2020年09月26日

【事件】 道警ヤジ排除で報告会 権力の異様さ まざまざ 北海道支部=山田寿彦

 安倍晋三首相の街頭演説にヤジを飛ばした市民が警察官に強制排除された問題で、警察の行為を検証するドキュメンタリー番組を制作したテレビ局スタッフによる報告会「ヤジと民主主義〜小さな自由が排除された先に」が7月15日、札幌で開かれた。JCJ北海道支部が例会として企画した。
 支部会員、読者会員ら35人が参加。番組(46分版)上映後、プロデューサーの山ア裕侍・HBC報道部統括編集長(47)と当時道警担当だった長沢祐(たすく)記者(27)が制作の意図などを話した。
 番組は映像の力で警察の異様さを物語る。力づくの排除、排除後も女性につきまとう女性警察官の言動、能面のような表情で、「事実確認中」と繰り返す道警本部長。「年金安心どうなった?」と書いたプラカードを無言で掲げようとしただけで排除された女性など、丹念に集めた場面とそれらをつなぐインタビューにより、普段は見えにくいこの国の権力の姿が時代背景を伴って像を結ぶ。
 山アさんが敏感に反応したのは三つの危機感から。表現の自由をめぐる社会の不寛容さ、政治的主張を理由に排除する権力の暴走、これを問題と思わないマスコミ――。積極的なニュース報道から始め、TBSの協力で全国放送枠を確保して作品につなげた。
 長沢記者は山アさんの厳しい指導と助言を受けながら、取材に精力的に取り組んだ。警察組織を批判する報道は初めて。「怖さもあった」と正直に語る。取材を通じて「マスコミは権力監視が形骸化している。私たちは本来の役割を認識すべき」と痛感したという。 
 排除された当事者の市民も参加し、世論喚起に果たすメディアへの期待感などを語った。
 番組は放送批評懇談会のギャラクシー賞報道活動部門で年間優秀賞に選ばれた。YouTubeで視聴できる。
 山田寿彦(北海道支部)
道警ヤジ排除問題
2019年7月15日、JR札幌駅前で参院選の遊説中だった安倍首相に対し、「安倍やめろ」「増税反対」と叫んだ男女2人が警察官に強制排除された。2人はそれぞれ国家賠償請求訴訟を起こし、地検に刑事告訴(不起訴処分)した。排除は取材中の報道各社の目の前で起きたが、朝日新聞が翌々日の同17日朝刊で初めて報じた。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年8月25日号

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2020年08月17日

河井事件 広島政界大揺れ 疑惑は安倍政権直撃か 選挙のあり方 根本見直し=難波健治

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 昨年7月の参院選をめぐる大規模買収事件が、広島県政界を揺るがしている。事件が発覚して9カ月。この間、衆院議員で前法相の河井克行被告(57)と妻で参院議員の河井案里被告(46)が逮捕、起訴されただけでなく、7月17日までに買収された側の首長3人、市・町議4人が辞職、町議1人が辞職を表明。地方政界を襲った激震は今後、安倍政権を直撃する可能性をはらんでいる。
 疑惑は、昨年10月末の週刊文春記事が発端となった。昨夏の参院選で定数2の広島選挙区に県議を辞めて立った案里被告の陣営が、車上運動員(いわゆるウグイス嬢)に法定額上限を超える報酬を支払った疑いが浮上し、克行被告が法相を辞任したのが始まりだ。
溝手「切り崩し」
 事件は、自民党本部が河井夫妻に1億5千万円もの政治資金を送っていたことが発覚して様相を大きく変えた。広島選挙区でもう一人の自民公認候補である現職の溝手顕正氏(77)=元国家公安委員長=への交付金は1500万円だった。なぜ同じ公認候補に10倍もの差をつけたのか。夫妻に渡された巨額資金の使途は何か。党総裁としての安倍晋三首相のかかわりが注目された。
 溝手氏は第1次安倍政権を首相が1年で投げ出した時、首相を「過去の人」と評した。首相は、2013年の参院選でも溝手氏にぶつけるかたちで2人目の自民候補擁立を画策したが、当時の石破茂幹事長らの反対で断念したいきさつもある。
  今回の案里擁立をめぐっても地元自民党県連は2人目の擁立に絶対反対の姿勢を崩さず、結局、安倍首相や菅義偉官房長官らが押し切るかたちで定数いっぱいの候補擁立を強行した。告示後は首相をはじめ、菅官房長官らが次々と広島入りし、「案里、案里、案里をよろしく」と繰り返した。
金権政治解明を
 案里候補擁立の狙いは、広島選挙区で自民が2議席を独占することではなく、政敵・溝手氏の追い落としにあったのではないか。また、1億5千万円のうち1億2千万円は、国民の税金である政党助成金から支出されたことも報道され、県民の反発をいっそう買っている。首相の秘書団が数人規模で広島入りして企業回りをし、溝手票の切り崩しにあたったことも明らかになっている。
 東京地検は河井夫妻の起訴にあたり、「地元政治家ら100人に約2900万円の現金を配った」としている。うち政治家は40人。これまで溝手氏を支援してきた人たちも当然含まれている。
 夫妻の逮捕でこれら政治家は大いにあわてた。「トイレでポケットに封筒をねじ込まれた」「『安倍さんから』と言われ断れなかった」などの告白ドミノが起き、辞職も続いている。
 夫妻は7月8日、買収と事前運動で起訴された。しかし地検は「起訴すべきは起訴した」という言い方で、被買収者100人全員の刑事処分を見送った。「カネを受け取った者も許してはならない」との市民の声が投書欄などにはあふれている。
 法務行政のトップが訴追された事件は新たな局面に入った。8月上旬までに始まる百日裁判では金権政治の実態がさらに明らかになるはずだ。
 県内では15年前にも「政治とカネ」をめぐる問題が起きている。故藤田雄山前知事の選挙で県議らに現金が渡され、1期目は総額2、3億円に上ったとの疑惑が浮かんだものの真相は明らかにならなかった。この時、県議として前知事に「男らしく辞めなさい」と迫ったのが案里被告だった。
  今回の河井事件報道を一貫してリードしてきた地元紙・中国新聞の担当デスクは「選挙のあり方を問い直したい」と述べている。論説主幹はコラムで「脱・お任せ民主主義」「『べからず』公選法を変えよう」と提言した。選挙カーが連呼するだけで「あれもダメこれもダメ」の公選法そのものに金権選挙がはびこる盲点があるのではないかとの指摘である。
 8月2日には、三原市と安芸高田市で、今回の事件で現金を受け取り辞職した市長の出直し選挙が始まる。どのような選挙が行われ、報道はどんな視点で何を読者に問題提起するのか。「ポスト河井」の選挙と報道の行方を見守りたい。
難波健治(広島支部)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年7月25日号

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2020年07月28日

仕切り屋%d通 官庁とズブズブ トンネル会社つくり受注 天下り受け入れ人脈築く=本間龍

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 国の持続化給付金支援事業において、電通がトンネル会社を通して巨額の税金を中抜きしていたことが明らかになり、批判を浴びている。だが、広告会社であるはずの電通が、なぜこのような給付事業を受注していたのか。電通と言えば、メディアでは「広告代理店大手」「広告業界最大手」などと紹介されることが多いが、実は肝心の電通自身は、もはや自らを「広告代理店」どころか「広告会社」とすら考えていないのだ。

解決策提供
 電通のホームページを見ると、事業内容を『「Integrated Communication Design」を事業領域としたコミュニケーション関連の統合的ソリューションの提供、経営・事業コンサルティングなど』としている。横文字ばかりで分かりにくいが、ソリューションとは「解決」「回答」と言う意味の英語であり、電通はあらゆる事業分野でそのソリューション(解決策)を提供する企業である、と宣言しているのだ。そこには当然広告も入るが、紹介文には広告の文字すらない。
 今回の給付金事業は、「事業の告知」と「実際の給付」という二つの柱で成り立っている。事業告知は、全国紙・ローカル紙で30段(2ページ)の告知広告が3〜4回掲載され、この広告掲載も電通が受注した。昔であれば、こうした広告分野だけが電通の取り分であったのだが、現在は広告以外の事業でも積極的に受注する企業に変貌している。だから今回は、実際の給付分野も担当したのだ。
 給付金事業は、担当官庁の経済産業省に大規模給付の経験が無く、人員もいないため、最初から全てを民間業者に任せるしかなかった。
こうしたときに頼りになるのが、常日頃から政府系広報や事業を担当している、電通や博報堂である。彼らは大きなイベントの設営・運営経験が豊富であり、他の様々な企業との協働実績もあり、どの企業がどんな仕事を得意か、よく知っている。大手のため資金繰り等も問題なく、予想外の問題が発生しても決して途中で潰れることはないから、リスクヘッジにもなる。
 中でも電通は、各省庁からの業務を受注し易くするために、今回の「サービスデザイン推進協議会」のようなトンネル団体を数多く作っている。この社団法人もすでに5年前から存在していて、経産省の業務を多数受注してきた。
 こうした受注システム構築の基礎となるのが、役人の天下りである。しんぶん赤旗の報道によれば、2009年からの10年間で、11人の役職付き公務員と1人の特別国家公務員が電通に天下りしている。内訳は財務省、総務省、経産省、国土交通省、警察庁など幅広く、有名どころでは、元総務省事務次官で18年に電通に入社し、現在は電通グループ副社長の櫻井俊氏は、人気アイドルグループ「嵐」の櫻井翔の父親である。

氷山の一角
 こうして元事務次官クラスを顧問などとして雇い入れれば、彼らの出身官庁と太いパイプを作ることが容易になる。そうして作った人脈をフルに活かし、トンネル会社を配置して電通の社名が目立たぬようにして、政府や中央官庁の業務を数多く受注してきた。だから今回の持続化給付金の一件は、あくまで氷山の一角に過ぎない。
 さらに、官庁関係が電通を重宝する決定的な理由がもう一つある。それは、電通を指揮系統のとりまとめ役(仕切り役)にすれば、業務の異なる複数業者にいちいち説明する手間が省けるからだ。
 極端に言えば、事業概要を電通の担当者1人に説明して金を渡せば、あとは電通が必要なスタッフを集め、孫請け・ひ孫請けなどの組織構築を全部やってくれて、業務を遂行してくれる。その間、委託側は詳細を知らなくても事業は完遂される。今回の件が発覚し、野党による追及を受けた経産省側が、当初はこの業務の組織構造を知らず、まったく答弁できなかったことが、このことを証明している。
 リスクを嫌い、なるべく早く業務を発注して、後はお任せにしたい官庁側の姿勢と、広告以外でも金になるなら何でも受注しよう、という電通の貪欲さが絡み合い、同社への業務集中を生んでいるのだ。
本間龍(著述家)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年7月25日号

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2020年07月27日

【焦点】 佐川再喚問を求める署名13万筆を提出 ウヤムヤ許さず 市民団体の活発な活動つづく=橋詰雅博

 森友事件で財務省の公文書改ざんの中心人物の佐川宣寿・元財務省理財局長の国会での再喚問を求める署名約13万筆が、森友事件を追及する野党合同チーム座長・川内博史衆院議員(立民)に6月中旬に手渡された。
 この署名活動は事件の口火を切った大阪府豊中市の木村真市議らがつくった市民団体「森友学園問題を考える会」が昨年10月から始めた。本来は4月に川内議員に渡す予定だったが、コロナ禍のため実現できなかった。ただ、署名募集期間が結果的に伸びたため署名は13万筆を超えた。
 「森友学園問題を考える会」ニュース7月号で同会は、こう訴えている。
〈国会では残念ながら、森友問題を「終わった話」として片づけようとする自民・公明・維新が圧倒的多数を占めており、追及を続けようという野党は少数に過ぎません。私たち市民が「森友学園問題は終わっていない!」「うやむやのまま幕引きは許されない!」という声をあげ続けないと、国会の中だけではどうにもなりません。引き続き、「モリ・カケ・サクラ」に象徴される政治と税金の私物化、ウソ・隠蔽・改ざんの安倍政権の責任を追及していきましょう!〉
 同会は毎月第2木曜18時から豊中市内各駅前、第4木曜17時30分から自殺した赤木俊夫さんが職員として勤めていた近畿財務局前で、それぞれ街頭アピール≠行っている。
橋詰雅博
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2020年07月17日

「テラスハウス」事件とネット規制 「あおり」と制作責任 メディア支配強化狙う政府=岩崎貞明

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 フジテレビが制作・放送し、フジテレビオンデマンド(FOD)やネットフリックスでインターネット配信されていた人気番組『テラスハウス』に出演していたプロレスラーの木村花さん(写真)が22歳の若さで亡くなった。SNSでの誹謗中傷を苦にした自殺だったのではないか、ということで、フジテレビの遠藤龍之介社長はお悔やみのコメントで「同番組の制作、地上波での放送、およびFODでの配信を中止するとともに、今後、十分な検証を行ってまいります」と表明した。
  番組が言う「台本は一切ございません」という体裁は「リアリティーショー」と呼ばれ、90年代からアメリカで人気を博し、各国に広がった。そして、現実とは異なる設定を押しつけられた出演者が自殺するケースも既に多数報じられている。
 悪役レスラーとして活躍していた木村さんは、番組でも悪役を引き受けさせられ、そう見えるような編集が施されていたと推測される。その点フジテレビなどの制作責任は免れないが、一方でネット社会が攻撃に拍車をかけたとも言える。
 『テラスハウス』はネットフリックスでの配信が先で、フジテレビの地上波放送はその一ヵ月ほど後という「ネットファースト」で制作されていた。放送枠にとらわれない番組編成が可能なネット版は、地上波版よりも番組尺が長く、CMも挿入されず、また過去分の繰り返し視聴も可能になっている。
 番組は、出演者たちが共同生活しているパートと、その様子を見ながらタレントたちがトークを展開するパートが交互に現れる形で進められる。そしてネット版では、タレントたちのトークのシーンがより長く編集されていた。ここでタレントたちが番組を盛り上げようと過激な発言をして、それがSNSへの「あおり」となって、木村さんを追い詰めていった可能性もある。
 この事件を契機に、政府はSNS規制の動きも見せている。ネット上の人権侵害は厳しく取り締まるべきだと思うが、政府批判も一緒くたにされては、言論・表現の自由が奪われ、政府のメディア支配が強化されてしまう。慎重に見極めたい。
岩崎貞明(放送レポート編集長)

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2020年05月14日

【森友事件】 テレビはどう報じたか 真実に迫る報道の強化を=河野慎二

 森友学園問題を巡る公文書改ざん事件で自殺に追い込まれた近畿財務局職員、赤木俊夫さんの手記が3月23日公表され、新たな展開を見せている。
 テレビはこの問題をどう伝えているか。
 TBSは基幹ニュースや報道番組で積極的に取り上げ、掘り下げた報道を展開した。
狼狽する首相
 手記公表当日の「ニュース23」では、自殺した赤木さんの妻が「安倍首相と麻生大臣は調査される側で、再調査しないと発言する立場ではない」と抗議していることを伝え、国会での安倍首相答弁を放映した。
 共産党の小池晃議員が「総理と総理夫人の国有地売却に関する質問に答えるために改ざんされたと認めている」と追及。安倍首相は「いや、そういう特定のことではなく、膨大な、削除されたことが沢山あるわけで、そういうことを含めて答えている」と狼狽する姿を映し出した。
二度殺すようなもの
  赤木さんの妻を取材した大阪日日新聞の相沢冬樹記者がインタビューに応じ、「新事実が出ているのに『新事実は無い』と言うのは、手記に書いてあるのが嘘と言うのか。首相や麻生氏の発言は、(赤木さんを)二度殺すようなものだ」と厳しくコメントした。
 28日放送の「報道特集」では、金平キャスターが赤木さんのパソコンと向き合った。このパソコンに手記が遺されていたのを、赤木さんの死後、妻が見つけたのだ。金平氏は「僕らの仕事にとって、パソコンは分身みたいなものです」と赤木さんを思い遣った。
もうひとつの文書
 相沢記者によると、赤木さんは近畿財務局のパソコンに、改ざん指示の詳細を記したもう一つの文書を残している。
 相沢記者は「どこからの指示で、どの文章のどの部分を書き換えたのか。パッと見たら全部わかる資料。『全部見てもらおう』と検察庁に出した。財務省にも原本はある」と語る。
 赤木さんの妻が26日、「報道特集」にメッセージを寄せた。「悪しき風土を作っているのは、麻生大臣です。しわ寄せは夫のような立場の人たちのところに来ると思います。このような悪い風土を無くすためにも、再調査を進めてください」と訴えている。
人間の尊厳に係わる
 金平キャスターが「死者が残したものは、人間の尊厳にかかわる問題だ。公務員としての良心があるのなら、財務省、検察庁、法務省は再調査すべきだ」と締めくくった。
 TBS以外では、各局は揃って「IOCが東京五輪延期検討」に多くの時間を割き、赤木さんの手記については、質量ともに見るべき報道は少なかった。
 テレビ朝日の「報道ステーション」は、国会での審議については「再調査はしない」とする麻生財務相らの答弁を中心に構成され、後藤コメンテーターが「再調査すべきだ」と解説したものの、精彩を欠いた。 
 NHKの「ニュースウオッチ9」は、赤木さんの手記公表を独立項目では扱わず、何と国会論戦≠フ1項目で伝えるという仰天構成で、視聴者を唖然とさせた。
 赤木さんが遺した手記がメディアに問うているのは、安倍政権の「知る権利」侵害の意図を見極め、森友事件の真実に迫る取材を強化してほしいということだ。
 テレビは、赤木さんの死と森友事件の真相解明を、新型コロナ報道に埋没させてはならない。
河野慎二
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号

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2020年04月30日

【森友事件】 再調査拒否に厳しい視線 赤木さん「手記」が問いかけたもの=木村真

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 森友問題の公文書改ざん事件で改ざん作業をさせられ、自死に追い詰められた近畿財務局職員・赤木俊夫さんの「遺書」とも言うべき手記が公開され、大きな波紋を呼んでいる。
 手記は、財務省からの改ざん指示を実名入りで書いた生々しい内容。「修正作業の指示が複数回あり現場として私はこれに相当抵抗しました。楠管財部長に報告し、当初は応じるなとの指示でしたが、本省理財局中村総務課長をはじめ田村国有財産審理室長などから楠部長に直接電話があり、応じることはやむを得ないとし、美並近畿財務局長に報告した」などの記述を読むと、2018年6月の財務省による調査報告書では見えなかった細部が浮かび上がってくる。
あまりに酷すぎる
 さらには、「刑事罰、懲戒処分を受けるべき者」として、「当時の佐川理財局長、理財局次長、中村総務課長、企画課長、田村国有財産審理室長ほか幹部、担当窓口の杉田補佐(悪い事をぬけぬけとやることができる役人失格の職員)」を告発している。
 会計検査院の検査や野党国会議員からの資料請求に対する隠ぺいについても、「資料はできるだけ開示しない」「文書として保存していない」など本省の指示を具体的に書いている。そして麻生財務相や太田理財局長(当時)の国会答弁は「詭弁を通り越した虚偽答弁」と断じている。
 「抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました」。結び近くでこう書いた赤木さんは、直後に自らの命を絶つ。
 しかし、改ざんを指示した連中は、昇進や栄転に(佐川元理財局長はその後国税庁長官に。佐川氏の後任理財局長・太田氏は主計局長となり事務次官の最有力候補。近畿財務局に直接電話し改ざんを強要した中村課長はイギリス公使に等々)。あまりにひどすぎる。
 赤木さんの手記のおかげで、森友問題は何も解決などしていないことを、多くの人が思い出すことになった。そもそも公文書改ざんは、森友学園に国有地をタダ同然で差し出した「背任事件」に、安倍昭恵が関与していたことを隠すために行われたのであり、異常な国有地売却こそが核心だ。昭恵も安倍首相本人も何の責任も取っていないのだから、解決などするはずがない。
 安倍首相と麻生財務相は、赤木さん手記が公となったその日のうちに「再調査の考えはない」と述べた。この傲岸不遜な態度が多くの人々の憤りを呼び起こし、赤木さんの妻が第三者委による再調査を求めインターネットサイトchange.org上で始めた署名はごく短期間で30万を突破(同サイト史上最速最多の賛同数とのこと)。
再喚問求める署名
 たまたま私たち「森友学園問題を考える会」も昨年10月から佐川元理財局長の再度の国会証人喚問を求める署名を集めていたのだが、半年かけてやっと9,500筆だったのに、手記公開後は爆発的に伸び、3月末までに10万を超えた。
 ところがその頃から新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化し、私たちの署名も4月8日の提出予定を延期せざるを得なくなった。
  とはいえ国民の厳しい視線には、森友問題を放置している安倍政権に私たちの生命と生活に直結するコロナ対策をさせて大丈夫なのかという疑問が込められている。
  赤木さんが文字通り命をかけて書き残した手記が忘れられることなどあってはならないし、現に忘れられてなどいないのだ。
木村真(大阪府豊中市議)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号

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2020年04月29日

【森友事件】 今、問い直す意味 政治の思惑抜きに再調査を 問題の本質は「国有地値引き」=相澤冬樹

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 森友事件の発覚から、はや3年。これほどあからさまにおかしなことがうやむやになりかけた要因はどこにあるだろう?この事件が政治の思惑に巻き込まれてしまったからではなかろうか?

  森友事件とは何か?森友学園に小学校の用地として国有地が売却された。鑑定価格から8億円以上も値引きされて。これは正当か?国民の財産を不当に安く売ったのではないか?それが問題の根本だ。政治とは本来関係ない。
大見得を切った
 ところが、この土地に建つ小学校の名誉校長は安倍首相の妻、昭恵さんだった。昭恵さんは森友学園の教育方針を繰り返し賛美。昭恵さん付きの政府職員はこの土地のことを財務省に問い合わせていた。
 安倍首相は「照会しただけで便宜は求めていない」と言うが、役人はそれだけで“忖度”する。首相の妻が名誉校長だから 安くしたのでは?安倍首相は関与していないのか?追及が強まる中、安倍首相は国会で大見得を切った。
 「私や妻が(学校の認可や国有地取引に)関係していたら総理大臣も国会議員も辞める」。まるで無関係と強調したかったのだろうが、この答弁で野党は勢いづいた。関与の証拠を見つけ出そうと資料や説明を要求。 
 これに財務省の佐川宣寿理財局長(当時)は国会で「資料は廃棄しました。ございません」と突っぱねる。2日後、関連公文書の「改ざん」が密かに始まった。現場で改ざんを押しつけられた近畿財務局の赤木俊夫さんは、その責任の重さに耐えかね命を絶った。
安倍答弁引き金
 改ざんに関する調査報告書を取りまとめた財務省の伊藤豊秘書課長(当時)は「安倍さんの答弁と改ざんは関係あった」と赤木さんの妻に説明した。首相の答弁が野党の追及を招き改ざんを引き起こしたというのだから「安倍首相は改ざんに責任がある」と言ったに等しい。では改ざんを招く元になった国有地の値引きについてはどうか?
  財務省は「地下のごみの撤去に8億円かかる。撤去しないと小学校が開校できず損害賠償を求められる恐れがあった」と説明してきた。だが「ごみ」は本当にあるのか?明確な証拠はない。しかもこの土地からごみはほとんど撤去されていないのに立派な校舎が立っている。
 ごみのあるなしに関わらず校舎はできた。つまり小学校は開校できたはず。財務省の説明は説得力を失っている。
 しかし、森友事件はすっかり「色」が付いてしまった。安倍政権是か非かという「色」。政権を非難する人々は「値引きは不当。安倍首相の責任だ」と訴える。政権を支持する人々は「値引きは正当。森友はもう決着した」と突っぱね、野党とマスコミが騒ぐだけだと言う。双方の主張は平行線をたどった。
 そこに現れたのが「赤木俊夫さんの手記」だ。改ざんを現場で押しつけられた俊夫さんの苦悩。寄り添ってきた妻の深い悲しみと苦しみ。週刊文春でこうした事実が初めて明らかになり、30万人もの方が妻が望む再調査をすべきと賛同した。
妨げにならない
 赤木さんの妻はもともと反政権ではない。むしろ長らく自民党を支持し読売新聞を購読してきた。妻が望むのは夫が亡くなった真相を知りたい、その一点だ。夫の死を招いた改ざんはなぜどのように行われたのか?改ざんを引き起こした国有地の値引きに問題はなかったのか?それを知りたいだけなのだ。こうした疑問に政権への賛否が関係するはずがない。与野党一致して遺族の願いをかなえてはどうか?
 「コロナ対応が最優先の今この問題を蒸し返すべきではない」という意見がある。再調査はコロナ対応の妨げになるか考えてみよう。妻が望むのは「有識者による調査」だから役所は手を取られない。任意の調査だから断ることもできる。コロナ対応の妨げになるとしたら、政権に不都合な事実が浮かび上がり窮地に立つ場合しかない。逆に調査によって関係ないことがはっきりしたほうがいいだろう。
  それでも拒否すると「再調査されると困ることがあるのか?」と勘繰られる。だから安倍政権を支持する方々こそ再調査を支持した方が良いのではなかろうか?
相澤冬樹(大阪日日新聞記者)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号



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