2021年09月20日

【スポーツ】JOC、五輪検証を行うのが責務=大野晃

 危惧された新型コロナウイルス感染症の感染爆発と、強行開催で国民の批判を浴びた菅政権崩壊の中で、東京五輪パラリンピックが幕を閉じた。
  国民の競技参加の機会はさらに遠のき、コロナ禍対策の最重要な時期に政治空白をもたらした。五輪代表の無理やりの挑戦のおかげで、多くの国民がスポーツの場を奪われた事態を、異常開催を推進した日本オリンピック委員会(JOC)はどう考えるのか。
 国民スポーツの再建には、代表の意見を集約することなく開催に突き進んだJOCの総括が不可欠だ。 代表たちが「メダル獲得で感謝」で通用するのはテレビなど称賛したマスメディアに対してだけに過ぎない。
 代表の自覚は国民への責任でもある。スポーツ権を行使できるのは選ばれた者だけなのか。力を育んだ学校部活動などは停止に追い込まれ、地域スポーツの制限は強まった。
 無観客の競技会が当たり前になり、五輪代表を目指す環境条件は厳しさを増した。コロナ禍の影響ばかりでなく、五輪成果に一面化されたスポーツ行政により、一般国民の競技スポーツ参加は困難さに直面している。
 国民体育大会や全国健康福祉祭も中止され、さまざまな競技会が規制された。競技団体が結集するJOCは広く大きな国民スポーツに支えられて存在する。
 しかし国民スポーツの拡大、発展を重視してきたと言えるのか。JOCは広く国民に開かれた組織に変わる必要がある。まずは会議を公開するなど自立を目指した原点に帰って、東京五輪の全面的な検証に取り組まねばなるまい。
 政府に意見が言えないうえ、参画する国際オリンピック委員会(IOC)にすら、ものを言わないJOCでは、五輪代表を送り出す資格はない。バッハ会長を揶揄するなど、盛んにIOC批判を繰り返したマスメディアだが、足元のJOCのあり方に沈黙していたのでは、五輪報道の使命放棄と言うしかない。
 大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2021年09月17日

【スポーツ】子供らの競技離れ加速か=大野晃

 新型コロナウイルス感染症の感染急拡大の中で強行開催された東京五輪パラリンピックは、感染爆発を招いて閉幕した。
 命の危険が増大し、秋のスポーツシーズンは、閉鎖の瀬戸際にある。
 無観客の巨大国際競技会は、改めて特殊環境でなければ、トップ競技者の競技継続がむずかしいことを教えた。家族の全面協力や企業スポンサー支援、国の特別補助を受けることが条件であり、気軽に挑戦はできない。
 テレビ映像などで接するしかなかったことで、一層、競技スポーツを特殊で、見るだけのものと強く印象づけた。
 夏休み明けの学校新学期は、再開されても、分散登校やオンライン授業などで、友だちとの交流が大幅に制限され、楽しい部活動は停止されそうだ。
  競技に親しむ契機となる学校部活動の制限は、さらに、子供たちの競技スポーツ離れを加速させる恐れがある。コロナ禍で、夏の全国高校野球は大会中に2校、全国高校総体では24競技に74校の出場辞退が相次いだ。

  トップを目指す競技者の不安も大きい。1964年東京五輪は、競技を楽しむ草の根スポーツ発展の契機となって、70年代に、全国の地域や職場で、誰もが手軽に参加できる競技スポーツグループが拡大した。
 半世紀すぎて、2度目の東京五輪は、国民の広く大きなスポーツ参加のバネにはなりそうもない。三重国体や全国健康福祉祭も中止された。 コロナ禍の影響ばかりではない。
 東京五輪パラリンピック開催は、国民スポーツの拡大を目指してはいなかった。だから、新国立競技場などの新設、整備された大型競技場の大会後の利用策は、明確になっていない。
 国のスポーツ行政は、多くの国民のスポーツを軽視し、地方自治体も、観光客誘致のイベントばかりに熱心だ。 東京五輪パラリンピックは、国民のスポーツライフに何ももたらさず、重い税金負担だけを残した。
 国民のスポーツ権を重視するスポーツ行政に転換することこそ、日本スポーツの再出発には不可欠である。
 大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2021年08月19日

【スポーツ】いびつなメダル獲得策あらわ=大野晃

  異常五輪は、全国に新型コロナウイルス感染症の感染爆発をもたらした。
命の危険をメダル獲得が相殺するとでも言うように、テレビはメダルラッシュに大はしゃぎで、新聞は日本勢の競技ばかりに大きく紙面を割いた。
 コロナ禍で、海外代表が練習不足に追い込まれ、酷暑に悩まされる中での有利な条件下でも、日本代表のメダル獲得の内実は、5年前の五輪と大差なかった。
 獲得競技の極端な偏向が継続し、地の利は東京特薦の新競技に集中した。28競技306種目の前回から33競技339種目にも膨れたが、27の金メダル獲得のうち、24は、柔道、レスリング、水泳、体操の御四家計18と特薦3競技6が占めた。
 特薦競技を除けば3競技だけで、全競技の3分の1に満たない。58の総メダル獲得競技も、特薦競技を除くと前回から4競技増にとどまった。
 少ない競技で世界の頂点に挑む傾向は、21世紀に入ってから、ほぼ変わらない。

 人気の集団球技は、特薦競技で東京五輪後は消える野球とソフトボールで金メダルを確保し、女子バスケットが初めて銀メダルを獲得したが、他はほとんどがメダルには遠かった。
 開催国特権で全競技に出場した日本代表だが、政府主導のいびつなメダル獲り策では、広く多くの競技が発展する大きなバネにはならなかった。
 強引な開催は、日本代表を飛躍させることができず、世界新記録はわずかで、国際総合競技会としても、異様なほど低調だったことを示した。
 巨額な税金で整備された競技会施設を有効に利用するには、スポーツ基本法に基づく国民のスポーツ権を重視したスポーツ政策が不可欠である。
 マスメディアは、相変わらず日本勢の動きしか伝えず、世界が見えない鎖国的報道に終始した。映像観戦を強いられたファンが、会場などに詰めかけ、世界を知りたがったのは無理もない。
大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2021年08月12日

【スポーツ】五輪成績が競技の死活にぎる=大野晃

 東京五輪の異常開催とともに、全国の新型コロナウイルス感染症の感染が急拡大し、忌まわしい五輪の印象を一段と強めた。
酷暑もあって、海外の有力代表の不振が目立ち、途中で棄権も出る中で、日本勢のメダル量産が続いた。
 五輪代表は、無観客で、海外のライバルと交流することなく、ただ懸命に競技し、テレビカメラに語りかけた。
 2008年北京五輪以来、13年ぶりに五輪競技に復帰した女子ソフトボールで2連覇を達成した日本代表のエース上野由岐子さん(39)は 「あきらめなければ夢は実現する」と訴えた。
 五輪競技から、はずれた途端に、金メダル実績を無視されて、国の援助が激減した苦しさに耐えてきたからだ。
 鉄棒一つにかけて失敗した男子体操の内村航平さん(32)は「体操ニッポンを続けることが重要」と挑んだ意味を強調した。五輪成績が競技の死活を握ることを知っていたからだ。五輪経験豊富なベテランたちに明暗はあったが、その意気込みは、単に花道を飾ることではなかった。 競技支援の将来への不安を払しょくするためのようだった。
 国民のスポーツ権を保障するスポーツ基本法を、五輪至上主義に歪めた自民党政権の冷たさが身に染みるからに違いない。
 野球やサッカー以外のマイナーと言われる競技で、競技生活の継続がむずかしい環境が、ベテラン競技者の歯を食いしばっての挑戦を促したようだ。
 異常開催の政府を批判できない弱い立場で、4年に1回、ちやほやされて、失敗すれば打ち捨てられる。マスメディアのメダルラッシュの絶叫の裏で、厳しい現状に変わりはない。国民の命を大切にしない政府は、競技者も政治利用の使い捨てである。
 政府が後押しする柔道は、しゃにむに金メダル獲りに邁進し続けた。勝つことしか意味がないかのように。新競技などで躍進した若い新代表は屈託がない。五輪至上の重圧を経験せずに、楽しんできたからだろう。
 異常開催の東京五輪は、日本のスポーツ行政の異常さも、あぶり出す。
  大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2021年07月24日

【スポーツコラム拡大版】東京五輪の異常開催を許したマスメディア=大野晃

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 2021年東京五輪が新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)拡大を増幅する危険のある緊急事態宣言下で開幕。医科学専門家の警告を無視し、開催の是非を封じ込めて、暴走した政府、東京都と国際オリンピック委員会(IOC)。追従の日本オリンピック委員会(JOC)。マスメディアは異常開催をなぜ許したのか。経緯を追って重点的に検証してみる。


テレビ向け見世物ショー

 競技は、互いに敬意をはらう競技者の友情と協力で成り立つ。 世界中の競技者に、その精神を拡大し、競技者の団結と連帯を強めて、支援者やファンなど取り巻く人々も含めた絆を深めることで世界平和実現の基礎を固めるのが五輪の基本理念だ。 単なる競技会ではなく、人類の理想を掲げた平和の祭典である。
 ところが東京五輪では、多国間、多競技間の競技者や関係者同士、そして応援ファンとの交流が禁止され、行動の自由が制限され、公平な条件での競争が保障されず、安全が確保されないまま、競技者は無批判な参加を強いられた。
 これでは、眼前にある五輪は似非五輪であり、公正な国際競技会ですらない。テレビ向けの見世物ショーにすぎない。膨大な税金を負担させられた国民のほとんどは、他国で開催された五輪同様に映像観戦に限られた。
 しかも、世界中で命の不安を膨張しかねない、スポーツに名を借りた悪質テレビ番組と言っていい。万人が楽しめるはずがない。

経済活性化国威発情を狙う

 世界の競技者を目の当りにし、世界のファンたちと一体に競技を楽しむ五輪の平和な、お祭り騒ぎに胸躍らせる国民ファンは多い。半世紀以上も前の最初の東京五輪を経験し、近年、国際競技会の拡大で、国際的な和気あいあいとした雰囲気の体験が増えた国民には、五輪人気が根深い。
 それを利用し、自民党政権は、巨額な税金を投じて、バブル崩壊後の日本経済活性化の切り札とし、それによる対外的な国力誇示と国威発揚を狙った政治的、経済的国家事業とするために、五輪開催に動いた。(→続きを読む)
 

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2021年06月19日

【スポーツ】競技者とメディアに一石=大野晃

 女子テニスの大坂なおみさんが、全仏オープンで記者会見を拒否し、ルールにより罰金を科されて、大会を棄権した。
「精神状態を無視された」が会見拒否の理由だったが、大坂さんは謝罪し、大会主催者は改善策を協議するという。
競技者とメディア、そして競技会主催者の競技団体の関係に、一石を投じる事態だった。
 世界的な競技会の発展は、競技者と競技団体とメディアの三者の協力で発展してきたことを歴史は教えるが、競技団体とメディアによる競技会の商業主義的利用の拡大により、三者の関係が極度に歪んできたことを如実に示す事態である。
 競技団体は、メディアを通じて競技会の興行化を拡大し、メディアは競技者を商業利用して、競技者は多額の収入を得るようになった。
 競技会の本質的意義を重視して、互いに協力する信義とルールを尊重していたはずなのだが、歯止めのない商業主義路線は、時として、信義を踏みにじる行為に走らせた。
 競技者とメディアの関係は、これまでも問題をはらんできたし、記者会見では本音を語らず、SNSを通じて意思表示する競技者が多くなった。
 競技団体はメディアを宣伝媒体とみなし、実態を隠して形式的な対応をとり、取材制限は強まるばかりだった。

 その典型が、東京五輪に現れている。
 政治利用を狙う政府や経済効果を期待する企業利益が強力にけん引して、主催者の国際オリンピック委員会は、世界の安全に不安があっても、開催強行に動き、メディアは開催利益を求め続け、競技者は競技成果に執着する。
 それらが、五輪の意義を無視した、異常な開催を招いていると言えまいか。
 しかも、コロナ禍のオンライン取材の拡大で、メディアが競技者や競技団体の実態を把握しにくくなり、五輪開催を巡る事実確認は断片的にしか進まない。
 大坂さんの一石も、東京五輪開催も、スポーツ報道の本質的な問題提起である。
大野晃
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2021年06月15日

【スポーツ】 事前合宿 感染対策の実験台=大野晃

 「緊急事態宣言下でも東京五輪は開催する」と国民を驚かせたコーツ国際オリンピック委員会副会長の地元の豪州から女子ソフトボール代表が、五輪事前合宿の第1号として来日し、群馬県太田市で活動を始めた。
 日本のむし暑さなどに慣れるのが目的らしいが、開幕予定まで1カ月以上をかけて、検査漬けと隔離を特徴とする新型コロナウイルス感染症の感染対策の、不自由な実験台を思わせる。感染対策などで100を超える自治体が事前合宿断念を決めた中だけに、競技者に忍耐を強いる開催への実績作りにも映る。
 菅首相は、東京五輪開催の意義に関して、コロナ禍で二転三転したうえ、「スポーツの力を発信する」と競技会一般論に縮小させてしまった。これでは、巨額な税金を投じた大規模な五輪開催の国民的成果を期待できない。
  山下泰裕日本オリンピック委員会長に至っては、開幕予定まで50日を切っても、「安心安全な開催を信じる」と神頼み的発言を繰り返し、動揺する五輪代表の声に耳を貸そうとしない。そういえば、女性差別発言で辞任した森喜朗前組織委員会長は、「日本は神の国」発言で辞任した元首相だった。
  政府の感染症対策分科会の尾身茂会長は、「感染の世界的流行での開催は普通でない」と厳しく指摘した。 開催強行に科学的根拠が見出せないまま、政府の固執が、混乱に拍車をかけている。
 しかも、ワクチンの優先接種が始まった五輪代表たちは、開催の是非に沈黙を強要されているようだが、感染は自己責任と突き放されてもいる。多国間の競技者同士や応援ファンとの交流は規制され、公平な条件での競争が保障されず、行動の自由が制限されて、安全が確保されない競技会への、無批判な出場が求められている。
 五輪にとどまらず、一般的な競技会としても、異常な「2021年東京五輪」がスポーツ史に刻まれそうだ。
 日本スポーツの実情を、世界は注目している。常識外れの孤立を恐れる。
大野晃 (スポーツジャーナリスト)
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2021年05月22日

【スポーツ】五輪代表の意見集約を=大野晃

「緊急事態宣言は東京五輪開催と無関係」と、強気なバッハ国際オリンピック委員会会長は、五輪出場の競技者への新型コロナウイルス感染症ワクチン確保を発表し、優先接種を促した。しかし、五輪競泳代表の池江璃花子さんはSNSで五輪出場辞退を求められたと、悩みを訴え、陸上代表の新谷仁美さんは優先接種に疑問を投げかけた。
  国民の命を大切にしない開催強行と、多くの国民が不信を募らせる中で、五輪代表に動揺が広がっているようだ。
 懸命な努力の舞台やスポーツの力を示す機会などと競技者擁護が、五輪開催理由として強調される。しかし、代表の心情は複雑だ。ほとんどの代表が、国民と対立しての五輪を求めないようだが、開催是非の意見は伝わらない。
 代表の開催判断停止は、五輪をめぐる国民の分断を招きかねない。
 五輪は特別なスポーツの場にすぎず、開催できなくとも、スポーツ機会が消えるわけではない。関係者が、自主的に開催を決める大会であり、競技者第一が基本だ。五輪代表の自由な意見集約を保障しなければなるまい。
 日本オリンピック委員会は、1980年モスクワ五輪ボイコットで、それを怠った。苦い経験である。
代表は意見集約のために連絡を取り合い、五輪を招致した東京都や支援する政府に、コロナ禍急拡大でも開催する意義や条件を細部にわたって示すことを要求し、当事者として疑念を晴らす必要がある。
 希望的観測による感染対策がことごとく失敗しながら、甘い見通しの開催準備を示すだけなら、開催断念も辞さない覚悟で、議論を深め、意思表示すべきだ。海外代表の不安払拭に、ホスト競技者の責任がある。
  代表に影響を与えてきたマスメディアは、冷静な判断を促す義務がある。従順さを強要し、メダル獲得を煽るのは犯罪的だ。
  命の危険にさらされた人々を元気づけるなどと、傲慢な態度は代表の資格を失い、競技生活の将来はないだろう。
大野晃(スポーツジャーナリスト)

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2021年05月18日

【スポーツ】国民から嫌われた五輪=大野晃

  初夏のさわやかなスポーツシーズンを迎えながら、東京や大阪などで3回目の緊急事態宣言が出され、またも、プロ野球などの無観客試合や、スポーツ活動の制限が強要された。
  薫風が恨めしいスポーツ愛好者のもとに、心情を逆なでするような「緊急事態宣言と東京五輪開催は無関係」というバッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長の発言が届けられ、国民生活を無視した五輪開催かと、厳しい批判が巻き起こり、にわかに「五輪嫌い」が拡散したようだ。
  さまざまな競技の楽しさに触れ、世界の競技者の友好連帯の姿に、世界平和への期待を膨らませるのが五輪の根本的な意義なのだが、東京開催は招致段階から都民の賛同が少なく、経済効果ばかりが強調されて、盛り上がりを欠いていた。
  にもかかわらず、安倍前首相が主導して、巨額の税金を投じる国家行事にまつりあげ、多くのスポーツ関係者が軽視された平和とスポーツの祭典に懐疑は根深く広がった。
  政府の指揮下で準備が強引に進められたうえ、新型コロナウイルス感染症の再拡大が急激な中で、多くの国民に犠牲を強いる無謀な開催と映っても不思議はない。

 開催を強行すれば国民と対立する五輪になりかねない。 安全で安心な国民生活が第一だからだ。
 とはいえ、東京開催が中止されても、将来の五輪に期待を寄せる国民は少なくないだろう。
 五輪挑戦への国民の支持の継続を願うなら、五輪代表などの競技者や関係者は、開催国ホストとして、世界的な感染症まん延の危険が否定できない東京開催を、断念する勇気を示すべきだろう。世界の仲間も納得するはずだ。
 競技者が結集する日本オリンピック委員会(JOC)が、コロナ禍の深刻な状況に、何ら動きを見せないのはどうしたことか。
 政府に従うだけなら、独立性を自ら放棄することになる。
 1980年モスクワ五輪ボイコットの悪夢へ逆戻りするばかりだ。
  大野晃 (スポーツジャーナリスト)

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2021年04月19日

【スポーツ】五輪中止の時が来た=大野晃

 1年延期された東京五輪の開幕予定まで100日を切った。
都内の新型コロナウイルス感染症再拡大の勢いは強まり、関西圏など全国的な再拡大が急激に進んでいる。 ワクチン接種は遅れ、医療逼迫の危機が続く。
  組織委員会は安全、安心な運営を目指すというが、海外観客受け入れを断念しても、33競技が17日間に集中する大会の、国内観客の大きな移動は、感染拡大を助長する危険がある。
 しかも、感染拡大の収束を見せない諸外国の延べ1万人以上の競技者を受け入れて、検査漬けと隔離を特徴とする対策を徹底できる検査体制や関係人員確保の目途は立たない。
  無謀な開催が、地域の医療逼迫を増幅し、世界再拡大の契機となる危険を否定できない。
 国際水泳連盟は、東京での五輪テスト大会を延期し、国際競技連盟に開催への不信が生まれている。 北朝鮮が不参加を表明し、感染対策での不参加の拡大も予想される。
  世論調査などによれば、五輪を招いた都民の大半が、開催すべきでないと考えている。
 1年余の感染拡大防止策の失敗による再拡大の現状と、民意を重視すれば、都が五輪開催返上を政治決断する時が来た。
 代替開催の可能性はなく、国際オリンピック委員会(IOC)は開催中止を決定せざるを得ない。 
 無理は承知で、失政隠蔽や違約負担のために、都や支援の国が判断を避けて、IOCの決断に委ねるのは国際的な背信である。
 社会性や国際性を意識してきた日本の五輪代表や競技者は、国民に犠牲を強いる立場にない。世界の仲間と連帯して、公正な競技を続けるため、苦渋の決断の覚悟が必要だ。
 東京開催を推進した日本オリンピック委員会(JOC)は、競技者の意志を集約し、臨時総会を開催して、開催断念を表明し、都の決断を促すべきではないか。
  国民とともにある社会的、国際的責任だろう。 競技者や関係者が、自ら決断することこそ、将来の五輪とスポーツの発展を保障する。
大野晃 (スポーツジャーナリスト)

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2021年04月13日

【スポーツ】延長なしのプロ野球試合 スリリング=大野晃

 プロ野球が、9回で終了する延長のない試合で開幕した。1万人以下の観客制限で、拍手の応援に限られる。
  新型コロナウイルス感染症の感染拡大の収束が見られず、拡大防止策で、ナイターでも午後9時には終了することを目指したためだ。コロナ禍の2年目で、無観客試合は避けられたが、延長なしは試合内容に変化をもたらした。 試合終盤の攻防に緊張感が高まり、スリリングな試合が興奮を呼んでいる。
  勝ち切るには、リードを確実に守り切らねばならず、中継ぎや抑え投手の出来が左右し、リードされたチームは、代打攻勢などで引き分けに持ち込む可能性があり、監督の采配がむずかしい。
 接戦が続き、新しいスターの台頭が目立って、総合力の争いとなっている。それでも引き分けは増えた。
 高校野球でも、延長13回からは走者を置いて決着を急ぐタイブレーク方式が採用された。今年のセンバツ高校野球大会は、この方式と投手の1週間500球以内の投球数制限の新ルールで、1万人以下の観客制限で争われた。東海大相模(神奈川)が10年ぶり3回目の優勝を飾ったが、3人の投手陣など厚い競技者層を誇り、総合力を備えていた。 大会は、控え競技者の活躍が光った。
 テレビ観戦では、静かなスタンドは別にして、予断を許さぬ熱戦に、現実を忘れてしまいそうだが、感染症の陽性者が出て、プロ野球のヤクルトや巨人で主力の一部が欠場し、Jリーグでガンバ大阪の3試合やラグビー・トップリーグで1試合が中止になった。
  外国人競技者の来日の遅れなどもあり、コロナ禍が影を落として、正常化は見通せない。
 出遅れた政府の無策ぶりで、関西圏の感染再拡大により、甲子園球場の観客は5千人以下に縮小要請された。東京五輪の聖火リレーも、大阪府内の公道では中止され、スポーツの受難は続く。
  桜の季節は早まったが、国民の運動不足は深刻になってきた。積極的に、コロナ禍を克服するスポーツ界のリードが、さらに求められる。
 大野晃 (スポーツジャーナリスト)

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2021年03月18日

【スポーツ】 被災地逆なでの聖火リレー=大野晃

 東京五輪の聖火リレーが3月25日に関係者だけの静かな出発式で、密やかに福島県のJヴィレッジをスタート。
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策で無観客というが、まるで東日本大震災の被災地を刺激しないように、沿道の大きな歓声が制限される中を聖火が運ばれるようだ。
  大震災から10年たっても復興道半ばで、苦闘が続く被災地には、逆なでする「復興五輪」の宣伝に映りかねない。 被災地支援に動いてきた競技者たちを悩ませる。
 組織委員会によれば、121日間かけて全国859市区町村を巡る予定で、緊急事態宣言などが発令中の地域では、公道でのリレーを見送り、無観客の点火式だけ実施するという。
 しかし、東京周辺で開幕直前に公道以外を走る芸能人ランナーの走行場所確保など、調整は難航しているらしい。
 聖火リレーは、1936年ベルリン五輪へ向けてナチス・ドイツが始めたもので、五輪の政治利用の典型だった。しかし1964年東京五輪へ向け日本が盛大に催し、五輪の重要行事になった。
  筆者も高校生で参加した経験を持つが、五輪の理念や意義を学校で学び、平和の使者を気取って、誇り高く走ったものだ。
 半世紀がすぎて、辞退者が続出する歓迎されない行事に転じてしまった。
 学校や地域で子どもたちに、理念や意義がしっかり教えられることがなく、世界中から多くの人々が集まって交流する機会のない五輪では当然かもしれない。
 強引に政府などが強行する政治的行事が、国民の五輪開催機運に逆効果なのは間違いない。五輪そのものが歓迎されなくなる恐れもあり、競技者は追いつめられる。
 マスメディアは、政治利用を厳しく監視しながら、五輪の意義と競技者、応援する国民の関係を改めて問い直す必要があるだろう。 開催の相乗利益を狙って煽るだけでは、国民の不信を増幅させるばかりだ。
大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2021年03月09日

【スポーツ】ゲーム以外のスポーツ 楽しさイマイチ続く=大野晃

 緊急事態宣言下の2月20日に、ラグビーのトップリーグが開幕した。
 当初の1月16日開幕が、直前の検査で、新型コロナウイルス感染症に6チーム68人が陽性で1カ月延期されたが、5000人以下の観客制限で実施された。
 期間短縮で8チームずつ2組のリーグ戦と、下部リーグ上位を含めた20チームのトーナメント戦で王座を争う。
 2年前のワールドカップ(W杯)日本大会の熱気を再現し、来年からプロ化した新リーグへ移行するのに弾みをつける狙いの最後のリーグで、W杯で活躍した競技者が多数参加したのが特徴だ。
10人の新人を加え、王者・南アフリカ代表6人、3位ニュージーランド代表7人など、下部リーグも含めてベスト4など7代表計23人が顔をそろえ、日本代表とともに、初戦から高レベルのプレーを見せている。
  ニュージーランド代表を操り、W杯で人気を集めた世界一の技とスピードのバレットがサントリーの進撃に拍車をかけ、同じ代表の守りの要のスミスが神戸製鋼を支えて、W杯の興奮を呼び起こした。W杯人気沸騰で意気込んだところへコロナ禍に襲われ、世界的スターの手助けで、満を持しての開幕だが、観客制限では、プロ化の成否の予測が難しく、悩み多き挑戦である。
 
 プロ野球やJリーグでは、外国人競技者の入国制限に頭が痛い。
国内トップ競技の国際化が進む中で、逆戻りしそうな出入国制限は、東京五輪パラリンピックにも深刻な影響を与えそうだ。
  2月26日にはJリーグも開幕したが、無策の政府による長引く規制で、国内プロ競技の将来が見えにくい。 ラグビーの欧州6カ国対抗戦が無観客で開幕したが、一部延期。
 米国のバスケットは大幅な観客制限で開催されたが、正常化の見通しは立たない。コロナ禍の2年目に入って、競技者やファンは、先の見えない不安を一層高めている。
  一方で、スマホゲームの疑似スポーツが広がっているという。人間的なスポーツの楽しみは、危うさが続く。
 大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2021年02月19日

【スポーツ】 理念すら否定の五輪、開催は無理=大野晃

 森喜朗・東京五輪パラリンピック組織委員会長の女性蔑視発言は、五輪パラリンピックの理念を無視し、強引に大会開催を目指す組織委員会や東京都、国、さらには日本オリンピック委員会(JOC)の実態を露呈した。
 森会長の暴言に、抗議も辞任要求もしなかったことで、海外マスメディアなどによる国際的な批判を浴びている。
 国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は黙認したが、開催関係者による五輪理念の尊重がおざなりだったことを実証し、開催資格に大きな疑義が生まれ、3月のIOC総会に向け、女性が増えたIOC委員や競技者を送り出す各国オリンピック委員会の批判が高まるのは必至だ。
 元首相として10年以上も前からラグビーやサッカーのワールドカップや五輪を連続開催して活力ある日本を示す国家運動を推進してきた森会長は、実利優先で、理念は添え物程度の認識なのだろうが、それ自体が時代錯誤であり、曲がり角の五輪は、国際的信頼を確保するために、理念を重視せざるを得ない。

  性差別撤廃は最重要課題であり、女性参加を促進し、東京五輪全種目の51%に出場可能へと拡大した。
 にもかかわらず、中心的理念に敵対する考えを示すリーダーによる大会の運営は、コロナ禍であえて開催する意義の喪失につながり、競技者はじめ、支援ボランティアたちに、目標を見失わせる許しがたい暴挙である。 
  安倍晋三前首相の原発汚染水処理の欺瞞により開催権を搾取した疑念は消えず、コロナ禍の対応に疑問を抱かせる五輪開催が、理念にすら否定的では、開催は無理と世界は認識したに違いない。
  沈黙するJOCへの不信は、竹田恒和前会長の招致買収疑惑もあって、増幅する可能性がある。理念を軽視して、関係者の監視を怠ったマスメディアの責任は大きい。
 競技者が大きな声をあげない限り、東京五輪パラリンピックは幻の大会となりそうだ。
 大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2021年02月08日

【スポーツ】厳しい判断を強いられる春が訪れる=大野晃

 暦の上では立春を過ぎ、春の選抜高校野球の出場校が決まり、プロ野球やサッカーJリーグの開幕前キャンプが始まって、球春が訪れた。
 例年なら、ファンには、わくわくする季節の到来なのだが、新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言下で、無観客のキャンプインが強いられ、チームやファンの不安を募らせている。
 スター競技者の仕上がり具合や新戦力の成長などに一喜一憂し、ひいきチームの躍動に胸躍らせて、マスメディアの報道などを基にした予想にかまびすしいのが恒例だったが、今年は、不自由な生活の中で、それどころではない、寂しさだ。
  米大リーグ・ヤンキースから田中将大投手が、東日本大震災から10年の節目に、楽天に復帰するのも話題だが、喜んでばかりはいられない。
 キャンプ地が集中する沖縄では、県独自の緊急事態宣言で、プロ野球巨人がキャンプ参加者のPCR検査センターを提供するなど、地元に配慮しながら、感染拡大防止対策を徹底する練習生活を余儀なくされている。競技者の自律が強く求められ、ファンや地元民との楽しい交流もできない。
 
 2月下旬から4月に向かって、桜の開花と足並みをそろえ、春のスポーツシーズンを迎えるが、その準備は手探りの状態にある。
 2月20日に延期されたラグビーのトップリーグ開幕や26日のJリーグ開幕、3月14日の大阪から東京・国技館に移した大相撲春場所初日、さらに19日の選抜高校野球開幕、そして26日のプロ野球開幕が、正常に進むのかは、いまだ霧の中だ。
  感染拡大状況によっては、中止、延期、中断や無観客、観客制限の覚悟が必要だ。 
 東京五輪・パラリンピックの開催は、国際オリンピック委員会や国、東京都が「予定通り」を繰り返すばかりで、具体策は示されないままにある。国民生活を顧みず、経済利益と面子にこだわって遅れた政府対応のおかげで、スポーツ関係者に厳しい判断が迫られる春が来る。
大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2021年01月21日

【スポーツ】 延期や中断、勇気をもて=大野晃

 1月16日開幕予定のラグビーのトップリーグが、直前の検査で、6チーム計62人の新型コロナウイルス感染症の感染が確認され、あたふたと、2月以降へ延期された。
 来年度からプロ化した新リーグへの移行が計画され、人気盛り上げを狙ったが、予期せぬ感染拡大で、出鼻をくじかれた。
 大相撲は、横綱・白鵬の感染など横綱不在のうえ、4部屋計65力士が感染や濃厚接触の疑いで休場したが、初場所を1月10日から開催した。
 サッカーJリーグやプロ野球は、2月から3月の開幕に向け、1月中から2月1日の春季キャンプ入りを、計画どおり実施する方針という。
 競技団体の多くは、昨年の感染拡大で、中止や大幅な試合減、そして無観客や観客制限を強いられ、今年こそはと意気込んだが、無策な政府の緊急事態宣言下で、元旦からの競技会も無観客や観客制限が継続されて、春からは計画どおりに競技会を開催しようと、はやっているようだ。

 ラグビーや相撲は濃厚接触が特徴の競技であり、競技そのものに感染不安を生んでいる。
 競技者の安全第一の競技会開催とは、わかっていても、若者の無症状が多い感染症だけに、厄介な問題で、判断がむずかしい。
 とはいえ、感染拡大以前の、恒例に沿った開催計画には無理があるようだ。競技会開催には、テレビや新聞などマスメディアの思惑が複雑に絡む。
 それでも、競技団体は、競技会開催計画を全面的に見直す必要があるのではないか。競技者や関係者は、長期的な競技会継続のため、自主的に、延期や中断する勇気が必要だろう。
 マスメディアは商業主義利用を反省し、競技会の存続を危うくする困難さに直面している競技関係者の意志を尊重しなければなるまい。
 東京五輪・パラリンピックも同様だ。競技者や競技団体とともに、マスメディアの危機意識が問われる。
 マスメディアに厳しい目が注がれる年の初めである。
大野晃(スポーツジャーナリスト)


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2021年01月12日

【スポーツ】 冬の風物詩に異変=大野晃

 元旦から、駅伝、サッカー、ラグビーなど屋外競技の日本一争いに熱戦が続いた。
高校、大学、実業団の競い合いで、プロ競技とは違った、ひたむきな奮闘が特徴だった。サッカー全日本選手権とラグビー高校大会はともに100回目、サッカー高校選手権は99回目、箱根大学駅伝は97回目と、長い歴史と伝統を誇る競技会が集中した。
 それは、高校生や大学生、実業団が挑むアマチュア競技が、古くから日本スポーツをリードしてきたことを物語る。寒風をものともせず、沿道やスタンドで声援を送る多くのファンの姿とともに、正月の風物詩になった。
 アマチュア競技の清新さに触れ、すがすがしさを体験することが、初詣に通じる、年頭の気分一新を国民に実感させたからだろう。
  しかし、節目の今年は、風物詩に異変が起こった。
 都市部での、昨年末からの新型コロナウイルス感染症の爆発的感染拡大により、沿道での応援や観客の大幅な制限、さらに無観客での競技会が強いられた。競技者の家族たちも、晴れの舞台に、多くが臨めなかった。
 心を一新できない不安な年明け。
 集団感染などで昨年、一時的な活動停止に追い込まれた競技者たちが少なくなく、練習不足は否めなかったものの、それでも、静まり返る競技場などで懸命なプレーを展開していた。
  しかし、こたつに入って、テレビなどの映像でしか触れないのでは、臨場感に乏しく、ゲームのように勝ち負けにはこだわっても、感動のシーンをともに歓喜することはできなかった。
 延期された東京五輪の開幕まで200日を切ったが、このままでは五輪を迎える気にはなれないのが、多くの国民の本音だろう。
 五輪を目指す競技者たちにも、動揺は起こっている。スポーツ風景が生活に溶け込んで、季節を感じる時代に、逆行する不幸。
  政府などの無策な感染対応は、日本のスポーツ文化を危うくし、国民の精神生活をも蝕んでいる。
大野晃(スポーツジャーナリスト)


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2021年01月01日

2020年日本と世界のスポーツ回顧2=大野晃

[日本スポーツの特徴]
1、20年東京五輪・パラリンピックの1年延期で膨れる経費など難問続出

 ◎開催延期で、施設の確保などに、ホストタウンを含め、各地で問題が噴出し、延期しても同じコースで行われる予定の聖火リレーにも影響が出ている。
◎東京五輪・パラリンピックの追加経費は、2940億円に上り、東京都が1200億円、国が710億円、大会組織委員会が1030億円を負担することになった。会場施設の追加利用料や人件費など延期経費が1980億円、新型コロナウイルス感染症対策費が960億円で、大会経費の総額は延期前の1兆3500億円から1兆6440億円に増えた。コロナ対策費は都と国で原則2分の1ずつとした。
大会時の感染症対策センターと検査体制整備は国が全額持つ。
組織委は予備費として計上していた270億円を投入し、保険の収入500億円を充て、残りはスポンサーの追加拠出などを見込む。
国が負担するホストタウンへの補助など400億円は直接運営に関わる大会経費から外し、暑さ対策や道路整備などと同じく関連経費扱いとした。大会関連経費を含めれば、3兆円を超えると試算される。
◎代表や代表候補の競技者たちは、国立トレーニングセンターが一時使用できなくなって、練習場を制限され、自宅でのトレーニングなど工夫し、ファンとの通信を通じて、懸命な努力を続けた。

2、バスケットボールも公営ギャンブルに
◎批判の多いサッカーくじの対象にバスケットボールのBリーグを加え、単一試合くじを盛り込んだ法改訂が決まった。
コロナ禍でプロ競技の経営難の中で、公営ギャンブル化が強まった。

3、大坂なおみが人種差別抗議の意志を示しながら全米オープン2回目の優勝
◎テニスの全米オープン女子シングルスで大坂なおみ(22歳)が2年ぶり2回目の優勝を果たした。4大大会での勝利は2019年全豪オープン以来で通算3勝目。
◎大坂は、1回戦から試合の入場時などに、差別を受けた黒人被害者の名前を入れた黒色のマスクを着け、人種差別撤廃へのメッセージを発信し続けた。黒人差別への抗議行動「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大事だ)」への支持を呼び掛け、「私はアスリートである前に黒人女性」と、競技者の社会的使命の重要性を体現した。

4、プロ野球は観客制限で大幅な観客減
◎プロ野球は、約3カ月遅れの6月19日に無観客で開幕し、その後、5000人から、球場定員の50%までの観客制限で、約140日間で120試合をこなした。
セ・リーグは、巨人が2年連続38回目の優勝を飾ったが、総観客数は275万4626人で、前年より約8割の大幅減となった。
◎パ・リーグは、ソフトバンクが3年ぶり19回目の優勝を果たした。
優勝を競り合ったロッテは、終盤に感染者が出て戦力ダウンしたことが響いた。総観客数は206万8952人で、過去最多だった昨季の1166万9891人から激減した。
◎日本シリーズは、ソフトバンクが巨人に初戦から無傷の4連勝で、4年連続11回目の優勝を飾った。
◎労組日本プロ野球選手会は2020年度の年俸調査結果(出来高分を除く)で12球団の支配下登録選手727人の平均年俸が4189万円となったと発表した。前年度比204万円増で1980年の調査開始以来の最高額となり、初めて4000万円台に到達した。しかし、観客減などで、全体のダウンは避けられなくなった。(→続きを読む)

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2020年12月31日

2020年日本と世界のスポーツ回顧1=大野晃

 新型コロナウイルス感染症のパンデミックで、世界スポーツは長い休眠状態に陥った。
 世界保健機構(WHO)は中国での感染拡大で1月末に緊急事態を宣言し、3月初めにはパンデミックを宣言した。
 日本政府は、4月に非常事態宣言し、その後、解除したが、感染は拡大する一方である。年末までに世界の感染者は、8000万人を超え、死者は175万人以上となった。
 日本でも感染者は22万人を超え、死者は3300人に達した。感染拡大防止策で、各国で、出入国制限や移動規制、外出自粛、日常生活での密閉、密集、密接の回避が求められ、人と人とに距離を置くことが強いられた。
 これでは、スポーツは、することも、見ることも自由にできない。
 東京五輪・パラリンピック開催は、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長と安倍晋三首相の思惑で1年延期されたが、国際競技会が相次いで中止された。
 五輪やパラリンピックを目指した競技者たちは、練習がままならない生活を余儀なくされた。欧米のサッカー、野球などのプロ競技は、無観客試合から観客制限試合に追い込まれ、試合数の大幅減少などで、大損失の興行が続いた。
 日本でも、一時的な全面禁止から再開されても、プロ興行は無観客から観客制限を強いられ、プロ競技は苦境に立たされた。
 大学、高校スポーツは、一時的に停止され、再開されても、春夏の甲子園の高校野球全国大会など歴史と伝統を持つ多くの競技会が中止された。全国高校総合体育大会も中止となった。市民スポーツは大幅に制限された。
 感染拡大は、第1波から第3波へと激しく進み、年末に最悪の状態となって、国民はコロナ禍で、21年のスポーツライフを展望できない不安に包まれた。
 スポーツ・マスメディアは感染拡大防止策により、自由な取材が制限されたこともあり、真実に迫る姿勢を欠いた。(→続きを読む)


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2020年12月22日

【スポーツ】 五輪 競技者の意思確認を=大野晃

  果たして2021年東京五輪・パラリンピックは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に収束が見えない中で、開催すべきか。
  世界の五輪・パラリンピック代表競技者の意志が問われる新年となる。開催して欲しいや出場したいだけでなく、大会の意義を重視した、競技者としての判断である。
 バッハ会長など国際オリンピック委員会(IOC)理事会や東京五輪組織委員会は、感染対策を徹底すれば開催できると強調するが、開催すべき理由を明確にしていない。
 「競技者第一」が基本とすれば、代表たちの意志が最重要である。
  日本オリンピック委員会(JOC)などが、代表たちの意志を集約しているかは疑問であり、世界への発信がない。開催運営組織やマスメディアは、開催できるかばかりを探っている。
 五輪などの最大の意義は、競技を通じて世界の競技者が連帯し、世界平和を目指すことにある。大会は、世界の友好と連帯を求めて、多競技の世界中の競技者が、競技の枠を超えて、絆を強固にする舞台である。
 競技力を競うだけなら、世界選手権やワールドカップなどの単一競技会で事足りる。
 競技者の出入国が厳しくチェックされ、選手村滞在がわずかの期間に限られ、毎日のような感染検査漬けのうえ、他競技や他国代表などから隔離され、競技以外の自由が制限されて、友好交流の場と言えるのか。
 開催を断念しても、五輪精神を生かして、連帯を強める他の方法はないのか。まずは、開催国の競技者から問題提起すべきだろう。そして、世界の競技者たちと十分に協議することが不可欠だ。
 JOCや各国のオリンピック委員会などは、競技者の意志を確認する場を作り、尊重しなければなるまい。IOCは、五輪が競技者の努力なしには成功しないことを再認識し、興行優先から脱却する必要がある。
  当事者の沈黙は、五輪・パラリンピックを内から危うくする。
 大野晃(スポーツジャーナリスト)
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