メディアの世界をめざす学生向けに、今年もジャーナリスト講座を7回シリーズで開く。沖縄からの報告を除く6回は東京の会場で開催する。予定は次の通り。
▽9月14日午後2時「記者の仕事と昨今のメディア就活事情」、講師は共同通信記者・新崎盛吾さん。築地社会教育会館▽9月29日午後2時「横浜市教育委員会の裁判傍聴妨げ問題にどう迫ったか」、講師は東京新聞横浜支局記者・森田真奈子さんと共同通信文化部記者・團奏帆さん。男女平等センター・ブーケ21▽10月6日午後2時「完璧なエントリーシートが内定への試金石=v(学生限定の講座)、講師は元横浜国立大学教授、元毎日新聞記者・高橋弘司さん。東京の会場を予定(追ってご連絡)▽10月14日午後2時「今、記者に必要なこと――米国・中東取材を踏まえて考える」、講師は毎日新聞編集委員・大治朋子さん。日比谷図書文化館小ホール。。その後も10月26日、11月9日、11月23日と続く。詳細はJCJホームページ(https://jcj.gr.jp/)をご参照ください。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年8月25日号
2024年08月31日
2024年08月12日
【JCJジャーナリスト講座】学生向け 9月14日(土)〜11月23日(土)・全7回 受講生募集 事前の説明会を8月18日(日)夜にオンラインで開きます!
力のあるジャーナリストが巣立つことを願い、日本ジャーナリスト会議(JCJ )は2011年から毎年、学生向けにジャーナリスト講座を開いています。新聞やテレビの記者はどのように取材をし、原稿を書いているのか。仕事の魅力と社会的な役割について講師にお話をしてもらっています。就活向けに「エントリーシートの書き方」など技術的なアドバイスもします。
講座の趣旨:日本ジャーナリスト会議(JCJ )は9月から11月にかけ、マスコミの世界をめざす学生向けにジャーナリスト講座を開きます。全部で7回シリーズです。記者の仕事とはどのようなものか、実際に現場で取材している記者の方々を講師にお招きして、話を聞きます。記者の仕事の面白さ、難しさ、やりがいなどをリアルに伝える講座です。就活に役立つ「エントリーシートの書き方」を伝える講義もあります。学生向け講座ですが、大学などのジャーナリズム研究者や、すでにメディアで取材を始めた若手記者の参加も歓迎します。ジャーナリズムに関心のある市民の参加も受け付けます。
講座の開き方:全7回のうち、6回は東京の会場に集まってのリアルの講義、残り1回は沖縄からの報告で、Zoomを利用したオンライン講座です。全7回の講座のうち、第3回(10月6日開催)を除いて、事後に録画をお送りします。会場参加ができない場合も録画で内容を確認できます。第3回・エントリーシートの書き方の講座は原則、学生限定で開きます。録画はありませんが事後に講義概要など資料をお送りします。
資料代など:参加・資料代は全7回通し参加の学生3,000円(先着30人まで)、6回通し参加の社会人6,000円(同15人まで)です。いくつかの回を単発で受講されたい方は選択参加を選んでください。たとえば9月14日の第1回と10月6日の第3回だけ希望ならば、第1回と第3回の参加を申し込みます。単発での参加は1回当たり学生700円、社会人1,200円です。すべてこのPeatixを通じて手続きしてください。
プログラム:講座の日程は下記の通りです。
【第1回】9月14日(土)午後2時から4時半まで
■テーマ:記者の仕事と昨今のメディア就活事情(講師:共同通信記者・新崎盛吾さん)
新聞労連の委員長を務めていた2014年以降、本業の傍らで記者を目指す学生の就職活動支援に取り組み、約300人の学生をメディア業界に送り出してきた。支援を続ける原点は、30年以上の経験を通じて実感した記者のやりがいと面白さだ。講座では、昨今のメディア就活事情や内定を得るためのノウハウなども、網羅的に紹介する。【事後に録画送付あり】
■講師略歴:あらさき・せいご 1967年生まれ。沖縄県出身、千葉県在住。90年に共同通信入社。山形、千葉、成田支局を経て、社会部で警視庁公安や国交省を担当。イラク戦争、北朝鮮、赤軍派などを取材した。2014年から16年まで日本新聞労働組合連合(新聞労連)委員長を務めた後に復職し、現在はデジタル編成部デスク。法政大学兼任講師、「金曜ジャーナリズム塾」事務局長、「ジャーナリストを目指す日韓学生フォーラム」実行委員。
