2022年01月24日

【スポーツ】揺れるラグビー再出発=大野晃

 新型コロナウイルス感染症の感染再拡大の中で、ラグビーのジャパン・ラグビー・リーグ・ワンが、1月8日にスタートした。7日夜に東京・国立競技場で予定された開幕戦は、競技者の感染で中止され、揺れる船出となった。
  昨年までのトップリーグを衣替えして、サッカーJリーグにならった地域密着のプロ化を目指す新リーグで、トップリーグとトップチャレンジの計24チームが企業名に本拠地域名をつけて、5月まで1部から3部の王座を争う。1部は、昨年の第18回トップリーグ上位12チームで構成。2部以下は、その他の各6チーム。
  日本一を競う1部は、2組に分かれた2回戦総当たりと他組チームとの1回戦総当たり。上位4チームによるトーナメントで、頂点を決める。日本ラグビーの再出発だ。
  南半球や欧州の最高峰リーグに近づけようと、昨年のトップリーグに各国代表経験のある有力外国出身者を集めたが、継続者が多く、昨年の世界トップ国代表を含め、2019年のワールドカップ(W杯)出場者が20人そろい、国際的な質の高い争いを目指す。
  各チームが協賛、協力の企業や地域自治体との協定などにより、経営安定化と地域貢献を図るが、成功のカギは観客動員。W杯でブームを呼び、直後のリーグは、観衆1万人を超える試合が、21を数えたが、コロナ禍の昨年は1試合平均3500人程度。平均8000人が目標で、各地で大宣伝を展開しているが、コロナ禍の収束が見えず、厳しい環境にある。
 今年は、プロ野球やJリーグが正常化を目論むが、2年間の観客制限の影響で、規制が消えても、ファンが戻るかは予測できない。しかも、感染再拡大は見通しを暗くした。
 無観客や観客制限の3年目となっては、多くの競技の経営や競技者の生活に、計り知れない深刻な影響を与える。2月に開幕する北京冬季五輪も、中国の人権問題に加えて、世界的な感染再爆発に揺れている。
 年頭の危険な状況に、政府の本腰を入れた対策が急務である。
大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2022年01月17日

【スポーツ】オミ株感染爆発で戦々恐々=大野晃

  年明けからの新型コロナウイルス感染症の感染再拡大に、日本スポーツ界が揺れている。
昨年11月の感染激減で、年末年始の競技会の正常化を目指し、動き出した矢先の感染再拡大だから、感染力の高いオミクロン株のまん延で再び感染爆発が起こるのではないかと戦々恐々である。
  昨年12月19日のサッカー天皇杯決勝は、観客制限を撤廃し、東京・国立競技場に5万8000人近くの観衆を集め、同年のプロ競技最多観客数を記録した。 ラグビーは年が明けた1月2日の全国大学選手権準決勝で、同競技場に2万2000人を超える観衆を集めた。
 ところが3が日を過ぎると感染は急拡大し、7日の新リーグ開幕戦は競技者の感染で中止。目論見が大揺れを始めた。コロナ禍対策が後手に回った菅前政権とポーズを変えて、岸田政権は早めに手を打つが、甘い見通しで朝令暮改が連続。混乱に拍車をかけるばかり。
  欧米のパンデミックは爆発的であり、北京冬季五輪に黄信号が灯る。国際オリンピック委員会が、東京五輪同様の強引な開催に走れば、五輪そのものの存続の危機に見舞われる恐れがある。
 日本オリンピック委員会にも難問続出である。 いつもは、多くの国民に華やかで新鮮な息吹を感じさせる正月競技会だが、今年は、コロナ対策を継続しながら、国民のスポーツ離れに対し、競技団体による人気掘り起こしの積極的な訴えかけが必要になった。
 チーム経営や競技者の取り組みは限界に近い。無観客や観客制限の3年目に入ると影響の深刻さは大幅に増加する。
 マスメディアは、東京五輪の大騒ぎで国民の反発を招いたことを気にしてか、北京冬季五輪の幕開け目前とはいえ、正月は、メダル獲りの扇動を控えめに、中国の人権問題など政治的扱いを先行させていた。
 とはいえ、新春の競技会で五輪ムード高揚を狙っていただけに、国民の支持を獲得できるかの正念場だ。
 大野晃(スポーツジャーナリスト)

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2022年01月01日

【2021年スポーツ回顧2】世界の特徴=大野晃

1年延期の東京五輪パラリンピックを無観客で異常開催
◎2021年7月8日に、東京都などの無観客実施をIOCと合意した。東京都、北海道、神奈川県、埼玉県、千葉県、福島県の1都1道4県の会場は無観客で実施された。
◎競技関係者は、多国間、多競技間の競技者同士や応援ファンらとの交流禁止で、毎日検査し、移動は選手村など宿泊施設と競技会場に限られ、選手村滞在は競技開始5日前から終了後2日までに制限された。「バブル方式」の隔離と検査漬け。それでも、東京五輪パラリンピック関係者の感染は、選手13人を含む878人に上った。
◎28競技で史上最多の321種目に加えて、日本の要望などで、スケートボード、クライミング、サーフィン、野球・ソフトボール、空手の5競技が追加競技とされ、33競技339種目に膨張した。
◎28競技では、男女均等を目指し、男子種目を5つ減らし、女子種目を11種目増やすとともに、混合団体の9種目を新設し、女子の参加可能種目を165種目に大幅拡大した。若者に人気の自転車BMX(モトクロス)フリースタイルやバスケットボールの3人制(3バイ3)を加えた。テレビ映りのいい種目増で、競技や限られたトップ競技者の商品見本市化が拡張し、五輪の興行化は頂点に達した。
◎出場選手数は制限され、28競技で男子5440人、女子5176人の計10616人、男女比は男子51.2%、女子48.8%になった。追加競技を含めると、男子5704人、女子5386人の計11090人、男女比は男子55.7%、女子44.3%。五輪の簡素化を目指した「アジェンダ2020」で種目数の上限を310種目程度、出場選手数の上限を10500人程度としていたが、一気に突破した205カ国が参加し、ロシアはドーピング違反で選手団参加が禁止され、北朝鮮は不参加を表明した.。リオデジャネイロ五輪に続き、難民選手団が結成された。
◎競技運営費用や関係者の増大、輸送などで開催地に大幅な負担増となった。

2022年北京冬季五輪・パラリンピック開催に暗雲
◎2021年9月29日にIOCが大会組織委員会の方針を承認し、観客は中国本土在住者のみ容認することが決まった。東京五輪に続いて海外からの観客受け入れは断念。大会参加者は東京五輪同様に隔離と検査漬けで、ワクチン未接種者は北京到着後に21日間の隔離措置。
◎2021年12月6日に、米国が北京冬季五輪パラリンピックに米政府の代表を派遣しない「外交的ボイコット」を表明した。「中国の新疆ウイグル自治区で進行中のジェノサイドと人道に対する罪、その他の人権侵害」を理由とした。選手団は派遣する。豪州、英国、カナダなどが同調。IOCは12月11日の五輪サミットで外交的ボイコットに「五輪とスポーツの政治化に断固として反対する」と宣言した。
◎五輪テスト大会でも感染者が出た。
◎北米プロアイスホッケーリーグがコロナ禍の公式戦消化のため、2018年平昌冬季五輪に続き、不参加を決定した。

五輪開催地決定方式の大幅改定で招致合戦が消える
◎五輪開催地決定方式を2017年に変更し、2024年パリ夏季大会、28年ロサンゼルス夏季大会を同時決定したIOCは、2019年6月に、さらに開催地選定方式を大幅に変更し、2021年7月21日に、2032年夏季開催地に、豪州・メルボルン市を決定した。
◎2019年の改訂に基づき、21年2月に、IOC将来開催地夏季委員会が、2032年夏季開催地に、豪州・メルボルン市を選定し、同委員会の答申に基づき、IOC理事会が決定し、IOC総会に提案して、承認を受けた。
◎膨張した大会経費で開催地立候補が極限する中で、IOCが方針転換し、IOC総会へ向けた招致合戦は姿を消すことになった。

IOCが五輪での差別撤回のパフォーマンスを認める
◎IOCが、東京五輪で、片膝をついて人種差別に抗議するなどの政治的パフォーマンスを一部認め、サッカー女子などで拡大した。米国女子選手による「抑圧された人々」への連帯行動も認めた。
◎ジェンダー平等を目指すIOCの方針により、東京五輪で性変更選手が重量挙げに登場した。性的興味の映像などを防ぐため、ドイツ女子体操チームが足首までのタイツを使用するなどスタイルに変化も出た。

大谷翔平投手が米大リーグMVPに
◎米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平投手が、最高の栄誉であるア・リーグの最優秀選手(MVP)に選出された。日本選手としては2001年のイチロー外野手(マリナーズ)以来20年ぶり2人目だった。
◎投打の二刀流で、大谷は、投手として9勝2敗、防御率3・18、156奪三振、打者で打率2割5分7厘、46本塁打、100打点、26盗塁の好成績を残した。本塁打はリーグ3位、盗塁は同5位。選手間投票による両リーグの年間最優秀選手にも選ばれた。

欧州のサッカーなども観客制限で再開
◎欧州などのサッカーやラグビーのプロ競技が、無観客や観客制限で実施されたが、サッカー欧州選手権で、英国政府がロンドンの競技場で開催し、6万人以上を収容した決勝、準決勝を含む計8試合分を集計した結果、約6400人が感染したとみられると公表した。
◎英国スコットランドの公衆衛生局は、サッカー欧州選手権の試合を観戦したり、関連イベントなどに参加したりしたスコットランド住民ら約2000人が新型コロナウイルス感染症に感染したことが確認されたと発表した。
大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2021年12月31日

【2021年スポーツ回顧1】日本の特徴=大野晃

多くの国民が反対する中で1年延期の東京五輪パラリンピックを強行開催

◎東京都、北海道、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県、静岡県、宮城県、福島県の1都1道7県の42競技会場で大幅な広域開催となった。
◎東京五輪パラリンピックの大会経費が招致時の約2倍の1兆 4530億円の見通しになったと2021年12月22日に組織委員会が発表した。組織委が6343億円、東京都が6248億円、国が1939億円を負担する。
◎会計検査院の試算では、2013年度から17年度に国の関連支出が8011億円に上ったとし、都以外の自治体の開催費用などを含めると、2020年までに全体支出は3兆円規模に膨らむ可能性が高いとした。
◎聖火リレーは、全国で約4割の20都道府が一部の中止を決めたほか、実施しても、公道を使用せず、引き継ぎ式だけがほとんどだった。
◎日本国内での各国選手団の事前合宿も相次いで中止された。
◎新型コロナウイルス感染症の感染者数は、日本全国で大会中に、1日1万5000人を超え、大会終了後は2万5000人を超える感染爆発をもたらした。

日本選手団はメダルラッシュも競技拡大なし

◎日本選手団(1060人で選手583人=男子は306人、女子は277人で全体の約47.5%、役員477人)の選手数は、夏季大会史上最多だった。全競技に出場し、金メダル30個獲得が目標だった。獲得メダル総数は、58(金27、銀14、銅17)で史上最多だった。
女子30も史上最多だった。メダル獲得率は、5・70%で1964年東京大会の5.93%に次ぐ史上2位だった。
◎金メダル獲得は、女子が14、男子が12、混合1だが、7競技と新3競技の10競技に限られ、御四家と言われる柔道9、レスリング5、水泳2、体操2に集中し、従来と変わらず、新競技のスケートボード3、野球・ソフトボール2、空手1が押し上げた。
◎新型コロナウイルス感染症の感染拡大で、世界の競技環境が 劣悪化した中でも、大きな地元の利は見られず、強化の偏向が顕著になった。

意思表明しないJOCに不信が広がる
◎山下泰裕会長が2期目に再任されたJOCは、開催反対の声が高まった東京五輪に対し、五輪代表の意見集約をせず、意思表明をしないまま参加した。さらに十分な総括もせず、その主体性に不信の声が広がった。
◎北京冬季五輪に対しても、沈黙のJOCは変わらず、国民と競技者の溝は、深まるばかりだった。 

プロ野球でヤクルトが20年ぶり日本一
◎延長戦なしで行われたプロ野球は、セ・リーグでヤクルトが、2 年連続最下位から、6年ぶり8回目の優勝を飾った。2015年に2年連続最下位から優勝した時と同様の下克上優勝だった。パ・リーグもオリックスが、2年連続最下位から、25年ぶり13回目の優勝を成しとげた。中嶋聡監督が就任1年目の快挙で、両リーグの前年最下位がともに優勝するのは初めてだった。
◎日本シリーズは、ヤクルトがオリックスを4勝2敗で降し、20年 ぶり6回目の日本一となった。
◎セ、パ両リーグの観客数は、前年より6割増しとなったが、201 9年の3分の1程度にとどまった。

大横綱・白鵬が引退し照ノ富士の一人横綱に
◎大相撲で歴代最多45回の幕内優勝を誇った横綱・白鵬が秋場所後に引退した。モンゴル出身で2007年夏場所後に横綱に昇進し、15年間にわたり、野球賭博問題や八百長問題、東日本大震災など大揺れの大相撲を、一人横綱などで引っ張ったが、横綱審議会などから苦言を呈されることもあった。
◎日本相撲協会は9月30日に元横綱・白鵬の引退と年寄「間垣」の襲名を、新人親方の誓約をさせた上で認める異例の手続きを踏んだ。
◎白鵬に先立って、横綱・鶴竜が引退し、白鵬の休場で横綱不在の場所が多かったが、モンゴル出身の後輩の新横綱・照ノ富士が秋場所で優勝し、一人横綱でリードすることになった。
◎大相撲春場所で、三段目力士・響龍が投げを受けた際に頭部から俵付近に落ち負傷し、1カ月の入院の末、急性呼吸不全で亡くなった。
◎力士の新型コロナウイルス感染症の感染で、宮城野部屋の全力士が休場するなど、休場が多かった。

Jリーグは川崎が2連覇
◎サッカーJリーグJ1は、観客制限で、川崎が、2年連続4度目のリーグ優勝を決めた。
◎Jリーグの多くのクラブで赤字や債務超過が進み、経営難が深 刻になった。

大学の競技会や甲子園の高校野球再開
◎大学の競技会は、無観客や観客制限で再開され、夏の甲子園全国高校野球も観客制限で再開された。
◎高校野球大会では、延長戦のタイブレーク方式が採用され、投手の1週間500球以内の投球数制限が実施された。
◎再開された全国高校総合体育大会に、8競技15校が出場を 辞退した。 

国体の中止が続き、ねんりんピックも中止に
◎三重県で開催予定だった国民体育大会と全国障害者スポーツ大会が中止された。国体中止は2年連続、障害者スポーツ大会の中止は3年連続。
◎新型コロナウイルス感染症の感染拡大のため、「ねんりんピック(全国健康福祉祭)」が初めて中止された。

子どもの体力低下が顕著に
◎スポーツ庁が、小中学生を対象とする2021年度の全国体力テスト結果で、男子小中学生の体力合計点が2008年度の調査開始以来最低を更新したと発表した。小学校の男女と中学校の男子は肥満の割合が過去最高となった。
◎新型コロナウイルス感染症の感染拡大による一斉休校や学校での活動制限などが深刻な影響を与えているとみられた。
◎スポーツ庁はじめ、日本スポーツ協会、そしてJOCも、対策を 示さず、一般国民の運動不足解消の対応も鈍かった。

10eスポーツ人気が高まる
◎対戦型ゲームで勝敗を競う「eスポーツ」に企業、学校、自治体が群がり、人気利用に動き出した。

スポーツ・マスメディアの問題点
1、東京五輪パラリンピックの異常開催を、無観客を条件に容認し、政治利用の批判を回避した。
2、東京五輪パラリンピックのメダルラッシュには無批判に大騒ぎした。
3、東京五輪パラリンピックの異常開催に動揺する競技者が少なくなかったが、五輪代表の社会的使命を問わなかった。
4、五輪の抱える問題に対し、IOCへの揶揄はあっても、掘り下げることがなかった。
5、東京五輪パラリンピックの異常開催に沈黙したJOCへの批判が姿を消し、スポーツ庁批判は皆無だった。
6、プロ野球や大相撲の時代変化に敏感に対応できなかった。
7、感染拡大防止策による取材制限もあって、競技の内容分析を欠いた。
8、外出自粛などで制限された草の根スポーツへの関心を失った。
9、スポーツ離れの国民意識の変化に鈍感だった。
10、スポーツの力を強調しながら、人間的価値の探究を怠った。
  大野晃
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2021年12月18日

【スポーツ】揺らぐ競技者の主体性=大野晃

 新型コロナウイルス感染症の拡大で、2年間に及ぶ異常事態が続いた日本スポーツで、競技者の社会性が揺らいでいる。
 国民の多くが感染爆発を恐れて開催に反対したのに、無観客で隔離された東京五輪の異常開催に意思表明せずに無批判に参加し、総括しないまま、来年の北京冬季五輪出場を目指す日本オリンピック委員会(JOC)と五輪代表は、国民とかけ離れてしまった。
 しかも政府は、北京冬季五輪に関する国連休戦決議に参加せず、米国主導の外交的ボイコットに同調の構えのようだ。五輪を通じて平和を希求するはずのJOCだが、北京冬季五輪で、主体的に、中国を含めた世界の競技者と連帯できるのか。
 競技者が、人種や性の差別に反対する行動で意識変化を起こしながら、競技専念の生活では、国民の支持に不安を感じて不思議はない。しかし、社会活動が制限されて、主体的に動けない。
  政府の規制が長引き、競技者の主体性すら薄れたのではないかと危惧する。主体性の喪失は、社会性の放棄に通じ、国民とともに生きる競技者の存立基盤を失わせる。

  一方で、プロ野球ではヤクルトが20年ぶりに日本一となり、大相撲は記録ずくめの横綱・白鵬が引退し、照ノ富士の一人横綱となった。 日本を代表するプロ競技で、大きな時代変化が起こっている。
 米大リーグで大谷翔平投手が大活躍し、東京五輪ではメダルラッシュだった。その都度、マスメディアは大騒ぎした。しかし、大きな社会的反響は、見出せなかった。
 それだけ、スポーツが「見て面白い」娯楽に閉じ込められて、生活には身近に感じられなくなったからではないか。
 国民の運動不足以上に、豊かな生活に不可欠とされるスポーツに親しむ意識の減退にこそ、コロナ禍の深刻な問題がある。 競技者と国民の溝、スポーツ離れの克服が、スポーツ庁やJOCなどスポーツ関係者とマスメディアに突きつけられた重い課題だ。
 大野晃
   
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2021年11月29日

【スポーツ】個性尊重の指導が求められている=大野晃

 エンゼルスの大谷翔平投手が、米大リーグで最高のア・リーグ最優秀選手(MVP)に選ばれた。投げて9勝、156奪三振。打って46本塁打、100打点。走って26盗塁。チームは優勝に遠かったが、投打の二刀流で申し分ない見事な成績だった。
  日本人としてイチロー外野手以来の20年ぶり2人目の栄誉だが、伝説的なベーブ・ルースに挑んだ27歳の若きヒーロー誕生で、コロナ禍の米国ファンの夢を育んだ。
 テレビ観戦がほとんどの日本人ファンも歓喜した。パワフルな豪速球を投げ込み、三振を恐れずに豪快に振り抜く。ライナーでスタンドに突き刺さる本塁打は本場ファンの度肝を抜いた。
 笑顔を絶やさず、生真面目で、しかも、楽しそうにプレーする姿は、さわやかで大らかな青年の魅力を振りまいた。その裏で、体を鍛え抜いてケガを克服し、研究熱心な努力家でもある。
 高校野球ならエースで4番はあっても、プロ野球では、投打二刀流は理想であり、憧れであっても、現実的ではないと思われてきた。しかし、193aの恵まれた体格と高い潜在能力を見込まれて、日本ハム時代から大きく育てることに、指導者が十分に留意し、渡米後も継続されて開花したが「米国の方が、二刀流を受け入れてもらえた」と言う。うれしい挑戦の場があったということだろう。

 ともすれば、日本野球は、勝利至上で競技者を型にはめて、個人プレーの評価を狭くする傾向があり、大きな飛躍の障害となるケースが少なくなかった。だから、奇跡の幸運児でもある。
  多くの競技で、大型の外国人に匹敵する日本人離れした体形の少年が育っている。鍛え方しだいでは、大きく能力を伸ばす可能性を秘めている。
 大谷の躍進は、保守的な日本的指導法に新たな問題を投げかけた。イチローの活躍以来、個性を尊重する指導の必要性が訴えられた。
  しかし、多くの指導者が改革には尻込みしがちである。第二、第三の大谷登場を見逃してはいないだろうか。
 大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2021年11月19日

【スポーツ】感染激減で正常化に焦り=大野晃

 新型コロナウイルス感染症の感染者激減で、プロ野球やJリーグは、来シーズンからの正常化を実現する意気込みだ。
 観客制限が続いたプロ野球の今シーズンの観客数は、より規制の厳しかった昨シーズンからの緩和を政府に要望したこともあって、6割増しになったとはいえ、感染拡大前の2年前のシーズンの3分の1にすぎなかった。 正常化は切実だが、日本シリーズでは延長戦を復活させるなど焦りも感じられる。
 高校部活動の大会や対外試合は2年連続して規制下に置かれ、在学中に正常な活動を経験できないまま卒業する悲劇的な競技生活の恐れもある。まして市民スポーツレベルでは、正常化の見通しが立たず、グループの解散、縮小の危機に直面している。
 スポーツ庁は競技団体経営の効率化を訴えるばかりで、国民の競技環境改善の方途を示さない。強調されてきた東京五輪の国民スポーツへの遺産は、巨額を投じた競技会場の維持難という負の遺産だけなのか。
 メダル獲りを煽った民放テレビは、相変わらず五輪メダリストの番組タレント化を狙い、卓球の銀メダリストが大ケガをする事故まで起こした。

 11月に入って晴天が多かったため、公園で運動不足解消のマスクをしたランニング姿を多く見かけたが、国民の欲求不満は高まるばかりらしい。 しかし、日本スポーツ協会は知らんふりである。政府の無策ぶりが伝染して、公的なスポーツ振興機関の怠慢が、スポーツ関係者の焦りを生んでいるようだ。
 WITHコロナのスポーツライフは、屋内で個人的に、ということか。オンラインでゲームに取り組めばいいとでも言わんばかりだ。コロナ禍で、国民のスポーツ権無視が目に余る。
 政府が経済活動活性化に集中して、会食や旅行の規制緩和に動いても、国民の生活再建は見通せない。
  マスメディアは、多方面からの安全、安心な再建策を提示する努力が必要だろう。
   大野晃(スポーツジャーナリスト)

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2021年11月09日

【スポーツ】下剋上のプロ野球=大野晃

 激戦のプロ野球セ・リーグでヤクルト、パ・リーグでオリックスが、ともに、2年連続最下位から一気に頂点に上りつめた。
ヤクルトは、2位の阪神と大接戦で、6年ぶりの優勝。 オリックスは、2位のロッテと最終盤までもつれる競り合いで、試合日程終了後に、実に25年ぶりの栄冠が待っていた。
 ヤクルトの高津臣吾監督は、就任2年目、オリックスの中嶋聡監督は、1年目の快挙だった。新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止対策で、観客が制限され、延長戦のない異例のシーズンで、ヤクルトは、開幕時に主力を感染などで欠き、苦しいスタートだったが、若手とベテランが補って乗り切り、入国制限で遅れた新戦力の外国人競技者が合流して、勢いをつけた。 東京五輪で本拠地の神宮球場が使えないハンデも、しのぎ切った。
 オリックスは、2017年に練習拠点を神戸市から大阪市の舞洲に移して、じっくり育った競技者たちが力をつけ、セ・パ交流戦で11年ぶりに優勝して、波に乗った。 イチロー外野手の大活躍以来、四半世紀を経ての優勝だ。

 厳しいシーズンは総合力がものを言うが、ヤクルトは、救援投手で米大リーガーでもあった高津監督の指導で、投手陣のチーム防御率が飛躍的に高まり、強力打線を支えた。
 オリックスは、エース山本由伸と高卒2年目の宮城大弥の両投手が安定した力を発揮し、強力な上位打線が爆発した。2軍監督から昇格した中嶋監督の、競技者の能力を見抜いた適材適所の起用が効を奏した。
 両チームの共通点は多いが、何よりも、競技者たちが互いに補い合うチーム一体の闘いぶりを貫いたことと、優勝への意欲を高めたことが大きい。
 競技者たちは、低迷の悔しさをバネに、諦めずに挑んで、自信を深めていったことを強調した。
 両監督は「負け犬」からの脱却を訴え続け、競技者の自主性を引き出すことに腐心したらしい。目標を高く持ち、力を合わせ、着実に、諦めずに努力を続けた成果が、下克上を可能にしたようだ。
 大野晃(スポーツジャーナリスト)



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2021年10月19日

【スポーツ】3大懸念の北京冬季五輪=大野晃

 来年2月4日の北京冬季五輪開幕まで3カ月余りに近づいた。2008年夏季五輪に続く、史上初の夏冬五輪同一都市開催であり、2018年韓国の平昌冬季五輪から東アジアでの3五輪連続開催の締めくくりとなる。
  東京五輪の教訓が生かされるか注目される。新型コロナウイルス感染症の感染収束が見えない中で、国際オリンピック委員会と同五輪組織委員会は海外からの観客受け入れを断念した。
  熱烈な応援の中国観客が圧倒的に取り巻く中でのメダル争いとなる。
 海外の競技者が参加してテスト大会が始まっているが、東京五輪と同じ隔離と検査漬けを特徴とする感染防止対策が徹底されるようだ。東京五輪が都民の感染爆発を招いたように、地元民の感染拡大に不安はないのか。
 競技は混合種目が増えて7競技109種目と史上最多に膨らんだ。会場は3地域に分かれ、スケートなど屋内競技は北京市内に集中し、アルペンスキーとそり競技は北部の延慶区で、ノルディックスキーなどは北 京市から約160`離れた万里の長城に近い張家口市で行われる。

  近年の冬季五輪で最大の課題は、雪不足など温暖化による自然環境対策。人工雪で克服するというが、スムーズに競技できるかは未知数だ。 
 しかも、米中対立の厳しい国際情勢が左右しかねない。バイデン米政権には政府関係者の参加ボイコットの声もあり、中国の人権問題が障害になる恐れがある。
  国際政治に振り回され、政府がボイコットを言い出したら、日本オリンピック委員会は、どう対応するのか。
  夏季五輪で中国批判を繰り返したマスメディアだが、踏襲するだけで、メダル獲りに大騒ぎか。
北京で2度目の五輪開催は、コロナ禍での社会問題、温暖化の自然環境問題、そして複雑な国際問題と、3大懸念を抱えた、むずかしさを示す。
 3五輪連続開催が、アジアのスポーツ発展に何をもたらしたかを見つめ直す場でもある。
大野晃(スポーツジャーナリスト)


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2021年10月12日

【スポーツ】身勝手な国際感覚=大野晃

 大相撲をリードした横綱・白鵬が引退した。 横綱として15年間にわたり、野球賭博問題や八百長問題、東日本大震災やコロナ禍など、大相撲が揺れ動いた苦境の時代を乗り越え、45回の優勝など数々の記録を樹立した。
 少年時代にモンゴルから来日し、厳しい環境の中で、鍛錬を積んで頂点に立ち、米国ハワイ出身の高見山以来続く外国人力士が日本伝統の大相撲を支え発展させた象徴的な存在になった。
 にもかかわらず、立ち合いの強引さなどで、横綱の品格を批判されることもしばしばだった。
モンゴル出身の後輩横綱・照ノ富士など外国人力士抜きに興行は成り立たないのだが、大相撲関係者などに、外国人力士への差別意識が根深いようだ。
 米国大リーグで、大谷翔平投手が2桁勝利、2桁本塁打で本塁打王の、二刀流の偉業に迫った。 神様ベーブ・ルース以来、103年ぶりの快挙をファンは固唾をのんで見守った。日本人競技者の躍進に拍手を惜しまなかった。
 海外で活躍する日本人競技者が多くなったが、海外のファンは喜んで迎え入れている。
 なのに、日本では、海外での成果には大騒ぎはするが、伝統を強調する競技を中心に、外国人競技者を素直に受け入れようとはしない。 スポーツに国境はないはずだが、日本人のスポーツ観には、垣根があるようだ。

 五輪で、日本代表のメダル獲りばかりを追うのは、そのためだろう。ひいきの応援に熱心なあまり、高い能力による競い合いの面白さや競技の醍醐味を、見逃す観戦者が少なくない。
 自ら競技を体験することが、極端に少ないからではないか。学校卒業後は、資金がなければ、挑戦する機会や場がほとんどない。
 「誰もが、いつでも、どこでも」の国のスポーツ振興策が、かけ声倒れになっているからだ。
 国際化を喜ぶファンが多くはなったが、競技は見るだけに限定される状態が続くと、身勝手な国際感覚の温床になりかねない。
大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2021年09月20日

【スポーツ】JOC、五輪検証を行うのが責務=大野晃

 危惧された新型コロナウイルス感染症の感染爆発と、強行開催で国民の批判を浴びた菅政権崩壊の中で、東京五輪パラリンピックが幕を閉じた。
  国民の競技参加の機会はさらに遠のき、コロナ禍対策の最重要な時期に政治空白をもたらした。五輪代表の無理やりの挑戦のおかげで、多くの国民がスポーツの場を奪われた事態を、異常開催を推進した日本オリンピック委員会(JOC)はどう考えるのか。
 国民スポーツの再建には、代表の意見を集約することなく開催に突き進んだJOCの総括が不可欠だ。 代表たちが「メダル獲得で感謝」で通用するのはテレビなど称賛したマスメディアに対してだけに過ぎない。
 代表の自覚は国民への責任でもある。スポーツ権を行使できるのは選ばれた者だけなのか。力を育んだ学校部活動などは停止に追い込まれ、地域スポーツの制限は強まった。
 無観客の競技会が当たり前になり、五輪代表を目指す環境条件は厳しさを増した。コロナ禍の影響ばかりでなく、五輪成果に一面化されたスポーツ行政により、一般国民の競技スポーツ参加は困難さに直面している。
 国民体育大会や全国健康福祉祭も中止され、さまざまな競技会が規制された。競技団体が結集するJOCは広く大きな国民スポーツに支えられて存在する。
 しかし国民スポーツの拡大、発展を重視してきたと言えるのか。JOCは広く国民に開かれた組織に変わる必要がある。まずは会議を公開するなど自立を目指した原点に帰って、東京五輪の全面的な検証に取り組まねばなるまい。
 政府に意見が言えないうえ、参画する国際オリンピック委員会(IOC)にすら、ものを言わないJOCでは、五輪代表を送り出す資格はない。バッハ会長を揶揄するなど、盛んにIOC批判を繰り返したマスメディアだが、足元のJOCのあり方に沈黙していたのでは、五輪報道の使命放棄と言うしかない。
 大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2021年09月17日

【スポーツ】子供らの競技離れ加速か=大野晃

 新型コロナウイルス感染症の感染急拡大の中で強行開催された東京五輪パラリンピックは、感染爆発を招いて閉幕した。
 命の危険が増大し、秋のスポーツシーズンは、閉鎖の瀬戸際にある。
 無観客の巨大国際競技会は、改めて特殊環境でなければ、トップ競技者の競技継続がむずかしいことを教えた。家族の全面協力や企業スポンサー支援、国の特別補助を受けることが条件であり、気軽に挑戦はできない。
 テレビ映像などで接するしかなかったことで、一層、競技スポーツを特殊で、見るだけのものと強く印象づけた。
 夏休み明けの学校新学期は、再開されても、分散登校やオンライン授業などで、友だちとの交流が大幅に制限され、楽しい部活動は停止されそうだ。
  競技に親しむ契機となる学校部活動の制限は、さらに、子供たちの競技スポーツ離れを加速させる恐れがある。コロナ禍で、夏の全国高校野球は大会中に2校、全国高校総体では24競技に74校の出場辞退が相次いだ。

  トップを目指す競技者の不安も大きい。1964年東京五輪は、競技を楽しむ草の根スポーツ発展の契機となって、70年代に、全国の地域や職場で、誰もが手軽に参加できる競技スポーツグループが拡大した。
 半世紀すぎて、2度目の東京五輪は、国民の広く大きなスポーツ参加のバネにはなりそうもない。三重国体や全国健康福祉祭も中止された。 コロナ禍の影響ばかりではない。
 東京五輪パラリンピック開催は、国民スポーツの拡大を目指してはいなかった。だから、新国立競技場などの新設、整備された大型競技場の大会後の利用策は、明確になっていない。
 国のスポーツ行政は、多くの国民のスポーツを軽視し、地方自治体も、観光客誘致のイベントばかりに熱心だ。 東京五輪パラリンピックは、国民のスポーツライフに何ももたらさず、重い税金負担だけを残した。
 国民のスポーツ権を重視するスポーツ行政に転換することこそ、日本スポーツの再出発には不可欠である。
 大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2021年08月19日

【スポーツ】いびつなメダル獲得策あらわ=大野晃

  異常五輪は、全国に新型コロナウイルス感染症の感染爆発をもたらした。
命の危険をメダル獲得が相殺するとでも言うように、テレビはメダルラッシュに大はしゃぎで、新聞は日本勢の競技ばかりに大きく紙面を割いた。
 コロナ禍で、海外代表が練習不足に追い込まれ、酷暑に悩まされる中での有利な条件下でも、日本代表のメダル獲得の内実は、5年前の五輪と大差なかった。
 獲得競技の極端な偏向が継続し、地の利は東京特薦の新競技に集中した。28競技306種目の前回から33競技339種目にも膨れたが、27の金メダル獲得のうち、24は、柔道、レスリング、水泳、体操の御四家計18と特薦3競技6が占めた。
 特薦競技を除けば3競技だけで、全競技の3分の1に満たない。58の総メダル獲得競技も、特薦競技を除くと前回から4競技増にとどまった。
 少ない競技で世界の頂点に挑む傾向は、21世紀に入ってから、ほぼ変わらない。

 人気の集団球技は、特薦競技で東京五輪後は消える野球とソフトボールで金メダルを確保し、女子バスケットが初めて銀メダルを獲得したが、他はほとんどがメダルには遠かった。
 開催国特権で全競技に出場した日本代表だが、政府主導のいびつなメダル獲り策では、広く多くの競技が発展する大きなバネにはならなかった。
 強引な開催は、日本代表を飛躍させることができず、世界新記録はわずかで、国際総合競技会としても、異様なほど低調だったことを示した。
 巨額な税金で整備された競技会施設を有効に利用するには、スポーツ基本法に基づく国民のスポーツ権を重視したスポーツ政策が不可欠である。
 マスメディアは、相変わらず日本勢の動きしか伝えず、世界が見えない鎖国的報道に終始した。映像観戦を強いられたファンが、会場などに詰めかけ、世界を知りたがったのは無理もない。
大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2021年08月12日

【スポーツ】五輪成績が競技の死活にぎる=大野晃

 東京五輪の異常開催とともに、全国の新型コロナウイルス感染症の感染が急拡大し、忌まわしい五輪の印象を一段と強めた。
酷暑もあって、海外の有力代表の不振が目立ち、途中で棄権も出る中で、日本勢のメダル量産が続いた。
 五輪代表は、無観客で、海外のライバルと交流することなく、ただ懸命に競技し、テレビカメラに語りかけた。
 2008年北京五輪以来、13年ぶりに五輪競技に復帰した女子ソフトボールで2連覇を達成した日本代表のエース上野由岐子さん(39)は 「あきらめなければ夢は実現する」と訴えた。
 五輪競技から、はずれた途端に、金メダル実績を無視されて、国の援助が激減した苦しさに耐えてきたからだ。
 鉄棒一つにかけて失敗した男子体操の内村航平さん(32)は「体操ニッポンを続けることが重要」と挑んだ意味を強調した。五輪成績が競技の死活を握ることを知っていたからだ。五輪経験豊富なベテランたちに明暗はあったが、その意気込みは、単に花道を飾ることではなかった。 競技支援の将来への不安を払しょくするためのようだった。
 国民のスポーツ権を保障するスポーツ基本法を、五輪至上主義に歪めた自民党政権の冷たさが身に染みるからに違いない。
 野球やサッカー以外のマイナーと言われる競技で、競技生活の継続がむずかしい環境が、ベテラン競技者の歯を食いしばっての挑戦を促したようだ。
 異常開催の政府を批判できない弱い立場で、4年に1回、ちやほやされて、失敗すれば打ち捨てられる。マスメディアのメダルラッシュの絶叫の裏で、厳しい現状に変わりはない。国民の命を大切にしない政府は、競技者も政治利用の使い捨てである。
 政府が後押しする柔道は、しゃにむに金メダル獲りに邁進し続けた。勝つことしか意味がないかのように。新競技などで躍進した若い新代表は屈託がない。五輪至上の重圧を経験せずに、楽しんできたからだろう。
 異常開催の東京五輪は、日本のスポーツ行政の異常さも、あぶり出す。
  大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2021年07月24日

【スポーツコラム拡大版】東京五輪の異常開催を許したマスメディア=大野晃

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 2021年東京五輪が新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)拡大を増幅する危険のある緊急事態宣言下で開幕。医科学専門家の警告を無視し、開催の是非を封じ込めて、暴走した政府、東京都と国際オリンピック委員会(IOC)。追従の日本オリンピック委員会(JOC)。マスメディアは異常開催をなぜ許したのか。経緯を追って重点的に検証してみる。


テレビ向け見世物ショー

 競技は、互いに敬意をはらう競技者の友情と協力で成り立つ。 世界中の競技者に、その精神を拡大し、競技者の団結と連帯を強めて、支援者やファンなど取り巻く人々も含めた絆を深めることで世界平和実現の基礎を固めるのが五輪の基本理念だ。 単なる競技会ではなく、人類の理想を掲げた平和の祭典である。
 ところが東京五輪では、多国間、多競技間の競技者や関係者同士、そして応援ファンとの交流が禁止され、行動の自由が制限され、公平な条件での競争が保障されず、安全が確保されないまま、競技者は無批判な参加を強いられた。
 これでは、眼前にある五輪は似非五輪であり、公正な国際競技会ですらない。テレビ向けの見世物ショーにすぎない。膨大な税金を負担させられた国民のほとんどは、他国で開催された五輪同様に映像観戦に限られた。
 しかも、世界中で命の不安を膨張しかねない、スポーツに名を借りた悪質テレビ番組と言っていい。万人が楽しめるはずがない。

経済活性化国威発情を狙う

 世界の競技者を目の当りにし、世界のファンたちと一体に競技を楽しむ五輪の平和な、お祭り騒ぎに胸躍らせる国民ファンは多い。半世紀以上も前の最初の東京五輪を経験し、近年、国際競技会の拡大で、国際的な和気あいあいとした雰囲気の体験が増えた国民には、五輪人気が根深い。
 それを利用し、自民党政権は、巨額な税金を投じて、バブル崩壊後の日本経済活性化の切り札とし、それによる対外的な国力誇示と国威発揚を狙った政治的、経済的国家事業とするために、五輪開催に動いた。(→続きを読む)
 

(→続きを読む)
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2021年06月19日

【スポーツ】競技者とメディアに一石=大野晃

 女子テニスの大坂なおみさんが、全仏オープンで記者会見を拒否し、ルールにより罰金を科されて、大会を棄権した。
「精神状態を無視された」が会見拒否の理由だったが、大坂さんは謝罪し、大会主催者は改善策を協議するという。
競技者とメディア、そして競技会主催者の競技団体の関係に、一石を投じる事態だった。
 世界的な競技会の発展は、競技者と競技団体とメディアの三者の協力で発展してきたことを歴史は教えるが、競技団体とメディアによる競技会の商業主義的利用の拡大により、三者の関係が極度に歪んできたことを如実に示す事態である。
 競技団体は、メディアを通じて競技会の興行化を拡大し、メディアは競技者を商業利用して、競技者は多額の収入を得るようになった。
 競技会の本質的意義を重視して、互いに協力する信義とルールを尊重していたはずなのだが、歯止めのない商業主義路線は、時として、信義を踏みにじる行為に走らせた。
 競技者とメディアの関係は、これまでも問題をはらんできたし、記者会見では本音を語らず、SNSを通じて意思表示する競技者が多くなった。
 競技団体はメディアを宣伝媒体とみなし、実態を隠して形式的な対応をとり、取材制限は強まるばかりだった。

 その典型が、東京五輪に現れている。
 政治利用を狙う政府や経済効果を期待する企業利益が強力にけん引して、主催者の国際オリンピック委員会は、世界の安全に不安があっても、開催強行に動き、メディアは開催利益を求め続け、競技者は競技成果に執着する。
 それらが、五輪の意義を無視した、異常な開催を招いていると言えまいか。
 しかも、コロナ禍のオンライン取材の拡大で、メディアが競技者や競技団体の実態を把握しにくくなり、五輪開催を巡る事実確認は断片的にしか進まない。
 大坂さんの一石も、東京五輪開催も、スポーツ報道の本質的な問題提起である。
大野晃
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2021年06月15日

【スポーツ】 事前合宿 感染対策の実験台=大野晃

 「緊急事態宣言下でも東京五輪は開催する」と国民を驚かせたコーツ国際オリンピック委員会副会長の地元の豪州から女子ソフトボール代表が、五輪事前合宿の第1号として来日し、群馬県太田市で活動を始めた。
 日本のむし暑さなどに慣れるのが目的らしいが、開幕予定まで1カ月以上をかけて、検査漬けと隔離を特徴とする新型コロナウイルス感染症の感染対策の、不自由な実験台を思わせる。感染対策などで100を超える自治体が事前合宿断念を決めた中だけに、競技者に忍耐を強いる開催への実績作りにも映る。
 菅首相は、東京五輪開催の意義に関して、コロナ禍で二転三転したうえ、「スポーツの力を発信する」と競技会一般論に縮小させてしまった。これでは、巨額な税金を投じた大規模な五輪開催の国民的成果を期待できない。
  山下泰裕日本オリンピック委員会長に至っては、開幕予定まで50日を切っても、「安心安全な開催を信じる」と神頼み的発言を繰り返し、動揺する五輪代表の声に耳を貸そうとしない。そういえば、女性差別発言で辞任した森喜朗前組織委員会長は、「日本は神の国」発言で辞任した元首相だった。
  政府の感染症対策分科会の尾身茂会長は、「感染の世界的流行での開催は普通でない」と厳しく指摘した。 開催強行に科学的根拠が見出せないまま、政府の固執が、混乱に拍車をかけている。
 しかも、ワクチンの優先接種が始まった五輪代表たちは、開催の是非に沈黙を強要されているようだが、感染は自己責任と突き放されてもいる。多国間の競技者同士や応援ファンとの交流は規制され、公平な条件での競争が保障されず、行動の自由が制限されて、安全が確保されない競技会への、無批判な出場が求められている。
 五輪にとどまらず、一般的な競技会としても、異常な「2021年東京五輪」がスポーツ史に刻まれそうだ。
 日本スポーツの実情を、世界は注目している。常識外れの孤立を恐れる。
大野晃 (スポーツジャーナリスト)
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2021年05月22日

【スポーツ】五輪代表の意見集約を=大野晃

「緊急事態宣言は東京五輪開催と無関係」と、強気なバッハ国際オリンピック委員会会長は、五輪出場の競技者への新型コロナウイルス感染症ワクチン確保を発表し、優先接種を促した。しかし、五輪競泳代表の池江璃花子さんはSNSで五輪出場辞退を求められたと、悩みを訴え、陸上代表の新谷仁美さんは優先接種に疑問を投げかけた。
  国民の命を大切にしない開催強行と、多くの国民が不信を募らせる中で、五輪代表に動揺が広がっているようだ。
 懸命な努力の舞台やスポーツの力を示す機会などと競技者擁護が、五輪開催理由として強調される。しかし、代表の心情は複雑だ。ほとんどの代表が、国民と対立しての五輪を求めないようだが、開催是非の意見は伝わらない。
 代表の開催判断停止は、五輪をめぐる国民の分断を招きかねない。
 五輪は特別なスポーツの場にすぎず、開催できなくとも、スポーツ機会が消えるわけではない。関係者が、自主的に開催を決める大会であり、競技者第一が基本だ。五輪代表の自由な意見集約を保障しなければなるまい。
 日本オリンピック委員会は、1980年モスクワ五輪ボイコットで、それを怠った。苦い経験である。
代表は意見集約のために連絡を取り合い、五輪を招致した東京都や支援する政府に、コロナ禍急拡大でも開催する意義や条件を細部にわたって示すことを要求し、当事者として疑念を晴らす必要がある。
 希望的観測による感染対策がことごとく失敗しながら、甘い見通しの開催準備を示すだけなら、開催断念も辞さない覚悟で、議論を深め、意思表示すべきだ。海外代表の不安払拭に、ホスト競技者の責任がある。
  代表に影響を与えてきたマスメディアは、冷静な判断を促す義務がある。従順さを強要し、メダル獲得を煽るのは犯罪的だ。
  命の危険にさらされた人々を元気づけるなどと、傲慢な態度は代表の資格を失い、競技生活の将来はないだろう。
大野晃(スポーツジャーナリスト)

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2021年05月18日

【スポーツ】国民から嫌われた五輪=大野晃

  初夏のさわやかなスポーツシーズンを迎えながら、東京や大阪などで3回目の緊急事態宣言が出され、またも、プロ野球などの無観客試合や、スポーツ活動の制限が強要された。
  薫風が恨めしいスポーツ愛好者のもとに、心情を逆なでするような「緊急事態宣言と東京五輪開催は無関係」というバッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長の発言が届けられ、国民生活を無視した五輪開催かと、厳しい批判が巻き起こり、にわかに「五輪嫌い」が拡散したようだ。
  さまざまな競技の楽しさに触れ、世界の競技者の友好連帯の姿に、世界平和への期待を膨らませるのが五輪の根本的な意義なのだが、東京開催は招致段階から都民の賛同が少なく、経済効果ばかりが強調されて、盛り上がりを欠いていた。
  にもかかわらず、安倍前首相が主導して、巨額の税金を投じる国家行事にまつりあげ、多くのスポーツ関係者が軽視された平和とスポーツの祭典に懐疑は根深く広がった。
  政府の指揮下で準備が強引に進められたうえ、新型コロナウイルス感染症の再拡大が急激な中で、多くの国民に犠牲を強いる無謀な開催と映っても不思議はない。

 開催を強行すれば国民と対立する五輪になりかねない。 安全で安心な国民生活が第一だからだ。
 とはいえ、東京開催が中止されても、将来の五輪に期待を寄せる国民は少なくないだろう。
 五輪挑戦への国民の支持の継続を願うなら、五輪代表などの競技者や関係者は、開催国ホストとして、世界的な感染症まん延の危険が否定できない東京開催を、断念する勇気を示すべきだろう。世界の仲間も納得するはずだ。
 競技者が結集する日本オリンピック委員会(JOC)が、コロナ禍の深刻な状況に、何ら動きを見せないのはどうしたことか。
 政府に従うだけなら、独立性を自ら放棄することになる。
 1980年モスクワ五輪ボイコットの悪夢へ逆戻りするばかりだ。
  大野晃 (スポーツジャーナリスト)

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2021年04月19日

【スポーツ】五輪中止の時が来た=大野晃

 1年延期された東京五輪の開幕予定まで100日を切った。
都内の新型コロナウイルス感染症再拡大の勢いは強まり、関西圏など全国的な再拡大が急激に進んでいる。 ワクチン接種は遅れ、医療逼迫の危機が続く。
  組織委員会は安全、安心な運営を目指すというが、海外観客受け入れを断念しても、33競技が17日間に集中する大会の、国内観客の大きな移動は、感染拡大を助長する危険がある。
 しかも、感染拡大の収束を見せない諸外国の延べ1万人以上の競技者を受け入れて、検査漬けと隔離を特徴とする対策を徹底できる検査体制や関係人員確保の目途は立たない。
  無謀な開催が、地域の医療逼迫を増幅し、世界再拡大の契機となる危険を否定できない。
 国際水泳連盟は、東京での五輪テスト大会を延期し、国際競技連盟に開催への不信が生まれている。 北朝鮮が不参加を表明し、感染対策での不参加の拡大も予想される。
  世論調査などによれば、五輪を招いた都民の大半が、開催すべきでないと考えている。
 1年余の感染拡大防止策の失敗による再拡大の現状と、民意を重視すれば、都が五輪開催返上を政治決断する時が来た。
 代替開催の可能性はなく、国際オリンピック委員会(IOC)は開催中止を決定せざるを得ない。 
 無理は承知で、失政隠蔽や違約負担のために、都や支援の国が判断を避けて、IOCの決断に委ねるのは国際的な背信である。
 社会性や国際性を意識してきた日本の五輪代表や競技者は、国民に犠牲を強いる立場にない。世界の仲間と連帯して、公正な競技を続けるため、苦渋の決断の覚悟が必要だ。
 東京開催を推進した日本オリンピック委員会(JOC)は、競技者の意志を集約し、臨時総会を開催して、開催断念を表明し、都の決断を促すべきではないか。
  国民とともにある社会的、国際的責任だろう。 競技者や関係者が、自ら決断することこそ、将来の五輪とスポーツの発展を保障する。
大野晃 (スポーツジャーナリスト)

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