2020年11月27日

【オンライン講演】 東京五輪「政治とカネ」後藤逸郎さん語る IOCのエゴイズム 開催可否は国民投票で=嶋沢裕志

                                          ◆後藤逸郎さん.jpg
コロナ禍の収束が見通せない中、来夏に延期された東京五輪・パラリンピックを「簡素化」して開催する準備が加速している。欧米などの感染状況を鑑みれば、国際オリンピック委員会(IOC)や大会組織委員会、政府、東京都の前のめり感も否めないが、東京五輪は一体どうなるのか。JCJは9月26日、五輪問題に詳しいジャーナリスト、後藤逸郎さん=写真=のオンライン講演会を開いた。後藤さんは4月、「オリンピック・マネー誰も知らない東京五輪の裏側」(文春新書)を上梓した。
 
 講演会は大会組織委とIOCが、大会関係者の削減や会場の装飾を減らすなど、52項目の簡素化で合意した翌日に行われた。リモート取材に参加した後藤さんは「300億円程度のコスト削減が決まったが、延期に伴う経費(約3千億円)にコロナ対策費を含めれば6千億円とも言れ1兆3500億円に膨らんだ大会予算もまだまだ増える」と指摘。一方、「IOCは開催式の時間短縮など米テレビ局の放送権料収入に関わる事項だけは一切譲歩しなかった」と、IOCのエゴイズムむき出しの実態を明かした。「平和の祭典」を仕切るIOCは、国連とも平和機関でもない巨大な興行主であり、開催すれば儲けが出る「開催ありき」の組織だと断じる。
 日本では「コロナ解雇」が6万人を超え、23万社が倒産・廃業の危機にある。海外にはもっと悲惨な国もある。そんな状況下、無尽蔵に税金を注ぎ込むより、コロナ対策に回せばどれだけの命を救えるかという視点も大事だと問題提起した。
 五輪開催ルールにも疑念が残る。選手の入国時に陰性証明と行動計画書があれば14日間の待機を免除すること。交通機関を使ってのホストタウンへの移動を容認することだ。懸念材料はまだある。選手村で感染者が出た場合、感染が蔓延しないかという点だ。「アスリートファーストと言いつつ選手の生命を軽んじていないか?」。
また、パラリンピック選手には基礎疾患を持つ人が多く、感染で重篤化するリスクも高いのに、あまり報じられることはない。背景には、メディア自身が「奉加帳」方式で五輪スポンサーとなっており、運命共同体として中止すべきなどと言い出しにくい面があるのではないか。 
 前代未聞の環境下で行われるオリンピックなら、開催の可否を問う国民投票があってもいい、と後藤さんは考えている。「五輪はその国の民主主義の成熟度を測る物差し」と締めくくった。   
 嶋沢裕志
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年10月25日号

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2020年10月21日

【オンライン講演】 会見は記者の主戦場 南彰新聞労連委員長が語る=須貝道雄

                                        ◆新聞労連・南彰委員長.◆.jpg
 
 「記者会見は現代の主戦場だ」――新聞労連の南彰委員長(朝日新聞記者=写真=)は8月23日、オンライン講演会「メディアは今、何が問題か」で首相・官房長官会見を取り上げ「政治家の言いっ放し、宣伝の場にしてはならない」と語った。
 政治取材では自宅への夜回りやオフレコ取材が重視され、報道側は「表の場」である記者会見に力を入れない傾向があった。南氏はその転換を訴えた。
政治家はツイッターなどのSNSやネットで市民に直接情報を発信し「やってる感」を演出するようになった。一方で記者会見の無力化、形骸化を狙っていると話した。
 実際に2017年以降、官房長官会見では「公務があるのであと1問」と官邸側が発し、質問制限が露骨になった。その結果、会見は長くても10分か15分で終わっている。
今年8月6日、広島市であった安倍晋三首相の会見では、質問を求めた朝日新聞記者に対し、官邸報道室の職員が「ダメだよ。終わり」と腕をつかんで妨害した。明らかな知る権利の侵害だった。
 記者会見がネット中継され、可視化される中で「記者は質問を通じて、市民の期待に応え、報道への信頼を勝ち取っていくことが大事。その意味で会見 は主戦場だ」と南氏は繰り返した。
官房長官会見は元々、時間制限無しがルールだったという。菅義偉官房長官のもとで制限が生まれた。「官房長官が代わったら、時間制限無しのルールに戻す必要がある」と呼び掛けた。
 「桜を見る会」をめぐり安倍首相への疑惑が深まった19年11月、報道各社の官邸キャップは首相と中華料理店で懇談をした。その後も総理番、ベテラン記者と懇談が続いた。世間からは「正式な会見を要求すべきだ」と批判の声があがった。
 南氏はこの事態を「官邸側の作戦勝ち」と見ている。懇談の日程は官邸側が設定する。「この時期に懇談をすればメディアを共犯者にできるし、メディア不信もかき立てることができる」と分析。報道側はその意図を見抜き、「作戦」に乗らず、記者会見を機能させていくことが大事だと強調。「会見を、ある意味で記者の怖さ≠伝えていく場にしていくことが重要だ」と語った。
須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号
 
  

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2020年09月07日

【オンライン講演】 金正与氏が外交を担う 米朝に「10月サプライズも」=須貝道雄

            五味洋治・東京新聞記者.jpg東京新聞・五味洋治論説委員             金与正氏の写真など、パソコンで見る.jpg
 JCJはオンライン講演会を7月26日、「どうなる朝鮮半島情勢」のテーマで開いた。開城(ケソン)にある南北共同連絡事務所を北朝鮮は6月に爆破し、世界に衝撃を与えた。指示したのは最高指導者・金正恩氏の妹、金与正氏。彼女はどんな人物か、また米朝会談は再開されるのかなどについて、講師の東京新聞・五味洋治論説委員から話を聞いた。
 五味さんが冒頭に紹介したのは大ヒットの韓国ドラマ「愛の不時着」だった。パラグライダー中の事故で北朝鮮に不時着した韓国の財閥令嬢が、身分を隠して暮らす物語。脱北者から取材して制作したということで、北朝鮮の人々の生活がリアルに描かれている。
 興味深いのは北朝鮮の兵士が勤務中にヘッドホンで韓国ドラマ「天国の階段」を見ている場面だ。テレビに人気女優チェ・ジウの顔が映っている。彼女のことを「ジウ姫」と兵士は呼んでいたという。これは日本での愛称と同じだ。
 五味さんは「日本と韓国と北朝鮮は同じ文化圏。感受性でつながるところがあり、同じように楽しんでいる」と解説した。
 連絡事務所の爆破という過激な指示を出した金与正氏について、父の金正日氏はかつて「ヨジョナ」と呼んでかわいがり、後継者の一人として期待をかけていた。おきゃんな性格、トクスンイ(しっかりもの)の評もある。
  今年に入り、コロナ問題や米国との関係悪化で兄の正恩氏が「意欲喪失状態」にあるため、彼女が兄に働きかけ、(爆破指示という形で)厳しく出たのではないかと、韓国紙記者は見ているそうだ。
 米朝会談について金与正氏は7月に「今は米国だけに利益がある」と拒否的な姿勢を示した。五味さんは「外交問題でこれだけ堂々と言える人は妹だけ。兄の代わりに外交部門を担当していると見て間違いない」と分析。今後は過激化とは逆に、違った面を見せる可能性にも触れた。
 米独立記念日に関し彼女は「アメリカのパレードのDVDが欲しい。国の参考にしたい」と書いていた。SNS上によくみられる、かわいらしい感じの言葉づかいだったという。
 ひょっとすると電撃的な米朝会談の再現、オクトーバー(10月)サプライズも「ゼロとは言えない」と五味さんは指摘した。
 須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年8月25日号

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2020年08月12日

【オンライン講演】 黒人暴行死で矢部氏が講演 少数派になる白人に不安 米の暗部 KKK時代から=須貝道雄

          Zoomを使ってのオンライン講演会.jpg    ジャーナリスト・矢部武さん.jpg
 米国ミネソタ州のミネアポリスで5月に起きた白人警察官による黒人暴行死事件。その背景には何があるのか――。JCJは7月4日、米国事情に詳しいジャーナリスト、矢部武さんを講師に「黒人が殺される国アメリカの深層」と題してオンライン講演会を開いた。ビデオ会議システムZoomを使う初めての試みだった。
 標的は大きな体
 8分46秒にわたって警官の膝で首を圧迫され、死んだ黒人男性ジョージ・フロイドさん(46)は以前から「オレはいつ殺されるかわからない」と友人に漏らしていたという。白人警官から、車を停止させられることがしょっちゅうあったからだ。
 矢部さんによれば、白人警官は体が大きくて強そうな黒人男性を標的にする。国勢調査のデータでは2015年からの5年間、全米で毎年千人から千数百人が警官の暴力で死亡し、うち黒人は約26%を占めた。黒人の人口比は約13%だから、その2倍の数値だ。
 今回の事件では10代の通行人が撮ったとされる衝撃的な動画が世論を喚起した。遺族は「殺意は明白。公開処刑だ」と世に訴えた。だがもし、この映像が無かったら「フロイドさんの死も、単なる数字の一つとして片付けられ、何もわからなかっただろう」と矢部さんは話した。
 警官の行動の背後には白人至上主義がある。トランプ大統領は「白人の国を取り戻してくれ」という声に乗って選挙に勝った。米国勢調査局によれば、白人の人口比は現在60%だが、2045年には49%台にまで減る。いわば少数派に転じるわけで、その不安が白人至上主義への同調につながっているという。
 「奇妙な果実」が
 米国の黒人差別の歴史は400年以上になる。初めてアフリカから奴隷を連れてきたのが1619年。1865年の南北戦争で北軍が勝ち、奴隷制度は廃止になる。だが同時に、奴隷を使っていた白人至上主義者たちが黒人を迫害するKKK(クー・クラックス・クラン)という団体をつくる。白頭巾にたいまつを持って現れ、黒人の家に火をつけ、逃げた者を木につるして殺すなどのリンチが1950年代まで続いた。
 ジャズ歌手のビリー・ホリディ(1915〜1959年)はこうしたリンチに抗議し、「奇妙な果実」の曲名で悲劇の黒人たちを歌った。
 1964年の公民権法で黒人差別は明確に禁止された。だが意識は変わらず、資産格差も大きい。矢部さんが示したのは資産保有額の中央値だ。2013年時点で黒人世帯は1万1200jなのに対し、白人世帯はその13倍の額に達している。
 延期か中止狙う
 こうした中で、今年の大統領選挙はどなるかに話が進んだ。トランプ大統領は新型コロナウイルスの感染拡大に、あまり心配する様子を見せていない。矢部さんは「彼は混乱が大好きだから。どんどん感染が広がり、死者も2〜3倍になれば、11月選挙どころではなくなる。延期か中止をもくろんでいるのではないか」と推測した。
 米国の友人とも話したという。ただ延期や中止を決める権限は議会にある。もし、トランプ大統領が選挙をせずに、21年もその座にとどまろうとしたら、おそらくペロシ下院議長が暫定大統領となり、ホワイトハウスに軍を送って、大統領は引きずり出されるだろうという議論になったとか。予断を許さない情勢だ。    
須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年7月25日号
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2020年06月11日

真実つかむ取材を 報道の自由 ネットセミナー=須貝道雄

            瀬川牧子さん.jpg
 国連が定めた世界報道自由デー(5月3日)にちなむネット上のセミナーが9日、会議システムzoomを使って開催された。法政大学の坂本旬教授を中心とした実行委員会の主催で、JCJも協力。大学のゼミ生を含めて約130人がパソコンやスマホで視聴した。
 セミナーでは「国境なき記者団」の日本特派員、瀬川牧子さんが「緊急事態宣言と強化される情報統制」のテーマで話をした。強調したのは、日本と海外とでは「全くメディア文化が違う」ことだった。
ルール破りOK
 例えば日本のメディアは、延期になった東京五輪を「復興五輪」と称してプラスイメージで報じ、マイナス面をほとんど取り上げていない。
 これに対し、瀬川さんが取材に協力したノルウェーやスウェーデンの記者は異なった。彼らは「五輪を揶揄(やゆ)するため、福島の問題をもっと取り上げる」という狙いで来日している。「英国の記者たちもバーっと福島へ行く。五輪をやじりたいためだ」。ロンドン五輪(2012年)の際には、ホームレスの記事を書いて「五輪をやっている時ではない」と批判する英国メディアもあった。
 2012年1月に、仏メディア「フランス24」のジャーナリストが福島原発から20`圏内の立ち入り禁止区域に潜入し、警察に逮捕されたことがあった。国境なき記者団はパリの日本大使館に抗議したという。その理由は「潜入させるほど、記者に(報道の)自由を与えなかったのは日本政府の責任」だからだ。
 「国境なき記者団にとって、真実をつかむためにルールを破るのは全くOKなんです。ジャーナリストはトラブルメーカーでなければならない。やばい、えぐい話を取材し、報じてほしい」と呼びかけた。
 次に登場したのは毎日新聞社会部の大場弘行記者で「報道の自由と公文書・情報公開」の題で講演した。毎日新聞は18年1月から「公文書クライシス」のキャンペーン報道を続けている。
 話題にしたのは、東京・霞が関の官庁街で「闇から闇に消える文書」の存在だった。例えば「総理のご意向」の字句で有名になった文科省から出た文書。これは一般に「レク資料」と呼ばれ、官僚たちの証言によれば、まぎれもない公文書でありながら、口頭説明の一部として扱われ、表向きは存在しないことになっている。
数億通のメール
 「ベタ打ちメール」も公文書として扱われていない。ベタ打ちとは、添付ファイルに書くのではなく、メールの画面にベタベタ字を打ち込むことから付いた名だ。ベタ打ちメールは一つの省庁で年間数千万から数億通に上るという。加計学園問題でも重要なメールがあった。
 もう一つ、大きな問題は公文書を束ねたファイル名をわざと抽象化し、中身をわからなくする手法があることだ。検索が難しくなり、情報公開請求がやりにくくなる。
 防衛省はイラク復興支援に関する文書のファイル名を「運用一般」と表記し、南スーダン派遣の文書を「注研究」、セクハラに関する報告を「服務指導」としていた。その結果、異動で担当者が変わると、何の文書がファイルされているかわからず、自衛隊のイラク日報を捜しきれず、後から見つかるということも起きたと話した。
            大場弘行さん・毎日新聞.jpg
須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年5月25日号

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