■会場:築地社会教育会館・第1洋室で(東京メトロ日比谷線・東銀座駅近く)
築地社会教育会館 (東京都中央区築地4−15−1)
東京メトロ日比谷線・都営地下鉄浅草線の東銀座駅下車 6番出口から徒歩5分
都営地下鉄大江戸線・築地市場駅下車 A1番出口から徒歩5分
【第2回】9月29日(日)午後2時から4時半まで
■テーマ:横浜市教育委員会の裁判傍聴妨げ問題にどう迫ったか(東京新聞横浜支局記者・森田真奈子さん+共同通信東京エンタメ取材チーム・文化部記者・團奏帆さん)
横浜市教育委員会が、教員による児童・生徒への複数の性犯罪事件の裁判傍聴に大人数の動員をかけて一般人の傍聴を妨げていた問題。事実を解き明かし、市教委に動員方針を撤回させたのは、複数の報道機関の記者たちによる疑問と取材がきっかけだった。2社の記者が、それぞれどのような問題意識とアプローチで取材を進めたのか紹介する。【事後に録画送付あり】
■講師略歴:もりた・まなこ 2015年入社。愛知県岡崎支局、滋賀県大津支局を経て、2022年8月から横浜支局で司法取材などを担当。在日外国人や性的少数者などの人権問題をテーマにしており、これまでに京都ウトロ放火事件や、在日朝鮮人の空襲体験などを取材した。現在は、フリーランス配達員らの労働問題の取材にも取り組んでいる。
■講師略歴:だん・かなほ 2011年入社。出版社への転職を経て17年から再び共同通信社記者。これまでの勤務地は高松、広島、前橋支局、札幌支社、横浜支局。事件事故や災害、アイヌ民族の置かれている状況などを取材し、横浜では裁判や検察など司法取材を担当した。24年5月から本社東京エンタメ取材チーム・文化部所属。
■会場:男女平等センター「ブーケ21」3階研修室で(東京メトロ日比谷線・八丁堀駅近く)
男女平等センター・ブーケ21 (東京都中央区湊1−1−1)
東京メトロ日比谷線・JR京葉線の八丁堀駅下車 A2・B3番出口から徒歩3分
【第3回】10月6日(日)午後2時から4時半まで
■テーマ:完璧なエントリーシートが内定への試金石=i元横浜国立大学教授、元毎日新聞記者・高橋弘司さん) ※学生限定の講座です
マスコミを目指す就活で成功のカギを握るのは、「いかに中身の濃いエントリーシートを書けるか」です。自分はなぜメディアの世界をめざすのか、何を取材したいのかが明確でないと通過は困難です。一般企業向けとは異なる書き方が求められます。大学でマスコミ志望の学生を数多く指導してきた経験をもとに、講師がノウハウを伝授します。受講生は「同じ目標を持った就活仲間」とともにエントリーシートを互いに講評し合います。講師のアドバイスや講評、助言を受けつつ、自分で内容を磨く中で、入社動機が鮮明になって行きます。
@ マスコミを目指す就活生はエントリーシート(ES)を原則 Wordで書いて、第3回講座の1週間前の 9月29日(日)までにメール添付で高橋宛に送ってください。(メルアド:onlinejcj20@gmail.com)
A 学部1〜2年生はESの提出は不要です。その場合は就活生のES講評に協力してもらうことがあります。
B 既卒の社会人で、2026年春入社をめざして就活中の方は上記アドレスへ事前にメールでご相談ください。
C 個人情報に配慮し、講座の録画はしません。代わりに当日の講義概要を後日、メールでお送りするほか、個別の質問に講師がメールでお答えします。
【ESフォームについて】第一志望の会社を想定して、その会社のESフォームのQ&A形式や質問に添った形で作成すること(まだ固まっていない場合も、最も入りたい会社で)。インターンシップ用のESでも可。2026年3月卒業見込み学生用のESフォームが公開されていない場合は、直近のものを探して参考にしてください。
*問い合わせや疑問点などは、上記アドレスまで
