2021年03月29日

【焦点】五輪選手村訴訟がヤマ場 4月原告・被告の両不動産鑑定士が証言 9割引のカラクリ明らかに=橋詰雅博

 東京・中央区晴海の都有地に建設された五輪選手村訴訟がいよいよ山場を迎える。この民事裁判は、不動産会社11社に近隣地価より9割以上も値引き売却したのは違法だとして都民33人が小池百合子都知事らに約1500億円の損害賠償を求め2017年8月東京地裁に提起した。
 4月1日(木)に午後1時30分から103号法廷で開かれる第11回口頭弁論では、原告の桝本行男不動産鑑定士が証言する。すでに桝本さんは、正常価格を1611億円と鑑定した意見書を裁判所に提出している。原告代理人が1時間主尋問を行い不当廉売≠フカラクリを明らかにする。引き続き被告代理人が1時間の反対尋問を行う。
 1週間後の8日は、被告側証人として126億6千万円の価格調査報告書(鑑定書ではない)を作った日本不動産研究所の水戸部繁樹不動産鑑定士が証言。9割引の裏付けをどう釈明するのかに注目が集まる。
 両日とも裁判終了後に報告集会を弁護士会館で開く。
 橋詰雅博
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    3月23日号の晴海選手村土地投げ売りを正す会ニュース(発行:「晴海・正す会」)
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2021年03月11日

【JCJ声明】 スラップ訴訟と闘う神奈川新聞・石橋学記者を全面的に支援する=2021年3月8日

  全国で初めてヘイトスピーチの言動に刑事罰を科す川崎市の差別根絶条例が2020年7月1日に全面施行された。「殺せ」「出ていけ」など、それまで発せられていた罵声は影を潜めた。とはいえ、条例施行後も街宣活動を続ける差別扇動団体に対して、地元の人たちは不安感をぬぐえないでいる。
 こうした中で、一貫してヘイトスピーチを非難し、追及する記事を書いてきた神奈川新聞の石橋学記者に対し、スラップ(恫喝)訴訟が2019年に起こされている。訴訟の主は佐久間吾一氏。ヘイトスピーチを繰り返してきた「在日特権を許さない会(在特会)」を母体に生まれた「日本第一党」とつながりのある人物だ。佐久間氏の演説内容を「悪質なデマ」と報じた神奈川新聞の記事に対し、名誉を棄損されたとして記者を訴えたのだ。
 これまで在日コリアンへの悪意に満ちた誹謗中傷と敵視を繰り返してきた団体が、ヘイトスピーチを続ける。その実態を暴いた石橋記者への脅しである。訴訟は新聞社ではなく個人に140万円の損害賠償を求める不当なものだ。
  石橋記者はこの訴訟について「差別は人間の尊厳を踏みにじる。標的にされているマイノリティーの絶望は計り知れない。プロであるはずの私たちは事実を集めて報道し、矢面に立つべきだ」と訴えている。
 佐久間氏はさらに、自身を批判した石橋記者の別の記事で名誉を毀損されたとして、屋上屋を重ねるように140万円の損害賠償を求める訴訟を昨年末に新たに起こした。
 スラップ訴訟はアメリカにおいて言論の自由に圧力をかける民事訴訟として生まれた。狙いは立場の弱い個人に的を絞り、訴訟で圧力をかけ、言論を封殺することにある。近年、日本においてもジャーナリストや市民団体などを相手取り、意見や批判を封じ込めることを目的として起こされ、問題となっている。
 裁判に持ち込んだ時点で被告に苦痛を与えることができ、勝ち負けにこだわらず妨害目的が達成できるという狡猾なやり方でもある。スラップ訴訟は一人の記者へだけでなく、メディア全体への攻撃である。
 日本ジャーナリスト会議は、スラップ訴訟にひるむことなく健筆をふるう石橋記者を全面的に支援するとともに、ヘイトスピーチを続ける差別扇動者・団体と断固として闘う決意をここに明らかにする。           
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2021年02月15日

「移動の自由を侵害」 安田純平さん 旅券発給求め裁判闘争=高橋弘司

  内戦渦中のシリアで取材中に拘束され、3年4カ月後に釈放されたフリージャーナリストの安田純平さん(46)は帰国後、外務省に旅券(パスポート)発給を申請したものの、拒否されたままの状態が続いている。安田さんはこの処分を「憲法違反」として国を相手取り、発給拒否処分の取り消しと新たな旅券発給などを求めて提訴、法廷闘争を続けている。
 裁判長期化は必至の情勢で、安田さんと代理人の岩井信弁護士が昨年12月20日、海外取材に携わるジャーナリストや研究者らを前に、「日本人が海外紛争地の実態を知れない結果となり、このままでは日本の民主主義が危うくなる」などと訴え、憲法が保証する「移動の自由」を訴え徹底抗戦する考えを明らかにした。

 この催しは、民間団体「危険地報道を考えるジャーナリストの会」が新型コロナウイルス感染拡大の中、通信アプリ「Zoom」を介したオンライン勉強会の形で企画。海外紛争地取材を続けるフリージャーナリストや毎日新聞、朝日新聞、共同通信などで海外報道に携わる記者、大学教員、NGO関係者ら20数人が参加した。

 2018年10月に釈放されて約2年2か月が経ち、安田さんからは帰国直後のややトゲトゲしい雰囲気は消えていた。旅券を奪われた今、東京都内に住み、執筆活動や講演の傍ら、法廷闘争の準備をする日々という。海外を主戦場にした本来のジャーナリスト活動を「阻止」され、その言葉からは強い怒りやいらだちが垣間見えた。
 東京地裁で続く裁判は原告の安田さん側と被告の国側双方が準備書面を提出した段階だ。岩井弁護士は、国側が処分の根拠について、旅券法13条1項1号(「渡航先に施行されている法津によりその国に入ることを認められない者」に旅券発給を拒否できるとの規定)に基づき、安田さんがトルコ政府から退去強制に伴う入国禁止措置を受けた点を挙げていると指摘したうえで、「安田さん自身はこの退去強制通知を見た記憶がなく、入国禁止措置は安田さんが旅券申請した2020年1月の後になって、日本政府の要請でトルコ政府側から発給された可能性がある」と主張した。
 つまりは法律に基づいて発行されたものではなく、この条文とそれに基づいて出された処分は憲法22条が定めた「移動の自由」を侵害すると主張した。

 旅券法13条1項1号が制定された1951年当時、旅券は特定の国に1回限りで行けるだけのものだった。だが、海外旅行が大衆化し、1つの旅券で世界中の国に何回でも渡航できるようになった現代では過去の遺物ともいえる。岩井弁護士は、仮にトルコから入国禁止措置が出されたとしても、他の大多数の国への渡航機会を事実上奪う旅券自体の発給拒否の処分は「グローバル時代」にそぐわず、個人の自己決定権などを定めた憲法13条にも違反すると力説した。

 安田さんに対しては今も、SNSなどを中心に「迷惑をかけた人間だから旅券発給拒否は当然」「身代金を払うようなことをする人間を海外に出すな」などの誹謗中傷が絶えないという。これに対し、安田さんは「身代金支払いは全くの事実無根」と怒り、「多くの国民に海外の紛争地取材の必要性が理解されていない」と訴えた。

 質疑で、参加者から日本学術会議の任命拒否問題との類似点を問われ、岩井弁護士は直接の言及は避けながらも、「旅券発給拒否の問題は安田さんへの個別的、意図的なもので、政府の憎しみに近いような強烈な措置といえる」と明かした。安田さんは、コロナ禍で日本人が多数の国から入国禁止措置を受けている現状を踏まえ、旅券法13条1項1号が「日本人全員に該当してしまう」とこの条文の矛盾を突き、条文自体がもはや時代遅れとなっている点を強調した。
 コロナ禍で世界が大きな転換点を迎える今、安田さんへの旅券発給拒否問題は実は、日本国民の誰もが標的になりうる深刻な問題をはらむのだと、改めて認識を新たにした。
高橋弘司(横浜国立大学准教授、元毎日新聞カイロ支局長)
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年1月25日号
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2021年01月29日

