2020年09月22日

ジャーナリスト・外岡秀俊さん寄稿 いま、ジャーナリズムに問われるもの 役所の伝声管≠ナなく、庶民の共感呼ぶ報道を=外岡秀俊

                w1面右 外岡さん写真.jpg
 敗戦75年の節目、全国戦没者追悼式の安倍首相式辞から「歴史の教訓」に学ぶ姿勢が消えた。歴代首相のアジア諸国への謝罪、加害責任言及も、第2次安倍政権で途絶えた。「2度と戦争のためにペンをカメラをとらない」がJCJの出発点だ。いま、ジャーナリズムに問われるものは何か。元朝日新聞東京編集局長でジャーナリストの外岡秀俊さん(写真)に寄稿をお願いした。
                ◆
 あの戦争が終わって、75年目の暑い夏が過ぎようとしている。敗戦の年に生まれた人が後期高齢者となる。それほど長い「戦後」を私たちは生きてきた。 
私たちはいつも「敗戦」を起点に歳月を数えてきた。戦争を生きた人々の遠ざかる影を追い、記憶に留めようとしてきた。だがいずれ、その後ろ姿が消える日が来る。私たちはどのように、惨禍と悔悟、痛恨をのちの世代に伝えたらよいのだろう。
メディアの本性
 「敗戦」を折り返しとして、昭和を前期と後期に分けてみよう。明治維新から敗戦まで77年間は、戦争に次ぐ戦争の時代だった。そして敗戦後の昭和後期から平成、令和まで、ともかくも日本国憲法のもとで、この国は武力で諸国に介入しない節義を守った。あと2年で「戦後」は、近代日本の「戦争の時代」と等しくなる。排外派から「自虐」と呼ばれ、米国には「グズ」と呼ばれようが、私たちがかろうじて志操を守ったのは、この国で生きる人々が、あの戦争で逝った、巻き込んだ数百万の失われた命の痛苦を噛みしめてきたからだ。
 だが、あの戦争を支え、鼓舞・煽動すらしたメディアの本性は、その後どこまで変わったのか。「大本営発表」は軍部の自作自演ではない。メディアがそれを伝えたからこそ、人々は信じ込んだ。その過ちの重さと愚かさを、私たちはどこまで剔抉したのだろう。
伝えるべき情報
 昨年末に始まったコロナ禍は、世界を巻き込み、私たちは今なお、「自粛」と「社会的距離」を強いられている。「自粛」が内面化されれば容易に「萎縮」になり、「社会的距離」は、「連帯」や「共生」を挫くことになりかねない。メディアが政権の発表を垂れ流すだけなら、この目には見えない、強制を伴わない「心の戒厳令」は、仮にコロナ禍が終息しても「新常態」になる恐れがある。
ジャーナリズムが伝えるべき情報は、大きく分けて四つあると思う。
 @刻々と変わる情勢において、「いま直面している問題は何か」を、そのつど定義する情報A「いま、何をなすべきか」という選択肢を市民や自治体に示し、行動や判断の参考にしてもらう情報B政府の施策の成り立ちと効果の有無を批判的に検証する情報C専門家同士に議論の場を提供し、現時点での論点を整理し、問題の在りかを解明するための情報。
 この四つは、それぞれ言論機関の@アジェンダ設定機能A行動・判断指針の提示機能B検証・調査報道機能C言論フォーラム形成機能、という役割を示している。
 コロナ禍報道は今のところ、起きた事象の後追いをするのが手いっぱいで、こうした言論機関本来の機能は十分に果たしていないのではないか。そう感じない訳にはいかない。
センサーの役割
 具体的に指摘しよう。今の政権与党は、事態が行き詰まると、その難局に全力で対処するよりも、その困難を奇貨として、本来望んでいた政策へと誘導する傾向がある。
 たとえばコロナ禍に乗じて「緊急事態条項」を導入する改憲機運を盛り上げようとしたり、「イージス・アショア」の配備失敗を機に、あろうことか「敵基地攻撃力」の保有を検討し始めたりすることに、それは顕著だ。
 そればかりではない。
 昨年の消費増税に当たってポイント還元を導入し、あるいはマイナンバーカードの普及を図ったりするなど、官邸を「輔弼」する人々にも、その傾向は強い。いったん緩急あれば、何が何でも省庁の施策を貫くというこの傾向は、コロナ禍においても、医療態勢支援の前に「アベノマスク」に巨費を投じたり、感染拡大の兆しがあるにもかかわらず「Go To トラベル」を前倒し実施したりといった、ちぐはぐな対応を招いた。「国民の命と安全を守る」ことが最優先とするなら、考えられない発想だ。
 こうした姿勢を、「ショック・ドクトリン」とまでは言うまい。しかし、庶民が直面する厳しい現実を察知するセンサーが働かず、「慣性」のように、省庁の従来施策を追い求めて摩擦を起こすという点で、それは政治の機能不全だといえる。そして言うまでもなく、その「センサー」の役割を果たすべきなのは、ジャーナリズムであり、メディアなのだ。
「不信」の要因は
 私は、コロナ禍でメディアが果たすべき役割は、役所の伝声管になるのではなく、庶民の嘆きや苦しみを察知して政権に現状を知らせ、そうした声に寄り添うことで、人々の共感を呼ぶよう努力することだと思う。
 近年、SNSの急速な台頭で、新聞やテレビといった既成メディの影響力は低下し、「メディア不信」も広がりつつある。コロナ禍による広告の減少は、産業としての基盤をも揺るがしかねない。
打開策はあるのだろうか。
 私は、「メディア不信」の背景には二つの要因があると思う。
一つは、メディアの側が、読者や視聴者に対する説明責任を十全に尽くしていないことだ。たとえば、コロナ禍で、現場では十分な取材ができていないことを、受け手は敏感に察知する。メディアが、取材手法やその限界など「手の内」をさらせば、受け手はきっと理解してくれる。もう一つは、各社の報道姿勢が、ある種の型の価値観に縛られ、既成メディアが、すでに「フィルター・バブル」状態になっていることだ。各社の報道姿勢を越えて、ジャーナリストが連携し、何が問題で、何を大事にすべきか、その共通項を探ることが、急務だと思う。
「大本営」検証を
 新聞労連は今年3月8日の国際女性デーに向けて、会社の枠を超えて有志がメーリング・リストなどで議論を深め、その前後に、各社が独自の記事や特集を組んで緩やかに連携する試みに挑んだ。
 その試みをヒントに、「メディア不信」に抗するために、具体的な提案をしたい。
 私は、毎夏の終戦記念日前後に、メディアで働く人が「大本営発表」について検証し、自らの今の報道姿勢が、同じ轍にはまっていないかどうかを、読者や視聴者に説明することを提案したい。
 各社が右に倣う必要はない。メディアは、個々のジャーナリストの集合体に過ぎない。志のある人が、自ら所属する組織に働きかけ、自分のできる範囲で最善を尽くす。それがひとつの潮流となれば、きっと「メディア不信」を押し返す力になると思う。
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年8月25日号