■講師略歴:1981年毎日新聞入社。大阪社会部、調査報道部記者を経て、カイロ、ニューヨーク各支局長、紙面審査委員などを歴任。帯状疱疹の新薬「ソリブジン」による副作用死続出をめぐる薬害調査報道で1994年度日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞受賞。32年の記者生活の後、横浜国立大学で10年間ジャーナリズムを教え、ゼミ生ら卒業生40人以上をテレビ、新聞・通信社などマスコミに輩出した。2023年退官後、放送大学非常勤講師。共著に『自己検証・危険地報道』(集英社新書)、『イスラーム圏で働く』(岩波新書)、『僕らはまだテレビをあきらめない』(緑風出版)など。
■会場:未定(追ってご連絡致します)
【第4回】10月14日(月)午後2時から4時半まで
■テーマ:今、記者に必要なこと――米国・中東取材を踏まえて考える(毎日新聞編集委員・大治朋子さん)
目の前で何が起きているか、何がどう問題なのか――。記者は目を凝らし、観察し、人から話を聞き、資料をあさり、さらに現場に足を運んで確認し、記事にしていく。役所や企業の発表をうのみにせず、独自の力で問題を掘り起こす調査報道が求められる時代でもある。毎日新聞の火曜朝刊にコラム「火論」を執筆する大治記者から、米国、中東での取材経験も踏まえて「今、記者に必要なこと」を話していただく。【事後に録画送付あり】
■講師略歴:おおじ・ともこ 1989年入社。社会部時代に防衛庁(当時)による個人情報不正収集に関する報道で2002年、2003年の新聞協会賞を連続受賞。ワシントン特派員時代には米国による「テロとの戦い」の暗部をえぐる報道でボーン・上田記念国際記者賞を受賞した。エルサレム特派員時代はイスラム国による日本人誘拐事件で元戦闘員らをインタビューし、著書『歪んだ正義 「普通の人」がなぜ過激化するのか』で過激化プロセスについて調査報道。最新刊『人を動かすナラティブ なぜ、あの「語り」に惑わされるのか』ではSNS時代のナラティブのメカニズムについて詳報した。
■会場:日比谷図書文化館4階・スタジオプラス(小ホール)
日比谷図書文化館 (東京都千代田区日比谷公園1−4)
東京メトロ丸の内線・日比谷線の霞ヶ関駅下車、B2出口から徒歩3分
同千代田線の霞ヶ関駅下車、C4出口から徒歩3分
都営地下鉄・三田線の内幸町駅下車、A7出口から徒歩3分
JR新橋駅・日比谷口から徒歩10分
【第5回】10月26日(土)午後2時から4時半まで=オンライン(Zoom)(講師:沖縄でテレビ報道に携わる若手記者(追って詳細をご連絡します))
観光客でにぎわう沖縄県。しかし周囲を見回すと、広大な米軍基地の存在がわかる。日本国内にある米軍専用施設のうち、約7割が沖縄県に集中するという異様な偏在ぶりだ。そのひずみは県民の生活に直接影響する。爆撃機の騒音、ヘリやオスプレイ墜落の恐怖、そして後を絶たない米兵らによる性犯罪や事故。県民投票(2019年)で反対が72%を占めたにもかかわらず、名護市辺野古では新たな米軍基地建設が政府の手で強行されている。島々には自衛隊の配備も進み、戦争の際に標的になるのではないかという住民の不安もある。様々な矛盾を抱えた沖縄で報道を続ける若手テレビ記者に現場からの報告と日々の記者生活を話してもらう。【事後に録画送付あり】
※受講者には開催数日前にZoomのアクセスURLをメールで連絡します
【第6回】11月9日(土)午後2時から4時半まで
■テーマ:ニュースは足元にある――地方紙の役割と魅力(講師:信濃毎日新聞総務局次長・牛山健一さん)※JCJ大賞を受けた「五色のメビウス」連載時の取材班デスク
信濃毎日新聞は毎年、一つの大きなテーマを決めて取材班を編成し、長期連載に取り組んでいる。ここ数年、この連載が高い評価を受けている。外国人労働者の問題を追った連載「五色(いつついろ)のメビウス」は2021年JCJ大賞を受け、翌年も「土の声を 『国策民営』リニアの現場から」がJCJ賞に輝いた。また連載「ふつうって何ですか?―発達障害と社会」が23年度新聞労連ジャーナリズム大賞の優秀賞に選ばれている。長野県下、足元で起きていることを発掘し、そこから出発して全国的な問題提起をする。地方紙ならではの現場主義といえるだろうか。「五色(いつついろ)のメビウス」取材班でデスクをした牛山さんから、地方紙の可能性と魅力についてお聞きする。【事後に録画送付あり】
