2020年09月07日

【オンライン講演】 金正与氏が外交を担う 米朝に「10月サプライズも」=須貝道雄

            五味洋治・東京新聞記者.jpg東京新聞・五味洋治論説委員             金与正氏の写真など、パソコンで見る.jpg
 JCJはオンライン講演会を7月26日、「どうなる朝鮮半島情勢」のテーマで開いた。開城(ケソン)にある南北共同連絡事務所を北朝鮮は6月に爆破し、世界に衝撃を与えた。指示したのは最高指導者・金正恩氏の妹、金与正氏。彼女はどんな人物か、また米朝会談は再開されるのかなどについて、講師の東京新聞・五味洋治論説委員から話を聞いた。
 五味さんが冒頭に紹介したのは大ヒットの韓国ドラマ「愛の不時着」だった。パラグライダー中の事故で北朝鮮に不時着した韓国の財閥令嬢が、身分を隠して暮らす物語。脱北者から取材して制作したということで、北朝鮮の人々の生活がリアルに描かれている。
 興味深いのは北朝鮮の兵士が勤務中にヘッドホンで韓国ドラマ「天国の階段」を見ている場面だ。テレビに人気女優チェ・ジウの顔が映っている。彼女のことを「ジウ姫」と兵士は呼んでいたという。これは日本での愛称と同じだ。
 五味さんは「日本と韓国と北朝鮮は同じ文化圏。感受性でつながるところがあり、同じように楽しんでいる」と解説した。
 連絡事務所の爆破という過激な指示を出した金与正氏について、父の金正日氏はかつて「ヨジョナ」と呼んでかわいがり、後継者の一人として期待をかけていた。おきゃんな性格、トクスンイ(しっかりもの)の評もある。
  今年に入り、コロナ問題や米国との関係悪化で兄の正恩氏が「意欲喪失状態」にあるため、彼女が兄に働きかけ、(爆破指示という形で)厳しく出たのではないかと、韓国紙記者は見ているそうだ。
 米朝会談について金与正氏は7月に「今は米国だけに利益がある」と拒否的な姿勢を示した。五味さんは「外交問題でこれだけ堂々と言える人は妹だけ。兄の代わりに外交部門を担当していると見て間違いない」と分析。今後は過激化とは逆に、違った面を見せる可能性にも触れた。
 米独立記念日に関し彼女は「アメリカのパレードのDVDが欲しい。国の参考にしたい」と書いていた。SNS上によくみられる、かわいらしい感じの言葉づかいだったという。
 ひょっとすると電撃的な米朝会談の再現、オクトーバー(10月)サプライズも「ゼロとは言えない」と五味さんは指摘した。
 須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年8月25日号

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2020年08月12日

【オンライン講演】 黒人暴行死で矢部氏が講演 少数派になる白人に不安 米の暗部 KKK時代から=須貝道雄

          Zoomを使ってのオンライン講演会.jpg    ジャーナリスト・矢部武さん.jpg
 米国ミネソタ州のミネアポリスで5月に起きた白人警察官による黒人暴行死事件。その背景には何があるのか――。JCJは7月4日、米国事情に詳しいジャーナリスト、矢部武さんを講師に「黒人が殺される国アメリカの深層」と題してオンライン講演会を開いた。ビデオ会議システムZoomを使う初めての試みだった。
 標的は大きな体
 8分46秒にわたって警官の膝で首を圧迫され、死んだ黒人男性ジョージ・フロイドさん(46)は以前から「オレはいつ殺されるかわからない」と友人に漏らしていたという。白人警官から、車を停止させられることがしょっちゅうあったからだ。
 矢部さんによれば、白人警官は体が大きくて強そうな黒人男性を標的にする。国勢調査のデータでは2015年からの5年間、全米で毎年千人から千数百人が警官の暴力で死亡し、うち黒人は約26%を占めた。黒人の人口比は約13%だから、その2倍の数値だ。
 今回の事件では10代の通行人が撮ったとされる衝撃的な動画が世論を喚起した。遺族は「殺意は明白。公開処刑だ」と世に訴えた。だがもし、この映像が無かったら「フロイドさんの死も、単なる数字の一つとして片付けられ、何もわからなかっただろう」と矢部さんは話した。
 警官の行動の背後には白人至上主義がある。トランプ大統領は「白人の国を取り戻してくれ」という声に乗って選挙に勝った。米国勢調査局によれば、白人の人口比は現在60%だが、2045年には49%台にまで減る。いわば少数派に転じるわけで、その不安が白人至上主義への同調につながっているという。
 「奇妙な果実」が
 米国の黒人差別の歴史は400年以上になる。初めてアフリカから奴隷を連れてきたのが1619年。1865年の南北戦争で北軍が勝ち、奴隷制度は廃止になる。だが同時に、奴隷を使っていた白人至上主義者たちが黒人を迫害するKKK(クー・クラックス・クラン)という団体をつくる。白頭巾にたいまつを持って現れ、黒人の家に火をつけ、逃げた者を木につるして殺すなどのリンチが1950年代まで続いた。
 ジャズ歌手のビリー・ホリディ(1915〜1959年)はこうしたリンチに抗議し、「奇妙な果実」の曲名で悲劇の黒人たちを歌った。
 1964年の公民権法で黒人差別は明確に禁止された。だが意識は変わらず、資産格差も大きい。矢部さんが示したのは資産保有額の中央値だ。2013年時点で黒人世帯は1万1200jなのに対し、白人世帯はその13倍の額に達している。
 延期か中止狙う
 こうした中で、今年の大統領選挙はどなるかに話が進んだ。トランプ大統領は新型コロナウイルスの感染拡大に、あまり心配する様子を見せていない。矢部さんは「彼は混乱が大好きだから。どんどん感染が広がり、死者も2〜3倍になれば、11月選挙どころではなくなる。延期か中止をもくろんでいるのではないか」と推測した。
 米国の友人とも話したという。ただ延期や中止を決める権限は議会にある。もし、トランプ大統領が選挙をせずに、21年もその座にとどまろうとしたら、おそらくペロシ下院議長が暫定大統領となり、ホワイトハウスに軍を送って、大統領は引きずり出されるだろうという議論になったとか。予断を許さない情勢だ。    
須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年7月25日号
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2020年06月11日

真実つかむ取材を 報道の自由 ネットセミナー=須貝道雄

            瀬川牧子さん.jpg
 国連が定めた世界報道自由デー(5月3日)にちなむネット上のセミナーが9日、会議システムzoomを使って開催された。法政大学の坂本旬教授を中心とした実行委員会の主催で、JCJも協力。大学のゼミ生を含めて約130人がパソコンやスマホで視聴した。
 セミナーでは「国境なき記者団」の日本特派員、瀬川牧子さんが「緊急事態宣言と強化される情報統制」のテーマで話をした。強調したのは、日本と海外とでは「全くメディア文化が違う」ことだった。
ルール破りOK
 例えば日本のメディアは、延期になった東京五輪を「復興五輪」と称してプラスイメージで報じ、マイナス面をほとんど取り上げていない。
 これに対し、瀬川さんが取材に協力したノルウェーやスウェーデンの記者は異なった。彼らは「五輪を揶揄(やゆ)するため、福島の問題をもっと取り上げる」という狙いで来日している。「英国の記者たちもバーっと福島へ行く。五輪をやじりたいためだ」。ロンドン五輪(2012年)の際には、ホームレスの記事を書いて「五輪をやっている時ではない」と批判する英国メディアもあった。
 2012年1月に、仏メディア「フランス24」のジャーナリストが福島原発から20`圏内の立ち入り禁止区域に潜入し、警察に逮捕されたことがあった。国境なき記者団はパリの日本大使館に抗議したという。その理由は「潜入させるほど、記者に(報道の)自由を与えなかったのは日本政府の責任」だからだ。
 「国境なき記者団にとって、真実をつかむためにルールを破るのは全くOKなんです。ジャーナリストはトラブルメーカーでなければならない。やばい、えぐい話を取材し、報じてほしい」と呼びかけた。
 次に登場したのは毎日新聞社会部の大場弘行記者で「報道の自由と公文書・情報公開」の題で講演した。毎日新聞は18年1月から「公文書クライシス」のキャンペーン報道を続けている。
 話題にしたのは、東京・霞が関の官庁街で「闇から闇に消える文書」の存在だった。例えば「総理のご意向」の字句で有名になった文科省から出た文書。これは一般に「レク資料」と呼ばれ、官僚たちの証言によれば、まぎれもない公文書でありながら、口頭説明の一部として扱われ、表向きは存在しないことになっている。
数億通のメール
 「ベタ打ちメール」も公文書として扱われていない。ベタ打ちとは、添付ファイルに書くのではなく、メールの画面にベタベタ字を打ち込むことから付いた名だ。ベタ打ちメールは一つの省庁で年間数千万から数億通に上るという。加計学園問題でも重要なメールがあった。
 もう一つ、大きな問題は公文書を束ねたファイル名をわざと抽象化し、中身をわからなくする手法があることだ。検索が難しくなり、情報公開請求がやりにくくなる。
 防衛省はイラク復興支援に関する文書のファイル名を「運用一般」と表記し、南スーダン派遣の文書を「注研究」、セクハラに関する報告を「服務指導」としていた。その結果、異動で担当者が変わると、何の文書がファイルされているかわからず、自衛隊のイラク日報を捜しきれず、後から見つかるということも起きたと話した。
            大場弘行さん・毎日新聞.jpg
須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年5月25日号

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