安倍晋三元首相が選挙活動中に凶弾に倒れた事件から1年。安倍政治は何を残したのか。
ほとんどのニュース番組が、追悼を意識しながら、テレビ報道を委縮させた張本人に対して、今なお忖度した内容がほとんどだ。その中でも、9日のTBS「サンデーモーニング」では、番組冒頭と「風をよむ」で「安倍元総理 死去から1年」を特集した。まずは、旧統一教会と政治の問題にふれ、パネリストの寺島実郎氏が、この団体の本質である反日性を訴え「不思議なのは、安倍元首相のように愛国だとかナショナリズムを語る人たちが、反日を教義とする団体と手を組んでおり、日本人の財産が海外に毎年、数百億円送られている」と斬り込んだ。
寺島氏は「風をよむ」でも安倍元首相の外交と経済について「ロシアのクリミア併合という2014年が重要で、日本だけが先進国のなかでプーチンを黙認した。それがプーチンを増長させた。アベノミクスではデフレからの脱却を目指して金融をじゃぶじゃぶにしてデフレ脱却しようという政策を日銀まで動かした。その結果が円安で日本の通貨の国際価値が半分になってしまった。
弁護士の三輪記子氏は、「政権批判が個人に対する悪口みたいに、誹謗中傷のようにとらえられてきた10年。去年、民主主義の危機というのを銃撃事件で感じたが、実は民主主義の危機はもっと前から存在していた。最近の入管法改正にしても、いくら反対しても、声をあげても届かない。無力感を感じる。これを議論しても無駄じゃないかなと思わされてしまう閉塞感がある」と強権的とも言われた安倍政権の問題点を指摘した。
TBSの松原耕二氏は、「安倍さんは強大な権力を持ったことで異論を封じるような面があった。亡くなったあと別の意味でモノが言えなくなっている。安倍政治の功罪の罪の部分をきちんと見つめることなしに志を継ごうじゃないかというのは物凄く危うい」と、「罪」を強調した。
その「罪」を羅列すると、特定秘密保護法、安全保障関連法、共謀罪を次々と制定。森友学園疑惑では、赤木俊夫氏が自殺。加計学園疑惑で「国家戦略特区」の制度を悪用し、570億円の国費を投入。「桜を見る会」で自身の選挙活動に国費を濫用。伊藤詩織さんがアベ友の山口敬之氏から性的暴行を受け、それを隠ぺい。メディアへの言論弾圧、格差社会を助長と彼の罪状は限りがない。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年7月25日号
2023年08月08日
2023年08月06日
【月刊マスコミ評・新聞】マイナ保険証で落ち込む内閣支持率=山田明
6月21日、通常国会が閉会した。これからの日本を左右する防衛費財源確保法や原発推進法が成立した。岸田政権が進める「大転換」、軍拡・原発回帰の具体化だ。改正出入国管理法とLGBT理解増進法も、骨抜きされて成立。22日の朝日社説は、「世論の賛否が分かれるテーマで、より幅広い合意形成を探る努力はみられず、政権をチェックする立法府の責務が果たされたとは、到底言えない」と指摘する。
与党の拙速な国会運営だけでなく、日本維新の会と国民民主党の対応には、野党の本分にもとる点があったと批判。「与党の補完勢力とみられても仕方あるまい」と。両党は岸田内閣不信任案にも反対した。
維新は野党第一党を狙うが、改憲や軍拡(核共有)などでは、自民の煽動役を果たしている。ロイター通信が6月29日電で、維新の馬場代表を「ポピュリスト」と紹介。維新という政党の本質について、国内メディアもシビアに伝えるべきではないか。
岸田政権の支持率は急激に落ち込んでいる。毎日6月19日によると、支持率は33%で、1ヶ月で12ポイント下落。岸田首相長男の「忘年会問題」もあるが、マイナンバートラブルが影響しているようだ。
とりわけ現行の保険証が来秋に廃止されることが混乱に拍車をかけている。読売6月7日社説も「マイナ保険証の見直しは、今からでも遅くはない。トラブルの原因を解明し、再発防止に努めるのが先決だ。当初の予定通り、選択制に戻すのも一案だろう」と指摘。医療機関の混乱を回避し、国民皆保険制度を維持させるためにも、現行保険証の廃止はやめるべきだ。
6月23日の沖縄慰霊の日。玉城デニ―知事の「平和宣言」に注目した。岸田政権のもとで、とりわけ南西諸島への自衛隊基地強化が急速に進んでいる。沖縄が再び戦場になるのではと、不安の声が高まっている。平和宣言では、「沖縄県が築いてきたネットワークを最大限に活用した独自の地域外交を展開し、同地域における平和構築に努めてまいります」と述べた。平和を求める地域外交が、「新しい戦前」にならないためにも欠かせない。
沖縄に自衛隊配備、もっと伝えてという朝日「声」を本土メディアに伝えたい。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年7月25日号
与党の拙速な国会運営だけでなく、日本維新の会と国民民主党の対応には、野党の本分にもとる点があったと批判。「与党の補完勢力とみられても仕方あるまい」と。両党は岸田内閣不信任案にも反対した。
維新は野党第一党を狙うが、改憲や軍拡(核共有)などでは、自民の煽動役を果たしている。ロイター通信が6月29日電で、維新の馬場代表を「ポピュリスト」と紹介。維新という政党の本質について、国内メディアもシビアに伝えるべきではないか。
岸田政権の支持率は急激に落ち込んでいる。毎日6月19日によると、支持率は33%で、1ヶ月で12ポイント下落。岸田首相長男の「忘年会問題」もあるが、マイナンバートラブルが影響しているようだ。
とりわけ現行の保険証が来秋に廃止されることが混乱に拍車をかけている。読売6月7日社説も「マイナ保険証の見直しは、今からでも遅くはない。トラブルの原因を解明し、再発防止に努めるのが先決だ。当初の予定通り、選択制に戻すのも一案だろう」と指摘。医療機関の混乱を回避し、国民皆保険制度を維持させるためにも、現行保険証の廃止はやめるべきだ。
6月23日の沖縄慰霊の日。玉城デニ―知事の「平和宣言」に注目した。岸田政権のもとで、とりわけ南西諸島への自衛隊基地強化が急速に進んでいる。沖縄が再び戦場になるのではと、不安の声が高まっている。平和宣言では、「沖縄県が築いてきたネットワークを最大限に活用した独自の地域外交を展開し、同地域における平和構築に努めてまいります」と述べた。平和を求める地域外交が、「新しい戦前」にならないためにも欠かせない。
沖縄に自衛隊配備、もっと伝えてという朝日「声」を本土メディアに伝えたい。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年7月25日号
2023年07月08日
【月刊マスコミ評・新聞】なぜ本人が釈明しないのか=白垣詔男
岸田文雄首相は首相秘書官の長男・祥太郎を6月1日付で更迭した。5月25日に首相は長男を「厳重注意」して、事態を鎮静化しようとしたが、G7広島サミットで上向きだった支持率が下がり始めると、一転、「更迭」を決めた。
これらの経緯は、週刊文春が報じてから動き出したもので、当初は首相の動きが鈍く、これまた、いつも批判されている「決断の遅い岸田首相」丸出しの経過をたどった。
この間、翔太郎はマスコミの前に一切姿を見せず、「後始末の経過説明」はすべて父親の首相が当然のように果たした。
33歳にもなっている大人が、自分の後始末をすべて親任せというか、子供が親から庇護を受けているように、翔太郎は姿を見せず、本人からの弁明や謝罪は聞かれずじまい。
子供にこんな甘い岸田家だから、1月の首相外遊の際、随行した翔太郎が公用車でロンドン見物をしたのも今回の異常な行動も、翔太郎は許されると思ったのか。そこには権力を持てば何をやっても許されるというおごりが感じられる。
この問題を全国紙は朝日を除いて社説で取り上げた。5月30日に毎日「公私混同のけじめは当然」と先鞭を付けると翌31日には「地位の私物化を猛省せよ」(西日本)、「重責を担う自覚を欠いていた」(読売)、「子供じみた行動 情けない」(産経)と、いずれも翔太郎の行動を非難している。
この中で、産経だけが「報道陣を前に自らの言葉で謝罪すべきである」と翔太郎本人に向けて謝罪を要求した以外は、どこの新聞はじめ他のマスコミには、こうした「本人に向けた主張」は見られなかった。翔太郎が姿を見せないで父親の首相が弁明すれば、それでいいと考えたのだろうか。
大半の論説担当はじめ政治担当記者の問題意識も「子供に甘い父親」が当たり前と思っているのか。それとも、こうした「不祥事」で当事者は姿を見せなくてもいいと考えているのか、どう考えても腑に落ちない。
首相になった当初は「私は聞く耳を持つ」と胸を張っていた岸田だったが、こうした世間の常識さえもわきまえていない今回の翔太郎に対する父親としての一件は、「国民の声を聞く」というのが単なる念仏だったのではないかと疑いを深める。(敬称略)
これらの経緯は、週刊文春が報じてから動き出したもので、当初は首相の動きが鈍く、これまた、いつも批判されている「決断の遅い岸田首相」丸出しの経過をたどった。
この間、翔太郎はマスコミの前に一切姿を見せず、「後始末の経過説明」はすべて父親の首相が当然のように果たした。
33歳にもなっている大人が、自分の後始末をすべて親任せというか、子供が親から庇護を受けているように、翔太郎は姿を見せず、本人からの弁明や謝罪は聞かれずじまい。
子供にこんな甘い岸田家だから、1月の首相外遊の際、随行した翔太郎が公用車でロンドン見物をしたのも今回の異常な行動も、翔太郎は許されると思ったのか。そこには権力を持てば何をやっても許されるというおごりが感じられる。
この問題を全国紙は朝日を除いて社説で取り上げた。5月30日に毎日「公私混同のけじめは当然」と先鞭を付けると翌31日には「地位の私物化を猛省せよ」(西日本)、「重責を担う自覚を欠いていた」(読売)、「子供じみた行動 情けない」(産経)と、いずれも翔太郎の行動を非難している。
この中で、産経だけが「報道陣を前に自らの言葉で謝罪すべきである」と翔太郎本人に向けて謝罪を要求した以外は、どこの新聞はじめ他のマスコミには、こうした「本人に向けた主張」は見られなかった。翔太郎が姿を見せないで父親の首相が弁明すれば、それでいいと考えたのだろうか。
大半の論説担当はじめ政治担当記者の問題意識も「子供に甘い父親」が当たり前と思っているのか。それとも、こうした「不祥事」で当事者は姿を見せなくてもいいと考えているのか、どう考えても腑に落ちない。
首相になった当初は「私は聞く耳を持つ」と胸を張っていた岸田だったが、こうした世間の常識さえもわきまえていない今回の翔太郎に対する父親としての一件は、「国民の声を聞く」というのが単なる念仏だったのではないかと疑いを深める。(敬称略)
2023年06月28日
【月刊マスコミ評・出版】 自民党と公明党 ケンカの底流=荒屋敷 宏
自民党と公明党の選挙協力が解消 されると次の総選挙はどうなるか? 次期衆院選の小選挙区10増10減をめぐり、公明党が東京で自公選挙協力を解消したことが政界に激震を引き起こしている。
『週刊ポスト』6月18日号は、内部資料スクープ入手と銘打って、「『創価学会票』消滅で落選危機の自民議員20人」との記事を掲載した。
同誌が入手したのは、自民党選挙対策本部が分析した「第49回衆議院議員総選挙結果調」の表題がある164ページの資料だ。全国289選挙区で公明党依存度≠ェ最も高かったのは、東京都八王子市を主な選挙区とする東京24区だった。東京24区選出の萩生田光一自民党政調会長は、同党の東京都連会長で、4万3736票も公明党に依存しており、次期は「接戦」となる確率が高いという。八王子市は、創価大学や創価学会東京牧口記念会館、東京富士美術館など学会の施設が多い。激戦の沖縄3区、島尻安伊子衆院議員も3万9091票を公明党に依存しており、次期は「落選危機」という。
『サンデー毎日』6月18日号では、鈴木哲夫氏が「自民党とケンカした公明党の深謀 震源地は東京より大阪」と指摘している。東京で自民と公明がもめるのは「いつものこと」らしい。舞台裏は、公明が大阪で日本維新の会に敗れる可能性があるため、東京で議席を一つ確保したいというのが今回のケンカの発端だという。公明党にとって、総選挙の前哨戦で敗れたかたちとなったから、面白かろうはずがない。
党利党略に明け暮れる公明党の党勢の衰えには、長期にわたって賃金が上がらず、経済成長をしない中、決して裕福とは言えない創価学会員にも消費税増税や社会保険料値上げ、憲法9条破壊の軍備拡大を押しつけてきたツケが回ってきたというべきかもしれない。
同じ『サンデー毎日』誌に掲載された「『国民負担率』48% 稼ぎの半分がブンどられる増税ビンボーから脱出する家計再建の秘策」の記事を公明党支持者はどんな思いで読むだろうか?
国民の所得に占める税金や社会保障の割合である「国民負担率」は、47・5%(2022年度)になる見込みだと財務省が発表した。「10万円稼いでも手元に残るのは5万2000円。どんなに一生懸命働いても、半分近くは徴収されてしまう」(森永卓郎氏)というから、もはや、江戸時代の年貢だ。
これで岸田政権を支持しろという方が難しい。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年6月25日号
『週刊ポスト』6月18日号は、内部資料スクープ入手と銘打って、「『創価学会票』消滅で落選危機の自民議員20人」との記事を掲載した。
同誌が入手したのは、自民党選挙対策本部が分析した「第49回衆議院議員総選挙結果調」の表題がある164ページの資料だ。全国289選挙区で公明党依存度≠ェ最も高かったのは、東京都八王子市を主な選挙区とする東京24区だった。東京24区選出の萩生田光一自民党政調会長は、同党の東京都連会長で、4万3736票も公明党に依存しており、次期は「接戦」となる確率が高いという。八王子市は、創価大学や創価学会東京牧口記念会館、東京富士美術館など学会の施設が多い。激戦の沖縄3区、島尻安伊子衆院議員も3万9091票を公明党に依存しており、次期は「落選危機」という。
『サンデー毎日』6月18日号では、鈴木哲夫氏が「自民党とケンカした公明党の深謀 震源地は東京より大阪」と指摘している。東京で自民と公明がもめるのは「いつものこと」らしい。舞台裏は、公明が大阪で日本維新の会に敗れる可能性があるため、東京で議席を一つ確保したいというのが今回のケンカの発端だという。公明党にとって、総選挙の前哨戦で敗れたかたちとなったから、面白かろうはずがない。
党利党略に明け暮れる公明党の党勢の衰えには、長期にわたって賃金が上がらず、経済成長をしない中、決して裕福とは言えない創価学会員にも消費税増税や社会保険料値上げ、憲法9条破壊の軍備拡大を押しつけてきたツケが回ってきたというべきかもしれない。
同じ『サンデー毎日』誌に掲載された「『国民負担率』48% 稼ぎの半分がブンどられる増税ビンボーから脱出する家計再建の秘策」の記事を公明党支持者はどんな思いで読むだろうか?
国民の所得に占める税金や社会保障の割合である「国民負担率」は、47・5%(2022年度)になる見込みだと財務省が発表した。「10万円稼いでも手元に残るのは5万2000円。どんなに一生懸命働いても、半分近くは徴収されてしまう」(森永卓郎氏)というから、もはや、江戸時代の年貢だ。
これで岸田政権を支持しろという方が難しい。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年6月25日号
2023年06月08日
【月刊マスコミ評・放送】ETV特集 誰のための司法か=諸川麻衣
4月15日にNHKで放送された『ETV特集 誰のための司法か〜團藤重光 最高裁・事件ノート〜』は、注目すべきスクープ番組であった。
題材は、航空機騒音に苦しむ住民が1969年に公害問題で初めて国の責任を問うた「大阪国際空港公害訴訟」。二審の大阪高裁は1975年に夜間の飛行差し止めを認めたが、最高裁は1981年、住民敗訴の逆転判決を下した。その際、当初最高裁の第一小法廷が担当していた審理が突然大法廷に移され、長年その経緯が謎とされてきた。
番組は、第一小法廷の判事の一人だった團藤重光の個人ノートを読み解き、小法廷は高裁判決維持=飛行差し止め容認の結論を固めていたこと、しかし村上朝一・元最高裁長官が第一小法廷の裁判長に大法廷回付を「勧めて」きたという衝撃的な事実を明らかにした。村上氏は、裁判官出身ながら法務省の要職を歴任、事実上法務省の代理人だったという。元長官の介入は、「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」と定めた憲法七六条三項に違反する疑いのある行為であった。
東大教授出身で刑法学の第一人者だった團藤は、最高裁判事となってからも人権重視の立場から多くの反対意見・少数意見を表明した。その團藤がノートに「この種の介入はけしからぬことだ」と記したことは、事の重大さを端的に物語る。
さらに、大法廷回付後も、一部の裁判官の退任を理由に審理やり直しが3年も続けられ、その間に飛行差し止めを認めない立場の裁判官が増やされた。人事を通して政権の意向が最高裁に持ち込まれたとすれば、近年の常套手段にも通じる。
番組は、この最高裁判決後、司法が被害者救済に消極的になる流れが固まったとの証言で、79〜81年に最高裁で起きた「不正常事態」が今日にまで影響を及ぼしていることも示した。
團藤が遺した資料10万点近くを所蔵する龍谷大学の矯正・保護総合センターは、「團藤文庫研究プロジェクト」の一環としてNHKと共同研究を行った。今回のスクープはその見事な成果だ。
番組は踏み込まなかったが、放送後に前川喜平氏らが指摘したように、国サイドからの異常な介入の背景に在日米軍基地の存在があったであろうことは想像に難くない。憲法が謳う三権分立は空文なのか、日本の真の主権はどこが握っているのか、日米関係の面からの真相解明も強く俟たれる。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年5月25日号
題材は、航空機騒音に苦しむ住民が1969年に公害問題で初めて国の責任を問うた「大阪国際空港公害訴訟」。二審の大阪高裁は1975年に夜間の飛行差し止めを認めたが、最高裁は1981年、住民敗訴の逆転判決を下した。その際、当初最高裁の第一小法廷が担当していた審理が突然大法廷に移され、長年その経緯が謎とされてきた。
番組は、第一小法廷の判事の一人だった團藤重光の個人ノートを読み解き、小法廷は高裁判決維持=飛行差し止め容認の結論を固めていたこと、しかし村上朝一・元最高裁長官が第一小法廷の裁判長に大法廷回付を「勧めて」きたという衝撃的な事実を明らかにした。村上氏は、裁判官出身ながら法務省の要職を歴任、事実上法務省の代理人だったという。元長官の介入は、「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」と定めた憲法七六条三項に違反する疑いのある行為であった。
東大教授出身で刑法学の第一人者だった團藤は、最高裁判事となってからも人権重視の立場から多くの反対意見・少数意見を表明した。その團藤がノートに「この種の介入はけしからぬことだ」と記したことは、事の重大さを端的に物語る。
さらに、大法廷回付後も、一部の裁判官の退任を理由に審理やり直しが3年も続けられ、その間に飛行差し止めを認めない立場の裁判官が増やされた。人事を通して政権の意向が最高裁に持ち込まれたとすれば、近年の常套手段にも通じる。
番組は、この最高裁判決後、司法が被害者救済に消極的になる流れが固まったとの証言で、79〜81年に最高裁で起きた「不正常事態」が今日にまで影響を及ぼしていることも示した。
團藤が遺した資料10万点近くを所蔵する龍谷大学の矯正・保護総合センターは、「團藤文庫研究プロジェクト」の一環としてNHKと共同研究を行った。今回のスクープはその見事な成果だ。
番組は踏み込まなかったが、放送後に前川喜平氏らが指摘したように、国サイドからの異常な介入の背景に在日米軍基地の存在があったであろうことは想像に難くない。憲法が謳う三権分立は空文なのか、日本の真の主権はどこが握っているのか、日米関係の面からの真相解明も強く俟たれる。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年5月25日号
2023年06月03日
【月刊マスコミ評・新聞】民意は性急な改憲を求めていない=六光寺 弦
岸田文雄政権が敵基地攻撃能力の保有を始めとする軍拡路線を進める中で迎えた今年の憲法記念日。全国紙の5月3日付朝刊では、岸田首相の単独インタビューを1面トップに据えた産経新聞の紙面が目を引いた。「改憲へ国民投票 早期に」の見出し。改憲に前のめりの姿勢を隠さない。
産経は社説で、憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」の部分を「完全な誤り、偽り」と決めつけ、戦力不保持を定めた9条2項の削除を求めた。例年にも増して9条改変の主張に鼻息が荒い。
同じく改憲を社是とする読売新聞の1面トップ「憲法改正『賛成』61%」は、憲法を巡る自社の郵送世論調査の結果。改憲に賛成の意見が、2年連続で60%台の高い水準だという。社説では「時代や安全保障環境の変化を踏まえ、最高法規のあり方を建設的に論じ合い、必要な部分については改めなければならない」と主張。9条については「改正の議論は低調だ」と不満をにじませている。
朝日新聞は、敵基地攻撃能力の保有と9条との整合性が議論されていない様子のリポートを、毎日新聞は、岸田首相の本音を探る読み物をそれぞれ1面トップに掲載。社説でも、民主主義の形骸化の危惧や、軍拡に歯止めが必要なことなどをそれぞれ論じた。
紙面の比較では、総じて改憲論が勢いづいているように感じられる。だが、民意は冷静だ。
読売のほか、朝日、共同通信も憲法を巡る郵送世論調査を実施している。改憲の機運が高まっているかを尋ねた共同通信の調査では、「どちらかと言えば」を含めて「高まっていない」との回答が70%に上った。民意が性急な改憲を求めていないことは明白だ。
9条についても、1項と2項に分けて改正の必要性を尋ねた読売調査では、戦争放棄の1項は「改正の必要がない」が75%に上った。戦力不保持の2項は「改正の必要がある」は51%止まり。9条全体について尋ねた朝日調査では「変えない方がよい」が55%を占めた。
ロシアのウクライナ侵攻や北朝鮮のミサイル発射、中国の軍備拡張に社会の不安が増しているのは確かだろう。しかし、危機をあおる論調があっても、民意が早急に改憲を求めているわけではないし、9条を変えることにも慎重だ。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年5月25日号
産経は社説で、憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」の部分を「完全な誤り、偽り」と決めつけ、戦力不保持を定めた9条2項の削除を求めた。例年にも増して9条改変の主張に鼻息が荒い。
同じく改憲を社是とする読売新聞の1面トップ「憲法改正『賛成』61%」は、憲法を巡る自社の郵送世論調査の結果。改憲に賛成の意見が、2年連続で60%台の高い水準だという。社説では「時代や安全保障環境の変化を踏まえ、最高法規のあり方を建設的に論じ合い、必要な部分については改めなければならない」と主張。9条については「改正の議論は低調だ」と不満をにじませている。
朝日新聞は、敵基地攻撃能力の保有と9条との整合性が議論されていない様子のリポートを、毎日新聞は、岸田首相の本音を探る読み物をそれぞれ1面トップに掲載。社説でも、民主主義の形骸化の危惧や、軍拡に歯止めが必要なことなどをそれぞれ論じた。
紙面の比較では、総じて改憲論が勢いづいているように感じられる。だが、民意は冷静だ。
読売のほか、朝日、共同通信も憲法を巡る郵送世論調査を実施している。改憲の機運が高まっているかを尋ねた共同通信の調査では、「どちらかと言えば」を含めて「高まっていない」との回答が70%に上った。民意が性急な改憲を求めていないことは明白だ。
9条についても、1項と2項に分けて改正の必要性を尋ねた読売調査では、戦争放棄の1項は「改正の必要がない」が75%に上った。戦力不保持の2項は「改正の必要がある」は51%止まり。9条全体について尋ねた朝日調査では「変えない方がよい」が55%を占めた。
ロシアのウクライナ侵攻や北朝鮮のミサイル発射、中国の軍備拡張に社会の不安が増しているのは確かだろう。しかし、危機をあおる論調があっても、民意が早急に改憲を求めているわけではないし、9条を変えることにも慎重だ。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年5月25日号
2023年05月14日
【月間マスコミ評・出版】週刊誌は、終わりなのか=荒屋敷 宏
5月末をもって休刊する『週刊朝日』のカウントダウンが始まっている。「2022年12月の平均発行部数は7、4125部」(朝日新聞出版の社告)というから、まだまだ売り上げが期待できる週刊誌である。
「朝日歌壇に詠まれた『週刊朝日』休刊」など、休刊まであと8号の同誌4月14日特大号には、送別会のような企画記事が掲載されている。「この国が軍拡に舵を切る最中『週刊朝日』休刊決まる」(静岡県・白井善夫さん)の短歌が目を引く。
休刊に際した特大スクープを期待したのは野暮だった。同誌同号の「日本の安全保障を支える以外な『会社』」に付された囲み記事「予算増で熱気にわく防衛展示会 中小企業も事業機会に照準」は、千葉・幕張メッセで開かれた防衛産業の国際展示会「DSEI JAPAN」(3月15日〜17日)をたんたんとリポートしている。
岸田政権が大軍拡を打ち出したこともあり、「3日間で2019年に開催された前回約1万人の2倍超となる約2万2千人が来場」「65カ国から250社以上が出展した」という。中小企業のビジネスチャンスの角度からの記事で、この種の軍需産業イベントが市民から「武器見本市」「人殺しの道具の商談」として批判されていることに一言も触れていない。
一方で、吉田敏浩氏による『サンデー毎日』4月16日号の連載記事「昭和史からの警鐘C―松本清張と半藤一利が残したメッセージ」がタイムリーだ。「台湾有事 悪夢のシナリオを暴く!」と題して、「戦場となって大被害を受けるのは日本で、アメリカ本土まで戦場となる可能性は低い。中国も核戦争につながるアメリカ本土攻撃は控えるはずだ。結局、日本が犠牲を強いられる。悪夢の戦争シナリオである」と指摘している。
日米安保条約を通じて日本がアメリカの軍事戦略に組み込まれ、戦争に巻き込まれる危険があるというのが、この間の日本の安全保障問題の核心である。吉田氏の連載は第1回「軍事膨張の果てには悲劇しかない」が昨年7月3日号、第2回「松本清張と半藤一利が警戒した自衛隊クーデター計画 : 『三矢研究』と自民党改憲案の危険な関係」が昨年9月11日号、「第3回「反撃能力とは『戦争のできる国』のこと」が今年1月29日号の掲載だから、正真正銘の「不定期連載」である。
吉田氏の不定期連載を読むかぎり、週刊誌の役割は、捨てたものではない。むしろ、奮起を求めたい。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年4 月25日号
「朝日歌壇に詠まれた『週刊朝日』休刊」など、休刊まであと8号の同誌4月14日特大号には、送別会のような企画記事が掲載されている。「この国が軍拡に舵を切る最中『週刊朝日』休刊決まる」(静岡県・白井善夫さん)の短歌が目を引く。
休刊に際した特大スクープを期待したのは野暮だった。同誌同号の「日本の安全保障を支える以外な『会社』」に付された囲み記事「予算増で熱気にわく防衛展示会 中小企業も事業機会に照準」は、千葉・幕張メッセで開かれた防衛産業の国際展示会「DSEI JAPAN」(3月15日〜17日)をたんたんとリポートしている。
岸田政権が大軍拡を打ち出したこともあり、「3日間で2019年に開催された前回約1万人の2倍超となる約2万2千人が来場」「65カ国から250社以上が出展した」という。中小企業のビジネスチャンスの角度からの記事で、この種の軍需産業イベントが市民から「武器見本市」「人殺しの道具の商談」として批判されていることに一言も触れていない。
一方で、吉田敏浩氏による『サンデー毎日』4月16日号の連載記事「昭和史からの警鐘C―松本清張と半藤一利が残したメッセージ」がタイムリーだ。「台湾有事 悪夢のシナリオを暴く!」と題して、「戦場となって大被害を受けるのは日本で、アメリカ本土まで戦場となる可能性は低い。中国も核戦争につながるアメリカ本土攻撃は控えるはずだ。結局、日本が犠牲を強いられる。悪夢の戦争シナリオである」と指摘している。
日米安保条約を通じて日本がアメリカの軍事戦略に組み込まれ、戦争に巻き込まれる危険があるというのが、この間の日本の安全保障問題の核心である。吉田氏の連載は第1回「軍事膨張の果てには悲劇しかない」が昨年7月3日号、第2回「松本清張と半藤一利が警戒した自衛隊クーデター計画 : 『三矢研究』と自民党改憲案の危険な関係」が昨年9月11日号、「第3回「反撃能力とは『戦争のできる国』のこと」が今年1月29日号の掲載だから、正真正銘の「不定期連載」である。
吉田氏の不定期連載を読むかぎり、週刊誌の役割は、捨てたものではない。むしろ、奮起を求めたい。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年4 月25日号
2023年04月29日
【月刊マスコミ評・放送】安倍政権「負の遺産」が明るみに=岩崎貞明
安倍政権の「負の遺産」がまた一つ明るみに出た。立憲民主党の小西洋之参院議員が放送法の政治的公平性について、安倍政権下で首相官邸側と総務省側でやりとりした内容を示す政府の内部文書とされる資料を公表した。政府は当初、文書の信憑性に疑問を投げかけたが、3月7日に松本剛明総務相が同省の行政文書であることを確認。2014年から15年にかけ、当時の礒崎陽輔首相補佐官らが、番組の政治的公平性をめぐる放送法の解釈について、総務省側に解釈の変更を執拗に求めた過程が詳しく記されている。
2014年と言えば、当時の安倍晋三首相が11月18日夜に生出演したTBS系『NEWS23』で、アベノミクスの効果に疑問を示す街頭インタビューをめぐり、「選んでいる」「おかしいじゃないですか」などと反発。それから間もなく、当時の萩生田光一自民党広報局長名で、NHKや在京民放テレビ5局の報道局長・編成局長あてに、選挙報道の「公平中立」を求めて番組出演者の選定やインタビューの編集まで、番組制作の手法にまで詳細に立ち入って注意を促す文書が示されていた。
今回明らかになった文書は、やはり2014年11月、礒崎補佐官がTBS『サンデーモーニング』を名指しして「コメンテーター全員が同じ主張の番組は偏っているのではないか」と、総務省側に対策を求めたことからやりとりが始まっている。文書では、難色を示す総務省幹部に対して礒崎氏が「局長ごときが言う話ではない」「この件は俺と総理が2人で決める話」「俺の顔をつぶすようなことになれば、ただじゃあ済まないぞ。首が飛ぶぞ」などと、恫喝発言を繰り返している。総務省出身の山田真貴子首相秘書官は「今回の話は変なヤクザに絡まれたって話ではないか」「どこのメディアも萎縮するだろう。言論弾圧ではないか」と懸念を表していたが、結果的には強引に辻褄を合わせるようにして、官邸の横車が通ってしまう形となったのだった。
総務相だった高市早苗経済安全保障担当相は自身の発言部分について「ねつ造」と全面否定、国会論戦は文書の真贋論争に終始している感があるが、問題の本質は政権による放送メディア弾圧の実態である。そもそも、番組の政治的公平性を政府が判断できるとする考え方そのものが、表現の自由を保障した憲法・放送法に抵触するのではないか。ここはやはり、世界の常識である放送の独立行政機関化を改めて議論すべきだ。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年3月25日号
2014年と言えば、当時の安倍晋三首相が11月18日夜に生出演したTBS系『NEWS23』で、アベノミクスの効果に疑問を示す街頭インタビューをめぐり、「選んでいる」「おかしいじゃないですか」などと反発。それから間もなく、当時の萩生田光一自民党広報局長名で、NHKや在京民放テレビ5局の報道局長・編成局長あてに、選挙報道の「公平中立」を求めて番組出演者の選定やインタビューの編集まで、番組制作の手法にまで詳細に立ち入って注意を促す文書が示されていた。
今回明らかになった文書は、やはり2014年11月、礒崎補佐官がTBS『サンデーモーニング』を名指しして「コメンテーター全員が同じ主張の番組は偏っているのではないか」と、総務省側に対策を求めたことからやりとりが始まっている。文書では、難色を示す総務省幹部に対して礒崎氏が「局長ごときが言う話ではない」「この件は俺と総理が2人で決める話」「俺の顔をつぶすようなことになれば、ただじゃあ済まないぞ。首が飛ぶぞ」などと、恫喝発言を繰り返している。総務省出身の山田真貴子首相秘書官は「今回の話は変なヤクザに絡まれたって話ではないか」「どこのメディアも萎縮するだろう。言論弾圧ではないか」と懸念を表していたが、結果的には強引に辻褄を合わせるようにして、官邸の横車が通ってしまう形となったのだった。
総務相だった高市早苗経済安全保障担当相は自身の発言部分について「ねつ造」と全面否定、国会論戦は文書の真贋論争に終始している感があるが、問題の本質は政権による放送メディア弾圧の実態である。そもそも、番組の政治的公平性を政府が判断できるとする考え方そのものが、表現の自由を保障した憲法・放送法に抵触するのではないか。ここはやはり、世界の常識である放送の独立行政機関化を改めて議論すべきだ。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年3月25日号
2023年04月11日
【月刊マスコミ評・新聞】自民党大会に見る論調の大きな差=白垣詔男
これほど同じ日に、自民党に対する新聞論調の姿勢に大きな差が見られるのも、珍しいだろう。2月26日に開かれた自民党大会についての翌27日の朝刊社説だ(毎日だけは28日)。見出しだけを見てもその差が分かる。
朝日「教団問題もう忘れたか」、毎日「自民地方議員と教団 党の実態調査が不可欠だ」とジャーナリズムの基本である「権力の監視」をきちんと踏まえており、自民党には強く「異論」を唱えている。なるほど、安倍晋三元首相が亡くなってから噴出した、旧統一教会が自民党候補の選挙を支援していた問題、それに続く自民党の自浄作業不足≠ノついて、党大会で何の議論もなかったのはおかしいし、それを指摘するのは、まさに正論だろう。
ところが、読売は「政治の安定へ足元見つめ直せ」、産経「保守の矜持で改革進めよ」と、自民党「応援団」を強く前面に打ち出し、自民党に、具体的に耳の痛いことは言わない姿勢がはっきりしている。
読売は「岸田内閣が、防衛力の強化や原子力発電の積極的な活用などを決断してきたことは評価できる」と手放しでほめる。産経は、防衛力強化に「党を挙げて取り組んでもらいたい」と主張。その他、「憲法改正」「皇位の男系(父系)継承」を訴える。
しかし、読売、産経とも、自民党批判は全くない。両紙は、ジャーナリズムを放棄している姿勢に終始しているうえ、こう如実に「自民党にすり寄る姿勢」を見せられると、もう、新聞の役目までも放棄していると確信する次第だ。
一方、朝日、毎日が指摘しているように、自民党大会で演説した岸田文雄首相は、旧統一教会との関係に触れないままだった。自民党各級議員と旧統一教会との関係を語らないというのは、自民党は、自らの「汚点」は、時がたてば国民は忘れると考えているのかとも思いたくなる。
さらに、統一地方選で、旧統一教会問題について忘れたように触れないで、反省なしで選挙運動を展開する候補者ばかりになるのではないかと予想されるところだ。
国民、有権者がなめられていると言っても過言ではなかろう。こうした自民党には猛省してもらわなければならない。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年3月25日号
朝日「教団問題もう忘れたか」、毎日「自民地方議員と教団 党の実態調査が不可欠だ」とジャーナリズムの基本である「権力の監視」をきちんと踏まえており、自民党には強く「異論」を唱えている。なるほど、安倍晋三元首相が亡くなってから噴出した、旧統一教会が自民党候補の選挙を支援していた問題、それに続く自民党の自浄作業不足≠ノついて、党大会で何の議論もなかったのはおかしいし、それを指摘するのは、まさに正論だろう。
ところが、読売は「政治の安定へ足元見つめ直せ」、産経「保守の矜持で改革進めよ」と、自民党「応援団」を強く前面に打ち出し、自民党に、具体的に耳の痛いことは言わない姿勢がはっきりしている。
読売は「岸田内閣が、防衛力の強化や原子力発電の積極的な活用などを決断してきたことは評価できる」と手放しでほめる。産経は、防衛力強化に「党を挙げて取り組んでもらいたい」と主張。その他、「憲法改正」「皇位の男系(父系)継承」を訴える。
しかし、読売、産経とも、自民党批判は全くない。両紙は、ジャーナリズムを放棄している姿勢に終始しているうえ、こう如実に「自民党にすり寄る姿勢」を見せられると、もう、新聞の役目までも放棄していると確信する次第だ。
一方、朝日、毎日が指摘しているように、自民党大会で演説した岸田文雄首相は、旧統一教会との関係に触れないままだった。自民党各級議員と旧統一教会との関係を語らないというのは、自民党は、自らの「汚点」は、時がたてば国民は忘れると考えているのかとも思いたくなる。
さらに、統一地方選で、旧統一教会問題について忘れたように触れないで、反省なしで選挙運動を展開する候補者ばかりになるのではないかと予想されるところだ。
国民、有権者がなめられていると言っても過言ではなかろう。こうした自民党には猛省してもらわなければならない。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年3月25日号
2023年03月13日
【月刊マスコミ評・出版】「安保三文書」は対中国の「戦争国家」づくり=荒屋敷 宏
岸田文雄首相は昨年12月16日、「専守防衛」から「敵基地攻撃」の自衛隊への大転換を閣議決定したのに続けて、2023年1月13日に訪米し、バイデン米大統領との「共同声明」で、対米公約にしてしまった。臨時国会の閉会を狙った暴挙だった。
軍事ジャーナリストの前田哲男氏は、『世界』3月号(岩波書店)で、「岸田政権は〈臨戦化安保〉の実体化に踏み切った」と分析し、日米安保条約を「対中国軍事同盟」へと一変させ、「とりわけ中国に向ける敵意がつよい」と警鐘を鳴らしている。
「安保三文書」とは、@「国家安全保障戦略について」A「国家防衛戦略について」(旧防衛計画の大綱)B「防衛力整備計画について」(旧中期防衛力整備計画)を指す。わざわざ米国の戦略文書と同じ名称にしたのである。
文書@が「反撃能力」を定義し、軍事費GDP2%を明記、文書Aが「防衛目標」の設定と方法、手段を明記、文書Bが10年後の体制を念頭に5年間の経費総額、装備品の数量などを記載している。2023〜2027年度の5年間で軍事費総額43兆円という途方もない税金を投入して大軍拡をめざすというものだ。憲法の平和理念や第9条に違反し、国民への「丁寧な説明」が完全に欠落している。
一方、『正論』3月号(産経新聞社)は安保戦略総点検の特集を組み、慶應義塾大学教授の森聡氏が「リスク高まる世界に向き合う日本 『国家安保戦略読解』(前半)」を論じている。「第二次安倍政権期」の「安全保障政策を刷新する取り組みが、踏襲され進化する形で新戦略が策定されたことが示唆されている」という。森氏は、「国家安全保障戦略」が中国を「脅威」と性格付けていないというが、中国を「我が国と国際社会の深刻な懸念事項」「これまでにない最大の戦略的挑戦」としているのが「国家安全保障戦略」なのである。
『VOICE(ボイス)』3月号(PHP)も「国防の責任」という特集を組み、大軍拡をあおる。兼原信克元国家安全保障局次長によると、秋葉剛男国家安全保障局長が官僚とともに書き下ろし、岸田首相の裁可を得たのが「安保三文書」であるという。この経過から推測できるのは、2014年の特定秘密保護法の施行とともに発足した国家安全保障局の役割である。同局が米国と秘密裡に進めてきた戦争計画の一端が「安保三文書」といえるだろう。アメリカの戦争に巻き込まれる秘密の計画が隠されている。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年2月25日号
軍事ジャーナリストの前田哲男氏は、『世界』3月号(岩波書店)で、「岸田政権は〈臨戦化安保〉の実体化に踏み切った」と分析し、日米安保条約を「対中国軍事同盟」へと一変させ、「とりわけ中国に向ける敵意がつよい」と警鐘を鳴らしている。
「安保三文書」とは、@「国家安全保障戦略について」A「国家防衛戦略について」(旧防衛計画の大綱)B「防衛力整備計画について」(旧中期防衛力整備計画)を指す。わざわざ米国の戦略文書と同じ名称にしたのである。
文書@が「反撃能力」を定義し、軍事費GDP2%を明記、文書Aが「防衛目標」の設定と方法、手段を明記、文書Bが10年後の体制を念頭に5年間の経費総額、装備品の数量などを記載している。2023〜2027年度の5年間で軍事費総額43兆円という途方もない税金を投入して大軍拡をめざすというものだ。憲法の平和理念や第9条に違反し、国民への「丁寧な説明」が完全に欠落している。
一方、『正論』3月号(産経新聞社)は安保戦略総点検の特集を組み、慶應義塾大学教授の森聡氏が「リスク高まる世界に向き合う日本 『国家安保戦略読解』(前半)」を論じている。「第二次安倍政権期」の「安全保障政策を刷新する取り組みが、踏襲され進化する形で新戦略が策定されたことが示唆されている」という。森氏は、「国家安全保障戦略」が中国を「脅威」と性格付けていないというが、中国を「我が国と国際社会の深刻な懸念事項」「これまでにない最大の戦略的挑戦」としているのが「国家安全保障戦略」なのである。
『VOICE(ボイス)』3月号(PHP)も「国防の責任」という特集を組み、大軍拡をあおる。兼原信克元国家安全保障局次長によると、秋葉剛男国家安全保障局長が官僚とともに書き下ろし、岸田首相の裁可を得たのが「安保三文書」であるという。この経過から推測できるのは、2014年の特定秘密保護法の施行とともに発足した国家安全保障局の役割である。同局が米国と秘密裡に進めてきた戦争計画の一端が「安保三文書」といえるだろう。アメリカの戦争に巻き込まれる秘密の計画が隠されている。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年2月25日号
2023年03月06日
【月刊マスコミ評・新聞】社論にこだわらず、民意を謙虚に伝えよ=六光寺 弦
民主主義社会では世論が政治の流れを変えることがある。新聞が世論調査で何を問い、どう報じるかは極めて重要だ。
新聞各紙は1月の世論調査で、岸田文雄政権が閣議決定した安保3文書の改定をそろって取り上げた。今後5年間の軍事費を従来の計画の1.5倍、43兆円に増やすことについて、財源を増税で賄うことへの賛否を問う質問が目立った。結果はいずれも反対が圧倒。朝日新聞調査では反対71%、賛成24%、読売新聞の調査も反対63%、賛成28%といった具合だ。
ただし、財源は二次的なこと。こんな軍拡=軍事費増を認めていいのか、その賛否を直接問うた調査は多くはなく、目にした範囲では朝日、読売、産経新聞=FNN合同の3件だった。
朝日の調査結果は賛成44%、反対49%。読売もほぼ同じで賛成43%、反対49%。これに対して産経・FNN合同調査では賛成50.7%、反対42.8%と、賛成が反対を上回った。
産経は1月24日付1面準トップ記事に、「防衛費増額、賛成50.7%」の見出しを立てた。軍拡推進を社是とする産経としては、「過半数が軍拡支持」は最大限に強調したかったのだろう。
だが昨年10月の調査では、「防衛費の増額」への賛成は62.5%に上っていた。軍拡への支持は昨年秋より減っているのだ。産経の記事はそのことには触れない。
読売の調査でも、昨年12月には軍事費の大幅増に賛成は51%、反対42%だった。その前月、11月の調査では、「日本が防衛力を強化すること」への賛成は68%に達していた。賛否は逆転だが、読売も報道ではそのことを明記しない。読売も社論は軍拡支持だ。
ウクライナ情勢、北朝鮮のミサイル発射、中国脅威論の喧伝といった中で、岸田政権の軍拡路線は当初、世論の6割から7割近くの支持を得た。しかし世論は変わってきている。主な要因が増税への拒否感だとしても、国民の生活の犠牲の上にしか軍拡は成り立たないことや、敵基地攻撃能力を保有することの危うさなどへの理解が進めば、さらに世論は変わる。
新聞は恣意的な報道を慎み、社論にこだわらず、民意を謙虚に伝えるべきだ。さもないと、戦争遂行に加担した愚を繰り返すことになりかねない。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年2月25日号
新聞各紙は1月の世論調査で、岸田文雄政権が閣議決定した安保3文書の改定をそろって取り上げた。今後5年間の軍事費を従来の計画の1.5倍、43兆円に増やすことについて、財源を増税で賄うことへの賛否を問う質問が目立った。結果はいずれも反対が圧倒。朝日新聞調査では反対71%、賛成24%、読売新聞の調査も反対63%、賛成28%といった具合だ。
ただし、財源は二次的なこと。こんな軍拡=軍事費増を認めていいのか、その賛否を直接問うた調査は多くはなく、目にした範囲では朝日、読売、産経新聞=FNN合同の3件だった。
朝日の調査結果は賛成44%、反対49%。読売もほぼ同じで賛成43%、反対49%。これに対して産経・FNN合同調査では賛成50.7%、反対42.8%と、賛成が反対を上回った。
産経は1月24日付1面準トップ記事に、「防衛費増額、賛成50.7%」の見出しを立てた。軍拡推進を社是とする産経としては、「過半数が軍拡支持」は最大限に強調したかったのだろう。
だが昨年10月の調査では、「防衛費の増額」への賛成は62.5%に上っていた。軍拡への支持は昨年秋より減っているのだ。産経の記事はそのことには触れない。
読売の調査でも、昨年12月には軍事費の大幅増に賛成は51%、反対42%だった。その前月、11月の調査では、「日本が防衛力を強化すること」への賛成は68%に達していた。賛否は逆転だが、読売も報道ではそのことを明記しない。読売も社論は軍拡支持だ。
ウクライナ情勢、北朝鮮のミサイル発射、中国脅威論の喧伝といった中で、岸田政権の軍拡路線は当初、世論の6割から7割近くの支持を得た。しかし世論は変わってきている。主な要因が増税への拒否感だとしても、国民の生活の犠牲の上にしか軍拡は成り立たないことや、敵基地攻撃能力を保有することの危うさなどへの理解が進めば、さらに世論は変わる。
新聞は恣意的な報道を慎み、社論にこだわらず、民意を謙虚に伝えるべきだ。さもないと、戦争遂行に加担した愚を繰り返すことになりかねない。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年2月25日号
2023年02月04日
【月刊マスコミ評・放送】地域情報番組がグットデザイン賞に=諸川 麻衣
NHK北海道が夕方の『ほっとニュース北海道』内で毎週木曜に放送している番組『ローカルフレンズ滞在記』が昨年8月、NHKの地方局として初めて「2022年度グッドデザイン・ベスト100」に選ばれた。
同番組は、NHKのディレクターが道内のある地域に1カ月滞在し、番組に応募してきた地元住民(=ローカルフレンズ)に知り合いを紹介してもらいつつ、その土地の魅力や暮らしを発信する企画。『滞在記』と並行して、地域の人が自らの言葉で地域情報を伝える『ローカルフレンズニュース』というコンテンツもある。2021年4月以来、これまでの滞在地は15カ所を超える。
受賞の際の「経緯とその成果」によると、発案者は道内出身でネットメディアなどを運営する佐野和哉氏で、この提案から旅番組を試作したところ好評だったため不定期の番組化が決定。その際、地域の案内役=ローカルフレンズをNHKが選ぶのではなく「公募」制にしたところ、ライター、僧侶、ネイチャーガイド、地域おこし協力隊、ゲストハウスやカフェの店主、主婦、サラリーマンなど多種多様な人が応募、「既存のニュースや番組とは一線を画すディープな情報発信につながった」という。さらに、番組を契機に、町づくりの提案イベントや食と音楽を発信するフェスなど、数多くの地域活動が生まれたそうだ。
審査委員の評価は、「ニュース性の高いトピックを短期間で取材・編集・発信していたこれまでのマスメディアのあり方を問い直し、その地に暮らす方が主体的に番組作りに携わり、観光ではなく日常の風景を丁寧に切り取る番組を協働しながら制作するという意義深いプログラム。マスメディアとしての情報発信・編集・制作力と、ある意味ニッチな地域の情報を掬い上げていく地域住民の力が統合され、地域そのものの活動をエンパワーしていく好例。マスメディアの新たな役割・地域との関わり方も大変示唆的である。」というもの。
プロジェクトが昨年道民三千人にアンケート調査したところ、番組を見た人の50%が「地域により関心を持った」「地域活動を新たに始めた」と回答、特に20代男性の3割が「地域活動を新たに始めた」と答えたという。
読売新聞と大阪府の包括協定などとは対照的な、公共放送が地域「住民」の協働の触媒となる試み、互いに耳を傾け、手を携えることで民主主義を日々涵養してゆく取り組みとして、大いに注目したい。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年1月25日号
同番組は、NHKのディレクターが道内のある地域に1カ月滞在し、番組に応募してきた地元住民(=ローカルフレンズ)に知り合いを紹介してもらいつつ、その土地の魅力や暮らしを発信する企画。『滞在記』と並行して、地域の人が自らの言葉で地域情報を伝える『ローカルフレンズニュース』というコンテンツもある。2021年4月以来、これまでの滞在地は15カ所を超える。
受賞の際の「経緯とその成果」によると、発案者は道内出身でネットメディアなどを運営する佐野和哉氏で、この提案から旅番組を試作したところ好評だったため不定期の番組化が決定。その際、地域の案内役=ローカルフレンズをNHKが選ぶのではなく「公募」制にしたところ、ライター、僧侶、ネイチャーガイド、地域おこし協力隊、ゲストハウスやカフェの店主、主婦、サラリーマンなど多種多様な人が応募、「既存のニュースや番組とは一線を画すディープな情報発信につながった」という。さらに、番組を契機に、町づくりの提案イベントや食と音楽を発信するフェスなど、数多くの地域活動が生まれたそうだ。
審査委員の評価は、「ニュース性の高いトピックを短期間で取材・編集・発信していたこれまでのマスメディアのあり方を問い直し、その地に暮らす方が主体的に番組作りに携わり、観光ではなく日常の風景を丁寧に切り取る番組を協働しながら制作するという意義深いプログラム。マスメディアとしての情報発信・編集・制作力と、ある意味ニッチな地域の情報を掬い上げていく地域住民の力が統合され、地域そのものの活動をエンパワーしていく好例。マスメディアの新たな役割・地域との関わり方も大変示唆的である。」というもの。
プロジェクトが昨年道民三千人にアンケート調査したところ、番組を見た人の50%が「地域により関心を持った」「地域活動を新たに始めた」と回答、特に20代男性の3割が「地域活動を新たに始めた」と答えたという。
読売新聞と大阪府の包括協定などとは対照的な、公共放送が地域「住民」の協働の触媒となる試み、互いに耳を傾け、手を携えることで民主主義を日々涵養してゆく取り組みとして、大いに注目したい。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年1月25日号
2023年02月03日
【月刊マスコミ評・新聞】原発推進 学術会議の独立性を侵す動き=山田明
正月元旦の各紙社説に注目する。ウクライナ戦争が続くなか、テーマは戦争と平和、民主主義が多い。朝日は「戦争を止める英知いまこそ」と訴える。長文の読売社説は、政府が「反撃能力」の保有など、防衛政策の大転換となる安保政策を決定したのは当然だと論じる。
本紙が昨年12月号で報じたように、岸田政権の大軍拡にお墨付きを与えた首相の諮問機関「有識者会議」メンバーに、読売新聞グループの現役社長が名を連ねていた。日経も現役役員がメンバーだ。元旦の読売社説は、有識者会議報告書と同じトーンだ。ここでもメディアの姿勢が鋭く問われる。
毎日1月4日社説は「抑止力」偏重の危うさとして、防衛力の強化ばかりでは、相手の警戒感を高め、際限なき軍拡競争に陥る「安全保障のジレンマ」が待ち受ける。国民生活を守る総合力をいかに高めるかが問われると指摘する。
なにより外交面での粘り強い働きかけが大切だ。日米首脳会談で大軍拡を約束するが、国会での徹底した議論と検証こそ求められる。メディアは戦争をあおるような論調は厳に慎むべきだ。
岸田政権は支持率低迷が続くが、防衛だけでなく、原発政策でもエネルギー問題に便乗し、拙速な政策大転換を強引に進めている。国民の声を聞かず、原発推進勢力の意向に沿うものだ。「事故の惨禍から学んだ教訓を思い起こし、将来への責任を果たす道を真剣に考えるときである」(朝日12月23日社説)。
もう一つ指摘したいのが、日本学術会議の独立性を侵す動きである。政府は任命拒否問題を棚上げして、会員選考に第三者を関与させるなどの組織改革方針を公表した。大軍拡とも関連する動きだ。読売12月31日社説は政府方針に追随して「国費を投じている事実は重い」と、政府が会員の選考手続きに関与することは何ら問題ないと指摘する。戦前の暗い歴史からも、学問の次に来るのはメディアへの介入ではないか。
今春には統一地方選が行われる。旧統一教会と政治、とりわけ自民党との癒着、岸田政権による熟議なき政策大転換にも審判が下されるであろう。
大阪では夢洲へのIRカジノ誘致の是非が争点になりそうだ。長らく続く「維新政治」に対し、住民がどのような判断を示すか注目したい。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年1月25日号
本紙が昨年12月号で報じたように、岸田政権の大軍拡にお墨付きを与えた首相の諮問機関「有識者会議」メンバーに、読売新聞グループの現役社長が名を連ねていた。日経も現役役員がメンバーだ。元旦の読売社説は、有識者会議報告書と同じトーンだ。ここでもメディアの姿勢が鋭く問われる。
毎日1月4日社説は「抑止力」偏重の危うさとして、防衛力の強化ばかりでは、相手の警戒感を高め、際限なき軍拡競争に陥る「安全保障のジレンマ」が待ち受ける。国民生活を守る総合力をいかに高めるかが問われると指摘する。
なにより外交面での粘り強い働きかけが大切だ。日米首脳会談で大軍拡を約束するが、国会での徹底した議論と検証こそ求められる。メディアは戦争をあおるような論調は厳に慎むべきだ。
岸田政権は支持率低迷が続くが、防衛だけでなく、原発政策でもエネルギー問題に便乗し、拙速な政策大転換を強引に進めている。国民の声を聞かず、原発推進勢力の意向に沿うものだ。「事故の惨禍から学んだ教訓を思い起こし、将来への責任を果たす道を真剣に考えるときである」(朝日12月23日社説)。
もう一つ指摘したいのが、日本学術会議の独立性を侵す動きである。政府は任命拒否問題を棚上げして、会員選考に第三者を関与させるなどの組織改革方針を公表した。大軍拡とも関連する動きだ。読売12月31日社説は政府方針に追随して「国費を投じている事実は重い」と、政府が会員の選考手続きに関与することは何ら問題ないと指摘する。戦前の暗い歴史からも、学問の次に来るのはメディアへの介入ではないか。
今春には統一地方選が行われる。旧統一教会と政治、とりわけ自民党との癒着、岸田政権による熟議なき政策大転換にも審判が下されるであろう。
大阪では夢洲へのIRカジノ誘致の是非が争点になりそうだ。長らく続く「維新政治」に対し、住民がどのような判断を示すか注目したい。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年1月25日号
2023年01月06日
【月刊マスコミ評・出版】 統一教会新法を骨抜きにしたのは誰か=荒屋敷 宏
『週刊文春』と『週刊新潮』が創価学会を批判するキャンペーンを始めた。『週刊文春』の見出しを追うと、「統一教会新法を骨抜きにした創価学会のカネと権力 二世たちの告発」(12月1日号)「創価学会が恐れるオウム以来の危機」(同8日号)「「池田大作は3年間近影なし 創価学会の『罪と罰』」(同15日号)。
先んじていたのは『週刊新潮』で、同誌11月24日号で「『長井秀和』が明かす『創価学会』と『政治』『献金』『二世』」を掲載したところ、創価学会側が新潮社とお笑い芸人の長井氏に抗議書(学会代理人・新麹町法律事務所)を送付する騒ぎになった。学会は『週刊文春』にも抗議書を持参し、謝罪と訂正記事の掲載を求めている。
創価学会は、ホームページの基本情報によると、会員は827万世帯、海外会員280万人、聖教新聞の部数は公称550万部とされる。統一教会問題で浮上した高額献金や二世問題は、創価学会と通底すると指摘されてきたが、週刊誌が今頃になって取り上げ始めたのは、なぜか。この問題に関心を持つ読者の市場規模もあるが、それだけではない。
一つは、元創価学会員が声を上げ始めたことだろう。長井氏に続いて、元創価学会本部職員・ライターの正木伸城氏は『週刊新潮』12月1日号の手記で、36歳で創価学会本部を辞めた理由として「公明党を心から応援できなくなったことも一因である」「自分に嘘をつくことに私は耐えられなかった」と書いている。「学会は公称827万世帯という会員数を誇るが、その勢力は衰え続けている」とも。
二つには、統一教会の被害者を救済するはずの新法を骨抜きにしたのが創価学会ではないかとの疑惑があるからだ。新法には、マインドコントロール下での高額寄付の禁止や寄付金の上限規制が盛り込まれなかった。信者からの寄付金を収益の柱とする創価学会が、公明党国会議員を使って新法の骨抜きに奔走した様子を『週刊文春』が伝えている。
週刊誌が創価学会を追及する理由は、「数多の宗教団体とは異なり、政権与党・公明党の支持母体であるからに他ならない」(『週刊文春』12月8日号)とも書いている。
もし、そうであるならば、もっと早くから追及する記事を連打すべきだったのではないか。岸田政権への公明党の影響力の低下にあわせて、記事を出したり、引っ込めたりすることは、ジャーナリズムの道から外れていると言わなければならない。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年12月25日号
先んじていたのは『週刊新潮』で、同誌11月24日号で「『長井秀和』が明かす『創価学会』と『政治』『献金』『二世』」を掲載したところ、創価学会側が新潮社とお笑い芸人の長井氏に抗議書(学会代理人・新麹町法律事務所)を送付する騒ぎになった。学会は『週刊文春』にも抗議書を持参し、謝罪と訂正記事の掲載を求めている。
創価学会は、ホームページの基本情報によると、会員は827万世帯、海外会員280万人、聖教新聞の部数は公称550万部とされる。統一教会問題で浮上した高額献金や二世問題は、創価学会と通底すると指摘されてきたが、週刊誌が今頃になって取り上げ始めたのは、なぜか。この問題に関心を持つ読者の市場規模もあるが、それだけではない。
一つは、元創価学会員が声を上げ始めたことだろう。長井氏に続いて、元創価学会本部職員・ライターの正木伸城氏は『週刊新潮』12月1日号の手記で、36歳で創価学会本部を辞めた理由として「公明党を心から応援できなくなったことも一因である」「自分に嘘をつくことに私は耐えられなかった」と書いている。「学会は公称827万世帯という会員数を誇るが、その勢力は衰え続けている」とも。
二つには、統一教会の被害者を救済するはずの新法を骨抜きにしたのが創価学会ではないかとの疑惑があるからだ。新法には、マインドコントロール下での高額寄付の禁止や寄付金の上限規制が盛り込まれなかった。信者からの寄付金を収益の柱とする創価学会が、公明党国会議員を使って新法の骨抜きに奔走した様子を『週刊文春』が伝えている。
週刊誌が創価学会を追及する理由は、「数多の宗教団体とは異なり、政権与党・公明党の支持母体であるからに他ならない」(『週刊文春』12月8日号)とも書いている。
もし、そうであるならば、もっと早くから追及する記事を連打すべきだったのではないか。岸田政権への公明党の影響力の低下にあわせて、記事を出したり、引っ込めたりすることは、ジャーナリズムの道から外れていると言わなければならない。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年12月25日号
2023年01月05日
【月刊マスコミ評・新聞】平和憲法の理念、もっと強調を=白垣詔男
アフガニスタンで困窮した国民を救うため井戸を掘り灌漑設備を造った福岡市出身の医師、中村哲さん(享年72)が凶弾に襲われ、亡くなって3年たった。アフガニスタンの多くの国民の命を守った大きな功績はいくら賞賛してもしすぎることはない。ただ、中村さんの言動の中で一番印象深かったのは、アフガニスタンで活動を始めてしばらくたったころ、作業車に描いていた「日の丸の旗」を消したことだ。それまでは、日本には、戦争を放棄した憲法があるので「平和の国」だと思われ、中村さんはどこに行っても「戦争をしない平和の国から来た」と笑顔で迎えてくれた。しかし、小泉純一郎政権がイラク戦争や湾岸戦争に自衛隊を派遣すると、「日の丸の信用」がなくなり、中村さんは「日の丸が攻撃対象になる」と作業車から「国旗」を外した。
中村さんはその後、国会で「自衛隊の海外派遣は百害あって一利なし」と証言したが、自民党議員から非難されたことも忘れ難い。
岸田文雄政権は11月29日に防衛、財務両省に、「防衛費を、2027年度に国内総生産(GDP)比で2%まで増やすよう」伝えたのを踏まえて12月5日には岸田首相が浜田靖一防衛相、鈴木俊一財務相と会談して「中期防衛力整備計画(中期防)」で示す2023〜27年度の5年間の防衛費の総額を43兆円規模とするように指示した。
この間、新聞は11月30日の社説で、首相の「防衛費2%指示」について「規模ありきだ」(朝日)、「やはり『数字ありき』だった」(毎日)と批判。朝日は12月2日付でも「『敵基地攻撃』合意へ 専守防衛の空洞化は許せぬ」、毎日も12月3日付で「専守防衛の形骸化を招く」と、政府の防衛政策にさらに批判を強めた。
しかし、憲法についての言及は、毎日が11月30日付で最後のほうに「憲法に基づき、軍事大国とはならず、専守防衛を堅持することが日本の基本方針だ」と触れ、朝日は12月2日付で「戦後、平和国家として再出発した日本の支柱となったのが、平和主義を掲げる憲法であり、それに基づく専守防衛の方針だ」と書いている。
いずれも最後の部分で触れているが、もっと声高に「平和憲法の理念」を訴える主張が肝要ではないか。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年12月25日号
中村さんはその後、国会で「自衛隊の海外派遣は百害あって一利なし」と証言したが、自民党議員から非難されたことも忘れ難い。
岸田文雄政権は11月29日に防衛、財務両省に、「防衛費を、2027年度に国内総生産(GDP)比で2%まで増やすよう」伝えたのを踏まえて12月5日には岸田首相が浜田靖一防衛相、鈴木俊一財務相と会談して「中期防衛力整備計画(中期防)」で示す2023〜27年度の5年間の防衛費の総額を43兆円規模とするように指示した。
この間、新聞は11月30日の社説で、首相の「防衛費2%指示」について「規模ありきだ」(朝日)、「やはり『数字ありき』だった」(毎日)と批判。朝日は12月2日付でも「『敵基地攻撃』合意へ 専守防衛の空洞化は許せぬ」、毎日も12月3日付で「専守防衛の形骸化を招く」と、政府の防衛政策にさらに批判を強めた。
しかし、憲法についての言及は、毎日が11月30日付で最後のほうに「憲法に基づき、軍事大国とはならず、専守防衛を堅持することが日本の基本方針だ」と触れ、朝日は12月2日付で「戦後、平和国家として再出発した日本の支柱となったのが、平和主義を掲げる憲法であり、それに基づく専守防衛の方針だ」と書いている。
いずれも最後の部分で触れているが、もっと声高に「平和憲法の理念」を訴える主張が肝要ではないか。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年12月25日号
2022年12月09日
【月刊マスコミ評・放送】スタジオ美術の職場環境改善を=岩崎 貞明
放送の仕事の一つに「スタジオ美術」がある。舞台・演劇などの世界と同様、なくてはならない「大道具・小道具」の仕事である。番組収録に先立ってスタジオにセットを建て込み、収録が終わればそれを解体する。セットや小道具類は工場や倉庫からトレーラーなどでスタジオに運び込む。
テレビ番組で言えば、「本番」の始まりから終わりまで、華やかな舞台の裏方を支える、地味ながら重要な現場仕事だ。ドラマやバラエティのみならず、ワイドショーやニュース番組でも凝ったスタジオセットがすでに通例になっているし、最近ではインターネットの配信番組でも美術の仕事が欠かせない。
そんなスタジオ美術の作業は、肉体労働の大工仕事だから、というばかりでなく、いま過酷な状況に置かれている。ある意味で末端の「下請け仕事」だから、すべてのしわ寄せが覆いかぶさってくるのだ。
限られた制作予算なのに、番組のディレクターやデザイナーからは手の込んだセットを要求される。美術会社の「営業」と呼ばれる担当者は、予算とデザインを何とかすり合わせるために奔走する。その交渉に時間を取られると、納品までの製作時間が削られる。番組収録の日程に間に合わせるために終電後までの作業になっても、帰りのタクシー代が出ないケースもあるという。
最近は、局側からの発注そのものがギリギリで突貫工事でないと収録に間に合わない「急発注・短納期」の問題が深刻化していて、現場で長時間労働が改善されない要因となっている。本来、急ぎの仕事であれば割増料金を上乗せして支払われてしかるべきだが、現実は作業途中で変更や手直しの要請が局側から出されても、追加の支払いなどがないケースが通例だということだ。
また、現場で働く女性が急激に増加しているのに、女性用更衣室がないか、あっても狭くて使いにくいという問題もある。一度使った美術セットを再利用することを考えても、そのための保管倉庫が整備されていないこともあり、スペース確保が課題となっている。いずれも放送局の責任で対応すべき問題だろう。
映画・演劇関係の労組の集まりである「映演共闘」「舞台美術労協」と民放労連は、共同で在京キイ局や民放連事務局に下請け単価の改善や勤務間インターバルの確保などを毎年要請している。放送局側は受け止めてはくれるものの、改善はなかなか進まない。誰のおかげで番組が出せるのか、今一度考えてほしい。
岩崎 貞明
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年11月25日号
テレビ番組で言えば、「本番」の始まりから終わりまで、華やかな舞台の裏方を支える、地味ながら重要な現場仕事だ。ドラマやバラエティのみならず、ワイドショーやニュース番組でも凝ったスタジオセットがすでに通例になっているし、最近ではインターネットの配信番組でも美術の仕事が欠かせない。
そんなスタジオ美術の作業は、肉体労働の大工仕事だから、というばかりでなく、いま過酷な状況に置かれている。ある意味で末端の「下請け仕事」だから、すべてのしわ寄せが覆いかぶさってくるのだ。
限られた制作予算なのに、番組のディレクターやデザイナーからは手の込んだセットを要求される。美術会社の「営業」と呼ばれる担当者は、予算とデザインを何とかすり合わせるために奔走する。その交渉に時間を取られると、納品までの製作時間が削られる。番組収録の日程に間に合わせるために終電後までの作業になっても、帰りのタクシー代が出ないケースもあるという。
最近は、局側からの発注そのものがギリギリで突貫工事でないと収録に間に合わない「急発注・短納期」の問題が深刻化していて、現場で長時間労働が改善されない要因となっている。本来、急ぎの仕事であれば割増料金を上乗せして支払われてしかるべきだが、現実は作業途中で変更や手直しの要請が局側から出されても、追加の支払いなどがないケースが通例だということだ。
また、現場で働く女性が急激に増加しているのに、女性用更衣室がないか、あっても狭くて使いにくいという問題もある。一度使った美術セットを再利用することを考えても、そのための保管倉庫が整備されていないこともあり、スペース確保が課題となっている。いずれも放送局の責任で対応すべき問題だろう。
映画・演劇関係の労組の集まりである「映演共闘」「舞台美術労協」と民放労連は、共同で在京キイ局や民放連事務局に下請け単価の改善や勤務間インターバルの確保などを毎年要請している。放送局側は受け止めてはくれるものの、改善はなかなか進まない。誰のおかげで番組が出せるのか、今一度考えてほしい。
岩崎 貞明
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年11月25日号
2022年12月07日
【月刊マスコミ評・新聞】沖縄の選挙 報道をていねいに=六光寺 弦
沖縄の過重な基地負担は日本復帰から50年たっても変わらない。負担を強いている日本政府は、選挙を通じて合法的に成り立っている。だから沖縄の基地負担は国民全体の選択であり、だれもが当事者だ。基地を巡り沖縄で起きていること、沖縄の民意は、日本本土でも広く知られなければならない。本土メディアの責任は大きい。
10月23日の那覇市長選で、自民、公明両党推薦の前副市長の知念覚氏が、玉城デニー知事らの「オール沖縄」が支持する元県議で、故翁長雄志元知事の次男の雄治氏を破り初当選した。米軍普天間飛行場の辺野古移設に、雄治氏が反対を訴えたのに対し、知念氏は「国と県の係争を見守る」との立場だった。辺野古移設は双方の主張がかみ合う争点ではなかった。
これで、ことしの県内7市長選でオール沖縄は全敗。懸念されるのは、辺野古に触れなかった自公系候補の立場を「辺野古移設容認」「黙認」などとねじ曲げ「沖縄の民意は辺野古移設を受け入れている」などと主張する言説が流れることだ。
那覇市長選の結果を、東京発行の新聞各紙のうち1面で報じたのは、辺野古移設推進が社論の産経のみ。総合面の関連記事では「米軍基地問題などをめぐる県と市のスタンスにずれが生じ(中略)玉城デニー知事の県政運営に影響を及ぼすのは必至だ」と踏み込んだ。もはや知事は辺野古移設反対を維持できない、と言いたげだ。
他紙は総合面に本記のみ。読売は全文20行、日経は雑報扱いの11行だった。毎日は35行余と幾分長めだが、見出しは「那覇市長に自公系/知念氏、反辺野古派破る」。見出しだけ見た人に、知念氏は辺野古移設推進、容認だと受け取られかねない。
翌日の紙面では朝日が、選挙を振り返り、オール沖縄の今後の展望を探る詳細なリポートを掲載した。民意が辺野古移設容認に変わったことを意味しないことがようやく伝わる。しかし、他紙にそのような報道は見当たらない。
那覇市長選は、引退する現職市長がオール沖縄離脱を表明して知念氏支援に就くなど、複雑で分かりにくい構図があった。それも過重な基地負担のゆえだ。
複雑で分かりにくいからこそ、詳しく、ていねいに報じる必要がある。
六光寺弦
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年11月25日号
10月23日の那覇市長選で、自民、公明両党推薦の前副市長の知念覚氏が、玉城デニー知事らの「オール沖縄」が支持する元県議で、故翁長雄志元知事の次男の雄治氏を破り初当選した。米軍普天間飛行場の辺野古移設に、雄治氏が反対を訴えたのに対し、知念氏は「国と県の係争を見守る」との立場だった。辺野古移設は双方の主張がかみ合う争点ではなかった。
これで、ことしの県内7市長選でオール沖縄は全敗。懸念されるのは、辺野古に触れなかった自公系候補の立場を「辺野古移設容認」「黙認」などとねじ曲げ「沖縄の民意は辺野古移設を受け入れている」などと主張する言説が流れることだ。
那覇市長選の結果を、東京発行の新聞各紙のうち1面で報じたのは、辺野古移設推進が社論の産経のみ。総合面の関連記事では「米軍基地問題などをめぐる県と市のスタンスにずれが生じ(中略)玉城デニー知事の県政運営に影響を及ぼすのは必至だ」と踏み込んだ。もはや知事は辺野古移設反対を維持できない、と言いたげだ。
他紙は総合面に本記のみ。読売は全文20行、日経は雑報扱いの11行だった。毎日は35行余と幾分長めだが、見出しは「那覇市長に自公系/知念氏、反辺野古派破る」。見出しだけ見た人に、知念氏は辺野古移設推進、容認だと受け取られかねない。
翌日の紙面では朝日が、選挙を振り返り、オール沖縄の今後の展望を探る詳細なリポートを掲載した。民意が辺野古移設容認に変わったことを意味しないことがようやく伝わる。しかし、他紙にそのような報道は見当たらない。
那覇市長選は、引退する現職市長がオール沖縄離脱を表明して知念氏支援に就くなど、複雑で分かりにくい構図があった。それも過重な基地負担のゆえだ。
複雑で分かりにくいからこそ、詳しく、ていねいに報じる必要がある。
六光寺弦
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年11月25日号
2022年11月11日
【月刊マスコミ評・新聞】岸田政権 原発回帰を鮮明に= 山田明
憲法違反の安倍元首相「国葬」が国民の批判が渦巻くなかで強行された。自衛隊が目立ち、「アベ政治」を賛美する弔辞が国葬を象徴する。国葬後も「評価せず」が59%。岸田内閣の支持率低下が続き、不支持が初めて半数に達した(朝日10月3日)。
これは国葬強行だけでなく、旧統一教会と自民党との関係が影響している。とりわけ安倍元首相と安倍派の議員らは、教会による選挙支援を含め深刻なものがある。岸田首相の対応にも批判が集まる。政治の信頼を取り戻すためにも、国会での真相究明が待たれる。
円安が続き、物価高に拍車がかかる。実質賃金が低下する中での値上げラッシュで、低所得層ほど生活が苦しくなる。止まらない円安は、アベノミクス離れができないためだ。岸田首相の経済政策に期待できないが7割にのぼる。一方で、政府は防衛費の相当の増額を検討する。北朝鮮による弾道ミサイル日本上空通過が防衛強化の「追い風」との声も漏れてくる。
岸田首相は8月下旬、原発の新増設や建て替えについて検討を進める考えを示した。運転期間の延長も検討する方針だ。原発回帰は岸田政権の既定路線だが(毎日9月6日)、ウクライナ戦争で露わになった原発リスクをどう考えているのか。
日経は9月26日、エネルギー・環境緊急提言を公表し「原発、国主導で再構築を」と述べる。緊急提言は気候危機・再エネだけでなく、政府の原発回帰に呼応した動きでないか。8月18日社説「原発新増設へ明確な方針打ち出せ」で、岸田発言につながる主張をしている。経団連も原発再稼働を評価している。福島原発事故から11年半経つが、原発をめぐる動きから目が離せない。
地域からも問題に迫りたい。IRカジノ計画案が大阪と長崎から申請され、国交省で審査されている。大阪ではIRカジノの是非を問う住民投票を求める直接請求署名が20万筆近く集まったが、大阪府議会で維新などにより否決された。その後も、国が計画を認可しないことを求める大行動が東京で行われた。国会での追及も期待したい。
大阪では、「夢洲IRカジノ誘致差止め訴訟」にも注目が集まる。国ととともに、地方自治体の行政のあり方が鋭く問われている。
山田明
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年10月25日号
これは国葬強行だけでなく、旧統一教会と自民党との関係が影響している。とりわけ安倍元首相と安倍派の議員らは、教会による選挙支援を含め深刻なものがある。岸田首相の対応にも批判が集まる。政治の信頼を取り戻すためにも、国会での真相究明が待たれる。
円安が続き、物価高に拍車がかかる。実質賃金が低下する中での値上げラッシュで、低所得層ほど生活が苦しくなる。止まらない円安は、アベノミクス離れができないためだ。岸田首相の経済政策に期待できないが7割にのぼる。一方で、政府は防衛費の相当の増額を検討する。北朝鮮による弾道ミサイル日本上空通過が防衛強化の「追い風」との声も漏れてくる。
岸田首相は8月下旬、原発の新増設や建て替えについて検討を進める考えを示した。運転期間の延長も検討する方針だ。原発回帰は岸田政権の既定路線だが(毎日9月6日)、ウクライナ戦争で露わになった原発リスクをどう考えているのか。
日経は9月26日、エネルギー・環境緊急提言を公表し「原発、国主導で再構築を」と述べる。緊急提言は気候危機・再エネだけでなく、政府の原発回帰に呼応した動きでないか。8月18日社説「原発新増設へ明確な方針打ち出せ」で、岸田発言につながる主張をしている。経団連も原発再稼働を評価している。福島原発事故から11年半経つが、原発をめぐる動きから目が離せない。
地域からも問題に迫りたい。IRカジノ計画案が大阪と長崎から申請され、国交省で審査されている。大阪ではIRカジノの是非を問う住民投票を求める直接請求署名が20万筆近く集まったが、大阪府議会で維新などにより否決された。その後も、国が計画を認可しないことを求める大行動が東京で行われた。国会での追及も期待したい。
大阪では、「夢洲IRカジノ誘致差止め訴訟」にも注目が集まる。国ととともに、地方自治体の行政のあり方が鋭く問われている。
山田明
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年10月25日号
2022年11月09日
【月刊マスコミ評・出版】右派メディアのアベ礼賛祭り=荒屋敷 宏
統一教会をめぐる『週刊東洋経済』10月8日号と月刊『マスコミ市民』10月号の勇気ある編集に敬意を表したい。「宗教 カネと政治」で37ページにわたり特集を組んだ『週刊東洋経済』の読みどころは、統一教会と関係の深い企業一覧だろう。鮮魚・飲料・置き薬・自動車学校・病院・学習塾…と超多角化経営だ。
外国語教室を営む統一教会関連企業は伊藤忠商事、三菱商事、日本生命保険、電通、三菱UFJ銀行、JR東日本の研修実績があると宣伝している。文化庁が宗教法人と交わした「裏約束」、「LGBTたたき」で一致する統一教会と神社本庁などスクープ満載である。
特集「統一教会と自民党」で事の真相に迫る『マスコミ市民』の島薗進、有田芳生、前川喜平、山口広の各氏へのインタビューは、読み応えがある。島薗氏は、日本からカネを収奪する統一教会を右派メディアが批判できない弱点を突き、月刊『Hanada』や月刊『WiLL』などの雑誌について「困惑していると思います」と指摘している。
右派雑誌の代表ともいえる『Hanada』『WiLL』『正論』は事件後、故安倍晋三元首相を礼賛する特集を掲載し続けている。『Hanada』11月号には「国葬」で開き直る岸田文雄首相と小川榮太郎氏の対談をはじめ、「国葬」反対派は“極左暴力集団”との虚偽を意図的に流した有本香氏、反安倍の国民を「アベガー教」のカルトだと攻撃する藤原かずえ氏、『WiLL』11月号にはアベガーの俗論を徹底粉砕としつつ「旧統一教会の実態は、私は専門家ではないし、わかりません」と腰の引けた阿比留瑠比氏など、確かに、統一教会への困惑を隠せない様子だ。
なかでも『正論』11月号では、岩田清文元陸上幕僚長と島田和久元総理秘書官・前防衛事務次官が対談し、かつて最高指揮官だった安倍氏を追悼している。防衛省・自衛隊にとっての安倍氏の役割を絶賛し、自衛隊を憲法に書き込む「憲法改正」が心残りだったのではないかと偲んでいる。一方で、かつて吉田茂元首相が自衛隊を「日陰者」と呼んだことへの不満を表明している。そのうえで、安倍氏は、吉田氏の「軽武装経済重視」を改めようとしたのだと結論づけている。戦後、「国葬」となった2人の元首相に対する元防衛省関係者の、この態度の違いは何か。「国葬」賛成雑誌の軍国主義礼賛の本音も透けて見えてくるのである。
荒屋敷 宏
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年10月25日号
外国語教室を営む統一教会関連企業は伊藤忠商事、三菱商事、日本生命保険、電通、三菱UFJ銀行、JR東日本の研修実績があると宣伝している。文化庁が宗教法人と交わした「裏約束」、「LGBTたたき」で一致する統一教会と神社本庁などスクープ満載である。
特集「統一教会と自民党」で事の真相に迫る『マスコミ市民』の島薗進、有田芳生、前川喜平、山口広の各氏へのインタビューは、読み応えがある。島薗氏は、日本からカネを収奪する統一教会を右派メディアが批判できない弱点を突き、月刊『Hanada』や月刊『WiLL』などの雑誌について「困惑していると思います」と指摘している。
右派雑誌の代表ともいえる『Hanada』『WiLL』『正論』は事件後、故安倍晋三元首相を礼賛する特集を掲載し続けている。『Hanada』11月号には「国葬」で開き直る岸田文雄首相と小川榮太郎氏の対談をはじめ、「国葬」反対派は“極左暴力集団”との虚偽を意図的に流した有本香氏、反安倍の国民を「アベガー教」のカルトだと攻撃する藤原かずえ氏、『WiLL』11月号にはアベガーの俗論を徹底粉砕としつつ「旧統一教会の実態は、私は専門家ではないし、わかりません」と腰の引けた阿比留瑠比氏など、確かに、統一教会への困惑を隠せない様子だ。
なかでも『正論』11月号では、岩田清文元陸上幕僚長と島田和久元総理秘書官・前防衛事務次官が対談し、かつて最高指揮官だった安倍氏を追悼している。防衛省・自衛隊にとっての安倍氏の役割を絶賛し、自衛隊を憲法に書き込む「憲法改正」が心残りだったのではないかと偲んでいる。一方で、かつて吉田茂元首相が自衛隊を「日陰者」と呼んだことへの不満を表明している。そのうえで、安倍氏は、吉田氏の「軽武装経済重視」を改めようとしたのだと結論づけている。戦後、「国葬」となった2人の元首相に対する元防衛省関係者の、この態度の違いは何か。「国葬」賛成雑誌の軍国主義礼賛の本音も透けて見えてくるのである。
荒屋敷 宏
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年10月25日号
2022年10月11日
【月刊マスコミ評・放送】まだまだ発掘できる戦争の真実=諸川麻衣
この夏の戦争関連番組では、埋もれてきた資料を発掘して歴史の新たな一面を明らかにしたNHKの3作が注目された。
8月8日の『NHKスペシャル そして、学徒は戦場へ』は、学徒出陣の裏面史。学徒は明治以来、「国家の存亡のために欠くことができない存在」とされ、徴兵を猶予されていた。なぜその“特権”が奪われたのか、当時の国や大学の関係者、学徒など約100人への取材から、当初徴兵に反対していた大学側が、軍や世論に押され、遂に屈してゆく過程をまざまざと描いた。
8月15日の『NHKスペシャル ビルマ撤退戦 絶望の戦場〜大東亜共栄圏の最期』は、5年前の『戦慄の記録・インパール』の続編で、インパール作戦が破綻した後、敗戦までのビルマ情勢の変転を描いた。1945年初頭、日本軍はラングーンに向かう英軍とイラワジ川で交戦、大敗した。番組によれば、この無謀な戦いに固執した田中新一参謀長について英第14軍のウィリアム・スリム司令官は、「日本軍指導者には道徳的勇気が欠如しており、自らの失敗を認められない」と書き残していたという。日本の敗北が必至となると、当初独立を求めて日本軍と連携していた若手軍人アウンサンらも日本への反発を強め、遂に日本軍に対して蜂起した。こうしたビルマでの動きから「大東亜戦争」の虚構を暴く力作であった。
8月20日『BS1スペシャル 戦禍のなかの僧侶たち〜浄土真宗本願寺派と戦争〜』は、仏教の戦争協力を取り上げた。浄土真宗本願寺派は2020年、宗派の1万の寺を対象に調査を行った。3800寺から回答があり、従軍僧の日誌や写真などの資料も寄せられた。その調査結果に基づく本番組は、教団が日中戦争を好機としてアジアに進出、布教を進めたこと、また太平洋戦争中も金属回収、学童疎開、戦時動員に協力していたことなどを描いた。それだけでなく、この戦争協力を負の教訓とし、過ちを繰り返すまいと行動する今の僧侶たちの姿も紹介した。
いずれも、これまであまり取り上げられることのなかったテーマや時期を対象とし、生存者の証言や公文書、当事者の日記などの資料に基づいて、事象の背景や関係者の葛藤を生き生きと描き出した。戦争体験者の多くが90歳以上になる中で今後、日記など未発掘の資料の価値は一層高まってゆくだろう。それを活用すればまだまだ知られざる事実を明るみに出すことができるという手ごたえを感じた。
諸川麻衣
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年9月25日号
8月8日の『NHKスペシャル そして、学徒は戦場へ』は、学徒出陣の裏面史。学徒は明治以来、「国家の存亡のために欠くことができない存在」とされ、徴兵を猶予されていた。なぜその“特権”が奪われたのか、当時の国や大学の関係者、学徒など約100人への取材から、当初徴兵に反対していた大学側が、軍や世論に押され、遂に屈してゆく過程をまざまざと描いた。
8月15日の『NHKスペシャル ビルマ撤退戦 絶望の戦場〜大東亜共栄圏の最期』は、5年前の『戦慄の記録・インパール』の続編で、インパール作戦が破綻した後、敗戦までのビルマ情勢の変転を描いた。1945年初頭、日本軍はラングーンに向かう英軍とイラワジ川で交戦、大敗した。番組によれば、この無謀な戦いに固執した田中新一参謀長について英第14軍のウィリアム・スリム司令官は、「日本軍指導者には道徳的勇気が欠如しており、自らの失敗を認められない」と書き残していたという。日本の敗北が必至となると、当初独立を求めて日本軍と連携していた若手軍人アウンサンらも日本への反発を強め、遂に日本軍に対して蜂起した。こうしたビルマでの動きから「大東亜戦争」の虚構を暴く力作であった。
8月20日『BS1スペシャル 戦禍のなかの僧侶たち〜浄土真宗本願寺派と戦争〜』は、仏教の戦争協力を取り上げた。浄土真宗本願寺派は2020年、宗派の1万の寺を対象に調査を行った。3800寺から回答があり、従軍僧の日誌や写真などの資料も寄せられた。その調査結果に基づく本番組は、教団が日中戦争を好機としてアジアに進出、布教を進めたこと、また太平洋戦争中も金属回収、学童疎開、戦時動員に協力していたことなどを描いた。それだけでなく、この戦争協力を負の教訓とし、過ちを繰り返すまいと行動する今の僧侶たちの姿も紹介した。
いずれも、これまであまり取り上げられることのなかったテーマや時期を対象とし、生存者の証言や公文書、当事者の日記などの資料に基づいて、事象の背景や関係者の葛藤を生き生きと描き出した。戦争体験者の多くが90歳以上になる中で今後、日記など未発掘の資料の価値は一層高まってゆくだろう。それを活用すればまだまだ知られざる事実を明るみに出すことができるという手ごたえを感じた。
諸川麻衣
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年9月25日号