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2020年09月09日

【月刊マスコミ評・新聞】 いままた大阪市廃止の住民投票?=山田 明

  広島、長崎は被爆から75年を迎えた。戦争と平和に思いを寄せる8月だが、今年は新型コロナによる感染症が列島に暗い影を落とす。
 5月下旬の緊急事態宣言解除後に、感染者はいったん減少したが、7月に入り再拡大してきた。第一波以上の感染規模であり、医療崩壊も懸念される事態だ。医療関係者から、PCR検査拡大を求める声が上がるが、政府の対応は鈍い。毎日7月29日コロナ特集は、「思惑交錯PCR滞る 遅れた国内検査数拡大」と真相に迫る。
 危機的な状況が続き、野党は国会開会を強く要求する。朝日8月1日社説も、「安倍首相は速やかに臨時国会を開き、率先して国民への説明責任を果たすべきだ」と述べる。だが、政府与党は応じようとせず、「安倍首相隠し」に走る始末だ。
 政府は感染急拡大の中で、「GOTO トラベル」を推進するなど、コロナ感染再拡大に対し、ちぐはぐな対応が際立つ。東京・大阪・愛知など大都市だけでなく、地方でも感染が急増している。沖縄の危機的状況は「GOTOトラベル」による感染拡大の可能性が高い。政治の責任が厳しく問われる。
 安倍政権のコロナ対応に批判が集まるなか、自治体の動向に関心が集まる。なかでも大阪府の吉村洋文知事を、メディアが持ち上げてきた。最近では「イソジン発言」の勇み足に、話題が集中することになる。
 大阪府の独自基準「大阪モデル」で非常事態を示す赤信号が、感染者急増でも点灯しない状況が続いている。経済重視にかじを切り、基準を緩和したことによるが、大阪市廃止の是非を問う住民投票実施との関わりも指摘されている。大阪維新の会代表の松井一郎大阪市長は「大阪モデルが赤信号にならない限り住民投票だ」と公言している。
 大阪市を廃止して、特別区を設置する構想は、5年前の住民投票で否決された。その後の選挙で維新が議席の伸ばす中で、再び住民投票が現実味を帯びてきた。ただし、コロナ危機のもとで、
住民投票よりも、コロナ対策を求める市民の声が高まっている。
 歴史ある政令指定都市、大阪市廃止の是非を問う住民投票である。関連法律は住民に分かりやすい説明を求めている。毎日7月25日社説も「判断材料が十分ではない」と指摘する。
 コロナだけでなく、住民投票に焦りは禁物だ。  
山田 明
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年8月25日号

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2020年09月08日

【月刊マスコミ評・放送】 コロナの現状を伝えるNHK番組=諸川麻衣

  今回は、新型コロナの現状を伝えたNHKの番組を幾つか取り上げる。
 『BS1スペシャル 封鎖都市・武漢〜76日間 市民の記録〜』(5・8)。76日間封鎖された中国・武漢で「武漢封城日記」を通して近隣住民、清掃員などの生の声を伝えたソーシャルワーカー、患者の悲痛な声を配信してきた北京のネットラジオ番組『故事FM』などを取材、官製メディアが伝えない実態を明るみに出した。
 『ETV特集 パンデミックが変える世界〜台湾・新型コロナ封じ込め成功への17年〜』(6・20)。新型コロナ発生直後、台湾は発生源の近くにありながら迅速な水際対策やIT技術の活用で封じ込めに成功した。その背景には17年前のSARSの時の失敗とその後の大改革があった。疫学者から副総統となった陳建仁など関係者へのインタビューで、台湾の歩みとその教訓を伝えた。
 『BS1スペシャル レバノンからのSOS 〜コロナ禍追いつめられるシリア難民〜』(7・12)。レバノン国内に逃れた120万以上のシリア難民は経済的に困窮し、売春や臓器売買が広がっていた。3月、新型コロナの感染拡大でレバノン政府は非常事態を宣言、難民は感染の危険が増す中、さらなる困窮や差別・襲撃にさらされた。コロナ禍が弱者、とりわけ女性に特に深刻な打撃を与えることを迫真的に描いたルポで、取材者と出演者の心の絆なくしてはここまでの取材はできなかったろう。同様の問題、日本は無縁と言えるだろうか…。
 『NHKスペシャル 新型ウイルス“生と死”の記録〜医療最前線・密着3か月〜』(7・19)。治療法が未確立な中での試行錯誤、大規模な院内感染の発生、無念にも救えなかった命…神奈川県の二病院に密着して現場の苦闘を描いた。一般の救急や診療を停止したため地域医療が危機に瀕した実態も伝わってきた。  
  最後に参考に挙げたいのが『証言記録 感染症から巨大避難所を守れ』(6・14)。大震災直後、三千人を収容した福島県郡山市の大規模避難所で、不衛生な環境からノロウイルス感染症が発生した。県職員・支援ボランティア・医療関係者が尽力の末、最終的には避難者が避難所運営に参加して衛生状態を自ら改善する仕組みを築いたことで感染拡大を防げたという。
 台湾の例と併せ、市民の主体性、対策の科学的な合理性、行政・政府と市民との信頼関係など、社会の「民主主義」の度合いこそがコロナ対策の成否を決めると痛感した。
諸川麻衣
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年8月25日号

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2020年08月06日

【月刊マスコミ評・新聞】 朝鮮戦争70年 日本人の「参戦」=徳山喜雄

 朝鮮戦争が70年前の1950年6月25日に勃発した。日本は連合国軍総司令部(GHQ)の占領下で、戦後の混乱を抜け切れていなかったが、朝鮮特需で活況に湧くこととなった。
 一方、GHQの要請で多くの日本人が戦争に動員された。旧日本海軍の掃海部隊1200人は朝鮮海域で活動し、日本の民間船が兵隊や武器弾薬を輸送した。しかし、平和憲法ができてまもない日本の「戦争協力」は長く秘匿されることになり、このことはあまり知られていない。
 この夏、いくつかの新聞が埋もれた事実を掘り起こした。たとえば、毎日新聞(6月22日朝刊)は米国立公文書館所蔵の米軍作成の極秘文書を入手し、少なくとも日本の民間人男性60人を米軍が帯同し、うち18人が戦闘に加わっていたことを突き止めた。なかでも20歳未満の少年が18人おり、うち4人が戦闘に参加していた。
 文書には帯同した60人の尋問記録もあり、広島出身の少年(当時13歳)は「原爆で両親を亡くした」と証言。殺害を証言した12歳の少年も「両親は戦争で死んだ」と明かしている。さらに尋問記録のよると、米軍が「渡航したことは口外しない」と言わせ、署名させていたという。
 朝日新聞(6月24日夕刊)は朝鮮戦争で戦死した日本人の遺族にインタビューし、その経緯を明らかにした。東京都町田市の集合住宅で平塚照正さん(84)は、70年前に戦死したとされる兄、重治さん(当時29歳)の思い出を語った。
 太平洋戦争の激戦地ニューギニア戦線で生き残った兄は戦後、知人からの誘いで米軍基地で働きはじめ、朝鮮戦争の戦場に身を置くこととなった。戦争勃発後しばらくして家族のもとに死亡の知らせが届いた。
 家族の問い合わせに対し、GHQから「ネオ平塚は国連軍兵士に変装し、日本や占領軍の正式な許可がないまま朝鮮半島に密航した」「50年9月4日ごろ、韓国での軍事作戦中に死亡した人物が、平塚だと数人の米兵によって明らかになった」との回答があったという。
 ここで留意したいのは、憲法9条の解釈改憲によって集団的自衛権が認められた現在の日本において、朝鮮戦争への「参戦」は決して過去のもでないということだ。
徳山喜雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年7月25日号


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2020年07月30日

【月刊マスコミ評・出版】 安倍+「電通」支配から抜け出せ=荒屋敷 宏

 コロナ禍の陰に隠されていた問題を週刊誌が取り上げ始めた。
 「週刊文春」7月23日号、相澤冬樹さんの寄稿「森友自殺職員妻に安倍昭恵夫人が『人を信じられない』 赤木雅子さんのLINEに返信が!」に注目した。
 公文書の改ざんを命じられ、自殺した赤木俊夫さんの妻、雅子さんは、森友学園8億円値引き問題のきっかけを作った安倍首相の夫人と連絡を取りたいと願っていたという。相澤氏から首相夫人の携帯電話番号を教えてもらい、雅子さんが首相夫人にLINEを送ると、「色々なことが重なり人を信じられなくなるのは悲しいことですがご理解ください」「いつかお線香あげに伺わせてください」と返事があったという。
 ところが、「本当のことを話して」と書くと、首相夫人から返事は来なくなったそうだ。赤木雅子さんの「法廷発言全文」にある「真面目に働いていた職場で何があったのか、何をさせられたのか私は知りたいと思います」との言葉は、日本の労働環境の現状を撃つ言葉となっている。
 高橋まつりさん=2015年当時24歳=を過労自殺に追い込み、「持続化給付金」委託「中抜き」で世間から糾弾されている巨大広告企業の電通を批判する記事が少ない。そう感じていたところ、「サンデー毎日」7月26日号の連載「令和風景論」第5回で田中康夫さんが「『電通』化する日本 巨大広告代理店はなぜ迷走したか」を書いている。
 小説「なんとなく、クリスタル」で作家デビューし、いわゆる「電通文学」の申し子のような田中さんが、友人関係にある山本敏博電通グループ社長に物申しているところが痛快だ。田中さんは、電通が海外でM&A(合併・買収)を繰り返し、国内約130社、海外約900社で構成(今年1月1日現在)され、57%の収益を海外に依拠することを指摘している。そのうえで、日本の産業構造、労働環境の縮図となっている電通が「結果責任」とは無縁の事業を展開し、経産省の「令和ビジネスモデル」の錬金術に加担していることを批判している。「結果責任」に向き合わない安倍首相を連想させる論旨である。
 田中さんが鋭いのは、メディアの側も過労死に直面する労働環境にあることを見抜いている点だ。いわく「睡眠3時間で3日連続没頭するCMやドラマの撮影・編集、新聞や雑誌の降版・校了、プレゼン準備や広告物デザイン等々、日付変更線超えは日常茶飯事」と。電通を批判できるメディアになる必要がある。 
荒屋敷 宏
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年7月25日号

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2020年07月22日

「抱きつき取材」見直しを――新聞労連らが6つの改善提言をメディア幹部に送付=藤森研 

  今年5月に発覚した黒川弘務・東京高検検事長と記者たちの賭けマージャン問題は、黒川氏の辞任と検察庁法改正案の廃案で落着した。政権の検察支配の企ては、ひとまず頓挫した。
  賭けマージャン問題は、他方、メディアにも大きな一石を投じた。コロナ緊急事態下、渦中の黒川氏と産経や朝日の記者らが賭けマージャンに興じていたことがあからさまになり、権力者と記者のずぶずぶの関係が白日の下にさらされた。特ダネほしさに取材源に見境なく近づくこうした手法を、元同僚は「抱きつき取材」と喝破した。それは往々にして癒着に陥り、ヨイショ記事に帰結する。
 濃淡はあれ、日本のメディアは取材相手と個人的に親しくなって情報を得ることに精力を注いできた。夜討ち朝駆け、ひそかな会食……。賭けマージャンもその延長上にある。取材相手に「食い込む」ことに長けた記者は、社内で重宝がられ、高い評価を得てきた。
 しかし、そうした取材手法が他方で、「権力監視」というジャーナリズム本来の責務を見失わせ、権力に甘い報道姿勢を招いてしまっていることを多くの市民が見抜いている。改革が必要な時代だ。
 メディア関係者たちからも、自省の動きが出始めた。南彰・新聞労連委員長や林香里・東大大学院教授らが、今回の問題を機に「ジャーナリズム信頼回復のための提言」をまとめ、7月10日、全国の新聞・通信・放送129社の編集局長、報道局長に送った。
 提言は、賭けマージャン問題について「水面下の情報を得ようとするあまり、権力と同質化し、ジャーナリズムの健全な権力監視機能を後退させ、民主主義の基盤を揺るがしていないか」と問題提起。改善のため、以下の6点を提言した。
@ 報道機関は権力と一線を画し、記者会見などの場で責任ある発言を求め、公文書の保存・公開の徹底化を図るよう要請する
A 各報道機関は、取材・編集手法に関する報道倫理のガイドラインを制定し、公開する
B 当局取材に集中している現状の人員配置を見直す
C 権力者を安易に匿名化する一方、立場の弱い市民らには実名を求めるような二重基準は認められないことに十分留意する
D 現在の取材慣行は、長時間労働の常態化につながり、女性ら多様な立場の人の活躍を妨げてきたことを反省し、改める
E 倫理研修を強化し、読者や外部識者との意見交換の場を増やす
 旧来型取材に対する、かなり根源的な問題提起だ。こうした動きが取材手法の改善にどの程度結びつくかを、見守っていきたい。

藤森研(JCJ代表委員・朝日新聞記者OB)
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2020年07月11日

【月刊マスコミ評・新聞】 拉致問題 取材しているのか=白垣詔男

 襟元で泣いてサビてる青リボン―6月9日付毎日1面「仲畑流万能川柳」の1句だ。
 横田滋さんが6月5日に亡くなり(享年87)、6日付朝刊のほとんど全紙が1面で報じ、9日の「万能川柳」に早くも、投稿が載った。
 新聞朝刊社説では7日に朝日、毎日、産経が取り上げ、読売も9日付で追い掛けた。全社説に共通していた主張は「日本政府には問題の解決へ向けた有効な方策を急ぐように強く求める」(朝日)と安倍政権の無策に対する不満を総体的に訴えている。
 なかでも「安倍首相の広報紙」とみられている産経が「安倍首相」の名前を出して「解決」への尻を叩いているのが印象的だ。「政府広報紙」が定着している読売も「政府は様々なルートを通じ、北朝鮮に首脳会談を働きかける必要がある」と具体的な提案をしている。
 ところで、「拉致問題」解決への日朝間の現状はどうなっているのか。全紙、触れていない。取材していないことを白状しているようなものではないか。
 北朝鮮との交渉は一義的には外務省で、それを後押ししているのが首相官邸とみるのが妥当だろう。しかし、その動きは全く見えない。かつて田中均外務審議官が身を挺して北朝鮮との交渉に当たったことは歴史的に知られている。しかし、その田中審議官に対するその後の政権の非情な対応は、「拉致問題」解決が大きく後退した原因になったことは報道に接する限りで国民は知った。
 現在、外務省には第2、第3の「田中均」氏はいないのか。それとも、マスコミが取材していないのか。新聞を読んでいるが、「拉致問題」報道がないのはどうした訳だろうか。取材していないのではないかと疑われても仕方がない。
 安倍首相はじめ左胸に「青リボン」バッジを付けている国会議員らは多く見かけるが、彼らはバッジを付けているだけで何の行動もしていないのだろう。何のための「青リボン」バッジか。正に「泣いてサビてる」ものを付けるだけでいいのか。
 新聞はじめマスコミは「拉致問題」解決に向けて「現状」を取材して政府の動きを報告してこそ、打開できる糸口になるのではないか。何もしなければ安倍政権と同じ「ポーズだけ」と言われても仕方がない。
白垣詔男
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年6月25日号
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2020年07月09日

「権力と報道の距離」考えよ 理想と現実の間で闘うのが記者 「黒川賭けマージャン」にみる=徳山喜雄

                 文春記事(黒川マージャン).jpg
  黒川弘務・前東京高検検事長は賭けマージャンで辞職し、法務省の内規に基づく「訓告」という軽い処分を受けた。振り返れば、黒川氏は内閣による脱法的な法解釈変更で定年延長していた。
 内閣法制局長官、日銀総裁、NHK会長など、安倍晋三政権は独立性がきわめて重んじられる要所の人事を恣意的に行なってきた経緯がある。黒川氏の定年延長も検察ナンバー1の検事総長への布石といわれ、「官邸の守護神」と揶揄された。
 検事長が、コロナ禍による緊急事態下に賭けマージャンに興じるのは言語道断だ。黒川氏のお相手を常習的にした産経新聞の社会部記者2人と朝日新聞の元司法担当記者は、どうなのか。
 両紙とも「極めて不適切な行為」とし、産経は記者2人を取材部門からはずし、朝日は元記者を役職からはずしたうえで停職1カ月とした。
報道倫理の問題
  おわび記事(いずれも5月22日朝刊)をみると、産経は「取材対象に肉薄することは記者の重要な活動」として自社記者をかばい、朝日は「取材活動ではない、個人的な行動」とし、元記者に責任を押しつけたとも取れる記事を書いた。
 しかし、ここで語るべきは、「権力と報道の距離」の問題ではないか。両紙ともこれについてはほとんど触れていない。権力と距離を保つことは、報道倫理の最重要事項のひとつである。
 では、産経は取材対象に肉薄し、特ダネや独自ダネを書いたのか、ということだ。だが、ここのところ検察がらみで目立つ記事はでていない。
  黒川氏が検事長時代に指揮をとった総合型リゾート(IR)の汚職報道は、自民党議員の逮捕者もでたが、読売新聞がリードした。産経新聞関係者によると、「マージャンを繰り返している割には、記事がでてこない」との不満が社内にあったという。黒川氏は記者を操る鵜匠だったのか。
 「権力と報道の距離」を改めて考えたい。読売はこの年末年始、IR汚職報道で確かに精彩を放った。一方で、権力との距離の近さもしばしば指摘されてきた。第2次安倍政権発足後のきわめつけは、憲法施行70周年にあたる2017年、安倍首相に単独インタビューし憲法改正について縦横に語らせ、憲法記念日の5月3日に特大記事を載せた。
 改憲という国家の根幹をなす重要テーマは、オープンな場で記者会見し多様な質問を受けるのが、まっとうな対応だろう。
 その後、野党議員が衆院予算委で安倍首相に改憲発言の真意をただすと、「自民党総裁としての考えは読売新聞に相当詳しく書いてある。ぜひ熟読してほしい」と答えた。国会で説明を求められ、「新聞を読んでくれ」とは、前代未聞の答弁である。安倍首相(権力)と読売新聞(報道)の距離が厳しく問われる場面であった。
 気脈を通じた報道機関、あるいは記者からの取材を受ければ、批判的な質問を受けずにすむ。新聞だけでなく放送においても、安倍政権の「メディア選別」は常套手段で、お家芸ともいえる。
公共放送の役割
 公共放送であるNHKと政権の距離も気がかりだ。たとえば、安倍首相と近い関係にある政治部の女性記者が主要ニュースの解説を担当し、その内容はジャーナリズムの要諦ともいえる「権力監視」をしているとは思えない。
 この記者をテレビで見るにつけ、戦前に『放浪記』で人気作家になり、ペン部隊として中国戦線に従軍した林芙美子を想起する。
 林は1938年夏、日本軍が展開した漢口攻略戦に同行、占領翌日に漢口に一番乗りした。行動をともにした朝日新聞記者は「ペン部隊の『殊勲甲』 芙美子さん決死漢口入り」との記事を書いて賞賛。帰国した林は、東京、大阪の各地で従軍報告講演会に登壇、戦争熱をあおった。
 戦中と現在とは違う。だが、「権力と報道の距離」の問題はいつの時代にもある。最前線の記者の苦労はわかる。「きれい事ではすまされない」という声も聞こえる。
  しかし、理想と現実の狭間で闘うことも、記者の役割ではないか。
徳山喜雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年6月25日号

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2020年06月30日

【月刊マスコミ評・放送】 コロナが現場に未来を連れてきた=三原治

 経済を始め、新型コロナウイルス禍によって、働き方も日常生活も社会の前提が大きく変わった。そして、放送界は今、かつてない試練に見舞われている。
 テレビの新作ドラマは、ほぼ全滅。6月後半に入って、やっとリスタート。バラエティは、少人数が距離を取っての対応となった。生放送の情報・報道番組は、リモート画面だらけで、もはやネット会議である。
 2005年のライブドア対フジテレビの買収騒ぎが懐かしい。なぜ、あの当時、「放送と通信の融合」というキーワードに目くじらをたてていたのか。今では、ネットの力を借りないで放送なんて成立しない。ということは、日本は、10年以上、ネット時代に乗り遅れたということか。
 その乗り遅れを「コロナという外圧」が、一気に時代を進めてくれた。時計の針は未来へ早回り。激震が走ったのは、4月12日。テレビ朝日の「報道ステーション」のメインキャスターを務める富川悠太アナウンサーが新型コロナウイルスに感染した。チーフプロデューサーや複数の番組スタッフの感染者が出たため、スタッフ全員が自宅待機の措置となり、急遽、集められた他番組のスタッフで制作にあたった。
 他局の報道番組や情報番組も軒並み感染対策のため、ZOOMやSkypeなどのテレビ会議ソフトを使ったリモート出演や、別室からの中継など工夫を凝らした番組制作と変わってきた。富川アナウンサーは6月4日、「報道ステーション」のキャスターに約2カ月ぶりに復帰した。この出来事は、放送界に大きな教訓を残した。
 リモートでの報道番組を観ていて気付いたことがある。大きなスタジオに組んだ豪華なセットはいらない。1985年以降、テレビ朝日「ニュースステーション」が変革してきたニュースショーは必要か。巨大な制作費は無駄だ。ニュース番組は、もっとシンプルに内容重視でいいのではないだろうか。勿論、批判すべきテーマは、さらに重点的にやってほしい。特に久米宏氏のような権力に歯向かうタイプのキャスターは、無くなってほしくはない。
 ウィズコロナ、ポストコロナの時代は、災禍を乗り越えて、社会全体が変革を起こしていく契機となるだろう。思考、概念、価値観などが枠組みごと移り変わる社会や経済情勢のパラダイムシフトが起こるに違いない。その時、放送界も変わっているだろう。新たな発想と挑戦が求められる放送界。そんな未来のヒントをコロナは連れてきてくれた。  
三原 治
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年6月25日号


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2020年06月08日

【月刊マスコミ評・出版】 接触よりも感染機会削減を=荒屋敷 宏

 「惨事便乗型資本主義」を問う好機なのかもしれない。医療や福祉を切り縮めてきた社会の弱点を、新型コロナウイルスの感染拡大が鋭く突いているからだ。とはいえ、改憲や検察官の定年延長にうつつをぬかす安倍政権のもとで、出版メディアは、雑誌の発行に苦闘している。
 ツイッターで盛んに発信している英インペリアル・カレッジ・ロンドン免疫学准教授の小野昌弘さん、京都大学ウイルス・再生医科学研究所准教授の宮沢孝幸さんを登場させた「Voice」6月号の売れ行きがよい。
 同誌で小野さんは、「『夢遊病国家』から脱却せよ」、宮沢さんは、「経済活動は「『一/一〇〇予防』で守れる」と題する論考を寄せている。
 小野さんは、「検査が少ないと批判される英国でさえ、一日で二万人近くを検査しており、検査結果に基づいた統計をデータ活用している。一方日本は十分な検査体制もとれないまま、すでに中盤戦に突入している。この現状はじつに危うい」と指摘している。日本の姿勢については「英国人ならば『夢遊病者のように歩きこむ』というであろう」と辛辣に批判した。
 一方、宮沢さんは、「問題なのは、人類にとって新型コロナウイルスは新種であるため、人口の六〇%がこのウイルスに対する免疫を獲得しないと終息しないことが予想されている点だ」とする。いわゆる「集団免疫」の立場である。宮沢さんは、個人がウイルス感染の原理原則を理解し、接触機会よりも感染機会を削減する努力に期待を寄せている。
 個人の努力でコロナ禍を乗り切れるほど現状は甘くはない。重要な提言をしているのは、「世界」6月号である。同誌で「生存のためのコロナ対策ネットワーク」は、コロナ危機が「生存権を否定し大企業と富裕層のための経済成長を追求する日本社会の構造と、無関係ではない。それどころか、密接にかかわっている」と分析している。そのうえで、「すべての人の生存保障を実現することなく感染拡大の防止は不可能である」との基本認識に立つ「生存する権利を保障するための31の緊急提案」を発表している。
 「現代思想」5月号の緊急特集「感染/パンデミック」は、読み応えがあった。塚原東吾さんの「コロナから発される問い」は、科学史の立場から感染症との闘いや共存の歴史の論点を整理し、「歴史の深い部分からの再検証」を要求している。すべてを疑い、問い続けることは、本来、ジャーナリストの役割でもあるだろう。 
荒屋敷 宏
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年5月25日号

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2020年06月06日

【月刊マスコミ評・新聞】 政治と経済のひずみが露わに=山田明

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言が、全国で延長された。先が見えない自粛・休業のもとで、閉塞感が日本社会を覆う。普段見えにくい社会の病理、政治経済のひずみが、露わになっている。
  毎日5月5日社説は長期化に向き合う支援として、政府や自治体にきめ細かな対応を求める。朝日社説も長丁場想定し戦略描け、休業要請等によって収入の大幅減や雇用不安に直面する人への支援とともに、医療体制の充実は引き続き最重要課題だと指摘する。
 「遅すぎ、少なすぎる」と批判が絶えない安倍政権のコロナ対策。その一方で、東京や大阪など地方自治体の取り組みに注目が集まる。大阪府は自粛解除の3基準、「大阪モデル」を発表した。大阪日日新聞6日によれば、府専門家会議座長は「経済と医療の兼ね合いで作った指標」、知事は「政治判断」と述べ、記事には 「経済立て直しに焦り」の見出し。
 大阪ではメディアに連日登場する吉村知事が脚光を浴び、全国的にも維新の支持率が急上昇している。安倍政権の施策を批判して、「大阪モデル」を打ち出し、それをテレビなどが異常なほど持ち上げる。関西メディアの責任は大きい。国政の場を含めて、維新の動向を注視する必要がある。
 コロナ危機は社会的弱者の暮らしを直撃する。それと次代を担う子どもや若者への長期にわたる影響が懸念される。とりわけ4月に入学した生徒や学生たちの状況が気にかかる。こんな中で「9月入学」が検討されている。前川喜平・元文部科学事務次官は「今ではない 早期の学校再開へ力注げ」(朝日10日)と強調する。
 教育だけでない。コロナ禍の混乱に乗じて、緊急事態条項など憲法改悪の動きも見られる。国会では、検察庁法改正案審議が与党と維新により強行された。内閣の判断で、検察庁幹部の定年延長を可能にするためであり、火事場泥棒の最たるものだ。数多くの弁護士が反対をアピールし、ツイッタ―での抗議署名は数百万に達している。
 新聞はコロナばかりだが、毎日5日の3本の特集が心に残った。2面全体を使った「廣島からヒロシマへ被爆75年」、「ヤングケアラ―反響特集」、それに「沖縄の光と影伝える」地域特集である。
 コロナ禍の新聞報道を注視していきたい。    
 山田明
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年5月25日号

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2020年05月12日

広がるファクトチェックの取り組み 国連も声明 FIJが国際プロジェクト=鈴木賀津彦

        ファクトチェック説明図 (002).PNG
 新型コロナウイルス感染症に関連するニュースが連日報道され、世の中に不安感が広がる中で、横行するデマやフェイク(虚偽)ニュースに警鐘を鳴らし、ファクトチェック(真偽検証)に取り組む各国の団体が、国境を越えた協力をして成果を上げている。国連のグテレス事務総長が4月14日、パンデミック(世界的な大流行)をめぐり、「誤情報の危険なまん延」に警鐘を鳴らす声明を発表するなど、ファクトチェックの国際連携はますます重要性を増している。
台湾と連携して成果
 国内のファクトチェックを推進・普及するためのプラットフォーム団体「ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)」(理事長・瀬川至熨¢蜍ウ授)が、コロナ関連の国内外のファクトチェック記事を紹介する特設サイトを開設したのは今年2月。3月には「国際協力プロジェクト」をスタートさせ、海外のファクトチェック団体への日本に関する調査の協力・支援をする一方、国内団体には、海外情報の翻訳を含めて国内外の調査の支援を行っている。
 台湾で河野太郎防衛相のツイッター投稿を模した画像が拡散されているのを、台湾ファクトチェックセンターが見つけ、FIJに調査を要請。協力した取材の結果、画像は虚偽と判明し、同センターが3月13日に記事にした。日本でもウェブメディアの「インファクト」(立岩陽一郎編集長)が「河野防衛相を装った虚偽ツイートが台湾で拡散」の見出しで詳報、連携した報道ができた。
 ツイッターは「台湾からの五十万のマスク」が日本に着き感謝の意を述べた内容だったが、マスク不足なのに政府が裏で日本に送っているように見せて、政権を批判するために虚偽情報を流したとみられる。
 FIJの特設サイトは「ウイルスの特徴、予防、治療法」「感染者の状況」「当局の対応、その他政治的な言説」「その他様々な言説・うわさ」に分けて、「国内編」と「海外編」に分け検証記事を掲載している。海外編は、各国のファクトチェック団体や海外メディアの記事を日本語の記事にして載せている。近く日本に関する特設サイトも設ける予定だ。
国連も事務総長声明
 根拠のない治療法や噂を含めた偽情報などが世界中を駆け巡り、世界保健機関(WHO)は早くから「インフォデミック(Infodemic、情報の伝の意味、information epidemicを短くした言葉)」への警戒を呼びかけている。国連のグテレス事務総長は14日の声明で、「新型コロナウイルスのパンデミックと世界が闘う中、新たなまん延が発生した。誤情報の危険なまん延だ」(AFP記事から)と述べた。
 グテレス氏は、「健康に関する有害な助言や、いんちきな解決策が増殖している」「放送電波はうそで満ちている」「見当違いの陰謀論がインターネットに影響を及ぼしている」と指摘する一方で、記者や情報の正確性・妥当性を検証する人々を称賛している。そして「団結して世の中のうそやくだらない言動を拒否しよう」「より健康的で、平等、公正な、立ち直りの速い世界をつくろう」と訴えたのだ。
だまされないために
 熊本県では、副知事がSNSで受けたデマ情報をコロナ対策関係者に拡散するという問題を起こし、謝罪会見する事態になったが、同様の危機は誰にでも起こる状況だ。インフォデミックといかに向き合うか、ファクトチェックの取り組みを広げたい。
鈴木賀津彦
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号



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2020年05月07日

【月刊マスコミ評・放送】かんぽ問題で混迷続くNHK=諸川麻衣

 昨年秋の報道で世間を驚かせた、かんぽ不正を取り上げた2018年4月放送のNHK『クロ―ズアップ現代+』への郵政三社の反発と、それを受けた、経営委による会長への厳重注意処分問題。3月来新たな事実が報道され、問題の深刻さが改めて際立ってきた。
 2018年10月、番組に強い不満を持つ日本郵政の鈴木上級副社長(当時)が経営委に「NHKにおけるガバナンス体制を改めて検証し、必要な措置を講」じるよう求める書面を送った。これを受けて10月23日、経営委員会の「会合」が開かれたが、そこではガバナンス問題だけでなく番組の内容も議論の対象となったというのだ。
 これは「委員は、この法律又はこの法律に基づく命令に別段の定めがある場合を除き、個別の放送番組の編集その他の協会の業務を執行することができない」などと定めた放送法第32条に反する。
 しかも経営委は、この会合の議事録を公開せず、今回報道されてからようやく「議事経過」なるものを公表した。
 さらにその後の報道や国会質疑で、当時の上田会長が件の会合で、「個別番組に関係した形のガバナンスになると対応が非常に難しい」「(経緯が公になれば)NHKは存亡の危機に立たされることになりかねない」と強く反発していたことも明らかになった。
 ところがこの重大な発言は、公表された「議事経過」には載せられていない。
 しかもこの会合の冒頭、経営委員3人からなる監査委員会は、「基本はすべてちゃんと話が会長に上がり、会長指示があってNHKとして動いていた」「協会の対応に組織の危機管理上の瑕疵があったとは認められない」と報告していた。経営委員と監査委員の見解が逆だったのである。
 議事録の公開・非公開を決める経営委員会議事運営規則は、2007年制定当時の経営委員会の決定で非公開とされていた。
 このことが201432国会で問題となり、当時の総務委員会の理事会に提出されたものの、今もって経営委のサイトには掲載されていない。
 これらはいずれも「法律違反」「ガバナンス不全」は経営委の方であることを物語っている。上田会長の当時の行動にも弱点があったと思われるが、前田現会長は定例記者会見で「経営委として番組のことを何も知らないで対応できるのか」と述べ、放送法32条への無理解と自律意識のなさを示した。
 上田前会長の証言による事実のさらなる究明、経営委の刷新は待ったなしである。
諸川麻衣
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号
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2020年05月04日

【月刊マスコミ評・新聞】 コロナ禍の差別や偏見に警鐘を=徳山喜雄

 感染拡大が続く、見えない新型コロナウイルスの脅威は、社会に溶け込んだ差別や偏見をあぶりだすことにもなった。
 例えば、近畿などの感染者増加地域を往来する長距離トラック運転手2世帯の子ども計3人に対し、愛媛県内の市立小学校の校長が登校しないように求めていた。
 3人の体調に問題はなかったが、いずれも4月8日の 入学式と始業式を欠席した。市教委は対応の誤りを認め、陳謝した。毎日が10日朝刊で伝えた。
 読売11日朝刊は医療従事者への差別に着目。筑波大の高橋晶准教授に話を聞き、「感染リスクの最前線に身を挺して立ち、緊張を強いられている。中傷や差別は最もつらいことで、悲しみや落胆を生み、抑うつ状態まで招きかねない。
 国民の支援にあたる人たちをねぎらい、支えなければ、長期にわたるウイルスへの対応を乗り切るのは難しい」と警鐘を鳴らした。
 子どもを対象に備蓄マスクを配ることにしたさいたま市は、同市大宮区にある埼玉朝鮮初中級学校の幼稚部(園児41人)を配布対象から外した。幼稚部の関係者らが市に抗議すると、担当者が「(マスクが)転売されるかもしれない」との趣旨の発言をしたという。
 抗議が相次ぎ、最終的には朝鮮学校にも配布されたが、ジャーナリストの安田浩一氏は「マスク騒動≠ヘ終わっていない」と訴える。「〈マスクが欲しければ国に帰れ〉〈浅ましい。厚かましい〉〈日本人と同じ権利と保護があると思っているのか〉/いま、怒声交じりの電話や罵詈雑言を連ねたメールが同園を襲っている」と東京3月27日夕刊に投稿した。
 命にもかかわるコロナ渦のなか、同じ地域に住む幼稚園児を国籍や人種で差別する発想は、役人の四角四面の政策運営といったものではなく、社会に沈殿した差別や偏見が浮かび上がったように映る。
 見えない脅威からの不安を感じると、誰もが過度に落ち込んだり、他人を攻撃したりすることがある。この間、アルベール・カミュの『ペスト』が新聞報道でよく引用された。登場人物の「かかっていない連中まで心は感染している」との言葉は、言い得て妙だ。
 ただ、全体的に記事量は多くない。コロナ禍による差別や偏見を、対策とともに繰り返し報じてほしい。  
徳山喜雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号


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2020年04月10日

【メディア気象台】 3月初旬=編集部

◇徳島新聞、4月から夕刊休刊  
 徳島新聞社は2日付朝刊に社告を掲載し、4月1日から夕刊を休刊すると発表した。地域のイベントや人物などを紹介する情報紙を創刊し、第二、第四木曜日に朝刊と共に無料で配達する。朝刊の購読料は現行3093円から3400円に値上げする。社告では、購読料を26年間据え置いてきたが、原材料や輸送費、販売店の人件費などのコストが上昇していると説明している。(「東京」3月3日付ほか)
◇音楽家ユニオン、経済的な支援を要望  
 日本音楽家ユニオンは2日、新型コロナウイルス問題での公演キャンセルについて、公演自粛を要請した政府に経済的支援を要望する声明を発表した。声明は、出演者へのキャンセル料が支払われない事例もあり、主催者と出演者との適切な話し合いで支払われるべきだとしている。(「しんぶん赤旗」3月5日付)
◇KBS京都労組、新型コロナで特別有給休暇を新設
 KBS京都放送労働組合は4日、新型コロナウイルス問題で特別有給休暇を新設することで会社と合意した。小学生6年以下の子どもを持つ組合員が休校で休まざるを得ない場合、その期間中、特別有給休暇を日数の定めなく取得できるもの。正社員だけでなく、アルバイトも、再雇用者、無期雇用転換者にも適用される。(「しんぶん赤旗」3月6日付)
◇首相の再会見要望、マスコミ労組声明 
 日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)は5日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2月29日に開かれた安倍晋三首相の記者会見が説明責任を果たしていないとして、首相と内閣記者会に所属する報道機関に対し、オープンで十分な時間を確保した首相の再会見を求める声明を発表した。声明では「多大な痛みが生じる政策決定の根拠や効果、デメリットを抑える対策を市民にわかりやすく説明し、納得を得る必要がある」と指摘。雑誌やネット、フリーの記者から質問を受けるよう要望した。(「東京」3月6日付)
◇マスコミ企業、男性優位如実〜MIC調査 
 新聞労連などでつくる日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)は6日、新聞、テレビ、出版業界における女性管理職比率の調査結果を公表した。新聞は平均6.4%、テレビは6.5%で、政府が掲げる「3割」には依然として遠い状況にあることがわかった。MICがメディアにおける女性管理職比率の調査を行なったのは初めて。(「神奈川」3月7日付ほか)
◇政治広告の自主規制、フェイスブックが拡大
 米フェイスブックは5日、欧米などで始めている政治広告に対する自主規制を3月中旬から日本など32の国・地域に広げると発表した。政治や選挙に関する広告を同社のSNS(交流サイト)で配信する際には、だれが広告料を支払ったかの表記を義務付ける。政治広告の透明性を高める狙いで、同様の自主規制を取り入れる国・地域は世界で約90になる。(「日経」3月7日付ほか)
◇総務相「放送法違反ではない」〜NHK経営委員長発言で
 2018年にかんぽ生命保険の不正販売を報じたNHK番組をめぐり、当時NHK経営委員長代行だった森下俊三委員長が番組に意見を述べたとの国会発言が、放送法で禁じた番組への介入ではないか、との指摘に対し、高市早苗総務相は6日の閣議の記者会見で、この問題に触れ、「経営委員が個別の番組の干渉を行っているのではないかと誤解されるような発言をすることは望ましいことではない」が「放送法に違反するものではない」との見解を示した。(「しんぶん赤旗」3月7日付)
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年3月25日号

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2020年03月07日

【月刊マスコミ評・放送】 新社屋建設の次はヒトへの投資を=岩崎貞明

 ローカルテレビ局で、このところ盛んに新社屋の建設が続いている。
 地上波放送のデジタル化が完了したのは2012年3月だが、早いところでは2006年ごろには撮影機材やスタジオ設備などのデジタル化を進めていた局もあったから、そろそろ15年を経て、また機材の更新時期を迎える、という事情がある。
 また一方で、CM広告収入が今年度の下半期から目に見えて減少傾向となり、スポットCMのセールスが前年比90%を割り込む局・地域も出始めた。大規模な設備投資をするなら今のうちだ、という経営判断もあるだろう。
 かつて某ローカル局の社長経験者は「放送局の社長がやるべきもっとも重要な仕事は、機材の更新時期を見極めること。ほぼこれに尽きる」と語っていた。
 日本テレビ系の広島テレビ(広島市)は、繁華街の近くにあった本社から、JR広島駅新幹線口の前の再開発事業に参画して、ホールも備えた立派な新局舎に移転した。しかし広島駅の北側はまだまだ人通りの少ない地域で、この移転が吉と出るか凶と出るか。
 フジテレビ系の福島テレビ(福島市)は、以前の社屋の隣に、サイズを小さくした新社屋を建てた。一人当たりの専有面積も小さくなったということだが、「身の丈に合わせた局舎にした」ということだ。
 同じフジ系の沖縄テレビ(那覇市)は、バスターミナル近くに新社屋用の土地を確保していたが、空港の進入路にあたって高さ制限にひっかかり、新社屋の計画が白紙になったという笑えない話もある。
 TBS系では東北放送(仙台市)や南日本放送(鹿児島市)など老舗の局がいよいよ新社屋建設計画の最中で、長崎放送(長崎市)も駅前再開発に乗って新局舎に移転する予定だという。
 その長崎放送では、経営の先行き不透明感から、中高年層の大幅な賃金ダウンを含む新人事制度を労組に提案して、労使紛争の種となっている。昨年の年末一時金も超低額回答だったことから労組が無期限ストに突入し、社長が組合員との対話に臨んでようやく収拾した経緯もあった。
 カネのあるうちにハコモノ投資を、という経営の考え方もわかるが、放送局の最大の資産は番組制作などに携わる働き手にあるはずだ。人的資産の価値向上に向けて、この春闘では改めて「ヒトへの投資」に期待したい。
 岩崎貞明
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年2月25日号

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2020年03月05日

【月刊マスコミ評・新聞】 毎日も指摘 首相のおかしな答弁=山田明

 新型肺炎が国内外を揺るがしている。グローバル時代の感染症拡散は、中国が世界経済で大きな位置を占めていることを改めて示した。
 日本も製造業や観光業などで、中国依存が顕著だ。消費増税の影響とともに、新型肺炎拡大による景気悪化が懸念される。
 感染リスクとからめ、自民党の国会議員などから憲法を改正して「緊急事態条項」を新設すべきだという声が出ている。国民の不安を改憲の口実にするもので、不謹慎でふまじめとの声が上がる(東京2月4日)。
 国会では「桜を見る会」やIR汚職などで論戦が繰り広げられている。毎日9日社説「安倍首相の国会答弁だれが聞いてもおかしい」は、首相の繰り返す破綻した強弁が本来の国会論戦を妨げているのではないか、と指摘する。安倍首相にやましいことがなければ、調査して証拠を示せばいい。どう考えてもおかしい、首相の居直りと強弁に、マスコミ全体が問題にすべきだ。
 IR汚職が政界中枢にまで及びつつある中で、安倍政権は検察組織のトップ人事にまで介入する動きをみせた。
 朝日11日社説の検察と人権は、異例の人事膨らむ疑念と問題を投げかける。「いまや政権にモノを言えない空気が霞が関を覆い、公文書の隠蔽・改ざんなど深刻なモラルハザードを引き起こしている。ついに検察も。そんな受け止めが広がり、政治になびく風潮がさらに強まることを、憂う」。
 来月3月11日には、福島第一原発事故から10年目に入る。原発事故の周辺地域を見ると、「復興五輪」などと浮かれておれない。全国に避難している人たちに思いを寄せたい。原発賠償関西訴訟原告団は、「ふつうの暮らし 避難の権利 つかもう安心の未来」を求め、国や東電の責任を問い続けている。
 司法判断により再び運転停止に追い込まれた四国電力の伊方原発は、重大トラブルが連続している。1月25日には、3号機の核燃料プールの冷却装置が43分間にわたって停止した。あの過酷事故を思い起こさせた。
 東京2月1日「こちら特報部」は、電源喪失という重大事態でありながら、事故情報が県や地元の伊方町に伝えられただけで、住民にはすぐに知らされなかったと。今回も地元住民がおきざりにされた。
 私たちは決して3・11原発事故を忘れてはならない。
 山田明
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年2月25日号


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2020年02月25日

【編集長EYE】 特例法ある限り新聞社に希望ない=橋詰雅博

 米国の大手新聞が再編に突入している。全国紙USAトゥデーなどを発行する新聞大手ガネットは、日刊紙を含む450紙を傘下に持つ投資会社ニューメディア・インベストメント・グループによって昨年末に買収された。ガネットの社名は残るが、投資ファンドが600紙を束ねる全米トップの新聞社を誕生させた。
 74紙を抱えるトリビューン・パブリッシングも、ニューヨークのファンドが運営し、133紙を持つMNGエンタープライジズが求めた株式32%取得に応じた。合併は必至とみられている。再編を主導する投資ファンドは、合併で読者数が増えれば広告収入が上がると見込んでいる。
 7年前には米ワシントン・ポスト紙は、アマゾン・ドット・コムCEOのジェフ・ベゾスが買収した。ベゾスが紙媒体のデジタル化を推進した結果、100万を超す有料デジタル版読者を得て業績は回復した。
 質の高い報道と効率的な経営をどう両立させるかが課題だが、米大手新聞社は外部から資金を受け入れ経営不振を乗り切ろうと躍起だ。
 日本の新聞業界も部数激減に伴い業績は落ち込む一方である。19年の部数は3781万で、10年前と比べて1254万減った。売り上げも18年度1兆6600億円と04年度より7178億円失った。
 日本の新聞社も米国のように外部から資金を調達し経営を立て直すことができないのだろうか。
 1月下旬に都内で講演した「2025年のメディア」(文藝春秋)の著者の下山進さんは、こう解説した。
 「それを阻んでいるのは日刊新聞法です。1951年にできたこの特例法は、株式の譲渡を制限している。とはいっても事実上、株式の譲渡はダメというのが現実です。従って買収もされない。読売新聞グループ本社の山口寿一社長は日刊新聞法のおかげで報道の自由が守られていると主張するが、私は変化を阻んでいると思います」
 日本の新聞社はこのままではもたない。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年2月25日号

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2020年02月19日

【メディア気象台】1月下旬から2月初旬=編集部

◇NHK、まとめサイトを提訴
京都アニメーションの放火殺人事件をめぐり、ネット上の情報をまとめたサイトが虚偽の情報・拡散したとして、NHKは24日、サイトの編集長を相手取り700万円と同サイトでの謝罪広告の掲載を求める訴訟を東京地裁に起こした。問題のサイトは「LH MAGAZINE」。事件発生後まもなく、NHKのディレクターが容疑者の遺留品を回収しているかのように加工されたNHKニュース映像の画像を掲載し、「なんで警察が来る前に勝手に回収してんだよ」などの投稿を引用し拡散した。(「朝日」1月25日付ほか)
◇紙と電子合わせた出版、前年比増
出版科学研究所は24日、2019年の出版市場(紙と電子の合算)が前年比0.2%増の1兆5432億円だったと発表した。14年に紙と電子を合算した出版市場統計を開始して以来、初めて前年比プラス成長となった。(「毎日」1月25日付ほか)
◇「写真から黒人を削除」批判
スイス・ダボス会議で24日に閉幕した世界経済フォーラム年次総会「ダボス会議」に参加した若者の環境活動家5人の集合写真をめぐり、黒人女性でウガンダ出身のバネッサ・ナカテさん(23)だけトリミングして配信した米通信社APに「人種差別的」と批判が集まっている。APは英メディアに「あくまで構図の問題だった」と主張し、ナカテさんの後ろに建物が写り込んでいたため、締め切り時間が迫る中でトリミングしたと釈明している。(「東京」1月26日付ほか)
◇NHK受信料の追加値下げ要請〜総務相意見書
高市早苗総務相は5日、NHKに受信料の追加値下げなどを求める意見書をまとめた。受信料は2020年度までに、値下げや支払い免除対象拡大などで、18年度受信料収入の6%を還元することが決まっている。総務相意見書では、NHKの19年度末の繰越金見通しが1千億円に上ることなどから「6%相当の還元にとどまらず、受信料の在り方について不断に検討する必要がある」と指摘している。(「しんぶん赤旗」2月7日付ほか)
◇遺族意向で氏名非公表〜黒岩神奈川県知事
黒岩祐治神奈川県知事は6日、斜面崩落事故で亡くなった女子生徒の氏名が公表されていないことについて、「ご家族が公表を望まない気持ちが強いと聞いており、発表を差し控えている」と述べた。知事は個人的な考えと断った上で「情報は正しく出していくことが基本。本来はただちに(氏名を)発表すべきだ」と強調。一方で「国の統一的な公表基準がまだできていない」と理解を求めた。(「神奈川」2月7日付ほか)
◇ヘイト犯罪対策求め、NGOが政府に署名提出
在日コリアンの虐殺宣言に爆破予告と、川崎市の多文化交流施設「市ふれあい館」を標的にヘイトクライム(差別に基づく犯罪)が立て続けに起きている問題で、人種差別撤廃に取り組む非政府組織(NGO)「外国人人権法連絡会」は6日、さらなる差別と犯罪の抑止のため早急なヘイトクライム対策を求める署名を政府に提出した。同会の師岡康子弁護士は、相次ぐ脅迫は明白かつ危険なヘイトスピーチだと指摘。政府には人種差別撤廃条約とヘイトスピーチ解消法に基づき非難声明を出し、継続しているヘイトクライムを終了させる義務があると強調した。(「神奈川」2月7日付)
編集部

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2020年02月03日

【月刊マスコミ評・新聞】 障害者殺傷公判 匿名審理正しいか=徳山喜雄

 障害者施設「津久井やまゆり園」で、入所者19人が殺害され、26人が負傷した事件の裁判員裁判が始まった。植松聖被告の「障害者は生きていても仕方がない」という言葉が改めて衝撃をもたらし、匿名審理を巡っても議論が巻き起こった。
 裁判では横浜地裁が被害者の名前を法廷で明らかにせず、「甲A」「乙B」といった記号で呼ぶことになった。しかし、19歳の娘を失った母親がこのことに違和感を覚え、名前を公表した。
 名前は美帆さん。毎日が1月8日朝刊の1面トップにし、社会面でも大きな受け記事を掲載、手厚く報じた。遺族提供の4枚の美帆さんの写真が目を引く。「美帆は一生懸命生きていました。その証を残したいと思います。美帆の名前を覚えていてほしいです。……娘は甲でも乙でもなく美帆です」とする手記(要旨)も読ませた。
 法廷の様子も通常の裁判とは違ってくる。84席ある傍聴席の3分の1が被害者遺族や負傷者の家族に割り当てられ、遮蔽板を置いて他の傍聴人からは見えないようにした。日経は「匿名審理 揺れる遺族」との連載記事で、匿名化について掘り下げた(1月7日朝刊)。
「最高裁によると、09〜18年で(刑事訴訟法が定める)秘匿制度の適用が認められた被害者は約3万8900人に上る。認められなかったケースは約560人にとどまる。法廷での『匿名』は珍しい光景ではなくなっている」とする一方で、「一人ひとりの命の重み、事件の悲惨さを具体的に知ってほしいとの願いから、実名での審理を望む犯罪被害者遺族もいる」と読み解いた。
 さらに日経連載は「匿名のままでは事件の風化につながる恐れがある」とし、読売も初公判を報じる記事(1月9日朝刊)のなかで「匿名化により社会の関心から遠ざかる」という声を伝えた。
産経(1月9日朝刊)は、「全国知的障害者施設家族会連合会」(神戸市)理事長の「社会にはいまだに障害者への根強い差別感情がある。今回、司法がこういう決定をしたことで、差別意識を助長することにならないか心配だ」とする談話を紹介した。匿名審理が「差別意識の助長に繋がる」との視点も見逃せない。
 被害者の実名をどう報じていくのか。さらなる議論が求められる。
徳山喜雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

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