醜態さらした安部前首相 「記事捏造が確定」とFBに投稿 デマ発信し謝罪せず=山田寿彦

 安倍晋三前首相が醜態をさらした。元朝日新聞記者、植村隆氏が櫻井よしこ氏らを名誉棄損で訴えた裁判(植村裁判)で原告敗訴とした最高裁決定を一知曲解し、「朝日新聞と植村記者の捏造が確定した」と事実無根の投稿を自身のFBで拡散。抗議を受けると一転、削除に追い込まれた。謝罪の言葉は確認されていない。
 安倍氏の投稿は11月20日午前10時8分付。「元朝日新聞記者の敗訴確定 最高裁 慰安婦記事巡り」の見出しが付いた産経新聞電子版の記事を引用し、「植村記者と朝日新聞の捏造が事実として確定したという事ですね」とコメントした。
 安倍氏のフォロワーは約60万5000人おり、賛否の反応が相次いだ。「はい、最高裁判所までもが植村氏と朝日新聞の捏造を事実だと認定しました」と支持する声の一方で、「デマを飛ばすのはやめましょう。最高裁判決(実際は札幌地裁、同高裁判決)は『植村氏の記事が事実と異なると櫻井氏が信じる相当の理由があった』としているのであって、『捏造が事実として確定』などしていません」と的確に反論する投稿が交錯し、炎上状態となった。
 反論した投稿子が指摘した通り、確定判決が植村氏の記事を「捏造」と認定した事実はない。櫻井氏らの言説は植村氏の名誉を棄損し、社会的評価を低下させた事実を認定。ただし、「植村氏があえて事実と異なる記事を執筆したと信じたのには相当の理由がある」との理由により、法的な賠償責任を免じたに過ぎない。櫻井氏ら被告側は、植村氏が記事を捏造した事実の裏付けとなる証拠を全く示せなかった、というのが裁判の実像だ。
 安倍氏の投稿を受けて植村弁護団の神原元、小野寺信勝の両弁護士は連名で安倍氏に対し、「本件投稿は名誉棄損として民法上不法行為と評価される」との抗議文を送付。投稿の削除を求めた。
これに呼応したのか、抗議文の送達後、投稿は削除されたが、一国の首相を務めた人物が事実確認を怠り、デマを発信した事実は消えない。
皮肉なことに、「桜を見る会」の前夜祭をめぐる安倍首相(当時)の国会答弁が事実と異なっていたことが東京地検特捜部の捜査で発覚した。今度は自身が「捏造総理」の批判に向き合うことになる。
 
植村裁判 旧日本軍慰安婦として戦時性暴力を受けた朝鮮人女性の生存を伝えた1991年の朝日新聞記事をめぐり、ジャーナリストの櫻井よしこ氏らが「記事は捏造」と批判。執筆した元朝日新聞記者の植村隆氏は、自身に「捏造記者」の汚名を着せた櫻井氏や学者、出版社を相手に名誉棄損による損害賠償を求め、札幌と東京で提訴した。札幌訴訟は11月18日、最高裁で原告敗訴が確定した。
  山田寿彦
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年12月25日号
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2020年09月25日

