2024年02月26日

【焦点】「ジェノサイド」のガザ 女性・子どもの死者69% 超大型爆弾とAI標的設定 川上泰徳氏がオンライン講演で解説=橋詰雅博

                     
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 パレスチナ自治区ガザでのイスラエル軍とイスラム組織ハマスとの戦闘は、終結の見通しが見えない。激しさを増すガザ戦争の行方はどうなるか―。元朝日新聞記者の中東情勢ウオッチャー・川上泰徳氏=写真=が1月13日のJCJオンライン講演で徹底解説した。
 イスラエルが「鉄の剣」作戦と名付けた今回のガザ戦争では、イスラエルの攻撃によるガザの死者のうち女性と子どもの民間人が飛びぬけて多い。世界保健機構によると、2008年、14年、21年の過去3回のイスラエルのガザ攻撃では、女性・子どもの死者は38%から41%で、非戦闘員の男性が60%。ところが23年は女性・子どもの死者は69%に達し、男性が30%で、過去3回と逆転している。

 ガザで女性・子どもの死者が激増している理由を川上氏は2つ挙げた。まず多大な巻き添え被害を出すのを承知でイスラエルは航空機から米国製超大型爆弾を都市部の高層ビルや高層マンション、大学、銀行、官公庁などに投下している。 
 川上氏が言う。
「使っている爆弾の重さは500`から1トン。1トンだと高層マンションを破壊できる。米ニューヨーク・タイムズの取材に応じた軍事専門家は『こんな狭い地域にこれほど多くの大型爆弾が投下された歴史的な例は、ベトナム戦争か第二次世界大戦まで遡る必要があるかもしれない。イラクのモスルなど都市部でIS(イスラム国)を相手に米軍が戦う場合でも、最も使う500ポンド(約227`)爆弾さえ、標的には大きすぎる』とコメントしている」。
 もう一つとして生成AIを用いた標的設定システムの利用が挙げられる。「ハブソラ」(福音)と呼ばれるこのシステムは空爆・砲撃の標的を自動的に数多く設定する。

 イスラエルネットメディア「+792マガジン」の調査報道によると、08年の1日平均標的数は155カ所、14年は122カ所、21年136カ所だったが、23年は429カ所。過去3回の1日平均138カ所に対して今回はその
3・11倍にもなる。情報部員は「数万人の情報部員では処理できなかった膨大な量のデータを処理するハブソラはリアルタイムで標的を示す」「ハマス幹部への攻撃の巻き添えで許される民間人の死者は数百人にまで増加した」と語った。
 川上氏は「人間はミサイルを撃つだけの機械≠ノなっている」とAI標的設定システムのせいで自制心を失ったと指摘した。
イスラエルのガザ攻撃は「人間の顔をした動物」(ガラント国防相)ととらえるハマスに加えて民間人も対象にした「ジェノサイド(集団殺害)だ」と川上氏は断言した。

 イスラエルはどんな戦略を描いているのか。ニュースサイト「シチァ・メコミット」が10月末に報じた「ガザの民間人口の政治的な方針の選択肢」と題した政府秘密文書では、ガザからエジプトのシナイ半島に住民を追い出すのが実行可能としている。ネタニヤフ首相はこのシナリオに沿って戦争を進めているようだ。
 日本は何ができるかについて川上氏は「政府は即時停戦を訴える、市民はイスラエルのガザ攻撃反対・中止の決議を地方議会に求める」と提案した。
 中東情勢を約20年ウオッチする川上氏も戦争がどんな形で終結を迎えるのか見通せないという。このままでは、戦闘は果てしなく続き、民間人の死者はどんどん増える。
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年2月25日号
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2024年02月24日

【焦点】「セクシー田中さん」事件で浮上した著作者人格権問題 世田谷区史に飛び火 27日見直し求める要望書提出=橋詰雅博

 昨年10月から12月に放送されたドラマ「セクシー田中さん」の原作者で漫画家の芦原妃名子さんが脚本を巡る問題で自死(享年50)した事件は、原作マンガを出版した小学館、映像化した日本テレビを巻き込むなど波紋が広がっている。
 自死したのは、原作に忠実にという原作者の意向がテレビドラマの内容に反映されなかったことが主因とみられる。
 芦原さんが寄稿していた小学館第一コミック局編集局一同が2月8日に公表した声明でも、それを窺わせる文章がある。「著者が待つ絶対的な権利『著作者人格権』について周知徹底し、著者の意向は必ず尊重され、意見を言うことは当然のことであるという認識を拡げることこそが再発防止において核となる部分だと考えています」。

譲渡や放棄できず
 著作者人格権は「作品や作者の『名誉』や『思い入れ』を保護し、原作者さんの許諾を得ず、無断で作品を改変することを禁止した法律で、著作権(財産権)と異なり、譲渡や放棄できない権利です」と日本史史科研究会の中脇聖研究員が語っている。
 この著作者人格権問題で想起させられたのは東京・世田谷区の区史編さんを巡る区と大学教員の対立だ(筆者はJCJ機関紙「ジャーナリスト」2023年5月25日号で記事を掲載)。区制施行90年を記念して地域の歴史を書いた区史を新たに作成するため区から編さん委員を2016年に委嘱された青山学院大学文学部史学科準教授・谷口雄太氏は、世田谷を支配した吉良一族の盛衰を含め中世史部分を担当した。17年から調査・研究活動を始めたが、23年2月に事前の話し合いもなくいきなり40人の編さん委員に執筆の条件として区史(24年から各部門を順次発刊)の著作権無償譲渡に加えて著作者人格権の不行使の契約を締結することを区は要請した。40人のうち一人は他の仕事があるという理由で辞退し、谷口氏だけが契約を拒否した。

史実の書き換えも
 筆者の取材に谷口氏はこう答えた。
 「自治体の場合、執筆者らに著作権無償譲渡を求めることはよくあります。行政ならヘンな行為はしないだろうという性善説に立つので執筆者らは承諾するケースが多い。問題は著作者人格権不行使の要請です。認めてしまえば、区の学芸員らの解釈で史実が書き換えられる、あるいは削除されても抗議はできないし、修正も受け付けてくれません。著作権譲渡と著作者人格権不行使の2つを求めた自治体は世田谷区が初めだと思う。歴史修正につながり、悪しき世田谷モデル≠ェ自治体に広がる可能性もある。撤回してもらいたい」
 実は区は区史発刊に向けた準備として17年8月に冊子『往古来今』を作ったが、執筆者の谷口氏が著作者人格権と著作権の両方を侵害したとして抗議した。谷口氏は「人格権侵害については原稿を800カ所修正、著作権侵害の方は『世田谷デジタルミュージアム』に冊子を無断で転載」と問題点を指摘した。これに対して区は著作者人格権を含む著作権について誠実に対応すると答えた。
 その約束≠反故にするやり方の背景には「2つの権利を奪えば、執筆者とのトラブルは防げる」(谷口氏)という区の強引な姿勢がうかがえる。

労組の支援受ける
 谷口氏は区史編さん担当職員と2月末に話し合ったが、不調に終わる。協議を打ち切った区は3月31日に谷口氏の委員を解任。谷口氏は調査・研究の成果を発表する場を失った。
 フリーランスとして業務委託契約を区と結んだ谷口氏は、フリーランスの編集者らが集まるユニオン出版ネットワーク(略称出版ネッツ)に入った。世田谷区による編さん委員の解任と正当な理由がない話し合い拒否について谷口氏への不当労働行為と判断した出版ネッツは、4月中旬に東京都労働員会に救済を申し立てた。

