2021年09月10日

【東京オリパラ】五輪ボランティアに参加 後ろめたさと楽しさと=小石勝朗

五輪ボランティア.jpg 東京五輪のボランティアは楽しかった。だからこそ、後ろめたい気持ちで参加するのではなく、忌憚なく堪能できるタイミングで開催してほしかったと改めて思う。
 ボランティアに応募したのは、一生に一度のイベントに興味があり、未知の世界の内側をのぞいて多くの人と交流したいと考えたからだ。コロナ禍での開催に不安は募ったが、逆に「こういう状況だからこそ運営の様子を間近で見ておくべきだ」との結論に至った。
 私の役割は「移動サポート」。要するに運転手で、外国を中心とする関係団体の役員クラスが無料で乗れる大会車両を運転した。会期の前後を含めて13日間活動した。
 午前6時から午後11時すぎの間に1日7時間か9時間。築地市場跡の車庫を拠点に、競技会場や選手村、ホテルなどへ車を走らせた。すべてスポンサーのトヨタ車で、ハイブリッドの乗用車やミニバン、それに水素で走る「ミライ」もあった。
 運行はトヨタが開発した「T−TOSS」と呼ばれるシステムが管理した。配車や待機の場所、休憩や帰庫などが、貸与されたスマートフォンとカーナビゲーションの画面で指示される。乗客のIDカードに運転手のスマホをタッチすれば、行き先とルートが車のナビに表示された。
 大会関係者の来日が大幅に減ったせいか、乗り場や車庫での待機時間が長くなった。車庫から出ないまま活動開始から4時間が経ち、休憩になったりもした。
 回送も頻繁にあった。競技会場に多めに車両を手配するため車が余るのだ。休憩時間になると遠くにいても築地の車庫まで戻らなければいけないルールも影響した。私も埼玉県・霞ケ関カンツリー倶楽部(往復約150`)や横浜スタジアム、幕張メッセとの間を誰も乗せずに行き来した。
 システムが指示する配車先はコロコロ変わる。有明で待機中に横浜へ向かうよう指示が出た時には、首都高速に乗った途端に有明の競技場へ行き先が変わり、羽田空港でUターンした。
 待機する運転手は車内にとどまり、季節柄、エンジンと冷房をかけっ放しにする。環境に優しくないことは確かだった。回送は交通量を減らす要請にも逆行し、燃料や有料道路の費用がムダになった。大会車両は約2700台とされ、小さな積み重ねが開催経費を膨らませている気がした。
 安全対策には疑問が残った。ボランティア運転手の条件は普通免許だけで、実技講習は5〜6月に1時間足らず。私は大型2種免許を持つが、一般人がタクシーのような運行をするのは危険だ。実際、8月にはボランティアが首都高速で当て逃げ事件を起こした。
 語学力のなさにコロナ禍が重なり、車内での会話は少なかったが、降車時に感謝の言葉をかけてもらったり、バッジや菓子を渡されたりと小さな交流はあった。普段乗れない車で滅多に訪れない場所へ行けるし、世界的イベントを支えている小さな誇りと高揚感があった。
 運転ボランティアは競技会場に入れず、選手やマスコミ関係者を乗せる機会もない。報道に登場するのは「組織委批判」がテーマの時だけだった。開催に複雑な感情を抱きつつ縁の下で支える普通の人たちの姿を、大会の一断面としてきちんと伝えてほしかった。
  小石勝朗(ライター)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年8月25日号 
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2021年08月30日

【東京オリパラ】世界に恥さらした人格軽視 電通 五輪演出で汚点残す=橋詰雅博

de1.jpg 「五輪開幕直前まで見苦しいドタバタ続きの大会は前代未聞ではないか。仕切った電通は世界に恥をさらした」―ある大会関係者はこう断じた。
 2013年9月にIOC(国際オリンピック委員会)総会で東京開催が決まったのを受けて東京五輪・パラリンピック組織委員会は、14年4月電通にマーケティング専任代理店に指名した。五輪関連の全業務を電通に丸投げ≠オた。
 ビックビジネス到来と浮かれる様子が読み取れる社内文書にはこんな記述があった。
<電通がすべての座組みの中心にたつ。2020年、電通はソリューションカンパニーのポジションを取っているだろう。世界中のあらゆる課題解決依頼はすべて、まず電通に来ることになる>(『週刊文春』8月12・19日特大号)。
 
売り上げ一兆
『電通巨大利権』(サイゾー)などの著書がある元博報堂社員の本間龍さんはこう言う。
「当時の石井直社長は『東京五輪事業で売り上げ一兆円めざす』と全社員にメールした。大儲けの一大イベントになると読んだからでしょう。組織委を実質的に仕切るのは電通だという傲慢な態度が背景にある。東京都やJOC(日本オリンピック委員会)、政府、民間などが組織委のメンバー(最終的に8000人)ですが、人材、モノ、スポンサーの確保などあらゆる面で電通がおぜん立てした。組織委は電通におんぶに抱っこ。組織委への出向者とスポーツ局社員などを含め5、600人が五輪業務に関わった電通は、身勝手で横柄なやり方でことを進めた」
 その中心人物が五輪事業を統括する高田佳夫代表取締役だ。IOCも評価した開会式案を練り上げた女性振付師を追い出した後、高田氏と同期入社の佐々木宏氏(CMディレクター)に演出を一任。佐々木氏はあの侮蔑発言で今年3月に辞任したが、開会式では自身と太いパイプを持つ森喜朗前組織委会長が要望した市川海老蔵氏を出演させ、小池百合子都知事要望の火消し♂縁oを実施し、安部晋三応援団のすぎやまこういち氏が作曲したドラゴンクエストのテーマ曲を流した。

 高をくくった
しかし、佐々木氏辞任だけでは済まなかった。開会式作曲担当の小山田圭吾氏は障がい者いじめ発言で辞任し、開会式前日の22日には佐々木氏が引っ張ってきた演出担当の小林賢太郎氏がユダヤ人虐殺を揶揄する表現で組織委から解任された。ある広告業界関係者は「電通はタレントなどをテレビCMに起用するとき、必ず身体検査≠します。小山田、小林両氏の問題はネット空間で話題になっていた。知らないはずがない。『なんとか乗り切れるだろう』と高を括り見切り発車した」と話した。

目算が狂った
 人権軽視の日本を世界に強く印象付けてしまった。キーパンソンが次々に消えた開閉会式は、センスの悪いショボイ演出。多額の税金を使ってこの程度かと多くの国民を失望させた。
 電通の五輪事業の売り上げも目標を大きく下回りそうだ。
「売り上げは6、7000億円止まりでしょう。最大手スポンサーのトヨタ自動車が国内CMを中止。右にならえの企業が多かった。ご祝儀広告も大手新聞にあまり入らなかった。政府の強行開催の五輪に国民の反発は強かった。企業イメージダウンを恐れたからだと思います。完全に目算が狂った」(本間さん)
 電通は五輪演出で汚点を残し、世間の笑い者になった。
 橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年8月25日号

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2021年07月12日

【スポーツ】五輪代表 苦難の道へ=大野晃

 ついに、異常な東京五輪の開催が目前に迫った。疑問や不安が解消されないまま、五輪代表は競技だけに専念することを強いられた。
 無責任な政府の強引な開催への暴走で、代表には苦難の道が待ち構える。
 開催推進のNHKテレビなどで「メダル獲得で国民を元気づける」と語っても、パンデミック(世界的大流行)の拡大増幅の危険が、科学的、医学的に警告される中で、無批判に出場することの理由にはならない。
 多くの国民の信頼が薄れ、代表たちの複雑な声を無視し続けた日本オリンピック委員会(JOC)は、犯罪的ですらある。
 山下泰裕JOC会長は、代表がネット上で批判を浴びていることを認めて「(金メダル30個)達成は重要ではない。思い切り挑戦してくれればいい」とトーンダウンしたが、挑戦する環境は劣悪だ。
 新型コロナウイルス感染症の拡大防止策で、行動は厳しく制限され、監視の目が光り、自由な準備はむずかしい。ライバルの海外代表やファンとの交流は禁止され、息の詰まるような隔離と検査漬けの毎日が求められる。

 しかも開催国有利な条件で、公平な競争とは言えず、感染の不安は消えない。心配なのは、出場後の競技生活だ。メダルを獲得すれば、無責任に相乗利益を狙うテレビが主導するマスメディアの空騒ぎの中で、一時的に高揚したとしても、国民の評価は別ものだ。
 多くの国民に、競技への理解を求め、さまざまな形で交流を強めて、支援を受けてきた競技者だが、根深い不信で、再び、狭い世界に閉じこもらざるを得ない生活に逆戻りする恐れがある。
 海外からの代表たちは、不慣れな地で、さらに厳しい条件におかれる。日本の印象悪化につながりかねない。開催すべきかどうかが、観客を入れるかどうかに矮小化され、菅政権、小池都政、国際オリンピック委員会は、政治的、経済的利益に汲々とし続けた。
 競技者と国民に分断を持ち込んだ政治的五輪の無謀な開催は、悪夢の遺産となりそうだ。
大野晃(スポーツジャーナリスト)


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2021年06月09日

【東京オリパラ】 五輪中止 外圧頼み?欧米メディアは厳しい論調=志田義寧

 7月23日の開会式まで、あと2ヶ月余りに迫った東京オリンピック。新型コロナウイルス終息の兆しが未だ見えない中で、日本政府はなお「開催ありき」の強硬姿勢を崩していない。動きが鈍い国内メディアとは違い、欧米メディアでは中止を迫る厳しい論調が相次いでおり、「外圧」に頼るしかない状況になっている。
 五輪スポンサーに名を連ねている国内メディアと違って、欧米メディアの主張は辛辣だ。米ワシントン・ポスト紙は5日付のコラムで、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長を「ぼったくり男爵」と呼び、開催国を食い物にする悪い癖があると糾弾。このまま開催すれば費用はさらに膨れ上がるとし、中止して費用を「損切りすべき」と主張した。
 「日本の国内外に死と病気をもたらす3週間のスーパースプレッダーイベントになる可能性がある」と警鐘を鳴らしたのは、米ニューヨーク・タイムズ紙だ。4月12日付の記事で五輪開催を「最悪のタイミング」とし、懸念を表明。同じ日の英ガーディアン紙も「ショーを続けなければならないのか」と題した記事で、人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として開催したいと意気込む日本政府に対して「その約束は楽観的であるだけでなく、まったく間違っているように見える」と痛烈に批判した。
  一部先進国ではワクチン接種が進むに連れ、「脱コロナ」の動きが加速している。しかし、インドでは新規感染者数が世界で初めて1日40万人を超えるなど、世界全体で見れば終息に向かっているとは言い難い。

  ワクチン接種率が先進国最下位レベルで「ワクチン敗戦国」の烙印を押された日本は医療逼迫により一部地域で「命の選択」を迫られる事態に陥っている。米ワシントン・ポスト紙は5日、「なぜ日本はワクチン接種でひどく失敗しているのか」と題したオピニオンを掲載。筆者のウィリアム・ペセック氏はその理由について、ワクチン製造に関する日本政府の失敗や注射実施をめぐる保守的な考え方、安倍晋三前首相と菅義偉首相の構造改革への取り組み不足などを挙げた。
 各種世論調査では、東京五輪を「中止すべき」と「再延期すべき」が6〜8割を占めている。国民が問題視しているのは、医療体制が逼迫している中で開催を強行しようとしていることに加え、開催の可否を判断する明確な基準が示されていないことだ。封じ込めに失敗している政府に「総合的に見て開催を判断した」と言われても誰も納得しないだろう。
  4月下旬には大会組織委員会が看護師500人を派遣するよう求めたことが発覚し、国民から怒りの声が上がった。「医療は限界 五輪やめて!」「もうカンベン オリンピックむり!」。重症患者を受け入れている立川相互病院(東京都立川市)の窓にこんな張り紙が掲示された。国民が望まない中で五輪を強行しても、国民は素直に応援できず、選手が傷つくだけだ。政府は張り紙の悲痛な叫びをしっかりと受け止める必要がある。
 志田義寧
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年5月25日号

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2021年04月29日

【東京オリパラ】「できない」と誰も言わない東京五輪 IOC、政府、都、メディア みな沈黙 戦犯恐れ自己保身 まるで戦争末期=徳山喜雄

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 東京五輪・パラリンピックの開催予定日(7月23日・8月24日)が近づいている。ただ、海外からの観客を見送り、外国選手団もまばらという状態で強行し、「多様性」「平等性」を掲げる五輪憲章の精神が達成できるのであろうか。
 各種世論調査では、8割超の国民が再延期もしくは中止をのぞんでいる。コロナ禍のなか開催を断行したとして、選手村で大規模なクラスター(感染者集団)が発生したらどうなるのか。国内の医療態勢は逼迫している。アスリートや聖火ランナー、ボランティアら関係者のストレスはつのるばかりだ。
 五輪開催の決定権はIOCにある。だが、バッハ会長は判断せずに日本政府に丸投げしている。菅義偉首相は政権浮揚につながる決着をしたいところだが、長男やNTTによる腹心の総務省幹部への接待問題、コロナ対応のまずさで迷走している。五輪開催地の小池百合子・東京都知事は自らの政治的利益を優先し、「漁夫の利」を狙っているかのようだ。どこを見回しても「五輪の政治利用」が透ける。

 完遂体制

 東日本大震災からの「復興五輪」「コロナに打ち勝った証し」として開催するはずの五輪だったが、そうならないのは自明だ。にもかかわらず、キーマンの誰もが「できない」とはいわない。口火を切った人物が、後々まで責任を負わされる可能性があるからだ。ババ(貧乏くじ)を引いて、「戦犯」にされたくないという、アスリートや国民の気持ちを無視した自己保身が横たわっている。
 新聞や放送などのマスメディアも「できない」論を語ろうとはしない。朝日や読売、毎日、日経といった大手メディアが東京五輪オフィシャルパートナーに名を連ね、報道は「五輪完遂」体制に組み込まれている。戦前の1940年、皇紀2600年にあたる年に企画された東京五輪を彷彿とさせる。戦争で中止になったが、当時の新聞や雑誌は国家総動員体制のもと、国威発揚に血道をあげた。
 「大本営発表」を垂れ流すかのような後追い報道に終始し、報道が機能していないと言われても仕方がない。そんななかコロナ対策が不十分だとして、島根県の丸山達也知事が聖火リレーの「中止発言」をし、五輪開催にも反対だと表明した。勇気ある発言で直後に約330件の意見が県に寄せられ、7割が「よくいった」などと知事に好意的だったという。
 聖火リレーは福島を皮切りに3月25日からはじまり、全国47都道府県を回る予定だ。「島根の乱」によって他府県の知事も同調するのではないかと思ったが、どの知事も様子見をし、大きな変化はみられなかった。

脱無責任

 本誌を発行する3月末には、五輪開催の方向性が決められているかもしれない。だが、後手後手に回り、あまりにも遅くはないか。先の大戦の末期が想起される。戦争を止めなければ日本は廃墟になると分かっていても、責任ある立場の政治家や軍人らは決してそれを口にしなかった。メディアも同様で、「国賊」にされかねないババを引きたくなかったのである。
 報道はアスリートや国民を第一に考え、できないものはできない、無理なものは無理といい、無責任体制の一角から脱するべきだ。さもなければ、五輪報道の失敗として歴史に刻まれよう。
 徳山喜雄
                              
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年3月25日号
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2021年04月06日