【裁判】 ビキニ被曝の高知漁船員 「労災」求め闘い続く 世界の核被災者との連携みすえ=石塚直人

       W8面 ビキニ[53602].jpg 労災訴訟を起こした原告と弁護団=3月30日、高知地裁
 1954年、太平洋ビキニ環礁で行われた米国の水爆実験で被曝した高知県の元マグロ漁船員や家族らが全国健康保険協会(東京)と国を相手取り、労災認定に当たる船員保険の適用を不認定とした処分の取り消しと損失補償を求めた「ビキニ労災訴訟」の第1回口頭弁論が7月31日、高知地裁で開かれた。
 この日は原告2人が意見陳述、被告側は裁判の分離や東京地裁への移送を求めた。3年半にわたる国家賠償請求訴訟に続く闘いは、世界の核被災者との連帯を見据えている。
政治決着で闇に
 第五福竜丸の被災が問題化した後、港で放射能マグロを廃棄した漁船は、この年12月までに延べ992隻(うち高知県は270隻)。月別の内訳では実験が終わった夏以降に急増し、海域は日本近海からオーストラリア北東に及ぶ。
 「海がパーッと光って、灰が降ってきた」などの目撃者も含め、誰もが汚染されたスコールを浴び、獲れた魚を食べていた。海水中の「死の灰」が食物連鎖で魚に蓄積され、内部被曝の危険性が高まる中、漁船員らは自身の検査結果も知らされず何度も出漁した。
 日本政府は米国の意向を受けて同年12月末、全ての調査を打ち切り、翌55年1月、見舞金7億2千万円と引き換えに「今後、米国の責任を問わない」で政治決着した。今に続く対米従属外交の〈原点〉と言える。
 一方で、官民挙げて原子力の「平和利用」キャンペーンが行われ、同年11月から全国10か所で開かれた博覧会には約300万人が訪れた。第五福竜丸以外の被曝はもみ消され、漁船員らは風評被害を恐れて沈黙した。
35年前 高校生ら発掘
 広島、長崎に続く第3の悲劇に光を当てたのが高知県西部で活動する「幡多高校生ゼミナール」の生徒とゼミ顧問だった山下正寿さん(75)ら。長崎とビキニでの二重被ばくを苦に自殺した宿毛市の青年の話を端緒に、1985年から元漁船員らの聞き取りを続け、本や映画でも紹介された。
 「8人のうち5人ががんや脳腫瘍で死んだ」「10年ほど前から肝臓障害や手足のしびれがひどい」。後年になって発症する晩発性障害が目立った。山下さんらは翌86年、元漁船員の健康調査を始めるとともに、マーシャル諸島の被曝者を訪ねて調査。以来、全国各地に対象を広げたが、被災の全容解明は「資料がない」とする国に阻まれてきた。
メディアが局面打開
 局面を打開したのがメディアだ。2004年から山下さんに密着取材した南海放送(愛媛)が「NNNドキュメント」で相次ぎ放映。12年の映画「放射線を浴びたX年後」も多くの賞に輝いた。NHK広島放送局も14年、NHKスペシャル「水爆実験 60年目の真実」で元船員の歯や血液の新たな分析結果を報道、被災当時の詳細な秘密文書を米国で発掘した。米元高官は「核開発競争に邪魔なものはすべて隠した」と証言した。
 高知の元漁船員らが国賠訴訟に踏み切ったのは16年。一審・高知地裁、二審・高松高裁は請求を棄却したものの、被曝自体は認めた。日弁連も7月21日、国に補償などを求める意見書を公表、続いて広島地裁が「黒い雨」訴訟で原告全面勝訴の判決を出した。
 国連で核兵器禁止条約が採択された17年以降、山下さんらは世界の核被災を紹介するDVD(日・英・露語など)を作成、漁船員の英訳つき証言写真集を各国の大使館に送った。仏国営放送制作の映画「我が友・原子力〜放射能の世紀」(渡辺謙一監督)も今年10月、高知・黒潮町から全国上映される。
 問い合わせは、太平洋核被災支援センター(宿毛市)へ。
 石塚直人(元読売新聞記者)  

ビキニ水爆実験
 1954年3月1日から5月まで計5回。3月16日に静岡・焼津に戻った第五福竜丸の悲劇が大きく報じられ、原水爆禁止運動の引き金となった。マーシャル諸島海域全体での米国の核実験は、46年から58年まで計66回。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年8月25日号
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2020年09月23日

【裁判】 黒い雨集団訴訟 広島地裁「原告全員を被爆者に」 国は控訴 核兵器廃絶に背向ける=難波健治

 核による人類滅亡までの時間を示す「終末時計」は「残り100秒」と過去最悪、コロナ禍も収束どころか、世界中で増え続けている。今年の8・6ヒロシマ式典は、これまで経験したことのない自粛ムード下での開催となった。だがそれは、ヒロシマが直面する課題の行方を占う注目の式典でもあった。
               W4面 報告集会で喜ぶ原告と支援者.JPG
 式典の8日前、広島地裁は「黒い雨」集団訴訟で原告84人全員を被爆者として認めるよう求める画期的な判断を示した。
迫る核禁条約発効
 また、この日を待っていたように3カ国が核兵器禁止条約を批准した。その後、9日に1カ国増え、条約が発効する基準となる50カ国まで残り6カ国となった。
 被爆75年の節目に日本政府がどのような姿勢を示すのか。核保有国に同調し条約に背を向ける姿勢を改めて欲しい。だが、市民の期待は見事に裏切られた。安倍首相は式典のあいさつで核兵器禁止条約には一切ふれず、「立場の異なる国々の橋渡しにつとめる」と、いつもの言葉を繰り返し、核保有大国の「お先棒担ぎ」の姿勢にしがみついたままだった。
控訴断念に答えず
 式典後の懇談会で被爆者団体代表は、黒い雨援護対象区域拡大や広島地裁判決への控訴断念を口々に求めた。だが、安倍首相は答えようとせず、会を40分で閉じた。6日後の12日、国は広島県、広島市を説得し、地裁判決を不服として、広島高裁に控訴した。
 「人類が滅びるとしたら、核兵器か地球温暖化(気候危機)、感染症パンデミックのどれかによるだろう」。世界へ反核の旅を続けてきた89歳の被爆者の言葉である。
 この3つが地球に重く垂れこめるこの夏、唯一の戦争被爆国のトップは、危機打開の道を何ら示すことなく黙ったままだ。
 3つの危機は人類の活動が招いた災禍だが、核は政治の決断で廃絶が可能なものだ。
判決前 報道は健闘
 ジャーナリズムの「2極化」の中、この夏もいくつかのメディアは核兵器廃絶に向けた報道に力を尽くした。「黒い雨」判決を前にした毎日、朝日などのキャンペーンは、この報道が7月29日の広島地裁判決を引き出したのではないか、と思わせるほどの迫力があった。8月2日付毎日新聞の「長期不明のままだった草創期の広島被団協資料500点確認」は、被爆者運動の原点を明らかにし、その意義を明確にしたものとして特筆される。放送の分野でも、若い人たちの視点を生かした力作が目についた。
難波健治(広島支部)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年8月25日号

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2020年09月03日

【東海支部通信】 河村名古屋市長に8億円返還求める住民訴訟 11月5日に判決=加藤 剛 

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名古屋市の河村たかし市長はこのところコロナ警戒で「多忙」の日々ですが、一方では市長本人が被告となる民事訴訟を3つも抱えて司法面でもその動向が注目されています。
 市長が被告の3訴訟とは@市民グループが原告の8億円住民訴訟、Aオンブズマン提訴の情報公開訴訟、B大村愛知県知事提訴のトリエンナーレ分担金訴訟です。そのうちの一つ「違法な支出8億円余の返還を求める」住民訴訟が8月6日名古屋地方裁判所で結審となり、11月5日に判決が言い渡される運びとなりました。
 名古屋市の河村市長は戦災復興の象徴である名古屋城(写真=大阪城や熊本城と同様の燃えない鉄筋コンクリート造り)を壊して、空襲で燃える前の木造の城に作り替える「木造復元」(工事費500億円余)を目指し、まず基本設計費(段ボール50箱に詰まった設計図書の代金)として8億円余を工務店に支払いました。これに対し「戦災復興の象徴である名古屋城を壊すな! 耐震補強して文化財登録をめざす会」(代表=北区在住の森晃氏)の市民らが立ち上がり、8億円余の支払いに待ったをかけたのです。
 市民グループは「基本設計・段ボール50箱分の中身は市民に公開されておらず(城の設計図などは公開を求めても黒塗り秘蜜)、しぶしぶ公開された目録には有るべきものが無い(合法建築の許可を得るために準備することになっている関係資料の項目がない) ―― など「不完全」「未完成」であると指摘し、未完成の箱詰め書類に市民の金8億円余を支出するのは違法(地方自治法違反)である」と主張、河村市長ら関係職員に対し「8億円余を市へ返せ。木造‛復元’事業を停止せよ」と請求する住民訴訟を起こしました。被告側は「却下」を主張。
 この訴訟は一見8億円余の支出の是非を争う「お金の裁判」に見えますが、一皮むけば戦災復興の象徴・名古屋城の解体の是非、市長の目指す木造復元の非実現性(再三の計画延期、絵にかいた餅=火災に弱く人命救助に難点のある違法建築の可能性大)にもつながり、場合によっては河村市長だけでなく、予算を認めた市議会の責任も問われる大きな問題に発展する可能性があります。
加藤 剛
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2020年04月18日

植村訴訟は最高裁へ 「言論の場」も主戦場に=編集部

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 元従軍慰安婦の女性が韓国で初めて名乗り出た1991年の2本の記事で、不当な「捏造記者」攻撃に晒された元朝日新聞記者植村隆さんの名誉回復の闘いは、今年2月(札幌)、3月(東京)の両控訴審での高裁不当判決を受け、新たなステージで闘いが再スタートした。
 札幌(被告櫻井よしこら)、東京(被告西岡力ら)両控訴審判決の真実相当性認定の不当は、機関紙ジャーナリスト紙面や両判決に対するJCJの声明で明らかにした通りだ。
 両高裁は、櫻井、西岡両氏を「免責」するため、一審で明らかになった櫻井、西岡両氏こそが「捏造者」だった事実に目をつぶり、控訴審では新証拠(1991年11月の弁護団聴き取り調査への金学順さんの「証言テープ」)の内容をも否定。
 植村さんが「金学順さんの記事を、読者に事実を伝えるために書いたのか、読者を騙すために事実を偽り「捏造」したのか」への判断が問われているにもかかわらず、(櫻井、西岡が)「真実でなくても、そう思い込んだことに相当の事情がある」と「真実相当性」に逃げ込み、植村「捏造記者バッシング」を免罪した。
 この控訴審両判決は、最高裁の判例にも、国の「強制連行」や「慰安婦」の定義にも背反する。根本にあるのは「朝日新聞の慰安婦報道が間違っていたのだから、記事を『捏造』呼ばわりされても仕方がない」との認識だ。
 つまり記事が真実かどうかなど関係ない、「歴史否認」勢力への忖度判決だったのだ。それは植村裁判を支える市民の会ブログや『慰安婦報道「捏造」の真実』(花伝社)に詳しい。
 植村訴訟の舞台は最高裁に移る。そして名誉回復の闘いの主戦場は「言論の場」にも広がる。
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年3月25日号

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2020年03月25日

アスベストいまも脅威 原告の訴え国に11連勝 建材メーカーとの裁判でも全面勝利 最高裁判決は今年中に=伊東良平

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 以前によくサラ金の過払い金訴訟についてのビジネスをして利益をあげていた法律事務所のことが伝えられていたが、サラ金訴訟が期限を迎えたり対象が少なくなったこともあってその後はB型肝炎や基地騒音なども扱っていたが、最近建設アスベストについても扱うというある法律事務所のテレビCMを見て驚いた。アスベストも損害賠償稼ぎの対象となっていることを示している。
 こうした背景には建設アスベスト訴訟が勝ち進んでいて2012年の東京地裁以来、昨年の福岡高裁まで国に11連勝していることによる。国から賠償金が支払われることを見込んでいるのだろう。しかし建設アスベストは金銭保証だけではなく、命と健康に対する問題である。過去、建設現場では大量の石綿粉塵が飛び散って被害にあった。
 アスベスト関連疾患の業種別割合は建設業が52.4%を占める(2017年度)。アスベストの発がんリスクは1日8時間・年250日・50年間この環境にいると1000人に1人の過剰発がんを起こすと言われ、肺がんや肺を覆う胸膜にできるがんの一種である中皮腫などのアスベスト関連疾患により多くの被害者が命を落としていて、生存している原告はわずか28%であり、速やかな解決が求められている。
 また、その後や現在でも老朽化や自然災害に伴う建物の取り壊しの際に、きちんとした装備をしないなど防護せずに作業に当たり、労働者や周辺住民が飛散した石綿を吸引する事例が起こっている。石綿含有建材の解体作業では許容濃度の15倍以上の石綿繊維が浮遊しているという。ある資料によると2000年から2040年までに10万人が死亡するという研究もある。
 今年2月に放送された日テレ系「NNNドキュメント」(大阪・読売テレビ制作)でも、静かな時限爆弾といわれるアスベストを取り上げた。
 1995年の阪神大震災の時に崩れた建物から飛散したアスベストを吸った人が約25年間の潜伏期間を経て突然発病して、あっという間に死亡するケースや、いまだ280万棟にアスベストが含まれている可能性を指摘して、建材の老朽化によって多発する被害と迫る脅威に警鐘を鳴らした。
 訴訟原告の連勝で国の責任は確定的になってきたし、並行して行われている建材メーカーに対する裁判でも昨年の福岡高裁や2018年の大阪高裁など6つで全面勝利となり賠償が命じられた。
 今年はいよいよ最高裁の判決が予想されていて裁判は最終局面に入るが、裁判だけではすべての建設アスベスト被害の救済ははかれないと、原告団や支援する人たちでつくる「建設アスベスト訴訟全国連絡会」では被害の救済が出来ない人たちに向けて「補償基金制度」の創設を求めて活動を始めた。
 責任を負うべき国とメーカー、さらに安全配慮義務違反の責任を問われているゼネコン等が応分の負担をして基金を創設して被害者の救済することが求められている。提訴から12年を経てだんだんとそして確実に勝訴の範囲は広がり、次の勝負は最高裁である。
 最高裁は他の判例を見ながら、世論の動きも見ているので、署名活動は有効な手段だといわれている。可能な限り支援をしたい。
伊東良平(神奈川支部)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年3月25日号

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