区長との対話要望
 今日まで都労委の結論が出ない中、谷口氏を支援しようと区民が中心となった「世田谷区史のあり方について考える区民の会」が今年1月に結成された。芦原さんが亡くなった後の2月10日に第1回会合が開かれ、著作者人格権をないがしろにするのは著作者の命を奪うほど重い問題であることが議論された。
 そうしたことを踏まえて区民の会は「区史の執筆者との著作権に関する契約書の見直しを求める要望書」を27日に世田谷区に提出する。保坂展人区長との対話の会を3月7日〜15日の間に開いてほしいと要望。4日までに区から返事をもらいたいとしている。
区と谷口氏とは昨年2月に1回話し合っただけだ。その後は区側が話し合いを拒んでいる。
 保坂区長は「熟議」を看板にしている。この問題でもそれを実行すべきではないだろうか。

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2024年02月15日

【焦点】外苑再開発で森元首相の暗躍を伝えた2年前と1年前の筆者の記事を合併再編集 そして「神宮利権ムラ」誕生=橋詰雅博

            
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 東京地裁で行われている神宮外苑再開発許可取り消し訴訟に呼応するかのように東京新聞が連載を始めた「解かれた封印 外苑再開発の真相」は、2月5日付の第7回目「目覚めた住民 開発拒否」で終わった。この連載のキモは森喜朗元首相がこの計画にどう関わったかだ。2回目と3回目でその核心に触れていた。筆者も森元首相の暗躍をJCJ機関紙22年4月2日と23年4月10日で書いている。2つの記事を合併し再編集したものを紹介する。
                 ◇
 「この一帯を再開発できたら、スポーツ施設とオフィスビルなどからなる都内有数の一大ゾーンができる」――伊藤忠商事東京本社(港区外苑前)の幹部社員が部屋のガラス窓から見える秩父宮ラグビー場や神宮球場などに視線を移しながらつぶやいた言葉を筆者は20数年過ぎた今でも鮮明に記憶している。
 伊藤忠や三井不動産、日本スポーツ振興センター、宗教法人・明治神宮などが事業主となった明治神宮外苑前地区の再開発案が都市計画審議会で2月に承認された。日本初の景観を守る風致地区に指定され100年近く緑のオアシス≠都民に提供してきた神宮外苑は、樹木が伐採され再開発で一変する。高さ190bと185bのオフィス・商業施設が入る高層ビル2棟や80bの宿泊・スポーツ関連施設ビル、60bのホテル併設の神宮球場、55bの秩父宮ラグビー場などが2036年までに建設される見込み。

国策と住民退去

 引き金は国立競技場の建て替え。ラグビーW杯会場(建設が間に合わず実現できなかったが…)とオリンピックメイン施設という口実で、高さ制限など各規制が大きく緩和された。また都は「国策」を理由に都営霞ヶ丘アパートから強制退去を求めた三百世帯の大半は、16年1月までに別の都営アパートに移った。新国立競技場(高さ49b)の収容人数を8万に広げたのは、邪魔な霞ヶ丘アパートを取り壊すためといわれている。

急速度で展開
 
 都が19年に正式公表したこの再開プロジェクトには「森喜朗元首相が深く関与している」と指摘するのは『亡国の東京オリンピック』の著者でジャーナリストの後藤逸郎さんだ。
 「森元首相が日本ラグビーフットボール協会会長のときの09年7月に19年ラグビーW杯開催が決定した。それ以降から物事が速いスピードで動き出した。10年末に都は国立競技場一帯のスポーツ・クラスター構想を発表。JOC(日本オリンピック委員会)は11年に20年オリンピックへの立候補をIOC(国際オリンピック委員会)に申請した。翌年の12年5月に当時衆議院議員の森元首相は都の佐藤広副知事、安井順一技監と議員会館で面談している。面談メモが都議会で暴露され問題になったが、私も情報公開請求で一部黒塗り資料を入手した。この時点で今の神宮外苑再開発案は固まっていた」(後藤さん)

采配するうま味

 面談メモのおよその中身は―。副知事と技監が神宮外苑再整備の概要を森元首相に説明。そして森は「(霞ヶ丘アパートの)住民の移転は大丈夫か?」と質問。副知事は「他の都住に移転してもらえるために国策として計画を進めていく」と答える。さらに森の「(オリンピック招致)が×になったらどうする?」の質問に、二人とも神宮外苑全体の再整備を前提に進めると応じた。最後に森は「すばらしいよ。あと15年は長生きしないと」と述べた。
 森元首相の動きについて後藤さんは「彼は文教族やスポーツ行政のドンとして国会議員時代以上の政治力を発揮してきている。だから『森さん、森さん』と人が寄ってくる。頼み事を受け入れ差配するというのは他には代えられないうま味だと思う。彼自身、権力そのものですから『オレのところに話を通すだろう』くらいに思っている」と話す。
 結局はラグビーW杯もオリンピックも国内最大級の再開発を促進するための道具≠ノ過ぎなかったのではないか。

石原会談が発端

森元首相は石原慎太郎都知事に2005年に計画実行を働きかけた。外苑樹木伐採の反対運動を展開する住民団体が主催した23年2月21日のオンライン講演で元都庁幹部職員の澤 章氏はこう解説した。
 「そもそもこの再開発事業計画は2005年夏の森喜朗元首相と石原慎太郎都知事との都庁での会談が発端。その後、庁内に東京が2度目の五輪開催を目指すという噂が流れた。後日聞いた話だが、電通がつくったとされる神宮外苑再開発に関する企画提案書(04年ごろに出回る)を森元首相は持参したという。老朽化した国立競技場の移転(当初は晴海に新競技場を建てる予定)、都営霞ヶ丘アパートの取り壊し、複合スポーツ施設や業務施設の建設などを行う外苑再開発実現のため五輪招致を2者会談で決めたようです。森元首相が電通案に乗ったのか、案作成を指示したのかは不明です。元文科相で自民党の萩生田光一代議士(東京24区選出)も絡んでいる」。

都市整備局動く

 知事本局計画調整部長や中央卸売市場次長などを歴任した澤氏は、20年3月出版した『築地と豊洲』で小池都政を批判したことで東京都環境公社理事長を解任された。都庁で33年間働いた澤氏は外苑再開発計画の裏側で政治家や事業者などの意向を汲んだ都市整備局がおぜん立てしたと断言する。
 「外苑再開発事業を進めるには用途地域の変更、容積率アップ、緑の量をどのくらいにするなど都市計画の大幅な変更が絶対必要です。これを司る都市整備局が各方面に根回し。ダークサイドの仕事として少数の幹部だけが関知できる案件だと思います」
こうして政官業一体の「外苑利権ムラ」は出来上がった。
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2024年02月06日

【焦点】春名氏、内外情報機関をえぐる 金大中拉致とつながる「別班」 ハマス、穏健化を偽装 「KGB」消滅で露侵攻=橋詰雅博

                     
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 昨年12月17日のJCJオンライン講演会は、「国の内外で蠢くスパイ組織を抉り出す」をテーマに元共同通信記者のインテリジェンスに詳しいジャーナリスト・春名幹男氏=写真=が解説した。

 TBSドラマ「VIVAVT(ヴィヴァン)」(昨年7月から9月放送)の題材になった陸上自衛隊の秘密情報組織「別班」。ドラマが大ヒットしたことで注目された別班出身の元陸自三佐、坪山晃三(故人)に春名氏は、1973年8月8日、日本のホテルから拉致された金大中事件真相の追及で取材した。 
 この年の6月に自衛隊を退職し、都内で調査会社を立ち上げた彼は、在日韓国大使館の金東雲一等書記官(主犯格)から「(滞日の)金大中の居所を調べてほしい」と依頼された。坪山は陸自現役のころから、金は韓国中央情報部(KCIA)所属のころから二人は付き合いがあり北朝鮮情報などを交換していた。この関係から推測すると、別班は少なくとも韓国情報機関とつながりあった。
春名氏は「情報機関は情報収集と秘密工作が任務。日本は情報収集が基本ですが、政府が存在を否定する別班は秘密裏の組織ですので任務はあいまいです」と語った。

 世界で耳目を集めるガザ戦争。対外情報機関「モサド」、国内治安機関「シンベト」、軍情報機関「アマン」などからなる鉄壁な情報網を築くイスラエルは、なぜハマス奇襲を許したのか。イスラエルから21年に攻撃を受けたハマスは、それ以降、突然「イスラエル消滅」を言わなくなり、「穏健化」に変貌。イスラエルは警戒を怠り油断したという春名氏はこう続けた。
 「パレスチナはヨルダン川西岸を統治するファタハ(パレスチナ民族解放運動)とガザ地区を支配するハマスの二つの勢力が競い合っている。イスラエルのネタニヤフ首相は、9月にカタールに派遣したモサドの長官を通じハマスへの資金援助継続を依頼した。穏健に転じたハマスが勢力拡大すればパレスチナの分断が深まってパレスチナ建国を阻止できるとネタニヤフは考えた」「防諜機関『8200部隊』は一年前からハマス軍事部門が使う無線通信の盗聴を止めた」
 政府も情報機関もハマスの偽装に騙されてしまった。
死んだふり作戦≠成功させたハマスはガザ戦争でイスラエルの非道ぶりが広く伝わりパレスチナ建国の国際世論が高まることを期待している。

 ロシアとウクライナの戦争ではウクライナ情報機関が一変したのがロシア侵攻の引き金になった。
「実はソ連崩壊後も旧ソ連構成国を結ぶ秘密情報機関KGB(国家保安委員会)ネットワークは健在でした。ところが米国の介入で親露政権が倒れた14年のウクライナ『マイダン革命』以降、米CIAは巨額な資金を投入してウクライナ軍などを強化した。米国の差し金で保安局や国防省情報総局の親露派幹部ら数十人は暗殺され『KGBウクライナ支局』は消滅。KGB出身のプーチンは復讐のため侵攻を決断した」。意外な事実を春名氏は明らかにした。
 ニュースの裏側を垣間見た春名講演だった。
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年1月25日号
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2024年02月03日

【焦点】ガザ戦争 即時人質解放と停戦 「戦場記者」須賀川氏訴える=橋詰雅博

                     
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 「国境なき医師団」(MSF)日本事務局は、パレスチナ自治区ガザから帰還した日本人スタッフ2人とTBSテレビ前中東支局長の須賀川拓氏=写真=らを交えガザで深刻化する人道危機などをテーマにしたトークイベントを昨年12月11日都内で行った。2019年から中東を始め世界の紛争地を駆け回った須賀川氏は、それまでの映像記録をベースに自ら監督したドキュメンタリー映画『戦場記者』を22年末に公開した。
 ガザに何回も取材で入った須賀川氏は「ガザは天井のない監獄と言われているが、監獄はすなわちプリズンじゃないですか。確かにイスラエルにテロ行為を繰り返すハマス戦闘員はいるが、罪を犯した、悪いことをした人はほとんどいない。天井のない収容所という方が適切だと強く思っている」と人口約223万のガザをこう表現した。

 ガザを実効支配するイスラム組織ハマス(イスラム抵抗運動のアラビア語略)がイスラエルに奇襲攻撃した10月7日の2日後の9日にイスラエルに入った須賀川氏は、ガザに入ることは叶わなかったがイスラエルで3週間滞在し取材。
  須賀川氏が言う
「牙をむいたイスラエルはガザの全員を抹殺するかのような行動です。恐怖を覚える人は多いと思う。一方ハマスもロケット弾などで無差別攻撃している。イスラエルからのしっぺ返しで多くの住民が死ぬことを考えられなくなっているのだろうか」「(国際赤十字委員会が1971年提唱した民間人保護など戦争のルールを定めた)国際人道法に基づき双方は平等に裁かれるべきです」
 ただし容赦しない攻撃をガザに浴びせるイスラエルの方が罪は相当に重いのは明白だ。

 イスラエルもハマスもSNSなどでフェイク情報を平気で発信を続けているので、騙されてはいけないという須賀川氏は「特に過激な情報は拡散する、信じ込む前にちょっと一拍置く。MSFのような信頼できる発信元か確認が必要」とアドバイスした。
 日本人ができることは何かについて須賀川氏は「(原油の9割以上を中東に依存している)日本は中東安定のためパレスチナに経済自立支援を行い、イスラエルとも経済交流など関係は深い。両方につながりがある稀有な国」と日本の立場を指摘したうえで「対立は終わらないだろうから、関心を長く持ち続けることが大きなタスク」と語った。

 そして須賀川氏は「人命を救うため即時の人質解放と停戦」を訴えた。第三国の仲介によるイスラエルとパレスチアの和平交渉はそれが済んだ後だという。
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年1月25日号
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2024年01月29日

【焦点】万博総額14兆円、これで打ち止めではない、維新崖っぷち=橋詰雅博

 2025年4月に開催するという大阪・関西万博への批判が高まる一方だ。
その原因は膨れ上がるばかりの費用にある。政府が昨年末に公表した試算では、運営費1160億、会場設営費2350億、万博にかかわるインフラ整備費8390億だ。17年の誘致立候補申請時と比べると、運営費1・4倍、会場設営費1・8倍、インフラ整備費10倍にもハネ上がっている。このため合計1兆1900億に増えた。

 この要因は@会場の夢洲(ゆめしま)への電気、上下水道、交通などの整備が必要A廃棄物、建設残土、浚渫土砂などで埋め立てた夢洲は軟弱地盤、土壌汚染の対策が必須、B資材や人件費の高騰などだ。

 費用はさらにかさむ。万博に向けた行動計画事業「空飛ぶクルマ」実証実験など約3兆4000億、万博に便乗した大型開発と指摘されている中国・四国地方の道路整備や河川改修などインフラ整備費用約9兆が試算されている。なんと総額約14兆という金額になる。当然ながらこれには多くの血税が使われる。

 しかもこれで打ち止めではない。この先まだまだ増えると予測されている。万博と密接につながるIR(カジノを含む総合リゾート施設)開設も目指しているからだ。だからどの世論調査でも万博開催は、反対が多数を占める。運営費の多くを賄うのは入場料収入だが、「万博チケットを購入したいと思わない」は79%(23年12月17付毎日新聞)にものぼる。

 関西学院大学法学部の冨田宏治教授は「大阪・関西万博をめぐる総額14兆円という法外な関連費用が問題になっています。『税金の無駄遣いを許さない』という日本維新の会の旗印がブーメランのように維新を襲い始めています。万博問題は維新のアキレス腱≠ノなろうとしています。維新支持層の中でも『万博不要』の声は高まっている(12月17日付毎日世論調査では7割強)」と述べている(1月27日付新婦人しんぶん)。

 岸田政権は即刻、万博を中止し、能登半島地震の被災地支援と復興のためにカネ、ヒト、モノを最大限投じるべきだ。これが今やるべき最優先の政策ではないか。

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2024年01月27日

【焦点】一編の詩がガザの希望と絶望を引き起こす=橋詰雅博

  パレスチナ自治区ガザの住民に希望を与えた詩がある。詩人でジャーナリストのアハマドが2018年ネットにあげたもので、こんな詩だ。

 私は空を飛ぶ鳥を見上げた/鳥たちは有刺鉄線の塀を隔てた両側の木々の間を自由に飛び回っていた/なぜ私たちは単純なことを複雑に考えるのか/行きたいところへ鳥のように自由に行くことは人間の権利ではないだろうか/これ以上に単純なことはないではないか/鳥は飛びたいと思うから飛ぶのだ

 日本AALA(アジア・アフリカ・ラテンアメリカ)連帯委員会の昨年末のオンライン学習会で講演した中東問題研究家の平井文子氏は、そして彼は平和的な手段による抵抗運動を提案したという。平井氏が続けた。
 「もしも、何千何万のパレスチナ人が平和裏に行進し、1948年(イスラエル建国宣言、大量のパレスチナ人が難民に)以来排除されてきた土地から切り離すフェンスを越えたら何が起きるだろうか。非暴力的な民衆行動がパレスチナ人の権利を取り戻し、世界最大の天井のない監獄から彼らを解放すると信じた」

 実際、この年の3月からガザの大帰還行進が実現した。厳重に武装化されたフェンスに向けて行進が毎日のように続いた。それに呼応して、イスラエルの反シオニストグループ(パレスチナの地にイスラエル国家をつくることに反対する組織)が彼らを歓迎するためにフェンス近くまで行った。お互いに手を振り、携帯電話で話した。こうした平和的な抗議活動は1年以上続いたが、イスラエルは強権的な弾圧により抗議活動を鎮圧した。

 「フェンスに常駐するイスラエル軍のスナイパーが参加者をテロリストと決めつけ標的にした。合計214人が射殺され、3万6100人が負傷した。こうしたガザの人たちの平和的な反占領闘争に対するイスラエルの暴力的な仕打ちをマスメディアはほとんど伝えなかったのです」(平井文子氏)
 一編の詩がガザの希望と絶望を引き起こした。悲しくてやりきれない話ではないか。

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2024年01月19日

【焦点】トランプがパレスチナ切り捨てを強化 大統領に再選ならその姿勢強める?=橋詰雅博

 イスラエルの56年に及ぶパレスチナ占領に対して、アメリカはどういう姿勢なのか。1967年の第三次中東戦争でアラブ諸国に勝ったイスラエルはヨルダンン川西岸とガザ、エジプト領シナイ半島などを武力占領した。そこで国連安保理はイスラエルの占領地からの撤退を決議(「242号議」)。安保理メンバーのアメリカもこの決議に賛成している。イスラエルはすぐに応じなかったが、後にシナイ半島だけはエジプトに返還した。

 242号議を維持してきたアメリカだったが、状況が大きく変わったのはトランプが大統領になってからだ。トランプ政権(2017年から21年)はイスラエルの占領承認と難民保護政策から撤退し、パレスチナ切り捨て姿勢を強化した。日本AALA(アジア・アフリカ・ラテンアメリカ)連帯委員会の昨年末の学習会でオンライン講演した中東問題研究家の平井文子氏はトランプが4年間で行った政策転換を以下のようにまとめている。
・17年12月6日:イスラエルによるエルサレム首都宣言を支持。
・18年1月16日:国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への拠出金凍結。それまでは米国はUNRWAの予算の3割を支援。パレスチナには学校700、診療所140があり、UNRWAは難民にとって命綱だ。
・18年5月14日:米大使館をテルアビブからエルサレムに移転。
    8月31日:米、UNRWAから脱退。
    9月10日:ワシントンにあるパレスチナ自治政府代表部閉鎖。
・19年3月:シリア領ゴラン高原のイスラエルの主権を承認。
11月18日:ポンペオ国務長官がヨルダン川西岸のユダヤ人入植地は国際法に違反していないという見解を示した。
・20年1月28日中東和平案(「世紀のディール」)発表:イスラエルがヨルダン川西岸の占領地に建設した入植地の大部分をイスラエルの正当な領土であると認めた。
    8月13日:アブラハム合意発表:米国が仲介したイスラエルとアラブ首長国連邦和平合意。続いてバーレーンを皮切りにスーダン、モロッコがイスラエルとの関係正常化に踏み出した。
 
 この背景にあるのは米国におけるキリスト教シオニズム運動だ。平井氏こう解説した。
「全米クリスチャンの4分の1を占めるキリスト教福音派はイスラエル国家の創設と数百万人のユダヤ人の集住を、イエス復活が間近であるという聖書の予言の実現とみている。米国におけるキリスト教シオニズムは今や白人福音派の間では多数派神学となっている。シオニズムの票は数千万にものぼり、大統領選挙では大きな票田となっている」
 このため歴代の米大統領はイスラエル支持を維持している。
 トランプが大統領に再選したら、パレスチナ切り捨てをさらに強め中東情勢は一段と混迷を深める。
  
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2024年01月02日

【焦点】パー券裏金事件 岸田「電撃辞任プラン」も 茂木政権狙い麻生仕掛ける?=橋詰雅博

 自民党の麻生太郎副総裁がつくったとされる仰天プランが永田町で進行している。元朝日新聞記者の政治ジャーナリスト・鮫島浩氏が自ら主宰するウェブメディア『「SAMEJIMA TIMES」』でこの情報を暴露。さらに鮫島氏は『サンデー毎日』(11.26―12.3合併号)で詳しく書き、自身が出演する「YouTube」でもこの問題を随時フォローし解説している。

 プランは、国賓待遇の訪米、通常国会での予算成立を花道に岸田文雄首相を早ければ3月下旬ころに電撃辞任させる。
 支持率暴落の岸田を見限った麻生は、後ろ盾の茂木敏充幹事長を総理総裁の座に押し上げるため編み出した。国民に不人気の茂木ゆえの奇策だ。岸田には「このままでは来年9月の自民党総裁選は不出馬に追い込まれみじめな形で終わる。余力を持って首相を辞めれば、キングメーカー≠ヨの道も拓ける」と因果を含める。

 岸田が兼ねる自民党総裁が任期途中で退いた場合、臨時総裁選で総裁が決まる。党員・党友の地方票がなく、都道府県代表の地方票と国会議員票だけで争われる。国会議員票と同じく地方票が半数の重みをもつ正規の総裁選と違い、国会議員の多くを抱き込んだ陣営が勝つ。総裁に選出されれば、国会で多数の議席を占める与党第1党の自民党総裁が首相に就任する。
 麻生は政敵の菅義偉前首相が担ぐ「小石河」(小泉進次郎元環境相、石破茂元幹事長、河野太郎デジタル担当相)を抑え込みたい。地方票を無くすことで、人気の高い「小石河」の勢いに歯止めをかける。
 主流派の麻生、茂木、岸田連合は総裁選の戦いを有利に進められるが、 問題は、麻生派(56人)、茂木派(53人)、岸田派(47人)の3派閥では、過半数に届かないこと。最大派閥の安倍派(99人)の取り込みが必要。
 そこで注目すべきは、自民党派閥政治資金パーティー券裏金疑惑をめぐる東京地検特捜部の捜査の中心は安倍派と非主流の二階派だ。安倍派幹部6人含む国会議員の大半が受け取った裏金(キックバック)は時効にならない5年間だけで総額5億円とされる。岸田は松野博一官房長官ら4閣僚と副大臣5人を交代させ、党役員人事も入れ替えた。二階派は1億円を超える政治資金収支報告書への不記載が分かった。どちらも政治資金規正法違反で立件される。

 「今の最高権力者、麻生氏の安倍派狙い撃ちの意向を受けた特捜部による国策捜査です。特捜部は時の権力者の味方。特捜部からリークされた情報をマスコミはタレ流す。麻生氏は主流3派が政局の主導権を握り分裂もあり得る安倍派と二階派を切り崩し臨時総裁選で茂木総裁を誕生させる方針」と鮫島氏は見ている。

 総裁茂木は首相就任後、直ちに衆院解散を行う。新内閣誕生直後の高揚したムードを味方につけ、総選挙を乗り切る―。これが麻生プランの帰結だ。それを見越してか、「首相の辞任はあり得る」と石破茂元幹事長は発言し、総裁選出馬への意欲をにじませている。石破をバックアップする菅や二階俊博元幹事長ら非主流派はどう動くのか。どちらが勝つにせよ国民生活への影響は必至だ。
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年12月25日号
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2023年12月29日

【焦点】晴海選手村マンション建設で中央区に入るべき開発協力金51億円のうち37億減額 不可解な行政の優遇ぶり 問題化=橋詰雅博

 東京都が9割値引きという超格安で開発業者に売却したのは許せないと都民が提訴している問題の用地、晴海五輪選手村跡地に建設中だったマンション群(HARUMI FLAG)が完成した。分譲・賃貸含め5632戸の住宅が生まれるこの新タウンには約1万2000人が住む。大きな小中学校や特別出張所、認定こども園・図書館・保健センター・お年寄りセンターが入る大型複合施設などが建設される。
 来年1月から住民の入居が始まるが、中央区による開発業者への優遇ぶりが改めて問題化している。
 中央区には新しい住戸が完成すると開発業者から開発協力金として1戸当たり100万円を要求する要綱(ただし40u以下のワンルームを除く)がある。この開発協力金は、大規模マンション建設の人口急増に対応するため区の行政サービスの負担が増えることから業者に一部負担を協力してもらうというのが趣旨。実際、HARUMI FLAGでは学校、出張所、施設複合が建設され、職員も大幅に増やさなければならない。

 見込まれる開発協力金は51億円。ところが中央区は板状棟マンション(外観が横に長い建物の一面に住宅が並んでいて、玄関は外廊下と向い合せに設計)3700戸分の37億円を免除した。オリンピック要因だとした免除理由はこうだ。
@ 選手村住宅はパラリンピック対応のため共有部分の廊下を拡張。
A 選手が集い憩える空間確保のため駐車場を地下に集約し、工事費を開発業者が負担。
B オリパラ組織委が選手村として借り上げ使用する期間に生じた金利は開発業者が負担。
C 開発業者が住宅と併せて整備した商業施設は地域に貢献。
 これらを総合的に勘案した中央区は、選手村住宅建設は要綱提要対象外とした。
 しかし、これらの4つの理由のどれを見ても行政サービスを減らす要因は見当たらない。減額する真っ当な理由はないのだ。

 結局、オリンピックとは無関係の建設中タワーマンション分の開発協力金14億円だけが中央区に開発業者から納金される。
 オリンピック要因を理由に東京都と中央区から2重サービスを開発業者が受けた。片や土地の投げ売り、一方で37億円放棄、行政側による不可解極まりないやり方と言える。
 なお一審、控訴審で敗訴した五輪選手村訴訟の原告は、12月11日最高裁に上告した。

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2023年12月16日

【焦点】カナダに亡命した香港民主化の活動家、アグネス・チョウ氏(周庭氏)はこんな人物=橋詰雅博

 カナダ・トロントの大学院に留学していた香港民主化の活動家、アグネス・チョウ氏(周庭氏=27歳)は「恐らく一生香港には戻らない」と12月3日発言し、カナダに事実上、亡命した。香港で彼女は2020年末に違法集会を扇動した罪に問われ禁錮10カ月の実刑判決を受けた。この時、最初、普通の刑務所に収監されたが、重犯罪者が入る女性刑務所に移送された。この刑務所は殺人や薬物の密売などを犯した受刑者が多く、監視が特に厳しい。移送された理由は、周氏は収監後もツイッターやフェースブックで近況を発信していたため外部への影響力を保持していると当局が判断したからだ。

 その際<収監中の周庭さん 改めてどんな人?―オンとオフの切り替え早く、英語も日本語も上手な努力家>と2021年1月9日【焦点】で紹介している。以下は本稿の記事。
<一時は香港の民主の女神≠ネどと日本のメディアが持ち上げた周さんは、改めてどんな人なのだろうか。朝日新聞GLOBE編集部が昨年9月に主催したオンラインイベントのコメンテーターとして登場した朝日の益満雄一郎・香港支局長と、フリーライターの伯川星矢(はくかわせいや)さんは、数回の取材から周さんの人物像をこう述べていた。ちなみに伯川さんは、父親が日本人、母親が香港人で、香港で生まれて育ち18歳で来日。獨協大学外国学部交流文化学を卒業している。
 香港国家安全法違反で逮捕され昨年8月に釈放された際、周さんは「今回(4回目の逮捕)が一番怖かった、きつかった」と記者のインタビューに答えていたが、このコメントについて伯川さんは「彼女から『怖い』という言葉を初めて聞いた」そうだ。伯川さんは続けて言う。
 「これまで違法な集会で逮捕されてもどのくらいの刑か想定できて、ある程度リスクが予測できた。ところが国家安全法が導入されてことで、何をしたら罰せられるのか、どのくらい罰せられるのかなど不確かなままです。周庭から『怖い』と言われ、改めて事の大きさ、国安法の不条理さを感じた」
 伯川さんによると、彼女はオンとオフの切り替えが早いという。
 「オフのときは、楽天的で、アイドルが大好き。どこか遊ぶに行こうという普通の子です。初めて香港で会ったとき、僕を見た彼女は『伯川クンおなかすいた』といきなり言った。『えー』と戸惑いましたが、『シュウマイ食べる?』と答えたら『うん、食べると』と返事した。するとなぜか僕の財布から20香港ドルをもっていった。結局、僕がシュウマイをくわせてもらったというオチです。その後、すぐに取材したらビシッと人が変わり真面目な態度で臨み、チャンネルも日本語に切り替わった。オンとオフの切り替えがはっきりしていると思った」
 益満さんも「普段は、彼女、ふわっとした感じ。しかし、デモの現場で会い、取材で声をかけてもあまり答えてくれません。彼女の頭の中はデモに集中しており、メディアからの取材を考えていないようだ。きっとスイッチが入っていたのでしょうね」と語った。
 そして努力家だと指摘する。
 「彼女の日本語は初めて会った4年前と比べて、明らかに上手になっていた。本人は『そんなことないです』と謙遜していたが、日本のアニメを見て勉強したそうです。英語も上手。語学の才能があるだけではあそこまでうまくならない。忙しいので1日の睡眠3、4時間と言っていたが、そんな中でも努力したからだと思う」(益満さん)
 移った女子刑務所で周庭さん、今は何を思っているのだろうか。橋詰雅博>
 21年6月に釈放された周庭氏は、香港警察に決められた期日に出頭することを条件にカナダに留学した。12月下旬に出頭しなければ「逃亡犯となり、指名手配する」と香港警察は周庭氏に呼びかけた。
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2023年12月09日

【焦点】常勤フリー200人に労基法を適用 50年超闘争の末 社員労組との合併も力に 東映アニメ労組 河内元委員長が語る=橋詰雅博

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          東京練馬区の東映アニメーションミュージアム(HPから)

 常勤型で働くフリーランスが急増している。人手不足を補うため会社が積極的に活用しているこの常勤フリーは、人材会社などから派遣されたあるいは個人で業務委託契約を結んだ会社に自分のデスクがあり、週に何回か出向き、その日に数時間仕事をする。契約期間については定めがないなどさまざま。メリットは比較的自由に働けてスキルが高いと、高報酬を得られる。一方で労働基準法が適用される正社員と違い、労災保険や雇用保険に入れず、有給休暇もほとんどなく、会社都合でクビを切られる可能性があるなどデメリットもある。

朝ドラモデル会社

 労働環境が不安定な常勤フリーに労基法が適用されるよう息の長い活動をし、次々に権利を獲得した労働組合がある。NHK朝ドラ「なつぞら」(2019年4月から9月に放送)主演の広瀬すずがアニメーターを目指す会社のモデル、東映アニメーションの東映動画労組だ。ライター、編集者、デザイナー、イラストレーターらフリーランスが加入する「ユニオン出版ネットワーク」(略称出版ネッツ)が主催した11月2日のオンライン勉強会で労組活動を通じ約200人の労基法適用に尽力した元委員長の河内正行氏は、実現できた理由などを語った。

 河内氏は、まず『白蛇伝』『狼少年ケン』『魔法使いサリー』などヒットアニメを次々に生んだ東映アニメーションの労組の歴史を振り返った。前身の東映動画が設立されたのは1956年。低賃金ゆえに社員が59年に労組を結成したが、会社につぶされ61年に再結成する。会社は69年から27年間社員の採用を見送った。テレビの普及により映画産業の斜陽化が進んでコスト削減を強いられた親会社・東映がグループ会社を縮小したからだ。この間、主に常駐フリーが人手不足を補った。

会社は解雇を断行

 待遇改善を求めて常勤フリーは「東映動画スタジオ労組」を72年に結成。会社は労組として認めず、組合員らの解雇を断行した。解雇撤回闘争、会社側のロックアウトを経て東映動画の社員労組とスタジオ労組が対等合併。合併できたのは、@常勤フリーの待遇を底上げすることで社員の待遇もよくなる、A社員と常勤フリーとが一緒にやらなければ将来展望が開けない、B社員組合がスタジオ労組の組織化を指導した―などを河内氏は挙げた。

 東映動画でぼかしなどアニメの特殊効果担当として78年から働き始めた河内氏は「スタートは1本いくらの契約でした。数年後に(数本の)月極報酬契約になった。本数で計算できない事務職は、日給・月給。みんな健康保険、年金などの福利厚生はなかった」という。
 労組は80年以降、常勤フリーの契約解除慰労金、国民健康保険と国民年金の会社による半額負担など各制度を会社側に実施させた。その後、紆余曲折を経てついに2016年に労基法適用の契約社員(常勤フリー)制度を17年からスタートさせることに会社側が合意した。

労働者性認めさす

 長い道のりの末に常駐フリーを「労基法上の労働者」として認めさせた要因は何だったのか。河内氏はこう語った。
「社員による待遇底上げの闘いが支えになった。その年に要求が通らなくても、無駄にならず次につながり、外堀を埋めるように要求を実現させた。他社の仕事もする完全なフリーの人と、常勤フリーの人との違いをはっきりさせた。完全フリーは意識も生き方も違う。会社はそこを意図的にあいまいにし、常勤フリーの労働者性を胡麻化してきた。フリーランスの権利と常勤フリーの労働者性は分ける必要があった」「東映アニメには『労組は勝つまで闘うから、絶対に負けない』と先輩からの言い伝えがある。とにかくあきらめない。あきらめたらそこで闘いは終わりです」

 社員と同じように退職金や厚生年金を受け取り、再雇用で65歳まで働いた河内氏は「今まで会社と闘ってきたおかげだと思う」と述懐した。
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年11月25日号
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2023年12月05日

【焦点】子どもの本離れはウソ 小学生の読書は月平均12冊と増加=橋詰雅博

 子どもの本離れが進んでいると言われているが、どうもそうではないようだ。
 全国学校図書館協議会の学校読書調査によると、小学生(4〜6年生)が今年5月の1カ月間に読んだ本の平均冊数は12・6冊と、6・1冊の2000年と比べて大幅に増えている。中学生は5・6冊と微増で、1・9冊の高校生はほぼ横ばいで推移している。小学生の読書量アップは朝の読書活動の成果と指摘されている。

 1988年に2人の教師が提唱し、全国に広がった「朝読書」は、小学校では約8割が実施している。「朝読書」の時間は10〜15分程度。「みんなでやる」、「毎日やる」、学校や教師が読む本を指定せず「好きな本でよい」、読後に感想などを求めない「ただ読むだけ」が4原則になっている。生徒にある程度自由に任せているのが、長続きしている理由のようだ。
 メリットは何か。@気持ちを落ち着かせることができる、A脳がすっきりした状態で読める、B朝読書のため十分な睡眠を確保するようになる―など。

 調べ物学習が取り入れられ、資料として本を読む機会が増えた、活発になるマンガの小説化で選べる本の範囲が広がったなどで特に小学生の読書はこの先さらに増えると予測されている。

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2023年11月26日

【焦点】インボイス導入が生んだ「悲痛な声」ピックアップ=橋詰雅博

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「STOP!インボイス事務局」が11月13日に発表したインボイス緊急意識調査に寄せられた「悲痛な声」をピックアップしてみた。
●免税事業者守られず
「企画・制作の仕事です。仲の良い社長から『未登録の相手とは今後、取引しない』と言われた。交渉の余地はなかった」(40代、東京都北
区)
「フリーランスのSEです。『(課税事業者に)登録しないなら契約は継続しない』と元請けから言われ、事実上の強制だと困惑した。年末までの契約なので年明けからはどうなるのか不安です」(50代、東京都)
●誹謗中傷や差別
「取引先から着服、ネコババし続けるつもりか』と言われ、精神的ダメージになっている。あまりにひどい税制だ」(50代、北海道札幌市)
「『インボイスに登録するつもりはない』と言ったら、会社の社長は『脱税の手伝いはできないからちゃんとしろ』と言われ、『脱税ではない』と反論。そうしたらケンカになった」(40代、神奈川県藤沢市)
●相談窓口の問題
「経理部のメンバーも完ぺきに制度を理解している人はいない。インボイスコールセンターもほぼ繋がらないうえに税務署にたらい回しされる」(30台、東京都八王子市)

●会社員も仕事激増
「障害者雇用で経理業務を担当。複雑な対応を覚えるのにも疲れ、精神的にもダメージを受けている状態。挫けそうになっている」(40代、神奈川県)
「制度を理解しない学ばない経営陣、取引先、同僚によって実務的にも負担が増え、発狂しそう。それもあって退職を決めた。税制全て見直すべきだ」(40代、愛知県清須市)
●進むサイレント排除
「下請け会社がほぼ個人事業主なので、廃業しないか心配。彼らが廃業したら弊社も施工部門を閉じなくてはならない。伝統や文化を支えてくれている職人さんが消えた世界に継続も発展もない」(40代、山口県岩国市)
「取引先の担当者は経理や税理士から『インボイスに登録していないところとの取引はなるべくしないように』と言われたそうです。未登録者には経理や税理士の事務手数料を上乗せもするそうです」(40代、東京都稲城市)
 インボイス制度導入で、社会全体が混乱をきたしていることを十分につかめる調査報告だ。
 
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2023年11月21日

【焦点】発展のブックホテル、拡充の選書サービス=橋詰雅博

 11月18日付日本経済新聞で本をめぐるちょっと面白い記事を見つけた。ブックホテルと選書サービスのトレンド情報だ。書籍取次大手の日本出版販売(日販)の子会社「ひらく」が2018年に開業したブックホテル「箱根本箱」はなかなかの人気だ。
 その第二弾として山口県下関市に書店などの複合施設「ねをはす」を24年に開業する。宿泊者は夜間開放された閉店後の書店で本などを読めるというユニークなサービスがウリ。場所は新下関駅に近い国道沿いで観光地ではない。地元住民が利用している書店を活用し、ホテルを併設することで旅行者を呼び込んで地域を活性化させる狙いもある。

 お客への選書サービスも拡大中だ。宿泊事業の「ドット」が東京・神保町で運営する「BOOK HOTEL」では、宿泊予約者から好みを聞いたスタッフがその希望に沿った本数冊を貸し出し、宿泊者は滞在中に読める。
 大手書店チェーン「有隣堂」が運営する店舗「STORY STORY YOKOHAMA」は、「ホテルエディット横濱」と組んで選書サービス付き宿泊プランを21年から提供。予約時のアンケート調査を基に書店員が5冊選びホテルに届ける。本は購入しないで返却もOK。書店員のスキルアップというプラス面もある。
 ブックホテルの発展と選書サービスの拡充は止まりそうにない。
 
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2023年11月16日

【焦点】インボイス緊急意識調査で明らかになった6つの問題点=橋詰雅博

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公取委などに要請書を手渡す「STOP!インボイス」の会(11月13日、衆院議員会館内)

「インボイス制度を考えるフリーランスの会(略称STOP!インボイス)」は、10月1日からスタートしたインボイス(税率や税額が記載された適格請求書)制度について10月20日から31日に行ったオンラインによる緊急意識調査の結果を11月13日に発表した。年間売り上げ1000万円以下の免税事業者、課税事業者、会社員、経営者などから11日間に寄せられた件数は約3000件。このうち「廃業・退職・異動も検討」「事業の見通しは悪い」の回答を合わせると約7割にも達し、同制度が仕事や暮らしに悪影響を与えていることが明らかになった。

 フリーランスの会は集まった不安や実害の答えを6つの問題点として整理した。これらの問題点が是正されない限り、インボイス制度の当面の運用停止、中止・廃止を改めて岸田政権に要請するとしている。6つの問題点などは次の通り。

物価高騰下での消費増税
事業継続への危機感を募らせる答えが多数あった。20代から40代の現役世代の回答が約8割占め、ライフプランや子育てへの影響を懸念する答えも多かった。インボイス制度の導入は消費税増税であり、この増税分を民間同士で押し付け合う不毛な仕組みを抜本的に改めることを求める。
値下げや取引排除が横行
インボイス未登録事業者に対し、交渉の余地がない報酬カットや取引排除が相次ぐ。また「免税事業者を使うな」という企業もあり、暗黙の免税事業者切り≠ェ横行。免税事業者への速やかなセーフティーネットの整備を公正取引委員会に求める。
未登録者へのバッシング
消費税を「預かり税」思い込んでいる人が多い。「脱税」といった誹謗中傷を受けた、「インボイスが発行できないなら値引きしろ」というカスタマーハラスメントのような仕打ちにあった。差別されない発信と周知を強く求める。

複雑な制度過重事務負担
回答者の2人に一人は「経理事務負担」を感じ、3割超が「説明や交渉の負担」を訴えた。「経過措置」「緩和措置」「特例」といった複雑な建付けになっているインボイス制度を簡素な制度設計への見直しを要請する。
スキルの前に取引線引き
提供する商品・サービス・スキルの前に「インボイスの有無」で取引の線引きが行われている。直ちに法整備を要請する。
誤った指導、相談窓口不足
財務省が「消費税は預かり税ではない」と国会で表明しているにもかかわらず、「預かり税」とアドバイスする税務署職員、税理士が相当数いる。国税庁のコールセンターはつながらない状態が続いている。相談窓口不足と税の専門機関の理解不足の是正を求める。
 財務省、国税庁、公取委、中小企業庁にこれらの要請に対し22日までの回答をフリーランスの会は求めている。

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2023年10月30日

【焦点】ジャニーズ事件を暴けなかったマスコミ「会社員化した記者」「タテ割り組織の弊害」鮫島浩氏オンライン講演=橋詰雅博

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 ジャニーズ事件を浮上させる引き金になった英BBCの事件報道(3月)の取材に協力した元朝日新聞記者の政治ジャーナリスト・鮫島浩氏=写真=は、マスコミはなぜジャニー喜多川による少年への性加害を暴けなかったかを9月30日のJCJオンライン講演で語った。

 BBCディレクターのメグミ・インマン氏の取材の狙いは2つだったと鮫島氏は解説した。@マスコミの芸能・文化部のジャニーズ担当記者らを取材しジャニー喜多川の性加害実態を浮き彫りにする、A事件を報じなかった日本のマスコミの閉鎖性と、上層部はどう向き合ったかを追求する―。

 鮫島氏は「@については性被害者への取材もできてジャニー喜多川の性加害事件をあぶり出せて(満点の100を超える)120点くらいの成果をあげたと思う。ただしAは片っ端から取材拒否にあい難航したようで、マスコミの闇を解き明かす、照らし出すというところまで行かず、100点とれたとは思えない」と採点した。

 鮫島氏は自らも立ち上げにかかわった特別報道部(2021年春に廃止)のデスクを12年から2年間ほど務めた。特別報道部の記者はどのクラブにも属さず埋もれた事実を掘り起こす調査報道が仕事だ。政治部、経済部、社会部など各部の領域を超えて取材。「強固なタテ割り組織に阻まれ突破するのは容易ではなかった」(鮫島氏)。タテ割り組織が事件を報じられなかった原因の一つと指摘した鮫島氏は「ジャニ担記者は事務所に嫌われたら仕事にならいからちょうちん記事ばかり書く。政治家の番記者と同じ構図が芸能界でも起きていた。特別報道部のような部署がタテ割り組織の壁を崩し取材できる可能性がある」と説明した。デスク時代に「この事件を追及すればよかった」と述懐した。

 原因のもう一つは記者の「会社員化」だ。「相手から抗議を受けそうな事案はさわらず、やりやすい問題をやって上司の評価を得た方がプラスになるというリスクを取らない会社員化した記者が社内にまん延している。これでは風穴を開ける調査報道は無理です」(鮫島氏)
 共犯性があると批判されたマスコミが信頼を回復するには自己検証し上層部を処分するというウミを出すべきだと鮫島氏は強調した。
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年10月25日号
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2023年10月28日

【焦点】出版界の常勤型フリーランスはどんな働き方をしているのか=橋詰雅博

  常勤型で働くフリーランスが急増している。労働力不足を補うため会社が積極的に活用しているこの常勤フリーは、人材会社などから派遣されたあるいは個人で業務委託契約を結んだ会社に自分のデスクがあり、週に何回か出向き、その日に数時間仕事をする。契約期間については定めがないなどさまざま。メリットは比較的自由に働けてスキルが高いと、高報酬を得られる。一方で労働基準法が適用される社員と違い、労災保険や雇用保険に入れず、有給休暇もほとんどなく、会社都合でクビを切られる可能性があるなどデメリットもある。

 出版界でも常勤フリーは少なくない。フリーライター、フリー編集者らが加入する「ユニオン出版ネットワーク」(略称出版ネッツ)が出版労連の協力得て昨年12月から今年2月まで実施した常勤フリーアンケート調査報告書は、回答者42人と少ないものの実態が垣間見える。主な質問項目と回答は以下の通り。

■仕事=校正・校閲が25人と最も多く、その次が編集・編集補助。営業にも3人いた。
■就業時間=1カ月に「161時間以上」働く人が12人とトップ。
■報酬はどこから=出版社から直接が26人と最も多く、プロダクションの13人がその次。
■契約期間=「1年」が25人と6割近く占め、「期間の定めがない」も12人いた。
■報酬形態=「月額固定給・年俸」が20人と50%近かった。
■1日に8時間以上、週に40時間以上働くことは=「ある」は過半数を占め、残業は当たり前になっている。
■残業した場合、割増額は支払われるか=支払われるのは5人。ほとんどは無報酬だ。
■有給休暇はあるか=「ある」は4人。「ない」は30人と最も多かった。
■交通費は支払われるか=「支払われる」は18人で「支払われない」が22人。ほぼ二つに分かれる。
■今の仕事は年収の何割くらい占めるのか=「9割以上」が30人でトップ。ちなみに7割以上が約88%を占める。その会社への経済的依存度が大きいことがわかった。
 「常勤フリーの働き方は非常に労働者性が高いことを再確認できた」と出版ネッツは指摘した。
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2023年10月25日

【焦点】国民だます消費税の使途 法人税穴埋めに7割も インボイス、消費増税の地ならし=橋詰雅博

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 インボイス(税率や税額などが記載された請求書)制度に対して反対するネット署名が50数万筆(ネット署名数では東京五輪開催反対を超えてトップに躍進)も集まったにもかかわらず、政府は10月1日から同制度を実施した。これまで免税の中小・零細事業者(年間売り上げ1000万円以下)から消費税をむし取る「稀代の悪法」(反対運動の発起人・小泉なつみ氏=写真=)が今まで世論の猛反発が起きなかったのは政府の巧妙な仕掛けがあった。

 政府や財務省は、消費税(1989年4月に導入)は社会福祉などの財源として使われていると喧伝してきたからだ。与党国会議員は「その収入は年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てる」と消費税法第1条を根拠に消費税イコール社会保障財源と国民への刷り込みに躍起だった。この政府の印象操作に国民はすっかり騙された。
 一般財源の消費税は確かに社会福祉に使われているが、国や自治体の公共サービスなどにも使われている。警察、防衛、外交、道路・公園などの建設や維持管理、学校教育、ごみ収集など多岐にわたる。特別会計で使い道が決められている目的税ではない。繰り返しになるが、消費税は一般財源だから、何かの税収が減れば、その穴埋めにも使われる。

 10月下旬の市民団体で講演した「不公平な税制をただす会」事務局長の税理士・荒川俊之氏は「消費税は度重なる法人税の税率の引き下げによる減収の穴埋めに使われた」と指摘した。その割合はれいわ新選組共同代表の山本太郎代議士によると、消費税の約7割が法人税減収の穴埋めに消えたという。社会保障の充実感がないのはそのためだ。消費税導入から2022年までの33年間の税収増減はどうなったのか。

 荒川氏によると、消費税増収累計額は476兆円、法人税、事業税、法人住民税の減収累計額は324兆円、所得税、住民税の減収累計額は289兆円。差し引き137兆円のマイナスだ。「この差額分を消費税の増税でカバーしようと財務省は考えている。インボイス制度の導入は消費税率のさらなる引き上げの地ならしのためだ」(荒川氏)

 軍拡財源も増税した消費税が充てられる可能性が高い。消費税の税率はこの先、15、20%に引き上げられる見込み。国民の塗炭の苦しみがずっと続きそうだ。

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2023年10月01日

【焦点】善良な人間がなぜ虐殺に走る 「福田村」森達也監督オンライン講演 異質排除の同調圧力 メディア ゆがみ正す役割=橋詰雅博

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  劇映画デビュー作「福田村事件」(9月1日公開)を手掛けた森達也監督=写真=は8月27日のJCJオンライン講演で自作の映画のキーワードや人間の本性、メディアがマスゴミと言われるゆえんなど情熱を傾けて語った。映画の前宣伝と思ったが内容はすごく濃かったという視聴者の感想もあった。
 映画のモデル、福田村事件は、関東大震災発生の5日後の1923年(大正12年)9月6日、千葉県福田村(現野田市)にやってきた香川県の被差別部落出身者の薬行商団15人を朝鮮人と誤認した地元自警団が9人を殺害したのだ。  

  2001年ごろ新聞記事でこの事件を知り興味を惹かれた森氏は、現場に何回か足を運び図書館などで探した資料を基に報道番組の特集枠での放送を目指す企画書を作成し、仕事を請け負っていた民放各社のプロデューサーに持ち込んだがすべて断られた。朝鮮人虐殺に絡むことと、被差別部落の問題も加わっていることが断られた理由だったようだ。その後、森氏は自著のエッセイ『世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい』(ちくま文庫)で事件を取り上げた。この惨殺事件の映画化を考えていた今回のプロデューサーや脚本家から誘われた森氏は3年前に監督を引き受けた。

 代表作のオウム真理教信者の実相に肉薄したドキュメンタリー映画「A」(1998年公開)と「福田村事件」の共通キーワードは「集団」だと指摘する森氏は説明した。
 「人は群れる生き物です。なぜなら弱いからです。しかし群れにはデメリットがある。全体の動きに個が合わせようとするので集団内での同調圧力が強まる。とくに不安や恐怖を感じさせる異質な者に出会うと、集団は警戒を強める。肌や髪の色、言葉、信仰、民族、政治など違いは何でもいい。自分たちと異なる少数派を排除することで自分や家族が属する集団を守ろうと動く。かくして善良で穏やかな普通の人たちが虐殺に走る」
 森氏は日本のメディアに苦言を呈する。
 「メディアは不安と恐怖をあおる報道が目立つ。テレビは視聴率を、新聞は部数を伸ばすため。オウム事件が最たるものでした。世界の報道の自由度ランキング(「国境なき記者団」毎年発表)では安倍晋三政権以降、日本は低迷しており、22年は71位。メディアがひどいと、社会は成熟せず、政治家もひどくなる」
 三位一体だからこそメディアの役割は重要というわけだ。

 「日本のゆがみともいうべき朝鮮人と被差別部落への差別が重なり合った典型がこの事件」という森氏は「目をそむけたくなる事件と思っている方もいるだろうが、映画は観客のエモーションつまり感情を揺り動かすエンターテインメントが基本です。とくに後半は手に汗握る展開になっている」と語った。
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         JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年9月25日号


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