■講師略歴:うしやま・けんいち 1969年、長野県生まれ。早稲田大卒。1994年、信濃毎日新聞社に入社。佐久・飯山・伊那の各支社局、編集局報道部、東京支社報道部などを経て県政キャップを担当。2014年から報道部デスク(選挙担当など)。20〜21年、外国人労働者を取り巻く問題に切り込んだ連載キャンペーン「五色のメビウス」の取材班デスクを務めた。取材班は21年にJCJ大賞、22年に菊池寛賞を受賞した。東京支社報道部長を経て、24年4月から総務局次長・経営戦略会議事務局長。
■会場:未定(追ってご連絡致します)
【第7回】11月23日(土)午後2時から4時半まで
■テーマ:毒ガス島の記憶」制作で戦争加害を見つめる(講師:TBS調査報道部記者・小松玲葉さん)
2022年の夏、小松記者は瀬戸内海の大久野島(広島県)を91歳の大伯母とともに取材で訪ねた。そこにはかつて日本陸軍の毒ガス工場があった。大伯母は戦時中、学徒動員で島の工場で働き、シンナーの匂いを数倍ひどくしたような異様な匂いをかいだと語る。毒ガスは中国大陸で使用され、多数の犠牲者が出たという。島が示す「加害の歴史」に記者は焦点を当て、ドキュメント「つなぐ、つながる 毒ガス島の記憶」を制作した。取材の様子を聞きながら、戦争の問題を掘り起こす現代的な意味などを考える。【事後に録画送付あり】
■講師略歴:こまつ・あきは 広島県三原市出身。1996年生まれ。横浜国立大学卒業後、2019年にTBSテレビに入社。報道局社会部で、熊本豪雨災害や熱海土石流災害などの災害取材や警視庁取材(少年事件や薬物、交通などの取材)を担当。その後は、文部科学省担当記者として教員の働き方改革や不適切指導の問題、旧統一教会や日本大学をめぐる問題など幅広いテーマを取材。関東大震災から100年にあたり朝鮮人虐殺に関する証言について取材した。2024年7月から報道局調査報道部所属。
■受講応募要項
◯受講料
・学生向け7回通し券 3,000円 ※先着30人まで
・社会人向け6回通し券 6,000円 ※同15人まで
・好きな講座が選べる1回券(複数枚購入可)学生700円 社会人1,200円
◯お申し込み、参加費のお支払いはPeatix(https://kouza2024.peatix.com/)からお願いします。
◯8月18日(日)午後8時から事前説明会を開きます
講座の内容や講師紹介、受講の仕方、申し込み方法などを詳しくお話しする事前の説明会を8月18日(土)夜8時から約1時間、オンラインで開きます。JCJの講座企画スタッフが説明します。どんな質問、疑問でも歓迎です。参加無料です。受講検討の参考にしてください。
説明会へ参加ご希望の方はその旨と氏名、大学名(社会人の方は職業など)を明記して、次のメルアドにメールで申し込んでください。その際、事前に質問を送っていただいてもよろしいです。説明会の場でお答えします。onlinejcj20@gmail.com(須貝宛)
◯会場での講座後には懇親会も開きます
オンライン講座の日を除き、毎回、講座後には講師や企画スタッフを囲んで、参加者同士の懇親会を近くの店で開きます。様々な体験を詳しく聞いたり、細かい疑問・質問をぶつけたりできるまたとない機会です。学生は学割とします。ふるってご参加ください。
◯主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)
〒101‑0061 東京都千代田区神田三崎町3−10−15 富士ビル501号
電話:03・6272・9781(月水金の午後1時から6時)
・ホームページ:https://jcj.gr.jp ・JCJ X(旧twitter):https://twitter.com/jcj_online
・ジャーナリスト講座・お問い合わせ先(担当・須貝):onlinejcj20@gmail.com
2024年02月09日
【ジャーナリスト講座】後半1回分の内容=須貝道雄
原発避難者の今を追う
12月2日は『なぜ日本は原発を止められないのか?』(文春新書)の著者でジャーナリストの青木美希さんを講師に、東京の会場で開いた。札幌市の出身で、1997年に北海タイムスに入り、これまで新聞3社で働いてきた。経済格差の原因を調べたいから記者をめざしたという。
札幌から上京して驚いたのはホームレスに対する冷たさだった。東京スカイツリーの建設中に、近くの川べりで野宿していた男性は行政から立ち退きを求められた。生活保護も打ち切られ、やがて水死体で見つかった。「泳げないし、酒も飲まない人だったのに」と青木さん。
福島原発事故避難者の取材も続けている。福島県いわき市から家族で東京に避難した18歳男性。教師になるのが夢で、学費半額の減額制度を利用し大学に入った。喫茶店のバイト、塾教師など三つの仕事を掛け持ち、年41万円の学費と家族の生活費を稼いだ。だが16年2月に大学が制度の廃止を通告。彼は夢をあきらめ中退した。住宅提供の打ち切りで、父親が離れて働くことになり、中学生の息子が自殺者するケースもあった。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年1月25日号
2024年02月08日
【ジャーナリスト講座】後半2回分の内容=須貝道雄
記者をめざす学生向け23年JCJジャーナリスト講座を10月から6回シリーズで開いた。後半2回を報告する。
「想定外」が糧になる
11月19日は共同通信科学部の寺田佳代記者が災害・事故報道などについてオンラインで講演した。
2018年春の入社で岡山支局に赴任。7月に西日本豪雨に遭遇した。犠牲者が305人に及ぶ「平成最悪の水害」だった。避難所で話を聞いてよいか迷いながらも、倉敷市真備町の老人ホームから避難してきた高齢者を取材し、記事にした。
3カ月後、偶然ホームの関係者と会った。「あの共同通信の記事を書いたのはあなただったんだ。おかげで全国から支援が届いた」と感謝された。全国発信したかいがあった。
事故などの遺族取材では9割超の人が応じてくれない印象だ。だが「心のドア」をノックしないとわからないことがある。「残る1割の人の話を聞きたい」と寺田さん。中国自動車道で起きたスペアタイヤの落下事故で娘と妻を亡くした男性は、事故から2年たった19年に「今でも覚えてくれているとは思わなかった」と言って話をしてくれた。現在も花を贈ったり、電話をもらったりと交流は続いている。
子育て世代にネット配信
東京新聞にはネットで発信する子育て世代向けサイト「東京すくすく」がある。2018年秋に発足し、5年間で5000本の記事を出してきた。同サイト編集長の今川綾音記者が11月27日、オンラインでその狙いを話した。
母親が第1子を出産すると生活は激変する。自由時間が消え、乳児の世話で疲弊し、新聞も読めない。この子育て世代にこそニュースを届けるべきだと今川さんは考えた。自身の育児体験から、スマホで手元に送れば、子をおんぶしながらも記事が読めるはず。それが「東京すくすく」に結実した。
手ごたえはあった。記事を読んでのコメントが1日で500件を超えることも。この5年で最も反響のあった記事は「ぐずる子どもに手を上げて自己嫌悪……そんなあなたに『たたかない子育て』3つのヒント」。コメント数は623件になった。読み手との双方向性を大事にし、親の不安や心配に応える内容をつくってきた。子どもと一緒に映画をみる会、子が泣いても、騒いでもいいコンサートなどイベントも開くようになった。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年1月25日号
「想定外」が糧になる
11月19日は共同通信科学部の寺田佳代記者が災害・事故報道などについてオンラインで講演した。
2018年春の入社で岡山支局に赴任。7月に西日本豪雨に遭遇した。犠牲者が305人に及ぶ「平成最悪の水害」だった。避難所で話を聞いてよいか迷いながらも、倉敷市真備町の老人ホームから避難してきた高齢者を取材し、記事にした。
3カ月後、偶然ホームの関係者と会った。「あの共同通信の記事を書いたのはあなただったんだ。おかげで全国から支援が届いた」と感謝された。全国発信したかいがあった。
事故などの遺族取材では9割超の人が応じてくれない印象だ。だが「心のドア」をノックしないとわからないことがある。「残る1割の人の話を聞きたい」と寺田さん。中国自動車道で起きたスペアタイヤの落下事故で娘と妻を亡くした男性は、事故から2年たった19年に「今でも覚えてくれているとは思わなかった」と言って話をしてくれた。現在も花を贈ったり、電話をもらったりと交流は続いている。
子育て世代にネット配信
東京新聞にはネットで発信する子育て世代向けサイト「東京すくすく」がある。2018年秋に発足し、5年間で5000本の記事を出してきた。同サイト編集長の今川綾音記者が11月27日、オンラインでその狙いを話した。
母親が第1子を出産すると生活は激変する。自由時間が消え、乳児の世話で疲弊し、新聞も読めない。この子育て世代にこそニュースを届けるべきだと今川さんは考えた。自身の育児体験から、スマホで手元に送れば、子をおんぶしながらも記事が読めるはず。それが「東京すくすく」に結実した。
手ごたえはあった。記事を読んでのコメントが1日で500件を超えることも。この5年で最も反響のあった記事は「ぐずる子どもに手を上げて自己嫌悪……そんなあなたに『たたかない子育て』3つのヒント」。コメント数は623件になった。読み手との双方向性を大事にし、親の不安や心配に応える内容をつくってきた。子どもと一緒に映画をみる会、子が泣いても、騒いでもいいコンサートなどイベントも開くようになった。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年1月25日号
2024年01月25日
【ジャーナリスト講座】前篇1回分=須貝道雄
記者をめざす学生向けにジャーナリスト講座を10月から6回シリーズで開いた。その内容を報告する。
時系列で書かない工夫
★作文講座・報道の文章をどう書くか 朝日新聞・教育コーディネータ―の岡田力さんがオンラインで担当。文章論を述べた後、受講生の作文「声」を一つ一つ批評した。冒頭、「作文の秘訣」について作家・井上ひさしさんの言葉を紹介し、「自分にしか書けないこと」を書くのが肝要で、それは自分の経験を字にすることだと指摘した。
学生の作文で多いのは、ことの順番通りに時系列でものを書いてしまうこと。最初は現在から始まり、次の段落で過去にさかのぼるなど変化をつけ、時系列で書かない工夫を心掛けた方がよいと提案した。
また文章を構成する四つの要素@場面・シーンAかぎ括弧でくくる会話B地の文・説明文Cエピソード・経験――を意識し、これらをうまく組み合わせると、文が生き生きすると語った。
作文のテーマである「声」を辞書でひくと、動物の声や虫の声、鐘の声、風の声、世論を示す人々の声と意味は多様だ。与えられた題から連想することが大事で、他の人が使わないだろう「声」を書いた方が目にとまりやすくなると助言した。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年12月25日号
時系列で書かない工夫
★作文講座・報道の文章をどう書くか 朝日新聞・教育コーディネータ―の岡田力さんがオンラインで担当。文章論を述べた後、受講生の作文「声」を一つ一つ批評した。冒頭、「作文の秘訣」について作家・井上ひさしさんの言葉を紹介し、「自分にしか書けないこと」を書くのが肝要で、それは自分の経験を字にすることだと指摘した。
学生の作文で多いのは、ことの順番通りに時系列でものを書いてしまうこと。最初は現在から始まり、次の段落で過去にさかのぼるなど変化をつけ、時系列で書かない工夫を心掛けた方がよいと提案した。
また文章を構成する四つの要素@場面・シーンAかぎ括弧でくくる会話B地の文・説明文Cエピソード・経験――を意識し、これらをうまく組み合わせると、文が生き生きすると語った。
作文のテーマである「声」を辞書でひくと、動物の声や虫の声、鐘の声、風の声、世論を示す人々の声と意味は多様だ。与えられた題から連想することが大事で、他の人が使わないだろう「声」を書いた方が目にとまりやすくなると助言した。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年12月25日号
2024年01月23日
【ジャーナリスト講座】前篇2回分の内容=須貝道雄
記者をめざす学生向けにジャーナリスト講座を10月から6回シリーズで開いた。その内容を報告する。
自分で企画する面白さ
◆記者の仕事と昨今のメディア就活事情 初回は10月9日、東京の会場で開いた。講師を務めた共同通信・新崎盛吾さんの記者歴は30年超。「この仕事に人生をかけて良かったと今でも思える」と記者職の魅力を語った。
いま、新聞記者は「花形の職業」ではない。働き方がブラックだ、新聞の影響力が落ちた、ネットでたたかれる、といった負のイメージがある。しかし、取材して情報を発信する専門職としての仕事はなくならない。新聞も規模縮小はあっても「あと40〜50年はあるだろう」と予測した。
新人で赴任した山形支局で新崎さんは「週に1本暇ネタ(急ぎではない話題)を書く」を目標にした。成田支局時代は空港反対派農民と酒の付き合いを深め「自分の興味にはまった」。これを機に北朝鮮や日本赤軍に関心を持ち、よど号ハイジャック事件やテルアビブ空港乱射事件の犯人のインタビューを手掛けた。「海外の日本人の取材を自分の企画でできた。これが記者の面白さ」と裁量の幅の広さを強調した。
遅い防衛省の情報開示
◆若手記者が取り組む沖縄報道 10月15日にオンラインで開催した。講師のNHK沖縄放送局・宮原啓輔記者は1993年生まれ。2019年、新人で那覇に赴任し、今年から沖縄中部支局(沖縄市)に移り、名護市辺野古の米軍基地建設現場も取材している。
支局から嘉手納基地までは車で10分。平日は朝から上空を旋回する米軍機の騒音に悩まされ、大音量の米国国歌を出勤時に聞く。基地の島を実感している。最近の特徴は「南西諸島防衛強化」に伴い、自衛隊のニュースが増えたことだ。防衛省の関係者は「今まで5年間でやった仕事を、ここ1年でやっている」と話した。
問題は防衛省の情報開示が遅いことだという。前日や前々日になって「しれっと急にプレスリリース(発表文書)を出す」。10月に陸上自衛隊のオスプレイが沖縄に飛来し、初めて石垣島の民間空港に着陸した際も、事前には明示せず、メディアが飛来計画を報じた後に公表した。安全保障は大事というが、ツケを払うのは地元の人たち。そこに目を向けてほしいと思いながら取材していると語った。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年12月25日号
自分で企画する面白さ
◆記者の仕事と昨今のメディア就活事情 初回は10月9日、東京の会場で開いた。講師を務めた共同通信・新崎盛吾さんの記者歴は30年超。「この仕事に人生をかけて良かったと今でも思える」と記者職の魅力を語った。
いま、新聞記者は「花形の職業」ではない。働き方がブラックだ、新聞の影響力が落ちた、ネットでたたかれる、といった負のイメージがある。しかし、取材して情報を発信する専門職としての仕事はなくならない。新聞も規模縮小はあっても「あと40〜50年はあるだろう」と予測した。
新人で赴任した山形支局で新崎さんは「週に1本暇ネタ(急ぎではない話題)を書く」を目標にした。成田支局時代は空港反対派農民と酒の付き合いを深め「自分の興味にはまった」。これを機に北朝鮮や日本赤軍に関心を持ち、よど号ハイジャック事件やテルアビブ空港乱射事件の犯人のインタビューを手掛けた。「海外の日本人の取材を自分の企画でできた。これが記者の面白さ」と裁量の幅の広さを強調した。
遅い防衛省の情報開示
◆若手記者が取り組む沖縄報道 10月15日にオンラインで開催した。講師のNHK沖縄放送局・宮原啓輔記者は1993年生まれ。2019年、新人で那覇に赴任し、今年から沖縄中部支局(沖縄市)に移り、名護市辺野古の米軍基地建設現場も取材している。
支局から嘉手納基地までは車で10分。平日は朝から上空を旋回する米軍機の騒音に悩まされ、大音量の米国国歌を出勤時に聞く。基地の島を実感している。最近の特徴は「南西諸島防衛強化」に伴い、自衛隊のニュースが増えたことだ。防衛省の関係者は「今まで5年間でやった仕事を、ここ1年でやっている」と話した。
問題は防衛省の情報開示が遅いことだという。前日や前々日になって「しれっと急にプレスリリース(発表文書)を出す」。10月に陸上自衛隊のオスプレイが沖縄に飛来し、初めて石垣島の民間空港に着陸した際も、事前には明示せず、メディアが飛来計画を報じた後に公表した。安全保障は大事というが、ツケを払うのは地元の人たち。そこに目を向けてほしいと思いながら取材していると語った。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年12月25日号