「学者の国会」とも言われる同会議が1949年、独立機関として設立されたのは、滝川事件や天皇機関説事件など、戦前の権力による学術研究や論説への侵害、統制の反省によっている。それゆえに「日本学術会議法」で独立性が保証されている。
今回の問題の「推薦制」は中曽根政権下の1983年に導入されたが、首相による任命は、天皇の首相任命と同様の「形式的任命行為」にほかならない。そのことは当時の国会議事録でも、「法解釈上も政府側が『拒否、干渉しない』仕組み」と明言され、与野党合同で提出した付帯決議も可決されている。
だが今回、加藤官房長官は「法律上、推薦の中から選ぶことになっている」「義務的に任命しなければならないというわけではない」と、すり替えた。
10月2日の野党合同ヒアリングでは内閣府と内閣法制局が、「2019年に合議し、解釈を『確定』させた」と回答したが、解釈変更の有無は答えず、「義務的に任命しなければならないわけではない」と加藤発言をなぞった。
だとすれば、第二次安倍政権7年8カ月の負のレガシー、「その時々の政府の都合で法解釈を変えてしまう」手法が繰り返されている疑いはぬぐえない。今回の任命拒否は、「人事問題ではなく、政治と学術の関係に対する菅政権の政治的介入」に他ならない。菅首相には責任ある説明が求められる。
さらにその後、今年9月にも内閣府が法制局に照会していたことや、2016年にも日本学術会議の会員補充人事に、政府が推薦候補の差替えを要求するなど、介入を図ったことなども明らかになってきた。
菅政権による日本学術会議への介入は明らかに不当であり「違法」だ。日本ジャーナリスト会議は、「#日本学術会議への人事介入に抗議する」多くの人たちとともに、菅政権の暴挙に抗議する。
2020年10月5日
日本ジャーナリスト会議