2018年12月14日

【関西支部】 森友疑惑追及でスクープ 「報道の危機」と相澤さん NHKから大阪日日新聞に転職=井上喜雄

 関西支部は11月2日、大阪で「ジャーナリスト講座」を開催した。今回も「新聞うずみ火」との共催で、講師に先頃NHKから『大阪日日新聞』に転職した相澤冬樹さん(56=論説委員)を招いた。
 相澤さんはここ数年NHK大阪で報道記者として活躍しており森友学園問題ではいくつものスクープを飛ばしていたが、なぜ最大手メディアから小地方紙(発行6000部余=ABC協会)へ移ったのか、その間の事情について会場定員を超える65人の参加者を前に語った。

事件記者やりたい
「自分はどちらかというと右翼だと思っている、ただし国粋ではない真正♂E翼だ、これは初任地長州山口の保守的な環境が影響したようだ、右翼は国を憂える、左翼は社会を憂える、私は主義主張にはとらわれない」と切り出した相澤さんは、こう続けた。

「入局は31年前、ずっと事件記者をやりたい、社会部へ行きたいと思っていた。NHK社会部は東京にしかないが、大阪で府警キャップを5年務め、その後東京でBSニュースに関わった。現場への想い断ち切れず、前任地の大阪で記者に戻せと訴え、それが叶ったので再び大阪で記者になった」。
 その後、起こった森友学園事件報道で相澤さんはスクープを連発、籠池泰典理事長にも一番信頼されていたという。
「大阪地検特捜部の捜査がピークを迎えていた6月、異動の内示を受けた。東京で決めたことだ、今後は考査室でがんばれと言い渡されたが、状況からただの異動ではないなと感じた、報道に戻す気はないと判断したのでその時点でNHKを辞めようと決めた」。
「辞めてからテレビや大手全国紙を含め数社に紹介されたが、大阪勤務はさせないとされ森友問題には関われないうえ、自分を買いたたかれた感じもした。だいたい大手を辞めて大手に行っても意味がないので断った」。

副業OKが決め手
 なぜ大阪日日に決めたのかは「以前の取材先が社主の吉岡利固氏(91歳)に渡りを付けてくれた、同氏は紳士服販売を本業としておられるが、鳥取県の『日本海新聞』のオーナーでもある。反骨の人だと思っている。入社にあたって給料はいくらでもかまわない、ただ『日日』だけに書いてもだめなので副業として他の媒体に書くことを認めて欲しい、各地での講演も続けたいと頼んだ。
 あなたの記事で『日日』が有名になり、部数が増えれば結構だと、吉岡氏は同意してくれた。これからは何でも書けると思った」と所属を変えてでも現役の事件記者を選んだ経緯を明らかにした。    

国・大阪府の仕業 
 森友問題に話が及び「もともと森友学園の計画は資金、教員の確保などズサンなものだった。だから大阪府の審議会は一度認可保留にした、ただ教育方針に問題はあるが森友側は変なことはしていない、金が無いので賄賂などもしなかった、土地代が高いので『まけてくれ』と言ったにすぎない、大阪の人ならだれでも言うセリフだ。  
 あれは森友に学校をつくらせたいと思った国と大阪府のしわざだ。事件はこれからだ」と述べた。
 最後に「今は報道の危機、つまり民主主義の危機だ、マスゴミ≠ネどと揶揄され、報道機関への不信もある。記事に至る過程の説明がないからだ、これは大手の中にいればできないが、辞めたらできると思っている」と2時間近い講演を締めた。

 井上喜雄 

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年11月25日号

                  
posted by JCJ at 10:49 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月12日

【月刊マスコミ評・出版】移民議論 開かれた社会の視点を=荒屋敷 宏

 古代ギリシャの哲人ソクラテスが現代日本に現れて、臨時国会で安倍晋三首相を相手に論戦するとしたら、どんな議論を展開するだろうか。こんな荒唐無稽な問いをたてたくなるほど、政府答弁は、ひどい。あちらこちらの現場に行き、「賢者」の「無知」をしつこくあぶり出すソクラテスの議論は、ジャーナリストの仕事に似ていると思う。
 例えば、「移民」の問題。安倍内閣は「いわゆる移民政策はとる考えはありません」としながら、労働力不足のとりつくろいとして、2019年4月からの外国人労働者の受け入れ拡大を図り、財界の要請のもとに外国人労働者の労働基準法や最低賃金を守らない「人権侵害」を放置している。排外主義を主導する安倍内閣が外国人労働者問題に直面しているのは、矛盾というほかない。

 『文芸春秋オピニオン 2019年の論点100』に収められた社会学者の下地ローレンス吉孝氏「本当は世界第4位! 『移民大国』日本の課題」によると、「1990年の入管法改正、1993年の技能実習制度開始により地域住民として暮らす外国人が増加」、「経済協力開発機構(OECD)の外国人移住者統計によれば、加盟国のうち日本はドイツ・米国・英国に次いで第4位」という。
 下地氏は、「問題なのは、受入れの議論において『日本人』(受入れ側)と『外国人』(受入れられる側)の単純な二分法の発想である」と指摘する。

 「世界」12月号が「移民社会への覚悟」を特集している。日本に来た「技能実習生」に対する人権侵害が国内外から「強制労働に近い状態」(アメリカ政府)、「奴隷・人身売買の状態」(国連)と強く批判されている。
 劇作家の平田オリザ氏は、政府の政策には「開かれた多様な社会を指向し、差別のない、誰でも基本的人権の保障された社会をつくっていくという視点が、そこには全く欠けてしまっている」と批判している。

 インタビューや論文よりも重要なのはルポだ。ノンフィクション作家の森健氏が「東京・新宿 日本一多国籍な教室の子供たち」(「文芸春秋」12月号)との力作を書いている。新大久保駅周辺で「町中を飛び交う言葉は中国語、韓国語、タイ語、英語とさまざまで判別不能な言語もある」という。
「判別不能な言語」をなくすことが「開かれた多様な社会」への道でもあるだろう。それでもなお、「いろんな言語の混じった会話」を「時代を開く新しい言葉」と聞き取った森氏のルポに共感した。 

荒屋敷 宏

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年11月25日号
posted by JCJ at 15:05 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月30日

【メディア気象台】 10月から11月=編集部

◇月間視聴率3冠、日テレ途切れる
在京キー局の視聴率で、日本テレビが全日帯の他、夜間のプライム、ゴールデンの三つの主要時間帯区分でトップとなる、「月間3冠王」が9月までの58か月連続で途切れたことが29日、分かった。視聴率はビデオリサーチ(関東地区)の調査。29日にまとまった10月期の視聴率で、プライムとゴールデンでは59か月連続トップだったが、全日帯(午前6時〜翌日午前零時)でテレビ朝日(7.7%)にトップを奪われた。(「東京」10月30日付ほか)

◇海賊版サイト対策「議論集約できず」〜有識者会議上部会合
内閣府は30日、漫画などを無料で読ませる海賊版サイト対策を検討した有識者会議の上部会合を開き、強制的に閲覧を止める「接続遮断(ブロッキング)」の法制化で意見の対立が解消せず「議論をまとめることができなかった」と報告した。正規版の普及促進や海賊版サイトへの広告抑制といった対策をまず実施し、効果を検証する方針を確認した。(「東京」10月31日付ほか)

◇政党CM禁止柱に国民投票法改正案〜国民民主、憲法調査会
国民民主党は30日午前、憲法調査会総会を国会内で開き、憲法改正の是非を問う国民投票を巡り、スポットCMなど政党による広告放送の禁止を柱とする独自の国民投票法改正案を了承した。改正案は企業や団体が国民投票運動に支出する上限を5億円とする規制も盛り込んだ。資金力の差が投票結果を左右するのが狙い。(「東京」10月31日付ほか)

◇KDDIも値下げ検討〜ドコモに続き
KDDIは1日、都内で高橋誠社長が記者会見し、携帯電話料金の「低価格化、シンプル化に向けて積極的に対応する」と値下げ検討を表明した。NTTドコモが通信料金の値下げを発表したのに続いた。KDDIのプランの内容次第では競争が激しくなりそうだ。(「神奈川」11月2日付ほか)

◇記者殺害、「独立した調査」必要〜国連弁務官
国連のバチェレ人権高等弁務官はこのほど、サウジアラビアの記者ジャマル・カショギ氏がトルコ・イスタンブールのサウジ総領事館で殺害された事件について、「独立した、偏りのない調査」が必要だと指摘した。バチェレ氏は10月30日に発表した声明で、カショギ氏の殺害は「記者と政府の批判者に対する図々しい犯罪だ」と批判。「いかなる政治的な配慮も抜きに調査を行うには、国際的な専門家が関与し、証拠と目撃者へ全面的にアクセスできることが求められる」と指摘した。(「しんぶん赤旗」11月2日付ほか)

◇規制しない方針を民放連改めて示す
民放連は2日、憲法改正の国民投票のCM自主規制に関する考え方を発表し、CM量の規制は行わない方針を改めて示した。野党などから出ている「かつて国会で自主規制を約束していた」との指摘に、「自主的、自律的に取り組む旨を強調したもの」と反論した。(「東京」11月3日付ほか)

◇政府最高レベル、記者殺害を指令」トルコ大統領寄稿
トルコのエルドアン大統領は2日、米紙ワシントン・ポスト電子版への寄稿で、サウジアラビア人記者ジャマル・カショギ氏の殺害は「サウジ政府最高レベルからの指令」だったと指摘した。「サルマン国王が命令したとは全く思っていない」とし、言及はないが、ムハンマド皇太子が関与したとの考えを示唆したとみられる。(「毎日」11月4日付ほか)

◇グーグルマップにヘイト表現
インターネット検索大手グーグルの地図サービス「グーグルマップ」で、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の東京都本部(墨田区)や社民党の旧本部所在地(千代田区)が「犯罪者」などと表記されていたことが4日、分かった。何者かが書き込んだとみられるが、専門家は人種差別などをあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)の防止に向け、「グーグル側にも社会的責任がある」と指摘している。(「東京」11月5日付ほか)

◇トランプ米大統領、記者出入り禁止、拡大も
トランプ米大統領は9日、CNNテレビ記者のホワイトハウスへの入庁許可証を停止したのに続き、他の記者にも出入り禁止措置を広げる可能性があると述べた。記者団に「あなたたちはホワイトハウスや大統領に敬意を払わなければならない」と警告した。パリ訪問前にホワイトハウスで語った。トランプ氏は、CNNを筆頭に自身に批判的なメディアを「フェイク(偽)ニュース」「国民の敵」と攻撃を続けている。出入り禁止措置は「報道の自由」の妨害とも受け取られかねず、批判が高まるのは必至だ。(「神奈川」11月11日付ほか)

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年11月25日号
posted by JCJ at 14:13 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月28日

【メディアウォッチ】 地方創生モデル「東峰テレビ」訪ねる 自ら番組つくる住民ディレクター活躍=橋詰雅博

 JCJ全国交流集会の参加者は2日目の 10月20日午後に、福岡県東峰村(村民約2000人)の村営ケーブルテレビ「東峰(とうほう)テレビ」を訪ねた。 

 昨年7月に襲った九州北部豪雨の際、同テレビプロデュサーの岸本晃さん(65)は、被災直後の村や村民をビデオカメラなどで撮影し、ケーブルの断線によりテレビに被災情報を流せなかった代わりにフェイスブックなどで動画や写真を発信した。これがマスコミの目にとまり、取材陣が押し掛け岸本さんが受け入れ窓口となり東峰テレビの岸本≠フ名が県内外に広まった。

 岸本さんはこう振り返る。
「豪雨が村を襲ったのは7月5日。土砂崩れで3人が亡くなった。私が出張先の東京から戻り村に入ったのは6日の夕方。それから15集落をくまなく回り、損壊した家屋や道路の爪痕、避難所にいる村民らを取材した。出向くと『東峰テレビさんがんばっているね』と村民から声をかけられた。また、村民が私の顔を見ると、安心した表情を浮かべるので、励みになった。ケーブルが復旧したのは被災から3週間後でした」

 岸本さんは、熊本県民テレビ出身で、14年間、情報番組のプロデュサーなどを務めた。在職中に地域を盛り上げるため住民にビデオカメラを渡し、その住民が身の回りの暮らしぶりを撮影して番組をつくる「住民ディレクター」方式を提案。
 それを実践するため1996年に独立し、約20年間で全国50以上の地域を回り、住民ディレクター養成講座を開いた。「ボタンを押せば映る」「身体がカメラ」「番組はオマケ」の3原則を掲げた講座は、実践主義に徹した。

 岸本さんの音頭取りで10年11月に開局した東峰テレビにも約100人の住民ディレクターがいる。会見に同席した農家の女性住民ディレクターはこう言った。
「農作業の合間、月に1、2回番組づくりを手伝います。被災当初は、憔悴した村の皆さんの姿をビデオカラで映すのは気が引けましたが、家に住めるようになってから笑顔が戻り、それを撮影できたのはよかったです」

 村民の7割が見ているという東峰テレビは地方創生のモデルケースとして注目されている。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年11月25日号
posted by JCJ at 12:56 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月08日

【メディア気象台】 9月から10月=編集部

◇改憲問う国民投票CM量、民放連は自主規制せず

民放連は20日、憲法改正の是非を問う国民投票に関するテレビやラジオのCMについて、量を自主規制する統一的な基準は設けず、各放送局の判断に委ねる方針を決定した。民放連は理由として、国民投票法が投票日の14日前からCMの禁止期間を設定している点を挙げ「原則自由である国民投票運動において広告放送にのみ厳しい法規制が課されており、既に量的な配慮が行われていると言える」とした。(「東京」9月21日付ほか)

◇被告手記本「知事推奨と誤解招く」と教授ら抗議文

相模原市緑区の県立障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人が殺害された事件で、黒岩祐治知事が植松聖被告(28)=殺人罪などで起訴=の手記などをまとめた本を推奨していると受け止められかねない発言をしたとして、静岡県立大短期大学部の佐々木隆志教授(61)らが21日、県庁を訪れ、発言の撤回と謝罪を求める抗議文を提出した。(「神奈川」9月22日付)

◇「常識を逸脱、偏見の表現」、LGBT巡り新潮社

新潮社は21日、性的少数者(LGBT)を巡る表現で批判を受けている月刊誌「新潮45」10月号の特集について「あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現が見受けられた」と、内容に問題があったことを認める佐藤隆信社長名の談話を発表した。謝罪の文言はなかった。(「神奈川」9月22日付ほか)

◇子ども向け「六法」出版へ

「いじめは犯罪だと知ってほしい」…。刑法の暴行罪や侮辱罪などを易しい条文で紹介する「子ども六法」の出版に向け、一橋大大学院社会学研究科修士課程の山粼聡一郎さん(24)=川崎市=が、インターネット上で出版費用を募っている。山崎さん自身、小学生時代にいじめられた経験があり、「問題解決の一助になれば」と願っている。(「毎日」9月22日付夕刊ほか)

◇国連、SDGsメディア協定〜創設メンバーに朝日新聞ら

すべての国連加盟国が2030年までの実現を目指す「持続可能な開発目標」(SDGs)について、取り組みを強化しようと国連の呼びかけに応じた世界のメディアによる協力推進の枠組み「SDGメディア・コンパクト(協定)」が23日、発足した。創設メンバーとして、朝日新聞を含む、日米中など10か国以上のメディア企業や国際的な連合組織など、計31社・団体が加わった。参加メディアは、国連とSDGs関連コンテンツに協力したり、実現に向け各国が直面する課題の詳報を進めたりする。(「朝日」9月25日付)

◇是枝監督に生涯功労賞

スペインで開かれた第66回サンセバスチャン国際映画祭で23日、映画監督是枝裕和さん(56)が生涯功労賞に当たる「ドノスティア賞」を受賞した。スペイン語圏で最も注目され、欧州でも有数のこの映画祭でアジア人の同賞受賞は初めて。ドノスティア賞は、同映画祭で最も名誉ある賞で、名監督や名優に授与される。(「神奈川」9月25日付ほか)



◇「新潮45」休刊発表

月刊誌「新潮45」が性的少数者(LGBTなど)を「生産性がない」などと否定する自民党・杉田水脈衆院議員の寄稿を掲載し、最新10月号で擁護する特集も組んで批判が集まっていた問題で、発行元の新潮社は25日、同誌を休刊にすると発表した。「部数低迷に直面し、試行錯誤の過程で編集上の無理が生じた」「このような事態を招いたことについてお詫びいたします」と謝罪。老舗出版社が「顔」ともいえる月刊誌の休刊を決めたことは、言論・出版界に大きな波紋を広げそうだ。「(「毎日」9月26日付ほか)

◇英記者ビザ更新、香港政府が拒否

英紙フィナンシャル・タイムズは5日、香港政府が同紙アジア版編集担当のビクター・マーレット記者のビザ更新を拒否したと明らかにした。同記者は香港外国特派員協会の副会長で、同会が8月に香港独立を主張する政治団体・香港民族党の陳浩天代表を招いた講演会で司会を務めており、民族党はこの後、香港政府により活動禁止を命じられた、このためビザの更新拒否は講演と関連があるとみられる。香港特派員協会は声明を発表し、「言論の自由は法律の保障するところで合理的説明を欠くのであれば当局は関連の決定を取り消すべきだ」と求めている。(「しんぶん赤旗」10月7日付)

◇FB、私的通信流出か〜世界25万人分

米交流サイト大手フェイスブック(FB)の利用者のものとみられる携帯電話番号や、メッセージのやりとりといった個人情報がインターネット上に大量に流出していたことが6日、新たに分かった。情報セキュリティー専門家らの解析によると、世界各国の利用者の個人情報で25万人以上に上るとみられる。(「毎日」10月7日付ほか)

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年10月25日号
posted by JCJ at 16:10 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月05日

【メディアウォッチ】 ネット動画「安倍政権の末路」大反響 FmA配信 アクセス数7万回超=河野慎二

 JCJとマスコミ9条の会共催の集会「安倍政権の末路」のネット配信動画が、過去に例を見ないアクセスを記録、10月についに7万回を超えた。 

この集会はジャーナリストの青木理氏と杉尾秀哉参院議員(元TBSニュースキャスター)、砂川浩慶立教大教授を招き7月に開いたもので、「自由メディア(FmA)」が8月中旬、ユーチューブで全国に発信した。

プロバイダー仰天

集会などの動画は、通常アクセス数はそれほど伸びないが、今回はケタが違った。配信直後に3万件を超えるアクセスが殺到した。瞬時ではあったが、ネット画面に「データに間違いがある恐れがあります」という赤文字の表示が流れた。プロバイダーにもサプライズのアクセス急伸だった。

動画を見た人たちが友人や知人に拡散し、視聴者が増えた。アクセスは10月も衰えることなく続伸、23日には7万703回に達した。

 配信への反応は、ほぼ2対1の比率で「いいね」が大きく上回った。ネトウヨからの罵詈や雑言も飛び交ったが、安倍退陣を求めるアクセスの底堅い伸びは雑音を圧倒した。

決め手はテーマだ

なぜ爆発的にアクセスが増えたのか。

まず、「安倍政権の末路」というテーマ設定が、タイムリーだった。

森友・加計疑惑では首相の信頼は失墜した。

 外交でもトランプ米大統領に従属するばかりで、報道と国会などの現場で安倍政治をウオッチしている青木、杉尾、砂川3氏からは「怒りのマグマが一気に噴き出す可能性がある」(青木氏)、「安倍氏が自民党総裁に3選でもレームダック化は必至」(杉尾氏)などと、核心に迫る発言が相次いだ。

 3氏は、新聞、テレビなどメディアの問題にも言及した。日本ではメディアが分断され、安倍政権に好都合な状況となっている。

 モヤモヤ感を打破

それでも、森友学園を巡る朝日のスクープを例示し「ジャーナリズムはそんなに弱くはなっていない」(青木氏)との指摘があった。

改ざん、隠蔽、虚偽答弁の安倍政治に対する怒りは爆発寸前なのに、退陣に追い込めない、そうしたモヤモヤ感を打ち払うような3氏の分かりやすい議論に動画の再生回数がはね上がった。

 とりわけ女性のアクセスが通常の12%から21%に倍近く増えた。

「この番組を見ることが出来てラッキーです。うんざりする日が続いたので」という声が寄せられている。

 市民は、権力に「忖度」しない報道を切実に求めているのだ。7万回を超えるアクセスは、そのことを強く示している

河野慎二

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年10月25日号
posted by JCJ at 14:04 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月03日

【メディアウォッチ】 非民主的で無責任なITメディアの改革急げ=鈴木賀津彦

 メディア・リテラシー教育の実践的な研究者として世界的に著名な英国のデイビット・バッキンガム氏が来日し、法政大学市ケ谷キャンパスで10月6日、「『デジタル資本主義』時代のメディア・リテラシー教育」をテーマに講演した。同大学図書館司書課程が主催、JCJなどが共催した。教員や図書館司書、研究者やジャーナリスト、学生ら約100人が参加した。

 バッキンガム氏は講演で、フェイスブックやグーグルなどの巨大IT企業の商業主義的な独占支配のもとにあるインターネットの現状から、デジタルの夢は悪夢に変わりつつあると強調。「サイバーユートピア主義は終焉した」と説明した。
 そこで起きているフェイクニュースやネットいじめや「中毒」、そしてクリックベイドなどが横行する現状を、単なる症状ではなく根源にある問題を見る必要があると解説。規制に抵抗する巨大IT企業が代替えとして示す「メディア・リテラシー」やファクトチェッカーなどの技術的解決策など、断片化された「手っ取り早い」解決ではうまくいかないと批判した。
 「私たちが必要としているのは、フェイクニュースか否かをはっきりさせるための単純なチェックリストなどではなく、それらのメッセージを載せるメディアがいかに機能しているのか、経済的な次元だけではないその仕組みを、より深く批判的に理解することなのだ」と述べる。
 では、どうすればいいのか。まず「インターネットを、水や空気のように私たちにとって欠くことのできない公共事業と認めること。それが民間企業によって運営される場合に、厳正な規制と説明責任が求められ、商業的独占が生じないよう防止策や独占企業の解体がなされるべきだ」とバッキンガム氏は主張する。

 次に「グーグルやフェイスブックのような企業は、そのインフラに載るコンテンツを誰が作っていても、メディア企業とみなされるべきだ」とする。現在、インフラを提供するだけの技術的企業であり、中立的な媒介事業者だと振る舞い、流通するコンテンツに対してはいかなる編集責任も持たないと主張しているが、編集責任を持たせ、ヘイトスピーチやハラスメント発言など、既存のメディア規制の対象にしようと訴える。
 第三は個人情報の利用の問題だ。多くの人は利用規約に同意のチェックをすることが何を意味するのか、ほとんど分かっていない。「自らの個人情報がどのように集められ、いかに活用されているかについて、知る権利と管理する権利を持つべきである」とし、「メディア・リテラシーは人々に対して、変革を求めることこそを教えなければならない」と訴えた。
 バッキンガム氏は広島市などでも講演、福島の原発被災地などを視察した。

鈴木賀津彦

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年10月25日号
posted by JCJ at 14:44 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月03日

《月間マスコミ評・新聞》自民総裁選にみる「国民不在」=白垣詔男


 「党首選はるかに遠く民の声」―これは西日本9月5日の朝刊に載った読者による「ニュース川柳」だ。正に今回の自民党総裁選は「国民不在」だった。総裁選びがそのまま「首相選び」に直結するので、国民、読者に視点を定めた報道が必要だったが、その視点は極めて少なかった。
 
 この点を指摘した社説は9月4日の朝日「国民は視野にないのか」と11日の西日本「国民に開かれた論戦こそ」の2紙だけだった。
朝日は「(その原因は安倍)首相側が、一貫して論戦に後ろ向きな姿勢を示している」と分析、西日本は「内向きの『集票合戦』では意味がない」と訴えた。

 総裁選は9月7日に告示されたものの、北海道地震のため告示から3日間「休戦」、しかも「休戦明け」の10日は両候補が所信表明しただけで、首相はその日の午後、ロシアに出掛けた。首相帰国の14日まで論戦はなく事実上の「休戦」となった。首相は「論戦に後ろ向き」というより論戦から逃げたとしか思えなかった。首相が不在で総裁選も盛り上がらなかった。
 
 少ない「選挙論戦」を補うように毎日は告示前の4日から「論点/争点」と題して総裁選に向けて4回の連載を展開。「アベノミクスに功罪」「米中との溝 どう対処」「9条改憲 内輪の論理」「政治主導 揺らぐ理想」と、「丁寧に説明する」と言いながらほとんど話さない安倍首相に代わって「遠い民の声」を意識して、読者に問題点を掘り下げた。「安倍政治」をどう読むか、積み残した多くの懸案に対して安倍首相が、どう立ち向かうのか立ち向かわないのか、その指摘とも言えた。
 
 毎日は先の通常国会閉会後にも「棚上げの問題群 点検 通常国会」と題して6回連載した。「森友文書改ざん問題」「加計学園問題」「日報放置・議員罵倒」「働き方改革法」「カジノ・参院6増」「相次ぐ失言・失態」と、いまだに解明されていない「問題群」を取り上げ、事実上の「安倍政治批判」を繰り広げた姿勢は評価される。
 
 一方、読売は「総裁選 問われるもの」と題して8月28日から9月6日まで自民党幹部、元幹部を登場させて6回連載したが、いずれも視点は国民側にはなく正に「自民党の内向きの姿勢」の印象が強かった。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年9月25日号


posted by JCJ at 14:50 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月01日

<月間マスコミ評・新聞>オウム報道「闇」の強調には疑問=六光路弦

 一連のオウム真理教事件で死刑が確定していた教団幹部13人のうち、松本智津夫(教祖名・麻原彰晃)ら7人の刑が7月6日、執行された。教祖の公判は1審で終結し、無差別テロを起こした理由や動機を自ら法廷で語ることはなかった。だからだろう、新聞各紙の報道には多かれ少なかれ「闇」や「謎」を強調するトーンが目についた。7日付朝刊で東京新聞は1面トップに「オウム真相 闇残し」と取り、朝日新聞は社説で「根源の疑問解けぬまま」と掲げる、といった具合だ。
 
 本当にそうだろうか。教祖は口を閉ざしたかもしれないが、教団幹部の中には洗脳が解け、悔悟の念とともに知りうる限りのことを話した者も少なくない。「闇」や「謎」と呼ぶほどのものは残っていないとも思える。
 
 地下鉄サリン事件からでも23年もの時間が経ち、直接事件を知らない世代が増えている。「闇」ばかりが強調されると、いずれは「事件は国家権力による謀略だった」などという陰謀論が広まらないとも限らない。メディアは今後、何が分かっていないかを強調するよりも、分かっていることを語り継ぎ、再発防止につなげるべきだ。
 
 「闇の中」なのは大量処刑の方だ。13人のうちなぜこの7人なのか、なぜこの時期なのか。記者会見した法相は回答を拒否。国民に知らせる必要はないと言わんばかりだ。死刑は究極の国家の強権発動であることを見せつけた。執行の内幕を暴くは報道の課題だ。
 
 各紙とも事件を振りかえる特集記事も掲載したが、捜査のありようを再検証する視点が乏しいように感じた。地下鉄サリン事件の発生で、後手に回った警察当局の捜査は「オウム狩り」とも呼ぶべき苛烈さだった。教団信者なら、マンション駐車場に車を止めれば「住居侵入」、カッターナイフ所持なら「銃刀法違反」で現行犯逮捕。平時なら批判を免れない手法に、新聞も社会も表立って異議を唱えなかった。
 
 今日、「オウム真理教」の代わりに「工作員」でも何でもいい。「社会が攻撃を受ける」と喧伝されれば、同じように人権侵害が起きないだろうか。教祖らの死刑執行は、当時の自らの報道も含めて総括を試みるいい機会だったが、そうした記事が見受けられなかったのは残念だ。次の機会に期待したい。   
posted by JCJ at 21:19 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月15日

