2019年12月09日

【JCJ賞見る会】山形放送「想画と綴り方〜戦争が奪った子どもたちの心〜」 戦時中の教育弾圧に焦点

 大学の教室のスクリーンに映し出されるTVの映像。そこには、昭和の初期に農村で働く人たちの姿を克明に描いた絵が次々に映し出され思わず見入ってしまう。絵を描いたのは山形県の小学生だ。           
 自分の身の回りをありのままに描く「想画」の実践が行われた山形県の小学校、しかし指導にあたった教師は治安維持法で検挙されてしまう。番組は戦時中の教育弾圧を掘り下げ、「今」に警鐘を鳴らす。

 山形放送が制作したドキュメンタリー「想画と綴り方〜戦争が奪った子どもたちの心〜」は2019年度のJCJ賞を受賞した。この作品を見る会が10月末、立教大学メディア社会学科の砂川浩慶教授のゼミなどが主催して開かれた。会場には、番組制作の責任者の伊藤清隆報道制作局長も招かれ、番組視聴後に学生も加わり、意見を交わした。視聴者と制作者が一体となった空間というのは実はとても嬉しいもので、伊藤さんには緊張感だけではなく笑顔もこぼれていた。

 伊藤さんはこの番組を思い立った契機について、おととし安倍政権が強行に成立させた共謀罪が、戦前の治安維持法に似ているのではないかという危機感、さらにその頃、地元山形で「想画」を本にまとめようという当時の小学生たちの活動を知ったことをあげる。
 「想画」をテーマに共謀罪の恐ろしさ、そして忖度や同調圧力が強まり閉塞感に覆われている今の社会に、「釘一本を打ち込む」番組を制作したいと考えたという。そして戦争を再び起こさないということが報道の一丁目一番地であり、だからこそ昭和の戦争の記憶を令和の時代にどう伝えていけるのかを問い続けていると、静かに決意を語った。

 砂川さんに言わせれば、学生たちがいま一番接しているのはツイッターということだが、その砂川ゼミの学生からの「小中高では与えられたテーマに模範的に回答していたので、好きに書いて、と大学で言われた時、戸惑った」の声に伊藤さんはこう答えた。
 「模範的は忖度や空気を読むことにつながる、何を表現するのか、まず自分と向き合い自分の心のうちと、取り巻く世界をどう表現していくのかを考えて欲しい」と励ましのエールを送った。

古川英一

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
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2019年10月13日

【JCJ賞講評】 受賞逸した9作品を紹介 重大問題に切り込む=伊藤洋子選考委員

本欄では最終選考に残った14件中受賞した5作品を除く9作品を紹介する。

「奴隷労働―ベトナム人技能実習生の実態」花伝社 巣内尚子

 ベトナム政府の労働力輸出政策と日本政府の労働力輸入政策が生じた「技能実習制度」により、多額の借金と長時間・低賃金に縛られる奴隷労働を生みだした。その実態を140人余りの人々の声からあぶり出した労作である。

「未和 NHK記者はなぜ過労死したのか」岩波書店 尾崎孝史

 31歳で急死したNHK報道記者の事件は過労死認定されるが、NHKは死後4年間隠蔽する。取材から浮かび上がるのは巨大組織の理不尽さであり、安倍晋三政権による働き方改革の空しい実態である。

「紛争地の看護師」小学館 白川優子

「国境なき医師団」の一員として紛争地へ派遣され、被害者たちが抱える怒りを「私がそれを伝えなければ」と、自らの経験を記録。一時はジャーナリストを志した筆者は、見事なルポでその役割を果たした。

「安保法制下で進む! 先制攻撃できる自衛隊」あけび書房 半田滋

 戦争ができる国固めを推し進めてきた安倍政権の狙いが活写される。中核となる18大綱が導く日本とは「政治主導による軍事国家という未体験ゾーンに突入しつつある」ものと鋭く分かりやすい。

「捜査当局の顧客情報取得」を巡る一連の報道 共同通信社社会部取材班 共同通信社

 個人情報を網羅するポイントカードやクレジットカード情報が警察や検察の「捜査関係事項照会」なる内部手続きで日常的に取得され、捜査にフル活用されているという一連の報道は「監視社会化」への恐るべき警鐘である。

「公文書クライス〜ずさんな公文書管理の追求キャンペーン」毎日新聞社

 公用メールが官僚の恣意的判断で破棄され、メモをとるな、議事録を残すな、首相の面談記録は「不存在」とするなど公文書の扱いに独自の取材を重ねる中で、秘密国家への横行が明らかになっていく。

「行ってみれば戦場〜葬られたミサイル攻撃」名古屋テレビ放送

 湾岸戦争直前、米政権から自衛隊派遣要請を受けた日本政府は、民間貨物船を中東派遣船に。現地は戦場そのもの、実情を綴った船長報告書は無期限極秘文書とされた。この文書の発見をきっかけとして取り組んだ本作は当面する課題を突き付ける。

「法と恨(はん) 朝鮮女子挺身隊の戦後」北日本放送

 戦時中軍需工場だった富山市の不二越は朝鮮からの少女たちが働いていた。過酷な労働を経て、帰国しても誤解と偏見に悩まされ苦しみ続けてきた訴えに“もう一つの徴用工問題”が浮かび上がる。

首相官邸の情報隠しと取材拒否、記者攻撃に対する毅然としたジャーナリズム活動と、それを支えた新聞社 受賞対象:望月衣塑子記者と東京新聞編集局 

 東京新聞の望月記者の取材活動はいまや誰もが認めるところだが、ご本人が取材班の一員である「税を追う」キャンペーンを大賞として顕彰することにより、記者活動の成果を讃えることとした。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
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2019年10月12日

【JCJ賞受賞者挨拶】 福島原発事故直後の医師らの奔走と苦悩 NHK 鍋島塑峰ディレクター 教訓を生かせるか見たい

受賞にあたり、取材に応じて下さった医療関係者、諸先輩の顔が浮かび、番組作りに一緒に携わってくださった方々に感謝します。

私はディレクターとして2015年から3年間、福島局に勤務しました。福島で自分は何をテーマにし、取材するのか。その時、原発事故で避難する際、入院していた方々のうち亡くなった方が多くいることを知りました。事故直後に住民がどのように避難し、どうして命を救えなかったのか、国の被爆医療態勢はどうだったのか。それを最前線に飛び込んでいった医療者の目線で描こうと思いました。そして企画から放送まで3年がかかりました。

 現場に入った医師たちは鮮明に記憶していて、そこに体温を感じました。医師たちは学会でその体験を発表し、その中で泣かれる人もいたし、もっとできたのではないかと後悔の念を持つ人もいました。原子力安全神話の中で十分な準備はなく、そして自分のことではなく他人事だと思っていたのです。医師たちは、過去ではなく、今にも通じる問題としての認識を深め、国の医療態勢の充実を訴えています。

 番組の伝え方としては、医師たちが現場でスマホなどで撮影した3000枚の映像を元に時系列で伝える方法を取りました。事故直後には大手メディアは避難し、現地の記録はあまり残っていません。これに対し医療者は直後の映像を残していて、それは、歴史的にも価値があります。3000枚の一枚一枚に、そこから匂いが立ち上るような・・・それぞれの医師たちの記憶がこめられている写真をもとに、同じ時間、どこで何が起きていたのか、いわば横串にすることで、立体的に番組化していきました。

 国策としての原子力政策、国の責任は一体どこにあるのか。事故の教訓をどういかしていくのかを見続け、問い続けていきます。

10年、20年、50年後にも、原発事故の直後に医療の最前線で何が起きていたのか、教訓としてくみ取れるような記録を残していきたいという思いで番組を作りましたJCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
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2019年10月11日

【JCJ賞受賞者挨拶】 「想画」と治安維持法にスポット 山形放送・伊藤清隆報道制作局長 児童文学者の教育を活写

 2017年、「共謀罪法」が成立しました。戦前の治安維持法に似ていると言われます。

山形県の小学校で昭和初期、後の児童文学者国分一太郎が青年教師として想画と綴り方教育を実践しました。子供たちは貧困の中で生きる自分たちの暮らしを、豊かな表現力で描きました。

 ところが、この教育が治安維持法に違反するとして、国分は逮捕、投獄され、有罪判決を受けました。私たちはこの事実に光を当てれば、治安維持法と共謀罪法の関係を伝えることが出来ると考え、番組作りを始めました。国分の教育実践をどう映像化するかが課題でした。「民放なのに、良くこんなテーマを選んだね」と言われましたが、何とか骨太の番組にしようと取り組みました。

 私たちは、国分の教え子を訪ねて、取材しました。皆さんは90歳を超えていましたが、「素晴らしい先生に巡り合えた」と、国分の教育を昨日のことのように克明に記憶し、嬉しそうに語ってくれました。国分先生が突然教壇を追われことへの疑問を、今も胸に刻んでいます。

 共謀罪成立をきっかけに始めた番組制作は、今思えばギリギリのタイミングだったと考えます。この番組を放送したからと言ってテーマが終わった訳ではありません。共謀罪がどう運用されるかを、見落としてはなりません。

 ここプレスセンターは、ジャーナリズムの殿堂です。企画書では、忖度とか息苦しい時代の中で、伸び伸びと明るい表現の未来に向けて、ある歌を思いながら「釘を一本打ち込みたい」と書きました。その歌は、与謝野晶子の和歌です。「劫初(ごうしょ)より 造り営む 殿堂に 我も黄金の 釘ひとつ打つ」。

 「劫初」とは、「人間の営みの初め」という意味です。これからも、2本、3本と、釘を打ち続けたいと考えています。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
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2019年10月10日

【JCJ賞挨拶】 みんなのデータサイト・小山貴弓事務局長 暮らす地域の汚染に注目 国がやらないのは問題だ

原発事故で気になったのは、自分の地域がどの程度汚染されているか、だった。それを調べようと自分たちで測定器を調達し測定活動を始めた。2013年9月、それぞれ独自に測定した全国の「食品の放射能測定データ」を簡単に見られるように、WEBに「みんなのオープンサイト」をオープンさせた。現在北海道から九州まで31の測定室が参加、メンバーは約150人になる。

 土壌の一斉測定をやるべきだ、との議論が起きた。国は放射能測定地域を17都県と決めながら調べない。このままだと例えば放射性セシウムは半減期が来る。何とか自分たちでやろう、と2014年10月、プロジェクトをスタートさせた。

 マニュアルを作って、ウェブサイトで公開すると、協力者も増えた。全域の測定データは何より貴重だ、という激励の声も多くスタッフも感激。公開の方法を考え、結局、「みんなのデータサイト出版」が誕生した。

 問題なのは、多くの声もあるように、この調査を国がなぜしないのか、ということだ。

 チェルノブイリ事故では、土壌汚染マップは、「チェルノブイリ原発事故が招いた現在および将来の放射能汚染予測」という副題で2056年までの地図を見ることができる。いま、土壌測定をしないまま、原発は全国で再稼働に動いている。この本を広めて、この問題を知っていただきたいと思う。国が言ったから、有名な学者が言ったから、と鵜呑みにするのでなく、何が科学的な事実かを自分たちの手で調べ「市民力の発揮」と「市民科学の実践」に力を尽くしていきたい。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号

      
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2019年10月09日

【2019年度JCJ賞大賞挨拶】 「税を追う」キャンペーン東京新聞・鷲野史彦記者 米兵器購入で歪む防衛費 ローン苦と部品不足進む 

「税を追う」キャンペーンは2018年10月から始めた。初めにテーマを防衛費に絞ったのは、安倍政権のもとで防衛費が伸び、トランプ大統領からも米製兵器を買えという働きかけがあったからだ。

 最初に原稿にしたのは防衛費の「後年度負担」だ。兵器購入が増え、19年度の防衛予算は5兆円を超えている。実はそれに加え、後で払う5兆円の借金(後年度負担)があった。合わせて10兆円の出費だ。

それをどうわかりやすく伝えるか、家計に置き換えて考えた。年収に見合わない高級車を自動車ローンで買うようなものではないかと。そこから「兵器ローン」という言葉を私たちはつくり、後年度負担を説明した。ネットで反応がよく、国会でも取り上げられた。

米国が納入する武器部品に間違いが千とか2千とか、たくさんある。だが防衛省は文句を言ったことがない。これでいいのか、と怒った報告書を会計検査院が出していた。

なぜなのか、防衛省の当事者に記者が取材した。すると「昔、米国の国防総省に行ったところ、みな偉そうにしていて、電話にも全然出てくれないことがあった。米国にものを言っても仕方がないと、放っておいた」ということだった。こうしたエピソードを重視した。

自衛隊OBから実名で話を聞くことにもこだわった。そこで知ったのは飛行機の「共食い」だ。F15はスクランブル発進をする大事な戦闘機だが、1機のエンジンが故障すると、部品が足りなくなる。どう直すかというと、別のF15のエンジンを外して、付け替える。米製兵器をたくさん購入する中で、自衛隊にお金が不足していた。稼働率に関わる機密情報ながら、関係者が言わざるを得ないほど、予算の使い方に問題があることがわかった。

19年度防衛予算に絡み、国内企業に払う部品代が1兆円から2兆円不足するという情報も取材班に寄せられた。米国からFMS(対外有償軍事援助)での兵器調達が急増したためだ。国内企業への部品代金支払いは待ってもらうという話が進んでいた。スクープで報じ、この試みはつぶれた。年内をめどにキャンペーンを本にする。受賞を励みに取材を続けていきたい。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
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2019年09月26日

【JCJ賞贈賞式記念講演】 安倍官邸とメディア 前川喜平さん講演 権力が使う「中立」「公平」はウソ

 JCJ賞贈賞式前に元文部科学省事務次官・前川喜平さんは「私が見た『安倍官邸とメディア』」をテーマに記念講演をした。要旨は次の通り。

  ☆

文科省では広報担当が各社の記事をチェックしている。まだ発表になっていない事が記事になることもある。第二次安倍政権になってから、A紙やM紙やT紙が書くと「誰がリークしたのだ」と犯人探しが始まるようになった。

「新聞記者」という映画の劇中座談会に出演した。この映画はフィクションだが、きわめてリアリティがある。メインのストーリ―は国家戦略特区で総理のお友達が運営する大学が新設されるというどっかで聞いたことのあるような話だ。観客動員数は好調だが、テレビでは全く紹介されない。これが今のメディアの実情なのだと思う

2年前に加計学園の問題で、総理のご意向と書かれた文書が出てきた。私はその文書を見たことがあるので見たことがあると答えた。

 この文書を菅義偉官房長官は「怪文書のようなもの」と言った。文科省では確認作業をして文書の存在を認めた。おそらく官邸は文書の存在を否定して欲しかったのだろう。

NHK放送せず

2017年、NHK社会部記者の取材を受けた。NHKはすでに加計問題について多くの情報を持っていた。ゴールデンウィークの前、カメラを回して取材を受けたが、そのインタビューは一度も放送されていない。

5月17日の朝に朝日新聞が、「官邸の最高レベルの意向」と書かれた文書の存在を報じた。

前の年の秋に、杉田官和博房副長官に呼ばれて新宿のバーへ行っていることについて注意を受けていた。店ではいろいろな話が聞けて無駄ではなかった。それがスキャンダル化された。

読売新聞が5月22日に私が出会い系バーに行っていると報じた。その前日、後輩の初等中等教育局長が「和泉洋人首相補佐官と会うか」と聞いてきた。その局長は安倍官邸に受けのいい人物で、今度、事務次官になった。(第二次以降)安倍内閣は6年半も続いている。その間に事務次官が3交代、4交代している。だんだんどの役所も上の方は官邸べったりになっている。

和泉氏の打診は加計問題で発言しなければ、記事を抑えてやるという取引だったのではないか。

 その頃、自宅がメディアの取材陣に包囲されていた。私は都内に潜伏していたが、取材陣の中にいた東京新聞の望月衣塑子記者から、記者会見をするなら包囲を解くよう取材陣を説得したと連絡があった。そこで5月25日に記者会見をした。

菅官房長官には、私の辞任に関しても事実と異なることを言われた。天下りあっせん問題を収拾するために、辞任すべきだと思い、17年1月5日に当時の松野博一文科大臣に辞任を申し出た。その後、杉田官房副長官のところへ出向いて、辞任を了承してもらった。

支配力を強める

しかし菅官房長官は、「任期の延長を求め地位に恋々とした」と記者会見などで繰り返した。

 安倍政権はこれまでのどの政権よりもメディアをコントロールしている。

7月の参議院選挙でも、ほとんど報道しないことで政権に加担した。

 本来、国家権力から独立して自由でなければならない分野にメディアと教育がある。主権者は政府が何をしているか知る権利がある。

教育も主権者を育てる。

権力者にとって知る権利、学ぶ権利は都合が悪い。それを妨げようと権力が使う言葉は「中立性」や「公平」だ。

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
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2019年08月26日

JCJ賞贈賞式に約500人が参集 前川喜平さん「報道と教育は民主主義守る両輪」と語る=編集部

8月17日、東京・内幸町のプレスセンターホールで第62回JCJ賞贈賞式を開いた。

吉原功JCJ代表委員の挨拶の後、元文部科学省事務次官の前川喜平氏が「私が見た『安倍官邸とメディア』」と題して記念講演。今、果敢に安倍晋三政権批判している前川氏の話を聞こうと、約500人が会場を埋めた。

一昨年、加計学園の新学部認可をめぐり、「総理のご意向」と書かれた文書の存在を認めた前川氏は、安倍官邸の指示と思われる自身に対するネガティブ報道の経緯を具体的に語った。

前川氏は官邸サイドが自分の周辺を調査しているらしいと聞いていたこと、NHKや週刊文春、月間文藝春秋のインタビューの模様などを具体的に語った。また、約6年半にわたる安倍長期政権で、政権寄りの官僚が多くなっている現実を指摘した。さらに前川氏は、民主主義社会において人々の考え方を形成する上で、教育と報道の役割が大きいとし、ジャーナリズムへの期待を語った。

続いてJCJ賞贈賞式。

今年は『図説17都県 放射能測定マップ+読み解き集』を上梓したみんなのデータサイト出版、秋田魁新報社イージス・アショア配備問題取材班、山形放送の「想画と綴り方〜戦争が奪った子どもたちの心=v、NHK・ETV特集「誰が命を救うのか 医師たちの原発事故」がJCJ賞を、東京新聞社会部の「税を追う」キャンペーンがJCJ大賞を受賞した。

 受賞作を作るために出版社を設立したみんなのデータ事務局長の小山貴弓、秋田魁新報社編集委員の松川敦志、山形放送報道制作局長の伊藤清隆(取締役)、NHK第1制作センター文化・福祉番組部の鍋島塑峰、東京新聞社会部の鷲野史彦の各氏が、JCJ選考委員から賞牌と賞状を送られた。   

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年07月17日

【2019年度JCJ賞】大賞は東京新聞「税を追う」キャンペーン報道 ほかにJCJ賞4作品を決定

7月13日のJCJ賞選考委員会で、次の5点を受賞作に決定しました。
選考委員:諌山 修 石川 旺 伊藤洋子 酒井憲太郎 柴田鉄治 鈴木 耕

【JCJ大賞】 
「税を追う」キャンペーン 東京新聞社会部
受賞理由: 深刻な財政危機に直面しながら、安倍政権は税金の無駄遣いを続ける。米国からの兵器爆買い急拡大で、5兆円を突破した「兵器ローン」の 実態を浮き彫りにした第一弾。教育や社会福祉など国民生活を犠牲にした軍事費を皮切りに、キャンペーンは、沖縄・辺野古の米軍新基地建設や東京五輪などにテーマを広げ、昨年末の予算編成論議にも影響を与えた。政策の是非を丹念に検証し、利権や既得権をあぶり出す手法や報道姿勢は、多くの読者や識者などから高い評価を得ている。 

【JCJ賞】
『図説17都県 放射能測定マップ+読み解き集』みんなのデータサイト出版
受賞理由:「市民放射能測定室」のネットワークである「みんなのデータサイト」が、福島原発事故後、3400カ所以上から土壌を採取・測定し、延べ4000人の市民の協力で2011年3月のセシウム推定値の「県別土壌マップ」(第1章)をまとめた。放射能プルームの動き、100年後の予測も入れた。第2章で食品についての不安を解消し、自分の“物差し”が持てる。第3章「放射能を知ろう」では、放射能の基礎知識、チェルノブイリとの比較などが深く学習できる。国はやらない、市民の市民による市民のためのA4判放射能必読テキスト。

「イージス・アショア配備問題を巡る一連の報道」 秋田魁新報社・イージス・アショア配備問題取材班
受賞理由: 2017年秋に始まったイージス・アショア配備問題は秋田、山口県を直接、世界大の問題に突き当たらせている。秋田魁新報は県民の不安に寄り添い、判断材料を誠実に提供していく中で、問題の真意を多角的に探り、県民の声、県知事、市長の取材、議員アンケート、ルーマニア・ポーランドルポを続けた。そして、公立美大での卒業謝辞削除事件を浮かび上がらせ、後に防衛省の適地調査の杜撰さをあぶり出させることになる。配備反対の声は実現していないが、ここには、権力の監視を地で行く地域ジャーナリズムの力の真骨頂がある。

「想画と綴り方〜戦争が奪った子どもたちの“心”」 山形放送
受賞理由:児童文学者・国分一太郎は1930年、山形県の小学校で教職に就き、「想画」と呼ばれる生活画教育と、「生活綴り方」教育に打ち込んだ。凶作に見舞われた中で、たくましく生きる村人たちの暮らしを、子供たちは生き生きと画に描き、作文に綴った。しかし、国分の教育にも戦争の影が忍び寄り、治安維持法で罪に落とされる。安倍一強政治のもとで「共謀罪」は治安維持法との類似性が指摘される。制作者は、自由に表現できる未来に向けて「釘一本を打ち込みたい」と考え、番組を世に送り出した。

ETV特集「誰が命を救うのか 医師たちの原発事故」 NHK
受賞理由:東電福島第一原発の爆発事故発生直後、広島などから多くの医師たちが現場に入り、汚染された住民や爆発で負傷した自衛隊員の治療など、被ばく医療の最前線で奔走した。医師たちの多くは沈黙を守り、その結果、彼らの多様な体験が十分政策に反映されないまま、各地で原発再稼働が始まることになった。取材班は、治療にあたった医師たちをしらみつぶしに訪ね歩き、医師たち自身の撮影による3000の写真と映像を入手。当時の医療現場のすさまじい実態の全貌を初めて明らかにした。                       

JCJ賞贈賞式:8月17日(土) 13:00〜 プレスセンターホール(東京・内幸町)
案内チラシ・PDF版2019年8月集会.pdf

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2019年03月26日

【JCJ賞情報】2019年度(第62回)日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)─応募と推薦のお願い

 日本ジャーナリスト会議(JCJ)は、年間のすぐれたジャーナリズム活動を顕彰するため、1958年以来「JCJ賞」を設け、贈賞してきました。今年は62回となりました。
 今年度も優れた労作の多数応募を願っています。自薦または他薦によって応募といたします。入賞作には賞状と記念品が贈呈されます。

■日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)募集規定
〈募集ジャンルと応募資格〉
 新聞、放送、出版、写真作品のほか、市民運動や地域活動なども含み、個人・グループを問いません。
 提出期限までの1年以内に発表された作品 (連載の場合は同期間に発表) を対象とします。

〈提出条件〉
郵送または宅配便で下記、提出先にお送りください。
◆書籍の場合はその現物1冊。放送作品はビデオ、DVDを1本。
◆雑誌、新聞の場合は、その掲載部分をコピー(カラー写真を含む場合はカラー複写)1セット。
※1作品に1枚、エントリーシートを必ず同封してください。特に連絡先担当者、電話、メールアドレスは必ず明記してください。FAX、メールによる送稿は受け付けません。
エントリーシートはJCJ事務所に常備しますが、ここに添付のPDF版も活用してください。2019エントリーシート.pdf

〈提出期限〉
 ◇新聞、出版作品は5月24日(金) 
 ◇放送・その他の作品は5月31日(金)です。

〈提出先〉
  〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-18-1 千石屋ビル 402号
  日本ジャーナリスト会議 「JCJ賞」 応募作品係 (赤で目立つように表記)

※ 応募作品は返却しません。選考経過、選考理由などについてのお問い合わせには応じません。
※ 選考結果は7月中旬に主要新聞に発表するほか、JCJホームページに掲載します。
※ 入選者への贈賞式は8月17日(土)、日本プレスセンターホールにて行います。

〈問い合わせ先〉 JCJ事務所:電話 03-3291-6475 (月、水、金曜日の13時より18時まで)
         Eメール:office@jcj.sakura.ne.jp

                      
2019年3月14日
                日本ジャーナリスト会議
JCJ事務局長  橋詰雅博
JCJ賞推薦委員会統括責任者  大場幸夫

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2019年02月08日

【JCJ賞資金カンパ】 300万円超えた=大場幸夫

1月9日現在、カンパ額は300万円を超えました。この到達は会員・読者の皆さんの奮闘のおかげです。カンパを2回も3回も振り込んでいただいた会員・読者もいます。JCJ賞を受賞した方を訪問したり、お手紙を差し上げたりしたところ、カンパに快く応えていただきました。事務局長の訴えもあり、支部員のつながりを生かして周りの方に訴えて2ケタのカンパを送ってきた支部もあります。JCJ資金強化委員会にとってもJCJ賞活動の重要な意義を実感する日々になりました。

今800万目標の37%まで来ています。いままでの取り組みを振り返りながら、今年8月集会に向けて支援の輪をさらに広げましょう。必要なツールもお送りできます。ご意見をお寄せください。

    大場幸夫
     

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
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2018年12月31日

【JCJ賞受賞者】 清水潔講演 独自の取材進め犯人特定 DNA型再鑑定求め逆転判決=編集部

 JCJは12月9日、東京・千代田区の専修大学で12月集会を開催した。「調査報道でえぐる社会の実相―桶川ストーカー殺人事件から冤罪、歴史検証まで」と題し、日本テレビ報道局特別解説委員・清水潔氏が講演した。

発表報道は伝聞だ
 清水氏はまず調査報道の対極にあるものとして発表報道をあげ、警察や企業の発表を伝えるのは伝聞であり、記者は自分が現場に行っていない。発表側が都合のいい情報を伝えたり加工したりすることがあり得ると指摘した。
 清水氏が写真週刊誌記者時代に追及したのは桶川で女子大生が刺殺された事件だ。興味本位の報道が過熱する中、清水さんは被害者の友人たちを取材。警察より早くストーカー犯たちを突き止めた。事件前に被害者がストーカー被害を警察に告訴していたが、警察は告訴状を改ざんしていたことが後日、判明した。

警察の調書を疑う
 DNA型鑑定についても当局発表は常に正しいとはいえない。北関東で起きた連続幼女殺人では、1990年に足利で起きた事件で菅家利和さんが逮捕され、自供とDNA型鑑定の結果、有罪判決を受け服役した。菅家さんはしかし、刑務所内で再審を訴えた。清水氏と日本テレビの取材班は、事件現場で再現実験をして菅家さんの自供の矛盾を指摘、最新の技術によるDNA型鑑定を求める報道を続けた。
 2009年に再鑑定が行われ、検察側、弁護側それぞれが依頼した鑑定人によって、遺留品に付着したDNAと菅家さんのDNAが一致しないと結論が下され、菅家さんは釈放された。
 92年に福岡県で発生し、久間三千年容疑者の死刑が確定・執行された飯塚事件では、容疑者の車の目撃証言の信ぴょう性を検証するため、番組で実験を行った。事前に容疑者の車を見た後で、警察官は調書を作成しており、警察による誘導が疑われる。

徹底的に裏取りを
 後半は南京事件を検証したNNNドキュメント制作について語った。
 清水氏は@戦後になってからの論争に巻き込まれないA被害者の証言より加害者の告白B可能な限り裏取りをするという方針で臨んだという。
 番組は長江河畔での中国人捕虜殺害に絞り、日本軍兵士の日記をもとに制作された。
 事件取材と同様の手法で歴史検証に取り組んだ清水さんだが、「なぜ日本軍が中国にいたのか」という大きな歴史の流れを学ばなければならないと強調した。(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
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2018年11月02日

【JCJ賞資金800万めざす運動】 個人で10万も 9月末で100万超えた=大場幸夫

 8月集会でスタートしたJCJ賞資金強化運動では、まず会員・機関紙読者、JCJ賞への作品応募を要請している出版社・新聞社・放送局とJCJ賞受賞団体にカンパ依頼文及び要請リーフレットを発送しました。さまざまな反応がありました。  

 ある新聞社には発送後電話。社長室長対応。依頼封筒着確認。寄付をするかどうかは別ですとのこと。また、ある出版社と面談し懇談しました。先方は社として協賛、後援は遠慮すると決めているので取り組めないが、個人的カンパならと言っていただきました。
 さらに別の新聞社の窓口担当者からはメールの返事が早々に届き、JCJから3名で訪問しました。JCJ賞の社会的役割について強く訴えました。非常に好意的で、返事が近いうちに来ることになっています。
 別の新聞社にも、普段懇意にしている人を通じて、窓口を紹介していただきました。「新聞社は寄付するのは経験がない。広告を出すというのはどうか」と提案されました。
 いくつかの支部からは、相談してカンパ額を決めると連絡があります。ある新聞支部からは「組織としては難しいが、支部員に呼び掛けて年内にまとめる。支部総会も開く」との情報がありました。総会には事務局長が出向きカンパを訴えます。

 始まって1か月が過ぎました、もっと活動を広げなければなりません。どれだけ多くの人が動くかが成功のカギです。会員の皆さんが自分の目標を持ってください。また、要請する対象者を受け持ってください。読者の方、JCJ賞を受けた団体・個人の方、OB会の方、一緒にいろいろな活動をされている方など対象者は多いのではないでしょうか。
 各支部は具体的運動計画を立てるようにしてください。強化委員会では労組へのカンパ依頼も進めます。リーフレットや振込用紙は事務所にあります。お知らせください。 

 カンパの額は、9月末時点100万円を超えました。支部では5万円が4件ありました。個人で10万円が1件ありました。目標に向かって頑張りましょう。
 目標は800万円、個人1口2000円、団体10000円、複数口のご協力を!

大場幸夫(JCJ賞資金強化委員会事務長)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年10月25日号
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2018年10月11日

【JCJ賞贈賞式記念講演】 日本メディアと国際報道 「ワシントン情報」に偏りすぎ=猿田佐世

 国際弁護士・猿田佐世さんによる「日本のメディアと国際報道」と題した記念講演の要旨は次の通り。

 首都ワシントンの人口は70万人。アメリカの権力の中枢だが日本の政治に関心のある人はごくわずかだ。そこにいる日本人は日本政府、大企業、大メディアの人がほとんどで、彼らがアーミテージやマイケル・グリーンなど一部の「知日派」の発言を取り上げることで、「アメリカの声」を作ってきた。

独自取材を増やせ
 ワシントンにいる日本の記者は60人ほどで、韓国と並んで非常に多い。しかし大量の英語情報の対応に忙殺され、調査報道や町の声を拾うことはほとんどない。
 もっと通信社を利用して時間を作り、その分独自取材を増やすべきだ。
 記者の英語力が不十分という問題もある。ある記者によると本当に英語で取材ができるのは、60人のうち10人ぐらいではないかとのことだ。

 疑問に思った例をいくつか挙げる。この7月、トランプ大統領が独断で米韓軍事演習を中止したことに対し、大統領予備選挙で旋風を起こしたバニー・サンダース事務所に聞いたところ、「大統領が韓国政府や国防長官に相談しなかったのは問題だが、演習の一時中止や縮小は好ましい方向」と言っていた。リベラルな大手紙の記者に取材しないかと持ち掛けたところ、サンダースの発言では東京で使ってもらえないかもしれないのでやめておくとの返事だった。マイケル・グリーンの名を知っているアメリカ人はほとんどいないが、サンダースの名前を知らない人はいない。

 国務省の核不拡散担当の高官の任命を承認するかどうかの審議で、上院議員が「日米原子力協定の改定をすべきでは」と候補者に質問した。日本人の記者に情報提供したが、候補者の回答に新味がないとして、ほとんど取り上げられなかった。上院議員が日米原子力協定について質問すること自体が相当なニュース価値があるのだが……。
 2009年に民主党政権ができた時、日本のテレビ局が民主党政権になって日米関係はどうなると思うか、を聞くシール投票を行った。だがその投票を行ったのは保守系シンクタンクの日本関連シンポジウムの会場の近くで、参加者には日本人も多く、回答者の半分は日本人だった。
 そのころ留学生だった私もシールを貼るよう勧められた。テレビ局の人はメディア関係者でなければ誰でもいいと会社に言われているといっていた。
 おそらく、日本でシール投票の結果は、アメリカ人に日本の選挙結果を聞きましたとだけ伝えられただろう。保守系シンクタンクの会場で調査すれば、日米関係が懸念されるという答えが多数になるのは当然だ。

一辺倒記事ばかり
 トランプが大統領選で勝った時、日本の報道は「これからどうなる」「日米関係は大変だ」一辺倒だった。これを機会に日米関係を見直してみようという論調は、リベラル紙にもなかった。「いまの日米関係はおかしい」と言いながら、オルタナティブ(代替手段)を考えられない日本のメディアには失望させられる。
 18年4月の朝日新聞の「日米安保はいま」という特集でも、取り上げたのは相変わらずアーミテージやマイケル・グリーンたち、トランプ政権で何の影響力もなくなった知日派だ。いくら大統領が代ろうと、その下で既存の体制を固めてきた層が、日本のメディアを利用して政権の影響力を及ぼそうとしている。

米国の言い分優先
 ドイツの政党はワシントンに事務所を置いている。かつて日本が原発ゼロにしようとして、アメリカに反対され断念したことを話したところ、保守の党から左派まですべての党の人が「なんで国内の政策決定にアメリカの言うことを聞くのか」と不審がった。部外者の目から見て、メディアが米国報道を改善するには、様々な経歴の記者を派遣する、もっと通信社を利用する、英語のできる記者を送る、ワシントン勤務を出世コースとして位置づけないことが重要だ。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年9月25日号
posted by JCJ at 14:29 | JCJ賞情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月09日

【JCJ賞講評】 受賞逸した8作品に敬意 リアルなドキュメントぞろい=伊藤洋子 

 今年度JCJ賞選考委員会は13作品中5作品をJCJ賞に決定した。経過と受賞作品に関しては本紙7月25日号で既報の通り。本稿ではその他8作品を紹介する。

 樋田毅『記者襲撃―赤報隊事件30年目の真実』―朝日新聞阪神支局へのテロ事件を当初から時効後も30年間追い続け、真相解明に挑戦し続けてきたジャーナリストの苦渋と魂が伝わる力作。事件の真相は闇の中だが…

末浪靖司『「日米指揮権密約」の研究 自衛隊はなぜ、海外へ派兵されるのか』―膨大な米公文書を収集分析し、数多の日米密約の中でも日本の独立と文民統制を捻じ曲げる本質は自衛隊の指揮権密約にあると突き詰めた努力と熱意の成果が生み出した渾身の作。

布施祐仁・三浦英之『日報隠蔽 南スーダンで自衛隊は何を見たのか』―自衛隊の南スーダンへのPKO派遣をめぐり、大手紙の特派員は現場からルポを敢行。フリーの記者は情報公開請求で日報の隠蔽を暴く…二人三脚で隠蔽の実態をリアルに伝えるドキュメント。

毎日新聞「『旧優生保護法を問う』キャンペーン報道」―障害者たちに強制不妊手術が許された旧優生保護法はナチスの「断種法」をモデルに戦後50年余も施行されていた!事実。沈黙せざるを得ない人々への粘り強い取材で国の人道に背く犯罪を明らかにした。

中国新聞「企画『核なき世界への鍵』を中心とした核兵器禁止条約に関する一連の報道」―広島の地元紙として被爆者や市民に寄り添い、核兵器や日本政府の問題点など多角的に取り組んできた報道はヒロシマからの視点を世界のものとする。

毎日放送『愛国と教育〜教科書でいま何が起きているのか』―ナショナリズムと歴史修正、政治が教育を蹂躙する実態を次々と描きだす。教育基本法を改悪した安倍政治の狙い、日本の教育現場に起きている凄まじい状況を告発した力作。

北日本放送『イタイイタイ病 記者たちが見た50年』―富山県で発生したイ病が公害認定されて50年。この間関わった記者たちを通して描かれる県の隠蔽体質と権力に飲み込まれるメディアの実態は今日的状況への問題提起であり、イ病も過去でないと教えてくれる。

NHK『スクープドキュメント 沖縄と核』―米の統治下、世界最大級の核の島・沖縄の実態を機密文書や未公開映像、元米兵への取材で迫る力作。 

戦慄すべきミサイル事故は日本政府に認識されていたのか否か。新たな疑問も湧いてくる。 (順不同)

伊藤洋子(JCJ選考委員)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年9月25日号
posted by JCJ at 16:22 | JCJ賞情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月05日

【8月集会】 第61回JCJ賞贈賞式に200人超 米各社のトランプ批判見習うべき

8月18日、東京・内幸町のプレスセンターホールでJCJ8月集会を開いた。参加者は200人を超えた。

 最初に中村梧郎JCJ賞代表委員が開会挨拶した。中村氏は、森友・加計疑惑や官僚の文書改ざんに対する日本のメディアの追及が弱い点を批判。トランプ米大統領のメディア非難に対し、全米の300以上の報道機関が報道の自由を守るキャンペーンを展開したことと対比した。

その後、新外交イニシアチブ代表の国際弁護士・猿田佐世氏が「日本メディアと国際報道」と題して記念講演した。

猿田氏は日本へ伝わる米国情報が一部の「知日派」に偏っていること、米国情報が大きく扱われることで日本の読者の関心が増幅し、ますますメディアがアメリカの情報を取り上げ、その結果、アメリカの影響力が増すというスパイラルになっていると指摘した(要旨は左面に掲載)。

休憩の後、贈賞式が行われた。まず伊藤洋子JCJ賞選考委員が講評。伊藤氏は最終選考に残った作品すべてにふれ、その評価を語った。

 続いて、「日本ナショナリズムの歴史」を執筆したジャーナリストで歴史研究者の梅田正己氏、財務省による公文書改ざんをスクープした朝日新聞大阪社会部次長の羽根和人氏、アメリカの核削減に日本政府が反対していた事実を明らかにしたしんぶん赤旗の竹下岳・編集局政治部副部長、小木曽陽司編集局長、沖縄へのデマ・ヘイトに対峙した報道を展開した沖縄タイムス社会部中部報道部の勝浦大輔記者、NNNドキュメントで「南京事件U」を制作した清水潔・日本テレビ報道局チーフディレクターにJCJ賞選考委員からJCJ賞の賞状と賞牌が渡された。

 贈賞したJCJ賞選考委員は柴田鉄治、諌山修、酒井憲太郎、石川旺、清田義昭の各氏。

 贈賞につづいて恒例の受賞者スピーチ。閉会挨拶で橋詰雅博JCJ事務局長がJCJ賞資金のカンパを訴えた。

なおすべての写真は武馬怜子が撮影。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年9月25日号
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2018年07月19日

≪お知らせ≫ 2018年度JCJ賞(第61回)、決まる!

 日本ジャーナリスト会議(JCJ)は、1958年以来、年間の優れたジャーナリズム活動・作品を選定して、「JCJ賞」を贈り、顕彰してきました。今年で61回を迎えました。
 7月14日の選考会議で、下記の5点を、受賞作と決定しました。お知らせいたします。

梅田正己『日本ナショナリズムの歴史』全4巻 高文研

朝日新聞東京社会部、大阪社会部の取材班 
[財務省による公文書の改ざんをめぐる一連のスクープ]

しんぶん赤旗政治部、外信部
[「米の核削減、日本が反対 核弾頭の最新鋭化も促す」、「『沖縄に核』日本容認 09年、米の貯蔵庫建設提案に」その他続報]

沖縄タイムス編集局 
[沖縄へのデマ・ヘイトに対峙する報道]
 

日本テレビ放送網
NNNドキュメント18 南京事件U 歴史修正を検証せよ

 なお贈賞式に入る前に、恒例の記念講演を行います。国際弁護士の猿田佐世さんに、「日本メディアと交際報道」と題して語っていただきます。

講演および贈賞式
日時:2018年8月18日(土)13:00〜
会場:日本プレスセンター・ホール(東京・内幸町)
アクセス http://www.presscenter.co.jp/access.html
贈賞式PDFJCJ賞18年8月集会.jpg


▼お問合せなどは、下記事務局まで、お願いします。
日本ジャーナリスト会議(JCJ)
〒101-0051東京都千代田区神田神保町1-18-1千石屋ビル402号
電話 03-3291-6475 FAX 03-3291-6478
(電話は月、水、金曜日の13:00〜17:00受付)
Eメール office@jcj.sakura.ne.jp
 
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2018年04月10日

2018年度(第61回)日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)応募と推薦のお願い

 日本ジャーナリスト会議(JCJ)は、年間のすぐれたジャーナリズム活動を顕彰するため、1958年以来「JCJ賞」を設け、贈賞してきました。今年は61回となりました。
 今年度も優れた労作の多数応募を願っています。自薦または他薦によって応募といたします。入賞作には賞状と記念品が贈呈されます。

■日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)募集規定
〈募集ジャンルと応募資格〉
 新聞、放送、出版、写真作品のほか、市民運動や地域活動なども含み、個人・グループを問いません。
提出期限までの1年以内に発表された作品 (連載の場合は同期間に発表) を対象とします。

〈提出条件〉
郵送または宅配便で下記、提出先にお送りください。
◆書籍の場合はその現物1冊。放送作品はビデオ、DVDを1本。
◆雑誌、新聞の場合は、その掲載部分をコピー(カラー写真を含む場合はカラー複写)1セット。
※1作品に1枚、エントリーシートを必ず同封してください。特に連絡先担当者、電話、メールアドレスは必ず明記してください。FAX、メールによる送稿は受け付けません。
エントリーシートはJCJ事務所に常備します。

〈提出期限〉
 ◇新聞、出版作品は5月25日(金) 
 ◇放送・その他の作品は6月1日(金)です。
〈提出先〉
  〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-18-1 千石屋ビル 402号
  日本ジャーナリスト会議 「JCJ賞」 応募作品係 (赤で目立つように表記)
※ 応募作品は返却しません。選考経過、選考理由などについてのお問い合わせには応じません。
※ 選考結果は7月中旬に主要新聞に発表するほか、JCJホームページに掲載します。
※ 入選者への贈賞式は8月18日(土)、日本プレスセンターホールにて行います。

選考委員(50音順・敬称略)
諌山 修(ジャーナリスト) 石川 旺(上智大学名誉教授) 伊藤洋子(元東海大学教授) 清田義昭(出版ニュース社代表)  酒井憲太郎(フォトジャーナリスト)  柴田鉄治(ジャーナリスト)  

〈問い合わせ先〉 JCJ事務所:電話 03-3291-6475 (月、水、金曜日の13時より18時まで)
         Eメール:office@jcj.sakura.ne.jp

                      
2018年4月6日
                日本ジャーナリスト会議
JCJ事務局長  橋詰雅博
JCJ賞推薦委員会統括責任者  大場幸夫 
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2017年09月23日

沖縄タイムス・阿部岳記者のスピーチ(JCJ賞贈賞式)=須貝

<突如、始まった工事。むき出しの権力>
 8月19日に東京でJCJ賞の贈賞式がありました。沖縄タイムスは「高江・辺野古 新基地強行を問う報道」で受賞しました。取材班を代表して沖縄タイムスの阿部岳記者がスピーチをしました。
以下はその要約です。

 私は名護市にある北部報道部に勤めている。辺野古と高江を担当するという、とんでもない部署だ。しかし記者は4人だけ。だから本社の各部から交代で記者を派遣してもらい、二つの現場を常時取材している。
 16年7月11日朝に突如、高江のヘリパッド(発着場)工事が始まった。陸の孤島と呼ばれる山奥で、140人しか住まない地域に、オスプレイが使うヘリパッドを4カ所つくる工事だ。前日の参院沖縄選挙区で基地建設反対の野党候補が当確となり、民意が示された10時間後のことだった。
 とにかく山奥で、全国紙だけでなく、地元テレビ局もなかなか記者を送れない地域。だれも見ていないと思って、むき出しの権力が行使された。機動隊500人が本土から送り込まれた。「世界一危険」とされる北九州の暴力団・工藤会のトップを捕まえる頂上作戦で派遣された機動隊は530人だった。それと同規模の500人が丸腰の市民に向かった。そのうちの一人が「土人」と県民に暴言をはいた。取材記者は拘束された。
 共謀罪の先取りとなるような捜査もあった。市民運動のリーダーが2000円の鉄条網を切ったという理由などで5カ月間拘留されたが、辺野古ゲート前でブロックを積んだ容疑もかけられた。ブロック積みには100人から200人が手伝った。立証するため検察は容疑者のライン、メールでのやりとりを調べ、「共謀しただろう」と言って捜査した。結局、起訴されたのは3人だったが、100人でも200人でも(犯行を)立証するには、メールなどでのやりとりがあれば足りるという捜査だった。
 昨年末にはオスプレイが落ちた。大半のメディアは「不時着水」と書いた。目前の残骸を見たら明らかに墜落だ。そのあたりがなかなか本土に伝わらない。私は本土出身だから、なおさら、本土に伝えたい気持ちが強い。著書の『ルポ沖縄 国家の暴力』(朝日新聞出版)も手に取ってみてほしい。
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2017年09月13日

JCJ8月集会:記念講演「監視社会とメディア 共謀罪後の言論の自由とは」

小笠原みどりさん(元朝日新聞社記者、カナダ・クイーンズ大学大学院修士課程在籍)
(2017年8月19日 千代田区・プレスセンターホール)
スノーデン氏にインタビューした小笠原みどりさん。日本における監視社会の深化を警告し、言論領域を少しでも広げるために批判のボトムラインをアップしようと訴える。ジャーナリスト必見の講演。

FmA自由メディア 撮影:吉田・大場・東野 広報:小林・はた
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