2019年12月06日

【メディアウオッチ】NHK違憲の大嘗祭費支出を容認 岩田記者フェイク交えて解説=河野慎二

奉祝報道を競う
 天皇の即位に伴うパレード「祝賀御列の儀」が10日、行われた。NHKと民放キー5社は特番を編成し、このパレードを完全生中継した。
新聞のテレビ欄を見ると「カメラ46台展開歴史に残る30分お届け」(NHK)、「新時代の幕開け祝う歴史的瞬間≠ノ歓喜」(日本テレビ)、「新時代祝う令和の調べノーカット生中継」(テレビ朝日)などと、各局が奉祝報道≠競い合う。
 NHKが銀座のブライダル会社にまでカメラを出し生中継した。皇后の衣裳が関心を呼び「ローブデコルテに問い合わせが殺到」とリポートするが、「そこまでやるの?」と呆れる。

国民主権どこへ
 憲法第4条が定める国事行為としての「即位の礼」は、このパレードで五つの儀式がすべて終わったが、メディアの報道に共通するのは、憲法の国民主権や政教分離原則に根差した報道が欠落していることだ。
 象徴的なケースは10月22日に行われた「即位礼正殿の儀」の報道である。高御座(たかみくら)に立つ天皇を仰ぎ見る形で安倍首相が万歳三唱の音頭を取り、参列者が唱和した。憲法の国民主権はどこへ行ったのか。テレビは映像を垂れ流すだけで、憲法上の疑義には触れない。

 今回の「祝賀御列の儀」特番で、NHKの番組構成に重大な疑問が残った。それは、大嘗祭に関わるコーナーである。
 大嘗祭は、即位した天皇が今年取れた新米を天照大神や神々に供え、自らも食べて国民の安寧を祈る宗教行事で、14日から15日に行われた。
 NHK社会部の岡本記者は、秋篠宮が昨年の会見で経費について「大嘗祭は宗教色が強いことを踏まえて、天皇の生活費にあたる内廷費から支出されるべきだ」との考えを示したと説明、「皇室の公的予算である宮廷費からの支出を決めている政府方針と異なる異例の意見表明になった」と指摘した。
 大嘗宮建設費などが27億円に上ることについて秋篠宮は「身の丈に合った形で行うのが本来の姿ではないかと述べた」と解説した。
 岡本記者の解説は至極真っ当なものだが、ここで安倍政権に極めて近い岩田明子記者が登場する。

公的資金支出当然視
 岩田記者は「大嘗祭は極めて重要な伝統的皇位継承儀式として、政府が手立てをするのは当然としている。このため、宮内庁が管理する宮廷費から支出することにした」と、まるで安倍晋三首相の代弁のような解説。
 大嘗祭への公費支出は政教分離を定めた憲法に反する。岩田記者は「各地で裁判が起こされているが、いずれも国が勝訴し、司法の場でも肯定されている」と解説し秋篠宮の提言を一蹴した。
 岩田記者の解説は事実に反している。大阪高裁は95年3月、賠償請求は退けたものの「政教分離規定に違反するのではないかとの疑義は一概に否定できない」との判決を出している。
 フェイク混じりの岩田解説を容認し、官邸忖度のパレード特番を編成した「公共放送」NHKの責任は重い。

河野慎二

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
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2019年12月03日

逮捕で安易に犯人視 報道が冤罪つくる恐れ 袴田事件もとに小石さん講義=須貝道雄

 「報道が冤罪をつくってしまう恐れがある」。11月24日に東京で開いたジャーナリスト講座で、講師のフリーライター・小石勝朗さん(元朝日新聞記者)は静岡県で起きた「袴田事件」を取り上げ、警察取材の難しさを話した。 

 着衣次々変わる
 講座では、53年前の事件発生時の新聞紙面を見せながら、報道のあり方を問いかけた。警察情報に依拠し、「疑わしい人物」を安易に犯人視する記事、見出しの問題だ。
 例えば毎日新聞1966年7月4日の夕刊。見出しに「清水の殺人放火、従業員『H』浮かぶ、血ぞめのシャツを発見」とある。直後の7月5日朝刊記事では「血ぞめのシャツ」は消え、「血ぞめのパジャマ」に変わる。「従業員『袴田』に逮捕状」の記事では見出しに「寝間着の血がキメ手」とあった。小石さんは「これらパジャマや寝間着は、裁判での袴田さん有罪に何もつながっていない」と語った。
 起訴段階で検察側は、袴田さんはパジャマ姿で犯行に及んだとした。しかし裁判の途中で着衣を変更してしまう。事件から1年2カ月後、会社の味噌樽から多数の血痕がついた衣類5点が「発見」される。この5点の衣類が犯行時の着衣で、血痕は血液型から、被害者の返り血と袴田さんの血だと検察側は主張した。

「不敵な」と表現
 5点の衣類は袴田さん死刑判決の根拠となった。しかし第2次再審請求で静岡地裁が実施したDNA鑑定により事態は動く。弁護側鑑定人から、衣類の血痕は被害者の返り血や袴田さんの血ではないとの結果が出て、再審開始決定につながった。
 いったん警察に逮捕されると、その人を犯人視する報道は雪崩のように広がる。袴田事件はその典型だった。
 「袴田を連行、本格取り調べ」では、写真にそえて「不敵なうす笑い」の見出しが。「袴田ついに自供」の記事では「葬儀の日も高笑い、ジキルとハイド≠フ袴田」の見出しだ。
 小石さんが「何でもありですね」と嘆いたのは静岡支局長のコラムの文章だった。「彼の特色といえば、情操が欠け、一片の良心も持ち合わせていないが、知能だけは正常に発達していることである」

予断与えないか
 一連の報道が裁判に強く影響したと小石さんは指摘した。一審の静岡地裁で死刑判決を起案した元裁判官の熊本典道さんはインタビューで、自分は袴田さんが無罪と思ったが、他の二人の裁判官は有罪の判断で死刑判決となったことを明かしている。その中で、新聞報道を読めば「真面目な人だったら引っかかりますよ」(小石勝朗著『袴田事件これでも死刑なのか』から)と語り、有罪判断に報道が関係したことを示唆している。
 「今は裁判員裁判の時代。報道が予断を与えていないか、気配りする必要がある」と小石さんは強調した。    

 須貝道雄

▼袴田事件 1966年に清水市(現在は静岡市清水区)で起きた味噌会社の専務一家4人殺害・放火事件。住み込み従業員で元プロボクサーの袴田巖さん(当時30歳)が逮捕された。1日平均12時間に及ぶ取り調べの末、袴田さんは逮捕から20日目に「自白」。裁判で無実を訴えたが1980年、最高裁で死刑が確定した。再審請求で静岡地裁は2014年、再審開始を決定し、袴田さんは47年7カ月ぶりに釈放された。しかし18年に東京高裁が地裁決定を取り消し、再審請求を棄却。現在は最高裁の判断待ちになっている。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
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2019年11月25日

【月刊マスコミ評・新聞】 安倍一強ぐらつく 私物化へ批判=山田明

この秋も列島各地が相次ぐ災害に見舞われた。災害多発時代にどう備えるか。政治の最重要課題であり、「国土強靭化」政策と予算の検証が求められる。

 政治が大きく揺れ動いている。「1強」とも言われた安倍政権の求心力が急激に低下してきた。1週間で重要閣僚が2人も辞める異常事態。日経11月1日社説も「相次ぐ閣僚辞任が映す長期政権の緩み」と批判する。安倍首相は任命責任を繰り返すが、国会審議の場で自席から低劣なヤジを飛ばすなど、反省が全く見られない。

 問題は閣僚辞任にとどまらない。萩生田文科相が英語民間試験について「身の丈に合わせて」と発言。この問題発言に高校生をはじめ抗議の声が広がり、試験見送りとなった。民間試験導入は安倍首相主導の教育再生会議提言にさかのぼる。

今回の入試騒動は、発端も見送りも政治判断であった。東京2日「こちら特報部」は、背景に競争促す「新自由主義」があると。大学入試、教育が安倍政権により振り回されている。受験生を悩ます共通テスト問題は、国語や数学の記述式問題に広がる。採点はベネッセの子会社。入試の肝である採点をめぐり、大学関係者などから懸念の声が続出。毎日13日社説も記述式試験「延期するしかないのでは」と指摘する。

 さらに安倍政権を直撃したのが、首相主催の桜を見る会である。8日の参院予算委員会で、共産党の田村智子議員の鋭い追及により、「公的行事の私物化」疑惑が明らかにされた。野党が結束して追及チームを発足させると、マスコミも大きく報道するようになり、事態は急展開する。

 毎日13日社説は公金私物化の疑問が募ると批判。朝日も首相の私物化許されぬと問題を投げかける。「首相に近しい者が特別な便宜を受けたのではないか。森友・加計問題でも指摘された、政治の公平・公正に関わる問題であると、首相は深刻に受け止めるべきだ。」

 安倍首相への批判が高まる中で、政府は14日、桜を見る会を来年は中止と即断した。概算要求後の異例の見直しだ。政権を揺るがす事態に、これで幕引きを図るつもりのようだが、問題は来年の花見ではない。ことは安倍首相周辺の公職選挙法にも関わる疑惑である。国会での徹底した追及と、安倍首相の説明責任を求めたい。

山田明

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
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2019年11月23日

【メディア気象台】 11月中旬=編集部

信頼度、新聞が初のトップ
公益財団法人「新聞通信調査会」は1日、メディアに関する全国世論調査の結果を発表した。2008年度の調査開始から、初めて信頼度で新聞が1位になった。昨年まで11年連続NHKがトップだったが、新聞が逆転。調査会は「NHKを批判する『NHKから国民を守る党』の影響もあるのかもしれない」としている。信頼度を100点満点で尋ねたところ、新聞は68.9点で前年よりも0.7点低下したが、メディアの中で最も高かった。
次いで前年から2.3点低下したNHK(68.5点)、順に民放テレビ(62.9点)、ラジオ(56.2点)、インターネット(48.6点)だった。この1年で新聞への信頼感が高くなった人に理由を尋ねると、「情報が正確だから」(37%)、「公正・中立な立場で報道しているから」(24%)が多かった。一方で信頼感が低くなった人の理由は「特定の勢力に偏った報道をしているから」が54%で最多だった。(「朝日」11月2日付)

朝ドラ脚本家、異例の交代
NHKは5日、来春放送開始の連続テレビ小説「エール」について、脚本家を告知予定していた林宏司さんから、清水友佳子さん、島田うれ葉さんと、演出の番組スタッフに交代すると発表した。脚本家の交代は異例。NHK広報局は「制作上の都合」としており、具体的な理由については「制作過程の詳細については答えを控える」としている。(「朝日」11月6日付ほか)

経営委員長辞任求める署名提出
かんぽ生命保険の不正販売を報じたNHK番組を巡り、日本郵政グループの抗議に同調したNHK経営委員会が上田良一会長を厳重注意した問題で、各地の市民団体が5日、石原進経営委員長の辞任を求める約5500人分の署名簿をNHKに共同提出した。署名は「NHKとメディアを考える会(兵庫)」などが呼び掛け、計18団体が参加した。昨年10月の経営委の厳重注意は「放送法が禁じる個別の番組への干渉であり、報道の自由を侵すことで国民の知る権利を侵害する」として、委員長の辞任を求めた。(「毎日」11月6日付ほか)

総務相、NHK同時配信を留保
高市早苗総務相は8日の閣議後の記者会見で、NHKから認可申請があったテレビ番組のインターネット同時配信に関連して、NHKに受信料の在り方や業務の縮小、効率化を検討するよう要請したと明らかにした。NHKは認可を経て2019年度中の同時配信を予定していたが、総務省は業務拡大が事業支出の増加につながるとして、現状では認可の適否を示さなかった。NHKは計画の修正が不可避となりそうだ。(「東京」11月9日付ほか)

「動画見放題」混雑時制限
スマートフォンで特定の動画サイトなどを無制限で視聴できる「ゼロレーティングサービス」について、総務省は通信制限も含めたルールを作る。大勢がスマホでネットに接続して回線が混雑する際に通信量の多い利用者から順に制限する。このサービスには携帯電話各社が相次ぎ参入しているが、アプリやコンテンツを提供する中小事業者の排除につながったり、回線が混雑したりする懸念も出ている。近く指針案を公表し、年内にも実施に移す。(「毎日」11月10日付)

編集部
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2019年11月06日

【月刊マスコミ評・新聞】 芸術祭、政治関与の有無検証を=徳山喜雄

国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」が紆余曲折の末、終わった。開幕からわずか3日で中止となっていた企画展「表現の不自由展・その後」が閉幕直前に再開されるなど、「表現の自由」をめぐってさまざまな議論がなされた。

 不自由展は慰安婦をテーマにした少女像や昭和天皇の肖像をバーナーで燃やす映像作品などが展示され、「反日的だ」などとして匿名の抗議が相次いだ。萩生田光一・文部科学相は9月、採択を決めていた補助金全額を交付しないと発表。不交付の理由について「展示内容」ではなく、「手続きの不備」をあげた。

 不交付の発表を受け、在京紙では朝日、毎日、産経の3紙が9月27日朝刊に社説を掲載。朝日は「表現行為や芸術活動への理解を欠く誤った決定である。社会全体に萎縮効果を及ぼし、国際的にも日本の文化行政に対する不信と軽蔑を招きかねない。ただちに撤回すべきだ」と強いトーンで批判し、毎日は「結果的に今回の措置は、自分たちと意見を異にする言論や表現を暴力的な脅しで排除しようとする行為を、後押しすることにつながる。/さらに、そういった風潮が社会に広がっていくことにも強い危機感を覚える」と疑問を呈した。

 一方、産経は「日本国の象徴である天皇や日本人へのヘイト(憎悪)を表したとしかいえない展示だ。それへの反省を伴う全面的な見直しなくして企画展の再開などとんでもない」「そもそも、左右どちらの陣営であれ、ヘイト行為は『表現の自由』に含まれず、許されない。当然の常識を弁えるべきである」と、朝日や毎日とは正反対の見方を示した。

 不自由展の再開合意を報じる10月1日朝刊の在京紙をみる。朝日と毎日が1面を含む複数面で、東京も2社面で大きく報じ、読売と産経は2社面に事実関係を伝える小振りの記事を入れた。不自由展をめぐっての報道各社の立ち位置がよく分かる紙面扱いだ。

 10月14日に芸術祭は閉幕。朝日や東京は16日朝刊で文化庁の宮田亮平長官の「不交付決定を見直す必要はない」とする参院予算委員会での答弁を取り上げた。宮田氏は決済に関わっていなかったともいうが、政治の関与はなかったのか。ここは閉幕で終わるのではなく、突っ込んだ取材を続けてほしい。

徳山喜雄

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
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2019年11月04日

【メディア気象台】 10月初旬から中旬=編集部

メディア過労自殺、20代集中

厚生労働省は1日、2019年度の「過労死等防止対策白書」を公表した。過労防止大綱で重点業種・職種と位置付けられた建設、メディアの両業種を分析し、建設は現場監督、メディアは若い世代に過労自殺が集中していると指摘した。10年1月〜15年3月に労災認定された脳・心臓疾患と精神障害の事例から、建設の311件とメディアの52件を分析した。メディアの52件を細かく見ると、業種別では広告が26件と最多で、放送17件、出版6件、新聞3件と続いた。職種別では営業が10件、メディア制作とディレクターが7件だった。精神障害が認められた30件のうち、19件が20〜30代の若い世代で、過労自殺した4人は全員が20代だった。背景にあるストレスは、長時間労働や仕事量・質の変化、上司とのトラブルが多かったという。過労死弁護士連絡会議幹事長の川人博弁護士は「東京五輪に向け、報道が過熱し、過重な労働が広がる恐れがあると認識すべきだ」と話している。(「朝日」10月2日付ほか)

「共謀罪 言論を萎縮」市民団体が廃止署名提出

犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法の廃止を求める市民団体が7日、衆院第二議員会館前の路上で「言論を萎縮させ、自由が脅かされている」などと訴え、衆参両院議長あての署名約1万6800人分を野党議員に手渡した。既に提出した分と合わせると約27万4500人分に上るという。(「東京」10月8日付)

韓国法相、容疑者集団取材の場廃止案

韓国のチョグク法相は8日、検察がメディアに対し、出頭した捜査中の容疑者らに集団取材できる場を設けてきた慣行の廃止などを含む検察改革案を発表した。「誤った捜査慣行」として、今後は規則で禁じるという。チョグク法相の妻らが絡む不正疑惑の捜査中でもあり、野党からは批判の声が上がっている。韓国では、検察がメディアに対し、事情聴取で出頭を求めた国会議員や官僚、大企業幹部らに集団取材の便宜を図ってきた。庁舎前に取材エリアを設定し、議員らを立ち止まらせる方式だった。ただ、社会の注目が集まる事件では対象が一般人にも広がり、法曹界からは「推定無罪の原則に反する」「先進国では異例の人格殺人だ」などの反発が起きていた。(「朝日」10月9日付ほか)

マイナンバー原告180人控訴

マイナンバー制度は憲法が保障するプライバシー権を侵害し違憲だとして、神奈川県内の住民ら230人が個人番号の収集・利用の差し止めを国に求めた訴訟で、原告のうち180人が9日、請求を棄却した横浜地裁判決を不服として控訴した。原告側弁護団は「横浜地裁判決は憲法13条で保障されているプライバシー権を極めて狭くとらえており、現代社会におけるプライバシーの重要性に背を向けたものだ」とのコメントを発表した。9月26日の判決では、憲法13条は「個人情報をみだりに第三者に開示、公表されない自由」と指摘した上で、「制度やシステム技術の不備から個人情報が公表される具体的な危険が生じているとは言えない」として、違法性を認めなかった。(「毎日」10月11日付ほか)

東宝「天気の子」で最高益

東宝は11日、2020年2月期の連結純利益が前期に比べて14%増の345億円になる見通しと発表した。従来予想から30億円引き上げ、2期ぶりに最高益を更新する。同社が出資して自社配信するアニメ映画「天気の子」をはじめヒット作が収益を押し上げる。(「日経」10月12日付)

シンガポール、甘い飲み物の広告ダメ

シンガポール政府は、砂糖の含有量が一定量を超える飲料水の広告を全面的に禁じる方針を発表した。同国が「健康危機」と位置付ける糖尿病対策の一環。具体的な実施方針は来年に打ち出すといい、実現すれば世界初の取り組みになる。(「朝日」10月12日付ほか)

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
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2019年10月27日

氾濫する嫌韓情報 不健全のバロメーター メディア間で批判起こらず 画一の内容 危険な道=李 洪千

2万165分。7月から9月10日まで、韓国を扱った放送時間の合計である。そのうち文在寅大統領に関しては1万399分放送された。徴用工は2669分、GSOMIA(軍事情報包括保護協定)は、3614分放送された。韓国の者国法相任命を巡る国会の聴聞会報道は1649分だった。

 韓国関連については6324件が放送された。文大統領に関するニュースは1955件であり、徴用工は659件、GSOMIAは739件、聴聞会は280件となる

偏った過剰報道

 テレビで放送された時間だけを見ても韓国については、情報過剰の状態である。問題は放送時間の長さだけではなく、内容における偏りにある。ある民放の情報番組は、韓国で政治的スキャンダルとして政治的対立の原因になっている者法相関連のテーマに30分以上の時間を割り当てている。その内容を紹介すると、法相の親族を巡り法曹界が大混乱。親族の捜査状況、司法の分断が国民の分断へ飛び火、法相をめぐり国民が二分、文大統領の支持率は、対日姿勢の変化は?など細かく事件に関する情報を提供している。

 これらの放送内容の大部分は韓国の保守的立場をそのまま引用しているおり、イデオロギー的バランスが取れていない。30分も放送するなら反対の立場も紹介できる時間はあったはずなのに、放送内容やコメンテーターの発言から反対の言い分が紹介されることはなかった。

 また、引用されている韓国のメディアは朝鮮日報や中央日報のような保守紙一色である。これらの新聞は文政権に批判的な立場を取っている。特に者法相の任命を巡る一連の流れを紹介する情報はありすぎている。

 クリッピングサービスELNETで検索してみると7月1日から10月17日までに「者国」では1257件が検索された。「文在寅」で検索すると4802件が検出される。

他に類例がない

隣国について関心が多いのは当然のことであろう。関心の過剰はメディアの信頼を損なうことになる。例えば8月27日に行われたTBSのゴゴスマでの武田邦彦中部大教授の発言は、メディアの社会的責任が問われることとなった。彼は生放送で日本人女性が韓国人の男性に暴行を受けた事件に関し「これは日本男子も韓国女性が入って来たら暴行せにゃいかんやかどね」と発言した。

「韓国なんでいらない」という特集を組んだ週刊ポスト(9月13日号)はメディアの役割を自ら否定するに等しい内容だ。

 特定の国を軽蔑し、嫌悪感を煽る情報が容認されることは、世界で類を見ることはない。嫌韓情報が容認されることは、日本のメディアと社会が健全ではないことを示すバロメーターである。

もっと危険なのは増悪を煽る報道・放送に対するメディア間の相互牽制・批判が働かないことだ。相互批判がないのは、メディア内容の画一性を助長し、社会を危険な道に導かせる。

今の状況はまさに危険を知らせるシグナルであることに早く気付くべきだ。

 李 洪千(東京都市大学准教授)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
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2019年10月26日

【かんぽ不正報道】 郵政圧力に屈したNHK経営委 続編制作の現場無視の罪は深く思い 石原経営委委員長は辞任を=戸崎賢二 

 NHK経営委員会が会長に「厳重注意」したことが報じられて以来、驚くべき事実が次々に明らかになっている。
 18年4月24日の「クローズアップ現代+」「郵便局が保険の押し売り!?」に対して郵政グループから執拗な抗議があり、NHKは8月10日に予定していた「続編」の放送を「延期」した。その間、NHK幹部が「会長は番組制作に関与しない」と説明したのに対し、郵政側はNHKのガバナンス(統治)の検証を求める文書を経営委員会に送り、経営委員会はこれを受け入れて会長に厳重注意処分を行った。

放送中止事件だ
 われわれはいったい何を目撃しているのだろうか。
 NHKの自律を揺るがす経営委の対応は重大だったが、その一方、筆者の直感は、放送史上数多い「放送中止・打ち切り事件」に新しいケースが一つ加わった、というものだった。再びかんぽ不正問題を「クロ現」が取り上げたのは1年3カ月後の今年7月である。これを「延期」の末の「続編」とは言えない。昨年8月の「延期」は事実上「中止」というべきではないか。
 「続編」放送予定直前、郵政側が取材拒否を通告した。これが「取材が尽せたかどうか判断する要素になった」と理事の一人が説明したとされる(毎日新聞10月4日付)。企業犯罪を追及する報道で、その企業が取材拒否をしたからといって放送を断念するのか、という話である。現場は続編中止に納得していなかったはずだ。

 日放労放送系列(放送現場の組合員で構成される支部)は、今年9月末の交渉で「昨年秋、現場が納得していない点を問い質した」とし、「制作現場を無視した動きが番組に影響を与えていたとすれば憤りを感じる」と述べたと聞く。
 社会で起こっている事実を取材し、現場が番組やニュースに結実させていくことは、報道機関を成立させる基本の営みである。NHKが郵政グループの圧力に屈してこれを毀損した罪は深く重い。

見識欠く経営委
 NHKが郵政に「番組制作に会長は関与しない」と説明したのは、むしろ実態を正確に反映していた。誤りとまでは言えない。補足説明すれば済むようなことだった。
 これをとらえて郵政側が経営委に要求した「ガバナンスの検証」は、番組に対する会長以下の「統治」を強めるよう事実上要求したものと言ってよい。
 これが番組への別の手段による抗議だったことは明白で、かんぽ不正を告発するような「困った番組が出ないように監督せよ」というのが真意だろう。

 しかし、経営委はこれを受け入れ、郵政側への説明が不十分だとして会長に注意し、郵政側に謝罪させた。番組制作の自主自律というNHKの最高の倫理にたいして大きく見識を欠く行為というべきである。あきれるほかない。「厳重注意」の時期は最初の放送から半年経っている。それまで取材を継続してきたなら、その頃でも「続編」は簡単に放送できたはずである。被害の拡大も防げたかもしれない。しかし、会長が経営委から注意されたような状況では「かんぽ不正」の放送などできなかったと思われる。

署名運動始まる
 放送法は第3条で、「番組は何人からも干渉、規律されることがない」と定め、経営委員会に3条に抵触する行為を禁じている(第32条)、事実の流れからみて、経営委員会の行為は番組制作過程への実質的干渉というべきで、法に違反する疑いがきわめて強い。
 われわれは安倍総理が任命した経営委員会がいかなるものか、改めて認識することになった。この経営委が間もなく次期会長を選ぼうとしている。いま関西の視聴者団体の呼びかけで、石原進経営委員長の辞任を求める署名運動が始まっている。何としてもこの運動を成功させなければならない。

戸崎賢二(元NHKディレクター)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
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2019年10月08日

【マスコミ評・出版】「断韓」編集に生活者の視点なし=荒屋敷 宏 

 「嫌韓」問題である。「週刊ポスト」9月13日号(小学館)の特集「韓国なんて要らない!」は、「嫌韓」どころか「断韓」を主張した。これは、排外主義をあおった同社の雑誌「サピオ」の路線を地で行くものだ。小学館が「サピオ」誌の低迷に懲りずに、「ポスト」誌で同様な特集を組んだことが今回の事態を招いたのではないか。

 青木理氏は、「サンデー毎日」9月22日号のコラムで「なぜこのような記事が『ポスト』誌に掲載されるようになったかと言えば、好転する兆しのない雑誌の低迷が背後に横たわっている」と書いている。だが、低迷雑誌があふれる中で、時の政権に迎合し、「嫌韓」を強調する世論調査をもとにして売ることだけを目的にした編集者の貧困なる精神も問題ではなかろうか。
 内田樹氏が「サンデー毎日」9月29日号で「出版人としての覚悟を問う」を発表し、「ポスト」誌を批判している。「あなたがたには出版人としての矜持(きょうじ)はないのか?」と問い、「それなりに現場の経験を積んできたはずの編集者たちが示したこのモラルハザードに私は今の日本のメディアの著しい劣化の兆候を見る」という。

 「書くなら覚悟をもって書け」というのが内田氏の主張だが、覚悟もなく雑誌を売ることだけを考えている編集者の姿に怒りを募らせてきたという。そのうえで、「私たちにできるのは『それはいくらなんでも非常識ではないか』とか『それではことの筋目が通るまい』というような生活者の常識によって空論や妄想の暴走を抑止することだけである」と結んでいる。

 「嫌韓」の発信源は、安倍政権であり、それに多くのメディアが同調するかたちをとっている。日本が1910年〜45年まで朝鮮半島を支配した事実が学校教育できちんと教えられていない。
 「週刊文春」9月19日号は、「嫌いだけど好きな韓国」との記事で内閣府による「外交に関する世論調査」(2018年度)を紹介している。それによると、60歳以上の67%の人が韓国に「親しみを感じない」と回答。一方で、18歳から29歳の若者世代の57%が韓国に「親しみを感じる」と回答している。最近の「嫌韓」の中でも、韓国で結成された多国籍のアイドルグループ「TWICE(トゥワイス)」の日本での人気は揺るぎなく、今年8月の幕張メッセでのハイタッチ会には数万を超える若者が集まった。編集者よ、ウソだと思うなら、生活者の目で確かめてほしい。 

荒屋敷 宏

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
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2019年09月25日

【メディア気象台】 8月から9月

◇公取委、個人情報不当収集規制〜巨大ITに指針案

公正取引委員会は29日、「プラットフォーマー」と呼ばれる巨大IT企業を独占禁止法で規制するための指針案を公表した。市場で強い支配力を持つ企業が顧客の個人情報を不当に収集して利用する行為が、独禁法違反(優越的地位の乱用)に該当することを初めて明記し、違反する例を示した。9月末での意見公募を経て正式に決定し、年内に運用を始める見通し。(「毎日」8月30日付ほか)

◇読売会長、スイス大使に起用〜報道機関トップ異例

安倍内閣は30日の閣議で、読売新聞グループ本社の白石興二郎会長(72)をスイス大使に充てる人事を決めた。報道機関の現職トップの大使起用は異例。外務省によるとメディア出身者の起用は5人目で、朝日新聞出身で東大教授だった石弘之氏以来17年ぶりだ。9月2日付。読売新聞によると30日付で会長を退任した。白石氏は2013年4月から今年6月まで日本新聞協会長を務めていた。(「朝日」8月31日付ほか)

◇公文書管理専門職、公的資格を創設へ

現在、民間資格しかない公文書など資料管理を専門的に扱う職業「アーキビスト」について、国立公文書館が中心となり公的な資格制度を創設する方向で検討に入った。資格は知識や経験によって3等級に分ける。早ければ2020年度に制度の運用を始める。森友学園を巡る財務省決裁文書改ざん問題などずさんな文書管理が明るみに出たことが背景にある。官僚による不正を防ぐため、資格を得た専門家を各省庁に派遣することも検討する。政府関係者が明らかにした。(「東京」9月1日付ほか)

◇首都直下不明者氏名、市区町村の56%公表に積極姿勢

災害時に連絡が取れない安否不明者の氏名を公表するかどうかを巡り、首都直下地震が想定される東京、埼玉、千葉、神奈川一都三県の全212市区町村のうち、6自治体が「公表する」、113自治体が「公表する」と答え、合わせて56.1%が積極的な姿勢であることが分かった。9月1日の「防災の日」を前に、共同通信がアンケートを実施した。(「東京」9月1日付ほか)

◇週刊ポスト特集に批判、小学館が陳謝

小学館は2日、同日発売の週刊誌「週刊ポスト」の特集「韓国なんて要らない」について、多くの批判があったとして、「配慮に欠けていた」と陳謝する見解を公表した。「週刊ポスト」のウェブサイトに編集部名義で掲載した。ツイッターなどSNS上で作家らから「差別的だ」「憎悪をあおる」との批判が広がっていた。(「毎日」9月4日付ほか)

◇是枝監督に「アジア映画人賞」

10月3日から開催される韓国の釜山国際映画祭で、是枝裕和監督(57)が「今年のアジア映画人賞」を受賞することが4日、決まった。この賞はアジアの映画産業と文化発展に優れた業績を残した関係者及び団体に与えられる。(「朝日」9月5日付ほか)

◇新聞協会賞に秋田魁、毎日新聞など

新聞協会は4日、2019年度の新聞協会賞を発表した。編集部門では、秋田魁新報社の「イージス・アショア配備問題を巡る『適地調査、データずさん』」のスクープなど一連の報道」、毎日新聞大阪本社の「台風21号 関空大打撃」(写真)、日本経済新聞社の「連載企画『データの世紀』とネット社会に関する一連の調査報道」が選ばれた。(「朝日」9月5日付ほか)

◇早回しで投球映像加工〜TBS系「消えた天才」休止

TBSは5日、バラエティー番組「消えた天才」(日曜午後8時)の8月11日放送分で、映像を見なおしすることで、少年野球の投手の投球を実際より速く見えるよう加工していたと発表した。同様の映像の加工がほかにも3件判明したため、すべての調査を終えるまで放送を休止するという。(「毎日」9月6日付ほか)

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
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2019年09月06日

【メディアウオッチ】「韓国は『敵』なのか」に8千人署名 訴える元NHK国際部幹部の理由 自立失ったメディア、高圧的な政治態度…=大貫康雄

 安倍晋三政権が突然のように打ち出した、韓国に対する半導体関連素材3品目の輸出規制措置の後、日韓関係は急速に悪化している。
 特に日本国内の世論がメディアに煽られて、韓国を「敵視」する風潮が強まっている。
 今回の声明、「韓国は『敵』なのか」は、輸出規制措置が日本にとって如何に危険であるか、それこそ「国益」を損なうものであるかを、冷静、客観的に考えてもらうために出されたものだ。
 声明文は、東京大学名誉教授の和田春樹氏や元「世界」編集長の岡本厚氏らが世話人となって日本国民に向けてまとめ、私も呼びかけ人の一人として参加した。

植民地支配の歴史
 声明の概要は、第一に日本が韓国を侵略し、植民地化した過去・歴史を鑑みて対応することの必要性を求めている。日韓両国が報復に報復を招く事態は絶対に避けるべきだ。特に来年は東京オリンピック・パラリンピックの年だ。主催国日本が周辺国と摩擦を引き起こして得るものは何もない。

「敵国扱い」同然
 ところが安倍首相は年初の施政方針演説で、中国、ロシアとの関係改善については見解を表明し、北朝鮮に対してさえ、交渉したいと述べる一方で、日韓関係については一言も触れなかった。5月末の大阪でのG20会議の際には、安倍首相は各国首脳と個別にも会談したのに、韓国の文在寅大統領だけは完全に無視し、立ち話さえもしなかった。その上での今回の措置である。自由と民主主義を基調とし、東アジアの平和と繁栄を共に築いていくべき隣人を、まるで敵国扱いするようなものだ。
 第2点は、日韓両国は未来志向のパートナーであることを強調している。1998年10月、金大中大統領(当時)が来日し、国会演説の中で、戦後日本が民主主義の下、経済成長を遂げアジアへの援助国となり、平和主義を守ってきたと、日本を高く評価した。 その上で、日本国民が過去を直視する勇気を持ち、韓国国民は戦後大きく変わった日本を評価し、共に未来に向かって歩もうと呼びかけた。日本の国会議員も大きな拍手を送りこれに答えた。この相互の敬意が、小渕恵三首相と金大中大統領との「日韓パートナーシップ宣言」の基礎となった。

「解決済み」ではない
 第3点は、日韓基本条約と、それに基づく「日韓請求権協定」の解釈については日韓両国で隔たりがあるままだが、元徴用工問題は安倍政権が常套句のように繰り返す「解決済み」ではない。元徴用工の訴訟は民事訴訟であり、まずは企業が判決にどう対応するかが問われるべきだ。実際、日本政府は過去にも、個人の戦争被害に対する補償の権利を否定せず、サハリン残留韓国人の帰国支援、被爆した韓国人への支援など、工夫しながら実質的な補償をしている。こうした過去を踏まえるならば、双方が納得する妥協点を見出すことは可能だ。
 声明はこのように指摘し、日本政府が韓国への輸出規制を直ちに撤回し、韓国との間で、冷静な対話と議論を開始することを求めている。今回の声明が出された後、賛同者は3週間で8千人を超えた。インターネットでのアクセスは20万人に上っている。

 歴史を否定する姿勢
日韓関係の急激な悪化について私は、報道の自由・自立を失った日本のマスコミの責任とともに、安倍晋三という、現在総理の座にある一人の人物とその集団による被害者を考慮しない冷たい対応、気に入らない歴史を否定し、強い者には卑屈に出る一方で弱い立場の人には高圧的に出る感情的な政治姿勢が両国関係悪化の背景にあると見る。かつて、西ドイツの故シュミット首相が、日本が真の友人を持っていない危険性を指摘していたのが思い出されてならない。

大貫康雄(元NHKヨーロッパ総局長)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年09月05日

【月刊マスコミ評・放送】 英独も模索する「公共性」の回復=諸川麻衣

「NHKをぶっ壊す!」をスローガンにNHKのスクランブル放送化を訴える「NHKから国民を守る党」(N国党)が、参院比例で一議席を獲得、選挙区の得票率で政党要件を満たした。あの丸山穂高代議士を入党させたかと思うと、渡辺喜美議員と「みんなの党」会派を作り、さらにスクランブル化と引き換えに安倍改憲に賛成を打ち出すなど、立花党首の打算的な言動は相変らずである。それを批判するのはたやすいが、問題は相当数の有権者がN国党の主張に共感し、わざわざ投票したという事実である。選挙直後のTOKYOMX『モーニングCROSS』の集計でも、スクランブル放送化に賛成二〇六四、反対七〇八という衝撃的な結果が出た。

今の受信料制度やNHKのあり方へのこうした批判の要因と思われるものを列挙してみる。まず、受信料制度を合憲とした二〇一七年の最高裁判決を錦の御旗に、NHKの集金活動が高圧的になったこと。政権寄りの政治報道のせいで国営放送同然に見られていること(反面「番組が反日的だ」との批判もある)。携帯やカーナビも受信機器とみなして契約を強いる論理が、生活実感になじまないこと。庶民にほぼ無縁な4K8K放送に莫大な予算がつぎ込まれていること。そして、ネット社会の進展によって、NHK・民放を問わずもはやテレビが重要な情報源ではなくなってしまっていること。災害であれ選挙であれ、人々はネットで一次情報を取得できるだけでなく、自らも発信者になりうる。放送制度が前提としてきた、情報発信の専門性・寡占性が大きく変化し、「電波の希少性」がかつてほどの意味を持たなくなってきたのかもしれない。

こうした趨勢の中、イギリスではBBCが、オンライン専門の若者向けチャンネルで犯罪、ドラッグ、セックス、LGBTQなど青少年にとって重要なトピックを扱った番組を配信、注目されている。また放送番組のコンテンツも動画共有サイトに積極的に配信しているという。ドイツは二〇一三年に、従来の受信料を、ネット端末を含む「放送負担金」に変え、費用の徴収の根拠を「受信機の所有」ではなく、「公共放送によるサービスを享受する権利」に変更した。さらに今年四月には値下げにも踏み切った。

「公共メディア」を自称するNHKが受信料制度を維持したいのであれば、疑問符を突き付けられた「公共性」を、日々の放送とネット発信を通じて回復してゆくしかないだろう。  諸川麻衣

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年09月01日

【メディア気象台】 7月から8月=編集部

公文書保存ルール、大臣もなし
大臣が在職中に保有する公文書について、退任時に保存するルールがないことが、大臣のいる全14官庁への毎日新聞の取材で判明した。複数の大臣経験者らによると、退任時に文書を持ち出したり、自ら処分したりするなど対応はバラバラで、廃棄や散逸の恐れがあるという。一方、経済産業省では、大臣に示した文書を半年後にサーバーから自動削除するなど廃棄につながる動きがあることも判明。読者は「大臣の政策判断の検証が困難になる。保存のルールが必要だ」と指摘している。(「毎日」7月18日付)

首相へのヤジ排除、道警が見解変える
札幌市で安倍晋三首相の街頭演説中にヤジを飛ばした市民を警官が取り押さえて排除した行為について、北海道警は17日、聴衆同士のトラブルを防ぐための通常の警察活動だったと説明した。当初は、ヤジが公職選挙法違反(報道の自由妨害)にあたる「おそれがある」としていたが、「事実確認中」と見解を変えた。(「朝日」7月18日付ほか)

ジャニーズ事務所の「圧力」、各局番組は有無触れず
アイドルグループ「SMAP」の元メンバー3人のテレビ出演をめぐり、公正取引委員会がジャニーズ事務所(東京都)に注意について、NHKや在京民放キー局は17日夜〜18日昼、ニュース番組や情報番組で伝えたが、公取委に情報が寄せられた「事務所から局への圧力」の有無について、番組内で局からの詳しい説明はなかった。(「朝日」7月19日付ほか)

ベネチア映画祭に是枝作品
世界最大映画祭の一つ、第76回ベネチア国際映画祭で、メインのコンペティション部門に是枝裕和監督の日仏合作映画「真実(原題、ラ・ヴェリテ)」が選ばれた。日本人監督の作品で初めてオープニング上映されることになった。同作は、フランスの俳優カトリーヌ・ドヌープとジュリエット・ビノシェが母娘を演じている。映画祭は8月28日から9月7日までイタリアのベネチアで開かれる。(「毎日」7月19日付ほか)

NHK「N国党主張に誤りなら放置せず」
NHKの木田幸紀総局長は24日の定例記者会見で、参院選で議席を獲得した「NHKから国民を守る党」が主張する、NHKに受信料を払った人だけが番組を視聴できるスクランブル放送について、否定的な考えを示した。その上で「受信料制度について誤った理解を広げる行為や言動は放置せずに対応したい。明らかな違法行為があれば厳しく対処する」とも述べた。(「毎日」7月25日付ほか)

参院選、真偽不明情報まん延
今回の参院選期間中にインターネットで出回った真偽不明の関連情報は、ファクトチェック(事実確認)の推進団体「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ、東京都)の調べで50件を超えていたことが分かった。連携する新聞社などが確認し、真偽を判定できたのは9件にとどまった。検証作業の担い手不足が課題になっている。参院選公示後にツイッターに載った政治家、候補者の発言や、参院選関連の各種メディア報道、ネット情報などに対し、誤りやミスリードを指摘する投稿を自動的に収集。ファクトチェックが必要と判断した情報が50件を超えた。主要争点となった消費税増税関連が多かったという。(「東京」7月28日付)

市民が再開要望、県知事あて提出
国際芸術祭「あいちトリエナーレ2019」で、元従軍慰安婦を題材とする「平和の少女像」などを展示した企画展「表現の不自由展・その後」が中止された問題で、中止に抗議する市民団体が7日、大村秀章・愛知県知事宛てに再開の要望書を提出した。市民団体は、中止翌日の4日の抗議行動に集まった市民を中心につくられた「再開を求める愛知県民の会」。(「毎日」8月8日付ほか)

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年08月02日

【メディアウオッチ】 権力介入が常態化 JCJ6月集会 こびない情報発信で対抗=編集部

 JCJは6月29日、東京・飯田橋の法政大学でシンポジウム「安倍政権とメディア 攻防7年」を開いた。

 冒頭、共催の法政大学図書館司書課程の坂本旬教授は、このシンポは5月6日に法政大学で開いた『世界報道自由デー・フォーラム』のパート2にあたると挨拶した。

 次ぎにコーディネーターと4人のパネリストが発言した。

 シンポで考える論点について、和光大名誉教授でコーディネーターの竹信三恵子さんは「権力によるメディアへの介入」がポイントと述べた。

 沖縄タイムス編集委員の阿部岳さんは、海上保安庁が長官の記者会見前に記者クラブ加盟社を呼び出し、「沖縄二紙の記事は誤報だ」と説明したケースなどをあげた。

 NHK大阪報道部記者から大阪日日新聞論説委員に転じた相澤冬樹さんは、官邸寄りと言われる板野裕爾NHK専務理事についてこう語った。

「安保法制(2015年9月)をめぐり、国会包囲反対運動が続いていた頃、NHKはそれを一切報道しなかった。当時の板野放送総局長が抑えて出させなかった。取材していたNHK記者たちは『板野のせいで放送できなかった』と今でも言っている」

 東京新聞社会部デスクで「メディアで働く女性ネットワーク」会員の柏崎智子さんは、麻生太郎財務相をはじめ自民党国会議員がセクハラ問題に対し妄言を続けたのは、「これまでの記者の政治家への忖度による安心感からです」と語った。

 元NHKプロデュサーで科学ジャーナリストの林勝彦さんは、自らも制作に携わった福島原発事故の映画「いのち フクシマから未来の世代へ」の一部を上映。そして早期帰還政策は「放射能安全神話」を定着させたいためだと安倍政権を批判した。

朝日新聞OB記者の植村隆さんは、記者時代の慰安婦報道を右派ジャーナリストなどによって痛烈なバッシングを受けた。自分を攻撃した櫻井よし子氏や西岡力氏と安倍晋三首相との密接な関係を提示。その上で「巨大な敵と闘っている」と覚悟のほどを語った。

 後半は登壇者によるフリートーキング。相澤さんは「権力を監視するのはメディアではなく市民。メディアは忖度しない情報を発信し、市民に判断材料を提供するのが役目だ」と対抗策を示した。

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年08月01日

【メディアウオッチ】 韓国民主化運動支えた 伝説のジャーナリスト 札幌で植村裁判を支援 「言論弾圧に声あげねば」=林秀起

軍事独裁政権と闘った韓国の伝説的ジャーナリスト任在慶(イム・ジェギョン)さん、李富栄(イ・ブヨン)さんが7月3日、北海道大学で講演した(JCJ北海道支部など主催)。2人は韓国で植村隆さんを支援する団体を立ち上げ、札幌高裁で開かれた植村裁判も傍聴した。講演での両氏の発言を紹介する。

「忍耐は美徳」ではない

任在慶さんは、1988年に市民の出資で創刊されたハンギョレ新聞の初代副社長。韓国では「ムチで打たれても痛いと言えず、腹が空いても言えない時代が続いてきた。圧力が強ければ反発も強まる。(ハンギョレ新聞)創刊は、言論弾圧に対する人々の強い反発の結果だった」と話す。

 「『忍耐は美徳だ』というのはウソだ」と強調した。

 同国では、かつて李承晩(イ・スンマン)大統領を退陣させた民主化運動のなかで誕生した新聞が、40日で廃刊に追い込まれ、創設者は北のスパイとして処刑された。そんな国柄で、生まれたてのハンギョレ新聞を守ったのは読者、市民、広告主たちだった。創刊時2万7千人の株主は今6万9千人。発行部数は50万部という。

 「株主は一度も配当を受けていない。それはハンギョレ新聞のあり方に納得してくれているからだと思う」

 時代の大きな流れ、運動の方向が味方したともいう。民主化闘争で軍事政権が終結に向かい、経済的平等への志向が強まった「時の運」が、ハンギョレ新聞を生んだと振り返る。

 「時の運は、偶然には生まれてこない。日本の言論の自由は、憲法9条を変えようとしている勢力との戦いに左右される。国の主権は、君主や大統領にあるのではない。人々が『国民主権』をどれだけ意識しているかにかかっている」「言論の自由が保障されている日本で、人々は言うべきことを言っているのだろうか。慰安婦報道で裁判を闘っている植村隆さんのように、不当な攻撃には声をあげなければならない」とも指摘した。

弱まる言論の発言力

李富栄さんは元東亜日報記者。44年前、朴正熙(パク・チョンヒ)政権の言論検閲に抗し、解雇され投獄された。

「特派員をはじめ日本の人々は、私たちの闘いをずっと支援してくれた。だから慰安婦報道で植村隆さんが攻撃されているのは、信じ難い」

 1965年の日韓条約反対の学生運動にかかわった。「条約は朝鮮併合、植民地支配の反省もないところで結ばれた。経済協力金は『独立祝賀金』とされた。河野談話や数々の首相談話、平成天皇の『痛惜の念』表明は、植民地化への謝罪だが、安倍政権はすべて覆した」

 東亜日報の約200人が、自由な言論の実施を宣言して朴正煕の検閲に対抗した。全国35社の言論人が同調した。新聞広告を出させない圧力で白紙になったスペースに、市民の激励広告が寄せられた。しかし会社側は圧力に屈し、朝鮮日報と合わせ166人を解雇した。

 「軍事独裁政権を終わらせないと記者には戻れない。民主化運動の全国組織を作る一方、金大中(キム・デジュン)、金泳三(キム・ヨンサム)ら野党指導者などとの橋渡し役も務めた」。大統領の直接選挙制を目指す改憲運動で、4回目の逮捕。度重なる刑務所暮らしで親しくなった保安係長から、ソウル大生が水攻めの拷問で死亡したこと、犯人とされる捜査官2人がここにいるが真犯人3人は外にいることを知った。

 「保安係長に、私との面談記録は廃棄しろと伝えた。私が何をしようとしているのか彼は察したと思うが、黙って見過ごしてくれた」。事件の真相は外部の協力者を通じて暴露され、大統領直選制に結び付いた。「私は記者の使命を果たせて満足している」

 「政治は残酷なものだ。議席を得るようになった政治家は『在野の者は口を出すな』という態度に変わっていく。復職の望みを断たれた記者たちは『自分たちで新聞を作ろう』と思い立った。それがハンギョレ新聞となって実を結んだ」

 新聞などのメディアは以後急増したが、大資本の影響力も強まり、保守化が進んでいるという。「大新聞が変節、SNSの発達で、正当な言論の発言力が弱まっている」のが今の課題という。

林 秀起(北海道支部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月29日

【メディアウオッチ】 出版界は制度疲労 『出版ニュース』元編集長・清田さんが講演=土居秀夫

『出版ニュース』誌と『出版年鑑』で知られる出版ニュース社が今春、惜しまれつつ経営の幕を降ろした。その代表で、長年JCJ賞選考委員も務めた清田義昭さんが、6月28日の出版部会例会で、「『出版ニュース』編集50年―いま出版界に大切なこと」―と題して語った。

清田さんは冒頭、比較哲学への関心を経てアカデミズムについて考えるようになり、その中で出版への興味を深めて出版ニュース社に入社したことなど、出版界との関わりの原点を振り返った。

 出版ニュース社は当時、国会図書館への納本事務を行っていて、常に新刊に目を通せたこと、入社2年目以降は自分のプランが誌上で実現できるようになったことから、清田氏は、自身と『出版ニュース』の業界ウォッチとしての役割を自覚するようになったという。

出版支える再販制

 出版は、多品種・少量生産で、ときには反公共的な面もある点で、大資本で公共性や公益性を求められる新聞、放送とは、大きく異なる。そこから清田さんは、出版・表現の自由は流通の自由なくしてはありえないことを強く意識するようになった。そして出版・表現の自由は「守る」のではなく「拡げる」ものだと強調。現在も年間出版点数は8万点もあるが、誰もが手がけられるメディアとして当然なことで、それを支えているのが再販制(再販売価格維持制度)と委託販売だと、講演の主題へ話を移した。

 オイルショックでも成長を続けた出版業界に対し、公正取引委員会が、定価の高さ、断裁の無駄、流通の非効率などから出版物の再販制廃止を言い出し、騒然となったのが78年。業界側は、寡占化や流通の困難、中小出版の経営悪化の恐れなどを挙げて反論し、『出版ニュース』も「再販ニュース」と言われるほど、この問題に取り組んだ。

 公取委は結局、2001年に再販制存置を決めたが、電子出版物は除外。同じ著作物でありながらそうなったのは問題だと、清田さんは指摘した。

深刻アマゾン問題

 出版業界は80年代以降、雑誌が牽引する「雑高書低」の成長を続けたが、1995年がピークで、同年、ウィンドウズ95が発売されたのが大きな分岐点となったと分析。以後、右肩下がりが止まらず、いまや「雑低書高」となり、雑誌の時代は終わった。それが中小書店の経営を打撃し、日書連の書店は3000店にまで減少したこと、2000年のアマゾン参入後は、ポイント制や割引販売、出版社との直接取引などで再販制が事実上、無視されていることを述べた。

 一方、業界は出版社、取次、書店とも対応はバラバラだ。その結果、再販制がなくなればかつて業界が危惧したことが起きるだろう。「制度疲労」といわれるが、どこがなぜ疲労しているのか、運命共同体である業界三者で議論・検証する必要があると主張した。

 国会の活字文化議員連盟の「公共図書館プロジェクト」が出した答申でも、書店の疲弊と図書館問題を取り上げているが、書店は読者と出版界が向き合う最前線であり、その問題を起点に再販制の議論をしていくべきだと提案して、講演を終えた。

 講演後の質疑応答でも再販制とアマゾンが話題となり、この問題の大きさが改めて浮き彫りにされた。  

土居秀夫

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月26日

【メディアウオッチ】6月~7月=編集部

◇ロシア記者軟禁で抗議の200人を拘束
ロシアの独立系ニュースサイト「メドゥーザ」のイワン・ゴルノフ記者が麻薬密売容疑で捜査当局に一時軟禁されたことに抗議する市民ら数百人以上が12日、モスクワ中心部に集まった。野党系サイトによると約200人が拘束された。(「東京」6月14日付ほか)

◇「性別確認」BPOが審議〜読売テレビのニュース番組
放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は14日、番組内のコーナーで一般人の性別をしつこく確認する様子を放送した読売テレビ(大阪市)のニュース番組「かんさい情報ネットten.」について審議入りすることを決めた。問題となったのは、5月10日に放送した街角ロケのコーナー。飲食店員から「(常連客に)男の人か女の人か聞いて」と依頼を受けたお笑い芸人が、常連客の同意を得て胸を触ったりする模様を流した。(「毎日」6月15日付ほか)

◇NHK同時配信、費用上限順守を〜民放連会長
民放連の大久保好男会長は14日の会見で、NHKに放送番組のインターネット常時同時配信を認める改定放送法が成立したことを受け、「NHKには配信費用の現行枠をしっかり守ってもらいたい」と述べた。受信料収入の2.5%までと定められたネット関連業務の上限順守を訴えた。(「しんぶん赤旗」6月16日付ほか)

◇関テレ「ヘイト」放送、番組で謝罪
関西テレビが5月18日放送のバラエティー番組「胸いっぱいサミット!」で、作家の岩井志麻子氏の「(韓国人は)手首を切るブスみたいなもん」とヘイトと受け取られかねない発言を編集せずに放送した問題で、同社は22日昼の番組冒頭で謝罪した。(「毎日」6月23日付ほか)

◇大阪市、街宣ヘイト初認定
ヘイトスピーチ抑止を目的とした条例に基づき、大阪市の有識者審査会は2日までに、2016年9月の大阪市内での街宣活動と、その音声ファイルをインターネット上で公開した行為がヘイトスピーチに当たると認定し、市に答申した。街宣活動の認定は初めて。(「神奈川」7月3日付ほか)

◇NHK、吉本興業に要望
吉本興業のお笑い芸人らが振り込み詐欺グループの宴会に参加し金銭を受け取っていた問題について、NHKの上田良一会長は4日の会見で「番組の出演者をめぐって視聴者から不信感や疑念を抱かれることがないよう、しっかり対応して参りたい」と述べた。担当者によると、番組制作に影響が出かねないような情報があれば、速やかにNHKに伝えるよう求めたという。(「朝日」7月5日付ほか)

◇一部記者排除「独裁政権のよう」〜NYタイムズが批判
米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は5日、東京新聞の望月衣塑子記者を紹介する記事を掲載した。菅義偉官房長官らに対して多くの質問を繰り出すことで、日本の報道の自由にとって「国民的英雄のような存在」になっていると指摘した。背景として、日本政府は一部の記者を会見から排除するなど「独裁政権のような振る舞い」をすることがあると批判。日本には多くの記者クラブがあり、所属する記者たちは情報を得られなくなることを恐れ、当局者との対立を避ける傾向があるとの見方も紹介した。(「東京」7月7日付ほか)

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月25日

【メディアウオッチ】NHKもテレ朝も「安倍忖度」人事 「官邸御用聞き」専務理事に3年ぶり復帰 政権批判の経済部長 報道局からパージ=河野慎二

 このところ、安倍晋三政権寄りとの批判が強まるテレビ朝日で7月1日、それを印象づける報道局幹部の人事があった。「報道ステーション」のチーフプロデューサー(CP)として、テレビ朝日の報道を支えてきた松原文枝経済部長が報道局から外され、イベント事業戦略担当部長に発令された。

不正追及崩さず    
 松原部長は「報ステ」CPを務めた2016年、「ワイマール憲法の教訓」を題材に安倍改憲の危険性を取材した映像で、JCJ賞を受賞している。
 経済部長就任後も、政権の不正追及の姿勢を崩さず、年金に関わる「2千万円不足問題」では、テレ朝記者が麻生太郎財務相追及の口火を切った。重要な局面では松原部長自身が記者会見に出席し、現場記者を支えた。テレ朝記者の質問に麻生財務相は「またテレビ朝日か。ものの見方が俺たちと全然違う」と敵意を隠さなかった。
 この点について、森友学園疑惑のスクープ取材を巡る配転命令でNHKと訣別した相澤冬樹氏がJCJの6月集会で「松原経済部長は政権を忖度せず、真っ当にニュースを出してきたから、それがダメだとして配転された。何が何でも、報道の外に出すという(上層部の)意思がある」と指摘した。
 その上で相澤氏は「早河洋会長と近い見城徹氏がテレビ朝日番組審議会の委員長に就任してから『報道ステーション』をヤリ玉にあげるなど、今回の松原氏外しにつながった」と松原経済部長の異例な人事の背景に言及した。

見城徹氏の役割
 見城氏については本紙6月号で記事にしたが、ベストセラーづくりの名物編集者で幻冬舎の社長。もう一つ安倍応援団≠フ顔を持ち、知人や友人を安倍首相に引き合わせている。
 早河会長も13年3月見城氏の紹介で安倍首相と会食。これを境にテレビ朝と安倍官邸の距離は急速に縮まり、NHKに劣らずアベチャンネル化≠ェ進むのではないかと懸念が広がる。松原氏のもとには「誰が見ても左遷人事だ。大変だけど頑張れ」と激励する仲間が少なくない反面、若い後輩からは「テレ朝にとって、想像以上のダメージです」「テレ朝報道の終わりの始まり。政権監視は当たり前なのに、安倍忖度≠ナすね」などのメールが送られ、衝撃が広がった。

内示後もスクープ
 松原氏は「萎縮したら、向こうの思うツボ。ひるまず、取材を続けて」と返信。「私もへこんでばかりではいられない」と前を向く。
 異動内示後も松原氏は、農水省が所管する政府系ファンド「農林漁業成長産業化支援機構」のズサンな融資と累積損失の実態をスクープする。「支援機構」には、国が300億円を出資している。
 松原氏自ら「報道ステーション」(6月25日)に生出演し、独自に入手した「支援機構」の内部文書をもとに、国民からの資金で運営する財政投融資が食い物にされる危険性を解説した。
 さらに彼は、立教大学が開催した「国際カジノ・シンポジウム」の取材を指揮した。「日本統合型リゾート〜健全社会のIRを目指して」と題して5日から開催されたが、実態はカジノの人材養成講座で、文学部と社会学部の教授会が総長に連名で抗議。豊島区も後援を取りやめた。
 テレ朝は学内で教授や学生にインタビューを行い「立教はカジノに魂を売るな」などの声を伝えた。この「カジノ・シンポ」を取材したのは、民放ではテレ朝だけだった。
 権力の不正に迫ろうとする松原氏の姿勢に揺らぎはない。しかし、報道強化に欠かせない貴重な人材を報道局からパージするテレ朝首脳の判断は、安倍官邸の評価は得ても、視聴者の信頼は失うだけだ。

裏で密かに蠢く
 一方、NHKでは、籾井勝人元会長の側近・板野裕爾氏の専務理事復帰で、テレ朝以上に安倍政権御用化≠ェ進むことが危惧されている。
JCJが参加する「NHKとメディアの『今』を考える会」は6月25日、NHK前で板野氏の退任を求める集会を開催した。大貫康夫さん(元NHKヨーロッパ総局長)はこう言った。「NHKは政権べったりで、公共放送と言えるのか。板野専務理事の仕事は裏で蠢くことではない」。
各参加者は口々に板野即刻退任の声を上げた

河野慎二

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月14日

【月刊マスコミ評・放送】 小川彩佳キャスターと筑紫イズム=三原治

テレビ朝日を4月に退社し、その2カ月後、TBS系報道番組『NEWS23』のメインキャスターに抜擢された小川彩佳キャスターのリニューアル版が6月3日スタートした。小川さんは2007年4月にテレビ朝日に入社して以降、『サンデープロジェクト』の司会、『報道ステーション』のサブキャスター、直近ではインターネットテレビ局「AbemaTV」のニュース番組『AbemaPrime』の司会進行を務めるなど、一貫して報道畑に携わってきた。特に看板番組『報道ステーション』を7年半経験し、将来の報道番組を背負っていく逸材に違いなかった。そんな未来あるキャスター移籍の話題が夜のニュース戦争に拍車をかけている。

夜11時台に放送されているニュース番組と女性キャスターは、NHK『ニュースきょう一日』は井上あさひ。日本テレビ『news zero』は元NHKでフリーの有働由美子。TBS『NEWS23』は小川彩佳。フジテレビ『Live News α』は三田友梨佳。テレビ東京の老舗番組『ワールドビジネスサテライト』は大江麻理子。夜10時のテレビ朝日『報道ステーション』は徳永有美といった顔ぶれである。平成から夜ニュースは女性キャスターの時代に入っていたが、令和となって小川キャスター参入で、夜のニュース戦争が激化してきた感がある。

 骨太なニュース番組は姿を消した。権力を監視する辛口なキャスターもいなくなった。報道のTBSを自負する『NEWS23』も筑紫哲也氏の頃の緊張感はなくなった。安倍内閣の下、益々右傾化する今こそ、筑紫氏のようなキャスターを必要としている。彼は、少数派の立場に立ち続け、沖縄への思い入れを持ち続け、護憲の立場を崩さなかった。世の中にはびこる権力や日本という国を踏みにじるような社会の趨勢に、常に「にこやかに」、硬直的でない抵抗のスタイルを貫いた。彼の剛健な気風は、どんな人が投げるどんな球でも受け取り続けた。

 『NEWS23』という冠を受け継ぐ小川キャスターにその精神や心構えは宿っているのだろうか。

 小川キャスターは、半年間のブランクを感じさせない番組さばきは見事。インタビューでは、自分なりの感性と言葉で伝えようとする姿勢が垣間見えた。ジャーナリストとしての資質を褒める評論家の指摘もある。

これまでメインキャスターを務めてきた星浩氏がアンカーとして小川キャスターを支える。スポーツは石井大裕アナウンサー、サブキャスターを山本恵里伽さん、取材キャスターを報道局の村瀬健介記者が務める。2週間視聴したが、期待は感じている。目先の視聴率で揺らぐことなく、信じる報道姿勢を貫いてほしい。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
posted by JCJ at 09:03 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年07月07日

【月刊マスコミ評・新聞】 対北朝鮮 無策への疑問ないのか=白垣詔男

日本の対北朝鮮外交は全くゼロなのか―そう思わせるニュースがあった。

6月5、6日、モンゴルでの国際会議の記事だ。朝日が5日朝刊で「北朝鮮が国際会議欠席 首脳会談打ち合わせの予定が」と前触れ記事を掲載した。6日朝刊では読売「日朝会談へ接触想定 モンゴル対話に北朝鮮参加せず」、産経とその他一部の地方紙(共同通信記事)「政府、日朝会談意向、伝達できず 北朝鮮がモンゴルでの会議欠席」の見出しで、外務省幹部が出席した国際会議に北朝鮮が欠席したことを報じた。これで安倍晋三首相が「前提条件なしで北朝鮮との対話」を提唱する意向を見せていたことを北朝鮮に伝えられなかったと「事実」のみを書いていた。毎日、西日本は報じなかった。

北朝鮮との関係について、「拉致問題解決」も「日朝首脳会談」も、安倍政権は米トランプ大統領頼みで、いずれも手詰まりの安倍首相は、それでも「外交の安倍」と胸を張るのだろうか。「モンゴル国際会議、北朝鮮欠席報道」からは、そうとしか読み取れない。

しかも、「親安倍新聞」も「正常なジャーナリズム感覚をまだ失っていない新聞」も、事実のみしか報じなかった。記事を書いた記者は、読者が抱く疑問を考えなかったのか。

本来、この記事は、日本の、対米追従だけの「対北朝鮮外交無策」について、これでいいのかという疑問を抱き、その解説が必要だろう。それを、日朝首脳会談の事前接触が、モンゴル国際会議頼みだったというだけの印象を与える内容では、読者不在の記事と言ってもいいだろう。

裏を返せば、「対北朝鮮外交」を外務省はどう考えているのかを知りたい。最前線で北朝鮮と接触をする、かつての田中均さんのような外務省幹部はいないのか。北朝鮮との接触方法が、国際会議に出てくると予想した北朝鮮の代表しか当てにできないとしたら、いくら国交がない国相手としても、政府(外務省)の姿勢はお粗末だ。安倍首相が「拉致問題解決が私の最大の仕事」と胸を張っても、事実は「やっているポーズ」でしかないことが、今回の一件で、さらに確実になったと思う。

そうした読者の疑問に答える解説記事をどこも掲載しなかったことは残念で仕方がない。

白垣詔男

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
posted by JCJ at 09:37 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする