2024年09月04日

【月刊マスコミ評・出版】「終わらない戦争」と「現場の生の声」=荒屋敷 宏

 8月ジャーナリズムと嘲笑されても、戦争の惨禍を記録し、記憶し続ける本は書かれるべきだし、率先して読むべきであろう。
 『世界』9月号(岩波書店)の特集「癒えない傷、終わらない戦争」は、「社会の荒廃と人間の破壊」である「戦争がもたらす長期的な影響」を直視するよう呼びかけている。
 同誌の中村江里氏(上智大学准教授)「戦争のトラウマを可視化する」は、隠されてきた日本軍兵士の心的外傷後ストレス障害(PTSD)の研究を紹介している。中村氏が指摘するように、「かつての戦争を正当化する『英雄の物語』や『被害者の物語』に安易に回収されないようにするためにも、被害国の側の語るトラウマと向き合い、対話を重ねていく」ことが重要だ。

 ジャーナリストの布施祐仁氏「自衛隊と戦場ストレス」(同誌)にも注目した。イスラエル軍の予備役兵のエリラン・ミズラヒ氏はパレスチナ・ガザ地区の任務に就くように緊急召集令状を受け取った直後、妻と4人の子どもを残して自殺したという。ミズラヒ氏は昨年10月も緊急召集され、遺体の収容作業に従事し、軍事作戦にも工兵として戦闘に加わったそうだ。彼はPTSDと診断されたのに、再召集されたのだ。

 布施氏は、10人を超えたというイスラエル軍兵士の自殺について、日本の自衛隊にとっても無縁ではないという。陸上自衛隊のイラク派遣の約2年間で22発のロケット弾や迫撃砲弾が宿営地を狙って撃ち込まれた体験や東日本大震災の災害派遣時の遺体回収など、自衛隊員が過酷な体験を強いられてきたことがわかる。躊躇なく人を殺す訓練などの結果、精神を病んでいくアメリカ軍兵士の体験を紹介しつつ、戦争が人間を破壊していく悲惨を強調している。

 一方で、戦争を食い止める叡智を集めるどころか、『Voice』9月号(PHP研究所)は特集「戦後79年目の宿題」で、憲法改正や安全保障、日米地位協定などを挙げ、いわゆる戦後政治の総決算を思い出させる、戦争への道を提唱している。
 それでいいのか? 土井敏邦氏『ガザからの報告 現地で何が起きているのか』(岩波ブックレット)は、虐殺されているガザの人々の「現場の生の声」が報道されていないことに警鐘を鳴らしている。土井氏の指摘に学び、戦争を食い止める叡智は、「現場の生の声」に隠されていると考えたい。ジャーナリストの仕事の重要性もそこにある。
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年8月25日号
 
 
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2024年08月28日

【月刊マスコミ評・新聞】「大本営発表」報道を再来させるな=六光寺 弦

 意図的な虚偽ではなくても、伝え方次第で物事の印象は変わる。新聞が公権力の作為を見抜く力を失い、発表通りに報じるだけでは、かつての「大本営発表」報道を再来させかねない。自衛隊の不祥事のことだ。

 防衛省は7月12日、大量処分を発表した。翌13日付の東京発行の新聞各紙はおおむね1面トップの扱い。主見出しは「防衛省218人処分」(朝日、毎日、東京)、「防衛省 幹部ら218人処分」(読売)など、そろって処分の規模を強調した。しかし、「218人」は本当に最大のニュースバリューなのか。
 対象の不祥事は@特定秘密の違法な取り扱いA潜水手当の不正受給B隊内施設での不正飲食C内局幹部のパワハラ−の4種。@は組織運営上の構造的な要因があり、属人的な不正、不適切行為である。他の3種と質が異なる。処分者も113人と過半を占める
 特定秘密保護法は安倍晋三政権下の2013年12月、世論の賛否が二分される中で採決が強行され成立した。自衛隊が米軍と一体で行動するために不可欠とされた。ところが、当の自衛隊でルールを守れない運用が続いていることが露呈した。法の廃止を含めた抜本的な議論が社会に必要であり、それがこのニュースの本質のはずだ。

 軍拡を進める岸田文雄政権も防衛省も当然、そんな事態は防ぎたい。特定秘密から何とか目をそらせたいと考えた末の、異質な他の不祥事との抱き合わせの発表ではなかったか。
 例えば隊内施設での不正飲食は、ネットで検索しただけでも、過去の事例の報道がいくつも見つかる。すべて現地部隊の発表だ。なぜ今回だけ防衛省の発表なのか。
 潜水手当の不正受給では、警務隊が4人を逮捕しながら大臣には報告していなかったことが、大量処分の発表後に発覚。8月になって防衛次官らを追加で処分した。抱き合わせで発表する事例を探すのに大慌てだったとすれば、このお粗末ぶりもよく分かる。

 新聞各紙では、特定秘密保護法に焦点を当てた長文の記事もあった。だが、ネットのニュースアプリやSNSでは読めない。新聞を読まない層には「自衛隊はたるんでいる」との、ぼんやりとした受け止めにしかならなかったおそれがある。
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年8月25日号

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2024年08月25日

【出版・新聞トピックス】恐るべき事態 自由社・育鵬社・令和書籍の歴史教科書は危ない=出版部会

◆記述のいい加減さや偏向を批判
 今年は4年に一度の、中学校教科書の検定・採択の年。いま日本の歴史教科書がどうなっているのか、恐るべき事態が進行しているのをご存じだろうか。特に歴史や公民の科目に、とんでもない教科書が登場し、文部科学省の検定まで通ってしまっているのだ。
 どの教科書にどんな記述があるのか、その何が問題なのか、自由社、育鵬社、令和書籍の「危ない歴史教科書」を取り上げ、その内容について、中学校社会科教員の平井美津子さんが解説している。 
 その主な内容は、@「検定意見の数が減った」理由 A危険な自由社、育鵬社、令和書籍の歴史教科書とは? B近隣諸国への偏見を助長する教科書 C明治天皇を礼賛する記述 D戦争を美化し民衆の苦しみは触れず E「慰安婦」の存在を否定する─などの問題点を、3つの歴史教科書の具体的事例から指摘し、その記述のいい加減さや偏向を鋭く批判している。
 詳細は「マガジン9」のWEBページ https://maga9.jp/240807-1/ をクリックして、お読みください。

◆「めちゃコミック」米投資会社が買収
 総合化学メーカーの帝人は、国内最大級の電子コミック配信サービス「めちゃコミック」を運営する子会社インフォコムを、米国の投資会社ブラックストーンに、この10月、約2750億円で売却する。インフォコムの買収を巡っては、入札段階でソニーグループや米投資会社のKKRが関心を示していたが、このほど決着した。
 帝人の社内IT部門を母体にして生まれた子会社インフォコムは、帝人の業績に貢献してきたが、繊維など本体の主力事業との相乗効果は乏しい。そのため帝人は停滞する業績を立て直すべく事業再編を急いでおり、売却で得る資金を他の成長分野や株主還元に振り向ける考えだ。
 2006年に始まった「めちゃコミック」はスマートフォンなどで漫画を楽しめ、月間利用者数は2800万人。特に女性向け作品に強みを持ち、読者層は30〜40代の女性が中心という。今後の運営が注目される。

◆「pf事業者の責務強調を」新聞協会要望
 総務省の有識者会議がまとめた「インターネット上に広がる偽情報への対策案」に対し、この20日、日本新聞協会は「プラットフォーム(pf)事業者の責務をより強く打ち出すべきだ」とする意見書を提出した。
 健全な言論や情報流通に対する懸念が高まっているのは、偽情報に対しての「事業者の自主的な対応が不十分なためだ」と強調し、真摯な対応を求めた。
 総務省は20日まで対策案への意見を募集していた。総務省がまとめた対策案には、新聞などに期待される役割としてファクトチェックの推進を挙げたが、新聞協会はこの点に関し「ファクトチェックの定義について合意形成がなされたとは言えない」と指摘し、あいまいなまま「ファクトチェックの推進に責務を負うような表現に違和感を覚える」とも強調している。
 報道機関の役割は正確で公正な情報の発信であるから、これまでも「不確かな情報が社会に重大な影響を与えかねない際は、積極的に真偽検証に取り組んでいる」と、改めて説明した。
 今後の議論については「報道機関への法的規制につながるようなことがあれば、国民の知る権利が毀損されかねない」と主張し、慎重な検討を要請した。今後、各界からの意見をくみ上げ、有識者会議が正式な提言を決める。

◆大手新聞の発行部数が軒並み減
 2024年6月度の新聞発行部数が明らかになった。中央紙各紙のABC部数は、次のとおりである(カッコ内は対前年同月比)。
 読売新聞:585万6,320(減48万369)
 朝日新聞:339万1,003(減29万5,413)
 毎日新聞:149万9,571(減18万5,983)
 日経新聞:137万5,414(減19万2,767)
 産経新聞: 84万9,791(減10万9,818)
 朝日新聞は約340万部に減少し、1年以内に300万部の大台を割り込む可能性が出てきた。読売新聞は約586万部で、年間で約48万部を減らした。
 なお新聞販売店が実際に購読者に配達している部数は、ABC部数よりもはるかに少ない。
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2024年08月16日

【メディアウオッチ】隠蔽された米兵暴行事件 スクープの裏側は=古川 英一

                        
2面スクープ/琉球朝日放送・スクープ放送日 (1).jpg

 6月25日、1つのニュースが沖縄中を駆け巡った。昨年12月に米兵が16歳未満の少女を連れ去り、性的暴行をしたとして今年3月に起訴されていたのだ。しかも沖縄県警はこの事件を一切発表せず、政府・外務省、防衛省も、事実を把握しながら米軍関連事件は沖縄県に報告する取り決めを無視し、県に報告しなかった。

 その事実を地元民放局・琉球朝日放送(QAB)が昼前のローカルニュースで最初に暴いた=写真=。
 地元の新聞、放送各局も事実確認を急ぎ、相次いでこれを報じた。このスクープで、初めて事件を知った県は政府などへの対応に追われた。
 ニュースは東京へと広がり、当初、外務省や防衛省は「被害者の『プライバシー保護』のための対応だった」と弁解を繰り返した。しかし「なぜ沖縄県に伝えなかったのか」。沖縄県民の政府や在日米軍への不信感や怒りの声は高まった。しかもその後、米兵による暴行事件がこれまでに合わせて5件にのぼることが明らかになった。

 事件発生からスクープまでの間には、岸田首相の訪米や沖縄県議選などがあった。政治的影響を懸念した政府による隠ぺいの疑いは一層強まり、政府は「今後このようなことがないよう沖縄県への情報提供を行う」と表明するに至った。
 このスクープはどうやって生まれたのか。琉球朝日放送によると、警察・司法担当の記者が週明けの6月24日、裁判所で裁判の公判日程を確認したところ、期日簿に前週の金曜日には記載されていなかった米兵の性暴行事件の初公判の日付が記載されていた。記者はすぐ、地検に確認に走り、翌25日午前中に地検から起訴状を入手。起訴状をもとに原稿を書き、プライバシーに配慮しどこまで出すのかをデスクと慎重にやりとりしながら、最終的に昼前のニュースで報じた。

 他の民放やNHK、新聞社のネットニュースも昼ニュースの時間帯にはこの事件に触れておらず、琉球朝日放送の単独スクープだった。
 政府が隠そうとする事実・不都合な真実を明らかにしていくことは、権力をチェックしていくジャーナリズムの使命だ。

 今回の琉球朝日放送のスクープは、裁判期日、公判日程を確認するという警察・司法記者の日常的で地道な取材活動の結果でもある。琉球朝日放送で当日昼デスクを担当した金城正洋さんは「前日の23日は沖縄慰霊の日で、沖縄のマスコミ人は炎天下でへとへとでした。それでもQABの記者が持ち場のルーティーンをこなした結果です。慰霊の日に岸田総理が来た翌日ですから、那覇地検、那覇地裁も政府も、どこを向いているのでしょうか」と憤った。
 事件の初公判は7月12日に開かれた。3月に起訴された事件が、6月24日になるまで期日簿に記載されないのも普通は考えにくい。裁判所・司法の対応についても追及・検証が必要ではないだろうか。
    JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年7月25日号  

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2024年08月09日

【月刊マスコミ評・新聞】能登半島地震 復興遅れの検証必要=山田 明

 自民党の裏金問題が、最大の焦点となった通常国会が閉会したが、これほど国民を愚弄した国会も珍しい。ザル法の改正政治資金規正法について、自民党議員からは「政治にはカネがかかる」と開き直ったような言い訳が出る始末。岸田首相も党首討論で「政治にはコストがかかる」と発言。朝日6月22日社説は「信を失う国民感覚とのずれ」と深まる政治の危機に警鐘を鳴らす。

 国民を愚弄する自民党とも手を組んだ小池氏が、都知事選で3選を果たした。都民が小池都政をなぜ支持したのか、巧みなネット戦略で大量得票した石丸氏、掲示板が不足するほどの大量候補など、都知事選は多くの課題を残した。

 今国会で目立ったのが、日本維新の会の迷走ぶりだ。「身を切る改革」を旗印に勢力を伸ばしてきた維新だが、最近では存在感に陰りが見え、政権とのスタンスを巡って内部で温度差も生じている(毎日6月27日)。馬場代表と吉村共同代表の対立、党分裂すら報じられている。大阪維新の会とともに、国政での維新の動向にも注目したい。

