2020年10月15日

【焦点】 デジタル庁こそが監視社会の司令塔だ=橋詰雅博

 菅義偉首相の肝いりで来年新設のデジタル庁は、国や地方の行政データのデジタル化を進め、それを一元管理する。狙いはいまだ2割にとどまるマイナンバーカードの普及に加えてもう一つスーパーシティ計画の推進だ。この計画は国家戦略特区にまるごと未来都市をつくる≠ニふれ込む政官民学あげての大型プロジェクト。しかし、その半面では、役所に蓄積された個人情報はもとよりIT企業のビックデータまでもデジタル庁に集められ、監視社会が強化される危険性がある。
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 街中を自動運転の乗り物がスイスイと走り、遠隔による医療・教育が受けられ、スマホ決済で現金不要、ドローンが配送、行政手続きがスマホで済ませられる―。政府はAI(人工知能)など最先端技術を活用したスーパーシティのイメージをこんな風に喧伝している。
竹中平蔵が旗振り役
 本格的な実現は2030年ごろとするこの未来都市の旗振り役は、東洋大の竹中平蔵教授だ。竹中教授は小泉純一郎内閣時代の総務相で、菅首相はその時、総務省副大臣だった。竹中氏は現在、首相の経済ブレーンである。竹中教授は「(5月に成立のスーパーシティ法)が早く成立していれば、コロナ危機への対応が違っていただろう」とツイッターに投稿している。ただ、具体的な対応は何も示さなかった。
 計画進める民間側を束ねる三菱UFJリサーチ&コンサルティングの村林聡社長は、9月8日の「アフターコロナを考える」Webライブセミナーで、デジタル庁創設にふれている。
 「昨年暮れ『デジタル・ガバメント実行計画』(行政サービスが最初から最後までデジタルで完結される行政サービスの100%デジタル化の実現)が閣議決定されました。これを進めるためには『デジタル庁』といった権限のある組織をつくり、司令塔にする。国のリーダーシップが必要です」
全個人データを入手
 政府側もスーパーシティ計画に入れ込む。6月末のオンライン特別セミナーに登場した内閣府地方創生推進事務局の村上敬亮審議官は、こう語った。
 「中国のアリババ系列会社が行政と連携する杭州市では、交通違反や渋滞対策にAIを活用し、無人コンビニで顔認証でのキャッシュレス支払いを実施している。ものすごい勢いで技術を使いこんで熟度をあげて、それを広げている。日本にも必要な技術はほぼそろっているが、街で住民を相手に複合サービスを実施した実績がない。関わる事業者が利益を得られるビジネスモデルを構築するためにも早く実践する場が欲しい」
 デジタル庁が中核となるスーパーシティ計画だが、大きな問題がある。スーパーシティ実現には個人情報が必須だ。国家戦略特区では民間事業者が国や地方の個人情報の提供を受ける。事業者もビジネスで得た個人情報などからなるビックデータを持っている。 
 デジタル庁は特区の事業者の全個人情報の入手可能となる。事業者が得られた個人情報をビジネスに不正利用するかもしれないし、なによりデジタル庁が個人情報の管理をどういう風にするのか、特区住民とどう合意にするのかがあいまいのままだ。知らぬ間にプライバシーを侵害された上に、積み上げられた個人データをもとに政府から監視を強化されかねない。
トロントは計画中止
 中国を始め欧米ではスーパーシティと同じような未来都市の実証実験がスタートしているが、住民の反対で計画が中止に追い込まれた都市がある。カナダのトロント市だ。
 未来都市を運営するグーグルの子会社は、データ収集のため街中に多くの監視カメラを設置するなどを市や住民に提案した。
 しかし、プライバー侵害発生時の対応計画や個人データ保管に関する明確な方法の必要性について、住民への説明が不十分だった。このため住民の同意が得られなかった。また、コロナ禍の影響で都市への人の流入が減少し、利益が見込めないとグーグルは判断。こうしたことで5月に撤退した。運営会社が身を引いたことでトロント市は計画を断念せざるを得なかった。
 カギを握る個人データの管理について、村林社長は「個人データの扱い方では、誰が何のためにデータを使うのか説明し、本人の了解を得て進めるのが原則だ。(日本が手本とする)エストニアは誰がいつ自分の情報を使ったか、住民が請求すれば公開している。日本でもそういう対策をする必要がある」と指摘する。
 だが、その前に欧州と比べて不十分な国民のプライバシーが守られる規制・ルールづくりをすべきだろう。これをないがしろにして、スーパーシティ計画を隠れ蓑に監視社会が進められ、築かれようとしている。
 来年3月ごろには国家戦略特区に指定されて、スーパーシティの実証実験が行われる5自治体が決まる見込みだ。
橋詰雅博
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2020年10月10日

【焦点】 コロナで電子図書館の導入加速 100超の自治体が住民サービスで=橋詰雅博

 電子出版制作・流通協議会(電流協)が実施した自治体が運営する公共図書館へのアンケート調査(約500カ所が回答)によれば、コロナ禍による全面休館は80%で、その期間は1カ月以上2カ月未満だ。
 一方、同じく電流協が行った公共電子図書館(スマホやタブレット端末で閲覧できる電子書籍を貸し出す)アンケートでは、35都道府県の100を超える自治体が取り入れている。増えたのは図書館を訪ねるや書籍にふれる必要がないからコロナ感染防止になり、住民サービスとして導入が加速したから。
 電流協の9月末のオンラインオープンセミナーに登場した専修大文学部の野口武悟教授は「コロナ禍で電子図書館への注目が高まっている。新聞は一般記事ばかりではなく、『読書の機会を保てる』とか『補完的な活用ができる』といった社説でも取りあげていた。休館中は、自分のウエブサイトに電子書籍情報を流すところが多かった。さらに30を超える自治体は、電子図書館の導入を予定しているとアンケートで答えている」と述べた。
 セミナーでは、これからは待ちの姿勢≠ナはなく、出版社や貸し出しサービスをサポートするベンダー側と関係を強化する、独自資料の情報発信を行うなど電子図書館への要望があった。
橋詰雅博

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2020年08月27日

【焦点】 売り上げ激減の音楽エンタメ業界 オンラインライブが希望の星=°エ詰雅博

 ぴあ総研によると、音楽ライブ・エンタテインメント市場は、2019年は過去最高の約6300億円を記録したが、20年はコロナ禍のせいで約1840億に激減する見込み。前年より3割にも満たないことになる。
 音楽イベントを手がけるロッキング・オングループ社長で音楽評論家の渋谷陽一さん(69)は、8月18日、日経Web中継セミナーに出演し、エンタメ業界の現状と、先行きなどについて語った。
 「今のエンタメ業界は死にかけている。深刻な事態だ」という。コロナ禍前のような仕事ができないからで、事業者は収入がほとんどなく、ミュージシャンやスタッフなどに報酬を支払えない状況がずっと続いている。近ごろはやっとライブ演奏ができるようになったが、しかし、国のコロナ感染拡大防止ガイドラインにより会場の定員の半分しかお客を入れることができないのがネックだ。
 「定員1000人のところは、最大で500人までです。売り上げが半分に落ちても収入があるからいいじゃないかと思う方が多いだろうが、そうではない。ミュージシャンやスタッフなどへの報酬の支払いを考えると、完全に赤字です。定員の半分では利益を得られない。赤字を生むだけです」
 だからマスク着用や検温、消毒、換気を徹底するから定員まで入れることを国が許可してほしいと要望する。
 「そうすれば、間違いなく業界は息を吹き返します。『3密状態をつくるのか、バカなことを言うな』と思われるかもしれませんが、このままの状況を続くと、業界の多くの人は食べていけなくなる。コロナウイルスというリスクを恐れながらも、ビジネスが成り立つように知恵を働かす時期にきている」
 こうした苦しいもとで、オンラインライブが希望の星≠ノなると断言する。
「韓国の男性ヒップポップグループ『BTS』(防弾少年団)のオンラインライブは2時間のコンテンツで約65万人が視聴し、20億円の収入をあげた。たった1回でこれだけの収入です。インパクトはものすごい。日本に目を転じればサザンオールスターズ6億5千万円、星野源3億円、それぞれ収入があった。オンラインライブなら演出を変えて、2カ月から3カ月に1回できる。エンタメのビジネスモデルを根底から崩す転機になれる。コロナ禍によってVR(仮想現実)ゴーグルを装着すれば配信されたコンサートの臨場感を味わえるといったテクノロジーの発展と共にオンラインライブという有望ビジネスの誕生が速まった。そのマーケット規模は大きくなる可能性を秘めている」
 あるライブ・エンタメ市場調査では、5年後に占めるオンラインライブは市場の10%を超えるそうだ。
橋詰雅博
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2020年08月13日

【焦点】 『文春オンライン』月間4億超PV その秘密を編集長が語った=橋詰雅博

 一般社団法人「電子出版制作・流通協議会」(電流協)が実施している「第3回電流協アワード2020年受賞者が語る」が8月7日、オンライン中継された。デジタル展開に積極的だったとして特別賞に選ばれたのが『文春オンライン』だ。初代編集長・竹田直弘さん(47)は「3年前の2017年に始まった最初の月は600万PVでした。いまでは4億PVを超える月もあります。出版社のニュースサイトではナンバー1です。ライバルと目されている『東洋経済オンライン』は2億PVですから、だいぶ引き離している」と胸を張った。
  竹田さんは、3年間で月間PVを飛躍的に伸ばした主な理由を3つ挙げた。
 一つめは自社の媒体を有効活用することだ。
「とかく編集者はウエブ上で新しいことをやる場合、新しい何かをしなければと意識しすぎてしまう。僕も最初はそうでしたが、それをあらため伝統がある『週刊文春』や『月刊文藝春秋』で力のあるいい記事を有効に活用すれば活路が開けると考えました。当初は、それらの記事を宣伝するつもりで『文春オンライン』に載せましたが、オンラインのPVが大きく上がったことで、雑誌の売り上げアップにも貢献できたと思います。今は発売前日の水曜日に『週刊文春』のスクープを含め強力な記事3本を要約して載せています」
 二つめがPVという数字に真剣に向き合うこと。
「いいものをつくれば利益につながるという編集者特有の固定観念を捨てました。目の前のPVの数字をいかにあげるかに集中した。そのためデジタル向けに見出しや記事を変えるなどをしている。変えるに当たっては、担当編集者を尊重しながら社内調整しています」
 三つめは何かを決める重要な会議は全員参加が原則だ。
「編集者もそうでない人も出席します。編集者以外の人が記事に口出すのはOKです。社内でこういうやり方の会議をしているところはなかなかないですよ」
 こうして月間PVを3億とか4億に伸ばし、それに伴い広告量が増大、その結果、大きな利益をあげている。
橋詰雅博
 
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2020年08月03日

【焦点】 東京五輪選手村訴訟 次回弁論8月18日に決まる 原告不動産鑑定士の月刊文春記事を証拠として提出へ=橋詰雅博

 東京五輪選手村用地を激安で払い下げた小池百合子都知事らに損害賠償を都が求めるべきだとする民事裁判(日本ジャーナリスト会議機関紙2017年10月25日号に既報)の第9回口頭弁論は、コロナ禍のため延び延びになっていたが、日時がやっと決まった。8月18日(火)午後2時から東京地裁103号法廷で行われる。大法廷で開きたいとしていた原告弁護団の要望を裁判所が受けいれた。103号は傍聴席数が100近くあるが、今回、三密を避けるため傍聴席は36に限定された。
 前回の1月17日の裁判以来7カ月ぶりになる8月の法廷では、原告側が先に提出した岩見良太郎・埼玉大学名誉教授らの意見書をもとに被告(東京都)に対して全面的に反論する。岩見名誉教授は、地権者は都だけの更地であるのに、極めて異常な個人施行の第一種市街地再開発事業を都があえて実施したのは、不当な都有地処分を隠蔽するためだったと述べている。
 ところで原告都民33人の中に不動産鑑定士の桝本行男(72)さんがいる。桝本さんはこの疑惑の土地の評価額を鑑定した。それは昨年の10月26日の第4回口頭弁論で公開された。街区は5つに分かれ、各区によって1平方b当たり100万から134万円で、総額は1611億1800万円と弁護士が陳述した。そして弁護士は「92%も減額し、都民の財産が1470億円失う」と指摘し、都は激安の根拠を示すべきだと訴えた。都が算出の根拠とした日本不動産研究所の調査報告書(鑑定評価書ではない)の多くが黒塗りだからだ。
 その桝本さんを昨年の月刊文藝春秋12月号でノンフィクション作家・清武英利さんが取り上げている。清武さんが連載中の「後列のひと」第11回目に登場した。タイトルは「土地のことは土地に聴け」。記事によれば、この言葉は不動産鑑定の父≠ニ呼ばれる日本不動産鑑定協会の櫛田光男・初代会長が残したものだという。桝本さんはこれを<地道に現場を歩け>と解釈し、仕事を続けている。「晴海選手村土地投げ売りを正す会」ニュース最新号によると、原告弁護団は、見開き4ページのこの記事を証拠として裁判所に提出することを考えている。
 被告弁護団は、桝本さんは原告であり、中立性を欠く鑑定と批判したが、桝本さんの誠実な人柄と公正な仕事ぶりがうかがえるこの記事は証拠になり得ると思った。
橋詰雅博
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2020年07月15日

【焦点】 黒人世帯の資産は白人の13分の1―ピケティ理論℃vい出す=橋詰雅博

  日本ジャーナリスト会議(JCJ)が7月4日に行った第1回オンライン講演は、「黒人が殺される国 アメリカの深層」がテーマだった。話したのは近刊『アメリカ白人が少数派になる日 「2045年問題」と新たな人種戦争』(かもがわ出版)の著者でジャーナリスト・矢部武さん。アメリカの社会、政治、経済を約40年間ウオッチしている矢部さんは、アメリカの根深い黒人差別問題などを平易に解説してくれた。
  講演の中で、白人と黒人との経済的な格差が大きいことを指摘。世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」(PRC)が2014年の国勢調査をもとにつくった調査によると、黒人世帯の所得中央値は約4万3300ドル(約465万円)、白人世帯は約7万1300ドルで、白人世帯は黒人世帯の1・6倍以上収入が多い。また、資産保有額の中央値(2013年)では、白人世帯は14万4200ドル(約1546万円)で、黒人世帯1万1200ドルの約13倍もの資産を所有していることになる。黒人世帯の保有額が圧倒的に少ないのは、黒人は長い間差別され、土地・建物を所有することや、その購入資金も借りることが禁止されていたことも関係している。ということは子どもらがもらえる相続財産があまりないのだ。
 ここで思い出したのは、高額経済本(日本では約6千円)にもかかわらず300万部売れた世界的なベストセラー『21世紀の資本』だ。著者のフランス経済学者トマ・ピケティは、こう分析した。相続財産に恵まれた富裕層は、投資によって不労所得を稼ぎ、政府の減税の恩恵を受ける、その一方では資金に余裕がない人は、いくら働いても富裕層との格差は開き、縮まらない。つまり相続財産の多寡が人生を決める。
 アメリカの白人と黒人の資産保有額の格差は、このピケティ理論≠ェピタリと当てはまる。しかし、白人が少数派になる2045年以降、白人と黒人の立場は逆転するかもしれない。
橋詰雅博
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2020年07月08日

【焦点】 トランプがコロナ感染拡大を放置する理由=橋詰雅博

 米国の新型コロナウイルス新規感染者数が6月頃からウナギ登りだ。全米50州のうち42州で増加し、近ごろは毎日4万から5万人と高い水準で推移している。にもかかわらずトランプ大統領は、ウイルスは「99%無害」とか「いつかいなくなる」「(感染拡大は)コントロールされている」などと言い放っている。ワシントン・ホスト紙は、大統領の主張は「致命的な妄想だ」と社説で切って捨てた。トランプはなぜ我関せずの姿勢を続けるのか
 日本ジャーナリスト会議(JCJ)が7月4日に開いた「黒人が殺される国 アメリカの深層」をテーマにオンライン講演したジャーナリスト・矢部武さんは、その理由についてこう述べた。
 新型コロナ感染者急増や反黒人差別デモの対応がまずく、トランプは批判を浴びている。このため11月の大統領選に向けた各種世論調査の支持率は、野党・民主党候補のバイデン元副大統領に10ポイント以上差をつけられている。トランプ再選は危うい。ならばひと暴れする。
 「そこでコロナ感染拡大阻止に積極的に取り組まない。感染がどんどん広がり、感染者が今の2倍や3倍になれば、大統領選は延期や中止もあり得ます。混乱が大好きなトランプならば、それを狙っているのではないか。しかし、そうなってもホワイトハウスに居座り続けられるのは任期が切れる来年1月までですが……。大統領が不在となった場合、民主党のペロシー下院議長が代行を務めます」(矢部さん)
 また、大統領選が実施されてバイデンが勝った場合、トランプは難癖をつけて選挙無効を主張するシナリオも考えられる。彼のメイン支持者である白人をそそのかし、武装市民≠ェホワイトハウスを取り囲む可能性もある。トランプ支持の武装市民は200万から300万人いるという。
 一筋縄ではいかないトランプゆえに何を仕掛けてくるか予測不能だ。
 橋詰雅博
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2020年06月26日

【焦点】 普及率低迷で 感染接触通知アプリ 無用の長物≠ノ?=橋詰雅博

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 コロナ感染防止策としてわが国が導入した感染接触通知アプリの実用が6月19日からスタートした。試行版とはいえ、不具合が続出し、使えないツール≠ノ陥っている。加藤勝信厚労相は、修正し1カ月後に完全版≠送り出すというが、どうなるやら。ところで多くの人がこのアプリを使わなければ、コロナウイルスの封じ込めに成功しない。どのくらい広がれば効果があるのかについて、英オックスフォード大学の研究では、アプリを人口の6割が使えば地域的流行を回避できるという。
 中国や韓国、台湾など政府が半ば強制的にアプリを利用させた国はともかく、日本のような利用するかは個人の判断とする国ではどのくらいの普及率なのか。普及率が高いとされるアイスランドでさえ4割程度にとどまっている。日本がモデルにしたシンガポールも3割超だ。
 シンガポールでは氏名や携帯電話番号の入力が必要で、政府に個人情報を握られるという国民の反発が強かったから普及率が伸び悩んだ。これでは役立たないとシンガポール政府はコロナ追跡端末そのものを6月中に配布する方針である。まずスマホを持たない子どもや高齢者などに配布し、最終的に全国民約570万人への配布を検討している。国民からデジタル監視やプライバシーの侵害だという声が上がり、「警察国家化の 阻 止」を訴えるネット署名が広がっている。
 普及率6割を日本に当てはめると、「LINE」利用者が約8400万人とされるので、それに匹敵する。目下、ダウンロードした人は約400万人だ。広がるかは安倍政権への信頼度が大きなポイントになるだろう。しかし、現政権への批判は根強い。森友・加計疑惑、公選法違反に問われている桜を見る会、首相が昨年の参院選で肩入れした河井前法相夫妻の買収事件など疑惑のオンパレードに加えて、コロナ禍へのおざなりな対策に国民の不満が爆発している。
 こうした事が原因でここにきて内閣支持率急落の安倍政権が提供したアプリに、いくら個人情報を守る仕組みになっているといわれても、疑いは晴れず信頼できないと、利用をためらう人は少なくないだろう。プライバシー侵害や行動制限の恐れがあり、機能が完全でないアプリが6割普及するとはとうてい思えない。安倍政権への信頼度も低く、結局、無用の長物≠ノなりかねない。もっとやるべきことは第2波や第3波に備えた医療態勢の強化ではないか。
橋詰雅博
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2020年06月20日

  【焦点】 政官民のもたれ合いの構図一向に変わらず=橋詰雅博

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 事業委託をめぐる安倍政権と電通のズブズブの関係が大問題になっている。なぜ政府は巨額の事業を電通に丸投げ≠ノ近い形で任せてしまうのだろうか。表ざたになったらメディアや世間からたたかれるのはわかっていながらこういうズサンなやり方をするのはもはや確信犯≠セ。自民党と電通の癒着構造について、元博報堂社員で『電通巨大利権〜東京五輪で搾取される国民』(サイゾー)の著者・本間龍さんは、6月初旬講師として招かれたオンラインセミナーで、こんなことを語っていた。
 「電通による20億といった多額の中抜き≠ヘ異常です」と前置きした上で、「ダミー会社を使うのは、電通に直接、巨額なお金が渡るのが明るみに出たら問題化するので、それを避けるためです」といわば電通隠し≠ェ目的だと指摘した。政府はどうして電通任せにするのだろうか。
 「発注する官庁は公金を使うので、もしも事業が失敗したら、国民の批判を浴びます。したがってそうした時、電通ならばしりぬぐいを自社でやるだけの体力や人材があります。何かトラブルが起きた場合でも電通担当者を呼びつけてしかり飛ばせば済みます。そこから末端まで意向が伝わる。発注者はラクですからね」
 欧米の事情について「海外では電通のような一社で全部やれる巨大な広告代理店はありません。だからこんなデタラメなことは起りにくいと思います。政府にとってなんでもやってくれる企業はとにかく便利です」
 巨額な事業の受注の見返りとして電通は警視庁や警察庁、経済産業省などからの幹部職員の天下りを受け入れている。6月17日付しんぶん赤旗では実名入りで、10年間で12人が天下りしていると報じている。
政官民もたれ合いの構図は昔から何も変わっていない。
 橋詰雅博
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2020年06月04日

【焦点】 日本政府が韓国市民団体のウガンダ計画を中断に追い込んだ!?=橋詰雅博

 韓国市民団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正議連)の前理事長で与党「共に民主党」国会議員・伊美香氏(ユン・ミヒャン)の同団体不正金疑惑の一つとしてアフリカ・ウガンダでの「金福童」センター設立事業の中断があげられている。事の真相はさておくとして、これを中断させたのは日本政府という見方がある。
 昨年の1月に亡くなった金福童さんは旧日本軍慰安婦被害者で長年、女性人権運動家として活躍。同団体はその功績をたたえ、世界に人権と平和のメッセージを発信する目的で金福童センター設立事業に取り組んできた。内戦下で戦時性暴力被害が起きたウガンダ北部のグル地域に同センターを建設するため昨年6月から募金活動を開始した。2億ウォン(約1700万円)を集め、広さ1万4500坪の土地を購入した。
 日本軍「慰安婦」問題解決全国行動共同代表の粱澄子さん(ヤン・チンジャ)さんは、今年2月24日発行「全国行動ニュース」の中で日本政府の動きをこう書いている。
市長は態度を一変
〈正議連の支援を受けセンター運営に当たる市民団体「ゴールデン・ウィメン・ビジョン」(GWV)をそれまで支援していた市長が、11月の竣工式前から施設内に日本軍「慰安婦」歴史館が含まれることがあったら建設を許可できないとGWVに圧力をかけ始めていたという。2019年上半期にGWVらを訪ねた日本大使館員は正議連について悪宣伝をおこない、連帯するのを止めたら支援するという話をして行ったと聞いていたため、このようなウガンダ行政当局の背後に日本政府の圧力があることは明らかだった〉。
 状況を打開するため正議連とGWV代表シルビアさんが市長室を訪ねた。机の上には日本政府からきたと思われる文書が置かれていた。
嘘をつくなと恫喝
 市長はセンターの名前は何か、慰安婦問題が含まれるのかなどを質問。シルビアさんらの説明を聞いた後、市長は〈嘘をつくな、自分はメールをもらった、正議連はウガンダに平和の少女像を建てるために来たのだと言い、なぜ日本軍「慰安婦」問題を持ち込んで紛争をつくるのかとシルビア代表を責め立てた。話の途中、日本政府によるウガンダ政府への支援額も飛び出し、グル地域では日本政府が道路建設するなどにお金を出していることも話した。そしてついにGWVの法人登録を取り消すとまで言い出した〉。
 結局、正議連はウガンダでの「金福童センター」計画を中断。伊美香代表は米国に同センターを建てると宣言したが、コロナ禍などによりこの計画は頓挫している。
 粱さんは、このような日本政府の恥ずかしい妨害活動をやめさせるべきだと訴えている。
 メディアはあまり報じないが、日本の外務省が平和の少女像など慰安婦メモリアル設置をしようとする欧米やアジアの各国で阻止活動しているのは有名な話だ。ウガンダでの出来事もその一例ではないだろうか。
橋詰雅博
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2020年05月26日

【焦点】 大量返品を危惧 コロナで追いうちの中小出版社=橋詰雅博

 人口減、書店の激減、消費税率10%の値上げによる出版不況は、コロナ禍で既存の書店の臨時休業や営業時間の短縮でより深刻になっている。コロナで追いうちをかけられた出版社は、どんな状況なのだろうか。
 所属する団体のアンケート調査に応じた中小出版社10数社の回答の集計表では、リモートワークを実施している社は70〜80%。売り上げは前年同期比(3月と4月の2カ月間)で30〜50%減だ。手元資金でどのくらい経営を維持できるのかの問いに対して3カ月が最も多い。つまり6月以降、経営危機に陥るというわけだ。印刷物が事業の中心である会社は打撃が大きい。
 この団体の世話役は「イベントのチラシや旅行関係のフリーペーパーなどの仕事がなくなったからです。開店休業¥態と言っても過言ではありません」と話す。ほとんどの会社は持続化給付金など公的資金を受ける申し込みを済ませている。これによってなんとか危機を乗り切ろうとしている。
 ある出版社の幹部社員はこうつぶやく。
「取次会社から書店への配本にブレーキをかける要請はなかった。5月分の返品はこらからですが、大量に戻ってくるのではと心配です。恐怖を感じています」
 中小出版社がバタバタ潰れたら、日本の出版文化は先細る。
橋詰雅博
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2020年05月15日

【焦点】 マスクなしの経営陣に驚く 株主総会で=橋詰雅博

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 東証一部上場企業の株主総会に出席した。3月末のことで、4月7日の緊急事態宣言の発令前だからまだ新型コロナウイルス感染が本格化していない状況だが、総会はどうなっているのか興味があったので、今年は出た。
 事前に株主には新型コロナ感染防止への対応についてと題したハガキが届いた。それには@当日のご自身の体調をお確かめのうえ、マスク着用、会場各所のアルコール消毒液の使用等、ご協力の程お願い申し上げますA混雑緩和の観点から、ドリンクコーナーの設置及びご来場の際のお土産については、今回は中止とさせていただきますと書かれていた。
 会場は都内一流ホテルの大ホールで、ホテルマンによると800人くらい入るそうだ。会場に入る前、両手をアルコール消毒した後、体温を測るサーモグラフィーカメラの前を通る。おそらく37・5度以上と検知されると入場を断られるのだろう。  
 感染防止に協力した後、受付を済まし、会場へ。ガラガラで両側2席を空けて着席。マスクをしているスタッフの方が目立つほど株主は少なかった。僕が尋ねたスタッフは、出席した株主は100人に満たないと返事した。
 ひな壇にそろった10数人の経営陣を見て少し驚いた。全員、マスクをしていなかったからだ。予想を裏切る光景。議長役の社長は、役員は事前に十分に体調をチェックしているので、本日はマスクはしていませんと述べた。株主にマスク着用を強いておきながら一方でこうしたやり方にやや不満を抱く。
 社長はコロナ禍の対応のため遠距離通勤の社員を対象に職場に近いホテルの部屋を用意していると話した。ここの企業は医家向け製薬会社を傘下に持っているので、コロナ感染防止対策事業ついて質問する株主が多かった。
 何か具体的なプランを持っているのかと僕の質問に対して、議長が指名した製薬会社社長は診断できる検査キットの輸入を検討していますと答えた。企業秘密があるのだろうから公の場では明快な事は言えないのは分かるが、あまり納得できなかった。ちなみにスタッフは株主の発言が終わるたびにマイクをアルコール消毒液で拭いていた。
 毎年6月下旬に集中する株主総会だが、今年はそろえる書類などが準備できず延期する企業も少なくない。ネットを活用したバーチャル株主総会も登場した。コロナ禍で株主総会も状況が一変だ。
 橋詰雅博
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