2023年02月18日

【オンライン講演】「愛国」を強いる教育の怖さ 現場に漂う見えない圧力 斉加尚代監督=須貝道雄

                    
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 教育に対する政治介入を扱った映画「教育と愛国」は22年5月の公開以来、全国62館で上映され、来場者は4万人を超えた。JCJは12月18日、MBS(毎日放送=大阪)ディレクターで監督の斉加尚代さんをオンライン講演会の講師に招き、映画に込めた思いなどを聞いた。

抗議はがきが殺到
 教育現場に漂う「見えない圧力」。映画はその実態を描く。2016〜2017年に麻布中学、灘中学、国立大付属中学などに抗議はがきが殺到した。大半が匿名で、「反日極左」教科書の使用中止を迫っていた。
 これら中学は「学び舎」の歴史教科書を採用していた。文科省が推奨する「考え議論すること」に主眼を置き、「暗記だけではない」点が評価されていた。これに対し、慰安婦問題の記述を理由に、同一文面の抗議はがきが舞い込んだのだ。
 はがきの差出人に実名があった当時の山口県防府市長、松浦正人さん(教育再生首長会議初代会長)に斉加さんは会い、尋ねた。松浦さんは最初「知りません」と答え、はがきを見せると「あー(学び舎の教科書は)読んではいないが、見たことはある」と回答。尊敬するある方から言われたから送ったと弁明したという。
 森友学園理事長の籠池泰典氏もはがきを出した一人。取材に正直に答えてくれたという。「日本会議からの指示で、執拗に出した」と話し、映画「教育と愛国」を見た後に「松浦さんに直接頼まれて送った」と明言した。
 灘中学の当時の校長は匿名の抗議はがきについて「同じ仮面をかぶった人たちが群れる姿が脳裏に浮かび、うすら寒さを覚えた」(一部抜粋)とコラムに書いている。

安倍元首相の発言
 「政治が一線を越えて教育に介入してよい」とする考えが広まったのは、12年2月に大阪で開かれた「教育再生民間タウンミーティングin大阪」が大きな契機だったと斉加さんは見ている。下野していた安倍晋三元首相が登壇し、「(教育に)政治家がタッチしてはいけないのかと言えばそんなことはないですよ」と発言。当時の松井一郎大阪府知事と握手を交わす。これ以降、大阪を実験場に「政治主導の教育改革」が進んだ。
 12年3月、大阪府立高校の民間人校長が卒業式で、君が代の斉唱をしているか否か、教員の「口元チェック」をする異常なことが起きる。当時の橋本徹大阪市長は素晴らしいマネジメントだと賞賛した。MBS記者だった斉加さんはこの問題を会見の場で質問する。激高する橋本市長と長時間のやり取りが続いた。「女だからすぐ黙ると思っていたんじゃないでしょうか」と彼女は振り返った。
 大阪維新の会の議員らは「教育をビジネスの言葉で語る」のが特徴という。「グローバル社会に対応できる人材育成」をうたい、学校・教師・自治体間で競争させ、現状への疑問などを封じ込める「競争統治」を推進している。

大切にされてない
 もう一つは効率。教育から「ムダ」を排する名目で、例えば府立高校は3年定員割れが続くと統廃合の対象になる。定員割れ高校に在学するある3年男子は「俺たちの学校つぶすの、ほんま? 俺ら、いらんということやろ」と語った。「思い出すと苦しい。自分たちが大切にされていないと思い込ませる教育行政であってはいけない」と斉加さんは語気を強めた。
「愛国」を強いる教育の怖さを示したのは1945年・沖縄戦で起きた集団自決(強制集団死)だ。映画は渡嘉敷村の吉川嘉勝さんの体験を紹介する。日本軍は島の住民に集団自決を迫る。当時6歳だった吉川さんは、母親から逃げろと言われ、助かった。吉川さんは語る。「私が生き残ったのは、母が無学だったからです」。軍に命をささげる皇民教育が人の心を縛っていた。
 映画「教育と愛国」は22年JCJ大賞を受賞。斉加さんは『現代用語の基礎知識2023』(自由国民社)で巻頭キーパーソンの一人に選ばれた。まさに時の人である。
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年1月25日号  
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2023年02月09日

【オンライン講演会】27日(月)午後2時から4時 統一教会と自民党のジェンダー平等への介入〜性・結婚・しばられる家族〜金平茂紀さんら3人が登壇= NHKとメディアを考える会

パネリス ト:(兼司会)金平茂紀さん(ジャーナリスト ) 斉藤正美さん(社会学者 ) 堀江有里さん(日本基督教団・牧師)

安倍元首相銃撃事件から半年余りが過ぎ、統一教会と自民党 癒着の全貌は未だに解明されないままです。そこで今回は、自民党と統一教会など宗教右派の結託が、 男女共同参画や性教育、LGBTなどの政策実現を阻んできたかとシンポを通じてかを浮き彫りにします。ご期待ください。

★参加費:800円 参加ご希望の方はネットのPeatixで参加費をお支払いください。
(1) [https:/peatix.com/event/3493625/viewをクリックする]https:/peatix.com/event/3493625/viewをクリックする
(2) 参加券を求める
(3) 支払いをカードかコンビニ払いにするかなどを選ぶ
(4) 初めての方は途中、 氏名、 メールアドレスを入力し、 独自のパスワードの設定をします。
(5) 支払いを済ませた方にシンポジウム前日・2月26日までにZOOMで視聴できるURL
   をメールで送ります。申込者には後日録画配信あり
主催 NHKとメディアの今を考える会
(問い合わせ先)丹原美穂 t.miho@galaxy.ocn.ne.jp 090-8955-6050
小滝一志 kkotaki@h4.dion.ne.jp 090-8056-4161
協賛団体: NHKとメディアを語ろう・福島 日本ジャーナリスト会議 日本ジャーナリスト会議東海 放送を語る会 メディアの今を考える市民の会・ぎふ
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2022年12月31日

【オンライン講演】沖縄にとって日本とは 復帰50年 JCJ沖縄がシンポ企画を開催

 10月29日、JCJ沖縄の企画でJCJオンラインシンポ「復帰50年 沖縄のいま・これから 沖縄にとって日本とは何か/ジャーナリズムは何をすべきか」が開催された。1994年から約10年間、沖縄に居住していた作家の池澤夏樹氏(写真下)の基調提言を受けて、JCJ沖縄のメンバーの金城正洋(ジャーナリスト)、黒島美奈子(沖縄タイムス論説副委員長)、米倉外昭(琉球新報論説委員)の3氏が発言した。
 質疑応答では、教育の場で古典を含む沖縄の文学をどう活用するかなどが議論された。池澤氏からは、沖縄の文化を世界に発信するサイト「あまくま琉球」のアピールもあった。
沖縄シンポ・基調提言をする池澤夏樹さん.png


日本にも中国にもノーを=池澤夏樹さん
 沖縄でも日本でも世界でも、ジャーナリズムにとって大切なこと、それは分断だ。どこの国でも世論が二つに分かれてにらみ合う。理由は簡 単。SNSだ。それを前提としないとジャーナリズムの足元がすくわれかねない。
 その上で、沖縄のことだ。沖縄は中国と日本の間にあり、薩摩に搾取され、第二次世界大戦で地上戦になった。沖縄人はそれを忘れていない。
 ヤマト(本土)の人たちからすれば、沖縄は米軍基地を置くのに都合がいい。第二次大戦でも役に立った「都合のいい島」。沖縄には、これに対する根源的な憤りの念がある。
 沖縄の地理的条件をどう使うか。一番いいのは観光だ。東アジアの航空路のハブにもできたはずだ。また、情報産業なら地理的ハンディキャップがない。そういう豊かな未来図が描けると思う。
 辺野古新基地に反対してきた。軟弱地盤は何万本杭を打っても沈下する。しかし、日本政府は自縄自縛で動けなくなっている。やめようと言える人がいない。
 ただ、分断していてどっちも硬直化している。その場その場で新鮮な切り口を出してアピールしていかないといけない。冷たい人たち、無関心な人たちにどうやったら伝わるか工夫していかなければならない。
 東京の政府は、しっぽを振ったら餌をやるよという、犬に対するような姿勢だ。沖縄はかつて、所得は最下位だけど、数字とは別の暮らしの豊かさがあった。それも思い出しておくべきだと思う。
 「台湾有事」で臨戦態勢になりつつある。国防は国の専管事項と言うが、同じ論法で沖縄戦が起きた。ノーという言葉を日本に対して、中国に対しても、突きつけてほしい。

自衛隊の南西展開に危ぐ=金城正洋さん
 ロシアによるウクライナ戦争は、大国が隣国に侵攻してくるという現実を見せつけた。そうした中で「台湾有事」をあおる動きが出ている。
 南西諸島に自衛隊を配備し、有事の際にはそこで戦う。島々の住民を避難させるためにシェルター建設も出てきたが、それは現実的と言えるのか。
 台湾が戦場になれば住民たちは近い先島諸島に避難してくることが考えられる。人口2300万人の台湾から、八重山・宮古島あわせて11万人の島々に避難してきた時、受け入れることができるのか。台湾有事の発想には、そういう現実的な問題への視点が抜け落ちているのではないか。
 この間、日本の外交力のなさが目に余る。その結果「防衛力強化」という名ばかりの政策が突出していると危ぐする。
 自衛隊の南西諸島への配備は、局地的な戦争を見据えたものだ。「沖縄だから、先島だからいいんじゃないか」という発想が本土側にあるのではないか。
 復帰50年の今、沖縄が再び戦場となる危機感が高まっている。

「ねじれ」で構図見えにくく=黒島美奈子さん
 直近のニュースを中心に、復帰50年の今の沖縄について考えたい。
 「選挙イヤー」の最後を締めくくった那覇市長選は、自公が推薦する知念覚氏が、オール沖縄が推す翁長雄治氏を破った。前回と前々回オール沖縄の支援で当選した城間幹子市長が、知念氏の支援に回る「ねじれ」の中の選挙。「自公対オール沖縄」の構図は見えづらくなり低投票率の要因にもなった。
 これまでオール沖縄の勝利の背景にあったのは若者と無党派層の存在だ。しかし那覇市をはじめ今年の七つの首長選での敗北からは、それらが失われたことが分かる。
 一方、名護市辺野古の新基地建設反対の民意は健在で、今後は新たな受け皿が必要だろう。
 新基地建設への抗議活動を「座り込み抗議」と表現することに異論を呈したひろゆき氏の行動は、「嘲笑」という新たな形のヘイトを私たちに見せた。
 これまでと異なるのは意図が巧妙に隠されている点で、ひろゆき氏を擁護する人も多い。複雑化するヘイトへの向き合い方が問われている。

戦争阻止報道に覚悟必要=米倉外昭さん
 沖縄が今、取り組むべきこととして指摘されてきたことを三つ挙げたい。
 ひとつは、沖縄振興法による国の予算の一括計上方式をやめること。二つ目が、琉球・沖縄史と、しまくとぅば(沖縄語)を学校教育の中に位置づけること。
 三つ目が、戦争をさせないために沖縄県が自治体外交に本格的に取り組むことだ。
 沖縄のメディアがやるべきこととして個人的に考えていることを述べたい。沖縄の自己決定権確立と戦争阻止のために、これまで以上に踏み込んだ報道・論説を展開しなければならない。特に新聞は経営が厳しくなっている。基地反対の世論も、10年待たずに少数派になるかもしれない。それでも戦争阻止の報道を貫くという覚悟が必要になっていると思う。ネット対応を含め、若い世代に届く、本土に届く報道に挑み続けるしかない。
 今年の慰霊の日に向けて「平和の礎」に刻まれた名前を全てリレーで読み上げる取り組みが大成功した。来年もやるという。まだまだできることがある。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年11月25日号

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2022年12月27日

【オンライン講演視聴後記】3者が恐ろしい人権侵害をつくり出す=橋詰雅博

 『ルポ・収容所列島』(東洋経済新報社)を共著した風間、井艸、辻の3氏によるオンライン講演は、精神医療という医学分野を通じて日本社会の歪みの構図が図らずも明るみに出た。
 自分を守ってくれているはずの家族が後ろで糸を引く。こっそりと民間の「精神科移送業」に依頼し、身内を強引に精神科病院に収容させる。家族と示し合わせている病院の医師は、ロクに本人の説明を聞かずに統合失調症の疑いがあると診断し「医療保護入院」という名の下で拘束する。病院は病床を埋めることで経営を安定させる。精神的に回復しているにもかかわらず退院させないのはそのせいもある。行政も一役買う。「問題な人」を地域から追っ払えばなにより安心だ。
 講演で出なかったが、本には詳しく書かれている。自治体職員と精神科移送業者がタッグを組んで子どもを児童相談所に一時保護するという名目でシングルマザーを精神科病院に送り込んだのである。車内で病院に連れていくと告げられたその女性は子どもの一時保護をめぐり市の職員と言い合いをした際の職員の言葉を思いだした。「これ以上苦情ばっかり言っていると、精神科病院に連れていかれちゃうよ。上司からは『もうやっちゃえ』と言われている。いきなりアポなしでピンポーンって来て、ワゴン車に乗せられて連れていかれちゃうよ」―。
 家族、病院、行政の3者の利害一致が恐ろしい人権侵害を生み出している。
こうしたことが平然と行われることを長年許してきた社会の責任も重大だ。他人事ではないと知る人が増えれば、期待が先行してしまうが歪みの改善は少しでも進むのではないか。そうなってほしいと強く思う。
 橋詰雅博
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2022年12月26日

【オンライン講演】JCJ賞『ルポ・収容所列島』共著の3人が語る  精神医療、収容促す歪み 医療保護入院が問題 風間氏 行政,精神病院を利用 井艸氏 家族が悪用するケース 辻氏=橋詰雅博

                            
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 2022年度JCJ賞を受賞した『ルポ・収容所列島』(東洋経済新報社)の筆者、『週刊東洋経済』編集長の風間直樹(写真上)、東洋経済記者の井艸恵美(中央)、調査報道に特化したNPO法人「Tansa」リポーターの辻麻梨子()の3氏が11月9日JCJオンライン講演会に出演した。日本の精神医療の異常さを語り、多くの視聴者に衝撃を与えた。

女性の手紙で動く

 19年1月編集局内に立ち上がった調査報道部が取材しウエブメディア『東洋経済オンライン』に記事を連載したものをベースにこの本はまとめられた。取材に約3年かけた精神医療の実態に踏み込むきっかけは、編集局に届いた精神科病院に4年近く入院する女性からの手紙だった。この手紙を読んだ2人の女性記者の感想はこうだ。
井艸氏「手紙は文字が丁寧で、書かれた内容も緻密でした。治療は行われていないようで、なぜ長らく精神科病院に入院しているのか不思議に思いました。手紙以外は外部とコンタクトを取れない状態で、受刑者よりも強制されていることに驚いた」、辻氏「旧優生保護法(1948年から96年まで施行)のもとで、精神障害や遺伝子疾患があると決めつけられた方が強制避妊させられた出来事がありました。厄介払いみたいな形で手術されたのですが、これと強制入院は構図が似ています」
 風間さんは彼女と何回か手紙をやり取りした。井艸さんが知り合った精神科患者の支援に熱心な弁護士を介して病院と交渉した結果、退院半年前にようやく面談できた。彼女と会った井艸さんは「面談の部屋は狭い個室。その奥に病棟があり、医師や看護師がいるのだろうと想像しましたが、周りの状況は全く見えません。イメージ通り閉鎖的な空間でした」と話した。単科の精神科病院に入ったのは初めてという風間氏は「最寄りの駅からタクシーで20分ほどの病院は、外来の人の気配がなく、山の中にある。これでは外の目が入る機会がないと思った」という。
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本人の意思無関係

 彼女がなかなか退院できなかった背景に「精神科特有の医療保護入院制度という大きな問題がある」と風間氏は指摘する。この制度について井艸氏は「家族一人の同意と医師の診断があれば、本人の意思とは無関係に人を簡単に精神科病院に入院させることができます。いつ自分の身に起きてもおかしくない」と説明した。辻氏も「本人の意思よりも家族の意思が尊重されるのが非常に問題だと思います。その人を一番理解しているのが本当に家族かと疑問に思う。身内というつながりによって利用されやすい制度です」とその危険さを語った。
 実際、「離婚裁判を有利に運ぶためや財産・子どもの親権目当てに悪用するケースがある」と風間氏は言う。
 精神医療問題では「精神科移送業」という業種が浮かび上がった。民間会社の男たちがある日突然、自宅に上がり込んで人を強制的に精神科病院に連れていく。風間さんは最初それを聞いたとき、都市伝説とかSFの世界のような架空な話ではないかと思ったそうだが、本当の話だった。

民間移送業の実態

風間氏が言う。
 「警備会社がやっている裏仕事≠フようなもので民間救急業と称している。内容が詳しく書かれたパンフレットが精神科病院の受付カウンターに置かれています。4人組とかの警察官OBが本人を羽交い絞めにして強引にワゴン車に連れ込む。5、6時間もかけて遠くの病院に連れていかれるケースもあった。依頼した家族は事前に入院先の医師と話をつけている。家族からの情報がインプットされている医師にいくら本人が説明しても相手にしてもらえず入院に。人権侵害の最たるものではないでしょうか」。依頼主が精神科移送業者に支払うお金は20万円以上が相場だ。
 井艸さんは病院内などでの薬漬けの弊害や児童養護施設・学校で発達障害と診断された子どもたちを落ち着かせるという名目で向神経薬の服用が増加している問題も報告した。
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自治体の判断次第

