経営委員会に対しNHK会長選びで政権の干渉排除を求めて、「市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会」が街頭宣伝します。
街宣車を西口につけ、ジャーナリスト・斎藤貴男氏やNHKOB・OGによるリレートークを予定しています。NHKに働く人たちにも添付のようなチラシを配布します(下)。みなさんの参加を呼びかけます。YouTubeによる録画配信も予定しています(URLは後日お知らせします)
NHKに働く皆さん、
今日は、月2回、火曜日に定例で開催されている経営委員会の開催日です。視聴者・市民の声が、経営委員に直接届くようこの日を選びました。
稲葉NHK会長の任期満了は来年1月24日です。
7月8日に、次の会長を決めるための指名部会が経営委員会の中に設置されました。しかし半年近い議論は形式的で12月初旬に突然会長候補の名前が出てきて決まるのがこれまでの指名部会でした。前回2022年の会長指名をめぐっては「岸田首相が水面下で稲葉氏を口説き落とした」との新聞報道がありました。
私たちは、7月8日経営委員会に「政権の意向を忖度せず透明性のある選考を行うよう強く求める」公開質問状を提出、以下の回答を得ました。「特定の個人や団体の意見に左右されたりすることなく、経営委員会 として自立的・主体的に判断を行う」
私たちは、経営委員会がこの回答を欺くことなく、放送法の精神に則り、権力の介入を許さずNHKの自主自律を貫ける会長を選ぶよう求めます。安倍政権の総務大臣当時「停波発言」で放送局を脅した高市早苗氏が総理大臣になり、NHK会長人事への干渉が危惧されます。会長指名部会の議論を見守ってくださるようNHKに働く皆さんにも訴えます。
2025年11月11日 市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会 共同代表 河野慎二、丹原美穂、永田浩三 連絡先 長井 暁 090-4050-5019
2025年11月10日
2025年10月21日
【NHK】次期「会長」は熟議で 局前集会で訴え=河野 慎二
「市民と共に歩み、自立したNHK会長を求める会」は9日、来年1月に迫るNHK次期会長選任に向けて東京・渋谷のNHK前で集会を開き、NHK経営委員会に「政権に忖度せず、市民・視聴者の声に耳を傾けて次期会長選任を」と呼びかけた。
集会の冒頭、元TBS「報道特集」キャスターの金平茂紀さんが「イギリスにはBBCという公共放送があり、アメリカの放送局が無視するガザ問題について積極的に報道を続け、世界中の人が見ている」と指摘。「NHKもBBCを手本に、見て良かった、聞いて良かったと思える報道番組を発信し続けてほしい」とエールを送った。金平さんは最後に、「戦時中のラジオ放送のようなことはしないでください。それを言うためにここへ来ました」と、発言を締めくくった。
「会」の共同代表のひとり丹原美穂さんも岐阜から駆け付け、「NHKは視聴者の受信料に支えられている。その経営基本方針は『公正・公平な報道を誰からも干渉されず、表現の自由を守り、取材の自由を確保する』と定められているはずだ」と呼びかけ、NHKの会長が2006年から6期続けて財界人から選任されている中で「ニュース番組を見て、おかしいと思うことが一杯ある」と、その姿勢を批判。「NHKは自主自立を貫き、公正なニュース報道を行ってほしい」と求めた。
続いて発言した元NHK職員の小滝一志さんは、「今年7月に『NHKの新会長は政権が決めるのではなく、経営委員会が決める』と古賀信行NHK経営委員長が明言したが、その発言が本当に実行されるのか」。「皆さんと一緒に厳しく見守って行く必要がある」と強調し、「昨年の衆院選に続き、今夏の参院選でも自公政権が少数与党に転落したことで、政府が放送行政を一手に握る現状を独立行政委員会制度に転換させるチャンスが出て来たのではないか」として「放送に携わる皆さんと力を合わせて、今の放送行政を変革して行こう」と、重ねて呼びかけた。
また、「会」事務局長の長井暁さんは「経営委員会は、(官邸からの)天の声≠待って非民主的にNHK会長を決めるのではなく、候補者が公共放送のトップとしてふさわしい人かどうかを熟議して決めてほしい」と、経営委員会に対する訴えをした。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年9月25日号
集会の冒頭、元TBS「報道特集」キャスターの金平茂紀さんが「イギリスにはBBCという公共放送があり、アメリカの放送局が無視するガザ問題について積極的に報道を続け、世界中の人が見ている」と指摘。「NHKもBBCを手本に、見て良かった、聞いて良かったと思える報道番組を発信し続けてほしい」とエールを送った。金平さんは最後に、「戦時中のラジオ放送のようなことはしないでください。それを言うためにここへ来ました」と、発言を締めくくった。
「会」の共同代表のひとり丹原美穂さんも岐阜から駆け付け、「NHKは視聴者の受信料に支えられている。その経営基本方針は『公正・公平な報道を誰からも干渉されず、表現の自由を守り、取材の自由を確保する』と定められているはずだ」と呼びかけ、NHKの会長が2006年から6期続けて財界人から選任されている中で「ニュース番組を見て、おかしいと思うことが一杯ある」と、その姿勢を批判。「NHKは自主自立を貫き、公正なニュース報道を行ってほしい」と求めた。
続いて発言した元NHK職員の小滝一志さんは、「今年7月に『NHKの新会長は政権が決めるのではなく、経営委員会が決める』と古賀信行NHK経営委員長が明言したが、その発言が本当に実行されるのか」。「皆さんと一緒に厳しく見守って行く必要がある」と強調し、「昨年の衆院選に続き、今夏の参院選でも自公政権が少数与党に転落したことで、政府が放送行政を一手に握る現状を独立行政委員会制度に転換させるチャンスが出て来たのではないか」として「放送に携わる皆さんと力を合わせて、今の放送行政を変革して行こう」と、重ねて呼びかけた。
また、「会」事務局長の長井暁さんは「経営委員会は、(官邸からの)天の声≠待って非民主的にNHK会長を決めるのではなく、候補者が公共放送のトップとしてふさわしい人かどうかを熟議して決めてほしい」と、経営委員会に対する訴えをした。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年9月25日号
2025年08月15日
【連続シンポ】放送独立行政委 早く 「NHK復活の好機」=河野慎二
連続シンポジウム(第2回)「NHKはどうすれば政権から自立できるのか〜放送の独立行政委員会制度を考える〜」が6月29日、立教大学で開催された。
シンポジウムでは、2001年1月に起きたNHK「ETV2001『問われる戦時性暴力』に対する番組改変事件」について、元NHKディレクターの池田恵理子氏が、安倍晋三官房副長官(当時、後首相)の剥き出しの介入の事実を振り返り「番組の基になった『女性国際戦犯法廷』(2000年12月開催)には海外メディアは95社200名、国内メディアは48社105名の記者が取材したが、読売は一度も報道せず、天皇有罪を伝えたのは朝日と北海道新聞だけだった」と、日本の貧弱な報道を批判した。
「国商」などの著作で知られるノンフィクション作家の森功氏は「第1次安倍政権時代にメディア支配の知恵を安倍に授けたのは、旧国鉄の葛西敬之であり、日本会議だ」と指摘。当時の官邸では警察庁出身の杉田和博官房副長官らの「官邸官僚」がメディア支配の方策を模索していた。
森氏は「葛西はテレビ、つまり放送は放送法に縛られている。NHKの予算は、国会に握られている。葛西はその法的な仕組みを逆手にとって、メディアを支配する手法を安倍に授けた」と指摘。「葛西は07年6月、自ら主催する『四季の会』のメンバーで、盟友の古森重隆をNHK経営委員長に送り込み、支配体制を強めた」と明らかにした。
森氏は「NHKに政治介入してはならない」と重ねて強調した上で、自公政権が衆議院で少数与党に転落した状況を踏まえ「それはNHKのメディアとしての復活のチャンスではないのか。それは民放、新聞、出版も同じだ」と指摘した。
立教大学社会学部長の砂川浩慶教授は、昨年の兵庫県知事選ではSNSなどでデマが拡散し、選挙結果に大きな影響を与えた問題とフジテレビの性暴力問題を取り上げ、「この二つの問題は、放送の公共性とは何かということが今、一番問われていることを示している」と強調。「G7など先進各国は、放送行政は全て独立行政委員会に委ねている。政府が握っているのは日本の他、ロシア、中国、北朝鮮だけだ」と指摘し「日本でも1日も早く放送の独立行政委員会制度を確立すべきだ」と訴えた。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年7月25日号
シンポジウムでは、2001年1月に起きたNHK「ETV2001『問われる戦時性暴力』に対する番組改変事件」について、元NHKディレクターの池田恵理子氏が、安倍晋三官房副長官(当時、後首相)の剥き出しの介入の事実を振り返り「番組の基になった『女性国際戦犯法廷』(2000年12月開催)には海外メディアは95社200名、国内メディアは48社105名の記者が取材したが、読売は一度も報道せず、天皇有罪を伝えたのは朝日と北海道新聞だけだった」と、日本の貧弱な報道を批判した。
「国商」などの著作で知られるノンフィクション作家の森功氏は「第1次安倍政権時代にメディア支配の知恵を安倍に授けたのは、旧国鉄の葛西敬之であり、日本会議だ」と指摘。当時の官邸では警察庁出身の杉田和博官房副長官らの「官邸官僚」がメディア支配の方策を模索していた。
森氏は「葛西はテレビ、つまり放送は放送法に縛られている。NHKの予算は、国会に握られている。葛西はその法的な仕組みを逆手にとって、メディアを支配する手法を安倍に授けた」と指摘。「葛西は07年6月、自ら主催する『四季の会』のメンバーで、盟友の古森重隆をNHK経営委員長に送り込み、支配体制を強めた」と明らかにした。
森氏は「NHKに政治介入してはならない」と重ねて強調した上で、自公政権が衆議院で少数与党に転落した状況を踏まえ「それはNHKのメディアとしての復活のチャンスではないのか。それは民放、新聞、出版も同じだ」と指摘した。
立教大学社会学部長の砂川浩慶教授は、昨年の兵庫県知事選ではSNSなどでデマが拡散し、選挙結果に大きな影響を与えた問題とフジテレビの性暴力問題を取り上げ、「この二つの問題は、放送の公共性とは何かということが今、一番問われていることを示している」と強調。「G7など先進各国は、放送行政は全て独立行政委員会に委ねている。政府が握っているのは日本の他、ロシア、中国、北朝鮮だけだ」と指摘し「日本でも1日も早く放送の独立行政委員会制度を確立すべきだ」と訴えた。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年7月25日号
2025年06月21日
【連続シンポ】2回目「NHKはどうすれば政権から自立できるのか〜放送の独立行政委員会制度を考える〜」6月29日(日)14時から17時 立教大学池袋キャンパス (JCJ共催)
テレビは権力に忖度して「本当のことを伝えてしいない」「真実を隠している」という不信感が、これほど視聴者・国民に広がったことはかつてない。特に公共放送 NHK は、政権に過度に忖度した報道を繰り返していると見られている。そうした状況は、第一次安倍政権以降、NHK の経営委員が政権によって恣意的に任命され、政権に近い財界出身者が経営委員長や会長に次々と就任することで顕著になった。
本来 NHK の会長は、12 人の委員からなる経営委員会が任命する仕組みになっているが、現在の稲葉延雄会長も指名したのは岸田文雄首相だたと報道されており、経営委員会はその責任を果たしていない。こうした問題を解決するには放送制度を抜本的に見直す必要がある。
日本においては放送行政を政府の一省庁である総務省が管轄している。報道機関であるテレビは、政治権力を監視する役割も期待されていが、日本ではテレビはが政治権力から監視されるという矛盾した状況が存在しているのである。NHK と民放テレビ局が政権から自立し、視聴者・国民の期待に応える放送をするためには、日本においても先進7カ国(G7)のように、放送行政を独立行政委員会に移管する必要がある。
シンポジウムでは大ア雄二氏(法政大学社会学部教授)が NHK 経営委員会の現状と課題について、砂川浩慶(立教大学社会学部教授)が放送の独立行政委員会制度について報告し、森功氏(ノンフィクション作家)と池田恵理子氏(元 NHK ディレクター)とともに NHK と民放テレビの現状と課題について議論し、テレビが政権から独立した放送を行い、視聴者・国民の信頼を回復するために何が必要かを考える。
会場 立教大学池袋キャンパス7号館7102教室
資料代 500円(学生無料)
パネリスト
砂川浩慶●立教大学社会学部長・メディア社会学科教授。
大ア雄二●法政大学社会学部メディア社会学科教授。
1983-90 年 NHK 記者(金沢放送局、北京支局、報道局国際部)、
森 功 ●ノンフィクション作家。
2018年『悪だくみ「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』(文藝春秋)
で大宅壮一ノンフィ クション大賞を受賞。
『国商・最後フィクサー葛西敬之』(講談社)など著書多数。
池田恵理子●元NHKディレクター。女性、教育、差別、エイズ、 東ティモール等
の番組を制作。定年退職後、「慰安婦」資料館・wamの館長。
共著に『黄土の村の性暴力』(創土社)、『NHKが危ない!』(あけび書房)など。
〈主催〉立教大学社会学部メディア社会学科・砂川ゼミ 市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会
〈共催〉日本ジャーナリスト会議(JCJ)/NHKとメディアの今を考える会/放送を語る会 市民社会フォーラム/あけび書房
YouTubeでライブ配信します。
無料で誰でも見られます。
URL:https://youtube.com/live/pAuTaVbFbFM?feature=share
本来 NHK の会長は、12 人の委員からなる経営委員会が任命する仕組みになっているが、現在の稲葉延雄会長も指名したのは岸田文雄首相だたと報道されており、経営委員会はその責任を果たしていない。こうした問題を解決するには放送制度を抜本的に見直す必要がある。
日本においては放送行政を政府の一省庁である総務省が管轄している。報道機関であるテレビは、政治権力を監視する役割も期待されていが、日本ではテレビはが政治権力から監視されるという矛盾した状況が存在しているのである。NHK と民放テレビ局が政権から自立し、視聴者・国民の期待に応える放送をするためには、日本においても先進7カ国(G7)のように、放送行政を独立行政委員会に移管する必要がある。
シンポジウムでは大ア雄二氏(法政大学社会学部教授)が NHK 経営委員会の現状と課題について、砂川浩慶(立教大学社会学部教授)が放送の独立行政委員会制度について報告し、森功氏(ノンフィクション作家)と池田恵理子氏(元 NHK ディレクター)とともに NHK と民放テレビの現状と課題について議論し、テレビが政権から独立した放送を行い、視聴者・国民の信頼を回復するために何が必要かを考える。
会場 立教大学池袋キャンパス7号館7102教室
資料代 500円(学生無料)
パネリスト
砂川浩慶●立教大学社会学部長・メディア社会学科教授。
大ア雄二●法政大学社会学部メディア社会学科教授。
1983-90 年 NHK 記者(金沢放送局、北京支局、報道局国際部)、
森 功 ●ノンフィクション作家。
2018年『悪だくみ「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』(文藝春秋)
で大宅壮一ノンフィ クション大賞を受賞。
『国商・最後フィクサー葛西敬之』(講談社)など著書多数。
池田恵理子●元NHKディレクター。女性、教育、差別、エイズ、 東ティモール等
の番組を制作。定年退職後、「慰安婦」資料館・wamの館長。
共著に『黄土の村の性暴力』(創土社)、『NHKが危ない!』(あけび書房)など。
〈主催〉立教大学社会学部メディア社会学科・砂川ゼミ 市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会
〈共催〉日本ジャーナリスト会議(JCJ)/NHKとメディアの今を考える会/放送を語る会 市民社会フォーラム/あけび書房
YouTubeでライブ配信します。
無料で誰でも見られます。
URL:https://youtube.com/live/pAuTaVbFbFM?feature=share
2025年05月14日
【ハラスメント事件】NHK職場パワハラに勝利和解 防止規定協議 会社が誓約 労組の力感じた=原告・原田 勤さん(元埼玉新聞記者)
法的責任は問えなかったが和解で望みはかなった一。NHK職場でのパワハラは東京地裁の裁判長のすすめで「勝利的和解」となった。
職場での暴力行為、さらにタクシー券の記入ミスの説明を始めると「認知(症)だ、認知だ」と叫んだ。NHK子会社グローバルメディアサービスの報道部門の元部長(元NHK記者)と会社を非正規労働者の私が訴えた。
1年半後のことし3月25日に会社は「原告加入の労組の防止規程の協議申し入れに誠実に対応を誓約」、また認知発言だけは認めた被告元部長とは「解決金3万円を支払う」ことで和解が成立した。
昨年12月、9回に及んだ口頭弁論ののち進行協議で鈴木昭洋裁判長から「2つが事実だとしても法的責任を問うのは難しい」と和解をすすめられた。損害賠償請求は「棄却」すなわち敗訴ということのようだ。暴力行為は「記憶にない」としたため状況証拠集めに苦労していた。
「あなたの望みは何ですか」と聞かれたので、調査内容を一切明らかにせず私の再調査の訴えも門前払いにした会社の「ハラスメント防止規程を変えたい」と答えると「あなたの理想とするモデル案を和解提示すれば話は早い」と言われた。
現行規程の問題点や国家公務員のパワハラ防止の人事院規則の運用などを参考に6項目の協議事項を出した。
和解案がほぼ整った2月末、裁判長は「提訴された意味はおおいにあったと思います」と話された。刑事事件の人情裁判官が判決に添えて言う「諭し」が浮かんだ。代理人の青龍美和子弁護士(東京法律)もこんなコメントは「珍しい」と言った。また確定後の記者会見で青龍先生は「判決では得られない和解内容となった」と評した。
思い返せば「勝利的和解」の予兆は第6回で裁判官が1人から3人の合議体となったことだった。毎回満杯にしてくれた支援者が、法廷が倍の広さになっても埋めてくれた。注目度から裁判所も「単なる損害賠償訴訟とは捉えていないのではないか」と推測した。
和解調印の日。”勝利“したものの「誰でも裁判が起こせる訳ではないですよね」と話すと「原田さん、組合があったからでしょ」と青龍先生に諭された。
職場に組合はない。迷った挙げ句、NHKの職員、OBらの「放送を語る会」に一人でも加盟できる民放労連放送スタッフニュにオンを紹介されたことが始まりだった。
NHK本体のハラスメント防止規程も私の所属する子会社の規程も同一同文である。本番の闘いはこれから始まる。76歳。来年1月の喜寿が私の退職日である。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年4月25日号
職場での暴力行為、さらにタクシー券の記入ミスの説明を始めると「認知(症)だ、認知だ」と叫んだ。NHK子会社グローバルメディアサービスの報道部門の元部長(元NHK記者)と会社を非正規労働者の私が訴えた。
1年半後のことし3月25日に会社は「原告加入の労組の防止規程の協議申し入れに誠実に対応を誓約」、また認知発言だけは認めた被告元部長とは「解決金3万円を支払う」ことで和解が成立した。
昨年12月、9回に及んだ口頭弁論ののち進行協議で鈴木昭洋裁判長から「2つが事実だとしても法的責任を問うのは難しい」と和解をすすめられた。損害賠償請求は「棄却」すなわち敗訴ということのようだ。暴力行為は「記憶にない」としたため状況証拠集めに苦労していた。
「あなたの望みは何ですか」と聞かれたので、調査内容を一切明らかにせず私の再調査の訴えも門前払いにした会社の「ハラスメント防止規程を変えたい」と答えると「あなたの理想とするモデル案を和解提示すれば話は早い」と言われた。
現行規程の問題点や国家公務員のパワハラ防止の人事院規則の運用などを参考に6項目の協議事項を出した。
和解案がほぼ整った2月末、裁判長は「提訴された意味はおおいにあったと思います」と話された。刑事事件の人情裁判官が判決に添えて言う「諭し」が浮かんだ。代理人の青龍美和子弁護士(東京法律)もこんなコメントは「珍しい」と言った。また確定後の記者会見で青龍先生は「判決では得られない和解内容となった」と評した。
思い返せば「勝利的和解」の予兆は第6回で裁判官が1人から3人の合議体となったことだった。毎回満杯にしてくれた支援者が、法廷が倍の広さになっても埋めてくれた。注目度から裁判所も「単なる損害賠償訴訟とは捉えていないのではないか」と推測した。
和解調印の日。”勝利“したものの「誰でも裁判が起こせる訳ではないですよね」と話すと「原田さん、組合があったからでしょ」と青龍先生に諭された。
職場に組合はない。迷った挙げ句、NHKの職員、OBらの「放送を語る会」に一人でも加盟できる民放労連放送スタッフニュにオンを紹介されたことが始まりだった。
NHK本体のハラスメント防止規程も私の所属する子会社の規程も同一同文である。本番の闘いはこれから始まる。76歳。来年1月の喜寿が私の退職日である。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年4月25日号
2025年03月03日
【シンポジウム】『NHK「かんぽ不正」報道への介入・隠蔽を許さない〜裁判勝利の報告〜』出版記念 3月22日(土)14:30〜17:00 立教大学池袋キャンパス 10 号館 X305 教室=NHK とメディアの今を考える会など
『NHK「かんぽ不正」報道への介入・隠蔽を許さない〜裁判勝利の報告〜』出版記念
昨年 12 月 17 日に、東京高裁で実質的に原告勝訴とも言える内容で和解した NHK 文書開示等請求訴訟。この 訴訟は、かんぽ生命保険の不正販売問題の報道を巡り、NHK 経営委員会が 2018 年 10 月に会長を厳重注意した 問題で、市民が NHK と森下俊三・前経営委員長を相手取り、非公開とされた経営委員会の議事録の開示などを 求めたものだった。
シンポジウムでは原告団事務局長の長井暁氏が事件と訴訟の経緯を報告し、弁護団の杉浦ひとみ弁護士、武蔵 大学社会学部教授の永田浩三氏、立教大学社会学部長の砂川浩慶氏が訴訟の意義を解説する。そして、放送 100 年を迎えた今、フジテレビ問題など放送界が抱える問題についても話し合い、放送のこれからについて考える。
■参加費無料
■報告者・パネリスト 長井 暁氏 ジャーナリスト、NHK文書開示等 請求訴訟原告団事務局長 杉浦ひとみ弁護士、NHK文書開示等請求訴訟 弁護団 永田浩三氏 武蔵大学社会学部教授、元 NHK 「クローズアップ現代」編責、 砂川浩慶氏兼司会立教大学社会学部長 、メディア社会学科教授 。
〈主催〉NHK とメディアの今を考える会/立教大学社会学部メディア社会学科・砂川ゼミ 〈共催〉NHK 文書開示等請求訴訟原告団/市民社会フォーラム/あけび書房
(問い合わせ先)小滝一志 090-8056-4161 /長井暁 090-4050-5019
ネット配信 YouTube でライブ配信します。
『NHK「かんぽ不正」報道への介入・隠蔽を許さない〜裁判勝利の報告〜』出版記念
アドレスが右の通りです。https://youtube.com/live/iUjmEKYRV6w?feature=share
昨年 12 月 17 日に、東京高裁で実質的に原告勝訴とも言える内容で和解した NHK 文書開示等請求訴訟。この 訴訟は、かんぽ生命保険の不正販売問題の報道を巡り、NHK 経営委員会が 2018 年 10 月に会長を厳重注意した 問題で、市民が NHK と森下俊三・前経営委員長を相手取り、非公開とされた経営委員会の議事録の開示などを 求めたものだった。
シンポジウムでは原告団事務局長の長井暁氏が事件と訴訟の経緯を報告し、弁護団の杉浦ひとみ弁護士、武蔵 大学社会学部教授の永田浩三氏、立教大学社会学部長の砂川浩慶氏が訴訟の意義を解説する。そして、放送 100 年を迎えた今、フジテレビ問題など放送界が抱える問題についても話し合い、放送のこれからについて考える。
■参加費無料
■報告者・パネリスト 長井 暁氏 ジャーナリスト、NHK文書開示等 請求訴訟原告団事務局長 杉浦ひとみ弁護士、NHK文書開示等請求訴訟 弁護団 永田浩三氏 武蔵大学社会学部教授、元 NHK 「クローズアップ現代」編責、 砂川浩慶氏兼司会立教大学社会学部長 、メディア社会学科教授 。
〈主催〉NHK とメディアの今を考える会/立教大学社会学部メディア社会学科・砂川ゼミ 〈共催〉NHK 文書開示等請求訴訟原告団/市民社会フォーラム/あけび書房
(問い合わせ先)小滝一志 090-8056-4161 /長井暁 090-4050-5019
ネット配信 YouTube でライブ配信します。
『NHK「かんぽ不正」報道への介入・隠蔽を許さない〜裁判勝利の報告〜』出版記念
アドレスが右の通りです。https://youtube.com/live/iUjmEKYRV6w?feature=share
2025年02月06日
【NHK文書開示】放送法違反の議事隠し 6年目に経営委公表 番組介入、繰り返される恐れ=小滝 一志
昨年12月18日NHKホームページで6年前の経営委員会議事録が公表された。「NHK文書開示等請求訴訟控訴審において和解が成立したことを受けて」との但し書きのついた2018年10〜11月開催分議事録の非公開部分だ。放送法41条は、経営委員長に、遅滞なく速やかな議事録公表を義務付けている。議事録はなぜ6年も放送法に反して隠されていたのか。
事の起こりは、2018年4月24日に放送された「クローズアップ現代+」(郵便局が保険を“押し売り”!?)に遡る。メディアの「かんぽ不正報道」が始まる前の優れたスクープで、番組への反響は大きく続編を企画、インターネットで視聴者に情報提供を呼びかけた。これに対し、郵政三社幹部が「詐欺、押し売りなどの犯罪的営業を、組織ぐるみでやっているかのような印象を与える」などと抗議。
森下俊三経営委員長代行(当時)は旧知の鈴木康雄郵政副社長(元総務事務次官)と密かに面談、郵政幹部の意を受けて経営委員会で番組攻撃を主導した。この議事録を、経営委員会は「自由な意見交換と多様な意見の表明を妨げるおそれがある」と非公表にしてしまった。
「議事録隠し」が明るみに出たのは、1年後の2019年9月の「毎日」新聞スクープだった。この報道がきっかけで、その後多くのメディア・市民団体がNHK情報公開制度などを利用した議事録開示要求、森下辞任の運動を数年間繰り返したが、森下ら経営委員会は頑なに拒否し続けた。経営委員会の放送法違反を必死に隠し続けたと言われても仕方がない。
2021年6月、しびれを切らした視聴者・市民110名余りが議事録開示と森下の責任明確化を求めて東京地裁に提訴、「NHK文書等開示請求訴訟」が始まった。裁判では森下側が「議事録を作っていない」と主張したため、2024年2月の一審判決では、議事録作成の基礎資料である「録音データの開示」と森下・NHK両者に損害賠償を命じた。原告全面勝訴の画期的判決だった。
判決を不服として森下とNHKは控訴したが、原告側は一審勝訴判決を踏まえて「議事録開示」という本来の目的を達成すべく和解を提案した。控訴審では、森下らが主張を変え、これまで議事録と認めなかった「粗起こし」(2021年7月原告及びメディアにのみ開示)を「放送法41条所定の経営委員会議事録として作成したもの」と認め、NHKも認めた。
こうして12月17日の和解成立に至った。和解条項は@被告森下とNHKが「稲葉NHK会長(当時)に厳重注意」した時の経営委員会議事録をNHKのホームページに公表し、A被告森下は原告らに解決金98万円を支払うというもの。これによって、隠されていた議事録は全面的に公表され、原告の完全勝利とも言える和解によって裁判は終結した。
しかし、和解成立後18日の記者会見で稲葉NHK会長は、「かんぽ生命の問題を報じた当該番組に関して、放送の自主・自律、あるいは番組編集の自由が損なわれた事実はなかったと理解している」と答え、古賀信行現NHK経営委員長も「番組介入したという感じはほとんど受けていない」と述べた。これでは、NHKも経営委員会も和解条項を誠実に受け止めているとはいえず、経営委員会の番組介入が繰り返される危険は残ると言わざるを得ない。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年1月25日号
事の起こりは、2018年4月24日に放送された「クローズアップ現代+」(郵便局が保険を“押し売り”!?)に遡る。メディアの「かんぽ不正報道」が始まる前の優れたスクープで、番組への反響は大きく続編を企画、インターネットで視聴者に情報提供を呼びかけた。これに対し、郵政三社幹部が「詐欺、押し売りなどの犯罪的営業を、組織ぐるみでやっているかのような印象を与える」などと抗議。
森下俊三経営委員長代行(当時)は旧知の鈴木康雄郵政副社長(元総務事務次官)と密かに面談、郵政幹部の意を受けて経営委員会で番組攻撃を主導した。この議事録を、経営委員会は「自由な意見交換と多様な意見の表明を妨げるおそれがある」と非公表にしてしまった。
「議事録隠し」が明るみに出たのは、1年後の2019年9月の「毎日」新聞スクープだった。この報道がきっかけで、その後多くのメディア・市民団体がNHK情報公開制度などを利用した議事録開示要求、森下辞任の運動を数年間繰り返したが、森下ら経営委員会は頑なに拒否し続けた。経営委員会の放送法違反を必死に隠し続けたと言われても仕方がない。
2021年6月、しびれを切らした視聴者・市民110名余りが議事録開示と森下の責任明確化を求めて東京地裁に提訴、「NHK文書等開示請求訴訟」が始まった。裁判では森下側が「議事録を作っていない」と主張したため、2024年2月の一審判決では、議事録作成の基礎資料である「録音データの開示」と森下・NHK両者に損害賠償を命じた。原告全面勝訴の画期的判決だった。
判決を不服として森下とNHKは控訴したが、原告側は一審勝訴判決を踏まえて「議事録開示」という本来の目的を達成すべく和解を提案した。控訴審では、森下らが主張を変え、これまで議事録と認めなかった「粗起こし」(2021年7月原告及びメディアにのみ開示)を「放送法41条所定の経営委員会議事録として作成したもの」と認め、NHKも認めた。
こうして12月17日の和解成立に至った。和解条項は@被告森下とNHKが「稲葉NHK会長(当時)に厳重注意」した時の経営委員会議事録をNHKのホームページに公表し、A被告森下は原告らに解決金98万円を支払うというもの。これによって、隠されていた議事録は全面的に公表され、原告の完全勝利とも言える和解によって裁判は終結した。
しかし、和解成立後18日の記者会見で稲葉NHK会長は、「かんぽ生命の問題を報じた当該番組に関して、放送の自主・自律、あるいは番組編集の自由が損なわれた事実はなかったと理解している」と答え、古賀信行現NHK経営委員長も「番組介入したという感じはほとんど受けていない」と述べた。これでは、NHKも経営委員会も和解条項を誠実に受け止めているとはいえず、経営委員会の番組介入が繰り返される危険は残ると言わざるを得ない。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年1月25日号
2024年12月20日
【裁判】「NHK文書等開示請求訴訟」が原告側完勝と言える勝利的和解で終了 JCJ会員らも原告団に加わる=放送を語る会
NHK文書開示等請求訴訟原告団事務局長・長井暁氏が原告への報告とお礼を述べた。要旨は以下の通り。
2021年6月の提訴以来、私たちが3年半にわたって取り組んで来たNHK文書開示等請求訴訟は、12月17日に東京高等裁判所で和解が成立したことにより終了いたしました。
私たちが隠されてきた経営委員会での会長厳重注意(2018年10月)の議事録の開示を求めて提訴するすると、その一か月後に議事録(粗起こし)が開示されました。しかし、経営委員会が公表を拒んだために、私たちは議事録の公表と森下俊三経営委員長の責任の明確化を求めて裁判を続けることといたしたました。
その結果、2024年2月20日に東京地方裁判所で原告勝訴の判決が言い渡されました。NHKと森下氏は判決を不服として控訴いたしましたが、一審原告勝訴の流れを受けて東京高等裁判所で和解協議が進められた結果、経営委員会が会長厳重注意の議事録をNHKのホームページに公表すること、森下氏が解決金として原告一人につき1万円(計98万円)の金額を支払うという和解が成立しました。私たちの求めてきた二つの目標(公表と責任の明確化)がほぼ達成された内容であると評価いたします。
なお和解金はこれまでほぼ手弁当で裁判を担当して来てくださった4人の原告弁護団の先生方にお支払いする弁護士費用に充てさせて頂きたく存じます。
また、多くの原告・支援者の皆さまからお寄せいただいたカンパの残金は、「ニュース」の発行と、この裁判に関する何らかの書籍の出版と、皆さま方にお送りする郵送費等に使わせて頂きたく存じます。何卒ご了解ください。
裁判は終わりますが、皆さま方におかれましては、公共放送NHKが放送法の精神に基づき、自主自律を堅持し、健全な民主主義の発展に資するように、監視・批判・激励を続けて行って頂きますよう、お願い申し上げます。
2024年12月18日
2021年6月の提訴以来、私たちが3年半にわたって取り組んで来たNHK文書開示等請求訴訟は、12月17日に東京高等裁判所で和解が成立したことにより終了いたしました。
私たちが隠されてきた経営委員会での会長厳重注意(2018年10月)の議事録の開示を求めて提訴するすると、その一か月後に議事録(粗起こし)が開示されました。しかし、経営委員会が公表を拒んだために、私たちは議事録の公表と森下俊三経営委員長の責任の明確化を求めて裁判を続けることといたしたました。
その結果、2024年2月20日に東京地方裁判所で原告勝訴の判決が言い渡されました。NHKと森下氏は判決を不服として控訴いたしましたが、一審原告勝訴の流れを受けて東京高等裁判所で和解協議が進められた結果、経営委員会が会長厳重注意の議事録をNHKのホームページに公表すること、森下氏が解決金として原告一人につき1万円(計98万円)の金額を支払うという和解が成立しました。私たちの求めてきた二つの目標(公表と責任の明確化)がほぼ達成された内容であると評価いたします。
なお和解金はこれまでほぼ手弁当で裁判を担当して来てくださった4人の原告弁護団の先生方にお支払いする弁護士費用に充てさせて頂きたく存じます。
また、多くの原告・支援者の皆さまからお寄せいただいたカンパの残金は、「ニュース」の発行と、この裁判に関する何らかの書籍の出版と、皆さま方にお送りする郵送費等に使わせて頂きたく存じます。何卒ご了解ください。
裁判は終わりますが、皆さま方におかれましては、公共放送NHKが放送法の精神に基づき、自主自律を堅持し、健全な民主主義の発展に資するように、監視・批判・激励を続けて行って頂きますよう、お願い申し上げます。
2024年12月18日
2024年12月06日
【連続シンポジウム】テレビを市民の手に NHK・民放改革迫る=編集部
「テレビは報道機関の役割を果たしていない」「テレビは政府広報か」など、テレビ報道批判が絶えない中、NHKとメディアの今を考える会は立教大学砂川浩慶研究室の協力を得て「取り戻せ!テレビを市民の手に」を共通テーマとする連続シンポジウム開催した。
第1回は「民放改革迫る新しい市民運動」と題して9月28日に開かれ、「テレビ輝け!市民ネットワーク」共同代表の前川喜平さんらが、テレビ局に市民の声をより広く反映させるために、6月のテレビ朝日ホールディングス株主総会で株主提案権を行使した経過について報告、講演した。
その中で前川さんは、安倍政権以降、テレビメディアへの政治介入が進み、メディア自身にも忖度体質が拡大している状況を指摘した上で「民放、NHKともに本来の公共的使命を果たしていない。民主主義が正常に機能するためには、メディアと教育が欠かせない」と強調。市民ネットワークの杉浦ひとみ弁護士が「テレビはまだ信頼されている。ダメにしてはいけない。批判よりも応援をしていきたい」とエールを送った。
連続シンポ第2回は10月13日、「公共放送NHKをめぐる二つの市民運動〜原点はETV2001番組改変事件〜」をテーマに開催された。
集会では、当時NHKプロデューサーとして同番組を制作した永田浩三武蔵大学教授が、安倍晋三官房副長官(後、首相)の「意見」により、松尾武放送総局長から大幅な番組改変が指示された事実を明らかにし「憲法21条は『検閲はこれをしてはならない』と定めている。これを検閲と言わずして何と言おう」と改めて厳しく批判した。
2005年にこの改変事件を告発した長井暁氏は「NHK職員はジャーナリズム活動をしたいのです。しかし、自民党はさせたくない。NHKの記者やディレクターの取材力が解き放たれたら、自分たちの不都合なことがどれだけ報道されろか分からないから、自分たちがグリップして置きたい」と、自民党の本音を指摘。市民、視聴者かもっと怒りの声を上げるべきだと強調した。
同時に長井氏は「2023年のNHK会長選に前川喜平氏を推薦した市民運動の時は、NHK内部で、勇気を持って意見を寄せる職員も出て、少し光明が見えた」と報告した。
また前川氏をNHK会長に推薦する運動は、短期間で4万6千筆を超える賛同署名を集めるなど盛り上がりを見せ、NHKに大きなインパクトを与えた。26年1月の次期会長選に向け、「NHKとメディアを考える会」としても前回を上回る大きな運動を実現しようと準備に入っている。
□
もう一つの重要なテーマである「放送・通信独立委員会」方式に移行する問題については、砂川教授が「日本以外の先進各国や韓国、台湾でも、日本のように政府が放送免許を与える制度ではなく、表現の自由については極力政治が関与しないように、政府から独立した委員会が規制するシステムで進めるのが世界の流れで、日本は大きく遅れている」と現状の問題点を指摘。重ねて日本でも現行の放送制度を改革し「放送・通信独立委員会」実現を目指す取り組みを強めることが急務だと強調した。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年11月25日号
第1回は「民放改革迫る新しい市民運動」と題して9月28日に開かれ、「テレビ輝け!市民ネットワーク」共同代表の前川喜平さんらが、テレビ局に市民の声をより広く反映させるために、6月のテレビ朝日ホールディングス株主総会で株主提案権を行使した経過について報告、講演した。
その中で前川さんは、安倍政権以降、テレビメディアへの政治介入が進み、メディア自身にも忖度体質が拡大している状況を指摘した上で「民放、NHKともに本来の公共的使命を果たしていない。民主主義が正常に機能するためには、メディアと教育が欠かせない」と強調。市民ネットワークの杉浦ひとみ弁護士が「テレビはまだ信頼されている。ダメにしてはいけない。批判よりも応援をしていきたい」とエールを送った。
連続シンポ第2回は10月13日、「公共放送NHKをめぐる二つの市民運動〜原点はETV2001番組改変事件〜」をテーマに開催された。
集会では、当時NHKプロデューサーとして同番組を制作した永田浩三武蔵大学教授が、安倍晋三官房副長官(後、首相)の「意見」により、松尾武放送総局長から大幅な番組改変が指示された事実を明らかにし「憲法21条は『検閲はこれをしてはならない』と定めている。これを検閲と言わずして何と言おう」と改めて厳しく批判した。
2005年にこの改変事件を告発した長井暁氏は「NHK職員はジャーナリズム活動をしたいのです。しかし、自民党はさせたくない。NHKの記者やディレクターの取材力が解き放たれたら、自分たちの不都合なことがどれだけ報道されろか分からないから、自分たちがグリップして置きたい」と、自民党の本音を指摘。市民、視聴者かもっと怒りの声を上げるべきだと強調した。
同時に長井氏は「2023年のNHK会長選に前川喜平氏を推薦した市民運動の時は、NHK内部で、勇気を持って意見を寄せる職員も出て、少し光明が見えた」と報告した。
また前川氏をNHK会長に推薦する運動は、短期間で4万6千筆を超える賛同署名を集めるなど盛り上がりを見せ、NHKに大きなインパクトを与えた。26年1月の次期会長選に向け、「NHKとメディアを考える会」としても前回を上回る大きな運動を実現しようと準備に入っている。
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もう一つの重要なテーマである「放送・通信独立委員会」方式に移行する問題については、砂川教授が「日本以外の先進各国や韓国、台湾でも、日本のように政府が放送免許を与える制度ではなく、表現の自由については極力政治が関与しないように、政府から独立した委員会が規制するシステムで進めるのが世界の流れで、日本は大きく遅れている」と現状の問題点を指摘。重ねて日本でも現行の放送制度を改革し「放送・通信独立委員会」実現を目指す取り組みを強めることが急務だと強調した。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年11月25日号
2024年04月12日
【NHK】経営委 議事データ公開命令 文書開示訴訟で判決=小滝一志
NHK「クローズアップ現代+」の「かんぽ生命保険不正販売問題」スクープへの森下俊三・経営委員長の介入を巡る「NHK文書開示等請求訴訟」で東京地裁は2月20日、森下委員長の議事録開示妨害、NHKの債務不履行を不法行為と認定。損害賠償とともに、経営委員会議事の録音データ公表をNHKに命じた。NHKは、判決を当日午後6時のニュースでは報じたが、7時のニュース、9時の「ニュースウオッチ9」では扱わず、森下氏と共に控訴。疑惑解明に背を向け続けている。
スクープが大きな反響を呼んだ5年前の2018年、番組続編取材の動きを知った日本郵政の鈴木康雄・筆頭副社長(元総務事務次官)が、旧知の森下氏(当時、NHK経営委員長代行。元NTT西日本社長)と面談。郵政三社(日本郵政・日本郵便・かんぽ生命)が「犯罪的営業を組織ぐるみでやっている印象を与える」と強く抗議し、その後経営委員会に抗議文を提出した。
森下氏はその後、「番組は極めて稚拙で取材をしてない」などと、郵政の意向を代弁する番組攻撃を展開。経営委員会での議論を主導して上田良一・NHK会長(当時)を「厳重注意」とし、その結果番組の続編は1年近く放送延期となった。
森下氏の番組介入は2019年9月、毎日新聞が「経営委員会の議事録隠し」をスクープし、明るみに出たが、森下氏は議事録作成・公表を頑なに拒み続け、その後、経営委員長に昇格。放送法に様々に違反する森下氏の言動を憂慮し、百人を超す原告が訴えていた。
森下氏が議事録などの公表を拒み続けた理由は、放送法3条の「放送番組は、何人からも干渉され、規律されることがない」違反のほか、経営委員の個別番組への介入を禁じた同32条、委員長に遅滞なく議事録作成・公表を義務付けた同41条違反などが明るみに出ることを恐れているからに他ならない。
森下氏に「放送の自主自律」など念頭にないことは、判決後「(経営委員の個別番組への干渉を禁じた)放送法に違反していない、と総務大臣が言ってる」などと述べていることでも明らかだ。
なぜこのような見識のない経営委員が選ばれるのか。NHK経営委員は国会の同意が必要だが、任命は内閣総理大臣。背景には安倍政権以降の恣意的な「お友だち」人事横行や、政権のNHK支配が強まっていることがある。
国会の同意を過半数から3分の2に引き上げる、野党推薦枠を設けるなど政権の恣意を排除する改革が必要ではないか。さらに言えば、独立行政委員会制度の導入など、政権のメディアに対する干渉・支配を排除する制度改革も議論の時期に来ていると思う。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年3月25日号
スクープが大きな反響を呼んだ5年前の2018年、番組続編取材の動きを知った日本郵政の鈴木康雄・筆頭副社長(元総務事務次官)が、旧知の森下氏(当時、NHK経営委員長代行。元NTT西日本社長)と面談。郵政三社(日本郵政・日本郵便・かんぽ生命)が「犯罪的営業を組織ぐるみでやっている印象を与える」と強く抗議し、その後経営委員会に抗議文を提出した。
森下氏はその後、「番組は極めて稚拙で取材をしてない」などと、郵政の意向を代弁する番組攻撃を展開。経営委員会での議論を主導して上田良一・NHK会長(当時)を「厳重注意」とし、その結果番組の続編は1年近く放送延期となった。
森下氏の番組介入は2019年9月、毎日新聞が「経営委員会の議事録隠し」をスクープし、明るみに出たが、森下氏は議事録作成・公表を頑なに拒み続け、その後、経営委員長に昇格。放送法に様々に違反する森下氏の言動を憂慮し、百人を超す原告が訴えていた。
森下氏が議事録などの公表を拒み続けた理由は、放送法3条の「放送番組は、何人からも干渉され、規律されることがない」違反のほか、経営委員の個別番組への介入を禁じた同32条、委員長に遅滞なく議事録作成・公表を義務付けた同41条違反などが明るみに出ることを恐れているからに他ならない。
森下氏に「放送の自主自律」など念頭にないことは、判決後「(経営委員の個別番組への干渉を禁じた)放送法に違反していない、と総務大臣が言ってる」などと述べていることでも明らかだ。
なぜこのような見識のない経営委員が選ばれるのか。NHK経営委員は国会の同意が必要だが、任命は内閣総理大臣。背景には安倍政権以降の恣意的な「お友だち」人事横行や、政権のNHK支配が強まっていることがある。
国会の同意を過半数から3分の2に引き上げる、野党推薦枠を設けるなど政権の恣意を排除する改革が必要ではないか。さらに言えば、独立行政委員会制度の導入など、政権のメディアに対する干渉・支配を排除する制度改革も議論の時期に来ていると思う。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年3月25日号
2024年03月09日
【NHK】能登地震取材で自衛隊支援要請 抗議質問書を提出=小滝 一志
能登半島地震発生から3日後の1月4日、NHKは総務省に「『令和6年度能登半島地震』に関する支援要請」を文書で提出した。「わが国の報道機関で唯一の指定公共機関としての使命を果たすため」として、「自衛隊等による物資の運搬」「石油など燃料の優先割り当ての登録」「優先車両の登録」「交換用バッテリーの割り当て」を要請した。
1月9日のNHK経営委員会で能登地震報道の報告をした山内理事が「総務省を通じて自衛隊のヘリコプターによる燃料と人員の輸送を要請しました」と告げたが、この件について経営委員からは何の疑問も出されなかった。
その後の文書提出の経緯説明にも不可解な見解の食い違いがあった。報道によると、総務省の課長補佐は「初めてのことです」「NHKさんから
一方的に送られてきたものです。これまで災害時に、このような文書を受け取ったことはありません」と答えた。ところが1月17日の記者会見で稲葉NHK会長は「総務省から放送事業者に対して燃料輸送などの要望確認があり、民間放送各社と一緒になって、自衛隊に対して燃料と作業要員の輸送を依頼した」と答えた。双方が市民からの批判を懸念して責任のなすり合いをしているようにも受け取れる食い違いだ。
NHKが提出した文書は、NHKOB(元金沢放送局記者)によって「市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会」のMLに怒りを滲ませて紹介された。同会は、2022年末前田前NHK会長の任期終了時、前川喜平氏の推薦運動をしたことで知られる。
元NHK放送記者の投稿を受けてML上では活発な議論が展開された。
「被災者支援に追われている自衛隊に、よくもこのような恥知らずの要請を行えたものだ」「緊急災害時対策の燃料や交換バッテリーなどは、公共放送として常に自前で用意しているべきもので、行政に要請するなど恥ずかしい」
その結果、災害報道真っ最中の報道現場に配慮して「能登半島地震に関する自衛隊の支援要請について、事実経緯の説明を求める」との質問書を提出することを決めた。質問は、NHKが「『わが国の報道機関で唯一の指定公共機関』などと名乗り、自ら放送の自主自律をかなぐり捨てるような文書はどのような経緯で生まれ、提出されたのか」「提出文書は総務局長、技術局長名だが、稲葉会長、井上副会長以下の執行部の責任を問う」など、4項目にまとめた。
質問書は、全国でNHKやメディアの問題に取り組む14市民団体の賛同を得て1月24日に提出された。1月31日、NHKからの回答が届いたが内容は1月17日会長記者会見の繰り返しで提出した質問にはゼロ回答だった。
「放送の自主・自立」「権力からの独立」に無自覚なNHK経営委員会、執行部に対し、視聴者・市民の監視がいかに必要かを改めて痛感する一件だった。
1月9日のNHK経営委員会で能登地震報道の報告をした山内理事が「総務省を通じて自衛隊のヘリコプターによる燃料と人員の輸送を要請しました」と告げたが、この件について経営委員からは何の疑問も出されなかった。
その後の文書提出の経緯説明にも不可解な見解の食い違いがあった。報道によると、総務省の課長補佐は「初めてのことです」「NHKさんから
一方的に送られてきたものです。これまで災害時に、このような文書を受け取ったことはありません」と答えた。ところが1月17日の記者会見で稲葉NHK会長は「総務省から放送事業者に対して燃料輸送などの要望確認があり、民間放送各社と一緒になって、自衛隊に対して燃料と作業要員の輸送を依頼した」と答えた。双方が市民からの批判を懸念して責任のなすり合いをしているようにも受け取れる食い違いだ。
NHKが提出した文書は、NHKOB(元金沢放送局記者)によって「市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会」のMLに怒りを滲ませて紹介された。同会は、2022年末前田前NHK会長の任期終了時、前川喜平氏の推薦運動をしたことで知られる。
元NHK放送記者の投稿を受けてML上では活発な議論が展開された。
「被災者支援に追われている自衛隊に、よくもこのような恥知らずの要請を行えたものだ」「緊急災害時対策の燃料や交換バッテリーなどは、公共放送として常に自前で用意しているべきもので、行政に要請するなど恥ずかしい」
その結果、災害報道真っ最中の報道現場に配慮して「能登半島地震に関する自衛隊の支援要請について、事実経緯の説明を求める」との質問書を提出することを決めた。質問は、NHKが「『わが国の報道機関で唯一の指定公共機関』などと名乗り、自ら放送の自主自律をかなぐり捨てるような文書はどのような経緯で生まれ、提出されたのか」「提出文書は総務局長、技術局長名だが、稲葉会長、井上副会長以下の執行部の責任を問う」など、4項目にまとめた。
質問書は、全国でNHKやメディアの問題に取り組む14市民団体の賛同を得て1月24日に提出された。1月31日、NHKからの回答が届いたが内容は1月17日会長記者会見の繰り返しで提出した質問にはゼロ回答だった。
「放送の自主・自立」「権力からの独立」に無自覚なNHK経営委員会、執行部に対し、視聴者・市民の監視がいかに必要かを改めて痛感する一件だった。
2024年02月23日
【NHK】不祥事相次ぎ信頼揺らぐ チェック機能も不全 急激な人事改革 モラル低下し人材流失=小滝一志
昨年12月も公共放送NHKで不祥事が相次いで明るみに出た。
21日、NHK広報局は規定に反して内部監査資料を持ち出した3人の職員の停職1か月の処分を発表した。流出資料の内容は明らかにされていない。
19日には、報道局社会部の30代の記者が私的飲食代を取材と称して410件総額789万円も不正請求していたことを公表した。NHKが設置した第三者委員会は、「組織としての管理活動の不足や監視体制の不足だけでなく、NHK職員の倫理観の不足も事案の発生につながった原因の一つ」「報道局長や社会部長という放送事業の根幹を支える基 幹職の倫理観の低下が、報道現場の倫理観の低下を招いた」と指摘した。NHKは、記者を懲戒免職、現職を含む歴代社会部長3人を停職1か月、さらに当時報道局長だった小池英雄専務理事、根本拓也理事は厳重注意とした。
報道内容を巡っても不祥事が続く。
12月5日BPO放送倫理検証委員会が意見書を公表した。5月15日放送『ニュースウオッチ9』のエンディング、「新型コロナ5類移行から1週間」(1分5秒)を放送倫理違反と断定した。意見書は「担当者がコロナウィルスに感染して亡くなった人もワクチン接種後に亡くなった人も、広い意味でコロナ禍で亡くなった人に変わりはない」と考えたことを「ニュース報道の現場を担うものとしてあり得ない不適切なもの」と指摘した。
また、提案票には「コロナワクチンで夫を亡くした遺族」「ワクチン被害者の会」などの記載があったのを見過ごしたか、気にも留めなかった担当デスク、調整デスク、編集責任者らのチェック機能不全なども、この事件の問題点として言及した。12月5日のNHK経営委員会では「取材情報の流出」が報告された。首都圏局の記者が取材したインタビューメモと提案文がネット上に流出し、調査した結果、NHKの子会社が契約している30代の派遣スタッフが、流出させたことを認め「興味本位でやった。大変なことをしてしまい、申し訳ない」と答えたと言う。報告に対し複数の経営委員から、「NHKで働く人間として取材に関する情報を流出させるということがどういうことなのか、NHKグループ全職員・スタッフにしっかりと認識させることが必要」「面白半分でやったのか、それとも明確な意図を持ってやったのか。興味本位で急にこれだけやったということは説得力がない。バックグラウンドをきちんと調査すべき」などの厳しい意見が出された。
不祥事多発の背景になにがあるのか。「NHKをメチャクチャにした」「『公共の論理』ではなく『資本の論理』で公共放送を語ろうとする」と現場から厳しい批判を浴びた前田前NHK会長の人事・構造(度)改革の負の遺産が放送現場のモチベーションを低下させていないか?
「スリムで強靭な『新しいNHK』」を標榜したBS放送波削減、受信料値下げ、550億円規模の支出削減などの構造改革が、放送現場の制作意欲を阻害しなかったか。「『新しいNHKらしさの追求』を実現する“人材”の育成」を掲げた急激な人事制度改革は、場当たり的で、専門性を軽視し、ベテランを冷遇したためモラルハザードを起こし、若手の有能な人材を流出させてしまったのではないか。
前田前会長の人事・構造改革を現場の視点から厳しく検証することが、今、視聴者の信頼回復に欠かせないのではないか。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年1月25日号
21日、NHK広報局は規定に反して内部監査資料を持ち出した3人の職員の停職1か月の処分を発表した。流出資料の内容は明らかにされていない。
19日には、報道局社会部の30代の記者が私的飲食代を取材と称して410件総額789万円も不正請求していたことを公表した。NHKが設置した第三者委員会は、「組織としての管理活動の不足や監視体制の不足だけでなく、NHK職員の倫理観の不足も事案の発生につながった原因の一つ」「報道局長や社会部長という放送事業の根幹を支える基 幹職の倫理観の低下が、報道現場の倫理観の低下を招いた」と指摘した。NHKは、記者を懲戒免職、現職を含む歴代社会部長3人を停職1か月、さらに当時報道局長だった小池英雄専務理事、根本拓也理事は厳重注意とした。
報道内容を巡っても不祥事が続く。
12月5日BPO放送倫理検証委員会が意見書を公表した。5月15日放送『ニュースウオッチ9』のエンディング、「新型コロナ5類移行から1週間」(1分5秒)を放送倫理違反と断定した。意見書は「担当者がコロナウィルスに感染して亡くなった人もワクチン接種後に亡くなった人も、広い意味でコロナ禍で亡くなった人に変わりはない」と考えたことを「ニュース報道の現場を担うものとしてあり得ない不適切なもの」と指摘した。
また、提案票には「コロナワクチンで夫を亡くした遺族」「ワクチン被害者の会」などの記載があったのを見過ごしたか、気にも留めなかった担当デスク、調整デスク、編集責任者らのチェック機能不全なども、この事件の問題点として言及した。12月5日のNHK経営委員会では「取材情報の流出」が報告された。首都圏局の記者が取材したインタビューメモと提案文がネット上に流出し、調査した結果、NHKの子会社が契約している30代の派遣スタッフが、流出させたことを認め「興味本位でやった。大変なことをしてしまい、申し訳ない」と答えたと言う。報告に対し複数の経営委員から、「NHKで働く人間として取材に関する情報を流出させるということがどういうことなのか、NHKグループ全職員・スタッフにしっかりと認識させることが必要」「面白半分でやったのか、それとも明確な意図を持ってやったのか。興味本位で急にこれだけやったということは説得力がない。バックグラウンドをきちんと調査すべき」などの厳しい意見が出された。
不祥事多発の背景になにがあるのか。「NHKをメチャクチャにした」「『公共の論理』ではなく『資本の論理』で公共放送を語ろうとする」と現場から厳しい批判を浴びた前田前NHK会長の人事・構造(度)改革の負の遺産が放送現場のモチベーションを低下させていないか?
「スリムで強靭な『新しいNHK』」を標榜したBS放送波削減、受信料値下げ、550億円規模の支出削減などの構造改革が、放送現場の制作意欲を阻害しなかったか。「『新しいNHKらしさの追求』を実現する“人材”の育成」を掲げた急激な人事制度改革は、場当たり的で、専門性を軽視し、ベテランを冷遇したためモラルハザードを起こし、若手の有能な人材を流出させてしまったのではないか。
前田前会長の人事・構造改革を現場の視点から厳しく検証することが、今、視聴者の信頼回復に欠かせないのではないか。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年1月25日号
2023年06月06日
【シンポジュウム】政治のメディア支配許さぬ 総務省文書、放送介入へのプロセス示す―前川さん NHK経営委を牛耳って国営放送化の野望―森さん 人事でごり押し安倍政権から=古川英一
「今回の総務省の文書の問題は何かと言えば、これは政治が放送の自由に介入しようとしたことがはっきり記されていることです」。文部科学省の次官を務めた前川喜平さん=写真右=が言い切った。
4月30日に東京の武蔵大学で「公共放送NHKはどうあるべきか」と題したシンポジウムが開かれた。主催したのは、NHK次期会長を市民自らが選んでいこうと活動を続けている市民グループで、前川さんは、会長候補を引き受け大きな柱となった。シンポジウムでは立憲民主党の小西参議院議員が国会で明らかにした放送法をめぐる総務省の文書がタイムリーなテーマになった。
前川さんは官僚時代の経験を踏まえながら「総務省の誰かが、放送行政の歪みを世の中に伝え国会でも追及してほしいと、文書を託したものだと思う。私はこういう行為は民主主義社会では正当な行為だと思う。行政の透明性、政治の透明性を高めるという行為であって決して処罰すべきではない。こうした文書は日々役所で作られていて、政治家に何を言われたかを決して忘れないように記録し、組織で共有し対処を考えていく、できる限り正確な情報を共有するためのものだから、そこに捏造があるわけがない」と指摘した。
その上で「放送法とは放送の自由を守るための法律なのに、政権側には取り締まるための法律だと考えている人が増えてきている。しかし放送においては事業者が自律的に守っていくべきものであって権力が介入すべきものではない。今回の問題は放送法の解釈変更だが、この解釈変更は安倍政権の常套手段だ。何が起きているかというと権力者が自分の子分をそれぞれの権力機関に任命してその親分子分の間で統治行為の全部が行われる、こういう日本になった、なりつつある。その一環としてNHKの会長問題もある」と安倍元首相以来の政権の姿勢を厳しく非難した。
続いてノンフィクション作家の森功さん=写真左=が講演した。森さんは、JR東海に君臨した葛西啓之元会長がいかにNHKの人事を牛耳ったのかを、昨年末出した著書「国商」で明らかにした。「葛西さんが立ち上げた『四季の会』では、むしろ安倍さんが葛西さんに師事し、言っていることはだいたい葛西さんの考え通りということで実現したのが第一次安倍政権だったが、わずか1年で退陣した。そのリベンジが第二次安倍政権で、その中で安倍さん、菅さん、葛西さんがNHK経営委員会を牛耳ればNHKのトップ人事まで操れる、という発想に至り人事に介入していく、これが葛西さんの野望で、それを実現していった。そして受信料を義務化し税金と同じような感覚で徴収し、政権の思い通りになる放送局に、国営放送にするという発想に葛西さんが賛同したのだと思う。稲葉現会長は「四季の会」のメンバーではないが、NHKの今後はやはり大変そうで、取材を続けていきたい」と語った。
NHKの問題は、単に組織の問題ではなく、放送という市民全体のメディアの問題で、放送の自由が脅かされるということは、表現の自由をも脅かすことに連なる、それを浮き彫りにしたシンポジウムだった。
「一番権力を持っているはずの国民が、その権利を預けている権力者をちゃんと告発しなければならない、そして監視する役割を持つメディアが支配されたら、本当に最悪の状態だ」前川さんのこの問いかけにメディアはどう応えていくのか。
ちなみに今回の活動の記録集「公共放送NHKはどうあるべきか」が今月三一書房から出版された。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年5月25日号
2023年01月14日
【シンポジウム】NHKはどうあるべきか 報道姿勢に不信高まる 鈴木氏 対立点伝えず印象操作 上西氏 経営委は政権の隠れ蓑 前川氏 「コモン」であるべきだ 金平氏=諸川 麻衣
12月1日、都内でシンポジウム「公共放送NHKはどうあるべきか〜市民による次期NHK会長候補・前川喜平さんと考えるメディアの今と未来〜」(=写真=)が開かれた。元文部科学事務次官の前川喜平氏を次期NHK会長候補に推す「市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会」が主催したもので、パネリストは前川氏、ジャーナリスト・早稲田大学客員教授の金平茂紀氏、法政大学教授・国会パブリックビューイング代表の上西充子氏。元NHK放送文化研究所主任研究員で次世代メディア研究所代表の鈴木祐司氏が報告者として加わり、武蔵大学教授・元NHKプロデューサーの永田浩三氏の司会で約3時間にわたってNHKの現状と将来を論じあった。
第一部「NHKのニュースがおかしい」では、鈴木氏がゴールデンタイム(G帯)の総個人視聴率などのデータから、2021年下半期以降G帯でNHK離れが進んでいることを示した。その要因として同氏は、官邸が「ニュースジャック」を狙って首相の記者会見をG帯に設定したこと、学術会議問題報道や聖火リレーの音声カットなどでNHKの報道姿勢への不信が高まったことなどを挙げた。上西氏はそれを受けて、NHKの国会報道は主語がすべて政府側で、野党の質問・追及や対立点を伝えず、キーワードを隠し、「報じないことで印象操作をしている」と具体例を挙げて批判した。金平氏は、ウクライナで戦地から実態を伝えたBBCとすぐに退避したNHKとを比較。前者には現場を見てきた者を信じる姿勢があり、それがデモクラシーにつながると述べ、NHKは「国営放送」ではなく社会的共通資本=コモンズであるべきだと主張した。
第二部「NHKの組織と制度のどこに問題があるのか」では、鈴木氏が「@国会による予算承認 A経営委員会が会長を任命 B首相が経営委員を任命」という放送法の規定が政権党に弱い構造を生んでいるとし、10年単位の受信許可料を設定し、さらに政府から独立した委員会が運営を審議するBBCとの違いを指摘した。前川氏は、経営委は合議制によって政権の直接関与を退ける仕組みのはずだが、現実には官邸の「任命権」乱用によって政権の隠れ蓑化している、経営委員の選出に何らかの新しいルールが必要だと提起した。上西氏は、NHKの報道内容への批判から進んで、その背景にある組織・人事の問題に市民の関心を向けてゆくことが大切だと述べた。
第三部は「公共放送・公共メディアはいかにあるべきか」。鈴木氏は、今後は「放送」ではなくネット・メディアの時代になるが、NHKは(この点でもBBCと対照的に)自らビジョンを示さず、現行制度への代案がないと指摘、今後NHKに求められるものとして、重要な情報がやりとりされる「コミュニティ・メディア」、オンデマンド、ピンポイント、「自分ごと」を挙げた。前川氏は、NHKは生涯学習の場として博物館・図書館・公民館と同じ役割を持つ、特に「さまざまな意見の人が集う場」として公民館的機能が大切だと述べた。金平氏は、金儲けを度外視してでも出さなければならない番組がある、資本の論理で効率化を進めると取材する人材がいなくなると、地方紙がなくなって地域が衰退してきたアメリカの例を引いて強調した。
その後の質疑も通して、この機会に会長選考過程を可視化させ、NHK問題への関心を広める必要がある、市民サイドの「影のNHK会長」の下で改革ビジョンを提起し続けてゆくことも意義がある、との意見が出された。放送からネットへの移行は世界どこでも海図のない手探りの探求だが、政府への隷属、資本の論理への屈服には未来がないことは、このシンポジウムで明瞭になったと言える。
推薦運動は続く
前川氏の推薦運動は、ネット署名と紙署名合わせて11月30日までに44019筆が集まり、NHK経営委に提出されたが、ネット署名は次期会長が決定するまでさらに続けられることになった。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年12月25日号
2022年11月05日
次期NHK会長に推された元文科省事務次官・前川喜平さんの14日の記者会見を聞いて=諸川麻衣
11月4日、国会議員会館で、「市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会」が次期NHK会長として経営委に推薦しようと擁立した前川喜平・元文部科学省事務次官の記者会見が開かれた。恥ずかしながら初めて前川さんの肉声に接した者として、順不同であるが、以下の点が強く心に残った。
・「憲法と放送法に基づいてNHKを運営する」との冒頭の一言。これ自体はまったく当然のことなのだが、過去の歴代NHK会長から「憲法と放送法」という言葉を聞いたことがあったろうか?
・戦後の新生NHKの会長に就任した高野岩三郎氏の著書を紹介しながら、「市民に寄り添い、かつ市民に一歩先んじる」という公共放送の使命や、「教育と娯楽の両立」を語られたことに、見識を感じた。
・前川さんご本人は放送の分野は専門外のはずであるのに、NHKに関わる諸問題について的確に要点を把握しておられることに驚いた。
内部的自由、政権への忖度、経営委員の任命のあり方、放送を総務省直轄から独立行政委員会の管轄に移すという制度問題、コスト削減優先の人事制度「改革」、ネット時代に放送の果たす役割(多様な意見を交流するフォーラム的機能)など、NHK職員も問題点として挙げてきたことばかりで、「響き合い」としか言いようがなかった。
・所信表明の口調が決して弾劾調・告発調ではなく、穏やかでユーモアにも満ちていることに、前川氏の人柄が窺われた。
・記者から「NHKは沖縄の抱える問題への報道姿勢が弱いと言われている」という趣旨の質問があり、前川氏は、「取材・制作現場が自由闊達に仕事できる環境を作りたい。自分が『この問題を取り上げよ』など指示することはあってはならない。自由に仕事ができるようになればおのずから、取り上げるべき問題は取り上げられるだろう。」「現場に行き、真実を見極め、当事者に寄り添うのがNHKの使命」という趣旨の答えをされた。それに代表されるように、「人は自由としかるべき環境を与えられれば自ら伸びてゆく」という、長年教育行政に誠実に関わってこられた前川氏の「人間への信頼」が強く感じられ、心を打たれた。
・放送やテレビ番組について個人的な感想を問われ、「自分はテレビ草創期に子供時代を送り、テレビっ子として育った」「今は昼間にテレビを見ている高齢者世代」「NHKのドキュメンタリーはよく見て、知識を得ている」「ドラマは、楽しませつつ、今の社会の問題をうまく提示している」「バリバラは大変面白い、桜を見る会の回は、よくぞ出せたと思う」など、NHKの番組への暖かい評価が聞けた。半面、「大事なニュースを知ろうと思ったらNHKより民放。NHKのニュースはほとんど見ていない」と、今のニュースの現状を批判された。
・「この四半世紀ぐらいの間のNHKのあり方を検証する番組を作ってほしい。これは、命令ではなくて、お願い、提案をしてみたい。」と語られた。正に正鵠を射た提案である。
・「憲法と放送法に基づいてNHKを運営する」との冒頭の一言。これ自体はまったく当然のことなのだが、過去の歴代NHK会長から「憲法と放送法」という言葉を聞いたことがあったろうか?
・戦後の新生NHKの会長に就任した高野岩三郎氏の著書を紹介しながら、「市民に寄り添い、かつ市民に一歩先んじる」という公共放送の使命や、「教育と娯楽の両立」を語られたことに、見識を感じた。
・前川さんご本人は放送の分野は専門外のはずであるのに、NHKに関わる諸問題について的確に要点を把握しておられることに驚いた。
内部的自由、政権への忖度、経営委員の任命のあり方、放送を総務省直轄から独立行政委員会の管轄に移すという制度問題、コスト削減優先の人事制度「改革」、ネット時代に放送の果たす役割(多様な意見を交流するフォーラム的機能)など、NHK職員も問題点として挙げてきたことばかりで、「響き合い」としか言いようがなかった。
・所信表明の口調が決して弾劾調・告発調ではなく、穏やかでユーモアにも満ちていることに、前川氏の人柄が窺われた。
・記者から「NHKは沖縄の抱える問題への報道姿勢が弱いと言われている」という趣旨の質問があり、前川氏は、「取材・制作現場が自由闊達に仕事できる環境を作りたい。自分が『この問題を取り上げよ』など指示することはあってはならない。自由に仕事ができるようになればおのずから、取り上げるべき問題は取り上げられるだろう。」「現場に行き、真実を見極め、当事者に寄り添うのがNHKの使命」という趣旨の答えをされた。それに代表されるように、「人は自由としかるべき環境を与えられれば自ら伸びてゆく」という、長年教育行政に誠実に関わってこられた前川氏の「人間への信頼」が強く感じられ、心を打たれた。
・放送やテレビ番組について個人的な感想を問われ、「自分はテレビ草創期に子供時代を送り、テレビっ子として育った」「今は昼間にテレビを見ている高齢者世代」「NHKのドキュメンタリーはよく見て、知識を得ている」「ドラマは、楽しませつつ、今の社会の問題をうまく提示している」「バリバラは大変面白い、桜を見る会の回は、よくぞ出せたと思う」など、NHKの番組への暖かい評価が聞けた。半面、「大事なニュースを知ろうと思ったらNHKより民放。NHKのニュースはほとんど見ていない」と、今のニュースの現状を批判された。
・「この四半世紀ぐらいの間のNHKのあり方を検証する番組を作ってほしい。これは、命令ではなくて、お願い、提案をしてみたい。」と語られた。正に正鵠を射た提案である。
NHK会長に前川氏を推薦 市民団体が署名運動展開 11/4(金) 19:11配信 共同通信
NHKのOBらでつくる市民団体は4日記者会見を開き、来年1月に任期満了を迎えるNHK会長の後任に、元文部科学事務次官の前川喜平氏を推薦すると発表した。
前川氏は会見で「憲法と放送法にのっとり、真実のみを重視するNHKの在り方を追求したい」と表明。「政府のいいなりには絶対にならず、本当の意味での公共を求めていきたい」と述べた。
NHK会長を巡っては、前田晃伸会長が既に続投の意欲はないと発言している。
同団体は署名サイトなどで賛同を募っており、12月1日にNHK経営委員会に署名を提出する予定。
前川氏は会見で「憲法と放送法にのっとり、真実のみを重視するNHKの在り方を追求したい」と表明。「政府のいいなりには絶対にならず、本当の意味での公共を求めていきたい」と述べた。
NHK会長を巡っては、前田晃伸会長が既に続投の意欲はないと発言している。
同団体は署名サイトなどで賛同を募っており、12月1日にNHK経営委員会に署名を提出する予定。
次期NHK会長に「前川喜平元文科事務次官」を推す動きが広がる 市民団体が呼びかけ11/3(木) 9:06配信日刊ゲンダイDIGITAL 元文部科学事務次官の前川喜平氏
前川.webp
「次期NHK会長はこの人しかいない」──。2023年1月に任期満了を迎えるNHKの前田晃伸会長(77)の後任として、元文部科学事務次官の前川喜平氏(67)を推す動きが広がっている。
前川喜平氏が明かす「統一教会」名称変更の裏側「文化庁では教団の解散が議論されていた」
みずほフィナンシャルグループ会長などを歴任し、20年1月にNHK会長に就任した前田会長はこれまでの定例会見で、2期目について「まったくありません」と続投を否定。放送法で、NHK会長は最高意思決定機関の「NHK経営委員会」が選ぶことになっているため、現在は同委員会の「指名部会」が後任人事について協議を進めているとみられる。
そんな中、前川氏の次期NHK会長就任を呼びかけているのは、市民団体「市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会」。
同会によると、今のNHKは「公共放送の理念を理解しているとは思えない財界出身の会長が続き、時の政権に忖度したニュースや世論調査、社会の関心事に応えようとしない日曜討論やNHKスペシャルが日常化している」とし、「次期会長がこれまでの悪弊を引き継ぎ、市民の宝である公共放送をこれ以上毀損することは許されない」などと主張。
その上で、森友・加計問題などで会見した前川氏について、「政権からの不当な圧力に屈せず公僕としての職責を果たす。これは放送法にうたわれた公平公正や、真実を追求し健全な民主主義のために資するジャーナリストの精神と深く重なる」として推薦することを決めたという。
同会は11月4日、前川氏同席のもとに衆院第2議員会館で会見を開き、活動の趣旨について説明する。1日から署名サイト「Change.org」で賛同署名を募る活動も始めており、12月1日にNHK経営委員会に前川氏を会長に推す申し入れ書と賛同署名を提出する予定だ。
同会の小滝一志事務局長は「市民の受信料で支えられる公共放送NHKを、公共の精神が希薄な人物にかじ取りを任せるのではなく、公共の大切さを心の底から理解する人に託したい」としている。
「次期NHK会長はこの人しかいない」──。2023年1月に任期満了を迎えるNHKの前田晃伸会長(77)の後任として、元文部科学事務次官の前川喜平氏(67)を推す動きが広がっている。
前川喜平氏が明かす「統一教会」名称変更の裏側「文化庁では教団の解散が議論されていた」
みずほフィナンシャルグループ会長などを歴任し、20年1月にNHK会長に就任した前田会長はこれまでの定例会見で、2期目について「まったくありません」と続投を否定。放送法で、NHK会長は最高意思決定機関の「NHK経営委員会」が選ぶことになっているため、現在は同委員会の「指名部会」が後任人事について協議を進めているとみられる。
そんな中、前川氏の次期NHK会長就任を呼びかけているのは、市民団体「市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会」。
同会によると、今のNHKは「公共放送の理念を理解しているとは思えない財界出身の会長が続き、時の政権に忖度したニュースや世論調査、社会の関心事に応えようとしない日曜討論やNHKスペシャルが日常化している」とし、「次期会長がこれまでの悪弊を引き継ぎ、市民の宝である公共放送をこれ以上毀損することは許されない」などと主張。
その上で、森友・加計問題などで会見した前川氏について、「政権からの不当な圧力に屈せず公僕としての職責を果たす。これは放送法にうたわれた公平公正や、真実を追求し健全な民主主義のために資するジャーナリストの精神と深く重なる」として推薦することを決めたという。
同会は11月4日、前川氏同席のもとに衆院第2議員会館で会見を開き、活動の趣旨について説明する。1日から署名サイト「Change.org」で賛同署名を募る活動も始めており、12月1日にNHK経営委員会に前川氏を会長に推す申し入れ書と賛同署名を提出する予定だ。
同会の小滝一志事務局長は「市民の受信料で支えられる公共放送NHKを、公共の精神が希薄な人物にかじ取りを任せるのではなく、公共の大切さを心の底から理解する人に託したい」としている。
2022年11月03日
【NHK】元文科省事務次官・前川喜平さんを次期 NHK 会⻑に推薦する市⺠運動を展開中
市⺠とともに歩み⾃⽴した NHK 会⻑を求める会 共同代表 ⼩林 緑(元 NHK 経営委員、国⽴⾳楽⼤学名誉教授)河野慎⼆(⽇本ジャーナリスト会議運営委員) 丹原美穂(NHK とメディアの今を考える会共同代表)
わたしたちは前川喜平さんを次期 NHK 会⻑に推薦する市⺠運動を展開し、NHK 経営委員会への申し⼊れを市⺠の賛同署名とともに⾏います。
11 ⽉ 4 ⽇ 記者会⾒・前川喜平さん出席
(14 時〜 衆議院第 2 議員会館地下第 7 会議室)
※通⾏証は 13 時 30 分より配布いたします。
11 ⽉ 22 ⽇ NHK ⻄⼝集会(12 時〜 NHK ⻄⼝前 前川喜平さん参加)
※この⽇は経営委員会の開催⽇です。
12 ⽉ 1 ⽇ 午前 経営委員会に、申し⼊れ書と賛同署名を提出
14 時〜 シンポジウム「公共放送 NHK をどうするか(仮)」 出席予定 前川喜平さん、⾦平茂紀さん、上⻄充⼦さん、永⽥浩三さん他
※場所など詳細については、決まり次第お伝えいたします。
第 1 次安倍政権以降、政権の意向を⾊濃く反映した NHK 会⻑が選出され続けてきました。中でも、籾井勝⼈⽒は、会⻑就任の⽇の記者会⾒で、「政府が右というものを左というわけにいかない」と発⾔し、世間の厳しい批判を浴びました。公共放送の理念を理解しているとは思えない財界出⾝の会⻑が続き、そのもとで、時の政権に忖度したニュースや世論調査、社会の関⼼事に応えようとしない⽇曜討論や NHK スペシャルが⽇常化しています。2023 年 1 ⽉には新しい会⻑が、現在の経営委員会によって選出されます。次期会⻑がこれまでの悪弊を引き継ぎ、市⺠の宝である公共放送をこれ以上毀損することは許されません。
そこで、わたしたち「市⺠とともに歩み⾃⽴した NHK 会⻑を求める会」は、メディアのありようを問う市⺠団体、NHKOBと OG、NHKの現役職員有志、メディア研究者、メディア関係者の思いを結集し、ここに次期会⻑候補として前川喜平さんを推薦します。放送法によれば、NHK 会⻑は経営委員会によってのみ選ばれ、わたしたち市⺠が直接選ぶ仕組みにはなっていません。ですが、わたしたちは、このようなひとにリーダーになってもらい、そのリーダーのもとで現在の NHK の病弊からの訣別を訴えることに意味があると考えています。そして、公共放送が再び息を吹き返すために多くの⼈びとと理念を共有し、働きかけることはできます。
2017 年に森友学園問題と加計学園問題が発覚しました。その際、前川喜平さんは告発のための記者会⾒をたった⼀⼈で⾏い、安倍⾸相ら政権の嘘を暴きました。⽂部科学事務次官まで上り詰めた官僚として、⽇本の⾏政史上かつてない⼤事件でした。前川喜平さんは⼀市⺠となった後、⽇本のジャーナリズムのありようを問い、教育の機会に恵まれなかった夜間中学の⽣徒に、学ぶことの素晴らしさを教えるボランティアを続けておられます。
NHK の本来の使命は、政権の顔⾊をうかがうのではなく、真実を伝え、社会の課題を議論するプラットフォームとなり、豊かな⽂化を放送を通じて⽇常的に市⺠に届けることです。それは前川喜平さんが⻑く⾝を置いた、⽂部科学省の柱である社会教育や⽣涯学習、学校を離れて教育や教養をあまねく普及させることとも重なります。政権からの不当な圧⼒に屈せず、公僕としての職責を果たす。これは放送法にうたわれた公平公正や、真実を追求し健全な⺠主主義のために資するジャーナリストの精神と同じものです。籾井勝⼈会⻑時代の 2015 年、NHK の予算承認を⾏う際、国会では経営委員会に対して「会⻑の選考については、⼿続きの透明性を⼀層図りつつ、公共放送の会⻑としてふさわしい資格・能⼒を兼ね備えた⼈物が適切に選考されるよう、選考の⼿続きのあり⽅について検討すること」という付帯決議が、前年に引き続いてなされました。それより前の 2013 年 11 ⽉に経営委員会は、「次期会⻑資格要件」として「NHK の公共放送としての使命を⼗分に理解している⼈」などの6 項⽬を求めましたが、まったく機能しないまま今⽇を迎えています。こうした異常な事態をこれ以上放置することは許されません。
今回、前川喜平さんは、わたしたちの願いを受け⽌め、市⺠が推薦する NHK会⻑候補になることを承諾してくださいました。市⺠の受信料で⽀えられる公共放送 NHK を、公共の精神が希薄な⼈物に任せるのではなく、公共の⼤切さを⼼の底から理解するひとによってよみがえらせましょう。わたしたちは、ここに、前川喜平さんとともに新⽣ NHK の未来をいっしょにつくっていくことを強く訴えます。
市⺠とともに歩み⾃⽴した NHK 会⻑を求める会
事務局⻑ ⼩滝⼀志(090-8056-4161)
事務局(広報担当) ⻑井 暁(090-4050-5019)
わたしたちは前川喜平さんを次期 NHK 会⻑に推薦する市⺠運動を展開し、NHK 経営委員会への申し⼊れを市⺠の賛同署名とともに⾏います。
11 ⽉ 4 ⽇ 記者会⾒・前川喜平さん出席
(14 時〜 衆議院第 2 議員会館地下第 7 会議室)
※通⾏証は 13 時 30 分より配布いたします。
11 ⽉ 22 ⽇ NHK ⻄⼝集会(12 時〜 NHK ⻄⼝前 前川喜平さん参加)
※この⽇は経営委員会の開催⽇です。
12 ⽉ 1 ⽇ 午前 経営委員会に、申し⼊れ書と賛同署名を提出
14 時〜 シンポジウム「公共放送 NHK をどうするか(仮)」 出席予定 前川喜平さん、⾦平茂紀さん、上⻄充⼦さん、永⽥浩三さん他
※場所など詳細については、決まり次第お伝えいたします。
第 1 次安倍政権以降、政権の意向を⾊濃く反映した NHK 会⻑が選出され続けてきました。中でも、籾井勝⼈⽒は、会⻑就任の⽇の記者会⾒で、「政府が右というものを左というわけにいかない」と発⾔し、世間の厳しい批判を浴びました。公共放送の理念を理解しているとは思えない財界出⾝の会⻑が続き、そのもとで、時の政権に忖度したニュースや世論調査、社会の関⼼事に応えようとしない⽇曜討論や NHK スペシャルが⽇常化しています。2023 年 1 ⽉には新しい会⻑が、現在の経営委員会によって選出されます。次期会⻑がこれまでの悪弊を引き継ぎ、市⺠の宝である公共放送をこれ以上毀損することは許されません。
そこで、わたしたち「市⺠とともに歩み⾃⽴した NHK 会⻑を求める会」は、メディアのありようを問う市⺠団体、NHKOBと OG、NHKの現役職員有志、メディア研究者、メディア関係者の思いを結集し、ここに次期会⻑候補として前川喜平さんを推薦します。放送法によれば、NHK 会⻑は経営委員会によってのみ選ばれ、わたしたち市⺠が直接選ぶ仕組みにはなっていません。ですが、わたしたちは、このようなひとにリーダーになってもらい、そのリーダーのもとで現在の NHK の病弊からの訣別を訴えることに意味があると考えています。そして、公共放送が再び息を吹き返すために多くの⼈びとと理念を共有し、働きかけることはできます。
2017 年に森友学園問題と加計学園問題が発覚しました。その際、前川喜平さんは告発のための記者会⾒をたった⼀⼈で⾏い、安倍⾸相ら政権の嘘を暴きました。⽂部科学事務次官まで上り詰めた官僚として、⽇本の⾏政史上かつてない⼤事件でした。前川喜平さんは⼀市⺠となった後、⽇本のジャーナリズムのありようを問い、教育の機会に恵まれなかった夜間中学の⽣徒に、学ぶことの素晴らしさを教えるボランティアを続けておられます。
NHK の本来の使命は、政権の顔⾊をうかがうのではなく、真実を伝え、社会の課題を議論するプラットフォームとなり、豊かな⽂化を放送を通じて⽇常的に市⺠に届けることです。それは前川喜平さんが⻑く⾝を置いた、⽂部科学省の柱である社会教育や⽣涯学習、学校を離れて教育や教養をあまねく普及させることとも重なります。政権からの不当な圧⼒に屈せず、公僕としての職責を果たす。これは放送法にうたわれた公平公正や、真実を追求し健全な⺠主主義のために資するジャーナリストの精神と同じものです。籾井勝⼈会⻑時代の 2015 年、NHK の予算承認を⾏う際、国会では経営委員会に対して「会⻑の選考については、⼿続きの透明性を⼀層図りつつ、公共放送の会⻑としてふさわしい資格・能⼒を兼ね備えた⼈物が適切に選考されるよう、選考の⼿続きのあり⽅について検討すること」という付帯決議が、前年に引き続いてなされました。それより前の 2013 年 11 ⽉に経営委員会は、「次期会⻑資格要件」として「NHK の公共放送としての使命を⼗分に理解している⼈」などの6 項⽬を求めましたが、まったく機能しないまま今⽇を迎えています。こうした異常な事態をこれ以上放置することは許されません。
今回、前川喜平さんは、わたしたちの願いを受け⽌め、市⺠が推薦する NHK会⻑候補になることを承諾してくださいました。市⺠の受信料で⽀えられる公共放送 NHK を、公共の精神が希薄な⼈物に任せるのではなく、公共の⼤切さを⼼の底から理解するひとによってよみがえらせましょう。わたしたちは、ここに、前川喜平さんとともに新⽣ NHK の未来をいっしょにつくっていくことを強く訴えます。
市⺠とともに歩み⾃⽴した NHK 会⻑を求める会
事務局⻑ ⼩滝⼀志(090-8056-4161)
事務局(広報担当) ⻑井 暁(090-4050-5019)
2022年10月17日
【NHK】五輪番組虚偽字幕 公共放送たり得るか 「重大な倫理違反」= 小滝一志
放送倫理・番組向上機構(BPO)放送倫理検証委員会は9日、NHK「BSスペシャル 河P直美が見つめた東京五輪」(2021年12月26日放送)の字幕に「重大な放送倫理違反があった」との意見書を公表した。
番組は、東京五輪公式映画の監督河P直美氏に密着取材したドキュメンタリー。公式映画ディレクターの一人である男性にインタビューするシーンで、「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」と問題の字幕を付けた。
放送直後から、「インタビューの内容は真実なのか」「市民の意思表示であるデモの評価を貶めるものではないか」など視聴者の批判が殺到。NHKは今年1月9日、番組で「お詫び」、2月には「誤った内容の字幕を付けた」「放送ガイドラインを逸脱していた」との専務理事が責任者の調査チーム報告書に追い込まれた。
事実歪め3回変更
BPO意見書は、@男性の五輪反対デモ参加Aお金をもらったなどの事実を担当ディレクターが確認したのかを詳細検証―。その上で「事実に反した内容を放送した」その「最大要因は、取材の基本を欠くおろそかな事実確認」と断定した。
意見書は「デモの価値を貶めようとの悪意の介在は『不明』だが、試写段階で3回変更が加えられた問題の字幕は、試写を重ねるごとに取材した内容から離れ、事実を歪める方向に変わった」と指摘している。
番組全体に責任
意見書はさらに、問題のシーンで男性が語る「デモは全部上の人がやるから(主催者が)書いたやつを言ったあとに言うだけ」「予定表をもらっているから それを見て行くだけ」は、別のデモに関する発言を五輪反対デモの発言に“すり替え”たものと指摘。「発言者を正確に確認せず、独自の解釈で編集した結果、視聴者を誤信させる番組を作った」とディレクターの姿勢を厳しく批判した。その上で、「五輪反対デモや、デモ全般までも貶めるような内容を伝えたことは、取材過程の問題点とは別に重大な問題」として、番組全体の責任にも言及した。
リスペクトを大切に
意見書は「放送前、6回もの部内試写を行いながら結局、取材・編集過程で問題シーンへの本質的疑問にチェック機能が働かなかった」ことを重視。要因としてスタッフの「デモに関心はないし、取材経験もない」「参加者にお金が支払われること違和感はもたなかった」などの発言にみられる社会運動への「関心の薄さ」を挙げ、「放送局のスタッフとして、民意の重要な発露である市民の活動に真摯な目線を向けるべきだ」とも指摘した。
最後に「背景に無意識の偏見や思い込みがなかったか」と問題提起、今回の問題は正確な事実の報道と共に「取材相手と社会に対するリスペクトの精神を失わないこと」の大切さを放送界全体に教えていると結んでいる。
小滝一志
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年9月25日号
番組は、東京五輪公式映画の監督河P直美氏に密着取材したドキュメンタリー。公式映画ディレクターの一人である男性にインタビューするシーンで、「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」と問題の字幕を付けた。
放送直後から、「インタビューの内容は真実なのか」「市民の意思表示であるデモの評価を貶めるものではないか」など視聴者の批判が殺到。NHKは今年1月9日、番組で「お詫び」、2月には「誤った内容の字幕を付けた」「放送ガイドラインを逸脱していた」との専務理事が責任者の調査チーム報告書に追い込まれた。
事実歪め3回変更
BPO意見書は、@男性の五輪反対デモ参加Aお金をもらったなどの事実を担当ディレクターが確認したのかを詳細検証―。その上で「事実に反した内容を放送した」その「最大要因は、取材の基本を欠くおろそかな事実確認」と断定した。
意見書は「デモの価値を貶めようとの悪意の介在は『不明』だが、試写段階で3回変更が加えられた問題の字幕は、試写を重ねるごとに取材した内容から離れ、事実を歪める方向に変わった」と指摘している。
番組全体に責任
意見書はさらに、問題のシーンで男性が語る「デモは全部上の人がやるから(主催者が)書いたやつを言ったあとに言うだけ」「予定表をもらっているから それを見て行くだけ」は、別のデモに関する発言を五輪反対デモの発言に“すり替え”たものと指摘。「発言者を正確に確認せず、独自の解釈で編集した結果、視聴者を誤信させる番組を作った」とディレクターの姿勢を厳しく批判した。その上で、「五輪反対デモや、デモ全般までも貶めるような内容を伝えたことは、取材過程の問題点とは別に重大な問題」として、番組全体の責任にも言及した。
リスペクトを大切に
意見書は「放送前、6回もの部内試写を行いながら結局、取材・編集過程で問題シーンへの本質的疑問にチェック機能が働かなかった」ことを重視。要因としてスタッフの「デモに関心はないし、取材経験もない」「参加者にお金が支払われること違和感はもたなかった」などの発言にみられる社会運動への「関心の薄さ」を挙げ、「放送局のスタッフとして、民意の重要な発露である市民の活動に真摯な目線を向けるべきだ」とも指摘した。
最後に「背景に無意識の偏見や思い込みがなかったか」と問題提起、今回の問題は正確な事実の報道と共に「取材相手と社会に対するリスペクトの精神を失わないこと」の大切さを放送界全体に教えていると結んでいる。
小滝一志
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年9月25日号
2022年07月16日
【NHK問題】権力からの自立を求めて『放送を語る会 30年』刊行 政府介入許す 予算編成に関与道開く=小滝一志
私たちは3月、『NHKの自立を求めて―「放送を語る会」の30年―』を刊行した。1988年秋、「天皇下血報道」の電波ジャックに強い危機感を抱いた放送労働者が活動を始め、2001の「ETV2001」番組改変事件、2014年に就任した「籾井NHK会長罷免運動」など、NHKをめぐる大きな事件に多くの市民団体と連携して取り組んできた。その運動を通じて私たちが一貫して求めてきたもの、それが「NHKの権力からの自立」だった。
願い逆なでする
理事者の返本
ところが、この書籍の献本をめぐり、私たちの願いを逆なでする事態が起こった。出版直後、NHK経営委員全員、会長ほか理事全員、日放労中央及び全国10支部・系列に献本した数日後、NHKから「高価なお品でございますので一冊のみ頂戴し、他はお返しさせていただきます」との手紙を付けて理事者宛の10冊余りが返送されてきた。経営委員からの返本はなかった。放送現場から、「Kアラート」などと揶揄されながら政権の意向の忖度には汲々とする一方、視聴者・市民の声には一顧だにしない経営姿勢が露わで、私たちの怒りを誘った。
ネトウヨ用語を
解説委員使う
NHKの権力からの自立を疑わせる事例は、最近も私たちはいくつか目にしている。1月27日放送「ニュース シブ時」。岩田明子解説委員が、佐渡金山の世界遺産登録をめぐり、「岸田総理は『歴史戦』チームを結成し、登録に向けた準備を本格化させたい考え。韓国側が展開する主張に対して『歴史戦』チームがいかに機能するか、推薦決定に向けた岸田総理の決断が注目される」とコメントしてネットで炎上した。「歴史戦」は雑誌「正論」、「Hanada」、「Will」などでよく使われるネトウヨ用語で、それが公共放送NHKでいとも無造作に安易に使われた。政権の思考に身も心も染まったNHK解説者の姿に仰天したのは私たちだけではなかった。
政権圧力に屈し
受信料引き下げ
就任時は受信料値下げに消極的だったNHK前田会長だが、度重なる菅政権の圧力に屈して昨年1月12日、「700億円節減して受信料を引き下げる」と発表した。
今年6月3日には、受信料値下げ策が盛り込まれた改定放送法が国会を通過した。受信料の繰越剰余金の一部を積み立てて値下げ原資にす「還元目的積立金制度」を新設、その計算額は「総務省令で定める」とされ、政府がNHK予算に口出しできる手がかりが作られた。前田会長「(今まで)値下げのルールがなかったので明確になる」とあっさり容認してしまった。制度的にもNHK予算編成に政府が関与する道が開かれた。
受信料制度廃止
課金制度移行も
受信料制度そのものも安泰ではない。昨年11月にスタートした総務省の「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」では、主要検討項目の一つに「放送制度の在り方」を挙げている。3月末には「放送法令等の制度において必要な措置を講ずるべき」と論点整理した。
NHKのモデルともいわれるBBCもイギリス政府が受信料値上げを凍結、2028年度以降、受信料制度の廃止・課金制度への移行を検討している。放送だけでなくネット配信も視野に入れた受信料制度の検討を迫られている今、NHKは、政権の意向を忖度し政府広報のような放送を続け実質国営放送の道を歩むのか、受信料で支える視聴者の側にしっかり立つ公共放送としてとどまるのか、その岐路に立たされているのではないか。
小滝一志(放送を語る会)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年6月25日号
願い逆なでする
理事者の返本
ところが、この書籍の献本をめぐり、私たちの願いを逆なでする事態が起こった。出版直後、NHK経営委員全員、会長ほか理事全員、日放労中央及び全国10支部・系列に献本した数日後、NHKから「高価なお品でございますので一冊のみ頂戴し、他はお返しさせていただきます」との手紙を付けて理事者宛の10冊余りが返送されてきた。経営委員からの返本はなかった。放送現場から、「Kアラート」などと揶揄されながら政権の意向の忖度には汲々とする一方、視聴者・市民の声には一顧だにしない経営姿勢が露わで、私たちの怒りを誘った。
ネトウヨ用語を
解説委員使う
NHKの権力からの自立を疑わせる事例は、最近も私たちはいくつか目にしている。1月27日放送「ニュース シブ時」。岩田明子解説委員が、佐渡金山の世界遺産登録をめぐり、「岸田総理は『歴史戦』チームを結成し、登録に向けた準備を本格化させたい考え。韓国側が展開する主張に対して『歴史戦』チームがいかに機能するか、推薦決定に向けた岸田総理の決断が注目される」とコメントしてネットで炎上した。「歴史戦」は雑誌「正論」、「Hanada」、「Will」などでよく使われるネトウヨ用語で、それが公共放送NHKでいとも無造作に安易に使われた。政権の思考に身も心も染まったNHK解説者の姿に仰天したのは私たちだけではなかった。
政権圧力に屈し
受信料引き下げ
就任時は受信料値下げに消極的だったNHK前田会長だが、度重なる菅政権の圧力に屈して昨年1月12日、「700億円節減して受信料を引き下げる」と発表した。
今年6月3日には、受信料値下げ策が盛り込まれた改定放送法が国会を通過した。受信料の繰越剰余金の一部を積み立てて値下げ原資にす「還元目的積立金制度」を新設、その計算額は「総務省令で定める」とされ、政府がNHK予算に口出しできる手がかりが作られた。前田会長「(今まで)値下げのルールがなかったので明確になる」とあっさり容認してしまった。制度的にもNHK予算編成に政府が関与する道が開かれた。
受信料制度廃止
課金制度移行も
受信料制度そのものも安泰ではない。昨年11月にスタートした総務省の「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」では、主要検討項目の一つに「放送制度の在り方」を挙げている。3月末には「放送法令等の制度において必要な措置を講ずるべき」と論点整理した。
NHKのモデルともいわれるBBCもイギリス政府が受信料値上げを凍結、2028年度以降、受信料制度の廃止・課金制度への移行を検討している。放送だけでなくネット配信も視野に入れた受信料制度の検討を迫られている今、NHKは、政権の意向を忖度し政府広報のような放送を続け実質国営放送の道を歩むのか、受信料で支える視聴者の側にしっかり立つ公共放送としてとどまるのか、その岐路に立たされているのではないか。
小滝一志(放送を語る会)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年6月25日号