≪メディア時評≫ 歴史的会談の歴史的意味―メディアの報道姿勢を問う=梅田正己(歴史研究者)

 2018年6月12日、米朝首脳会談が行われた。
 翌13日の各紙は、もちろん大きく紙面を割いて、その「成果」を報じた。しかし、その報道は、一定の評価をしながらも、そろって具体性に欠けるとして留保をつけていた。
 例えば、朝日3面の横の大見出しは「非核化 あいまい合意」
 読売3―2面の同じく横見出し、「非核化 課題多く 北の姿勢 見極め」
 日経3―2面の横見出し、「非核化 時間稼ぎ懸念 米朝敵対解消を演出」

 社説もそろってそのことを指摘していた。
 まず、朝日から。
「合意は画期的と言うには程遠い薄弱な内容だった」「署名された共同声明をみる限りでは、米国が会談を急ぐ必要があったのか大いに疑問が残る」
 さらには「その軽々しさには驚かされるとともに深い不安を覚える」「重要なのは明文化された行動計画である」
 その「明確な期限を切った工程表」が示されてないから「会談の成果と呼ぶに値」しないというのである。

 毎日の社説も同様の留保をつける。
「固い約束のようだが、懸念は大いに残る」「そもそも北朝鮮がCIVD(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)に同意したかどうかもはっきりしない」

 読売社説も、「評価と批判が相半ばする結果だと言えよう」としながらも、ホンネは批判の方に傾いているようだ。「懸念されるのは、トランプ氏が記者会見で米韓軍事演習の中止や在韓米軍の将来の削減に言及したことだ。和平に前のめりなあまり、譲歩が過ぎるのではないか」

 日経の社説も同様の論調だ。「真に新たな歴史を刻んだとみなすのはまだ早い」と言った上で、同じく米側の前のめりを批判する。
「米側はすでに(北朝鮮の)体制保証で譲歩を余儀なくされた。今秋の米中間選挙を控え、目先の成果を焦るトランプ政権の前のめりな姿勢を、北朝鮮が巧みに利用したといえなくもない」

 以上のように、全国紙各紙は今回の米朝首脳会談について、できるだけその成果を割り引いて評価したいと見ているようだ。テレビにおいても、登場するコメンテーターのほとんどは同様の見方をしているように私には思われた。

 では、両首脳が署名した共同声明を改めて見てみよう。「非核化」に関する部分を見ると、こう書かれている。
 ――「トランプ大統領はDPRK(朝鮮民主主義人民共和国)に対して安全の保証(security guarantees)を提供することを約束し、金正恩委員長は朝鮮半島の完全な非核化(complete denuclearization)に向けた堅固で揺るぎない(firm and unwavering)決意を再確認した」
 ――「3 2018年4月27日の板門店宣言を再確認し、DPRKは朝鮮半島の完全な非核化(complete denuclearization)に向けて取り組むことを約束する」

 各紙の社説も、テレビのコメンテーターたちも口をそろえて、CIVD(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)が具体的に述べられていないから非核化を信じるわけにはいかないという。
 つまり共同声明で2度にわたって明言されている「完全な非核化(complete denuclearization)」では不十分というわけだ。

 しかし、すべての識者が指摘するように、CIVDは厖大かつ複雑な手間と時間がかかる。現有する核爆弾やミサイルを廃棄するほか、関連の研究施設や製造工場などインフラの解体、さらには開発に従事した科学者や技術者の処遇など、山積する問題をすべて処理しなければならないからだ。
 それには、10年、20年の歳月を要するというのがおおかたの認識だ。
 したがって、朝日社説がいうような「明確な期限を切った工程表」を示せという要求そのものが、現時点ではどだいあり得るはずがないのである。
(→続きを読む)
posted by JCJ at 15:14 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月08日

《月間マスコミ評・新聞》神経疑う、読売「安倍改憲賛成」社説=白垣詔男

 今年の憲法記念日の各社社説は安倍政権に対するそれぞれの姿勢が鮮明に出ており、現在の新聞社の姿勢を知るうえでも非常に興味深かった。
朝日新聞の「安倍政権と憲法 改憲を語る資格あるのか」、毎日「引き継ぐべき憲法秩序 首相権力の統制が先決だ」、読売「憲法記念日 自衛隊違憲論の払拭を図れ」、西日本「憲法記念日 国政の危うさを見据えて」――見出しを見ただけで内容が想像できる。
 
中でも最も合点がいったのは朝日が「統治原理ないがしろ」「普遍的価値の軽視」「優先順位を見誤るな」の小見出しで、安倍政権の政治運営を徹底的に批判。「人権、自由、平等といった人類の普遍的価値や民主主義を深化させるのではなく、『とにかく変えたい』という個人的な願望に他ならない。……民意は冷めたままだ」と安倍首相の個人的な野望を冷静に的確に分析している。

 毎日は、国会議論の低調さや安倍首相の国会無視、過剰な権力行使を指摘して、国会に首相権力への統制力強化を求めているのは首肯できる。西日本は安倍政権が現在置かれている状況を「自業自得」「自縄自縛」と断じる。その上で自民党が発表した4項目の改憲案について「今なぜ(憲法)改正を急ぐのか、現行法の枠内で対応が可能ではないか、といった疑問点が多く、拙速感は否めません」と改憲案を批判している。
 
  以上3紙は、いずれも「安倍改憲」に反対の考え方を明確に主張して小気味いい。
 
 これに対し読売は「自民党案をたたき台に」と小見出しをつけ、「安倍首相(自民党総裁)は、昨年の憲法記念日に、自衛隊の根拠規定を設けるための9条改正を政治課題に掲げた」「自民党は……4項目について、改憲の考え方をまとめた。改正項目を絞り、具体的な条文案として提起したのは評価できる」と安倍・自民党改憲案に賛意を示している。西日本や識者の多くが「現行法で対応できる」という自民党案に対する意見には触れていない。
 
 読売社説を、社名を外して読めば、「自画自賛している自民党の文章」ではないかと疑われても仕方がないほどで、新聞社の社説としては偏っていると思う。これほど露骨に政権党寄りの社説を書く神経を疑ってしまう。


posted by JCJ at 15:30 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月23日

【月間マスコミ評・新聞】再開発に警鐘、日経「限界都市」=山田 明

 4月14日、安倍政権に抗議する人たちが国会議事堂前に殺到し、怒りの声がこだました。若者らのやまないコールが響きわたる。国民の怒りは全国に広がり、内閣支持率も急降下しつつある。与党内からも不安と批判が広がり、「安倍一強」なるものにも揺らぎが見え始めた。
 
 森友疑惑の財務省の決済文書改ざん、加計疑惑の「首相案件」文書、防衛省・自衛隊の日報隠し、厚労省のデータ捏造、前川喜平氏講演に対する文科省・自民党政治家の介入、財務次官セクハラ疑惑への「対応」など、政治の私物化、底なしの嘘と隠ぺい、不祥事。こんな安倍政権のもとで、権力監視と国民の利益を守る憲法改悪など許されるはずがない。
 
 行政の信頼を根底から揺るがす疑惑が次々と明るみに出る。
 
 とりわけ公文書改ざんは議会制民主主義、日報隠しは文民統制を揺るがし、戦後政治のなかでも深刻な事態だ。
「もりかけ」疑惑は、安倍首相と昭恵夫人が当事者として直接関わる。一年以上も、国会と国民を欺いてきた政治責任はきわめて大きい。安倍首相はアベ政治を支えるため、高級官僚の人事権の内閣人事局への移管など、首相官邸への権力集中が強引に進められた。そのひずみがいま噴出しつつある。

 メディアへの攻撃と懐柔も、これまでアベ政治を支えてきた。そのメディアにも、世論の動向を反映して変化の兆しも見られる。
 
 産経はともかく、読売の論調に注目したい。放送法4条の撤廃は明示されなかったが、政府の規制改革推進会議の放送制度のあり方議論の行方に注意が必要だ。
 
 
 メディアは権力監視とともに、国内外の構造変化に対応した世論喚起が求められる。
 
 日経「限界都市」シリーズは、そんな問題提起をしている。タワーマンション偏重の大規模再開発などに警鐘を鳴らす。「政府や自治体、企業が明らかにしない重要事実を、独自取材で掘り起こす調査報道を強化します」(3月21日朝刊)と。
 
 政治腐敗だけでなく、持続可能な社会を脅かす社会問題にも大胆に切り込む「調査報道」を期待したい。   
posted by JCJ at 14:28 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月18日

【月間マスコミ評・放送】「4条擁護」にとどまらぬ議論を=諸川麻衣

 先日、政府が検討している放送制度改革の方針案が明らかにされた。放送を電波からネットに移し、NHK以外の民放は基本不要とし、自由な放送を可能にして新規参入を促すため、政治的公平などを義務づけた放送法4条を撤廃、さらに番組基準策定、番組審議会設置などの規定もなくすという。
 この報道に奇異な感じを抱いた人は多いのではあるまいか。なぜなら、自民党自身が過去、「政治的公平」を錦の御旗にして放送にたびたび圧力をかけてきたからだ。NHKの慰安婦問題の番組に放送前に「公平・公正にやってください」と「注文」をつけて大改ざんに至らしめたのは他ならぬ現党総裁だし、二〇一四年には在京テレビ局に「選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い」を送り、出演者の選定・発言回数や時間、街角インタビューや資料映像についてまで公平中立を求めて物議を醸した。
 こうしたことから、昨年のデイヴィッド・ケイの調査報告書では、「メディアの独立性を強化するため、政府が放送法4条を見直し廃止することを勧めたい」と提起したほどである。
むろん、今回の方針案は自民党政権の「反省」を示したものとは言えない。ネット放送に自民党寄りの新規事業者が多数参入し、沖縄を取り上げた『ニュース女子』のように、公平など無視したフェイク・ニュースや番組が氾濫すればそれで良いのだろう。
 既に民放の経営者や労組、新聞からは、「放送が果たしてきた公共的、社会的役割について考慮がされていない」、「産業振興の色合いも強く、放送の社会的使命を軽視している」、「放送の不偏不党が損なわれる心配が大きい」などの批判が出ている。
 件の『ニュース女子』を放送倫理違反としたBPO意見は、「伝える情報の正確さの追求、裏付けの徹底、偏見の排除といった、放送人が歳月をかけて培ってきた価値観が尊重されなければならない。それこそが『公平、公正な立場』に立った放送」だと述べる。放送法四条の公平原則の必要性は専門家の間でも意見が分かれる。政府の改革案に単純に「四条擁護」を対置するだけでなく、放送に求められる最低限の質とは何か、それを法律でどう規定し、行政権力を介入させずにどう実現するかを今や本格的に議論するべきではあるまいか。
     
posted by JCJ at 18:50 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月14日

≪月間マスコミ評・新聞≫核軍拡を支持する読売社説に驚き=山田明

 通常国会が始まり、安倍首相の自己中心的な政治姿勢に批判が集まる。安倍首相は「もりかけ疑惑」で追及されると、質問に関係なく、朝日新聞の報道が「ウソ」だと批判ばかりする。
 遅まきながら、森友学園の資料が財務省から次々と公表される。佐川宣寿財務省理財局長、現国税庁長官の「速やかに廃棄した」との国会答弁は明らかに虚偽だ。2月16日から確定申告が始まる中で、納税者の怒りが高まる。
 安倍首相はこんな佐川人事を「適材適所」と自賛する。関与を疑わせる音声データまで公開された安倍昭恵氏、佐川氏の国会証人喚問は欠かせない。
 改憲の動きが加速。 朝日1月23日社説は「際立つ首相の前のめり」と、安倍首相の自己都合の改憲姿勢を批判する。国民の多くは拙速な改憲を望まず、議論も深まっていない。憲法9条改悪は、国民に分断をもたらしかねない。
 沖縄県名護市の市長選で、辺野古移設阻止を訴えた現職が破れた。安倍政権と公明党が全面支援した新人が当選したが、これで辺野古移設が容認されたわけでない。アメとムチにより強引に新基地建設が推進され、米軍の事故が相次いでいる。沖縄県民の怒りは高まるばかりだ。
 米軍機事故では、松本文明内閣府副大臣が議場から「それで何人死んだ」と、ヤジを飛ばす始末。ネット上では、佐賀県の自衛隊機事故の被害者に心ない非難が寄せられている(毎日2月11日)。基地のそばで不安を抱く人たちの気持ちを考えると、心が痛む。「政府や司法 住民より基地重視」という声も(中日8日特報)。
産経は交通事故をめぐり、沖縄2紙が米兵の「救出」を報道しなかったことを非難した。8日に事実確認できなかったと謝罪したが、産経報道のあり方を厳しく問いたい。
安倍政権は沖縄の現実から目をそらす。米トランプ政権に追従する姿勢は、核戦略でも同じだ。核廃絶でなく、核軍拡を進める「核戦略の見直し」を高く評価するとは。唯一の戦争被爆国として、断じて許されない。
 この問題の読売新聞6日社説にも驚いた。「安全保障環境の悪化を踏まえ、米国が核抑止力の強化に乗り出したのはやむを得ない」と。トランプ政権の核戦略、それを評価する安倍政権を支持するものだ。
 揺れ動く政治とメディアの関係が問われている。   
posted by JCJ at 16:12 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月28日

〈月間マスコミ評・出版〉格差拡大を放置し今や階級社会に=荒屋敷 宏

 英国在住の保育士・ライター・コラムニストのブレイディみかこ氏の「ブロークン・ブリテンに聞け」という新連載が文芸誌「群像」3月号(講談社)で始まった。ブレイディ氏は「子どもたちの階級闘争」(みすず書房)、「労働者階級の反乱」(光文社新書)などでも脚光を浴びつつある。
 「群像」編集部が作成した目次いわく「階級が分断され、貧困が蔓延(はびこ)る『壊れた英国』で人々はどう生きるのか。『一億総中流社会』が崩壊した日本の未来/現実はここにある――。」
 ブレイディ氏は、生理中に使用するタンポンやナプキンが買えない貧困層の女性たちを意味する「生理貧困」(ピリオド・ポヴァティ)という聞きなれない言葉を切り口に、18歳の女性たちが「スティグマ」(恥の意識)を乗り越えて立ち上がる英国の姿を紹介している。
 「日本でもこの問題はけっして他人事ではないはずである。/生活保護の生活扶助費引き下げという、まるで英国のような緊縮政策が数カ月前に発表されたばかりではなかったか」とブレイディ氏は締めくくる。
 まさしく、他人事ではない。「賃金と社会保障」1月号(旬報社)の特集「さらなる生活保護引下げ」が便利である。同誌編集部によると、「厚労省の今回の(生活扶助費)引下げ案の考え方は、生活保護基準を第1・十分位層(所得階層を10に分けた下位10%の階層)の消費水準と比較し、生活扶助基準が上回っているので引き下げるというもの」という。「一般低所得世帯」の消費支出にあわせて生活扶助基準を変更するという、恐るべき安倍政権の政策である。
 柏木ハルコ氏の漫画「健康で文化的な最低限度の生活」(「週刊ビッグコミックスピリッツ」で連載中)が新人ケースワーカーの視点から生活保護を描いて注目されているが、衆院予算委員会でも日本共産党の志位和夫氏が、生活保護は憲法25条(生存権)にもとづく国民の権利であるとして、削減計画の撤回を求め、生活保護法の名称を改めて「生活保障法」とするなどの提案をおこなった。
 橋本健二氏は「新・日本の階級社会」(講談社現代新書)で、1980年前後から始まった「格差拡大」は40年近くも放置され、「一億総中流」はもはや遠い昔と指摘した上で「現代の日本社会は、もはや『格差社会』などという生ぬるい言葉で形容すべきものではない。それは明らかに、『階級社会』なのである」と書いている。大注目の論点であろう。 
posted by JCJ at 11:45 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月17日

【マスコミ評・放送】DHC、確信犯として沖縄を揶揄=岩崎貞明

 昨年12月、NHKと民放が設置する放送の自主規制機関「放送倫理・番組向上機構(BPO)」の放送倫理検証委員会が、昨年1月に東京都のローカル局、東京メトロポリタンテレビジョン(MX)が放送した番組『ニュース女子』の沖縄特集が「重大な放送倫理違反」だったとの意見を公表した。

 番組は、沖縄の「基地反対派」は「過激派で危険」「日当をもらっている」などという根拠のないデマ情報をレポートし、米軍基地建設反対を訴えて工事現場付近で座り込みの抗議行動を続けている地元の人々を笑い者にするものだった。化粧品製造・販売のディーエイチシーの関連会社が番組を制作し、スポンサー料も付けて放送させるという「持ち込み番組」のスタイルだった。

 BPO放送倫理検証委は、この番組が放送局において適正な考査が行われたかどうかを検証したが、それは沖縄の現地に赴いて関係者に聴き取り調査を行うなど精緻な検証作業を試みたものだった。
 その結果として同委員会は、MXに対して「抗議活動を行う側に対する取材の欠如を問題としなかった」「『救急車を止めた』との放送内容の裏付けを確認しなかった」「『日当』という表現の裏付けを確認しなかった」「『基地の外の』とのスーパーを放置した」「侮蔑的表現のチェックを怠った」「完パケでの考査を行わなかった」という六つの点を指摘し「本件放送には複数の放送倫理上の問題が含まれており、そのような番組を適正な考査を行うことなく放送した点において、TOKYO MXには重大な放送倫理違反があった」と断じている。

 問題は、直接番組制作に携わったディーエイチシー側が、反省どころか開き直りの態度を改めないことだ。基地反対派の取材をしていないことについては「言い分を聞く必要はないと考えます」などと一方的な主張に終始して、まさに確信犯として沖縄の人々を揶揄している。ネット上に蔓延する「沖縄ヘイトスピーチ」は深刻な問題だ。

 この番組をめぐってはもう一件、BPOの放送人権委員会にも人権侵害救済の申し立てが行われている。人権問題であるからには、こちらのほうこそ早急な対応が待たれているはずだ。いずれにせよ、決定を受けたMXの態度が懸念される。
posted by JCJ at 01:14 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月15日

《月間マスコミ評・新聞 》核廃絶運動に平和賞、次につながる=山田 明

 毎年のことだが、年末になると1年を振り返りたくなる。記憶をしっかり記録するためにも。
 世界に目をやると、やはりトランプ米大統領に振り回された1年だった。欧米だけでなく・アジア・中東を揺るがす。国際的にトランプ批判も高まってきたが、安倍首相のトランプ追従ぶりが際立つ。日本外交の姿勢が問われている。
 北朝鮮情勢が緊迫化し、戦争や核への不安が高まるが、平和に向けて明るいニュースも飛び込んだ。今年のノーベル平和賞に国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)が選ばれた。核兵器禁止条約の国連採択への貢献が評価された。草の根の運動体、NGOが受賞したことの意味は大きいが、広島・長崎の被爆国である日本政府の対応はあまりに冷たい。
 日本の政治に目を向けると、「安倍一強」政権のもとで、政治の劣化がますます進んできた。何といっても、焦点は森友学園と加計学園をめぐる疑惑だ。日本政治を揺るがす「もりかけ問題」は、安倍首相夫妻が関係する疑惑である。
 そのため政府・自民党は真相隠し、国会審議の先送り、野党の質問時間削減に躍起となった。毎日12月8日社説は、特別国会閉会にあたり、第4次安倍政権の運営方針をただすとともに、「森友・加計」問題の真相を解明すべき国会だったが、その役割を果たしたとは言い難いと。
 先の衆院選は民進党の分裂騒ぎもあり、与党が勝利した。安倍改憲、憲法9条改悪が現実味を帯びてきた。その一方で、市民と野党共闘が全国的に広がりつつある。
 メディアで注目されるのが、NHK受信料に対する最高裁の初判断。読売7日社説も、判決は「NHKがテレビ設置者の理解が得られるように努め」と指摘。政権べったりではなく、NHKは「知る権利」に応えるベきだ。
 朝日10日は1面トップで「リニア入札不正容疑」を大きく伝えた。大手ゼネコン大林組に強制捜査が入り、巨大事業に激震。リニア中央新幹線は環境破壊をはじめ、多くの問題が指摘されている。リニアは公的資金も投入される巨大事業だ。沿線各地の住民が提訴しているが、国会でほとんど議論されていない。メディアもJR東海に遠慮してか、リニア報道が弱い。今回の疑惑など、厳しく追及してほしい。    
  
posted by JCJ at 22:33 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月04日

《月間マスコミ評》NHK記者過労死、当確報道に疑問=諸川麻衣

 2013年7月24日、NHK首都圏放送センターで都議選、参院選取材に当たってきた佐戸未和記者が、月159時間余の時間外労働の末に31歳の若さで過労死した。4年後の今年11月20日放送の「プロフェッショナル 仕事の流儀 過労死と闘い、命を守る」では、冒頭で生前の佐戸さんの活躍や今のご両親の声を紹介、過労死問題は「この番組を作るNHKにとっても大きな課題です」と述べた。
 調べてみると実はNHKは06年度に既に、年間総労働時間2100Hを指標に各職場で働き方を見直すという「働き方総点検」を始めていた。さらに12年度にはこれを「働き方改革」に発展させ、「業務の棚卸し」を課題とした。13年度には、全経営業務量に見合う要員数(約一万)の枠内で各職場の「歪み」を解消するため、要員再配置や業務の調整=「全体最適」に乗り出した。
 翌14年5月に佐戸さんの過労死が認定されたが、この年は改革の重点事項に「過重労働防止による健康確保」を掲げ、記者の勤務制度の議論、「専任職」を労働時間を管理する一般職に移行する、三六協定の上限を超えた勤務を「限度越え」として報告するよう労組が呼びかける、などの動きが見られた。
 その後、番組の編集期間に休日を設けるなども行われ、16年度には全部局で年間総労働時間平均が前年度を下回り、全体最適も達成されたという(ただし「限度越え」報告は14年度以降一貫して増え続けているらしい)。
 そして今年度には記者の「専門業務型裁量労働制」が発足、10月に佐戸さんの過労死がやっと公表された。また12月7日には、NHKグループ全体として「長時間労働に頼らない組織風土をつくります」と宣言した。
 このように、NHKが過重労働問題にまったく無策だったとは言えない。ただし、佐戸さんの件は当初、職場集会参加者に口頭で報告されただけで、一斉周知はされなかったという。「過労死の事実をしっかり伝え、再発防止に役立ててほしい」とのご両親の気持ちは裏切られていたのである。「できるだけ早く当確を打つ」という意義不明な目標のために人材を集中投入する選挙報道のあり方への根本的な見直しも、ほとんど見られない。
 一方で佐戸さんの過労死はメディアの他社でも反響を呼び、選挙取材期間の勤務管理のあり方を見直す動きが出ているという。三年後、五年後、放送の現場が「以前よりは働き方がまともになってきた」と実感できるようになれば、報道人として志半ばで斃れた佐戸さんの無念は少しは晴れるだろうか? 
      
posted by JCJ at 17:24 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月05日

《月間マスコミ時評・出版》この国は本当に大丈夫か?=荒屋敷 宏

 「総選挙」後である。ある財務省幹部は安倍内閣の選挙を意識しながらの政権運営について「自転車操業」と評したという(「日経ビジネス」11月13日号で安藤毅氏)。

 「週刊エコノミスト」(毎日新聞出版)11月21日号で寺島実郎氏は、衆院選を総括し、小選挙区制のもとで野党分裂の選挙が与党優位になるのは当然としたうえで、戦後2番目の低投票率(53・68%)と比例代表区での自民党の得票率(33・3%)と絶対得票率(17・9%)に注意を促している。

 寺島氏は「国民は、現在の政治状況が正当なものではないことに気づき始めている。今後は政策を軸にした『リトマス試験紙』のようなものが重要になる」として、「外交や安全保障問題、特に沖縄の基地問題」を挙げる。寺島氏が地方講演に出向いた際に「地元の経済人から『小選挙区は自民に入れざるを得ない。だが、この国は本当に大丈夫か』と危惧する声をたくさん聞く」という。「自転車操業」への不安がマグマとなって臨界点に近づいている。

 「週刊金曜日」11月10日号の「京都・Xバンドレーダー基地と『戦争加担』」(成澤宗男氏)は読み応えがあった。丹後半島の北端、経ケ岬(京丹後市)から西へ約3キロ離れた断崖の上に、北朝鮮から飛来するミサイルをとらえる特殊なレーダー基地がある。米太平洋陸軍の第94防空砲兵コマンド第14ミサイル防衛中隊がいる。

 丹後半島に米軍レーダー基地建設の話が持ち上がったのは2013年2月末。米軍が特定秘密保護法の整備を急がせた理由がわかる。米軍は現在、朝鮮半島における軍事戦略「OPLAN5015」(2015年決定の戦争計画)にもとづいて動いている。日本各地で米軍や自衛隊が危険な訓練をしている。そこから「戦争計画」の実像も見えてくる。成澤氏は朝鮮戦争の被害状況を簡潔に振り返っているが、もしも朝鮮半島で休戦協定が破棄されれば、かつての戦争以上の破滅的惨禍となることは明らかだろう。

 この国の将来を決める鍵言葉は「憲法」だ。「週刊金曜日」11月3日号が「憲法キャンペーン」を開始し、同誌編集長の小林和子氏が「世界」編集長の清宮美稚子氏、「DAYS JAPAN」編集長の丸井春氏とおこなった鼎談が面白い。題して「憲法が危機なら私たちが誌面を通して憲法をとりもどします」。野党共闘の時代に雑誌媒体が「共闘」することも「あり」だろう。3誌のコラボ企画が楽しみだ。
posted by JCJ at 13:28 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月14日

≪月間マスコミ評・新聞≫日本がどう動いたのか見えない

 核開発やミサイル発射を続ける北朝鮮に対して国連安保理は日本時間9月12日夕、新たな制裁決議を全会一致で採択した。米国は当初の「石油の全面禁輸」から譲歩して中国、ロシアが賛成できる提案になったと報じられた。
 13日朝刊各紙は、このニュースを1面トップで報じ社説でも展開した。この制裁決議について社説では、「決議後の行動が重要だ」(朝日)、「挑発阻止へ結束の維持を」(毎日)、「結束の力を『次の一手』に」(西日本)と確実な実行を促した。読売は「スピード採択で包囲網狭めた」の見出しだが「新たな制裁を徹底して実行せねばならない」と最も強い主張だった。ただ、制裁効果は推測の域を出ていない。

 もう一つ、この間、日本がどう動いたのかが各紙の記事を読んでも見えてこない。北朝鮮のミサイル発射後、核実験後に安倍晋三首相がトランプ米大統領と電話会談した報道があった。また、日韓首脳会談で「北朝鮮問題」を話し合ったニュースも流れた。
 しかし、電話会談や直接会談で「北朝鮮に一段と強い制裁を」という結論だけは明らかにされたが、そこで安倍首相がトランプ大統領や文在寅大統領に何を語ったのか、相手の話に相づちを打っただけなのかは分からない。

 13日の社説では「日米が主張した原油の全面禁輸は入らなかったが」(毎日)、「日米両国が目指した石油の全面禁輸は…現状維持で決着した」(西日本)と、日本が「全面禁輸」を積極的に主張したかのような一節が見受けられた。しかし、「全面禁輸」は、電話会談でトランプ大統領から提案され、安倍首相が賛成しただけなのではないか。今の日米関係を考えると、トランプ大統領が提案して安倍首相がそれに追随したと考えるのが自然だ。この件に関して日本の各紙とも触れていない。
 米国が譲歩したのは、トランプ大統領の強硬な考えを国務長官、国防長官が諫めて譲歩提案をまとめたと考えるほうが理にかなっている。その大統領に安倍首相は、電話会談後いつも、「完全に一致した」と述べていたのだから、日本独自の制裁案を持っていたと考えるのは無理がある。
 そうした日米関係を踏まえても今回、日本がどう動いたのか見えてこない。 白垣詔男
posted by JCJ at 18:07 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする