2020年07月25日

コロナ禍を隠れ蓑に 日本など各国で接触追跡アプリ導入 「監視社会」強化 前のめり 有効性は疑問だらけ=橋詰雅博

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新型コロナのまん延で各国は感染防止策としてスマホを使う感染者接触追跡アプリの導入に前のめりだ。すでに世界の40カ国・地域で取り入れられている。また米IT巨大企業のグーグルとアップルが共同開発した基本ソフトを用いたアプリ導入を、欧米や日本など20カ国以上が進めている。しかし、一方では個人情報が政府やIT企業に流れてしまう危険性をはらんでいる。
機能は3タイプ 
20年以上監視問題を取材・研究しているジャーナリストで社会学者の小笠原みどりさんは(カナダ・オタワ大学特別研究員)、スマホを使ったコロナ対策の主な監視機能を3つに分けている。
 一つは移動の追跡。GPS(全地球測位システム)による位置情報からスマホ使用者が移動した場所を追跡して感染の可能性を予測する。そして政府が使用者に外出を許可したり、自己隔離を要求したりする。
中国がその代表例で、アプリの利用は事実上、強制に近い。病院の診察情報も連動させる徹底ぶりだ。中国と異なるが、韓国やイスラエルなども位置情報を取得している。
 二つめは隔離の強制執行。政府が、監視が必要と判断した人たちが、実際に自己隔離をしているかを位置情報などによって見張る。隔離場所から離れると、本人に警告が発信される。警察にも通報がいく。台湾では厳格に実施されている。
 三つ目が接触者の追跡。近距離無線のブルートゥースを利用して、接触者を記録・通知する。
シンガポールや米国、イギリスと同じくこの方式を使う日本の場合、仕組みはこうだ。まず保健所がコロナ感染者などを管理するシステムに陽性者を登録する。その陽性者は保健所の通知を受けて陽性者であることをアプリに入力。アプリをインストールした人が陽性者と接触記録がある場合、接触者アラート≠ェ通知される。さらに接触が確認された人には相談方法などが案内される。アプリを利用するかどうかは、個人の判断だ。
厚生労働省は、携帯電話番号は暗号化され、データは二週間後に自動的に削除されるのでプライバシーは守れるとしている。
差別につながる
これに対して小笠原さんはこう反論する。
「日本のように政府が感染者情報を入力する場合、感染者の特定は避けられない。データは必ず実名で扱われる段階がある。匿名化できるというデータは、裏を返せば、実名化もできるということ。実際、イギリスでは政府が入手した匿名の医療データから感染者を特定する権限を持っていることを英紙ガーディアンは指摘した。病歴など健康に関する個人情報は、最もセンシティブな情報であり、将来、本人が望まない場面で知られれば、就職や結婚、保険加入や取引などで不利に扱われかねない。日本でコロナの感染者捜し≠ェ過酷なバッシングとデマに発展したことを考えれば、接触者情報も差別につながる可能性を無視できない。
アプリの有効性は、すでに導入された国々でもまだ証明されていない。技術が確立していない上、ダウンロードする人が少ない。実際には、行動を追跡されたくない人が多いのだろう。また、十分な感染検査が実行されていなければ、このアプリは機能しない」
 コロナ禍後に監視資本主義(社会、経済、政治までもGAFAが動かす仕組みを指す)は強まるのか弱まるのかについて、小笠原さんはこう言う。
 「『監視資本主義』は、ハーバード大学ビジネス・スクールのショシャナ・ズボフ名誉教授の言葉です。多くの政府や企業が、接触者追跡アプリのように、感染防止対策として人々の行動を監視するツールを矢継ぎ早に導入しているのは、この延長線上にある。が、I B Mなど顔認証システムを開発してきた企業は、いま広がっている人種差別反対の動きに対して、警察への販売を停止すると発表した。
コロナ下で権限が強化された政府によって監視対象にされてきた人々は、こうした監視ツールがいまある不平等を強化し、自分たちに対する暴力として使われることに気づいている。 
日本では五輪を契機に、顔認証のような監視技術が人々の安全を守るという宣伝が先行しているが、顔認証が個人の自由を抑制し、不平等や差別の強化につながることが報道される必要がある。監視によって誰が守られ、誰が排除されるのかを、いまほどジャーナリズムが明確にしなければならないときはない。コロナを口実に息ができない$「界が広がらないように」
不具合も多く見つかった感染者接触追跡アプリの有効性は疑問だ。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年6月25日号
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2020年07月19日

【新型コロナ禍】 北九州 トップの「動揺」で混乱=杉山正隆

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 「北九州市は第二波の真っ只中にある」――。北橋健治市長の時折、声を詰まらせる記者会見を連日目にし市民に衝撃が広がった。4月30日から23日間、「感染者0」だった同市では、5月23日から感染者が出始め、再開しつつあった公的施設が再び休館になり、休業に追い込まれる飲食店が出ている。
 中心部の老舗百貨店「井筒屋」は自動体温測定器を設置、係員が立ち入店時のマスク着用と手指消毒を求めた。「マスクは暑くて苦しい」と苦情が続出。専門家は「市長がパニックのようだった。自粛してきた市民への感謝の気持ちを表し、これからも取り組もうとのメッセージが無かった」と話す。
 同市は日本製鉄の高炉廃止に伴い人口が流出し95万人弱まで減少。160万人の福岡市に水をあけられたが九州第二の人口を有す。高齢化率は30%を超し「都会と郊外を併せ持っている」と評される。
 小学校で「感染集団」(クラスター)が発生し保護者に動揺が走った。NHKや民放でほぼ一日中、市長の顔が映し出された。「感染者数は少なく病床数等にも余裕もあるのに、もうダメかもと混乱を招く対応だった」と指摘される。
 病院や高齢者施設でも感染集団が発生したが、市長の「真っ只中」発言とは裏腹に5月29日の26件をピークに新規感染者は減少し数日で1桁に。6月11日には20日ぶりに0になった。感染者が出なかった間も水面下で弱い流行がくすぶっていたとみられる。九州の玄関口で新幹線や飛行機等で県外から流入した可能性もある。
 5月末、「徹底的に対策を採る」(北橋市長)との方針を打ち出し、症状の有無によらず濃厚接触者にPCR検査を行うように。対象を増やしたことで無症状の感染者があぶり出されたともいえる。「方針転換で感染者数が急増することを、市長は分かってなかったのではないか」と市民の間ではささやかれている。「市長が混乱したことで大きな損害を被った」とも。
 感染症は拡大が始まると数年は続くことが多く、恐怖による過剰反応が災禍を拡大する。北九州市での混乱は、来る第二波第三波に向け、首長の言葉に重みがあることを思い知らされた「失敗例」として注目を集めている。
杉山正隆
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年6月25日号

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2020年07月18日

【新型コロナ禍】 北海道 公共交通網 崩壊の危機=山田寿彦

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 北海道では国の緊急事態宣言解除を挟み、2カ月以上に渡り新規感染者が連日報告されている。21日現在の感染確認者数は全国4番目の1180人(死者95人)。人口が集中する札幌圏が中心だが、観光などサービス産業の比重が大きい北海道の経済的ダメージは甚大で、影響は道内全域に及んでいる。
  感染のクラスター発生はライブハウス、病院、老人福祉施設など。最近では岩見沢市内の美容室、札幌市内の昼カラオケでのクラスター発生が報告され、後者は全国ニュースになった。
 老人福祉施設で最も悲惨な事例となったのは札幌市北区の茨戸アカシアハイツだった。スタッフも含めて90人以上の感染者を出し、15人が死亡した。うち11人は入院もできず、施設内で亡くなった。施設内に事実上閉じ込められた背景には札幌市保健所の判断があったとされ、今後の検証が待たれる。
 北海道では多くの外国人を含む約200万人の来場者があったさっぽろ雪まつり(1月31日〜2月11日)後に感染第1波が襲来した。2月28日に鈴木直道知事は国に先駆けて独自の緊急事態宣言を出し、学校を一斉休校としたほか、外出自粛を要請した。
  一旦収束に向かったため、知事の判断は称賛された。しかし、世界保健機関(WHO)の緊急事態宣言は1月30日。結果的に第1波の原因となった可能性が高い雪まつりを何の注意喚起もせずに開催した札幌市の判断の是非については検証されていない。
 多くの企業が経済的ダメージを被る中、JR北海道は深刻な経営難に直面している。19年度の線区別収支状況によると、道内23線区すべてが赤字となり、赤字総額は551億円余。北海道新幹線(新青森−新函館北斗)は線区別で最大の93億円余の赤字となった。コロナ禍が直撃した第4四半期だけでこれだけの影響が出ており、今年度はさらに深刻な事態に陥ることが懸念される。
 もともと多くの不採算路線を抱えて出発したJR北海道は経営基盤が極めて脆弱で、今後は「国や自治体が助けてくれなければ、企業存続のために不採算路線は切り捨てざるを得ない」と開き直ることも予想される。北海道の公共交通網が崩壊の危機に直面する可能性をコロナ禍ははらんでいる。
山田寿彦
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年6月25日号


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2020年07月13日

【新型コロナ禍】 関西 100年の伝統あっけなく=井上喜雄

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 新型コロナ禍が市民生活や経済に及ぼしている影響は特に首都圏その他の地域と変わることはないが、関西三都市、京阪神のうち観光産業が大きなウェイトを占める京都では今春以来観光客が激減、とりわけ外国人宿泊客数は四月で見れば前年比99%減の惨憺たる数字となった。「泊れや泊れ」とばかり、この間大型ホテル等の誘致に踊った京都市の観光政策は大きな転換点を迎えたようだ。
 ここ数年インバウンド頼みの様相だった観光関連業界は「緊急事態宣言」解除後の国内客回復に期待しているが、五月以降も葵祭行列の中止に続いて七月祇園祭山鉾巡行も取り止めが決まっており、核となる観光行事が失われた状況では見通しも厳しいと思われる。
 土産物産業も例外ではなく、例えば少なくとも二百年以上の歴史を持つ菓子「八ツ橋」は、京都市によると観光客の4割が購入している定番商品で、市場規模は100億円に上るとされるが、製造元の経営者は地元紙『京都』に「今春の売り上げはおよそ例年に比べて8割減、億単位の赤字です」「いかに観光客に頼っていたかが見えてきました。ありがたいことにこれまでは、あまり努力をしなくても多く売ることができました、八ッ橋もそうですが、京都の伝統産業は長い時間をかけて、技術や文化が培われてきました。しかし伝統産業が崩れてしまうのは一瞬です」とコロナ禍の怖さを語っている。
 大阪でも老舗が店を閉じる。大阪のランドマーク通天閣の「あい方」(高井・通天閣観光社長)ふぐ料理店「づぼらや」(写真)が今秋閉店するという。大阪では「てっ(ふぐ)ちり」イコール「新世界のづぼらや」と答える人は多く、100年の歴史がある老舗だ。閉店のニュースはさすがに全国に流れたが、運営会社は「(大勢で鍋を囲むという)密を避けながらこれまでどおりに営業する見通しを立てられなかった」としている。
 新型コロナウィルスは100年の歴史をも駆逐する猛威ぶりだ。
 ポストコロナがどうなるか全く予想がつかない。
 井上喜雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年6月25日号

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2020年07月10日

【新型コロナ禍】 東海 第2波への備えに奔走=加藤剛・古木民夫

 新型コロナの第2波が来ても後手を踏まないように、岐阜県は「県感染症対策基本条例」の制定をめざし、その骨子案をまとめた。今回の騒動で感染者や医療従事者への不当な差別・誹謗中傷があったことを踏まえ、こうした行為の禁止を盛り込んでいるのが特徴。
 県は検査・医療体制の整備などに力を注ぎ、専門家会議を常設化する。6月中に開く県議会に提案、可決されれば全国初となる。三重県にも同様な動きがあるという。
  一方、愛知県は新型コロナ対策に特化した「感染症対策局」を5月20日に発足させた。県内の感染が落ち着いているうちに、検査体制を増強し、第2波に備えるという。
 コロナ休校による授業の遅れを、夏休みの短縮でしのごうという動きが東海の小・中学校の間で具体化している。中日新聞の調べによると、岐阜県の多治見・中津川など周辺5市が、今年の夏休みを例年に比べて8割近くカットし、9日間にする方針を決めたという。
 これは極端な例だが、短縮を計画している学校は8月上旬からの16日間を夏休みとするケースが多いようだ。いずれにしても。東海の小・中学生たちにとって、今年はきびしく、忙しい夏になるのは間違いない。
 ところで、緊急事態宣言の下で、街場の状況はどうだったか。名古屋市西区界隈での見聞をいくつかをお伝えしよう。
 この辺りでは宣言以降、地下鉄の利用者が減り、路地の人通りも少なくなった。が、飲食店などが休業するケースはほとんどない。そんな中、ある串カツ店は店先を改造、テイクアウトのメニューや野菜、酒ビンを並べるなどの新手を繰り出した。
 名古屋と言えば、喫茶店がモーニングサービスを競うことで知られるが、朝食メニューのほかに、色とりどりのマスクを販売する店もあった。浄心駅の近くでは、ヘアーカット専門店の店先に「マスクして来なかった方は入店できません」と言うプレートがお目見えした。
 一杯飲み屋も三密≠避けるのに大変苦労があるのだろう。店先にある客寄せタヌキの置物にもマスクをかけるなどの工夫で「コロナ後」に備えている。
 加藤剛・古木民夫
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年6月25日号
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2020年07月07日

【新型コロナ禍】 新潟 文化・芸術 生計を直撃=高内小百合

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 日曜日の昼下がりになると、開け放たれた2階の窓から大通りに生演奏が響く。チェロ、フルート、声楽など毎回異なる。場所は新潟市役所に近い中心市街地にあるギャラリー「蔵織」。その1階でクラシックCD専門店を営む佐藤利幸さん(56)の企画で4月に始まった、無料の「ライブ」だ。
 新型コロナウイルスの感染予防として演奏会の類も軒並み開催が難しくなった。生演奏の機会を失った音楽家らにその機会を設けたいという思から始まった。「3密」を避けるため開催の告知はしない。だが、通りを行く人たちが思わず足を止めて聞き入る。多彩な演奏家の「出演」に、今では「常連客」までいる。 
 「蔵織」にはサロンコンサートが開けるスペースもある。そこでの演奏会も再開された。定員は従来の3分の1に減らしている。演奏会前にピアノの調律を依頼すると「3月から仕事がなかったから、ありがたい」と調律師は駆け付けた。
 だが、文化芸術に関しても前向きな話題より残念なニュースの方が新潟県でも多いのが現実だ。
 5月には大衆演劇の専門劇場「古町演芸場」が閉館した。県内最大の公募美術展「県展」や県音楽コンクールも中止となった。夏の風物詩となっている野外音楽祭「フジロック・フェスティバル」(湯沢町)も初の中止が発表された。
 本県ではプロの団体は少ないが、ピアノやバレエなどの教室は盛んだ。レッスンと公演で生計を立てている人が多く、ウイルス禍が直撃している。
 市民の文化活動を支援しているアーツカウンシル新潟の調査では、2月以降「休業要請」の影響で公演中止などの影響を受けたのは9割に上り、「節約」や「貯金の切り崩し」でしのいでいる実態も見えてきた。
 経済全体で見れば文化芸術が占める割合は大きくはない。だが、公演などには波及効果もある。フジロックには海外も含め10万人もの来場があり、宿泊や飲食が地域経済を潤す。音響舞台関係者、資機材の搬送搬出、設営などの業者もいる。
 文化芸術分野への公的支援は後に回されやすい。けれど人は衣食住だけでは豊かに生きられない。カロリーだけ満たされて栄養素を欠くようなものだ。公的支援が急がれる。
 高内小百合
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年6月25日号

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2020年07月04日

コロナ禍取材最前線 Zoomぶっつけ本番 感情を読み取る難しさ 始めは抵抗感 有効な面も=知念愛香

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 コロナ問題の取材現場はどうなっているか。通信社記者に、この間の体験記を寄せてもらった。
      ◇
  国内で新型コロナウイルスの感染が広がり、現場での取材環境は目まぐるしく変わった。対面取材はしづらくなり、電話やビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」などのオンライン取材が増えた。意義があると思って取材した人の名前を掲載したところ、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で思わぬ批判がきたこともあった。これからは「新しい生活様式」ならぬ「新しい取材様式」のための気遣いが求められている。
 目線は時々下に
  初めて取材先からビデオ通話でのやりとりを求められた際、正直に言うと困惑した。電話でやりとりするよりも相手の表情は見えるが、パソコンの画面に向かって話しかけるという点からも、対面取材とは圧倒的に違う。取材先は胸の内を明かすような発言をしてくれるのか……。どう取材を進めたら良いのかが全く分からず、最初の「Zoom取材」はぶっつけ本番となってしまった。
 結論から言うと、オンライン取材は問題なくこなせるものの、相手と打ち解けたり、表情などを読み取ったりするにはノウハウが必要だ。基本的に、ビデオ画面には私の顔しか映らないため、話を聞きながらメモを取っている手の動きや、ノートにペンを走らせている様子は見えない。相手から見ると、私はなぜか目線を時折下に落とし、話を聞いていないような態度を取っているように思われているかもしれない。
 また、目線にも気を付けなければならない。画面上の相手の目を見ても目線は合っていない。視線を合わせるには、相手の目を見ずにカメラを見なければいけない。こうした目線ひとつでも、対面や電話取材とは違う。「私がどう見えているのか」に気を遣う必要がある。
 リラックスする
 とはいえ、出張しないと会えないような遠方の人と話をする場合は非常に有効だ。また、自宅で取材を受けてくれた人からは「リラックスして話せた」と言われたこともある。最初は抵抗感があったものの、今ではメリットとデメリットをしっかり認識した上で、新たな取材手法として上手く取り入れていきたいと考えている。
 オンライン取材の反面、緊急事態宣言中や解除後の街を原稿にするために、しばしば街に繰り出した。緊急事態宣言下でも、自らの生活のために営業する飲食店や、なじみの店を支えるために足繁く通う常連客など、様々な事情を抱えた人と出会った。
 これは緊急事態宣言の解除直後の話だが、神奈川県・湘南の海岸である親子に出会った。母親の「子どもの学校がそろそろ始まるが、休校期間が長かったため夏休みがなくなるかもしれない。今まで外出できず、夏休みもない可能性が高い分、今のうちに遊ばせてあげたい」との言葉が印象に残った。
 許可を得た上で雑観として記事を出したが、SNS上で「緊急事態宣言が解除されたからといって遊びに行くなんて、子どもが感染してもよいと思っている親なんだろう」などの批判的な意見が散見され、驚かされた。
 監視し合う風潮
 社内では、街で取材した人の名前を掲載したところ、発言をめぐって取材相手本人のSNSに誹謗中傷のコメントが届いたため、ネット上の記事を匿名に切り換えたこともあった。
 「自粛警察」という言葉が登場したように、コロナ禍では同調圧力や市民が監視し合う風潮が高まった。同調圧力に迎合するつもりはないが、状況に応じて取材相手が誹謗中傷を受けないような記事の書き方に気を遣う必要があると考えている。     
知念愛香
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年6月25日号

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2020年06月23日

【新型コロナ禍】 さいたま市では「ひいきのお客を癒したい」と営業を続けた飲み屋も=佐藤達哉

 新型コロナウイルスの感染拡大で4月7日、埼玉県は、政府の緊急事態宣言の対象となった。筆者が生活している、さいたま市南区でも、宣言以前から営業自粛で、街の活気は失われつつあったが、宣言によってそれに拍車が掛かった。
 地域経済が機能せず
 南区は電車で15分程度で東京都内に行ける利便性から人口約18万人で、世帯数とともに市内の区の中で一番多い。この人口や世帯を目当てにさまざまな店舗が進出し、必要な物資は、たいがい購入でき、飲食店なども多く、生活する上で不便を感じたことはなかった。
 しかし、企業が運営する系列店は一斉に営業自粛に。日頃は無意識に便利さを享受していたが、店舗の休業で「不便」となりストレスを感じた。活気が失われた街の風景を目にするたびに、個人商店や商店街など地域の経済システムが機能していないことを痛感した。地元に根付いた商店や商店街が機能し、コミュティーがあれば不便さをそれほど感じなかったろう。
 心意気示す居酒屋「甲子園」
 多くの店舗が休業する中で、県北部の中心地・熊谷市では、個人経営の居酒屋が営業を続けていた。JR熊谷駅周辺の繁華街は飲食店が並び、にぎやかだが、コロナウイルスの影響で多くの店舗が休業。その中で居酒屋「甲子園」は店を開けた。
 夏の全国大会に出場した元高校球児の店主・橋本哲也さんのきどらない気っぷのよさが売り物で、そういう店が大好きな地元の人が集う。アルバイトの女性には休んでもらい、橋本さんと二男で店を開けた。
 熊谷はかっては、個人の飲食店が多く、各店の持ち味があった。今は、企業の系列店が多くなっている。繁華街に地元らしさが薄れていくのを日頃から憂いていた橋本さんは、熊谷のにぎわいの「灯」を消してはならないとの思いから店を開けたという。
 地元の人たちに店を長年、ひいきにしてもらっているのに「緊急事態宣言」が出たので「休みます」と、自分たちの都合を優先するわけにはいかないという。自粛でストレスがたまりやすいこういう時こそ、お客の心を癒したいう地元の店としての自負がうかがえた。
 「蔵のまち」に観光客の姿も
埼玉では秩父地方とともに、「蔵のまち」として有数の観光地である県西部の川越市を緊急事態宣言解除後の6月初旬の平日に訪れた。蔵造りの建築が並ぶメイン通りは、通常であれば、平日でも、県内外の観光客や韓国、中国など外国人観光客で、にぎわいを見せていた。
 地元の人に話を聞くと、緊急事態宣言で多くの店が休業していたという。解除されたとはいえ、以前のようにぎやかさを取り戻すには、時間がかかりそうだと、地元の人はみていた。しかし平日も観光客の姿が、あちこちで見られた。
佐藤達哉
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2020年06月22日

【新型コロナ禍】 支援財源は職員の懐から 広島知事の素顔露呈=難波健治

           DSCN3525.JPG
 広島県における新型コロナの感染者数は6月16日現在、164人(再陽性4人と県外空港検疫所1人を除く)だ。死亡は3人。5月4日以降は46日間、県内での新規感染者数は確認されていない。入院患者は14日、3月19日以来となるゼロとなった。
 そんな状況の一方でコロナ禍は地方政治の「素顔」を思わぬかたちで浮かび上がらせた。
 感染者が拡大の一途をたどっていた4月21日、湯崎英彦知事は感染防止のために休業や営業時間短縮の要請に応じた中小業者に県独自の支援金を最大50万円支給すると発表した。その際、「財源が圧倒的に足りない」ことを理由に、国が全国民に一律給付する10万円について、県職員が受け取った分を基金に積み立てるなどして対策費の原資として「活用したい」と表明したのである。
 直後から、県民や県議会から批判や抗議が相次ぎ、知事は翌日、「誤解を与える表現だった」として発言を撤回した。
 この騒動が起きる12日前にもこんなことがあった。今年9〜11月に県東部で開催予定の国際芸術祭「ひろしまトリエンナーレ2020 in BINGO」の総合ディレクターが記者会見し、3月末で辞任したことを明らかにしたのである。
 外部委員会が展示内容を事前確認するという県の方針に抗議したが聞き入れられなかったための辞任で、出展予定作家の7〜8割に当たる約30人も県の方針に反対して不参加を決めていた。
 この辞任会見翌日、湯崎知事を会長とする実行委員会は、開催の中止を決め、発表した。中止の理由は、コロナの感染拡大だと説明した。コロナ以外にも理由があるのは明らかで、コロナを口実にした対応は将来に禍根を残すに違いない。
 雇用への影響も深刻だ。厚労省によると、広島県の新型コロナの影響による解雇・雇い止めの見込み人数は6月12日時点で522人。5月29日時点から112人増と急増している。
 12日付中国新聞は社会面で、解雇・雇い止めにあい生活苦にあえぐ女性たちの実情を報道。パート先の飲食店から解雇を告げられた広島市のシングルマザーの「もう今のマンションには住めない。とてもじゃないけど家賃を払えない」という悲痛な声や、事務職として勤めるメーカーから6月末で契約打ち切りを通告された広島県廿日市市の派遣社員女性の「感染しないかおびえながら出社して次は雇い止め。私たちは『使い捨て』なんでしょうか」という怒りの声を伝えている。
難波健治(JCJ広島)

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2020年06月16日

新濃厚<Rミュニケーション 集会も会議もネットで ツイッターデモ、法案止める=丸山重威

「濃厚接触がダメなら濃厚意見交換だ」―新型コロナウイルス感染症の流行で、会議や集会が自粛させられる中で、「それなら、ネットで」と、ネット利用の集会や会議が増えている。
 新型コロナウイル紙感染症の流行は、新しいコミュニケーションを創り出し始めている。
「運動つぶすな」
 ことし2020年は、戦後75年、被爆75年の記念すべき年。ニューヨークで始めて原水禁大会が計画され、核拡散条約の再検討会議への行動なども計画されていた。
 しかし、ニューヨークも外出制限がかかり米国の入国管理が強まる中で、これらの行動は中止、ネットでの交流に切り替えられた。国内でも5月1日のメーデー集会、3日の憲法記念日集会がそれぞれネット中継に。スカイプやズームなどのソフトを使い、少人数の会場から全国にライブ中継する方策がとられた。
 ネットによる集会や会議は、遠方、時には外国からでも参加することができる利点があり、コロナ問題終息後も続いていく可能性があるようだ。
検察庁法で世論わく
 一方、安倍政権は、コロナ対策で混乱している中で、年金の受け取り開始時期の選択肢を75歳まで引き上げる年金法や、作物の一部を採って繰り返し育てる「自家増殖」を原則禁ずる種苗法、検事の定年について政権がコントロールできる検察庁法などの改正を次々打ち出しているが、この検察庁法の改正について、ツイッターで1000万に達するツイートによる「ツイッターデモ」が展開された。
 5月8日夜、ツイッターに30代の女性会社員が投稿した「#検察庁法改正案に抗議します」というツイートで、11日の午後までに同じタグ(#)のツイートは約500万件に上った。専門家の分析では、機械によるボットのリツイートはほとんど見られず、スパムと考えられるものも約10%。約60万アカウントが発言していたことが明らかになったという。
 もちろんこれがそのまま、人数に置き換えられるものではないが、世論動向としては確かで、新聞各社が取り上げ、問題をクローズアップした。
 人間同士の生の触れ合いこそ、人間の本質。コミュニケーションの新しい方式として見ておく必要がありそうだ。
丸山重威
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年5月25日号

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2020年05月29日

政府批判と多様性消えた コロナ危機下で変わる報道 戦争心理が人権を駆逐 内側からジャーナリズム縛る=小笠原みどり

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 カナダ政府が新型コロナウイルス対策として、3月16日に外国からの旅行者の入国を禁止し、トゥルードー首相が人々に「家にいるように」と呼び掛けてからすでに9週間、私は「緊急事態」下で暮らしている。 
  緊急事態は州知事によって宣言され、私が暮らす人口最多のオンタリオ州では食料品店と薬局以外はほぼすべての事業所が閉鎖、学校は休校、5人以上の集まりが罰則付きで禁じられるなど、日本より厳しい制限が私生活の細部にまで課されている。
 カナダのコロナ報道は中国で感染が広がった1月に始まっていたが、イタリアで死者が急増すると明らかに危機感が強まり、国境閉鎖とともに報道はコロナ一色に染まった。初めは人権に配慮した多様な感染対策を紹介していたが、国境閉鎖とともに読者・視聴者に対して「手を洗え」「人から2メートル離れろ」と命令調になり、さらには「コロナウイルスとの闘い」を第二次世界大戦になぞらえる戦争用語を連発するようになった。その変化を報告する。
当初は差別に警鐘
 1〜2月、メディアは至って冷静だった。中国・武漢の封鎖や、横浜港のダイアモンド・プリンセス号の隔離で帰国できなくなったカナダ住民に、政府は帰国便を手配し、メディアは戻ってきた人たちの安堵の声を伝えた。帰国者たちは軍の施設などに14日間隔離されたが、公共放送C B Cラジオはこの隔離が本当に必要なのか、隔離が及ぼす精神的・身体的な悪影響はないのかを公衆衛生の専門家らに取材。隔離よりも治療体制の拡充に力を入れた方が有効である、という見方も報じた。
 やはり中国から始まった2003年のS A R S流行時に、トロントの中華街は閉店が相次ぎ、中国出身者への差別が強まったことから、感染症がもたらす社会的な分断にも警鐘を鳴らした。カナダのメディアには日本に比べて、日頃からよく大学の研究者が登場するが、「伝染病には生物学的側面だけではなく、政治的、経済的、社会的な影響を考えて対処しなければ、より多くの人を傷つける」と語った感染学者の言葉が、今では重く響く。
鎖国ドミノで一変
 個人の自由と社会の多様性を尊重する姿勢は、新型コロナウイルスが欧米内部を直撃するとともにメディアから失われた。米国のトランプ大統領が欧州からの入国者の拒否を発表した際、C B Cはまだ「こんな独断的な手法は、国際協調が必要なパンデミック対策に有効ではない」という専門家の批判を報じていた。が、自国政府が鎖国ドミノに加わるや、政府の対策に疑問をさしはさむ発言は消えてしまった。
 全国紙グローブ・アンド・メールは社説で「ウィルスを止めるためにいま行動するか、後で悔やむか」(3月16日)、「先回りしてウィルスを殺せ」(17日)、「いい市民になろう、距離を保って」(18日)、「ウイルスとの戦争の準備はいいか?」(19日)と連日、読者を総動員体制に組み込むことに精を出した。同紙のコラムニストが「現在のパンデミックをある種の戦争として考えることには、奇妙な心地よさがある。それは私たちの多くがすでに知っていて、よく理解できる概念だからだ。戦争なら私たちは前にしたことあり、何を乗り越えなければいけないのか思いつく」(19日)と書いた時には目を疑った。
実情を覆い隠した
 医療関係者もスーパー従業員もひとまとめに「前線要員」と呼ぶなど、粗雑な戦争の比喩は広がるばかりだ。戦争の心理が、コロナ対策の実像を覆い隠している。カナダのコロナによる死者の約8割が介護療養施設の高齢者と職員だという事実は、明らかに福祉制度の失敗を示し、カナダ史上最悪の連続銃撃事件(22人殺害)は緊急事態下で発生したというのに、原因に深く切り込んだ報道はない。戦争心理がジャーナリズムを内側から縛ることを目の当たりにしている。
小笠原みどり(ジャーナリスト、社会学者)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年5月25日号

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2020年05月18日

コロナ感染拡大 医療崩壊は「人災」 病床削減や病院統廃合 対策では後進国か=杉山正隆

  新型コロナウイルスの感染拡大に備える改正特別措置法(新型コロナ特措法)に基づき福岡など7都府県に緊急事態宣言が4月7日発出された。商業施設が休業するなど生活への影響が既に出ている一方、安倍首相は憲法改正への議論が進むよう期待感をにじませるなど、危険な動きが見え隠れする。
 同宣言は8日から5月6日までの約1カ月間だが延長される可能性が高い。臨時医療施設のための土地・建物の使用が所有者の同意無しに出来るなど住民の私権の制限もできる。感染爆発等には効果が期待される一方、その実効性より心理的な悪影響が大きく、中小企業等の多くの資金繰りが困難になりつつある。制度的な保障策を政府は打ち出す必要があり一部は実行もされているが、タイムラグが大きく、必要な資金が十分に供給されるか否か疑いがある。
 今回、感染拡大が続く「新型コロナウイルス」(SARS-CoV-2)は、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)の呼吸器に重篤な症状をもたらす2種類のほかに、「風邪」として知られる4つの計6種類がある。人類に馴染みの深いウイルスだ。今回の感染症(COVID-19)は80%ほどは軽度で推移する「軽症者が多い」特徴がある一方、20%ほどが増悪し2〜3%ほどが非常に重篤化する。甘く見ると怖い感染症でもある。
 自分が感染したと気付かないまま治癒する無症状感染者が多く、想定されている「新型インフルエンザ」に比べると「コントロールできない感染症ではない」との見方も強い。ワクチンなど根本的な治療法が開発されなければ、半年ほどで一旦収まるとしても強弱を繰り返し、二、三年は流行の可能性が指摘されている。ただ、「それでも、コロナはありふれたウイルス。怖がりすぎるのは間違っている」とも。
 そもそも新たな感染症が予想されるとして対策を求める声が医療関係者から常々上がっていたのに、安倍首相は昨年10月、「病床の削減」をあらためて指示するなど入院病床を減らし続けていた。公立・公的病院の統廃合も強力に進め、保健所数は半減、医師・看護師数も抑制を続けていた。これらは全てほぼ一貫して自民党政権の手によるものだ。つまり、今回の「医療崩壊」は自民党政権による「人災」なのだ。
  閣僚に専門家集団を揃える台湾はじめ、韓国、シンガポール、欧米などはあっという間に保障や援助策を策定し実行に移した。日本は後手後手に終始したうえ、弱い人から犠牲者が出始める「アベノ・コロナ恐慌」が庶民を襲っている。その政策を監視するメディアの役割は予想以上に大きい。
 「新型コロナはしょせん、新型の風邪に過ぎない」(感染症専門家)との声もあるが、強毒性の鳥インフルエンザ流行の懸念が強まっている中、日本での混乱ぶりに各国メディアから注目が集まっている。死者が少ないことへの関心が集まる一方、医師の少なさや病床削減政策を紹介して「日本は感染症対策の後進国だったのでは」などと驚く論調が少なくない。
 インフルエンザの例を見ても、開発が期待されるワクチンも万能では無い可能性が高い。オリンピックを始め介護労働者なども来日外国人に頼る経済政策等に大きく舵を取った日本で、感染症を水際で完全で止めることは期待できない。
 当面、無症状者に2週間限定の「避難所」を各地に作る必要があるが、しっかりとした予算を取ったうえで、医療抑制政策を抜本的に見直さなければ感染症との闘いには勝てない。医師や看護師などを増員し、病床を増やし、公的公立病院の機能を強化する必要がある。憲法25条(生存権)を活かし、国民の健康や生命を守る政策を打ち出すべきなのだ。
杉山正隆
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号

posted by JCJ at 10:45 | 新型コロナ禍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月06日

「常識・良識」を信じる報道を 緊急事態宣言 強権に頼る必要なし=徳山喜雄

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 新型コロナウイルスの拡大感染を受け、政府は7日、特別措置法に基づく緊急事態を東京、大阪など7都府県に宣言。さらに16日には対象地域を全国に拡大した。実施期間は5月6日まで。
 安倍晋三首相は感染者の急増、医療崩壊への危機的な状況を理由にあげた。知事への権限賦与に伴い、憲法が保障する自由や権利、たとえば教育を受ける権利や営業の自由、移動の自由などの私権を制限することができ、国家による公衆衛生と個人の人権がぶつかりあう事態となった。
小池発言で混乱
 宣言によって、強制的に外出が禁止され、公共交通機関もストップするという誤解が生じ、デマも飛び交った。この無用な混乱の大きなもととなったのが、3月下旬の小池百合子・東京都知事の発言だ。
 記者会見で「ロックダウン(都市封鎖)など強力な措置を取らざるを得ない状況がでてくる」と強調し、聞き慣れない横文字の「ロックダウン」という言葉を連発。「緊急事態宣言」イコール「都市封鎖」という見方が広まり、スーパーに買い物客が殺到した。しかし、日本の法律では、欧米のような強制力を伴う都市封鎖はそもそもできない。
  小池知事が高みから都民や国民を見下ろすように記者会見し、「ロックダウン」の恐怖をあおった姿勢は政治家としていかがなものか。政治ショーともとれる独断的な会見が混乱を招いた。
 報道は小池氏の発言を垂れ流すだけでなく、異を唱えるべきであった。医療従事者やスーパー従業員ら国民の支援にあたる人たちをねぎらい、同じ目線で語りかけることが、いま求められている政治家の姿ではないか。
「正しさ」の衝突
 確かに感染拡大を防ぐためにイベント中止や自宅待機を国民に求めるのは間違っていない。この間、多くの医療関係者らがエビデンスに基づいて訴えた。かたや経済学者らは自粛が長引けば経済が悪化し、場合によれば死者がでるとも指摘した。いずれも正しい見解であろう。異なる「正しさ」の衝突のなかで、いかに民主主義を守る「解」を導きだすのか。
 世界的なベストセラーとなった『サピエンス全史』の著者ユヴァル・ノア・ハラリ氏は、「『全体主義的な監視』と『市民の権限強化』のどちらを選ぶのか」(日経3月31日朝刊)と迫り、「我々にとって最大の敵はウイルスではない。敵は心の中にある悪魔です」(朝日4月15日朝刊)ともいった。
 いまのところ、日本は強権を発動するのではなく「穏やかな抑制」をめざしている。「補償したくないから」ということでなく、情報の透明性をはかりつつ、私権制限を最小限にとどめたいということなら、歓迎したい。
強権に頼らない
 一方で、自民党が憲法改正にあげる「緊急事態条項」を促す動きも活発化している。コロナ禍に乗じる発想は、「火事場泥棒」との批判もある。国民民主党の玉木雄一郎代表は外出規制違反の罰則化など、欧米諸国並みの都市封鎖ができる法整備に言及した。私権制限について野党が先行するという逆転現象は警戒しなければならない。
 直ちに強権に頼る必要はあるのか。大きな災害に繰り返し見舞われ、鍛えられた日本人の「常識」や「良識」を信頼する政治や報道で、この難局を皆で乗り越えたい。
  徳山喜雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号

posted by JCJ at 15:14 | 新型コロナ禍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月07日

【新型コロナ ショック・ドクトリン2】 民放番組へ「反論」の名で圧力 官邸が委縮効果ねらう 宮下答弁「テストラン」=河野慎二

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 新型肺炎コロナウイルス報道を巡り、内閣官房国際感染症対策調整室や厚生労働省、自民党が目を光らせ、番組を名指しして「反論」するという形で事実上の圧力を加え、問題となっている。
テレ朝標的
 内閣官房の調整室が問題にしたのは、「羽鳥慎一モーニングショー」が5日に放送したコメンテーターの発言。安倍首相が、新型インフルエンザ等対策特措法の改正(以下改正特措法)にこだわる理由について、政治アナリストの伊藤敦夫氏が「『後手後手』批判を払しょくするために総理主導で進んでいるというアピールをしたい」からと見るコメントを寄せた。
 同調整室は6日「法律改正をする理由はそうではありません。あらゆる事態に備えて、打てる手は全て打つという考えで法律改正をしようとしています」と公式ツイッターで反論した。
 羽鳥の「モーニングショー」は狙い撃ちされる形で、政府機関の「反論」の対象になっている。
なぜ「名指し」
 同番組は4日、供給が滞っているマスクについて「まずは医療機関に配らないとだめ。医療を守らないと治療ができない」と強調した。すると厚生労働省は5日、公式ツイッターで「医療用マスクの優先供給は行った」と反論したが、事実ではなかった。厚労省はフェイク反論≠フ訂正に追い込まれ、醜態を演じた。
 これについて、レギュラーコメンテーターの玉川徹氏が「僕が疑問なのは、なぜうちの番組を名指しでこの時期にツイッターを出したかなんですよ」「なんで、ちゃんと事実確認もしないで、厚労省が名指しでやったのか。僕は回答が欲しい」とコメントした。
「Nスタ」も
 反論に名を借りた番組への圧力はTBSの基幹ニュース「Nスタ」(4日)にも向けられた。
 「Nスタ」に出演した岡田春恵白鴎大学教授が「私たちは基礎的な免疫力がないから、新型コロナウイルスは普通のインフルエンザより罹り易い」とコメントした。
 これについて、厚労省のツイッターは5日「新しいウイルスのため、普通のインフルエンザより罹り易いということはない。そういうエビデンスはない」と反論した。
 これに関連して「毎日」が7日、「官邸幹部が『事実と異なる報道には反論するよう指示した』と明かした」と伝えた。
 問題となるのは、13日に成立した改正特措法との関連だ。
聞き流すな
 安倍首相は16日の参院予算委員会で、改正特措法による「必要な指示」が民放テレビ局にできるかについて「報道事業者は、本特措法による指示の対象にはならない」と「民放除外」を答弁した。
 しかし、11日の衆院法務委員会で宮下一郎内閣府副大臣は「法律の枠組みとしては『いま、この情報を流してもらわないと困る』と指示を出す。放送内容を変更、差し替えてもらうことはあり得る」と答弁。首相はこの答弁の是非については言及していない。
 内閣調整室などの反論は「放送したコメントは事実と異なる」などに留めているが、宮下答弁にある「放送内容の変更、差し替え」を念頭に置いた「テストラン」であることは間違いない。
 「反論」を偽装した圧力を軽視してはならない。毅然と対応せず、聞き流していては、メディアの規制、介入に異常な執念を燃やす安倍首相に危険な武器を与えるだけだ。
その先には、あの「大本営本部発表」の世界が待っている。
河野慎二
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年3月25日号

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