2019年06月08日

【月刊マスコミ評・新聞】 心に響く高村薫さんの朝日への投稿

 30年前とは雰囲気は大きく異なるが、改元騒ぎが続いた。とりわけテレビは改元一色となり、NHKの放送時間は4月29日から3日間で33時間という。安倍政権による改元の政治利用も目についた。

垂れ流される報道のなかで、朝日4月30日の作家・高村薫さん寄稿が心に響いた。この30年の歴史を振り返り、何よりも変わる意思と力をもった新しい日本人が求められると。

今から30年前、1989年はベルリンの壁崩壊、冷戦終結という、戦後史にとって節目の年であった。日本国内はバブル絶頂期であり、消費税3%がスタート。その後、バブルが崩壊して経済社会の混乱が続いた。日経4月30日社説も「未完の成熟国家だった」とし、人口減社会の到来など、日本が抱える試練への対応を求める。

ことし2019年も、揺れ動く時代の転換点になるのではないか。日本国憲法施行から72年の時を刻む。憲法記念日の読売社説は「もとより、憲法改正論議の中心は、9条である。一部に根強く残る自衛隊違憲論を払拭し、国の安全と国民の命を守る正当性を明確にする狙いは理解できる」。安倍政権の狙いを理解できると言うのだろうか。 

毎日社説は「今、憲法をめぐって手当てが必要なのは、9条の問題よりもむしろ、国会の著しい機能低下だろう。その最たるものは首相権力に対する統制力の乏しさだ」。

読売5月10日「憲法考」での馬場伸幸・日本維新の会幹事長の発言にも注目したい。改憲勢力が「3分の2を維持することは、我が党にとっても参院選のアピールポイントになる」。安倍政権の「別働隊」として、改憲勢力の一翼であると明言。安倍改憲に向けて、維新の援軍ぶりが際立つ。

地域政党の大阪維新の会は、脱法行為といえる大阪府・市「入れ替えダブル首長選」で圧勝し、府議・市議選も大きく議席を伸ばした。ノンフィクションライター松本創さんが本紙4月号に寄稿したように、広がり定着する「穏健」支持層など、大阪での維新政治は、その基盤を広げている。選挙後には、公明・自民が変質して、大阪「都」構想=大阪市潰しの住民投票が現実味を帯びてきた。

維新の動向は大阪だけでなく、安倍改憲など国政にも重大な影響をもたらす。注視したい。

山田明

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
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2019年06月01日

【メディア気象台】 4月から5月=編集部

トランプ報道にピュリツアー賞
米報道界で最高の栄誉とされる2019年のピュリツアー賞が15日発表され、トランプ大統領をめぐる疑惑の調査報道を行ったニューヨーク・タイムズとウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の両紙が受賞した。タイムズ紙は「18か月間にわたる徹底調査」(選考委員会)を通じ、トランプ氏が1990年代に一族による脱税工作に関与した疑惑を明らかにし、解説報道賞に選ばれた。WSJ紙はトランプ氏と不倫関係にあったと主張する女性に、トランプ氏側が口止め料を払っていたことを暴露した報道で国内報道賞を受けた。(「しんぶん赤旗」4月17日付ほか)

旅券返納命令で国を提訴
中東イエメンの取材を予定していたジャーナリストの常岡浩介さん(49)が外務省から旅券の返納を命じられた問題で、常岡さんは24日、国を相手に命令の取り消しを求めて東京地裁に提訴した。同日、外国特派員協会で会見し、報道の自由が制限されたと訴えた。(「朝日」4月25日付ほか)

女性記者が長崎市を提訴、「取材で性暴力」「名誉も傷ついた」
長崎市の男性部長(故人)から性暴力を受けたという報道機関の女性記者が25日、市に約3500万円の損害賠償と謝罪を求めて長崎地裁に提訴した。取材過程で性暴力がふるわれたほか、市の他の幹部が虚偽の話を広めたにもかかわらず、市が対策を怠ったために記者の名誉も傷つけられたなどと主張しており、弁護側は「報道の自由が侵害された」と訴えている。(「朝日」4月26日付ほか)

菅氏「文書管理問題ない」
菅義偉官房長官が25日の記者会見で、NPO法人の情報公開請求により、2017年度から2年間に公文書として作成された11府省の各閣僚の日程表がすべて不存在となっていたことについて、文書管理上の問題はないとの認識を示した。(「毎日」4月26日付ほか)

「NHKから国民を守る党」統一選躍進、参院選擁立へ
今月の統一地方選でNHKへの批判を唯一の政策に掲げた政治団体「NHKから国民を守る党」の公認候補26人が当選した。所属する地方議員は選挙前の13人から39人に大幅に増え、26日には今夏の参院選に候補者を擁立すると発表した。「ネットの時代にNHKのみに強制的に(受信料を)支払わせることに相当の不満があって投票につながった」。会見した同団体の立花孝志代表(51)は、統一地方選についてそう述べた。7月の参院選では比例区への候補者擁立に必要だとして、選挙区も含め10人を擁立すると発表、自らも東京都葛飾区議を辞職して比例区に立候補すると表明した。(「朝日」4月27日付ほか)

サウジ記者殺害に河野外相は触れず
訪問先のサウジアラビアで同国のムハンマド皇太子と会談し、サウジの経済構造改革を支援する考えを改めて強調した。日本外務省によると、河野氏は約1時間の会談で、ムハンマド氏の関与が指摘されるサウジ人記者カショギ氏殺害事件について言及しなかった。殺害事件を巡って国際社会から批判を受けるムハンマド氏に配慮したとみられる。(「東京」4月30日付ほか)

改元報道、テレビは170時間
改元前後の7日間のテレビ番組で、天皇や改元をめぐる特集が170時間を超えたことが、番組・CM調査を手掛けるエム・データ(本社・東京都板橋区)の調べで分かった。同社はNHKと在京民放キー局の4月28日〜5月4日の地上波放送で「改元」「令和」「天皇」「皇后」のいずれかのキーワードが入ったコーナーや特集などの総量を調べた。(「朝日」5月11日付)

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
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2019年05月30日

【「令和」狂騒報道】 放送 恐るべき礼賛横並び 制度批判の言論伝えず=戸崎賢二 

 4月30日、5月1日の退位・即位の日、おびただしい量のテレビ報道があった。
印象を端的に言えば、恐るべき同一性ということだろうか。
 新天皇即位の日のテレビ報道は、前夜のカウントダウン、各地の「令和」奉祝行事、新生児が並ぶ産院の取材、それに、新天皇の過去の事績の歴史資料映像といった内容に終始し、ここに例外なく「おことば」を読み解く解説が加わる。
 日中のワイドショーはもちろん、5月1日のNHK「ニュース7」「ニュースウオッチ9」テレビ朝日「報道ステーション」TBS「NEWS23」などを視聴したが、どの局も判で押したように似た内容だった。
 こうした一連の報道がはらむ問題は何か。二つの点を指摘したい。

憲法違反の疑い
 第一の問題は、代替わりの儀式に憲法上の疑義があるという批判があるのに、その議論の存在が全く伝えられず、放送全体が奉祝の基調に蔽われていたことだ。
 即位の儀式は、天照大神から授かったとされる三種の神器の継承を核としている。これは、天皇が神の子孫であることを主張する宗教的行事であって、このような皇室祭祀を国家的行事とすることは、憲法の政教分離の原則に明らかに反する。
 また続いて行われた「朝見の儀」は、本来は「天皇が群臣を召して勅語を賜う儀式」(広辞苑)である。一段高ところに立った天皇に議員らが臣下のごとく拝謁するという形の儀式は、天皇の地位が国民の総意に基づくという憲法の精神とは相容れない。

 ニュース制作者は、こうした論点を知っていて意図的に避けたのだろうか。そうであればまだしも救いがある。
 筆者の推測にすぎないが、放送現場には、このような憲法の知識がそもそも不在であり、憲法や天皇制の起源に関する無知・無教養が蔓延しているのではないか。このほうがことは深刻である。
 4月18日、明仁天皇が伊勢神宮を参拝したとき、NHK「ニュースウオッチ9」のアナウンスは、伊勢神宮について「皇室の祖先の天照大神がまつられています」と留保抜きで紹介した。天皇の祖先が神であると明言した形である。
 こうした報道もまた無知を露呈するものだった。

天皇制批判排除
 もう一つの問題は、テレビでは、天皇制そのものに対する批判的言論が抹殺されたかのようにほとんど伝えられなかったことだ。
 ある特定の家柄に生まれたことで特別に高い地位に就く、という制度は、どう考えても憲法の原理には反する。しかも日本人は過去、その地位への尊崇と服従を強制され、戦争の惨禍を経験している。こうしたことから、天皇制に疑念を抱く国民が少数とはいえ、確実に存在するはずである。
 しかし、退位・即位関連番組は制度批判の言論をほとんど伝えていない。

 新天皇即位の「おことば」のなかに、注目すべき文言がある。
「…歴代の天皇のなされようを心にとどめ、自己の研鑽に励む」と新天皇は述べた。「歴代天皇」の中には当然昭和天皇が含まれるだろう。ここには昭和天皇の名によって遂行された戦争の時代から現行憲法の時代への転換の認識が見られない。各局ニュースは「おことば」を必ず解説したが、この点を指摘した解説は見当たらなかった。
 5月3日の「NEWS23」は、当日の毎日新聞の天皇制についての世論調査で、「天皇制は廃止すべき」とする意見が7パーセントあったと伝えた。象徴天皇制でよい、とする意見74パーセントに比べれば圧倒的に少数だが、100人の国民がいればそのうち7人が天皇制反対ということになる。決して少ない数ではない。
 代替わりの時期は、国民が天皇制とは何かを考える絶好の機会であるはずだった。少数意見の存在もまた報じられてしかるべきではなかったか。

同調圧力の増大
 憲法は「天皇の地位は国民の総意に基づく」と定めている。しかし、総意など関係なく、天皇を敬愛するのが当然と言わんばかりの報道があふれ天皇制は尊重すべきという空気がテレビ報道全体を覆っていた。
 こうした報道による同調圧力の増大は、日本をどこへ導くだろうか。
 たとえば将来、安保法の下で、自衛隊員が海外で大規模な戦争に参加し、戦死者が出るなどという「国家の非常事態」が生まれた場合、テレビメディアが、愛国心をあおる横並び一斉報道を展開し、国民の判断を誤らせるかもしれない。
 今回の代替わり報道はそうした懸念を身に迫るものとして感じさせた。
 テレビ報道に従事する人びとには、代替わり報道が本当にこれでよかったのか、という自省と批判精神の回復を求めたい。

戸崎賢二(元NHKディレクター)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
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2019年05月14日

【メディア気象台】 3月〜4月=編集部

◇「森友」黒塗り開示違法、国に賠償命令〜大阪地裁
学校法人「森友学園」の国有地売却問題で、小学校設置趣意書の情報公開請求に対し、財務省近畿財務局が当初ほぼ黒塗りで開示したのは違法だとして、上脇博之神戸学院大教授が国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は14日「黒塗りには合理的な根拠がなく、誤った判断だ」と違法性を認め、非開示の精神的苦痛による慰謝料など5万5千円の支払いを命じた。(「神奈川」3月15日付ほか)

◇危険にさらされている記者、公表
AP通信やロイター通信、米誌タイムなど世界の大手報道機関11社が、15日、危険にさらされている世界各地の記者リストを公表し、今後1カ月に1度ずつ更新を続けると発表した。記者数は10人程度とし、「真実の追求」をしたことで攻撃されている記者らを守るのが目的としている。第一回のリストに入ったのは、フィリピンのドゥテルテ政権に批判的な報道を続けて逮捕されたレッサ氏や、ミャンマーのイスラム教徒少数民族ロヒンギャ迫害問題の取材を巡り国家機密法違反の罪に問われたロイターの記者2人など。(「東京」3月17日付ほか)

◇「偽ニュース禁止」成立〜露政権批判、規制の恐れ
ロシアのプーチン大統領は18日、議会上下両院が可決したインターネット上の偽ニュースを禁止する法案に署名、法律は成立した。大統領の諮問機関「市民社会発展・人権評議会」が「権力による恣意的な利用」の恐れを指摘、プーチン氏に署名しないよう求めていた。政権批判があふれているネット空間の言論が、今後「偽ニュース」を理由に規制される恐れが指摘されている。マスメディアは対象外。検察が情報の真偽を調べ、偽ニュースと判断すればネット規制を当局に通報、当該のホームページや会員制交流サイト(SNS)への接続ができなくなる。(「毎日」3月20日付ほか)

◇民放連、改憲国民投票CMに指針
日本民間放送連盟は20日、憲法改正の賛否を問う国民投票の際に政党などが流すテレビ・ラジオCMについて、内容などに問題がないか放送前にチェックする「考査」の具体的な留意点がまとめたガイドラインを公表した。特定の広告主のCMが一部の時間帯に集中して流れることがないよう留意することなどが盛り込まれた。(「朝日」3月21日付ほか)

◇フェイスブック、ターゲット広告の差別禁止へ
米交流サイト大手フェイスブック(FB)は19日、広告の配信先を絞り込むターゲット広告で、差別的な慣行を見直すと発表した。住宅や求人、貸し付けの広告を出稿する広告主が、年齢や性別、郵便番号のデータを使って、広告を配信する消費者を絞り込むのを禁じる。(「東京」3月21日付ほか)

◇川端康成文学賞、休止
優れた短編小説に贈られる川端康成文学賞について、主催の川端康成記念会は25日、今年の選考を休止すると発表した。川端が死去した1972年にノーベル文学賞の賞金を中心とした基金を作り、創設された文学賞。新潮社の協力を得て、これまで44回の選考を行ってきた。運営基金が危うい状態にあることなどが、休止の理由という。(「朝日」3月26日付ほか)

◇韓国人教授、送り付け被害〜「言論抑圧」警視庁が捜査
テレビ番組で日韓関係を中心にコメントしている韓国人大学教授の男性宛てに、本人が注文していない健康食品などが通信販売の代引きで大量に送り付けられていることが5日、分かった。警視庁が偽計業務妨害の疑いで捜査しており、教授は「言論を抑圧しようとするテロで、許せない」と話している。(「神奈川」4月6日付ほか)

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
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2019年05月07日

【メディアウォッチ】 弱体すぎる出版団体 アピールも情報提供も少ない 文化通信・星野編集長が講演=土居秀夫

業界の「定点観測」をテーマとした出版部会例会が、「文化通信」編集長の星野渉氏を招いて、4月6日、JCJ事務所で開催された。

 星野氏は冒頭、取次崩壊とか書店減少とかいわれるが、本は残るという点で自分は楽観している。今は情勢が大きく変化した後の次の段階だ、と前置きして、まずコミックと雑誌の動向を解説した。



拡大する電子版

 昨年、コミック市場は回復し、電子版が拡大した。回復の原因は海賊版サイト「漫画村」の閉鎖、中堅作品のヒット、講談社など大手の定価値上げなどで、値上げしても売り上げは減らなかった。

 出版業界で進むデジタル化については、ファッション誌、経済誌などでは電子版と紙媒体の2本立てとなり、「ニューズピックス」のように紙媒体を創刊したところもある。紙媒体にはブランドの維持やプロモーションの役割を持たせ、デジタルで稼ぐという傾向になっているという。

 そして、中国の都市部では、本を読むことがトレンドとなっている。若い時期にある程度長い文章を読む経験が必要で、書店がないと本好きは育たないと語った。

 この数年激しく変貌した取次業界について、トーハン、日本出版販売(日販)とも取次部門は赤字で、出版社に対する正味(仕入れ値)などの条件交渉、書店事業の収益化、両社の協業化が進んでいる。トーハンは344店、日販は271店もの直営書店を抱えた日本屈指の書店チェーンとなり、両社の中期経営計画ではそれらを統合・法人化していくようだ。書店が注文しないものを送らない「事前発注」を増やすことで、仕入れの量と点数は減るだろう。出版社は、刊行情報の早期提供、正味の低減、書店への事前発注に注力などが必要になると分析した。



書店大きく変貌



 経営が厳しさを増す書店の現状では、雑貨部門を造った米子市の今井書店や居酒屋も併設した有隣堂のミッドタウン日比谷での取り組み、日本進出を図る台湾の誠品書店が「動的」な空間を目指していることを紹介。昨年の新規出店数は84店と過去最低で、全国8000店の書店は、このままでは5000店くらいになるだろうとの見通しを示し、書店は今後、仕入れ機能の強化、キャッシュレスへの対応が求められることを指摘した。

 世界的に従来型の書店はなくなりつつあり、アメリカではアマゾンの影響で大型書店が減った一方、独立系の書店が増えた。ドイツでも書店数は減っているが、新しいタイプの書店が出てきていること、従来型の書店がほぼ消えた中国では、新業態の書店が2017年には1000店も出店したことを取り上げた。

 最後に、トーハンがモデルとするドイツの出版流通事情に関連して、ドイツ図書流通連盟には出版社、取次、書店のほとんどが加盟し、40名もいる事務局は活発なロビー活動を行っていることを紹介した。それに比べて書協9名、取協3名、日書連6名など事務局の人数をあげて、外部へのアピールも情報提供もしない日本の出版業界団体が弱体すぎることを指摘して、講演を締めくくった。

 質疑応答の中で星野氏が、書店を守るためには再販制は必要だ、と強調したのが印象的だった。


土居秀夫

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
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2019年04月29日

【メディアウォッチ】 NHK「忖度政治報道」に抗議 上田会長あてに申し入れ書提出=編集部

 3月22日、この日はラジオ放送が始まったNHKの放送記念日にあたる。その94回目の日、渋谷のNHK放送センター西口前では、NHKで働く人たちに向けた呼びかけ行動があった。呼びかけたのは安倍晋三政権のもとでのNHK政治報道の姿勢を批判する市民が立ち上げた「NHKとメディアの『今』を考える会」で、放送を語る会やJCJのメンバーも加わっている。

働く人へトークも

 この日、市民団体が提出した上田良一会長あての申し入れでは、NHKに対して政府から独立した公共放送の原則に立つ政治報道を求めるとしたうえで、▼安倍首相の発言や行動に対する批判的報道がほとんどない▼政権にとって不都合と思われる事実を伝えていない▼政府が発表する呼称に従う傾向がある▼森友・加計学園問題で報道を抑制する姿勢が批判されたと指摘している。

出勤する職員やスタッフに向けたトークではまず、JCJの丸山重威さんが「90年余りたってNHKの放送が今どうなっているのか、皆さんに考えて欲しい。そして議論して欲しい」と訴えた。戦争させない・9条壊すな!総がかり行動共同代表の高田健さんは「今政治報道の在り方が問われている。アベノミクス、外交どれもうまくいっていないのに、安倍首相は頑張っているという報道ばかり、NHKは安倍首相の顔色をうがかうような報道はやめるべきだ」と厳しい口調で述べた。

古巣の現状に見かねてマイクを握るNHKの元職員の人たちもいた。元ディレクターで、女たちの戦争と平和資料館名誉館長の池田恵理子さんは、現役時代に慰安婦問題の番組制作に取り組んできたものの、1997年以降は一切提案が通らくなった体験を振り返り「ファシズム政権は教育とメディアをコントロールする。現場ではやる気のある若い人たちが多いのに、こうした番組が作れないという現状がある」と、後輩たちを気遣った。

NHKへの抗議行動は、この日、大阪や名古屋、岐阜の各放送局の前などでも行われた。放送センター西口前では、参加者約80人が集まり、プラカードを掲げたり、チラシ配りをしたりした。朝の10時前後は職員、スタッフが続々と出勤してくる時間だ。ほとんどの人たちは、マイクの声にもチラシを配る声にも無表情で通り過ぎていく。チラシを受け取ったのは、34人目の女性、次が62人目の女性、さらに50人数えた中では受け取る人がいなかった。この反応をどう受け止めるべきか・・・。メディアという比較的社会への関心度が高いとされる職場で働く人たちだが、自分の職場への批判は受け入れづらいという面があるのか、これもまた一つの現実だ。

無関心ではダメだ

 4月1日の元号決定をめぐる報道、マスメディアはお祭り騒ぎ、NHKは夜の「ニュースウォッチ9」で安倍首相がスタジオに生出演した。そこにはジャーナリズムの権力との距離の保ち方などみじんにもなく、あたかも政権の広報≠フようだった。

さらにNHKの役員人事では、今月、籾井勝人前会長時代に政権との距離の近さを指摘された専務理事が、いったん退いたのち再び復帰することが決まった。呼びかけ行動を終えた後にも幹部人事などで、NHKのベクトルは負の方向≠ヨと傾いているのではないか。だからこそ今回の呼びかけは、市民の批判の声として大切だ。チラシを受け取ったNHK職員と、市民が連帯をしていけば、ボディブローのように今のNHK、さらにメディアと政治の関係にも効いてくるはずだ。市民もメディアも無関心ではいられない。

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
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2019年04月11日

【月刊マスコミ評・新聞】 外務省情報に「嫌韓」悪意が=白垣詔男

韓国では3月1日、「3・1独立運動100年」を記念して全国各地で集会やデモがあった。私は、「日韓・韓日反核連帯」というグループの呼び掛けに応じて家族で集会・交流会に参加するためにソウルへ行った。

 2月28日、ソウルで、日本外務省が「韓国:『3・1独立運動100周年』に際するデモ等に関する注意喚起」と題する「スポット情報」を出したのを知った。私の周りにいた日本人は「平穏な韓国なのに外務省の姿勢は不可解、悪意が感じられる」と感想を述べる人が大半だった。

 帰国して3月1日の朝刊を見ると、朝日、西日本、産経が「スポット情報」の記事を掲載。毎日、読売にはなかった。

朝日「韓国渡航で外務省『デモの可能性』 3・1独立運動100周年」の3段格横見出しで4面に載せていた。「ソウルなどで市民団体が行うとみられるデモなどに近づかないよう注意を喚起している」という「スポット情報」の内容を伝え「外務省担当者『総合的に判断した』と説明した」と背景を書いていた。西日本は5面に「韓国渡航者に注意喚起 外務省、デモ警戒」の小さな1段見出しで事実のみの目立たない扱い。産経は2面トップ3段見出しで目立つ扱いだった。記事には「三・一独立運動をめぐっては2月27日の自民党外交部会でも出席議員から『一人の日本人でも傷つけられることがあったら、日韓関係はとんでもないことになる』などと、強い懸念が出ていた」と韓国嫌いと思われる新聞らしい内容だった。

 韓国の実態は、中央集会が開かれたソウル・光化門(クァンファムン)広場を中心に南に延びる世宗(セジョン)通りでは、韓服(ハンボク)を身にまとい民族楽器を演奏する大合奏隊や多くの市民らが整然と行進していた。

多数の警官が目についたが全員、手持ちぶさたの様子で、「国民の祝日」を祝うムードに包まれ、外務省が出した「スポット情報」が場違いであることが分かる。

 なぜ、外務省は「スポット情報」を出したのか。そこには安倍政権の「嫌韓姿勢」の悪意が感じられてならない。

 新聞は、外務省の広報以外に、産経は無理としても、そうした「悪意が感じられる外務省(政府)の姿勢」にも触れてほしかった。

白垣詔男

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年3月25日号
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2019年04月10日

【メディアウォッチ】 記者たちついに立ち上がる 「知る権利守る」と猛アピール 報道各社は一丸となって闘え=編集部

記者たちが怒りの声を挙げ、立ち上がった。菅儀偉官房長官会見での「特定記者」への質問の制限や妨害など、国民の「知る権利」を奪おうとする政府に抗議する集会「FIGHT FOR TRUTH」が3月14日、首相官邸前で開かれた。新聞、民放、出版の各労連などでつくる日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)が呼び掛けた。

国際的にも広がる

5日の会見で菅官房長官に「あなたの質問に答える必要はありません」とあらわに回答拒否≠ウれた東京新聞の望月衣塑子記者は集会で、「メディアが権力に厳しい質問ができなくなった時、民主主義は衰退します」と壇上で訴えた。

問題が顕在化したのは昨年12月末、首相官邸報道室長名で内閣記者会に、特定記者の質問を「事実誤認」「度重なる問題行為」と断定ことから。

3月に入って、国境なき記者団が「政府は記者会見の質問が適切か不適切かを判断してはならない」との声明を発表するなど、安倍政権への批判が国際的にも広がっているとは言え、政府の対応は一向に変わらない。加えて取材報道の自由の制限をより強めており、メディアは深刻に受け止める必要がある。

東京新聞が2月20日に1ページ全部を使った特集「官房長官会見問題 本紙の検証と見解」を載せている。望月記者の質問に対し、内閣広報官らから9回もの不当な内容の申し入れが東京新聞にあったと伝えている。そんなに頻繁にあったのかと驚かされるが、その内容を読んで、政府がこんなおかしな主張をしていのかと驚き、あきれ、怒った人が大勢いたのではないだろうか。

昨年6月の申し入れは「国民の代表とは選挙で選ばれた国会議員。貴社は民間企業であり、会見に出る記者は貴社内の人事で定められている」というのだ。民間企業の新聞社の記者が国民を代表するわけはないとの認識で、記者会見は行政サービスとしかみていないのだろう。ジャーナリズムを単に企業活動としか受け止めていない政権だから、記者の質問を封じる発言が平気でまかり通ることも理解できる。

問題は、こんな政権の考えを世の中が「容認」してしまっている現状を招いてしまっていることだ。なぜこうなってしまったのかと問えば、申し入れのたびにきちんと批判をしてこなかったことが一因ではないのか。

個別に対峙はダメ

東京新聞の検証記事には、不当な申し入れがあったことをその時点で報じなかった理由は特に書いていないが、「政府が、こんなバカな常識はずれの主張を言ってきた」ので反論するのもバカバカしいと考えたのかもしれない。しかし今、そんな対応が甘かったと反省する必要があるだろう。

国民の「知る権利」のため、国民を代表して取材する記者が、国民に知らせずに、各社が個別に対峙するだけでは、かえって政権に好都合となりかねない。報道各社の枠を超え、さらに検証することが求められる。

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年3月25日号
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2019年04月08日

【沖縄リポート】 「三線の日」沖縄文化の底力みせた=浦島悦子 

 2月24日、県民投票当日は、朝から冷たい雨が降りしきった。投票率がなかなか上がらず、夕方になっても50%に届かない。最後までやきもきしたが、最終投票率52.48%にほっと胸をなでおろした。

(埋め立て)反対票は、昨年知事選での玉城デニー知事の獲得票39万票余を大きく上回る43万4273票(投票者総数の約72%)。それは予想を超えるものだった。県民投票潰しに失敗したあと、投票率を下げようと躍起になった官邸・自民党の目論見ははずれた。悪天候の中、静かに、しかししっかりと意思を示したウチナーンチュを私は改めて尊敬し、誇りに思った。

 しかしながら、想定内とはいえ翌日も、海には埋め立て土砂が投入され、ゲート前では機動隊が市民を排除し、ダンプが列をなして石材・資材を搬入した。県民投票などなかったかのように全く変わらない光景に「心が折れそうだ」とつぶやく人もいた。

 3月4日、さんしん(三線)の日。1993年から始まった「ゆかる日 まさる日 さんしんの日」は、正午の時報とともに全県一斉に、沖縄の祝いの席に欠かせない「かぎやで風」を奏でるイベントだが、辺野古ゲート前でも一昨年から行っている。

 正午。三線や太鼓の奏者たちが並んで演奏したあと、数十人が「かぎやで風」を群舞。奏者も踊り手も、普段から座り込みに参加している人たちだ。

今日は搬入はやめてほしいと要請したにもかかわらず、正午過ぎ、石材を積んだダンプや生コン車の行列が近づいてきた。機動隊が、作業ゲートに座り込む市民を排除するいつもの光景が再現され、悲鳴や怒号が上がる。国道を挟んだ向かい側では、それに動じることなく演奏が続けられ、プロの腕前を持つ熟練の踊り手が見事な舞を見せている。その堂々とした振る舞いに沖縄文化の底力を見る思いがした。

 国道の右と左に繰り広げられる、あまりにも対照的な光景は、沖縄と日本(政府)との関係を象徴しているようだった。

 3月25日、沖縄防衛局は新たな工区への土砂投入着手を宣言しているが、1〜4日に行われた専門家調査団の調査で、新基地予定地に活断層の存在が明らかになり、工事の先行きはますます見えなくなっているのが実態だ。

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年3月25日号
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2019年03月25日

【メディア気象台】 2月から3月=編集部 

比、政権批判記者逮捕に「不当圧力」避難の声

フィリピンのドゥテルテ政権に批判的なニュースサイト「ラップラー」の最高経営責任者(CEO)が報道内容を巡り逮捕され、裁判で有罪になる可能性も出ている。人権団体からは「政権による不当圧力だ」と非難の声が上がっている。国連人権高等弁務官事務所の報道官は「メディアへの威嚇であり、非常に懸念する」との声明を出した。(「神奈川」2月20日付ほか)

質問制限削られた記事「8行」〜忖度による自壊の構図

首相官邸による東京新聞記者の質問制限に関し、18日夜、共同通信はいったん配信した記事の8行分を削除すると通知してきた。削除部分は「メディア側はどう受け止めたのか。官邸記者クラブのある全国紙記者は『望月さん(東京新聞記者)が知る権利を行使すれば、クラブ側の知る権利が阻害される。官邸側が機嫌を損ね、取材に応じる機会が減っている』と困惑する」。共同通信は削除した理由を「官邸記者クラブの意見を代表していると誤読されないため」としている。(「神奈川」2月21日付)

広告費7年連続増

電通が28日発表した2018年の国内の総広告費は、前年比2.2%増の6兆5300億円で、7年連続のプラスとなった。インターネット広告が16.5%増の1兆7589億円と好調で、地上波のテレビ広告(1兆7848億円)に迫った。ネット広告は5年連続で2桁の伸び。(「毎日」3月1日付ほか)

官邸の「誤認」主張でペンクラブが声明

日本ペンクラブ(吉岡忍会長)は1日、首相官邸側が東京新聞記者の質問を事実誤認などと主張している問題で、記者の質問に対して「意を尽くした説明」をするよう官邸側に求める声明文を発表した。声明では、官邸側の対応を「大人げない」と批判。官房長官の記者会見は、国民の知る権利を前提にして「記者がさまざまな角度か政府の政策を問いただす場」だと指摘。(「神奈川」3月2日付ほか)

産経新聞が読売新聞に新聞委託印刷

読売新聞東京本社と産経新聞社は1日、埼玉県や群馬県などに配達している産経グループの新聞計7万部の印刷を、読売の川越工場(埼玉県川越市)などに委託することで合意した。24日から始める。(「毎日」3月2日付ほか)

著作権法改正案、文化庁の説明「不正確」〜賛成意見水増し、慎重意見は省略?

権利者の許可なくインターネットに上げられたと知りながら、漫画や写真、論文などをダウンロードすることを全面的に違法とする著作権法改正案をめぐり、文化庁が自民党に不正確な説明をしたと指摘する「検証レポート」が3日、公表された。法改正について議論した審議会で出た賛成意見を水増しして報告したなどと批判する内容。(「朝日」3月5日付)

NHKネット配信可能に〜放送法改正案、国会に提出

政府は5日、NHKによるテレビ番組のインターネット常時同時配信を可能にする放送法改正案を閣議決定し、国会に提出した。今国会での成立を目指しており、NHKは2019年度中にサービスを開始したい考えだ。NHKは受信料を支払っている世帯の人であれば、ネット視聴のための追加負担は求めないとしている。(「神奈川」3月6日付ほか)

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年3月25日号
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2019年03月18日

《月間マスコミ評・放送》話題呼んだ「さよならテレビ」=岩崎貞明

 昨年来、テレビ業界で大きな話題を呼んでいる番組がある。中京地区(愛知・岐阜・三重)の夕方のローカル枠で一回放送されただけなのに、番組の録画が各地に出回って、放送関係者たちの間で賛否両論を巻き起こしている。
 名古屋市の東海テレビ放送が「開局60周年記念」として放送したその番組は『さよならテレビ』。90分枠で全編ノーナレーション、氏名を表示した登場人物は三人だけという、今どき珍しい作りのドキュメンタリーだ。
 番組の舞台は、東海テレビ報道部そのもの。デスク周辺やスタジオ、取材現場などでスタッフが交わす会話がリアルに収録されている。
 主人公の一人は正社員アナウンサーで、ニュース番組のメインキャスターに抜擢される。
 彼は東日本大震災が発生した七年前、ローカルの情報番組のキャスターを務めていたが、岩手県産のコメを番組プレゼントとしたコーナーで、当選者を紹介する画面に「怪しいお米 セシウムさん」などとスタッフがふざけて書いたダミーのテロップがなぜか放送され、批判を浴びて番組打ち切りになった経験があった。ネットの掲示板でも叩かれた彼は、キャスターなのに前面に出るのを恐れるというトラウマを抱えている。不適切テロップ問題で会社は例年、放送倫理を考える全社集会を開催している。
 二人目は番組制作会社から来た若い男性。凡ミスの多い不器用な性質で、一年間の契約だけで切られてしまう。彼は局社員の残業を減らす目的で導入された派遣労働者だったが、ニュースで「派遣切り」の問題を取り上げながら、裏では放送局自らが派遣切りをしているという矛盾が現れる。
 三人目はベテランの契約記者。権力監視がメディアの使命と考える正義漢だが、押しが弱い面もある。犯罪の実行行為がなくても罪に問うという「共謀罪」が成立したが、彼はこれを人権問題だとして企画ニュースを提案、自ら取材して放送にこぎつける。しかし報道局幹部の判断で「共謀罪」という呼称は使えず、政府の説明通り「テロ等準備罪」という表現に書き換えられてしまう――。 
 視聴率競争や「やらせ」など、今のテレビが抱える問題点を鋭く突いたこの番組には、視聴者から「テレビはこれだけ裸になれるんですね」という評価もあったという。
 劇場用映画版も制作されているようだが、社内でも議論があることから公開のめどはまだ立っていない。

 JCJ機関紙「ジャーナリスト」2019年2月号掲載
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2019年03月12日

《月間マスコミ評・新聞》カジノ万博の追及は遠慮がち=山田明 

 厚生労働省の毎月勤労統計の偽装から始まり、統計不正問題は拡大するばかりだ。政府基幹統計の信頼が揺らぎ、国民生活、研究教育への影響は計りしれない。国会で疑惑の解明が求められるが、安倍政権は後ろ向きの姿勢が目立つ。
 安倍首相の嘘と居直りとともに、麻生副総理兼財務相の暴言にも呆れてしまう。「産まなかったほうが問題」発言だ。こうした暴言の確信犯、常習犯であり、発言撤回で済む話ではない。
 首相官邸が記者質問を問題視し、制限したことも重大な問題だ。新聞労連が抗議の声明文を出し、朝日などが社説で取りあげている。取材妨害に対して、内閣記者会、メディア全体で毅然と対応してもらいたい。
 沖縄では「妨害」をはねのけ、辺野古埋め立ての是非を問う県民投票が全県で実施されることになった。「2・24県民投票」を注視したい。辺野古の海は、沖縄の民意を無視して米軍新基地建設の埋め立て工事が続く。政府は軟弱地盤の改良工事のため、設計変更するという。政府もマヨネーズ並み≠ニ言われる軟弱地盤を3年前に把握していたが、埋め立てを強行した。こんな杜撰な基地建設、公共事業はあり得ない。ただちに埋め立てをやめ、沖縄県と協議すべきだ。
 来年の東京五輪とともに、2025年に誘致が決まった大阪・関西万博にも注目したい。万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、大阪湾の人工島「夢洲」を舞台に開催する計画である。
 産業廃棄物などで埋め立て中の夢洲は、災害のリスクが懸念され、アクセスなどで巨額の地元負担をもたらす。大阪府・市は夢洲で万博1年前にIR=カジノを開業させようと躍起だ。ギャンブル依存症と隣り合わせのブラックユーモアのような「カジノ万博」だが、地元メディアの追及は遠慮がちだ。
 二度目の大阪万博は夢洲とカジノに固執すると、2005年愛知万博以上に迷走するだろう。大阪万博は、愛知万博の会場変更の教訓から学べ、と言いたい。  
 大阪では、維新が大阪市を廃止する「都構想」を強引に推し進めている。大阪はカジノや万博、「都構想」などより、防災や暮らしに目を向けるべきだ。政策の優先順位が問われている。
 春の統一地方選、夏の参院選に向け、足もとからのシビアな報道を期待したい。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
 
posted by JCJ at 14:07 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月04日

【メディアウォッチ】 菅官房長官の報道恫喝 官邸になめられた大メディアと記者会 明らかな言論弾圧だ 委縮・自己規制はね返せ=編集部

 「取材じゃないと思いますよ。決め打ちですよ」。菅義偉官房長官は2月12日の衆院予算委員会で、語気を強め「東京新聞の特定記者」の質問をこう断定した。会見はネット動画で配信されており「事実に基づかない質問は、誤った事実認識を拡散される恐れがある」と、首相官邸の内閣記者会への申し入れの正統性を強調したのだ。国民民主党の奥野総一郎氏が質問で「民主主義国家としてあってはいけない」と追及したのに答えたものだが、記者会見の質問を封じる恣意的で言いたい放題の発言が、国会で平気でまかり通ってしまうこと自体を深刻に受け止めるべきだ。

 ところが今回も、政権による言論弾圧と言っても過言ではない発言が国会でなされたにもかかわらず、マスメディアの反応はとても鈍かった。官房長官答弁を正面から批判はせず、むしろ東京新聞に「9回ほど抗議した」という菅氏の言い分を伝えるにとどまる。こうした当事者意識の薄いメディアの報道姿勢の積み重ねが、今回の事態を招いていると言えよう。

 首相官邸報道室長名で内閣記者会に、東京新聞の特定記者の質問を「事実誤認」「度重なる問題行為」と断定し、文書で申し入れたのは昨年12月28日。特定記者とは、官房長官会見でこの間しつこく質問してきた望月衣塑子記者のことで、記者会は「つっぱねた」とされるが、こうした不当な申し入れがあったことは直ぐには報じられず、2月1日になってから情報誌「選択」が電子版などで伝えたのが初報だ。その後、日本新聞労働組合連合(新聞労連)が抗議声明を出したのをきっかけに、新聞やテレビで報道され始めた。JCJも8日に報道の自由の保障を求める声明を発表した。

 国民の「知る権利」に支えられて取材活動をする記者たちが、世論に訴えることなく、この間の「一強化する権力」と各社がばらばらに対峙するだけでは、官邸になめられるのも必然ではないのか。2014年末の衆院選の際に、自民党が解散前日に在京テレビ各局に「報道の公平性確保」を求める文書を出した時も同じだった。テレビ各局は受け取った時点で報道しなかった。各局の対応に疑問や、あまりに鈍感だと批判も出たが、それ以来、権力側からのさまざまな圧力にメディア側が自粛する傾向が徐々に強くなってきている。

 東京新聞とて、官房長官が言っている「9回」もの抗議を報じることなく、静観してきていることは問題だ。気に入らない質問者を排除しようとする政権の狙いを甘く見ずに、不当な対応ぶりをその都度批判的に報じていくことが求められている。
 さらにひどくなった報道現場の委縮、忖度、自己規制をはね返し、会社の枠を超えた地道な取り組みをしていきたい。

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
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2019年02月28日

【メディアウォッチ】宮古新報労組・伊佐次郎委員長が寄稿「新日刊紙」2月スタート 解雇拒否の社員一丸で発行継続

 今年1月10日、沖縄県宮古島市で日刊新聞を発行していた宮古新報社の座喜味弘二社長が全社員に解雇を通知した。解雇通知書には「業績不振により赤字経営が続いていたところ、資金繰りの目途が絶たなく事業閉鎖のやむなきに至った」とあったが、長年のパワハラやセクハラを続けていた座喜味社長に退任を迫った社員への報復だった。突然の解雇通知であり、「このまま解雇を受け入れるのか」、あるいは「受け入れず新聞発行を続けるのか」の選択を迫られた。動揺と不安が押し寄せるなか選択したのは新聞発行を続けることだった。残った社員10人は8・10ページから4ページの紙面縮小で発行。発行を続けるということは考えていた以上に大変なことだったが、社員一丸となって挑んだ新聞発行が2月1日からの新しい経営者の下でのスタートにつながった。

 解雇通知を受けた日は朝早くから取材があり、会社には午前10時頃に出勤した。座喜味社長ではなく事務員から解雇通知書を受け取った。前日に代理人の弁護士から口頭で「あす通知書を出す」と聞いてはいたが、実際に手にしたときは「本当にきたんだ」という感じだった。

地域の使命果たす
 実は弁護士が口頭で通知した後、(組合員の社員は)話し合いを持ち、その日の結論は解雇通知を受け入れることだった。昨年11月2日に座喜味社長に退任を迫り、その後の会議の連続で臨んだ団体交渉に顔を見せない座喜味社長に代わり出席した弁護士ののらりくらりの対応や年末に「事業譲渡の交渉を行っている」と言っておきながら突然の解雇通知のダメージは大きく、あきらめムードが漂った。

 9日の夜には緊急会議が持たれた。スカイプで宮古新報労働組合執行部4人と宮古連絡会、沖縄県マスコミ労働組合協議会、日本新聞労働組合連合(新聞労連)を交え、今後の対応をどうするかで話し合った。「解雇通知を受け入れるか」、それとも「受け入れず、新聞発行を続けていく」の二つの選択を迫られた。時間がない中で答えを出さなくてはいけないという難しさがあり答えは割れた。
 その中、東京で新聞労連が10日に緊急会見を行うことを決定。答えが見つからないまま時間が流れるなか「大事なことは当事者がどうしたいのか」の問い掛けが気持ちに刺さった。「そうだ。自分たちに投げかけられている問題であり生活が掛かっている。なにより創刊51年、『地域に根ざし、地域とともに歩む新聞としての使命を果たす』という理念のもと新聞を発行してきた。社長の独断で新聞発行を止めることは出来ない。宮古新報の新聞を待っている読者のためにも作り続けていきたい」。
 そんな思いが割れていた気持ちを一つにさせ、「これからも新聞を発行していく」との思いでまとまった。

明るくなった社内
 11日に記者会見し、社員の解雇撤回の要求と新聞発行継続を強調した。その日から3週間、社員は一丸となって新聞を作り続けた。紙面縮小の4ページで購読者に十分な情報が届けられないというもどかしさがあるが、「出し続けることが大事」と自分に言い聞かせ、疲れた心と体を奮い立たせている。この間多くの仲間の支援を受け、全国から電話やメールで激励を受けた。とても感謝であり元気が出る。
 取材先では「新聞は2社ないと駄目だ。頑張れ、応援しているぞ」などの声があり胸が熱くなった。自分の気持ちに寄り添い支えてくれる家族の存在は心強く、知人や友人からの電話には勇気が湧いた。恩師からは「きついと思うが、今の頑張りが将来にきっと生きてくる。何もできないが新聞を購読したい」との言葉がありがたかった。

 新聞発行を続けてきたことが事業譲渡につながった。新しい経営者は法人登記の手続きが済み次第、正式に発表すると言っている。座喜味社長に退任を迫り、慣れない団体交渉末の解雇通知に「受け入れない」と新聞を作り続けてきた。強い気持ちの一方、この先どうなるのだろうかという不安もあり、事業譲渡決定は「暗いトンネル」を抜けたような明るい希望を与えた。だが社員の人員不足による紙面縮小など依然厳しい状況。購読者に支えられ、新聞労連や県マスコミ労協、宮連会の支援を受けた紙面作りはまだ続きそうだ。

 今言えるのは創刊51年の歴史ある新聞社を守り、新たなスタート地点に立ったことだ。小さな新聞社だが地域に果たしてきた役割は大きく、改めて存在の大きさを感じた。社内には明るい雰囲気が漂うようになった。新しい経営者と社員が一丸となり、これからも「宮古新報」の新聞を作り購読者に提供していきたい。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
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2019年02月27日

【メディア気象台】 1月〜2月 

国内の映画公開本数、過去最多
日本映画製作者連盟(会長・岡田裕介東映グループ会長)は29日、2018年の全国映画概況を発表した。年間総興行収入は2225億1100万円(前年比97.3%)と微減だったものの、00年以降では17年に次いで3番目の成績だった。入場人員は1億6921万人(同97%)、総興行のうち、邦画が占める割合は54.8%。公開本数は1192本(邦画613本、洋画579本)で、過去最多を更新した。洋画の「ボヘミアン・ラプソディ」が104億円、邦画では「劇場版コード・ブルー ドクターヘリ救急救命」「名探偵コナン ゼロの執行人」が共に90億円を超えるなど、期待以上の作品が相次いだ。製作費300万円という「カメラを止めるな!」は31.2億円と邦画の7位に食い込んだ。(「毎日」1月30日付ほか)

2時間ドラマ枠消滅
2時間ドラマを放送している「月曜名作劇場」(月曜午後8時)が、3月で終了することになった。31日、同局関係者が取材者に対し明らかにした。民放キー局の夜の番組から、2時間ドラマのレギュラー枠が消えることになる。同局関係者によると、若年層への波及効果などを検討した結果、4月の番組改編に合わせて放送を終えることになった。2時間ドラマは事件などを主な題材として、長らく各局で盛んに放送されてきた。(「朝日」2月1日付ほか)

アマゾン、書籍買い切りへ
ネット通販大手のアマゾンジャパンは31日、出版社から書籍を直接購入し、販売する「買い切り」方式を年内にも試験的に始めると発表した。同社は同日の記者会見で。「書籍の返品率を下げるため」と説明し、本の価格設定についても検討する考えを示した。同社によると、買い切る書籍について出版社と協議して決定。一定期間は出版社が設定した価格で販売するが、売れ残った場合は出版社と協議して値下げ販売などを検討するという。出版業界に詳しいフリーライターの永江朗さんは「出版社と書店との力関係が大きく変わるのではないか。電子書籍同様、本の値引きが進む可能性もある」と話している。(「毎日」2月1日付ほか)

ミャンマーロイター記者、最高裁に上訴
ミャンマーで少数派のイスラム教徒ロヒンギャ2を軍の兵士が殺害した事件を取材していたロイター通信のミャンマー人記者2人が国家機密法違反罪に問われ、禁固7年の判決を受けた事件で、2人は1日、一審判決を支持した高等裁判所の判断を不服として最高裁に上訴した。(「朝日」2月2日付ほか)

長崎新聞社長が部下へ性的言動
長崎新聞社は2日、徳永英彦社長(59)が部下の女性らに性的な言動をした問題を受けて臨時取締役会を開き、徳永氏の役員報酬3か月分の自主返上や、ハラスメント防止策強化などの方針を了承した。徳永氏は「品位を欠いた言動で多大の迷惑をおかけしたことを改めておわびします。ハラスメント防止策の先頭に立ち、社員と共に推進します」とのコメントを出した。(「東京」2月3日付ほか)

ドローン規制拡大「反対」〜新聞協会
日本新聞協会は8日、政府が小型無人機ドローンによるテロへの対策として今国会に提出予定のドローン規制法改正案に、自衛隊や在日米軍施設上空の飛行禁止を盛り込む方針に反対する意見書を菅官房長官宛てに提出した。「取材活動を大きく制限し、国民の知る権利を著しく侵害する」と訴えた。意見書は「その時々の防衛相の恣意的な判断や自衛隊員の拡大解釈で、禁止区域が不適切に拡大し、不当な取り締まりが行われることが懸念される」と批判。「行き過ぎたテロ対策によって取材・報道の自由が阻害されることのないよう求める」と注文した。(「東京」2月9日付ほか)

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
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2019年02月06日

《マスコミ評・出版》安倍政権への不満が噴き出した=荒屋敷 宏

 通常国会冒頭解散のうわさも出るなか、「平成最後」と日本でしか通用しない話題でお茶をにごす去年今年。安倍政権にたいする「反乱」が静かに始まっている。

「文芸春秋」1月号「トランプの言いなりで兵器を買うな」と主張したのは、元陸将・千葉科学大学客員教授の山下裕貴氏だ。日本政府は前の「中期防衛力整備計画」(2014〜18年度)で米国の最新鋭ステルス戦闘機F35Aを42機も購入した。うち38機は日本企業が下請けとして参画する。「機体に日本の部品を使うこと条件としたため価格が上昇し、一機百七億円だったものが百八十六億円まで膨れ上がった」(山下氏)という。
 
 アメリカに価格決定権があるFMS(有償軍事援助)制度でトランプ言いなりの価格で「殺人兵器」を購入する。新たな中期防(19〜23年度)でもF35AとF35Bを合計45機購入する。防衛省は最終的に147機態勢にする予定だが、その購入費・維持費の総額は6・2兆円を超えるという(しんぶん赤旗1月10日付)。
 
 同じ「文芸春秋」1月号で消費税反対論者ではないセブン&アイ・ホールディングス名誉顧問の鈴木敏文氏が消費増税に怒りをぶちまけている。現在のような景気の状況で消費増税をおこなえば「国内景気がさらに悪化して、消費の減少、企業倒産の増加、失業率の上昇といった負の連鎖に直面する可能性もある。当然、消費税だけではなく、法人税、所得税といった税収全般が、逆に低下する事態に陥ってしまいかねません」と述べている。
 
 批判のホコ先は、政治家にも向かう。「そもそも政治は、人間の心理を考えずに行なうことは不可能であるはずです。本来、政治家は国民から直接選挙で選ばれているわけですから、国民の心理を一番よく分かっていなくてはいけない存在です。ところが、いつからか、有権者の心理を理解できない政治家が多くなってしまいました」。鈴木氏は、10%引き上げの時期や軽減税率にも苦言を呈している。
 
 さらに安倍政権の「成長戦略」と位置づけられていた「原発輸出」も総崩れとなっている。「文芸春秋」2月号「丸の内コンフィデンシャル」欄の「英政府揺さぶる日立」に注目した。日立製作所が英国で進める原発建設計画の凍結(1月17日)発表前の話だが、総事業費が3兆円となるなか、安倍政権の顔を立てようとして失敗した日立側の裏事情を伝えている。
 
 安倍政権を応援する側にも不満が噴き出し始めている。 

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2019年02月04日

《月間マスコミ評・新聞》ゴーン事件 捜査監視の報道弱い=六光寺 弦

 日産自動車のカルロス・ゴーン前会長が1月11日、私的な損失の日産への付け替えを巡る特別背任罪などで追起訴された。長期の勾留や弁護士の立ち会いがない取り調べが海外から批判を受けているが、制度面はともかく、検察の捜査を監視すべき新聞は踏み込みが足りない。
 
 一例として、1月12日付の朝日新聞1面の解説記事を見てみる。
 
 「特別背任罪での再逮捕は、虚偽記載罪での勾留延長を退けた裁判所に反発し、生煮えのまま突っ込んだ危うさが否めない」「今回の捜査はただでさえ『日産内部の権力闘争に加担し、司法取引で不意打ちで逮捕した』との疑念が一部にある」と指摘してはいる。
 
 だが結論は「単なる有罪立証にとどまらず、綿密な証拠に基づいて公平公正な捜査をしたという証明が求められている」と、他人事のように課題を挙げているだけだ。
 
 それでも朝日はましかもしれない。他紙は、前会長側が容疑を否認して、東京地検特捜部と激しく争っているとの“客観報道”にとどまった。産経新聞に至っては、捜査に幅広い支持を得るために、検察は進んで事件の意義を語るべきだと進言する始末。検察の応援団を自認しているのか。
 
 昨年11月の前会長逮捕の時、検察は発表で容疑の内容について、隠蔽したとする役員報酬が未払いであることを伏せていた。逮捕するには容疑が弱い、との批判が出ることを自覚していたのではなかったか。代わって、積極的な情報発信で「金に汚いゴーン」との印象を広めたのは日産だ。迅速な解任は前会長の逮捕なしには不可能だったが、容疑にかかわる重要な事実を、検察がなぜ伏せたのかを追求した記事は見当たらない。
 
 特別背任の立件にしても、検察は困難な捜査に挑んだとの評価を目にするが、ならば、森友事件で財務省の組織的な文書改ざんに対しても、同じように困難を乗り越え、立件すべきではなかったか。そのことを問う記事も見かけない。
 
 特捜検察は2010年の大阪地検の証拠改ざん・隠蔽事件で極限まで堕落した。その責任の一端は「最強の捜査機関」「巨悪を眠らせない」などと、無批判に特捜検察をもてはやしてきた新聞にある。同じ愚を繰り返してはならない。
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2019年01月29日

【NHK「天皇 運命の物語」】 「退位・即位番組」がはらむ危うさ 昭和天皇批判なおタブー=戸崎賢二

今年、天皇退位と新天皇の即位に向かって、テレビでは数多くのニュース、番組が放送されるだろう。おそらく「代替わりキャンペーン」とでもいえる様相を呈するに違いない。

その本格的な開始と思われる番組として、昨年12月23日と24日、2回にわたって放送されたNHK「天皇 運命の物語」第1話、第2話を見た。

この番組は4回シリーズで、第3話、4話は3月に放送という。

第1話「敗戦国の皇太子」は、「神の子」として侍従たちに育てられた天皇が、アメリカから教師として招聘されたヴァイニング夫人らの教育によって成長していく過程が辿られた。皇太子としてイギリス、アメリカを訪問し、かつての敵国から歓迎された歴史も組み込まれている。

第2話「いつもふたりで」は、前半で皇太子妃探しの時期から成婚パレードまでの記録、後半は皇太子夫妻として、災害被災者を訪問するなどの「公務」の開始期の記録をたどっている。とくに1975年、初めて沖縄を訪問したときの、火炎びんを投げつけられた事件を含むエピソードが詳しく描かれた。

この2本の番組は事実と証言でできるだけ客観的に描こうとしており、天皇夫妻を過度に賛美するものとは必ずしもなっていない。敬語が基本的に使われていないことでもそのような印象を与えている。

避けられた事実

しかし、この2番組には、注意深く避けられている事実がある。昭和天皇の戦争責任と沖縄との関わりである。

現天皇は、少年の頃から父である昭和天皇の影響を受けて育ったはずだ。

 ぼう大な被害者を生んだ戦争の開始を承認し、国体護持にこだわって降伏を遅らせた昭和天皇、この父の生涯について現天皇はどう考えていたのだろうか。この点は探索されていない。

 沖縄への強い思いから、11回にも及ぶ訪問があったことが番組で紹介された。この行為に、昭和天皇の有名な「沖縄メッセージ」が影響を与えていたかどうかも不明だ。

 昭和天皇は1947年9月、「米国の長期租借による琉球諸島の軍事占領の継続を望む」というメッセージをアメリカに伝えた。長期にわたる皇室と沖縄の関係を描くなら、この歴史的事実は無視できなかったはずである。

今回の番組でも昭和天皇批判がタブーであることを示した形である。

次代以降が心配

 番組は、皇太子時代の最初の沖縄訪問でのメッセージを紹介した。その内容は「沖縄戦における県民の傷痕を深く省み、……払われた多くの尊い犠牲は一時の行為や言葉によってあがなえるものではなく、人々が長い年月をかけて記憶し、ひとりひとり深い内省の内にあって、この地に心を寄せていくことを置いて考えられません」、というものであった。ここには、自らの訪問も「一時的」なものに過ぎないという内省が見られる。

言葉を発したのが皇太子であるかどうかを超えて、人間としてきわめてまっとうな意思表示であると感じる。

 第3話以降に扱われるだろうが、即位後、毎年の誕生日の記者会見では、

憲法を守ること、過去の歴史に眼を向けることの重要性が一貫して主張されてきた。2013年の会見では、日本国憲法制定時の人々の努力に感謝し、当時の「米国の知日派」の人々への感謝も述べている。

 誠実で善良な人間であればごく自然な発言と思えるが、政治的主張を禁じられた地位にあっては、ぎりぎりの決意を要したはずである。

こうした発言の集積は、当然、安倍政権の憲法にたいする姿勢への対抗軸としてとらえられるという現象を生んだ。

 しかし、天皇の発言を過大に評価し、政治効果を持つものとして期待する風潮には危うさを感じる。現天皇の発言のような内容であれば問題はないかもしれないが、これが次代以降、国粋的、排外主義的な天皇の「お言葉」であったらどうなるか。 

おそらく「代替わりキャンペーン」では、天皇への絶対的敬意を基調に、天皇制への批判はタブーとされるだろう。そうした番組群によって、天皇の地位や発言が重要度を増す空気は、戦前回帰の気配があり、危険である。

現在の象徴天皇制は建て前としては国民主権のもとにある。制度も天皇のあり方も、国民が批判を含めて自由に考えてよいことである。

視聴者は、この原則にしたがって「代替わりキャンぺーン」に冷静に向き合うことが求められる。

戸崎賢二(元NHKディレクター)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
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2019年01月28日

【メディア気象台】 2018年12月から19年1月=編集部

◇民放連、改憲意見CM自粛推奨

民放連は20日、憲法改正の国民投票のテレビCMに関する基本姿勢を発表した。法で制限されていない改憲への意見を表明するCMについても、投票前の14日前から放送しないことを民放各社に推奨する考えを示した。投票を呼び掛ける勧奨CMと、賛否を伝える意見表明CMに分けられ、勧奨CMは主権者が冷静に判断する環境づくりのため、投票日14日前から禁止される。立憲民主党など野党からは、CMが政党などの資金力で左右されないよう、量の規制強化を求める意見が出ている。(「毎日」12月21日付ほか)

◇戦後初の邦字紙面、廃刊へ〜ブラジル「サンパウロ新聞」

世界最大の日系社会がある世界最大のブラジルの邦字紙「サンパウロ新聞」は20日、読者減少のため、廃刊の方針を明らかにした。同紙は1946年に創刊された第二次大戦後初の現地邦字紙、77年には菊池寛賞を受賞していた。週5日発行してきた。だが、世代交代に伴い日本語が読める日系人が減少、発行部数も減っていた。(「毎日」12月21日付ほか)

◇独の著名記者がねつ造記事

ドイツ有力誌シュピーゲルは20日、執筆した複数の記事で虚偽の記述が見つかったとしてクーラス・レロティウス記者(32)を解雇したと発表した。ルポルタージュを得意とする著名記者で、ドイツジャーナリズム界の複数の賞を受賞、米テレビ界からも表彰されていた。レロティウス記者は同誌の調査に「成功すればするほど失敗は許されないと感じるようになった」と動機を語った。同誌によると、2011年以降の記事約60本のうち少なくとも14本に虚偽の記述があった。架空のインタビュー記事を書いたり、ネット上や他の新聞に掲載された写真を自分の記事に使ったりしていた。(「毎日」12月21日付ほか)

◇殺害された記者、再び増加

国際非政府組織(NGO)「国境なき記者団」がまとめた報告書によると、2018年に殺害された職業ジャーナリストは63人となり、17年の55人を上回った。10月にはサウジアラビアの著名記者ジャマル・カショギ氏がイスタンブールのサウジ総領事館で殺害された。強権的な政治指導者による言論弾圧や犯罪組織による暗殺の増加が背景にある。同団体によると死亡数が最も多い国はアフガニスタンで14人だった。武装勢力との戦闘や爆撃に巻き込まれるケースが後を絶たない。麻薬カルテルの抗争が激化するメキシコでは7人、新聞社を狙った銃撃戦が発生した米国では6人が命を落とした。中国やトルコ、エジプトなどで反体制的な論調の記者を拘束する動きも強まっている。18年に投獄されたジャーナリストは170人にのぼる。(「日経」12月22日付ほか)

◇「週刊SPA!」が性的表現で謝罪

扶桑社の男性誌「週刊SPA!」編集部は7日、昨年12月25日号の、女子大生を性的にランク付けした記事中の表現について「扇情的になってしまった」「読者の気分を害する可能性のある特集になってしまった」と、謝罪するコメントを発表した。同号では、特集記事の一環で「ヤレる女子大生RANKING」という順位表を、大学の実名入りで掲載した。この表が「女性差別」だとしてインターネット上で反発の声が高まり、同誌に記事撤回や謝罪を求めるネット上の署名活動に多くの賛同が集まった。(「東京」1月8日付ほか)

◇ロイター記者、二審も実刑

ミャンマーのイスラム教徒ロヒンギャへの迫害問題の取材を巡り、国家機密法違反罪に問われたロイター通信のワ・ロン記者(32)とチョー・ソウ・ウー記者(28)の控訴審判決で、最大都市ヤンゴンの高裁は11日、禁固7年の一審判決を支持し、控訴を棄却した。両記者は西部ラカイン州で国軍の兵士らがロヒンギャ10人を殺害した事件を取材していたが、ヤンゴンで治安部隊の極秘資料を警察から入手したとして逮捕された。(「東京」1月12日付ほか)

◇宮古新報労組が会社清算通知撤回など要求

沖縄県宮古島市で日刊紙を発行する「宮古新報」が会社清算と全社員の解雇を同社労働組合に通告したことをめぐり、組合側は11日、宮古市内で記者会見を開いた。「一方的な解雇通知は断じて許すことはできない」とした上で、同社に対し通知の撤回や事業譲渡に向けた交渉手続きを行うよう求めた。(「しんぶん赤旗」1月13日付ほか)

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
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2019年01月08日

【月刊マスコミ評・新聞】 三権分立の視点欠く「徴用工」論調=白垣詔男

 「徴用工訴訟」で韓国最高裁が10月30日と11月29日の2回、いずれも日本企業に賠償を命じる判決を確定させた。このニュースに対して日本政府は安倍晋三首相、河野太郎外相ともに口を極めて韓国側を非難した。新聞社説も「蓄積を無にせぬ対応を」(10月31日、朝日)、「日韓首脳は率直に協議を」(11月30日、毎日)、「文政権は収拾策を早急に」(11月30日、読売)、「政府は冷静に解決策探れ」(10月31日、西日本)と政府間協議の必要性を訴えた。

 そこには、司法が行政から独立しているという「三権分立」の視点が全くない。日本政府が韓国政府に「抗議」するのは、日本では、司法は行政に忖度した判断ばかりしており、それが当たり前のように政府が考えていることを、安倍、河野氏の発言からうかがい知ることができる。

 しかも、日本では最高裁も政府も1965年の日韓国交正常化に伴う請求権協定で「個人の請求権は消滅しない」と判断しているが、それさえも無視して、今回、政府も新聞各紙も国家間の問題だけに照準を当てているのは納得できない。さらに、日本政府は賠償請求の当事者の各企業に、韓国最高裁判決に従わないように要請した。この政府の姿勢もおかしい。

 かつて、中国で同じような裁判で三菱マテリアル(戦時中は三菱鉱業)などが判決に従って中国人原告に話し合いを持って補償したが、そのときの日本政府は、その判決に異を唱えなかった。今回とは、どこが違うのだろうか。それなのに今回、新聞各紙は当時の「三菱マテリアルのやり方」を取り上げてもいない。

 「新聞の右傾化」と言ってしまえば、そうなのかもしれないが、少なくとも政府の韓国政府に対する高圧的な物言いについては「三権分立」を踏まえる冷静な判断があるべきだった。

 韓国では、朴槿恵政権の際、「徴用工訴訟」を先送りした最高裁の前判事2人に対してソウル中央地検が職権乱用などの容疑で逮捕状を出した(その後、ソウル中央地裁が棄却)。ソウル中央地検は「政権の意向をくんだ先送り」は犯罪であると主張した。これが「三権分立」の基本ではないか。日本の司法は見習うべきで、マスコミも「三権分立」についてもっと論じるべきだろう。

白垣詔男

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
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