2020年10月23日

【スポーツ】 競技者に負担強いる国際大会強行に疑問=大野晃

 国際体操連盟が11月8日に東京で国際大会を開催するという。
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大で2020年東京五輪1年延期決定後、国内で初めての五輪競技の国際大会である。
  体操の強豪だが、感染が拡大した中国、ロシア、米国の代表が参加して日本代表と競い2000人までの観客を見込んでいる。
 外国代表は72時間以内のウイルス陰性証明書を持参し、入国時にも検査。入国後2週間の待機は免除されるが、公共交通機関を使わずにホテルと競技場の往復などに行動が制限され、毎日検査を受けるとしている。
 出入国制限している国からの入国を特例で認めるが、延期された東京五輪運営の試験とされていることが気になる。
 東京五輪開催の不安を表面的に消すための政治的色彩が強い。競技者の人体実験とまでは言わないが、強引に安全宣伝するのは、GOTOキャンペーンとどこか似ている。
 五輪開催へ向けて、政府や組織委員会の強引さが目立ち始めている。各国代表を検査漬けにして、五輪開催を強行する腹づもりなのだろうか。国際交流が制約されてトップ競技者が悩んでいるのは、世界中で全競技に共通しているが、安心、安全を犠牲にできない。
 五輪の意義は、世界の競技者が競技を通じて交流し、友好連帯を強めることで世界平和につなげることにある。
 開催国や都市の運営能力や競技力を誇示する場ではない。五輪の観衆が求めているのは、競技者の高い技能や仲間とともに競技に取り組む姿勢を目の当たりにして、人類の到達点や国際協調の重要性を再認識することだろう。
 焦らず、入念に、それらの条件を十分に整えることこそ、五輪開催都市の使命である。
 「アスリート・ファースト」を軽々しく口にして、競技者に負担を強いる強引な開催を目指すのは、感染拡大対策に動かずに、自助を強調する政治姿勢に通じる。厳しい監視が必要だろう。
大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2020年10月13日

【スポーツ】 コロナ禍を契機に競技環境が好転も=大野晃

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大対策で、観客制限などを余儀なくされたプロ競技が、未曽有のシーズンの大詰めを迎えている。
大坂なおみが全米オープンテニスで2年ぶり2回目の優勝を飾ったのに続き、極端に試合数を減らした米大リーグで、復活したダルビッシュ投手が8勝をあげ、日本人史上初の最多勝に輝いて、カブスの地区優勝に貢献した。感染拡大の勢いが止まらぬ米国で、日本人競技者が活躍した。
 日本のプロ野球では、巨人の菅野投手が開幕から最長新記録の13連勝し、セ・リーグ独走を支えた。
 大相撲では、中止となった夏場所で朝乃山が大関昇進したのに続き、秋場所で正代が初優勝して大関となった。
 一方、プロ野球の阪神は、集団感染の相次ぐ発生で波に乗れず、大相撲は、三段目力士が感染死する不幸に見舞われ、秋場所は両横綱はじめ休場者続出だった。
 コロナ禍の明暗を分けたのは、練習不足が避けられない中での、競技者の気構えと鍛錬の工夫や集団の力を引き出すことにあった。
 総合力を競ったプロ野球では、出場機会を生かした若い力の伸長が目立った。ピンチをチャンスに変える頼もしさを持っていた。それはベテランの冷静な意欲にも表れていた。
 自律的な生活態度とプレーへの集中が重要だった。どこかに甘えやミスがあれば、成功は覚束ない。古い体質からの脱却が不可欠になった。
 観客制限は、貴重な観戦機会となったファンにプレーへの集中を促し、静かだが、熱っぽい応援が続いた。競技者も、ファンも、競技を楽しむ喜びを、改めて実感したようだ。
 それは、球団などの経営に大きな影響を及ぼした。利益優先から、競技者やファン第一の知恵が求められた。中止に追い込まれた社会人、大学、高校では、競技会のあり方が見直されている。
 政府の無策による不自由なコロナ禍を契機に、スポーツ界の先導で、競技環境が好転する可能性もある。
大野晃(スポーツジャーナリスト)

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2020年10月07日

【スポーツ】 人間的な主張が競技者を強くする=大野晃

 全米女子オープンテニスで2年ぶり2回目の優勝を飾った大坂なおみさんの意志の強さが際立った。
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大で、十分な練習ができなかったが、蓄えた力を存分に発揮し、試合中の動揺を抑えて、勝ち抜いた。
 驚かされたのは、人種差別による黒人犠牲者たち一人一人の名前を書いたマスクを着けて、無観客の7試合に姿を見せ続けたことだった。
 静かだが、試合に臨む社会的意志を明確に示し、ミスプレーで投げやりになる悪いクセを乗り越えた黒い肌が耀く22歳である。
 黒人男性が白人警官に銃撃された人種差別に抗議して、前哨戦の準決勝を棄権して騒がせたが、出場し、テレビ映像などでの意志表示に転換し、「差別への問題意識を世界中の人に持ってもらいたかった」と強く訴えた。競技者である前に人間であることの自己表現だ。
 国家利益を優先した競技の政治利用が批判されることは多いが、平和の希求や差別の撤廃は大坂さんが言うように人権問題である。五輪精神の根源でもある。
 スポーツ人気が高い米国では、黒人競技者の活躍が顕著だが、白人社会の差別意識は根深い。
 1968年メキシコ五輪では表彰台での黒人競技者の人種差別抗議が非難された。バスケットなどプロ競技者の人種差別抗議行動も批判されてきた。
 大坂さんを苦々しく思う政治家などはいるだろうが、差別を拒否する競技者の強固な意志は、五輪運動を前進させる。
 人類の発展に寄与するスポーツの価値を高める。
 社会的使命を自覚したトップ競技者の意志は、競技への気構えを鍛え、競技力までも強めることを、大坂さんは証明した。
 競技をそこなう独善的な意思表示は問題をはらむが、人間的な主張を抑えて、自由に競技へ専念することなどありえない。
 社会的人間である競技者を、家族や支援者との関係に閉じ込めようとしてきたマスメディアへの警鐘でもある。
大野晃(スポーツジャーナリスト)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号


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2020年09月16日

【スポーツ】 自由で自主的な文化気運が拡大=大野晃

 6月に3カ月遅れの無観客で開幕し、7月から5000人以下の観客制限で続行されたプロ野球は、9月に入って後半戦の王座争いを迎えた。
 過密日程が総合力の勝負を促した。投手陣のやり繰りがむずかしく、失敗すれば大差の敗北となったが、新戦力の台頭もあって、競り合いの強さが重きをなしている。スリルに富んだ面白さが、ファンの興奮を呼んだ。
 セ・リーグは巨人がリードし、パ・リーグでソフトバンクとロッテが首位を競っているが、大詰めへ向け激戦が続きそうで、王座は予断を許さない。
 新型コロナウイルス感染症の感染対策を徹底し、競技者たちの感染検査を怠らず、自覚的な予防姿勢が白熱戦を生み出している。 
 プレーによる感染の危険は少ないため、濃厚接触の少ない競技では、屋内での競技や市民スポーツでも、競技会などが本格化してきた。
 全国的な感染拡大の地域差は大きく、感染の少ない地域では、濃厚接触の多いラグビーでも、高校生の公式戦がスタートした。
 それでも東京など都市部の感染拡大は収束が見えず、不安は消えない。
 感染拡大対策の最中に、安倍首相が病気を理由に辞任して、投げ出した政府の対策に空白が続き、関連自治体も手をこまねいてきた。
 そんな中で、競技者や競技団体が、自主的に競技を継続させる意欲を見せていることが特徴的だ。スポーツ文化を守る姿勢が広がっている。
 感染拡大が続く欧米だが、競技ファンは多く、過密日程の米大リーグ野球では、復活したダルビッシュ投手(カブス)など日本人競技者が活躍している。
  欧州のサッカーも熱戦が続く。自衛により文化を絶やさない競技者たちの意志は世界共通に違いない。コロナ禍が、自由で自主的なスポーツ気運を拡大している。
  猛暑がおさまりつつあり、台風被害の危険はあるが、スポーツの秋本番に向かい、知恵と工夫のスポーツライフが発展しそうだ。
大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2020年08月19日

【スポーツ】 楽しむ環境条件の再検討を=大野晃

 長い梅雨が明けて、猛暑が続いた。
 新型コロナウイルス感染症の感染対策に加え、屋外でのスポーツにも危険をともなう悪条件が重なった。
 それでもプロ野球やサッカーJリーグなどプロ競技は観客制限で継続し、高校野球は、中止となった全国大会の代替試合が炎天下で繰り広げられた。
 さらに、涼しい高原などでの夏季トレーニングはウイルス感染症対策で自粛に追い込まれ、多競技で猛暑の中での鍛錬が続いた。
 マスメディアは、悪条件を乗り越える競技者の強い希望や意志を伝え、美談仕立てでもあった。 しかし、なぜ子どもまでが、悪条件でも競技に挑まざるを得ないかの分析は、表面的に流れていた。
 災害で荒れる梅雨から熱中症の危険をはらむ猛暑へ連続する気象条件は、地球温暖化を背景に、今年特有ではなく、恒常化すると気象関係者は危惧している。
 1年延期された東京五輪・パラリンピックが、悪条件下で開催されることは、十分に予想される。悪条件開催は、巨額資金で放映権を握る米国テレビが引っ張ったと批判するマスメディアだが、猛暑の中での高校野球を推進して顧みない。ご都合主義と映って不思議はない。
 かねてから、学校教育の一環に固執する文科省指導により、夏休み期間限定の全国大会が、不健康な条件下での競技を、子どもたちに強いていると批判されてきたが、一顧だにされなかった。
 極端に短縮された夏休み前の、猛暑の中での体育授業で、熱中症に襲われた児童も出た。ウイルス感染症対策で、競技に取り組む環境条件がさまざまに制約された中でこそ、改めて競技を楽しむ環境条件を多方面から再検討し、健康なスポーツライフを構築する道筋を見出すべきではないのか。
 文科省の硬直した対応をただし、スポーツ基本法に基づくスポーツ庁の行政責任だろう。
 競技団体の最重要課題であり、マスメディアの姿勢も問われる。
大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2020年08月04日

【スポーツ】 運動不足列島≠フ恐れ=大野晃

 新型コロナウイルス感染症の感染再拡大が全国的に進む中で、当初の東京五輪開幕に併せて新設された祭日を加えた4連休を前に、混乱した政府の観光旅行キャンペーンが強行された。
 休校が続いた学校は、極端に短縮された夏休みに入ったところもある。しかし、観光地でも感染不安は消えず、経済・社会活動の復活ばかりを求める行政に批判が高まっている。
 梅雨明けの盛夏は、自然の中で思い切り体を動かし、暑さを吹き飛ばす爽快感を満喫する太陽の季節だが、観光キャンペーンから除外された東京では、再び不健康な巣ごもりを強いられた。
 しかも、海外旅行は特別の理由がなければ禁止されたまま。国内の海水浴場の多くは開設されず、プールも制限付き。山小屋が閉鎖されているので、登山やハイキングも、ままならない。
 プロ野球やJリーグ、大相撲は観客制限解除が見通せず、拍手応援にとどまり、暑気払いの大騒ぎはできない。
 東京の感染再拡大で国立トレーニングセンターでの東京五輪代表の合宿練習を中止する競技が相次ぎ、プロ競技を中心にスポーツが再開されたものの、縮小制限に逆戻りしそうな状況が強まっている。
 政府や東京都の感染対策放置が続き、東京五輪の1年延期開催を危ぶむ深刻な声が広がった。我慢強い国民とはいえ、長引く梅雨のうっとうしさに加え、豪雨災害の危険も消えず、熱中症が気がかりな猛暑の中で、欲求不満が募っている。
 しかし、医療関係者の警告を無視して、新たな対策に動かず、自衛を訴えるだけの政府や自治体に振り回され、判断の迷いが広がり、日常生活の安定化は、さらに遠のいた。
 感染の地域差が目立ち、拡大する一方の都市部と新たな感染がない地域の対立感情すら生んでいる。
 生活にスポーツが欠かせないことが実感されてはいるが、その環境条件は狭小化するばかりで、気軽に取り組めず、運動不足列島となりそうな夏季休暇入りである。
大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2020年07月23日

【スポーツ】 拍手で再開も不安拡大=大野晃

 プロ野球開幕に続き、サッカーJリーグも再開。大相撲7月場所が始まり、限られた観客の応援を受けながらプロ競技が正常化を目指した。大声や大騒ぎは厳禁で、拍手による応援が繰り広げられた。
  大騒ぎしないだけ、試合に見入るファンが多く、プロ競技の応援風景が様変わりした。拍手応援で、新たな競技者との一体感を模索するファンの変化は、競技者と国民の新しい関係を生み出す契機となるかもしれない。
 ところが、プロ競技の再開直後から、東京を中心とした首都圏や大阪などで、自粛要請解除前に逆戻りしたように新型コロナウイルスの感染確認が急増し、国民生活の不安は一気に拡大した。
 しかも、梅雨の豪雨で九州中心に大災害が発生し、政府や自治体は自衛を訴えるばかりで、対策が皆無に近かったから、不安はさらに広がった。
 そのうえ政府は、感染再拡大を過小評価して、観光旅行を促進し、生活不安を無視した姿勢に不満が噴出した。
 見るスポーツや旅行の再開は、さまざまな自粛要請に疲れた国民のストレス解消につながるはずだが、生活不安が募る中で、気軽に楽しめるわけがない。
 安倍政権は、感染対策や災害対策を投げ捨てて、「現実を見ずに適当に楽しめ」と強要するようなもので、国民の安心、安全第一をおざなりにした。
 安心、安全な生活があってこそ、スポーツは楽しめる。だからファンたちは、感染対策のさまざまな制約をがまんしてスタンドに足を運び、指示に従いながら、新しい楽しみ方を試していた。
 マスクを着けてのランニングなど不自由なスポーツスタイルでも受け入れてきた愛好家たちが少なくない。
 経済活動第一の行政姿勢に、裏切られたと思って不思議はない。制限付きのスポーツ再開は、行政と生活の関わりを一変させる動機ともなりそうだ。
大野晃(スポーツジャーナリスト)

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2020年07月14日

【スポーツ】 再開後に不安つのる=大野晃

 プロ野球が無観客で開幕した。
 パ・リーグでロッテが8連勝を記録するなど新鮮な競い合いや新戦力の活躍が注目を集めた。ホームチームが応援録音を球場に流すなどして、競技者の全力プレーを盛り上げた。
 サッカーのJリーグも無観客で再開され、家庭で映像を目にするだけでもファンの興奮を呼んだようだ。
 テレビ中継やスポーツ・マスメディアに触れる限りでは、プロ野球やJリーグ一色に近い日常が戻ったように錯覚させた。
 ところが、皮肉にも、東京を中心に新型コロナウイルスの感染確認は、自粛解除以前に逆戻りしたように急増が続き、市民生活の不安は高まった。
 安倍政権も小池都政も警戒を訴えるだけで対策を示さずに放置したから、国民の不安は募って、7月10日から観客を入れても、客足が減りかねない。
 スポーツを楽しむには、安全、安心な生活が第一だが、行政の無策は、プロ競技の発展に暗い影を落とした。練習を再開した東京五輪代表たちも見通しが立たないことで、ベテランの引退表明が相次いだ。
 甲子園を目指した高校野球の大会中止による代替試合が始まったが、感染防止対策を徹底して、球児の保護者や関係者だけが見守る寂しさだった。
 長い自宅待機が強いられ、運動不足解消に動き出したい国民が大多数となったが、草の根の市民スポーツは、どう再開するか揺れ動いている。国民に自衛を求めるだけの国や自治体の投げやりな態度は、再開された企業活動や営業だけではなく、国民の日常生活に大きな戸惑いを生んでいる。
  そこへ梅雨の豪雨災害が拡大し、熱中症拡散の恐れも重なり、再開後の不安は広がるばかりで、より一層、将来を見通せなくしている。
 プロ競技再開が生活の励ましになるどころか、競技を見て騒いでいて良いのかとファンを動揺させ、張り切っている競技者をも不安にさせた。
 国や自治体の怠慢が、混乱を長引かせたと言えそうだ。
大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2020年06月17日

【スポーツ】 格差越え自主自律の再開へ=大野晃

 緊急事態宣言が全国で解除され、プロ野球が開幕するなどトップ競技が再開へ動き始めた。
 とはいえ安倍政権や小池都政などが、しゃにむに規制緩和に突っ走るのとは裏腹に、感染拡大の第2波が危惧され、無観客を前提に、感染対策徹底で、不自由な再出発を強いられている。
 五輪代表や市民スポーツも始動しているが、密室の屋内はじめ、屋外でも密集、密接の回避が原則だから、施設が利用できても、練習方法の変更が必要で、本格化の困難さを抱えている。
 とりわけ、相手と組み合う格闘技やタックルなどによる激突が特徴の団体球技は、濃厚接触の禁止で、体力や基礎鍛錬に限られ、競技間格差が広がる中での再開となった。
 競技生活が本格化する高校部活動は、春から夏への競技会が全面的に停止されたこともあり、競技の魅力を感得する機会が制限され、縮小の懸念を生んでいる。
 国民スポーツの大幅な減退を招く恐れもある。
 プロ野球開幕やサッカーJリーグ再開で、日常が戻りつつあると感じたとしても、テレビ観戦に限られては、スポーツが生活によみがえったとは思えないだろう。むしろ、より遠く感じさせるかもしれない。
 プロ競技の国民スポーツ拡大における役割を、改めて検討する必要がある。それだけに、各競技や各層の特性に合わせた試合形式や鍛錬内容の自主的な工夫や競技者の自律が、国民スポーツ復活のカギとなる。
 運動不足解消法のあれこれにとどまらず、仲間と共有するスポーツの楽しさを実感できる環境条件を、再構築しなければなるまい。
 スポーツ庁は、国民スポーツの復活に沈黙するばかり。また、マスメディアの関心も薄い。
 しかし、国民スポーツの復活がなければ、延期した東京五輪・パラリンピックを支える基盤は生まれない。
 自主、自律のスポーツ再開を後押しする国民意識が不可欠だ。
大野晃(スポーツジャーナリスト)

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2020年06月09日

【スポーツ】 プロ競技が手探りで再開=大野晃

  新型コロナウイルス感染症拡大防止の緊急事態が全国的に解除され、イベント自粛の緩和で、いよいよプロ野球が6月19日に、3カ月遅れて開幕する。
 中断していたサッカーJリーグのJ1も7月4日に再開され、大相撲は名古屋場所を東京・両国国技館に移して7月19日初日が予定されて、ようやくプロ競技が再開へ向かう。
 しかし、政府や自治体の解除基準があいまいなまま、感染爆発の第2波が懸念される中、感染防止策を徹底した無観客での、手探りの再始動である。
 プロ野球は6月2日から練習試合が行われているが、交流戦やオールスター戦が中止されたものの、120試合を実施する予定で、6連戦も行われ、Jリーグも予定された日程を消化するというから、練習不足が否めない状態で、過密日程によるケガを注意しながらの厳しい争いになりそうだ。
 お目当ての競技者や球団の真剣勝負が待ち遠しかったファンには、テレビ観戦だけでも朗報に違いない。
 来年に延期された東京五輪の日本代表たちは、国立トレーニングセンターなどでの練習を再開し始めた。
 しかし、濃厚接触が多い格闘技などは制限された鍛錬にとどまり、ラグビーは世界機構がスクラムを減らすなどの試験的ルールでの試合を求めたほどで、競技特性による練習、試合の再開条件の格差が広がった。
 一方、高校スポーツは、夏の全国高校野球が79年ぶりに中止され、秋までの日本一争いは全競技で消えた。授業再開でも、部活動の制限は続く。
  トップ競技者に競技生活が戻り始めたとはいえ、一般国民のスポーツ活動は、施設の再開があったとしても、自由な楽しみは、まだまだ先の話だ。
  日本以上に感染が拡大している欧州で、サッカーのプロリーグ再開が急がれたのは、国民生活に不可欠な存在としてスポーツがあったからだろう。
  日本でも、プロ競技の再開を目にした国民が、日常が戻りつつあると実感すれば、スポーツの生活定着化には大きなバネとなりそうだ。
大野晃(スポーツジャーナリスト)


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2020年05月19日

【スポーツコラム】 プロ意識奪う無観客試合=大野晃

 プロ野球オープン戦や大相撲春場所が無観客で行われた。
 長引く新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策で、大相撲は夏場所を中止し、7月の名古屋場所を東京に移して無観客で開催するという。
 プロ野球の公式戦開幕やサッカーJリーグの再開は決まらない。興行日程を消化するため無観客もやむなしのようだが、競技者の高度な能力や迫力ある試合を見せて楽しませるプロスポーツが根源的な問題に苦悩している。
 無観客では、プロ意識や技能を披露する舞台がなくなる。映像で見せても、観客との人間的な触れ合いがない。プロ競技者は自らスポーツを楽しむばかりでなく、ファンと一体でプレー意欲を高め、試合を盛り上げ、それが喜びの源泉となる。
 能力評価を決める試合が欠かせないが、無観客では存分に力を発揮できない。だから、無観客のむなしさを語る競技者が多かった。
 ファンとのつながりを重視する競技者たちの、ネットでの懸命な訴えが広がった。
 テレビ観戦でも、プロ競技者のプレーを楽しめるというが、無観客試合では、競技場内の興奮が伝わらないうえ、臨場感に乏しいから競技場へ足を運ぶ満足感に欠けるというファンが多い。
 無観客試合はプロ競技者の人間的魅力を薄れさせ、スポーツの人間的価値を実感させないようだ。外出自粛で、競技をテレビゲーム化して見せることが多くなったものの、人間的なスポーツとは異質と考えるファンが少なくない。
 無観客試合は、「見るスポーツ」の楽しみとは何かを、考えさせる。
 放映権料確保などのために競技団体や主催者が無観客試合を選択したのだとしたら、競技者やファンの露骨な商業主義的利用だ。
 プロ競技とマスメディアの関係に疑念が浮かぶ。プロ競技に偏重したマスメディアだけに、競技会の消えた世界で、スポーツの人間的発展と報道のあり方が改めて問われている
大野晃(スポーツジャーナリスト)

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2020年04月28日

組織委理事に9億円 カネまみれの東京五輪 電通が背後で蠢く=橋詰雅博 

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 新型コロナ禍で東京五輪1年延期の道スジをつけたとされる東京五輪・パラリンピック組織委員会理事で元電通専務の高橋治之氏(76)は、スポーツビジネスの表裏を知りつくす人物だ。その高橋氏に関し、「東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会」(招致委)から9億円を受け取り、東京五輪実現のため奔走した疑惑が浮上した。
 招致委の銀行口座の取引明細証明書を入手したロイター通信による3月末のスクープ記事で明るみに出た。ロイターの取材に対し高橋氏はラミン・ディアク世界陸連前会長などIOC(国際オリンピック委員会)委員にロビー活動をしたことを認めた。しかし、9億の使途については「いつか死ぬ前に話してやろう」とうそぶいた。
 東京五輪招致では、贈収賄疑惑で仏検察が捜査を進めている。贈賄側として招致委理事長を務めたJOC(日本オリンピック委員会)前会長の竹田恒和氏が18年に同検察から事情聴取をされている。高橋氏もこの汚職疑惑に深く関与していると見られる。
 高橋氏は竹田氏とは交流が長い。同じ慶応大出身の竹田恒治氏を介して弟の恒和氏と知り合った。話はそれるが、高橋氏の弟はイ・アイ・イ・インターナショナル社長の治則氏(05年7月死去)で、ホテル・リゾート開発などバブル事業≠拡大させて日本長期信用銀行を潰した男と言われた。
 また、高橋氏は02年の日韓共催W杯サッカーでは電通幹部社員として裏面で動いた。
 ところでロイターのスクープ記事の中で招致委による資金の支払いについて、日本の月刊誌「FACTA」が最初に報じたと書かれている。筆者が残しておいた「FACTA」18年3月号の記事によれば、16年3月号の記事がそれだと思われる。18年の記事は仏紙ル・モンド記者と本誌取材班が共同取材したもので、タイトルは『電通「東京五輪買収」の物証』だ。仏検察が押収した電通とディアク世界陸連前会長が交わした極秘契約書がその物証としている。1500万j(約16億円)の不可解な金の流れがあると指摘する。
 東京五輪招致の背後で高橋氏を中核とした電通グループがヒト・モノ・カネを投じたのは間違いない。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号
         P1020211.JPG
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2020年04月24日

【スポーツコラム】 東京五輪 中止ありえる=大野晃

      DSC_0142.jpg 
 新型コロナウイルス感染症の感染対策で、東京五輪・パラリンピックの1年延期が決まった。
 五輪の延期開催は史上初めてで、関連して世界と日本のさまざまな競技会の日程調整が続いている。
 外出自粛要請などにより、世界と日本のあらゆる競技会が延期や中止となり、市民スポーツも自粛され、スポーツの消えた世界が長引いている。
 東京五輪・パラリンピック組織委員会は延期による会場確保などを急いでいるが、膨れる経費で、改めて開催意義が問われている。
 安倍首相と国際オリンピック委員会の政治的、経済的思惑が一致して、感染終息による経済活動復活の希望的観測に基づく延期であり、日本で開催ができるようになっても、世界的に代表派遣が不可能な状況が続けば、中止もありうる。
 見切り発車はできまい。国際的に連帯、協力して、感染終息と生活再建を目指すことが延期開催のカギを握る。いわば五輪精神で世界が一つになることで開催は可能となる。
 自国第一主義の経済的対立が顕著になる中で世界的に感染が拡大したが、感染対策でも国際的連携は進まず、米中は対立すら見せる。
 安倍政権も中韓との協力に消極的で、世界から学ぶ姿勢に乏しいようだ。
 異例の五輪延期開催を実現するには、世界で五輪精神を生活に生かす知恵と努力が不可欠だ。
 国際オリンピック委員会や五輪を開催する日本オリンピック委員会による国際連帯の強い呼びかけが必要である。
 地元での五輪・パラリンピック開催に勢い込んでいた競技者だが、活動停止に追い込まれ、命と安全第一の社会でこそ競技生活が営まれることを改めて自覚したはずだ。
 競技を続けるために課題は山積しており、団結して、世界の競技者と連帯し、政治を動かさなければ、夢は実らないだろう。
 延期された1年は五輪精神の正念場だ。スポーツの発展を目指すマスメディアの姿勢を問い直す契機でもある。
大野晃
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