 能登半島地震から半年余りが過ぎたが、復興の遅れは深刻である。今なおライフラインの復旧や被災家屋の解体撤去が進まず、先が見通せないことへの不安、置きざり状況への怒りが広がっている。
 なぜ、ここまで復興が遅れているのか。人口減少時代の過疎地域に特有な問題と片づけられない。国や自治体の災害対策のあり方をハードとソフトの両面から検証する必要がある。今国会で成立した地方自治法改正は、自治体に対する国の「指示権」を拡大するものであり、地方分権に逆行し、自治体の災害対策・復興にも悪影響を及ぼすことになる。

 鹿児島県警は、福岡に拠点をおくインターネットの記者宅を家宅捜索した。内部情報を漏らしたとして県警本部長が地方公務員法違反容疑で逮捕された事件の関連だった。「警察にとって不都合な報道の情報源を探るための強制捜査だったのではないか。そうだとすれば、報道の自由が脅かされる事態だ」(毎日6月23日)。メディアへの強制捜査は、権力に不都合な事実を報じる「取材の秘匿」を脅かす。メディアの取材の根本を揺るがす異常な事態だ。
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年7月25日号
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2024年08月01日

【月刊マスコミ評・放送】テレ朝HD株主総会に行ってみた=岩崎 貞明

 6月27日、株式会社テレビ朝日ホールディングス(HD)の株主総会が開催された。今回は市民団体「テレビ輝け!市民ネットワーク」が@政治的な圧力により公正報道が難しい場合には第三者委員会設置・調査・公表する旨定款に定めることA社内の放送番組審議会で是正困難な報道につき第三者委員会調査を定款に定めること⓷放送番組審議会の委員の任期の是正(長期に及ぶ就任者があることに鑑み)C社外取締役として前川喜平氏を推薦する――の四項目を株主提案していた。

 2015年1月、『報道ステーション』で当時コメンテーターを務めていた古賀茂明氏の発言をめぐって政権幹部から介入と受け取れるメッセージが送られたこと、それを受けてテレビ朝日が古賀氏と担当プロデューサーを同年3月末で番組から降板させたことなどが疑われている。また、同局の放送番組審議会は長年にわたって幻冬舎社長の見城徹氏が委員長を務めており、幻冬舎が出版した書籍の広告と紛らわしい番組企画が情報番組で放送されたことなどが、株主提案の理由だ。

 午前10時に開会した株主総会は、早河洋・代表取締役会長が議長を務め、事業報告や会社提案の議案の説明などを行った。市民ネットワークの株主提案は第4号〜第7号の議案として提案されていたが、テレ朝HDの取締役会は株主提案すべてに「反対」の意見を表明していた。株主提案には田中優子・元法政大学学長が市民ネットワークの共同代表として説明に立ち、「これはテレビを応援するための提案です」などと述べていた。

 株主との質疑応答で、最初に質問に立った一般株主の男性が、前川喜平さんに対して誹謗中傷の発言を行った。会社に対して、前川さんを取締役に選任しない理由を問う質問だったが、前川さんが新宿・歌舞伎町の出会い系バーに通っていたことなど虚実を交えて揶揄する内容で、市民ネットワークの事務局を務める梓澤和幸弁護士が、前川さんの名誉棄損となる発言を漫然と放置した早河議長の議事進行責任を問い質したが、早河議長は「株主には発言の権利がある」などと退けた。しかし会場の一般株主からは、市民ネットワークの発言に拍手を送る人も少なくなかった。
 議案採決で、会社提案の議案はすべて可決、株主提案の議案は総会ではすべて否決という結果だった。市民ネットワークは来年も株主提案にチャレンジするという。
         JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年7月25日号
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2024年06月28日

【月刊マスコミ評・新聞】「性善説」はジャーナリズムに向かぬ=白垣詔男

 政治資金規正法改正案が6月6日の衆議院本会議で自公与党と日本維新の会などの賛成多数で可決、参議院に送られた。新聞各紙は、衆院委の可決を受けて6日付で社説「生煮えのまま通すのか」を掲載した朝日を除き、7日社説で一斉に社説を展開した。
 毎日は「不透明なカネの温存策だ」の見出しで、政策活動費について「公開のあり方などの制度設計」のあいまいさに加え、10年後に公開する点も「不正が発覚しても、時効が成立している可能性が高い」と指弾する。

 西日本はさらに踏み込んで「会期延長し抜本修正せよ」の見出しで「全ての国会議員に関係する重要な問題にもかかわらず、幅広い賛同を得ることができなかったのは、実効性のある改革に背を向けた自民の責任だ」と「怒り」を書いている。
 以上の2紙の「厳しさ」は、国民の幅広い意見を代弁しているうえに自民の「裏金対応の遅さと不明朗さ」を考えれば当然だろう。「権力を監視するのを第一義とするジャーナリズム」としては、もっと厳しい表現で自民を指弾してもおかしくない。

 ところが、既に「ジャーナリズム」の中には入らなくなって久しい読売は「規正法成立へ カネに頼らぬ政治への転機に」の見出しで、自民を始め、どの政党にも耳の痛い指摘はない。まさに「性善説の読売」とでも言いたそうな論調だ。「党から議員に支給されている政策活動費についても、一定の公開に踏み込んだ」と評価したうえで、その中身を「『組織活動』『選挙関係』など大くくりながら、毎年の収支報告書に記載することを義務とした」と、そのあいまいさに目をつぶる。
 
 自民の対応の遅さや、国民があきれている「政策活動費の10年後の領収書公開」について、全く触れていない。読売論説委員会の社説担当委員は、そうした「大きな疑問」というか「疑惑の温床」とも言える問題について、何も考えなかったのだろうか。考えても書けない社の姿勢を忠実に守っているとしか思えない。「世界最大の部数」や「生き残るのは読売だけ」といった自慢したい点≠、幾ら声高に叫んでも、権力に媚びるような論調では、かつて清武英利、佐高信両氏が書いた「メディアの破壊者読売新聞」(2012年、七つ森書館)の書名を思い出してしまう。
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年6月25日号
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2024年06月27日

【月刊マスコミ評・出版】リベラル論壇誌創刊と日米同盟の転換=荒屋敷 宏

 今月の出版界の話題は、何と言っても、ジャーナリズム・評論・書評を三本柱に据える雑誌『地平』創刊号(2024年7月号)の登場であろう。ガブリエル・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』が新潮文庫版で出ることも評判にはなっているが、『地平』編集人・発行人の熊谷伸一郎氏の勇気の前に霞む。
 地平社は、『地平』の前に、内田聖子著『デジタル・デモクラシー』、南彰著『絶望からの新聞論』、東海林智著『ルポ 低賃金』、長井暁著『NHKは誰のものか』、島薗進・井原聰・海渡雄一・坂本雅子・天笠啓祐著『経済安保が社会を壊す』、三宅芳夫著『世界史の中の戦後思想』の6点を同時刊行し、さらにアーティフ・アブー・サイフ著、中野真紀子訳『ガザ日記――ジェノサイドの記録』を加える念の入れようである。

 「リベラル論壇誌創刊 勝算は?」との『地平』の熊谷編集長を取材した毎日新聞6月3日付東京夕刊2面の特集ワイド、千葉紀和記者の記事が詳しい。1946年創刊の雑誌『世界』(岩波書店)が95年に公称12万部で、現在は4万部だから、新たな雑誌創刊の困難さがわかる。

 『地平』の編集スタッフは4人。そのうち1人は、TBS「ニュース23」元ディレクターの工藤剛史氏だと「毎日」記事が紹介している。大手出版社を辞めたとされる他の3人も腕利きの編集者であろう。それは創刊号の内容に表現されている。筆者が興味深く読んだのは、酒井隆史氏「過激な中道≠ノ抗して」、吉田千亜氏「言葉と原発(上)」、尾崎孝史氏「ウクライナ通信 ドンバスの風に吹かれて 第1回 ウクライナ報道の現在地」、小林美穂子氏「桐生市事件」、樫田秀樹氏「会社をどう罰するか 第1回 ネクスコ中日本 笹子トンネル天井板崩落事故」だった。編集長の人脈の広さを示すが、論壇の動向紹介や地に足の着いたルポなどは大変読み応えがある。

 もう一つ注目したいのは、週刊誌『サンデー毎日』6月16日・23日合併号「倉重篤郎のニュース最前線」の「寺島実郎渾身の『日本再生構想』 日米同盟のパラダイム転換へ」である。『21世紀未来圏―日本再生の構想』(岩波書店)の著者、寺島氏へのインタビュー記事だ。寺島氏は敗戦後80年を経過しても外国軍隊を受け容れている日本の異常さに着目し、米軍基地・施設の段階的縮小を提言している。この視点は現今の論壇の弱点を突いたものだろう。米国追随型出版の自己点検が必要な時だ。 
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年6月25日号
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2024年06月26日

【メディアウオッチ】メディア現場の変化映す 24報道実務家フォーラム報告=山中賢司

 「記者・編集者のスキルと知識を高める」とうたう「報道実務家フォーラム2024」が東京・早稲田大学国際会議場で4月27〜29日の日程で催されることを知り、覗いてきた。

 フォーラムの主催は同名のNPO法人。2010年に始まり、参加者の所属社の枠を越えた学びと交流の場となっているという。今回は57とセッション数も過去最高。登壇の講師・報告者も延べ91人で、取材最前線でのスクープ術や調査報道、情報公開制度やオープンデータ活用等のケース研究に加え、ジェンダー問題への視点やデジタルスキル、情報産業内での新たな競争動向を反映した議題も並び、オンライン参加を含む総勢750名が3日間、活発な議論を交わした。

 今日、一口に報道実務家≠ニ言っても、かつての職務・職域のテンプレートやロールモデルは希薄化し報道実務家の生息域も変化の只中にある。

 背景には旧来のマスメディア経営を長年支えてきた購読料を支払うユーザーや広告主、コンテンツ提供者がネットを介して直接結びつく地殻変動があり、それは情報分野に限らず経済活動全域で起きた。

 57セッションのうち20近くはそうした動向への対応がテーマだった。

 例えば経済・ビジネス情報に特化したオンラインサービスで有料会員を増やしてきたソーシャルメディア「NewsPicks」は『女性ユーザーを増やすには?「男子校メディア」からの脱却』のタイトルでジェンダー平等の観点を重視してきた取り組みを紹介した。

 編集・制作現場のみならず、インタビュアーやニュース解説を担う各分野の専門家群の女性比率を同時に高めて実践してきたジェンダーバランスの改善を紹介。ライフステージとキャリア構築の相克に直面する女性ユーザーの共感を得ていく上で、その体制づくりは必須であると提起した。

韓国の女性記者
フォーラム開催

 昨年10月、ソウルで開催された「韓日女性記者フォーラム」の主催は韓国女性記者協会。日本にはない女性報道実務者の

 団体は1961年に発足。韓国メディアに在籍する約1700人の会員を集め、現在は海外派遣を含む各種研修のほか、各社の管理職や役員の女性比率を公表、報道機関で働く女性の地位向上をめざしていると言う。

 カカオトークで日常連絡を取り合い、女性の人事情報もたちどころに共有。社会変革に前向きな財界からの支援も厚いと言う。 日本からは報道各社の韓国駐在特派員に加え、新聞やテレビ局で働く女性記者たち5人が、日本記者クラブ(JNPC)の呼び掛けで訪韓して参加。日本で働く女性記者の現状と課題が報告され、本音の交流が進んだと言う。

 日本と韓国は(世界経済フォーラム2023の世界146か国のランキングで日本は125位、韓国は105位)共にジェンダー平等後進国として課題を共有する関係にあり、女性記者を取り巻く環境も似る。

 韓国女性記者協会は日本の女性記者たちに、自閉しない視点で連帯を呼び掛けたことになる。

ジェンダーの
劣等生が連帯

 報道実務家フォーラムでは『ジェンダー劣等生同士 日本×韓国女性記者の対話で見えたコト』と銘打ち、韓日女性記者フォーラムの様子と、参加を通じて見えてきた諸点が報告された。

 韓国は日本の比ではない出生率の漸減の中にあるとの報告にも驚いた。最新データでは0・72にまでになっているという。
 少子化はいずれ生産年齢人口減をもたらすから、先に紹介した韓国財界が社会変革のトリガーとして女性記者の役割拡大を支援する構図も諒解される。
 労使間バランスも労働サイドに有利な方向に動かざるを得ない時代の必然が作用しているのだろう。

 フォーラムの柱の一つに「アジア的な文化が関連の報道に及ぼす影」のテーマが充てられ、日韓二国間に留まらない視座が示されていたことも注目される。
 アジアに残る家父長制的遺制やものの考え方が、女性のキャリア形成や社会参加を妨げてきたと指摘されてきたが、最終日のレセプションでは『ガラスの天井を破るぞ!』と乾杯の唱和が鳴り響き、そこでも韓国同業女性たちの熱量に圧倒された、と。
 その空気と雰囲気を持ち帰っての今回のトークセッション、会場からは、父権的メディア職場の実用的改善法は‥などの質問も出て、その回答に笑いとどよめきが何度も起こるなど、報道実務現場で進む相変化が発散されていた。
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年5月25日号

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2024年06月14日

【月刊マスコミ評・放送】スクープ連発のNHK番組群=諸川麻衣

 NHKのドキュメンタリー番組が昨年来、独自に入手・発掘した資料を駆使してスクープを連発している。昨年4月の『ETV特集 誰のための司法か〜團藤重光 最高裁・事件ノート〜』は、元最高裁判事・團藤重光が遺したノートを読み込み、大阪国際空港公害訴訟で住民側の「夜間の飛行停止」要求を認めた二審の大阪高裁判決を最高裁が覆した背景に、裁判官の独立の原則に反する元最高裁長官・村上朝一の「介入」があったことを明らかにした。

 昨年秋の『NHKスペシャル』『ETV特集』の『“冤罪”の深層』は、大川原化工機の社長らを外国為替及び外国貿易法違反容疑で逮捕・起訴しながら検察が起訴を取消した異例の事件を複数回取り上げた。取材班は、「事件は捏造」との告発状を送ってきた匿名の警察関係者に接触、さらに当初は起訴に慎重だった経産省が警察・公安部の立件方針を追認していったことを示す内部資料も入手して、冤罪の経緯を白日の下にさらした。これは、ETV特集のディレクターと報道番組、社会部との連携の成果だったという。

 今年3月の『ETV特集 膨張と忘却〜理の人が見た原子力政策〜』は、長年国の原子力政策に関わった研究者・吉岡斉が残した数万点の未公開資料「吉岡文書」(九州大学保管)を読み込み、核燃料サイクルや原発に関する国の審議会での論議が吉岡にとって「熟議」とは程遠い無責任なもので、その結果核燃料サイクルへの固執が続き「万一」を想定した原発の安全策も後回しにされたことを示した。制作者が独自に入手した内部文書や関係者の証言などからは、審議会の結論以前に自民党内で既に方針が決められていたという事実も明らかになった。

 そして極めつけが、戦後史に特筆される謎の事件に挑んだ3月末の『NHKスペシャル 未解決事件 File.10 下山事件』。制作チームは、他殺説に立って最後まで捜査を続けた布施博検事が保管していた膨大な捜査資料を入手、さらに、東京神奈川CIC(米陸軍対敵諜報部隊)の日系二世工作員アーサー・フジナミが最晩年に娘に口述した、総裁暗殺に触れる記録にもたどり着いた。そこからは、アメリカが要求する国鉄の10万人解雇に抵抗姿勢を見せた下山をアメリカが殺害した構図が、そして日米支配層が「反共」で連携するという今日まで続く両国関係の源流が浮かび上がる。4年がかりの調査・解析で、制作者自らが「シリーズ史上最も真相に肉薄」と自負し、第61回ギャラクシー賞を受ける力作が生まれたのである。粘り強い取材力、情報提供者との信頼関係、緻密な分析、そして「不都合な真実」を暴こうという真っ当な志など、一連の番組から学ぶべきものは多い。    
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2024年06月02日

【月刊マスコミ評・新聞】読売新聞を信じるのは無理だ=六光寺 弦

 読売新聞大阪本社で目を疑う不祥事が起きた。小林製薬製品の健康被害を巡る記事で、社会部の主任が談話を捏造していた。いったんは紙面に訂正を載せたが、捏造に触れていなかった。同社は主任を諭旨退職とする関係者の懲戒処分や、編集局長や社会部長の更迭を紙面や公式サイトで公表した。だが、詳しい社内調査の結果は明らかにしていない。信頼を回復できるか疑問だ。

 読売新聞によると、主任は、原稿が小林製薬への憤りという自分のイメージと違っていた、と説明。取材した岡山支局の記者は「社会部が求めるトーンに合わせたいと思った」と、修正や削除を求めなかった。記者は休職1カ月と記者職から外す職種転換となった。経験が浅い若手ではない。主任は48歳、記者は53歳のベテランだ。
 社会の情報流通を新聞やテレビが一手に握っていた頃なら、そうした誘惑もあったかもしれない。今は違う。だれもがSNSで情報を発信できる。おかしなことをすれば、すぐに炎上し、組織が危機に陥る。
 当初の訂正で、編集局が「確認が不十分でした」の釈明で済むと本当に考えていたのだとしたら、組織全体の危機意識の希薄さにも驚く。
 読売新聞東京本社では3年前、32歳の社会部記者(当時)が、取材で得た情報を他媒体の複数の記者に漏らしたとして、懲戒解雇になっている。深刻な不祥事が続く背景に、組織体質に根差す固有の要因があることを疑うべきだ。

 大阪本社は2021年、大阪府と包括連携協定を結んだ。読売新聞グループ本社は東京・築地の大規模開発の事業主体に、大手不動産会社とともに名前を連ねる。確かに経営は盤石で、近年は「唯一の全国紙」を誇示してもいる。
 だが、権力監視の役割は期待できないし、都心の大規模再開発の是非をめぐって、独立の立場から報道することも不可能だ。何より、ライバルの存在を認めない傲慢さが「読売の報道が社会にとって“事実”のすべてだ」との全能感を組織内に生じさせないか。

 折しも「読売新聞を、信じてもいいですか」の創刊150年キャンペーンを年明けから展開中。社内調査結果も明らかにせずに「信じろ」と言っても無理だ。
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年5月25日号
  
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2024年05月17日

【月刊マスコミ評・新聞】大軍拡へ平和国家を揺るがす動き続く= 山田 明

  自民党派閥の裏金事件は、疑惑解明が進まず、国民の怒りは高まるばかりだ。裏金づくりは、党ぐるみの組織的犯罪だが、岸田首相は「党内処分」で幕引きを図るが、自民党の混乱は激しさを増している。
 岸田政権は3月26日、次期戦闘機の日本から第三国への輸出解禁を閣議決定した。朝日27日社説は「専守防衛を空洞化させた安保3文書に続く、国民的議論なき安保政策の大転換にほかならない」と批判する。同日の毎日社説も「平和国家の姿が問われる」と。読売社説が、この問題を報じていないのは、なぜなのか。

 このほかにも大軍拡、平和国家を揺るがす動きが続く。事故の究明なき欠陥機オスプレイの飛行再開、防衛省の防衛力の抜本的強化に関する有識者会議の軍拡増税推進、米軍との一体化を進める自衛体統合司令部創設、そして経済安保情報保護法案などだ。沖縄のさらなる基地強化、うるまに陸上自衛隊訓練場計画には、県民の怒りが頂点に達し、島ぐるみで反発のうねりが広がる(東京3月27日)。
 日銀は11年にわたる「異次元緩和」見直しを決めた。アベノミクスを修正するものだ。株価上昇の一方で、円安による物価高騰が国民生活を圧迫。小林製薬の紅こうじ健康被害も、アベノミクス成長戦略による規制緩和の「負の遺産」でないか(毎日3月31日)。

 日本維新の会は、軍拡や憲法改正の「旗振り役」だが、昨年夏頃から失速気味だ。きっかけは維新が主導してきた大阪・関西万博。開幕まで1年を切ったのに準備は遅れ、能登半島地震以降、国民の批判がさらに高まる。建築界のノーベル賞と言われるプリツカ―賞を受賞した建築家の山本理顕氏は、「地元・横浜のカジノ計画に反対して対案をつくり、大阪・関西万博も現在の計画に疑問を呈する」(朝日3月10日)。  

 山本氏が「IRのための万博」というように、大阪湾の人工島・夢洲の万博会場隣でIRカジノ工事が始まっている。夢洲でのインフラ整備は、万博だけでなく、IRカジノのためでもある。
 維新は大阪の「成長戦略」として、万博とカジノを推進してきた。軟弱地盤の夢洲で、底なしの財政負担が危惧されており、維新の政治責任が厳しく問われている。
      JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年4月25日号
 

      
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2024年04月09日

【月刊マスコミ評・放送】NHK夜ドラ「つくたべ」にハマる=岩崎 貞明

  NHKの夜ドラ『作りたい女と食べたい女』シーズン2が2月末に終了した。原作マンガも読み、一昨年のシーズン1から入れ込んで視聴していた筆者としてはシーズン2への期待が大きかったが、結果としては予想以上の好番組だったと思う。

 料理が好きだが小食な野本さん(比嘉愛未)と、たくさん食べたい春日さん(西野恵未)の二人がたまたま出会い、仲良くなる話だが、グルメ番組かと思いきや、さまざまな社会的課題がドラマに盛り込まれている。女性が男性のために料理する、または女性はたくさん食べない、といった無意識の偏見や圧力にモヤモヤする感じを覚えるのがシーズン1だったが、シーズン2では、お互いの恋愛感情を自覚した二人が家探しをして、同性婚が認められていないことによる社会的な差別に直面するようすも描かれる。他人といっしょに食事することができない「会食恐怖症」の南雲さん(藤吉夏鈴)と、野本さんとSNSで知り合った矢子さん(ともさかりえ)も、ほぼ原作どおりのキャラクターとして登場する。
 演じている俳優陣がマンガのイメージにぴったりで、とくに春日さん役の西野恵未は、本業がミュージシャンでドラマ初出演だそうだが、朴訥で誠実そうな人柄が、まさに原作のキャラクターそのものの印象だった。

 原作にはないドラマオリジナルの存在は、野本さんの職場の同僚・佐山さん(森田望智)。ドラマでは彼女が野本さんの理解者の立場で、視聴者の気持ちを代弁するような役回りを演じていて好感が持てた。同性愛者ではない佐山さんが、同性婚が認められていない日本の現状に憤りを吐露するシーンなど、まさに「アライ(LGBTの支援者)」の重要性を社会に訴えている場面だったと思う。

 折しも、日本テレビ系のドラマ『セクシー田中さん』をめぐって、マンガ原作者とドラマ制作側との間で生じた問題で原作者が自死してしまうという、何ともやりきれない事件が起きたばかりで、原作と脚色の関係について考えさせられる事態となっている。この『つくたべ』は、そもそも扱っている題材が「性の多様性」のように極めてデリケートなテーマであることから、そのあたりは原作者や監修者などと制作陣が綿密にコミュニケーションを取っているようすがうかがえる。
 ゆざきさかおみ氏による原作マンガはまだ連載が続いている。ここはぜひ、ドラマの方も「シーズン3」の放送を期待したいところだ。
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年3月25日号

  
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2024年03月30日

【月刊マスコミ評・新聞】「証人喚問が必要」声を大に=白垣詔男

 自民党の「裏金問題」を追求する衆議院政治倫理審査会(政倫審)が2月29、3月1日に行われた。しかし、出席した岸田文雄首相ら6人の答弁は予算委員会質疑などで、これまで明らかになった内容以上のものは出てこなかった。
 これを受けて、新聞各紙は3月1、2日付の朝刊社説で「6人の答弁は不十分」などと書いたが、毎日、朝日、西日本が「参考人招致や証人喚問が必要だ」と主張したのに比べ、読売、産経はそれらに言及しなかった。やはり、現政権への姿勢の強弱が如実に表れているとみるべきではないだろうか。

 今回の政倫審に関して、2日続けて社説を書いているのは毎日、読売、産経。毎日は「岸田首相と政倫審 何のために出て来たのか」(1日)の見出しで岸田首相に「安倍派や二階派の幹部らに、裏金事件の経緯や使途を、国会ですべて明らかにするよう指示することだ。…さもなければ、政治不信は増幅するばかりだ」と力説した上に2日付では「政倫審に安倍派幹部 やはり証人喚問が必要だ」と見出しで踏み込んだ。説得力がある。

 読売は、「開いただけでは解明にならぬ」(1日付)、「国会の混乱 言論の府の権威を貶めるな」(2日付)、産経「首相 全容解明にもっと努力を」(1日付)、「安倍派の不記載 この説明では納得いかぬ」(2日付)と首相と他の5議員の答弁に対する「不満」に絞って書いているだけで、その打開をどうしたらいいのかには触れていない。

 朝日の「政倫審社説」は2日付だけで「政倫審 予算案強行の踏み台か」の見出しとともに、首相の出席を、「実態解明の先頭に立つという決意などではなく、予算案の採決を強行する『踏み台』として政倫審の開催を急いだというのが実際だろう」と推測。さらに「森喜朗元首相を国会に呼び、説明を求めるしかない」「二階俊博元幹事長や、安倍派『5人衆』で残る萩生田光一前政調会長ら、当事者は大勢残っている。参考人招致や証人喚問も含め、説明責任を果たさせねばならない」と強調する。
 西日本は「裏金の全容がつまびらかにならないと、的確な再発防止策は打ち出せない。国会は参考人招致や証人喚問を検討すべきだ」と強い姿勢を見せている。
    JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年3月25日号
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2024年03月02日

【月刊マスコミ評・新聞】検察権力を監視できているか=六光寺 弦

 パーティー券裏金事件でまたも問われる「政治とカネ」。岸田文雄首相率いる自民党では、派閥解散すら足並みがそろわない。1月〜2月上旬にメディア各社が実施した世論調査では、自民党に信頼回復は期待できないとの回答が、軒並み7割から8割超に上った。

 民意の不信感は、検察の捜査にも向けられている。
 安倍派のパーティー券収入の裏金化が「派閥ぐるみ」なのは明らかだった。東京地検は派閥事務所を捜索し、幹部の国会議員も聴取した。だが、政治資金規正法違反で訴追したのは事務方の会計責任者だけ。共謀の証拠が得られないことを理由に、派閥幹部の責任は「不問」とされた。
 地検がこの捜査結果を発表した1月19日の直後に朝日新聞が実施した世論調査では、「納得できない」の回答が80%に上った。2週間後の2月初旬の共同通信の調査でも「納得できない」は83%に達した。
 捜査を尽くしたのか、検察はろくに説明していない。「法の不備」を言い訳に、与党議員には手心を加えるのか、との疑念が生じるのは当然だ。

 気になるのは、東京地検の足元で捜査を追ってきた全国紙に、民意と温度差があることだ。
 処分発表の翌1月20日付で全国紙5紙は関連の社説を掲載した。批判の中心が自民党なのはともかく、捜査については「全員を不問に付すのは不公平感が拭えない」(読売)、「多くの国民が結果に納得できないのは当然だ」(日経)との記述が目につく程度だ。
 朝日は、還流側の立件を3千万円で線引きしたことには疑問を呈したが、毎日、産経は捜査への疑問の言及は見当たらない。 検察もメディアが監視すべき公権力なのに、その監視機能を果たしていると言えるだろうか。

 躊躇なく検察を批判したのは、いくつかの地方紙だ。信濃毎日新聞は「捜査は尽くされたのか」との見出しとともに、疑問を具体的に挙げた。京都新聞は「少なくとも裏金工作を管轄する立場にあった(安倍派の)7議員は起訴し、司法の裁きに委ねるべきではないか」と指摘している。
 全国紙は東京で日常的に、検察中枢に密着して取材している。発想が検察と同化、一体化してしまっているのだとしたら危うい。検察の驕りを増長させかねない。
      JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年2月25日号
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2024年03月01日

【月刊マスコミ評・出版】「裏金」問題に対応する資格は?=荒屋敷 宏

 自民党の派閥の政治資金パーティーの「裏金」問題は、政界の深部を激震させている。「しんぶん赤旗」日曜版の報道が突破口となり、カネ集めに狂奔する自民党の醜態が白日の下にさらされているのだ。

 『週刊文春』2月15日号は、「二階俊博に直撃 長男が疑惑団体の会計責任者 『消えた50億円』」の問題に切り込んだ。二階氏は自身の秘書と二階派の会計責任者が既に立件されている。自民党幹事長の在任期間が歴代最長の5年に及んだ二階氏は使途不明の政策活動費50億円を受け取っていた。50億円はどこに消えたのか。選挙対策として地方議員などに渡されるというが、実態の解明は進んでいない。幹事長在任中に二階氏は派閥の議員を36人から46人まで増やしたというから、カネで権勢を拡大したわけだ。

 「裏金」問題に幕引きを図ろうとする姿勢が目立つ岸田文雄首相も火だるまになっている。『週刊ポスト』2月2日号は「爆弾スクープ」と題して「岸田文雄首相の『違法パーティー』収入は322万円! 22年6月の『総理就任を祝う会』で多額の会費を集めながら報告せず――」との記事を掲載した。「この総理に裏金問題に対応する資格はあるのか」と問うている。岸田首相のパーティー収入は約1100万円以上で、自民党広島第一選挙区支部への寄付約322万円、差額の約778万円はどこに消えたのか。
 同誌2月9・16日合併号でも「徹底追及」と題して、岸田首相の名ばかりの会計責任者を直撃取材した記事を掲載している。自民党の脱税疑惑をさらに追及してほしいところだ。

 自民党の裏金問題報道をかき消そうとするかのように公安筋から出てきたのが長年の指名手配犯の逮捕、死亡という報道だった。死人に口なし。このニュースから得られるものは驚くほど少ない。
 『週刊ポスト』2月23日号の「元公安トップが証言『桐島聡をなぜ逃がしたか』」(竹中明洋氏)は、三菱重工ビル爆破事件など1970年代の連続企業爆破事件で東アジア反日武装戦線のメンバーで長らく指名手配を受けていた桐島聡を名乗る男性の騒ぎに一石を投じている。メディアの過剰な報道は何だったのか。元公安調査庁長官の緒方重威氏は、同誌に「彼は組織の幹部メンバーではありませんでした。実はあの三菱重工ビル爆破事件にも桐島は関与していません」と証言している。一連の報道に首をかしげるばかりである。 
    JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年2月25日号
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2024年02月13日

【月刊マスコミ評・放送】NHK ネット業務に不安要因=諸川 麻衣

 昨年10月、総務省の「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」の「公共放送ワーキンググループ(WG)」が、NHKのインターネット活用業務を従来の任意業務から必須業務化する方向性を示した。この取りまとめを受けて放送法が改正されればNHKは、テレビ受像機を持たずパソコンやスマートフォンで放送を視聴する利用者からも、必要な手続きを経た上で受信料を徴収可能になる。

 テレビを持たない世帯が増える中、放送のネット配信は、WGでも論じられた通り、時代の必然、世界的趨勢と言える。しかし、NHKのネット業務の近未来には幾つかの不安要因がある。一つは、NHKの業務拡大は民業圧迫だとしてネットの必須業務化に強硬に反対してきた新聞協会に「配慮」する形で、「ネット業務は放送と同等の効用をもたらすものに限定」と縛りをかけてしまったことだ。これまでNHKは任意業務として文字ニュースの「NEWS WEB」や番組関連サイトなどネットでの多様なサービスを展開し、評価を得てきた。しかし文字ニュースは事実上廃止される方向が固まった。予算の制約を考えると、今後は他のサイトの中にも廃止・縮小されるものが予想される。

 第二に、放送のネット同時配信がとりあえずは地上波放送に限られ、衛星波の同時配信は見送られたこと。前田前会長時代に衛星波のネット配信の準備の予算を計上するという「勇み足」をしてしまったのと逆に、「配信のための権利料負担が大きい」との理由で見送ってしまったのだ。これでは、法改正後も配信内容は現行の「NHK+(プラス)」とほとんど変わらないことになろう。

 NHKが視聴者の要求に応えて経営を維持しようとするのであれば、衛星波のネット配信や独自のネット・サービスなどは早晩欠かせないが、現状ではむしろそれに逆行しつつある。そうした中で少し注目されるのは、能登半島地震後、旧BS103の波を使って総合テレビの地震関連の情報などを放送し始めたことだ。これはあくまで総合波の同時放送に過ぎないが、独自の災害情報を盛り込み、それをネットでも配信することも不可能ではない。そのようなサービスを拡充して社会的に支持されなければ、ネットの必須業務化は公共の利益にもNHKの存続にもつながらない看板倒れに終わりかねない。
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年1月25日号
   
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2024年02月11日

【月刊マスコミ評・新聞】災害多発時代に発想の転換を=山田明

 年初から能登半島で巨大地震が発生し、甚大な被害をもたらした。災害列島日本で、災害多発時代を実感させる。震源に近い志賀原発にも危険が迫った。巨大地震災害の全容はいまだ不明だが、厳冬の地で災害関連死が危惧される。官民一体の迅速な支援が求められる。
 巨大地震の翌日には、羽田空港滑走路で衝突炎上事故が起こった。原因の徹底究明が必要だ。羽田空港の混雑は世界3位で、超過密のなかの大事故である。この事故からも学ぶことは多い。

 今年の元日社説は毎日「二つの戦争と世界」、日経「分断回避に対話の努力を続けよう」のように、戦争と平和に焦点が当たる。日本の現実はどうか。政治を揺さぶるのが、自民党派閥の政治資金パーティをめぐる裏金疑惑である。安倍派だけでなく、自民党全体の「構造汚職」と言える。岸田首相の年頭記者会見からは、「政治とカネ」の問題に正面から取り組む覚悟に見えなかった(毎日5日)。

 岸田政権は超低支持率ながら、大軍拡と強権政治を進めている。昨年末、沖縄県知事の権限を奪う前例のない代執行を強行。「苦難の歴史を歩み、過重な基地負担を押し付けられてきた沖縄で、この国の民主主義が揺らいでいる」(朝日12月29日)。一方、読売は「沖縄県知事は司法の判断に背いて、手続きを拒んでいる以上、国が前例のない法的手段に踏み切るのはやむを得ない」(12月27日)と主張。読売は日本学術会議についても「これ以上、結論の先延ばしを図ろうとするなら、国のリ―ダ―シップで改革を実行すべきだ」(同23日)と。強権政治にお墨付きを与える読売論調を注視。

 「第2自民党」を公言している日本維新の会にも注意が必要だ。災害に便乗して、緊急事態条項など改憲の旗振り役として危険な役割を演じている。維新が推進してきた大阪万博についても批判が高まる。万博より震災対応を優先せよ、万博中止・延期の声がいちだんと高まるが、維新はあくまで推進の立場だ。
 軟弱地盤の夢洲で開催予定の万博は、底なしの負担増と災害リスクが懸念される。何より万博への関心は低調のままだ。気候危機下の災害多発時代にあって、今こそ発想の転換が求められている。 
    JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年1月25日号
    
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2024年01月08日

【月刊マスコミ評・出版】KADOKAWAの反トランス本刊行中止=荒屋敷 宏

 KADOKAWAが2024年1月24日発売予定だったアビゲイル・シュライアー著『あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇』を今年12月5日になって突如、刊行中止としたため、論争が起きている。368ページ、本体価格2300円との近刊情報も告知されていた。

 2020年6月にアメリカで出版された原書の題は「不可逆的ダメージ:私たちの娘を惑わすトランスジェンダーの狂乱」である。確かに、原書や翻訳本の題名だけでもトランスジェンダー差別撤廃を求める人々を激怒させるものだ。出版関係者(出版社勤務・書店勤務・著者等)有志一同(代表・小林えみ氏)から意見書がKADOKAWAに提出され、「アビゲイル・シュライアーが扇動的なヘイターであり、本書の内容も刊行国のアメリカですでに問題視されており、トランスジェンダー当事者の安全・人権を脅かしかねない本書の刊行を、同じ出版界の者として事態を憂慮しています」として対策を求めていた。

 KADOKAWAのホームページには学芸ノンフィクション編集部のお詫びとお知らせが掲載された。「刊行の告知直後から、多くの方々より本書の内容および刊行の是非について様々なご意見を賜りました。本書は、ジェンダーに関する欧米での事象等を通じて国内読者で議論を深めていくきっかけになればと刊行を予定しておりましたが、タイトルやキャッチコピーの内容により結果的に当事者の方を傷つけることとなり、誠に申し訳ございません」

 KADOKAWAが本書の刊行準備で右翼文化人に応援を求めていた。「2週間程前に、KADOKAWAの担当者から手紙と本の原稿を頂きました」とアンドリー・ナザレンコ氏がSNSで告白した。『月刊WiLL』『月刊Hanada』の常連執筆者の間に翻訳本のコピーが出回っていたと聞いて、あきれるほかない。
 産経新聞に頻繁に登場する国際政治学者の島田洋一氏は今年7月に出した著書『腹黒い世界の常識』(飛鳥新社)の第6章「差別とLGBT」でアビゲイル・シュライアー氏の著書を参照しつつトランスジェンダー差別を助長する議論を展開している。右翼出版社が右翼本を出しても誰も文句を言わない。

 今回は、表面的に見ればKADOKAWAの刊行自粛であるが、問題の根は深い。表現の規制は危険である。かと言って、人権侵害や差別を助長する本を野放しにしてよいのか。KADOKAWAまでヘイト本の出版社になるとすれば、日本社会にとって好ましくないことは確かである。
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年12月25日号
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2024年01月07日

【月刊マスコミ評・新聞】慰安婦問題で韓国に筋違いの抗議=白垣詔男

 ソウル高裁は11月23日、旧日本軍「慰安婦」被害者と遺族計16人によって提訴されていた第2次損害賠償請求訴訟で、一審の棄却判決を取り消し、1人当たり約2億ウォン(約2300万円)を賠償するよう日本政府に命じる判決を出した。
 これに対して、新聞では25日の読売だけが「元慰安婦訴訟 国際法を無視した不当判決だ」と題する朝刊社説を載せた。他紙に、この件の社説はなかった。読売社説は「主権国家は他国の裁判権に服さないという『主権免除』の原則に反する判断である。断じて容認できない」と主張する。

 日本政府は、判決が出た直後、駐日韓国大使を通じて、韓国に抗議した。日韓両政府が2015年に合意した「最終的かつ不可逆的な解決」に反するという根拠だ。また、翌26日には、釜山で日韓外相会談があり、この判決に対して上川陽子外相が韓国・朴振(パクチン)外相に「極めて遺憾である」と抗議、韓国政府が「適切な措置」を講じるようよう求めた。
 以上2件の「動き」に対して、これはおかしいと思う。
 まず、読売社説の主張に違和感を覚える。社説では途中で「重大な人権侵害には主権免除が適用されないとの説に沿ったのだろうが」と述べているが、それを「列強が覇を競い合った時代の日本の植民地支配と、国際法違反であるロシアに侵略を同列視すること自体、論外だ」と判決理由を引用して述べている。しかし、「主権免除の原則に反する」と主張するのは、どうだろう。

 毎週「水曜抗議行動」などで、日本政府に元慰安婦に対する誠実な対応を求めている「日本軍『慰安婦』問題解決全国行動」は27日声明を出し、その中で「『主権免除』に対する国際法体系は個人の人権及び裁判請求権の保護を重視し、制限的免除へと変更、発展している」と韓国の今回の判決を支持している。
 また、上川外相が韓国政府に抗議した点については、尊重しなければならない民主主義国家の「三権分立」の大原則を無視した筋違いな発言だ。日韓外相会談の記事を読んですぐ、日本の司法は日本政府に忖度している判決が大多数の現状から判断すると、日本政府は自ら「三権分立」を無視していることを韓国に表明した、恥ずかしいことだと感じた。 
          JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年12月25日号                              
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