【東京オリパラ】森発言に五輪スポンサー反発 名乗った朝日 辞任強く要求 読毎日経「表明せず」=橋詰雅博

                              
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 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長による女性蔑視発言に対してスポンサー企業からも遺憾の声明が次々と出され問題が大きくなった折、2月9日付朝日新聞でオヤッと思う記事を見つけた。その記事はこう書いてあった。<オフィシャルパートナーの1社である朝日新聞社の広報部は「森氏の女性差別発言について、組織委会長をすみやかに辞任するよう求める社説を2月5日付に掲載しています」とコメント。社説では「女性全般を侮辱した責任は極めて重い」と指摘した。>
 朝日の記者が自社の広報部に取材し、それを紙面に載せた形だ。東京オリパラの国内スポンサーはゴールドパートナー(15社)、オフィシャルパートナー(32社)、オフィシャルサポーター(21社)に分かれる。各社は大会組織委と契約し、大会エンブレムを使う権利などが与えられる。オフィシャルパートナーのうち新聞社は朝日以外では読売、毎日、日経も名を連ねる。 
ほかの3社は朝日のようなスタイルで記事を載せているのだろうかと気になったので、読売、毎日、日経に問い合わせた。3社ともそうしたスタイルで記事を載せていないと答えた。ただ、社説でこの問題を取り上げており、3社は明確に示すものとして5日付社説をあげた。読売の見出しは<森氏の決断遅れが混乱広げた>、毎日は<五輪責任者として失格だ>、日経は<あまりにお粗末な森五輪会長の女性発言>。朝日は<森会長の辞任を求める>だ。
 朝日は、森会長辞任を強く要求した。
東京五輪問題に詳しい著述家の本間龍さんはこう言う。
「スポンサー企業が森会長への反論を相次いで発表した。それに触発された朝日はオフィシャルパートナーとして何か言わなければという思いがああいう紙面になったのでしょう。加えて組織委でやりたい放題だった森会長に一矢報いたいという動機も考えられます。ほかの3社はそこまでの熱意≠ヘなかったのでしょうね。ともあれ大手新聞社が組織委に多額の契約金を支払ってオフィシャルパートナーになったのは、五輪に便乗した紙面づくりで広告をたくさん集めるのが大きな理由です」
 これでは五輪開催の可否など鋭くついた記事を載せられないのは当然だ。
 橋詰雅博
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年3月25日号

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2021年03月01日

五輪開催の是非問えぬメディア スポンサーゆえ腰砕け 使命忘れおざなり報道=後藤逸郎

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 新型コロナウイルス感染拡大が、東京オリンピック・パラリンピック大会と日本の報道機関の存在意義を揺るがせている。
 開催予定日まで半年を切っても世界で感染収束しないのに、国際オリンピック委員会(IOC)と大会組織委員会、政府が推進一点張りに対し、日本の世論は冷ややかな目を向けている。コロナ禍前は「世界一のスポーツ大会」と誰もが認めたオリンピックのブランド価値は今や地に落ちた。そして、国民の視線の先には、感染症流行中のオリンピック開催の是非を問えない報道機関がいる。

足元大きく揺らぐ
 組織委の森喜朗会長の女性蔑視発言と辞任を巡る報道は、オリンピックを相対化できない日本の報道機関の体たらくを浮き彫りにした。
 最終的に森会長は2月12日辞任したが、きっかけとなった日本オリンピック委員会(JOC)での3日の発言の初報は小さかった。翌日の朝日新聞と毎日新聞の社会面3〜4段相当はもとより、読売新聞は第三社会面ベタ記事だった。NHKは3日夜のニュースで女性蔑視発言に触れず、4日早朝に海外の報道を引用する形でようやく伝えた。
 日本の報道機関が批判のトーンを上げたのは、森会長が同日、発言撤回の会見を開いてからだ。ただ、報道の中心は、IOCやスポンサー、米三大ネットワークNBCの動きを伝える形で「批判の声が高まっている」とした。要はオリンピック開催を錦の御旗に、森会長発言を否定してみせた。オリンピックにかこつけなければ批判できない報道機関の足元は、大きく揺らいでいる。
 森会長の問題発言とはこれまでも繰り返されてきた。森会長は1月12日、「世論調査にはタイミングと条件がある」と述べ、共同通信が電話世論調査でオリンピックの延期・中止を望むとの回答が8割だったと報道したことに噛みついた。NHKは翌日、共同とほぼ同数値の世論調査結果を公表し、報道機関の面目を保ったかに見えた。

設問3択から4択
 ところが、森会長の問題発言後の2月8日、NHKと読売が公表した世論調査は異様なものだった。NHKは、オリンピックを「これまでと同様に行う」が8%、「観客の人数を制限して行う」が29%、「無観客で行う」が23%、「中止する」が38%との調査結果を発表した。1月と昨年10月の調査時は「開催」「延期」「中止」の三択の設問だったのを、2月は四択に変更したのだ。
 読売は8日付2面で「五輪『開催』36%、『中止』28%」と報道。設問は四択で、「予定通り開催」が8%、「観客を入れずに開催」が28%、「再び延期」が33%、「中止」が28%だった。昨年3月調査は三択で、「予定通り開催」が17%、「延期」が69%、「中止」が8%で、見出しは「延期が69%」だった。
 いずれの社も調査手法に連続性がなく、統計的な正確さに欠ける。読売の8日付報道は、最も回答が多かった「再延期」も、延期と中止を合わせて開催否定が5割も見出しに取らず、2種類の「開催」の回答を合算し、「中止」を上回る数字を印象づけるものだ。オリンピックが絡むと、報道姿勢が揺らぐのが日本の現状だ。

命運が尽きるかも
 読売、朝日、毎日、日経、産経、北海道新聞がオリンピックのスポンサーを務め、テレビ局が巨額の放映権料をIOCに支払っていることは、周知の事実だ。だが、「平和の祭典」として歓迎されたオリンピックはもはや、感染爆発リスクの高い集客イベントのひとつにすぎない。イベントへの資金提供と自社媒体報道という旧来のビジネスモデルは、コロナで終わった。
 コロナの世界的流行が収まらない中、世界から観客や選手を招いて、なお感染爆発は防ぐ方法をIOCも組織委も政府も示さない。これで開催にまい進するのは、感染爆発リスクと国民の生命・健康を天秤にかける所業だ。有効な対策がない以上、オリンピック中止こそ、これ以上のコロナ感染拡大を食い止める唯一の選択肢だ。
 支持率が低下した菅義偉首相は政権浮揚の手段としてオリンピック開催に縋る。オリンピックの政治利用を止め、国民の生命・健康を守ることは報道機関の使命だ。オリンピックビジネスを優先し続けるなら、日本の報道機関はコロナ収束前に命運が尽きるだろう。
後藤逸郎(ジャーナリスト)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年2月25日号

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2020年12月12日

【東京五輪・パラリンピック】 IOC 五輪中止を打診か 報じない大手メディア 自らスポンサーでは=本間龍

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電通や東京五輪組織委員会内の協力者から、IOC(国際オリンピック委員会)が日本政府、組織委、電通に対し、東京五輪中止の打診をしたという驚くべき内部情報が入ったのは、10月20日だった。
IOCのバッハ会長が、予定通り菅義偉総理大臣との11月16日の会談で正式に伝達したかは分からない。仮に伝達したとしても日本政府が直ちにそれを発表するかどうかは不明だ。正式発表は来年1月頃という情報が流れている。
 その情報が入る前の9月中は、バッハ会長やコーツ副会長は、盛んに東京五輪の実施を吹聴していた。コロナがあっても五輪はやれる、というような楽観的見通しであり、それを受けて日本側の森喜朗組織委会長や菅首相も、五輪は必ずやるという発言を繰り返していた。それがなぜ急に変わったのか。

コロナ猛威で転換
それは、欧州のコロナ感染者が、10月の第2週以降から爆発的に増え始めたからだ。その増加は凄まじく、11月に入ると、主要国のほとんどで外出禁止令やロックダウンが実施された。
 第一波の感染爆発の際に優等生であったドイツも例外ではなく、コロナ対策の司令塔である保健相までもが感染した。 
IOCの本部はスイスのローザンヌにあるが、スイス国内の感染者数も爆発的に増加している。IOC幹部もコロナの猛威を目の当たりにして、認識を改めざるを得なかったに違いない。

32年再度立候補
 10月21日に私がこの情報をツイートし、YouTubeチャンネルで発表すると、予想以上の拡散を見せた。特に反応が早かったのは海外メディアで、米ブルームバーグ、米AP通信、仏ルモンド、独国営第一放送(ARD)などから相次いで取材が入った。国内では日刊ゲンダイがすぐに私に取材し、五輪中止の見通しと2032年への再度の立候補という、電通内で検討されている仰天プランもすっぱ抜いて、さらに話題を集めた。
だが、国内で沸き立ったのはゲンダイとネットメディアだけで、11月になっても大手メディア(全国紙、テレビ局)はスルーを決め込んでいる。全国紙5紙はいずれも五輪スポンサーになっており、新聞社とクロスオーナーシップで結ばれているテレビ局も、間接的に五輪翼賛側に属しているため、中止可能性を深追いしたくないのだ。

仕切る電通に忖度
 ではなぜ大手メディアはこの重要情報をスルーするのか。それは、記事にするためには私に取材しなければならず、そうなると情報元が組織委内部と電通であると書かなければならなくなるのが嫌なのだ(メディアは電通の名を極力報道したくない)。さらに、組織委の側に立ってこの情報を否定すると、もし本当に中止になった場合、取り返しがつかなくなる。
五輪推進の立場からは真っ先にガセネタとして否定したいのだが、私の情報の信憑性を崩す取材力もなく、あからさまに否定もできない。世界中のメディアがどんどん取材に来ているのに、日本国内のメディアが全く動かないのは、異様としか言いようがない。
もちろん、全国紙が中立の立場だったら、そんな心配をする必要はない。ここへ来て、スポンサーになってしまっていることが、まともな報道が出来ない重い足かせになっているのだ。
ちなみに、過去の五輪で報道機関がスポンサーになった例はない。だから今回のように、一社どころか全国紙全部がスポンサーになっているのは、極めて異常な状況なのだ。

伝える責任果たせ
 だが日本政府は、「WITHコロナ五輪」などという世迷い言をキャッチフレーズに、徹底した感染予防をすれば五輪が開催出来るようなプロパガンダを展開している。しかし、そのためには莫大な追加予算と人的資源(医療従事者)の確保が必要であり、所詮、絵に描いた餅に過ぎない。
 招致時に7千億円としていた開催費は、すでに3兆円を超えると言われ、その大半は国民の税金である。そこにさらにコロナ対策費が青天井で計上されるなど、許されるはずがない。メディアはそのことを国民に伝える責任があり、今それをしなければ、報道機関としての信頼を決定的に失うだろう。
 本間龍(著述家)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年11月25日号
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2020年09月04日

【焦点】 「従来のような五輪の開催は無理」東京都医師会長が発言=橋詰雅博

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  東京都医師会の尾崎治夫会長と言えば、安倍晋三首相のコロナ対策に不満をぶちまけた医師だ。自民党支持者でありながら、「無為無策」と痛烈に批判した上で「国には頼らない」とまで言い切った。その尾崎会長、来年の東京五輪・パラリンピック開催について、朝日新聞が主催した8月7日のオンラインイベントでこんな発言をしている。
 「日本だけならコロナを封じ込めることができるかもしれない。しかし、五輪では世界中から選手や役員、観客などが大勢の人が、日本にやってくる。世界のコロナ感染状況は、欧米を始めアフリカ、中東、アジアなどで広がっている。とりわけアフリカの感染者数はそれが本当かどうか不明だ。7月、8月は、はしかや風疹、熱中症などにかかる人が出ます。それにコロナ患者が加わります。これらの患者に対応できる医療体制が心配です。やれる体力が残っていますかね」
 極めて有効なワクチンが出来ない限り「かなり(規模を)制限された五輪にならざるを得ない。皆さんが従来からイメージする五輪ができるかというと無理だと思う」。
 残念だったのは、東京五輪は再延期かあるいは中止にすべきかと会長に対して、朝日の記者が突っ込んだ質問をしなかったことだ。
 橋詰雅博
 
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