 精神科病院も行政機関も精神医療の情報開示に後ろ向きだと3氏とも指摘した。とりわけ情報公開の取材に取り組んだ辻氏は「東京精神科病院に加盟する63病院のホームページを調べたところ、医師、看護師の内訳や患者の治療状況が分かるデータを公開していたのはわずか6病院でした。公開していても最低限の情報です」と述べた。全国の精神科病院の現状がわかる唯一の資料は、厚生労働省が都道府県を通じて実施する精神保健福祉調査だ。毎年6月30日の時点での実態を把握するので通称「630(ロクサンマル)調査」と呼ばれる。ところが17年度と18年度の調査が個人情報の保護などの理由で非開示や一部開示だけの自治体があった。私立の精神科病院団体の日本精神科病院協会(日精協)による「圧力」と言われている。19年度以降でも開示を拒む自治体も。その一例はさいたま市だ。「埼玉県は情報開示しているのにさいたま市は一面黒塗り、いわゆるのり弁¥態の資料です。開示できない理由を尋ねても『そう判断した』と答えるだけです。開示するかしないかは自治体の判断、バラつきがあります」(辻氏)
  また井艸氏は「自治体は連携する精神科病院を利用して地域で支えられない面倒な人を入れています。病院だけが悪者ではなく、社会全体にそれを許すムードがあります。もちろん行政側の姿勢も厳しく問われるべきです」と行政と病院の密接な関係に触れた。

「保健所が困る」

精神科医療の総本山である日精協の山崎學会長は、厚労省は言うに及ばず自治体にも強い影響力を持つ。21年7月に放映されたNHKのETV特集「ドキュメント精神病院×新型コロナ」番組内で、山崎会長はこんな発言をしている。
 「精神科医療っていうのは、医療を提供しているだけじゃなくて社会の秩序を担保しているんですよ」「町で暴れている人とか、そういう人を全部ちゃんと引き受けている」「こっちは保安までも全部やっているわけでしょう。(入院を)断ったらどこもとらないし、警察と保健所が困るだけ」
 この山崎会長のコメントについて風間氏は「行政に対する脅しです。保安も担う精神科医療の診療報酬の点数を減らすなど我々に不利なことすると、入院断ります、一番困るのは警察や保健所、わかっていますよね、自治体さんと暗に言っている」と解説した。
 住民にも問題がある。精神科病院の退院者の中には普通の生活ができるグループホームに入る人もいる。この施設を作ろうとすると、危険視するのか反対の声を挙げて施設計画を潰す運動を行う住民もいる。
 風間氏は「結局、収容を容認する日本社会に根深い問題がある」と言い切った。
  橋詰雅博
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年11月25日号

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2022年12月22日

【オンライン講演】統一教会問題はまだ終わっていない 報道の関わり方とは 金平、鈴木、藤森3氏が語る=古川英一

                         
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  統一教会の問題とメディアの関わり方について考えるオンラインシンポジウムが11月13日に開かれた。主催したのは、メディア関係者や市民で作る「NHKとメディアの今を考える会」で、ジャーナリストの金平茂紀さん(写真左)、鈴木エイトさん(中央)、藤森研さん()の3人が顔を揃え、470人が参加した。

まだ「問題」は入口

 まず金平さんが「いまは、統一教会の問題はもういい、あきた、視聴率の数字も取れない、といった空気が社会全体に流れている気がする。本当はまだ問題の入り口に過ぎない」と危機感を訴えた。そのうえで、これまでメディアがこの問題をどう報じてきたのが振り返った。藤森さんは、朝日新聞記者として朝日ジャーナルで1986年から1年間キャンペーン報道を展開。統一教会問題についての初めての本格的な報道になった。それを踏まえ「60年代は人の収奪、70年代は金の収奪、90年代からは堅い信者から巻き上げる、というのがやり方」と述べ「メディアがコンプライアンスジャーナリズムとなる中で、
それが企業防衛・保身となって宗教問題に及び腰になっていった」と問題点を挙げた。
 フリーとして孤軍奮闘、取材を続けてきた鈴木さんは「単なる金銭収奪だけでなく人生そのものまでを奪ってしまうのがカルト団体の一番の問題」と指摘し、「フリーとして客観報道より踏みこんで自分の存在が教会側に影響を与える、というやり方で取材している」と述べた。また2人は統一教会の人たちから尾行されたり、脅しの電話を受けたりしたことなども裏話として語った、

「悪行」暴く報道を

 最後に金平さんは「本質的なところまでいかず事実に蓋をすればまた同じようなことが起きてしまう。メディアはどうしたらよいのか」と提起した。
藤森さんは「教会の悪行は徹底的に暴く、組織ジャーナリズムは調査報道をしなければ社会的な責任は果たせない」と、後輩たちにエールを送った。鈴木さんは「あらゆるものに蓋をせず追いかけていく。被害者を社会全体でケアしていく、きちんと伝えていけば社会の関心が薄れることはない」と静かな口調ながら確信を持って語った。
  古川英一
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年11月25日号
 

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2022年10月15日

【オンライン講演】シンポジウム「復帰50年 沖縄のいま・これから――沖縄にとって日本とは何か/ジャーナリズムは何をすべきか」 29日(土)午後2時から4時まで 基調提言:作家・池澤夏樹さん

パネリスト:金城正洋さん(ジャーナリスト) 黒島美奈子さん(沖縄タイムス論説副委員長)
司会:米倉外昭さん(琉球新報論説委員)

 今回のシンポは「沖縄の今とこれから」に目を向け、政治・経済に加えて文化的な課題も含めて、沖縄と日本の関係、日本にとって沖縄とは何か、沖縄にとって日本とは何かという、テーマを改めて考える。
  作家の池澤夏樹さんは、1993〜2005年に沖縄に住み、「カデナ」など沖縄を舞台にした小説や多くのエッセーを発表し、政治についても発言してきた。現在、沖縄の文化を世界に向けて発信するサイト「あまくま琉球」に取り組んでいる。池澤さんに、今そしてこれからの沖縄をどのように見ているのか、課題は何か、サイト作りに取り組む理由にも触れながら、基調提言という形で語っていただく。

★参加費:500円 Peatixhttps://imakorekara.peatix.com/?utm_medium=web&utm_medium=%3A%3A%3A1%3A3389235&utm_source=results&utm_campaign=searchを通じてお申込みください。
【なおJCJ会員は無料です。onlinejcj20@gmail.com に別途メールで申し込んでください。】

★パネリスト・司会の略歴
金城正洋さん:1959年、石垣島生まれ。琉球朝日放送記者を経てジャーナリスト
黒島美奈子さん:1970年沖縄県生まれ。93年沖縄タイムス入社。社会部・学芸部・政経部・デジタル編集部を経て現在、論説副委員長
米倉外昭さん:1961年富山県生まれ。1987年琉球新報入社。現在、編集局整理グループ所属、論説委員

主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ) 
  電話03−6272−9781(月水金の午後1時から6時まで)
  メール:office@jcj.gr.jp
デイリーJCJ:http://jcj-daily.seesaa.net/
ホームページ:http://jcj.gr.jp
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2022年10月10日

【オンライン講演】学生たちのウィーン報告 核禁条約会議に参加して 「核共有」日本に強い批判 「私たちもメディアを実感」=吉原 功

 8月27日、オンライン講演会「学生たちのウィーン報告:核兵器禁止条約締約国会議に参加して」を開いた。報告者は中村涼香さん、徳田悠希さん、高橋悠太さんの大学生3人。KNOW NUCS TOKYO(KNT)というちょっと変わった名称の活動組織のメンバーだ。KNTには「核のない世界を目指す」「ヒバク(者)の今を知る」「社会課題の解決に新たな一歩を」という思いを込めているという。

「核抑止」論を批判

  結成して約1年、議員との面会、被爆者の証言会開催、署名などの活動をしてきた。6月にウィーンで開かれた核兵器禁止条約の第1回締約国会議に向けて資金を集め、メンバー5人が参加した。現地での行動目標は@ウィーンから最新情報を発信するA被爆国日本からメッセージを届けるB若い世代を中心に国際的なネットワーク構築する――だった。
 締約国会議は6月21日からの3日間で、その前後にICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)主催の市民社会フォーラムや、オーストリア政府主催「核兵器の非人道性に関する国際会議」などの企画があった。3人の学生は分担して催しに参加した。
 講演では概要を徳田さんが報告した。注目ポイントは次の4点。@「核抑止」批判が全体を貫いたA核兵器は「今も続く問題」で「被爆2世3世も被害を受けたコミュニティの一員」という認識B太平洋など核実験の被害地からも若者が多数参加C核保有国を巻き込むためにNPT(核兵器不拡散条約)との補完関係の重要性を確認――だった。

市民と政府が対話

 日本に対しては、浮上する「核共有」論への懸念や、「橋渡しをする」といいながら締約国会議にオブザーバー参加しないことへの強い批判があった。
 同会議は「ウィーン宣言――核兵器のない世界へのコミットメント」および50項目の「行動計画」を採択した。そこにもこれら注目ポイントが盛り込まれた。「市民の集まり」と「政府代表」が対等に議論し、その成果が「宣言」「行動計画」に反映されたということだ。
 ICANフォーラムには600人が参加した。その様子について中村さんは「日本の歴史ある反核運動とはかなり性格も雰囲気も違う」「気楽な雰囲気の中で世界中から集まった人々が安全保障の話をし、ネットーワークを広げている」と報告。カジュアルな雰囲気の会議づくりを「日本に持ち帰って生かしたい」と話した。

