2019年03月12日

《月間マスコミ評・新聞》カジノ万博の追及は遠慮がち=山田明 

 厚生労働省の毎月勤労統計の偽装から始まり、統計不正問題は拡大するばかりだ。政府基幹統計の信頼が揺らぎ、国民生活、研究教育への影響は計りしれない。国会で疑惑の解明が求められるが、安倍政権は後ろ向きの姿勢が目立つ。
 安倍首相の嘘と居直りとともに、麻生副総理兼財務相の暴言にも呆れてしまう。「産まなかったほうが問題」発言だ。こうした暴言の確信犯、常習犯であり、発言撤回で済む話ではない。
 首相官邸が記者質問を問題視し、制限したことも重大な問題だ。新聞労連が抗議の声明文を出し、朝日などが社説で取りあげている。取材妨害に対して、内閣記者会、メディア全体で毅然と対応してもらいたい。
 沖縄では「妨害」をはねのけ、辺野古埋め立ての是非を問う県民投票が全県で実施されることになった。「2・24県民投票」を注視したい。辺野古の海は、沖縄の民意を無視して米軍新基地建設の埋め立て工事が続く。政府は軟弱地盤の改良工事のため、設計変更するという。政府もマヨネーズ並み≠ニ言われる軟弱地盤を3年前に把握していたが、埋め立てを強行した。こんな杜撰な基地建設、公共事業はあり得ない。ただちに埋め立てをやめ、沖縄県と協議すべきだ。
 来年の東京五輪とともに、2025年に誘致が決まった大阪・関西万博にも注目したい。万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、大阪湾の人工島「夢洲」を舞台に開催する計画である。
 産業廃棄物などで埋め立て中の夢洲は、災害のリスクが懸念され、アクセスなどで巨額の地元負担をもたらす。大阪府・市は夢洲で万博1年前にIR=カジノを開業させようと躍起だ。ギャンブル依存症と隣り合わせのブラックユーモアのような「カジノ万博」だが、地元メディアの追及は遠慮がちだ。
 二度目の大阪万博は夢洲とカジノに固執すると、2005年愛知万博以上に迷走するだろう。大阪万博は、愛知万博の会場変更の教訓から学べ、と言いたい。  
 大阪では、維新が大阪市を廃止する「都構想」を強引に推し進めている。大阪はカジノや万博、「都構想」などより、防災や暮らしに目を向けるべきだ。政策の優先順位が問われている。
 春の統一地方選、夏の参院選に向け、足もとからのシビアな報道を期待したい。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
 
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2019年03月04日

【メディアウォッチ】 菅官房長官の報道恫喝 官邸になめられた大メディアと記者会 明らかな言論弾圧だ 委縮・自己規制はね返せ=編集部

 「取材じゃないと思いますよ。決め打ちですよ」。菅義偉官房長官は2月12日の衆院予算委員会で、語気を強め「東京新聞の特定記者」の質問をこう断定した。会見はネット動画で配信されており「事実に基づかない質問は、誤った事実認識を拡散される恐れがある」と、首相官邸の内閣記者会への申し入れの正統性を強調したのだ。国民民主党の奥野総一郎氏が質問で「民主主義国家としてあってはいけない」と追及したのに答えたものだが、記者会見の質問を封じる恣意的で言いたい放題の発言が、国会で平気でまかり通ってしまうこと自体を深刻に受け止めるべきだ。

 ところが今回も、政権による言論弾圧と言っても過言ではない発言が国会でなされたにもかかわらず、マスメディアの反応はとても鈍かった。官房長官答弁を正面から批判はせず、むしろ東京新聞に「9回ほど抗議した」という菅氏の言い分を伝えるにとどまる。こうした当事者意識の薄いメディアの報道姿勢の積み重ねが、今回の事態を招いていると言えよう。

 首相官邸報道室長名で内閣記者会に、東京新聞の特定記者の質問を「事実誤認」「度重なる問題行為」と断定し、文書で申し入れたのは昨年12月28日。特定記者とは、官房長官会見でこの間しつこく質問してきた望月衣塑子記者のことで、記者会は「つっぱねた」とされるが、こうした不当な申し入れがあったことは直ぐには報じられず、2月1日になってから情報誌「選択」が電子版などで伝えたのが初報だ。その後、日本新聞労働組合連合(新聞労連)が抗議声明を出したのをきっかけに、新聞やテレビで報道され始めた。JCJも8日に報道の自由の保障を求める声明を発表した。

 国民の「知る権利」に支えられて取材活動をする記者たちが、世論に訴えることなく、この間の「一強化する権力」と各社がばらばらに対峙するだけでは、官邸になめられるのも必然ではないのか。2014年末の衆院選の際に、自民党が解散前日に在京テレビ各局に「報道の公平性確保」を求める文書を出した時も同じだった。テレビ各局は受け取った時点で報道しなかった。各局の対応に疑問や、あまりに鈍感だと批判も出たが、それ以来、権力側からのさまざまな圧力にメディア側が自粛する傾向が徐々に強くなってきている。

 東京新聞とて、官房長官が言っている「9回」もの抗議を報じることなく、静観してきていることは問題だ。気に入らない質問者を排除しようとする政権の狙いを甘く見ずに、不当な対応ぶりをその都度批判的に報じていくことが求められている。
 さらにひどくなった報道現場の委縮、忖度、自己規制をはね返し、会社の枠を超えた地道な取り組みをしていきたい。

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
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2019年02月28日

【メディアウォッチ】宮古新報労組・伊佐次郎委員長が寄稿「新日刊紙」2月スタート 解雇拒否の社員一丸で発行継続

 今年1月10日、沖縄県宮古島市で日刊新聞を発行していた宮古新報社の座喜味弘二社長が全社員に解雇を通知した。解雇通知書には「業績不振により赤字経営が続いていたところ、資金繰りの目途が絶たなく事業閉鎖のやむなきに至った」とあったが、長年のパワハラやセクハラを続けていた座喜味社長に退任を迫った社員への報復だった。突然の解雇通知であり、「このまま解雇を受け入れるのか」、あるいは「受け入れず新聞発行を続けるのか」の選択を迫られた。動揺と不安が押し寄せるなか選択したのは新聞発行を続けることだった。残った社員10人は8・10ページから4ページの紙面縮小で発行。発行を続けるということは考えていた以上に大変なことだったが、社員一丸となって挑んだ新聞発行が2月1日からの新しい経営者の下でのスタートにつながった。

 解雇通知を受けた日は朝早くから取材があり、会社には午前10時頃に出勤した。座喜味社長ではなく事務員から解雇通知書を受け取った。前日に代理人の弁護士から口頭で「あす通知書を出す」と聞いてはいたが、実際に手にしたときは「本当にきたんだ」という感じだった。

地域の使命果たす
 実は弁護士が口頭で通知した後、(組合員の社員は)話し合いを持ち、その日の結論は解雇通知を受け入れることだった。昨年11月2日に座喜味社長に退任を迫り、その後の会議の連続で臨んだ団体交渉に顔を見せない座喜味社長に代わり出席した弁護士ののらりくらりの対応や年末に「事業譲渡の交渉を行っている」と言っておきながら突然の解雇通知のダメージは大きく、あきらめムードが漂った。

 9日の夜には緊急会議が持たれた。スカイプで宮古新報労働組合執行部4人と宮古連絡会、沖縄県マスコミ労働組合協議会、日本新聞労働組合連合(新聞労連)を交え、今後の対応をどうするかで話し合った。「解雇通知を受け入れるか」、それとも「受け入れず、新聞発行を続けていく」の二つの選択を迫られた。時間がない中で答えを出さなくてはいけないという難しさがあり答えは割れた。
 その中、東京で新聞労連が10日に緊急会見を行うことを決定。答えが見つからないまま時間が流れるなか「大事なことは当事者がどうしたいのか」の問い掛けが気持ちに刺さった。「そうだ。自分たちに投げかけられている問題であり生活が掛かっている。なにより創刊51年、『地域に根ざし、地域とともに歩む新聞としての使命を果たす』という理念のもと新聞を発行してきた。社長の独断で新聞発行を止めることは出来ない。宮古新報の新聞を待っている読者のためにも作り続けていきたい」。
 そんな思いが割れていた気持ちを一つにさせ、「これからも新聞を発行していく」との思いでまとまった。

明るくなった社内
 11日に記者会見し、社員の解雇撤回の要求と新聞発行継続を強調した。その日から3週間、社員は一丸となって新聞を作り続けた。紙面縮小の4ページで購読者に十分な情報が届けられないというもどかしさがあるが、「出し続けることが大事」と自分に言い聞かせ、疲れた心と体を奮い立たせている。この間多くの仲間の支援を受け、全国から電話やメールで激励を受けた。とても感謝であり元気が出る。
 取材先では「新聞は2社ないと駄目だ。頑張れ、応援しているぞ」などの声があり胸が熱くなった。自分の気持ちに寄り添い支えてくれる家族の存在は心強く、知人や友人からの電話には勇気が湧いた。恩師からは「きついと思うが、今の頑張りが将来にきっと生きてくる。何もできないが新聞を購読したい」との言葉がありがたかった。

 新聞発行を続けてきたことが事業譲渡につながった。新しい経営者は法人登記の手続きが済み次第、正式に発表すると言っている。座喜味社長に退任を迫り、慣れない団体交渉末の解雇通知に「受け入れない」と新聞を作り続けてきた。強い気持ちの一方、この先どうなるのだろうかという不安もあり、事業譲渡決定は「暗いトンネル」を抜けたような明るい希望を与えた。だが社員の人員不足による紙面縮小など依然厳しい状況。購読者に支えられ、新聞労連や県マスコミ労協、宮連会の支援を受けた紙面作りはまだ続きそうだ。

 今言えるのは創刊51年の歴史ある新聞社を守り、新たなスタート地点に立ったことだ。小さな新聞社だが地域に果たしてきた役割は大きく、改めて存在の大きさを感じた。社内には明るい雰囲気が漂うようになった。新しい経営者と社員が一丸となり、これからも「宮古新報」の新聞を作り購読者に提供していきたい。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
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2019年02月27日

【メディア気象台】 1月〜2月 

国内の映画公開本数、過去最多
日本映画製作者連盟(会長・岡田裕介東映グループ会長)は29日、2018年の全国映画概況を発表した。年間総興行収入は2225億1100万円(前年比97.3%)と微減だったものの、00年以降では17年に次いで3番目の成績だった。入場人員は1億6921万人(同97%)、総興行のうち、邦画が占める割合は54.8%。公開本数は1192本(邦画613本、洋画579本)で、過去最多を更新した。洋画の「ボヘミアン・ラプソディ」が104億円、邦画では「劇場版コード・ブルー ドクターヘリ救急救命」「名探偵コナン ゼロの執行人」が共に90億円を超えるなど、期待以上の作品が相次いだ。製作費300万円という「カメラを止めるな!」は31.2億円と邦画の7位に食い込んだ。(「毎日」1月30日付ほか)

2時間ドラマ枠消滅
2時間ドラマを放送している「月曜名作劇場」(月曜午後8時)が、3月で終了することになった。31日、同局関係者が取材者に対し明らかにした。民放キー局の夜の番組から、2時間ドラマのレギュラー枠が消えることになる。同局関係者によると、若年層への波及効果などを検討した結果、4月の番組改編に合わせて放送を終えることになった。2時間ドラマは事件などを主な題材として、長らく各局で盛んに放送されてきた。(「朝日」2月1日付ほか)

アマゾン、書籍買い切りへ
ネット通販大手のアマゾンジャパンは31日、出版社から書籍を直接購入し、販売する「買い切り」方式を年内にも試験的に始めると発表した。同社は同日の記者会見で。「書籍の返品率を下げるため」と説明し、本の価格設定についても検討する考えを示した。同社によると、買い切る書籍について出版社と協議して決定。一定期間は出版社が設定した価格で販売するが、売れ残った場合は出版社と協議して値下げ販売などを検討するという。出版業界に詳しいフリーライターの永江朗さんは「出版社と書店との力関係が大きく変わるのではないか。電子書籍同様、本の値引きが進む可能性もある」と話している。(「毎日」2月1日付ほか)

ミャンマーロイター記者、最高裁に上訴
ミャンマーで少数派のイスラム教徒ロヒンギャ2を軍の兵士が殺害した事件を取材していたロイター通信のミャンマー人記者2人が国家機密法違反罪に問われ、禁固7年の判決を受けた事件で、2人は1日、一審判決を支持した高等裁判所の判断を不服として最高裁に上訴した。(「朝日」2月2日付ほか)

長崎新聞社長が部下へ性的言動
長崎新聞社は2日、徳永英彦社長(59)が部下の女性らに性的な言動をした問題を受けて臨時取締役会を開き、徳永氏の役員報酬3か月分の自主返上や、ハラスメント防止策強化などの方針を了承した。徳永氏は「品位を欠いた言動で多大の迷惑をおかけしたことを改めておわびします。ハラスメント防止策の先頭に立ち、社員と共に推進します」とのコメントを出した。(「東京」2月3日付ほか)

ドローン規制拡大「反対」〜新聞協会
日本新聞協会は8日、政府が小型無人機ドローンによるテロへの対策として今国会に提出予定のドローン規制法改正案に、自衛隊や在日米軍施設上空の飛行禁止を盛り込む方針に反対する意見書を菅官房長官宛てに提出した。「取材活動を大きく制限し、国民の知る権利を著しく侵害する」と訴えた。意見書は「その時々の防衛相の恣意的な判断や自衛隊員の拡大解釈で、禁止区域が不適切に拡大し、不当な取り締まりが行われることが懸念される」と批判。「行き過ぎたテロ対策によって取材・報道の自由が阻害されることのないよう求める」と注文した。(「東京」2月9日付ほか)

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
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2019年02月06日

《マスコミ評・出版》安倍政権への不満が噴き出した=荒屋敷 宏

 通常国会冒頭解散のうわさも出るなか、「平成最後」と日本でしか通用しない話題でお茶をにごす去年今年。安倍政権にたいする「反乱」が静かに始まっている。

「文芸春秋」1月号「トランプの言いなりで兵器を買うな」と主張したのは、元陸将・千葉科学大学客員教授の山下裕貴氏だ。日本政府は前の「中期防衛力整備計画」(2014〜18年度)で米国の最新鋭ステルス戦闘機F35Aを42機も購入した。うち38機は日本企業が下請けとして参画する。「機体に日本の部品を使うこと条件としたため価格が上昇し、一機百七億円だったものが百八十六億円まで膨れ上がった」(山下氏)という。
 
 アメリカに価格決定権があるFMS(有償軍事援助)制度でトランプ言いなりの価格で「殺人兵器」を購入する。新たな中期防(19〜23年度)でもF35AとF35Bを合計45機購入する。防衛省は最終的に147機態勢にする予定だが、その購入費・維持費の総額は6・2兆円を超えるという(しんぶん赤旗1月10日付)。
 
 同じ「文芸春秋」1月号で消費税反対論者ではないセブン&アイ・ホールディングス名誉顧問の鈴木敏文氏が消費増税に怒りをぶちまけている。現在のような景気の状況で消費増税をおこなえば「国内景気がさらに悪化して、消費の減少、企業倒産の増加、失業率の上昇といった負の連鎖に直面する可能性もある。当然、消費税だけではなく、法人税、所得税といった税収全般が、逆に低下する事態に陥ってしまいかねません」と述べている。
 
 批判のホコ先は、政治家にも向かう。「そもそも政治は、人間の心理を考えずに行なうことは不可能であるはずです。本来、政治家は国民から直接選挙で選ばれているわけですから、国民の心理を一番よく分かっていなくてはいけない存在です。ところが、いつからか、有権者の心理を理解できない政治家が多くなってしまいました」。鈴木氏は、10%引き上げの時期や軽減税率にも苦言を呈している。
 
 さらに安倍政権の「成長戦略」と位置づけられていた「原発輸出」も総崩れとなっている。「文芸春秋」2月号「丸の内コンフィデンシャル」欄の「英政府揺さぶる日立」に注目した。日立製作所が英国で進める原発建設計画の凍結(1月17日)発表前の話だが、総事業費が3兆円となるなか、安倍政権の顔を立てようとして失敗した日立側の裏事情を伝えている。
 
 安倍政権を応援する側にも不満が噴き出し始めている。 

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2019年02月04日

《月間マスコミ評・新聞》ゴーン事件 捜査監視の報道弱い=六光寺 弦

 日産自動車のカルロス・ゴーン前会長が1月11日、私的な損失の日産への付け替えを巡る特別背任罪などで追起訴された。長期の勾留や弁護士の立ち会いがない取り調べが海外から批判を受けているが、制度面はともかく、検察の捜査を監視すべき新聞は踏み込みが足りない。
 
 一例として、1月12日付の朝日新聞1面の解説記事を見てみる。
 
 「特別背任罪での再逮捕は、虚偽記載罪での勾留延長を退けた裁判所に反発し、生煮えのまま突っ込んだ危うさが否めない」「今回の捜査はただでさえ『日産内部の権力闘争に加担し、司法取引で不意打ちで逮捕した』との疑念が一部にある」と指摘してはいる。
 
 だが結論は「単なる有罪立証にとどまらず、綿密な証拠に基づいて公平公正な捜査をしたという証明が求められている」と、他人事のように課題を挙げているだけだ。
 
 それでも朝日はましかもしれない。他紙は、前会長側が容疑を否認して、東京地検特捜部と激しく争っているとの“客観報道”にとどまった。産経新聞に至っては、捜査に幅広い支持を得るために、検察は進んで事件の意義を語るべきだと進言する始末。検察の応援団を自認しているのか。
 
 昨年11月の前会長逮捕の時、検察は発表で容疑の内容について、隠蔽したとする役員報酬が未払いであることを伏せていた。逮捕するには容疑が弱い、との批判が出ることを自覚していたのではなかったか。代わって、積極的な情報発信で「金に汚いゴーン」との印象を広めたのは日産だ。迅速な解任は前会長の逮捕なしには不可能だったが、容疑にかかわる重要な事実を、検察がなぜ伏せたのかを追求した記事は見当たらない。
 
 特別背任の立件にしても、検察は困難な捜査に挑んだとの評価を目にするが、ならば、森友事件で財務省の組織的な文書改ざんに対しても、同じように困難を乗り越え、立件すべきではなかったか。そのことを問う記事も見かけない。
 
 特捜検察は2010年の大阪地検の証拠改ざん・隠蔽事件で極限まで堕落した。その責任の一端は「最強の捜査機関」「巨悪を眠らせない」などと、無批判に特捜検察をもてはやしてきた新聞にある。同じ愚を繰り返してはならない。
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2019年01月29日

【NHK「天皇 運命の物語」】 「退位・即位番組」がはらむ危うさ 昭和天皇批判なおタブー=戸崎賢二

今年、天皇退位と新天皇の即位に向かって、テレビでは数多くのニュース、番組が放送されるだろう。おそらく「代替わりキャンペーン」とでもいえる様相を呈するに違いない。

その本格的な開始と思われる番組として、昨年12月23日と24日、2回にわたって放送されたNHK「天皇 運命の物語」第1話、第2話を見た。

この番組は4回シリーズで、第3話、4話は3月に放送という。

第1話「敗戦国の皇太子」は、「神の子」として侍従たちに育てられた天皇が、アメリカから教師として招聘されたヴァイニング夫人らの教育によって成長していく過程が辿られた。皇太子としてイギリス、アメリカを訪問し、かつての敵国から歓迎された歴史も組み込まれている。

第2話「いつもふたりで」は、前半で皇太子妃探しの時期から成婚パレードまでの記録、後半は皇太子夫妻として、災害被災者を訪問するなどの「公務」の開始期の記録をたどっている。とくに1975年、初めて沖縄を訪問したときの、火炎びんを投げつけられた事件を含むエピソードが詳しく描かれた。

この2本の番組は事実と証言でできるだけ客観的に描こうとしており、天皇夫妻を過度に賛美するものとは必ずしもなっていない。敬語が基本的に使われていないことでもそのような印象を与えている。

避けられた事実

しかし、この2番組には、注意深く避けられている事実がある。昭和天皇の戦争責任と沖縄との関わりである。

現天皇は、少年の頃から父である昭和天皇の影響を受けて育ったはずだ。

 ぼう大な被害者を生んだ戦争の開始を承認し、国体護持にこだわって降伏を遅らせた昭和天皇、この父の生涯について現天皇はどう考えていたのだろうか。この点は探索されていない。

 沖縄への強い思いから、11回にも及ぶ訪問があったことが番組で紹介された。この行為に、昭和天皇の有名な「沖縄メッセージ」が影響を与えていたかどうかも不明だ。

 昭和天皇は1947年9月、「米国の長期租借による琉球諸島の軍事占領の継続を望む」というメッセージをアメリカに伝えた。長期にわたる皇室と沖縄の関係を描くなら、この歴史的事実は無視できなかったはずである。

今回の番組でも昭和天皇批判がタブーであることを示した形である。

次代以降が心配

 番組は、皇太子時代の最初の沖縄訪問でのメッセージを紹介した。その内容は「沖縄戦における県民の傷痕を深く省み、……払われた多くの尊い犠牲は一時の行為や言葉によってあがなえるものではなく、人々が長い年月をかけて記憶し、ひとりひとり深い内省の内にあって、この地に心を寄せていくことを置いて考えられません」、というものであった。ここには、自らの訪問も「一時的」なものに過ぎないという内省が見られる。

言葉を発したのが皇太子であるかどうかを超えて、人間としてきわめてまっとうな意思表示であると感じる。

 第3話以降に扱われるだろうが、即位後、毎年の誕生日の記者会見では、

憲法を守ること、過去の歴史に眼を向けることの重要性が一貫して主張されてきた。2013年の会見では、日本国憲法制定時の人々の努力に感謝し、当時の「米国の知日派」の人々への感謝も述べている。

 誠実で善良な人間であればごく自然な発言と思えるが、政治的主張を禁じられた地位にあっては、ぎりぎりの決意を要したはずである。

こうした発言の集積は、当然、安倍政権の憲法にたいする姿勢への対抗軸としてとらえられるという現象を生んだ。

 しかし、天皇の発言を過大に評価し、政治効果を持つものとして期待する風潮には危うさを感じる。現天皇の発言のような内容であれば問題はないかもしれないが、これが次代以降、国粋的、排外主義的な天皇の「お言葉」であったらどうなるか。 

おそらく「代替わりキャンペーン」では、天皇への絶対的敬意を基調に、天皇制への批判はタブーとされるだろう。そうした番組群によって、天皇の地位や発言が重要度を増す空気は、戦前回帰の気配があり、危険である。

現在の象徴天皇制は建て前としては国民主権のもとにある。制度も天皇のあり方も、国民が批判を含めて自由に考えてよいことである。

視聴者は、この原則にしたがって「代替わりキャンぺーン」に冷静に向き合うことが求められる。

戸崎賢二(元NHKディレクター)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
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2019年01月28日

【メディア気象台】 2018年12月から19年1月=編集部

◇民放連、改憲意見CM自粛推奨

民放連は20日、憲法改正の国民投票のテレビCMに関する基本姿勢を発表した。法で制限されていない改憲への意見を表明するCMについても、投票前の14日前から放送しないことを民放各社に推奨する考えを示した。投票を呼び掛ける勧奨CMと、賛否を伝える意見表明CMに分けられ、勧奨CMは主権者が冷静に判断する環境づくりのため、投票日14日前から禁止される。立憲民主党など野党からは、CMが政党などの資金力で左右されないよう、量の規制強化を求める意見が出ている。(「毎日」12月21日付ほか)

◇戦後初の邦字紙面、廃刊へ〜ブラジル「サンパウロ新聞」

世界最大の日系社会がある世界最大のブラジルの邦字紙「サンパウロ新聞」は20日、読者減少のため、廃刊の方針を明らかにした。同紙は1946年に創刊された第二次大戦後初の現地邦字紙、77年には菊池寛賞を受賞していた。週5日発行してきた。だが、世代交代に伴い日本語が読める日系人が減少、発行部数も減っていた。(「毎日」12月21日付ほか)

◇独の著名記者がねつ造記事

ドイツ有力誌シュピーゲルは20日、執筆した複数の記事で虚偽の記述が見つかったとしてクーラス・レロティウス記者(32)を解雇したと発表した。ルポルタージュを得意とする著名記者で、ドイツジャーナリズム界の複数の賞を受賞、米テレビ界からも表彰されていた。レロティウス記者は同誌の調査に「成功すればするほど失敗は許されないと感じるようになった」と動機を語った。同誌によると、2011年以降の記事約60本のうち少なくとも14本に虚偽の記述があった。架空のインタビュー記事を書いたり、ネット上や他の新聞に掲載された写真を自分の記事に使ったりしていた。(「毎日」12月21日付ほか)

◇殺害された記者、再び増加

国際非政府組織(NGO)「国境なき記者団」がまとめた報告書によると、2018年に殺害された職業ジャーナリストは63人となり、17年の55人を上回った。10月にはサウジアラビアの著名記者ジャマル・カショギ氏がイスタンブールのサウジ総領事館で殺害された。強権的な政治指導者による言論弾圧や犯罪組織による暗殺の増加が背景にある。同団体によると死亡数が最も多い国はアフガニスタンで14人だった。武装勢力との戦闘や爆撃に巻き込まれるケースが後を絶たない。麻薬カルテルの抗争が激化するメキシコでは7人、新聞社を狙った銃撃戦が発生した米国では6人が命を落とした。中国やトルコ、エジプトなどで反体制的な論調の記者を拘束する動きも強まっている。18年に投獄されたジャーナリストは170人にのぼる。(「日経」12月22日付ほか)

◇「週刊SPA!」が性的表現で謝罪

扶桑社の男性誌「週刊SPA!」編集部は7日、昨年12月25日号の、女子大生を性的にランク付けした記事中の表現について「扇情的になってしまった」「読者の気分を害する可能性のある特集になってしまった」と、謝罪するコメントを発表した。同号では、特集記事の一環で「ヤレる女子大生RANKING」という順位表を、大学の実名入りで掲載した。この表が「女性差別」だとしてインターネット上で反発の声が高まり、同誌に記事撤回や謝罪を求めるネット上の署名活動に多くの賛同が集まった。(「東京」1月8日付ほか)

◇ロイター記者、二審も実刑

ミャンマーのイスラム教徒ロヒンギャへの迫害問題の取材を巡り、国家機密法違反罪に問われたロイター通信のワ・ロン記者(32)とチョー・ソウ・ウー記者(28)の控訴審判決で、最大都市ヤンゴンの高裁は11日、禁固7年の一審判決を支持し、控訴を棄却した。両記者は西部ラカイン州で国軍の兵士らがロヒンギャ10人を殺害した事件を取材していたが、ヤンゴンで治安部隊の極秘資料を警察から入手したとして逮捕された。(「東京」1月12日付ほか)

◇宮古新報労組が会社清算通知撤回など要求

沖縄県宮古島市で日刊紙を発行する「宮古新報」が会社清算と全社員の解雇を同社労働組合に通告したことをめぐり、組合側は11日、宮古市内で記者会見を開いた。「一方的な解雇通知は断じて許すことはできない」とした上で、同社に対し通知の撤回や事業譲渡に向けた交渉手続きを行うよう求めた。(「しんぶん赤旗」1月13日付ほか)

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
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2019年01月08日

【月刊マスコミ評・新聞】 三権分立の視点欠く「徴用工」論調=白垣詔男

 「徴用工訴訟」で韓国最高裁が10月30日と11月29日の2回、いずれも日本企業に賠償を命じる判決を確定させた。このニュースに対して日本政府は安倍晋三首相、河野太郎外相ともに口を極めて韓国側を非難した。新聞社説も「蓄積を無にせぬ対応を」(10月31日、朝日)、「日韓首脳は率直に協議を」(11月30日、毎日)、「文政権は収拾策を早急に」(11月30日、読売)、「政府は冷静に解決策探れ」(10月31日、西日本)と政府間協議の必要性を訴えた。

 そこには、司法が行政から独立しているという「三権分立」の視点が全くない。日本政府が韓国政府に「抗議」するのは、日本では、司法は行政に忖度した判断ばかりしており、それが当たり前のように政府が考えていることを、安倍、河野氏の発言からうかがい知ることができる。

 しかも、日本では最高裁も政府も1965年の日韓国交正常化に伴う請求権協定で「個人の請求権は消滅しない」と判断しているが、それさえも無視して、今回、政府も新聞各紙も国家間の問題だけに照準を当てているのは納得できない。さらに、日本政府は賠償請求の当事者の各企業に、韓国最高裁判決に従わないように要請した。この政府の姿勢もおかしい。

 かつて、中国で同じような裁判で三菱マテリアル(戦時中は三菱鉱業)などが判決に従って中国人原告に話し合いを持って補償したが、そのときの日本政府は、その判決に異を唱えなかった。今回とは、どこが違うのだろうか。それなのに今回、新聞各紙は当時の「三菱マテリアルのやり方」を取り上げてもいない。

 「新聞の右傾化」と言ってしまえば、そうなのかもしれないが、少なくとも政府の韓国政府に対する高圧的な物言いについては「三権分立」を踏まえる冷静な判断があるべきだった。

 韓国では、朴槿恵政権の際、「徴用工訴訟」を先送りした最高裁の前判事2人に対してソウル中央地検が職権乱用などの容疑で逮捕状を出した(その後、ソウル中央地裁が棄却)。ソウル中央地検は「政権の意向をくんだ先送り」は犯罪であると主張した。これが「三権分立」の基本ではないか。日本の司法は見習うべきで、マスコミも「三権分立」についてもっと論じるべきだろう。

白垣詔男

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
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2019年01月02日

【メディア気象台】 11月から12月=編集部

◇メディア女性主催でセクハラ法規制求める集会

セクシュアルハラスメントの防止に向けた法整備を考える集会が8日、衆議院第一議員会館で開かれた。セクハラ禁止を明記した法律がないため、被害救済が難しい現状が報告され、法規制を求める声が相次いだ。集会は、4月に前財務次官のセクハラ問題をきっかけに発足した「メディア女性ネットワーク」(WiMN)が主催。市民や国会議員ら約170人が参加した。(「東京」11月9日付)

◇ニュース見聞き「民放で」が最多

ニュースを見聞きする頻度が最も高いメディアは「民放テレビ」で、1日の平均視聴時間は36.2分だったことが「新聞通信調査会」の調査で分かった。これによると、ニュースを「読む・見聞きする」と答えた割合は民放91.8%、NHK79.8%、新聞70.1%、インターネット66.5%の順だった。(「しんぶん赤旗」11月11日付ほか)

◇イッテQ「祭り」休止〜やらせ疑惑、日テレ社長謝罪

日本テレビの大久保好男社長は15日、バラエティー番組「世界の果てまでイッテQ!」のやらせ疑惑で「疑念や心配を掛ける事態となり、視聴者や出演者など多くの関係者におわび申し上げる」と謝罪した。疑惑が指摘された、海外の祭りに参加する企画は当面休止する。同企画の調査を進めて結果を公表し、責任者を処分する考えも示した。(「毎日」11月16日付ほか)

◇政権寄りTVもCNN支持

米CNNテレビ記者が記者会見での振る舞いを理由に、ホワイトハウスから「出入り禁止」処分を受けた問題で、複数の米メディアは14日、処分撤回を求め提訴したCNNを支持する共同声明を出した。日頃、トランプ政権寄りのFOXニュースも、CNN支持の姿勢を明確にした。共同声明には、AP通信、NBCニュース、ワシントン・ポスト紙、ニューヨーク・タイムズ紙、USAツデー紙などが名を連ねている。報道の自由には「独立したジャーナリストが大統領とその行動にアクセスし、恣意的な理由で拒絶されないことが不可欠」と訴えた。(「しんぶん赤旗」11月16日付ほか)

◇ホワイトハウス、入庁規制を批判〜記者会が文書提出

米CNNテレビが記者のホワイトハウス入庁許可証の回復を求めた訴訟で、ホワイトハウス記者会は15日、大統領には記者の入庁を規制する権限があるとのトランプ大統領の主張は「誤りだ」とする文書を、ワシントンの連邦地裁に提出した。政権の主張を認めれば「危険な判例を作ることになる」と警告した。(「毎日」11月16日付夕刊ほか)

◇サウジ記者殺害、皇太子指示をCIAが断定

サウジアラビアの著名記者ジャマル・カショギ氏の殺害事件で、ワシントン・ポスト紙電子版は16日、複数の関係者の話として、米中央情報局(CIA)がサウジのムハンマド皇太子が暗殺を指示したと断定したと報じた。報道によると、CIAは、皇太子の指示を受けた実弟ハリド駐米大使がカショギ氏にイスタンブールに出向くよう勧めた▽現場責任者が皇太子側近に任務完了と伝えた▽皇太子が権力を掌握する体制―などの情報に基づき、殺害を主導したと結論付けた。(「東京」11月18日付ほか)

◇NHKネット同時配信、法案提出へ

NHKの番組がテレビと同時にネットでも24時間見られる「常時同時配信」の実現に向け、総務省が来年の通常国会に放送法改正案を提出する詰めの調整に入った。NHKは1953年のテレビ放送開始以来、最大の転換点を迎えることになる。「公共放送」ではなくなり、「公共メディア」に生まれ変わるからだ。(「朝日」12月1日付ほか)

◇4K8K放送スタート

超高精細の4K8K衛星放送が1日午前10時、NHKやBS4局などではじまった。現行の放送は2Kで、4Kは4倍、8Kは16倍の画素数を持ち、きめ細かく迫力のある映像が特徴だ。2020年の東京五輪・パラリンピックを見据えた「次世代」の規格として、総務省や放送界が整備を進めてきた。視聴には規格に対応したチューナーやテレビが必要になる。(「神奈川」12月2日付ほか)

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
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2019年01月01日

【メディアウォッチ】 米朝首脳会談 テレビはどう伝えたか 拉致問題に偏りすぎ 中韓からの視点欠く=古川英一

 「ようやく学校に出てきた不良学生みたいな感じ」「何をするのかわからない怖い国」―大学生が語った、北朝鮮に対するイメージだ。世界を驚かせた6月の米朝首脳会談。この会談をテレビはどのように伝えたのかを検証する公開シンポジウムが12月初め、東京の立教大学で開かれた。メディア社会学科の砂川ゼミ、放送を語る会、JCJ、メディア総合研究所の共催だ。

 まず放送を語る会の戸崎賢二さんが、米朝首脳会談の前後2週間のNHKと民放合わせて12のニュース・情報番組をモニターし、比較検証した結果を報告した。

ポイントは米朝会談の歴史的意義がどのように報道されたのかだとしたうえで、戸崎さんは、全体的に見て@会談の意義を大きな歴史的視点でとらえず、限界を強調するなど否定的に見る傾向が目立ったA圧力一辺倒の政策をとる日本政府に対する批判的な報道が少なかったB国内、世界の世論や識者の意見・見解の紹介が少なく、会談を多面的に捉えるうえで十分とはいえなかった、と指摘した。

さらにキャスターや記者にも政府の立場を反映した感覚が染みついているのではないかと述べ、記者に基礎学力と歴史的教養が備わっているのかどうかと、今のメディアの劣化に対しても疑問を呈した。

 続いてTBS「報道特集」キャスターの金平茂紀さんが講演した。日本人の中にある歴史的偏見と過去の清算が未解決であることや、拉致問題や核開発で政府が北朝鮮を仮想敵国化していると前置きし、金平さんは次のように分析した。

「国交がなく戦争も終わっていない米朝が会談をするという、それだけでも驚きの歴史的な首脳会談について日本は歴史的な評価ができない、ある種のバイアスがあるのではないか」

会談当日、金平さんは韓国で取材にしていたが、ソウル駅で市民が一斉に拍手をして喜んでいたのを見て、同じ民族同士の融和の基盤があることを感じ、自分はいままで韓国のことを知らなったと感じたという。

どのように報道するのか、パフォーマンスの裏

側や、真意、何が実質的成果なのか、そこに切り込むには複眼的な思考が必要なのに日本のメディアは拉致問題しか考えず、韓国や中国からの視点でも見るべきだと、指摘した。

シンポは、これだけでは終わらない。後半は金平さんと大学生たちとのパネルディスカッションだ。学生たちと横一列に並びながらの意見交換は、お互いが同じ目線で語り合う親近感を生み出した。

そこで出たのが、冒頭で紹介した学生たちの言葉だった。こうした感想を受けて金平さんは「韓国や北朝鮮については、偏見があり、たとえば慰安婦問題は人間の尊厳に関わるのに、『いい加減にしろよ』と向き合おうとしない、もし逆の立場だったら、なおざりにはできないではないか」と述べた。さらに「若い人たちが活字ではなくネットから情報を取り、ロジカル(論理的)な思考ができなくなっているのではないか」とぴしゃり。締めくくりの一言では学生たちから「ネットではなく足で稼ぐことの大切さを感じた」「北朝鮮について批判するだけではない見方をしていきたい」といった声が。金平さん「5年後にはピョンヤンにもマクドナルドができるのはないか、その日に取材にいければ」……歴史を作り上げいく現場で、私たち一人ひとりが、その証言者なのだと語った。

古川英一

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
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2018年12月14日

【関西支部】 森友疑惑追及でスクープ 「報道の危機」と相澤さん NHKから大阪日日新聞に転職=井上喜雄

 関西支部は11月2日、大阪で「ジャーナリスト講座」を開催した。今回も「新聞うずみ火」との共催で、講師に先頃NHKから『大阪日日新聞』に転職した相澤冬樹さん(56=論説委員)を招いた。
 相澤さんはここ数年NHK大阪で報道記者として活躍しており森友学園問題ではいくつものスクープを飛ばしていたが、なぜ最大手メディアから小地方紙(発行6000部余=ABC協会)へ移ったのか、その間の事情について会場定員を超える65人の参加者を前に語った。

事件記者やりたい
「自分はどちらかというと右翼だと思っている、ただし国粋ではない真正♂E翼だ、これは初任地長州山口の保守的な環境が影響したようだ、右翼は国を憂える、左翼は社会を憂える、私は主義主張にはとらわれない」と切り出した相澤さんは、こう続けた。

「入局は31年前、ずっと事件記者をやりたい、社会部へ行きたいと思っていた。NHK社会部は東京にしかないが、大阪で府警キャップを5年務め、その後東京でBSニュースに関わった。現場への想い断ち切れず、前任地の大阪で記者に戻せと訴え、それが叶ったので再び大阪で記者になった」。
 その後、起こった森友学園事件報道で相澤さんはスクープを連発、籠池泰典理事長にも一番信頼されていたという。
「大阪地検特捜部の捜査がピークを迎えていた6月、異動の内示を受けた。東京で決めたことだ、今後は考査室でがんばれと言い渡されたが、状況からただの異動ではないなと感じた、報道に戻す気はないと判断したのでその時点でNHKを辞めようと決めた」。
「辞めてからテレビや大手全国紙を含め数社に紹介されたが、大阪勤務はさせないとされ森友問題には関われないうえ、自分を買いたたかれた感じもした。だいたい大手を辞めて大手に行っても意味がないので断った」。

副業OKが決め手
 なぜ大阪日日に決めたのかは「以前の取材先が社主の吉岡利固氏(91歳)に渡りを付けてくれた、同氏は紳士服販売を本業としておられるが、鳥取県の『日本海新聞』のオーナーでもある。反骨の人だと思っている。入社にあたって給料はいくらでもかまわない、ただ『日日』だけに書いてもだめなので副業として他の媒体に書くことを認めて欲しい、各地での講演も続けたいと頼んだ。
 あなたの記事で『日日』が有名になり、部数が増えれば結構だと、吉岡氏は同意してくれた。これからは何でも書けると思った」と所属を変えてでも現役の事件記者を選んだ経緯を明らかにした。    

国・大阪府の仕業 
 森友問題に話が及び「もともと森友学園の計画は資金、教員の確保などズサンなものだった。だから大阪府の審議会は一度認可保留にした、ただ教育方針に問題はあるが森友側は変なことはしていない、金が無いので賄賂などもしなかった、土地代が高いので『まけてくれ』と言ったにすぎない、大阪の人ならだれでも言うセリフだ。  
 あれは森友に学校をつくらせたいと思った国と大阪府のしわざだ。事件はこれからだ」と述べた。
 最後に「今は報道の危機、つまり民主主義の危機だ、マスゴミ≠ネどと揶揄され、報道機関への不信もある。記事に至る過程の説明がないからだ、これは大手の中にいればできないが、辞めたらできると思っている」と2時間近い講演を締めた。

 井上喜雄 

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年11月25日号

                  
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2018年12月12日

【月刊マスコミ評・出版】移民議論 開かれた社会の視点を=荒屋敷 宏

 古代ギリシャの哲人ソクラテスが現代日本に現れて、臨時国会で安倍晋三首相を相手に論戦するとしたら、どんな議論を展開するだろうか。こんな荒唐無稽な問いをたてたくなるほど、政府答弁は、ひどい。あちらこちらの現場に行き、「賢者」の「無知」をしつこくあぶり出すソクラテスの議論は、ジャーナリストの仕事に似ていると思う。
 例えば、「移民」の問題。安倍内閣は「いわゆる移民政策はとる考えはありません」としながら、労働力不足のとりつくろいとして、2019年4月からの外国人労働者の受け入れ拡大を図り、財界の要請のもとに外国人労働者の労働基準法や最低賃金を守らない「人権侵害」を放置している。排外主義を主導する安倍内閣が外国人労働者問題に直面しているのは、矛盾というほかない。

 『文芸春秋オピニオン 2019年の論点100』に収められた社会学者の下地ローレンス吉孝氏「本当は世界第4位! 『移民大国』日本の課題」によると、「1990年の入管法改正、1993年の技能実習制度開始により地域住民として暮らす外国人が増加」、「経済協力開発機構(OECD)の外国人移住者統計によれば、加盟国のうち日本はドイツ・米国・英国に次いで第4位」という。
 下地氏は、「問題なのは、受入れの議論において『日本人』(受入れ側)と『外国人』(受入れられる側)の単純な二分法の発想である」と指摘する。

 「世界」12月号が「移民社会への覚悟」を特集している。日本に来た「技能実習生」に対する人権侵害が国内外から「強制労働に近い状態」(アメリカ政府)、「奴隷・人身売買の状態」(国連)と強く批判されている。
 劇作家の平田オリザ氏は、政府の政策には「開かれた多様な社会を指向し、差別のない、誰でも基本的人権の保障された社会をつくっていくという視点が、そこには全く欠けてしまっている」と批判している。

 インタビューや論文よりも重要なのはルポだ。ノンフィクション作家の森健氏が「東京・新宿 日本一多国籍な教室の子供たち」(「文芸春秋」12月号)との力作を書いている。新大久保駅周辺で「町中を飛び交う言葉は中国語、韓国語、タイ語、英語とさまざまで判別不能な言語もある」という。
「判別不能な言語」をなくすことが「開かれた多様な社会」への道でもあるだろう。それでもなお、「いろんな言語の混じった会話」を「時代を開く新しい言葉」と聞き取った森氏のルポに共感した。 

荒屋敷 宏

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年11月25日号
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2018年11月30日

【メディア気象台】 10月から11月=編集部

◇月間視聴率3冠、日テレ途切れる
在京キー局の視聴率で、日本テレビが全日帯の他、夜間のプライム、ゴールデンの三つの主要時間帯区分でトップとなる、「月間3冠王」が9月までの58か月連続で途切れたことが29日、分かった。視聴率はビデオリサーチ(関東地区)の調査。29日にまとまった10月期の視聴率で、プライムとゴールデンでは59か月連続トップだったが、全日帯(午前6時〜翌日午前零時)でテレビ朝日(7.7%)にトップを奪われた。(「東京」10月30日付ほか)

◇海賊版サイト対策「議論集約できず」〜有識者会議上部会合
内閣府は30日、漫画などを無料で読ませる海賊版サイト対策を検討した有識者会議の上部会合を開き、強制的に閲覧を止める「接続遮断(ブロッキング)」の法制化で意見の対立が解消せず「議論をまとめることができなかった」と報告した。正規版の普及促進や海賊版サイトへの広告抑制といった対策をまず実施し、効果を検証する方針を確認した。(「東京」10月31日付ほか)

◇政党CM禁止柱に国民投票法改正案〜国民民主、憲法調査会
国民民主党は30日午前、憲法調査会総会を国会内で開き、憲法改正の是非を問う国民投票を巡り、スポットCMなど政党による広告放送の禁止を柱とする独自の国民投票法改正案を了承した。改正案は企業や団体が国民投票運動に支出する上限を5億円とする規制も盛り込んだ。資金力の差が投票結果を左右するのが狙い。(「東京」10月31日付ほか)

◇KDDIも値下げ検討〜ドコモに続き
KDDIは1日、都内で高橋誠社長が記者会見し、携帯電話料金の「低価格化、シンプル化に向けて積極的に対応する」と値下げ検討を表明した。NTTドコモが通信料金の値下げを発表したのに続いた。KDDIのプランの内容次第では競争が激しくなりそうだ。(「神奈川」11月2日付ほか)

◇記者殺害、「独立した調査」必要〜国連弁務官
国連のバチェレ人権高等弁務官はこのほど、サウジアラビアの記者ジャマル・カショギ氏がトルコ・イスタンブールのサウジ総領事館で殺害された事件について、「独立した、偏りのない調査」が必要だと指摘した。バチェレ氏は10月30日に発表した声明で、カショギ氏の殺害は「記者と政府の批判者に対する図々しい犯罪だ」と批判。「いかなる政治的な配慮も抜きに調査を行うには、国際的な専門家が関与し、証拠と目撃者へ全面的にアクセスできることが求められる」と指摘した。(「しんぶん赤旗」11月2日付ほか)

◇規制しない方針を民放連改めて示す
民放連は2日、憲法改正の国民投票のCM自主規制に関する考え方を発表し、CM量の規制は行わない方針を改めて示した。野党などから出ている「かつて国会で自主規制を約束していた」との指摘に、「自主的、自律的に取り組む旨を強調したもの」と反論した。(「東京」11月3日付ほか)

◇政府最高レベル、記者殺害を指令」トルコ大統領寄稿
トルコのエルドアン大統領は2日、米紙ワシントン・ポスト電子版への寄稿で、サウジアラビア人記者ジャマル・カショギ氏の殺害は「サウジ政府最高レベルからの指令」だったと指摘した。「サルマン国王が命令したとは全く思っていない」とし、言及はないが、ムハンマド皇太子が関与したとの考えを示唆したとみられる。(「毎日」11月4日付ほか)

◇グーグルマップにヘイト表現
インターネット検索大手グーグルの地図サービス「グーグルマップ」で、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の東京都本部(墨田区)や社民党の旧本部所在地(千代田区)が「犯罪者」などと表記されていたことが4日、分かった。何者かが書き込んだとみられるが、専門家は人種差別などをあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)の防止に向け、「グーグル側にも社会的責任がある」と指摘している。(「東京」11月5日付ほか)

◇トランプ米大統領、記者出入り禁止、拡大も
トランプ米大統領は9日、CNNテレビ記者のホワイトハウスへの入庁許可証を停止したのに続き、他の記者にも出入り禁止措置を広げる可能性があると述べた。記者団に「あなたたちはホワイトハウスや大統領に敬意を払わなければならない」と警告した。パリ訪問前にホワイトハウスで語った。トランプ氏は、CNNを筆頭に自身に批判的なメディアを「フェイク(偽)ニュース」「国民の敵」と攻撃を続けている。出入り禁止措置は「報道の自由」の妨害とも受け取られかねず、批判が高まるのは必至だ。(「神奈川」11月11日付ほか)

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年11月25日号
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2018年11月28日

【メディアウォッチ】 地方創生モデル「東峰テレビ」訪ねる 自ら番組つくる住民ディレクター活躍=橋詰雅博

 JCJ全国交流集会の参加者は2日目の 10月20日午後に、福岡県東峰村(村民約2000人)の村営ケーブルテレビ「東峰(とうほう)テレビ」を訪ねた。 

 昨年7月に襲った九州北部豪雨の際、同テレビプロデュサーの岸本晃さん(65)は、被災直後の村や村民をビデオカメラなどで撮影し、ケーブルの断線によりテレビに被災情報を流せなかった代わりにフェイスブックなどで動画や写真を発信した。これがマスコミの目にとまり、取材陣が押し掛け岸本さんが受け入れ窓口となり東峰テレビの岸本≠フ名が県内外に広まった。

 岸本さんはこう振り返る。
「豪雨が村を襲ったのは7月5日。土砂崩れで3人が亡くなった。私が出張先の東京から戻り村に入ったのは6日の夕方。それから15集落をくまなく回り、損壊した家屋や道路の爪痕、避難所にいる村民らを取材した。出向くと『東峰テレビさんがんばっているね』と村民から声をかけられた。また、村民が私の顔を見ると、安心した表情を浮かべるので、励みになった。ケーブルが復旧したのは被災から3週間後でした」

 岸本さんは、熊本県民テレビ出身で、14年間、情報番組のプロデュサーなどを務めた。在職中に地域を盛り上げるため住民にビデオカメラを渡し、その住民が身の回りの暮らしぶりを撮影して番組をつくる「住民ディレクター」方式を提案。
 それを実践するため1996年に独立し、約20年間で全国50以上の地域を回り、住民ディレクター養成講座を開いた。「ボタンを押せば映る」「身体がカメラ」「番組はオマケ」の3原則を掲げた講座は、実践主義に徹した。

 岸本さんの音頭取りで10年11月に開局した東峰テレビにも約100人の住民ディレクターがいる。会見に同席した農家の女性住民ディレクターはこう言った。
「農作業の合間、月に1、2回番組づくりを手伝います。被災当初は、憔悴した村の皆さんの姿をビデオカラで映すのは気が引けましたが、家に住めるようになってから笑顔が戻り、それを撮影できたのはよかったです」

 村民の7割が見ているという東峰テレビは地方創生のモデルケースとして注目されている。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年11月25日号
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2018年11月08日

【メディア気象台】 9月から10月=編集部

◇改憲問う国民投票CM量、民放連は自主規制せず

民放連は20日、憲法改正の是非を問う国民投票に関するテレビやラジオのCMについて、量を自主規制する統一的な基準は設けず、各放送局の判断に委ねる方針を決定した。民放連は理由として、国民投票法が投票日の14日前からCMの禁止期間を設定している点を挙げ「原則自由である国民投票運動において広告放送にのみ厳しい法規制が課されており、既に量的な配慮が行われていると言える」とした。(「東京」9月21日付ほか)

◇被告手記本「知事推奨と誤解招く」と教授ら抗議文

相模原市緑区の県立障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人が殺害された事件で、黒岩祐治知事が植松聖被告(28)=殺人罪などで起訴=の手記などをまとめた本を推奨していると受け止められかねない発言をしたとして、静岡県立大短期大学部の佐々木隆志教授(61)らが21日、県庁を訪れ、発言の撤回と謝罪を求める抗議文を提出した。(「神奈川」9月22日付)

◇「常識を逸脱、偏見の表現」、LGBT巡り新潮社

新潮社は21日、性的少数者(LGBT)を巡る表現で批判を受けている月刊誌「新潮45」10月号の特集について「あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現が見受けられた」と、内容に問題があったことを認める佐藤隆信社長名の談話を発表した。謝罪の文言はなかった。(「神奈川」9月22日付ほか)

◇子ども向け「六法」出版へ

「いじめは犯罪だと知ってほしい」…。刑法の暴行罪や侮辱罪などを易しい条文で紹介する「子ども六法」の出版に向け、一橋大大学院社会学研究科修士課程の山粼聡一郎さん(24)=川崎市=が、インターネット上で出版費用を募っている。山崎さん自身、小学生時代にいじめられた経験があり、「問題解決の一助になれば」と願っている。(「毎日」9月22日付夕刊ほか)

◇国連、SDGsメディア協定〜創設メンバーに朝日新聞ら

すべての国連加盟国が2030年までの実現を目指す「持続可能な開発目標」(SDGs)について、取り組みを強化しようと国連の呼びかけに応じた世界のメディアによる協力推進の枠組み「SDGメディア・コンパクト(協定)」が23日、発足した。創設メンバーとして、朝日新聞を含む、日米中など10か国以上のメディア企業や国際的な連合組織など、計31社・団体が加わった。参加メディアは、国連とSDGs関連コンテンツに協力したり、実現に向け各国が直面する課題の詳報を進めたりする。(「朝日」9月25日付)

◇是枝監督に生涯功労賞

スペインで開かれた第66回サンセバスチャン国際映画祭で23日、映画監督是枝裕和さん(56)が生涯功労賞に当たる「ドノスティア賞」を受賞した。スペイン語圏で最も注目され、欧州でも有数のこの映画祭でアジア人の同賞受賞は初めて。ドノスティア賞は、同映画祭で最も名誉ある賞で、名監督や名優に授与される。(「神奈川」9月25日付ほか)



◇「新潮45」休刊発表

月刊誌「新潮45」が性的少数者(LGBTなど)を「生産性がない」などと否定する自民党・杉田水脈衆院議員の寄稿を掲載し、最新10月号で擁護する特集も組んで批判が集まっていた問題で、発行元の新潮社は25日、同誌を休刊にすると発表した。「部数低迷に直面し、試行錯誤の過程で編集上の無理が生じた」「このような事態を招いたことについてお詫びいたします」と謝罪。老舗出版社が「顔」ともいえる月刊誌の休刊を決めたことは、言論・出版界に大きな波紋を広げそうだ。「(「毎日」9月26日付ほか)

◇英記者ビザ更新、香港政府が拒否

英紙フィナンシャル・タイムズは5日、香港政府が同紙アジア版編集担当のビクター・マーレット記者のビザ更新を拒否したと明らかにした。同記者は香港外国特派員協会の副会長で、同会が8月に香港独立を主張する政治団体・香港民族党の陳浩天代表を招いた講演会で司会を務めており、民族党はこの後、香港政府により活動禁止を命じられた、このためビザの更新拒否は講演と関連があるとみられる。香港特派員協会は声明を発表し、「言論の自由は法律の保障するところで合理的説明を欠くのであれば当局は関連の決定を取り消すべきだ」と求めている。(「しんぶん赤旗」10月7日付)

◇FB、私的通信流出か〜世界25万人分

米交流サイト大手フェイスブック(FB)の利用者のものとみられる携帯電話番号や、メッセージのやりとりといった個人情報がインターネット上に大量に流出していたことが6日、新たに分かった。情報セキュリティー専門家らの解析によると、世界各国の利用者の個人情報で25万人以上に上るとみられる。(「毎日」10月7日付ほか)

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年10月25日号
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2018年11月05日

【メディアウォッチ】 ネット動画「安倍政権の末路」大反響 FmA配信 アクセス数7万回超=河野慎二

 JCJとマスコミ9条の会共催の集会「安倍政権の末路」のネット配信動画が、過去に例を見ないアクセスを記録、10月についに7万回を超えた。 

この集会はジャーナリストの青木理氏と杉尾秀哉参院議員(元TBSニュースキャスター)、砂川浩慶立教大教授を招き7月に開いたもので、「自由メディア(FmA)」が8月中旬、ユーチューブで全国に発信した。

プロバイダー仰天

集会などの動画は、通常アクセス数はそれほど伸びないが、今回はケタが違った。配信直後に3万件を超えるアクセスが殺到した。瞬時ではあったが、ネット画面に「データに間違いがある恐れがあります」という赤文字の表示が流れた。プロバイダーにもサプライズのアクセス急伸だった。

動画を見た人たちが友人や知人に拡散し、視聴者が増えた。アクセスは10月も衰えることなく続伸、23日には7万703回に達した。

 配信への反応は、ほぼ2対1の比率で「いいね」が大きく上回った。ネトウヨからの罵詈や雑言も飛び交ったが、安倍退陣を求めるアクセスの底堅い伸びは雑音を圧倒した。

決め手はテーマだ

なぜ爆発的にアクセスが増えたのか。

まず、「安倍政権の末路」というテーマ設定が、タイムリーだった。

森友・加計疑惑では首相の信頼は失墜した。

 外交でもトランプ米大統領に従属するばかりで、報道と国会などの現場で安倍政治をウオッチしている青木、杉尾、砂川3氏からは「怒りのマグマが一気に噴き出す可能性がある」(青木氏)、「安倍氏が自民党総裁に3選でもレームダック化は必至」(杉尾氏)などと、核心に迫る発言が相次いだ。

 3氏は、新聞、テレビなどメディアの問題にも言及した。日本ではメディアが分断され、安倍政権に好都合な状況となっている。

 モヤモヤ感を打破

それでも、森友学園を巡る朝日のスクープを例示し「ジャーナリズムはそんなに弱くはなっていない」(青木氏)との指摘があった。

改ざん、隠蔽、虚偽答弁の安倍政治に対する怒りは爆発寸前なのに、退陣に追い込めない、そうしたモヤモヤ感を打ち払うような3氏の分かりやすい議論に動画の再生回数がはね上がった。

 とりわけ女性のアクセスが通常の12%から21%に倍近く増えた。

「この番組を見ることが出来てラッキーです。うんざりする日が続いたので」という声が寄せられている。

 市民は、権力に「忖度」しない報道を切実に求めているのだ。7万回を超えるアクセスは、そのことを強く示している

河野慎二

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年10月25日号
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2018年11月03日

【メディアウォッチ】 非民主的で無責任なITメディアの改革急げ=鈴木賀津彦

 メディア・リテラシー教育の実践的な研究者として世界的に著名な英国のデイビット・バッキンガム氏が来日し、法政大学市ケ谷キャンパスで10月6日、「『デジタル資本主義』時代のメディア・リテラシー教育」をテーマに講演した。同大学図書館司書課程が主催、JCJなどが共催した。教員や図書館司書、研究者やジャーナリスト、学生ら約100人が参加した。

 バッキンガム氏は講演で、フェイスブックやグーグルなどの巨大IT企業の商業主義的な独占支配のもとにあるインターネットの現状から、デジタルの夢は悪夢に変わりつつあると強調。「サイバーユートピア主義は終焉した」と説明した。
 そこで起きているフェイクニュースやネットいじめや「中毒」、そしてクリックベイドなどが横行する現状を、単なる症状ではなく根源にある問題を見る必要があると解説。規制に抵抗する巨大IT企業が代替えとして示す「メディア・リテラシー」やファクトチェッカーなどの技術的解決策など、断片化された「手っ取り早い」解決ではうまくいかないと批判した。
 「私たちが必要としているのは、フェイクニュースか否かをはっきりさせるための単純なチェックリストなどではなく、それらのメッセージを載せるメディアがいかに機能しているのか、経済的な次元だけではないその仕組みを、より深く批判的に理解することなのだ」と述べる。
 では、どうすればいいのか。まず「インターネットを、水や空気のように私たちにとって欠くことのできない公共事業と認めること。それが民間企業によって運営される場合に、厳正な規制と説明責任が求められ、商業的独占が生じないよう防止策や独占企業の解体がなされるべきだ」とバッキンガム氏は主張する。

 次に「グーグルやフェイスブックのような企業は、そのインフラに載るコンテンツを誰が作っていても、メディア企業とみなされるべきだ」とする。現在、インフラを提供するだけの技術的企業であり、中立的な媒介事業者だと振る舞い、流通するコンテンツに対してはいかなる編集責任も持たないと主張しているが、編集責任を持たせ、ヘイトスピーチやハラスメント発言など、既存のメディア規制の対象にしようと訴える。
 第三は個人情報の利用の問題だ。多くの人は利用規約に同意のチェックをすることが何を意味するのか、ほとんど分かっていない。「自らの個人情報がどのように集められ、いかに活用されているかについて、知る権利と管理する権利を持つべきである」とし、「メディア・リテラシーは人々に対して、変革を求めることこそを教えなければならない」と訴えた。
 バッキンガム氏は広島市などでも講演、福島の原発被災地などを視察した。

鈴木賀津彦

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年10月25日号
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2018年10月03日

《月間マスコミ評・新聞》自民総裁選にみる「国民不在」=白垣詔男


 「党首選はるかに遠く民の声」―これは西日本9月5日の朝刊に載った読者による「ニュース川柳」だ。正に今回の自民党総裁選は「国民不在」だった。総裁選びがそのまま「首相選び」に直結するので、国民、読者に視点を定めた報道が必要だったが、その視点は極めて少なかった。
 
 この点を指摘した社説は9月4日の朝日「国民は視野にないのか」と11日の西日本「国民に開かれた論戦こそ」の2紙だけだった。
朝日は「(その原因は安倍)首相側が、一貫して論戦に後ろ向きな姿勢を示している」と分析、西日本は「内向きの『集票合戦』では意味がない」と訴えた。

 総裁選は9月7日に告示されたものの、北海道地震のため告示から3日間「休戦」、しかも「休戦明け」の10日は両候補が所信表明しただけで、首相はその日の午後、ロシアに出掛けた。首相帰国の14日まで論戦はなく事実上の「休戦」となった。首相は「論戦に後ろ向き」というより論戦から逃げたとしか思えなかった。首相が不在で総裁選も盛り上がらなかった。
 
 少ない「選挙論戦」を補うように毎日は告示前の4日から「論点/争点」と題して総裁選に向けて4回の連載を展開。「アベノミクスに功罪」「米中との溝 どう対処」「9条改憲 内輪の論理」「政治主導 揺らぐ理想」と、「丁寧に説明する」と言いながらほとんど話さない安倍首相に代わって「遠い民の声」を意識して、読者に問題点を掘り下げた。「安倍政治」をどう読むか、積み残した多くの懸案に対して安倍首相が、どう立ち向かうのか立ち向かわないのか、その指摘とも言えた。
 
 毎日は先の通常国会閉会後にも「棚上げの問題群 点検 通常国会」と題して6回連載した。「森友文書改ざん問題」「加計学園問題」「日報放置・議員罵倒」「働き方改革法」「カジノ・参院6増」「相次ぐ失言・失態」と、いまだに解明されていない「問題群」を取り上げ、事実上の「安倍政治批判」を繰り広げた姿勢は評価される。
 
 一方、読売は「総裁選 問われるもの」と題して8月28日から9月6日まで自民党幹部、元幹部を登場させて6回連載したが、いずれも視点は国民側にはなく正に「自民党の内向きの姿勢」の印象が強かった。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年9月25日号


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2018年08月01日

<月間マスコミ評・新聞>オウム報道「闇」の強調には疑問=六光路弦

 一連のオウム真理教事件で死刑が確定していた教団幹部13人のうち、松本智津夫(教祖名・麻原彰晃)ら7人の刑が7月6日、執行された。教祖の公判は1審で終結し、無差別テロを起こした理由や動機を自ら法廷で語ることはなかった。だからだろう、新聞各紙の報道には多かれ少なかれ「闇」や「謎」を強調するトーンが目についた。7日付朝刊で東京新聞は1面トップに「オウム真相 闇残し」と取り、朝日新聞は社説で「根源の疑問解けぬまま」と掲げる、といった具合だ。
 
 本当にそうだろうか。教祖は口を閉ざしたかもしれないが、教団幹部の中には洗脳が解け、悔悟の念とともに知りうる限りのことを話した者も少なくない。「闇」や「謎」と呼ぶほどのものは残っていないとも思える。
 
 地下鉄サリン事件からでも23年もの時間が経ち、直接事件を知らない世代が増えている。「闇」ばかりが強調されると、いずれは「事件は国家権力による謀略だった」などという陰謀論が広まらないとも限らない。メディアは今後、何が分かっていないかを強調するよりも、分かっていることを語り継ぎ、再発防止につなげるべきだ。
 
 「闇の中」なのは大量処刑の方だ。13人のうちなぜこの7人なのか、なぜこの時期なのか。記者会見した法相は回答を拒否。国民に知らせる必要はないと言わんばかりだ。死刑は究極の国家の強権発動であることを見せつけた。執行の内幕を暴くは報道の課題だ。
 
 各紙とも事件を振りかえる特集記事も掲載したが、捜査のありようを再検証する視点が乏しいように感じた。地下鉄サリン事件の発生で、後手に回った警察当局の捜査は「オウム狩り」とも呼ぶべき苛烈さだった。教団信者なら、マンション駐車場に車を止めれば「住居侵入」、カッターナイフ所持なら「銃刀法違反」で現行犯逮捕。平時なら批判を免れない手法に、新聞も社会も表立って異議を唱えなかった。
 
 今日、「オウム真理教」の代わりに「工作員」でも何でもいい。「社会が攻撃を受ける」と喧伝されれば、同じように人権侵害が起きないだろうか。教祖らの死刑執行は、当時の自らの報道も含めて総括を試みるいい機会だったが、そうした記事が見受けられなかったのは残念だ。次の機会に期待したい。   
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