2020年11月02日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 菅首相 NHK受信料義務化を画策か 総務省「有識者会議」諮問 当惑広がる

   2011 受信料NHKIMG_0405.jpg
 総務省は10月16日に開かれた「有識者会議」で、NHKの受信料の支払い義務を放送法で明確することの是非について検討を求めた。「有識者会議」とは総務省が設置する懇談会で、これまでもNHKのありかたについての検討を重ねてきた。しかし受信料は「届け出制」として続いてきており、今回突然提起された「義務化」の検討については、メディア関係者の間で困惑が広がっている。
 当事者すら戸惑い
 受信料の義務化の是非についてはこれまで長年にわたって議論されてきたが、2017年の最高裁大法廷の判断により、議論はすでに解決したと見られていた。そこにその趣旨とは全く異なる、義務化の検討を総務省が有識者会議に付託したことは、当事者であるNHKすら戸惑わせている。
 NHKの正籬(まさがき)聡・放送総局長(兼副会長)は、「NHKから要望したものではない。受信料は、視聴者の納得や理解のもとで支払われるべきだと考える」(10/21)と述べ、義務化に慎重姿勢を示した。正籬放送総局長は同じ記者会見で「視聴者との契約というやり取りの中で、NHKが自らの役割や受信制度の意味を丁寧に説明し、関係を構築するプロセスが重要だ」と語っている(毎日新聞10/21夕刊)。まともな主張だ。
 NHKすら初耳の諮問義務化推進は、菅政権独自の判断によってなされたものと言えよう。
 菅首相は総務相だった2006年、受信料義務化を受信料2割り引き下げとセットで提案したことがあるが、実現しなかった。今回その持論の実現を図ったものとみられる。「ケータイの次はNHKをやれ」と菅首相が側近に極秘命令したというニュースも流れている(週刊文春10/29)。
未契約者把握を
 NHKは不払い家庭訪問のための営業経費が昨年度759億円にも達した。経費削減を総務省や「有識者会議」から再三迫られている。そこで未契約家庭がテレビ設置しているか、事実未設置なのかを知る必要があると、「有識者会議」に求めている。
 その方法としてNHKが提案しているの、ガス会社や電力会社などの公益事業者に紹介できることを求めている。NHKが恐れているのは、将来的なテレビ世帯の減少、イコール受信料収入減だ。そのために、未設置者にも届け出を義務づける必要があるとNHKが考えていることがうかがえる。しかし設置者、未設置者の両面を把握する届け出は、受信料の支払い義務に等しい。
届け出制維持
 最高裁が3年前にどのような判断を示したのが、改めて見直してみよう。
 「(受信料を定めた)放送法64条は憲法の保障する国民の知る権利を、実質的に充足するべく採用され、その目的にかない合憲である」。
 「NHKが特定の個人、団体または国家機関から財政面での支配や影響が及ばないようにするため、広く公平に負担を求めたものだ」。
 「NHKからの一方的な申し込みなみによって受信料支払いの義務が生じるものではなく、双方の意志表示が必要である」。
 「(双方に争いが生じたときは)NHKが未契約者を相手に訴訟を起こし、勝訴が確定した時点で契約が成立する」(2016年12月6日、最高裁大法 廷、寺田逸郎長官)。
 この判決により、テレビ受像機を設置した場合の届け出が必要となりNHKの受診料未払者の減少がみられた。支払い率は76.6%(2015年度)から81.8%(2020年度)に向上した。しかし受信料の支払い義務は放送法に盛り込まれることはなかった。
 イギリス、フランス、ドイツなど世界各国の多くで公共放送の受信料支払いは国税と同様に義務化されているが、日本のように届け出制で支払い率が8割を超えているのは驚異だと諸外国から見られている。制度として定着していることから、最高裁も現行制度の維持を求めたといえよう。
 NHKの受信料収入は2018年に7122億円、7115億円となっているが、2020年度以降は6000億円台にとどめるとしている。
受信料制度の発端
 NHKの受信料はNHKの前身東京放送局の発足当初1925年(大正14年)に生まれた。当時の技術革新の最先端であったラジオの開設に、時の政府(逓信省)が民間企業に渡すことを嫌い、事実上の国営とした。そして財源として聴取者からラジオ一台当たり月1円の許可証を課したのが始まりである。最初の聴取者は東京放送局管内で3,500人と記録されている。報道と娯楽を一元化したラジオは、市民に歓迎され、東京、名古屋、大阪3局をつないで「日本放送協会」となった後、ラジオ聴取者の数は年々30万台、40万台、50万台うなぎのぼり、遂に1931年(昭和6年)には100万台を突破するに至った。しかしこの頃から、日本軍の満州進出が始まり、ラジオ報道は内閣情報局の統制下に組み込まれた。
 「受信料の徴収」が現在の形で制度化されたのは、戦後1950に制定された「放送法」によってであった。
受信料拒否1
 受信料が大きな社会問題として意識されたきっかけは、1973年に発刊された本多勝一氏(朝日新聞記者)による著書「受信料拒否の論理」(未来社刊)であった。当時NHKは新鋭機器をそろえた放送センターを渋谷に新築し日比谷の放送会館より移転し、田中角栄政権下の高度成長の波にのって破竹の勢いであった。しかし本多氏は「NHKが真実を伝える努力を怠り、権力に迎合している」と批判し、受信料拒否を訴えた。
 NHKの報道姿勢を痛烈に批判したが、それとともに当時のNHKテレビが毎日の放送終了時に日の丸の映像と君が代を流していたことも、不当な歴史感に基づくものだと批判した。本多氏は2007年にも「受信料拒否して40年」という著書を出している。
受信料拒否2
 2004年、NHKの番組制作に関連して巨額の不正流用があり、視聴者の間に不信感が広まった。批判は1か月で11万3000件を越える受信料拒否となった。当時のNHK会長であった海老沢勝二会長は従前からの強引な経営姿勢と相まって、集中的な批判の的となり、2005年1月辞職した。会長の任期中辞職はこの時まで類を見ない事態であった。
受信料拒否3
 会長辞職後も受信料不払いの勢いはしばらく止まらず、NHKの経営姿勢、番組批判が続く中、2005年1月、新たに朝日新聞が、NHK幹部が政府の圧力の下、番組を改ざんした事実を明らかにした。現役プロデューサーの実名告発で、中川経済産業相と安倍官房副長官が介入、「問われる戦時性暴力」(2001年1月放送)が再編集で切り刻まれ、続編が放送されなかったという事件だ。
 NHKの幹部らは介入を認めず、従軍慰安婦の問題も絡み、長期にわたってNHKと朝日新聞は対立を深めた。視聴者の間ではNHKの体質に問題があるとして、受信料不払いが長く続く一因となった。
市民の集団訴訟
 最高裁の受信料合憲判断以降、NHKは受信料不払い者を提訴することが続いている。
ところが、奈良地裁では「NHKは放送法を守る義務がある」と県民126人が訴え出た集団訴訟の裁判が行われている。裁判は2016年以来4年にわたって続いてきたが、今年6月に最終弁論が行われ、11月12日に判決がでる。
 申し立てた市民の代理人である、白井啓太郎弁護士は「放送法第4条1項の政治的公平などの最低基準を満たさないNHKのニュース報道は、受信契約者の知る権利を侵害するものだ」と意見陳述した。奈良地裁の判断が注目される。
隅井孝雄(ジャーナリスト)


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2020年09月30日

【隅井孝雄メディアウオッチ】 NHK、ネット事業制限撤廃 一方ではラジオ第二とBS1廃止の矛盾

 NHKはこれまでインターネット業務の予算枠を全体の2.5%に抑えてきたが、9月15日、その制限枠を来年度から撤廃する考えを明らかにした。
好調の波にのる
 4月に開始したネットサービス、「NHKプラス」がたまたまコロナによる「外出自粛」と合致し、好調の波にのった。”この際一気にネット拡大に向かいたい”という思惑が見て取れる。ネット業務の拡大について、NHKは建前として「抑制的な管理に努める」としている。
 かねてからNHKのネット進出を警戒する民放連は「NHKは放送とネットを横並びに位置付けている」との懸念を表明、逆に現行受信料の引き下げ(地上波月額2230円)を求めた。
 NHKのネット業務費は2020年度予算で170億円(受信料の2.4%)。別枠の東京五輪関連のネット費19億円を含めると189億円(受信料の2.7%)となる。
 「NHKプラス」主体のネット業務は2021年には197億円に、22年は194億円になる見通しも発表された。それぞれ受信料の2.94%、2.90%を占める。
事業規模縮小か
 合点がいかないのは、NHKが今年8月4日に発表した3ヵ年計画で事業規模を現状の7200億円から、6000億円台に縮小する方針との整合性だ。番組やチャンネルを縮小する一方ネットビジネスを拡大するということとの間の矛盾は大きい。
 NHKネット業務の主力はなんといっても「NHKプラス」だ。同時配信ももちろんだが、見逃し視聴、追いかけ視聴、地方番組サービスもあり、視聴者にとっては便利な存在に違いない。しかし受信料を支払っている視聴者であれば無料で利用できる。NHKがインターネットをビジネスとして活用することは放送法上できない相談だ。
 にもかかわらずネット利用に執心するのには何か別の魂胆があるのではないかとの疑いをすら持つ事態だ。
 高市早苗総務大臣(当時)がネット事業の上限撤廃に見直しを求めた(9/16)。NHKは上限撤廃されれば、地方局制作番組のネット配信期間を7日間から14日間に延長する、在外邦人向けの「NHKワールドジャパン」のネット同時配信を始めるといっている。
都市放送の歴史持つ
 一方3ヵ年計画でNHKが打ち出した、ラジオ第二とBS1の視聴者に断りもなく一方的廃止には私は断固として反対する。
 ラジオ第二放送は今では教育教養、それも語学講座が主体だが、1931年以来半世紀の歴史を持つ。東京、大阪、名古屋に聴取者が留まったことから局名を1939年に「都市放送」と改称した。そして都市知識層向けの、教養、講座、文芸、音楽番組に力を入れた。
 太平洋戦争中「都市放送」は休止されたが、終戦直後再開、学校放送、プロ野球中継、大相撲、音楽放送など、柔軟編成で親しまれた。また「農村」向け、「漁村」向け番組なども開発した。
世界を身近に感じる
 BS1も貴重な歴史を持つ。開始は1984年5月12日。日本初となる人工衛星を利用して受信可能なテレビ放送を開始したのがBS1、衛星放送のパイオニアだった。
 その後、デジタル化の曲折を経て、現在はスポーツ、ドキュメンタリー・情報番組・海外報道に特化して放送している。世界に触れようとする場合、BS1が最も豊富な海外ニュース報道を提供しているので、欠かせない貴重な存在だ。
隅井孝雄(ジャーナリスト)
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2020年09月01日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 NHK中期計画を発表 拡大路線からの転換は本当か

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 NHKはこの8月4日、2021年〜23年度の中期経営計画を発表した。NHKのこの計画は安倍政権の規制改革推進会議に迫られたもので、その意向に応じて、2023年度までに2波あるAMラジオの一本化、NHKBS1の放送の廃止を行うとともに受信料収入を6000億円台に抑制する。
 受信料合憲で拍車
 NHKは2018年12月から衛星放送による、4K,8Kの2チャンネルの放送を開始した。新型衛星によるスーパーハイビジョン放送であり、受信するには新型受像機が必要だ。
 さらに2020年4月から、NHKの総合とEテレの番組をインターネットで視聴できる「NHKプラス」が開始された。このシステムでは番組検索の機能があり、「見逃し番組」を見られるほか、追いかけ再生もできる。「NHKプラス」は放送の補完サービスであるため、受信契約者の家庭では、申し込めば誰でも視聴できる。
 このようにNHKは巨大化を進めてきた。それに拍車をかけたのは2017年12月に最高裁が「受信料徴収は合憲だ」との判断を示したのがきっかけだ。
 巨大単一メディア
 NHKの受信料不払いが減少し、経済不況が進行したにもかかわらず、受信料収入は700億円を突破、増収傾向がつづいた、
 しかし政府の規制推進会議はインターネット時代の於ける「通信と放送の一体化」を目標にして、NHKにネットの同時放送を認める一方、放送分野での拡大路線に若干の歯止めを加えたいという意向をもつ。これまでのNHKの拡大路線に対しては、新聞協会や民放連も一定の抑制を求め
てきた。
 NHKは2年前12月に鳴り物入りで4K,8Kテレビ放送を開始した。現在受信機出荷台数は477万台(7/21A-PAB調査)といわれるが、NHK受信契約合計は45,227,630万件(2020年4月末)の10.5%にすぎない。
 一方、インターネット上で視聴できる「NHKプラス」は、NHK総合とETVが視聴でき、見逃し、追いかけ視聴もできる「NHKプラス」は開始早々に契約申し込者が30万世帯を突破するなど、好調な滑り出しだ。
 NHKの持つチャンネルは、AMラジオ2チャンネル、FMラジオ1チャンネル、地上波テレビ放送2チャンネル、衛星テレビ2チャンネル、高精細度衛星テレビ(4K,8K)2チャンネル、ネット配信NHKプラス(総合、ETV、見逃し、追いかけ)の10種類。
 このほかにもNHKは海外向けに、NHKワールドテレビ(英語)、NHKワールド・プレミア(日本語、海外居住日本人向け)、NHKワールド・ラジオ日本(1言語)、NHKワールド・オンラインなどを持つ。
 受信契約世帯数4522.7万世帯(2020年)、総収入7204億円(2020年度)、従業員数10,343人(2020年度)、関連会社14社、世界にも類をみないほど巨大な単一メディアだ。
8K放送打ち切り?
 NHKの基礎は、7000億円を越える受信料収入だ。一時期受信料不払いに悩まされた時期もあるが、2017年末に最高裁判所が「受信料合憲」の判断を出して以降、受信料収入は右肩上がりだ。
 2019年10月、政府の要請を受けたこともあり、受信料支払いに伴う消費税の引き上げを行わず(実質2%の引き下げに相当)、更に2020年10月にさらに地上契約、衛星契約の受信料をさらに2.5%引き下げることも予定した。受信料収入は6000億円台に抑制するのだという。
 前述のようにラジオ(第二)とBS1を削減するほか、実際にはほとんど見る人がいない8Kテレビもいずれ放送を打ち切るだろうといわれている。
 8Kはもともと2020年に開催するはずだ「東京五輪を8Kで全世界に放送したい、デジタル技術力を世界に誇りたい」という安倍首相とNHKの思惑が一致して出現した。しかし、来年夏に東京五輪が開かれるかどうか、疑問視されている。今やほとんど無用の長物と化した8Kテレビ衛星は五輪に備えて、建前上2021年秋までは上空に止まるであろう。
 拡大路線からの転換というが、NHKが巨大メディアであるということに変わりない。
隅井孝雄(ジャーナリスト)

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2020年08月05日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 トランプ 郵政投票に反発 仰天の「居座り論」も登場

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 トランプ大統領はブラッド・バスケール選対本部長を降格させ、副本部長のビル・スピール氏を新たな本部長とする人事を発表した(7/15)。6月20日にオクラホマ州タルサで開かれたトランプ支持集会が、前評判で数10 万人から100万人近く支持者が集まるかと予想されたが、フタを開けるとわずか6,800人。その責任者がバスケール氏だった。支持率低下に何とか歯止めかけたい、という思いからの人事ではないかとみられる。
 ちなみにタルサ市では6月下旬以降、コロナ感染者が急増している。市衛生当局は、「トランプ関連政治集会が要因となった可能性が高い」と指摘した。集会参加者のほとんどがマスクをしていなかった。
 汚染拡大と人種差別で孤立
 最近の調世論調査によると、トランプ氏の支持率は44%、それに対して民主党大統領候補の支持率は54%と10%のリードを許している(6/16~22、ピュー・リサーチ・センター)。同じ調査によるとトランプ大統領の仕事ぶり評価も支持が下がり、39%が支持、59%が不支持を表明した。また米国が目指している方向に満足していると答えたのはわずか12%、87%が不満だと回答した(ブルームバーグ7/1)。
 アメリカ経済はコロナの影響をこうむりながらも、ダウ平均は26,500ドル~26,600ドル台を維持している。しかしコロナ感染が拡大したことから、4月に失業者2000万人を超えて、失業率が14%台に跳ね上がった。市民の間でトランプのコロナ対策が著しい批判も出ている。最近までマスク不要論を唱え、注射すれば菌を封じ込められなどのとんでもない発言もあった。
 支持率急落の直接の原因は今年5月25日、警官隊による黒人男性、ジョージ・フロイドさんの暴行、殺害事件だ。この経緯を物語る2分53秒の映像は、「息ができない、助けてくれ」という音声とともに全米に広がり、かつてない規模の人種差別デモが、各地に広がり、繰り返されている。
 抗議デモに対し、トランプ大統領は強硬姿勢でのぞみ、軍隊派遣もありうると発言した(6/1)。抗議デモを暴動であるかのように鎮圧するという姿勢に、共和党重鎮のパウエル元国務長官(共和党)までもが不支持を表明するなど、コロナウイルス感染拡大が重なりこれまで、岩盤といわれてきたトランプ支持者からも造反者が相次ぐ事態となった。ブッシュ元大統領、ロムニー上院議員らも再選を支持しないと見られるに至った。 軍動員示唆、デモを暴徒だと敵視する発言を「有害」だとする人は65%にのぼっている(CNN6/8)。
各州で郵便投票導入へ
 一方11月の米大統領選に向けて、郵便投票制度を導入する動きが、各州に広がっていることが特徴的だ。コロナ感染予防のため、投票所に足を運ばないで済むようにする思いから始まった。大量の軍隊を海外に派遣している米国ではかねてから、郵便による不在者投票を認めている州が多かったが、今回は不在投票ではなく、本投票として本人の意志によって、投票所に行くか、郵送による投票にするか、選択できる。郵便投票を実施しなかった自治体に対して「投票の権利を侵害する」という裁判がおこされこともあり、6月2日に実施された大統領選予備選ではメリーランド州など7州や首都ワシントンで、郵便投票が実施され、郵便投票の利便性、投票率の上昇などが実証された。
 トランプ大統領はカリフォルニア州などでの郵便投票導入に対して反発を強めている。「大規模な不正行為につながる」と繰り返してツイッターを発信している。また、ウイリアム・バー司法長官は、「外国勢力が大量に偽造票を送り込んでくる可能性もある」と発言した(6/22)。バー長官の発言は中国を念頭に置いているとみられる。
 郵便投票は低所得者、黒人、中南米系などマイノリティーの有権者の多い民主党に有利に働くといわれ、トランプはそれを警戒しているものとみられる。しかし投票所から離れたところに住んでいる人、高齢者などへの利便性は党派を問わない。
バイデン資金力で上回る
 民主党ジョー・バイデン前大統領が世論調査で10%上回っているが、それでも、トランプが勝つという予想をする人が多くいる。
 理由の一つはトランプの資金力だ。一時期バイデンを選挙資金で2億ドル上回っていたトランプ陣営は、1,000万ドルをテレビなどにつぎ込んで「バイデンは中国に甘いがトランプは厳しい」というイメージを全国に植え付けようとしている。そして、トランプは、自らをウイルスと戦う「戦時下の大統領」だと呼号している。
 コロナ汚染が拡大を続けていても、トランプは「悪いのは中国だ」という責任逃れに期待をかけている。
バイデン陣営は6月に入り、選挙への献金を1億4,100万ドル集め、トランプ陣営の1億3,100万ドルをわずかにではあるが上回ることに成功した(7/3日経)。経済施策ではこれまで、右寄り、財界寄りと見られたが、急進派バーニーサンダー・サンダースの主張も受け入れ、学生ローンのサム帳消し、授業無償化、メディケア(医療保険制度)の改善、銀行や大企業の規制強化など、経済の革新を打ち出した。
マイノリティー中心で選考
 さらに、民主党は大統領候補の年齢が高い(77歳)とあって、副大統領候補選びにも慎重だ。女性、黒人、中南米、アジア系などマイノリティーを中心に選考が進んでいる。誰が選ばれても話題に事欠かない顔ぶれである。
 スーザン・ライス氏、(外交専門家、黒人、55歳)、カマラ・ハリス氏(ジャマイカとインドからの移民の子、元検事、55歳)、タミー・ダックワース氏(イラク戦争で両足を失った元軍人、上院議員、52歳)、ミシェル・ルパングリシャム氏(ニューメキシコ州知事、中南米系60歳)、エリザベス・ウォーレン氏(上院議員、進歩派71歳)、ランス・ボトムス(アトランタ市長、黒人、50歳)。
辞めないシナリオとは
 7月に入って敗色を濃くしたトランプ氏だが、11月で負けても任期は2021年1月まである。7月19日のフォックスニュースで、選挙に敗れたらどうするか、と問われ、「不正が行われればやめない」と発言した。反トランプを掲げる非営利団体「スタンド・アップ」は、「負けても辞めない可能性に備えて、今から準備しよう」と訴えている。トランプは「負けても居座る」戦術を持っているのではないかとの憶測が急に広がっている。 
 7月28日号の日本版ニューズウィークは次のようなシナリオを描いた。「激戦州の一部で中国が郵便投票に介入し不正があった、これは国家安全保障上の非常事態だ、として司法省が不正を調査する間、あるいは裁判に持ち込まれる間、選挙結果を確定することができない。長期にわたり現職が居座る、あわよくば選挙結果を、現職有利に書き換える可能性もある」というのだ。
まさか、そのようなことが起きるはずもない。が、トランプならやりかねない。
 民主主義にもとることがないよう、トランプの言動を見守る必要がある。
 隅井孝雄 (ジャーナリスト)
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2020年07月06日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 コロナとテレビ ニュース視聴率20%超え リモートドラマも登場

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 コロナロックダウンで、多くの国で人々は自宅にこもり情報を求めた。そのためテレビ報道は視聴率が上がったが、テレビスタッフ自体がコロナに感染する事例が出たため、番組編成、演出手法にも大きく変化した。
ソーシャルディスタンス
 3月25日、東京都内の新規感染者がハネ上がり「感染爆発の危険」が指摘されたあと、真っ先にスタジオでソーシャルディスタンスを実践して見せたのは「真相バンキシャ」だった(3/29,日本テレビ)。そして報道番組はもとより視聴者参加番組、芸人大量参加バラエティなど多くの番組に多大な影響をもたらした。
 例えばTBS「サンデーモーニング」では、広いスタジオ、長いテーブルに司会の関口宏以外のほとんどは自宅からのリモート出演となり立看板が並んだような画面となった。ほとんどのニュース番組で司会のアナと出演者の間隔が2メートル以上となり、中には透明なアクリル板の衝立で仕切られた番組もあった。
TBS「News23」はメインキャスターの小川彩佳自体が自宅からのリモート出演となった。妊娠中初期であることが理由だった
 バラエティでもタレントが大勢ひな壇に並ぶことはなくなった。多くのドラマはスタジオ収録もロケが出来なくなり、NHKの大河ドラマ「麒麟がくる」は6月7日放送のあと「戦国大河ドラマ名場面集」など再編集番組でしのぐことになった。NHKは6月30日スタジオ収録を再開する、と発表し「22回以降の放送を楽しみにしてほしい」とのべている。
コロナの直撃受ける
 コロナ感染はテレビ局自体も直撃した。毎日放送で、感染が確認されて入院中の制作担当取締役の60歳男性の死亡が4月7日確認されたのに続き、4月12日にはテレビ朝日が「報道ステーション」富川悠太キャスターの感染と番組のチーフプロデユーサーら複数スタッフの感染を明らかにした。テレビ朝日では、その後打ち合わせはすべてテレビ会議に切り替え、出演者とスタッフは接触することなく放送にのぞんでいる。
 富川キャスターの相方である徳永有美キャスターは、2週間の自宅待機の後、リモート出演で復帰、また富川キャスターは6月4日の放送から「報道ステーション」に復帰した。
新趣向番組生まれる
 リモート出演は時に映像の乱れ、音声の途切れなどトラブルが多発したが、放送を重ねることで画質、音声など質が向上した。そしてドラマをリモート画面で制作する「リモートドラマ」、あるいは「ソーシャルディスタンスドラマ」を名乗る新しい手法が生まれた。
 「今だから新作ドラマを作ってみました」(NHK5/4,5/5,5/8)「Living」(NHK5/30,6/6)、「世界は3で出来ている」(フジテレビ6/11)などだ。「宇宙同窓会」(日テレ系ネット6/6,7)。いずれの作品もリモートで作ることを前提にしたシナリオもとにしている。例えばNHKの「今だから・・・・」の第一話は海外で挙式の思いがなわなかった遠距離夫婦とその友人らが、互いにパソコンの会議システムにつながりストーリーが展開、出演者は全員自宅にいて自撮り出演する。
 また、第二話は熟年夫婦の妻が死後の世界から地上の夫とリモートで会話する。第三話では出演俳優のキャラクターが入れ替わるという設定だった。「世界は・・・」は一卵性三つ子の役を林遣都が一人3役で熱演、脚本は「スカーレット」の水橋美江。「宇宙同窓会」は中止になったため急遽オンラインで開かれることになった元天文部の男女5人のリモート同窓会を描く。日テレ系のライブスマホアプリ(LIVEPARK)で無料配信された。
報道番組視聴率上がる
 緊急事態宣言は7都府県では4月7日から発令され、4月16日は全国に拡大された。多くの人々は外出せず、自宅にこもった。
 そうなるとテレビの出番だ。ニュース、報道番組で人々はコロナをめぐる状況を熱心に探る。2月下旬以降NHKニュース7は21.3%、報道ステーションは20.0%と20%を超えるようになったが、これは序の口。各地で外出自粛要請が出されとことと志村けんさんの死亡(3/29)のニュースが重なった3月下旬~4月下旬には多くの報道番組が20%台を経験した。 
 7都道府県に緊急事態宣言が出た4/7日のNHKニュース7は26.8%を記録した。エンタメ番組、バラエティ、ドラマなども、画質が悪かろうが、演出に不具合があろうが、再放送物が多かろうが、視聴率は普段より高く出たことは言うまでもない。中でも人気を集めたのは「テレビ小説エール」(NHK)、「わらってこらえてSP」(よみうりTV)、「ぽつんと一軒家」(ABC)などであった
米3大ネット視聴者倍増
 こうした傾向は海外のテレビ報道でも同じだった。「ニューズウイーク」誌(6,23)の報道によれば昨年同期と比べて、ABCニュース48%増、NBCにユース37%増、CBSニュース24%であった。興味深いことには一連のコロナ報道に対し、民主党支持者の75%、共和党支持者の61%が、客観的でわかりやすいと評価していることだ。共和党支持者はABC, NBC,CBSなどのネットワークニュースを毛嫌いして、トランプ支持のFoxニュースだけを信頼する傾向があったが、三大ネットワークの、客観的、多面的なコロナ報道を認めざるをえなかったといえるだろう。
  日本では視聴率が高いNHKニュース7、NHKニュースウオッチ9には、安部内閣の初動のもたつき、突然発表された休校措置、PCR検査の足りなさにたいし判的報道を一切しない、という報道姿勢に不満が集中した。その一方政府のコロナ対策に鋭い批判を浴びせた、「羽鳥慎一モーニングショー」(テレ朝)、「ニュース23」(TBS)、「報道1930」(BSTBS)などに「よく報道してくれた」との称賛の声が集中した。
新制作手法を開発
  緊急事態の解除後、6月に入ってテレビも徐々に従来の姿を取り戻しつつある。番組によって差はあるが、スタジオに出演者が少しずつ戻ってきたし、ドラマのロケも、スタジオ収録も感染を避けながら再開され始めた。しか依然としてリモートでゲスト出演に頼っている番組も多い。
  2月以降5月にかけて、テレビ局では、リモート出演の簡便さに慣れ親しんで、すっかり定着したというべきだろう。リモートドラマという新しいジャンルが開発され、視聴者から好感を持って迎え入れられた。
 報道番組ではコロナ取材に困難は伴うのを乗り越え、取材、制作スタッフの感染を避けるノウハウも確立した感がある。新型コロナの政府の政策の批判しながら、刻々変化する状況をあらゆる角度からとらえ、視聴者に伝える番組も多かった。ニュース報道に対する信頼感も広がったといえる。
公共CMが激増
 テレビ広告では自動車、電化商品など耐久消費財関連のCMが減り、またイベント、映画、演劇、コンサートなどが消えた。その穴埋めにACジャパンの公共CMが3月から5月にかけて大幅に増えた。「手を洗ってくれてありがとう、家にいてくれてありがとう。あなたのコロナ対策がみんなを救う」など直接コロナ対策を訴える15秒CMなどだ。一日当たり100回放送されるという記録を作った。
 一般商品のCMで目立ったのは、健康飲料「ポカリ」だった。汐谷夕希ら多数の中高生が自撮り画面でCMソングを歌いつなぐ。まさにコロナ禍の真っただ中でのCM表現だった。
 2次感染の予測が絶えない中で7月を迎える。テレビは市民視聴者の新しい信頼を獲得しつつある。重要なメディアとしての新たな再生の歩みをどのように切り開くのか、見守りたい。
隅井孝雄(ジャーナリスト)
        2007 4リモートドラマ.jpg アクリル板撮影.jpg 2007 6.ABCワールド.jpg
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2020年06月19日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 700万ツイッターが政治を変えた 「検察庁法案」廃案

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 1本のツイッターが拡散、政治を動かすに至った。ハッシュタグをつけた「検察庁法改正案に抗議します」への賛同が最初に投稿されたのは、5月8日、連鎖の輪が急速に広がり短期間で700万人を超え、内閣委での採決が見送られ(5/15)、安部晋三首相は国会での成立断念を表明した(5/18)。民意が政治の動向を決めた稀有な例だといえる。
 「検察庁法改正案」は一般の国家公務員の定年年齢を60歳から65歳に段階的に引き上げる改正案とセットで第201国会に提出された。検察官の定年も63歳から65歳に引き上げる(検事総長は現行65歳)。次長検事、検事長、検事正ら幹部は63歳でポストを退く。幹部が63歳(検事総長は65歳)を迎えても、内閣や法相の判断で、特例として最長3年間は、そのポストにとどめることができる、というものであった。
 三権分立揺らぐ
 法案は3月11日に国会に上程され、野党がこぞって反対する中、5月8かから衆院内閣委員会で審議が始まった。同じ日ツイッター上で「笛美」と名乗る30代の女性名でハッシュタグ付きの投稿が出現した。そして9日以降このツイートへの賛同者が急速に増えた。
 日本弁護士連合会の見解は明快だ(5/11会長声明)。内閣または法相が、裁量のみで63歳の役職定年の延長、65歳以上の勤務延長を行うなど、検察官人事に介入できることになる。不偏不党を貫く職務遂行が必要な検察の独立性、中立性が侵されれば、憲法の三権分立を揺らぐことになる。ロッキード事件のような政治犯罪が裁かれることはない。
 賭けマージャンで幕
 この問題の発端は元東京高等検察庁検事長だった黒川弘務氏の定年問題にある。本来であれば2020年2月7日に退官するはずだった。ところが1月31日の閣議で定年を延長し引き続き半年間勤務させる、との決定が行われた。現在の検事総長である稲田伸夫氏の定年が7月末であることから、黒川氏を後任にしたいとの安倍首相の人事構想の一環ではないかと、野党は一斉に反発した。黒川氏と検察当局は森友、加計問題で安倍政権を優遇する態度を取り続けてきた。
 そのさなかの「検察庁法改正案」による検事の定年延長は、まさに安倍首相による黒川氏の定年延長を事後追認するものであり、三権分立を侵す。一連の安倍政権の行為に対し元検事総長松尾邦弘氏、ロッキード事件を手掛けた堀田力氏ら14名の検察OBが連名で批判の声明を提出した(5/16)。
 その直後、週刊文春がウエブサイトで黒川氏の「賭けマージャン問題」を告発(5/20)、黒川氏は安倍首相あてに辞職願を提出(5/21)、異常な国会答弁を続けていた森雅子法相は受理し、閣議はこれを承認した(5/22)。誰の目にも安倍首相事態の失態は明らかだった。
 政権批判相次ぐ
 アメリカなど海外で有名人が政治に発言することは日常化している。その同じ現象が今回日本でも起きた。フライデーやYahooによると、小泉今日子(俳優)、浅野忠信(俳優)、井浦新(俳優)、秋元才加(元AKB)、ラサール石井(タレント)、大久保佳代子(オアシズ)、城田優(歌手)、Chara(ミュージシャン)、西郷輝彦(歌手)、大谷ノブ彦(ダイノジ)、緒方恵美(声優)、高田延彦(タレント)、水野良樹(いきものがたり)、日高光啓(AAA)、末吉秀太(AAA)、岩佐真悠子(ITタレント)、本田圭佑(サッカー)、宮本亜門(演出家)などだ(順不同)。
 俳優であり、デザイナーでもある井浦新(あらた)は「もうこれ以上、保身のために、都合よく法律も政治もねじ曲げないでください。この国を壊さないでください。」と投稿した。
 ミュージカルなど舞台演出家、宮本亜門は次のように語った。「コロナ禍の混乱の中、集中すべきは人の命。どう見ても民主主義とはかけ離れた法案を、強引に決めることは、日本にとって悲劇です」(6/3毎日新聞より)。
 コロナ施策に反感
 有名人が政治の批判に発言することは日本にとって初めてのことではない。
 2015年の安全保障法制の反対運動の際、石田純一、笑福亭鶴瓶、坂本龍一、渡辺健らが国会周辺デモなどに参加し、あるいは注目される発言を繰り返したことが記録されている。
 しかし今回は、市民がSNSという新たな武器を手に、短期間に大きな力を結集することに成功した。運動形態の新鮮味が感じられる。
欧米ではSNSによる意見表明に加えて、SNSの呼びかけで数十万人から数百万人の街頭デモも並行しておこなわれる。ところが今回はコロナ禍による外出制限が行われていたさなかであったことから、街頭デモは行われなかった。
  新型コロナ対策への安倍政権批判が、SNSのあっという間の巨大抗議の原因になっているとみられる。政権の目立った対策はマスク二枚のみ、PCR検査の実施は遅々として進まない、感染数の発表は実態より低いのではないか、中小企業への持続給付金は200万円が上限、国民に支給するという10万円もいつまで待たされるかわからないなど、問題が多くの国民に意識されていた。「桜を見る会」問題も「森加計」問題も一向に政権の責任が明らかにならない。
  外出禁止は芸能人、芸術文化関係者にも多大な影響を与えた。彼らは舞台の仕事、演奏の仕事、映画の仕事、そしてテレビの仕事さえ失いつつある。
 小泉今日子は、テレビ番組「報道特集」(TBS5/16)のインタビューで「政治に無関心でいた私たちに、現実を突きつけた。改めてこの国で生きていくということを考えるきっかけになった」と語った(TBS報道特集5/16)。
 この国で生きていくため政治を絶えず見つめ、政治を変えていく必要があるだろう。
隅井孝雄(ジャーナリスト)
 
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2020年06月03日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 コロナと共存図る欧州 新しい社会実現できるか

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  5月4日安倍首相は緊急事態宣言を5月31日まで延期すると発表した。その後、21日には京都、大阪、兵庫の3府県を解除、続いて31日を待たず、北海道、千葉、埼玉、東京、神奈川でも解除基準を満たしているとして、25日に解除した。少人数イベント(お茶会、劇場、映画館、歌唱を伴わない演奏会、学習塾など)は5月延長時に認められていた。
諸外国から批判集中
 日本は、対応の遅れが目立つ。国際的にはPCR検査が極端に遅れているため、新型コロナウイルスの実態がつかめていないことが原因だというのが定説となっている。
 海外メディアは真っ向から日本政府の政策を批判している。「日本はPCRの検査の少なさい。日本のやり方は症状の軽い感染者を特定し、追跡することを困難にしている」(英紙ガーディアン5/4)と指摘した。4/23に外務省が海外メディア向けに開いた記者会見では、「もっと多くの市中感染があるのではないか」などの質問が1時間にわたって続いた。また韓国の「ハンギョレ新聞」(4/30)も「日本政府は韓国の防疫の成功を無視し、軽んじている」と批判した。(朝日新聞5/8の記事より)。
欧州感染症と共存へ
 安倍首相が緊急事態宣言を延長した5月4日のその同じ日、イタリアで製造業や飲食店の持ち帰り営業が再開され、ローマの地下鉄にも通勤客が戻った。またドイツでも5月6日 メルケル首相がロックダウン(都市封鎖)を段階的に解除すると発表、全店舗の営業再開、し、博物館などの文化施設も再開について16の州との協議を始めた。サッカーリーグの再開を認められたことをファンは歓迎している。
 もちろん2次感染の危険はぬぐえないが、メルケル首相は再封鎖するかどうかを、16州に個別の判断に任せる意向だ。
 フランスのフィリップ首相は、5月11日強制外出禁止措置を終了するにあたって、「我々はウイルスと共に生きる道を学ばねばならない」と語った。イタリア首相も「イタリア経済を再開させる唯一の道はウイルスと共存することだ」と語った。歴史踏まえた発言だ。
個人情報に問題残る
 新型コロナウイルスとの戦いには終わりが見えない。感染の拡大に歯止めがかかりつつあるように見えるが、第2波、第3波が来るかもしれない。
 その備えとしてデジタル情報技術(ICT)が注目され、韓国、台湾、ドイツ、ベルギーなどで一定の成果を上げている。スマホなどの顔認証システムの活用によって、感染者の行動、移動、接触などの正確な情報を特定するのだが、市民の行動監視は歯止めがないと人権侵害を起こしかねない、という問題が付きまとう。
 韓国では2015年にMARS(中東呼吸器症候群)が大きな被害をもたらしたことを教訓にして、市民のデジタル情報が整備された。感染した人のケータイ情報、クレジットカードや交通カードの使用履歴、監視カメラの映像を政府、自治体が入手できる。もちろん氏名は匿名化しているのだが、人々の感染経路の把握が容易になり、PCR検査や、コロナ診断に生かし、早期終息に役立てることができた。
 ベルギーやドイツなどは今年の3月以降以降、政府が電話会社から匿名化された利用者の位置情報を提供され、行動規制の効果を上げるため活用した。データが匿名化されれば違憲ではないと政府は解釈しているが、感染が収束すればデータは破棄するという。 
立ち遅れるIT技術
 しかし、授業に取り入れられ、自宅でのテレワークが増え、有料映像サービスが普及、会議ソフトZOOMが珍重されるなど、家庭をベースにしたIT化が急速に進み、日本でも各種のデジタル企業が基幹産業の仲間入りをする時代がやって来るのではないか。コロナ後の社会の変化の一つを象徴していると思う。
 隅井孝雄(ジャーナリスト)
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2020年06月01日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 米ツイッター社 トランプツイートに信頼ラベル

 米国ツイッター社は米トランプ大統領のツイッターに初めて信頼性ラベルを付けた。
それに先立って、カリフォルニア州では11月の大統領選挙で郵便投票を全面的に行う方針を決めたが、トランプ大統領は郵便投票によって不正がはびこるとしてツイッターで主張をくり返した。
 26日のツイッターでトランプ氏は「実質上の詐欺だ、郵便受けが盗難に遭うだろうし、投票用紙は偽造されるだろう」などと猛反論している。しかしそのツイッターにツイッター自体による「事実確認」という表示がついたのだ。
 クリックする読者は、トランプ大統領に主張を否定するCNNやワシントンポストなど、郵便投票で不正投票が行われることは、これまでほとんどないという事実を知ることができる。これまでトランプ大統領のツイッターで、全く根拠のないツイッターが繰り返しひんぱんに流された。しかし「事実」ラベルがつけられたのは今回が初めてのことだ。
 CNN、ワシントンポスト、ニューヨークタイムズなど基幹メディア(FoxTVなど一部トランプ系メディアを除いて)もこぞってファクトチェックに力を入れている。
 トランプ大統領はツイッターを含むGAFA(IT関連5社)に対する規制の強化を対抗手段にし、「巨大SNSが政治的偏見を持つ場合保護されない」と声明した。
隅井孝雄(ジャーナリスト)
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2020年05月30日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 NHK「BS1スペシャル」の海外コロナ危機番組に共感

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  3月以降新型コロナ関連番組がワイドショー、ニュースで数多く放送されている。取材者自身コロナウイルスを避けながらの大変な取材だと思うが、「BS1スペシャル」特に海外の様子を伝える番組に力のこもった番組が多くみられた。
「そして街から人が消えた、封鎖都市・ベネチア」(4/19,BS1スペシャル)でベネチアが都市封鎖に至った状況を見た。
 ベネチアは昨年末、50年ぶりといわれた高潮(1.8m)によって街の大半が2メートル近く海中に沈んだ(11/14)。苦難を乗り越え、街の復活を世界にみてもらおうと開いた「カーニバル」のさなか、新型コロナが襲い、3月8日都市封鎖に至った。
 番組の前半で際立ったのは「ペストの医師の仮面」(写真)をつけた人々が練り歩くパレードだった。イタリアでは14世紀にペストに襲われた際、医師が鳥の仮面をつけ、長い厚手のコートをまとい、手袋に長い杖を持って診察、長く伸びた鳥のくちばしに薬草を詰めた。歴史を語る伝統の仮面は、かつての悲劇を忘れないためだ。
 「コロナ危機、世界が苦闘した4カ月間」(5/9BS1スペシャル)では、最初の発生国中国、抑えみに成功した韓国、感染の中心地となったイタリア、シャンゼリゼに人通りが消えたフランス、異例のメルケルテレビ演説のドイツ、首相自身感染のイギリス、3月に入って感染急拡大のアメリカ、最大のロックダウン国インド、給水車を待つ南アフリカの人々・・・・。など5月に至る世界各国の状況を俯瞰した。
 「ウイルスVS人類、スペイン風邪 100年前の教訓」(5/12BS1スペシャル)は記録を紐解いていくと今の新型コロナと似通った現象に人類がほんろうされていたことが分かる。
 当時の歌人与謝野晶子は家族がインフルエンザに感染したことについて憤懣をのべた。「社会的施設に統一と徹底が欠けているので、国民はどんなに多くの避けられるべき災いを避けずにいるかしれない」。いまも100年前も変わりない事態だ。
 これらの映像や知見によって、遠く隔てた国の市民と共感し、共鳴し、ともに行動できる。また歴史をさかのぼって過去に生きた人とも共鳴しあうことができる。
隅井孝雄 (ジャーナリスト)

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2020年05月11日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 ネトフリ、GAFAの業績好調 コロナで経済・文化を米IT企業席巻 1〜3月決算

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  映像配信の大手、ネットフリックスの1月~3月の有料加入者数が1577万件に達した。新型コロナによって世界の主要地域での自宅待機が半ば強制状態にあるため、契約増は予想されていたが予測の2倍だった。これで全世界の契約者数は1億8286万人となった。
 1~3月期の売り上げは28%増の57億6769万ドル(6340億円)、純利益は昨年同時期の2.1倍、7億906万ドル(764億円)であった。
 ネトフリは契約すると映画や新作ドラマを一カ月800円から1200円、1800円の3段階で契約できる。同社は10万種類、4200万枚のDVDを保有し、さらに新作を世界各地から調達し、加入者に提供している。過去に上映された映画のリストもあるが、何と言ってもネトフリ独自の制作映画や、連続番組形式のドラマだ。
 映画では「最強の二人」(2011、仏)、「ショーシャンクの空に」(1994、米)、「ゴッドファーザー」(1972、米)などの名作が並ぶ。しかし「ハウス・オブ・カード」(野望の階段)、「ストレンジャーシングス」(未知の世界)などドラマ系の連続ものがエンタメ界の話題を独占するようになった。このほか人気ジャンルに韓国ドラマや日本系のアニメも数多く放映されている。
 コロナで各種の産業が萎縮状態にある中、GAFAと呼ばれる米大手IT企業はいずれも好調を維持している。 アップルは世界各地の店舗閉鎖がスマホ「iPhone One」を直撃したものの、音楽配信が好調で、売り上げ583億1300万ドル(6兆2000億円)、純利益112億4900万ドル(1兆2379億円)と発表した。
  アマゾンはインターネット通販が拡大し、2割を超える増収となった。売り上げ26%増、747億5200万ドル(7兆9237億円)、純利益25億3500万ドル(2787億円)を計上した。(ただし人員増、配送のコストがかさみ、昨年同期比では29%減)。
 このほかマイクロソフト、純利益107億5200万ドル(1兆1827億円)、フェイスブック49億200万ドル(5412億円)などGAFAはそろって黒字を計上している。
 日本では世界に比べITビジネスが立ち遅れている。しかし、授業に取り入れられ、自宅でのテレワークが増え、有料映像サービスが普及、会議ソフトZOOMが珍重されるなど、家庭をベースにしたIT化が急速に進み、日本でも基幹産業の仲間入りをする時代がやって来るのではないか。コロナ後の社会の変化の一つを象徴していると思う。
(注ドル円換算は情報の出典によってまちまちです。目安として参考にしてください)
隅井孝雄(ジャーナリスト)
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2020年05月02日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 トム・ハンクス夫妻 抗体もつ血漿寄付、ビル・ゲイツのワクチン年内にも

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  CBSやCNNなどアメリカのテレビが伝えるところによると、俳優のトム・ハンクスさんと妻のリタ・ウイルソンさんは被患から完全回復、体内に免疫ができている、と告げられた後、リサーチに役立ててほしいと、二人の血漿(plasma)を寄付する、と語った(4/27)。
 二人の血漿から新型コロナウイルスの抗体ワクチンを作ることができる。ハンクスさん自身、ワクチンが出来たら「ハンクチン(ハンク+ワクチン)」と名付けたいと笑顔で述べた。
 トム・ハンクスさんは3月下旬映画の撮影でオーストラリア滞在中に新型コロナヴァイラスに感染、現地で12日間隔離されたのち、3月下旬アメリカに戻ってからも自主隔離中だ。ちなみに出演する予定の映画はエルヴィス・プレスリーの伝記映画で、名物マネージャー、トム・パーカー大佐役で出演交渉を受けているという。
 自宅にいるトム・ハンクスにはメディアからの接触が多く、4月11日には再開された「サタデーナイトライブ」に自宅からサプライズ出演、また公共ニュースラジオNPRでコロナ体験を語る一方、「コロナ」君との名を持つためにいじめにあっているオーストラリアの8歳の少年に励ましの手紙と「コロナ」社タイプライターを送るなど、話題を提供している。
 ワクチンは病原体から作られる抗原で、18世紀末、天然痘が流行した際、イギリスの医学者、エドワード・ジェンナーによって開発され、種痘を実用化した。今では天然痘の病原菌は絶滅した。
 新型コロナウイルスはなかなか手ごわい相手。致死率が高く、拡散も2人から3人と指数関数的。SARSの1/4の時間で10倍の症例を引き起こすという、これまでになかった厳しさだ。ワクチンを作り出す努力がさまざま続けられているなかでトム・ハンクスの「血漿寄付」は朗報だ。
 アメリカではセレブが次々に立ち上がっている。メリンダ・ビル・ゲイツ財団は「ワクチンと予防接種世界同盟」(GAVI)と連携し、7種類の異なるワクチン製造施設を運営しており、その中で安全性が高く、しかも新型コロナコロナに対し最も有効なワクチンを生み出そうと努力し、すでに数十億ドルを投じているという。年内にもワクチンを手にできるかも。
 トム・ハンクスやビル・ゲイツを見ていると、日本の大企業、財界のトップ、金持ちセレブたちの動きがにぶいと思う。
 ちなみにトム・ハンクスの映画で私の好きな作品は「ユー・ガット・メール」、「プライべート・ライアン」などだ。
隅井孝雄(ジャーナリスト)
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2020年04月23日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 経済減速させたくない 延期の五輪実施で花道飾る―これが安倍首相の思惑

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 安部晋三首相は4月7日、改正新型インフルエンザ特別措置法による初の「緊急事態宣言」を発した。東京など7都府県を対象としたが批判を受け、4月16日全国を対象にした。朝令暮改だ。
 7日の会見で安倍首相は「欧米のようなロックダウン(都市封鎖)ではない。電車、バスなど公共交通機関は運行、道路を封鎖はない」と強調した。経済を減速させない思惑がかいま見られる。
 今回の緊急事態宣言には、各国メディアは批判的だ。「強制力が不足しているため、感染拡大に大きな変化がないだろう」(韓国聯合ニュース)、「対応が遅い、経済への打撃を避けようと、意図的に対応に時間をかけた」(CNN)、「遅すぎた。東京の感染拡大は容易に制御できないレベルに達している」(英BBC)など手厳しい。
 アメリカ大使館は日本に滞在中の米国民に直ちに帰国するよう注意情報を出した(4/3)。「日本は検査を広範に行わない。罹患割合を正確に把握できない、感染の急速拡大の恐れもある」と警告した。日本国内でも政府が緊急事態宣言を発令は「遅すぎた」が81%に達した(4/13読売新聞) 。
108兆円はまやかし
  政府は緊急経済対策として、108兆円を支出すると閣議決定(4/7)、減収世帯への30万円の現金給付、売り上げ減少の業者への最大200万円の給付金などを発表した。108兆円という数字には融資などの金融措置も含まれ、政府の財政支出分(いわゆる真水)は39.5兆円止まる。ところが、10日後、減収世帯への支給を取り下げ、全国民に一律10万円配布すると変えた(4/17)。
 全国知事会は4月8日自粛要請に応じた企業への損失補償を求めた。吉村洋文大阪府知事は、「行政が営業自粛を求める以上、補償は表裏一体だ」と強調した。しかし安倍総理は「落ちた売り上げをすべて補償することはできない」と拒否した。東京都は独自に休業補償する。
低い感染検査数
 安部首相の失態は2月初旬クルーズ船ダイアモンド・プリンセス号が日本に接近、水際で食い止めるとして、船内に乗客、乗員3533人を閉じ込めたときから始まる。
 船内で感染が広がる一方、1月16日に国内で初の新型コロナウイルス感染者が出たのに、PCR検査など対策が不十分のまま推移した。
 100万人当たりのPCR検査受験者数は英国,6,164.5人(3/12), 韓国,4,831.3人(3/13), 中国(広東省),2,820.4人(2/24)に対し日本は80.5人(3/12)、世界23位に止まる(Our World Data3/15)。
  PCR検査は当初、国立感染研究所と各地方衛生研究所に限られたが、2月20日以降民間の医療機関で受検できるようになった。それでもなお検査が進まないのは、医療機関に受診者が集まることを避け、感染が疑われる人、重症者の検査を優先しているからだ。
  休校宣言(2/27)も唐突だった。専門家との協議なしの閣議決定で、しかも「ここ1,2週間が極めて重大な時期だ」との発言は、感染拡大について誤った情報を国民に与える結果となった。フェイク発言だったといわざるを得ない。今となって見れば休校措置は意味ない結果となった。
歴史に名残したい
  新型コロナウイルスの世界蔓延で、安倍首相はオリンピック委員会のバッハ会長との電話会談(3/24)で東京五輪の一年間の延期を提案、IOCも同意した(3/24)。
 もともと新型コロナウイルスを「水際作戦」で抑え込もうとした安倍首相には、東京五輪を開催したい、日本の経済には影響を与えたくないという思惑があった。しかし日本でも世界でも感染拡大は続き、世界のアスリートが次々に危機感を発し、開催を断念した。
 3月30日の決定よると、東京五輪とパラリンピック2020は一年後、2021年7月23日から2021年9月5日の日程となった。一年ずらせば、2021年9月の総裁任期内ということになる。五輪とパラリンピックを花道に、9月に任期満了を迎えられるとの思惑が見られる。だが一年後新型ウイルスが収束しているという保証はない。
NHK指定公共機関に
 安部首相の7日の緊急記者会見(7都府県緊急事態宣言)は19時から行われNHKなど民放キー局が生中継した。首相の約25分演説の後記者と応答、挙手がある中20時過ぎ「次の日程がありますので」として終了した。次の首相の姿はNHKの「ニュースウォッチ9」生出演だった。
 番組では首相の主張をそのまま伝えるのみで、問題点を問いただすことはなかった。
 「改正新型インフルエンザ対策特別措置法」では日銀、赤十字などと並んでNHKが指定公共機関とされた。従来から政権寄りのNHKは、政府のコロナ対策への協力にアクセルがかかっている。国境なき記者団(本部パリ4/7)、日本ジャーナリスト会議(4/11)、などが独立した報道を阻害するとして反対声明を出し、NHKを指定から外すよう要求している。
海外報道もチェック
 テレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショーで「首相が法改正にこだわるのはごてごて批判を払しょくするためだ」、「マスクを医療機関などで重点的に配備する必要がある」(3/4)などの発言に対し、「内閣官房国際感染症特別来策室」や「厚生省」がツイッターで批判、報道を正すよう求めた(3/5, 3/6)。
  国会のやり取りでも、宮下一郎内閣府副大臣は「民放でも、この内容を流してもらうと指示し、変更や差し替えをしてもらうことはありうる」(3/11衆院法務委)と発言した。のち撤回したが本音がこぼれたものだ。
 安部首相の感染対策としてマスク2枚配布の発表(4/1)は、国内の批判に加え、海外メディアからも「アベノマスクはエイプリルフールか」(Fox News4/1)など嘲笑、揶揄が乱れ飛んだ。
 それを意識してか“批判をチックし、正しい情報流すために”との予算24億円を外務省が組んだ。主要20か国のなどのSNSをAI(人工知能)も活用してチェック、“正しい情報を発信する”という。厚生省も国内海外に向けて「ネガティブ情報の払しょく」、「正しい情報の発信」を行う予算35億円が組まれた。
  憲法25条には「すべて国民は、健康で文化的最低限度の生活を営む権利を有する、国はすべての生活部面について、社会福祉及び社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とされている。「健康で文化的な最低限の生活」を取り戻す日が一日も早く来ることを、願ってやまない。
隅井孝雄


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2020年04月20日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 日本と違いコロナ禍でも欧米は文化・芸術助成を実施

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 日本国憲法は「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利がある。国は、すべての生活部面について、社会保障および公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」という条文がある(25条)。
  今日はこの条文の元、新型コロナウイルスと文化芸術にについて考えたい。政治家は全力を挙げてこの条文に沿った行動をしてほしい。今の日本の政権ではすべてが後手後手になっている。PCR検査を怠っている。緊急事態宣言は4月7日発令されたが4月16日に全国が対象に切り替えられた。
 京都では、芸術文化施設を全面閉鎖し(4/4)、市長が緊急事態を京都にも適用してほしいと国に要望した(4月10日)。100万人当たりの感染者数が全国都道府県で5位であるなど、感染拡大が続く。
軒並み閉館
 ところで健康で文化的な生活が今は不可能。私が通っていたスポーツジムも閉鎖された、「文化博物館」も閉鎖された。祇園祭特別展「町衆の情熱」で懸想(山鉾を飾る美術垂れ幕)が見られる、金具飾りが見られると、見に行ったが文博は閉鎖されていた。国立博物館も、新装のローム博物館(元府立博物館)もロームシアターも全部閉鎖されている。
 大量感染の元となったことから京都でもライブハウスは軒並み閉鎖、京都コンサートホールの演奏会にも中止だ。
祇園祭巡行中止
 例年7月1日から一か月間行われる祇園祭の鉾立て7/10、巡行7/17,7/24の是非が問われている。山鉾を立てれば人が集まる、山鉾巡行(写真)では引手が連なる、周囲約2.5キロに観客が密集する、とあって、現状では開催に見込みは立たない。巡行は中止することが決められた(4/20発表)、おそらく鉾立てもできないのではないか。
 平安時代初期863年(貞観5年)に当時蔓延した疫病(当時わらわやみ、おこりなどと言われたがマラリヤかと思われる)で多くの死者が出たことを悼み、悪霊を退散させるための行事が始まりだったといわれる。やがて豪華絢爛の伝統文化として1150年続いてきた、それが1151年目の今年、中止になるというのは歴史上の大きなアイロニーではないか。
30万人賛同
 ライブハウスの出演者が先頭に立って進めていた、文化助成を求める署名♯SaveOurSpaceがツイッターであっという間に賛同者30万人をこえたと聞いた。各種のライブ公演、音楽会、演劇文化公演から歌舞伎至るまで舞台が開けられない。博物館、映画館まで閉まった。
 映画、演劇の世界では、俳優、音楽家はもとより音響、照明などなど、フリーで働く人々も無収入になる。人々は音楽や演劇を楽しむ機会を失われている。休業資金を出し、歌手、アーティスト、文化関係施設に給付し、生活を保障して、コロナ明けに備えることが重要だ。
 休業したお店には200万円の補償をする。減収世帯に最低10万円〜60万円、などの給付がかろうじて決められたが、安倍首相はそれを全世帯10万円配布に切り替えた。申告すればの話だ。音楽、映画、ライブハウスなど文化関係への補償は話しすら出ていない。
 宮田亮平文化庁長官がメッセージを出した(3/28)だけで、文化、芸術の助成についてついての具体策は一切ない。
欧米最新事情
 ヨーロッパでは真っ先に音楽関係、映画、俳優、などへの手厚い保護策がとられたことを紹介したい。
 イギリスではすでに2000万ポンド(27億円)ガアート・カウンシルから支出されることが決まっており、その中には芸術文化関連フリーランス、一人当たり2500ポンド、34万円が支給される。いずれも面倒な手続きがなく、即時に振り込まれる。
 フランス文化省の緊急支援策は、音楽家、俳優、フリーの文化関連労働者などの収入の穴埋めに10億ユーロ(1200億円)を投じる。文化芸術関係の小規模組織、個人事業者に1500ユーロ〜3500ユーロ(18万円〜42万円)を支給した。封鎖期間中はこの手当を打ち切らず延長するという。
 イタリア政府では財政困難の中にも関わらす、舞台芸術、映画企業、芸術家、実演家、緊急基金1億3000万ユーロ(152億円)が支出された。文化関係従事者の所得補償もある。
 ドイツでは「アーティストは、生命維持に必要不可決な存在だ」と、モニカ・グリュッタース文化相が発言した。個人、自営業支援として500億ユーロ(6兆円)が用意された。そのうち休業補償の対象になるフリーランス、芸術家、演劇・音楽グループなどは140万人と見られる。
 アメリカではブロードウェイが閉まり、ジャズクラブ、レストラン、リンカンセンターも閉鎖だが、芸術団体、仕事のなくなった音楽家、オペラ歌手、ジャズ歌手など休業した文化関係者の休業補償にとりあえず500万ドル(5億3000万円)が用意された。
 アメリカの特徴は、大手IT企業、銀行など大手企業の支援があることだ。例えばナイキ財団とその幹部が即座に文化関係、アスリートなどに対し1500万ドル(16億円)を寄付した。
 コロナの中にあっても文化、芸術を保護し、終息すればすぐ再開できるようにとの配慮が必要だ。一日も早く、健康で文化的な生活にもどり、音楽を聞き、演劇を鑑賞し、映画を楽しみ、カラオケも歌える、山鉾巡行も楽しめる日常に戻ることを願うばかりだ。
隅井孝雄(ジャーナリスト)
 
posted by JCJ at 17:19 | 隅井孝雄のメディアウオッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする