成熟拒否の世界」という加藤諦三氏の言を紹介し、さらに次のようなコメントを結論的に示す。「アメリカ・ファースト」も「EU離脱」も「軍事力拡大」も、「フェイク・暴言」も無意識の退行であり幼児化である。
 この特集は世界各地に取材し、街頭の人々にもインタビューしてその声を拾っている。番組制作費が削減されている民放局作としても評価できよう。NHKにのみ放送予算が集中している現在の構造を再編すべきときではなかろうか。
吉原功
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

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2019年11月28日

【リレー時評】「カジノ阻止、真っ当な大坂を」高まる反対運動=清水正文(JCJ代表委員)

 いま、全国でカジノを核とした統合型リゾート(IR)を誘致する動きがおこっている。政府は9月にIRの立地区域選定に向けた基本方針を公表、国内では最大3カ所で認めるとしているが、今まで「白紙」としてきた横浜市でも市長がカジノ誘致を表明。
 先行する大阪維新の会の府・市政が万博とセットで、大阪湾の埋め立て地・夢(ゆめ)洲(しま)にIRをもってくることにやっきになっている。観光庁の調査では、ほかにも北海道、千葉市、東京都、名古屋市、和歌山県、長崎県が誘致を「予定・検討している」と回答している。
 10月に行われた時事通信の世論調査では、国内誘致について「反対」が57.9%で、「賛成」の26.6%を大きく上回った。IRをめぐっては周辺の治安悪化などを懸念する声があり、慎重な意見が根強いことが浮き彫りになった。

 大阪ではこの万博を隠れ蓑にしたIRの誘致に反対する運動が、さまざまな形で取り組まれてきたが、10月22日には大阪市中央区で、「カジノあかん!夢洲危ない!ここで万博大丈夫?」と銘打った集会が開かれ、会場は800人を超える参加者で超満員となった。
 カジノ問題を考える大阪ネットワーク代表の桜田照雄・阪南大教授がビデオメッセージで、大阪府市は、近く実施方針を策定して事業者の公募を開始することを狙っているとし、「カジノ推進派の最大の弱点は、問題だらけの夢洲でつくろうとしていること。危険性を府民・市民に広げ、夢洲にも日本のどこにもカジノはいらないと訴えよう」と呼びかけた。
 夢洲の危険性については、田結庄良昭・神戸大名誉教授が、南海トラフ地震で想定される被害について講演、「津波は自動車並みの高速で押し寄せ、地震動の液状化で沈下した護岸を越えて、大きな浸水被害が出る」と警告。液状化によるインフラの破壊、コンビナートタンクの損傷・火災などを挙げて、「こんな危険なところで、解決方法もないのにカジノや万博をやるのはいかがなものか」と訴えた。

 各分野からのリレートークも行われ、石田法子・元大阪弁護士会会長は、「カジノは賭博場であり、暴力団も関与。ギャンブル依存症や多重債務者も増える。そういう環境が子どもの成育に悪影響を与える」と強調した。
 小川陽太・前大阪市議は、夢洲で想定されるカジノ客1500万人のうち、外国人は2割だけで、「標的は日本人、大阪周辺の一般市民だ」と指摘、誘致のためのインフラ整備は、地下鉄中央線延伸だけで540億円に上り、「復調の兆しが見える大阪市財政を、暮らしや防災、地域経済に充てるべき。カジノを阻止してまっとうな大阪を」と発言した。
 全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会の新里宏二弁護士が連帯あいさつ。和歌山市・長崎市・横浜市・苫小牧市や台湾で反対運動に取り組む市民団体からもメッセージが寄せられ、大阪でのカジノ反対の大きな契機となった。
posted by JCJ at 10:24 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月01日

【リレー時評】ネット情報への対応と新聞報道の危機=黒島美奈子(JCJ沖縄世話人)

 新聞はインターネットの情報とどう向き合うべきか。既存メディアにとって現代の命題とも言えるテーマに取り組んだ本が9月、沖縄県内2紙から相次いで出版された。
 沖縄タイムス社編集局著『幻想のメディア〜SNSから見える沖縄』と琉球新報社編集局著『琉球新報が挑んだファクトチェック』(ともに高文研)。どちらも2018年9月の県知事選を巡る「フェイクニュース」の背景を取材し、その軌跡をまとめたものだ。

 取材を担当した両紙記者によるトークショーが10月、那覇市内であった。そこで司会者にフェイクニュース問題を取材した理由を聞かれた両紙の記者が口にしたのが、県内の選挙報道で感じた危機感だった。
 県内では県知事選の7カ月前、同年2月の名護市長選からネット上にフェイクニュースがあふれ、あきらかにこれまでの選挙と違った様相を呈していた。「名護市が長年誘致してきたプロ野球キャンプを、市長選候補者の1人である現職が止めようとしている」。そんな情報がSNSを中心に広がりはじめたのは名護市長選の告示からまもなくのことだ。
 2月の選挙の争点は名護市辺野古への新基地建設の是非。20年前と変わらないが、大きな変化もあった。県内の首長選挙として初めて「18歳選挙権」が行使され注目を浴びていたのだ。

 その選挙で「若者の間でデマが拡散されている」とのうわさが市長選取材班の耳に届くようになったのは、選挙戦も中盤にさしかかったころだった。告示直後の有権者調査で大幅なリードが報じられた現職だが、このころになると劣勢がささやかれるようになった。そして迎えた投開票日。報道各社の当初予想を上回る票差で新人が勝利。
 この選挙を通して県内2紙をかつてない危機感が襲った。「有権者に正しい情報を届ける責任を、新聞は果たせていないのでは」。選挙後に沖縄タイムスの市長選取材班が寄せた検証記事にはいくつも「新聞の敗北」を語る言葉が並ぶ。名護市長選は、県内の多くの記者が選挙報道を見直すきっかけとなった。

 とはいえ長年培ってきた報道の在り方を変えるのは難しい。迎えた県知事選で沖縄タイムス編集局は部をまたいだ「SNSチェック班」を結成し、毎日決まった時間、デマやうその情報発信を監視した。
 ただ、その後の県民投票(2019年2月)や参院選(同年7月)では班を立ちあげず、ネット情報の監視は記者個人の「やる気」に頼っているのが現状だ。参院選では初めてネット上の情報の分析図を作成したが、従来的な選挙報道が解消されたとは言い難い。
 情報発信の在り方やツールは加速度的に変化している。本気で「正しい情報」を届けたいなら、新聞はもっと焦らなければならない。
posted by JCJ at 09:29 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月03日

【リレー時評】消えゆくAMラジオ、見過ごしていいのか=隅井孝雄(JCJ代表委員)

 総務省有識者会議は8月30日、民放ラジオ局がAM放送を打ち切ってFM放送へと転換する新たな制度改正を承認した。これにより多くの民放ラジオ局が早いところで2023年以降AM放送を打ち切り、FM放送に転換すると思われる。(NHKはAMラジオを継続する)。
 東日本大震災の際、ラジオ電波がテレビより、ネットより災害に強いことが実証された。そのため難聴地域対策、災害の補完対策として、2014年からAMラジオが同じ番組をFMで同時放送する「ワイドFM」(FM補完放送)が始まった。今年中には民放ラジオ全局がワイドFMを実施する。

 民放ラジオ局の多くはアンテナの更新時期が来ている。AMアンテナには広い敷地、50m~150mの高層アンテナなど多額の設備費が必要だ。それに比べFMアンテナは4〜5メートルの簡便な設備で足りるが山間部、遠隔地に届きにくい。しかしリスナーのラジオ離れや広告収入減から、経営悪化が進んで民放各局にはアンテナ更新や、AM,FM2波を送り出す2重の負担は難しい。簡便アンテナで、番組送出にも費用が少なくて済むFMに一本化することを望む局が多いのだという。
 北海道は例外としてAMが残るといわれている。広大な地域をカバーしているため、到達エリアの狭いFMでカバーするのは逆に困難だからだ。(AM波の到達範囲は7〜800km、夜間は海外にも届く。FM波は数10kmから最大100km)

 問題はラジオ文化にもある。AM局の主力は「ニュースとトークラジオ」だ。そもそも民放AMラジオは1951年、戦時中のNHK大本営発表の反省から、生まれ、民放第一号は新日本放送(現毎日放送)と名乗った。初期にはニュース報道で他のメディアを圧倒、トランジスタラジオという技術革新の助けもあり、テレビとも互角に勝負した。「子供電話相談室」、「オールナイトニッポン」、「パックインミュージック」で子供や若者に支持され、また45年の長期にわたった「秋山ちえ子の談話室」、「誰かとどこかで」(永六輔)などが中高年齢層とのつながりを広げた。
 ワイドFM受像機が普及していないという問題もある。アナログ放送が終了した後の一部の周波数(90.1MHz~94.9MHz)を転用している。そのためAM/FM兼用の古いラジオ(76MHz~90MHz)ではワイドFMの周波数が入らない。買い替えが必要だ。

 70年に近い歴史を持つAMラジオ文化を消してしまっていいのか、私は疑問を持つ。
年配層では枕元にラジオをおいている人が多い。AMラジオというコミュニケーション手段、文化の伝達手段を奪いさっていいのか。防災情報から断ち切られてよいのか。強い疑問を持つ。民放連と政府の再考を促したい。
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2019年07月09日

【リレー時評】年金問題、巨額な武器購入とも関連=吉原 功

 野党に脚光が浴びるのを避けているのではと疑念の声が高まっていた予算委員会が6月10日、参議院でやっと開かれた。4月4日以来実に2ヶ月ぶりである。議論の焦点は年金問題。
 2004年の年金改革時、与党は「百年安心年金制度」と喧伝した。ところが金融庁が6月3日公表した報告書はそれを真っ向から否定するような内容だった。野党が追求するのは当然だろう。
 同報告書は、2017年の家計調査に基づき「高齢夫婦無職世帯」(夫65歳、妻60歳の無職世帯)の月平均収支を算出。収入の9割は年金で20万9千円、支出26万4千円、毎月5万5千円の赤字は貯蓄など金融資産で補填という結果であった。20年後までに1300万円、30年では2000万円必要となるので資産を運用して自分で用意しなさい、というのが金融庁の結論だった。「人生100年時代」・少子高齢社会を迎えるにあたって「公助」は限界があるので「自助」で対処しなさいという内容だ。

 蓮舫立憲民主副代表は「100年安心とは嘘だったのか」と問い、大塚国民代表代行は「安心とは年金制度維持との意」と断じ、小池共産書紀局長は「大企業・富裕層優遇税制を改め低年金層の底上を」と要求した。
対して安倍首相は「嘘ではない」と反論。04年に約束したのは「所得代替率」50%であり、今は6割と強弁。「所得代替率」とは、現役世代の 平均手取り収入に対する年金支給率の割合のこと。「マクロ経済スライド」も適用し支給額を、賃金の伸び率0.6%を下回る0.1%増に抑制しつつ、プラスにできたと自慢した。04年に物価スライド制をやめ「マクロ経済スライド」を導入したことで「現在の受給者、将来世代にプラスになり、公的年金の信頼性はより強固になった」と誇ったのだ。
 翌11日、麻生副総理兼財務・金融担当大臣は金融庁報告書を「世間に著しい不安を与え、政府のスタンスとも異なる。正式な報告書として受け取らない」と表明した。前代未聞のことだ。麻生氏は報告書を「表現が不適切」と言ってきた。いったいどこがどのように不適切だったか。「マクロ経済スライド」は年金を抑制するシステムであり、受理を拒否しても報告書の指摘は概ね正しく制度を変えない限り「世間の不安」は消えないであろう。

 メディアはこの問題を比較的大きく取り上げているが、参議院選挙を巡る攻防という視点で捉えているように思える。年金問題、高齢社会問題を正面から深く把握し国民に提起すべきである。その際国家財政全体の問題として、小池氏が指摘する大企業・富裕層優遇税制とともに、輸出大企業を潤す消費税や最新鋭戦闘機F35、イージス・アショアーなど米国言いなりの巨額な武器購入なども考慮にいれるべきであろう。
posted by JCJ at 09:17 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月06日

【リレー時評】日本のメディアは連帯感が不十分だ=隅井孝雄(JCJ代表委員)

 昨年12月26日の内閣官房長官記者会見で東京新聞望月衣塑子記者が「辺野古に赤土が投入されているのは、埋め立てが適法に進んでいないことを意味するのではないか、政府としてどう対処するのか」と質問したことに対し、「事実誤認だ。埋め立ては適法だ」との官房長官答弁が行われた。その2日後、12月28日、上村秀紀官邸報道室長名の要請書が内閣記者会に対して発せられた。
「東京新聞の特定記者による事実誤認の質問や問題行動が繰り返されている、官房長官会見の意義が損なわれる」として、自粛を要望した。記者会側は「記者の質問は制限できない」と応じたという。

 特定の記者とは望月記者であることは明白であり、彼女の質問の封殺と、官邸記者クラブからの排除を意図したとみられる。これまでにも望月記者の質問に際して官邸報道室長が数秒ごとに、「簡潔にお願いします」と制止することが常態だった。
 この事実が重大な問題をはらんでいるとみた新聞労連が「首相官邸の質問制限に抗議する声明」(2/5)を発表したことで、官邸による言論封殺の動きが初めて明らかとなった。声明は「会見において質問をぶつけ、為政者の見解をただすことは、記者の責務であり、こうした営みを通じて、国民の“知る権利”は保障される」と表明している。声明をきっかけに朝日新聞、毎日新聞、共同通信、琉球新報、赤旗などが次々に記事にして問題が広がった。

 一連の報道を読んで私が思い起こすのは、昨年11月の米トランプ大統領とCNNジム・アコスタ記者の確執だ。昨年11月7日の会見で移民問題やロシア疑惑を追求しようとしたアコスタ記者から、トランプ大統領はマイクを取り上げて質問を封じ、記者証をも取り上げて、ホワイトハウスへの立ち入りを禁じた。
 CNNは「記者証取り上げに異議を唱えなければ公職者を取材する記者の熱意をくじくことになる」と表明した。アメリカの主要メディア(一部ネットメディアも含む)13社がCNN支持に立ち上がったが、その中には、トランプ政権支持の論調を持つFoxニュースが含まれていた。Foxニュース 社長ジェイ・ウォレス氏は「記者証を攻撃の武器とすることは認められない。自由な報道へのアクセス、開かれた意見交換を支持する」(2018.11.15)との声明を発表した。そして9日後、18年11月16日、ワシントン連邦地裁はアコスタ記者への記者証返還を命じた。

 官邸報道室長の内閣記者会への「要望書」は18年12月28日に出されたが、明らかになるまでに一か月以上かかった。また安倍政権寄りと見られている読売新聞、産経新聞は報道していない。アメリカと比べると、言論の自由、知る権利について、日本のメディアの連帯感が不十分であるために、いま一歩鋭さに欠けているのは残念だ。 
posted by JCJ at 11:44 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月02日

【リレー時評】正念場を迎える出版崩壊の危機!=守屋龍一(JCJ代表委員)

  1月7日、朝日新聞朝刊に掲載された、宝島社の見開き30段広告─「嘘つきは、戦争の始まり。」には衝撃を受けた。青空を背景に、油まみれで真っ黒な水鳥の嘴の先に、簡潔なフレーズが白抜きで刻まれている。
〈…陰謀も隠蔽も改ざんも粉飾も、つまりは嘘。/ 世界中にこれほど嘘が蔓延した時代があっただろうか。…嘘に慣れるな、嘘を止めろ、今年、嘘をやっつけろ。〉

  その通り! 出版界も例外ではない。ヘイト本やコピペ本、フェイク記事や事実も確認しない差別論文・寄稿の載る雑誌がまかり通る。
  直近では女子大生の尊厳を傷つける、扇情的な粉飾だらけの記事を載せた「週刊SPA!」(扶桑社)がある。昨年は「新潮45」10月号が典型だ。掲載された、安倍応援団の一人・小川榮太郎論文は、犯罪である痴漢を容認するなど、文字にするのも憚られる内容。「常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現」との社長声明で、休刊が決まった。しかし〈出版社の社会的責任〉についての説明は、いまだにない。

  百田尚樹『日本国紀』(幻冬舎)も、Wikipediaなどからのコピペ疑惑≠ェ、本文やコラムなどの記述に数多くみられ、剽窃ではないかと指摘されている。ネット上では広く知られているが、幻冬舎は沈黙、新聞・TVも報じない。

  こうした憂うべき事態にある出版界だが、もっと深刻な状況が迫る。昨年の年間売上げ1兆2800億円、1996年のピーク時2兆6564億円の半分以下。そこへ10月からは消費税10%の大波が襲う。
  出版物への軽減税率は適用されず、政府側は「有害図書排除の仕組みの構築状況などを勘案のうえ、引き続き検討する」という。この「有害図書」とは何か。その基準や「出版倫理コード」の導入をめぐり、議論が続く。

  深刻なのは、出版流通の実態だ。雑誌の落ち込みにより、取次の扱う業量が急減し、出版運送の採算割れで撤退の動きが強まった。慌てて運賃値上げしたものの、運送危機は回避できていない。
  流通改善に向け、日販とトーハンは、双方の物流拠点を相互に活用し、統廃合も視野に協業体制を強化する協議が始まっている。
  郊外の雑誌や書籍の出荷場では、ベトナム人をはじめ多数の外国人労働者が、劣悪な労働条件で働いている。仕事量も減り残業代も出ず、彼らの契約破棄、配置転換など、4月から施行される「入管法」にも関わる、深刻な事態が進んでいる。

  書店はどうか。デパートやスーパーに出店する大型書店も、高いテナント料などで赤字が続き、日販・トーハンに買収され、直営店化される事態が進む。しかもアマゾンが、再販制を無視した割引販売を、ネットで全国展開している。書店が倒産するのも無理はない。
  出版崩壊の危機に、どう立ち向かうか、私たちは正念場を迎えている。
posted by JCJ at 11:38 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月04日

【リレー時評】「元徴用工」判決 日本社会を逆照射=吉原 功(JCJ代表委員)

 韓国大法院(最高裁)は10月30日、元徴用工4人が新日鉄住金(旧日本製鉄)に対し損害賠償を求めた訴訟の、上告審で控訴審判決を支持し同社に1人当たり1億ウォン(約1千万円)の支払いを命じた。この判決が日本社会の現在を逆照射している。
 判決に対し安倍首相は「1965年の日韓請求権協定によって完全かつ最終的に解決している。国際法に照らしてありえない判断」と言い、河野外相は駐日韓国大使を外務省に呼びつけ抗議、「日本企業に不利が生じないよう、韓国政府が必要な措置をとるよう要求」した。テレビも政府に呼応して「異常な判決」を言い立て、「過激な労働組合を許しているから」とか「日本企業は韓国から引き上げよ」などと説明・主張するコメンテーターまででてきた。

 さすがに新聞はもう少し冷静だが、日韓関係を悪化させるものとする点では一致しているとみていいだろう。過去の植民地支配への反省、否むしろ認識の欠如、その犠牲者への無関心も、一部を除いて、共通している。
 日韓請求権協定は両国の国交正常化交渉に伴って結ばれたものだが、判決はこの点に関して次のように指摘している。「交渉過程で、日本政府は植民地支配の不法性を認めず、強制動員被害の法的賠償を根源的に否定した」、したがって「強制動員の請求権が協定の適用対象に含まれたとは言い難い」と。
 また原告は「朝鮮半島が日本の不法で暴圧的な支配を受けていた状況で、労働の内容や環境をよく知らないまま日本政府と日本製鉄の組織的な欺きにより動員され」徴用工になったのであり、「生命や身体に危害が及ぶ可能性が非常に高い劣悪な環境で、危険な労働に従事した」と説明している。

 一方、安倍政権は「徴用工」という従来の呼称を「旧朝鮮半島出身労働者」と言い換えはじめた。今回の原告は徴用ではなく「募集に応じた人々」だからだという。戦争による労働力不足を補うために朝鮮に労働力の提供を割り当て本格的な調達をはじめるのは39年からだった。確かに当初は「募集」、ついで「官斡旋」といい、国家総動員法に基づく国民徴用令が朝鮮に適用されたのは44年9月以降である。
 しかし、いずれにしても天皇制ファッシズム下のことであり、「判決」が指摘しているような「募集」状況、労働実態であったことに変わりはない。11月13日付東京新聞「こちら特報部」で田中宏氏が指摘しているように「労働者」という言葉は「企業と個人の自由な労働契約をイメージ」させる。戦時日本があたかも平時と同じような時代と思わせる戦略の一端であろう。

 韓国政府が認定した元徴用工は22万人いて、今後、提訴が相次ぐ可能性があるという。松代大本営の造営にも朝鮮から7000余の人々が動員され強制労働に従事させられた。その歴史館に来て「お金を払ったのだから問題ない」「強制労働とはいえない」という若者が多いと聞く。
 近現代についての歴史認識を正していきそれにふさわしい対応をしていかねば日本はアジアの孤児になってしまうだろう。松代の歴史を掘り起こし展示活動に寄与しているのは高校生・卒業生たちであることも付言しておこう。
posted by JCJ at 09:31 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月06日

【リレー時評】 道徳教科書に真珠湾での安倍演説が載る!=清水正文

 今年の春から小学校で教科としての「道徳」が導入され、授業が行われている。続いて中学校が来年度から導入される。現在、全国で中学道徳教科書の採択が行われており、結果が判明した。
 中学では8社が検定申請し合格した。その一つに今年度から新規参入した教科書会社「日本教科書」がある。安倍首相のブレーンの一人である八木秀次・麗澤大学教授(日本教育再生機構理事長)らが、2016年4月に中学の道徳教科書を出すために設立した会社だ。
 八木氏は同年9月に代表取締役を退任したが、その後任に『マンガ嫌韓流』などのヘイト本を出版する「晋遊舎」の武田義輝氏が就任。かつ日本教科書の所在地は、この出版社内にある。

 「道徳」の教科化そのものに大きな問題があることが指摘されてきた。国家が定めた徳目・価値観の押し付け、特に愛国心や伝統・文化を子どもたちに押し付ける内容が各社ともに目立っている。さらに、道徳の教科化にあたって文科省は数値による評価はしないとしてきたが、8社中5社が生徒に5段階で自己評価させる欄を設けている。生徒の内心を数値で評価させるものであり、愛国心などの価値観の押し付けが憂慮されている。

 とりわけ日本教科書の道徳教科書には突出した復古主義・国家主義的内容が含まれている。例えば、吉田松陰を登場させるために、中学生が陸上競技の走り込みで松下村塾の前を通る話を作ってみたり、新潟県長岡市がハワイと姉妹都市提携をして真珠湾で花火を打ち上げる「白菊」という教材の最後に、突然、安倍首相が行った真珠湾での演説を1ページにわたって載せている。
 自己評価についても日本教科書が最も露骨である。「礼儀を大切にし、時と場に応じた言動を判断できる心」「国を愛し、伝統や文化を受け継ぎ、国を発展させようとする心」「日本人としての自覚をもち、世界の平和や人類の幸福に貢献しようとする心」などを、4段階で評価させている。

 教科書の採択についても日本教科書は政治介入ともいえる策動を行っている。今年1月の教育再生首長会議の会合で、顧問の八木氏と代表取締役の武田氏の連名で「会社案内」とともに、市長宛に「御案内」なる文書を配布したことが明らかになった。
 「御案内」は「弊社に関する資料を同封したのでぜひご覧ください」と、市長が積極的に教科書採択に関与することを求め、「市長、教育長、教育委員の皆様に、直接ご説明の機会をおつくり頂きたく、ご検討賜りたい」と述べている。
 9月11日現在、全国各地での教科書採択について、現場の声を反映する公明正大な討議や採択を求める取り組みもあり、日本教科書の道徳教科書は、栃木県大田原市と石川県小松市のみ採択されたが、他では採択されていない。

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2018年09月06日

《リレー時評》翁長氏 民主主義を守る闘い貫いた=與那原良彦(JCJ沖縄世話人)

 8月8日に亡くなった沖縄県知事の翁長雄志氏への取材で、今も鮮明に浮かんでくるのは2013年の「オスプレイ撤回・東京要請行動」の銀座でのデモの時の唇を真一文字に嚙み締めている顔だ。デモの先頭に立つ翁長氏らに街頭から「売国奴」「琉球人は出て行けない」など口汚い罵声が浴びせられた。デモ後に「お疲れさま」と笑顔で声を掛けられたが、目は笑っていなかった。
 その騒ぎに目を向けずに普通に買い物をし素通りをしていく人々に、翁長氏は驚いたという。過重な米軍基地の負担に苦しめられる沖縄に対する無理解と無関心に直面した瞬間だった。

 翁長氏が膵臓ガンに侵されながらも、名護市辺野古への新基地建設反対を貫き、「あらゆる手段」を用い、建設阻止に命を懸けた。最後の切り札とされた埋め立て承認撤回を表明した7月27日の会見には病でやつれた姿で現れ、声を振り絞って「必ず撤回する」と訴えた。その12日後、生きる気力と体力をすべて使い果たし旅立った。理不尽な基地負担を拒否し、命を削るように、政府と対峙し続けた壮絶な人生だった。

 翁長氏を駆り立てたのは何か。「沖縄戦で軍事占領した土地に普天間飛行場を造り、そこが危険になったからほかの土地をよこせ、というのはおかしい」という怒りだ。そのやり方を「日本の政治の堕落ではないか」と迫った。子や孫の世代まで残る新基地建設を拒み、県民に勇気と誇りと自信を持ってもらいたいという使命感があった。沖縄だけではなく、日本の地方自治と民主主義を守る闘いであった。
 基地を抱える市町村長と意見交換した参院議員の1人は「本土が嫌だと言っているんだから、沖縄が受け入れるべきだろう」と発言した。米軍機の相次ぐ事故などが取り上げられた今年1月の衆院本会議の代表質問では、自民党の松本文明・内閣府副大臣(当時)が「それで何人死んだんだ」とやじを飛ばした。

 翁長氏は基地建設を強行する安倍政権だけではなく、本土側の無理解と無関心と闘った。承認取り消しを巡る法廷の場でこう陳述した。
「政府は民意にかかわらず、強行している。米施政権下と何ら変わりない。日本に地方自治や民主主義はあるのか。沖縄のみに負担を強いる安保体制を正常か」

 承認撤回表明後の3日間を調べると、社説で取り上げた全国紙・地方紙は10数社しか確認できなかった。関心が遠のく中、翁長氏の死によって基地問題がクローズアップされることになった。
 翁長氏が亡くなった日に届いたメールの一つには「政府に殺されたようなものだ」とあった。政府の強硬姿勢を許しているのは国民の無理解と無関心だ。その責任の一端は、ジャーナリズムの現場に関わる我々にもある。沖縄だけに基地を押しつける不条理が続くことは、「ジャーナリズムの堕落」といわれかねない。

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2018年07月06日

≪リレー時評≫ ひとり出版社から本の大切さを学ぶ=守屋龍一(JCJ代表委員)

  絵本『花ばぁば』(クォン・ユンドク絵/文)が、4月末に出版された。日本軍「慰安婦」にされた韓国人女性シムさんの物語である。彼女の好きだった花を、著者は水彩タッチで描き、全42ページを使って展開する〈恐ろしい話〉の絵の周囲に、今は亡き彼女の霊を癒すように散りばめている。
  声高に叫ぶのでなく、淡い色の滲む絵が、戦時性暴力に対する深い洞察へと昇華されていく。読後、熱き想いに浸された。
 この絵本を出版した、ひとり出版社「ころから」(東京都北区赤羽)を訪ねた。代表の木瀬貴吉さんは、
  「ある出版社でとん挫した翻訳刊行を、うちで手掛けることになったんです。だが多額な製作費の捻出に困り、今年の1月、製作費の一部をクラウド・ファンディングで募ったところ、開始から4日目で目標額95万円を突破、最終的には202人188万円の資金が寄せられた。お蔵入りの危機を救ったのは、日本の良心ある人達でした」
  と、述懐する。

  木瀬さんは、ピーズボードの事務局で15年、その後、出版社で3年修行し、2013年1月に「ころから」を起ちあげた。〈コロから車輪へ〉と発展するよう願っての命名という。
  2014年3月11日刊の加藤直樹『九月、東京の路上で─1923年関東大震災ジェノサイドの残響』が評判となり、今や6刷まできた。
  木瀬さんは「直に介入する官庁がない出版はフェアな業界、まず企画で勝負、資本の大きさではない」と言うものの、「『花ばぁば』を置いてくれる書店が極めて少ない」事態には、眉をしかめる。
  始業して5年、21点刊行、順調に進級している。

  一方、4月末、ひとり出版社「リベルタ出版」(東京都千代田区猿楽町)が、31年の出版活動に幕を下ろした。このほど代表・田悟恒雄さんの慰労を兼ねた卒業式≠ェ、後楽園「涵徳亭」で賑やかに行われた。
  田悟さんは大月書店の編集者を経て、イタリアのマルクス主義思想家アントニオ・グラムシ『獄中ノート』(校訂版)を翻訳刊行したく、1987年9月に創業。社名もイタリア語の自由=リベルタからとっている。
  だが最初に刊行したのは、前年に起きたチェルノブイリ原発事故がテーマの、ウラジーミル・グーバレフ『石棺─チェルノブイリの黙示録』。以後、年間ほぼ6冊、原発・環境・メディアを柱に約210点を刊行してきた。田悟さんは言う。
  「他人に迷惑をかけず、本カバーのPP貼りを止めるなど環境に負荷をかけず、ひとりでどこまでできるか、これを目標にやってきた」。さらに「出版とは自己実現の手段であり、人と人との出会いを媒介する重要な仕事。そこから生み出される豊かな関係は、カネで贖えるものではない」と。
  ひとり出版社の2人の歩みを聞かせていただくと、出版の大切さが身に染みる。
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2018年06月01日

≪リレー時評≫ 加計獣医学部 生物化学兵器研究も!? =中村梧郎(JCJ代表委員)

 4月30日はベトナム戦争終結の日だった。あれから43年が過ぎた。
 アメリカは、あらゆる残虐兵器と化学兵器・枯葉剤などを投入したあげくに敗北したのに、ベトナムでの教訓を学ばない。その後も不法な戦争の繰り返しである。トランプは英仏と組んで4月13日にシリアを急襲した。

 「アサドが化学兵器を使った」というのが理由だったが、証拠は示されない。前回の使用疑惑では死者の写真にとどまらず、毒ガスで死んだ羊たちの姿もあった。ところが今回は無い。米英から資金援助を受けてきた反体制派の防衛隊ホワイト・ヘルメッツが病院で子供らに水をかけて叫び、それを撮影して去った。その動画が流されただけだ。
 同じ反体制派の幹部でさえ「彼らへの支持を集めるためのでっち上げだ」と話した(ダマスカス=共同、東京新聞4/14)。ヘルメッツへの援助を米国は3月にうち切っていたのだ(News week 5/15)。

 それにしても、化学兵器を使い続けてきた米英仏に「シリアは非人道的」と罵る資格は無い。ベトナム戦争でアメリカはイペリットやVX、サリン、CSなどを用いて住民を殺してきた。地下壕に逃げた人々を皆殺しとするためにマイティー・マイトを使ってガスを噴き込みもした。
 第一次世界大戦で最初に毒ガスを使ったのも英仏と独だ。1925年に化学兵器禁止条約ができたが第二次大戦で各国は開発と生産を競った。日本軍が中国に遺棄してきた毒ガス弾による人体被害は補償もされないまま今も続いている。
 現在の禁止条約は97年にようやく発効したものだ。ところが「テロ防御」などの名目で各国は生物化学兵器を保持研究している。日本の陸上自衛隊にも化学科部隊があって、全国規模で陣容が強化されている。

 安倍首相の利益供与事件、加計問題は空前の醜聞だが、HAFFINGTON POSTの昨秋の報道は、さらに戦慄すべき事実を伝えた。国家戦略特区への獣医学部新設条件が、軍学共同の「生物化学兵器研究」の拠点作りではないか、というものだ。
 記事を寄せたのは池内了名古屋大学名誉教授。学部新設の石破四条件(2015年閣議決定)を分析している。感染症対策や生物化学兵器への対応など「新たなニーズ」を満たすことと、既存の獣医学部では対応が困難な、軍事的利用を学部新設の理由に、などが条件となると。七三一部隊とまでは言わずとも、軍人の獣医師養成…それが石破構想なのであろうか。
 加計学園が公表した「学部新設の目的」は動物実験による先端研究、人獣共通感染症の研究などを掲げている。それは将来、生物化学兵器研究に拡大する余地を残す。国家「戦略」特区とはそんな野望も含むのか。
 殺人AI兵器や無人機リーパーの日本への導入もとりざたされている。メディアによる調査報道を待ちたい。

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2018年04月28日

≪リレー時評≫ 読解力の劣化、民主主義の危機=吉原 功

 2月に刊行された『AI vs 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)という本の売れ行きが好調で20万部に迫る勢いだという。著者は国立情報学研究所の新井紀子教授。「ロボットは東大に入れるか」(東ロボくん)プロジェクトを率いた数学者だ。出版不況社会でこの「専門書」が多くの読者を獲得している背景はなんだろうか。毎日新聞4月17日夕刊「特集ワイド」がこの問に答えようとしている。
 「東ロボくん」が首都圏・関西圏の有名私大に合格できるレベルになったとの結果を得た新井教授は、「物事の意味を理解すること」ができないはずのAIがなぜ?と中高校生の基礎的な読解力を調査するためのテストを開発、実施する。その結果が「教科書を読めない子どもたち」の比率の圧倒的高さだった。

 テストの一例が紙面に紹介されている。「メジャーリーグの選手のうち28%は米合衆国以外の出身の選手であるが、その出身国をみるとドミニカ共和国がもっとも多くおよそ35%である。」という文章を読み、示された4つの円グラフからこの文章に適合的なものを一つ選ぶというかなり易しい問題だ。ところが正答率は中学生で12%、高校生で28%だった。同じ問題をTVバラエティ番組で今年度の東大入学者に資したところ正解率は52%だったという。新井教授ならずとも衝撃を受ける数字だ。
 誤答の原因は、問題文の「以外の」「のうち」などの語句を読み飛ばしているか語法が分かってないことにあるという。そしてこうした読み方はAIと共通しているというのだ。「日本の教育は、記憶力や計算力などAIによって代替えされてしまうような能力を伸ばす方向ばかり注力していた、ということなのか」と慨嘆する記者。読解力がないのは子どもたちだけではなく大人もということである。それはSNSや日常会話での誤解や曲解に、さらにはフェイクニュースが拡散していくことにもつながる。
 新井教授が民主主義の危機と捉えるのはそのためである。「民主主義は社会を構成する市民が<論理>を土台にして議論できる」ことを前提にしている。「読解力のない」人びとが多ければ多いほど「論理」は後退していく。国会でのディスコミュニケーションはそのことを典型的に示していよう。

 働き方改革のデタラメ資料、森友・加計学園・自衛隊日報問題など今国会での「論理のないがしろ」はひどく、倫理的にも許されるものではない。新井教授は、「自衛隊が活動している地域が非戦闘地域」という小泉純一郎元首相のトートロジーにはまだ冗談という空気があったが、今国会では「何がトートロジーか分からず言って」おり、「聞く方もトートロジーかどうか理解できない人が半分位になってしまったのでは」と懸念する。
 AI武器の開発も進んでいる。時代を読む力をもっと付けねばなるまい。

posted by JCJ at 10:03 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月29日

≪リレー時評≫ 「日韓反核平和連帯」の貴重な活動=白垣詔男

 一昨年10月に「日韓(韓日)反核平和連帯」という団体が生まれた。4年以上前に日韓両国の人たちが起こした「原発メーカー訴訟」の原告が中心となってできた組織だ。
 それまで、「原発訴訟」は「3・11東日本大震災」後、日本を中心に多く起こされたが、原発メーカーは賠償請求訴訟の被告にはなっておらず、被告は国と電力会社が中心だった。

 そこで、賠償を逃れている原発メーカーにも責任があるとして、日韓両国の人々が東芝、三菱重工、日立を相手に「原発メーカー賠償請求訴訟」を起こした。その原告らがつくったのが「日韓(韓日)反核平和連帯」で、日本側代表は福岡県在住の牧師・木村公一さん、韓国側は司祭の柳時京(ユシギョン)さん、事務局長は神奈川県在住の在日韓国人の崔勝久(チェスング)さん。
 日本側代表・木村公一さんはイラク戦争時に「人間の盾」としてブッシュ米政権のイラク攻撃に体を張って反対を表明したほか、過去にはキリスト教布教のためインドネシアに17年間滞在、インドネシアの従軍慰安婦問題にも積極的に取り組んだ。
 現在も「慰安婦問題」(日本軍≪性奴隷制≫)の歴史と被害者たちの声をユネスコ世界記憶遺産の登録申請のために国連連帯委員会インドネシア副代表としても活動している。

 「日韓(韓日)反核平和連帯」は、結成間もない一昨年10月27日、木村日本側代表、柳時京韓国側代表らが佐賀県唐津市を訪れ、使用済み核燃料貯蔵施設などを唐津市と玄海町(九州電力玄海原発立地町)への誘致しないように、また、玄海原発の再稼働に反対することを求める緊急要請書を唐津市長と同市議会議長あてに提出した。
 今年2月25日には、会員の金信明さんが昨年夏、韓国での会合後の食事中に病に倒れ、いまだに意識が戻らないことに対して同組織が主催して金信明さんを激励する集会が福岡市のプロテスタント教会であった。
その席には、金信明さんの親友、歌手・趙博さん(通称パギヤン)が駈け付け、会員や支援者ら50人以上が集まった。パギヤンは「アベ・イズ・オーヴァー」を歌った「浪花の歌う巨人」として知られる。

 その席で崔勝久事務局長は「会として、米国の日本原爆投下の賠償責任を問う裁判を米国で起こす準備をしている」と表明して注目された。原告には原爆被害者で現在韓国在住者の数人が名乗りを上げているが日本人はまだ誰も原告になっていいという人がいないので、今後、この運動を広めたいとも述べた。
 日本への原爆投下を裁判で問うことになれば世界的に注目されるとともに、米国民の多くからは強い反発もあると想像できる。「日韓(韓日)反核平和連帯」の今後の活動に親近感を寄せながら見守りたい。

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2017年12月28日

≪リレー時評≫ 最高裁の受信料制度「合憲」判決、公共性が問われるNHK=隅井孝雄

 NHKの現行の受信料制度について、最高裁判所は12月6日「合憲」と認めた。
 放送法は「NHKを受信できる設備を設置した者は、NHKと受信契約を結ばなければならない」としている。一方受信料の支払いは、NHKの内部規約だ。そこでこれまで「受信者はNHKの番組や経営姿勢に同意できない場合には、支払拒否もありうる」という解釈が有力だった。判決は「双方の意思表示の一致は必要だ」としながらも、「受信料は合理性、必要性がある」とした。NHKとっては追い風だ。

 1990年代の初頭、本多勝一『受信料拒否の論理』に触発されて、受信料拒否が注目された。2004年紅白歌合戦の制作費着服の発覚をきっかけに、不払いが広がり、2005年1月海老沢勝次会長が引責辞任した。収納率は低下、2006年度末までには63%まで落ち込んだ。NHKが不払いに対する裁判を始めたのは2006年11月からだった。
 その後、籾井勝人元NHK会長が、「政府が右というものを左とは言えない」と発言(2014年1月)、政府寄りの姿勢を見せたことから、市民の新しい運動形態として「籾井退任まで支払いを保留する」という動きで、一期での退任という結果となった。
 受信料訴訟のほとんどはNHKによる。だが奈良地裁では視聴者が「NHKは放送の公正を守っていない、放送法順守義務違反だ」として46人が集団訴訟している。

 現在、NHKはインターネットへの放送再送信を計画しており、受信料をデジタル機器所有者にも付加するかどうかが論議を呼んでいる。デジタル時代、変化する受信料環境に、最高裁は全く触れなかった。
 私が注目するのは最高裁判決が受信料の役割を述べている部分だ。
(受信料は)「特定の個人、団体、国家機関から支配や影響が及ばないよう、広く負担を求めた」。「憲法が保障する表現の自由の下、国民の知る権利を充足する」。

 現実はどうか。安倍第二次政権下で、政府主導のメディア操作、NHK御用化が進んでいる。「公正ではない放送を繰り返せば、免許停止もありうる」発言(高市元総務相、2016年2月)、国谷裕子キャスター退任(2016年3月)、「安倍首相の意向を代弁するレポートばかりだ」と批判される記者、秘密保護法、集団的自衛権、安保法制についてNHK報道が民放に比べて著しく不十分、などなどを視聴者は体験している。
 果たしてNHKは「国家機関からの影響が及ばない」、「知る権利を充足する」公共放送なのか、という疑問が市民、視聴者の間で広がっている。
posted by JCJ at 09:28 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする