2024年06月11日

【焦点】IT通でなくても生成AIでウイルス作成、サイバー攻防のイタチごっこ始まる=橋詰雅博

 対話型生成AIを悪用してコンピューターウイルスを作成した25歳の男が5月末に警視庁サイバー犯罪対策課に逮捕されて話題になった。生成AIによるウイルス作成容疑での摘発は全国で初めてだった。
 使われたのは検索すれば出てくる無料の3種類のAIで、「ランサムウエア(身代金要求型ウイルス)を作って楽に金を稼ごうと思った」というのが動機だ。

 全国で初の摘発というのもさることながらAI業界が一番ビックリしたのは、犯人は、AIの専門知識がないのに、自宅のパソコンやスマホを活用して容易にウイルスの設計図を作成したことである。
 IT業界をサポートする大手ソフト会社のサイトは、生成AI技術と普及がもたらしたこの犯罪の影響をこう指摘している。@サイバー攻撃を巧妙化させる、Aサイバー攻撃の頻度と精度がアップする、BITに精通していなくても低コストで簡単にサイバー攻撃用プログラムがつくれるので、犯罪に参入しやすくなった―。

 では企業や組織など防御側はどうすればよいのか。こちらも生成AIを活用すれば防御技術を進化させることができる。脆弱性や弱点の発見が可能で「先手を打つ形で強力な防御体制を構築できる」としている。
 使う人の指示や問いかけに応じ、大量のデータで学習した内容をもとに文章、画像、音声などを編み出す生成AIの出現で、サイバー攻撃とそれに対する防御のイタチごっこが本格的に始まった。
posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年06月06日

【焦点】知る権利とプライバシー侵害 経済安保新法 秘密保護法と一体運用 身辺調査拒めば不利益も=橋詰雅博

  特定秘密保護法(2014年施行)の経済安保版といわれる「重要経済安保情報保護法案」は、国会の情報監視審査会での報告・公表など多少の修正が加えられただけで成立。この経済安保新法は国民の知る権利を制限し、秘密情報にアクセスできる権限がある人は身辺調査される。秘密保護法の一体運用で監視統制はさらに強まる。

恣意的に件数増大

 特定秘密保護法は、防衛・外交・スパイ防止・テロ防止の4分野のうち安全保障に「著しい支障」がある政府保有情報は特定秘密に指定。その数は昨年末までで751件。経済安保新法はこうなる。電気、ガス、鉄道、航空、放送、通信といったインフラ分野、宇宙開発、サイバー攻撃、AIなど先端技術分野、半導体、鉱物などの重要物資分野などの中で安保に「支障」がある政府保有情報は「重要経済安保情報」として秘密指定される。
kaito.JPG

 件数は「初年度は数十件から100件程度」と高市早苗経済安保相は国会で答弁したが、秘密指定の定義があいまいで恣意的なものが入り件数は膨れ上がる可能性がある。同法案に詳しい秘密保護法対策弁護団事務局長の海渡双葉弁護士=写真=は「秘密保護法では安全保障に『著しい支障』がある情報を特定秘密にしたが、経済安保新法は『支障』だけ残し、『著しい』を外した。これは秘密指定の範囲を相当に広げる狙いがある」と指摘した。秘密指定の増大は国民の知る権利が狭められる。
 特定秘密情報を取り扱う人物は「適性評価」調査の対象だ。その適性評価対象者約13万人のうち9割超は防衛省、自衛隊、防衛施設庁の公務員が占めた。  適性評価(新法ではセキュリティー・クリアランスと名付けた)調査は新法の秘密情報に接する人物も対象。経済分野ゆえに民間人が多くなる。国が秘密情報の取り扱いを認定した企業、大学、研究機関などで働く人たち。

数千の民間人調査

 内閣府が主導する適性評価調査の手順はこうだ。企業など事業者は対象者の同意を得た候補者名簿を所管する省庁に提出。内閣府は30ページの質問書を対象者に配布する。その項目は@家族やテロとの関係、A犯罪や懲戒の経歴、B情報の取り扱いに関する違反行為、C薬物乱用、D精神疾患、E飲酒の節度、F経済状況―。配偶者や子ども、父母や兄弟姉妹、配偶者の父母や子ども含む家族関係、同居人、国籍、借金の理由と総額、精神疾患のカウンセリング歴・症状など7項目は詳細に書くことが求められる。面接もあり質問書をもとに内閣府担当者は根掘り葉掘り尋ねる。対象者に内緒で上司も聞かれる。身辺調査された個人情報は役所に握られる。目的以外に利用しないというが、外部からは分からない。情報が洩れればプライバシー権が侵害される。
 身辺調査の結果をもとに適性の有無を評価した担当省庁は事業者と対象者に「合否」を伝える。
初年度の身辺調査対象者は「数千人」と高市経済安保相は言っているが、大きく増えるかもしれない。重要情報を漏洩した違反者は5年以下の拘禁刑などで処罰される。

人生設計狂うかも

 これまで身辺調査をめぐり問題は浮上していないが、新法では大勢の民間人が身辺調査の対象になる。問題は起きないのか。
「候補者名簿に載せることに同意しない、調査を拒む、適性がないとされたら働いている今の部署から異動になる。出世コースから外れた、居づらい、合わない仕事を押し付けられるなどの理由で退職もあり得ます。不利益な扱いを受け人生設計がくるう。人権侵害です」(海渡弁護士)
 新法の恣意的な利用で「第二、第三の大川原化工機事件(警視庁公安部がでっち上げたと東京地裁は被告の社長らを無罪とし、東京都に賠償を命じたが、原告、被告とも控訴)は起こり得る」と海渡弁護士は警鐘を鳴らす。
これから何をしたらいいのか。
「反対運動を拡大させることが重要です。(法成立後、閣議決定する)運用基準についてパブリックコメントが実施される。パブコメに問題点を書き込む。世論の強い反対によって使いづらい法律に変えることはできます」(海渡弁護士)
 諦めてはダメだというのだ。
        JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年5月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年06月01日

【焦点】旧統一教会「損害賠償」訴訟 4件すべて敗北 解散命令請求に追い風=橋詰雅博

                
arita.JPG
     
      左から有田芳生、鈴木エイト、青木理の3氏 
 テレビ番組での発言で名誉を傷つけられたとして旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)が弁護士やジャーナリスト、放送したテレビ局を相手に起こした22年夏から秋の統一教会めぐる多額の損害賠償請求(スラップ訴訟)で、教団は一部高裁判決を含め4件すべてで敗訴した。

教団の訴訟とは

 教団が4連敗した訴訟はこうだ。
★TBS「ひるおび」(2022年9月)、八代英輝代議士が発言した「外形的な犯罪行為」を教団は問題視。23年6月30日「消費者被害が生じたのは真実。意見、論評の域を逸脱するとは言えない」と違法性を地裁は否定し、教団の訴えを棄却した。12月の控訴審も教団は敗訴。
★読売テレビ「ミヤネ屋」(22年9月)に出演した木村健太郎弁護士が「司法の判断では、違法な活動をしている違法な組織と認定済み」などと発言したことに教団は提訴。今年1月25日「違法性がない」と地裁は棄却した。
★日本テレビ「スッキリ」(22年8月)でジャーナリスト有田芳生氏が教団について「霊感商法をやってきた反社会的集団だと警察庁も認めている」と述べた。3月12日の判決は名誉棄損に当たらないとした。教団は25日控訴した。
★読売テレビ「ミヤネ屋」(22年7月)で紀藤正樹弁護士は「お金がないから、信者に売春させた事件まである」とコメント。3月13日の判決は「前提事実の重要部分は真実。論評の域を出ない」と認定し、被告の紀藤弁護士が勝訴した。教団は25日控訴。

最高裁初審理も

 さらに教団にとって不利な材料が相次ぐ。昨年末成立の財産流出抑制を目的とした特例法に基づき教団は「指定宗教法人」に。
質問権行使に回答を拒んだとして文部科学省が教団に過料を科すように求めた裁判では、東京地裁は教団の田中富広会長に過料10万円の支払いを命じる決定を3月26日に出した。教団は決定を不服として4月8日東京高裁に即時抗告。
また、長野県の元信者やその家族が約1億8000万円の賠償を求めている裁判で、最高裁は6月に弁論を開くことを決めた。教団の勧誘や献金をめぐる最高裁の審理は初めてで、訴えを退けた一審と二審の判断が見直される可能性が高い。
ひるまずに闘う
教団との深い関係を断ち切れない自民党の萩生田光一衆院議員を批判し2200万円を求められた有田裁判では、発言の趣旨は@教団は霊感商法をやってきた、A反社会的集団、B警察庁も認めている―。これが教団の社会的な評価を貶めるかが争点だった。
3月12日の勝訴後の報告集会で弁護団は「問題の部分について地裁は、萩生田議員は教団ときっぱり手を切るべきだという有田発言の一部にすぎず、名誉棄損ではないとした。すばらしい判決でした。片言隻句に名誉棄損で言論を封殺しようとする教団のやり方に対する防波堤の役割を果たせた」と強調した。
有田氏はこう語った。
「わずか8秒の発言をとらえて教団は訴えたが、霊感商法、反社会的集団、警察庁も認定の3つを裁判所があらためて認める判断をしてくれた。私の発言が真実であることを証明するため刑事や民事の判例など1000ページを超える資料を提出したおかげで見事な勝利をおさめることできた。今後もひるむことなく反社会的性格の教団と闘います」

萎縮は影響深刻

 支援するジャーナリストの鈴木エイト氏は「教団信者から2件のスラップ訴訟を起こされている。自分にもこういう判決が出ればいいなと思う」「日本にも(米国のような)反スラップ訴訟の制定が必要です」と述べた。
また、ジャーナリストの青木理氏は「しごく当然な判決」としたうえで問題に真正面から向き合わない今のメディアの姿勢を嘆いた。
「新聞社やテレビ局のほとんどはクレームつけられる、訴訟を起こされるのを嫌います。問題が起きたら組織としてどう対応するか会議などで時間を相当取られ、面倒なことになる。だから文句をつけられそうな、訴訟に発展しそうな問題はさわらないという情けない状態です。萎縮によって言論の自由が失われる深刻な事態を考えなければと思います」
 これからの裁判の進め方について有田氏は「(反撃に向けて)反訴したいと思っている」と、5人からなる弁護団に呼びかけたところ「了解した」と返事がきた。
 弁護団は判決が、文科省が東京地裁に請求し審理が進む教団への解散命令可否判断にも影響し追い風になると見ている。
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年4月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年05月30日

【焦点】成立した炭素貯蔵事業法はカーボーンニュートラルの切り札か。23年JCJ機関紙6月号記事で「実現性危うい」と指摘=橋詰雅博

 脱炭素化の有力手段とされる「二酸化炭素貯蔵(CCS)事業法案」が今国会で成立した。マスコミは切り札と持ち上げるこのCCSは、今後10年間で官民合わせて4兆円を投資する。果たして本当に実現性があるのか、掛け声倒れになる危険性はないのだろうか。
 炭素回収貯蔵の略称である「CCS」は、製油所や火力発電所、工場などから排出される二酸化炭素(CO2)を分離・回収し、液化したものに圧力かけて地中や海底に埋め込む。これを実現するには地下1`より深く、貯留できる地層があり、上部にCO2が漏れ出すのを防ぐ地層があるなどを備えていることが条件とされる。

 政府はすでに電力、鉄鋼、石油など大手企業が手掛けるCCS7事業を選定した。国内では北海道・苫小牧地域、東新潟地域、日本海側の東北地方・九州地方、首都圏の5カ所。安価にできると見込むマレー半島とオーストラリアなど大洋州への輸出も2件含む。CCS長期ロードマップ(22年版)では、事業を30年までに本格稼働させて、その後20年間は毎年600〜1200万dずつ貯蔵量を増やす計画だ。50年時点で年1・2億から2・4億dの貯蔵が目標。現在の排出量の1〜2割に相当する。

 「CCSなくして脱炭素(カーボンニュートラル)なしと」経済産業省はうたうが、事業を危惧する声は少なくない。この問題に詳しい工学博士の松田智氏は昨年6月25日号本紙にこうコメントを寄せている。
 「CO2の固定・貯蔵にはコストがかかるし、電力も消費するのでCO2排出がさらに増える。大口発生源の火力発電所で実現できていないのは、CCS方式を使うと発電単価の上昇が避けられないからです。CO2が洩れない石油・天然ガスの廃坑とか堅ろうな場所が必要です。CCSの実現化は極めて困難です。経産省の資料ではコストや埋め立て規模などは明記されていません」
 絵に描いた餅になるかもしれないというのだ。巨額な税金の無駄遣いになり得る可能性がある。
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年05月29日

【焦点】経済安保新法は民間を巻き込み「戦争への国づくり」が狙い=橋詰雅博

 今国会で成立した「重要経済安保情報保護法」は特定秘密保護法の経済版だ。
その肝は「セキュリティ・クリアランス(SC)」と名付けた適性評価制度で、政府が指定した秘密情報を取り扱う人にその適性があるかどうか評価する仕組み。実は秘密保護法ですでにこの適性評価が導入されており、その対象は防衛省、自衛隊など公務員が9割超を占めていた。しかし経済安保新法では経済分野ゆえに多くの民間人が身辺調査されて評価を受ける。秘密保護法と一体運用で監視社会が強化される。
 身辺調査は内閣府に置かれた部署が担当する。内閣情報調査室や公安調査庁、公安警察などが調査に当たると見られている。5月11日付新婦人しんぶんに寄稿した東北大名誉教授の井原聡氏は「調査の基準が明らかになっていない」と前置きしたうえでこう指摘する。

10年監視対象
 本人に関しては犯罪及び懲罰の経歴、薬物の濫用及び影響、精神疾患、飲酒の節度、借金など経済状況など詳しい報告が求められる。犯罪歴は法務省から、薬物や精神疾患は病院などのカルテ収集、金融業者から信用状態を調査される。嘘がないか、変更がないかなどSCの有効期間10年にわたり監視の対象になる。
 さらに「政府を批判する運動や団体に加わっていないか、組合活動などでの言動も調査の対象になるでしょう」「承諾なしに家族(配偶者、事実上の婚姻関係と同様の事情にある者)父母、子及び兄弟姉妹、それ以外の配偶者の父母及び子、同居人の氏名、生年月日、国籍、住所を報告せよというのです」

目的外の使用も
 思想・信条・内心の自由の侵害に関わる徹底した個人情報が内閣府に収集管理される。個人情報保護法ではこうした調査内容は「要配慮個人情報」にあたり、その取扱いは特に配慮を要するとされている。しかし、目的外使用を監視する機関はない。
 米国には大統領インテリジェンス問題諮問委員会、連邦プライバシー・市民自由監視委員会、首席監察官、国家情報長官室自由保護管、全米アカデミーなど監視システムがある。経済安保新法にはこうしたシステムは欠落している。これでは労働者の権益は守られないというのだ。
 米国の強い要請で取り入れられたSC制度は「企業も関わる兵器の国際共同開発・製造・整備・売買、米軍と自衛隊の一体的な運用など軍事情報が洩れないため」という。そして「戦争をする国づくりための新法」と結論を述べている。
 経済安保新法の裏面にはこうした政府の最終目的があることを知っておくべきだ。
posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年05月25日

【焦点】健康被害急増の紅麹事件、安倍政権の規制緩和が元凶=橋詰雅博

 小林製薬が独自に開発した原料「紅麹」を使った機能性表示食品(サプリメント)を服用した人の腎疾患、むくみ、倦怠感などの健康被害は拡大の一途だ。厚労省によると、「紅麹コレステヘルプ」などをのんで被害を訴えて病院で受診した人は延べ1594人、276人が入院し、5人が死亡した(5月19日時点)。ただ死亡と服用の因果関係は不明とされる。

 被害の広がりを受けて消費者庁は機能性表示食品のあり方をめぐり医療や食品衛生などの分野の専門家からなる検討会を4月中旬に立ち上げた。関係団体へのヒアリングを重ね、これまで5回会合を開き、制度見直しの提言案をまとめた。それによると大きな柱は3つ。@健康被害について、製品に起因する疑いが否定できない場合、医者は症状の軽重を問わず消費者庁に報告、A生産・品質管理の厳格化では医薬品に義務付けられている製造時の管理基準(GMP)などを参考に一定の基準を設け、企業は順守状況の監視体制を行う、B国が安全性を審査する「特定保健用食品」(トクホ)との違いや医薬品との飲み合わせなどに関する情報を製品パッケージに記載―。
 消費者庁はこの提言を踏まえて今月末までに内閣府令改正に向けた対応策をまとめる。

 科学的な根拠や安全性の情報を企業が消費者庁に届け出れば販売できる機能性表示食品は2015年に導入された。ここで忘れてはならないのは、安倍晋三政権がこれを解禁に踏み切ったことだ。米国でのサプリメント市場の急拡大を受けて日本の経団連は機能性表示を認める制度の早急な検討を05年に要求。財界からの要請に応えるべく安倍政権は徐々に規制緩和した。農民連食品分析センター所長の八田純人氏は「機能性表示食品のルールブックつくるとき、消費団体の研究者たちが(健康被害)を懸念したが、政府に押し切られた」(新婦人しんぶん5月11日付)という。

 米国では機能性表示食品オキシエリートプロを服用した人が急性肺炎を起こす健康被害が13年に起きた。死者も出てルールを厳しくすべきと欧米で高まり、日本でも問題視した。
 しかし「世界で一番企業が働きやすい国」を掲げる安倍政権は、サプリ市場の拡大に走った。調査会社インテージによると、機能性表示食品のサプリ市場はこれまで急成長を続け23年の年間販売額は491億円と17年の3倍超。今年も3月までは毎月の販売額は前年同月比1割超のペースで増えていた。だが3月下旬の紅麹事件の発覚で、売り上げが急減した。
 これからサプリ離れに拍車がかかりそうだ。安倍政権の罪は重い。
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年05月20日

【焦点】日本人女性の海外出稼ぎ売春が急増する3つの理=橋詰雅博

 今年に入って2件目の日本人女性を海外で売春させる犯罪グループが警視庁保安部に摘発された。売春あっせん容疑で5月9日に逮捕された3人は、約3年間で200人〜300人の女性を米国、オーストラリア、カナダなどの売春組織にあっせんし紹介料などとして総額2億円を得ていた。4月に逮捕された4人は2021年6月から3年間で同じく200人から300人の女性を米国、オーストラリア、カナダにあっせんし2億円売り上げていた。どちらも立ち上げた求人サイトを通じて女性を募っていた。

 警視庁が摘発に動いたきっかけは、米税関・国境取締局(CBP)や国土安全保障省などから昨春ごろ情報を提供されたからだ。日本人女性の違法な出稼ぎ売春が目に余るためCBPなどが対応したとみられる。今では「観光目的で来た」という日本人女性が一人で米国に入国しようとした場合、売春目的ではないかと疑われ、警察官から「なぜ一人で来たのか」「職業は何なのか」など質問攻めにあったうえにスマホの中身も徹底的に調べられる。何時間も拘束されて、疑いが晴れないときは入国を認められず、強制帰国させられるケースが少なくない。米当局ほど審査は厳しくないが、オーストラリアやカナダでも同じような対策をとっている。売春目的の渡航だと判断されたら米国では、日本の入管法にあたる移民国籍法に基づき以後10年間入国できなくなる。また入国後に摘発されたら不法就労となり国外退去となる。

 ここにきて日本女性の海外への出稼ぎ売春が増えてきたのはなぜなのか。5月11日に日本ジャーナリスト会議(JCJ)のオンライン講演に出演した『出稼ぎ日本人風俗嬢』(朝日出版新書)の著者・松岡かすみ氏は「海外出稼ぎ売春は10年ほど前から少しずつ見られた」としたうえで、コロナ禍を経て増加した理由を3つ挙げた。
 まず長引く不況と急速な円安による物価高などの影響で、日本の風俗業界では思うように稼げなくなった。海外の風俗店などの料金の方が日本と比べて何倍も高く、女性の取り分も多い。次に性の売買がカジュアル化し、貞操観念が薄くなり積極的に売春の世界に足を踏み入れる人が増えている。3つ目はSNSを始めデジタルテクノロジーの発展により個人が仕事≠直接受けられる環境が整ってきた。
 今後どうなるのかについて松岡氏は「この傾向は強まるだろう」と予測。出稼ぎ売春の加速は日本人のビザ発給の厳格化、現地での深刻な被害が表面化する危険性があると指摘した。

 「失われた30年」における日本経済の停滞のひずみが出稼ぎ売春に拍車をかけている。
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年04月26日

【焦点】どうなっている憲法審査会の動向。議員任期延長を突破口に危険な改憲に突入、戦争する国づくりへ=橋詰雅博

  自民党の派閥裏金事件に端を発した「政治とカネ」の問題。連日大きく報じられているが、見過ごされているのは衆議院憲法審査会の動向だ。メディアはほとんど報道しないが、実は自民、公明、維新、国民民主などが一体となり改憲への作業を着々と進めている。
 その突破口となっているのは国会議員の任期延長論だ。任期延長論と改憲、一見無関係に見えるが、大災害など自然災害やパンデミック(感染症の世界的大流行)を口実して、国家有事・武力攻撃(戦争)事態が起こったときも、適正な選挙の実施が困難と予想されるので、内閣の判断で半年又は1年(再延長ではそれ以上)任期延長を認めるよう憲法を変えようというものだ。自民党の中谷元筆頭幹事は、具体的な条文起草作業機関の設置を昨年12月に提案している。

 改憲問題対策法律家6団体連絡会事務局長の大江京子弁護士はその本質をこう述べている。
 「国会議員の任期延長論は、憲法に武力攻撃(戦争)を明記し、内閣の恣意的な判断で、民主主義の根幹であり、国民主権原理に基づく基本権である国民の選挙権を制限(停止)できるとする改憲です。非戦の憲法に堂々と『戦争』が書き込まれることとなり、国民主権と平和主義に大きな例外を認めるものです。(中略)戦争できる国づくりの一環という本質を持ったものです」(2024年4月20日新婦人しんぶん)。

 日本では戦前「選挙を行うと挙国一致体制整備に疑いを生じさせる」という理由で1941年(昭和16年)2月に衆議院選挙が1年延期された。その間に国民の抑圧を可能にした国防保安法や治安維持法が制定改正され、反戦論を封じ込めた。その年の12月に米国との太平洋戦争に突入した。
 22年末に安保3文書改定(防衛費の大幅増額や敵基地をたたく反撃能力保有など盛り込む)を閣議決定し、憲法9条に基づく専守防衛の基本を捨てた岸田文雄内閣は、バイデン米政権の意向に沿い対中国と戦う態勢を進めている。

 自民党は国会議員任期延長を憲法に盛り込み、最終的に9条2項(陸海空軍その他の戦力は保持しない。国の交戦権は認めない)の改憲を狙う。国会議員任期延長改憲はその布石と大江弁護士は見ている。
 国民の知らぬ間に危険な改憲すなわち戦争する国づくりが間近に迫る。いまこそ自由や平和な生活を奪う「軍拡・戦争準備」に断固反対の声を上げなければならない。
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年04月22日

【焦点】ガザで実証済みAI兵器 イスラエル新興輸出へ 民間人犠牲者の急増必至=橋詰雅博

 AI技術先進国のイスラエルでは新興企業が自ら開発した各種AI兵器の輸出に乗り出している。これらの兵器はパレスチナ自治区ガザでハマスと戦闘を続けるイスラエル軍に提供したもので、実証済みであることがセールスポイントだ。
 例えばスマートシューター社の代表製品は、標的を自動識別する装置。イスラエル軍は「ハブソラ(福音)」と名付けており、英陸軍は小型のものを小銃に装着してドローン撃墜する訓練を行っていると英BBCは報じている。

 空爆・砲撃の標的を自動的に数多く設定する「ハブソラ」はどれほどの威力なのか。イスラエルが「鉄の剣」作戦と名付けた今回のガザ戦争について1月13日JCJオンラインで講演した元朝日新聞記者の中東情勢ウオッチャー・川上泰徳氏はこう語った。
 イスラエルネットメディア「+792マガジン」の調査報道によると、イスラエルがガザを攻撃した過去の事例では、08年の1日平均標的数は155カ所、14年は122カ所、21年136カ所だったが、23年は429カ所。過去3回の1日平均138カ所に対して今回はその3・11倍にもなる。
 情報部員は「数万人の情報部員では処理できなかった膨大な量のデータを処理するハブソラはリアルタイムで標的を示す」「ハマス幹部への攻撃の巻き添えで許される民間人の死者は数百人にまで増加した」と述べた。
 
 この結果、どうなったか。世界保健機構によると、08年、14年、21年の女性・子どもの死者は38%から41%で、非戦闘員の男性が60%に対して23年は女性・子どもの死者は69%に達し、男性が30%で、過去3回と逆転している。

 ハマスを「人間の顔をした動物」(ガラント国防相)ととらえるイスラエルのガザ攻撃は民間人も対象にした「ジェノサイド(集団殺害)だ」と川上氏は断罪した。
 AI標的システムの拡大は紛争地での民間人の犠牲者を大きく増やすことになるだろう。

posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年04月01日

【焦点】「セクシー田中さん」事件で注目 著作者人格権奪う世田谷区 見直し求め要望書 保坂区長 対話拒否=橋詰雅博

谷口1.JPG
          支援者と記者会見する谷口雄太氏(右端) 

 原作者で漫画家の芦原妃名子さんが自死(享年50)に追い込まれたドラマ「セクシー田中さん」事件は、出版元の小学館、映像化した日本テレビを巻き込むなど大きな社会問題に発展している。原作に忠実にという作者の意向が脚本に十分に反映されなかったことが自死の主因とみられる。ここで浮かび上がったのは「著者が待つ絶対的な権利『著作者人格権』について周知徹底し、著者の意向は必ず尊重され、意見を言うことは当然のことであるという認識を拡げることこそが再発防止において核となる部分」と第一コミック局編集者一同の声明(2月8日)が指摘した著作者人格権だ。

譲渡できない権利

 財産的な利益を保護し譲渡が可能な著作権と異なり、著作者人格権は作者の許諾を得ず、無断で作品を改変することを禁止した譲渡ができない権利と著作権法第59条で定める。
 この著作者人格権問題で思い出すのは東京・世田谷の区史刊行を巡る区と大学教員の対立だ(2023年5月25日号本紙で既報)。区史編さん委員を委嘱された中世史部分を担当する青山学院大学文学部史学科準教授・谷口雄太氏=は、区から執筆条件として「著作権譲渡(無償)と著作者人格権の不行使」を規定した契約書締結を23年2月に求められ反対したところ3月末に委嘱を打ち切られた。
 谷口氏の支援とよりよい区史刊行を目指した区民らが今年1月に立ち上げた「世田谷区史のあり方ついて考える区民の会」は、著作権と著作者人格権を奪う契約書の見直しを求める要望書を2月27日に保坂展人区長に提出した。
 発起人のジャーナリスト・稲葉康生氏は「歴史学者に著作者人格権の不行使を求めるのは、研究と執筆にリスペクトを欠くだけでなく、研究内容の改変、改ざんを可能にする。研究成果への信頼が毀損されかねない」と区のやり方を批判した。

学者生命奪われる

 芦原さんの自死について谷口氏は「自分が思いを込めて作ったものが同意なく、改ざんされるのは耐え難い。作品にキズをつけられたような気持ちになり精神的にショック。同じ作り手の立場としてそう思いました」と語った。
 著作者人格権の不行使に反対する理由を谷口氏は2点あげた。「一つ目は区に中世吉良氏の専門家はいません。デタラメなものに書きかえられる恐れがある。学術的な正当性が担保されていない」「二つ目は私の名前でデタラメな内容の区史が出たら名前にキズがつく。学者生命が脅かされる、奪われかもしれません」
 著作権譲渡に対して「私個人は無償でもいいが、(区史執筆では)経済的に余裕がない若い研究者や大学の非常勤講師の方もいます。無償譲渡見直しを求めるのは妥当です」と谷口氏は述べた。

準備号が尾を引く

 今回の騒ぎは谷口氏が執筆した区史刊行の準備号が発端だ。著作権と著作者人格権の両方を侵害したとして区に抗議した。これが尾を引いたのか区は2つの権利を外す契約書を配布した。
「セクシー田中さん」事件は、著作者人格権をないがしろにすれば著作者の命を奪うほど重い問題ということを明らかにした。
 これを踏まえ要望書では保坂区長との対話も求めたが、世田谷区は、話し合いはできないと5日、区民の会に伝えた。
「熟議」を大切にするという保坂区長、これでは看板倒れではないか。
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年3月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月27日

【焦点】台湾有事「基本的にはない」中台統一なら一国両制で 台沖そっくりな立ち位置 大西広氏がオンライン講演=橋詰雅博

 1月の台湾総統選で勝利した民進党の頼清徳氏が5月に新総統に就任する。中国とは距離を置く民進党政権は葬英文前総統の8年を含め12年続く。台湾統一を掲げる中国の習近平国家主席はどう動くのか。JCJと日本AALA(アジア・アフリカ・ラテンアメリカ)連帯委員会が共催した3月2日のオンライン講演で台湾選挙を取材してきた慶応大学・京都大学名誉教授の大西広氏=写真=が米中対立の狭間で揺れ動く台湾の状況や「中台統一」などを語った。
                     
大西氏.png
    
 最大の関心事である中国と台湾の戦争の有無について「基本的にはない」という大西氏は「中国の何十ページにも及ぶ長い台湾政策の最後の一行に『統一』が書いてあるだけです。『武力行使も辞さず』と日本のマスコミは報じているが、中国はやりたくない。台湾を武力統一した後、うまくいかないは誰の目にもハッキリしている」と言い切った。
 とはいえ中国が一方的に軍縮したら、台湾は独立に走る可能性がある。日米をけん制するためにも軍縮はできない。台湾が独立宣言した場合、平和的統一は放棄するだろう。

カギを握る民衆党

 総統選と同時に投開票が実施された立法院(一院制で国会議員の定数113人)選挙では、与党・民進党も最大野党の国民党も過半数に届かず、第3政党の民衆党が8議席を獲得。結局、民衆党が議会でキャスティングボードを握る。そこまで議席を伸ばすことができたのは若者の支持を得たからだ。外交はひとまず置き、内政に的を絞った。選挙権を18歳に引き下げる、後の世代に負担を回す国債増発反対など若者向け政策やSNSを駆使した選挙戦が受けた。「20から30代の票数410万のうち233万を民衆党が獲得した。若者や社会的な弱者を裏切れないポジションに達した。未知数という評価もあるが、期待できると楽観視している」というのが大西氏の見立て。また原住民(先住民を指す)にも6議席の枠を設けている台湾の民主主義は十分に機能していると分析した。
oonisi.JPG
1月13日の投開票前日の民進党大規模集会、香港の民主派の旗「時代革命」やウクライナ国旗もみられた

50年日本が支配
 台湾は大陸に沖縄は日本本土に「不信感」を持っている点で「台沖」は似ていると指摘した。
「沖縄は第二次大戦で本土の盾として米軍と戦い多大な犠牲者を出したにもかかわらず米軍基地を押し付けられ我慢を強いられている。好き勝手な本土と見ている。台湾は1895年に切り捨てられた(日清戦争で戦況が不利になった清国は台湾の日本割譲を認め、その後50年間日本は植民地支配した)。いまさら中国の一部という主張は好き勝手な言い分と見る。台沖は立ち位置がそっくりです」(大西氏)
 良心的な中国人と知り合いが多いという大西氏は「そういう人でも日本に蹂躙されたのは軍事力が弱かったので平和のため自国の軍事力の強化は欠かせないと言います。反論はできないですよ、日本人は」と日本の罪状に言及した。

福建省軍撤退を

 中国による台湾統治は1980年代提案した「一国両制」が基本だとする大西氏はさらに2つ提案した。「中国は台湾海峡に面する福建省の軍隊を大幅に撤退させる」「台湾を外交権持つ特別自治区とし、国連にも加盟させる。ただし独自の軍隊は保持させない」。
 こういう形で「中台統一」が実現できればいいが……。
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年3月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月25日

【焦点】著作者人格権奪う世田谷区に見直し求める要望書第二弾を提出、29日まで回答を=橋詰雅博

 世田谷区史の刊行をめぐり区と対立する執筆予定だった青山学院大学文学部史学科準教授・谷口雄太氏の支援などを目的とした「世田谷区史のあり方ついて考える区民の会」は、区に2月27日に提出した著作権譲渡契約書の見直しを求める要望書に対する区の5日の回答書に「失望した」として3月22日に再び要望書を保坂展人区長に提出した。回答書の「経緯」説明の部分には、執筆者が「委員会」と3カ月にわたってやりとりしたなど看過しえない事実誤認があると指摘している。対話の場を設けてほしいと29日までに回答を求めている。第二弾の要望書の主な内容は次の通り。

区民の会との対話の拒否について
区は、「東京都労働委員会で調査手続きを行っている最中であり、まずは当事者間の対応に注力したい」とし、区民の会との対話を拒みました。
しかし、これは区の認識の誤りに基づく判断であり、対話を拒む理由とはなりません。そもそも都労委に申し立てを行ったユニオン出版ネットワーク(出版ネッツ)と、労働組合ではない区民の会とは別組織です。出版ネッツは、著作権譲渡と著作者人格権の不行使を承諾しないことを口実にして区史編さん委員が切られた不利益取扱い(労組法7条1号)と、区による団体交渉拒否(同条2号)に対し、都労委に救済を申し立てています。一方、区民の会は区に、@区史編さんに係る著作権(著作者人格権の不行使を含む)契約書を見直すこと、A区民や有識者らの声を聞く場を設け、その声を反映させて文化財行政を改善することを要望しています。
二つの団体は別組織であり、要望や要求内容も違います。都労委での調査を隠れ蓑にして、区が区民の会との対話を拒むことは失当と言わざるを得ません。

著作権譲渡と著作者人格権不行使の契約書について
区民の会は契約書の見直しを求めましたが、区の回答書について納得がいきません。
区は、「契約書は四つの区史編さん委員会の正副委員長八人に検討してもらい、委員会で各委員に説明やメールで修正・確認を行った上で著作権譲渡契約書を区と締結することに承諾を得ている」と回答をしています。しかし、区民の会としては、正副委員長の検討や各編さん委員への説明が十分であったか、などについて疑問を持っており、情報開示が必要だと考えています。もとより契約の承諾者が多いことをもって、著作者人格権不行使の正当性を証明することにはなりません。

また、区は「著作権譲渡契約書には編集作業は編さん委員会において行われることを明記しており、区は勝手に改ざんできないようにしている」と書いています。しかし、その一方で区は編さん委員に対しては、原稿を書き換えられない権利を規定する「著作者人格権」を放棄させる契約書を示し、これに承諾しない委員には委嘱を切っています。これは明らかなに矛盾した対応です。区史の編集は専門家による委員会が行うと言うのであれば、行政は介入できないはずです。原稿の内容に問題や疑問があれば、編さん委員会で議論すべきです。その場合も、本人の同意なく勝手に原稿を改ざんするようなことがあってはなりません。

そして、区は原稿の改ざんを防ぐためにも、契約書を見直し、「区は著作者人格権を尊重する」と明記すべきです。
編さん委員の委嘱条件として著作者人格権の不行使という踏み絵を踏ませるのは、区史編さんへの介入にもなりかねません。区民としては、著作者人格権を奪って作られた区史を読みたくはありません。最新の研究成果を取り入れた、分かりすい区史を読みたいものです。

長い年月が経れば行政の担当者も代わり、著作者人格権の不行使を求める契約書を締結して区が人選した編さん委員の原稿が改ざんされる可能性は否定できません。それを防ぐためには、著作権譲渡契約書の見直しが必要だと考えます。

区の契約書が全国の自治体に広がる懸念について
自治体史の執筆者に対し、著作者人格権の不行使を盛り込んだ契約書が、各地の自治体などに広がっていくことを懸念しています。
「セクシー田中さん」の原作者である漫画家の芦原妃名子さんが亡くなったことが今、大きな社会問題となっています。著作者人格権をないがしろにすることは著作者の命を奪うほどの重い問題です。著作者人格権は原稿を勝手に書き換えられない権利であり、著作権法で譲渡ができないと規定されています。

posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月23日

【焦点】覇権を争う米中 外交の武器は何か=橋詰雅博

 米国と中国は自陣営に引っ張りこうと各国に接近を図っている。ただし覇権をめざす米中のやり方は同じではない。3月2日のJCJと日本AALA(アジア・アフリカ・ラテンアメリカ)連帯委員会が共催したオンライン講演で慶応大・京都大学名誉教授の大西広氏は、両国の外交の違いを解説した。

 「米国にはグローバルサウス(インド、ブラジル、タイ、南アフリカのような南半球に位置するアジア、アフリカ、中南米地域の新興国・途上国の総称)に手を突っ込みコントロールする力はもはやありません」と前置きしうえで大西氏はこう語った。
 「米国は軍事的な関係を深めることで親米圏を拡大しようとしています。狙いは2カ所。ひとつはロシアがウクライナに侵攻したことによるEUの軍拡です」。
 その象徴的な組織が米英主導のNATO(北大西洋条約機構)だ。ロシアに脅威を感じたフィランドとスウェーデンはNATOに新加盟した。加盟国は32に増えた。フィランドとスウェーデンは軍事費をNATOが目標とする国内総生産(GDP)比2%に増額、米国の戦術核を国内に配備し共同運用する核共有も実施する。

 もう1カ所はアジア太平洋地域で、台湾がその拠点となる。中国と対峙する民進党政権に「独立は支持しない」と釘を刺さすバイデン大統領だが、一方で中台戦争の危機を煽り、台湾への軍事支援の増強に走る。日本もその尻馬に乗る。経済では親中の韓国も安全保障の面で親米にならざるを得ない難しい立場に立つ。中国進出を阻止するため米国は日韓台と軍事的に強い基盤を構築しつつある。

 片や中国の覇権は習近平国家主席が2013年に提唱した世界各国を巻き込む広域経済圏構想「一帯一路」の推進だ。「ロシアやグローバルサウスを含む諸外国への経済援助によって親中圏の勢力を広げようとしている。そういう意味では米国より平和的なやり方ではないかと思います」(大西氏)。
 米国は軍事戦略、中国は経済戦略を主武器に覇権を争っている。米中による新冷戦は加速中だ。
 
posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年02月26日

【焦点】「ジェノサイド」のガザ 女性・子どもの死者69% 超大型爆弾とAI標的設定 川上泰徳氏がオンライン講演で解説=橋詰雅博

                     
kawakami.JPG

 パレスチナ自治区ガザでのイスラエル軍とイスラム組織ハマスとの戦闘は、終結の見通しが見えない。激しさを増すガザ戦争の行方はどうなるか―。元朝日新聞記者の中東情勢ウオッチャー・川上泰徳氏=写真=が1月13日のJCJオンライン講演で徹底解説した。
 イスラエルが「鉄の剣」作戦と名付けた今回のガザ戦争では、イスラエルの攻撃によるガザの死者のうち女性と子どもの民間人が飛びぬけて多い。世界保健機構によると、2008年、14年、21年の過去3回のイスラエルのガザ攻撃では、女性・子どもの死者は38%から41%で、非戦闘員の男性が60%。ところが23年は女性・子どもの死者は69%に達し、男性が30%で、過去3回と逆転している。

 ガザで女性・子どもの死者が激増している理由を川上氏は2つ挙げた。まず多大な巻き添え被害を出すのを承知でイスラエルは航空機から米国製超大型爆弾を都市部の高層ビルや高層マンション、大学、銀行、官公庁などに投下している。 
 川上氏が言う。
「使っている爆弾の重さは500`から1トン。1トンだと高層マンションを破壊できる。米ニューヨーク・タイムズの取材に応じた軍事専門家は『こんな狭い地域にこれほど多くの大型爆弾が投下された歴史的な例は、ベトナム戦争か第二次世界大戦まで遡る必要があるかもしれない。イラクのモスルなど都市部でIS(イスラム国)を相手に米軍が戦う場合でも、最も使う500ポンド(約227`)爆弾さえ、標的には大きすぎる』とコメントしている」。
 もう一つとして生成AIを用いた標的設定システムの利用が挙げられる。「ハブソラ」(福音)と呼ばれるこのシステムは空爆・砲撃の標的を自動的に数多く設定する。

 イスラエルネットメディア「+792マガジン」の調査報道によると、08年の1日平均標的数は155カ所、14年は122カ所、21年136カ所だったが、23年は429カ所。過去3回の1日平均138カ所に対して今回はその
3・11倍にもなる。情報部員は「数万人の情報部員では処理できなかった膨大な量のデータを処理するハブソラはリアルタイムで標的を示す」「ハマス幹部への攻撃の巻き添えで許される民間人の死者は数百人にまで増加した」と語った。
 川上氏は「人間はミサイルを撃つだけの機械≠ノなっている」とAI標的設定システムのせいで自制心を失ったと指摘した。
イスラエルのガザ攻撃は「人間の顔をした動物」(ガラント国防相)ととらえるハマスに加えて民間人も対象にした「ジェノサイド(集団殺害)だ」と川上氏は断言した。

 イスラエルはどんな戦略を描いているのか。ニュースサイト「シチァ・メコミット」が10月末に報じた「ガザの民間人口の政治的な方針の選択肢」と題した政府秘密文書では、ガザからエジプトのシナイ半島に住民を追い出すのが実行可能としている。ネタニヤフ首相はこのシナリオに沿って戦争を進めているようだ。
 日本は何ができるかについて川上氏は「政府は即時停戦を訴える、市民はイスラエルのガザ攻撃反対・中止の決議を地方議会に求める」と提案した。
 中東情勢を約20年ウオッチする川上氏も戦争がどんな形で終結を迎えるのか見通せないという。このままでは、戦闘は果てしなく続き、民間人の死者はどんどん増える。
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年2月25日号
posted by JCJ at 08:08 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年02月24日

【焦点】「セクシー田中さん」事件で浮上した著作者人格権問題 世田谷区史に飛び火 27日見直し求める要望書提出=橋詰雅博

 昨年10月から12月に放送されたドラマ「セクシー田中さん」の原作者で漫画家の芦原妃名子さんが脚本を巡る問題で自死(享年50)した事件は、原作マンガを出版した小学館、映像化した日本テレビを巻き込むなど波紋が広がっている。
 自死したのは、原作に忠実にという原作者の意向がテレビドラマの内容に反映されなかったことが主因とみられる。
 芦原さんが寄稿していた小学館第一コミック局編集局一同が2月8日に公表した声明でも、それを窺わせる文章がある。「著者が待つ絶対的な権利『著作者人格権』について周知徹底し、著者の意向は必ず尊重され、意見を言うことは当然のことであるという認識を拡げることこそが再発防止において核となる部分だと考えています」。

譲渡や放棄できず
 著作者人格権は「作品や作者の『名誉』や『思い入れ』を保護し、原作者さんの許諾を得ず、無断で作品を改変することを禁止した法律で、著作権(財産権)と異なり、譲渡や放棄できない権利です」と日本史史科研究会の中脇聖研究員が語っている。
 この著作者人格権問題で想起させられたのは東京・世田谷区の区史編さんを巡る区と大学教員の対立だ(筆者はJCJ機関紙「ジャーナリスト」2023年5月25日号で記事を掲載)。区制施行90年を記念して地域の歴史を書いた区史を新たに作成するため区から編さん委員を2016年に委嘱された青山学院大学文学部史学科準教授・谷口雄太氏は、世田谷を支配した吉良一族の盛衰を含め中世史部分を担当した。17年から調査・研究活動を始めたが、23年2月に事前の話し合いもなくいきなり40人の編さん委員に執筆の条件として区史(24年から各部門を順次発刊)の著作権無償譲渡に加えて著作者人格権の不行使の契約を締結することを区は要請した。40人のうち一人は他の仕事があるという理由で辞退し、谷口氏だけが契約を拒否した。

史実の書き換えも
 筆者の取材に谷口氏はこう答えた。
 「自治体の場合、執筆者らに著作権無償譲渡を求めることはよくあります。行政ならヘンな行為はしないだろうという性善説に立つので執筆者らは承諾するケースが多い。問題は著作者人格権不行使の要請です。認めてしまえば、区の学芸員らの解釈で史実が書き換えられる、あるいは削除されても抗議はできないし、修正も受け付けてくれません。著作権譲渡と著作者人格権不行使の2つを求めた自治体は世田谷区が初めだと思う。歴史修正につながり、悪しき世田谷モデル≠ェ自治体に広がる可能性もある。撤回してもらいたい」
 実は区は区史発刊に向けた準備として17年8月に冊子『往古来今』を作ったが、執筆者の谷口氏が著作者人格権と著作権の両方を侵害したとして抗議した。谷口氏は「人格権侵害については原稿を800カ所修正、著作権侵害の方は『世田谷デジタルミュージアム』に冊子を無断で転載」と問題点を指摘した。これに対して区は著作者人格権を含む著作権について誠実に対応すると答えた。
 その約束≠反故にするやり方の背景には「2つの権利を奪えば、執筆者とのトラブルは防げる」(谷口氏)という区の強引な姿勢がうかがえる。

労組の支援受ける
 谷口氏は区史編さん担当職員と2月末に話し合ったが、不調に終わる。協議を打ち切った区は3月31日に谷口氏の委員を解任。谷口氏は調査・研究の成果を発表する場を失った。
 フリーランスとして業務委託契約を区と結んだ谷口氏は、フリーランスの編集者らが集まるユニオン出版ネットワーク(略称出版ネッツ)に入った。世田谷区による編さん委員の解任と正当な理由がない話し合い拒否について谷口氏への不当労働行為と判断した出版ネッツは、4月中旬に東京都労働員会に救済を申し立てた。

区長との対話要望
 今日まで都労委の結論が出ない中、谷口氏を支援しようと区民が中心となった「世田谷区史のあり方について考える区民の会」が今年1月に結成された。芦原さんが亡くなった後の2月10日に第1回会合が開かれ、著作者人格権をないがしろにするのは著作者の命を奪うほど重い問題であることが議論された。
 そうしたことを踏まえて区民の会は「区史の執筆者との著作権に関する契約書の見直しを求める要望書」を27日に世田谷区に提出する。保坂展人区長との対話の会を3月7日〜15日の間に開いてほしいと要望。4日までに区から返事をもらいたいとしている。
区と谷口氏とは昨年2月に1回話し合っただけだ。その後は区側が話し合いを拒んでいる。
 保坂区長は「熟議」を看板にしている。この問題でもそれを実行すべきではないだろうか。

posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年02月15日

【焦点】外苑再開発で森元首相の暗躍を伝えた2年前と1年前の筆者の記事を合併再編集 そして「神宮利権ムラ」誕生=橋詰雅博

            
外苑青写真.jpg

 東京地裁で行われている神宮外苑再開発許可取り消し訴訟に呼応するかのように東京新聞が連載を始めた「解かれた封印 外苑再開発の真相」は、2月5日付の第7回目「目覚めた住民 開発拒否」で終わった。この連載のキモは森喜朗元首相がこの計画にどう関わったかだ。2回目と3回目でその核心に触れていた。筆者も森元首相の暗躍をJCJ機関紙22年4月2日と23年4月10日で書いている。2つの記事を合併し再編集したものを紹介する。
                 ◇
 「この一帯を再開発できたら、スポーツ施設とオフィスビルなどからなる都内有数の一大ゾーンができる」――伊藤忠商事東京本社(港区外苑前)の幹部社員が部屋のガラス窓から見える秩父宮ラグビー場や神宮球場などに視線を移しながらつぶやいた言葉を筆者は20数年過ぎた今でも鮮明に記憶している。
 伊藤忠や三井不動産、日本スポーツ振興センター、宗教法人・明治神宮などが事業主となった明治神宮外苑前地区の再開発案が都市計画審議会で2月に承認された。日本初の景観を守る風致地区に指定され100年近く緑のオアシス≠都民に提供してきた神宮外苑は、樹木が伐採され再開発で一変する。高さ190bと185bのオフィス・商業施設が入る高層ビル2棟や80bの宿泊・スポーツ関連施設ビル、60bのホテル併設の神宮球場、55bの秩父宮ラグビー場などが2036年までに建設される見込み。

国策と住民退去

 引き金は国立競技場の建て替え。ラグビーW杯会場(建設が間に合わず実現できなかったが…)とオリンピックメイン施設という口実で、高さ制限など各規制が大きく緩和された。また都は「国策」を理由に都営霞ヶ丘アパートから強制退去を求めた三百世帯の大半は、16年1月までに別の都営アパートに移った。新国立競技場(高さ49b)の収容人数を8万に広げたのは、邪魔な霞ヶ丘アパートを取り壊すためといわれている。

急速度で展開
 
 都が19年に正式公表したこの再開プロジェクトには「森喜朗元首相が深く関与している」と指摘するのは『亡国の東京オリンピック』の著者でジャーナリストの後藤逸郎さんだ。
 「森元首相が日本ラグビーフットボール協会会長のときの09年7月に19年ラグビーW杯開催が決定した。それ以降から物事が速いスピードで動き出した。10年末に都は国立競技場一帯のスポーツ・クラスター構想を発表。JOC(日本オリンピック委員会)は11年に20年オリンピックへの立候補をIOC(国際オリンピック委員会)に申請した。翌年の12年5月に当時衆議院議員の森元首相は都の佐藤広副知事、安井順一技監と議員会館で面談している。面談メモが都議会で暴露され問題になったが、私も情報公開請求で一部黒塗り資料を入手した。この時点で今の神宮外苑再開発案は固まっていた」(後藤さん)

采配するうま味

 面談メモのおよその中身は―。副知事と技監が神宮外苑再整備の概要を森元首相に説明。そして森は「(霞ヶ丘アパートの)住民の移転は大丈夫か?」と質問。副知事は「他の都住に移転してもらえるために国策として計画を進めていく」と答える。さらに森の「(オリンピック招致)が×になったらどうする?」の質問に、二人とも神宮外苑全体の再整備を前提に進めると応じた。最後に森は「すばらしいよ。あと15年は長生きしないと」と述べた。
 森元首相の動きについて後藤さんは「彼は文教族やスポーツ行政のドンとして国会議員時代以上の政治力を発揮してきている。だから『森さん、森さん』と人が寄ってくる。頼み事を受け入れ差配するというのは他には代えられないうま味だと思う。彼自身、権力そのものですから『オレのところに話を通すだろう』くらいに思っている」と話す。
 結局はラグビーW杯もオリンピックも国内最大級の再開発を促進するための道具≠ノ過ぎなかったのではないか。

石原会談が発端

森元首相は石原慎太郎都知事に2005年に計画実行を働きかけた。外苑樹木伐採の反対運動を展開する住民団体が主催した23年2月21日のオンライン講演で元都庁幹部職員の澤 章氏はこう解説した。
 「そもそもこの再開発事業計画は2005年夏の森喜朗元首相と石原慎太郎都知事との都庁での会談が発端。その後、庁内に東京が2度目の五輪開催を目指すという噂が流れた。後日聞いた話だが、電通がつくったとされる神宮外苑再開発に関する企画提案書(04年ごろに出回る)を森元首相は持参したという。老朽化した国立競技場の移転(当初は晴海に新競技場を建てる予定)、都営霞ヶ丘アパートの取り壊し、複合スポーツ施設や業務施設の建設などを行う外苑再開発実現のため五輪招致を2者会談で決めたようです。森元首相が電通案に乗ったのか、案作成を指示したのかは不明です。元文科相で自民党の萩生田光一代議士(東京24区選出)も絡んでいる」。

都市整備局動く

 知事本局計画調整部長や中央卸売市場次長などを歴任した澤氏は、20年3月出版した『築地と豊洲』で小池都政を批判したことで東京都環境公社理事長を解任された。都庁で33年間働いた澤氏は外苑再開発計画の裏側で政治家や事業者などの意向を汲んだ都市整備局がおぜん立てしたと断言する。
 「外苑再開発事業を進めるには用途地域の変更、容積率アップ、緑の量をどのくらいにするなど都市計画の大幅な変更が絶対必要です。これを司る都市整備局が各方面に根回し。ダークサイドの仕事として少数の幹部だけが関知できる案件だと思います」
こうして政官業一体の「外苑利権ムラ」は出来上がった。
posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年02月06日

【焦点】春名氏、内外情報機関をえぐる 金大中拉致とつながる「別班」 ハマス、穏健化を偽装 「KGB」消滅で露侵攻=橋詰雅博

                     
春名1.JPG

 昨年12月17日のJCJオンライン講演会は、「国の内外で蠢くスパイ組織を抉り出す」をテーマに元共同通信記者のインテリジェンスに詳しいジャーナリスト・春名幹男氏=写真=が解説した。

 TBSドラマ「VIVAVT(ヴィヴァン)」(昨年7月から9月放送)の題材になった陸上自衛隊の秘密情報組織「別班」。ドラマが大ヒットしたことで注目された別班出身の元陸自三佐、坪山晃三(故人)に春名氏は、1973年8月8日、日本のホテルから拉致された金大中事件真相の追及で取材した。 
 この年の6月に自衛隊を退職し、都内で調査会社を立ち上げた彼は、在日韓国大使館の金東雲一等書記官(主犯格)から「(滞日の)金大中の居所を調べてほしい」と依頼された。坪山は陸自現役のころから、金は韓国中央情報部(KCIA)所属のころから二人は付き合いがあり北朝鮮情報などを交換していた。この関係から推測すると、別班は少なくとも韓国情報機関とつながりあった。
春名氏は「情報機関は情報収集と秘密工作が任務。日本は情報収集が基本ですが、政府が存在を否定する別班は秘密裏の組織ですので任務はあいまいです」と語った。

 世界で耳目を集めるガザ戦争。対外情報機関「モサド」、国内治安機関「シンベト」、軍情報機関「アマン」などからなる鉄壁な情報網を築くイスラエルは、なぜハマス奇襲を許したのか。イスラエルから21年に攻撃を受けたハマスは、それ以降、突然「イスラエル消滅」を言わなくなり、「穏健化」に変貌。イスラエルは警戒を怠り油断したという春名氏はこう続けた。
 「パレスチナはヨルダン川西岸を統治するファタハ(パレスチナ民族解放運動)とガザ地区を支配するハマスの二つの勢力が競い合っている。イスラエルのネタニヤフ首相は、9月にカタールに派遣したモサドの長官を通じハマスへの資金援助継続を依頼した。穏健に転じたハマスが勢力拡大すればパレスチナの分断が深まってパレスチナ建国を阻止できるとネタニヤフは考えた」「防諜機関『8200部隊』は一年前からハマス軍事部門が使う無線通信の盗聴を止めた」
 政府も情報機関もハマスの偽装に騙されてしまった。
死んだふり作戦≠成功させたハマスはガザ戦争でイスラエルの非道ぶりが広く伝わりパレスチナ建国の国際世論が高まることを期待している。

 ロシアとウクライナの戦争ではウクライナ情報機関が一変したのがロシア侵攻の引き金になった。
「実はソ連崩壊後も旧ソ連構成国を結ぶ秘密情報機関KGB(国家保安委員会)ネットワークは健在でした。ところが米国の介入で親露政権が倒れた14年のウクライナ『マイダン革命』以降、米CIAは巨額な資金を投入してウクライナ軍などを強化した。米国の差し金で保安局や国防省情報総局の親露派幹部ら数十人は暗殺され『KGBウクライナ支局』は消滅。KGB出身のプーチンは復讐のため侵攻を決断した」。意外な事実を春名氏は明らかにした。
 ニュースの裏側を垣間見た春名講演だった。
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年1月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年02月03日

【焦点】ガザ戦争 即時人質解放と停戦 「戦場記者」須賀川氏訴える=橋詰雅博

                     
sugakawa.JPG

 「国境なき医師団」(MSF)日本事務局は、パレスチナ自治区ガザから帰還した日本人スタッフ2人とTBSテレビ前中東支局長の須賀川拓氏=写真=らを交えガザで深刻化する人道危機などをテーマにしたトークイベントを昨年12月11日都内で行った。2019年から中東を始め世界の紛争地を駆け回った須賀川氏は、それまでの映像記録をベースに自ら監督したドキュメンタリー映画『戦場記者』を22年末に公開した。
 ガザに何回も取材で入った須賀川氏は「ガザは天井のない監獄と言われているが、監獄はすなわちプリズンじゃないですか。確かにイスラエルにテロ行為を繰り返すハマス戦闘員はいるが、罪を犯した、悪いことをした人はほとんどいない。天井のない収容所という方が適切だと強く思っている」と人口約223万のガザをこう表現した。

 ガザを実効支配するイスラム組織ハマス(イスラム抵抗運動のアラビア語略)がイスラエルに奇襲攻撃した10月7日の2日後の9日にイスラエルに入った須賀川氏は、ガザに入ることは叶わなかったがイスラエルで3週間滞在し取材。
  須賀川氏が言う
「牙をむいたイスラエルはガザの全員を抹殺するかのような行動です。恐怖を覚える人は多いと思う。一方ハマスもロケット弾などで無差別攻撃している。イスラエルからのしっぺ返しで多くの住民が死ぬことを考えられなくなっているのだろうか」「(国際赤十字委員会が1971年提唱した民間人保護など戦争のルールを定めた)国際人道法に基づき双方は平等に裁かれるべきです」
 ただし容赦しない攻撃をガザに浴びせるイスラエルの方が罪は相当に重いのは明白だ。

 イスラエルもハマスもSNSなどでフェイク情報を平気で発信を続けているので、騙されてはいけないという須賀川氏は「特に過激な情報は拡散する、信じ込む前にちょっと一拍置く。MSFのような信頼できる発信元か確認が必要」とアドバイスした。
 日本人ができることは何かについて須賀川氏は「(原油の9割以上を中東に依存している)日本は中東安定のためパレスチナに経済自立支援を行い、イスラエルとも経済交流など関係は深い。両方につながりがある稀有な国」と日本の立場を指摘したうえで「対立は終わらないだろうから、関心を長く持ち続けることが大きなタスク」と語った。

 そして須賀川氏は「人命を救うため即時の人質解放と停戦」を訴えた。第三国の仲介によるイスラエルとパレスチアの和平交渉はそれが済んだ後だという。
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年1月25日号
posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年01月29日

【焦点】万博総額14兆円、これで打ち止めではない、維新崖っぷち=橋詰雅博

 2025年4月に開催するという大阪・関西万博への批判が高まる一方だ。
その原因は膨れ上がるばかりの費用にある。政府が昨年末に公表した試算では、運営費1160億、会場設営費2350億、万博にかかわるインフラ整備費8390億だ。17年の誘致立候補申請時と比べると、運営費1・4倍、会場設営費1・8倍、インフラ整備費10倍にもハネ上がっている。このため合計1兆1900億に増えた。

 この要因は@会場の夢洲(ゆめしま)への電気、上下水道、交通などの整備が必要A廃棄物、建設残土、浚渫土砂などで埋め立てた夢洲は軟弱地盤、土壌汚染の対策が必須、B資材や人件費の高騰などだ。

 費用はさらにかさむ。万博に向けた行動計画事業「空飛ぶクルマ」実証実験など約3兆4000億、万博に便乗した大型開発と指摘されている中国・四国地方の道路整備や河川改修などインフラ整備費用約9兆が試算されている。なんと総額約14兆という金額になる。当然ながらこれには多くの血税が使われる。

 しかもこれで打ち止めではない。この先まだまだ増えると予測されている。万博と密接につながるIR(カジノを含む総合リゾート施設)開設も目指しているからだ。だからどの世論調査でも万博開催は、反対が多数を占める。運営費の多くを賄うのは入場料収入だが、「万博チケットを購入したいと思わない」は79%(23年12月17付毎日新聞)にものぼる。

 関西学院大学法学部の冨田宏治教授は「大阪・関西万博をめぐる総額14兆円という法外な関連費用が問題になっています。『税金の無駄遣いを許さない』という日本維新の会の旗印がブーメランのように維新を襲い始めています。万博問題は維新のアキレス腱≠ノなろうとしています。維新支持層の中でも『万博不要』の声は高まっている(12月17日付毎日世論調査では7割強)」と述べている(1月27日付新婦人しんぶん)。

 岸田政権は即刻、万博を中止し、能登半島地震の被災地支援と復興のためにカネ、ヒト、モノを最大限投じるべきだ。これが今やるべき最優先の政策ではないか。

posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年01月27日

【焦点】一編の詩がガザの希望と絶望を引き起こす=橋詰雅博

  パレスチナ自治区ガザの住民に希望を与えた詩がある。詩人でジャーナリストのアハマドが2018年ネットにあげたもので、こんな詩だ。

 私は空を飛ぶ鳥を見上げた/鳥たちは有刺鉄線の塀を隔てた両側の木々の間を自由に飛び回っていた/なぜ私たちは単純なことを複雑に考えるのか/行きたいところへ鳥のように自由に行くことは人間の権利ではないだろうか/これ以上に単純なことはないではないか/鳥は飛びたいと思うから飛ぶのだ

 日本AALA(アジア・アフリカ・ラテンアメリカ)連帯委員会の昨年末のオンライン学習会で講演した中東問題研究家の平井文子氏は、そして彼は平和的な手段による抵抗運動を提案したという。平井氏が続けた。
 「もしも、何千何万のパレスチナ人が平和裏に行進し、1948年(イスラエル建国宣言、大量のパレスチナ人が難民に)以来排除されてきた土地から切り離すフェンスを越えたら何が起きるだろうか。非暴力的な民衆行動がパレスチナ人の権利を取り戻し、世界最大の天井のない監獄から彼らを解放すると信じた」

 実際、この年の3月からガザの大帰還行進が実現した。厳重に武装化されたフェンスに向けて行進が毎日のように続いた。それに呼応して、イスラエルの反シオニストグループ(パレスチナの地にイスラエル国家をつくることに反対する組織)が彼らを歓迎するためにフェンス近くまで行った。お互いに手を振り、携帯電話で話した。こうした平和的な抗議活動は1年以上続いたが、イスラエルは強権的な弾圧により抗議活動を鎮圧した。

 「フェンスに常駐するイスラエル軍のスナイパーが参加者をテロリストと決めつけ標的にした。合計214人が射殺され、3万6100人が負傷した。こうしたガザの人たちの平和的な反占領闘争に対するイスラエルの暴力的な仕打ちをマスメディアはほとんど伝えなかったのです」(平井文子氏)
 一編の詩がガザの希望と絶望を引き起こした。悲しくてやりきれない話ではないか。

posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする