2019年08月02日

【メディアウオッチ】 権力介入が常態化 JCJ6月集会 こびない情報発信で対抗=編集部

 JCJは6月29日、東京・飯田橋の法政大学でシンポジウム「安倍政権とメディア 攻防7年」を開いた。

 冒頭、共催の法政大学図書館司書課程の坂本旬教授は、このシンポは5月6日に法政大学で開いた『世界報道自由デー・フォーラム』のパート2にあたると挨拶した。

 次ぎにコーディネーターと4人のパネリストが発言した。

 シンポで考える論点について、和光大名誉教授でコーディネーターの竹信三恵子さんは「権力によるメディアへの介入」がポイントと述べた。

 沖縄タイムス編集委員の阿部岳さんは、海上保安庁が長官の記者会見前に記者クラブ加盟社を呼び出し、「沖縄二紙の記事は誤報だ」と説明したケースなどをあげた。

 NHK大阪報道部記者から大阪日日新聞論説委員に転じた相澤冬樹さんは、官邸寄りと言われる板野裕爾NHK専務理事についてこう語った。

「安保法制(2015年9月)をめぐり、国会包囲反対運動が続いていた頃、NHKはそれを一切報道しなかった。当時の板野放送総局長が抑えて出させなかった。取材していたNHK記者たちは『板野のせいで放送できなかった』と今でも言っている」

 東京新聞社会部デスクで「メディアで働く女性ネットワーク」会員の柏崎智子さんは、麻生太郎財務相をはじめ自民党国会議員がセクハラ問題に対し妄言を続けたのは、「これまでの記者の政治家への忖度による安心感からです」と語った。

 元NHKプロデュサーで科学ジャーナリストの林勝彦さんは、自らも制作に携わった福島原発事故の映画「いのち フクシマから未来の世代へ」の一部を上映。そして早期帰還政策は「放射能安全神話」を定着させたいためだと安倍政権を批判した。

朝日新聞OB記者の植村隆さんは、記者時代の慰安婦報道を右派ジャーナリストなどによって痛烈なバッシングを受けた。自分を攻撃した櫻井よし子氏や西岡力氏と安倍晋三首相との密接な関係を提示。その上で「巨大な敵と闘っている」と覚悟のほどを語った。

 後半は登壇者によるフリートーキング。相澤さんは「権力を監視するのはメディアではなく市民。メディアは忖度しない情報を発信し、市民に判断材料を提供するのが役目だ」と対抗策を示した。

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年08月01日

【メディアウオッチ】 韓国民主化運動支えた 伝説のジャーナリスト 札幌で植村裁判を支援 「言論弾圧に声あげねば」=林秀起

軍事独裁政権と闘った韓国の伝説的ジャーナリスト任在慶(イム・ジェギョン)さん、李富栄(イ・ブヨン)さんが7月3日、北海道大学で講演した(JCJ北海道支部など主催)。2人は韓国で植村隆さんを支援する団体を立ち上げ、札幌高裁で開かれた植村裁判も傍聴した。講演での両氏の発言を紹介する。

「忍耐は美徳」ではない

任在慶さんは、1988年に市民の出資で創刊されたハンギョレ新聞の初代副社長。韓国では「ムチで打たれても痛いと言えず、腹が空いても言えない時代が続いてきた。圧力が強ければ反発も強まる。(ハンギョレ新聞)創刊は、言論弾圧に対する人々の強い反発の結果だった」と話す。

 「『忍耐は美徳だ』というのはウソだ」と強調した。

 同国では、かつて李承晩(イ・スンマン)大統領を退陣させた民主化運動のなかで誕生した新聞が、40日で廃刊に追い込まれ、創設者は北のスパイとして処刑された。そんな国柄で、生まれたてのハンギョレ新聞を守ったのは読者、市民、広告主たちだった。創刊時2万7千人の株主は今6万9千人。発行部数は50万部という。

 「株主は一度も配当を受けていない。それはハンギョレ新聞のあり方に納得してくれているからだと思う」

 時代の大きな流れ、運動の方向が味方したともいう。民主化闘争で軍事政権が終結に向かい、経済的平等への志向が強まった「時の運」が、ハンギョレ新聞を生んだと振り返る。

 「時の運は、偶然には生まれてこない。日本の言論の自由は、憲法9条を変えようとしている勢力との戦いに左右される。国の主権は、君主や大統領にあるのではない。人々が『国民主権』をどれだけ意識しているかにかかっている」「言論の自由が保障されている日本で、人々は言うべきことを言っているのだろうか。慰安婦報道で裁判を闘っている植村隆さんのように、不当な攻撃には声をあげなければならない」とも指摘した。

弱まる言論の発言力

李富栄さんは元東亜日報記者。44年前、朴正熙(パク・チョンヒ)政権の言論検閲に抗し、解雇され投獄された。

「特派員をはじめ日本の人々は、私たちの闘いをずっと支援してくれた。だから慰安婦報道で植村隆さんが攻撃されているのは、信じ難い」

 1965年の日韓条約反対の学生運動にかかわった。「条約は朝鮮併合、植民地支配の反省もないところで結ばれた。経済協力金は『独立祝賀金』とされた。河野談話や数々の首相談話、平成天皇の『痛惜の念』表明は、植民地化への謝罪だが、安倍政権はすべて覆した」

 東亜日報の約200人が、自由な言論の実施を宣言して朴正煕の検閲に対抗した。全国35社の言論人が同調した。新聞広告を出させない圧力で白紙になったスペースに、市民の激励広告が寄せられた。しかし会社側は圧力に屈し、朝鮮日報と合わせ166人を解雇した。

 「軍事独裁政権を終わらせないと記者には戻れない。民主化運動の全国組織を作る一方、金大中(キム・デジュン)、金泳三(キム・ヨンサム)ら野党指導者などとの橋渡し役も務めた」。大統領の直接選挙制を目指す改憲運動で、4回目の逮捕。度重なる刑務所暮らしで親しくなった保安係長から、ソウル大生が水攻めの拷問で死亡したこと、犯人とされる捜査官2人がここにいるが真犯人3人は外にいることを知った。

 「保安係長に、私との面談記録は廃棄しろと伝えた。私が何をしようとしているのか彼は察したと思うが、黙って見過ごしてくれた」。事件の真相は外部の協力者を通じて暴露され、大統領直選制に結び付いた。「私は記者の使命を果たせて満足している」

 「政治は残酷なものだ。議席を得るようになった政治家は『在野の者は口を出すな』という態度に変わっていく。復職の望みを断たれた記者たちは『自分たちで新聞を作ろう』と思い立った。それがハンギョレ新聞となって実を結んだ」

 新聞などのメディアは以後急増したが、大資本の影響力も強まり、保守化が進んでいるという。「大新聞が変節、SNSの発達で、正当な言論の発言力が弱まっている」のが今の課題という。

林 秀起(北海道支部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月29日

【メディアウオッチ】 出版界は制度疲労 『出版ニュース』元編集長・清田さんが講演=土居秀夫

『出版ニュース』誌と『出版年鑑』で知られる出版ニュース社が今春、惜しまれつつ経営の幕を降ろした。その代表で、長年JCJ賞選考委員も務めた清田義昭さんが、6月28日の出版部会例会で、「『出版ニュース』編集50年―いま出版界に大切なこと」―と題して語った。

清田さんは冒頭、比較哲学への関心を経てアカデミズムについて考えるようになり、その中で出版への興味を深めて出版ニュース社に入社したことなど、出版界との関わりの原点を振り返った。

 出版ニュース社は当時、国会図書館への納本事務を行っていて、常に新刊に目を通せたこと、入社2年目以降は自分のプランが誌上で実現できるようになったことから、清田氏は、自身と『出版ニュース』の業界ウォッチとしての役割を自覚するようになったという。

出版支える再販制

 出版は、多品種・少量生産で、ときには反公共的な面もある点で、大資本で公共性や公益性を求められる新聞、放送とは、大きく異なる。そこから清田さんは、出版・表現の自由は流通の自由なくしてはありえないことを強く意識するようになった。そして出版・表現の自由は「守る」のではなく「拡げる」ものだと強調。現在も年間出版点数は8万点もあるが、誰もが手がけられるメディアとして当然なことで、それを支えているのが再販制(再販売価格維持制度)と委託販売だと、講演の主題へ話を移した。

 オイルショックでも成長を続けた出版業界に対し、公正取引委員会が、定価の高さ、断裁の無駄、流通の非効率などから出版物の再販制廃止を言い出し、騒然となったのが78年。業界側は、寡占化や流通の困難、中小出版の経営悪化の恐れなどを挙げて反論し、『出版ニュース』も「再販ニュース」と言われるほど、この問題に取り組んだ。

 公取委は結局、2001年に再販制存置を決めたが、電子出版物は除外。同じ著作物でありながらそうなったのは問題だと、清田さんは指摘した。

深刻アマゾン問題

 出版業界は80年代以降、雑誌が牽引する「雑高書低」の成長を続けたが、1995年がピークで、同年、ウィンドウズ95が発売されたのが大きな分岐点となったと分析。以後、右肩下がりが止まらず、いまや「雑低書高」となり、雑誌の時代は終わった。それが中小書店の経営を打撃し、日書連の書店は3000店にまで減少したこと、2000年のアマゾン参入後は、ポイント制や割引販売、出版社との直接取引などで再販制が事実上、無視されていることを述べた。

 一方、業界は出版社、取次、書店とも対応はバラバラだ。その結果、再販制がなくなればかつて業界が危惧したことが起きるだろう。「制度疲労」といわれるが、どこがなぜ疲労しているのか、運命共同体である業界三者で議論・検証する必要があると主張した。

 国会の活字文化議員連盟の「公共図書館プロジェクト」が出した答申でも、書店の疲弊と図書館問題を取り上げているが、書店は読者と出版界が向き合う最前線であり、その問題を起点に再販制の議論をしていくべきだと提案して、講演を終えた。

 講演後の質疑応答でも再販制とアマゾンが話題となり、この問題の大きさが改めて浮き彫りにされた。  

土居秀夫

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月26日

【メディアウオッチ】6月~7月=編集部

◇ロシア記者軟禁で抗議の200人を拘束
ロシアの独立系ニュースサイト「メドゥーザ」のイワン・ゴルノフ記者が麻薬密売容疑で捜査当局に一時軟禁されたことに抗議する市民ら数百人以上が12日、モスクワ中心部に集まった。野党系サイトによると約200人が拘束された。(「東京」6月14日付ほか)

◇「性別確認」BPOが審議〜読売テレビのニュース番組
放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は14日、番組内のコーナーで一般人の性別をしつこく確認する様子を放送した読売テレビ(大阪市)のニュース番組「かんさい情報ネットten.」について審議入りすることを決めた。問題となったのは、5月10日に放送した街角ロケのコーナー。飲食店員から「(常連客に)男の人か女の人か聞いて」と依頼を受けたお笑い芸人が、常連客の同意を得て胸を触ったりする模様を流した。(「毎日」6月15日付ほか)

◇NHK同時配信、費用上限順守を〜民放連会長
民放連の大久保好男会長は14日の会見で、NHKに放送番組のインターネット常時同時配信を認める改定放送法が成立したことを受け、「NHKには配信費用の現行枠をしっかり守ってもらいたい」と述べた。受信料収入の2.5%までと定められたネット関連業務の上限順守を訴えた。(「しんぶん赤旗」6月16日付ほか)

◇関テレ「ヘイト」放送、番組で謝罪
関西テレビが5月18日放送のバラエティー番組「胸いっぱいサミット!」で、作家の岩井志麻子氏の「(韓国人は)手首を切るブスみたいなもん」とヘイトと受け取られかねない発言を編集せずに放送した問題で、同社は22日昼の番組冒頭で謝罪した。(「毎日」6月23日付ほか)

◇大阪市、街宣ヘイト初認定
ヘイトスピーチ抑止を目的とした条例に基づき、大阪市の有識者審査会は2日までに、2016年9月の大阪市内での街宣活動と、その音声ファイルをインターネット上で公開した行為がヘイトスピーチに当たると認定し、市に答申した。街宣活動の認定は初めて。(「神奈川」7月3日付ほか)

◇NHK、吉本興業に要望
吉本興業のお笑い芸人らが振り込み詐欺グループの宴会に参加し金銭を受け取っていた問題について、NHKの上田良一会長は4日の会見で「番組の出演者をめぐって視聴者から不信感や疑念を抱かれることがないよう、しっかり対応して参りたい」と述べた。担当者によると、番組制作に影響が出かねないような情報があれば、速やかにNHKに伝えるよう求めたという。(「朝日」7月5日付ほか)

◇一部記者排除「独裁政権のよう」〜NYタイムズが批判
米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は5日、東京新聞の望月衣塑子記者を紹介する記事を掲載した。菅義偉官房長官らに対して多くの質問を繰り出すことで、日本の報道の自由にとって「国民的英雄のような存在」になっていると指摘した。背景として、日本政府は一部の記者を会見から排除するなど「独裁政権のような振る舞い」をすることがあると批判。日本には多くの記者クラブがあり、所属する記者たちは情報を得られなくなることを恐れ、当局者との対立を避ける傾向があるとの見方も紹介した。(「東京」7月7日付ほか)

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月25日

【メディアウオッチ】NHKもテレ朝も「安倍忖度」人事 「官邸御用聞き」専務理事に3年ぶり復帰 政権批判の経済部長 報道局からパージ=河野慎二

 このところ、安倍晋三政権寄りとの批判が強まるテレビ朝日で7月1日、それを印象づける報道局幹部の人事があった。「報道ステーション」のチーフプロデューサー(CP)として、テレビ朝日の報道を支えてきた松原文枝経済部長が報道局から外され、イベント事業戦略担当部長に発令された。

不正追及崩さず    
 松原部長は「報ステ」CPを務めた2016年、「ワイマール憲法の教訓」を題材に安倍改憲の危険性を取材した映像で、JCJ賞を受賞している。
 経済部長就任後も、政権の不正追及の姿勢を崩さず、年金に関わる「2千万円不足問題」では、テレ朝記者が麻生太郎財務相追及の口火を切った。重要な局面では松原部長自身が記者会見に出席し、現場記者を支えた。テレ朝記者の質問に麻生財務相は「またテレビ朝日か。ものの見方が俺たちと全然違う」と敵意を隠さなかった。
 この点について、森友学園疑惑のスクープ取材を巡る配転命令でNHKと訣別した相澤冬樹氏がJCJの6月集会で「松原経済部長は政権を忖度せず、真っ当にニュースを出してきたから、それがダメだとして配転された。何が何でも、報道の外に出すという(上層部の)意思がある」と指摘した。
 その上で相澤氏は「早河洋会長と近い見城徹氏がテレビ朝日番組審議会の委員長に就任してから『報道ステーション』をヤリ玉にあげるなど、今回の松原氏外しにつながった」と松原経済部長の異例な人事の背景に言及した。

見城徹氏の役割
 見城氏については本紙6月号で記事にしたが、ベストセラーづくりの名物編集者で幻冬舎の社長。もう一つ安倍応援団≠フ顔を持ち、知人や友人を安倍首相に引き合わせている。
 早河会長も13年3月見城氏の紹介で安倍首相と会食。これを境にテレビ朝と安倍官邸の距離は急速に縮まり、NHKに劣らずアベチャンネル化≠ェ進むのではないかと懸念が広がる。松原氏のもとには「誰が見ても左遷人事だ。大変だけど頑張れ」と激励する仲間が少なくない反面、若い後輩からは「テレ朝にとって、想像以上のダメージです」「テレ朝報道の終わりの始まり。政権監視は当たり前なのに、安倍忖度≠ナすね」などのメールが送られ、衝撃が広がった。

内示後もスクープ
 松原氏は「萎縮したら、向こうの思うツボ。ひるまず、取材を続けて」と返信。「私もへこんでばかりではいられない」と前を向く。
 異動内示後も松原氏は、農水省が所管する政府系ファンド「農林漁業成長産業化支援機構」のズサンな融資と累積損失の実態をスクープする。「支援機構」には、国が300億円を出資している。
 松原氏自ら「報道ステーション」(6月25日)に生出演し、独自に入手した「支援機構」の内部文書をもとに、国民からの資金で運営する財政投融資が食い物にされる危険性を解説した。
 さらに彼は、立教大学が開催した「国際カジノ・シンポジウム」の取材を指揮した。「日本統合型リゾート〜健全社会のIRを目指して」と題して5日から開催されたが、実態はカジノの人材養成講座で、文学部と社会学部の教授会が総長に連名で抗議。豊島区も後援を取りやめた。
 テレ朝は学内で教授や学生にインタビューを行い「立教はカジノに魂を売るな」などの声を伝えた。この「カジノ・シンポ」を取材したのは、民放ではテレ朝だけだった。
 権力の不正に迫ろうとする松原氏の姿勢に揺らぎはない。しかし、報道強化に欠かせない貴重な人材を報道局からパージするテレ朝首脳の判断は、安倍官邸の評価は得ても、視聴者の信頼は失うだけだ。

裏で密かに蠢く
 一方、NHKでは、籾井勝人元会長の側近・板野裕爾氏の専務理事復帰で、テレ朝以上に安倍政権御用化≠ェ進むことが危惧されている。
JCJが参加する「NHKとメディアの『今』を考える会」は6月25日、NHK前で板野氏の退任を求める集会を開催した。大貫康夫さん(元NHKヨーロッパ総局長)はこう言った。「NHKは政権べったりで、公共放送と言えるのか。板野専務理事の仕事は裏で蠢くことではない」。
各参加者は口々に板野即刻退任の声を上げた

河野慎二

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月14日

【月刊マスコミ評・放送】 小川彩佳キャスターと筑紫イズム=三原治

テレビ朝日を4月に退社し、その2カ月後、TBS系報道番組『NEWS23』のメインキャスターに抜擢された小川彩佳キャスターのリニューアル版が6月3日スタートした。小川さんは2007年4月にテレビ朝日に入社して以降、『サンデープロジェクト』の司会、『報道ステーション』のサブキャスター、直近ではインターネットテレビ局「AbemaTV」のニュース番組『AbemaPrime』の司会進行を務めるなど、一貫して報道畑に携わってきた。特に看板番組『報道ステーション』を7年半経験し、将来の報道番組を背負っていく逸材に違いなかった。そんな未来あるキャスター移籍の話題が夜のニュース戦争に拍車をかけている。

夜11時台に放送されているニュース番組と女性キャスターは、NHK『ニュースきょう一日』は井上あさひ。日本テレビ『news zero』は元NHKでフリーの有働由美子。TBS『NEWS23』は小川彩佳。フジテレビ『Live News α』は三田友梨佳。テレビ東京の老舗番組『ワールドビジネスサテライト』は大江麻理子。夜10時のテレビ朝日『報道ステーション』は徳永有美といった顔ぶれである。平成から夜ニュースは女性キャスターの時代に入っていたが、令和となって小川キャスター参入で、夜のニュース戦争が激化してきた感がある。

 骨太なニュース番組は姿を消した。権力を監視する辛口なキャスターもいなくなった。報道のTBSを自負する『NEWS23』も筑紫哲也氏の頃の緊張感はなくなった。安倍内閣の下、益々右傾化する今こそ、筑紫氏のようなキャスターを必要としている。彼は、少数派の立場に立ち続け、沖縄への思い入れを持ち続け、護憲の立場を崩さなかった。世の中にはびこる権力や日本という国を踏みにじるような社会の趨勢に、常に「にこやかに」、硬直的でない抵抗のスタイルを貫いた。彼の剛健な気風は、どんな人が投げるどんな球でも受け取り続けた。

 『NEWS23』という冠を受け継ぐ小川キャスターにその精神や心構えは宿っているのだろうか。

 小川キャスターは、半年間のブランクを感じさせない番組さばきは見事。インタビューでは、自分なりの感性と言葉で伝えようとする姿勢が垣間見えた。ジャーナリストとしての資質を褒める評論家の指摘もある。

これまでメインキャスターを務めてきた星浩氏がアンカーとして小川キャスターを支える。スポーツは石井大裕アナウンサー、サブキャスターを山本恵里伽さん、取材キャスターを報道局の村瀬健介記者が務める。2週間視聴したが、期待は感じている。目先の視聴率で揺らぐことなく、信じる報道姿勢を貫いてほしい。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月07日

【月刊マスコミ評・新聞】 対北朝鮮 無策への疑問ないのか=白垣詔男

日本の対北朝鮮外交は全くゼロなのか―そう思わせるニュースがあった。

6月5、6日、モンゴルでの国際会議の記事だ。朝日が5日朝刊で「北朝鮮が国際会議欠席 首脳会談打ち合わせの予定が」と前触れ記事を掲載した。6日朝刊では読売「日朝会談へ接触想定 モンゴル対話に北朝鮮参加せず」、産経とその他一部の地方紙(共同通信記事)「政府、日朝会談意向、伝達できず 北朝鮮がモンゴルでの会議欠席」の見出しで、外務省幹部が出席した国際会議に北朝鮮が欠席したことを報じた。これで安倍晋三首相が「前提条件なしで北朝鮮との対話」を提唱する意向を見せていたことを北朝鮮に伝えられなかったと「事実」のみを書いていた。毎日、西日本は報じなかった。

北朝鮮との関係について、「拉致問題解決」も「日朝首脳会談」も、安倍政権は米トランプ大統領頼みで、いずれも手詰まりの安倍首相は、それでも「外交の安倍」と胸を張るのだろうか。「モンゴル国際会議、北朝鮮欠席報道」からは、そうとしか読み取れない。

しかも、「親安倍新聞」も「正常なジャーナリズム感覚をまだ失っていない新聞」も、事実のみしか報じなかった。記事を書いた記者は、読者が抱く疑問を考えなかったのか。

本来、この記事は、日本の、対米追従だけの「対北朝鮮外交無策」について、これでいいのかという疑問を抱き、その解説が必要だろう。それを、日朝首脳会談の事前接触が、モンゴル国際会議頼みだったというだけの印象を与える内容では、読者不在の記事と言ってもいいだろう。

裏を返せば、「対北朝鮮外交」を外務省はどう考えているのかを知りたい。最前線で北朝鮮と接触をする、かつての田中均さんのような外務省幹部はいないのか。北朝鮮との接触方法が、国際会議に出てくると予想した北朝鮮の代表しか当てにできないとしたら、いくら国交がない国相手としても、政府(外務省)の姿勢はお粗末だ。安倍首相が「拉致問題解決が私の最大の仕事」と胸を張っても、事実は「やっているポーズ」でしかないことが、今回の一件で、さらに確実になったと思う。

そうした読者の疑問に答える解説記事をどこも掲載しなかったことは残念で仕方がない。

白垣詔男

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
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2019年07月03日

【メディアウオッチ】 安倍政権で「壊れた」NHK 山口二郎氏 放送法制度改革を訴え=河野慎二

市民連合と立憲野党4党1会派は5月29日、安倍改憲反対や戦争法廃止など13項目の共通政策で合意した。その中で注目されるのは「新たな放送法制構築」で合意したことだ。

合意内容は「国民の知る権利を確保するという観点から、報道の自由を徹底するため、放送事業者の監督を総務省から切り離し、独立行政委員会で行う新たな放送法制を構築すること」となっている。

 独立行政委員会で放送事業を監督する方式は、日本とロシア以外の先進諸国では共通して行われている。今回、参院選に向けた政策合意でこの問題が盛り込まれたのは画期的なことだ。

翼賛的な姿勢

そこで、市民連合の呼びかけ人として、政策合意のとりまとめにあたった山口二郎法政大学教授に話を聞いた。

山口氏は「安倍政権が今日まで長続きしている理由の一つに、メディアの翼賛的な姿勢がある。とりわけ、大きな力があるテレビは認可事業だから、政府の影響が及びやすい」と指摘し「メディアの批判的な機能が著しく低下しており、ここで放送制度を変えないと翼賛体質がさらに進む」と危機感を露わにした。述べた。市民連合がまとめた要望書に各党会派の代表が署名したことに、山口氏は「重みがある」と述べた。

