2020年06月19日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 700万ツイッターが政治を変えた 「検察庁法案」廃案

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 1本のツイッターが拡散、政治を動かすに至った。ハッシュタグをつけた「検察庁法改正案に抗議します」への賛同が最初に投稿されたのは、5月8日、連鎖の輪が急速に広がり短期間で700万人を超え、内閣委での採決が見送られ(5/15)、安部晋三首相は国会での成立断念を表明した(5/18)。民意が政治の動向を決めた稀有な例だといえる。
 「検察庁法改正案」は一般の国家公務員の定年年齢を60歳から65歳に段階的に引き上げる改正案とセットで第201国会に提出された。検察官の定年も63歳から65歳に引き上げる(検事総長は現行65歳)。次長検事、検事長、検事正ら幹部は63歳でポストを退く。幹部が63歳(検事総長は65歳)を迎えても、内閣や法相の判断で、特例として最長3年間は、そのポストにとどめることができる、というものであった。
 三権分立揺らぐ
 法案は3月11日に国会に上程され、野党がこぞって反対する中、5月8かから衆院内閣委員会で審議が始まった。同じ日ツイッター上で「笛美」と名乗る30代の女性名でハッシュタグ付きの投稿が出現した。そして9日以降このツイートへの賛同者が急速に増えた。
 日本弁護士連合会の見解は明快だ(5/11会長声明)。内閣または法相が、裁量のみで63歳の役職定年の延長、65歳以上の勤務延長を行うなど、検察官人事に介入できることになる。不偏不党を貫く職務遂行が必要な検察の独立性、中立性が侵されれば、憲法の三権分立を揺らぐことになる。ロッキード事件のような政治犯罪が裁かれることはない。
 賭けマージャンで幕
 この問題の発端は元東京高等検察庁検事長だった黒川弘務氏の定年問題にある。本来であれば2020年2月7日に退官するはずだった。ところが1月31日の閣議で定年を延長し引き続き半年間勤務させる、との決定が行われた。現在の検事総長である稲田伸夫氏の定年が7月末であることから、黒川氏を後任にしたいとの安倍首相の人事構想の一環ではないかと、野党は一斉に反発した。黒川氏と検察当局は森友、加計問題で安倍政権を優遇する態度を取り続けてきた。
 そのさなかの「検察庁法改正案」による検事の定年延長は、まさに安倍首相による黒川氏の定年延長を事後追認するものであり、三権分立を侵す。一連の安倍政権の行為に対し元検事総長松尾邦弘氏、ロッキード事件を手掛けた堀田力氏ら14名の検察OBが連名で批判の声明を提出した(5/16)。
 その直後、週刊文春がウエブサイトで黒川氏の「賭けマージャン問題」を告発(5/20)、黒川氏は安倍首相あてに辞職願を提出(5/21)、異常な国会答弁を続けていた森雅子法相は受理し、閣議はこれを承認した(5/22)。誰の目にも安倍首相事態の失態は明らかだった。
 政権批判相次ぐ
 アメリカなど海外で有名人が政治に発言することは日常化している。その同じ現象が今回日本でも起きた。フライデーやYahooによると、小泉今日子(俳優)、浅野忠信(俳優)、井浦新(俳優)、秋元才加(元AKB)、ラサール石井(タレント)、大久保佳代子(オアシズ)、城田優(歌手)、Chara(ミュージシャン)、西郷輝彦(歌手)、大谷ノブ彦(ダイノジ)、緒方恵美(声優)、高田延彦(タレント)、水野良樹(いきものがたり)、日高光啓(AAA)、末吉秀太(AAA)、岩佐真悠子(ITタレント)、本田圭佑(サッカー)、宮本亜門(演出家)などだ(順不同)。
 俳優であり、デザイナーでもある井浦新(あらた)は「もうこれ以上、保身のために、都合よく法律も政治もねじ曲げないでください。この国を壊さないでください。」と投稿した。
 ミュージカルなど舞台演出家、宮本亜門は次のように語った。「コロナ禍の混乱の中、集中すべきは人の命。どう見ても民主主義とはかけ離れた法案を、強引に決めることは、日本にとって悲劇です」(6/3毎日新聞より)。
 コロナ施策に反感
 有名人が政治の批判に発言することは日本にとって初めてのことではない。
 2015年の安全保障法制の反対運動の際、石田純一、笑福亭鶴瓶、坂本龍一、渡辺健らが国会周辺デモなどに参加し、あるいは注目される発言を繰り返したことが記録されている。
 しかし今回は、市民がSNSという新たな武器を手に、短期間に大きな力を結集することに成功した。運動形態の新鮮味が感じられる。
欧米ではSNSによる意見表明に加えて、SNSの呼びかけで数十万人から数百万人の街頭デモも並行しておこなわれる。ところが今回はコロナ禍による外出制限が行われていたさなかであったことから、街頭デモは行われなかった。
  新型コロナ対策への安倍政権批判が、SNSのあっという間の巨大抗議の原因になっているとみられる。政権の目立った対策はマスク二枚のみ、PCR検査の実施は遅々として進まない、感染数の発表は実態より低いのではないか、中小企業への持続給付金は200万円が上限、国民に支給するという10万円もいつまで待たされるかわからないなど、問題が多くの国民に意識されていた。「桜を見る会」問題も「森加計」問題も一向に政権の責任が明らかにならない。
  外出禁止は芸能人、芸術文化関係者にも多大な影響を与えた。彼らは舞台の仕事、演奏の仕事、映画の仕事、そしてテレビの仕事さえ失いつつある。
 小泉今日子は、テレビ番組「報道特集」(TBS5/16)のインタビューで「政治に無関心でいた私たちに、現実を突きつけた。改めてこの国で生きていくということを考えるきっかけになった」と語った(TBS報道特集5/16)。
 この国で生きていくため政治を絶えず見つめ、政治を変えていく必要があるだろう。
隅井孝雄(ジャーナリスト)
 
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2020年06月03日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 コロナと共存図る欧州 新しい社会実現できるか

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  5月4日安倍首相は緊急事態宣言を5月31日まで延期すると発表した。その後、21日には京都、大阪、兵庫の3府県を解除、続いて31日を待たず、北海道、千葉、埼玉、東京、神奈川でも解除基準を満たしているとして、25日に解除した。少人数イベント(お茶会、劇場、映画館、歌唱を伴わない演奏会、学習塾など)は5月延長時に認められていた。
諸外国から批判集中
 日本は、対応の遅れが目立つ。国際的にはPCR検査が極端に遅れているため、新型コロナウイルスの実態がつかめていないことが原因だというのが定説となっている。
 海外メディアは真っ向から日本政府の政策を批判している。「日本はPCRの検査の少なさい。日本のやり方は症状の軽い感染者を特定し、追跡することを困難にしている」(英紙ガーディアン5/4)と指摘した。4/23に外務省が海外メディア向けに開いた記者会見では、「もっと多くの市中感染があるのではないか」などの質問が1時間にわたって続いた。また韓国の「ハンギョレ新聞」(4/30)も「日本政府は韓国の防疫の成功を無視し、軽んじている」と批判した。(朝日新聞5/8の記事より)。
欧州感染症と共存へ
 安倍首相が緊急事態宣言を延長した5月4日のその同じ日、イタリアで製造業や飲食店の持ち帰り営業が再開され、ローマの地下鉄にも通勤客が戻った。またドイツでも5月6日 メルケル首相がロックダウン(都市封鎖)を段階的に解除すると発表、全店舗の営業再開、し、博物館などの文化施設も再開について16の州との協議を始めた。サッカーリーグの再開を認められたことをファンは歓迎している。
 もちろん2次感染の危険はぬぐえないが、メルケル首相は再封鎖するかどうかを、16州に個別の判断に任せる意向だ。
 フランスのフィリップ首相は、5月11日強制外出禁止措置を終了するにあたって、「我々はウイルスと共に生きる道を学ばねばならない」と語った。イタリア首相も「イタリア経済を再開させる唯一の道はウイルスと共存することだ」と語った。歴史踏まえた発言だ。
個人情報に問題残る
 新型コロナウイルスとの戦いには終わりが見えない。感染の拡大に歯止めがかかりつつあるように見えるが、第2波、第3波が来るかもしれない。
 その備えとしてデジタル情報技術(ICT)が注目され、韓国、台湾、ドイツ、ベルギーなどで一定の成果を上げている。スマホなどの顔認証システムの活用によって、感染者の行動、移動、接触などの正確な情報を特定するのだが、市民の行動監視は歯止めがないと人権侵害を起こしかねない、という問題が付きまとう。
 韓国では2015年にMARS(中東呼吸器症候群)が大きな被害をもたらしたことを教訓にして、市民のデジタル情報が整備された。感染した人のケータイ情報、クレジットカードや交通カードの使用履歴、監視カメラの映像を政府、自治体が入手できる。もちろん氏名は匿名化しているのだが、人々の感染経路の把握が容易になり、PCR検査や、コロナ診断に生かし、早期終息に役立てることができた。
 ベルギーやドイツなどは今年の3月以降以降、政府が電話会社から匿名化された利用者の位置情報を提供され、行動規制の効果を上げるため活用した。データが匿名化されれば違憲ではないと政府は解釈しているが、感染が収束すればデータは破棄するという。 
立ち遅れるIT技術
 しかし、授業に取り入れられ、自宅でのテレワークが増え、有料映像サービスが普及、会議ソフトZOOMが珍重されるなど、家庭をベースにしたIT化が急速に進み、日本でも各種のデジタル企業が基幹産業の仲間入りをする時代がやって来るのではないか。コロナ後の社会の変化の一つを象徴していると思う。
 隅井孝雄(ジャーナリスト)
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2020年06月01日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 米ツイッター社 トランプツイートに信頼ラベル

 米国ツイッター社は米トランプ大統領のツイッターに初めて信頼性ラベルを付けた。
それに先立って、カリフォルニア州では11月の大統領選挙で郵便投票を全面的に行う方針を決めたが、トランプ大統領は郵便投票によって不正がはびこるとしてツイッターで主張をくり返した。
 26日のツイッターでトランプ氏は「実質上の詐欺だ、郵便受けが盗難に遭うだろうし、投票用紙は偽造されるだろう」などと猛反論している。しかしそのツイッターにツイッター自体による「事実確認」という表示がついたのだ。
 クリックする読者は、トランプ大統領に主張を否定するCNNやワシントンポストなど、郵便投票で不正投票が行われることは、これまでほとんどないという事実を知ることができる。これまでトランプ大統領のツイッターで、全く根拠のないツイッターが繰り返しひんぱんに流された。しかし「事実」ラベルがつけられたのは今回が初めてのことだ。
 CNN、ワシントンポスト、ニューヨークタイムズなど基幹メディア(FoxTVなど一部トランプ系メディアを除いて)もこぞってファクトチェックに力を入れている。
 トランプ大統領はツイッターを含むGAFA(IT関連5社)に対する規制の強化を対抗手段にし、「巨大SNSが政治的偏見を持つ場合保護されない」と声明した。
隅井孝雄(ジャーナリスト)
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2020年05月30日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 NHK「BS1スペシャル」の海外コロナ危機番組に共感

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  3月以降新型コロナ関連番組がワイドショー、ニュースで数多く放送されている。取材者自身コロナウイルスを避けながらの大変な取材だと思うが、「BS1スペシャル」特に海外の様子を伝える番組に力のこもった番組が多くみられた。
「そして街から人が消えた、封鎖都市・ベネチア」(4/19,BS1スペシャル)でベネチアが都市封鎖に至った状況を見た。
 ベネチアは昨年末、50年ぶりといわれた高潮(1.8m)によって街の大半が2メートル近く海中に沈んだ(11/14)。苦難を乗り越え、街の復活を世界にみてもらおうと開いた「カーニバル」のさなか、新型コロナが襲い、3月8日都市封鎖に至った。
 番組の前半で際立ったのは「ペストの医師の仮面」(写真)をつけた人々が練り歩くパレードだった。イタリアでは14世紀にペストに襲われた際、医師が鳥の仮面をつけ、長い厚手のコートをまとい、手袋に長い杖を持って診察、長く伸びた鳥のくちばしに薬草を詰めた。歴史を語る伝統の仮面は、かつての悲劇を忘れないためだ。
 「コロナ危機、世界が苦闘した4カ月間」(5/9BS1スペシャル)では、最初の発生国中国、抑えみに成功した韓国、感染の中心地となったイタリア、シャンゼリゼに人通りが消えたフランス、異例のメルケルテレビ演説のドイツ、首相自身感染のイギリス、3月に入って感染急拡大のアメリカ、最大のロックダウン国インド、給水車を待つ南アフリカの人々・・・・。など5月に至る世界各国の状況を俯瞰した。
 「ウイルスVS人類、スペイン風邪 100年前の教訓」(5/12BS1スペシャル)は記録を紐解いていくと今の新型コロナと似通った現象に人類がほんろうされていたことが分かる。
 当時の歌人与謝野晶子は家族がインフルエンザに感染したことについて憤懣をのべた。「社会的施設に統一と徹底が欠けているので、国民はどんなに多くの避けられるべき災いを避けずにいるかしれない」。いまも100年前も変わりない事態だ。
 これらの映像や知見によって、遠く隔てた国の市民と共感し、共鳴し、ともに行動できる。また歴史をさかのぼって過去に生きた人とも共鳴しあうことができる。
隅井孝雄 (ジャーナリスト)

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2020年05月11日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 ネトフリ、GAFAの業績好調 コロナで経済・文化を米IT企業席巻 1〜3月決算

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  映像配信の大手、ネットフリックスの1月~3月の有料加入者数が1577万件に達した。新型コロナによって世界の主要地域での自宅待機が半ば強制状態にあるため、契約増は予想されていたが予測の2倍だった。これで全世界の契約者数は1億8286万人となった。
 1~3月期の売り上げは28%増の57億6769万ドル(6340億円)、純利益は昨年同時期の2.1倍、7億906万ドル(764億円)であった。
 ネトフリは契約すると映画や新作ドラマを一カ月800円から1200円、1800円の3段階で契約できる。同社は10万種類、4200万枚のDVDを保有し、さらに新作を世界各地から調達し、加入者に提供している。過去に上映された映画のリストもあるが、何と言ってもネトフリ独自の制作映画や、連続番組形式のドラマだ。
 映画では「最強の二人」(2011、仏)、「ショーシャンクの空に」(1994、米)、「ゴッドファーザー」(1972、米)などの名作が並ぶ。しかし「ハウス・オブ・カード」(野望の階段)、「ストレンジャーシングス」(未知の世界)などドラマ系の連続ものがエンタメ界の話題を独占するようになった。このほか人気ジャンルに韓国ドラマや日本系のアニメも数多く放映されている。
 コロナで各種の産業が萎縮状態にある中、GAFAと呼ばれる米大手IT企業はいずれも好調を維持している。 アップルは世界各地の店舗閉鎖がスマホ「iPhone One」を直撃したものの、音楽配信が好調で、売り上げ583億1300万ドル(6兆2000億円)、純利益112億4900万ドル(1兆2379億円)と発表した。
  アマゾンはインターネット通販が拡大し、2割を超える増収となった。売り上げ26%増、747億5200万ドル(7兆9237億円)、純利益25億3500万ドル(2787億円)を計上した。(ただし人員増、配送のコストがかさみ、昨年同期比では29%減)。
 このほかマイクロソフト、純利益107億5200万ドル(1兆1827億円)、フェイスブック49億200万ドル(5412億円)などGAFAはそろって黒字を計上している。
 日本では世界に比べITビジネスが立ち遅れている。しかし、授業に取り入れられ、自宅でのテレワークが増え、有料映像サービスが普及、会議ソフトZOOMが珍重されるなど、家庭をベースにしたIT化が急速に進み、日本でも基幹産業の仲間入りをする時代がやって来るのではないか。コロナ後の社会の変化の一つを象徴していると思う。
(注ドル円換算は情報の出典によってまちまちです。目安として参考にしてください)
隅井孝雄(ジャーナリスト)
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2020年05月02日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 トム・ハンクス夫妻 抗体もつ血漿寄付、ビル・ゲイツのワクチン年内にも

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  CBSやCNNなどアメリカのテレビが伝えるところによると、俳優のトム・ハンクスさんと妻のリタ・ウイルソンさんは被患から完全回復、体内に免疫ができている、と告げられた後、リサーチに役立ててほしいと、二人の血漿(plasma)を寄付する、と語った(4/27)。
 二人の血漿から新型コロナウイルスの抗体ワクチンを作ることができる。ハンクスさん自身、ワクチンが出来たら「ハンクチン(ハンク+ワクチン)」と名付けたいと笑顔で述べた。
 トム・ハンクスさんは3月下旬映画の撮影でオーストラリア滞在中に新型コロナヴァイラスに感染、現地で12日間隔離されたのち、3月下旬アメリカに戻ってからも自主隔離中だ。ちなみに出演する予定の映画はエルヴィス・プレスリーの伝記映画で、名物マネージャー、トム・パーカー大佐役で出演交渉を受けているという。
 自宅にいるトム・ハンクスにはメディアからの接触が多く、4月11日には再開された「サタデーナイトライブ」に自宅からサプライズ出演、また公共ニュースラジオNPRでコロナ体験を語る一方、「コロナ」君との名を持つためにいじめにあっているオーストラリアの8歳の少年に励ましの手紙と「コロナ」社タイプライターを送るなど、話題を提供している。
 ワクチンは病原体から作られる抗原で、18世紀末、天然痘が流行した際、イギリスの医学者、エドワード・ジェンナーによって開発され、種痘を実用化した。今では天然痘の病原菌は絶滅した。
 新型コロナウイルスはなかなか手ごわい相手。致死率が高く、拡散も2人から3人と指数関数的。SARSの1/4の時間で10倍の症例を引き起こすという、これまでになかった厳しさだ。ワクチンを作り出す努力がさまざま続けられているなかでトム・ハンクスの「血漿寄付」は朗報だ。
 アメリカではセレブが次々に立ち上がっている。メリンダ・ビル・ゲイツ財団は「ワクチンと予防接種世界同盟」(GAVI)と連携し、7種類の異なるワクチン製造施設を運営しており、その中で安全性が高く、しかも新型コロナコロナに対し最も有効なワクチンを生み出そうと努力し、すでに数十億ドルを投じているという。年内にもワクチンを手にできるかも。
 トム・ハンクスやビル・ゲイツを見ていると、日本の大企業、財界のトップ、金持ちセレブたちの動きがにぶいと思う。
 ちなみにトム・ハンクスの映画で私の好きな作品は「ユー・ガット・メール」、「プライべート・ライアン」などだ。
隅井孝雄(ジャーナリスト)
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2020年04月23日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 経済減速させたくない 延期の五輪実施で花道飾る―これが安倍首相の思惑

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 安部晋三首相は4月7日、改正新型インフルエンザ特別措置法による初の「緊急事態宣言」を発した。東京など7都府県を対象としたが批判を受け、4月16日全国を対象にした。朝令暮改だ。
 7日の会見で安倍首相は「欧米のようなロックダウン(都市封鎖)ではない。電車、バスなど公共交通機関は運行、道路を封鎖はない」と強調した。経済を減速させない思惑がかいま見られる。
 今回の緊急事態宣言には、各国メディアは批判的だ。「強制力が不足しているため、感染拡大に大きな変化がないだろう」(韓国聯合ニュース)、「対応が遅い、経済への打撃を避けようと、意図的に対応に時間をかけた」(CNN)、「遅すぎた。東京の感染拡大は容易に制御できないレベルに達している」(英BBC)など手厳しい。
 アメリカ大使館は日本に滞在中の米国民に直ちに帰国するよう注意情報を出した(4/3)。「日本は検査を広範に行わない。罹患割合を正確に把握できない、感染の急速拡大の恐れもある」と警告した。日本国内でも政府が緊急事態宣言を発令は「遅すぎた」が81%に達した(4/13読売新聞) 。
108兆円はまやかし
  政府は緊急経済対策として、108兆円を支出すると閣議決定(4/7)、減収世帯への30万円の現金給付、売り上げ減少の業者への最大200万円の給付金などを発表した。108兆円という数字には融資などの金融措置も含まれ、政府の財政支出分(いわゆる真水)は39.5兆円止まる。ところが、10日後、減収世帯への支給を取り下げ、全国民に一律10万円配布すると変えた(4/17)。
 全国知事会は4月8日自粛要請に応じた企業への損失補償を求めた。吉村洋文大阪府知事は、「行政が営業自粛を求める以上、補償は表裏一体だ」と強調した。しかし安倍総理は「落ちた売り上げをすべて補償することはできない」と拒否した。東京都は独自に休業補償する。
低い感染検査数
 安部首相の失態は2月初旬クルーズ船ダイアモンド・プリンセス号が日本に接近、水際で食い止めるとして、船内に乗客、乗員3533人を閉じ込めたときから始まる。
 船内で感染が広がる一方、1月16日に国内で初の新型コロナウイルス感染者が出たのに、PCR検査など対策が不十分のまま推移した。
 100万人当たりのPCR検査受験者数は英国,6,164.5人(3/12), 韓国,4,831.3人(3/13), 中国(広東省),2,820.4人(2/24)に対し日本は80.5人(3/12)、世界23位に止まる(Our World Data3/15)。
  PCR検査は当初、国立感染研究所と各地方衛生研究所に限られたが、2月20日以降民間の医療機関で受検できるようになった。それでもなお検査が進まないのは、医療機関に受診者が集まることを避け、感染が疑われる人、重症者の検査を優先しているからだ。
  休校宣言(2/27)も唐突だった。専門家との協議なしの閣議決定で、しかも「ここ1,2週間が極めて重大な時期だ」との発言は、感染拡大について誤った情報を国民に与える結果となった。フェイク発言だったといわざるを得ない。今となって見れば休校措置は意味ない結果となった。
歴史に名残したい
  新型コロナウイルスの世界蔓延で、安倍首相はオリンピック委員会のバッハ会長との電話会談(3/24)で東京五輪の一年間の延期を提案、IOCも同意した(3/24)。
 もともと新型コロナウイルスを「水際作戦」で抑え込もうとした安倍首相には、東京五輪を開催したい、日本の経済には影響を与えたくないという思惑があった。しかし日本でも世界でも感染拡大は続き、世界のアスリートが次々に危機感を発し、開催を断念した。
 3月30日の決定よると、東京五輪とパラリンピック2020は一年後、2021年7月23日から2021年9月5日の日程となった。一年ずらせば、2021年9月の総裁任期内ということになる。五輪とパラリンピックを花道に、9月に任期満了を迎えられるとの思惑が見られる。だが一年後新型ウイルスが収束しているという保証はない。
NHK指定公共機関に
 安部首相の7日の緊急記者会見(7都府県緊急事態宣言)は19時から行われNHKなど民放キー局が生中継した。首相の約25分演説の後記者と応答、挙手がある中20時過ぎ「次の日程がありますので」として終了した。次の首相の姿はNHKの「ニュースウォッチ9」生出演だった。
 番組では首相の主張をそのまま伝えるのみで、問題点を問いただすことはなかった。
 「改正新型インフルエンザ対策特別措置法」では日銀、赤十字などと並んでNHKが指定公共機関とされた。従来から政権寄りのNHKは、政府のコロナ対策への協力にアクセルがかかっている。国境なき記者団(本部パリ4/7)、日本ジャーナリスト会議(4/11)、などが独立した報道を阻害するとして反対声明を出し、NHKを指定から外すよう要求している。
海外報道もチェック
 テレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショーで「首相が法改正にこだわるのはごてごて批判を払しょくするためだ」、「マスクを医療機関などで重点的に配備する必要がある」(3/4)などの発言に対し、「内閣官房国際感染症特別来策室」や「厚生省」がツイッターで批判、報道を正すよう求めた(3/5, 3/6)。
  国会のやり取りでも、宮下一郎内閣府副大臣は「民放でも、この内容を流してもらうと指示し、変更や差し替えをしてもらうことはありうる」(3/11衆院法務委)と発言した。のち撤回したが本音がこぼれたものだ。
 安部首相の感染対策としてマスク2枚配布の発表(4/1)は、国内の批判に加え、海外メディアからも「アベノマスクはエイプリルフールか」(Fox News4/1)など嘲笑、揶揄が乱れ飛んだ。
 それを意識してか“批判をチックし、正しい情報流すために”との予算24億円を外務省が組んだ。主要20か国のなどのSNSをAI(人工知能)も活用してチェック、“正しい情報を発信する”という。厚生省も国内海外に向けて「ネガティブ情報の払しょく」、「正しい情報の発信」を行う予算35億円が組まれた。
  憲法25条には「すべて国民は、健康で文化的最低限度の生活を営む権利を有する、国はすべての生活部面について、社会福祉及び社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とされている。「健康で文化的な最低限の生活」を取り戻す日が一日も早く来ることを、願ってやまない。
隅井孝雄


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2020年04月20日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 日本と違いコロナ禍でも欧米は文化・芸術助成を実施

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 日本国憲法は「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利がある。国は、すべての生活部面について、社会保障および公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」という条文がある(25条)。
  今日はこの条文の元、新型コロナウイルスと文化芸術にについて考えたい。政治家は全力を挙げてこの条文に沿った行動をしてほしい。今の日本の政権ではすべてが後手後手になっている。PCR検査を怠っている。緊急事態宣言は4月7日発令されたが4月16日に全国が対象に切り替えられた。
 京都では、芸術文化施設を全面閉鎖し(4/4)、市長が緊急事態を京都にも適用してほしいと国に要望した(4月10日)。100万人当たりの感染者数が全国都道府県で5位であるなど、感染拡大が続く。
軒並み閉館
 ところで健康で文化的な生活が今は不可能。私が通っていたスポーツジムも閉鎖された、「文化博物館」も閉鎖された。祇園祭特別展「町衆の情熱」で懸想(山鉾を飾る美術垂れ幕)が見られる、金具飾りが見られると、見に行ったが文博は閉鎖されていた。国立博物館も、新装のローム博物館(元府立博物館)もロームシアターも全部閉鎖されている。
 大量感染の元となったことから京都でもライブハウスは軒並み閉鎖、京都コンサートホールの演奏会にも中止だ。
祇園祭巡行中止
 例年7月1日から一か月間行われる祇園祭の鉾立て7/10、巡行7/17,7/24の是非が問われている。山鉾を立てれば人が集まる、山鉾巡行(写真)では引手が連なる、周囲約2.5キロに観客が密集する、とあって、現状では開催に見込みは立たない。巡行は中止することが決められた(4/20発表)、おそらく鉾立てもできないのではないか。
 平安時代初期863年(貞観5年)に当時蔓延した疫病(当時わらわやみ、おこりなどと言われたがマラリヤかと思われる)で多くの死者が出たことを悼み、悪霊を退散させるための行事が始まりだったといわれる。やがて豪華絢爛の伝統文化として1150年続いてきた、それが1151年目の今年、中止になるというのは歴史上の大きなアイロニーではないか。
30万人賛同
 ライブハウスの出演者が先頭に立って進めていた、文化助成を求める署名♯SaveOurSpaceがツイッターであっという間に賛同者30万人をこえたと聞いた。各種のライブ公演、音楽会、演劇文化公演から歌舞伎至るまで舞台が開けられない。博物館、映画館まで閉まった。
 映画、演劇の世界では、俳優、音楽家はもとより音響、照明などなど、フリーで働く人々も無収入になる。人々は音楽や演劇を楽しむ機会を失われている。休業資金を出し、歌手、アーティスト、文化関係施設に給付し、生活を保障して、コロナ明けに備えることが重要だ。
 休業したお店には200万円の補償をする。減収世帯に最低10万円〜60万円、などの給付がかろうじて決められたが、安倍首相はそれを全世帯10万円配布に切り替えた。申告すればの話だ。音楽、映画、ライブハウスなど文化関係への補償は話しすら出ていない。
 宮田亮平文化庁長官がメッセージを出した(3/28)だけで、文化、芸術の助成についてついての具体策は一切ない。
欧米最新事情
 ヨーロッパでは真っ先に音楽関係、映画、俳優、などへの手厚い保護策がとられたことを紹介したい。
 イギリスではすでに2000万ポンド(27億円)ガアート・カウンシルから支出されることが決まっており、その中には芸術文化関連フリーランス、一人当たり2500ポンド、34万円が支給される。いずれも面倒な手続きがなく、即時に振り込まれる。
 フランス文化省の緊急支援策は、音楽家、俳優、フリーの文化関連労働者などの収入の穴埋めに10億ユーロ(1200億円)を投じる。文化芸術関係の小規模組織、個人事業者に1500ユーロ〜3500ユーロ(18万円〜42万円)を支給した。封鎖期間中はこの手当を打ち切らず延長するという。
 イタリア政府では財政困難の中にも関わらす、舞台芸術、映画企業、芸術家、実演家、緊急基金1億3000万ユーロ(152億円)が支出された。文化関係従事者の所得補償もある。
 ドイツでは「アーティストは、生命維持に必要不可決な存在だ」と、モニカ・グリュッタース文化相が発言した。個人、自営業支援として500億ユーロ(6兆円)が用意された。そのうち休業補償の対象になるフリーランス、芸術家、演劇・音楽グループなどは140万人と見られる。
 アメリカではブロードウェイが閉まり、ジャズクラブ、レストラン、リンカンセンターも閉鎖だが、芸術団体、仕事のなくなった音楽家、オペラ歌手、ジャズ歌手など休業した文化関係者の休業補償にとりあえず500万ドル(5億3000万円)が用意された。
 アメリカの特徴は、大手IT企業、銀行など大手企業の支援があることだ。例えばナイキ財団とその幹部が即座に文化関係、アスリートなどに対し1500万ドル(16億円)を寄付した。
 コロナの中にあっても文化、芸術を保護し、終息すればすぐ再開できるようにとの配慮が必要だ。一日も早く、健康で文化的な生活にもどり、音楽を聞き、演劇を鑑賞し、映画を楽しみ、カラオケも歌える、山鉾巡行も楽しめる日常に戻ることを願うばかりだ。
隅井孝雄(ジャーナリスト)
 
posted by JCJ at 17:19 | 隅井孝雄のメディアウオッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする