2021年09月27日

今年の「表現の不自由展」は何を伝えたのか 展示会の決行こそが表現の自由の訴えに=幸田泉

                           
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  「表現の不自由展かんさい」のタイトルで開催された大阪会場

東京は断念し
名古屋は中断


 2019年の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」で大きな注目を集めた「表現の不自由展」が、今年また全国各地で物議を醸した。6〜7月、東京展、名古屋展、大阪展と3カ所の巡回展が企画されたが、いずれも開催前から抗議行動に遭い、6月25日からの東京展は会場の民間ギャラリーが耐えられず開催を断念。7月6日〜11日の予定だった名古屋展は7月8日に中断。7月16日〜18日の3日間の日程を貫徹できたのは大阪展だけだった。
「表現の不自由展」は2015年に東京で開催されたのが最初で、各地の展覧会等で公開中止や展示拒否にあった作品を集め、憲法21条の「表現の自由」を問うものだ。作品の中に従軍慰安婦を表す少女像や、昭和天皇の写真が燃える動画作品などがあり、開催計画が公表されると、必ず右翼活動家に加えいわゆるネトウヨが抗議、攻撃を展開する。それらを跳ねのけ展示会を決行することそのものが「表現の自由」を訴える事態になっている。
看過できないのは、誰よりも憲法順守を強く求められる立場の政治家たちが、この展示会を止めさせようとすることだ。

法廷闘争は勝利
大阪展は開催


 今年の名古屋展は「市民ギャラリー栄」(名古屋市中区)が会場だった。3日目の7月8日朝、会場に爆竹のようなものが送られて来て、封を開けると破裂音がしたという。この日の午後3時、河村たかし・名古屋市長が7月11日までギャラリーを臨時休館すると発表。「市民の命を守るのが市長の絶対的な義務」と強調した。市長として市民の憲法上の権利を守れない責任を感じるどころか、守ろうと努力した様子すらない。
 大阪展は、府立労働センター「エル・おおさか」(大阪市中央区)が6月25日に施設の利用承認を取り消し、主催者側は6月30日、大阪地裁に「取り消し処分」の執行停止を申し立てた。大阪地裁は7月9日に「警察の警備等によっても混乱を防止することができない特別な事情はない」と執行停止を認める決定を出した。「エル・おおさか」側が抗告して大阪高裁、最高裁に上がり、開幕当日の7月16日に最高裁が特別抗告を棄却するという劇的展開になった。
開催中は何台もの右翼街宣車が大音量で会場周辺を走行し、歩道では日の丸を掲げて展示会に抗議活動する右翼活動家らがいた。これに対し、大阪府警は警察官を動員して交通整理や周辺警備にあたり、ボランティアスタッフらが列をなす入場者の対応や手荷物検査を実施。官民協力の警備態勢を敷き、閉幕まで大きなトラブルはなかった。

吉村府知事が
妨害発言連発


 その一方で、吉村洋文・大阪府知事は「利用承認の取り消しに賛成」「非常に危険なことが起こる可能性もある」「明らかに差し迫った危険がある」「即時抗告すべき」などと、開幕まで展示会を中止に追い込む発言を続けた。「エル・おおさか」には7月13日〜16日、「開催するなら実力阻止に向かう」という脅迫文や、水を入れた袋をサリンと偽装する郵便物が届いたが、ボランティアスタッフを務めた弁護士は「吉村知事の発言が煽ったのも同然だ」と指摘する。

「権利」否定の
ウケ狙い政治


 河村市長や吉村知事が「表現の不自由展」に否定的態度を示すのは、第二次安倍政権以降、存在感を増したネトウヨとその界隈を漂う世論へのアピールだ。河村市長は東京五輪選手の金メダルをかじって顰蹙を買ったが、マスコミが愉快気に取り上げるネタを提供するつもりで見事にツボを外した行動だった。吉村知事は昨年7月、「うがい薬で新型コロナウイルスに打ち勝てる」といかがわしい記者会見を開き、医療業界から猛批判をくらった。これも世間をあっと驚かせようとして失敗した例だ。河村市長も吉村知事も、大衆の注目を集めるためなら平気で一線を超える。今年の「表現の不自由展」を巡る騒動では、ウケ狙いばかり考える軽薄な政治は、憲法上の権利にも価値を見出さないことがはっきりした。
 幸田泉(フリージャーナリスト)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年8月25日号
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2021年07月23日

【事件】なぜジャーナリストは標的にされたのか 右派が仕掛けた歴史わい曲 「標的」監督・西嶋真司さん寄稿

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 元朝日新聞記者の植村隆がジャーナリストの櫻井よしこらを相手取った名誉毀損訴訟で、最高裁判所は昨年11月に上告棄却の決定を出した。この決定を受けて、安倍晋三・前総理大臣は自身のフェイスブックに「朝日新聞と植村記者の捏造が事実として確定したということですね。」とのコメントを書き込んだ。もちろんこれは荒唐無稽なデマだ。
 裁判所は櫻井の主張によって植村の社会的信用が失墜したことを認めつつも、櫻井が記事を「捏造」と信じたことに相当の理由があるとして免責したにすぎない。
 植村や弁護士からの抗議を受けて安倍は自らの投稿を削除したものの、日本の前首相が放ったフェイクニュースはインターネットを通じて今も拡散されている。

 避難と脅迫
 植村は1991年8月、元慰安婦だった韓国人女性の証言を伝えるスクープ記事を書いた。その記事には「女子挺身隊の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた」とある。報道から23年後の2014年、記事の内容をめぐって植村を「捏造記者」とするバッシングが始まった。
 植村の記事を“捏造”と決めつけたのは、右翼論客の櫻井よしこや西岡力をはじめ、不都合な歴史を消し去ろうとする日本政府の立場を支持する人々。植村を「売国奴」「国賊」などと非難し、植村が教職に就くことが内定していた大学や植村の家族までもが卑劣な脅迫に曝された。「記事が捏造と言われることは、新聞記者にとって死刑判決に等しい」と植村は言う。
 不当な攻撃によって言論を封じ込めようとする動きに対し、大勢の市民や弁護士が立ち上がった。

 20年で何が
 植村が元慰安婦の記事を書いた1991年8月、私は民放のソウル特派員として慰安婦報道の渦中にいた。当時、韓国では「挺身隊」と「慰安婦」が同義語として使われており、私をはじめ日本の多くのマスコミも慰安婦問題の記事に挺身隊という言葉を用いている。
 同じような内容を伝えた私や他のメディアはバッシングを受けずに、なぜ朝日新聞の植村だけが標的にされたのか?当時は“誤報”ですらなかった報道内容が、“捏造”と呼ばれるようになった20年余りの間に、日本に何が起きたのか?
 1997年に安倍晋三前首相を事務局長とする「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」が発足して以来、日本政府は慰安婦問題に関して自国の責任を極限まで小さくしようとし続けてきた。戦場に送られた慰安婦の強制を裏付ける資料が発見されていてないことを理由に、慰安婦の募集は国家とは無関係だと主張する一方で、歴史教科書から慰安婦の記述をなくそうという動きが政府主導で進められた。
 2019年に愛知県で開催された「あいちトリエンナーレ展」では、慰安婦を象徴する〈平和の少女像〉が「日本人の心を踏みにじる」という理由で一時展示が見送られる事態になった。
 
 報道の萎縮
 最近の20年余りの間に日本のメディア界にも変化が起きた。慰安婦を扱う特集記事や番組は姿を消し、いつしか慰安婦問題はメディア界ではタブーとなった。政府に批判的な報道を行うことによってバッシングや脅迫の標的にされる様子を目の当たりにして、メディアは明らかに萎縮した。
 歴史の真実を伝えることはジャーナリズム本来の使命である。それはあらゆる外部の圧力から自由でなければならない。不都合な歴史を報じたジャーナリストを力で抹殺しようとすれば、民主主義は崩壊する。ジャーナリストを標的にしてはならない。(敬称略)
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年6月25日号
                           
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2021年03月02日

市民の声が権力の不正糺す 検察審で黒川元検事長を起訴相当 法務省内部資料が証拠に=岩田薫

 黒川元東京高検検事長の賭けマージャン問題に関して、検察審査会が昨年12月8日に起訴相当の議決を下した。
 検察審はくじで選挙権を有する市民から選ばれた11人が、検察官の判断した不起訴処分に関して、その是非を審査する制度である。昭和23年7月に検察審査会法が成立してから、告訴人や告発人による申し立てで審査した事件は、法務省の資料によれば最近までに155557件、職権で審査した事件は13671件の総数169228件にのぼる。うち起訴相当の議決が下されたのは2407件。起訴相当には11人のうち8人以上の賛成が必要と規定されているが、実に1.4%に過ぎない。 
 法改正で二度の起訴相当の議決を経ると強制起訴となる仕組みが出来たが、この強制起訴になった件数は、わずか14件に過ぎない。

ハイヤー代140万
  ここで、改めて経緯を振り返る。
 昨年5月に発売された『週刊文春』(5月28日号)が、当時東京高検検事長だった黒川弘務の不祥事を報じた。黒川元検事長が産経新聞記者、朝日新聞社員ら3人と3年前から、産経新聞記者の自宅マンションで賭けマージャンを常習的に行っていたというもの。
 私は、同年5月26日に、かつて特定秘密保護法違憲確認訴訟を横浜地裁に提起した仲間に呼びかけ、市民11人の名前を連ね東京地検特捜部に黒川元検事長、新聞記者ら3人を、刑法の常習賭博罪、単純賭博罪、贈収賄罪で告発した。贈収賄罪を入れたのは、黒川元検事長が賭けマージャンのあと、産経新聞記者が用意したハイヤーで毎回自宅まで送迎されていたからだ。ハイヤー代金は3年で140万円に達する。
  東京地検特捜部は、告発を受理した。他にも大学の先生や弁護士らが、私たちに続いて次々と告発状を出す騒ぎとなった。黒川検事長は当時の安倍晋三首相が検察庁法を改正し、定年を延長して次期検事総長にすえようとしていた人物だった。
  東京地検特捜部は、同年7月10日、常習賭博罪に関して罪とならず、単純賭博罪について起訴猶予、贈収賄罪に関して不起訴とする処分を決めた。
 常習賭博罪に関しては、「常習性は認められない」、単純賭博罪については、「被疑者らが戒告処分や報道による批判など社会的制裁も受けた」として起訴するほどのこともない、贈収賄罪に関しては「送迎行為について職務との関連性を認めることはできない」として嫌疑なしとした。
  私たちは、この処分に納得できず、7月13日に東京検察審査会に審査を申し立てた。東京に6つある検察審査会のうち第6審査会が担当する運びとなった。その際に有力な証拠としたのが、法務省の内部調査資料である。情報公開請求を経て開示された調査報告書には、黒川元検事長が常習的に賭けマージャンをしていた事実を認めたこと、毎回自宅までハイヤーで送迎されていたことを法務省の調査に認めていることが記載されていた。

単純賭博罪を認める
  こうした経緯を経て、12月8日に先の議決が下されたのだ。黒川元検事長の単純賭博罪について起訴相当、新聞記者らの単純賭博罪に関して不起訴不当、贈収賄罪について不起訴相当、常習賭博罪に関しては認められずという議決だった。
 議決書は、「被疑者黒川は、東京高等検察庁の長という重責にあったこと、社会の信頼を裏切り、社会に大きな影響を与えたことが被疑者黒川を起訴するか否かを判断するのに重要」と断罪した。
  今回の議決を受け、地検は再捜査に着手した。先に記したように起訴相当の議決が再度下りれば、強制起訴となる。
 果たして、どんな結果になるか、熱く見守りたいと私たちは考えている。市民の声が権力の不正を断罪した事実は重い。
岩田薫
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年2月25日号

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2021年01月08日

【事件】 桜疑惑2 赤旗が端緒 読売とNHKが引導 メディア構図に変化の兆し=徳山喜雄

                                               桜 読売特報(右).jpeg スクープとなった読売新聞11月23日付朝刊1面カタ(右)と左は翌日の朝日新聞朝刊1面トップ

手詰まりとなっていた「桜を見る会」前日の夕食会(前夜祭)の費用補填問題について、読売新聞が突破口を開いた。
読売は11月23日朝刊の1面で「安倍前首相秘書ら聴取/『桜』前夜祭 会費補填巡り/東京地検」との見出しで特報した。安倍晋三前首相らに対して政治資金規正法違反などの告発が出されていた問題で、東京地検特捜部は安倍氏の公設第一秘書らから任意で事情聴取していたと伝えた。
このニュースについてNHKが間髪入れずに追いかけ、その日のうちに安倍氏の政治団体「晋和会」が夕食会の会場となったホテル側に対し、会費800万円以上を補填していたことを示す領収書があるとスクープした。こうして新聞、放送など報道各社が疑惑追及をすることとなった。
 安倍氏は首相在任中、自身に近いメディアとそうでないメディアを選別し、報道を分断、いいように振りまわしてきた。「親安倍」の代表格が読売でありNHKであった。7年8カ月におよぶ長期政権を支えたメディアであるといっても差し支えなかろう。
 よりによってこの2つのメディアが、権力の座から降りた安倍氏を窮地に追い込むこととなった。情報の出所は、ふつうに考えて東京地検特捜部であろう。
安倍氏は「官邸の守護神」として黒川弘務・前東京高検検事長の異例の定年延長を法の解釈変更で認め、検察トップにする意向だったが、新聞記者との賭けマージャンの発覚で自滅した。こうして名古屋高検検事長の林眞琴氏がトップの検事総長となり、「桜」疑惑を指揮する立場についた。
もとを正せば、林氏は次期検事総長と目されていたが、安倍政権の上川陽子法相時代に上川氏とそりが合わずに名古屋高検に転出させられた。しかし、賭けマージャン問題で返り咲いてトップに座ることになった。安倍氏に代わった菅義偉首相は新内閣の発足にあたり、再び林氏の天敵である上川氏を法相にあてている。このような変転のなかでの読売とNHKへのリークであった。今後の林検事総長と上川法相の攻防も見ものだ。
安倍前首相や政権による保守系とリベラル系メディアの分断、NHKとりわけ政治部の取り込みによるメディア懐柔の構図が、ここに一部崩れることになったのである。地検特捜部は、安倍氏がさんざん利用してきたメディア分断の構図を逆手にとって、読売とNHKを野党やリベラル系メディアの側に立ち位置をずらせたのである。
これまでなら、朝日や毎日新聞にリークして安倍氏追及の流れをつくりがちだが、検察がそうしなかったことに巧みなメディア戦略がみてとれる。野党は安倍前首相の参考人招致や証人喚問など国会での説明を求めている。官房長官として安倍氏を支えた菅首相は「国会の件は、国会でお決めになること」など人ごとのような答弁に繰り返しているが、その本音は読み取りにくい。
そもそも「桜」問題が発覚したのは、昨年10月13日の共産党機関紙「しんぶん赤旗」日曜版のスクープからだ。赤旗が端緒となり、読売とNHKが引導を渡すかのような今回の一連の動きは、閉塞したメディア状況を打ち破るきっかけになるかもしれない。
徳山喜雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年12月25日号

                          
                          
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2021年01月07日

【事件】 桜疑惑1 議員辞職に値する虚偽発言 安倍の言い逃れは国民を愚弄=徳山喜雄

 首相在任中の国会での「虚偽発言」を不問にしていいのか。曖昧なままにすれば、三権分立など民主主義の基盤そのものが崩れていく。
 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」の前日に主催した夕食会(前夜祭)で、会場となったホテルへの支払いを安倍氏側が補填していたことが明らかになった。安倍氏周辺が東京地検特捜部の事情聴取で認めている。
 昨秋に問題が発覚して以降、安倍氏は国会で「参加者の会費(5000円)だけで費用をまかない、安倍事務所が補填した事実はまったくない」との答弁を繰り返し、うやむやになりつつあった。しかし、読売新聞11月23日朝刊の特報で、季節はずれの「桜」が咲くこととなった。
 夕食会は2013年から計7回開かれ、時効にかからない15年以降の5回で安倍氏側が負担した額は、計916万円にのぼるとされる。これは開催総額の約4割にあたる。前夜祭の主催は公設第一秘書が代表を務める「安倍晋三後援会」だったが、ホテル側が発行した916万円の領収書の宛名は安倍氏が代表の「晋和会」であった。
 これらは、政治資金規正法(不記載)や公職選挙法(寄付行為の禁止)違反にあたる可能性があり、地検特捜部は安倍前首相の公設第一秘書の立件方針を固め、年内にも安倍氏本人から事情聴取することを要請した。安倍氏周辺によると、秘書が安倍氏に虚偽の報告をしたため、誤った答弁を国会で繰り返すことになったという。しかし、このようなその場逃れともいえる言い訳をだれが信じるのだろう。
 不記載の罰則は「3年以下の禁錮または50万円以下の罰金」。検察が立件すれば略式裁判になり、秘書が罰金を納めることで幕引きとなるともいわれる。だが、国会で国民を欺きつづけた安倍前首相の責任を、トカゲのしっぽ切りで終わらすことに国民は納得するだろうか。
 振りかえれば、森友学園への国有地売却をめぐる問題では、安倍首相(当時)は2017年2月の衆院予算委員会で「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と大見得を切った。その約1年後の18年3月、財務省の公文書改竄が発覚し、安倍氏の妻・昭恵氏に関わる記述が削除されていることが判明した。
 加計学園の獣医学部新設をめぐる問題では、加計孝太郎理事長との関係を尋ねられた安倍氏は「獣医学部の新設について、加計さんから相談や依頼はいっさいない。知ったのは2017年1月20日」などと答弁していた。しかし愛媛県の文書には、15年2月に加計氏が安倍氏と面談、「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」と安倍氏が話したと記録されていた。この件については、加計学園の事務局長が愛媛県に虚偽の報告をしたと説明した。
 返答に窮すると、秘書の責任にしたり事務局長の責任にしたりと、やり口が酷似している。国民を愚弄しているともいえる安倍氏による一連の虚偽発言の責任は、議員辞職に値する。
徳山喜雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年12月25日号

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2020年09月26日

【事件】 道警ヤジ排除で報告会 権力の異様さ まざまざ 北海道支部=山田寿彦

 安倍晋三首相の街頭演説にヤジを飛ばした市民が警察官に強制排除された問題で、警察の行為を検証するドキュメンタリー番組を制作したテレビ局スタッフによる報告会「ヤジと民主主義〜小さな自由が排除された先に」が7月15日、札幌で開かれた。JCJ北海道支部が例会として企画した。
 支部会員、読者会員ら35人が参加。番組(46分版)上映後、プロデューサーの山ア裕侍・HBC報道部統括編集長(47)と当時道警担当だった長沢祐(たすく)記者(27)が制作の意図などを話した。
 番組は映像の力で警察の異様さを物語る。力づくの排除、排除後も女性につきまとう女性警察官の言動、能面のような表情で、「事実確認中」と繰り返す道警本部長。「年金安心どうなった?」と書いたプラカードを無言で掲げようとしただけで排除された女性など、丹念に集めた場面とそれらをつなぐインタビューにより、普段は見えにくいこの国の権力の姿が時代背景を伴って像を結ぶ。
 山アさんが敏感に反応したのは三つの危機感から。表現の自由をめぐる社会の不寛容さ、政治的主張を理由に排除する権力の暴走、これを問題と思わないマスコミ――。積極的なニュース報道から始め、TBSの協力で全国放送枠を確保して作品につなげた。
 長沢記者は山アさんの厳しい指導と助言を受けながら、取材に精力的に取り組んだ。警察組織を批判する報道は初めて。「怖さもあった」と正直に語る。取材を通じて「マスコミは権力監視が形骸化している。私たちは本来の役割を認識すべき」と痛感したという。 
 排除された当事者の市民も参加し、世論喚起に果たすメディアへの期待感などを語った。
 番組は放送批評懇談会のギャラクシー賞報道活動部門で年間優秀賞に選ばれた。YouTubeで視聴できる。
 山田寿彦(北海道支部)
道警ヤジ排除問題
2019年7月15日、JR札幌駅前で参院選の遊説中だった安倍首相に対し、「安倍やめろ」「増税反対」と叫んだ男女2人が警察官に強制排除された。2人はそれぞれ国家賠償請求訴訟を起こし、地検に刑事告訴(不起訴処分)した。排除は取材中の報道各社の目の前で起きたが、朝日新聞が翌々日の同17日朝刊で初めて報じた。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年8月25日号

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2020年08月17日

河井事件 広島政界大揺れ 疑惑は安倍政権直撃か 選挙のあり方 根本見直し=難波健治

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 昨年7月の参院選をめぐる大規模買収事件が、広島県政界を揺るがしている。事件が発覚して9カ月。この間、衆院議員で前法相の河井克行被告(57)と妻で参院議員の河井案里被告(46)が逮捕、起訴されただけでなく、7月17日までに買収された側の首長3人、市・町議4人が辞職、町議1人が辞職を表明。地方政界を襲った激震は今後、安倍政権を直撃する可能性をはらんでいる。
 疑惑は、昨年10月末の週刊文春記事が発端となった。昨夏の参院選で定数2の広島選挙区に県議を辞めて立った案里被告の陣営が、車上運動員(いわゆるウグイス嬢)に法定額上限を超える報酬を支払った疑いが浮上し、克行被告が法相を辞任したのが始まりだ。
溝手「切り崩し」
 事件は、自民党本部が河井夫妻に1億5千万円もの政治資金を送っていたことが発覚して様相を大きく変えた。広島選挙区でもう一人の自民公認候補である現職の溝手顕正氏(77)=元国家公安委員長=への交付金は1500万円だった。なぜ同じ公認候補に10倍もの差をつけたのか。夫妻に渡された巨額資金の使途は何か。党総裁としての安倍晋三首相のかかわりが注目された。
 溝手氏は第1次安倍政権を首相が1年で投げ出した時、首相を「過去の人」と評した。首相は、2013年の参院選でも溝手氏にぶつけるかたちで2人目の自民候補擁立を画策したが、当時の石破茂幹事長らの反対で断念したいきさつもある。
  今回の案里擁立をめぐっても地元自民党県連は2人目の擁立に絶対反対の姿勢を崩さず、結局、安倍首相や菅義偉官房長官らが押し切るかたちで定数いっぱいの候補擁立を強行した。告示後は首相をはじめ、菅官房長官らが次々と広島入りし、「案里、案里、案里をよろしく」と繰り返した。
金権政治解明を
 案里候補擁立の狙いは、広島選挙区で自民が2議席を独占することではなく、政敵・溝手氏の追い落としにあったのではないか。また、1億5千万円のうち1億2千万円は、国民の税金である政党助成金から支出されたことも報道され、県民の反発をいっそう買っている。首相の秘書団が数人規模で広島入りして企業回りをし、溝手票の切り崩しにあたったことも明らかになっている。
 東京地検は河井夫妻の起訴にあたり、「地元政治家ら100人に約2900万円の現金を配った」としている。うち政治家は40人。これまで溝手氏を支援してきた人たちも当然含まれている。
 夫妻の逮捕でこれら政治家は大いにあわてた。「トイレでポケットに封筒をねじ込まれた」「『安倍さんから』と言われ断れなかった」などの告白ドミノが起き、辞職も続いている。
 夫妻は7月8日、買収と事前運動で起訴された。しかし地検は「起訴すべきは起訴した」という言い方で、被買収者100人全員の刑事処分を見送った。「カネを受け取った者も許してはならない」との市民の声が投書欄などにはあふれている。
 法務行政のトップが訴追された事件は新たな局面に入った。8月上旬までに始まる百日裁判では金権政治の実態がさらに明らかになるはずだ。
 県内では15年前にも「政治とカネ」をめぐる問題が起きている。故藤田雄山前知事の選挙で県議らに現金が渡され、1期目は総額2、3億円に上ったとの疑惑が浮かんだものの真相は明らかにならなかった。この時、県議として前知事に「男らしく辞めなさい」と迫ったのが案里被告だった。
  今回の河井事件報道を一貫してリードしてきた地元紙・中国新聞の担当デスクは「選挙のあり方を問い直したい」と述べている。論説主幹はコラムで「脱・お任せ民主主義」「『べからず』公選法を変えよう」と提言した。選挙カーが連呼するだけで「あれもダメこれもダメ」の公選法そのものに金権選挙がはびこる盲点があるのではないかとの指摘である。
 8月2日には、三原市と安芸高田市で、今回の事件で現金を受け取り辞職した市長の出直し選挙が始まる。どのような選挙が行われ、報道はどんな視点で何を読者に問題提起するのか。「ポスト河井」の選挙と報道の行方を見守りたい。
難波健治(広島支部)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年7月25日号

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2020年07月28日

仕切り屋%d通 官庁とズブズブ トンネル会社つくり受注 天下り受け入れ人脈築く=本間龍

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 国の持続化給付金支援事業において、電通がトンネル会社を通して巨額の税金を中抜きしていたことが明らかになり、批判を浴びている。だが、広告会社であるはずの電通が、なぜこのような給付事業を受注していたのか。電通と言えば、メディアでは「広告代理店大手」「広告業界最大手」などと紹介されることが多いが、実は肝心の電通自身は、もはや自らを「広告代理店」どころか「広告会社」とすら考えていないのだ。

解決策提供
 電通のホームページを見ると、事業内容を『「Integrated Communication Design」を事業領域としたコミュニケーション関連の統合的ソリューションの提供、経営・事業コンサルティングなど』としている。横文字ばかりで分かりにくいが、ソリューションとは「解決」「回答」と言う意味の英語であり、電通はあらゆる事業分野でそのソリューション(解決策)を提供する企業である、と宣言しているのだ。そこには当然広告も入るが、紹介文には広告の文字すらない。
 今回の給付金事業は、「事業の告知」と「実際の給付」という二つの柱で成り立っている。事業告知は、全国紙・ローカル紙で30段(2ページ)の告知広告が3〜4回掲載され、この広告掲載も電通が受注した。昔であれば、こうした広告分野だけが電通の取り分であったのだが、現在は広告以外の事業でも積極的に受注する企業に変貌している。だから今回は、実際の給付分野も担当したのだ。
 給付金事業は、担当官庁の経済産業省に大規模給付の経験が無く、人員もいないため、最初から全てを民間業者に任せるしかなかった。
こうしたときに頼りになるのが、常日頃から政府系広報や事業を担当している、電通や博報堂である。彼らは大きなイベントの設営・運営経験が豊富であり、他の様々な企業との協働実績もあり、どの企業がどんな仕事を得意か、よく知っている。大手のため資金繰り等も問題なく、予想外の問題が発生しても決して途中で潰れることはないから、リスクヘッジにもなる。
 中でも電通は、各省庁からの業務を受注し易くするために、今回の「サービスデザイン推進協議会」のようなトンネル団体を数多く作っている。この社団法人もすでに5年前から存在していて、経産省の業務を多数受注してきた。
 こうした受注システム構築の基礎となるのが、役人の天下りである。しんぶん赤旗の報道によれば、2009年からの10年間で、11人の役職付き公務員と1人の特別国家公務員が電通に天下りしている。内訳は財務省、総務省、経産省、国土交通省、警察庁など幅広く、有名どころでは、元総務省事務次官で18年に電通に入社し、現在は電通グループ副社長の櫻井俊氏は、人気アイドルグループ「嵐」の櫻井翔の父親である。

氷山の一角
 こうして元事務次官クラスを顧問などとして雇い入れれば、彼らの出身官庁と太いパイプを作ることが容易になる。そうして作った人脈をフルに活かし、トンネル会社を配置して電通の社名が目立たぬようにして、政府や中央官庁の業務を数多く受注してきた。だから今回の持続化給付金の一件は、あくまで氷山の一角に過ぎない。
 さらに、官庁関係が電通を重宝する決定的な理由がもう一つある。それは、電通を指揮系統のとりまとめ役(仕切り役)にすれば、業務の異なる複数業者にいちいち説明する手間が省けるからだ。
 極端に言えば、事業概要を電通の担当者1人に説明して金を渡せば、あとは電通が必要なスタッフを集め、孫請け・ひ孫請けなどの組織構築を全部やってくれて、業務を遂行してくれる。その間、委託側は詳細を知らなくても事業は完遂される。今回の件が発覚し、野党による追及を受けた経産省側が、当初はこの業務の組織構造を知らず、まったく答弁できなかったことが、このことを証明している。
 リスクを嫌い、なるべく早く業務を発注して、後はお任せにしたい官庁側の姿勢と、広告以外でも金になるなら何でも受注しよう、という電通の貪欲さが絡み合い、同社への業務集中を生んでいるのだ。
本間龍(著述家)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年7月25日号

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2020年07月27日

【焦点】 佐川再喚問を求める署名13万筆を提出 ウヤムヤ許さず 市民団体の活発な活動つづく=橋詰雅博

 森友事件で財務省の公文書改ざんの中心人物の佐川宣寿・元財務省理財局長の国会での再喚問を求める署名約13万筆が、森友事件を追及する野党合同チーム座長・川内博史衆院議員(立民)に6月中旬に手渡された。
 この署名活動は事件の口火を切った大阪府豊中市の木村真市議らがつくった市民団体「森友学園問題を考える会」が昨年10月から始めた。本来は4月に川内議員に渡す予定だったが、コロナ禍のため実現できなかった。ただ、署名募集期間が結果的に伸びたため署名は13万筆を超えた。
 「森友学園問題を考える会」ニュース7月号で同会は、こう訴えている。
〈国会では残念ながら、森友問題を「終わった話」として片づけようとする自民・公明・維新が圧倒的多数を占めており、追及を続けようという野党は少数に過ぎません。私たち市民が「森友学園問題は終わっていない!」「うやむやのまま幕引きは許されない!」という声をあげ続けないと、国会の中だけではどうにもなりません。引き続き、「モリ・カケ・サクラ」に象徴される政治と税金の私物化、ウソ・隠蔽・改ざんの安倍政権の責任を追及していきましょう!〉
 同会は毎月第2木曜18時から豊中市内各駅前、第4木曜17時30分から自殺した赤木俊夫さんが職員として勤めていた近畿財務局前で、それぞれ街頭アピール≠行っている。
橋詰雅博
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2020年07月17日

「テラスハウス」事件とネット規制 「あおり」と制作責任 メディア支配強化狙う政府=岩崎貞明

                橋詰さん行き2面木村花さん.jpg
 フジテレビが制作・放送し、フジテレビオンデマンド(FOD)やネットフリックスでインターネット配信されていた人気番組『テラスハウス』に出演していたプロレスラーの木村花さん(写真)が22歳の若さで亡くなった。SNSでの誹謗中傷を苦にした自殺だったのではないか、ということで、フジテレビの遠藤龍之介社長はお悔やみのコメントで「同番組の制作、地上波での放送、およびFODでの配信を中止するとともに、今後、十分な検証を行ってまいります」と表明した。
  番組が言う「台本は一切ございません」という体裁は「リアリティーショー」と呼ばれ、90年代からアメリカで人気を博し、各国に広がった。そして、現実とは異なる設定を押しつけられた出演者が自殺するケースも既に多数報じられている。
 悪役レスラーとして活躍していた木村さんは、番組でも悪役を引き受けさせられ、そう見えるような編集が施されていたと推測される。その点フジテレビなどの制作責任は免れないが、一方でネット社会が攻撃に拍車をかけたとも言える。
 『テラスハウス』はネットフリックスでの配信が先で、フジテレビの地上波放送はその一ヵ月ほど後という「ネットファースト」で制作されていた。放送枠にとらわれない番組編成が可能なネット版は、地上波版よりも番組尺が長く、CMも挿入されず、また過去分の繰り返し視聴も可能になっている。
 番組は、出演者たちが共同生活しているパートと、その様子を見ながらタレントたちがトークを展開するパートが交互に現れる形で進められる。そしてネット版では、タレントたちのトークのシーンがより長く編集されていた。ここでタレントたちが番組を盛り上げようと過激な発言をして、それがSNSへの「あおり」となって、木村さんを追い詰めていった可能性もある。
 この事件を契機に、政府はSNS規制の動きも見せている。ネット上の人権侵害は厳しく取り締まるべきだと思うが、政府批判も一緒くたにされては、言論・表現の自由が奪われ、政府のメディア支配が強化されてしまう。慎重に見極めたい。
岩崎貞明(放送レポート編集長)

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2020年05月14日

【森友事件】 テレビはどう報じたか 真実に迫る報道の強化を=河野慎二

 森友学園問題を巡る公文書改ざん事件で自殺に追い込まれた近畿財務局職員、赤木俊夫さんの手記が3月23日公表され、新たな展開を見せている。
 テレビはこの問題をどう伝えているか。
 TBSは基幹ニュースや報道番組で積極的に取り上げ、掘り下げた報道を展開した。
狼狽する首相
 手記公表当日の「ニュース23」では、自殺した赤木さんの妻が「安倍首相と麻生大臣は調査される側で、再調査しないと発言する立場ではない」と抗議していることを伝え、国会での安倍首相答弁を放映した。
 共産党の小池晃議員が「総理と総理夫人の国有地売却に関する質問に答えるために改ざんされたと認めている」と追及。安倍首相は「いや、そういう特定のことではなく、膨大な、削除されたことが沢山あるわけで、そういうことを含めて答えている」と狼狽する姿を映し出した。
二度殺すようなもの
  赤木さんの妻を取材した大阪日日新聞の相沢冬樹記者がインタビューに応じ、「新事実が出ているのに『新事実は無い』と言うのは、手記に書いてあるのが嘘と言うのか。首相や麻生氏の発言は、(赤木さんを)二度殺すようなものだ」と厳しくコメントした。
 28日放送の「報道特集」では、金平キャスターが赤木さんのパソコンと向き合った。このパソコンに手記が遺されていたのを、赤木さんの死後、妻が見つけたのだ。金平氏は「僕らの仕事にとって、パソコンは分身みたいなものです」と赤木さんを思い遣った。
もうひとつの文書
 相沢記者によると、赤木さんは近畿財務局のパソコンに、改ざん指示の詳細を記したもう一つの文書を残している。
 相沢記者は「どこからの指示で、どの文章のどの部分を書き換えたのか。パッと見たら全部わかる資料。『全部見てもらおう』と検察庁に出した。財務省にも原本はある」と語る。
 赤木さんの妻が26日、「報道特集」にメッセージを寄せた。「悪しき風土を作っているのは、麻生大臣です。しわ寄せは夫のような立場の人たちのところに来ると思います。このような悪い風土を無くすためにも、再調査を進めてください」と訴えている。
人間の尊厳に係わる
 金平キャスターが「死者が残したものは、人間の尊厳にかかわる問題だ。公務員としての良心があるのなら、財務省、検察庁、法務省は再調査すべきだ」と締めくくった。
 TBS以外では、各局は揃って「IOCが東京五輪延期検討」に多くの時間を割き、赤木さんの手記については、質量ともに見るべき報道は少なかった。
 テレビ朝日の「報道ステーション」は、国会での審議については「再調査はしない」とする麻生財務相らの答弁を中心に構成され、後藤コメンテーターが「再調査すべきだ」と解説したものの、精彩を欠いた。 
 NHKの「ニュースウオッチ9」は、赤木さんの手記公表を独立項目では扱わず、何と国会論戦≠フ1項目で伝えるという仰天構成で、視聴者を唖然とさせた。
 赤木さんが遺した手記がメディアに問うているのは、安倍政権の「知る権利」侵害の意図を見極め、森友事件の真実に迫る取材を強化してほしいということだ。
 テレビは、赤木さんの死と森友事件の真相解明を、新型コロナ報道に埋没させてはならない。
河野慎二
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号

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2020年04月30日

【森友事件】 再調査拒否に厳しい視線 赤木さん「手記」が問いかけたもの=木村真

      地検前.jpg
 森友問題の公文書改ざん事件で改ざん作業をさせられ、自死に追い詰められた近畿財務局職員・赤木俊夫さんの「遺書」とも言うべき手記が公開され、大きな波紋を呼んでいる。
 手記は、財務省からの改ざん指示を実名入りで書いた生々しい内容。「修正作業の指示が複数回あり現場として私はこれに相当抵抗しました。楠管財部長に報告し、当初は応じるなとの指示でしたが、本省理財局中村総務課長をはじめ田村国有財産審理室長などから楠部長に直接電話があり、応じることはやむを得ないとし、美並近畿財務局長に報告した」などの記述を読むと、2018年6月の財務省による調査報告書では見えなかった細部が浮かび上がってくる。
あまりに酷すぎる
 さらには、「刑事罰、懲戒処分を受けるべき者」として、「当時の佐川理財局長、理財局次長、中村総務課長、企画課長、田村国有財産審理室長ほか幹部、担当窓口の杉田補佐(悪い事をぬけぬけとやることができる役人失格の職員)」を告発している。
 会計検査院の検査や野党国会議員からの資料請求に対する隠ぺいについても、「資料はできるだけ開示しない」「文書として保存していない」など本省の指示を具体的に書いている。そして麻生財務相や太田理財局長(当時)の国会答弁は「詭弁を通り越した虚偽答弁」と断じている。
 「抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました」。結び近くでこう書いた赤木さんは、直後に自らの命を絶つ。
 しかし、改ざんを指示した連中は、昇進や栄転に(佐川元理財局長はその後国税庁長官に。佐川氏の後任理財局長・太田氏は主計局長となり事務次官の最有力候補。近畿財務局に直接電話し改ざんを強要した中村課長はイギリス公使に等々)。あまりにひどすぎる。
 赤木さんの手記のおかげで、森友問題は何も解決などしていないことを、多くの人が思い出すことになった。そもそも公文書改ざんは、森友学園に国有地をタダ同然で差し出した「背任事件」に、安倍昭恵が関与していたことを隠すために行われたのであり、異常な国有地売却こそが核心だ。昭恵も安倍首相本人も何の責任も取っていないのだから、解決などするはずがない。
 安倍首相と麻生財務相は、赤木さん手記が公となったその日のうちに「再調査の考えはない」と述べた。この傲岸不遜な態度が多くの人々の憤りを呼び起こし、赤木さんの妻が第三者委による再調査を求めインターネットサイトchange.org上で始めた署名はごく短期間で30万を突破(同サイト史上最速最多の賛同数とのこと)。
再喚問求める署名
 たまたま私たち「森友学園問題を考える会」も昨年10月から佐川元理財局長の再度の国会証人喚問を求める署名を集めていたのだが、半年かけてやっと9,500筆だったのに、手記公開後は爆発的に伸び、3月末までに10万を超えた。
 ところがその頃から新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化し、私たちの署名も4月8日の提出予定を延期せざるを得なくなった。
  とはいえ国民の厳しい視線には、森友問題を放置している安倍政権に私たちの生命と生活に直結するコロナ対策をさせて大丈夫なのかという疑問が込められている。
  赤木さんが文字通り命をかけて書き残した手記が忘れられることなどあってはならないし、現に忘れられてなどいないのだ。
木村真(大阪府豊中市議)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号

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2020年04月29日

【森友事件】 今、問い直す意味 政治の思惑抜きに再調査を 問題の本質は「国有地値引き」=相澤冬樹

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 森友事件の発覚から、はや3年。これほどあからさまにおかしなことがうやむやになりかけた要因はどこにあるだろう?この事件が政治の思惑に巻き込まれてしまったからではなかろうか?

  森友事件とは何か?森友学園に小学校の用地として国有地が売却された。鑑定価格から8億円以上も値引きされて。これは正当か?国民の財産を不当に安く売ったのではないか?それが問題の根本だ。政治とは本来関係ない。
大見得を切った
 ところが、この土地に建つ小学校の名誉校長は安倍首相の妻、昭恵さんだった。昭恵さんは森友学園の教育方針を繰り返し賛美。昭恵さん付きの政府職員はこの土地のことを財務省に問い合わせていた。
 安倍首相は「照会しただけで便宜は求めていない」と言うが、役人はそれだけで“忖度”する。首相の妻が名誉校長だから 安くしたのでは?安倍首相は関与していないのか?追及が強まる中、安倍首相は国会で大見得を切った。
 「私や妻が(学校の認可や国有地取引に)関係していたら総理大臣も国会議員も辞める」。まるで無関係と強調したかったのだろうが、この答弁で野党は勢いづいた。関与の証拠を見つけ出そうと資料や説明を要求。 
 これに財務省の佐川宣寿理財局長(当時)は国会で「資料は廃棄しました。ございません」と突っぱねる。2日後、関連公文書の「改ざん」が密かに始まった。現場で改ざんを押しつけられた近畿財務局の赤木俊夫さんは、その責任の重さに耐えかね命を絶った。
安倍答弁引き金
 改ざんに関する調査報告書を取りまとめた財務省の伊藤豊秘書課長(当時)は「安倍さんの答弁と改ざんは関係あった」と赤木さんの妻に説明した。首相の答弁が野党の追及を招き改ざんを引き起こしたというのだから「安倍首相は改ざんに責任がある」と言ったに等しい。では改ざんを招く元になった国有地の値引きについてはどうか?
  財務省は「地下のごみの撤去に8億円かかる。撤去しないと小学校が開校できず損害賠償を求められる恐れがあった」と説明してきた。だが「ごみ」は本当にあるのか?明確な証拠はない。しかもこの土地からごみはほとんど撤去されていないのに立派な校舎が立っている。
 ごみのあるなしに関わらず校舎はできた。つまり小学校は開校できたはず。財務省の説明は説得力を失っている。
 しかし、森友事件はすっかり「色」が付いてしまった。安倍政権是か非かという「色」。政権を非難する人々は「値引きは不当。安倍首相の責任だ」と訴える。政権を支持する人々は「値引きは正当。森友はもう決着した」と突っぱね、野党とマスコミが騒ぐだけだと言う。双方の主張は平行線をたどった。
 そこに現れたのが「赤木俊夫さんの手記」だ。改ざんを現場で押しつけられた俊夫さんの苦悩。寄り添ってきた妻の深い悲しみと苦しみ。週刊文春でこうした事実が初めて明らかになり、30万人もの方が妻が望む再調査をすべきと賛同した。
妨げにならない
 赤木さんの妻はもともと反政権ではない。むしろ長らく自民党を支持し読売新聞を購読してきた。妻が望むのは夫が亡くなった真相を知りたい、その一点だ。夫の死を招いた改ざんはなぜどのように行われたのか?改ざんを引き起こした国有地の値引きに問題はなかったのか?それを知りたいだけなのだ。こうした疑問に政権への賛否が関係するはずがない。与野党一致して遺族の願いをかなえてはどうか?
 「コロナ対応が最優先の今この問題を蒸し返すべきではない」という意見がある。再調査はコロナ対応の妨げになるか考えてみよう。妻が望むのは「有識者による調査」だから役所は手を取られない。任意の調査だから断ることもできる。コロナ対応の妨げになるとしたら、政権に不都合な事実が浮かび上がり窮地に立つ場合しかない。逆に調査によって関係ないことがはっきりしたほうがいいだろう。
  それでも拒否すると「再調査されると困ることがあるのか?」と勘繰られる。だから安倍政権を支持する方々こそ再調査を支持した方が良いのではなかろうか?
相澤冬樹(大阪日日新聞記者)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号



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