被爆者の和服借り

  オーストリア政府主催の「非人道会議」では、被爆3世の中村さんが核被害者としてスピーチした。会場に来れなかった被爆者の女性から借りた和服を着ての登壇だった。帯には「和」「ピース」の文字が書いてある。この和服は注目され、各国大使から声をかけられ、民間外交でのアピール力はすごかったと振り返った。
 この「非人道会議」の会場で、日本外務省課長に「締約国会議に参加を」と迫ったのが高橋さんだ。彼はNPT開催中のニューヨークにも飛び、会議傍聴、各国政府代表との面談、ウィーンで出会った若者15団体と「ユース共同ステートメント」の作成・発表などを行った。「望んだわけでも関わったわけでもない私たちは、核兵器があふれる世界に生まれてその議論への参加も許されていない。<国家の安全>のためでなく<私たちの安全>のために、核兵器の廃絶を!」と訴えた。
 高橋さんは今回「自分たちは(世界に情報を発信できる)メディアである」と実感したとも語った。
  吉原 功
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年9月25日号

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2022年10月08日

【オンライン講演】「国葬」・旧統一教会考えるシンポ 「言論部隊」持つ金集め団体 山口 広氏 幕引き図れば次の事件生む 金平茂紀氏 「国葬」は信者結束させる力に 有田芳生氏

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 「NHKとメディアの今を考える会」は5日、「『安倍国葬』強行は民主主義の汚点!」と題するオンラインシンポジウムを開催した。ズブズブの状態に陥っている自民党と旧統一教会の関係に対する関心は強く、オンラインシンポの参加者は616人に上った。
 シンポジウムには、ジャーナリストの金平茂紀氏と有田芳生氏、弁護士の山口広氏がパネラーとして出席した=写真=。

「旧統一教会」
 当初伝えず

 7月8日の安倍元首相銃撃事件の報道について有田氏は「旧統一教会に関わる事件という情報は得ていた。フランスのフィガロは旧統一教会の名前を出したが、日本のメディアは当初『特定の宗教団体』としか伝えなかった」と批判。
 山口弁護士も「事件当日、あるジャーナリストから『統一教会だよ』と連絡を受け『ホントかよ』と返すほど驚いたが、テレビも新聞も当初、統一教会のトの字も言わない。イギリスの新聞やネットは、旧統一教会をどんどん出しているのに『特定宗教団体』を繰り返すだけだった。」と厳しく批判した。
 金平氏は「特定宗教団体」とリークしたのは奈良県警で、各社の地回り取材で旧統一教会の名前が出ていたが、各社はそれを抑えたと明かした。

 山口弁護士は旧統一教会の特徴と問題点について「統一教会は単なる宗教団体ではない」と述べ、その特徴として「彼らは経済部隊を持ち、献金を集める。献金集めが中心の団体だ。しかも政治部隊を持ち、言論部隊も持っている」と指摘。「創始者の文鮮明は『国際勝共連合』で朴正煕に食い込み、岸信介に食い込み、安倍晋太郎、安倍晋三につなげている」と解き明かした。
 文鮮明はアメリカにも進出、共和党を支援する。ワシントン・タイムズを創刊し、特に父ブッシュ大統領を鼓舞した。韓国でも「世界日報」が一定の全国紙になっている。有田氏は、統一教会がワシントン・タイムズに毎月8億6千万円を送金していた事実を、2007年の統一教会内部資料で明らかにしている。

 1970年から80年代にかけて、統一教会は霊感商法を編み出し、巨額の献金を集めて文鮮明に送金する。しかし、90年代半ば以降、オウム事件などの陰に隠れる形で今日に至る。「空白の30年」ともいわれるが、その間も特に「信仰2世」と呼ばれる子や孫たちが悲惨な人生を強いられる。
 有田氏は「統一教会がカルト集団かどうか。カルトは熱狂的な集団。オウムは破壊的なカルト集団と言われた。統一教会は異常な金集めをやる。70年代半ばに、霊感商法という手口を見つけ、1日20数億円、1か月で2000億円ものカネを集め、文鮮明に送った。統一教会は経済カルトだ」と指摘した。
 信仰2世の容疑
「来るものが来た」

 その結果、信者や信仰2世に何が起きるか。
 山口弁護士は「一番悲惨なのは、信者の子や孫たちの信仰2世だ。安倍襲撃の容疑者が信仰2世と聞き、ついに来るものが来たと思った」と述べた上で「宗教法人法はこのままでいいのか。体系、運用を含めて(旧統一教会のような)宗教法人を解散まで持って行けるのか。何らかの形で法律に盛り込まないといけない」と強調。反社会的な活動を行う団体の解散等に対応できる法整備の必要性を訴えた。
 有田氏は「空白の30年」に関連して、1993年5月に当時の警察庁警備局長が「統一教会と国際勝共連合はやがて大きな社会問題になる」「やがて、摘発する」と明言していたことを明らかにした。
 しかし、山口氏によると、教会本部家宅捜索直前、警察出身の自民党幹部の圧力で「討ち方止め」になったという。金平氏は「ひどい話だ。政治家の圧力が『空白の30年』の要因の一つになったのではないか、というのが有田さんの指摘だ」とコメントした。
 自民党の政治家が旧統一教会と、なぜここまでズブズブの関係になってしまったのか。「そもそも、旧統一教会と自民党政治の目指すものは一致しているのではないのか。根本的な反省なしに、点検とかで幕引きを図ろうとすると、第2、第3の安倍事件が起きるかもしれない」と、金平氏は警鐘を鳴らす。
 反共で結びつき
 政治に入り込む

 有田氏は「文鮮明は1958年に国際勝共連合を創って、反共という接点で自民党と容易に結びついた。旧統一教会の内部資料によると、対策費1億円を計上して女性信者による『PRチーム』を編成し、日本の議員会館で例えば「『子ども庁』ではなく『子ども家庭庁』にしないとダメ」とロビー活動をやっている」と指摘する。
 特に「選挙の支援活動は精力的にやってくれるから、有難い。彼らは自分たちの利益を守るために、日本の政治に入り込もうとしている。自民党の政治家とは深い共存関係はにある」と述べる。金平氏は「自民党と旧統一教会との持ちつ持たれつの関係が、政策を歪める方向に働いている」と、危機感を示す。

 シンポジウムは、岸田首相が強行を企てる「安倍国葬」を議論した。
 まず、有田氏が統一教会の「教え」を引用しながら「山口さんでも私でも、誰でも肉体と霊人体がある。晋三氏は肉体がなくなってこの世にはいないが、霊界では光り輝いている。国葬をやるとさらに光り輝く。国葬をやれば、宗教弾圧を受けている自分たち信者が結束する力になると信じている」と解説。「だから、国葬をやっちゃダメなんです」と力を込めた。
 山口氏は去年9月、安倍氏にこれ以上(旧統一教会との)交流をやめるよう抗議したと明らかにし、「被害者を救済し、被害をこれ以上増やさないために、政治もきちんと節度を持ってやってもらいたい」と岸田首相に強く自粛を求めた。
 金平氏は「国葬となると、法的根拠や人物が国葬にふさわしいかどうかなどを国会で議論すべきだ」と改めて強調し、最近の各社世論調査について「読売が朝日や東京と同様、国葬反対が賛成を上回ったことが興味深い」と述べ、政府に開催を強行しないよう求めた。
  河野慎二
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年9月25日号
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2022年09月02日

【オンライン講演】麻生副総裁が政界仕切る 大宏池会を再興 最大派閥へ 鮫島氏が語る=橋詰雅博

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 7月23日のJCJオンラン講演会で、安部晋三元首相亡き後の政治の行方を元朝日新聞記者で政治ジャーナリストの鮫島浩氏=写真=が語った。
 鮫島氏は7月参院選挙の結果をざっと総括した。@63議席獲得した自民党は一人勝ちA公明党は最大の支持団体・創価学会の会員高齢化で組織力が弱体、党勢ジリ貧傾向にB立憲民主党は総選挙に続き惨敗、自民党倒す気力なし、分裂するエネルギーすらも出てこないC日本維新の会も地盤の大阪以外では伸び悩み展望は暗いD求心力がない国民民主党は自公政権に急接近で生き残りへE共産党は野党共闘にこだわり続けいるようでは党勢落ちるFれいわ新選組はゼロから3議席増だが、野党の中心にはなり得ず組織の足腰も弱い―。そのうえで自民党に対抗できる強力な野党第一党をつくる野党再編が急務だと訴えた。

アベ印≠排除へ

 最大のライバルの安倍元首相の銃撃死により政界のドンに上り詰めた麻生太郎副総裁が岸田文雄首相と協力しながら政治を仕切る。アベ印≠フ政治家や官僚を巧妙に要職から外して安倍派(清和会)を弱体化させ基盤を強固にした麻生―岸田体制の下で何をやるのか。憲法改正を参院選の公約に掲げた岸田首相だが、改憲が悲願の安倍元首相がいなくなったことで、政治情勢は一変した。キングメーカーの麻生副総裁は改憲をスルーしそうだ。

維新の活躍を阻止

 「改憲には日本維新の会の協力が絶対に必要です。麻生は維新のブレーンの竹中平蔵、松井一郎代表とパイプが太い菅義偉前首相とはこれまで経済問題などで激しく対立してきた。大嫌いな維新にペコペコし、活躍の場を与え、政敵の菅復活の道筋をつけるのは麻生にとって身の毛がよだつ話。幸い公明党も学会婦人部の突き上げで改憲に慎重な姿勢は変わらない。麻生は改憲を封印する」(鮫島氏)
 消費税増税が最優先だと鮫島氏は言う。
 「財務相を9年間近くもやった麻生を財務省が最も頼る政治家。麻生にとっても最大の権力基盤でもあり、財務省の用心棒%Iな存在。首相官邸には6人の首相秘書官(事務)のうち2人が財務省から送り込まれている。政務首席秘書官の嶋田隆氏は元経済産業省の事務次官だが、財政再建論者で財務省の考えに近い。岸田首相最側近で官房副長官の木原誠二衆院議員も財務省出身だ。安倍・菅政権時代に権力中枢から外れていた財務省は復権し、麻生を押し立て念願の消費税増税を仕掛けてくるだろう」

悪夢の五党合意も

 財務省は野党対策も抜かりがない。社会保障財源確保のため消費税増税を議論する与野党税制会議を開くなどと連合を介して立民をテーブルに誘う。2012年、消費増税を柱にした自公民3党合意に賛成した旧民主党議員が多い立民は弱みがあり話し合いに応じるだろう。外されたくない維新も国民民主も乗る。5党合意で消費増税が進む悪夢のようなことが起きる可能性がある。 
 財務省は24年秋の自民党総裁選前に、消費税法を改正して増税に踏み込む。物価高と消費増税のダブルパンチを受ける国民の反発で岸田内閣支持率の下落は必至だが麻生副総裁織り込み済み。
 「それまでに宏池会を源流とする麻生派、岸田派、谷垣禎一グループを再結集し、大宏池会の再興を麻生は考えている。最大派閥のボスとして総裁選に臨んで、不人気の岸田から岸田派ナンバー2の林芳正外相を新総裁・新首相に据えて解散に出るシナリオを描いている」(鮫島氏)
 旧統一教会とズブズブな関係も露見した安倍派による政治支配は終わった。麻生副総裁は向かうところ敵なしだが、9月下旬82歳に。健康リスクが高まるだけが不安材料か。
 橋詰雅博
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年8月25日号

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2022年08月06日

【オンライン講演】ウクライナと憲法9条 水島朝穂氏講演 軍事介入「仕組まれた」国家でなく諸国民に信頼=須貝道雄

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 ロシアのウクライナ侵攻が進む中、JCJは6月14日、「ウクライナの戦争と憲法9条」と題し、オンライン講演会を開いた。講師の水島朝穂・早大教授(憲法学)は、この戦争に多額の支援をする米国について@プーチンを挑発して、ウクライナに全面侵攻させ、事前にウクライナ側に準備させておいてこれをたたいたAコロナ禍で落ち込んだ米軍需産業の息を吹き返らせる機会にしている――と語り、仕組まれた戦争の側面を指摘した。
 ロシアのプーチン大統領がウクライナに侵攻する「口実」としたのは、親ロ派の多い東部ドンバス地域(ドネツク州・ルハンスク州)における「住民虐殺」だった。2014年から22年にかけて、ウクライナの武装部隊により「1万4千人殺された」(水島氏)とされる。

侵攻誘う狙いは
アフガンと同じ

 こうした東部での戦闘をウクライナが続ける中で、米国は西側の軍事同盟であるNATO(北大西洋条約機構)の東方拡大を進めた。これらがロシアを刺激し、軍事行動へと誘い込んでいった、と水島氏は分析する。
ロシアの戦車部隊はウクライナ北部から首都、キーウを狙った。しかし侵攻の前年からウクライナには英米の軍事顧問が入り、対戦車兵器「ジャベリン」の準備をしていた。待ち構えたウクライナ軍がジャベリンで戦車を破壊した。
「相手を軍事介入するように仕向ける、罠に引き寄せるやり方は、かつて旧ソ連がアフガニスタンに侵攻した時(1979年)も、米国が密かにとった作戦だ。アフガン侵攻の長期化で、ソ連の国力を衰えさせる狙いがあった。今回も同様だろう」

アゾフ連隊の
不都合な真実

  ロシア軍の侵攻後、ジャベリンを製造する米国のロッキード・マーチンとレイセオンの株価は上がった。バイデン米大統領はこれを秋の中間選挙に向け、有利な材料にしようとしている。「5月にバイデン氏は(ロッキード・マーチンの)工場視察をして激励しています。まさに選挙運動、票固めです」と水島氏は語った。
  激情的あるいは感情的に戦争を見て、冷静さを失うことにも警告を発した。ロシアが侵略しているのは紛れもない事実だが、住民に対する殺戮などがすべてロシア軍によるものかどうかは現時点で即断できない面がある。ロシア軍が子どもを多数連行したり、女性が性暴力を受けたという情報もあったが、その発信者だったウクライナの人権監察官、リュドミラ・デニソワ氏は、ウクライナ最高会議から「証拠が確認されていない」として解任された。
 またウクライナの武装組織、アゾフ連隊の「不都合な真実」にも目を向けるべきだという。アゾフ連隊のマークは、ナチスの第2SS装甲師団「ダス・ライヒ」が使ったマークとそっくりだ。「この師団はフランス中南部の村で住民皆殺しをしたことで知られる。アゾフ連隊はそれらと親近性がある。笑ってはいられない問題だ」と話した。

国の内外から
平和の創造を

では、この戦争をどうしたら止めることができるか。水島氏は日本国憲法前文にある「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼し……」に注目する。「その国の「平和を愛するピープル」と連帯して、内側から平和を創造していくことが大切。ジャーナリズムにも求められる」。ロシアでは「兵士の母の会」が戦争反対の声を上げている。ウクライナでも「前線に立ちたくない」と良心的兵役拒否を訴える人がいる。その力に依拠して平和世論を醸成していく。
 もう一つは、NATOのような集団的自衛権機構(軍事同盟)ではなく、「ミンスク合意」をもたらした地域的集団安全保障の枠組みであるOSCE(欧州安全保障協力機構)の役割がさらに重要になる。日本は米国、G7・NATOに偏った対応に終始しているが、対外政策は、もっと多角的で多様なチャンネルを探るべきだと水島さんは強調した。
 須貝道雄 
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年7月25日号         
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2022年06月08日

【オンライン講演】維新の会なぜ受ける 在阪メディアの劣化 10年余、大阪行政を牛耳る これ以上勢いづかせると危険、松本創さん語る=橋詰雅博

                            
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日本維新の会をウオッチするジャーナリストの松本創(はじむ)さん=写真=は4月16日のJCJオンライン講演会で維新政治や在阪メディアの劣化≠ネどを語った。
  昨年10月の総選挙で公示前の4倍近い41議席を獲得した維新の会。衆院で野党第二党に台頭したこの政党は改憲、軍備拡張、弱者に背を向ける新自由主義を掲げ、ロシアのウクライナ侵攻に乗じた日米による核兵器共有を言い出した。自公政権を補完し、もはや野党とはいえないような党がなぜ国民に受けるのか。

後ろ盾はテレビ
 
松本さんは、維新の地盤である大阪のメディア、とくにテレビが人気に火をつけあおったことが大きな要因と指摘する。維新こそ一番の政敵とみなすれいわ新選組の山本太郎代表は「維新の後ろ盾は完全にテレビなんですよ。維新を怪物にしたのはメディアだなと感じますね」とテレビの責任が重いと断言している。
その典型的な例として毎日放送(MBS、大阪市北区)の今年の元日バラエティー特番「東野&吉田ほっとけない人」を挙げた。出演した維新の創設者の橋下徹元代表、現代表の松井一郎大阪市長、副代表の吉村洋文大阪府知事の3人が吉本興業芸人を相手に「大阪都構想は掲げ続ける」「将来の首相は吉村さん」などと45分にわたり好き勝手に言い放った。政治的な公平性さに欠けるなど局内外からの批判を受けた虫明洋一社長は「問題があった」と認識を示し、社内調査チームを立ち上げた。3月に公表された調査報告書では、維新3人組が出たら面白いからと番組づくりの動機を話した制作スポーツ局担当者らには維新の広報になりかねないという意識すらなかったことが分かった。

報道の意識ない

松本さんはこう言う。
「バラエティー番組が中心の制作スポーツ局ディレクターやプロデューサーは、ジャーナリズム意識を持っていないと思う。だから3人に維新政治を自画自賛させてしまった。若者のテレビ離れが著しいとはいえ、報道に力を入れてきたMBSで視聴率優先の動きが出てきているのは深刻な問題だ。お笑い芸人が司会する在阪民放の報道とバラエティーのミックス番組が維新を盛り立てている」
劣化≠ヘ新聞にも起きた。読売新聞大阪本社は大阪府と府政情報発信など8分野で包括連携協定を昨年暮れに結んだ。権力監視の役割を担う新聞社が監視の対象である大阪府とパートナー関係を築く。大阪を牛耳る維新という権力者へのすり寄りであり、新聞メディアの劣化を象徴する出来事ではないか。
「昨年1月ごろ大阪府に協定の申し入れをした読売は、府の関係機関などへの販売部数拡大と2025年大阪万博への参画による広告・事業収入が狙いではないか。発表で初めて内容を知った読売社内では問題視されなかったという。部数激減で経営が厳しいという背景があるが、新聞が大阪府の広報機関になる恐れがある」(松本さん)

妨げる方策は…

ただし、維新人気は在阪民放の産物という単純な見方はあたらない。関西学院大の善教将大教授は「メディア効果は限定的。吉村知事のテレビ露出で支持が増えたわけではない」と分析。それならば学生から高齢者まで幅広い年代の支持を集める理由は何かと松本さんは、維新支持者らに徹底取材した。明らかになった理由は@国会議員の文書通信交通滞在費(問題に火をつけた吉村知事自身、衆院議員辞職の際、文通費を満額受け取り批判が跳ね返った)や行政組織・労働組合などの既得権益批判と打破A私立高校授業料無償化、公共公園・トイレの改修、中学校給食の導入といった身近な改革B学校の補助金を保護者や生徒に直接給付する新手の行政サービスなどだ。また選挙では維新所属の17人の首長と242人の地方議員が自民党顔負けのどぶ板運動を展開する。大阪の政治行政を10年余も仕切ってきたのでこうしたことが実現できた。

7月参院選を控え維新の勢いを妨げる方策について松本さんは「有権者の4割は態度未定層と見られています。反維新勢力はこの層に働きかけ世論を動かす。主張や理念ではなくファクトで示す。大阪なら例えばカジノが中核のIR(統合型リゾート)施設は、黒字化は54年後という公表データを用いて反対の論陣を張る」と提案した。
維新をこれ以上、勢いづかせると危険だ。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年5月25日号
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2022年04月26日

【オンライン講演】佐渡金山の朝鮮人 強制労働の実情語る 必要機材は自己負担 帰国後に塵肺死亡近も 近代史研究家の竹内康人氏=須貝道雄

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 政府は去る2月1日、新潟県の「佐渡島の金山」を世界文化遺産として国連教育科学文化機関(ユネスコ)に登録を申請した。これに対し韓国から、朝鮮人の強制労働の歴史を無視した申請だと強い批判の声が上がっている。実情はどうだったのか。
 この問題について近代史研究家の竹内康人さんが同月28日、オンラインで講演した。演題は「佐渡鉱山・朝鮮人強制労働」。強制動員真相究明ネットワークが主催した。
 様々な資料からわかるは、1940年から45年敗戦までの間に、1500人を超す朝鮮人が佐渡金山に労働のために来たことだ。自主的にではない。そのプロセスは@金山を経営する三菱鉱業が必要な人数を申請A政府が承認B朝鮮総督府が朝鮮半島での募集先を指定C地元の行政・警察と協力し人を集める――という国家ぐるみの作戦で連れてきていた。
 三菱佐渡鉱山の「労務係手記」によれば、有利な募集地を指定してもらうため朝鮮総督府などに「外交戦術」で接したという。今でいう接待攻勢だ。
 佐渡金山で朝鮮人は削岩、支柱、運搬という坑内労働に数多く動員された。坑内は労働環境が厳しく、事故の危険性も高い。1943年の数字を見ると、坑内労働に従事する朝鮮人は473人で、日本人の3倍以上に及んでいる。
 現場からの逃亡は許されなかった。逃げれば警察から指名手配された。竹内さんは一例として、樺太庁警察部の1941年「警察公報」を紹介した。そこには佐渡金山から逃亡した4人の朝鮮人が指名手配されている記事が出ている。出身地や身長に加え、色白・眉大・丸刈りなどと特徴も記している。
 給料が良い、食事が十分あるといった「甘言」に誘われて来た人もいた。実情が違うことに怒り、労働争議も頻発した。1940年4月のストライキで、三菱鉱業は賃上げの要求に応じなかった。それを見て、争議を取り締まる警察側が会社に改善策を示すことまで起きた。
 警察は三菱鉱業に「仕事を軽減させる」「地下足袋の値段を1円80銭のものは1円に下げる」「カーバイド代((携行用カンテラの燃料費)は19銭を15銭にする」と提案した。三菱は仕事に必要な器材も労働者に負担させていた。坑内労働の日給が2円前後であることを考えると、ばかにならない金額だ。
 争議を起こす朝鮮人に対して鉱山側はどう評価したか、記録がある。それによれば「智能理解の程度が想像以上に低き為」に意思疎通が欠けた、「不良分子」の煽動に乗じて「半島人特有の狡猾性付和雷同性」を現わした、など差別意識と偏見に満ちた内容になっている。
 金山に動員された朝鮮人の名簿から、新潟の市民団体が480人をリストアップし、1991年に韓国で「その後」を現地調査した。18歳の頃に強制徴用されて佐渡に来た男性は、賃金は小遣い程度、食事の量が少なく、空腹が辛かったと回顧した。鉱山で微粒子を長期に吸って塵肺(じんはい)を患う人も多く、ある男性は帰国9年後に塵肺で死亡していた。
 もとになった名簿は「煙草配給台帳」と呼ばれ、佐渡のたばこ店が配給のために持っていた。朝鮮人労働者の実情を調べるには貴重な史料だ。しかし佐渡博物館は今年2月から公開を中止したという。
 「働いた人たちの汗、涙、血でこの社会が作られている。それを示すことが大切だ」と竹内さんは話を結んだ。
 須貝道雄
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年3月25日号
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2022年04月21日

【オンライン講演】辻元節℃武リれよく「批判ばかり」にはひるまない 参院選が分水嶺 野党一本化しないと=藤森研

                             
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  JCJは2月19日、辻元清美・前衆院議員(立憲民主党)を招き、「日本の政治はどこへ」をテーマにオンライン講演会を開いた。昨秋の衆院選で落選した辻元さんだが、歯切れのよい「辻元節」は健在だった。 
 昨秋の衆院選の野党の敗因を聞くと、辻元さんは2点を挙げた。@支持率低下の菅首相相手の「敵失」期待から、自民党総裁選で岸田政権へと直前にムードが変わり、切り替えができなかったA野党躍進の事前予測もあって「政権交代」を掲げたが、「すぐには出来ないでしょ。まず与野党伯仲にして健全な国会議論を」と考える民意とにずれがあったー−。
 岸田政権の評価は、「あまりかわり映えしない」。「安倍政権は異常な政権だった。右派イデオロギー、政治の私物化、野党をおとしめるキャンペーン。それに比べれば、岸田政権は旧来の自民党政権型に戻って、その小型みたいな感じ」

 立憲民主党の泉健太・新執行部については、「相当苦労していると思う。昨秋の衆院選で、野党は路線対立と主導権争いの時代に入ってしまった。日本維新の会という異質な野党も存在する」。
 「『政策立案型』と言うが、批判か提案かではなく、必要なのは両方だ。私の頃も政府提出法案の81%には賛成、対決法案は19%だった。対決ばかりがニュースにはなるが。ただし、『野党は批判ばかり』という批判にひるんで、政府を監視する力が鈍ったら野党としては失格だと思う」
 「衆院選で維新が伸びた。維新の選挙はフランチャイズ。緑のジャンパーを着て『身を切る改革』と叫んでるだけ。あと、徹底的にどぶ板をやる。メディアもゴマをすっている感じで、吉村・大阪府知事をお笑い番組などに出し続けている」
 「トランプ対ヒラリーを思い出す。ヒラリーは守旧派に見え、『既存の政治勢力を壊す』と、トランプが出てきた。維新もそんなポジションを取ろうとしている」
 「立憲民主党は自ら変わって行かないといけない。私は、声を形にすること、問題を可視化し、つながって変革していく姿勢が最も大事だと思う。NPO法や被災者生活再建支援法は、そうやって作ってきた」

 「ジェンダー平等も大事。これは自民党も維新にもできないのでは。男女ともが働きやすくなれば経済成長も促す」
 「選挙では維新は別として、野党は一本化しないと、と私は思う。各地域で一本化の議論は始まっている。連合は、政治がどうのこうのと言う前に、もう少し労働運動に頑張ってほしい」
 「いま最大の課題は、気候変動。各国が協力して止めないと人類滅亡さえありうる」
 「日本では、このままだと安易な改憲の道に行きかねない。『台湾有事になったら』などと言うが、それが起きないようにするのが政治だ。強い野党がつくれるか。今度の参院選が日本の分水嶺だと思う」
 「改憲派はコロナを理由に緊急事態条項をと言うが、世界各国は法律で対処しているのだ。よく言うよ、と思う」
語るほどに話は熱を帯びた。閉会しようとする時、参加者たちから辻元さんに対し期せずして「頑張ってください」という声が挙がった。
  藤森研
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年3月25日号
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2022年04月16日

【JCJ(神奈川支部)オンライン講演会】見直しの声強まる!「リニア新幹線」4月23日(土) 午後2時〜4時

                            
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 リニア新幹線への疑念が膨らんでいます。トンネル建設工事では土砂崩れが岐阜、長野と相次ぎ、「大深度地下だから地表には影響が及ばない。固い地盤を選んでいるから安全」との説明は、2020年10月に東京・調布市の東京外環道建設工事で起きた陥没事故によって破綻に追い込まれました。東京・品川区では10月から深さ40メートル超の大深度地下で川崎方面へトンネルを掘る「調査掘進」が始まっています。
 大井川の流量減少に懸念がある静岡工区では12月の国交省有識者会議の中間報告に静岡県が不満を表明して、着工が見通せません。
全線のほとんどがトンネルであるリニア新幹線建設では、膨大な残土が生まれ、その処理についても懸念されます。残土は多くの谷や川筋に積まれる予定ですが、それが熱海市の土石流事故のような災害を誘発する危険性はないのか。リニア新幹線への心配は増すばかりです。
 JCJ神奈川支部では、リニア新幹線沿線住民ネットワーク共同代表でJCJ会員でもある天野捷一さんに、リニア新幹線の危険性について語っていただきます。全国のJCJ会員はじめ、会員以外でもリニア問題に関心のある方ぜひご参加ください。

講師:天野捷一さん(リニア新幹線沿線住民ネットワーク共同代表)
プロフィール:1969年ラジオ関東(現ラジオ日本)入社。報道部記者、制作部ディレクターなどを経て、営業局長、編成局長など。単組委員長、民放労連副委員長も経験。2010年退社、2011年「リニア新幹線を考える東京・神奈川連絡会」が結成され共同代表。
                            
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参加費:500円
□参加のご希望の方はネットのPeatixで参加費をお支払いください。
(1)https://riniamondai.peatix.com/ をクリック(2)参加券を申し込むをクリック (3)支払いに進む。初めてPeatixを利用する方はアカウントを作成。名前、メルアド、自分独自のパスワードを入力し、ログインする(4)支払い手段の選択(5)Zoomの配信URLを4月22日までにメールでご連絡します。
【注:JCJ会員は参加費無料。onlinejcj20@gmail.com に氏名を明記し、メールでお申し込みください。】
主催 日本ジャーナリスト会議(JCJ)神奈川支部 
問い合わせ :保坂 080‐8024‐2417
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2022年04月01日

【JCJオンライン講演会】「維新政治の深層をえぐる」16日(土)午後2時から4時まで

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講師:松本創さん(ノンフィクションライター)
昨年10月の総選挙の結果で危険な匂い≠感じた。日本維新の会の台頭だ。公示前の4倍近い41議席を獲得したからだ。案の定というべきか、憲法改正に前のめり、ウクライナ危機に乗じ非核三原則を見直して米国の核兵器を国内に配備する「核共有」を言い出した。平和主義を捨て軍拡に向かい、弱肉強食の新自由主義に走る維新。地盤の大阪から全国的に支持を広げようとしている。なぜ維新は支持されるのか。維新政治の本質は何か。『誰が「橋下徹」をつくったか』著者でジャーナリストの松本創さんが解き明かす。

【松本創(はじむ)さん略歴】1970年、大阪府生まれ。神戸新聞記者を経てフリーランスのライター。関西を拠点に政治・行政、都市や文化などをテーマに取材・執筆している。著書に『誰が「橋下徹」をつくったか――大阪都構想とメディアの迷走』(2016年度日本ジャーナリスト会議賞)、『軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い』(第41回講談社本田靖春ノンフィクション賞)など。最新刊の『地方メディアの逆襲』では、地方紙3紙・地方局3局の奮闘や課題をルポしている。
参加費:500円
□参加のご希望の方はネットのPeatixで参加費をお支払いください。
(1)https://sinsoeguru.peatix.com/ をクリック(2)参加券を申し込むをクリック (3)支払いに進む。初めてPeatixを利用する方はアカウントを作成。名前、メルアド、自分独自のパスワードを入力し、ログインする(4)支払い手段の選択(5)Zoomの配信URLを4月15日までにメールでご連絡します。

主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)電話03・6272・9781(月水金の午後1時〜6時) 
メール office@jcj.sakura.ne.jp   ホームページ http://www.jcj.sakura.ne.jp/ 
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2022年03月28日

【JCJ緊急オンライン講演】 写真家・尾崎孝史さんが見た――ウクライナからの報告 31日(木)午後7時半から9時

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 ロシアのウクライナ侵略が始まってから1か月以上が過ぎた。おびただしい数のウクライナ市民が犠牲となっている。1日も早い停戦とロシア軍の撤退を求めたい。市民の命を1人でも救うために。

写真家の尾崎孝史さんは戦火のウクライナに入り、戦争の実情をカメラに収めてきた。最近帰国し、今は家で待機中だ。尾崎さんが見てきたウクライナはどうなっているのか。

参加費500円 参加ご希望の方は下記のPeatixを通じて参加費をお支払いください。
https://ukuraina.peatix.com/ 

◇尾崎孝史(おざき・たかし)さん略歴◇  映像制作者、写真家。NHKでドキュメンタリー番組の映像制作に携わる。「クローズアップ現代+」、「ETV特集」などの番組に写真提供。「おはよう日本」で写真展紹介。著書に『汐凪を捜して 原発の町 大熊の3・11』(かもがわ出版)。組作品『厳冬 警戒区域』で視点賞。写真集『SEALDs untitled stories 未来へつなぐ27の物語』(Canal+)で日隅一雄賞奨励賞。JRP年度賞。2019年5月に岩波書店から「末和 NHK記者はなぜ過労死したのか」を出版。その映像ドキュメンタリー作品も話題を呼んだ。

主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)
電話03・6272・9781(月水金の午後1時から6時まで)
メール:office@jcj.sakura.ne.jp
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2022年03月07日

【オンライン講演】「本当のご飯食べたい」伝わるスーチー氏の言葉 軍政下ミャンマー問題で講演=編集部

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 JCJは1月29日、「ミャンマーの今を知るために――『2度の難民』となった私の体験」と題し、ソー・ティ・ナインさんを講師に招いてオンライン講演会を開いた。
  ソーさんはヤンゴン工科大学の学生だった1988年に民主化運動に参加した。その後、タイに逃れ、朝日新聞バンコク支局に勤めた。96年に初めて来日し難民認定を受けた。
 ミャンマーの民政移管に伴い2013年に帰国。しかし21年2月1日の軍事クーデターにより身の安全が脅かされ、同年10月に再び難民として来日した。

拘束先など不明
講演でソーさんは「私の名前は日本語の想定内に似ている」と自己紹介したうえで、ミャンマーでは想定外のことが起きていると語った。1年前の1月29日に触れ「軍のトラックが多く走り、クーデターかと心配し始めたころ」と振り返った。20年の選挙結果で、今後さらに5年続くと喜んだ民主政治はその3日後につぶされた。
クーデターにより、民主派の指導者のアウンサンスーチーさんは軍に拘束され、裁判で相次いで有罪判決を受けている。ソーさんは「スーチーさんはどこにいるかわからない。いくつか場所を変え、自宅軟禁のような状態とみられる」と話した。
弁護士を通じ伝わってきた彼女の言葉は「本当のご飯が食べたい」だったという。「軍政が出すご飯は食べたくない。国民から支持を得た本当のご飯が食べたいという意味だと私は思う。悲しくて、とても残念なことだ」

クーデター後の死者は2200人以上と推定され、1万1000人がつかまり、拷問などを受けている。当初は鍋たたきデモや職務放棄など平和的手段で軍に人々は抵抗した。今は若者を中心に武力闘争の方向へ動いている。
20年の総選挙で選ばれた民主派議員と各地の少数民族は、協力して昨年4月に軍に対抗する国民統一政府(NUG)を樹立し、連邦制を提唱した。国民防衛隊も結成し、秋には武装闘争を宣言した。
「いつまで続くか、行方を心配している。軍は勝てないだろうが、国民も武力では劣る。各地で軍の空爆も激しくなっている。国際社会からの働きかけを求めたい」

先に軍を止めて
ミャンマーとつながりの深い笹川陽平さん(日本財団会長)に対して「軍を止めてほしい。『沈黙の外交』というが、軍が悪いことをしても何も言わない。これでは平和にならない。スーチーさんとも会ってほしい」と注文した。
ミャンマーに進出した日本企業には「操業を再開しても人々はボイコットするだろう。企業が稼働すれば税金は軍に入り、軍政が長引くからだ。外国企業は全部撤退し、民主化した後に戻ってきてもらいたい。それが人々の思いだ」と呼びかけた。

コメンテーターとして参加したジャーナリストの竹内幸史さん(月刊『国際開発ジャーナル』編集委員)は「亡命政府として生まれたNUGは、今まで実現できなかった連邦制の国をつくるという大きな試みを掲げている。日本政府もその点をきちんと理解し対応すべきだ。私たちもミャンマー国際支援機構というNPOをつくり、NUGとのパイプを築き、民主化支援を進める」と語った。講演会では神田外語大学教授の水野孝昭さんが司会を務めた。
 編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年2月25日号
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2022年01月27日

【オンライン講演】「入管行政の闇」をなくせ 約100人が参加 JCJ12月集会=藤森研

  今年のJCJ12月集会として、「入管行政の闇」をテーマに12月12日、オンライン・シンポジウムを開いた。学生24人を含め98人が参加した。
 パネリストは、今年のJCJ大賞を受けた信濃毎日新聞の牛山健一さんと共同通信の平野雄吾さん。それに、外国人・難民支援活動をしている国際基督教大学1年生の宮島ヨハナさんを含めた3人。進行は藤森研(代表委員)が務めた。
 外国人技能実習生らを取材した信濃毎日の連載「五色のメビウス」デスクの牛山さんは、「日本社会はもう、技能実習生ら外国人の労働に頼らざるをえない。しかし実習生たちは低賃金やパワハラの下で働かされているのが現状だ。母国の送り出し機関に70万円以上の借金を負っており、返す目途が立たずに失踪する人も毎年6千人に上る。多額の借金には、送り出し機関が日本の受け入れ団体に渡す裏金も上乗せされている」と話した。
 失踪した人は非正規滞在者となり、捕まれば入管施設に収容される。平野さんは、入管施設の実態を、ちくま新書『ルポ入管』で明らかにした。
 「コロナで最近は減ったが、2019年6月時点で全国17の入管施設に1253人が収容されていた。施設内では、暴力的な『制圧』や、医療放置が横行している。司法審査なしの無期限収容で、最も長い人の収容は8年に及ぶ」と平野さん。裁判で表に出た「制圧」時の動画も紹介した。被収容者1人を、入国警備官の男たちが数人がかりで押さえつけている場面だった。
 入管施設から「仮放免」で社会に戻る人もいるが、医療保険はなく、就労禁止など制約は大きい。     
 宮島さんは、父親が牧師で仮放免者の保証人を引き受けていたため、幼時から外国人と接していたという。英語の家庭教師をしてくれたカメルーン人女性のマイさんは、一時はホームレスも経験していた。がんに罹患し、高額の治療費は支援者たちが支えたが、今年1月に亡くなった。
 「一人ひとりに人権はあると思う。『不法残留』と呼ぶが、在留資格がないというだけで犯罪者のように呼ぶのはおかしい」と宮島さんは言った。
 平野さんが応じて「メディアも変わらなければと思う。共同配信記事で、私は『非正規滞在』と書くことを押し通して、今は社にも認められた」。牛山さんも「『メビウス』では不法残留や不法滞在でなく、非正規滞在と書くことに決めた」と話した。
 今年3月、スリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが、名古屋入管の医療放置で死亡した。
 平野さんは「ある調査では、被収容者が病院に行きたいと申請してから実際に病院に行くまでにかかる日数は平均14・4日。病院に連れて行くかは『容体観察』と称して職員が判断する。医療放置の大きな要因は、詐病を疑う職員の心理だ」。
 ウィシュマさんの痛ましい死もあって、今年の通常国会で、政府の入管法改正案は廃案となった。
 この改正案の問題を、宮島さんは3点に整理して説明した。「問題の1つ目は送還を拒否した人に刑事罰を科す点。2つ目は監理措置制度の導入。保証人に行動報告を求めるもので、それでは仮放免者と保証人の信頼関係は崩れてしまう。3つ目は、3回以上の難民申請をした人は強制送 還できるとするもので、国際原則に反する。日本の難民認定率はとても低い。改正するなら、抜本改正でなければおかしい」。
 2年前に新設された、労働者として受け入れる「特定技能」については意見が分かれた。「現在の延長上に制度をつくってもあまり変わらないと思う」と平野さんは懐疑的だ。牛山さんは「問題もあるが、特定技能制度をより良くしていく方法もあるのでは」と話した。
 最後に、入管問題に対して、私たちは何をしたらいいのかを聞いた。
 牛山さんは「外国人も私たちもお互いを知り合うこと。各地のボランティアの日本語教室に関わるのもいいし、自治体の交流イベントも知り合うきっかけになる」。
 平野さんは「行政の透明化が大事。情報公開で市民が関心を持ち、みんなが見ているよ、ということが入管も変える」。
 宮島さんは「難民認定を第三者機関がするようにしてほしい。個人個人の向き合い方も大事。さまざまなバックグラウンドの人が日本社会を築き上げているということを認識したい」と話した。
 参加者からは多くの質問が出され、パネリストが丁寧にそれに答えた。
 藤森研
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年12月25日号
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2022年01月15日

ネオ自民∴ロ新が台頭 多党制時代に移り野党再編も 元朝日記者の鮫島さんが語る=橋詰雅博

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 元朝日新聞記者で政治ジャーナリストの鮫島浩さん(写真)が11月のJCJオンライン講演会で総選挙後の政治情勢や先行きの展望などを語った。
 10月の総選挙の結果で「ヤバイ」と思ったのは日本維新の会が公示前の11議席から41議席に増やしたことだ。国政選挙初挑戦した2012年の54議席に及ばないものの14年に獲得した議席と並んだのである。維新は衆院で野党第二党に。自民党よりも右寄りであらゆる分野で競争原理を導入する新自由主義の政党ゆえに危険だ。

一過性でない

ネオ自民≠ェ台頭した理由を鮫島さんは「行政組織や労働組合、マスコミなどの既得権益打破という明確な政策が当たっている。朝日新聞記者時代、私の取材に応じた生みの親の橋下徹は、既得権益に対し怒りと憎しみを強く抱いていた。このとんがった政策が投票率の高い高齢者寄りの政策を掲げる自民党と立憲民主党の2大政党に不満を持つ20代から40代に支持されている。地盤の大阪から全国に支持が広がっている維新の勢いは一過性ではない」と分析した。
 維新の次の狙いは野党第一党である。そのためには立民つぶし≠徹底的に行う作戦だ。立民副代表の辻元清美が落選した原因は、「辻元は何も仕事をしていない」などと維新の猛攻を受けたからである。この先の国政選挙でも立民候補者が出馬する選挙区に狙いを定め落選運動に取り込むだろう。維新の組織力は侮れない。
 「維新は野党第一党の座をつかんだ後、自民党との二大政党政治の実現を目論む。連立も否定できないが、ただ維新は(大阪維新の会含め党歴11年と短く)党内統治能力が弱い不完全な政党だ」。実力以上に議席を獲得すると制御不能に陥るかも。
 改憲勢力の維新は憲法改正論議の促進を岸田文雄政権に提示している。岸田政権も改憲に慎重な与党・公明党へのけん制にもなるので乗ってくるだろう。両党の連携は改憲に向けて弾みがつく恐れがあり要警戒だ。

麻生が牛耳る

 岸田政権は麻生太郎・自民党副総裁が牛耳る。
 「党総裁選の1回目投票で支援した岸田がトップに立ったことで麻生は自信をつけた。党閣僚人事で安倍は最側近の萩生田光一を官房長官に、総裁選で推した高市早苗を幹事長に押し込もうとしたが、実現できなかった。岸田から相談を受けた麻生が拒否したと思う。8年近い長期安倍政権の間、ガマンしてきた麻生は、これからは好きなようにやらせてもらうと思っている。安倍と麻生は盟友関係と言われるが、打算の産物。関係は軋み始めた」
 麻生の野望は同じ宏池会を源流とする岸田派と麻生派の合流により大宏池会≠結成し、キングメーカーとして君臨することだ。チャンス到来と麻生は意気込む。

立民は埋没か

 野党第一党の立民は共産党や山本太郎率いるれいわ新選組に選挙区で譲歩し、強い野党共闘を築くのが役目だ。自分の党だけ議席を増やせばいいという考えは捨てる。しかし一枚岩ではなく展望は開けず。
 来年夏の参院選挙はどうなるのか。
 「自民党は大負けせず、維新と弱者救済に徹するれいわは、それぞれ議席を伸ばす。立民は下手をすると埋没、公明、共産、国民民主は議席減か。選択的夫婦別姓制度の導入などワンイシューに賭ける新党が比例区で議席を獲得する可能性がある」
 多党制時代に移行の政治情勢下で野党再編もあり得る。
 橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年12月25日号
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