民主主義のインフラ

 そして、「安倍政権のメディア支配のやり方には、常軌を逸したところがある。この機会に、公平・公正なテレビとは何かを、きちんと議論しないといけない。民主主義のインフラですよ、これは」と強調した。

 特にNHKについて山口氏は、「一番驚いたのは天皇代替わり報道で、天照大御神を天皇の祖先と伝えたことだ」と指摘し「言語道断。会長のクビが飛んでもおかしくない」。その上で「安倍政権6年。いろんなところで壊れたが、一番壊れたのがNHKだ」と批判した。

ネット常時同時配信

 これに対し、NHKはどう対応するのか。

NHKを巡っては、改正放送法が5月末成立し、インターネットでの「常時同時配信」が認められ、NHKの全テレビ番組が放送と同時に、スマホやパソコンで視聴できるようになる。民放などのNHK「肥大化」批判に対し、上田会長は「放送の補完」を強調するが、新たな受信料収入に利用しようとするNHKの姿勢は強まるだろう。

 実際、17年7月、坂本専務理事が「将来的には本格業務としたい」と述べてテレビを持たない世帯からも利用料を集める考えを示し、上田会長が火消しに回ったことがある(川本祐司「変容するNHK」より)。

板野専務衝撃復帰

その一方で4月、NHK内部にも衝撃が走る人事があった。板野裕爾氏が専務理事に復帰したのだ。NHKのあるOBは「わたしたちの宝物である国谷裕子さんを切り捨てることに、何のこだわりもなかった奴」と非難している。

官邸に太いパイプがある板野氏の復帰についてNHK関係者は「官邸が板野に貸しを作った」と見る。だとすれば、板野氏はどんな見返りを用意するのか。NHKと官邸の距離をさらに縮め、忖度を強める。安倍政権に不都合な事実は伝えない…。

NHKが目指す「公共メディアとは名ばかりの「国策報道メディア」に仕立て上げて借りを返すつもりなのか。

 山口氏は「異常な安倍政治が続く今こそ、権力者に対するメディアの独立性を再構築しないといけない」と強調。独立行政委員会による新しい放送法制の構築に、市民の理解と参加を呼びかけた。

河野慎二

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
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2019年07月01日

【メディアウオッチ】 メディアの信頼高める活動を JIMAが設立シンポ リテラシー教育も推進

フェイクニュースやヘイトの言説の横行など、ネットメディアの信頼を揺るがす問題の解決を図っていこうと、インターネットメディア協会(略称JIMA)が発足、設立を記念したシンポジウムが6月8日、都内で開かれた。JIMAは今後、加盟メディアなどで議論を深めて倫理綱領を策定し、「送り手」の信頼を高める努力をする。一方で、メディアリテラシー教育にも力を入れ、ネット情報の「受け手」のリテラシー向上に取り組んでいくという。

JIMAは、ネットで情報発信するメディアのほか、配信するプラットフォームや広告などの関連事業者などが加盟(会員数34=5月末現在)。スマートニュースメディア研究所の瀬尾傑所長が代表理事を務める。

シンポの冒頭、瀬尾氏は挨拶で、設立の狙いを「信頼性ある情報をどう届けるかであり、インターネット上に形成されてきたインタラクティブな創造性と多様性をどう守っていけるか」とし「平場で、さまざまな議論」をしたいと述べた。

「メディアの創造性と信頼のために今なすべきこと」と題したパネルディスカッションでは、ジェイ・キャスト執行役員の蜷川聡子氏、BuzzFeed Japanシニア・フェローの古田大輔氏、MarkeZine(マーケジン)編集長の安成蓉子氏、NHKネットワーク報道部専任部長の熊田安伸氏、JX通信社代表の米重克洋氏が登壇、東洋経済オンライン編集長の武政秀明氏の進行で、多様な立場から「信頼されるメディア運営とは?」「表現の自由と規範をどう支えるか」「メディア経営をどう考えたらいいのか」などの議論を深めた。

信頼されるメディアについて、古田氏は「ユーザー(読者)に対して誠実な情報を発信する。我々がなぜ信頼性があるのか、信頼されるメディアであることを自ら証明すること」が必要だと強調。また熊田氏は「メディアにこそ説明責任が求められる」とし、NHKのウェブで政治部の記者が署名入りで執筆している「政治マガジン」では、従来のメディア(NHKを含め)では書き切れなかった綿密な取材で得た情報などをそのまま伝え、読む側が判断する材料を提供する取り組みを紹介。「そこまでやって信頼が得られる」と、レガシーメディアでは発信しきれていなかった試みを説明した。

「送り手」側とともに「受け手」「支え手」のリテラシーを重視するJIMAは、元TBSキャスターでリテラシー教育に取り組んでいる下村健一氏(令和メディア研究所主宰)が担当理事になり、受け手向け公開講座を積極的に展開し、子どもたちから一般のメディアリテラシーを高める活動を広げていく予定。また支え手である広告業界団体などとも連携を進め、ネットメディアが抱える多様な課題を業界横断的に一緒に考え、解決していける団体を目指すという。

鈴木賀津彦

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
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2019年06月28日

幻冬舎・見城社長の変身 「安倍応援団」中心メンバー 権力にすり寄る、その先は……=編集部

幻冬舎は見城徹社長と社員一同の名前で、作家・津原泰水氏へのお詫びを5月末に自社ホームページに掲載(写真)した。津原氏著作の実売部数さらし≠謝罪したのだ。

しかし、彼の文庫本の刊行中止について言及も謝罪もない。「著作者の自由と権利を守り、制圧または干渉には排除する」という出版倫理綱領に反しているのに、その経緯を明かさない幻冬舎の責任は、厳しく問われるべきだ。

ベストセラーづくりの名物編集者・見城氏が、なぜか安倍晋三首相が第一次政権を放り出した07年以降、安倍応援団≠買って出る。12年9月の自民党総裁選の20日前には、小川榮太郎氏の『約束の日 安倍晋三試論』(幻冬舎)を刊行、大々的に新聞広告を打って安倍を援護射撃した。

「首相動静」から消失

さらに自分の知人・友人を安倍首相に引き合わせている。テレビ朝日の早河洋会長(75歳)もその一人。13年3月22日に続き、翌年の7月4日には早河会長、吉田純一社長、見城氏の3人で安倍首相と2時間会食している。

その見城氏は、07年7月からテレビ朝日の番組審議会委員になり、14年4月には委員長のポストに座る。途端に「首相動静」に見城氏の名前が載らなくなった。時の権力者とべったりの人物が番組審議会委員長となれば、「報道の自由」など守れないという批判への対応に他ならない。

代わりに16年3月にテレビ朝日が40%出資し、開設したネット放送局AbemaTVを活用する。見城氏が司会する「徹の部屋」(現在、番組中止)を7月に立ち上げる。17年衆院選公示2日前の10月8日の「徹の部屋」に、安倍首相を生出演させた。

見城氏自ら「日本の国は安倍さんじゃなきゃダメだ」「ハンサムですよ。内面が滲み出ているお顔ですよ」などと太鼓持ち発言≠連発。出版社のトップが総選挙公示直前に安倍ヨイショ≠するのは前代未聞だ。

「アベ友」著作続々

幻冬舎の出版物に話を戻そう。16年参院選を控えた6月10日、山口敬之氏の『総理』の出版広告が、新聞に大きく掲載された。官邸筋に頼んでレイプ事件をもみ消したアベ友記者≠フ本だ。それ以降、百田尚樹『日本国紀』など、安倍応援団の著書がタイミングよく出版され、安倍政権をバックアップしている。

恩返しか、安倍首相は昨年末のフェイスブックで〈年末年始はゴルフ、映画鑑賞、読書とゆっくり栄養補給したいと思います。購入したのはこの三冊〉と書き込み、『日本国紀』の画像をアップし、PRに一役買った。

どうする出版界

出版社が権力者にすり寄ればどうなるか。戦前を思い出してほしい。満州事変勃発を機に、日中戦争に入るや、大政翼賛会による国家総動員体制下で、出版界は「言論・表現の自由」を奪われ、戦意高揚へ全面協力させられた。苦い教訓を持っているからこそ出版人は「権力からの自立」をめざし努力を重ねてきた。

にもかかわらず、1950年生まれで「平和憲法」のもとで育ったはずの出版人が、「戦争する国」に突っ走る安倍政権に、これほどまでに擦り寄るとは、恐るべき事態だ。

この危機的状況にどう立ち向かうか、出版界は問われている。

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
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2019年06月25日

【メディア気象台】 5月〜6月=編集部

NHK受信料、支払率8割に
NHKは28日、2018年度末の受信料の世帯支払率(推計)が81.2%だったと発表した。17年度末から1.8㌽上昇し、公表の始まった11年度以降、最高。初めて80%を超えた。都道府県別では最も高かったのは秋田の98.3%。最も低かったのが沖縄で51.0%だったが、公表以来、初めて50%を超えたという。(「朝日」5月29日付ほか)

菅長官、記者に「指しません」
菅義偉官房長官は29日の会見で、東京新聞記者の質問に対して「その発言だったら指しません」と述べた。政府のスポークスマンによる特定記者の質問排除につながりかねない発言だ。会見進行役の官邸報道室長が特定の記者の質問中に「簡潔にお願いします」と述べることに関して、東京新聞記者が質問。菅氏は「そうしたことを質問するところではなく、記者会主催でありますから、記者会に申し入れてください」などと答えていたが、この記者がさらに質問しようとしたところ「その発言だったら指しません」と述べた。(「朝日」5月30日付)

日販、19年ぶり赤字
出版不況が深刻化するなか、出版取次大手の日本出版販売グループ(日販)は29日、2018年度の決算が19年ぶりの赤字になった、と発表した。雑誌の販売不振や配送コストの増大などが響いた。売上高は前年比で5.8%減って6457億円。純損益は2億円の赤字だった。売上高の約9割を占める取次事業で3億円の営業赤字を出した。(「朝日」5月30日付ほか)

米新聞大手が合併交渉〜実現なら部数首位
米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)電子版は5月30日、米全国紙USAトゥデーを傘下に持つ米新聞大手ガネットと同業のゲートハウスメディアが合併交渉を行ったと報じた。実現すれば発行部数のほか、保有する新聞が日刊紙で250を超え、全米首位の新聞チェーンが誕生することになる。(「東京」6月1日付)

日本の報道独立性懸念〜国連特別報告書
国連のデービッド・ケイ特別報告者が、日本メディアの独立性に懸念を示す新たな報告書をまとめたことが5日、分かった。放送番組の政治的公平性を定めた放送法4条の撤廃などを求めた2017年の勧告について、履行されていないと指摘している。菅義偉官房長官は同日の記者会見で、報告書について「極めて遺憾。記述は不正確かつ根拠不明のものを含んでおり、受け入れられない」と反論した。(「しんぶん赤旗」6月7日付ほか)

公的文書、西暦も記入を〜憲法学者ら訴え
官公庁など公的機関の文書で年月日表示が元号だけなのは不便として、学者やジャーナリストらでつくる「西暦併用を求める会」が6日、都内で記者会見し、西暦を併記するよう求める声明を発表した。声明では元号が国内でしか通じないことや、連続性がないことを問題視。データ管理などさまざまな場面で西暦との換算を強いているとし、「国民主権の下にある公的機関ならば、実用性に優れる西暦も併記するべきだ」と訴えた。(「東京」6月7日付ほか)

特定秘密、手続きせず廃棄〜海自、公文書コピー100件
海上自衛隊が公文書管理法に基づく手続きをしないまま、特定秘密に指定されているコピーの文書100件を廃棄していたことが7日、政府が閣議決定した2018年の特定秘密保護法の運用状況に関する報告書で明らかになった。防衛相はイラク派遣部隊の日報隠ぺい問題でずさんな対応が批判されたが、公文書管理に対する意識の低さが改めて浮き彫りになった。(「東京」6月8日付ほか)

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
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2019年06月08日

【月刊マスコミ評・新聞】 心に響く高村薫さんの朝日への投稿

 30年前とは雰囲気は大きく異なるが、改元騒ぎが続いた。とりわけテレビは改元一色となり、NHKの放送時間は4月29日から3日間で33時間という。安倍政権による改元の政治利用も目についた。

垂れ流される報道のなかで、朝日4月30日の作家・高村薫さん寄稿が心に響いた。この30年の歴史を振り返り、何よりも変わる意思と力をもった新しい日本人が求められると。

今から30年前、1989年はベルリンの壁崩壊、冷戦終結という、戦後史にとって節目の年であった。日本国内はバブル絶頂期であり、消費税3%がスタート。その後、バブルが崩壊して経済社会の混乱が続いた。日経4月30日社説も「未完の成熟国家だった」とし、人口減社会の到来など、日本が抱える試練への対応を求める。

ことし2019年も、揺れ動く時代の転換点になるのではないか。日本国憲法施行から72年の時を刻む。憲法記念日の読売社説は「もとより、憲法改正論議の中心は、9条である。一部に根強く残る自衛隊違憲論を払拭し、国の安全と国民の命を守る正当性を明確にする狙いは理解できる」。安倍政権の狙いを理解できると言うのだろうか。 

毎日社説は「今、憲法をめぐって手当てが必要なのは、9条の問題よりもむしろ、国会の著しい機能低下だろう。その最たるものは首相権力に対する統制力の乏しさだ」。

読売5月10日「憲法考」での馬場伸幸・日本維新の会幹事長の発言にも注目したい。改憲勢力が「3分の2を維持することは、我が党にとっても参院選のアピールポイントになる」。安倍政権の「別働隊」として、改憲勢力の一翼であると明言。安倍改憲に向けて、維新の援軍ぶりが際立つ。

地域政党の大阪維新の会は、脱法行為といえる大阪府・市「入れ替えダブル首長選」で圧勝し、府議・市議選も大きく議席を伸ばした。ノンフィクションライター松本創さんが本紙4月号に寄稿したように、広がり定着する「穏健」支持層など、大阪での維新政治は、その基盤を広げている。選挙後には、公明・自民が変質して、大阪「都」構想=大阪市潰しの住民投票が現実味を帯びてきた。

維新の動向は大阪だけでなく、安倍改憲など国政にも重大な影響をもたらす。注視したい。

山田明

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
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2019年06月01日

【メディア気象台】 4月から5月=編集部

トランプ報道にピュリツアー賞
米報道界で最高の栄誉とされる2019年のピュリツアー賞が15日発表され、トランプ大統領をめぐる疑惑の調査報道を行ったニューヨーク・タイムズとウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の両紙が受賞した。タイムズ紙は「18か月間にわたる徹底調査」(選考委員会)を通じ、トランプ氏が1990年代に一族による脱税工作に関与した疑惑を明らかにし、解説報道賞に選ばれた。WSJ紙はトランプ氏と不倫関係にあったと主張する女性に、トランプ氏側が口止め料を払っていたことを暴露した報道で国内報道賞を受けた。(「しんぶん赤旗」4月17日付ほか)

旅券返納命令で国を提訴
中東イエメンの取材を予定していたジャーナリストの常岡浩介さん(49)が外務省から旅券の返納を命じられた問題で、常岡さんは24日、国を相手に命令の取り消しを求めて東京地裁に提訴した。同日、外国特派員協会で会見し、報道の自由が制限されたと訴えた。(「朝日」4月25日付ほか)

女性記者が長崎市を提訴、「取材で性暴力」「名誉も傷ついた」
長崎市の男性部長(故人)から性暴力を受けたという報道機関の女性記者が25日、市に約3500万円の損害賠償と謝罪を求めて長崎地裁に提訴した。取材過程で性暴力がふるわれたほか、市の他の幹部が虚偽の話を広めたにもかかわらず、市が対策を怠ったために記者の名誉も傷つけられたなどと主張しており、弁護側は「報道の自由が侵害された」と訴えている。(「朝日」4月26日付ほか)

菅氏「文書管理問題ない」
菅義偉官房長官が25日の記者会見で、NPO法人の情報公開請求により、2017年度から2年間に公文書として作成された11府省の各閣僚の日程表がすべて不存在となっていたことについて、文書管理上の問題はないとの認識を示した。(「毎日」4月26日付ほか)

「NHKから国民を守る党」統一選躍進、参院選擁立へ
今月の統一地方選でNHKへの批判を唯一の政策に掲げた政治団体「NHKから国民を守る党」の公認候補26人が当選した。所属する地方議員は選挙前の13人から39人に大幅に増え、26日には今夏の参院選に候補者を擁立すると発表した。「ネットの時代にNHKのみに強制的に(受信料を)支払わせることに相当の不満があって投票につながった」。会見した同団体の立花孝志代表(51)は、統一地方選についてそう述べた。7月の参院選では比例区への候補者擁立に必要だとして、選挙区も含め10人を擁立すると発表、自らも東京都葛飾区議を辞職して比例区に立候補すると表明した。(「朝日」4月27日付ほか)

サウジ記者殺害に河野外相は触れず
訪問先のサウジアラビアで同国のムハンマド皇太子と会談し、サウジの経済構造改革を支援する考えを改めて強調した。日本外務省によると、河野氏は約1時間の会談で、ムハンマド氏の関与が指摘されるサウジ人記者カショギ氏殺害事件について言及しなかった。殺害事件を巡って国際社会から批判を受けるムハンマド氏に配慮したとみられる。(「東京」4月30日付ほか)

改元報道、テレビは170時間
改元前後の7日間のテレビ番組で、天皇や改元をめぐる特集が170時間を超えたことが、番組・CM調査を手掛けるエム・データ(本社・東京都板橋区)の調べで分かった。同社はNHKと在京民放キー局の4月28日〜5月4日の地上波放送で「改元」「令和」「天皇」「皇后」のいずれかのキーワードが入ったコーナーや特集などの総量を調べた。(「朝日」5月11日付)

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
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2019年05月30日

【「令和」狂騒報道】 放送 恐るべき礼賛横並び 制度批判の言論伝えず=戸崎賢二 

 4月30日、5月1日の退位・即位の日、おびただしい量のテレビ報道があった。
印象を端的に言えば、恐るべき同一性ということだろうか。
 新天皇即位の日のテレビ報道は、前夜のカウントダウン、各地の「令和」奉祝行事、新生児が並ぶ産院の取材、それに、新天皇の過去の事績の歴史資料映像といった内容に終始し、ここに例外なく「おことば」を読み解く解説が加わる。
 日中のワイドショーはもちろん、5月1日のNHK「ニュース7」「ニュースウオッチ9」テレビ朝日「報道ステーション」TBS「NEWS23」などを視聴したが、どの局も判で押したように似た内容だった。
 こうした一連の報道がはらむ問題は何か。二つの点を指摘したい。

憲法違反の疑い
 第一の問題は、代替わりの儀式に憲法上の疑義があるという批判があるのに、その議論の存在が全く伝えられず、放送全体が奉祝の基調に蔽われていたことだ。
 即位の儀式は、天照大神から授かったとされる三種の神器の継承を核としている。これは、天皇が神の子孫であることを主張する宗教的行事であって、このような皇室祭祀を国家的行事とすることは、憲法の政教分離の原則に明らかに反する。
 また続いて行われた「朝見の儀」は、本来は「天皇が群臣を召して勅語を賜う儀式」(広辞苑)である。一段高ところに立った天皇に議員らが臣下のごとく拝謁するという形の儀式は、天皇の地位が国民の総意に基づくという憲法の精神とは相容れない。

 ニュース制作者は、こうした論点を知っていて意図的に避けたのだろうか。そうであればまだしも救いがある。
 筆者の推測にすぎないが、放送現場には、このような憲法の知識がそもそも不在であり、憲法や天皇制の起源に関する無知・無教養が蔓延しているのではないか。このほうがことは深刻である。
 4月18日、明仁天皇が伊勢神宮を参拝したとき、NHK「ニュースウオッチ9」のアナウンスは、伊勢神宮について「皇室の祖先の天照大神がまつられています」と留保抜きで紹介した。天皇の祖先が神であると明言した形である。
 こうした報道もまた無知を露呈するものだった。

天皇制批判排除
 もう一つの問題は、テレビでは、天皇制そのものに対する批判的言論が抹殺されたかのようにほとんど伝えられなかったことだ。
 ある特定の家柄に生まれたことで特別に高い地位に就く、という制度は、どう考えても憲法の原理には反する。しかも日本人は過去、その地位への尊崇と服従を強制され、戦争の惨禍を経験している。こうしたことから、天皇制に疑念を抱く国民が少数とはいえ、確実に存在するはずである。
 しかし、退位・即位関連番組は制度批判の言論をほとんど伝えていない。

 新天皇即位の「おことば」のなかに、注目すべき文言がある。
「…歴代の天皇のなされようを心にとどめ、自己の研鑽に励む」と新天皇は述べた。「歴代天皇」の中には当然昭和天皇が含まれるだろう。ここには昭和天皇の名によって遂行された戦争の時代から現行憲法の時代への転換の認識が見られない。各局ニュースは「おことば」を必ず解説したが、この点を指摘した解説は見当たらなかった。
 5月3日の「NEWS23」は、当日の毎日新聞の天皇制についての世論調査で、「天皇制は廃止すべき」とする意見が7パーセントあったと伝えた。象徴天皇制でよい、とする意見74パーセントに比べれば圧倒的に少数だが、100人の国民がいればそのうち7人が天皇制反対ということになる。決して少ない数ではない。
 代替わりの時期は、国民が天皇制とは何かを考える絶好の機会であるはずだった。少数意見の存在もまた報じられてしかるべきではなかったか。

同調圧力の増大
 憲法は「天皇の地位は国民の総意に基づく」と定めている。しかし、総意など関係なく、天皇を敬愛するのが当然と言わんばかりの報道があふれ天皇制は尊重すべきという空気がテレビ報道全体を覆っていた。
 こうした報道による同調圧力の増大は、日本をどこへ導くだろうか。
 たとえば将来、安保法の下で、自衛隊員が海外で大規模な戦争に参加し、戦死者が出るなどという「国家の非常事態」が生まれた場合、テレビメディアが、愛国心をあおる横並び一斉報道を展開し、国民の判断を誤らせるかもしれない。
 今回の代替わり報道はそうした懸念を身に迫るものとして感じさせた。
 テレビ報道に従事する人びとには、代替わり報道が本当にこれでよかったのか、という自省と批判精神の回復を求めたい。

戸崎賢二(元NHKディレクター)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
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2019年05月14日

【メディア気象台】 3月〜4月=編集部

◇「森友」黒塗り開示違法、国に賠償命令〜大阪地裁
学校法人「森友学園」の国有地売却問題で、小学校設置趣意書の情報公開請求に対し、財務省近畿財務局が当初ほぼ黒塗りで開示したのは違法だとして、上脇博之神戸学院大教授が国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は14日「黒塗りには合理的な根拠がなく、誤った判断だ」と違法性を認め、非開示の精神的苦痛による慰謝料など5万5千円の支払いを命じた。(「神奈川」3月15日付ほか)

◇危険にさらされている記者、公表
AP通信やロイター通信、米誌タイムなど世界の大手報道機関11社が、15日、危険にさらされている世界各地の記者リストを公表し、今後1カ月に1度ずつ更新を続けると発表した。記者数は10人程度とし、「真実の追求」をしたことで攻撃されている記者らを守るのが目的としている。第一回のリストに入ったのは、フィリピンのドゥテルテ政権に批判的な報道を続けて逮捕されたレッサ氏や、ミャンマーのイスラム教徒少数民族ロヒンギャ迫害問題の取材を巡り国家機密法違反の罪に問われたロイターの記者2人など。(「東京」3月17日付ほか)

◇「偽ニュース禁止」成立〜露政権批判、規制の恐れ
ロシアのプーチン大統領は18日、議会上下両院が可決したインターネット上の偽ニュースを禁止する法案に署名、法律は成立した。大統領の諮問機関「市民社会発展・人権評議会」が「権力による恣意的な利用」の恐れを指摘、プーチン氏に署名しないよう求めていた。政権批判があふれているネット空間の言論が、今後「偽ニュース」を理由に規制される恐れが指摘されている。マスメディアは対象外。検察が情報の真偽を調べ、偽ニュースと判断すればネット規制を当局に通報、当該のホームページや会員制交流サイト(SNS)への接続ができなくなる。(「毎日」3月20日付ほか)

◇民放連、改憲国民投票CMに指針
日本民間放送連盟は20日、憲法改正の賛否を問う国民投票の際に政党などが流すテレビ・ラジオCMについて、内容などに問題がないか放送前にチェックする「考査」の具体的な留意点がまとめたガイドラインを公表した。特定の広告主のCMが一部の時間帯に集中して流れることがないよう留意することなどが盛り込まれた。(「朝日」3月21日付ほか)

◇フェイスブック、ターゲット広告の差別禁止へ
米交流サイト大手フェイスブック(FB)は19日、広告の配信先を絞り込むターゲット広告で、差別的な慣行を見直すと発表した。住宅や求人、貸し付けの広告を出稿する広告主が、年齢や性別、郵便番号のデータを使って、広告を配信する消費者を絞り込むのを禁じる。(「東京」3月21日付ほか)

◇川端康成文学賞、休止
優れた短編小説に贈られる川端康成文学賞について、主催の川端康成記念会は25日、今年の選考を休止すると発表した。川端が死去した1972年にノーベル文学賞の賞金を中心とした基金を作り、創設された文学賞。新潮社の協力を得て、これまで44回の選考を行ってきた。運営基金が危うい状態にあることなどが、休止の理由という。(「朝日」3月26日付ほか)

◇韓国人教授、送り付け被害〜「言論抑圧」警視庁が捜査
テレビ番組で日韓関係を中心にコメントしている韓国人大学教授の男性宛てに、本人が注文していない健康食品などが通信販売の代引きで大量に送り付けられていることが5日、分かった。警視庁が偽計業務妨害の疑いで捜査しており、教授は「言論を抑圧しようとするテロで、許せない」と話している。(「神奈川」4月6日付ほか)

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
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2019年05月07日

【メディアウォッチ】 弱体すぎる出版団体 アピールも情報提供も少ない 文化通信・星野編集長が講演=土居秀夫

業界の「定点観測」をテーマとした出版部会例会が、「文化通信」編集長の星野渉氏を招いて、4月6日、JCJ事務所で開催された。

 星野氏は冒頭、取次崩壊とか書店減少とかいわれるが、本は残るという点で自分は楽観している。今は情勢が大きく変化した後の次の段階だ、と前置きして、まずコミックと雑誌の動向を解説した。



拡大する電子版

 昨年、コミック市場は回復し、電子版が拡大した。回復の原因は海賊版サイト「漫画村」の閉鎖、中堅作品のヒット、講談社など大手の定価値上げなどで、値上げしても売り上げは減らなかった。

 出版業界で進むデジタル化については、ファッション誌、経済誌などでは電子版と紙媒体の2本立てとなり、「ニューズピックス」のように紙媒体を創刊したところもある。紙媒体にはブランドの維持やプロモーションの役割を持たせ、デジタルで稼ぐという傾向になっているという。

 そして、中国の都市部では、本を読むことがトレンドとなっている。若い時期にある程度長い文章を読む経験が必要で、書店がないと本好きは育たないと語った。

 この数年激しく変貌した取次業界について、トーハン、日本出版販売(日販)とも取次部門は赤字で、出版社に対する正味(仕入れ値)などの条件交渉、書店事業の収益化、両社の協業化が進んでいる。トーハンは344店、日販は271店もの直営書店を抱えた日本屈指の書店チェーンとなり、両社の中期経営計画ではそれらを統合・法人化していくようだ。書店が注文しないものを送らない「事前発注」を増やすことで、仕入れの量と点数は減るだろう。出版社は、刊行情報の早期提供、正味の低減、書店への事前発注に注力などが必要になると分析した。



書店大きく変貌



 経営が厳しさを増す書店の現状では、雑貨部門を造った米子市の今井書店や居酒屋も併設した有隣堂のミッドタウン日比谷での取り組み、日本進出を図る台湾の誠品書店が「動的」な空間を目指していることを紹介。昨年の新規出店数は84店と過去最低で、全国8000店の書店は、このままでは5000店くらいになるだろうとの見通しを示し、書店は今後、仕入れ機能の強化、キャッシュレスへの対応が求められることを指摘した。

 世界的に従来型の書店はなくなりつつあり、アメリカではアマゾンの影響で大型書店が減った一方、独立系の書店が増えた。ドイツでも書店数は減っているが、新しいタイプの書店が出てきていること、従来型の書店がほぼ消えた中国では、新業態の書店が2017年には1000店も出店したことを取り上げた。

 最後に、トーハンがモデルとするドイツの出版流通事情に関連して、ドイツ図書流通連盟には出版社、取次、書店のほとんどが加盟し、40名もいる事務局は活発なロビー活動を行っていることを紹介した。それに比べて書協9名、取協3名、日書連6名など事務局の人数をあげて、外部へのアピールも情報提供もしない日本の出版業界団体が弱体すぎることを指摘して、講演を締めくくった。

 質疑応答の中で星野氏が、書店を守るためには再販制は必要だ、と強調したのが印象的だった。


土居秀夫

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
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2019年04月29日

【メディアウォッチ】 NHK「忖度政治報道」に抗議 上田会長あてに申し入れ書提出=編集部

 3月22日、この日はラジオ放送が始まったNHKの放送記念日にあたる。その94回目の日、渋谷のNHK放送センター西口前では、NHKで働く人たちに向けた呼びかけ行動があった。呼びかけたのは安倍晋三政権のもとでのNHK政治報道の姿勢を批判する市民が立ち上げた「NHKとメディアの『今』を考える会」で、放送を語る会やJCJのメンバーも加わっている。

働く人へトークも

 この日、市民団体が提出した上田良一会長あての申し入れでは、NHKに対して政府から独立した公共放送の原則に立つ政治報道を求めるとしたうえで、▼安倍首相の発言や行動に対する批判的報道がほとんどない▼政権にとって不都合と思われる事実を伝えていない▼政府が発表する呼称に従う傾向がある▼森友・加計学園問題で報道を抑制する姿勢が批判されたと指摘している。

出勤する職員やスタッフに向けたトークではまず、JCJの丸山重威さんが「90年余りたってNHKの放送が今どうなっているのか、皆さんに考えて欲しい。そして議論して欲しい」と訴えた。戦争させない・9条壊すな!総がかり行動共同代表の高田健さんは「今政治報道の在り方が問われている。アベノミクス、外交どれもうまくいっていないのに、安倍首相は頑張っているという報道ばかり、NHKは安倍首相の顔色をうがかうような報道はやめるべきだ」と厳しい口調で述べた。

古巣の現状に見かねてマイクを握るNHKの元職員の人たちもいた。元ディレクターで、女たちの戦争と平和資料館名誉館長の池田恵理子さんは、現役時代に慰安婦問題の番組制作に取り組んできたものの、1997年以降は一切提案が通らくなった体験を振り返り「ファシズム政権は教育とメディアをコントロールする。現場ではやる気のある若い人たちが多いのに、こうした番組が作れないという現状がある」と、後輩たちを気遣った。

NHKへの抗議行動は、この日、大阪や名古屋、岐阜の各放送局の前などでも行われた。放送センター西口前では、参加者約80人が集まり、プラカードを掲げたり、チラシ配りをしたりした。朝の10時前後は職員、スタッフが続々と出勤してくる時間だ。ほとんどの人たちは、マイクの声にもチラシを配る声にも無表情で通り過ぎていく。チラシを受け取ったのは、34人目の女性、次が62人目の女性、さらに50人数えた中では受け取る人がいなかった。この反応をどう受け止めるべきか・・・。メディアという比較的社会への関心度が高いとされる職場で働く人たちだが、自分の職場への批判は受け入れづらいという面があるのか、これもまた一つの現実だ。

無関心ではダメだ

 4月1日の元号決定をめぐる報道、マスメディアはお祭り騒ぎ、NHKは夜の「ニュースウォッチ9」で安倍首相がスタジオに生出演した。そこにはジャーナリズムの権力との距離の保ち方などみじんにもなく、あたかも政権の広報≠フようだった。

さらにNHKの役員人事では、今月、籾井勝人前会長時代に政権との距離の近さを指摘された専務理事が、いったん退いたのち再び復帰することが決まった。呼びかけ行動を終えた後にも幹部人事などで、NHKのベクトルは負の方向≠ヨと傾いているのではないか。だからこそ今回の呼びかけは、市民の批判の声として大切だ。チラシを受け取ったNHK職員と、市民が連帯をしていけば、ボディブローのように今のNHK、さらにメディアと政治の関係にも効いてくるはずだ。市民もメディアも無関心ではいられない。

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
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2019年04月11日

【月刊マスコミ評・新聞】 外務省情報に「嫌韓」悪意が=白垣詔男

韓国では3月1日、「3・1独立運動100年」を記念して全国各地で集会やデモがあった。私は、「日韓・韓日反核連帯」というグループの呼び掛けに応じて家族で集会・交流会に参加するためにソウルへ行った。

 2月28日、ソウルで、日本外務省が「韓国:『3・1独立運動100周年』に際するデモ等に関する注意喚起」と題する「スポット情報」を出したのを知った。私の周りにいた日本人は「平穏な韓国なのに外務省の姿勢は不可解、悪意が感じられる」と感想を述べる人が大半だった。

 帰国して3月1日の朝刊を見ると、朝日、西日本、産経が「スポット情報」の記事を掲載。毎日、読売にはなかった。

朝日「韓国渡航で外務省『デモの可能性』 3・1独立運動100周年」の3段格横見出しで4面に載せていた。「ソウルなどで市民団体が行うとみられるデモなどに近づかないよう注意を喚起している」という「スポット情報」の内容を伝え「外務省担当者『総合的に判断した』と説明した」と背景を書いていた。西日本は5面に「韓国渡航者に注意喚起 外務省、デモ警戒」の小さな1段見出しで事実のみの目立たない扱い。産経は2面トップ3段見出しで目立つ扱いだった。記事には「三・一独立運動をめぐっては2月27日の自民党外交部会でも出席議員から『一人の日本人でも傷つけられることがあったら、日韓関係はとんでもないことになる』などと、強い懸念が出ていた」と韓国嫌いと思われる新聞らしい内容だった。

 韓国の実態は、中央集会が開かれたソウル・光化門(クァンファムン)広場を中心に南に延びる世宗(セジョン)通りでは、韓服(ハンボク)を身にまとい民族楽器を演奏する大合奏隊や多くの市民らが整然と行進していた。

多数の警官が目についたが全員、手持ちぶさたの様子で、「国民の祝日」を祝うムードに包まれ、外務省が出した「スポット情報」が場違いであることが分かる。

 なぜ、外務省は「スポット情報」を出したのか。そこには安倍政権の「嫌韓姿勢」の悪意が感じられてならない。

 新聞は、外務省の広報以外に、産経は無理としても、そうした「悪意が感じられる外務省(政府)の姿勢」にも触れてほしかった。

白垣詔男

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年3月25日号
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2019年04月10日

【メディアウォッチ】 記者たちついに立ち上がる 「知る権利守る」と猛アピール 報道各社は一丸となって闘え=編集部

記者たちが怒りの声を挙げ、立ち上がった。菅儀偉官房長官会見での「特定記者」への質問の制限や妨害など、国民の「知る権利」を奪おうとする政府に抗議する集会「FIGHT FOR TRUTH」が3月14日、首相官邸前で開かれた。新聞、民放、出版の各労連などでつくる日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)が呼び掛けた。

国際的にも広がる

5日の会見で菅官房長官に「あなたの質問に答える必要はありません」とあらわに回答拒否≠ウれた東京新聞の望月衣塑子記者は集会で、「メディアが権力に厳しい質問ができなくなった時、民主主義は衰退します」と壇上で訴えた。

問題が顕在化したのは昨年12月末、首相官邸報道室長名で内閣記者会に、特定記者の質問を「事実誤認」「度重なる問題行為」と断定ことから。

3月に入って、国境なき記者団が「政府は記者会見の質問が適切か不適切かを判断してはならない」との声明を発表するなど、安倍政権への批判が国際的にも広がっているとは言え、政府の対応は一向に変わらない。加えて取材報道の自由の制限をより強めており、メディアは深刻に受け止める必要がある。

東京新聞が2月20日に1ページ全部を使った特集「官房長官会見問題 本紙の検証と見解」を載せている。望月記者の質問に対し、内閣広報官らから9回もの不当な内容の申し入れが東京新聞にあったと伝えている。そんなに頻繁にあったのかと驚かされるが、その内容を読んで、政府がこんなおかしな主張をしていのかと驚き、あきれ、怒った人が大勢いたのではないだろうか。

昨年6月の申し入れは「国民の代表とは選挙で選ばれた国会議員。貴社は民間企業であり、会見に出る記者は貴社内の人事で定められている」というのだ。民間企業の新聞社の記者が国民を代表するわけはないとの認識で、記者会見は行政サービスとしかみていないのだろう。ジャーナリズムを単に企業活動としか受け止めていない政権だから、記者の質問を封じる発言が平気でまかり通ることも理解できる。

問題は、こんな政権の考えを世の中が「容認」してしまっている現状を招いてしまっていることだ。なぜこうなってしまったのかと問えば、申し入れのたびにきちんと批判をしてこなかったことが一因ではないのか。

個別に対峙はダメ

東京新聞の検証記事には、不当な申し入れがあったことをその時点で報じなかった理由は特に書いていないが、「政府が、こんなバカな常識はずれの主張を言ってきた」ので反論するのもバカバカしいと考えたのかもしれない。しかし今、そんな対応が甘かったと反省する必要があるだろう。

国民の「知る権利」のため、国民を代表して取材する記者が、国民に知らせずに、各社が個別に対峙するだけでは、かえって政権に好都合となりかねない。報道各社の枠を超え、さらに検証することが求められる。

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年3月25日号
posted by JCJ at 11:13 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月08日

【沖縄リポート】 「三線の日」沖縄文化の底力みせた=浦島悦子 

 2月24日、県民投票当日は、朝から冷たい雨が降りしきった。投票率がなかなか上がらず、夕方になっても50%に届かない。最後までやきもきしたが、最終投票率52.48%にほっと胸をなでおろした。

(埋め立て)反対票は、昨年知事選での玉城デニー知事の獲得票39万票余を大きく上回る43万4273票(投票者総数の約72%)。それは予想を超えるものだった。県民投票潰しに失敗したあと、投票率を下げようと躍起になった官邸・自民党の目論見ははずれた。悪天候の中、静かに、しかししっかりと意思を示したウチナーンチュを私は改めて尊敬し、誇りに思った。

 しかしながら、想定内とはいえ翌日も、海には埋め立て土砂が投入され、ゲート前では機動隊が市民を排除し、ダンプが列をなして石材・資材を搬入した。県民投票などなかったかのように全く変わらない光景に「心が折れそうだ」とつぶやく人もいた。

 3月4日、さんしん(三線)の日。1993年から始まった「ゆかる日 まさる日 さんしんの日」は、正午の時報とともに全県一斉に、沖縄の祝いの席に欠かせない「かぎやで風」を奏でるイベントだが、辺野古ゲート前でも一昨年から行っている。

 正午。三線や太鼓の奏者たちが並んで演奏したあと、数十人が「かぎやで風」を群舞。奏者も踊り手も、普段から座り込みに参加している人たちだ。

今日は搬入はやめてほしいと要請したにもかかわらず、正午過ぎ、石材を積んだダンプや生コン車の行列が近づいてきた。機動隊が、作業ゲートに座り込む市民を排除するいつもの光景が再現され、悲鳴や怒号が上がる。国道を挟んだ向かい側では、それに動じることなく演奏が続けられ、プロの腕前を持つ熟練の踊り手が見事な舞を見せている。その堂々とした振る舞いに沖縄文化の底力を見る思いがした。

 国道の右と左に繰り広げられる、あまりにも対照的な光景は、沖縄と日本(政府)との関係を象徴しているようだった。

 3月25日、沖縄防衛局は新たな工区への土砂投入着手を宣言しているが、1〜4日に行われた専門家調査団の調査で、新基地予定地に活断層の存在が明らかになり、工事の先行きはますます見えなくなっているのが実態だ。

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年3月25日号
posted by JCJ at 10:39 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする