2020年05月19日

【スポーツコラム】 プロ意識奪う無観客試合=大野晃

 プロ野球オープン戦や大相撲春場所が無観客で行われた。
 長引く新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策で、大相撲は夏場所を中止し、7月の名古屋場所を東京に移して無観客で開催するという。
 プロ野球の公式戦開幕やサッカーJリーグの再開は決まらない。興行日程を消化するため無観客もやむなしのようだが、競技者の高度な能力や迫力ある試合を見せて楽しませるプロスポーツが根源的な問題に苦悩している。
 無観客では、プロ意識や技能を披露する舞台がなくなる。映像で見せても、観客との人間的な触れ合いがない。プロ競技者は自らスポーツを楽しむばかりでなく、ファンと一体でプレー意欲を高め、試合を盛り上げ、それが喜びの源泉となる。
 能力評価を決める試合が欠かせないが、無観客では存分に力を発揮できない。だから、無観客のむなしさを語る競技者が多かった。
 ファンとのつながりを重視する競技者たちの、ネットでの懸命な訴えが広がった。
 テレビ観戦でも、プロ競技者のプレーを楽しめるというが、無観客試合では、競技場内の興奮が伝わらないうえ、臨場感に乏しいから競技場へ足を運ぶ満足感に欠けるというファンが多い。
 無観客試合はプロ競技者の人間的魅力を薄れさせ、スポーツの人間的価値を実感させないようだ。外出自粛で、競技をテレビゲーム化して見せることが多くなったものの、人間的なスポーツとは異質と考えるファンが少なくない。
 無観客試合は、「見るスポーツ」の楽しみとは何かを、考えさせる。
 放映権料確保などのために競技団体や主催者が無観客試合を選択したのだとしたら、競技者やファンの露骨な商業主義的利用だ。
 プロ競技とマスメディアの関係に疑念が浮かぶ。プロ競技に偏重したマスメディアだけに、競技会の消えた世界で、スポーツの人間的発展と報道のあり方が改めて問われている
大野晃(スポーツジャーナリスト)

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2020年04月28日

組織委理事に9億円 カネまみれの東京五輪 電通が背後で蠢く=橋詰雅博 

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 新型コロナ禍で東京五輪1年延期の道スジをつけたとされる東京五輪・パラリンピック組織委員会理事で元電通専務の高橋治之氏(76)は、スポーツビジネスの表裏を知りつくす人物だ。その高橋氏に関し、「東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会」(招致委)から9億円を受け取り、東京五輪実現のため奔走した疑惑が浮上した。
 招致委の銀行口座の取引明細証明書を入手したロイター通信による3月末のスクープ記事で明るみに出た。ロイターの取材に対し高橋氏はラミン・ディアク世界陸連前会長などIOC(国際オリンピック委員会)委員にロビー活動をしたことを認めた。しかし、9億の使途については「いつか死ぬ前に話してやろう」とうそぶいた。
 東京五輪招致では、贈収賄疑惑で仏検察が捜査を進めている。贈賄側として招致委理事長を務めたJOC(日本オリンピック委員会)前会長の竹田恒和氏が18年に同検察から事情聴取をされている。高橋氏もこの汚職疑惑に深く関与していると見られる。
 高橋氏は竹田氏とは交流が長い。同じ慶応大出身の竹田恒治氏を介して弟の恒和氏と知り合った。話はそれるが、高橋氏の弟はイ・アイ・イ・インターナショナル社長の治則氏(05年7月死去)で、ホテル・リゾート開発などバブル事業≠拡大させて日本長期信用銀行を潰した男と言われた。
 また、高橋氏は02年の日韓共催W杯サッカーでは電通幹部社員として裏面で動いた。
 ところでロイターのスクープ記事の中で招致委による資金の支払いについて、日本の月刊誌「FACTA」が最初に報じたと書かれている。筆者が残しておいた「FACTA」18年3月号の記事によれば、16年3月号の記事がそれだと思われる。18年の記事は仏紙ル・モンド記者と本誌取材班が共同取材したもので、タイトルは『電通「東京五輪買収」の物証』だ。仏検察が押収した電通とディアク世界陸連前会長が交わした極秘契約書がその物証としている。1500万j(約16億円)の不可解な金の流れがあると指摘する。
 東京五輪招致の背後で高橋氏を中核とした電通グループがヒト・モノ・カネを投じたのは間違いない。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号
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posted by JCJ at 13:49 | スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月24日

【スポーツコラム】 東京五輪 中止ありえる=大野晃

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 新型コロナウイルス感染症の感染対策で、東京五輪・パラリンピックの1年延期が決まった。
 五輪の延期開催は史上初めてで、関連して世界と日本のさまざまな競技会の日程調整が続いている。
 外出自粛要請などにより、世界と日本のあらゆる競技会が延期や中止となり、市民スポーツも自粛され、スポーツの消えた世界が長引いている。
 東京五輪・パラリンピック組織委員会は延期による会場確保などを急いでいるが、膨れる経費で、改めて開催意義が問われている。
 安倍首相と国際オリンピック委員会の政治的、経済的思惑が一致して、感染終息による経済活動復活の希望的観測に基づく延期であり、日本で開催ができるようになっても、世界的に代表派遣が不可能な状況が続けば、中止もありうる。
 見切り発車はできまい。国際的に連帯、協力して、感染終息と生活再建を目指すことが延期開催のカギを握る。いわば五輪精神で世界が一つになることで開催は可能となる。
 自国第一主義の経済的対立が顕著になる中で世界的に感染が拡大したが、感染対策でも国際的連携は進まず、米中は対立すら見せる。
 安倍政権も中韓との協力に消極的で、世界から学ぶ姿勢に乏しいようだ。
 異例の五輪延期開催を実現するには、世界で五輪精神を生活に生かす知恵と努力が不可欠だ。
 国際オリンピック委員会や五輪を開催する日本オリンピック委員会による国際連帯の強い呼びかけが必要である。
 地元での五輪・パラリンピック開催に勢い込んでいた競技者だが、活動停止に追い込まれ、命と安全第一の社会でこそ競技生活が営まれることを改めて自覚したはずだ。
 競技を続けるために課題は山積しており、団結して、世界の競技者と連帯し、政治を動かさなければ、夢は実らないだろう。
 延期された1年は五輪精神の正念場だ。スポーツの発展を目指すマスメディアの姿勢を問い直す契機でもある。
大野晃
posted by JCJ at 16:44 | スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする