2019年02月06日

《マスコミ評・出版》安倍政権への不満が噴き出した=荒屋敷 宏

 通常国会冒頭解散のうわさも出るなか、「平成最後」と日本でしか通用しない話題でお茶をにごす去年今年。安倍政権にたいする「反乱」が静かに始まっている。

「文芸春秋」1月号「トランプの言いなりで兵器を買うな」と主張したのは、元陸将・千葉科学大学客員教授の山下裕貴氏だ。日本政府は前の「中期防衛力整備計画」(2014〜18年度)で米国の最新鋭ステルス戦闘機F35Aを42機も購入した。うち38機は日本企業が下請けとして参画する。「機体に日本の部品を使うこと条件としたため価格が上昇し、一機百七億円だったものが百八十六億円まで膨れ上がった」(山下氏)という。
 
 アメリカに価格決定権があるFMS(有償軍事援助)制度でトランプ言いなりの価格で「殺人兵器」を購入する。新たな中期防(19〜23年度)でもF35AとF35Bを合計45機購入する。防衛省は最終的に147機態勢にする予定だが、その購入費・維持費の総額は6・2兆円を超えるという(しんぶん赤旗1月10日付)。
 
 同じ「文芸春秋」1月号で消費税反対論者ではないセブン&アイ・ホールディングス名誉顧問の鈴木敏文氏が消費増税に怒りをぶちまけている。現在のような景気の状況で消費増税をおこなえば「国内景気がさらに悪化して、消費の減少、企業倒産の増加、失業率の上昇といった負の連鎖に直面する可能性もある。当然、消費税だけではなく、法人税、所得税といった税収全般が、逆に低下する事態に陥ってしまいかねません」と述べている。
 
 批判のホコ先は、政治家にも向かう。「そもそも政治は、人間の心理を考えずに行なうことは不可能であるはずです。本来、政治家は国民から直接選挙で選ばれているわけですから、国民の心理を一番よく分かっていなくてはいけない存在です。ところが、いつからか、有権者の心理を理解できない政治家が多くなってしまいました」。鈴木氏は、10%引き上げの時期や軽減税率にも苦言を呈している。
 
 さらに安倍政権の「成長戦略」と位置づけられていた「原発輸出」も総崩れとなっている。「文芸春秋」2月号「丸の内コンフィデンシャル」欄の「英政府揺さぶる日立」に注目した。日立製作所が英国で進める原発建設計画の凍結(1月17日)発表前の話だが、総事業費が3兆円となるなか、安倍政権の顔を立てようとして失敗した日立側の裏事情を伝えている。
 
 安倍政権を応援する側にも不満が噴き出し始めている。 

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2019年02月04日

《月間マスコミ評・新聞》ゴーン事件 捜査監視の報道弱い=六光寺 弦

 日産自動車のカルロス・ゴーン前会長が1月11日、私的な損失の日産への付け替えを巡る特別背任罪などで追起訴された。長期の勾留や弁護士の立ち会いがない取り調べが海外から批判を受けているが、制度面はともかく、検察の捜査を監視すべき新聞は踏み込みが足りない。
 
 一例として、1月12日付の朝日新聞1面の解説記事を見てみる。
 
 「特別背任罪での再逮捕は、虚偽記載罪での勾留延長を退けた裁判所に反発し、生煮えのまま突っ込んだ危うさが否めない」「今回の捜査はただでさえ『日産内部の権力闘争に加担し、司法取引で不意打ちで逮捕した』との疑念が一部にある」と指摘してはいる。
 
 だが結論は「単なる有罪立証にとどまらず、綿密な証拠に基づいて公平公正な捜査をしたという証明が求められている」と、他人事のように課題を挙げているだけだ。
 
 それでも朝日はましかもしれない。他紙は、前会長側が容疑を否認して、東京地検特捜部と激しく争っているとの“客観報道”にとどまった。産経新聞に至っては、捜査に幅広い支持を得るために、検察は進んで事件の意義を語るべきだと進言する始末。検察の応援団を自認しているのか。
 
 昨年11月の前会長逮捕の時、検察は発表で容疑の内容について、隠蔽したとする役員報酬が未払いであることを伏せていた。逮捕するには容疑が弱い、との批判が出ることを自覚していたのではなかったか。代わって、積極的な情報発信で「金に汚いゴーン」との印象を広めたのは日産だ。迅速な解任は前会長の逮捕なしには不可能だったが、容疑にかかわる重要な事実を、検察がなぜ伏せたのかを追求した記事は見当たらない。
 
 特別背任の立件にしても、検察は困難な捜査に挑んだとの評価を目にするが、ならば、森友事件で財務省の組織的な文書改ざんに対しても、同じように困難を乗り越え、立件すべきではなかったか。そのことを問う記事も見かけない。
 
 特捜検察は2010年の大阪地検の証拠改ざん・隠蔽事件で極限まで堕落した。その責任の一端は「最強の捜査機関」「巨悪を眠らせない」などと、無批判に特捜検察をもてはやしてきた新聞にある。同じ愚を繰り返してはならない。
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2019年01月29日

【NHK「天皇 運命の物語」】 「退位・即位番組」がはらむ危うさ 昭和天皇批判なおタブー=戸崎賢二

今年、天皇退位と新天皇の即位に向かって、テレビでは数多くのニュース、番組が放送されるだろう。おそらく「代替わりキャンペーン」とでもいえる様相を呈するに違いない。

その本格的な開始と思われる番組として、昨年12月23日と24日、2回にわたって放送されたNHK「天皇 運命の物語」第1話、第2話を見た。

この番組は4回シリーズで、第3話、4話は3月に放送という。

第1話「敗戦国の皇太子」は、「神の子」として侍従たちに育てられた天皇が、アメリカから教師として招聘されたヴァイニング夫人らの教育によって成長していく過程が辿られた。皇太子としてイギリス、アメリカを訪問し、かつての敵国から歓迎された歴史も組み込まれている。

第2話「いつもふたりで」は、前半で皇太子妃探しの時期から成婚パレードまでの記録、後半は皇太子夫妻として、災害被災者を訪問するなどの「公務」の開始期の記録をたどっている。とくに1975年、初めて沖縄を訪問したときの、火炎びんを投げつけられた事件を含むエピソードが詳しく描かれた。

この2本の番組は事実と証言でできるだけ客観的に描こうとしており、天皇夫妻を過度に賛美するものとは必ずしもなっていない。敬語が基本的に使われていないことでもそのような印象を与えている。

避けられた事実

しかし、この2番組には、注意深く避けられている事実がある。昭和天皇の戦争責任と沖縄との関わりである。

現天皇は、少年の頃から父である昭和天皇の影響を受けて育ったはずだ。

 ぼう大な被害者を生んだ戦争の開始を承認し、国体護持にこだわって降伏を遅らせた昭和天皇、この父の生涯について現天皇はどう考えていたのだろうか。この点は探索されていない。

 沖縄への強い思いから、11回にも及ぶ訪問があったことが番組で紹介された。この行為に、昭和天皇の有名な「沖縄メッセージ」が影響を与えていたかどうかも不明だ。

 昭和天皇は1947年9月、「米国の長期租借による琉球諸島の軍事占領の継続を望む」というメッセージをアメリカに伝えた。長期にわたる皇室と沖縄の関係を描くなら、この歴史的事実は無視できなかったはずである。

今回の番組でも昭和天皇批判がタブーであることを示した形である。

次代以降が心配

 番組は、皇太子時代の最初の沖縄訪問でのメッセージを紹介した。その内容は「沖縄戦における県民の傷痕を深く省み、……払われた多くの尊い犠牲は一時の行為や言葉によってあがなえるものではなく、人々が長い年月をかけて記憶し、ひとりひとり深い内省の内にあって、この地に心を寄せていくことを置いて考えられません」、というものであった。ここには、自らの訪問も「一時的」なものに過ぎないという内省が見られる。

