2022年11月12日

【焦点】新法 今国会で成立見通し フリーランスは本当に保護されるのか 実効性の確保が問題 公取委など官庁連携も必要=橋詰雅博

  出版、IT、メディア、スポーツ、広報、運送、芸能などさまざまな分野で仕事するフリーランスが安定して働けるという新法律「フリーランス保護法案」が臨時国会の会期末12月10日までに成立する見通しだ。

多い泣き寝入り

 日本でも462万人と急増するフリーランスが、報酬の支払い遅延、突然の契約解除、一方的な仕事の内容の変更などで泣き寝入りするケースが増えている。トラブル防止をめざす法案には、これまで資本金1千万円を超える企業に適用されていた下請法(代金の支払い遅延や代金の買いたたきなどの禁止、申告された違反者への指導・勧告など)を、フリーランスと取引が多い資本金1千万円以下の企業にも適用に加えて新たにハラスメント対策などが盛り込まれた。

下請法と保護法案が発注者に義務付けた取引の適正化に関する主な中身は次の通り。
▼業務委託する際、仕事の内容、納期、報酬額、報酬の支払い時期
など8項目を記した書面の交付あるいはメールをする。
▼中途解約または契約期間更新しない場合、30日前に予告。
▼報酬は仕事が完了した日から60日以内に支払う。
▼報酬減額、返品、不当に低い報酬、指定する物の購入強制、報酬内容の変更などの禁止。
 この取引の適正化に関し下請法の対象外の企業も、法制化により違反すれば指導、勧告、公表などが行われる。フリーランスも国に違反申告ができ、それを理由に契約解除はされない。

 新たに加わる発注者が取り組むべき就業環境の整備の内容は@ハラスメント行為について、適切に対応するため体制の整備、その他の必要な措置を講じる、
Aフリーランスの申し出に応じ、出産・育児・介護と仕事の両立との観点から必要な配慮をする。
ようやく着手されたこの新法案で不安定な立場のフリーランスは本当に保護されるだろうか。

守る姿勢と問題点

  厚生労働省などに新法案について要望を提示してきた日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)フリーランス連絡会の北健一氏は「下請法の全企業への適用と、就業環境整備からなる法案は十分な内容ではないが、フリーランスを守る姿勢が示された」と評価した。
 一方では問題もある。
 「保護法が成立しても守らない企業が出てきます。それを防ぐには実効性の確保が重要なポイントです。法案にはどの官庁が違反した発注者の指導、勧告、公表を行うのかは明示されていません。下請法の監督官庁は公正取引委員会ですが、地方に7カ所の拠点しかなく、マンパワーも不足しています。全国に拠点がある労働基準法違反を調べる労働基準監督署と比べると規模が小さい。保護法も公取委が担当となると、労基署のように広範な指導、勧告などができる体制になっていません。これでは違反する企業を防止できませんので、公取委の増員を内閣官房(首相の補佐・支援が役目)にMICは要望しています」(北氏)
  保護法の実効性を高めるため北氏はこんな提案をする。
 「厚労省が所管し、東京第二弁護士会が運営する常設の『フリーランス110番』(20年11月に開設)との連携は有効だと思います。フリーランスから電話やメールで毎月300から500件相談を受け、弁護士が和解あっせんにも取り組んでいます。公取委と厚労省の連携でこのような110番システムを地方に展開すれば、保護法の実効性がアップするのではないでしょうか」
 雇用契約を結んでいないので労働基準法の適用外のフリーランスは労働者に該当しない。しかし個人事業主とはいえ生身の労働者であることに変わらない。北氏は「今回のような取引ルールに加えてけがや病気のときなどカバーしてもらえる労働法的な保護の拡張も検討してほしい」と政府に要望する。
 橋詰雅博
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年10月25日号
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2022年10月31日

【焦点】五輪選手村訴訟の第1回控訴審で2回と3回目の日程決まる、原告が提示した3点の要求の採否に注目=橋詰雅博

 東京・晴海の五輪選手村訴訟の控訴審第1回口頭弁論が10月11日に開かれ、次回第2回弁論は12月15日(木)午後1時40分、第3回は来年2023年3月14日(火)午前11時20分に開かれることが決まった。いずれも101号の大法廷で行われる。
 この日、口頭陳述した原告の中野幸則団長は「都市再開発法を濫用・誤用して合法性を装って、129億6千万円という著しく廉価な譲渡価格を都議会にも財産価格審議会にもかけずに秘密裏に決定したことは地方自治体法違反の財務会計行為」と述べ、控訴審での厳正な審判を求めた。
 原告側代理人の淵脇みどり弁護士は「五輪から1年を経過し、6月に収支報告書が出ましたが、本件住民訴訟で損害賠償を求めている1000億円を超える選手村敷地の土地差額は経費支出として計上されていません。この隠された支出は特定建築業者(土地を取得した三井不動産など11社)の利益となりました」と述べて、「本件は五輪利権をめぐる地方自治体の本質に関わる重要な訴訟」だから司法の場で十分な審議をすべきだと訴えた。
 原告が提示した@小池百合子都知事ら6人の証人申請、A不動産鑑定士の田原拓治氏の意見書の採用、B非開示している都と事業協力者(三井不動産など13社)の協議議事録の命令申立書の採否を裁判長は次回法廷で明らかにする。
 裁判の行方を決まるだけに裁判長がこれら採否をどう判断するのか注目される。
 橋詰雅博
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2022年10月07日

【焦点】神宮外苑の再開発 、見直しも 環境保全案なお懸念 審議会、評価書作成に関与=橋詰雅博 

イチョウ並木.jpg

      イチョウ並木は枯死するかも
東京都環境影響評価審議会は、明治神宮外苑地区(約28f)の再開発計画を進める事業者が提出した環境保全案を小池百合子都知事に8月18日に答申したが、答申後も引き続き事業者から聴取していく方針だ。異例の対応になったのは多くの問題が残っているからで、事業計画内容が変わる可能性が出てきた。
 答申は「都民から樹木伐採への反対意見を始め、先人から継承された環境を失うことへの懸念や事業計画の十分な周知・公開を求める意見など多くの懸念が表明されている」と前置きしたうえで、「今後の事業者の環境保全措置に継続的に関与し寄与していく」と総括した。

答申は中間報告だ

 樹木伐採などに反対する市民団体のオンランセミナーに出演した(8月27日)千葉商科大学学長の原科幸彦氏(環境アセスメント)もこう指摘した。
 「審議会は事業者の環境保全案を了承し都知事に答申したと報道されたが、答申には了承したとは書いていません。通常は答申した段階で終わるが、まだ多くの問題があるので環境影響評価書の作成前に審議会による事前の審査ができるようになった。答申は中間報告という位置づけです。評価書作成をクリアしないと工事の着工はできません」
 2月に都市計画審議会に承認された三井不動産などが事業者となったこの外苑再開発計画は、高さ190bと185bのオフィス・商業施設が入る高層ビル2棟、80bの宿泊施設・スポーツ関連ビル、60bのホテル併設の新神宮球場、55bの新秩父宮ラグビー場などが2036年まで建設される見込み。約1000本の貴重な樹木が伐採されることが分かったことから米国人経営コンサルタント、ロッシエル・カップさんが伐採反対と計画見直しを求める署名をネットで集め始めたのがきっかけで、「シンボルのイチョウ並木も危ない」と反対運動はみるみる広がった。(署名数10万人突破)。
 市民の声を無視できなくなった事業者は伐採本数をほぼ半減、イチョウ並木の保全、移植した樹林地の再生などからなる環境保全案を審議会に提出した。しかし保全策の実現は不透明だ。このため「事業者と質疑を行いながら環境配慮を着実に進めていきたい」と会長・柳憲一郎明治大学名誉教授は語った。

愛知博は計画変更

 「例えば新神宮球場の壁面とイチョウ並木(青山通りから見て左側)の距離は8bしかない。中央大学研究開発機構の石川幹子教授が調べた近くの新宿御苑地下トンネル(自然保護のため御苑地下を通る、1991年開通)と樹木の枯死の調査によれば、建造物と15b以上離れていれば枯れないという。野球場壁面の後退を求める。計画の骨格を変えることは難しいが、環境重視の世論が盛り上がれば大きな修正はあり得ます」(原科氏)
 先例はある。05年の愛知万博ではメイン会場の候補地、瀬戸市海上町の自然が破壊されると市民団体の声が届きメイン会場が変更され入場数も大幅に縮小された。それがかえって環境万博≠ニ評判を呼んで想定入場数を上回り収支は黒字に。
 セミナーの司会を務めたカップさんは「自治体の議員を始め政治家、マスコミ、ラグビーファン、スワローズファン、外苑の利用者、環境保護関連組織などにコンタクトし、働きかけることが大事」と提案した。
 外苑の樹木を残すという「希望の火」が広がってきた。
橋詰雅博
再開発イメージ図.jpg
       高層ビルが次々と建てられる
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年9月25日号

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2022年09月30日

【焦点】五輪選手村訴訟原告団、総会開く、92%減額を控訴審で訴える=橋詰雅博

                             
正す会.jpg
   
 五輪選手村用地を破格の安値で売却したのは違法だとして、周辺価格との差額約1200億円を小池百合子都知事らに請求するよう都に求める訴訟を起こした晴海選手村投げ売りを正す会は、9月27日に豊洲で第5回総会=写真上=を開いた。
 一審で敗訴した原告団は、「不当判決」と昨年12月に控訴した。総会は10月11日(火)午後1時40分に東京高裁101号法廷で開かれる第1回控訴審に向け意思統一を図るのが目的だった。

 裁判の最大の焦点は都有地の売却価格が適正かどうかだ。都内一等地をデベロッパー11社に129億6000万円で売ったのは選手村要因などを考慮すると「適正」と東京地裁は認めた。しかし、この価格がいかに異常かを検証してみる。ちなみに選手村要因とは@道路などのインフラ整備の完了Aデベロッパーが施設建築物を建設、取得した上で、土地を譲り受けるB施設建築物の一部を五輪大会期間中に選手用宿泊施設などとして使用し、大会終了後に改修の上、分譲または賃貸する―などだ。
 五輪終了後、選手村用地に5632戸の住宅が建てられる。これに伴い新たに学校などの整備が必要になるので、中央区は晴海4丁目と5丁目の都有地を合計3・14f購入することになった。昨年6月財産価格審議会が開かれ、中央区への売却と、土地価格および公共施設に認められる減額を決定した。都は近隣路線価から1u当たり106万(4丁目)、120万(5丁目)とし、売却価格を155億、199億と評価(写真下)。公共減額50%と設定し、減額後の譲渡額を77億5000万、99億5000万と決めた。

原告側の桐蔭横浜大学法学部客員教授、田原拓治不動産鑑定士は、財産価格審議会の土地鑑定は「まとも」と評価した。さらにこう続けた。
「1u当たり120万の5丁目の土地は選手村の真ん中にある。この価格でデベロッパーに譲渡した13・39fの土地価格を算出すると、1607億になる。1607億の土地をいくら選手村要因だと被告の都側が強弁しても正常価格(市場価格)の8%が妥当であるはずがない。選手村の五輪仕様の内装も諸設備の建設、その撤去も都が445億円以上も拠出。選手村とは関係ない超高層分譲マンション2棟の建設も開発事業に含まれている。実態はデベロッパーによる営利を目的にした分譲・賃貸マンションです」
選手村要因を考慮しても、92%減額はひどいというのだ。
田原不動産鑑定士のこの意見書はすでに裁判所に提出している。
 橋詰雅博
                               
晴海4,5丁目土地価格.jpg

                       
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2022年09月01日

【焦点】米IT企業 労組結成 アマゾンなど日本に飛ぶ火 労働者の反乱始まった=橋詰雅博

アマゾンジャパン.jpg


ビックテックと呼ばれる米国巨大IT企業で労働組合結成が相次いでいる。グーグルのエンジニアらが親会社のアルファベット社員の協力を得て昨年1月に労組を誕生させた動きは、今年に入り加速した。4月にニューヨーク市スタテン島にあるアマゾンの倉庫で、6月にメリーランド州ボルチモア近郊のアップル直営店で労組が生まれた。「利益につながらない」と労組結成に反対する経営者に抗ったのは、コロナ禍で命の危険にさらされながら働いてきたのに賃金上昇が物価高騰に追いつかず、さらなる賃上げが必要という切実な要求が背景にある。

動きに株主も呼応

 この動きに株主も呼応した。5月末の米国アマゾンのオンライン株主総会で、アクティビスト(物言う株主)の英国企業のCEOが倉庫従業員の賃金と労働条件の改善を求める提案をした。一人の倉庫従業員が「投資家の皆さんは自らのリターンを支えている労働者の安全についてどう考えていますか」と訴え、否決されたものの提案への賛成率は44%にも達した。
 一度解雇されても諦めずにアマゾン労組を結成した黒人リーダーのクリスチャン・スモールズ氏は「これで会社と対等に交渉できる」としたうえで「労働者の権利を認めない雇用者には何かしらの罰が必要だ。そうでないと米国で働く人々は苦しみ続ける」と話した。
 最低賃金を20jから22jに引き上げるという会社側の提案に屈しなかったアップル労組幹部は「全米約270店舗のうち、20数店舗で労組結成への関心を示している」と見通しを語った。「労働者が反乱した」と指摘した米学者もいた。

大統領は労組支援

米改革派労働運動団体「レーバー・ノーツ」と交流がある東京管理職ユニオン委員長の鈴木剛さんは米国の動きをこう見る。
 「NPO法人・労働教育調査プロジェクトが79年創刊した月刊誌の名称であるレーバー・ノーツは、雑誌編集と労働運動リーダー育成が主な事業です。労組再生に向けたオルガナイザー教育を受けた女性やヒスパニック系、黒人らは働く職場や住む地域で精力的に活動している。賃上げ要求に加えて気候変動対策、ジェンダー平等、人種差別撤廃などを掲げ社会的労働運動を盛り上げてきたことと、バイデン大統領の公約である労組支援が組合結成に拍車をかけた」
 東京管理職ユニオンは個人加入の労組。鈴木さんは15年にアマゾンジャパン東京本社や物流センターのマネージャークラスからなる「アマゾンジャパン労組」結成に尽力した。成績不振を口実した退職強要や組合支部長の不当解雇撤回の戦いに取り組んできた=写真=。

配達員組合も誕生

 米国の勢いは日本に飛び火した。アマゾンジャパンの荷物を神奈川県横須賀市で宅配するドライバー10人は「アマゾン配達員組合横須賀支部」を6月につくり東京ユニオンに加入。配達中に事故で荷物が破損した時、ドライバーが負担したお金の返金などをアマゾンに要求している。
 この労組立ち上げをサポートした鈴木さんによると、全国各地のアマゾンドライバーから労組結成の相談がきているという。
 企業において生産性や利益向上にとってマイナスだと労組を敵視する合同会社アマゾンジャパンに対し鈴木さんは「決算報告や株主総会開催の義務もない合同会社は社会的な透明性が低い」と批判した。
 世界最大のコーヒーチェーンのスターバックスでも米国内100店舗で組合が誕生した。従業員をないがしろにした株主至上主義の経営は曲がり角にきているようだ。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年7月25日号
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2022年08月22日

【焦点】会社側の妨害に負けず米国で労組が次々誕生 米国人の7割近くが支持=橋詰雅博

 世界最大コーヒーショップチェーンのスターバックスでは米国内200店舗以上で労働組合が結成された。全米レストラン協会は「米国の大手飲食店チェーンのうち労組が一番強い会社になった」と評した。
 会社側は組合結成に対してあの手この手で阻止した。@中心メンバーの一方的な解雇、A突然の店舗閉鎖、B新たに配置したマネージャーが予告なしにシフトを変更し指示に従わない従業員は解雇すると脅す、C作成した特別ウェブサイトに「労組はコーヒーを作る代わりに組合費を集めてももうけている」「求めたストに不参加なら労組は罰金を科す」などと反撃した――。
 今年4月にニューヨーク市の倉庫で初の組合が生まれたアマゾンでも会社側は妨害行動に出た。アラバマ州では、組合結成の是非を問う投票が認められると(2020年8月)、反対票を投じるようにと書かれたポスターを倉庫内のトイレにまで貼った。「団体交渉は結果的に労働者の損失につながる」「労組幹部は組合費から毎年10万ドル以上を使い車の購入にあてた」と書いたメールを従業員に送信した。
 根拠のない批判を流す一方では懐柔策も。最低でも時給15ドル(同州最低賃金の2倍)の賃金を支払い、医療健康保険にも加入させる。こうした待遇を提供するのだから年間50ドルの組合費を支払う必要はない。
 従業員による投票は結局、コロナ禍の影響で郵便投票になったが、会社側は郵政公社に依頼し倉庫の入り口付近の監視カメラのそばに郵便箱を設置させた。従業員のだれが投票したのかなどを把握できるようにしたのだ。
 アラバマ州でのアマゾンの組合結成は持ち越しになっている。しかし、同じ巨大IT企業のグーグルやアップルにも組合は誕生している。
 賃上げを上回るすごい物価高騰が組合結成の主因だ。自分たちの暮らしをよくしたいため労組が拡大していることについて民主党のサンダース上院議員は「労働者は機械の歯車ではない」とツイッターで主張した。
 昨年の米ギャラップ世論調査でも米国人の7割近くが労組を支持していて、1965年以来最も高い数値を記録した。
 米国の労働運動は大きな転換点に突入しているようだ。
  橋詰雅博
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2022年08月11日

【焦点】財務省は政界工作官庁 省益と栄達のために血道をあげるエリート官僚=橋詰雅博

 岸田文雄政権は財務省の傀儡政権≠ニ言われている。なぜなのか。財務相を9年間務めた麻生太郎副総裁が安倍元首相亡き後のキングメーカーとして君臨し財務省が権力基盤を支えている。6人の首相秘書官のうち2人が財務省出身。政務首席秘書官の嶋田隆氏は元経産省事務次官だが、財政再建論を強く主張した故与謝野馨元財務相の側近で、財務省の考えに近い。岸田最側近の官房副長官の木原誠二衆院議員も財務省OBだ。そもそも岸田派(宏池会)は、旧大蔵省(現財務省)出身の池田勇人が初代会長で、第2代の前尾繁三郎、第3代の大平正芳、第5代の宮沢喜一も大蔵省OBだ。宏池会は、大蔵省・財務省と濃厚な関係を築いている。こうしたシフトを利用して財務省は念願の消費税増税に踏み出そうとしているが、なぜ消費増税にこんなにこだわるのか。

 7月下旬にJCJオンラン講演会に出演した元朝日新聞記者で政治ジャーナリストの鮫島浩氏はこう解説した。
 「予算配分権を握る財務省は財政が緊縮の方が自分の権威を見せつけられる。
財政が大きく膨らめば、予算配分が増えてありがたみが薄れる。緊縮なら消費増税に賛成してくれるところには予算を多く与えて、そうでないところは少なくという差別を広げることが可能です。橋、ダムの建設や道路整備などいわゆる箇所付け(公共事業の予算や補助金をどの地域のどの事業にいくら配分するかを具体的に決める)では、賛成政治家の地元には多くの金を投入し、反対政治家にはその逆で投入する金は絞り込まれる。一方で減税により企業や業界を支援する代わりに消費増税に賛成してもらう。減税の穴埋めが消費増税だ。税収が薄いが広く課税できる消費税を基軸の財源と財務省は見ている。従って消費増税を一歩でも二歩でも進めたい。実施で手柄を得たエリート官僚は天下り先に困らず、OBとして権力もふるうことができる」

 このため財務省のエリート官僚は政界工作にまい進する。利用できそうな政治家に取り入るため例えば本や論文のゴーストライターをやり情報を得ていたという。情報量は下手な政治部記者よりはるかに多く、予算をつくる経済官庁というより政界工作に特化した官庁と見る向きもある。民主党政権時代、政治部記者として民主党に食い込んでいたという鮫島さんはこんな体験を明らかにした。
 「財務省官僚から民主政権のことを教えてほしいと逆取材≠受け、小沢一郎と鳩山由紀夫グループ、菅直人と仙谷由人グループを分断させる作戦を立てていた。財務省は支援する代わりに消費増税を進めてほしい管・仙谷側に要請していたようだ。増税に向かわせるためメチャクチャなことを平気である。予算書作成はノンキャリ役人に任せ、官僚は政界工作に血道をあげている」
 省益と自分の栄達を優先する財務エリート官僚は国民のためというマインドはゼロのようだ。
 橋詰雅博
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2022年07月30日

【焦点】国家機密情報の洩れ阻止にやっと動き出したか=橋詰雅博

 総務省が7月初旬に公表した2022年度の情報通信白書で、成長著しいクラウドサービス市場への言及が注目される。20年の世界市場は35兆315億円と前年比約30%も増えた。米IT巨大企業のマイクロソフト、アマゾン、グーグルの3社が市場を牛耳っており、寡占化が進んでいる。白書は「米国などの海外企業がわが国のクラウドサービス市場を席捲しており、過度な海外依存を懸念する声もある」と警戒感をあらわにしている。
 これに先立ち政府は、国家の機密情報を扱うクラウドサービスの脱外資依存を進める方針を打ち出した。クラウドサービス契約では、外資企業が単独で参入できない仕組みにし、国内IT企業とセットで参画するようにした。国内企業の育成につなげるというのが表向きの理由だが、国内企業をかませることで外資企業から情報がどこかに漏れることを防止するのが狙いだ。フランスやドイルはすでにグーグルと地元企業がタイアップして政府専用クラウドサービスのシステムを構築している。

 白書で警戒感を示し、外資企業の単独参入防止の動きに出たのは、2年前から稼働している政府のクラウドサービスを、アマゾン・ドット・コムの子会社であるアマゾン・ウエブ・サービス(AWS)の日本法人が運用しているのが背景にある。安全性を問われた当時の高市早苗総務相は「『クラウドサービスは国内から提供』『データ送受信の常時監視』『アクセスログ(誰がアクセスしたかの記録)』などのセキュリティ対策を行う」と答えた。しかし、クラウドサーバーから国家機密が米政府や米企業に漏れる可能性は否定できないという声は根強くある。本当に情報が漏れたのかどうか不明だが、遅まきながら行動を起こした。
 国家機密情報の洩れ阻止にやっと動き出したようだ。
 橋詰雅博
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2022年07月29日

【焦点】五輪選手村訴訟の控訴審 10月11日101号法廷で開く=橋詰雅博

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                原告団が発行する最新会報誌
 不当判決だと原告側(都民)が控訴した東京五輪選手村訴訟の控訴審第1回口頭弁論が10月11日午後1時40分、東京高裁101法廷で開かれる。
 この訴訟は都内一等地、晴海の都有地がデベロッパー11社に129億6000万円と公示価格の10分の1以下で売られたことに腹を立てた都民32人が2017年8月に小池百合子都知事らに差額を支払うよう都に求めた。昨年12月23日、利益や処分に制限がある選手村要因によるものという被告側(東京都)主張を丸のみした地裁は「売却価格は適正」と判決を下した。
 原告弁護団は「判決は自治法や不動産鑑定制度、再開発事業制度の根幹を揺るがす不当な判断」と批判した。
 原告団は売却価格についての控訴理由書補充には、田原拓治不動産鑑定士の意見書提出する見込み。桐蔭横浜大学法学部客員教授も務める田原氏は、都が日本不動産研究所に依頼した価格調査報告書(不動産鑑定書ではない!)が開発法1つだけで算出した土地価格は、不動産鑑定基準に違反しているとし、これを適法とした判決に反論している。土地価格を求める方法はデベロッパーの投資採算性に着目した開発法や近隣の類似物件の不動産価格を比較する取引事例比較法などいくつある。取引事例法がオーソドックスなやり方である。複数の方法を参考に決めたと提示するべきだと田原氏は言うのである。もっともな意見だと思う。
 原告団は控訴審に向けて意思統一を図るため第5回総会を9月下旬ごろに開く予定だ。
 橋詰雅博
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2022年07月22日

【焦点】いわくつきの五輪組織委元理事 今度は4500万円疑惑が発覚=橋詰雅博

 東京五輪金銭疑惑をめぐりこの人の名前が再び飛び出した。東京五輪・パラリンピック組織委員会元理事で電通専務だった高橋治之氏(78)だ。大会オフィシャルスポンサーだったAOKIホールディングスから高橋氏が経営するコンサルタント会社に2017年以降総額4500万円が支払われていたことが東京地検特捜部の捜査で明らかになった。理事は法令上「みなし公務員」とされ、賄賂の収受は違法である。高橋氏はスポーツ事業についてさまざまなアドバイスをした見返りとして資金提供を受けたことは認めたが、便宜を図ったことはないと賄賂性を否定している。
 ノーコメントのAOKIだが、大会公式ウェアなどの販売権を獲得し、各種ユニホームの製作も担当した。高橋氏はAOKIHDの創業者・青木拡憲前会長(83)とは10年以上の付き合いだという。
 彼の名前が最初に出たのは20年春。東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会から高橋氏が9億円を受け取り東京五輪実現のため奔走したというロイター通信のスクープ報道だった。ロイターの取材に高橋氏はラミン・ディアク世界陸連前会長などIOC(国際オリンピック委員会)委員にロビー活動したことは認めた。だが、9臆円の使途について「いつか死ぬ前に話してやろう」とうそぶいた。

 東京五輪招致では贈収賄疑惑でフランス検察が捜査を続けている。贈賄側として招致理事長を務めたJOC(日本オリンピック委員会)前理事長の竹田恒和氏が18年に同検察から事情聴取をされている。高橋氏もこの汚職疑惑に深く関わっているようだ。
 高橋氏は同じ慶応大出身の竹田恒治氏を介して弟の恒和氏と知合い交流は長い。ちなみに高橋氏の弟はイ・アイ・イ・インターナショナル社長の治則氏。05年7月死去したが、巨額なリゾート開発を仕掛け資金提供を受けた日本長期信用銀行を破綻に追い込んだ虚業家≠ニ言われた。
 高橋氏は電通時代からの人脈を生かし大きなスポーツイベント開催で力を発揮し、森喜朗元首相ら政界や財界などにも太いパイプがある。特捜部はマスコミに盛んに情報をリークし事件化を目論んでいるが、果たして高橋氏を落とす≠アとができるだろうか。
 橋詰雅博
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2022年07月05日

【焦点】デジタルハンターが新聞スクープを連発する時代に=橋詰雅博

 ロシア・ウクライナ戦争でロシアの偽情報を叩き潰すオシント調査が注目されている。
 ゲームマニアの中年英国人のエリオット・ヒギンズが軍事や語学などその道に長けた人たちをオンラインで呼びかけネットワークによってSNSに投稿された写真や動画、衛星画像などの公開情報を徹底分析する手法は、欧米メディアに広まっているのは昨日の記事(http://jcjdaily.seesaa.net/article/489470782.html)で報じた。創設者のヒギンズの著書『べリングキャット』(筑摩書房)は、オシント調査に興味を持たれている方にはおすすめ本だ。権力者のウソを暴く独自解析を詳しく書いている。この分野で出遅れていた日本のメディアも挽回しようと力を入れ始めた。中でも日本経済新聞社は会社挙げて取り組んでおり、目下、オシント報道の先頭を走る。
 5月下旬に早稲田大学でのシンポジウムに出演した日経調査報道の兼松雄一郎記者は社内態勢をこう語った。
 「専従班は20人弱です。日本では最大規模のこのグループは、データビジュアル、データサイエンス、基礎研究などに取り組んでいる。英語媒体において調査・発信をしている。社内では研修、月1回程度の勉強会、社外専門家との連携、データアクセスの拡充、編集局内エンジニアの増員に努めている」
 その成果を1面トップで報道している。5月20日付は<中国、空自機の標的設置か「空中司令塔」似の物体 衛星で確認 台湾有事 日本に攻撃懸念>と新疆ウイグル自治区の砂漠地帯に置かれた構造物が写る衛星写真を解析した結果、自衛隊の早期警戒管制機と同形状のものとわかったとしている。6月30日付は<北朝鮮石炭、対中密輸疑い 制裁違反、軍事資金に>と入手した石炭を積んだ北朝鮮籍船をとらえた人工衛星画像を分析したところ、中国の港に直航したことを確認したという。
 公開情報の徹底解析を行う新聞のデジタルハンターがスクープを連発する時代に突入してきた。
 橋詰雅博
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2022年06月01日

【焦点】都議会で陳情不採択だが、神宮外苑再開発見直しの気運高まる、2日要望書を東京都に提出=橋詰雅博

                           
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明治神宮外苑の約1000本の樹木伐採の反対と再開発見直しのネット署名に加えて市民団体が都議会に提出する「神宮外苑の歴史的景観と環境の保全に関する陳情」への署名集めにも協力した筆者は、この神宮外苑をめぐる動きに関心を抱いている。
 というのは日本ジャーナリスト会議(JCJ)の機関紙3月25日号掲載の「森首相が暗躍@ホ奪い高層ビル次々 ラグビーW杯・五輪も口実 神宮外苑の再開発」と題した自分の記事をDaily JCJ(http://jcj-daily.seesaa.net/article/486252121.html 4月2日付)にアップしたところ、総計80件を超える「いいね」が集まり、また1日だけで3700超のアクセス数があった。ブログとして利用する無料サイト「Seesaa」(シーサー 約5万200ブログが登録)の全体人気ランク52位まで上がり、登録する「ニュース/時事」分野でもベストテンに入った。
神宮外苑の再開発と伐採に疑問をもち抗議運動を起こした米国女性経営コンサルタントのロッシェル・カップさんがツイッターにも挙げたこの記事を見て「なんと衝撃的な題名ですが、事実は衝撃的なので相応しいです。 こんな背景的な情報を流すのはとても大切だと思います。」と紹介してくださり、拡散していただいたおかげだと思う。
 その後、NHK「首都圏情報ネタドリ」での放送やロッシェルさんに取材した「FLASH」の記事などが反響を呼び、神宮外苑再開発と伐採への批判はさらに高まった。

 5月26日に行われた都環境影響評価審議会の部会では、委員から「データ提供が不足」「外苑の森が守られるか、極めて不透明だ」などの苦言が相次いだ。本来ならば審議を終了する予定だったが、異例の結論持ち越しになった(=写真=5月27日付東京新聞)。
 そしてネット署名の賛同者はついに8万人を超えた。ただ27日に陳情を審査した都議会では、自民、公明、都民ファースト会の反対多数で不採択になった。共産、立民、維新が採択の判断をした。
 ロッシェルさんは「陳情は環境を大切にしましょうというとてもマイルドな内容なのにどうして反対するのか、とてもがっかりしました。しかし、維新と立民が同意の意思を示したのは、進歩だと言えます」とコメントしている。
 だがロッシェルさんは諦めない。計画の白紙撤回を求める要望書と署名簿を2日東京都に提出した後、都庁記者クラブで会見を行う。3日には再開発事業者の明治神宮、伊藤忠商事、三井不動産、日本スポーツ振興センターに要望書などを提出する。
 市民の献金と献木などによって誕生した神宮外苑の憩いの緑地に「ショッピンモールのような施設」(ロッシェルさん)が建設される再開発と1000本もの樹木伐採は、都民の共感を得られないだろう。
 橋詰雅博
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2022年05月03日

【焦点】外苑樹木伐採に反対運動が拡大 厳粛な景観が消える 6月都議会で審議=橋詰雅博

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年内にも工事が着手される明治神宮外苑の再開発をめぐり樹齢100年を含む約1000本の樹木伐採に反対する運動が広がっている。
 宗教法人・明治神宮が地権者であるこの外苑は、国内外からの献金と約54種3190本に及ぶ献木によって造営された。竣工した1926年(大正15年)には日本で初の風致地区「東京都都市計画・明治神宮風致地区」として指定された。その景観は世紀を超えて継承されているいわば「歴史的環境遺産」と言っていいだろう。
 市民団体「神宮外苑を守る有志ネット」が4月29日に実施したオンライン講座に出演した千葉大学名誉教授の藤井英二郎さん(環境植栽学)は「約1000本の樹木を伐採してしまったら文化財といえるような厳粛な景観が消えてしまう。伐採は論外だ」と話した。
 都心での樹木の大きな役割は過去100年で気温が3度上昇したヒートアイランド現象の歯止めになる。藤井さんがこう語った。
 「都市部のヒートアイランドは悪化する一方で、このままでは今世紀末には4・5度も気温が上昇すると計算されている。これを防ぐには樹木をできる限り残すことが必要です。1000本の樹木の周辺は気温が2、3度低い。夜間に冷たい空気を取り込み冷やす効果が極めて高い。枝葉は直射日光を防ぎ、熱がたまらない役目をしている。ヒートアイランドの低減につながる。数十年先を見越しいまある樹木を大切に扱うことが大事です。伐採はとてつもない無謀な行為そのものです」

 再開発事業者は移植すればいいと提案しているが、これについてはどうなのか。
 「ほとんどが大木ですから根が相当に深く広くはっている。移植作業の際には、根鉢する。つまり根などを切る。邪魔な枝葉も切り落とす。木へのダメージは大きく、水分を十分に取れず、木は育たない。移植では従来の樹形を保たせることは不可能です。移植は避けるべきだ」(藤井さん)
 再開発で高層ビルが建てば、強いビル風で残されるというイチョウ並木の枝葉が落ちる心配もあると藤井さんは指摘した。
 3月下旬に市民団体が神宮外苑の歴史景観と環境保全に関する陳情書を都議会に提出した。6月の都議会で審議される。
 100年近く都民に提供してきた緑のオアシス≠奪ってはならない。
  橋詰雅博
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2022年04月09日

【焦点】人体実験≠危惧? ゲノム編集トマトの苗を自治体が拒否=橋詰雅博

                              
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 品種改良の一つゲノム(全遺伝情報)編集技術によるトマトを開発した会社が自治体を通じて小学校や福祉施設に無料で苗を配布し栽培してもらう計画を進めている。計画はどんな具合になっているのだろうか。
 札幌市の市民団体「北海道食といのちの会」は、昨年12月「苗を受け取らないように」という要望書を道内179市町村に送付した。今年3月末までに寄せられた「受け取る」「受け取らない」「その他」の選択肢に145自治体が回答したうち「受け取る」はゼロ。拒否する理由で最も多いのは「安全性が確認されていない食品は使わない」だ。
 このトマトは筑波大発のベンチャー企業「サナテックシード」が開発したもので、血圧上昇を抑える成分「GABA(ギャバ)」が多く含まれる。時間をかけずに量産ができるメリットがあるという。商品名GABAトマト=写真=として昨年9月からインターネットで販売されている。発売前には、提供してほしいとネットから申し込んだ農家や一般家庭など4000人に苗を無料配布した。

 ゲノム編集技術は働きを抑える遺伝子を切断する。トマトではGABA濃度を低下させる遺伝子をカット。問題は標的外遺伝子を壊す危険性が常につきまとうこと。厚労省の安全性の審査もない。
 GABAトマトと従来の品種が同時に栽培中に交雑する可能性がある。実際、交雑が起こり従来品種の方の栽培を断念した北海道の農家もある。遺伝子変異のトマトができることを心配したからだ。こうしたことから人体への悪影響を心配する声は少なくない。
 苗の配布は市民を利用した人体実験≠セと指摘する食品問題に取り組む民間団体までもある。北海道の自治体が苗受け取りを拒むのは当然だろう。
 元名古屋大学理学部助手で分子生物学者の河田昌東(まさはる)さんは「未知の部分を置き去りのまま経済優先で進めるゲノム編集技術は未来に大きな禍根を残す」と筆者の取材にこう警鐘を鳴らした(JCJ機関紙「ジャーナリスト」2021年12月25日号)。
 ゲノム編集食品には未解決の問題がある。それゆえとんでもない被害を引き起こす恐れがある。
 橋詰雅博
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2022年04月02日

【焦点】森元首相が暗躍$_宮外苑再開発 緑奪い高層ビル次々 ラグビーW杯・五輪も口実=橋詰雅博

                            
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                 再開発の予想図 

 「この一帯を再開発できたら、スポーツ施設とオフィスビルなどからなる都内有数の一大ゾーンができる」――伊藤忠商事東京本社(港区外苑前)の幹部社員が部屋のガラス窓から見える秩父宮ラグビー場や神宮球場などに視線を移しながらつぶやいた言葉を筆者は20数年過ぎた今でも鮮明に記憶している。
 伊藤忠や三井不動産、日本スポーツ振興センター、宗教法人・明治神宮などが事業主となった明治神宮外苑前地区の再開発案が都市計画審議会で2月に承認された。日本初の景観を守る風致地区に指定され100年近く緑のオアシス≠都民に提供してきた神宮外苑は、樹木が伐採され再開発で一変する。高さ190bと185bのオフィス・商業施設が入る高層ビル2棟や80bの宿泊・スポーツ関連施設ビル、60bのホテル併設の神宮球場、55bの秩父宮ラグビー場などが2036年までに建設される見込み。

国策と住民を退去

 引き金は国立競技場の建て替え。ラグビーW杯会場(建設が間に合わず実現できなかったが…)とオリンピックメイン施設という口実で、高さ制限など各規制が大きく緩和された。また都は「国策」を理由に都営霞ヶ丘アパートから強制退去を求めた三百世帯の大半は、16年1月までに別の都営アパートに移った。新国立競技場(高さ49b)の収容人数を8万に広げたのは、邪魔な霞ヶ丘アパートを取り壊すためといわれている。

展開は急速度で
 
 都が19年に正式公表したこの再開プロジェクトには「森喜朗元首相が深く関与している」と指摘するのは『亡国の東京オリンピック』の著者でジャーナリストの後藤逸郎さんだ。
 「森元首相が日本ラグビーフットボール協会会長のときの09年7月に19年ラグビーW杯開催が決定した。それ以降から物事が速いスピードで動き出した。10年末に都は国立競技場一帯のスポーツ・クラスター構想を発表。JOC(日本オリンピック委員会)は11年に20年オリンピックへの立候補をIOC(国際オリンピック委員会)に申請した。翌年の12年5月に当時衆議院議員の森元首相は都の佐藤広副知事、安井順一技監と議員会館で面談している。面談メモが都議会で暴露され問題になったが、私も情報公開請求で一部黒塗り資料を入手した。この時点で今の神宮外苑再開発案は固まっていた」(後藤さん)

采配するうま味

 面談メモのおよその中身は―。副知事と技監が神宮外苑再整備の概要を森元首相に説明。そして森は「(霞ヶ丘アパートの)住民の移転は大丈夫か?」と質問。副知事は「他の都住に移転してもらえるために国策として計画を進めていく」と答える。さらに森の「(オリンピック招致)が×になったらどうする?」の質問に、二人とも神宮外苑全体の再整備を前提に進めると応じた。最後に森は「すばらしいよ。あと15年は長生きしないと」と述べた。
 森元首相の動きについて後藤さんは「彼は文教族やスポーツ行政のドンとして国会議員時代以上の政治力を発揮してきている。だから『森さん、森さん』と人が寄ってくる。頼み事を受け入れ差配するというのは他には代えられないうま味だと思う。彼自身、権力そのものですから『オレのところに話を通すだろう』くらいに思っている」と話す。
 結局はラグビーW杯もオリンピックも国内最大級の再開発を促進するための道具≠ノ過ぎなかったのではないか。
 橋詰雅博
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年3月25日号
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2022年03月02日

【焦点】自治体AIは機能しているか 要領を得ない回答、安全脅かす 職員の代替には不安も=橋詰雅博

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自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)化の中核を担うAI(人工知能)技術は、職員に替わり自動応答するチャットボットを始めいろいろなところで利用されている。

運用の実態を調査
 都道府県別でAI導入率87%と最多(総務省2020年度調査)の愛知県豊橋市は、市民などからメールで寄せられた手続きや制度についての問い合わせの回答にAIチャットボット「トヨッキー君」=写真=を使っている。
 市のホームページからアクセスした地方自治問題研究機構主任研究員の久保貴裕さんは「トヨッキー君」に@「国民健康保険料と市民税と水道料金の3つを滞納し、全部を一度で支払えなくなった場合 どれを優先したらいいでしょうか」、A「マイナンバーカードはどうしても取得しなければなりませんか。取得しないと不利なことがありますか」―この2点を問い合わせた。
 回答は@「督促状が届きます。本来納付する金額のほかに延滞金が発生する場合もあります」。A「こちらのことでしょうか。マイナンバーカードを作る場合について マイナンバーカードの電子証明を発行・失効・更新したい」だった。
 要領を得ない回答をしていることについて豊橋市の説明は「AIだけで完結させることを想定しておらず、問い合わせした住民がその後、職員に直接アクセスして対話ができるとようにしている」というものだ。
久保さんは言う。
 「AIチャットボットは自治体窓口業務の目玉として導入しているはずだから問題があれば直ちにシステムを改善すべきです」

あわや惨事のミス
 AIが住民の安全を脅かす事態まで引き起こしたケースが静岡県浜松市であった。19年10月発生した台風19号に対応するため市役所は、在住ポルトガル人に向けてAIの自動翻訳機能を利用した避難情報をメールで知らせた。ところがAIは「高塚川周辺に避難勧告が出ました」とすべきところを、文法の解釈を誤り「高塚川に避難するよう勧告が出ました」と発信。市民団体から翻訳ミスを指摘されて訂正した市は「当日は土曜の夕方でポルトガル語に詳しい職員がおらず、自動翻訳を信用して配信してしまった」と弁明した。
 もちろんAI導入の成功例もある。滋賀県は会議で録音した音声をAIに送ると自動的にテキスト化するシステムを作り上げ、議事録作成時間を最大6割短縮させた。
 「減らした職員の代替手段としてAI技術を取り入れている自治体が多い。だがAIが十分に機能せず誤った発信を繰り返せば、住民は必要な行政サービスが受けられないことが起こり得る可能性がある」(久保さん)
 AI技術は完全ではない。職員が業務内容をチェックできる管理体制の確保が必要だ。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年1月25日号
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2022年02月12日

当世官僚事情 採用申込者が激減 国・弱者へのマインドなし 著しいモラルハザード進行 高収入の民間への転職増加=橋詰雅博

  国家公務員採用総合職(キャリア)試験への申込者数が激減している。2021年度は1万7411人と過去最低で、5年連続ダウン。ピークの1996年の4万5254人より2万8000人近くも減っている。キャリア官僚不人気≠フ主因は労働環境が悪いからだ。残業は過労死ラインの月80時間は当たり前の状態である。国会開会中ならば、国会議員へのレクチャーや資料作りに忙殺される。「月200時間の残業で休みが1回だけだった」とテレビに出演したコメンテーターの元官僚は暴露した。エリート官僚と言えば、東大出身者が思い浮かぶ。キャリア試験合格者のうち東大は2000年度では三分の一を超えていたが、21年度は19%程度まで減少した。

中途退職者増える
  霞が関には政府が唱える働き方改革は広がっていない。こうした状況の霞が関から逃れる中途退職者は増えている。20年は経済産業省の若手官僚が20人以上も退職し話題になった。報酬が高そうなITやバイオなど最先端企業に転職した人もいたそうだ。
 モラル低下も著しい。コロナ対策の家賃支援給付金など約1500万円を20代の経産省官僚2人がだまし取った事件は、知り尽くした制度につけ込んだ極めて悪質な犯罪だった。まさに国民への背信行為だ。
 官僚の思考もガラリと変わった。かつては「長時間残業をいとわず国や国民のために尽くす」という殊勝なマインドを持った人がいた。しかしそんな官僚はほぼいない。

竹中が空気変える
 元朝日新聞記者で政治ジャーナリストの鮫島浩さんが言う。
 「小泉純一郎政権の経済財政担当相として入閣した竹中平蔵(現パソナグループ会長)が霞が関の空気を一変させた。彼は官僚を引き立て出世コースに乗せた。竹中が主張する弱肉強食の新自由主義が官界に浸透し、滅私奉公的な考えは影を潜めた。多くの情報が集まる竹中に近づき高収入の民間などへの転職の道が開けるようになった。政治家にアゴでこき使われ、民間で働く大学の同期と比べ安い給与で深夜まで働かされる今のエリート官僚は、国家のためや弱者を救うなんて少しも考えていない。CEO(最高経営責任者)やどこかの企業の幹部ポストを狙っている。このため企業情報が入手しやすい規制改革の部署に行きたがる」
 政策立案のかなめである官僚の劣化は、国家にとって危うい事態ではないだろうか。
  橋詰雅博
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年1月25日号
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2022年02月01日

