2022年01月21日

【焦点】五輪選手村訴訟、不当判決と高裁へ 25日に報告集会開く=橋詰雅博 

                           
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          原告団が中心の「晴海・正す会」1月17日号ニュース
 東京地裁が昨年12月23日に下した「譲渡価格は適正」という不当判決に対して五輪選手村訴訟の原告団は、25日(水)午後3時から江東区文化センターで判決内容の報告と控訴審に向けた意思統一を図る集会を開く。
 この訴訟は、東京・晴海の選手村用地を東京都がデベロッパーに投げ売り≠オたとして都民32人が小池百合子都知事らに周辺地価との差額約130億円を請求するように都に求めたものだ。
 住所側の訴えを退けた判決について、「違法性を認めず、極めて不当な判断」と批判した原告代理人は声明で問題点をこう指摘した。
 「脱法的な都市再開発制度が許されるならば、自治体の財産の直接譲渡行為では、地方自治法の規制をすり抜け、自由な価格で売却できることになり、再開発事業制度の公共性も、土地価格の公平性を担保する不動産鑑定制度も骨抜きになる」
 また都とデベロッパーとが事前に綿密な協議を行った記録を都に情報公開を求めたが、「破棄済みで公開できない」と拒否したことについて、公正であるべき行政が担保されていないと訴えた。
  報告集会に先立ち原告団と弁護団が12日行った会議では、裁判官の判断に多くの疑義が出た。
 建設工事費をわざと高くするため地下駐車場建設に関して明らかに事実誤認がある、官製談合について被告側証人の嘘と分かるような証言をもとに談合はなかったとする判断など多岐にわたっている。
 4年間審理された地裁から五輪選手村訴訟の舞台は東京高裁に移る。
 橋詰雅博
                          
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2022年01月06日

ゲノム編集食品ラッシュだが 未知の部分置き去り禍根残す恐れも=橋詰雅博

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 本紙10月号記事でゲノム編集技術によって作られたトマトと肉厚マダイが人体に有害の可能性があると指摘したが、ゲノム編集食品の開発は止まらず大学などが市場に続々と参入中だ。
 京都大発ベンチャー企業「リージョナルフィッシュ」は肉厚マダイに続き急速成長させたトラフグ販売=写真=も開始した。
大学や研究機関などが開発中の食品はほかにもある。
 ・芽に含まれる天然毒素が少ないジャガイモ=大阪大と理化学研究所
 ・生んだ卵にアレルギー物質が少ないニワトリ=産業技術総合研究所
 ・収穫量が多いイネ=農研機構
 ・品質低下を起こしにくい小麦・大麦=岡山大など
 ・同量のエサで大きく育つ豚=徳島大発ベンチャー「セツロック」 
 ・攻撃性を弱め共食いしにくいサバ=九州大など
 ・糖度が高いトマト=名古屋大・神戸大など
  これらはやがて販売される予定だ。ゲノム編集食品に詳しい元名古屋大学理学部助手で分子生物学者の河田昌東さんは「世界で最初のゲノム編集食品は、2年前に販売されたコレストロール値を下げる米国の大豆油です。そのあと日本のトマト、肉厚マダイ、トラフグが続いた。さらに相次いで商品化が見込まれるので、日本はゲノム編集食品の最も多い国」と語る。
 ゲノム編集は、特定の遺伝子の塩基配列を切断しその遺伝子の機能を失わせる技術だ。しかし標的外遺伝子の破壊などが問題視されている。にもかかわらずゲノム編集食品は安全性の審査がない。
 「開発者は販売の1年ほど前から資料などを提出した厚労省専門調査会と話し合っている。ここで『厚労省に届け出てOK』と判定されると販売に。ところがこの事前相談≠フ内容はほとんど非公開です。外部から検証ができず、これは問題です」(河田さん)
 河田さんは警告する。
「今の状況は原発の電力が福井県の若狭湾から大阪万博に送られた1970年の時とよく似ている。当時、すでに原発事故や放射能廃棄物問題が指摘されていたが、政府や電力会社は『事故は起きない』『廃棄物は処理できる』と強弁した。それが嘘だったことは証明済み。未知の部分を置き去りのまま経済優先で進めるゲノム編集技術は未来に大きな禍根を残す恐れがあります」
 橋詰雅博
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年12月25日号

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2021年12月27日

IT企業が自治体支配=@民間人材 デジタル化の要職に 企業や業界に有利な政策推進か=橋詰雅博

 総務省やデジタル庁は自治体のデジタル化に躍起だ。同省の「自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)推進計画」を地方行政におしつけ2026年3月までに計画を強引に実現させようとしている。対応に迫られる自治体の多くは、IT人材が足りず民間人材の登用に向かっている。民間IT職員が自治体で大きな影響力を持つことになる。
 総務省の「自治体DX推進計画」は、計画の推進体制について首長の下に最高情報責任者のCIO(チーフインフォメーションオフィサー)あるいはCDO(チーフデジタルオフィサー)と、手助けするCIO・CDO補佐官を配置するとしている。総務省の調査によると、デジタルシステムを運用できる情報部門の人材は1990年代までは自治体に20〜30人ほどがいた。ところがそれ以降、運用・保守の外注が進んでデジタルに比較的強い人材は数人にまで減少した。外注頼みは加速する一方なので仕様書を書けないほど全体のIT能力は落ちている。

報酬国が負担も
 こうした現状では、内部からCIOやCDO、補佐官に就ける人材は決めて少ない。となると多くの自治体はIT企業から人材を登用するしかなく、企業を辞めずに役所の仕事を行う兼業も総務省は認めている。さらに自治体の民間補佐官の登用を容易にするため報酬の約半分を総務省が負担する。
 神奈川県の場合、CIOもCDO(県ではデータ統括責任者と呼ぶ)も置いており、どちらも1年ほど前からLINEの執行役員が一人で兼 務。LINEはこれまで県のデジタル化を請け負ってきた。執行役員をCIO兼CDOに任用した理由を黒岩祐治知事は「(これまで)LINEと最新のICT(情報通信技術)を組み合わせた対策を、圧倒的なスピードで導入してきたから」と述べた。
 広島県福山市は、CDO1名とCDO統括補佐官1名、CDO補佐官2名はすべてIT企業からの人材だ。
 「求人を載せた大手転職サイトを見た応募者から市は選んだ。CDO補佐官に対し市は報酬を支払っていません。企業が全額負担している。見返りを期待してか『無償でいい』と企業が提示したと思います」(自治体関係者)

計画練り上げる
 自治体DXに詳しい地方自治問題研究機構主任研究員の久保貴裕さんはこう言う。
「自治体のDX計画を進めるのは首長、最高情報責任者、補佐官です。IT通の首長はあまりいませんので、最高情報責任者と補佐官が計画を練り上げる。首長は彼らが練ったプランに多少修正を加えるかもしれませんが、大枠は同意するでしょう。民間の人材は兼業が一般的です。特別職非常勤職員などの身分で働くが、DX推進計画の実現ためトップダウンで各部門に指示を出す。正規の幹部職員でもないのに強大な権限を行使する」

守秘義務負わず
 しかも「守秘義務」「全体の奉仕者」など公務員の服務規程は、非常勤職員には適用されない。
 「企業は、わざわざ有能な社員をCIOやCDO、補佐官として自治体に送り出すからには、何らかの見返りを考えるのは自然でしょう。送り出された社員は特命≠帯びていると思います。彼らは公務員の服務規程の適用外ですから、住民の利益よりも所属する企業や業界の利益を優先して自治体のDX政策を策定し実施することはあり得ます。民間からの人材登用により公務の公平性が損なわれる利益相反が生じる可能性があります」(久保さん)
 DX推進の波に乗りIT企業が自治体を支配≠オかねない。
 橋詰雅博
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年11月25日号
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2021年12月04日

【焦点】ゲノム編集食品トマトとマダイ販売 安全性の審査なし 体に悪影響の可能性も=橋詰雅博

                             
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 野菜や動植物などの品種改良の一つゲノム(全遺伝情報)編集技術を使った食品の販売が相次ぐ。血圧上昇を抑える成分「GABA(ギャバ)」が通常の5倍以上含むトマト(写真上)と肉厚のマダイ(写真下)だ。短期間で量産ができるという。ただ遺伝子操作による食品だけに安全性の問題がつきまとう。体に有害の可能性があると警鐘を鳴らす人は少なくない。
 GABAトマトを開発したのは筑波大発のベンチャー企業「サナテックシード」。肉厚マダイは京都大と近畿大が共同開発したもので、京大発ベンチャー「リージョナルフィッシュ」が販売。どちらも当面はスーパーなどで一般販売せず、ネット注文だけに対応する。
 遺伝子組み換え技術は外部から遺伝子を入れるが、ゲノム編集技術は働きを抑える遺伝子を切断する。GABAトマトの場合、GABA濃度を低下させる遺伝子をカット。肉厚マダイは筋肉成長を抑える遺伝子「ミオスタチン」を切断している。
                       
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標的外切断も
本当に問題ないのだろうか。元名古屋大学理学部助手で分子生物学者の河田昌東(まさはる)さんはこう説明する。
 「特定の遺伝子の塩基配列を切断し機能を失わせるゲノム編集技術をノックアウトと呼んでいる。GABAトマトも肉厚トマトもハサミ役を担う特殊な分解酵素で標的遺伝子を切断。問題なのは、標的外の遺伝子を破壊するオフターゲットが起きていないかどうかです。これが起きていたら体に悪影響が考えられる」
 さらにGABAトマトにはノックアウト確認のためのマーカーとして抗生物質耐性遺伝子を用いている。
 「この遺伝子を含む食品を食べると腸内細菌がこれを取り込み抗生物質耐性菌に変わる。結核や肺炎などに罹患したとき、細菌をやっつける薬である抗生物質の効き目が弱くなります。この遺伝子がトマトに残っているリスクは消えません」(河田さん)
 トマトの製法と少し違い抗生物質耐性遺伝子は使わないが、肉厚マダイにも別のリスクがある。河田さんは「筋肉成長抑制の遺伝子カットは、成長ホルモン『IGF(インシュリンライク・グロース・ファクター)−1』が多く含むマダイになっているはずです。IGFは発がん性が確認されており、男性は前立腺がん、女性は乳がんになりやすい」と指摘する。

届け出でOK
 しかもゲノム編集食品は厚生労働省に届け出るだけで販売できる。ゲノム編集食品の販売を促進するため安全性審査も表示義務も不要にした米国に日本は追随した。
 「トマトとマダイを開発したメーカーは、厚労省薬事・食品衛生審議会と1年ほど前から事前相談している。メーカーが提出した各種の資料などに基づき審議会は届け出を認可。議論の内容も資料もほとんど公開されていません。相談会という曖昧な会合で、ゲノム編集食品の事実上の安全性審査が行われるのは極めて危険です。遺伝子組み換え食品と同じく安全性審査を実施し、表示もメーカー任せではなく義務付ける。EUはゲノム編集食品も遺伝子組み換え食品も安全性審査と表示を義務付けている」(河田さん)
 いまのところトマトもマダイもゲノム編集食品と表示されている。メーカーはそれをウリに売り上げを伸ばそうとしているからだ。しかし加工食品に使われるときは表示されるだろうか。
 安全性に疑義あるゲノム編集食品。取り返しのつかない被害が生じる恐れがある。
 橋詰雅博
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年10月25日号

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2021年11月27日

【焦点】五輪選手村訴訟 12月23日に東京地裁で判決 官製談合の是非に注目=橋詰雅博

                            
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都有地の東京五輪選手村用地を晴海の周辺地価と比べ10分の1以下の約130億円で大手デベロッパー11社に売却したのは違法だとして都民33人が都に対し、損害賠償約1500億円を小池百合子都知事らに請求するよう求めた裁判は、12月23日(木)午後3時、東京地裁103号法廷で判決が言い渡される。
 筆者は4年前の第1回口頭弁論前に原告代理人の淵脇みどり弁護士にインタビューし、JCJ機関紙2017年10月25日号に記事を掲載した(写真下)。そして裁判の傍聴を続けてきた。
 この住民訴訟の問題の核心は東京都が「一人三役」の役割を務めたこと。どういうことかと言えば、地権者と個人施行者、許認可業者の3つを都が併せ持つという異様な構図をつくったのだ。都都市整備局によると、自治体が個人の地権者として個人施行の再開発事業を行った事例は5件あるが、都のような「一人三役」のケースはない。
 通常の都市計画事業という形態ならば、公聴会・縦覧・意見書の提出に加えて都市計画審議会での議決という一連の手続きが必要。また都議会や財産価格審議会にも諮らなければならい。「一人三役」はこうした面倒なことを省くことができる。実質、直接売買を可能にしたのだ。
 なぜ都はこうしたカラクリを編み出したのか。それは選手村を建てる大手デベロッパーに破格の安さで土地を売却するためだ。デベロッパーは五輪終了後に選手村建物を活用して手直し、新築マンションとして販売するので、入手する土地は安ければ安いほどいい。一方、晴海という好立地の物件ならば、高く売れる。利幅が大きくなる。
 都とデベロッパーはこの五輪村用地の売却を巡り数年前から協議を重ねてきた。こうした官民の癒着の「官製談合」によって土地のたたき売りを実現させた。カラクリはそれをスムーズに運ぶための方法だった。ちなみにデベロッパー11社のうち7社に都幹部職員12人が天下りしている。
 もしも正常な価格で売却していたら、裁判もなく財政面でプラスになり納税者への公共サービス向上につながったのではないか。
 橋詰雅博
                       
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2021年10月29日

迷走「スーパーシティ構想」自治体提案に国がダメ出し 大胆な規制改革と引き換え 住民ニューズと隔たる危険性=橋詰雅博

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 デジタル庁と連携
未来都市のモデルと夢を振りまくスーパーシティ構想。政府は新発足のデジタル庁と連帯しながら取り組みを加速化させるという。ところが政府の公募に応じて31自治体が提示した計画案は8月の専門調査会で(会長・坂本哲志地方創生担当相)ダメ出しされた。そして再提出を求められたのである。迷走気味の同構想はどうなるのか。
 政商≠ニ揶揄される竹中平蔵・慶応大学名誉教授が旗を振り2018年当時の安部晋三首相が成長戦略として打ち出したスーパーシティ構想は、AIやビッグデータなどを駆使し、車の自動走行、ドローンでの配送、行政サービスのデジタル化、オンライン医療・教育、スマホ決済など少なくても5つの領域を同時に実施する。これには大幅な規制緩和が必要なため国家戦略特区として指定された地域で行う。この地域を措定するのが専門調査会。

 「補助金ねらい」
 しかしスーパーシティの問題点は少なくない。@これまで実施された12の地域指定のほとんどは経済効果が小さく成長戦略として失敗、その教訓を生かしてないA非参加の住民への手当がなく、嫌なら出ていけという姿勢が見受けられるB個人データ漏洩の防止策が徹底していない―などだ。
 こうした問題点のほとんどは未解決のままだが、専門調査会のダメ出しについてスーパーシティ構想に詳しいアジア太平洋資料センター代表理事の内田聖子さんはこう見る。
 「各自治体は、プロジェクト担当の内閣府役人や職員、計画を実質的に立案する民間コンサルタントの3者によって計画案を練り上げています。住民の合意を得て、国の意向を入れ込み自治体ができる範囲内で作成した案が専門調査会で突き返されたわけで、国に対し迷走していると思っているはずです。一体どうやれば国は納得してくれるのか思い悩んでいるのではないでしょうか」
 8月6日の専門調査会で見直しを求められた主な理由は「大胆な規制改革がない」「アイデア不足」「補助金狙いの印象を受けた」。竹中平蔵氏らとともに専門調査会委員の村井純・慶応大学教授は6日の調査会でこんな発言している。

 バスターズが登場 
<規制改革には専門性がある。サイバーセキュリティではWEBページをどのように攻撃して穴をあけるということには専門的なノウハウが必要です。これと同じで岩盤規制という壁をみれば穴のあけ方が分かる人がいるのです。専門的な「岩盤規制バスターズ」のような人がもっとメンタリングに関わる。それがすごく大事です>(議事要旨)
 岩盤規制バスターズとして役目を担いそうなのは、新しい内閣府IT役人とか民間コンサルタントなど。バスターズが介入すると仰天案≠ェ作成される可能性がある。
 「例えば『ドローンをどこでも飛ばしてよい』『住民の多くが車を自動走行できるシステムをつくる』『ある程度加工するが個人データを民間事業者に積極的に提供する』といったプランが考えられます。大胆な規制改革を進めようとすれば住民のニューズから隔たるものが出てくる危険性がある」(内田さん)
 再提出の締め切りは10月15日。年内に何カ所かの第一次地域指定が決まる。計画案を再提出した自治体に住む住民はその案をチエックし、不利益をこうむりそうなものが入っているなら自治体にどうしてそうなったかを厳しく問いただすべきだ。
 橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年9月25日号
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2021年09月28日

【焦点】裁判官宛て公正な判決求める要請はがき提出に取り組む 五輪選手村訴訟の原告団=橋詰雅博

                        
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  東京・中央区晴海の五輪選手村住民訴訟は、都有地を周辺地価の10分の1以下の約130億円で大手デベロッパー11社に売却したのは違法だとして都民33人が都に対し、損害賠償約1500億円を小池百合子都知事らに請求するよう求めた裁判だ。4年間の審理を経て8月31日に東京地裁で結審した。ただ判決日は未定。
 現在、原告団は裁判官宛に公正な判決を求める要請はがき(写真)を提出する活動に取り組んでいる。実はこの要請はがき作戦≠ヘ2回目だ。1回目は昨年10月以降に始めた「認証申出」に関するもの。小池都知事らを証人尋問して欲しいという内容だった。これが功を奏したのか、今年4月の裁判では、1日に原告の桝本行雄・不動産鑑定士が、8日には被告側の証人として約130億円の価格調査報告書を作成した日本不動産研究所の水戸部繁樹・不動産鑑定士がそれぞれ証言した。2回目の要請はがきが裁判官の心を揺り動かすことを期待したい。

学校用地に1u59万 
マンション開発10万


 ところで原告団が9月8日に開催した第4回総会で、中央区議会議員の小栗智恵さん(共産党)が選手村使用後のマンション群である通称「晴海フラッグ」のど真ん中の小中学校用地の区による購入価格について報告した。この都有地の路線価は1uあたり約100万円。中央区は都から公共施設の整備のための用地として「公共減額(路線価の5〜6割)」で買う予定だ。その敷地面積は16796uで、99億5千万円の予算を計上している。1uあたり59万2千円。都が大手大手デベロッパーに売却した選手村用地は1uあたり10万円だからいかに超格安かを示している。総会参加者は一様にその理不尽さに怒っていた。
 裁判はどちらが勝っても控訴審に持ち込まれる。
橋詰雅博
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2021年09月02日

【焦点】バイデンがアフガン米軍撤収で犯した2つの大きなミス 米ワシントン・ポスト記者が指摘=橋詰雅博

 米国での同時多発テロ9・11から20年を迎える。バイデン米大統領はこの20年周年を前にアフガニスタンからの米軍の完全撤収を実行した。軍事力による民主主義維持には懐疑的なバイデンは、オバマ大統領が2010年にアフガンへの米軍増派を実施する際、副大統領として反対したという。膨らむ一方のアフガンでの米軍事費のカットを強いられた財政的な理由もあり、20年戦争終結に突き進んだわけだが、果たして正しい選択だったのだろうか。

 朝日新聞オンラインイベント記者サロンに8月28日に出演した米ワシントン・ポスト記者のデビット・ナカムラさんは(10年から10年間ホワイトハウス担当)、バイデン大統領は撤収作戦実行を焦ったため2つミスを犯したと指摘した。デビットさんはこう続けた。
 「まずCIAなど情報機関からの報告を真に受けてしまったこと。米軍が完全撤収してもアフガン政府の支配は簡単に崩れないという内容でした。ところがイスラム組織タリバンは短時間で首都カブールを制圧し、政府は崩壊した。(撤収に気持ちが傾いているため)バイデンは完全読み間違えた。大きなミステイクでした。
 もう一つは計画が不十分のまま見切り発車した。滞在する米国人や米国に協力したアフガン人などもっと早い段階から出国させるべきでした。準備不足のせいで多くの民間人を巻き込むカオス状態にしてしまった」
 10年の米軍増派のとき、アフガンで4カ月間取材活動をしたデビットさんに協力したアフガン人は、ノルウェーに脱出した。デビットさんに同国ではアフガン難民は厳しい状況に置かれていると近況を伝えた彼は「14年にアフガンからの米軍撤収を当時のオバマ大統領が言い出したとき、実行されたらアフガンは内戦状態になりタリバンが実権を握ると思った。予想通りの事態になっている」と告げた。

 アフガンをカオス化させたバイデン大統領はピンチに立たされている。
 「アフガン失態にコロナのデルタ株感染急拡大が加わり、不支持が支持を上回っている。『これはいい材料だ』と思ったトランプはバイデン批判を一層強めている。『俺ならうまく乗り切れる』と盛んにPRしている。来年11月の中間選挙を見据えて落ち気味だった勢力を再び拡大させようと目論んでいる」(デビットさん)
 バイデン大統領はいつも上着の右ポケットには、イラクとアフガンで戦死した米兵のリストを入れている。先だってIS系勢力による自爆テロで犠牲になった米兵13人の名前がこのリストに加えられたことだろう。
橋詰雅博
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2021年08月20日

【焦点】米国の白人人口が初めて減少 少数派に転じたとき待ち受ける社会は=橋詰雅博

米国でヒスパニック系(スペイン語を母語とするラテンアメリカ系住民)を除く白人の人口が初めて減少した。
 最新の2020年国勢調査によると、白人の人口は約1億9170万人で、10年前の調査より約500万人減った。1790年の調査開始以来初めてだ。全人口(約3億3100万人)に占める白人の割合も前回調査の63・7%から57・8%にダウン。最も増えたのはヒスパニック系で、約19%占めた。アフリカ系は約12%、アジア系は約6%だった。
 白人などの人種の割合は先行きどうなるのか。18年3月発表した米国勢調査局の報告書では、「2045年ころに白人は少数派になるだろう」と予測し、その時の人種割合は白人が49・7%、有色人種の合計は50・3%(ヒスパニック24・6%、黒人13・1%、アジア系7・9%など)とはじき出した。
 その主な理由として18年から2060年の間に有色人種の人口は74%増加する、もう一つはその間に高齢化が進む白人は、自然減で減り続けることを挙げている。

 白人が少数派に転落すると米社会はどんなことが待ち受けているのだろうか。矢部武さんの最新著書『アメリカ白人が少数派になる日』(かもがわ出版)によると、白人の特権≠ェ失われると指摘する。白人の特権とは何かについて、ペギー・マッキントッシュ博士が挙げた具体的な事例を書いている。
@ スピード違反や飲酒運転などの理由がない限り、警察官に呼び止められることはあまりない。
A 公共の宿泊施設の利用を拒否されるなどひどい扱いを受けることを心配する必要がない。
B 小切手やクレジットカードを使う、あるいは現金払いをする時、何か不都合が生じることはない。
C 一人でショッピングに行っても、警備員に「万引きではないか」と付け回されたり、嫌がらせを受けたりすることはない。
D お金さえあればどこでも好きな場所で家を購入できる、またはアパートを借りて住むことができる。
E テレビや新聞などで自分の人種の人たちがポジティブかつ好意的に報じられることが多い。
F 国の歴史や世界文明の話になると、自分の人種がいつも創始者として見られ、その功績がたくさん紹介される。
G アファーマティブアクション(積極的差別是正策)を取り入れている職場で働いていても、同僚から「個人の能力ではなく、人種のおかげで採用された」と陰口を言われることはない。
 マッキントッシュ博士は、米国では白人に有利な社会システムができているため有色人種のように努力しなくても特権を持つ白人はある程度成功おさめることができると分析している。
 だが、やがて訪れるだろう白人の人種的な優位性がなくなった時、少数派の白人は多数派の有色人種から仕返し≠受けるかもしれない。分断を回避するためなんらかの社会システムを備えるべきだ。
 橋詰雅博
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2021年08月17日

【焦点】五輪選手村訴訟 31日の結審では原告2人が口頭陳述=橋詰雅博

  
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            「晴海・正す会」ニュース8月8日号
都民33人が小池百合子都知事らを相手に損害賠償を求めた五輪選手村訴訟は8月31日(火)に東京地裁で結審(103号法廷 15時から)する。
 7月30日に裁判所に提出した原告弁護団の最終準備書面は、@不動産鑑定基準に則らず、採用する数値で価格を大きく操作できる「開発法」だけで算出した超格安な都有地の売却価格の不当性A都議会や都財産価格審議会にも諮らず、秘密裏に土地投げ売りを企んだ都の財務会計行為の違法性B1者入札で特定建築者(11社グループ)に工事を受注させる官製談合疑惑―などこれまでの裁判で被告の東京都を追及して明らかになったことなどを整理して盛り込んでいる。
 この中で注目されるのは、4月8日の証人尋問で日本不動産研究所(不動研)の不動産鑑定士・水戸部茂樹氏の証言から、都が不動研に予め目標価格を示して価格調査報告書を作成させた疑惑が浮上したことを新たに加えたことだ。
 結審では、中野幸則原告団長と原告の岩見良太郎埼玉大名誉教授の2人が合わせて15分以内の口頭陳述を行う。2017年8月17日の提訴以来、まる4年で一審は終了する。判決は早ければ年末にも。
 橋詰雅博
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2021年07月27日

【焦点】ロ疑獄から45年 売り込み工作で3大黒幕≠ェ存在=橋詰雅博

  45年前の今日7月27日、日本はもちろん世界が衝撃を受けた。旅客機の対日売り込みで米ロッキード社から5億円のワイロを受け取ったとされる田中角栄前首相が逮捕されたからだ。金脈問題で首相を辞任したとはいえ、最大派閥を維持し政界のドンとして君臨していた田中は、ロッキード疑獄で首相へのカムバックの道が閉ざされた。1976年の逮捕から17年後の93年末に田中は慶応大学病院で75歳で死去した。刑事被告人は死んだが、最高裁は首相の犯罪を認定した。
 ロ疑獄で表面化したのはロ社の売り込み工作に加担した黒幕の存在だ。中曽根康弘の盟友で戦後最大のフィクサー・児玉誉士夫、オランダの王子ベルンハルト、サウジアラビアの武器商人アドナン・カショギの3人だ。3大黒幕≠駆使して自社の航空機売り込みを画策した。  
 戦闘機輸入で影響力を発揮したベルンハルトは、ロ社に約3億円の手数料を要求する書簡が明るみに出たが、刑事責任の追及を逃れる代わりに世界自然保護基金(WWF)総裁など公的な役職からすべて退いた。2004年93歳で死亡。
 カショギはニクソン米大統領と関係が深く、64年からロ社の代理人に。ロ社だけでなく複数の米軍事企業の国際取引に関与し、80年代初めに総資産1兆円の富を築いた。2017年82歳で病死した。
 1958年からロ社の代理人だった児玉は、3人の黒幕の中で、貢献度が高いと評価されロ社から最も高い手数料を提示されていた。旅客機とP3C対潜哨戒機の売り込みで成功したら合計70億円の約束を交わした。ロ疑獄ではロ社の販売代理会社の丸紅と旅客機を購入した全日空の両ルートは解明されたが、児玉ルートは未解明で終わった。とはいえ脱税と外為法違反で在宅起訴され1984年72歳で病死。
 児玉ともちつもたれつの関係の中曽根は名前が出たことでロ事件モミ消しに動いた。春名幹男さんの著書『ロッキード疑獄』(KADOKAWA)によると、依頼を受けたCIA東京支局長から伝えられた駐日米大使が国務省に連絡した可能性が大きい。1982年11月、彼は首相に就任。巨悪は法で裁かれることなく2019年に百一歳で死去した。
 ロ疑獄の発覚で一時は政界浄化された。しかし時間の経過に伴い、政界は濁っていった。政治とカネの問題は相変わらず解決されていない。
 橋詰雅博
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2021年07月26日

【焦点】デジタル先進国・フィランド発展の秘密は国民の信頼 政治不信の日本は実現できるか=橋詰雅博

次世代通信規格6Gの研究開発で、日本は北欧のフィランドと連携協定を結んだ。フィランドは通信機器メーカーの世界大手ノキアを生んだ欧州一のデジタル国家だ。デジタル先駆者のフィランドと比べ、今の日本はデジタル敗戦。この差は何なのか。

 2年連続トップ
 欧州連合(EU)加盟28カ国のデジタル人材や技術、公共サービスなど5項目で算出した「デジタル経済社会指数」ランキングで、フィランドは2019年、20年と第一位だ。フィランドのデジタル化はどう進展してきたのか。5月21日、朝日新聞のオンラインイベント「デジタル国家の秘密とは」でフィランド発のIT企業「リアクタージャパン」のエンジニア、ラウラ・タルキアイネンさんはこう語った。
 「政府は90年代から個人ID番号(国民背番号制度、日本のマイナンバーに当たる)デジタル化を進め、IDで医療や介護、パスポート申請などの手続きがオンラインで可能にした。コロナ禍前からオンライン授業を始めた小学校は、感染拡大で完全オンライン化された。リモートワークも働き手の60%がコロナ禍前から始めており、欧州で最も高い割合だ」

  AI講座無料提供
フィランドは、国立ヘルシンキ大学とリアクター社が開発したAIを基礎から学べるオンライン講座を19年から無料で提供。今では20数カ国語で受けられ受講者は65万人に。受講した朝日の女性記者は「ITリテラシーがなくても受講できAI教育のギャップを埋められる」と体験を話した。
 録画で特別出演のマリア・ニッキラ財務省情報管理シニアアドバイザーは「デジタル化での経費削減は納税者にも恩恵がでた。基礎以上のデジタルスキルがある人材も人口の80%近くと、EUの平均以上」と述べた。デジタル国家に発展した秘密は「国民の政府への信頼」とマリアさんは指摘した。

 幸福度も第一位
 ラウラさんは「国民が政治家を身近に感じ、人口の半分近い250万人がコロナ通知確認アプリを利用。それは政府への信頼があるから」と語る。
 国連の21年版幸福度ランキングでフィランドは4年連続一位。国民の政府への信頼が厚く、政府もよりよい公共サービス提供で国民の期待に応えようとする。高い幸福度が好循環が支えているようだ。
 幸福度56位の日本では、役に立たない通知確認アプリや給付金受け取りなどで使い勝手の悪いデジタルサービスに振り回され、デジタル法成立で同意なき個人データ利活用の恐れで政治不信が深まる。フィランドの高度なデジタルネットワーク構築は政府と国民一体となって進んだ。その鍵は政府への信頼感。だが日本では政府が信頼されているか。これで血の通うネットワークが築けるのだろうか。 
 橋詰雅博
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年6月25日号
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2021年06月26日

【焦点】1枚の写真で森友事件の悲劇が起きた=橋詰雅博

  赤城ファイルが開示され森友学園への国有地売却事件が新たな展開を見せている。国有地を森友学園に売却する転機になったのは1枚の写真だった。
 この豊中市の土地は近畿財務局の審査を経て9臆6千万円の値段がつけられていた。国有地は誰に売ってもいいというわけではない。病院や介護施設、保育園など地域住民に役立つ施設に売るのが条件だ。大阪音楽大学が買い手として名乗りを上げたが、価格が折り合わなかった。そのあと籠池泰典さんが小学校をつくりたいと2013年9月に申し出た。
 ところが計画はズサンだった。義務教育の小学校を建てるというのに認可はおりていない、資金集めのめどはたっていない、先生がいない、運営のビジョンがないなど中身がほとんどなかった。これでは売ることができないので、財務局は資金手当ての見通しや学校運営の構想を出してほしいと籠池さんに求めた。
 しかし出てこない。ついに14年4月の打ち合わせで財務局は出された計画書の説明次第では交渉を打ち切ると籠池さんに通告した。
 4月28日に安部晋三首相の昭恵夫人と籠池夫妻が一緒に写った例の写真を籠池さんは近畿財務局担当者に見せた。財務局OBが19年春号『季論21』でこう書いている。
<『いい土地ですから前に進めてください』と言われたと籠池さんは熱心に説いたそうです。この日が転機でした。攻守ところを変え、主客が転倒します。ひと月後には財務局は協力する旨を伝えています。籠池夫妻は財務局担当者に『そんな細かいこと言わんでええやないか』とか、しまいには『アホ、ボケ』とぼろくそに言い募っています>
 財務局内では籠池小学校計画を昭恵事案≠ニか安部事案≠ニ呼んでいて、無理筋の仕事と職員はこぼしていた。
 1枚の写真が結局、8億円の値引き、1億3千万の売却価格、公文書改ざんを強いられた赤木俊夫さんの自死の端緒になったのである。
 悲劇をもたらした安部前首相夫妻は罪深い。
 橋詰雅博

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2021年06月17日

【焦点】AWSから情報が米国に EU阻止へ 無警戒の日本=橋詰雅博

 欧州連合(EU)の欧州データ保護監督機関(EDPS)は、EU機関によるアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)など米国のクラウドサービス利用について欧州市民の個人データが米国に漏れるリスクがあると見て調査を開始した。
 EDPSが調査を実施する背景には、米国での「海外データ合法的使用明確化法(クラウド法)」の成立がある。このクラウド法は米国企業が保有・管理する国内外のデータの提供を米政府が求めたなら企業はそれに従わなければならないのである。この2018年3月の法制化に対応するためEUは2カ月後の5月に一般データ保護規則(CDPR)を施行。CDPRは個人データの移転を厳しく規制した。
 加えてEUの最高裁にあたる欧州司法裁判所は、米国への個人データ移転のルールである「プライバシー・シールド」を無効だと20年7月に判断した。
 EDPSの調査開始と裁判所の判断は、米のクラウドサービスに依存を高めるEU機関からの個人データが米当局に収集・監視される危険性に歯止めをかけたのだ。
 問題視されるAWSのクラウドサービスは日本でも政府が採用している。昨年10月から運用を開始した政府共通プラットフォームがそれで、クラウドサーバーに東京・霞が関の全府省を始め国会、裁判所、自治体などの情報が入る。昨年2月に「米企業のクラウド利用に懸念はないのか」と記者に質問された当時の高市早苗総務相は「AWSはセキュリティ対策も含め極めて優れている」から心配ないと答えた。
 サーバーは国内にあるし、AWSの日本法人が運営しているとはいえ、決して安心できない。クラウド法に基づき米政府から依頼を受けた親会社のアマゾンからこんな情報を欲しがっているという要請を日本法人は断れるだろうか。リスクがあまりにも大きい(JCJ機関紙『ジャーナリスト』1月25日号 http://jcj-daily.seesaa.net/article/479771429.html
 EUは米国に流れる恐れがある個人データ阻止をめざし活動を強化した。日本のアマゾンクラウドサーバーには重要な政府情報などが蓄積される。米国への情報漏洩のリスクを回避するため日本も行動を起こすべきだ。無警戒は許されない。
 橋詰雅博


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2021年06月10日

【焦点】5G基地局設置に反対 強い電磁波は有毒 住民からの相談急増=橋詰雅博

                        
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               屋上に設置された携帯電話基地局

  4月の日米首脳会談でバイデン大統領と菅義偉首相は高速通信規格5Gと6Gの研究開発に日米合計45億ドル(約4860億円)を投資することを決めた。特にバイデン大統領は「安全で信頼できるネットワーク構築を」と日本に注文した。

 高い周波数  
  米国が中国に差をつけられているこの5Gは超高速や大容量がウリだが4Gよりもさらに高い周波数を使うので電波が届く距離が短く、ネットワーク構築に多くの基地局の設置が必要だ。このため日本は携帯電話会社が基地局設置を急拡大させている。
 しかし、一方では基地局設置に反対する住民とのトラブルが増えている。「電磁波からいのちを守る全国ネット」の運営委員でジャーナリストの黒藪哲哉さんがこう言う。
 「昨年10月ごろから基地局設置に反対する住民から『工事をやめさせるにはどうすればいいか』などの相談が増え始めた。今年4月末までの相談件数は50件ほど。全国ネット≠ヘ10年ほど前に発足したが、短期間にこんなにメールや電話で相談がきたのは初めて。基地局設置場所は民間マンションの屋上、民有地の空きスペース、公園などです。楽天モバイルなどの携帯電話会社は、基地局設置場所を確保した後、4Gや5Gの工事を行う。住民が設置に反対する理由は、基地局から出される強い電磁波による体への悪影響を心配しているからです」
  携帯会社は日本の基準値を守っているから大丈夫と弁明するが、国際非電離放射線防護員会が定めた電磁波被ばく基準値は900uW/cu(電力密度)で、日米は1000uW/cuとその基準値を上回る。住民が心配するのも無理もない。ちなみにベルギーの首都ブリュッセルは19・2、イタリアとロシアは10、スイスは9・5。健康を害する恐れがあると欧州評議会は国際的な基準値を0・1uW/cuまで引き下げることを求めている。
 
 発がん性警告も
 「基地局と携帯電話の急増で各国では電磁波が原因とみられる頭痛、めまい、吐き気、睡眠障害、耳鳴りなどが起きる電磁波過敏症≠フ発症者が増えている。日本は人口の3〜6%が電磁波過敏症者と言われている。また、WHO(世界保健機関)の国際がん研究機関は高い電磁波を『ヒトへの発がん性があるかもしれない』と警告。電磁波が人体に悪影響を及ぼすことは国際的に認知されている」(黒藪さん)
 とはいえ基地局はこれからどんどん設置される見込み。東京都の場合、19年から5G基地局を設置できる場所として都庁を始め電柱、信号機、美術館、劇場、公園などが書かれたリストを携帯電話会社に公開中だ。
 ではどうすればいいのか。
 「身の回りで基地局設置工事が進んでいることがわかれば、携帯電話会社に問い合わせる。工事が中止になることもある。また、携帯電話は極力使わず、固定電話を利用する。携帯電話を耳にあててしゃべるのはなるべく避けて、スピーカーに切り替える。そうすれば電磁波被ばく量は少なくて済む。そして放射能と同じく電磁波は危険という意識を強く持つようにする」(黒藪さん)
 電磁波の有害性を認識すれば、5G基地局設置への対応や携帯電話の使い方もおのずと変わってくるのではないだろうか。
橋詰雅博
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年5月25日号
                                  
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2021年06月07日

【焦点】「ベンダーロックイン」にメス入るか 公取委が調査に乗り出す=橋詰雅博

 特定のIT企業だけが大きな利益を得られる「ベンダーロックイン」にメスが入るのだろうか――ベンダーロックインは、国や地方などの情報システムを受注したIT企業(ベンダー)が開発した自社仕様によって構築することで、他社の参入が困難になる状況を言う。官公庁やIT業界などでは何年も前からこの弊害が指摘されていたが、会計検査院が5月に公表した調査でようやく実態が分かった。
 それによると省庁が調達した情報システムの設計・開発などに関わる競争契約423件のうち、参加した業者が1者のみの1者応札≠フ割合が74%だった。IT企業は省庁のシステム入札前に中身を事前にキャッチし、役所に自社仕様の売り込みを続ける。成功すれば、他社は参加をあきらめてしまう。この結果、新規開発が1者応札になる。
  さらに一度受注すれば、そのあとの改修も他社が入る余地がなくなり改修の仕事を何回もやれる。企業はこの改修で十分な利益を得られるので、安い金額でも受注するのだ。実際、会計検査の調査でも新規開発よりも改修の仕事が多かった。1者応札では競争原理が働かず、改修の入札額の高止まりにもつながるのは言うまでもない。こうしたことは地方自治体の情報システム契約でも中央省庁と同じくベンダーロックインが横行している。
 企業の言われるままに契約する主たる原因は、ITリテラシーを理解する役人がほとんどいないからだ。
 会計検査院の調査を受けて公正取引員会は、ベンダーロックインが独占禁止法にふれるかどうか調査に乗り出した。国や地方自治体を含む約1800の行政機関に書面の調査票を送った。この先、ヒヤリングの実施も行う見込み。
  9月に新設のデジタル庁は国と地方自治体が相乗りするシステムで情報の利活用をする。これを構築するのは大手IT企業だ。同庁職員500人のうち120人ほどは民間出身者ないしは非常勤の民間人材を充てる。大手IT企業社員がかなり起用される。ここでもベンダーロックインが起きる可能性はある。
 公正取引委員会はデジタル庁にも目を光らせてほしい。
橋詰雅博
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2021年05月27日

【焦点】五輪選手村訴訟8月に結審 9割値引きの根拠示せなかった被告都側に不利な展開だが=橋詰雅博

                          
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               原告団が作成したリーフレット

 都民33人が小池百合子都知事らを相手に損害賠償を求めた五輪選手村訴訟は8月31日(火)に東京地裁で結審する。この住民訴訟で最大の争点になったのは、選手村用地・晴海の都有地(約13・4f)をデベロッパーに売ったのだが、その金額129億6千万円は適正な価格かどうかだ。業界内では「周辺の地価や取引事例価格とかけ離れすぎている。常識では考えられない安さ」と言われている。ならば常識的な金額はどのくらいかだが、原告で不動産鑑定士の桝本幸男さんは1611億円と鑑定している。桝本さんが提示した価格が適正ならば、約1482億円も安く売られたことになる。原告と被告それぞれの不動産鑑定士が証人として尋問も受けた4年間の裁判でこのナゾは解明されたのか。
 裁判で原告側は「9割値引きの根拠を明らかにしてほしい」と訴えたが、被告の都側は「オリピンク要因」「特別な取引」などと主張し、根拠を示さなかった。
したがって最大のナゾを解き明かせないまま結審を迎える。金額について明確な根拠を明らかにしなかった被告側に不利な展開だと思うが、「行政の裁量の範囲内」と裁判所が判断すれば、原告側に不当判決が下される。

 マスコミはこの裁判をあまり取り上げなかったが、TBS報道特集は昨年8月22日に「東京五輪1年延期 選手村マンションは今」を放映。正面から切り込んだ腰を据えた番組だった。ユーチューブで流れるこのダイ字ェスト版の視聴が70万に迫る勢いだ。原告団が発行する「晴海選手村土地投げ売りを正す会」(正す会)ニュース5月21日号(写真下)でこう書いている。
<3月26日に久しぶりに見たのですが、その時55万4461回の視聴だった。最近(視聴が)急増しているのがわかりました。4月の22日ごろまでの1ケ月近くは1日当たり1000回程度、5月8日までの約半月は3000回前後、そしてその後、4千、5千、6千、7千回と急増しているのです。5月17日時点で67万8384回の視聴がありました。
 コロナで五輪の開催が危ぶまれるもとで、晴海のオリンピック選手村に注目が集まったのでしょうか。世論がじわじわと広がっていることはいいことです。『晴海選手村TBS』で検索するとすぐ出てきますので、ぜひ知人等に視聴を広げてください>
 一審判決は早くても年末とみられる。
橋詰雅博
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2021年05月10日

【焦点】ぼったくり<oッハ会長の年収約3千万 金の亡者IOC=橋詰雅博

 米紙ワシントン・ポスト(5月5日付)から「ぼったくり男爵」と痛烈に批判されたバッハ会長。この男が率いるIOC(国際オリンピック委員会)は、改めでどんな組織なのか。平和の祭典を掲げてオリンピックムーブメントを盛り上げる一方で、世界最大級のスポーツ興行主でNGO(非政府組織)であり、NPO(非営利組織)である。NGOであるがゆえに所得税の減免などの特権を受けている。

 なぜ本部スイスに
 また、NPOに関しても税制面で優遇措置されているが、これにはローザンヌ市に本部を構えていることからスイスの税制によって節税を実現している。スイスではNPOへの規制が極めて緩く、財務や報酬の公開を必要としない。NPOだが収益事業も可能で、法人税も優遇されている。このためIOCだけでなく国際サッカー連盟(FIFA)など約50の国際スポーツ団体はNPOとしてスイス国内に本部を置いている。IOCが設立された1894年6月以降ローザンヌ市に本拠地を置くのは、こうした理由からだ。
 バッハ会長の報酬は年収22万5千ユーロ(約2972万円)。日本の知事の平均年収は2200万円だからそれをかなり上回る。サラマンチ、ジャックロゲ会長時代は無報酬だったこともある。
 IOCはいろんな財団を傘下に抱えており、その中核が1992年12月に設立されたオリンピック財団だ。オリンピックムーブメントの活動支援が目的のこの財団は、様々な会社を傘下に収める。この中で大きな収入源となっているのがオリンピック・ブロードキャスティング・サービス(OBS)だ。OBSは五輪競技の撮影の仕事を請け負っている。開催国はIOCとの契約でOBSへの発注が義務付けられているからだ
 
 寄付を環流で懐へ
 この金額は非公表だが、元毎日新聞記者でジャーナリストの後藤逸郎さんは自著『オリンピック・マネー 誰も知らない東京五輪の裏側』(文春新書)で<数百億円とみられる>と書いている。そのうえでこう続けている。
<IOCはテレビ放送権で得た巨額の収入の一部を、開催都市に運営費の一部として寄付している。しかし、開催都市がOBSと契約せざるを得ない以上、IOCの寄付はいったん開催都市を経由し、IOCの関係会社に戻るだけに過ぎない>
 寄付を環流させてIOCの懐に入る仕組みをつくり上げている。
 先のワシントン・ポストは「収益のほとんどを自分たちのものにし、費用は開催国に押し付けている」とIOCの金をまき上げる金権体質を喝破した。IOCの錬金術に一役買うOBSは、その代表的なケース。コロナ禍での平和の祭典の強行は人命軽視そのものだ。ましてや金まみれの東京五輪、中止の流れは食い止められない。
 橋詰雅博

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2021年05月06日

【焦点】デジタル庁は「天上がり」天国 民間人材がぞろぞろ 政策立案に関与 新たな官民癒着の温床=橋詰雅博

 政府や自治体が保有する個人などのデジタル情報を集中管理するデジタル庁が9月に新設される。目玉政策として入れ込む菅義偉首相が長を務め統括するのも異例なら、実務の中心が民間出身者と非常勤の民間人という異例の役所だ。天下りの反対、民から国への天上がり職員≠ェ国民に重大な影響を及ぼす政策立案に深く関与する。

半数以上を占める
 デジタル庁では大臣、副大臣、政務官は言うまでもないが国会議員が務め、事務次官級のデジタル監は幹部官僚ではなく民間出身者が起用される。内閣人事局によると、立ち上げ人員500人のうち、民間などからの新規採用者が160人、兼業の非常勤職員107人、他府省からくる役人233人となっている。つまり天上がり職員が半数以上を占めるのである。なぜこれほど多くなるのだろうか。
「霞が関では、ITに強い役人はキャリア、ノンキャリアを含めほとんどいません。ITリテラシー≠フセンスを備えていないのです。新型コロナ感染者通知アプリ『COCOA』が不具合相次ぎ役に立たないのは、開発を請け負った業者任せで、ITに弱い役人のチェックが甘かったからです。頼りにできる役人がいないからデジタル庁はITリテラシーに長けた多くの民間の人材が必要。だから人員の半数以上を天上がり職員が占めてしまうのです」(全経済産業労組中央執行委員の飯塚盛康さん)

食い込みに躍起だ
 実際、ヤフーが傘下に入るZホールディングスの川邊健太郎社長が発表したデジタル庁私案≠ネどで「デジタル化の世界的潮流は民間部門が先行しているので構成人員は民間人を積極的に登用」「2000人のエンジニアが必要」「官僚を含む給与を民間相場にする」と強調している。
 IT業界は活発な動きをしている。
「NEC、NTTデータ、富士通、日立製作所などはITゼネコン≠ニ呼ばれている。建設業界のゼネコンと同じように多くの下請けや孫請け企業を傘下におさめて受注した仕事を下に発注する構図が似ているからです。そのITゼネコンはデジタル庁に優秀な社員を押し込めようとしている。『5年間デジタル庁で働き戻ってきたら重要ポストを用意しておくから』と社員を誘う会社もあるそうです。ただITゼネコンと威張ってもグローバルなビジネスの世界では太刀打ちできず、相手にされない。デジタル庁からの仕事は大きな規模が見込まれるので、稼ぐため食い込みに躍起だ」(IT業界関係者)
 天上がり職員が政府の政策立案などに関与するのは少なくない。経済界の要望を受け入れ1999年に成立した官民人事交流法に基づく企業からの出向者などがその人たちだ。果たしてどんな場面で彼らは絡んでくるのか。

赤旗日曜版が追及
 しんぶん赤旗日曜版が天上がり職員追及の特集を19年5月から9月に合計5回紙面に載せている。その内容は@厚労省労働条件政策課に出向していた佐川急便を傘下に持つSGホールディングスの社員は、トラックなどの労組団体が求める残業時間の上限規制の適用を見送る実行計画案づくりに関与A原発輸出をめざす日立製作所の社員は、経産省、文科省、内閣府の原発関連部署などに出向B厚労省水道課に出向したクボタと水ingの社員は水道法改正案の政策立案に関与し、水道事業への民間参入を実現―といった具合だ。
 利害関係者が官僚と同じ職場で働き、業界や自社が利益を得られるよう根回しする実態を明らかにしている。
 デジタル庁では、ITを自在に操る天上がり職員はさらに強い権限を発揮できそうだ。首相の名の下でほかの府省や自治体を指揮・監督が可能になる。
 となるとデジタル庁は新たな官民癒着の温床になるばかりでなく、国民に目を向けない天上がり職員が権力をふるう役所になりかねない。
 橋詰雅博
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年4月25日号
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2021年05月03日

【焦点】スーパーシティ計画に31自治体が手を上げる 個人情報の利活用拡大など問題だらけ=橋詰雅博

 政府から国家戦略特区の指定を受けて自ら提案したスーパーシティ計画を実施する予定の自治体が31手を上げた。政府が公募し4月中旬で締め切ったもので、これから専門調査会、国家戦略特区諮問会議を経て閣議で5カ所の区域が決められる。

 9年後完全整備
 東洋大学の竹中平蔵教授が旗振り役になったスーパーシティ構想はAI(人口知能)やビックデータなどを利用して丸ごと未来都市≠従来の規制を緩和してつくる。ここでどんなことが実現されようとしているのか。乗り物の自動走行、ドローンによる自動配送、キャッシュレス決済、オンライン教育・診療、エネルギー・ごみ・水道などの自動コントロールシステム、防犯のためのロボット監視などだ。これらを9年後の2030年に完全整備する方針だ。

 監視社会を強化
 マスコミはあまり触れていないが、問題なのはここに住む人たちの生活が脅かされること。大きなポイントは2つある。
 一つ目は個人情報の保護がないがしろされる危険性がある。この構想を実行するのは、国家戦略特区データ連携基盤事業者だ。IT企業や自動車メーカー、コンサルタント会社などが中心となる事業者は、国や自治体、企業が集める個人情報を盛り込んだビックデータを利活用できる。加工されて個人が特定されない情報もあるが、特定できる形のまま受け取れる情報もある。また、街中に多く設置される監視カメラで得られる人の往来や交通量といった空間データ≠燗手が可能だ。要するに自分が知らないうちに個人情報が勝手に使われようとしている。
 二つ目は、住民の合意をどういう風に得るのかが不透明である。区域会議というものを設置して、役人や事業者と住民が話し合い合意を得るそうだ。住民の誰もが参加できるわけではないので、住民代表という一握りの人の意思が反映されるだろう。計画に疑問を持つ人や反対の人はこの会議に参加できるのだろうか。さらに構想に不参加の人の権利は保証されるのだろうか。なによりもそうした前に住民投票という手段で実現の可否を決めることはできるのか。さまざまな疑問に対して答えは出ていない。住民を置き去りにして構想をゴリ押しすることは許されない。

 トロントで中止
 カナダのトロント市ではグーグルの子会社が進めたスマートシティ計画(スーパーシティの中身とほぼ同じだが、海外ではこう名付けられている)は、事前の情報が不十分だと区域住民の反対で計画はつぶれた。
極端に言えばスーパーシティ計画は、あの中国のような監視社会が各区域で出来上がってしまう恐れがある。
  橋詰雅博
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