2019年04月11日

【月刊マスコミ評・新聞】 外務省情報に「嫌韓」悪意が=白垣詔男

韓国では3月1日、「3・1独立運動100年」を記念して全国各地で集会やデモがあった。私は、「日韓・韓日反核連帯」というグループの呼び掛けに応じて家族で集会・交流会に参加するためにソウルへ行った。

 2月28日、ソウルで、日本外務省が「韓国:『3・1独立運動100周年』に際するデモ等に関する注意喚起」と題する「スポット情報」を出したのを知った。私の周りにいた日本人は「平穏な韓国なのに外務省の姿勢は不可解、悪意が感じられる」と感想を述べる人が大半だった。

 帰国して3月1日の朝刊を見ると、朝日、西日本、産経が「スポット情報」の記事を掲載。毎日、読売にはなかった。

朝日「韓国渡航で外務省『デモの可能性』 3・1独立運動100周年」の3段格横見出しで4面に載せていた。「ソウルなどで市民団体が行うとみられるデモなどに近づかないよう注意を喚起している」という「スポット情報」の内容を伝え「外務省担当者『総合的に判断した』と説明した」と背景を書いていた。西日本は5面に「韓国渡航者に注意喚起 外務省、デモ警戒」の小さな1段見出しで事実のみの目立たない扱い。産経は2面トップ3段見出しで目立つ扱いだった。記事には「三・一独立運動をめぐっては2月27日の自民党外交部会でも出席議員から『一人の日本人でも傷つけられることがあったら、日韓関係はとんでもないことになる』などと、強い懸念が出ていた」と韓国嫌いと思われる新聞らしい内容だった。

 韓国の実態は、中央集会が開かれたソウル・光化門(クァンファムン)広場を中心に南に延びる世宗(セジョン)通りでは、韓服(ハンボク)を身にまとい民族楽器を演奏する大合奏隊や多くの市民らが整然と行進していた。

多数の警官が目についたが全員、手持ちぶさたの様子で、「国民の祝日」を祝うムードに包まれ、外務省が出した「スポット情報」が場違いであることが分かる。

 なぜ、外務省は「スポット情報」を出したのか。そこには安倍政権の「嫌韓姿勢」の悪意が感じられてならない。

 新聞は、外務省の広報以外に、産経は無理としても、そうした「悪意が感じられる外務省(政府)の姿勢」にも触れてほしかった。

白垣詔男

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年3月25日号
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2019年04月10日

【メディアウォッチ】 記者たちついに立ち上がる 「知る権利守る」と猛アピール 報道各社は一丸となって闘え=編集部

記者たちが怒りの声を挙げ、立ち上がった。菅儀偉官房長官会見での「特定記者」への質問の制限や妨害など、国民の「知る権利」を奪おうとする政府に抗議する集会「FIGHT FOR TRUTH」が3月14日、首相官邸前で開かれた。新聞、民放、出版の各労連などでつくる日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)が呼び掛けた。

国際的にも広がる

5日の会見で菅官房長官に「あなたの質問に答える必要はありません」とあらわに回答拒否≠ウれた東京新聞の望月衣塑子記者は集会で、「メディアが権力に厳しい質問ができなくなった時、民主主義は衰退します」と壇上で訴えた。

問題が顕在化したのは昨年12月末、首相官邸報道室長名で内閣記者会に、特定記者の質問を「事実誤認」「度重なる問題行為」と断定ことから。

3月に入って、国境なき記者団が「政府は記者会見の質問が適切か不適切かを判断してはならない」との声明を発表するなど、安倍政権への批判が国際的にも広がっているとは言え、政府の対応は一向に変わらない。加えて取材報道の自由の制限をより強めており、メディアは深刻に受け止める必要がある。

東京新聞が2月20日に1ページ全部を使った特集「官房長官会見問題 本紙の検証と見解」を載せている。望月記者の質問に対し、内閣広報官らから9回もの不当な内容の申し入れが東京新聞にあったと伝えている。そんなに頻繁にあったのかと驚かされるが、その内容を読んで、政府がこんなおかしな主張をしていのかと驚き、あきれ、怒った人が大勢いたのではないだろうか。

昨年6月の申し入れは「国民の代表とは選挙で選ばれた国会議員。貴社は民間企業であり、会見に出る記者は貴社内の人事で定められている」というのだ。民間企業の新聞社の記者が国民を代表するわけはないとの認識で、記者会見は行政サービスとしかみていないのだろう。ジャーナリズムを単に企業活動としか受け止めていない政権だから、記者の質問を封じる発言が平気でまかり通ることも理解できる。

問題は、こんな政権の考えを世の中が「容認」してしまっている現状を招いてしまっていることだ。なぜこうなってしまったのかと問えば、申し入れのたびにきちんと批判をしてこなかったことが一因ではないのか。

個別に対峙はダメ

東京新聞の検証記事には、不当な申し入れがあったことをその時点で報じなかった理由は特に書いていないが、「政府が、こんなバカな常識はずれの主張を言ってきた」ので反論するのもバカバカしいと考えたのかもしれない。しかし今、そんな対応が甘かったと反省する必要があるだろう。

国民の「知る権利」のため、国民を代表して取材する記者が、国民に知らせずに、各社が個別に対峙するだけでは、かえって政権に好都合となりかねない。報道各社の枠を超え、さらに検証することが求められる。

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年3月25日号
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2019年04月08日

【沖縄リポート】 「三線の日」沖縄文化の底力みせた=浦島悦子 

 2月24日、県民投票当日は、朝から冷たい雨が降りしきった。投票率がなかなか上がらず、夕方になっても50%に届かない。最後までやきもきしたが、最終投票率52.48%にほっと胸をなでおろした。

(埋め立て)反対票は、昨年知事選での玉城デニー知事の獲得票39万票余を大きく上回る43万4273票(投票者総数の約72%)。それは予想を超えるものだった。県民投票潰しに失敗したあと、投票率を下げようと躍起になった官邸・自民党の目論見ははずれた。悪天候の中、静かに、しかししっかりと意思を示したウチナーンチュを私は改めて尊敬し、誇りに思った。

 しかしながら、想定内とはいえ翌日も、海には埋め立て土砂が投入され、ゲート前では機動隊が市民を排除し、ダンプが列をなして石材・資材を搬入した。県民投票などなかったかのように全く変わらない光景に「心が折れそうだ」とつぶやく人もいた。

 3月4日、さんしん(三線)の日。1993年から始まった「ゆかる日 まさる日 さんしんの日」は、正午の時報とともに全県一斉に、沖縄の祝いの席に欠かせない「かぎやで風」を奏でるイベントだが、辺野古ゲート前でも一昨年から行っている。

 正午。三線や太鼓の奏者たちが並んで演奏したあと、数十人が「かぎやで風」を群舞。奏者も踊り手も、普段から座り込みに参加している人たちだ。

今日は搬入はやめてほしいと要請したにもかかわらず、正午過ぎ、石材を積んだダンプや生コン車の行列が近づいてきた。機動隊が、作業ゲートに座り込む市民を排除するいつもの光景が再現され、悲鳴や怒号が上がる。国道を挟んだ向かい側では、それに動じることなく演奏が続けられ、プロの腕前を持つ熟練の踊り手が見事な舞を見せている。その堂々とした振る舞いに沖縄文化の底力を見る思いがした。

 国道の右と左に繰り広げられる、あまりにも対照的な光景は、沖縄と日本(政府)との関係を象徴しているようだった。

 3月25日、沖縄防衛局は新たな工区への土砂投入着手を宣言しているが、1〜4日に行われた専門家調査団の調査で、新基地予定地に活断層の存在が明らかになり、工事の先行きはますます見えなくなっているのが実態だ。

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年3月25日号
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2019年03月25日

【メディア気象台】 2月から3月=編集部 

比、政権批判記者逮捕に「不当圧力」避難の声

フィリピンのドゥテルテ政権に批判的なニュースサイト「ラップラー」の最高経営責任者(CEO)が報道内容を巡り逮捕され、裁判で有罪になる可能性も出ている。人権団体からは「政権による不当圧力だ」と非難の声が上がっている。国連人権高等弁務官事務所の報道官は「メディアへの威嚇であり、非常に懸念する」との声明を出した。(「神奈川」2月20日付ほか)

質問制限削られた記事「8行」〜忖度による自壊の構図

首相官邸による東京新聞記者の質問制限に関し、18日夜、共同通信はいったん配信した記事の8行分を削除すると通知してきた。削除部分は「メディア側はどう受け止めたのか。官邸記者クラブのある全国紙記者は『望月さん(東京新聞記者)が知る権利を行使すれば、クラブ側の知る権利が阻害される。官邸側が機嫌を損ね、取材に応じる機会が減っている』と困惑する」。共同通信は削除した理由を「官邸記者クラブの意見を代表していると誤読されないため」としている。(「神奈川」2月21日付)

広告費7年連続増

電通が28日発表した2018年の国内の総広告費は、前年比2.2%増の6兆5300億円で、7年連続のプラスとなった。インターネット広告が16.5%増の1兆7589億円と好調で、地上波のテレビ広告(1兆7848億円)に迫った。ネット広告は5年連続で2桁の伸び。(「毎日」3月1日付ほか)

官邸の「誤認」主張でペンクラブが声明

日本ペンクラブ(吉岡忍会長)は1日、首相官邸側が東京新聞記者の質問を事実誤認などと主張している問題で、記者の質問に対して「意を尽くした説明」をするよう官邸側に求める声明文を発表した。声明では、官邸側の対応を「大人げない」と批判。官房長官の記者会見は、国民の知る権利を前提にして「記者がさまざまな角度か政府の政策を問いただす場」だと指摘。(「神奈川」3月2日付ほか)

産経新聞が読売新聞に新聞委託印刷

読売新聞東京本社と産経新聞社は1日、埼玉県や群馬県などに配達している産経グループの新聞計7万部の印刷を、読売の川越工場(埼玉県川越市)などに委託することで合意した。24日から始める。(「毎日」3月2日付ほか)

著作権法改正案、文化庁の説明「不正確」〜賛成意見水増し、慎重意見は省略?

権利者の許可なくインターネットに上げられたと知りながら、漫画や写真、論文などをダウンロードすることを全面的に違法とする著作権法改正案をめぐり、文化庁が自民党に不正確な説明をしたと指摘する「検証レポート」が3日、公表された。法改正について議論した審議会で出た賛成意見を水増しして報告したなどと批判する内容。(「朝日」3月5日付)

NHKネット配信可能に〜放送法改正案、国会に提出

政府は5日、NHKによるテレビ番組のインターネット常時同時配信を可能にする放送法改正案を閣議決定し、国会に提出した。今国会での成立を目指しており、NHKは2019年度中にサービスを開始したい考えだ。NHKは受信料を支払っている世帯の人であれば、ネット視聴のための追加負担は求めないとしている。(「神奈川」3月6日付ほか)

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年3月25日号
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2019年03月18日

《月間マスコミ評・放送》話題呼んだ「さよならテレビ」=岩崎貞明

 昨年来、テレビ業界で大きな話題を呼んでいる番組がある。中京地区(愛知・岐阜・三重)の夕方のローカル枠で一回放送されただけなのに、番組の録画が各地に出回って、放送関係者たちの間で賛否両論を巻き起こしている。
 名古屋市の東海テレビ放送が「開局60周年記念」として放送したその番組は『さよならテレビ』。90分枠で全編ノーナレーション、氏名を表示した登場人物は三人だけという、今どき珍しい作りのドキュメンタリーだ。
 番組の舞台は、東海テレビ報道部そのもの。デスク周辺やスタジオ、取材現場などでスタッフが交わす会話がリアルに収録されている。
 主人公の一人は正社員アナウンサーで、ニュース番組のメインキャスターに抜擢される。
 彼は東日本大震災が発生した七年前、ローカルの情報番組のキャスターを務めていたが、岩手県産のコメを番組プレゼントとしたコーナーで、当選者を紹介する画面に「怪しいお米 セシウムさん」などとスタッフがふざけて書いたダミーのテロップがなぜか放送され、批判を浴びて番組打ち切りになった経験があった。ネットの掲示板でも叩かれた彼は、キャスターなのに前面に出るのを恐れるというトラウマを抱えている。不適切テロップ問題で会社は例年、放送倫理を考える全社集会を開催している。
 二人目は番組制作会社から来た若い男性。凡ミスの多い不器用な性質で、一年間の契約だけで切られてしまう。彼は局社員の残業を減らす目的で導入された派遣労働者だったが、ニュースで「派遣切り」の問題を取り上げながら、裏では放送局自らが派遣切りをしているという矛盾が現れる。
 三人目はベテランの契約記者。権力監視がメディアの使命と考える正義漢だが、押しが弱い面もある。犯罪の実行行為がなくても罪に問うという「共謀罪」が成立したが、彼はこれを人権問題だとして企画ニュースを提案、自ら取材して放送にこぎつける。しかし報道局幹部の判断で「共謀罪」という呼称は使えず、政府の説明通り「テロ等準備罪」という表現に書き換えられてしまう――。 
 視聴率競争や「やらせ」など、今のテレビが抱える問題点を鋭く突いたこの番組には、視聴者から「テレビはこれだけ裸になれるんですね」という評価もあったという。
 劇場用映画版も制作されているようだが、社内でも議論があることから公開のめどはまだ立っていない。

 JCJ機関紙「ジャーナリスト」2019年2月号掲載
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2019年03月12日

《月間マスコミ評・新聞》カジノ万博の追及は遠慮がち=山田明 

 厚生労働省の毎月勤労統計の偽装から始まり、統計不正問題は拡大するばかりだ。政府基幹統計の信頼が揺らぎ、国民生活、研究教育への影響は計りしれない。国会で疑惑の解明が求められるが、安倍政権は後ろ向きの姿勢が目立つ。
 安倍首相の嘘と居直りとともに、麻生副総理兼財務相の暴言にも呆れてしまう。「産まなかったほうが問題」発言だ。こうした暴言の確信犯、常習犯であり、発言撤回で済む話ではない。
 首相官邸が記者質問を問題視し、制限したことも重大な問題だ。新聞労連が抗議の声明文を出し、朝日などが社説で取りあげている。取材妨害に対して、内閣記者会、メディア全体で毅然と対応してもらいたい。
 沖縄では「妨害」をはねのけ、辺野古埋め立ての是非を問う県民投票が全県で実施されることになった。「2・24県民投票」を注視したい。辺野古の海は、沖縄の民意を無視して米軍新基地建設の埋め立て工事が続く。政府は軟弱地盤の改良工事のため、設計変更するという。政府もマヨネーズ並み≠ニ言われる軟弱地盤を3年前に把握していたが、埋め立てを強行した。こんな杜撰な基地建設、公共事業はあり得ない。ただちに埋め立てをやめ、沖縄県と協議すべきだ。
 来年の東京五輪とともに、2025年に誘致が決まった大阪・関西万博にも注目したい。万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、大阪湾の人工島「夢洲」を舞台に開催する計画である。
 産業廃棄物などで埋め立て中の夢洲は、災害のリスクが懸念され、アクセスなどで巨額の地元負担をもたらす。大阪府・市は夢洲で万博1年前にIR=カジノを開業させようと躍起だ。ギャンブル依存症と隣り合わせのブラックユーモアのような「カジノ万博」だが、地元メディアの追及は遠慮がちだ。
 二度目の大阪万博は夢洲とカジノに固執すると、2005年愛知万博以上に迷走するだろう。大阪万博は、愛知万博の会場変更の教訓から学べ、と言いたい。  
 大阪では、維新が大阪市を廃止する「都構想」を強引に推し進めている。大阪はカジノや万博、「都構想」などより、防災や暮らしに目を向けるべきだ。政策の優先順位が問われている。
 春の統一地方選、夏の参院選に向け、足もとからのシビアな報道を期待したい。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
 
posted by JCJ at 14:07 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月04日

【メディアウォッチ】 菅官房長官の報道恫喝 官邸になめられた大メディアと記者会 明らかな言論弾圧だ 委縮・自己規制はね返せ=編集部

 「取材じゃないと思いますよ。決め打ちですよ」。菅義偉官房長官は2月12日の衆院予算委員会で、語気を強め「東京新聞の特定記者」の質問をこう断定した。会見はネット動画で配信されており「事実に基づかない質問は、誤った事実認識を拡散される恐れがある」と、首相官邸の内閣記者会への申し入れの正統性を強調したのだ。国民民主党の奥野総一郎氏が質問で「民主主義国家としてあってはいけない」と追及したのに答えたものだが、記者会見の質問を封じる恣意的で言いたい放題の発言が、国会で平気でまかり通ってしまうこと自体を深刻に受け止めるべきだ。

 ところが今回も、政権による言論弾圧と言っても過言ではない発言が国会でなされたにもかかわらず、マスメディアの反応はとても鈍かった。官房長官答弁を正面から批判はせず、むしろ東京新聞に「9回ほど抗議した」という菅氏の言い分を伝えるにとどまる。こうした当事者意識の薄いメディアの報道姿勢の積み重ねが、今回の事態を招いていると言えよう。

 首相官邸報道室長名で内閣記者会に、東京新聞の特定記者の質問を「事実誤認」「度重なる問題行為」と断定し、文書で申し入れたのは昨年12月28日。特定記者とは、官房長官会見でこの間しつこく質問してきた望月衣塑子記者のことで、記者会は「つっぱねた」とされるが、こうした不当な申し入れがあったことは直ぐには報じられず、2月1日になってから情報誌「選択」が電子版などで伝えたのが初報だ。その後、日本新聞労働組合連合(新聞労連)が抗議声明を出したのをきっかけに、新聞やテレビで報道され始めた。JCJも8日に報道の自由の保障を求める声明を発表した。

 国民の「知る権利」に支えられて取材活動をする記者たちが、世論に訴えることなく、この間の「一強化する権力」と各社がばらばらに対峙するだけでは、官邸になめられるのも必然ではないのか。2014年末の衆院選の際に、自民党が解散前日に在京テレビ各局に「報道の公平性確保」を求める文書を出した時も同じだった。テレビ各局は受け取った時点で報道しなかった。各局の対応に疑問や、あまりに鈍感だと批判も出たが、それ以来、権力側からのさまざまな圧力にメディア側が自粛する傾向が徐々に強くなってきている。

 東京新聞とて、官房長官が言っている「9回」もの抗議を報じることなく、静観してきていることは問題だ。気に入らない質問者を排除しようとする政権の狙いを甘く見ずに、不当な対応ぶりをその都度批判的に報じていくことが求められている。
 さらにひどくなった報道現場の委縮、忖度、自己規制をはね返し、会社の枠を超えた地道な取り組みをしていきたい。

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
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2019年02月28日

【メディアウォッチ】宮古新報労組・伊佐次郎委員長が寄稿「新日刊紙」2月スタート 解雇拒否の社員一丸で発行継続

 今年1月10日、沖縄県宮古島市で日刊新聞を発行していた宮古新報社の座喜味弘二社長が全社員に解雇を通知した。解雇通知書には「業績不振により赤字経営が続いていたところ、資金繰りの目途が絶たなく事業閉鎖のやむなきに至った」とあったが、長年のパワハラやセクハラを続けていた座喜味社長に退任を迫った社員への報復だった。突然の解雇通知であり、「このまま解雇を受け入れるのか」、あるいは「受け入れず新聞発行を続けるのか」の選択を迫られた。動揺と不安が押し寄せるなか選択したのは新聞発行を続けることだった。残った社員10人は8・10ページから4ページの紙面縮小で発行。発行を続けるということは考えていた以上に大変なことだったが、社員一丸となって挑んだ新聞発行が2月1日からの新しい経営者の下でのスタートにつながった。

 解雇通知を受けた日は朝早くから取材があり、会社には午前10時頃に出勤した。座喜味社長ではなく事務員から解雇通知書を受け取った。前日に代理人の弁護士から口頭で「あす通知書を出す」と聞いてはいたが、実際に手にしたときは「本当にきたんだ」という感じだった。

地域の使命果たす
 実は弁護士が口頭で通知した後、(組合員の社員は)話し合いを持ち、その日の結論は解雇通知を受け入れることだった。昨年11月2日に座喜味社長に退任を迫り、その後の会議の連続で臨んだ団体交渉に顔を見せない座喜味社長に代わり出席した弁護士ののらりくらりの対応や年末に「事業譲渡の交渉を行っている」と言っておきながら突然の解雇通知のダメージは大きく、あきらめムードが漂った。

 9日の夜には緊急会議が持たれた。スカイプで宮古新報労働組合執行部4人と宮古連絡会、沖縄県マスコミ労働組合協議会、日本新聞労働組合連合(新聞労連)を交え、今後の対応をどうするかで話し合った。「解雇通知を受け入れるか」、それとも「受け入れず、新聞発行を続けていく」の二つの選択を迫られた。時間がない中で答えを出さなくてはいけないという難しさがあり答えは割れた。
 その中、東京で新聞労連が10日に緊急会見を行うことを決定。答えが見つからないまま時間が流れるなか「大事なことは当事者がどうしたいのか」の問い掛けが気持ちに刺さった。「そうだ。自分たちに投げかけられている問題であり生活が掛かっている。なにより創刊51年、『地域に根ざし、地域とともに歩む新聞としての使命を果たす』という理念のもと新聞を発行してきた。社長の独断で新聞発行を止めることは出来ない。宮古新報の新聞を待っている読者のためにも作り続けていきたい」。
 そんな思いが割れていた気持ちを一つにさせ、「これからも新聞を発行していく」との思いでまとまった。

明るくなった社内
 11日に記者会見し、社員の解雇撤回の要求と新聞発行継続を強調した。その日から3週間、社員は一丸となって新聞を作り続けた。紙面縮小の4ページで購読者に十分な情報が届けられないというもどかしさがあるが、「出し続けることが大事」と自分に言い聞かせ、疲れた心と体を奮い立たせている。この間多くの仲間の支援を受け、全国から電話やメールで激励を受けた。とても感謝であり元気が出る。
 取材先では「新聞は2社ないと駄目だ。頑張れ、応援しているぞ」などの声があり胸が熱くなった。自分の気持ちに寄り添い支えてくれる家族の存在は心強く、知人や友人からの電話には勇気が湧いた。恩師からは「きついと思うが、今の頑張りが将来にきっと生きてくる。何もできないが新聞を購読したい」との言葉がありがたかった。

 新聞発行を続けてきたことが事業譲渡につながった。新しい経営者は法人登記の手続きが済み次第、正式に発表すると言っている。座喜味社長に退任を迫り、慣れない団体交渉末の解雇通知に「受け入れない」と新聞を作り続けてきた。強い気持ちの一方、この先どうなるのだろうかという不安もあり、事業譲渡決定は「暗いトンネル」を抜けたような明るい希望を与えた。だが社員の人員不足による紙面縮小など依然厳しい状況。購読者に支えられ、新聞労連や県マスコミ労協、宮連会の支援を受けた紙面作りはまだ続きそうだ。

 今言えるのは創刊51年の歴史ある新聞社を守り、新たなスタート地点に立ったことだ。小さな新聞社だが地域に果たしてきた役割は大きく、改めて存在の大きさを感じた。社内には明るい雰囲気が漂うようになった。新しい経営者と社員が一丸となり、これからも「宮古新報」の新聞を作り購読者に提供していきたい。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
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2019年02月27日

【メディア気象台】 1月〜2月 

国内の映画公開本数、過去最多
日本映画製作者連盟(会長・岡田裕介東映グループ会長)は29日、2018年の全国映画概況を発表した。年間総興行収入は2225億1100万円(前年比97.3%)と微減だったものの、00年以降では17年に次いで3番目の成績だった。入場人員は1億6921万人(同97%)、総興行のうち、邦画が占める割合は54.8%。公開本数は1192本(邦画613本、洋画579本)で、過去最多を更新した。洋画の「ボヘミアン・ラプソディ」が104億円、邦画では「劇場版コード・ブルー ドクターヘリ救急救命」「名探偵コナン ゼロの執行人」が共に90億円を超えるなど、期待以上の作品が相次いだ。製作費300万円という「カメラを止めるな!」は31.2億円と邦画の7位に食い込んだ。(「毎日」1月30日付ほか)

2時間ドラマ枠消滅
2時間ドラマを放送している「月曜名作劇場」(月曜午後8時)が、3月で終了することになった。31日、同局関係者が取材者に対し明らかにした。民放キー局の夜の番組から、2時間ドラマのレギュラー枠が消えることになる。同局関係者によると、若年層への波及効果などを検討した結果、4月の番組改編に合わせて放送を終えることになった。2時間ドラマは事件などを主な題材として、長らく各局で盛んに放送されてきた。(「朝日」2月1日付ほか)

アマゾン、書籍買い切りへ
ネット通販大手のアマゾンジャパンは31日、出版社から書籍を直接購入し、販売する「買い切り」方式を年内にも試験的に始めると発表した。同社は同日の記者会見で。「書籍の返品率を下げるため」と説明し、本の価格設定についても検討する考えを示した。同社によると、買い切る書籍について出版社と協議して決定。一定期間は出版社が設定した価格で販売するが、売れ残った場合は出版社と協議して値下げ販売などを検討するという。出版業界に詳しいフリーライターの永江朗さんは「出版社と書店との力関係が大きく変わるのではないか。電子書籍同様、本の値引きが進む可能性もある」と話している。(「毎日」2月1日付ほか)

ミャンマーロイター記者、最高裁に上訴
ミャンマーで少数派のイスラム教徒ロヒンギャ2を軍の兵士が殺害した事件を取材していたロイター通信のミャンマー人記者2人が国家機密法違反罪に問われ、禁固7年の判決を受けた事件で、2人は1日、一審判決を支持した高等裁判所の判断を不服として最高裁に上訴した。(「朝日」2月2日付ほか)

長崎新聞社長が部下へ性的言動
長崎新聞社は2日、徳永英彦社長(59)が部下の女性らに性的な言動をした問題を受けて臨時取締役会を開き、徳永氏の役員報酬3か月分の自主返上や、ハラスメント防止策強化などの方針を了承した。徳永氏は「品位を欠いた言動で多大の迷惑をおかけしたことを改めておわびします。ハラスメント防止策の先頭に立ち、社員と共に推進します」とのコメントを出した。(「東京」2月3日付ほか)

ドローン規制拡大「反対」〜新聞協会
日本新聞協会は8日、政府が小型無人機ドローンによるテロへの対策として今国会に提出予定のドローン規制法改正案に、自衛隊や在日米軍施設上空の飛行禁止を盛り込む方針に反対する意見書を菅官房長官宛てに提出した。「取材活動を大きく制限し、国民の知る権利を著しく侵害する」と訴えた。意見書は「その時々の防衛相の恣意的な判断や自衛隊員の拡大解釈で、禁止区域が不適切に拡大し、不当な取り締まりが行われることが懸念される」と批判。「行き過ぎたテロ対策によって取材・報道の自由が阻害されることのないよう求める」と注文した。(「東京」2月9日付ほか)

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
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2019年02月06日

《マスコミ評・出版》安倍政権への不満が噴き出した=荒屋敷 宏

 通常国会冒頭解散のうわさも出るなか、「平成最後」と日本でしか通用しない話題でお茶をにごす去年今年。安倍政権にたいする「反乱」が静かに始まっている。

「文芸春秋」1月号「トランプの言いなりで兵器を買うな」と主張したのは、元陸将・千葉科学大学客員教授の山下裕貴氏だ。日本政府は前の「中期防衛力整備計画」(2014〜18年度)で米国の最新鋭ステルス戦闘機F35Aを42機も購入した。うち38機は日本企業が下請けとして参画する。「機体に日本の部品を使うこと条件としたため価格が上昇し、一機百七億円だったものが百八十六億円まで膨れ上がった」(山下氏)という。
 
 アメリカに価格決定権があるFMS(有償軍事援助)制度でトランプ言いなりの価格で「殺人兵器」を購入する。新たな中期防(19〜23年度)でもF35AとF35Bを合計45機購入する。防衛省は最終的に147機態勢にする予定だが、その購入費・維持費の総額は6・2兆円を超えるという(しんぶん赤旗1月10日付)。
 
 同じ「文芸春秋」1月号で消費税反対論者ではないセブン&アイ・ホールディングス名誉顧問の鈴木敏文氏が消費増税に怒りをぶちまけている。現在のような景気の状況で消費増税をおこなえば「国内景気がさらに悪化して、消費の減少、企業倒産の増加、失業率の上昇といった負の連鎖に直面する可能性もある。当然、消費税だけではなく、法人税、所得税といった税収全般が、逆に低下する事態に陥ってしまいかねません」と述べている。
 
 批判のホコ先は、政治家にも向かう。「そもそも政治は、人間の心理を考えずに行なうことは不可能であるはずです。本来、政治家は国民から直接選挙で選ばれているわけですから、国民の心理を一番よく分かっていなくてはいけない存在です。ところが、いつからか、有権者の心理を理解できない政治家が多くなってしまいました」。鈴木氏は、10%引き上げの時期や軽減税率にも苦言を呈している。
 
 さらに安倍政権の「成長戦略」と位置づけられていた「原発輸出」も総崩れとなっている。「文芸春秋」2月号「丸の内コンフィデンシャル」欄の「英政府揺さぶる日立」に注目した。日立製作所が英国で進める原発建設計画の凍結(1月17日)発表前の話だが、総事業費が3兆円となるなか、安倍政権の顔を立てようとして失敗した日立側の裏事情を伝えている。
 
 安倍政権を応援する側にも不満が噴き出し始めている。 

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2019年02月04日

《月間マスコミ評・新聞》ゴーン事件 捜査監視の報道弱い=六光寺 弦

 日産自動車のカルロス・ゴーン前会長が1月11日、私的な損失の日産への付け替えを巡る特別背任罪などで追起訴された。長期の勾留や弁護士の立ち会いがない取り調べが海外から批判を受けているが、制度面はともかく、検察の捜査を監視すべき新聞は踏み込みが足りない。
 
 一例として、1月12日付の朝日新聞1面の解説記事を見てみる。
 
 「特別背任罪での再逮捕は、虚偽記載罪での勾留延長を退けた裁判所に反発し、生煮えのまま突っ込んだ危うさが否めない」「今回の捜査はただでさえ『日産内部の権力闘争に加担し、司法取引で不意打ちで逮捕した』との疑念が一部にある」と指摘してはいる。
 
 だが結論は「単なる有罪立証にとどまらず、綿密な証拠に基づいて公平公正な捜査をしたという証明が求められている」と、他人事のように課題を挙げているだけだ。
 
 それでも朝日はましかもしれない。他紙は、前会長側が容疑を否認して、東京地検特捜部と激しく争っているとの“客観報道”にとどまった。産経新聞に至っては、捜査に幅広い支持を得るために、検察は進んで事件の意義を語るべきだと進言する始末。検察の応援団を自認しているのか。
 
 昨年11月の前会長逮捕の時、検察は発表で容疑の内容について、隠蔽したとする役員報酬が未払いであることを伏せていた。逮捕するには容疑が弱い、との批判が出ることを自覚していたのではなかったか。代わって、積極的な情報発信で「金に汚いゴーン」との印象を広めたのは日産だ。迅速な解任は前会長の逮捕なしには不可能だったが、容疑にかかわる重要な事実を、検察がなぜ伏せたのかを追求した記事は見当たらない。
 
 特別背任の立件にしても、検察は困難な捜査に挑んだとの評価を目にするが、ならば、森友事件で財務省の組織的な文書改ざんに対しても、同じように困難を乗り越え、立件すべきではなかったか。そのことを問う記事も見かけない。
 
 特捜検察は2010年の大阪地検の証拠改ざん・隠蔽事件で極限まで堕落した。その責任の一端は「最強の捜査機関」「巨悪を眠らせない」などと、無批判に特捜検察をもてはやしてきた新聞にある。同じ愚を繰り返してはならない。
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2019年01月29日

【NHK「天皇 運命の物語」】 「退位・即位番組」がはらむ危うさ 昭和天皇批判なおタブー=戸崎賢二

今年、天皇退位と新天皇の即位に向かって、テレビでは数多くのニュース、番組が放送されるだろう。おそらく「代替わりキャンペーン」とでもいえる様相を呈するに違いない。

その本格的な開始と思われる番組として、昨年12月23日と24日、2回にわたって放送されたNHK「天皇 運命の物語」第1話、第2話を見た。

この番組は4回シリーズで、第3話、4話は3月に放送という。

第1話「敗戦国の皇太子」は、「神の子」として侍従たちに育てられた天皇が、アメリカから教師として招聘されたヴァイニング夫人らの教育によって成長していく過程が辿られた。皇太子としてイギリス、アメリカを訪問し、かつての敵国から歓迎された歴史も組み込まれている。

第2話「いつもふたりで」は、前半で皇太子妃探しの時期から成婚パレードまでの記録、後半は皇太子夫妻として、災害被災者を訪問するなどの「公務」の開始期の記録をたどっている。とくに1975年、初めて沖縄を訪問したときの、火炎びんを投げつけられた事件を含むエピソードが詳しく描かれた。

この2本の番組は事実と証言でできるだけ客観的に描こうとしており、天皇夫妻を過度に賛美するものとは必ずしもなっていない。敬語が基本的に使われていないことでもそのような印象を与えている。

避けられた事実

しかし、この2番組には、注意深く避けられている事実がある。昭和天皇の戦争責任と沖縄との関わりである。

現天皇は、少年の頃から父である昭和天皇の影響を受けて育ったはずだ。

 ぼう大な被害者を生んだ戦争の開始を承認し、国体護持にこだわって降伏を遅らせた昭和天皇、この父の生涯について現天皇はどう考えていたのだろうか。この点は探索されていない。

 沖縄への強い思いから、11回にも及ぶ訪問があったことが番組で紹介された。この行為に、昭和天皇の有名な「沖縄メッセージ」が影響を与えていたかどうかも不明だ。

 昭和天皇は1947年9月、「米国の長期租借による琉球諸島の軍事占領の継続を望む」というメッセージをアメリカに伝えた。長期にわたる皇室と沖縄の関係を描くなら、この歴史的事実は無視できなかったはずである。

今回の番組でも昭和天皇批判がタブーであることを示した形である。

次代以降が心配

 番組は、皇太子時代の最初の沖縄訪問でのメッセージを紹介した。その内容は「沖縄戦における県民の傷痕を深く省み、……払われた多くの尊い犠牲は一時の行為や言葉によってあがなえるものではなく、人々が長い年月をかけて記憶し、ひとりひとり深い内省の内にあって、この地に心を寄せていくことを置いて考えられません」、というものであった。ここには、自らの訪問も「一時的」なものに過ぎないという内省が見られる。

言葉を発したのが皇太子であるかどうかを超えて、人間としてきわめてまっとうな意思表示であると感じる。

 第3話以降に扱われるだろうが、即位後、毎年の誕生日の記者会見では、

憲法を守ること、過去の歴史に眼を向けることの重要性が一貫して主張されてきた。2013年の会見では、日本国憲法制定時の人々の努力に感謝し、当時の「米国の知日派」の人々への感謝も述べている。

 誠実で善良な人間であればごく自然な発言と思えるが、政治的主張を禁じられた地位にあっては、ぎりぎりの決意を要したはずである。

こうした発言の集積は、当然、安倍政権の憲法にたいする姿勢への対抗軸としてとらえられるという現象を生んだ。

 しかし、天皇の発言を過大に評価し、政治効果を持つものとして期待する風潮には危うさを感じる。現天皇の発言のような内容であれば問題はないかもしれないが、これが次代以降、国粋的、排外主義的な天皇の「お言葉」であったらどうなるか。 

おそらく「代替わりキャンペーン」では、天皇への絶対的敬意を基調に、天皇制への批判はタブーとされるだろう。そうした番組群によって、天皇の地位や発言が重要度を増す空気は、戦前回帰の気配があり、危険である。

現在の象徴天皇制は建て前としては国民主権のもとにある。制度も天皇のあり方も、国民が批判を含めて自由に考えてよいことである。

視聴者は、この原則にしたがって「代替わりキャンぺーン」に冷静に向き合うことが求められる。

戸崎賢二(元NHKディレクター)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
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2019年01月28日

【メディア気象台】 2018年12月から19年1月=編集部

◇民放連、改憲意見CM自粛推奨

民放連は20日、憲法改正の国民投票のテレビCMに関する基本姿勢を発表した。法で制限されていない改憲への意見を表明するCMについても、投票前の14日前から放送しないことを民放各社に推奨する考えを示した。投票を呼び掛ける勧奨CMと、賛否を伝える意見表明CMに分けられ、勧奨CMは主権者が冷静に判断する環境づくりのため、投票日14日前から禁止される。立憲民主党など野党からは、CMが政党などの資金力で左右されないよう、量の規制強化を求める意見が出ている。(「毎日」12月21日付ほか)

◇戦後初の邦字紙面、廃刊へ〜ブラジル「サンパウロ新聞」

世界最大の日系社会がある世界最大のブラジルの邦字紙「サンパウロ新聞」は20日、読者減少のため、廃刊の方針を明らかにした。同紙は1946年に創刊された第二次大戦後初の現地邦字紙、77年には菊池寛賞を受賞していた。週5日発行してきた。だが、世代交代に伴い日本語が読める日系人が減少、発行部数も減っていた。(「毎日」12月21日付ほか)

◇独の著名記者がねつ造記事

ドイツ有力誌シュピーゲルは20日、執筆した複数の記事で虚偽の記述が見つかったとしてクーラス・レロティウス記者(32)を解雇したと発表した。ルポルタージュを得意とする著名記者で、ドイツジャーナリズム界の複数の賞を受賞、米テレビ界からも表彰されていた。レロティウス記者は同誌の調査に「成功すればするほど失敗は許されないと感じるようになった」と動機を語った。同誌によると、2011年以降の記事約60本のうち少なくとも14本に虚偽の記述があった。架空のインタビュー記事を書いたり、ネット上や他の新聞に掲載された写真を自分の記事に使ったりしていた。(「毎日」12月21日付ほか)

◇殺害された記者、再び増加

国際非政府組織(NGO)「国境なき記者団」がまとめた報告書によると、2018年に殺害された職業ジャーナリストは63人となり、17年の55人を上回った。10月にはサウジアラビアの著名記者ジャマル・カショギ氏がイスタンブールのサウジ総領事館で殺害された。強権的な政治指導者による言論弾圧や犯罪組織による暗殺の増加が背景にある。同団体によると死亡数が最も多い国はアフガニスタンで14人だった。武装勢力との戦闘や爆撃に巻き込まれるケースが後を絶たない。麻薬カルテルの抗争が激化するメキシコでは7人、新聞社を狙った銃撃戦が発生した米国では6人が命を落とした。中国やトルコ、エジプトなどで反体制的な論調の記者を拘束する動きも強まっている。18年に投獄されたジャーナリストは170人にのぼる。(「日経」12月22日付ほか)

◇「週刊SPA!」が性的表現で謝罪

扶桑社の男性誌「週刊SPA!」編集部は7日、昨年12月25日号の、女子大生を性的にランク付けした記事中の表現について「扇情的になってしまった」「読者の気分を害する可能性のある特集になってしまった」と、謝罪するコメントを発表した。同号では、特集記事の一環で「ヤレる女子大生RANKING」という順位表を、大学の実名入りで掲載した。この表が「女性差別」だとしてインターネット上で反発の声が高まり、同誌に記事撤回や謝罪を求めるネット上の署名活動に多くの賛同が集まった。(「東京」1月8日付ほか)

◇ロイター記者、二審も実刑

ミャンマーのイスラム教徒ロヒンギャへの迫害問題の取材を巡り、国家機密法違反罪に問われたロイター通信のワ・ロン記者(32)とチョー・ソウ・ウー記者(28)の控訴審判決で、最大都市ヤンゴンの高裁は11日、禁固7年の一審判決を支持し、控訴を棄却した。両記者は西部ラカイン州で国軍の兵士らがロヒンギャ10人を殺害した事件を取材していたが、ヤンゴンで治安部隊の極秘資料を警察から入手したとして逮捕された。(「東京」1月12日付ほか)

◇宮古新報労組が会社清算通知撤回など要求

沖縄県宮古島市で日刊紙を発行する「宮古新報」が会社清算と全社員の解雇を同社労働組合に通告したことをめぐり、組合側は11日、宮古市内で記者会見を開いた。「一方的な解雇通知は断じて許すことはできない」とした上で、同社に対し通知の撤回や事業譲渡に向けた交渉手続きを行うよう求めた。(「しんぶん赤旗」1月13日付ほか)

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
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2019年01月08日

【月刊マスコミ評・新聞】 三権分立の視点欠く「徴用工」論調=白垣詔男

 「徴用工訴訟」で韓国最高裁が10月30日と11月29日の2回、いずれも日本企業に賠償を命じる判決を確定させた。このニュースに対して日本政府は安倍晋三首相、河野太郎外相ともに口を極めて韓国側を非難した。新聞社説も「蓄積を無にせぬ対応を」(10月31日、朝日)、「日韓首脳は率直に協議を」(11月30日、毎日)、「文政権は収拾策を早急に」(11月30日、読売)、「政府は冷静に解決策探れ」(10月31日、西日本)と政府間協議の必要性を訴えた。

 そこには、司法が行政から独立しているという「三権分立」の視点が全くない。日本政府が韓国政府に「抗議」するのは、日本では、司法は行政に忖度した判断ばかりしており、それが当たり前のように政府が考えていることを、安倍、河野氏の発言からうかがい知ることができる。

 しかも、日本では最高裁も政府も1965年の日韓国交正常化に伴う請求権協定で「個人の請求権は消滅しない」と判断しているが、それさえも無視して、今回、政府も新聞各紙も国家間の問題だけに照準を当てているのは納得できない。さらに、日本政府は賠償請求の当事者の各企業に、韓国最高裁判決に従わないように要請した。この政府の姿勢もおかしい。

 かつて、中国で同じような裁判で三菱マテリアル(戦時中は三菱鉱業)などが判決に従って中国人原告に話し合いを持って補償したが、そのときの日本政府は、その判決に異を唱えなかった。今回とは、どこが違うのだろうか。それなのに今回、新聞各紙は当時の「三菱マテリアルのやり方」を取り上げてもいない。

 「新聞の右傾化」と言ってしまえば、そうなのかもしれないが、少なくとも政府の韓国政府に対する高圧的な物言いについては「三権分立」を踏まえる冷静な判断があるべきだった。

 韓国では、朴槿恵政権の際、「徴用工訴訟」を先送りした最高裁の前判事2人に対してソウル中央地検が職権乱用などの容疑で逮捕状を出した(その後、ソウル中央地裁が棄却)。ソウル中央地検は「政権の意向をくんだ先送り」は犯罪であると主張した。これが「三権分立」の基本ではないか。日本の司法は見習うべきで、マスコミも「三権分立」についてもっと論じるべきだろう。

白垣詔男

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
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2019年01月02日

【メディア気象台】 11月から12月=編集部

◇メディア女性主催でセクハラ法規制求める集会

セクシュアルハラスメントの防止に向けた法整備を考える集会が8日、衆議院第一議員会館で開かれた。セクハラ禁止を明記した法律がないため、被害救済が難しい現状が報告され、法規制を求める声が相次いだ。集会は、4月に前財務次官のセクハラ問題をきっかけに発足した「メディア女性ネットワーク」(WiMN)が主催。市民や国会議員ら約170人が参加した。(「東京」11月9日付)

◇ニュース見聞き「民放で」が最多

ニュースを見聞きする頻度が最も高いメディアは「民放テレビ」で、1日の平均視聴時間は36.2分だったことが「新聞通信調査会」の調査で分かった。これによると、ニュースを「読む・見聞きする」と答えた割合は民放91.8%、NHK79.8%、新聞70.1%、インターネット66.5%の順だった。(「しんぶん赤旗」11月11日付ほか)

◇イッテQ「祭り」休止〜やらせ疑惑、日テレ社長謝罪

日本テレビの大久保好男社長は15日、バラエティー番組「世界の果てまでイッテQ!」のやらせ疑惑で「疑念や心配を掛ける事態となり、視聴者や出演者など多くの関係者におわび申し上げる」と謝罪した。疑惑が指摘された、海外の祭りに参加する企画は当面休止する。同企画の調査を進めて結果を公表し、責任者を処分する考えも示した。(「毎日」11月16日付ほか)

◇政権寄りTVもCNN支持

米CNNテレビ記者が記者会見での振る舞いを理由に、ホワイトハウスから「出入り禁止」処分を受けた問題で、複数の米メディアは14日、処分撤回を求め提訴したCNNを支持する共同声明を出した。日頃、トランプ政権寄りのFOXニュースも、CNN支持の姿勢を明確にした。共同声明には、AP通信、NBCニュース、ワシントン・ポスト紙、ニューヨーク・タイムズ紙、USAツデー紙などが名を連ねている。報道の自由には「独立したジャーナリストが大統領とその行動にアクセスし、恣意的な理由で拒絶されないことが不可欠」と訴えた。(「しんぶん赤旗」11月16日付ほか)

◇ホワイトハウス、入庁規制を批判〜記者会が文書提出

米CNNテレビが記者のホワイトハウス入庁許可証の回復を求めた訴訟で、ホワイトハウス記者会は15日、大統領には記者の入庁を規制する権限があるとのトランプ大統領の主張は「誤りだ」とする文書を、ワシントンの連邦地裁に提出した。政権の主張を認めれば「危険な判例を作ることになる」と警告した。(「毎日」11月16日付夕刊ほか)

◇サウジ記者殺害、皇太子指示をCIAが断定

サウジアラビアの著名記者ジャマル・カショギ氏の殺害事件で、ワシントン・ポスト紙電子版は16日、複数の関係者の話として、米中央情報局(CIA)がサウジのムハンマド皇太子が暗殺を指示したと断定したと報じた。報道によると、CIAは、皇太子の指示を受けた実弟ハリド駐米大使がカショギ氏にイスタンブールに出向くよう勧めた▽現場責任者が皇太子側近に任務完了と伝えた▽皇太子が権力を掌握する体制―などの情報に基づき、殺害を主導したと結論付けた。(「東京」11月18日付ほか)

◇NHKネット同時配信、法案提出へ

NHKの番組がテレビと同時にネットでも24時間見られる「常時同時配信」の実現に向け、総務省が来年の通常国会に放送法改正案を提出する詰めの調整に入った。NHKは1953年のテレビ放送開始以来、最大の転換点を迎えることになる。「公共放送」ではなくなり、「公共メディア」に生まれ変わるからだ。(「朝日」12月1日付ほか)

◇4K8K放送スタート

超高精細の4K8K衛星放送が1日午前10時、NHKやBS4局などではじまった。現行の放送は2Kで、4Kは4倍、8Kは16倍の画素数を持ち、きめ細かく迫力のある映像が特徴だ。2020年の東京五輪・パラリンピックを見据えた「次世代」の規格として、総務省や放送界が整備を進めてきた。視聴には規格に対応したチューナーやテレビが必要になる。(「神奈川」12月2日付ほか)

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
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2019年01月01日

【メディアウォッチ】 米朝首脳会談 テレビはどう伝えたか 拉致問題に偏りすぎ 中韓からの視点欠く=古川英一

 「ようやく学校に出てきた不良学生みたいな感じ」「何をするのかわからない怖い国」―大学生が語った、北朝鮮に対するイメージだ。世界を驚かせた6月の米朝首脳会談。この会談をテレビはどのように伝えたのかを検証する公開シンポジウムが12月初め、東京の立教大学で開かれた。メディア社会学科の砂川ゼミ、放送を語る会、JCJ、メディア総合研究所の共催だ。

 まず放送を語る会の戸崎賢二さんが、米朝首脳会談の前後2週間のNHKと民放合わせて12のニュース・情報番組をモニターし、比較検証した結果を報告した。

ポイントは米朝会談の歴史的意義がどのように報道されたのかだとしたうえで、戸崎さんは、全体的に見て@会談の意義を大きな歴史的視点でとらえず、限界を強調するなど否定的に見る傾向が目立ったA圧力一辺倒の政策をとる日本政府に対する批判的な報道が少なかったB国内、世界の世論や識者の意見・見解の紹介が少なく、会談を多面的に捉えるうえで十分とはいえなかった、と指摘した。

さらにキャスターや記者にも政府の立場を反映した感覚が染みついているのではないかと述べ、記者に基礎学力と歴史的教養が備わっているのかどうかと、今のメディアの劣化に対しても疑問を呈した。

 続いてTBS「報道特集」キャスターの金平茂紀さんが講演した。日本人の中にある歴史的偏見と過去の清算が未解決であることや、拉致問題や核開発で政府が北朝鮮を仮想敵国化していると前置きし、金平さんは次のように分析した。

「国交がなく戦争も終わっていない米朝が会談をするという、それだけでも驚きの歴史的な首脳会談について日本は歴史的な評価ができない、ある種のバイアスがあるのではないか」

会談当日、金平さんは韓国で取材にしていたが、ソウル駅で市民が一斉に拍手をして喜んでいたのを見て、同じ民族同士の融和の基盤があることを感じ、自分はいままで韓国のことを知らなったと感じたという。

どのように報道するのか、パフォーマンスの裏

側や、真意、何が実質的成果なのか、そこに切り込むには複眼的な思考が必要なのに日本のメディアは拉致問題しか考えず、韓国や中国からの視点でも見るべきだと、指摘した。

シンポは、これだけでは終わらない。後半は金平さんと大学生たちとのパネルディスカッションだ。学生たちと横一列に並びながらの意見交換は、お互いが同じ目線で語り合う親近感を生み出した。

そこで出たのが、冒頭で紹介した学生たちの言葉だった。こうした感想を受けて金平さんは「韓国や北朝鮮については、偏見があり、たとえば慰安婦問題は人間の尊厳に関わるのに、『いい加減にしろよ』と向き合おうとしない、もし逆の立場だったら、なおざりにはできないではないか」と述べた。さらに「若い人たちが活字ではなくネットから情報を取り、ロジカル(論理的)な思考ができなくなっているのではないか」とぴしゃり。締めくくりの一言では学生たちから「ネットではなく足で稼ぐことの大切さを感じた」「北朝鮮について批判するだけではない見方をしていきたい」といった声が。金平さん「5年後にはピョンヤンにもマクドナルドができるのはないか、その日に取材にいければ」……歴史を作り上げいく現場で、私たち一人ひとりが、その証言者なのだと語った。

古川英一

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
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2018年12月14日

【関西支部】 森友疑惑追及でスクープ 「報道の危機」と相澤さん NHKから大阪日日新聞に転職=井上喜雄

 関西支部は11月2日、大阪で「ジャーナリスト講座」を開催した。今回も「新聞うずみ火」との共催で、講師に先頃NHKから『大阪日日新聞』に転職した相澤冬樹さん(56=論説委員)を招いた。
 相澤さんはここ数年NHK大阪で報道記者として活躍しており森友学園問題ではいくつものスクープを飛ばしていたが、なぜ最大手メディアから小地方紙(発行6000部余=ABC協会)へ移ったのか、その間の事情について会場定員を超える65人の参加者を前に語った。

事件記者やりたい
「自分はどちらかというと右翼だと思っている、ただし国粋ではない真正♂E翼だ、これは初任地長州山口の保守的な環境が影響したようだ、右翼は国を憂える、左翼は社会を憂える、私は主義主張にはとらわれない」と切り出した相澤さんは、こう続けた。

「入局は31年前、ずっと事件記者をやりたい、社会部へ行きたいと思っていた。NHK社会部は東京にしかないが、大阪で府警キャップを5年務め、その後東京でBSニュースに関わった。現場への想い断ち切れず、前任地の大阪で記者に戻せと訴え、それが叶ったので再び大阪で記者になった」。
 その後、起こった森友学園事件報道で相澤さんはスクープを連発、籠池泰典理事長にも一番信頼されていたという。
「大阪地検特捜部の捜査がピークを迎えていた6月、異動の内示を受けた。東京で決めたことだ、今後は考査室でがんばれと言い渡されたが、状況からただの異動ではないなと感じた、報道に戻す気はないと判断したのでその時点でNHKを辞めようと決めた」。
「辞めてからテレビや大手全国紙を含め数社に紹介されたが、大阪勤務はさせないとされ森友問題には関われないうえ、自分を買いたたかれた感じもした。だいたい大手を辞めて大手に行っても意味がないので断った」。

副業OKが決め手
 なぜ大阪日日に決めたのかは「以前の取材先が社主の吉岡利固氏(91歳)に渡りを付けてくれた、同氏は紳士服販売を本業としておられるが、鳥取県の『日本海新聞』のオーナーでもある。反骨の人だと思っている。入社にあたって給料はいくらでもかまわない、ただ『日日』だけに書いてもだめなので副業として他の媒体に書くことを認めて欲しい、各地での講演も続けたいと頼んだ。
 あなたの記事で『日日』が有名になり、部数が増えれば結構だと、吉岡氏は同意してくれた。これからは何でも書けると思った」と所属を変えてでも現役の事件記者を選んだ経緯を明らかにした。    

国・大阪府の仕業 
 森友問題に話が及び「もともと森友学園の計画は資金、教員の確保などズサンなものだった。だから大阪府の審議会は一度認可保留にした、ただ教育方針に問題はあるが森友側は変なことはしていない、金が無いので賄賂などもしなかった、土地代が高いので『まけてくれ』と言ったにすぎない、大阪の人ならだれでも言うセリフだ。  
 あれは森友に学校をつくらせたいと思った国と大阪府のしわざだ。事件はこれからだ」と述べた。
 最後に「今は報道の危機、つまり民主主義の危機だ、マスゴミ≠ネどと揶揄され、報道機関への不信もある。記事に至る過程の説明がないからだ、これは大手の中にいればできないが、辞めたらできると思っている」と2時間近い講演を締めた。

 井上喜雄 

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年11月25日号

                  
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2018年12月12日

【月刊マスコミ評・出版】移民議論 開かれた社会の視点を=荒屋敷 宏

 古代ギリシャの哲人ソクラテスが現代日本に現れて、臨時国会で安倍晋三首相を相手に論戦するとしたら、どんな議論を展開するだろうか。こんな荒唐無稽な問いをたてたくなるほど、政府答弁は、ひどい。あちらこちらの現場に行き、「賢者」の「無知」をしつこくあぶり出すソクラテスの議論は、ジャーナリストの仕事に似ていると思う。
 例えば、「移民」の問題。安倍内閣は「いわゆる移民政策はとる考えはありません」としながら、労働力不足のとりつくろいとして、2019年4月からの外国人労働者の受け入れ拡大を図り、財界の要請のもとに外国人労働者の労働基準法や最低賃金を守らない「人権侵害」を放置している。排外主義を主導する安倍内閣が外国人労働者問題に直面しているのは、矛盾というほかない。

 『文芸春秋オピニオン 2019年の論点100』に収められた社会学者の下地ローレンス吉孝氏「本当は世界第4位! 『移民大国』日本の課題」によると、「1990年の入管法改正、1993年の技能実習制度開始により地域住民として暮らす外国人が増加」、「経済協力開発機構(OECD)の外国人移住者統計によれば、加盟国のうち日本はドイツ・米国・英国に次いで第4位」という。
 下地氏は、「問題なのは、受入れの議論において『日本人』(受入れ側)と『外国人』(受入れられる側)の単純な二分法の発想である」と指摘する。

 「世界」12月号が「移民社会への覚悟」を特集している。日本に来た「技能実習生」に対する人権侵害が国内外から「強制労働に近い状態」(アメリカ政府)、「奴隷・人身売買の状態」(国連)と強く批判されている。
 劇作家の平田オリザ氏は、政府の政策には「開かれた多様な社会を指向し、差別のない、誰でも基本的人権の保障された社会をつくっていくという視点が、そこには全く欠けてしまっている」と批判している。

 インタビューや論文よりも重要なのはルポだ。ノンフィクション作家の森健氏が「東京・新宿 日本一多国籍な教室の子供たち」(「文芸春秋」12月号)との力作を書いている。新大久保駅周辺で「町中を飛び交う言葉は中国語、韓国語、タイ語、英語とさまざまで判別不能な言語もある」という。
「判別不能な言語」をなくすことが「開かれた多様な社会」への道でもあるだろう。それでもなお、「いろんな言語の混じった会話」を「時代を開く新しい言葉」と聞き取った森氏のルポに共感した。 

荒屋敷 宏

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年11月25日号
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2018年11月30日

【メディア気象台】 10月から11月=編集部

◇月間視聴率3冠、日テレ途切れる
在京キー局の視聴率で、日本テレビが全日帯の他、夜間のプライム、ゴールデンの三つの主要時間帯区分でトップとなる、「月間3冠王」が9月までの58か月連続で途切れたことが29日、分かった。視聴率はビデオリサーチ(関東地区)の調査。29日にまとまった10月期の視聴率で、プライムとゴールデンでは59か月連続トップだったが、全日帯(午前6時〜翌日午前零時)でテレビ朝日(7.7%)にトップを奪われた。(「東京」10月30日付ほか)

◇海賊版サイト対策「議論集約できず」〜有識者会議上部会合
内閣府は30日、漫画などを無料で読ませる海賊版サイト対策を検討した有識者会議の上部会合を開き、強制的に閲覧を止める「接続遮断(ブロッキング)」の法制化で意見の対立が解消せず「議論をまとめることができなかった」と報告した。正規版の普及促進や海賊版サイトへの広告抑制といった対策をまず実施し、効果を検証する方針を確認した。(「東京」10月31日付ほか)

◇政党CM禁止柱に国民投票法改正案〜国民民主、憲法調査会
国民民主党は30日午前、憲法調査会総会を国会内で開き、憲法改正の是非を問う国民投票を巡り、スポットCMなど政党による広告放送の禁止を柱とする独自の国民投票法改正案を了承した。改正案は企業や団体が国民投票運動に支出する上限を5億円とする規制も盛り込んだ。資金力の差が投票結果を左右するのが狙い。(「東京」10月31日付ほか)

◇KDDIも値下げ検討〜ドコモに続き
KDDIは1日、都内で高橋誠社長が記者会見し、携帯電話料金の「低価格化、シンプル化に向けて積極的に対応する」と値下げ検討を表明した。NTTドコモが通信料金の値下げを発表したのに続いた。KDDIのプランの内容次第では競争が激しくなりそうだ。(「神奈川」11月2日付ほか)

◇記者殺害、「独立した調査」必要〜国連弁務官
国連のバチェレ人権高等弁務官はこのほど、サウジアラビアの記者ジャマル・カショギ氏がトルコ・イスタンブールのサウジ総領事館で殺害された事件について、「独立した、偏りのない調査」が必要だと指摘した。バチェレ氏は10月30日に発表した声明で、カショギ氏の殺害は「記者と政府の批判者に対する図々しい犯罪だ」と批判。「いかなる政治的な配慮も抜きに調査を行うには、国際的な専門家が関与し、証拠と目撃者へ全面的にアクセスできることが求められる」と指摘した。(「しんぶん赤旗」11月2日付ほか)

◇規制しない方針を民放連改めて示す
民放連は2日、憲法改正の国民投票のCM自主規制に関する考え方を発表し、CM量の規制は行わない方針を改めて示した。野党などから出ている「かつて国会で自主規制を約束していた」との指摘に、「自主的、自律的に取り組む旨を強調したもの」と反論した。(「東京」11月3日付ほか)

◇政府最高レベル、記者殺害を指令」トルコ大統領寄稿
トルコのエルドアン大統領は2日、米紙ワシントン・ポスト電子版への寄稿で、サウジアラビア人記者ジャマル・カショギ氏の殺害は「サウジ政府最高レベルからの指令」だったと指摘した。「サルマン国王が命令したとは全く思っていない」とし、言及はないが、ムハンマド皇太子が関与したとの考えを示唆したとみられる。(「毎日」11月4日付ほか)

◇グーグルマップにヘイト表現
インターネット検索大手グーグルの地図サービス「グーグルマップ」で、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の東京都本部(墨田区)や社民党の旧本部所在地(千代田区)が「犯罪者」などと表記されていたことが4日、分かった。何者かが書き込んだとみられるが、専門家は人種差別などをあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)の防止に向け、「グーグル側にも社会的責任がある」と指摘している。(「東京」11月5日付ほか)

◇トランプ米大統領、記者出入り禁止、拡大も
トランプ米大統領は9日、CNNテレビ記者のホワイトハウスへの入庁許可証を停止したのに続き、他の記者にも出入り禁止措置を広げる可能性があると述べた。記者団に「あなたたちはホワイトハウスや大統領に敬意を払わなければならない」と警告した。パリ訪問前にホワイトハウスで語った。トランプ氏は、CNNを筆頭に自身に批判的なメディアを「フェイク(偽)ニュース」「国民の敵」と攻撃を続けている。出入り禁止措置は「報道の自由」の妨害とも受け取られかねず、批判が高まるのは必至だ。(「神奈川」11月11日付ほか)

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年11月25日号
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2018年11月28日

【メディアウォッチ】 地方創生モデル「東峰テレビ」訪ねる 自ら番組つくる住民ディレクター活躍=橋詰雅博

 JCJ全国交流集会の参加者は2日目の 10月20日午後に、福岡県東峰村(村民約2000人)の村営ケーブルテレビ「東峰(とうほう)テレビ」を訪ねた。 

 昨年7月に襲った九州北部豪雨の際、同テレビプロデュサーの岸本晃さん(65)は、被災直後の村や村民をビデオカメラなどで撮影し、ケーブルの断線によりテレビに被災情報を流せなかった代わりにフェイスブックなどで動画や写真を発信した。これがマスコミの目にとまり、取材陣が押し掛け岸本さんが受け入れ窓口となり東峰テレビの岸本≠フ名が県内外に広まった。

 岸本さんはこう振り返る。
「豪雨が村を襲ったのは7月5日。土砂崩れで3人が亡くなった。私が出張先の東京から戻り村に入ったのは6日の夕方。それから15集落をくまなく回り、損壊した家屋や道路の爪痕、避難所にいる村民らを取材した。出向くと『東峰テレビさんがんばっているね』と村民から声をかけられた。また、村民が私の顔を見ると、安心した表情を浮かべるので、励みになった。ケーブルが復旧したのは被災から3週間後でした」

 岸本さんは、熊本県民テレビ出身で、14年間、情報番組のプロデュサーなどを務めた。在職中に地域を盛り上げるため住民にビデオカメラを渡し、その住民が身の回りの暮らしぶりを撮影して番組をつくる「住民ディレクター」方式を提案。
 それを実践するため1996年に独立し、約20年間で全国50以上の地域を回り、住民ディレクター養成講座を開いた。「ボタンを押せば映る」「身体がカメラ」「番組はオマケ」の3原則を掲げた講座は、実践主義に徹した。

 岸本さんの音頭取りで10年11月に開局した東峰テレビにも約100人の住民ディレクターがいる。会見に同席した農家の女性住民ディレクターはこう言った。
「農作業の合間、月に1、2回番組づくりを手伝います。被災当初は、憔悴した村の皆さんの姿をビデオカラで映すのは気が引けましたが、家に住めるようになってから笑顔が戻り、それを撮影できたのはよかったです」

 村民の7割が見ているという東峰テレビは地方創生のモデルケースとして注目されている。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年11月25日号
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