【焦点】19日のJCJオンライン講演者・辻元清美さんが参院選比例で出馬を表明=橋詰雅博

                        
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 19日(土)午後2時からのJCJオンライン講演会で講師を務める前立憲民主党副代表・前衆議院議員の辻元清美さんが、今夏の参院選挙比例区代表から立民候補者として出馬することを自身のYouTube「清美チャンネル」で1月31日午前表明した。辻元さんは落選後に多くの人たちと対話し、がんばれの声に励まされ出馬を決意した理由を4つ挙げた。

@永田町と人々暮らしがかけ離れており、本当に困っている人の声が政策に行きわたっていない、届いていない。黙ってられへんからそういう声を国会に届ける役割をもう一度果たしたい。
A夏の参院選は分かれ道になる。自公とその補完勢力の維新が議席を多数占めると、異論を切り捨てる危機感がある。右の方に偏り、国会が一色に染まってしまう。それを阻止するために戦う。天下分け目の決戦になる。
B強い野党をつくる。暴走に歯止めをかけるにはリベラル勢力の力が強くなければならない。もう一つの対立軸を示す。
C女性議員を増やしたい。衆議院では女性議員の割合は10%を割った。これまで多くの女性に選挙への出馬の声をかけてきた。1回落選してもチャレンジし続ける。国政に復帰し自ら先頭に立ち女性議員を増やす活動をしていく。

 辻元さんは「初当選から26年目。これまで歴代12人の首相と論戦してきた。野党が厳しく政策を点検しなければ問題解決ができない」とも語った。
 仲間が作った『辻元清美の決意 やっぱり黙ってられへん!全国の声を国政へ』と書かれたプラカードを持ち地元の大阪を始め全国を行脚する予定。会見で涙も見せた辻元さん、未来を切り開くため御用聞きのつもりでやると述べた。
 橋詰雅博
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2022年01月21日

【焦点】五輪選手村訴訟、不当判決と高裁へ 25日に報告集会開く=橋詰雅博 

                           
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          原告団が中心の「晴海・正す会」1月17日号ニュース
 東京地裁が昨年12月23日に下した「譲渡価格は適正」という不当判決に対して五輪選手村訴訟の原告団は、25日(水)午後3時から江東区文化センターで判決内容の報告と控訴審に向けた意思統一を図る集会を開く。
 この訴訟は、東京・晴海の選手村用地を東京都がデベロッパーに投げ売り≠オたとして都民32人が小池百合子都知事らに周辺地価との差額約130億円を請求するように都に求めたものだ。
 住所側の訴えを退けた判決について、「違法性を認めず、極めて不当な判断」と批判した原告代理人は声明で問題点をこう指摘した。
 「脱法的な都市再開発制度が許されるならば、自治体の財産の直接譲渡行為では、地方自治法の規制をすり抜け、自由な価格で売却できることになり、再開発事業制度の公共性も、土地価格の公平性を担保する不動産鑑定制度も骨抜きになる」
 また都とデベロッパーとが事前に綿密な協議を行った記録を都に情報公開を求めたが、「破棄済みで公開できない」と拒否したことについて、公正であるべき行政が担保されていないと訴えた。
  報告集会に先立ち原告団と弁護団が12日行った会議では、裁判官の判断に多くの疑義が出た。
 建設工事費をわざと高くするため地下駐車場建設に関して明らかに事実誤認がある、官製談合について被告側証人の嘘と分かるような証言をもとに談合はなかったとする判断など多岐にわたっている。
 4年間審理された地裁から五輪選手村訴訟の舞台は東京高裁に移る。
 橋詰雅博
                          
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2022年01月06日

ゲノム編集食品ラッシュだが 未知の部分置き去り禍根残す恐れも=橋詰雅博

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 本紙10月号記事でゲノム編集技術によって作られたトマトと肉厚マダイが人体に有害の可能性があると指摘したが、ゲノム編集食品の開発は止まらず大学などが市場に続々と参入中だ。
 京都大発ベンチャー企業「リージョナルフィッシュ」は肉厚マダイに続き急速成長させたトラフグ販売=写真=も開始した。
大学や研究機関などが開発中の食品はほかにもある。
 ・芽に含まれる天然毒素が少ないジャガイモ=大阪大と理化学研究所
 ・生んだ卵にアレルギー物質が少ないニワトリ=産業技術総合研究所
 ・収穫量が多いイネ=農研機構
 ・品質低下を起こしにくい小麦・大麦=岡山大など
 ・同量のエサで大きく育つ豚=徳島大発ベンチャー「セツロック」 
 ・攻撃性を弱め共食いしにくいサバ=九州大など
 ・糖度が高いトマト=名古屋大・神戸大など
  これらはやがて販売される予定だ。ゲノム編集食品に詳しい元名古屋大学理学部助手で分子生物学者の河田昌東さんは「世界で最初のゲノム編集食品は、2年前に販売されたコレストロール値を下げる米国の大豆油です。そのあと日本のトマト、肉厚マダイ、トラフグが続いた。さらに相次いで商品化が見込まれるので、日本はゲノム編集食品の最も多い国」と語る。
 ゲノム編集は、特定の遺伝子の塩基配列を切断しその遺伝子の機能を失わせる技術だ。しかし標的外遺伝子の破壊などが問題視されている。にもかかわらずゲノム編集食品は安全性の審査がない。
 「開発者は販売の1年ほど前から資料などを提出した厚労省専門調査会と話し合っている。ここで『厚労省に届け出てOK』と判定されると販売に。ところがこの事前相談≠フ内容はほとんど非公開です。外部から検証ができず、これは問題です」(河田さん)
 河田さんは警告する。
「今の状況は原発の電力が福井県の若狭湾から大阪万博に送られた1970年の時とよく似ている。当時、すでに原発事故や放射能廃棄物問題が指摘されていたが、政府や電力会社は『事故は起きない』『廃棄物は処理できる』と強弁した。それが嘘だったことは証明済み。未知の部分を置き去りのまま経済優先で進めるゲノム編集技術は未来に大きな禍根を残す恐れがあります」
 橋詰雅博
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年12月25日号

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