2024年03月02日

【月刊マスコミ評・新聞】検察権力を監視できているか=六光寺 弦

 パーティー券裏金事件でまたも問われる「政治とカネ」。岸田文雄首相率いる自民党では、派閥解散すら足並みがそろわない。1月〜2月上旬にメディア各社が実施した世論調査では、自民党に信頼回復は期待できないとの回答が、軒並み7割から8割超に上った。

 民意の不信感は、検察の捜査にも向けられている。
 安倍派のパーティー券収入の裏金化が「派閥ぐるみ」なのは明らかだった。東京地検は派閥事務所を捜索し、幹部の国会議員も聴取した。だが、政治資金規正法違反で訴追したのは事務方の会計責任者だけ。共謀の証拠が得られないことを理由に、派閥幹部の責任は「不問」とされた。
 地検がこの捜査結果を発表した1月19日の直後に朝日新聞が実施した世論調査では、「納得できない」の回答が80%に上った。2週間後の2月初旬の共同通信の調査でも「納得できない」は83%に達した。
 捜査を尽くしたのか、検察はろくに説明していない。「法の不備」を言い訳に、与党議員には手心を加えるのか、との疑念が生じるのは当然だ。

 気になるのは、東京地検の足元で捜査を追ってきた全国紙に、民意と温度差があることだ。
 処分発表の翌1月20日付で全国紙5紙は関連の社説を掲載した。批判の中心が自民党なのはともかく、捜査については「全員を不問に付すのは不公平感が拭えない」(読売)、「多くの国民が結果に納得できないのは当然だ」(日経)との記述が目につく程度だ。
 朝日は、還流側の立件を3千万円で線引きしたことには疑問を呈したが、毎日、産経は捜査への疑問の言及は見当たらない。 検察もメディアが監視すべき公権力なのに、その監視機能を果たしていると言えるだろうか。

 躊躇なく検察を批判したのは、いくつかの地方紙だ。信濃毎日新聞は「捜査は尽くされたのか」との見出しとともに、疑問を具体的に挙げた。京都新聞は「少なくとも裏金工作を管轄する立場にあった(安倍派の)7議員は起訴し、司法の裁きに委ねるべきではないか」と指摘している。
 全国紙は東京で日常的に、検察中枢に密着して取材している。発想が検察と同化、一体化してしまっているのだとしたら危うい。検察の驕りを増長させかねない。
      JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年2月25日号
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2024年03月01日

【月刊マスコミ評・出版】「裏金」問題に対応する資格は?=荒屋敷 宏

 自民党の派閥の政治資金パーティーの「裏金」問題は、政界の深部を激震させている。「しんぶん赤旗」日曜版の報道が突破口となり、カネ集めに狂奔する自民党の醜態が白日の下にさらされているのだ。

 『週刊文春』2月15日号は、「二階俊博に直撃 長男が疑惑団体の会計責任者 『消えた50億円』」の問題に切り込んだ。二階氏は自身の秘書と二階派の会計責任者が既に立件されている。自民党幹事長の在任期間が歴代最長の5年に及んだ二階氏は使途不明の政策活動費50億円を受け取っていた。50億円はどこに消えたのか。選挙対策として地方議員などに渡されるというが、実態の解明は進んでいない。幹事長在任中に二階氏は派閥の議員を36人から46人まで増やしたというから、カネで権勢を拡大したわけだ。

 「裏金」問題に幕引きを図ろうとする姿勢が目立つ岸田文雄首相も火だるまになっている。『週刊ポスト』2月2日号は「爆弾スクープ」と題して「岸田文雄首相の『違法パーティー』収入は322万円! 22年6月の『総理就任を祝う会』で多額の会費を集めながら報告せず――」との記事を掲載した。「この総理に裏金問題に対応する資格はあるのか」と問うている。岸田首相のパーティー収入は約1100万円以上で、自民党広島第一選挙区支部への寄付約322万円、差額の約778万円はどこに消えたのか。
 同誌2月9・16日合併号でも「徹底追及」と題して、岸田首相の名ばかりの会計責任者を直撃取材した記事を掲載している。自民党の脱税疑惑をさらに追及してほしいところだ。

 自民党の裏金問題報道をかき消そうとするかのように公安筋から出てきたのが長年の指名手配犯の逮捕、死亡という報道だった。死人に口なし。このニュースから得られるものは驚くほど少ない。
 『週刊ポスト』2月23日号の「元公安トップが証言『桐島聡をなぜ逃がしたか』」(竹中明洋氏)は、三菱重工ビル爆破事件など1970年代の連続企業爆破事件で東アジア反日武装戦線のメンバーで長らく指名手配を受けていた桐島聡を名乗る男性の騒ぎに一石を投じている。メディアの過剰な報道は何だったのか。元公安調査庁長官の緒方重威氏は、同誌に「彼は組織の幹部メンバーではありませんでした。実はあの三菱重工ビル爆破事件にも桐島は関与していません」と証言している。一連の報道に首をかしげるばかりである。 
    JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年2月25日号
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2024年02月13日

【月刊マスコミ評・放送】NHK ネット業務に不安要因=諸川 麻衣

 昨年10月、総務省の「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」の「公共放送ワーキンググループ(WG)」が、NHKのインターネット活用業務を従来の任意業務から必須業務化する方向性を示した。この取りまとめを受けて放送法が改正されればNHKは、テレビ受像機を持たずパソコンやスマートフォンで放送を視聴する利用者からも、必要な手続きを経た上で受信料を徴収可能になる。

 テレビを持たない世帯が増える中、放送のネット配信は、WGでも論じられた通り、時代の必然、世界的趨勢と言える。しかし、NHKのネット業務の近未来には幾つかの不安要因がある。一つは、NHKの業務拡大は民業圧迫だとしてネットの必須業務化に強硬に反対してきた新聞協会に「配慮」する形で、「ネット業務は放送と同等の効用をもたらすものに限定」と縛りをかけてしまったことだ。これまでNHKは任意業務として文字ニュースの「NEWS WEB」や番組関連サイトなどネットでの多様なサービスを展開し、評価を得てきた。しかし文字ニュースは事実上廃止される方向が固まった。予算の制約を考えると、今後は他のサイトの中にも廃止・縮小されるものが予想される。

 第二に、放送のネット同時配信がとりあえずは地上波放送に限られ、衛星波の同時配信は見送られたこと。前田前会長時代に衛星波のネット配信の準備の予算を計上するという「勇み足」をしてしまったのと逆に、「配信のための権利料負担が大きい」との理由で見送ってしまったのだ。これでは、法改正後も配信内容は現行の「NHK+(プラス)」とほとんど変わらないことになろう。

 NHKが視聴者の要求に応えて経営を維持しようとするのであれば、衛星波のネット配信や独自のネット・サービスなどは早晩欠かせないが、現状ではむしろそれに逆行しつつある。そうした中で少し注目されるのは、能登半島地震後、旧BS103の波を使って総合テレビの地震関連の情報などを放送し始めたことだ。これはあくまで総合波の同時放送に過ぎないが、独自の災害情報を盛り込み、それをネットでも配信することも不可能ではない。そのようなサービスを拡充して社会的に支持されなければ、ネットの必須業務化は公共の利益にもNHKの存続にもつながらない看板倒れに終わりかねない。
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年1月25日号
   
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2024年02月11日

【月刊マスコミ評・新聞】災害多発時代に発想の転換を=山田明

 年初から能登半島で巨大地震が発生し、甚大な被害をもたらした。災害列島日本で、災害多発時代を実感させる。震源に近い志賀原発にも危険が迫った。巨大地震災害の全容はいまだ不明だが、厳冬の地で災害関連死が危惧される。官民一体の迅速な支援が求められる。
 巨大地震の翌日には、羽田空港滑走路で衝突炎上事故が起こった。原因の徹底究明が必要だ。羽田空港の混雑は世界3位で、超過密のなかの大事故である。この事故からも学ぶことは多い。

 今年の元日社説は毎日「二つの戦争と世界」、日経「分断回避に対話の努力を続けよう」のように、戦争と平和に焦点が当たる。日本の現実はどうか。政治を揺さぶるのが、自民党派閥の政治資金パーティをめぐる裏金疑惑である。安倍派だけでなく、自民党全体の「構造汚職」と言える。岸田首相の年頭記者会見からは、「政治とカネ」の問題に正面から取り組む覚悟に見えなかった(毎日5日)。

 岸田政権は超低支持率ながら、大軍拡と強権政治を進めている。昨年末、沖縄県知事の権限を奪う前例のない代執行を強行。「苦難の歴史を歩み、過重な基地負担を押し付けられてきた沖縄で、この国の民主主義が揺らいでいる」(朝日12月29日)。一方、読売は「沖縄県知事は司法の判断に背いて、手続きを拒んでいる以上、国が前例のない法的手段に踏み切るのはやむを得ない」(12月27日)と主張。読売は日本学術会議についても「これ以上、結論の先延ばしを図ろうとするなら、国のリ―ダ―シップで改革を実行すべきだ」(同23日)と。強権政治にお墨付きを与える読売論調を注視。

 「第2自民党」を公言している日本維新の会にも注意が必要だ。災害に便乗して、緊急事態条項など改憲の旗振り役として危険な役割を演じている。維新が推進してきた大阪万博についても批判が高まる。万博より震災対応を優先せよ、万博中止・延期の声がいちだんと高まるが、維新はあくまで推進の立場だ。
 軟弱地盤の夢洲で開催予定の万博は、底なしの負担増と災害リスクが懸念される。何より万博への関心は低調のままだ。気候危機下の災害多発時代にあって、今こそ発想の転換が求められている。 
    JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年1月25日号
    
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2024年01月08日

【月刊マスコミ評・出版】KADOKAWAの反トランス本刊行中止=荒屋敷 宏

 KADOKAWAが2024年1月24日発売予定だったアビゲイル・シュライアー著『あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇』を今年12月5日になって突如、刊行中止としたため、論争が起きている。368ページ、本体価格2300円との近刊情報も告知されていた。

 2020年6月にアメリカで出版された原書の題は「不可逆的ダメージ:私たちの娘を惑わすトランスジェンダーの狂乱」である。確かに、原書や翻訳本の題名だけでもトランスジェンダー差別撤廃を求める人々を激怒させるものだ。出版関係者(出版社勤務・書店勤務・著者等)有志一同(代表・小林えみ氏)から意見書がKADOKAWAに提出され、「アビゲイル・シュライアーが扇動的なヘイターであり、本書の内容も刊行国のアメリカですでに問題視されており、トランスジェンダー当事者の安全・人権を脅かしかねない本書の刊行を、同じ出版界の者として事態を憂慮しています」として対策を求めていた。

 KADOKAWAのホームページには学芸ノンフィクション編集部のお詫びとお知らせが掲載された。「刊行の告知直後から、多くの方々より本書の内容および刊行の是非について様々なご意見を賜りました。本書は、ジェンダーに関する欧米での事象等を通じて国内読者で議論を深めていくきっかけになればと刊行を予定しておりましたが、タイトルやキャッチコピーの内容により結果的に当事者の方を傷つけることとなり、誠に申し訳ございません」

 KADOKAWAが本書の刊行準備で右翼文化人に応援を求めていた。「2週間程前に、KADOKAWAの担当者から手紙と本の原稿を頂きました」とアンドリー・ナザレンコ氏がSNSで告白した。『月刊WiLL』『月刊Hanada』の常連執筆者の間に翻訳本のコピーが出回っていたと聞いて、あきれるほかない。
 産経新聞に頻繁に登場する国際政治学者の島田洋一氏は今年7月に出した著書『腹黒い世界の常識』(飛鳥新社)の第6章「差別とLGBT」でアビゲイル・シュライアー氏の著書を参照しつつトランスジェンダー差別を助長する議論を展開している。右翼出版社が右翼本を出しても誰も文句を言わない。

 今回は、表面的に見ればKADOKAWAの刊行自粛であるが、問題の根は深い。表現の規制は危険である。かと言って、人権侵害や差別を助長する本を野放しにしてよいのか。KADOKAWAまでヘイト本の出版社になるとすれば、日本社会にとって好ましくないことは確かである。
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年12月25日号
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2024年01月07日

【月刊マスコミ評・新聞】慰安婦問題で韓国に筋違いの抗議=白垣詔男

 ソウル高裁は11月23日、旧日本軍「慰安婦」被害者と遺族計16人によって提訴されていた第2次損害賠償請求訴訟で、一審の棄却判決を取り消し、1人当たり約2億ウォン(約2300万円)を賠償するよう日本政府に命じる判決を出した。
 これに対して、新聞では25日の読売だけが「元慰安婦訴訟 国際法を無視した不当判決だ」と題する朝刊社説を載せた。他紙に、この件の社説はなかった。読売社説は「主権国家は他国の裁判権に服さないという『主権免除』の原則に反する判断である。断じて容認できない」と主張する。

 日本政府は、判決が出た直後、駐日韓国大使を通じて、韓国に抗議した。日韓両政府が2015年に合意した「最終的かつ不可逆的な解決」に反するという根拠だ。また、翌26日には、釜山で日韓外相会談があり、この判決に対して上川陽子外相が韓国・朴振(パクチン)外相に「極めて遺憾である」と抗議、韓国政府が「適切な措置」を講じるようよう求めた。
 以上2件の「動き」に対して、これはおかしいと思う。
 まず、読売社説の主張に違和感を覚える。社説では途中で「重大な人権侵害には主権免除が適用されないとの説に沿ったのだろうが」と述べているが、それを「列強が覇を競い合った時代の日本の植民地支配と、国際法違反であるロシアに侵略を同列視すること自体、論外だ」と判決理由を引用して述べている。しかし、「主権免除の原則に反する」と主張するのは、どうだろう。

 毎週「水曜抗議行動」などで、日本政府に元慰安婦に対する誠実な対応を求めている「日本軍『慰安婦』問題解決全国行動」は27日声明を出し、その中で「『主権免除』に対する国際法体系は個人の人権及び裁判請求権の保護を重視し、制限的免除へと変更、発展している」と韓国の今回の判決を支持している。
 また、上川外相が韓国政府に抗議した点については、尊重しなければならない民主主義国家の「三権分立」の大原則を無視した筋違いな発言だ。日韓外相会談の記事を読んですぐ、日本の司法は日本政府に忖度している判決が大多数の現状から判断すると、日本政府は自ら「三権分立」を無視していることを韓国に表明した、恥ずかしいことだと感じた。 
          JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年12月25日号                              
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2023年12月08日

【月刊マスコミ評・新聞】 性加害、沈黙の愚を繰り返すな=六光寺 弦

  旧ジャニーズ事務所元社長の性加害に、マスメディアは当事者性を免れ得ない。沈黙を続け、被害の拡大に加担した。テレビ各局は、曲がりなりにも自己検証した結果を放送している。しかし新聞は鈍い。11月上旬の時点で、組織だった検証の例は見当たらない。
 在京紙や通信社も、芸能分野の取材で、ジャニーズ事務所と日常的にやり取りがあった。出版物や主催イベントにも、所属タレントは登場していたはずだ。

 朝日新聞は9月9日付の社説で「経緯の検証をしないままジャニーズに関わり続けることは、朝日新聞を含め、もはや許されない」と書いた。同紙はこれまで、関連記事の中でゼネラルエディターのコメントや、当時の担当記者の述懐を載せたりはしたが、検証にはほど遠く、第三者の目を通してもいない。
 朝日新聞出版の週刊誌AERAは、表紙にしばしばジャニーズ事務所のタレントを起用していた。10月30日号に「検証」と銘打ち「本誌はなぜ沈黙してしまったのか」の見出しの記事を掲載。わずか2ページで、現編集長個人の反省文としか読めない。

 東京新聞は10月3日付の朝刊に、編集局次長の署名で「ジャニーズ性加害 本紙はどう報じたか」の見出しを付けた記事を掲載したが、第三者のチェックはない。
 読売新聞に至っては、8月31日付の社説で事務所の第三者委員会の報告書について「テレビ局などが出演者を確保できなくなると恐れ、問題を報じなかったことも性加害が続く一因となったと指摘した」と引用。まるで他人ごとだ。
 各紙ともなぜ検証に及び腰なのか。「問われるべきはテレビだ」と考えているのなら見当違いだ。テレビほど深い関係はなかったからこそ、利害に縛られず、忖度を振り切り、元社長の性加害に切り込むべきだった。

 新聞通信各社には外部識者に委員を委嘱した第三者委員会がある。編集責任者の編集権の下で徹底した検証を行い、第三者委員会に提出し、紙面で報じる―。今からでもできることだ。

 新聞は沈黙の愚を繰り返してはならない。編集責任者に労働組合は検証を迫るべきだ。「真実の報道」を掲げるJCJも。マスメディアにかかわる者には皆、逃れられない当事者性がある。
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年11月25日号

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2023年11月05日

【月刊マスコミ評・新聞】大阪万博 準備遅れと大幅経費増=山田 明

 今年の9月は記録的高温だった。「地球沸騰の時代」と言われ、温暖化対策は待ったなしだ。そんな中で,わが国では旧態依然の大規模開発が実施・計画されている。沖縄の辺野古新基地、リニア中央新幹線、明治神宮外苑再開発、大阪湾の夢洲開発など。夢洲開発の厳しい現実に焦点をあてよう。

 大阪湾の人工島・夢洲は、廃棄物・土砂で埋め立てられ軟弱地盤だが、開発の嵐で今にも沈みそうだ。ここで2025年万博が予定されているが、開催まで1年半後というのに、準備が大幅に遅れている。その象徴が海外パビリオン建設の遅れだ。建設が始まった国はまだない。広い会場予定地は閑散としている。岸田首相は8月末、「万博の準備は極めて厳しい状況だ」と指摘し、政府主導で推進する意向を表明したが、果たして間に合うのか。

 問題は開催準備の遅れだけでない。万博会場の建設費、運営費の上振れも大問題だ。建設費は18年の誘致決定時1250億円、20年に会場デザイン変更などで1850億円、さらに2度目の計画修正で2350億円になるという。東京五輪と同じような展開だ。朝日10月1日社説も「万博の経費増 国民にツケを回すのか」「万博開催の是非が問われている深刻な事態」と警鐘を鳴らす。

 大阪府と事業者は9月28日、IRカジノ実施協定を締結。夢洲の万博会場隣に、2030年にIRカジノを開業する計画だ。事業者の要求により、3年後まで違約金なしで撤退できる「解除権」を認め、夢洲の地盤沈下対策などで、事業者は最終決定を先延ばし。こんな曖昧な実施協定を認めた国の責任が問われる。地元では底なしの財政負担、不当な格安賃貸料について、大阪市を相手にした住民訴訟に注目が集まる。ギャンブル後遺症に対する府民の不安は根強く、「カジノはあかん」の声がやまない。

 読売10月7日社説は、「大阪カジノ整備 万博準備への悪影響は必至だ」と問う。万博の開催準備が遅れているのに、その隣で大型工事を始めるのは、さすがに無謀であると。万博開催の本気度も疑われる。
 万博・カジノという夢洲開発は、当初から維新が主導してきた。ここにきて責任逃れをしているが、維新と維新が牛耳る大阪府・市の責任きわめて大きい。
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年10月25日号
       
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2023年11月01日

【月刊マスコミ評・出版】ジャニーズという名の資本主義=荒屋敷 宏

 「読書の秋」である。今年は、これまでに『資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか』(ナンシー・フレイザー著、江口泰子訳、ちくま新書)や『「人口ゼロ」の資本論 持続不可能になった資本主義』(大西広著、講談社+α新書)、『万物の黎明 人類史を根本からくつがえす』(デヴィッド・グレーバー、デヴィッド・ウェングロウ共著、光文社)、『資本主義の次に来る世界』(ジェイソン・ヒッケル著、野中香方子訳)など、大きな視角から現代を問う本が次々と出版されている。豊作といってよいかもしれない。

 『週刊エコノミスト』は、10月3日号から100周年企画と銘打って、経済学者・都留重人氏(2006年逝去)が2003年に発表した論文「ゼロ成長でも生活豊かな社会−21世紀資本主義の行方」を3回にわたり再掲載している。
 都留氏は、@世界人口の動態A資源や環境の制約条件B科学技術の進歩の三つを21世紀の資本主義の規定要因と考えた。かつては資本にとり「外部」であった科学が資本に包摂されて「内部化」される過程が進み、科学=産業革命の時代が到来した。
 都留氏によると、働く人たち一般が社会的存在であることを通して技術革新の媒介役を果たしているという。それをマルクスが「社会的個体の発展」と呼んだという。熟練工の技術がデータ化され、機械に置き換えられ、機械の監視と統御が拡大している動向は日々、目撃するところである。

 ジャニーズ会見で特定記者を指名しない「NGリスト」の存在がNHKのスクープで明らかになった。企業の「組織防衛が働いている」「日本の企業の抱える『ガバナンスの未成熟』」「売り上げ至上主義」(『AERA』10月6日号)と指摘されるなど、ジャニーズ問題は日本型資本主義そのものである。

 テレビ局のジャニーズ担当者に編成や制作の権力が集まり、事務所の意向を社内に伝えて優遇され、役員にまで登用される「ジャニ担」の構造にも日本のメディアの弱点が集約されている。「結局、日本のメディアには調査報道をする力もなく、視聴率や売り上げが上がれば、不正や内部統制の抜け穴など気にしないという経営幹部が多数いた結果、『沈黙』は起きたのだろう」(『週刊エコノミスト』10月17日号で稲井英一郎氏)との意見には一部を保留した上で賛成したくなる。
 調査報道の役割は、重みを増しており、働く人たちはメディアの活躍を願っている。
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年10月25日号
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2023年10月15日

【月刊マスコミ評・放送】まだある 知られざる戦争の悲劇=諸川麻衣

 アジア太平洋戦争を扱ったこの夏のテレビ番組の中から、印象的だったものを幾つか振り返ってみたい。NHKが6月10、17日に放送した『ETV特集 ミッドウェー海戦 3418人の命を悼む』(2回)は、ミッドウェー海戦の日米双方の全戦没者を特定するというかつてない作業で1986年の菊池寛賞を受賞した作家・澤地久枝さんの最近の活動に密着、改めて日米双方の犠牲者と遺族の心中に迫った。「遺族の願いは戦争を繰り返さないこと。そこに敵も味方もない」という92歳の澤地さんの訴えが、「新たな戦前」とさえ言われる今の時期に切実に響いた。

 NHKの『BS1スペシャル “玉砕”の島 語られなかった真実』(8月9日)は、日本の民間人1万3千人以上が命を落としたサイパンとテニアンの戦いを取り上げた。グループ現代の太田直子ディレクターは、遺族の慰霊の旅に30年近く同行取材、膨大な証言を得てきた。捕虜にならないための集団自決、日本兵に強いられて幼な子の命を奪った肉親など、沖縄戦の悲劇が既に両島で起きていたことに慄然とさせられた。また、先住民に犠牲が出た事実も描かれ、「自分たちのせいであなた方に苦難を強いた」との元日本人移民の謝罪の言葉が心に残った。

 8月12、13日の『NHKスペシャル 新・ドキュメント太平洋戦争 1943 国家総力戦の真実』(2回)は、日記などの個人的記録から戦時の兵士・市民の心を探るシリーズの3年目。山本五十六連合艦隊司令長官の撃墜死とアッツ島玉砕が国民に与えた衝撃の大きさ、銃後・戦地を問わず全国民が総力戦に巻き込まれ、悲壮感を高めてゆくさま、予科練の募集、学徒出陣の決定など十代の若者たちが兵士にされてゆく過程をよく伝えた。

 テレビ朝日の8月5日の『テレメンタリー2023 彷徨い続ける同胞』は、フィリピンで日本人の子として生まれながら、戦中戦後の混乱の中で無国籍となってしまった人々の姿を紹介した。「無国籍」2世は最新の調査で493人いるが、出自を立証する資料がないため、日本国籍取得が困難となっている。日本兵の遺骨収集や空襲被害者の救済問題もそうだが、日本政府の戦後処理にどれほど抜け穴があったのかを鋭く問うた。併せて、あの戦争の被害に関してまだまだ私たちの知らないことがたくさん残されていることも痛感した。さまざまなテーマでの、事実の丹念な発掘に今後も期待したい。 
        JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年9月25日号 
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2023年09月29日

【月刊ンマスコミ評・新聞】「歴史修正主義」の原点を感じる=白垣詔男

 関東大震災から100年の9月1日、新聞各紙の社説は、この問題を取り上げた。今年は、震災問題に加え、森達也監督の映画「福田村事件」が話題を呼んでいる。
 朝日は「朝鮮人に関するデマを載せる新聞もあった。社会主義者らが殺傷される事件もあった」「映画『福田村事件』の森達也監督は、状況によって『普通の人、善良な人が悪を犯す。誰でもその要素がある』と話している」と書いた。自戒も含めた文章だろうと解釈したい。
 さらに朝日は、物理学者で随筆家の寺田寅彦の著作「天災と国防」の一文にある「災害に対する警告に対して『当局は目前の政務に追われ、国民はその日の生活にせわしくて、そうした忠言に耳をかす暇(いとま)がなかったように見える』と書いている」と国民はデマを信じる余裕がなかったと伝えている。

  同じような「自戒」はネットが発達した現在のほうがデマの拡散は容易になっているとして毎日「不確かな情報に踊らされることがあってはならない」、西日本「その情報が正しいかどうか。…日頃から、少しでも見極める力を養っておくことが大事だ」と自らも襟を正している。
 しかし、当時、警察官僚だった正力松太郎が「デマ拡散」に関係したとされている読売と、産経は、「朝鮮人虐殺の負の歴史」には全く触れていない。ネット全盛の現代、デマによる大衆行動への警告もない。2社の社説を読む限り、「歴史修正主義」の原点を感じる。
 また、松野官房長官が8月31日と9月1日の記者会見で「関東大震災時の朝鮮人ら虐殺」について、「政府内において事実関係を把握する記録は見当たらない」と他人事のような発言を繰り返したことについて、厳しく批判する新聞は見当たらなかった。この発言を報じなかった新聞もあった。

  松野発言に関して共同通信は1日付で韓国、北朝鮮の反応を送信。韓国では、「最大野党『共に民主党』国会議員らがソウルで記者会見をし『日本政府の責任逃れと韓国政府の無関心』を批判した」と報じた。また「北朝鮮の朝鮮労働党機関紙、労働新聞が、朝鮮人虐殺を非難する長文の記事を掲載し『受難の過去を決して忘れず、千年の宿敵である日本と決着をつけるしかない』と呼びかけた」と伝えた。
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年9月25日号

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2023年08月29日

【月刊マスコミ評・出版】維新批判の文春砲はどこまで続く=荒屋敷 宏

『週刊文春』の孤軍奮闘が目立つ。木原誠二内閣官房副長官の疑惑追及は独走状態で、今度は日本維新の会批判キャンペーンを始めた。岸田内閣の支持率低迷を受けて内閣改造のニュース報道が出始めた。
 文春砲≠ヘ8月10日号で「維新を暴く! 改革政党≠フウソと暗部」の大特集を放ち、8月17日・24日合併号では「維新 馬場代表 社会福祉法人 疑惑の乗っ取りを告発」と連打した。維新の馬場伸幸代表は、気に食わない人物に対して選挙の公認をしないことで有名だという。一方、維新公認で多数の不祥事議員≠ェ出ている。パワハラ、セクハラで立憲民主党から離党に追い込まれた山本剛正衆院議員を維新が公認した例など、枚挙にいとまがない。

 身を切る改革≠竍政治資金の透明性≠掲げるが、維新は政党助成金を受け取った上に、インサイダー事件で逮捕された旧村上ファンドの村上世彰氏から、年間上限2千万円を上回る個人献金を受けていた。叩けばホコリが出る状態だ。神戸学院大の上脇博之教授は、維新議員が月100万円支給される文書通信交通滞在費(現・調査研究広報滞在費)を政党支部に横流しし、選挙を含む私的活動などに充て、公金の私物化をしていると批判している。

 日本維新の会は、不透明な政治資金で身を肥やし、ハラスメント根絶とは裏腹に被害者の声を軽視し、維新代表が社会福祉法人の理事長になるなど、疑問が多すぎる。維新批判の文春砲はどこまで続くだろうか。

 「安倍政治の決算」を特集した8月号が売り切れ続出で増刷した総合誌『世界』は、9月号も興味深い。特集とは別に、防衛大学校教授の等松春夫氏「なぜ自衛隊に『商業右翼』が浸透したか 軍人と文民の教養の共有」と、ライターの木野龍逸氏「汚染水海洋放出は必要なのか」に注目した。
 等松論文は、「危機に瀕する防衛大学校の教育」という話題の論考を発表した経緯の説明である。人文・社会科学系の教養に欠ける幹部自衛官は陰謀論や商業右翼の言説を見抜けないという。『月刊WiLL』や『月刊Hanada』など極右誌への防衛省の現役・元自衛官の登場は常態化しており、見抜けないどころか、意図的ではなかろうか。
 木野論文は、岸田政権が強引に推進する東京電力福島第一原発の汚染水放出計画について、コスト節約のための放出という疑念が消えないと指摘する。反対する漁連に「丁寧に説明」(岸田首相)して解決する問題ではない。 
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年8月25日号
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2023年08月28日

【月刊マスコミ評・新聞】「被爆国の新聞」の自覚はあるか=六光寺 弦

広島市に原爆が投下されて78年の8月6日。松井一実市長はことしの平和宣言で、核抑止論の破綻を直視するよう各国の指導者に求め、脱却を訴えた。湯崎英彦・広島県知事も、核抑止論を強く批判した。主要7カ国首脳会議(G7サミット)の核軍縮文書「広島ビジョン」が、米英仏の核保有を正当化したことへの異議申し立てだ。
核抑止は、保有国首脳が理性を保っていなければ成り立たない。ロシアのプーチン大統領が核を威嚇に使ったことで、その前提は崩れている。

地元紙の中国新聞は6日付朝刊の社説で、核抑止は幻想であると明確に指摘した。同時に、若い世代ほど核保有を容認する空気が広がっているとの危惧を示し、被爆者の体験の掘り起こしと伝承が必要だと強調した。

 全国紙5紙も6日付で社説を掲載したが、趣はかなり異なる。朝日新聞は「核抑止」に「ほころびが著しい」との形容詞を付け、毎日新聞は広島ビジョンについて「被爆者から反発の声が上がったのは当然だ」と書いた。ともに核廃絶を訴えてはいるが、核抑止へのスタンスや、主張の主体性にあいまいさが残る。

 むしろ歯切れがいいのは、核抑止論を肯定する新聞の社説だ。日経新聞は「米国の『核の傘』に頼らざるを得ない現実」と消極的な評価だが、産経は「(政府には)国民を守る核抑止と国民保護の態勢を整える使命がある」と積極評価。松井市長の「抑止の破綻」の表明に触れながら「理想を唱えるだけでは平和を守れない」と論点をずらした。読売は社説で、ロシアが核の使用を踏みとどまっているのは核抑止が機能しているから、との認識を示した。驚くのは、式典の模様を伝える7日付朝刊の1面記事で、松井市長が核抑止の破綻を明言したことに触れていないことだ。ニュースのポイントを、社論と相いれないからと意図的に報じないのであれば、もはや報道とは呼べない。

 G7サミットで「被爆地広島」が世界に広く発信された。世界を俯瞰する視野で見れば、日本の新聞は等しく「被爆国の新聞」のはずだ。だが、全国紙各紙にその自覚はあるのか。核廃絶に向けた被爆者、被爆地の思いや覚悟に対して、ぬぐいがたく「他人ごと感」が漂う。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年8月25日号
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2023年08月25日

【メディア時評】日本のメディア4団体が「生成AIに関する共同声明」を発表=萩山 拓

自由利用の弊害
 8月17日、雑誌協会、書籍出版協会、新聞協会、写真著作権協会が連名で声明を出し、生成AIがもたらす負の影響について触れて、 「著作権法が目的とする文化の発展を阻害する恐れがある」と警鐘を鳴らした。
 いまチャットGPTなどは、現存するインターネット上の大量の記事や画像データを使い、文章や画像をつくりだし、既存の生成AIの訓練だけでなく新たな生成AIの開発に注力している。それができるのは、現在の著作権法で謳う<「著作権者の利益を不当に害する場合」を除き、著作権者の許諾を得ずに利用できる>を活用しているからだといわれている。
 だが、「著作権者の利益を不当に害する場合」の解釈があいまいで、著作権者の利益が還元されないまま、大量のコンテンツが生成されている。

AI利用と著作権保護
 声明では、@海賊版などの違法コンテンツをAIが学習してしまう、A元の作品に類似した著作権侵害コンテンツが生成・拡散される、BAI利用者自身が意図せず権利侵害という違法行為を行う可能性がある、C学習利用の価値が著作権者に還元されないまま大量のコンテンツが生成されることで、創作機会が失われ、経済的にも著作活動が困難になる―などの懸念を挙げ、著作権保護策が改めて検討されるべきだと主張している。
 海外でも、生成AIにどう対応するか、メディアの動きが始まっている。米国ニューヨーク・タイムズ紙は8月3日、利用規約を改定し、自社の記事や写真をAIの訓練のために無断で利用することを禁止すると明記した。また、米国AP通信は7月、チャットGPTを運営するオープンAIと記事提供や技術活用に関する協定を結んでいる。
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2023年08月08日

【月刊マスコミ評・放送】死んだ安倍氏の残したものは「罪」ばかり=三原治

  安倍晋三元首相が選挙活動中に凶弾に倒れた事件から1年。安倍政治は何を残したのか。
ほとんどのニュース番組が、追悼を意識しながら、テレビ報道を委縮させた張本人に対して、今なお忖度した内容がほとんどだ。その中でも、9日のTBS「サンデーモーニング」では、番組冒頭と「風をよむ」で「安倍元総理 死去から1年」を特集した。まずは、旧統一教会と政治の問題にふれ、パネリストの寺島実郎氏が、この団体の本質である反日性を訴え「不思議なのは、安倍元首相のように愛国だとかナショナリズムを語る人たちが、反日を教義とする団体と手を組んでおり、日本人の財産が海外に毎年、数百億円送られている」と斬り込んだ。

 寺島氏は「風をよむ」でも安倍元首相の外交と経済について「ロシアのクリミア併合という2014年が重要で、日本だけが先進国のなかでプーチンを黙認した。それがプーチンを増長させた。アベノミクスではデフレからの脱却を目指して金融をじゃぶじゃぶにしてデフレ脱却しようという政策を日銀まで動かした。その結果が円安で日本の通貨の国際価値が半分になってしまった。
 弁護士の三輪記子氏は、「政権批判が個人に対する悪口みたいに、誹謗中傷のようにとらえられてきた10年。去年、民主主義の危機というのを銃撃事件で感じたが、実は民主主義の危機はもっと前から存在していた。最近の入管法改正にしても、いくら反対しても、声をあげても届かない。無力感を感じる。これを議論しても無駄じゃないかなと思わされてしまう閉塞感がある」と強権的とも言われた安倍政権の問題点を指摘した。

 TBSの松原耕二氏は、「安倍さんは強大な権力を持ったことで異論を封じるような面があった。亡くなったあと別の意味でモノが言えなくなっている。安倍政治の功罪の罪の部分をきちんと見つめることなしに志を継ごうじゃないかというのは物凄く危うい」と、「罪」を強調した。
 その「罪」を羅列すると、特定秘密保護法、安全保障関連法、共謀罪を次々と制定。森友学園疑惑では、赤木俊夫氏が自殺。加計学園疑惑で「国家戦略特区」の制度を悪用し、570億円の国費を投入。「桜を見る会」で自身の選挙活動に国費を濫用。伊藤詩織さんがアベ友の山口敬之氏から性的暴行を受け、それを隠ぺい。メディアへの言論弾圧、格差社会を助長と彼の罪状は限りがない。   
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年7月25日号
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2023年08月06日

【月刊マスコミ評・新聞】マイナ保険証で落ち込む内閣支持率=山田明

 6月21日、通常国会が閉会した。これからの日本を左右する防衛費財源確保法や原発推進法が成立した。岸田政権が進める「大転換」、軍拡・原発回帰の具体化だ。改正出入国管理法とLGBT理解増進法も、骨抜きされて成立。22日の朝日社説は、「世論の賛否が分かれるテーマで、より幅広い合意形成を探る努力はみられず、政権をチェックする立法府の責務が果たされたとは、到底言えない」と指摘する。
 与党の拙速な国会運営だけでなく、日本維新の会と国民民主党の対応には、野党の本分にもとる点があったと批判。「与党の補完勢力とみられても仕方あるまい」と。両党は岸田内閣不信任案にも反対した。

 維新は野党第一党を狙うが、改憲や軍拡(核共有)などでは、自民の煽動役を果たしている。ロイター通信が6月29日電で、維新の馬場代表を「ポピュリスト」と紹介。維新という政党の本質について、国内メディアもシビアに伝えるべきではないか。
 岸田政権の支持率は急激に落ち込んでいる。毎日6月19日によると、支持率は33%で、1ヶ月で12ポイント下落。岸田首相長男の「忘年会問題」もあるが、マイナンバートラブルが影響しているようだ。
 とりわけ現行の保険証が来秋に廃止されることが混乱に拍車をかけている。読売6月7日社説も「マイナ保険証の見直しは、今からでも遅くはない。トラブルの原因を解明し、再発防止に努めるのが先決だ。当初の予定通り、選択制に戻すのも一案だろう」と指摘。医療機関の混乱を回避し、国民皆保険制度を維持させるためにも、現行保険証の廃止はやめるべきだ。

 6月23日の沖縄慰霊の日。玉城デニ―知事の「平和宣言」に注目した。岸田政権のもとで、とりわけ南西諸島への自衛隊基地強化が急速に進んでいる。沖縄が再び戦場になるのではと、不安の声が高まっている。平和宣言では、「沖縄県が築いてきたネットワークを最大限に活用した独自の地域外交を展開し、同地域における平和構築に努めてまいります」と述べた。平和を求める地域外交が、「新しい戦前」にならないためにも欠かせない。
 沖縄に自衛隊配備、もっと伝えてという朝日「声」を本土メディアに伝えたい。
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年7月25日号    
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2023年07月08日

【月刊マスコミ評・新聞】なぜ本人が釈明しないのか=白垣詔男

 岸田文雄首相は首相秘書官の長男・祥太郎を6月1日付で更迭した。5月25日に首相は長男を「厳重注意」して、事態を鎮静化しようとしたが、G7広島サミットで上向きだった支持率が下がり始めると、一転、「更迭」を決めた。
 これらの経緯は、週刊文春が報じてから動き出したもので、当初は首相の動きが鈍く、これまた、いつも批判されている「決断の遅い岸田首相」丸出しの経過をたどった。
 この間、翔太郎はマスコミの前に一切姿を見せず、「後始末の経過説明」はすべて父親の首相が当然のように果たした。

 33歳にもなっている大人が、自分の後始末をすべて親任せというか、子供が親から庇護を受けているように、翔太郎は姿を見せず、本人からの弁明や謝罪は聞かれずじまい。
 子供にこんな甘い岸田家だから、1月の首相外遊の際、随行した翔太郎が公用車でロンドン見物をしたのも今回の異常な行動も、翔太郎は許されると思ったのか。そこには権力を持てば何をやっても許されるというおごりが感じられる。
 この問題を全国紙は朝日を除いて社説で取り上げた。5月30日に毎日「公私混同のけじめは当然」と先鞭を付けると翌31日には「地位の私物化を猛省せよ」(西日本)、「重責を担う自覚を欠いていた」(読売)、「子供じみた行動 情けない」(産経)と、いずれも翔太郎の行動を非難している。

 この中で、産経だけが「報道陣を前に自らの言葉で謝罪すべきである」と翔太郎本人に向けて謝罪を要求した以外は、どこの新聞はじめ他のマスコミには、こうした「本人に向けた主張」は見られなかった。翔太郎が姿を見せないで父親の首相が弁明すれば、それでいいと考えたのだろうか。
 大半の論説担当はじめ政治担当記者の問題意識も「子供に甘い父親」が当たり前と思っているのか。それとも、こうした「不祥事」で当事者は姿を見せなくてもいいと考えているのか、どう考えても腑に落ちない。

 首相になった当初は「私は聞く耳を持つ」と胸を張っていた岸田だったが、こうした世間の常識さえもわきまえていない今回の翔太郎に対する父親としての一件は、「国民の声を聞く」というのが単なる念仏だったのではないかと疑いを深める。(敬称略)
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2023年06月28日

【月刊マスコミ評・出版】 自民党と公明党 ケンカの底流=荒屋敷 宏

自民党と公明党の選挙協力が解消 されると次の総選挙はどうなるか? 次期衆院選の小選挙区10増10減をめぐり、公明党が東京で自公選挙協力を解消したことが政界に激震を引き起こしている。
 『週刊ポスト』6月18日号は、内部資料スクープ入手と銘打って、「『創価学会票』消滅で落選危機の自民議員20人」との記事を掲載した。

 同誌が入手したのは、自民党選挙対策本部が分析した「第49回衆議院議員総選挙結果調」の表題がある164ページの資料だ。全国289選挙区で公明党依存度≠ェ最も高かったのは、東京都八王子市を主な選挙区とする東京24区だった。東京24区選出の萩生田光一自民党政調会長は、同党の東京都連会長で、4万3736票も公明党に依存しており、次期は「接戦」となる確率が高いという。八王子市は、創価大学や創価学会東京牧口記念会館、東京富士美術館など学会の施設が多い。激戦の沖縄3区、島尻安伊子衆院議員も3万9091票を公明党に依存しており、次期は「落選危機」という。

 『サンデー毎日』6月18日号では、鈴木哲夫氏が「自民党とケンカした公明党の深謀 震源地は東京より大阪」と指摘している。東京で自民と公明がもめるのは「いつものこと」らしい。舞台裏は、公明が大阪で日本維新の会に敗れる可能性があるため、東京で議席を一つ確保したいというのが今回のケンカの発端だという。公明党にとって、総選挙の前哨戦で敗れたかたちとなったから、面白かろうはずがない。
  党利党略に明け暮れる公明党の党勢の衰えには、長期にわたって賃金が上がらず、経済成長をしない中、決して裕福とは言えない創価学会員にも消費税増税や社会保険料値上げ、憲法9条破壊の軍備拡大を押しつけてきたツケが回ってきたというべきかもしれない。
 同じ『サンデー毎日』誌に掲載された「『国民負担率』48% 稼ぎの半分がブンどられる増税ビンボーから脱出する家計再建の秘策」の記事を公明党支持者はどんな思いで読むだろうか?

 国民の所得に占める税金や社会保障の割合である「国民負担率」は、47・5%(2022年度)になる見込みだと財務省が発表した。「10万円稼いでも手元に残るのは5万2000円。どんなに一生懸命働いても、半分近くは徴収されてしまう」(森永卓郎氏)というから、もはや、江戸時代の年貢だ。
これで岸田政権を支持しろという方が難しい。 
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年6月25日号
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2023年06月08日

【月刊マスコミ評・放送】ETV特集 誰のための司法か=諸川麻衣

  4月15日にNHKで放送された『ETV特集 誰のための司法か〜團藤重光 最高裁・事件ノート〜』は、注目すべきスクープ番組であった。
 題材は、航空機騒音に苦しむ住民が1969年に公害問題で初めて国の責任を問うた「大阪国際空港公害訴訟」。二審の大阪高裁は1975年に夜間の飛行差し止めを認めたが、最高裁は1981年、住民敗訴の逆転判決を下した。その際、当初最高裁の第一小法廷が担当していた審理が突然大法廷に移され、長年その経緯が謎とされてきた。

 番組は、第一小法廷の判事の一人だった團藤重光の個人ノートを読み解き、小法廷は高裁判決維持=飛行差し止め容認の結論を固めていたこと、しかし村上朝一・元最高裁長官が第一小法廷の裁判長に大法廷回付を「勧めて」きたという衝撃的な事実を明らかにした。村上氏は、裁判官出身ながら法務省の要職を歴任、事実上法務省の代理人だったという。元長官の介入は、「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」と定めた憲法七六条三項に違反する疑いのある行為であった。

 東大教授出身で刑法学の第一人者だった團藤は、最高裁判事となってからも人権重視の立場から多くの反対意見・少数意見を表明した。その團藤がノートに「この種の介入はけしからぬことだ」と記したことは、事の重大さを端的に物語る。
 さらに、大法廷回付後も、一部の裁判官の退任を理由に審理やり直しが3年も続けられ、その間に飛行差し止めを認めない立場の裁判官が増やされた。人事を通して政権の意向が最高裁に持ち込まれたとすれば、近年の常套手段にも通じる。
 番組は、この最高裁判決後、司法が被害者救済に消極的になる流れが固まったとの証言で、79〜81年に最高裁で起きた「不正常事態」が今日にまで影響を及ぼしていることも示した。

 團藤が遺した資料10万点近くを所蔵する龍谷大学の矯正・保護総合センターは、「團藤文庫研究プロジェクト」の一環としてNHKと共同研究を行った。今回のスクープはその見事な成果だ。
 番組は踏み込まなかったが、放送後に前川喜平氏らが指摘したように、国サイドからの異常な介入の背景に在日米軍基地の存在があったであろうことは想像に難くない。憲法が謳う三権分立は空文なのか、日本の真の主権はどこが握っているのか、日米関係の面からの真相解明も強く俟たれる。
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年5月25日号
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2023年06月03日

【月刊マスコミ評・新聞】民意は性急な改憲を求めていない=六光寺 弦

岸田文雄政権が敵基地攻撃能力の保有を始めとする軍拡路線を進める中で迎えた今年の憲法記念日。全国紙の5月3日付朝刊では、岸田首相の単独インタビューを1面トップに据えた産経新聞の紙面が目を引いた。「改憲へ国民投票 早期に」の見出し。改憲に前のめりの姿勢を隠さない。
 産経は社説で、憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」の部分を「完全な誤り、偽り」と決めつけ、戦力不保持を定めた9条2項の削除を求めた。例年にも増して9条改変の主張に鼻息が荒い。

 同じく改憲を社是とする読売新聞の1面トップ「憲法改正『賛成』61%」は、憲法を巡る自社の郵送世論調査の結果。改憲に賛成の意見が、2年連続で60%台の高い水準だという。社説では「時代や安全保障環境の変化を踏まえ、最高法規のあり方を建設的に論じ合い、必要な部分については改めなければならない」と主張。9条については「改正の議論は低調だ」と不満をにじませている。

 朝日新聞は、敵基地攻撃能力の保有と9条との整合性が議論されていない様子のリポートを、毎日新聞は、岸田首相の本音を探る読み物をそれぞれ1面トップに掲載。社説でも、民主主義の形骸化の危惧や、軍拡に歯止めが必要なことなどをそれぞれ論じた。
紙面の比較では、総じて改憲論が勢いづいているように感じられる。だが、民意は冷静だ。
読売のほか、朝日、共同通信も憲法を巡る郵送世論調査を実施している。改憲の機運が高まっているかを尋ねた共同通信の調査では、「どちらかと言えば」を含めて「高まっていない」との回答が70%に上った。民意が性急な改憲を求めていないことは明白だ。
 
9条についても、1項と2項に分けて改正の必要性を尋ねた読売調査では、戦争放棄の1項は「改正の必要がない」が75%に上った。戦力不保持の2項は「改正の必要がある」は51%止まり。9条全体について尋ねた朝日調査では「変えない方がよい」が55%を占めた。

 ロシアのウクライナ侵攻や北朝鮮のミサイル発射、中国の軍備拡張に社会の不安が増しているのは確かだろう。しかし、危機をあおる論調があっても、民意が早急に改憲を求めているわけではないし、9条を変えることにも慎重だ。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年5月25日号
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