言葉を発したのが皇太子であるかどうかを超えて、人間としてきわめてまっとうな意思表示であると感じる。

 第3話以降に扱われるだろうが、即位後、毎年の誕生日の記者会見では、

憲法を守ること、過去の歴史に眼を向けることの重要性が一貫して主張されてきた。2013年の会見では、日本国憲法制定時の人々の努力に感謝し、当時の「米国の知日派」の人々への感謝も述べている。

 誠実で善良な人間であればごく自然な発言と思えるが、政治的主張を禁じられた地位にあっては、ぎりぎりの決意を要したはずである。

こうした発言の集積は、当然、安倍政権の憲法にたいする姿勢への対抗軸としてとらえられるという現象を生んだ。

 しかし、天皇の発言を過大に評価し、政治効果を持つものとして期待する風潮には危うさを感じる。現天皇の発言のような内容であれば問題はないかもしれないが、これが次代以降、国粋的、排外主義的な天皇の「お言葉」であったらどうなるか。 

おそらく「代替わりキャンペーン」では、天皇への絶対的敬意を基調に、天皇制への批判はタブーとされるだろう。そうした番組群によって、天皇の地位や発言が重要度を増す空気は、戦前回帰の気配があり、危険である。

現在の象徴天皇制は建て前としては国民主権のもとにある。制度も天皇のあり方も、国民が批判を含めて自由に考えてよいことである。

視聴者は、この原則にしたがって「代替わりキャンぺーン」に冷静に向き合うことが求められる。

戸崎賢二(元NHKディレクター)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
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2019年01月28日

【メディア気象台】 2018年12月から19年1月=編集部

◇民放連、改憲意見CM自粛推奨

民放連は20日、憲法改正の国民投票のテレビCMに関する基本姿勢を発表した。法で制限されていない改憲への意見を表明するCMについても、投票前の14日前から放送しないことを民放各社に推奨する考えを示した。投票を呼び掛ける勧奨CMと、賛否を伝える意見表明CMに分けられ、勧奨CMは主権者が冷静に判断する環境づくりのため、投票日14日前から禁止される。立憲民主党など野党からは、CMが政党などの資金力で左右されないよう、量の規制強化を求める意見が出ている。(「毎日」12月21日付ほか)

◇戦後初の邦字紙面、廃刊へ〜ブラジル「サンパウロ新聞」

世界最大の日系社会がある世界最大のブラジルの邦字紙「サンパウロ新聞」は20日、読者減少のため、廃刊の方針を明らかにした。同紙は1946年に創刊された第二次大戦後初の現地邦字紙、77年には菊池寛賞を受賞していた。週5日発行してきた。だが、世代交代に伴い日本語が読める日系人が減少、発行部数も減っていた。(「毎日」12月21日付ほか)

◇独の著名記者がねつ造記事

ドイツ有力誌シュピーゲルは20日、執筆した複数の記事で虚偽の記述が見つかったとしてクーラス・レロティウス記者(32)を解雇したと発表した。ルポルタージュを得意とする著名記者で、ドイツジャーナリズム界の複数の賞を受賞、米テレビ界からも表彰されていた。レロティウス記者は同誌の調査に「成功すればするほど失敗は許されないと感じるようになった」と動機を語った。同誌によると、2011年以降の記事約60本のうち少なくとも14本に虚偽の記述があった。架空のインタビュー記事を書いたり、ネット上や他の新聞に掲載された写真を自分の記事に使ったりしていた。(「毎日」12月21日付ほか)

◇殺害された記者、再び増加

国際非政府組織(NGO)「国境なき記者団」がまとめた報告書によると、2018年に殺害された職業ジャーナリストは63人となり、17年の55人を上回った。10月にはサウジアラビアの著名記者ジャマル・カショギ氏がイスタンブールのサウジ総領事館で殺害された。強権的な政治指導者による言論弾圧や犯罪組織による暗殺の増加が背景にある。同団体によると死亡数が最も多い国はアフガニスタンで14人だった。武装勢力との戦闘や爆撃に巻き込まれるケースが後を絶たない。麻薬カルテルの抗争が激化するメキシコでは7人、新聞社を狙った銃撃戦が発生した米国では6人が命を落とした。中国やトルコ、エジプトなどで反体制的な論調の記者を拘束する動きも強まっている。18年に投獄されたジャーナリストは170人にのぼる。(「日経」12月22日付ほか)

◇「週刊SPA!」が性的表現で謝罪

扶桑社の男性誌「週刊SPA!」編集部は7日、昨年12月25日号の、女子大生を性的にランク付けした記事中の表現について「扇情的になってしまった」「読者の気分を害する可能性のある特集になってしまった」と、謝罪するコメントを発表した。同号では、特集記事の一環で「ヤレる女子大生RANKING」という順位表を、大学の実名入りで掲載した。この表が「女性差別」だとしてインターネット上で反発の声が高まり、同誌に記事撤回や謝罪を求めるネット上の署名活動に多くの賛同が集まった。(「東京」1月8日付ほか)

◇ロイター記者、二審も実刑

ミャンマーのイスラム教徒ロヒンギャへの迫害問題の取材を巡り、国家機密法違反罪に問われたロイター通信のワ・ロン記者(32)とチョー・ソウ・ウー記者(28)の控訴審判決で、最大都市ヤンゴンの高裁は11日、禁固7年の一審判決を支持し、控訴を棄却した。両記者は西部ラカイン州で国軍の兵士らがロヒンギャ10人を殺害した事件を取材していたが、ヤンゴンで治安部隊の極秘資料を警察から入手したとして逮捕された。(「東京」1月12日付ほか)

◇宮古新報労組が会社清算通知撤回など要求

沖縄県宮古島市で日刊紙を発行する「宮古新報」が会社清算と全社員の解雇を同社労働組合に通告したことをめぐり、組合側は11日、宮古市内で記者会見を開いた。「一方的な解雇通知は断じて許すことはできない」とした上で、同社に対し通知の撤回や事業譲渡に向けた交渉手続きを行うよう求めた。(「しんぶん赤旗」1月13日付ほか)

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
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2019年01月08日

【月刊マスコミ評・新聞】 三権分立の視点欠く「徴用工」論調=白垣詔男

 「徴用工訴訟」で韓国最高裁が10月30日と11月29日の2回、いずれも日本企業に賠償を命じる判決を確定させた。このニュースに対して日本政府は安倍晋三首相、河野太郎外相ともに口を極めて韓国側を非難した。新聞社説も「蓄積を無にせぬ対応を」(10月31日、朝日)、「日韓首脳は率直に協議を」(11月30日、毎日)、「文政権は収拾策を早急に」(11月30日、読売)、「政府は冷静に解決策探れ」(10月31日、西日本)と政府間協議の必要性を訴えた。

 そこには、司法が行政から独立しているという「三権分立」の視点が全くない。日本政府が韓国政府に「抗議」するのは、日本では、司法は行政に忖度した判断ばかりしており、それが当たり前のように政府が考えていることを、安倍、河野氏の発言からうかがい知ることができる。

 しかも、日本では最高裁も政府も1965年の日韓国交正常化に伴う請求権協定で「個人の請求権は消滅しない」と判断しているが、それさえも無視して、今回、政府も新聞各紙も国家間の問題だけに照準を当てているのは納得できない。さらに、日本政府は賠償請求の当事者の各企業に、韓国最高裁判決に従わないように要請した。この政府の姿勢もおかしい。

 かつて、中国で同じような裁判で三菱マテリアル(戦時中は三菱鉱業)などが判決に従って中国人原告に話し合いを持って補償したが、そのときの日本政府は、その判決に異を唱えなかった。今回とは、どこが違うのだろうか。それなのに今回、新聞各紙は当時の「三菱マテリアルのやり方」を取り上げてもいない。

 「新聞の右傾化」と言ってしまえば、そうなのかもしれないが、少なくとも政府の韓国政府に対する高圧的な物言いについては「三権分立」を踏まえる冷静な判断があるべきだった。

 韓国では、朴槿恵政権の際、「徴用工訴訟」を先送りした最高裁の前判事2人に対してソウル中央地検が職権乱用などの容疑で逮捕状を出した(その後、ソウル中央地裁が棄却)。ソウル中央地検は「政権の意向をくんだ先送り」は犯罪であると主張した。これが「三権分立」の基本ではないか。日本の司法は見習うべきで、マスコミも「三権分立」についてもっと論じるべきだろう。

白垣詔男

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
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2019年01月02日

【メディア気象台】 11月から12月=編集部

◇メディア女性主催でセクハラ法規制求める集会

セクシュアルハラスメントの防止に向けた法整備を考える集会が8日、衆議院第一議員会館で開かれた。セクハラ禁止を明記した法律がないため、被害救済が難しい現状が報告され、法規制を求める声が相次いだ。集会は、4月に前財務次官のセクハラ問題をきっかけに発足した「メディア女性ネットワーク」(WiMN)が主催。市民や国会議員ら約170人が参加した。(「東京」11月9日付)

◇ニュース見聞き「民放で」が最多

ニュースを見聞きする頻度が最も高いメディアは「民放テレビ」で、1日の平均視聴時間は36.2分だったことが「新聞通信調査会」の調査で分かった。これによると、ニュースを「読む・見聞きする」と答えた割合は民放91.8%、NHK79.8%、新聞70.1%、インターネット66.5%の順だった。(「しんぶん赤旗」11月11日付ほか)

◇イッテQ「祭り」休止〜やらせ疑惑、日テレ社長謝罪

日本テレビの大久保好男社長は15日、バラエティー番組「世界の果てまでイッテQ!」のやらせ疑惑で「疑念や心配を掛ける事態となり、視聴者や出演者など多くの関係者におわび申し上げる」と謝罪した。疑惑が指摘された、海外の祭りに参加する企画は当面休止する。同企画の調査を進めて結果を公表し、責任者を処分する考えも示した。(「毎日」11月16日付ほか)

◇政権寄りTVもCNN支持

米CNNテレビ記者が記者会見での振る舞いを理由に、ホワイトハウスから「出入り禁止」処分を受けた問題で、複数の米メディアは14日、処分撤回を求め提訴したCNNを支持する共同声明を出した。日頃、トランプ政権寄りのFOXニュースも、CNN支持の姿勢を明確にした。共同声明には、AP通信、NBCニュース、ワシントン・ポスト紙、ニューヨーク・タイムズ紙、USAツデー紙などが名を連ねている。報道の自由には「独立したジャーナリストが大統領とその行動にアクセスし、恣意的な理由で拒絶されないことが不可欠」と訴えた。(「しんぶん赤旗」11月16日付ほか)

◇ホワイトハウス、入庁規制を批判〜記者会が文書提出

米CNNテレビが記者のホワイトハウス入庁許可証の回復を求めた訴訟で、ホワイトハウス記者会は15日、大統領には記者の入庁を規制する権限があるとのトランプ大統領の主張は「誤りだ」とする文書を、ワシントンの連邦地裁に提出した。政権の主張を認めれば「危険な判例を作ることになる」と警告した。(「毎日」11月16日付夕刊ほか)

◇サウジ記者殺害、皇太子指示をCIAが断定

サウジアラビアの著名記者ジャマル・カショギ氏の殺害事件で、ワシントン・ポスト紙電子版は16日、複数の関係者の話として、米中央情報局(CIA)がサウジのムハンマド皇太子が暗殺を指示したと断定したと報じた。報道によると、CIAは、皇太子の指示を受けた実弟ハリド駐米大使がカショギ氏にイスタンブールに出向くよう勧めた▽現場責任者が皇太子側近に任務完了と伝えた▽皇太子が権力を掌握する体制―などの情報に基づき、殺害を主導したと結論付けた。(「東京」11月18日付ほか)

◇NHKネット同時配信、法案提出へ

NHKの番組がテレビと同時にネットでも24時間見られる「常時同時配信」の実現に向け、総務省が来年の通常国会に放送法改正案を提出する詰めの調整に入った。NHKは1953年のテレビ放送開始以来、最大の転換点を迎えることになる。「公共放送」ではなくなり、「公共メディア」に生まれ変わるからだ。(「朝日」12月1日付ほか)

◇4K8K放送スタート

超高精細の4K8K衛星放送が1日午前10時、NHKやBS4局などではじまった。現行の放送は2Kで、4Kは4倍、8Kは16倍の画素数を持ち、きめ細かく迫力のある映像が特徴だ。2020年の東京五輪・パラリンピックを見据えた「次世代」の規格として、総務省や放送界が整備を進めてきた。視聴には規格に対応したチューナーやテレビが必要になる。(「神奈川」12月2日付ほか)

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
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2019年01月01日

【メディアウォッチ】 米朝首脳会談 テレビはどう伝えたか 拉致問題に偏りすぎ 中韓からの視点欠く=古川英一

 「ようやく学校に出てきた不良学生みたいな感じ」「何をするのかわからない怖い国」―大学生が語った、北朝鮮に対するイメージだ。世界を驚かせた6月の米朝首脳会談。この会談をテレビはどのように伝えたのかを検証する公開シンポジウムが12月初め、東京の立教大学で開かれた。メディア社会学科の砂川ゼミ、放送を語る会、JCJ、メディア総合研究所の共催だ。

 まず放送を語る会の戸崎賢二さんが、米朝首脳会談の前後2週間のNHKと民放合わせて12のニュース・情報番組をモニターし、比較検証した結果を報告した。

ポイントは米朝会談の歴史的意義がどのように報道されたのかだとしたうえで、戸崎さんは、全体的に見て@会談の意義を大きな歴史的視点でとらえず、限界を強調するなど否定的に見る傾向が目立ったA圧力一辺倒の政策をとる日本政府に対する批判的な報道が少なかったB国内、世界の世論や識者の意見・見解の紹介が少なく、会談を多面的に捉えるうえで十分とはいえなかった、と指摘した。

さらにキャスターや記者にも政府の立場を反映した感覚が染みついているのではないかと述べ、記者に基礎学力と歴史的教養が備わっているのかどうかと、今のメディアの劣化に対しても疑問を呈した。

 続いてTBS「報道特集」キャスターの金平茂紀さんが講演した。日本人の中にある歴史的偏見と過去の清算が未解決であることや、拉致問題や核開発で政府が北朝鮮を仮想敵国化していると前置きし、金平さんは次のように分析した。

「国交がなく戦争も終わっていない米朝が会談をするという、それだけでも驚きの歴史的な首脳会談について日本は歴史的な評価ができない、ある種のバイアスがあるのではないか」

会談当日、金平さんは韓国で取材にしていたが、ソウル駅で市民が一斉に拍手をして喜んでいたのを見て、同じ民族同士の融和の基盤があることを感じ、自分はいままで韓国のことを知らなったと感じたという。

どのように報道するのか、パフォーマンスの裏

側や、真意、何が実質的成果なのか、そこに切り込むには複眼的な思考が必要なのに日本のメディアは拉致問題しか考えず、韓国や中国からの視点でも見るべきだと、指摘した。

シンポは、これだけでは終わらない。後半は金平さんと大学生たちとのパネルディスカッションだ。学生たちと横一列に並びながらの意見交換は、お互いが同じ目線で語り合う親近感を生み出した。

そこで出たのが、冒頭で紹介した学生たちの言葉だった。こうした感想を受けて金平さんは「韓国や北朝鮮については、偏見があり、たとえば慰安婦問題は人間の尊厳に関わるのに、『いい加減にしろよ』と向き合おうとしない、もし逆の立場だったら、なおざりにはできないではないか」と述べた。さらに「若い人たちが活字ではなくネットから情報を取り、ロジカル(論理的)な思考ができなくなっているのではないか」とぴしゃり。締めくくりの一言では学生たちから「ネットではなく足で稼ぐことの大切さを感じた」「北朝鮮について批判するだけではない見方をしていきたい」といった声が。金平さん「5年後にはピョンヤンにもマクドナルドができるのはないか、その日に取材にいければ」……歴史を作り上げいく現場で、私たち一人ひとりが、その証言者なのだと語った。

古川英一

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
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2018年12月14日

【関西支部】 森友疑惑追及でスクープ 「報道の危機」と相澤さん NHKから大阪日日新聞に転職=井上喜雄

 関西支部は11月2日、大阪で「ジャーナリスト講座」を開催した。今回も「新聞うずみ火」との共催で、講師に先頃NHKから『大阪日日新聞』に転職した相澤冬樹さん(56=論説委員)を招いた。
 相澤さんはここ数年NHK大阪で報道記者として活躍しており森友学園問題ではいくつものスクープを飛ばしていたが、なぜ最大手メディアから小地方紙(発行6000部余=ABC協会)へ移ったのか、その間の事情について会場定員を超える65人の参加者を前に語った。

事件記者やりたい
「自分はどちらかというと右翼だと思っている、ただし国粋ではない真正♂E翼だ、これは初任地長州山口の保守的な環境が影響したようだ、右翼は国を憂える、左翼は社会を憂える、私は主義主張にはとらわれない」と切り出した相澤さんは、こう続けた。

「入局は31年前、ずっと事件記者をやりたい、社会部へ行きたいと思っていた。NHK社会部は東京にしかないが、大阪で府警キャップを5年務め、その後東京でBSニュースに関わった。現場への想い断ち切れず、前任地の大阪で記者に戻せと訴え、それが叶ったので再び大阪で記者になった」。
 その後、起こった森友学園事件報道で相澤さんはスクープを連発、籠池泰典理事長にも一番信頼されていたという。
「大阪地検特捜部の捜査がピークを迎えていた6月、異動の内示を受けた。東京で決めたことだ、今後は考査室でがんばれと言い渡されたが、状況からただの異動ではないなと感じた、報道に戻す気はないと判断したのでその時点でNHKを辞めようと決めた」。
「辞めてからテレビや大手全国紙を含め数社に紹介されたが、大阪勤務はさせないとされ森友問題には関われないうえ、自分を買いたたかれた感じもした。だいたい大手を辞めて大手に行っても意味がないので断った」。

副業OKが決め手
 なぜ大阪日日に決めたのかは「以前の取材先が社主の吉岡利固氏(91歳)に渡りを付けてくれた、同氏は紳士服販売を本業としておられるが、鳥取県の『日本海新聞』のオーナーでもある。反骨の人だと思っている。入社にあたって給料はいくらでもかまわない、ただ『日日』だけに書いてもだめなので副業として他の媒体に書くことを認めて欲しい、各地での講演も続けたいと頼んだ。
 あなたの記事で『日日』が有名になり、部数が増えれば結構だと、吉岡氏は同意してくれた。これからは何でも書けると思った」と所属を変えてでも現役の事件記者を選んだ経緯を明らかにした。    

国・大阪府の仕業 
 森友問題に話が及び「もともと森友学園の計画は資金、教員の確保などズサンなものだった。だから大阪府の審議会は一度認可保留にした、ただ教育方針に問題はあるが森友側は変なことはしていない、金が無いので賄賂などもしなかった、土地代が高いので『まけてくれ』と言ったにすぎない、大阪の人ならだれでも言うセリフだ。  
 あれは森友に学校をつくらせたいと思った国と大阪府のしわざだ。事件はこれからだ」と述べた。
 最後に「今は報道の危機、つまり民主主義の危機だ、マスゴミ≠ネどと揶揄され、報道機関への不信もある。記事に至る過程の説明がないからだ、これは大手の中にいればできないが、辞めたらできると思っている」と2時間近い講演を締めた。

 井上喜雄 

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年11月25日号

                  
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2018年12月12日

【月刊マスコミ評・出版】移民議論 開かれた社会の視点を=荒屋敷 宏

 古代ギリシャの哲人ソクラテスが現代日本に現れて、臨時国会で安倍晋三首相を相手に論戦するとしたら、どんな議論を展開するだろうか。こんな荒唐無稽な問いをたてたくなるほど、政府答弁は、ひどい。あちらこちらの現場に行き、「賢者」の「無知」をしつこくあぶり出すソクラテスの議論は、ジャーナリストの仕事に似ていると思う。
 例えば、「移民」の問題。安倍内閣は「いわゆる移民政策はとる考えはありません」としながら、労働力不足のとりつくろいとして、2019年4月からの外国人労働者の受け入れ拡大を図り、財界の要請のもとに外国人労働者の労働基準法や最低賃金を守らない「人権侵害」を放置している。排外主義を主導する安倍内閣が外国人労働者問題に直面しているのは、矛盾というほかない。

 『文芸春秋オピニオン 2019年の論点100』に収められた社会学者の下地ローレンス吉孝氏「本当は世界第4位! 『移民大国』日本の課題」によると、「1990年の入管法改正、1993年の技能実習制度開始により地域住民として暮らす外国人が増加」、「経済協力開発機構(OECD)の外国人移住者統計によれば、加盟国のうち日本はドイツ・米国・英国に次いで第4位」という。
 下地氏は、「問題なのは、受入れの議論において『日本人』(受入れ側)と『外国人』(受入れられる側)の単純な二分法の発想である」と指摘する。

 「世界」12月号が「移民社会への覚悟」を特集している。日本に来た「技能実習生」に対する人権侵害が国内外から「強制労働に近い状態」(アメリカ政府)、「奴隷・人身売買の状態」(国連)と強く批判されている。
 劇作家の平田オリザ氏は、政府の政策には「開かれた多様な社会を指向し、差別のない、誰でも基本的人権の保障された社会をつくっていくという視点が、そこには全く欠けてしまっている」と批判している。

 インタビューや論文よりも重要なのはルポだ。ノンフィクション作家の森健氏が「東京・新宿 日本一多国籍な教室の子供たち」(「文芸春秋」12月号)との力作を書いている。新大久保駅周辺で「町中を飛び交う言葉は中国語、韓国語、タイ語、英語とさまざまで判別不能な言語もある」という。
「判別不能な言語」をなくすことが「開かれた多様な社会」への道でもあるだろう。それでもなお、「いろんな言語の混じった会話」を「時代を開く新しい言葉」と聞き取った森氏のルポに共感した。 

荒屋敷 宏

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年11月25日号
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2018年11月30日

【メディア気象台】 10月から11月=編集部

◇月間視聴率3冠、日テレ途切れる
在京キー局の視聴率で、日本テレビが全日帯の他、夜間のプライム、ゴールデンの三つの主要時間帯区分でトップとなる、「月間3冠王」が9月までの58か月連続で途切れたことが29日、分かった。視聴率はビデオリサーチ(関東地区)の調査。29日にまとまった10月期の視聴率で、プライムとゴールデンでは59か月連続トップだったが、全日帯(午前6時〜翌日午前零時)でテレビ朝日(7.7%)にトップを奪われた。(「東京」10月30日付ほか)

◇海賊版サイト対策「議論集約できず」〜有識者会議上部会合
内閣府は30日、漫画などを無料で読ませる海賊版サイト対策を検討した有識者会議の上部会合を開き、強制的に閲覧を止める「接続遮断(ブロッキング)」の法制化で意見の対立が解消せず「議論をまとめることができなかった」と報告した。正規版の普及促進や海賊版サイトへの広告抑制といった対策をまず実施し、効果を検証する方針を確認した。(「東京」10月31日付ほか)

◇政党CM禁止柱に国民投票法改正案〜国民民主、憲法調査会
国民民主党は30日午前、憲法調査会総会を国会内で開き、憲法改正の是非を問う国民投票を巡り、スポットCMなど政党による広告放送の禁止を柱とする独自の国民投票法改正案を了承した。改正案は企業や団体が国民投票運動に支出する上限を5億円とする規制も盛り込んだ。資金力の差が投票結果を左右するのが狙い。(「東京」10月31日付ほか)

◇KDDIも値下げ検討〜ドコモに続き
KDDIは1日、都内で高橋誠社長が記者会見し、携帯電話料金の「低価格化、シンプル化に向けて積極的に対応する」と値下げ検討を表明した。NTTドコモが通信料金の値下げを発表したのに続いた。KDDIのプランの内容次第では競争が激しくなりそうだ。(「神奈川」11月2日付ほか)

◇記者殺害、「独立した調査」必要〜国連弁務官
国連のバチェレ人権高等弁務官はこのほど、サウジアラビアの記者ジャマル・カショギ氏がトルコ・イスタンブールのサウジ総領事館で殺害された事件について、「独立した、偏りのない調査」が必要だと指摘した。バチェレ氏は10月30日に発表した声明で、カショギ氏の殺害は「記者と政府の批判者に対する図々しい犯罪だ」と批判。「いかなる政治的な配慮も抜きに調査を行うには、国際的な専門家が関与し、証拠と目撃者へ全面的にアクセスできることが求められる」と指摘した。(「しんぶん赤旗」11月2日付ほか)

◇規制しない方針を民放連改めて示す
民放連は2日、憲法改正の国民投票のCM自主規制に関する考え方を発表し、CM量の規制は行わない方針を改めて示した。野党などから出ている「かつて国会で自主規制を約束していた」との指摘に、「自主的、自律的に取り組む旨を強調したもの」と反論した。(「東京」11月3日付ほか)

◇政府最高レベル、記者殺害を指令」トルコ大統領寄稿
トルコのエルドアン大統領は2日、米紙ワシントン・ポスト電子版への寄稿で、サウジアラビア人記者ジャマル・カショギ氏の殺害は「サウジ政府最高レベルからの指令」だったと指摘した。「サルマン国王が命令したとは全く思っていない」とし、言及はないが、ムハンマド皇太子が関与したとの考えを示唆したとみられる。(「毎日」11月4日付ほか)

◇グーグルマップにヘイト表現
インターネット検索大手グーグルの地図サービス「グーグルマップ」で、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の東京都本部(墨田区)や社民党の旧本部所在地(千代田区)が「犯罪者」などと表記されていたことが4日、分かった。何者かが書き込んだとみられるが、専門家は人種差別などをあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)の防止に向け、「グーグル側にも社会的責任がある」と指摘している。(「東京」11月5日付ほか)

◇トランプ米大統領、記者出入り禁止、拡大も
トランプ米大統領は9日、CNNテレビ記者のホワイトハウスへの入庁許可証を停止したのに続き、他の記者にも出入り禁止措置を広げる可能性があると述べた。記者団に「あなたたちはホワイトハウスや大統領に敬意を払わなければならない」と警告した。パリ訪問前にホワイトハウスで語った。トランプ氏は、CNNを筆頭に自身に批判的なメディアを「フェイク(偽)ニュース」「国民の敵」と攻撃を続けている。出入り禁止措置は「報道の自由」の妨害とも受け取られかねず、批判が高まるのは必至だ。(「神奈川」11月11日付ほか)

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年11月25日号
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2018年11月28日

【メディアウォッチ】 地方創生モデル「東峰テレビ」訪ねる 自ら番組つくる住民ディレクター活躍=橋詰雅博

 JCJ全国交流集会の参加者は2日目の 10月20日午後に、福岡県東峰村(村民約2000人)の村営ケーブルテレビ「東峰(とうほう)テレビ」を訪ねた。 

 昨年7月に襲った九州北部豪雨の際、同テレビプロデュサーの岸本晃さん(65)は、被災直後の村や村民をビデオカメラなどで撮影し、ケーブルの断線によりテレビに被災情報を流せなかった代わりにフェイスブックなどで動画や写真を発信した。これがマスコミの目にとまり、取材陣が押し掛け岸本さんが受け入れ窓口となり東峰テレビの岸本≠フ名が県内外に広まった。

 岸本さんはこう振り返る。
「豪雨が村を襲ったのは7月5日。土砂崩れで3人が亡くなった。私が出張先の東京から戻り村に入ったのは6日の夕方。それから15集落をくまなく回り、損壊した家屋や道路の爪痕、避難所にいる村民らを取材した。出向くと『東峰テレビさんがんばっているね』と村民から声をかけられた。また、村民が私の顔を見ると、安心した表情を浮かべるので、励みになった。ケーブルが復旧したのは被災から3週間後でした」

 岸本さんは、熊本県民テレビ出身で、14年間、情報番組のプロデュサーなどを務めた。在職中に地域を盛り上げるため住民にビデオカメラを渡し、その住民が身の回りの暮らしぶりを撮影して番組をつくる「住民ディレクター」方式を提案。
 それを実践するため1996年に独立し、約20年間で全国50以上の地域を回り、住民ディレクター養成講座を開いた。「ボタンを押せば映る」「身体がカメラ」「番組はオマケ」の3原則を掲げた講座は、実践主義に徹した。

 岸本さんの音頭取りで10年11月に開局した東峰テレビにも約100人の住民ディレクターがいる。会見に同席した農家の女性住民ディレクターはこう言った。
「農作業の合間、月に1、2回番組づくりを手伝います。被災当初は、憔悴した村の皆さんの姿をビデオカラで映すのは気が引けましたが、家に住めるようになってから笑顔が戻り、それを撮影できたのはよかったです」

 村民の7割が見ているという東峰テレビは地方創生のモデルケースとして注目されている。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年11月25日号
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2018年11月08日

【メディア気象台】 9月から10月=編集部

◇改憲問う国民投票CM量、民放連は自主規制せず

民放連は20日、憲法改正の是非を問う国民投票に関するテレビやラジオのCMについて、量を自主規制する統一的な基準は設けず、各放送局の判断に委ねる方針を決定した。民放連は理由として、国民投票法が投票日の14日前からCMの禁止期間を設定している点を挙げ「原則自由である国民投票運動において広告放送にのみ厳しい法規制が課されており、既に量的な配慮が行われていると言える」とした。(「東京」9月21日付ほか)

◇被告手記本「知事推奨と誤解招く」と教授ら抗議文

相模原市緑区の県立障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人が殺害された事件で、黒岩祐治知事が植松聖被告(28)=殺人罪などで起訴=の手記などをまとめた本を推奨していると受け止められかねない発言をしたとして、静岡県立大短期大学部の佐々木隆志教授(61)らが21日、県庁を訪れ、発言の撤回と謝罪を求める抗議文を提出した。(「神奈川」9月22日付)

◇「常識を逸脱、偏見の表現」、LGBT巡り新潮社

新潮社は21日、性的少数者(LGBT)を巡る表現で批判を受けている月刊誌「新潮45」10月号の特集について「あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現が見受けられた」と、内容に問題があったことを認める佐藤隆信社長名の談話を発表した。謝罪の文言はなかった。(「神奈川」9月22日付ほか)

◇子ども向け「六法」出版へ

「いじめは犯罪だと知ってほしい」…。刑法の暴行罪や侮辱罪などを易しい条文で紹介する「子ども六法」の出版に向け、一橋大大学院社会学研究科修士課程の山粼聡一郎さん(24)=川崎市=が、インターネット上で出版費用を募っている。山崎さん自身、小学生時代にいじめられた経験があり、「問題解決の一助になれば」と願っている。(「毎日」9月22日付夕刊ほか)

◇国連、SDGsメディア協定〜創設メンバーに朝日新聞ら

すべての国連加盟国が2030年までの実現を目指す「持続可能な開発目標」(SDGs)について、取り組みを強化しようと国連の呼びかけに応じた世界のメディアによる協力推進の枠組み「SDGメディア・コンパクト(協定)」が23日、発足した。創設メンバーとして、朝日新聞を含む、日米中など10か国以上のメディア企業や国際的な連合組織など、計31社・団体が加わった。参加メディアは、国連とSDGs関連コンテンツに協力したり、実現に向け各国が直面する課題の詳報を進めたりする。(「朝日」9月25日付)

◇是枝監督に生涯功労賞

スペインで開かれた第66回サンセバスチャン国際映画祭で23日、映画監督是枝裕和さん(56)が生涯功労賞に当たる「ドノスティア賞」を受賞した。スペイン語圏で最も注目され、欧州でも有数のこの映画祭でアジア人の同賞受賞は初めて。ドノスティア賞は、同映画祭で最も名誉ある賞で、名監督や名優に授与される。(「神奈川」9月25日付ほか)



◇「新潮45」休刊発表

月刊誌「新潮45」が性的少数者(LGBTなど)を「生産性がない」などと否定する自民党・杉田水脈衆院議員の寄稿を掲載し、最新10月号で擁護する特集も組んで批判が集まっていた問題で、発行元の新潮社は25日、同誌を休刊にすると発表した。「部数低迷に直面し、試行錯誤の過程で編集上の無理が生じた」「このような事態を招いたことについてお詫びいたします」と謝罪。老舗出版社が「顔」ともいえる月刊誌の休刊を決めたことは、言論・出版界に大きな波紋を広げそうだ。「(「毎日」9月26日付ほか)

◇英記者ビザ更新、香港政府が拒否

英紙フィナンシャル・タイムズは5日、香港政府が同紙アジア版編集担当のビクター・マーレット記者のビザ更新を拒否したと明らかにした。同記者は香港外国特派員協会の副会長で、同会が8月に香港独立を主張する政治団体・香港民族党の陳浩天代表を招いた講演会で司会を務めており、民族党はこの後、香港政府により活動禁止を命じられた、このためビザの更新拒否は講演と関連があるとみられる。香港特派員協会は声明を発表し、「言論の自由は法律の保障するところで合理的説明を欠くのであれば当局は関連の決定を取り消すべきだ」と求めている。(「しんぶん赤旗」10月7日付)

◇FB、私的通信流出か〜世界25万人分

米交流サイト大手フェイスブック(FB)の利用者のものとみられる携帯電話番号や、メッセージのやりとりといった個人情報がインターネット上に大量に流出していたことが6日、新たに分かった。情報セキュリティー専門家らの解析によると、世界各国の利用者の個人情報で25万人以上に上るとみられる。(「毎日」10月7日付ほか)

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年10月25日号
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2018年11月05日

【メディアウォッチ】 ネット動画「安倍政権の末路」大反響 FmA配信 アクセス数7万回超=河野慎二

 JCJとマスコミ9条の会共催の集会「安倍政権の末路」のネット配信動画が、過去に例を見ないアクセスを記録、10月についに7万回を超えた。 

この集会はジャーナリストの青木理氏と杉尾秀哉参院議員(元TBSニュースキャスター)、砂川浩慶立教大教授を招き7月に開いたもので、「自由メディア(FmA)」が8月中旬、ユーチューブで全国に発信した。

プロバイダー仰天

集会などの動画は、通常アクセス数はそれほど伸びないが、今回はケタが違った。配信直後に3万件を超えるアクセスが殺到した。瞬時ではあったが、ネット画面に「データに間違いがある恐れがあります」という赤文字の表示が流れた。プロバイダーにもサプライズのアクセス急伸だった。

動画を見た人たちが友人や知人に拡散し、視聴者が増えた。アクセスは10月も衰えることなく続伸、23日には7万703回に達した。

 配信への反応は、ほぼ2対1の比率で「いいね」が大きく上回った。ネトウヨからの罵詈や雑言も飛び交ったが、安倍退陣を求めるアクセスの底堅い伸びは雑音を圧倒した。

決め手はテーマだ

なぜ爆発的にアクセスが増えたのか。

まず、「安倍政権の末路」というテーマ設定が、タイムリーだった。

森友・加計疑惑では首相の信頼は失墜した。

 外交でもトランプ米大統領に従属するばかりで、報道と国会などの現場で安倍政治をウオッチしている青木、杉尾、砂川3氏からは「怒りのマグマが一気に噴き出す可能性がある」(青木氏)、「安倍氏が自民党総裁に3選でもレームダック化は必至」(杉尾氏)などと、核心に迫る発言が相次いだ。

 3氏は、新聞、テレビなどメディアの問題にも言及した。日本ではメディアが分断され、安倍政権に好都合な状況となっている。

 モヤモヤ感を打破

それでも、森友学園を巡る朝日のスクープを例示し「ジャーナリズムはそんなに弱くはなっていない」(青木氏)との指摘があった。

改ざん、隠蔽、虚偽答弁の安倍政治に対する怒りは爆発寸前なのに、退陣に追い込めない、そうしたモヤモヤ感を打ち払うような3氏の分かりやすい議論に動画の再生回数がはね上がった。

 とりわけ女性のアクセスが通常の12%から21%に倍近く増えた。

「この番組を見ることが出来てラッキーです。うんざりする日が続いたので」という声が寄せられている。

 市民は、権力に「忖度」しない報道を切実に求めているのだ。7万回を超えるアクセスは、そのことを強く示している

河野慎二

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年10月25日号
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2018年11月03日

【メディアウォッチ】 非民主的で無責任なITメディアの改革急げ=鈴木賀津彦

 メディア・リテラシー教育の実践的な研究者として世界的に著名な英国のデイビット・バッキンガム氏が来日し、法政大学市ケ谷キャンパスで10月6日、「『デジタル資本主義』時代のメディア・リテラシー教育」をテーマに講演した。同大学図書館司書課程が主催、JCJなどが共催した。教員や図書館司書、研究者やジャーナリスト、学生ら約100人が参加した。

 バッキンガム氏は講演で、フェイスブックやグーグルなどの巨大IT企業の商業主義的な独占支配のもとにあるインターネットの現状から、デジタルの夢は悪夢に変わりつつあると強調。「サイバーユートピア主義は終焉した」と説明した。
 そこで起きているフェイクニュースやネットいじめや「中毒」、そしてクリックベイドなどが横行する現状を、単なる症状ではなく根源にある問題を見る必要があると解説。規制に抵抗する巨大IT企業が代替えとして示す「メディア・リテラシー」やファクトチェッカーなどの技術的解決策など、断片化された「手っ取り早い」解決ではうまくいかないと批判した。
 「私たちが必要としているのは、フェイクニュースか否かをはっきりさせるための単純なチェックリストなどではなく、それらのメッセージを載せるメディアがいかに機能しているのか、経済的な次元だけではないその仕組みを、より深く批判的に理解することなのだ」と述べる。
 では、どうすればいいのか。まず「インターネットを、水や空気のように私たちにとって欠くことのできない公共事業と認めること。それが民間企業によって運営される場合に、厳正な規制と説明責任が求められ、商業的独占が生じないよう防止策や独占企業の解体がなされるべきだ」とバッキンガム氏は主張する。

 次に「グーグルやフェイスブックのような企業は、そのインフラに載るコンテンツを誰が作っていても、メディア企業とみなされるべきだ」とする。現在、インフラを提供するだけの技術的企業であり、中立的な媒介事業者だと振る舞い、流通するコンテンツに対してはいかなる編集責任も持たないと主張しているが、編集責任を持たせ、ヘイトスピーチやハラスメント発言など、既存のメディア規制の対象にしようと訴える。
 第三は個人情報の利用の問題だ。多くの人は利用規約に同意のチェックをすることが何を意味するのか、ほとんど分かっていない。「自らの個人情報がどのように集められ、いかに活用されているかについて、知る権利と管理する権利を持つべきである」とし、「メディア・リテラシーは人々に対して、変革を求めることこそを教えなければならない」と訴えた。
 バッキンガム氏は広島市などでも講演、福島の原発被災地などを視察した。

鈴木賀津彦

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年10月25日号
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2018年10月03日

《月間マスコミ評・新聞》自民総裁選にみる「国民不在」=白垣詔男


 「党首選はるかに遠く民の声」―これは西日本9月5日の朝刊に載った読者による「ニュース川柳」だ。正に今回の自民党総裁選は「国民不在」だった。総裁選びがそのまま「首相選び」に直結するので、国民、読者に視点を定めた報道が必要だったが、その視点は極めて少なかった。
 
 この点を指摘した社説は9月4日の朝日「国民は視野にないのか」と11日の西日本「国民に開かれた論戦こそ」の2紙だけだった。
朝日は「(その原因は安倍)首相側が、一貫して論戦に後ろ向きな姿勢を示している」と分析、西日本は「内向きの『集票合戦』では意味がない」と訴えた。

 総裁選は9月7日に告示されたものの、北海道地震のため告示から3日間「休戦」、しかも「休戦明け」の10日は両候補が所信表明しただけで、首相はその日の午後、ロシアに出掛けた。首相帰国の14日まで論戦はなく事実上の「休戦」となった。首相は「論戦に後ろ向き」というより論戦から逃げたとしか思えなかった。首相が不在で総裁選も盛り上がらなかった。
 
 少ない「選挙論戦」を補うように毎日は告示前の4日から「論点/争点」と題して総裁選に向けて4回の連載を展開。「アベノミクスに功罪」「米中との溝 どう対処」「9条改憲 内輪の論理」「政治主導 揺らぐ理想」と、「丁寧に説明する」と言いながらほとんど話さない安倍首相に代わって「遠い民の声」を意識して、読者に問題点を掘り下げた。「安倍政治」をどう読むか、積み残した多くの懸案に対して安倍首相が、どう立ち向かうのか立ち向かわないのか、その指摘とも言えた。
 
 毎日は先の通常国会閉会後にも「棚上げの問題群 点検 通常国会」と題して6回連載した。「森友文書改ざん問題」「加計学園問題」「日報放置・議員罵倒」「働き方改革法」「カジノ・参院6増」「相次ぐ失言・失態」と、いまだに解明されていない「問題群」を取り上げ、事実上の「安倍政治批判」を繰り広げた姿勢は評価される。
 
 一方、読売は「総裁選 問われるもの」と題して8月28日から9月6日まで自民党幹部、元幹部を登場させて6回連載したが、いずれも視点は国民側にはなく正に「自民党の内向きの姿勢」の印象が強かった。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年9月25日号


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2018年08月01日

<月間マスコミ評・新聞>オウム報道「闇」の強調には疑問=六光路弦

 一連のオウム真理教事件で死刑が確定していた教団幹部13人のうち、松本智津夫(教祖名・麻原彰晃)ら7人の刑が7月6日、執行された。教祖の公判は1審で終結し、無差別テロを起こした理由や動機を自ら法廷で語ることはなかった。だからだろう、新聞各紙の報道には多かれ少なかれ「闇」や「謎」を強調するトーンが目についた。7日付朝刊で東京新聞は1面トップに「オウム真相 闇残し」と取り、朝日新聞は社説で「根源の疑問解けぬまま」と掲げる、といった具合だ。
 
 本当にそうだろうか。教祖は口を閉ざしたかもしれないが、教団幹部の中には洗脳が解け、悔悟の念とともに知りうる限りのことを話した者も少なくない。「闇」や「謎」と呼ぶほどのものは残っていないとも思える。
 
 地下鉄サリン事件からでも23年もの時間が経ち、直接事件を知らない世代が増えている。「闇」ばかりが強調されると、いずれは「事件は国家権力による謀略だった」などという陰謀論が広まらないとも限らない。メディアは今後、何が分かっていないかを強調するよりも、分かっていることを語り継ぎ、再発防止につなげるべきだ。
 
 「闇の中」なのは大量処刑の方だ。13人のうちなぜこの7人なのか、なぜこの時期なのか。記者会見した法相は回答を拒否。国民に知らせる必要はないと言わんばかりだ。死刑は究極の国家の強権発動であることを見せつけた。執行の内幕を暴くは報道の課題だ。
 
 各紙とも事件を振りかえる特集記事も掲載したが、捜査のありようを再検証する視点が乏しいように感じた。地下鉄サリン事件の発生で、後手に回った警察当局の捜査は「オウム狩り」とも呼ぶべき苛烈さだった。教団信者なら、マンション駐車場に車を止めれば「住居侵入」、カッターナイフ所持なら「銃刀法違反」で現行犯逮捕。平時なら批判を免れない手法に、新聞も社会も表立って異議を唱えなかった。
 
 今日、「オウム真理教」の代わりに「工作員」でも何でもいい。「社会が攻撃を受ける」と喧伝されれば、同じように人権侵害が起きないだろうか。教祖らの死刑執行は、当時の自らの報道も含めて総括を試みるいい機会だったが、そうした記事が見受けられなかったのは残念だ。次の機会に期待したい。   
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2018年06月15日

≪メディア時評≫ 歴史的会談の歴史的意味―メディアの報道姿勢を問う=梅田正己(歴史研究者)

 2018年6月12日、米朝首脳会談が行われた。
 翌13日の各紙は、もちろん大きく紙面を割いて、その「成果」を報じた。しかし、その報道は、一定の評価をしながらも、そろって具体性に欠けるとして留保をつけていた。
 例えば、朝日3面の横の大見出しは「非核化 あいまい合意」
 読売3―2面の同じく横見出し、「非核化 課題多く 北の姿勢 見極め」
 日経3―2面の横見出し、「非核化 時間稼ぎ懸念 米朝敵対解消を演出」

 社説もそろってそのことを指摘していた。
 まず、朝日から。
「合意は画期的と言うには程遠い薄弱な内容だった」「署名された共同声明をみる限りでは、米国が会談を急ぐ必要があったのか大いに疑問が残る」
 さらには「その軽々しさには驚かされるとともに深い不安を覚える」「重要なのは明文化された行動計画である」
 その「明確な期限を切った工程表」が示されてないから「会談の成果と呼ぶに値」しないというのである。

 毎日の社説も同様の留保をつける。
「固い約束のようだが、懸念は大いに残る」「そもそも北朝鮮がCIVD(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)に同意したかどうかもはっきりしない」

 読売社説も、「評価と批判が相半ばする結果だと言えよう」としながらも、ホンネは批判の方に傾いているようだ。「懸念されるのは、トランプ氏が記者会見で米韓軍事演習の中止や在韓米軍の将来の削減に言及したことだ。和平に前のめりなあまり、譲歩が過ぎるのではないか」

 日経の社説も同様の論調だ。「真に新たな歴史を刻んだとみなすのはまだ早い」と言った上で、同じく米側の前のめりを批判する。
「米側はすでに(北朝鮮の)体制保証で譲歩を余儀なくされた。今秋の米中間選挙を控え、目先の成果を焦るトランプ政権の前のめりな姿勢を、北朝鮮が巧みに利用したといえなくもない」

 以上のように、全国紙各紙は今回の米朝首脳会談について、できるだけその成果を割り引いて評価したいと見ているようだ。テレビにおいても、登場するコメンテーターのほとんどは同様の見方をしているように私には思われた。

 では、両首脳が署名した共同声明を改めて見てみよう。「非核化」に関する部分を見ると、こう書かれている。
 ――「トランプ大統領はDPRK(朝鮮民主主義人民共和国)に対して安全の保証(security guarantees)を提供することを約束し、金正恩委員長は朝鮮半島の完全な非核化(complete denuclearization)に向けた堅固で揺るぎない(firm and unwavering)決意を再確認した」
 ――「3 2018年4月27日の板門店宣言を再確認し、DPRKは朝鮮半島の完全な非核化(complete denuclearization)に向けて取り組むことを約束する」

 各紙の社説も、テレビのコメンテーターたちも口をそろえて、CIVD(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)が具体的に述べられていないから非核化を信じるわけにはいかないという。
 つまり共同声明で2度にわたって明言されている「完全な非核化(complete denuclearization)」では不十分というわけだ。

 しかし、すべての識者が指摘するように、CIVDは厖大かつ複雑な手間と時間がかかる。現有する核爆弾やミサイルを廃棄するほか、関連の研究施設や製造工場などインフラの解体、さらには開発に従事した科学者や技術者の処遇など、山積する問題をすべて処理しなければならないからだ。
 それには、10年、20年の歳月を要するというのがおおかたの認識だ。
 したがって、朝日社説がいうような「明確な期限を切った工程表」を示せという要求そのものが、現時点ではどだいあり得るはずがないのである。
(→続きを読む)
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2018年06月08日

《月間マスコミ評・新聞》神経疑う、読売「安倍改憲賛成」社説=白垣詔男

 今年の憲法記念日の各社社説は安倍政権に対するそれぞれの姿勢が鮮明に出ており、現在の新聞社の姿勢を知るうえでも非常に興味深かった。
朝日新聞の「安倍政権と憲法 改憲を語る資格あるのか」、毎日「引き継ぐべき憲法秩序 首相権力の統制が先決だ」、読売「憲法記念日 自衛隊違憲論の払拭を図れ」、西日本「憲法記念日 国政の危うさを見据えて」――見出しを見ただけで内容が想像できる。
 
中でも最も合点がいったのは朝日が「統治原理ないがしろ」「普遍的価値の軽視」「優先順位を見誤るな」の小見出しで、安倍政権の政治運営を徹底的に批判。「人権、自由、平等といった人類の普遍的価値や民主主義を深化させるのではなく、『とにかく変えたい』という個人的な願望に他ならない。……民意は冷めたままだ」と安倍首相の個人的な野望を冷静に的確に分析している。

 毎日は、国会議論の低調さや安倍首相の国会無視、過剰な権力行使を指摘して、国会に首相権力への統制力強化を求めているのは首肯できる。西日本は安倍政権が現在置かれている状況を「自業自得」「自縄自縛」と断じる。その上で自民党が発表した4項目の改憲案について「今なぜ(憲法)改正を急ぐのか、現行法の枠内で対応が可能ではないか、といった疑問点が多く、拙速感は否めません」と改憲案を批判している。
 
  以上3紙は、いずれも「安倍改憲」に反対の考え方を明確に主張して小気味いい。
 
 これに対し読売は「自民党案をたたき台に」と小見出しをつけ、「安倍首相(自民党総裁)は、昨年の憲法記念日に、自衛隊の根拠規定を設けるための9条改正を政治課題に掲げた」「自民党は……4項目について、改憲の考え方をまとめた。改正項目を絞り、具体的な条文案として提起したのは評価できる」と安倍・自民党改憲案に賛意を示している。西日本や識者の多くが「現行法で対応できる」という自民党案に対する意見には触れていない。
 
 読売社説を、社名を外して読めば、「自画自賛している自民党の文章」ではないかと疑われても仕方がないほどで、新聞社の社説としては偏っていると思う。これほど露骨に政権党寄りの社説を書く神経を疑ってしまう。


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2018年05月23日

【月間マスコミ評・新聞】再開発に警鐘、日経「限界都市」=山田 明

 4月14日、安倍政権に抗議する人たちが国会議事堂前に殺到し、怒りの声がこだました。若者らのやまないコールが響きわたる。国民の怒りは全国に広がり、内閣支持率も急降下しつつある。与党内からも不安と批判が広がり、「安倍一強」なるものにも揺らぎが見え始めた。
 
 森友疑惑の財務省の決済文書改ざん、加計疑惑の「首相案件」文書、防衛省・自衛隊の日報隠し、厚労省のデータ捏造、前川喜平氏講演に対する文科省・自民党政治家の介入、財務次官セクハラ疑惑への「対応」など、政治の私物化、底なしの嘘と隠ぺい、不祥事。こんな安倍政権のもとで、権力監視と国民の利益を守る憲法改悪など許されるはずがない。
 
 行政の信頼を根底から揺るがす疑惑が次々と明るみに出る。
 
 とりわけ公文書改ざんは議会制民主主義、日報隠しは文民統制を揺るがし、戦後政治のなかでも深刻な事態だ。
「もりかけ」疑惑は、安倍首相と昭恵夫人が当事者として直接関わる。一年以上も、国会と国民を欺いてきた政治責任はきわめて大きい。安倍首相はアベ政治を支えるため、高級官僚の人事権の内閣人事局への移管など、首相官邸への権力集中が強引に進められた。そのひずみがいま噴出しつつある。

 メディアへの攻撃と懐柔も、これまでアベ政治を支えてきた。そのメディアにも、世論の動向を反映して変化の兆しも見られる。
 
 産経はともかく、読売の論調に注目したい。放送法4条の撤廃は明示されなかったが、政府の規制改革推進会議の放送制度のあり方議論の行方に注意が必要だ。
 
 
 メディアは権力監視とともに、国内外の構造変化に対応した世論喚起が求められる。
 
 日経「限界都市」シリーズは、そんな問題提起をしている。タワーマンション偏重の大規模再開発などに警鐘を鳴らす。「政府や自治体、企業が明らかにしない重要事実を、独自取材で掘り起こす調査報道を強化します」(3月21日朝刊)と。
 
 政治腐敗だけでなく、持続可能な社会を脅かす社会問題にも大胆に切り込む「調査報道」を期待したい。   
posted by JCJ at 14:28 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月18日

【月間マスコミ評・放送】「4条擁護」にとどまらぬ議論を=諸川麻衣

 先日、政府が検討している放送制度改革の方針案が明らかにされた。放送を電波からネットに移し、NHK以外の民放は基本不要とし、自由な放送を可能にして新規参入を促すため、政治的公平などを義務づけた放送法4条を撤廃、さらに番組基準策定、番組審議会設置などの規定もなくすという。
 この報道に奇異な感じを抱いた人は多いのではあるまいか。なぜなら、自民党自身が過去、「政治的公平」を錦の御旗にして放送にたびたび圧力をかけてきたからだ。NHKの慰安婦問題の番組に放送前に「公平・公正にやってください」と「注文」をつけて大改ざんに至らしめたのは他ならぬ現党総裁だし、二〇一四年には在京テレビ局に「選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い」を送り、出演者の選定・発言回数や時間、街角インタビューや資料映像についてまで公平中立を求めて物議を醸した。
 こうしたことから、昨年のデイヴィッド・ケイの調査報告書では、「メディアの独立性を強化するため、政府が放送法4条を見直し廃止することを勧めたい」と提起したほどである。
むろん、今回の方針案は自民党政権の「反省」を示したものとは言えない。ネット放送に自民党寄りの新規事業者が多数参入し、沖縄を取り上げた『ニュース女子』のように、公平など無視したフェイク・ニュースや番組が氾濫すればそれで良いのだろう。
 既に民放の経営者や労組、新聞からは、「放送が果たしてきた公共的、社会的役割について考慮がされていない」、「産業振興の色合いも強く、放送の社会的使命を軽視している」、「放送の不偏不党が損なわれる心配が大きい」などの批判が出ている。
 件の『ニュース女子』を放送倫理違反としたBPO意見は、「伝える情報の正確さの追求、裏付けの徹底、偏見の排除といった、放送人が歳月をかけて培ってきた価値観が尊重されなければならない。それこそが『公平、公正な立場』に立った放送」だと述べる。放送法四条の公平原則の必要性は専門家の間でも意見が分かれる。政府の改革案に単純に「四条擁護」を対置するだけでなく、放送に求められる最低限の質とは何か、それを法律でどう規定し、行政権力を介入させずにどう実現するかを今や本格的に議論するべきではあるまいか。
     
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