2024年11月22日
【24年度JCJ賞贈賞式記念講演】神戸学院大学・上脇教授 政治とカネどう暴いたか 合法装う使途不明金 裏金づくり誘発=保坂 義久
国民主権で普通選挙が あり、議会という国家機 関があるだけでは議会制 民主主義とは言えませ ん。議会の中に世論の縮 図を作らなければなりま せん。知る権利や政治活 動・選挙運動の自由の保 障も必要です。
1994年の政治改革 では、民意を歪曲する方 向に改革が進みました。
過去の衆院選挙の小選 挙区での第一党の議席占 有率と得票率をみると、 得票率が4割程度で8割 に近い議席を得ている。 12年以降の衆議院の比 例代表選挙も自民・公明 を合わせた得票率は、い ずれの選挙でも5割に達 しません。2013年以 降の参議院の選挙区選挙 でも第一党の得票率は4 0%前後、比例代表選挙 も連立与党の得票率は5 0%に達しいませんが、その 間、新自由主義的な政策 が強行され、格差社会に なり、戦争の出来る国づ くりが進みました。
一方、自民党の党員数 は1991年のピーク時 には約547万人でしたが、第二次安倍政権 の直前の2012年末に は73万人まで激減しま した。
自民党は政治資金をい かに持っているか。バブ ル時代でも200億円超 の収入でしたが、最近の 政治資金収入は平均24 0億円を超えます。その うち7割近くは政党交付 金です。政党交 付金の元は税金であり、 自民党は国営政党化して います。国営政党が民営化 を主張しているのです。
「政治資金オンブズマ ン」運動を立ち上げて政 治家の違法行為責任の刑 事告発をしてきました。 政治家が作った政治 資金報告書や選挙運動収 支報告書や領収書などの 客観的な証拠、必ず政治家の 側が作った書類に基づい て告発しています。
調査報道も告発の重要 な証拠として活用してい ます。検察が起訴した事 件としては、19年11 月にしんぶん赤旗日曜版 が報道した安倍元首相の 後援会の「桜を見る会」 前夜祭の政治資金報告書 不記載。同じく19年1 1月に週刊文春が報じた 河合克行法務大臣夫妻の 車上運動員違法買収。21年3月にしんぶん赤旗 日曜版が報じた薗浦健太 郎議員の政治資金パーテ ィー収入不記載。22年 にしんぶん赤旗日曜版が 報じた政治団体パーティ ー券収入不記載。NHK の岡山放送局が伝えた 「伊原木隆太郎知事の寄 付上限を超える受領」などが あります。報道機関の努 力を活用させてもらって います。
派閥の政治団体は企業 から献金を受け取れませ ん。そのためパーティー を開いて大量のパーティ ー券を売る。20万円を 超す大口の購入者は名 前や金額、日付などを記 載しなければならない規 則です。赤旗は政治団体 の報告書をチェックした と思いますが、これは膨 大な作業になります。政 治団体の数は全国で6万 近い。赤旗は金を持って いそうな業界の政治団体 などに当たりをつけて調 べて行ったと思います。 そして5派閥、3年分、 2500万円という不記 載を発見しました。
私たちは5派閥のパー ティー収入明細収支報告 書の不記載について刑事 告発した。結果的に安倍 派では5年間の虚偽記入 額は6億7500万円、 二階派では2億6千万 円、岸田派は3年間で3 千万円の虚偽記載が発覚 しました。
自民党は政策活動費 の名目で幹事長を中心に 1億円以上の使途を問わ ない金を支出していま す。この合法な装った使途不 明金システムこそが、派閥の裏金 づくりを誘発したと考え られます。こうした裏金 は地方組織にも広がり組 織対策費の名目で県議や 市議にまで支出されていま す。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年10月25日号
2024年11月08日
【24年度JCJ賞講評】『ルポ低賃金』が力作 琉球新報・東京新聞も高評価=鈴木 耕
今年から新たに「ネットメディア」部門が加わりJCJ賞は、「新聞」「出版」「放送・映像」「ネットメディア」の4つの分野を対象に選考することとしました。
各分野から、様々な作品が推薦されてきて、選考委員会が9月1日に開かれました。もちろん賞に選ばれなかった作品が劣っていたということではありません。それぞれが、ひとつのテーマを追って懸命に作り上げた素晴らしい作品であったことは間違いありません。
ここでは、惜しくも選に漏れた作品を中心に、今年の傾向などを振り返ってみたいと思います。
◎新聞部門
琉球新報社の「うるま市石川陸自訓練場新設計画の断念に至る報道と特定利用港湾・空港への石垣港、那覇空港指定の特報」は見事なキャンペーン報道でした。
東京新聞社会部特別取材班「東京電力福島第一原発事故と柏崎刈羽原発についての報道」は今回に関してはやや焦点が拡散している点で、残念ながら受賞を逃しました。
◎出版部門
今回は全体として、素晴らしい著作が揃っていて受賞作との差異はほんのわずかだったと思われます。
大森淳郎さんの『ラジオと戦争 放送人たちの「報国」』(NHK出版)作品の素晴らしさは衆目の一致するところで、著者の苦悩をもあぶり出した作品でした。
『ルポ低賃金』(東海林智著、地平社)も素晴らしいルポ作品でした。
半田滋さんの『台湾侵攻に巻き込まれる日本 安倍政治の「継承者」岸田首相による敵基地攻撃・防衛費倍増の真実』(あけび書房)は、緻密な解説が目からうろこの著作です。安倍政権から菅政権、そして岸田政権へと移る中で、ますますキナ臭さを増す日本の防衛安保政策の危うさを、資料を基に、しっかりと捉えています。
◎映像・放送部門
NHKの人材と機動力を投入した作品が図抜けていました。受賞作の『冤罪≠フ深層』以外にも、Nスぺ『未解決事件File10 下山事件第2部』も戦後最大の謎に挑む迫力あるものでした。
同じNHKのETV特集『膨張と忘却〜理の人が見た原子力政策』も、故人(吉岡斉さん)の遺した様々な文献資料を基に、日本の原子力政策の根本を問い直す視聴者を引き込む出来でした。
NNNドキュメント24『半透明のわたし 生きる権利と生活保護』(北日本放送)も、貧困問題に焦点を定めた取材姿勢には好感を持ちました。この取材視点は大切なものと感じました。
◎ネットメディア部門
新部門の応募作品は、8本。候補作品を探しましたが、ネット本来の機動性、動画や映像を加味するような新しい試みは、あまり見当たりませんでした。
「経口避妊薬」の問題が調査報道という面で推薦作品となりましたが、ここからの新しい展開がこれからの課題だと感じました。
ネットメディア部門は、まだ認知度が浅く、これからもっと多くの応募作品が集まることを期待します。
来年度も、もっともっと優れた作品に出会えることを期待しております。
他に最終選考作品ではありませんが、放送・映像化されたもの、新たな試みというべきものもありました。
◎映画・その他
映画「ヤジと民主主義 劇場拡大版」(北海道放送)や、福島から問う「ALPS処理水」放出(相馬高校放送局)は地域出版社ウネリウネラ社の協力という珍しい形で、60分の映画にまとめられ、東京の地域映画祭の江古田映画祭で上映されました。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年10月25日号
各分野から、様々な作品が推薦されてきて、選考委員会が9月1日に開かれました。もちろん賞に選ばれなかった作品が劣っていたということではありません。それぞれが、ひとつのテーマを追って懸命に作り上げた素晴らしい作品であったことは間違いありません。
ここでは、惜しくも選に漏れた作品を中心に、今年の傾向などを振り返ってみたいと思います。
◎新聞部門
琉球新報社の「うるま市石川陸自訓練場新設計画の断念に至る報道と特定利用港湾・空港への石垣港、那覇空港指定の特報」は見事なキャンペーン報道でした。
東京新聞社会部特別取材班「東京電力福島第一原発事故と柏崎刈羽原発についての報道」は今回に関してはやや焦点が拡散している点で、残念ながら受賞を逃しました。
◎出版部門
今回は全体として、素晴らしい著作が揃っていて受賞作との差異はほんのわずかだったと思われます。
大森淳郎さんの『ラジオと戦争 放送人たちの「報国」』(NHK出版)作品の素晴らしさは衆目の一致するところで、著者の苦悩をもあぶり出した作品でした。
『ルポ低賃金』(東海林智著、地平社)も素晴らしいルポ作品でした。
半田滋さんの『台湾侵攻に巻き込まれる日本 安倍政治の「継承者」岸田首相による敵基地攻撃・防衛費倍増の真実』(あけび書房)は、緻密な解説が目からうろこの著作です。安倍政権から菅政権、そして岸田政権へと移る中で、ますますキナ臭さを増す日本の防衛安保政策の危うさを、資料を基に、しっかりと捉えています。
◎映像・放送部門
NHKの人材と機動力を投入した作品が図抜けていました。受賞作の『冤罪≠フ深層』以外にも、Nスぺ『未解決事件File10 下山事件第2部』も戦後最大の謎に挑む迫力あるものでした。
同じNHKのETV特集『膨張と忘却〜理の人が見た原子力政策』も、故人(吉岡斉さん)の遺した様々な文献資料を基に、日本の原子力政策の根本を問い直す視聴者を引き込む出来でした。
NNNドキュメント24『半透明のわたし 生きる権利と生活保護』(北日本放送)も、貧困問題に焦点を定めた取材姿勢には好感を持ちました。この取材視点は大切なものと感じました。
◎ネットメディア部門
新部門の応募作品は、8本。候補作品を探しましたが、ネット本来の機動性、動画や映像を加味するような新しい試みは、あまり見当たりませんでした。
「経口避妊薬」の問題が調査報道という面で推薦作品となりましたが、ここからの新しい展開がこれからの課題だと感じました。
ネットメディア部門は、まだ認知度が浅く、これからもっと多くの応募作品が集まることを期待します。
来年度も、もっともっと優れた作品に出会えることを期待しております。
他に最終選考作品ではありませんが、放送・映像化されたもの、新たな試みというべきものもありました。
◎映画・その他
映画「ヤジと民主主義 劇場拡大版」(北海道放送)や、福島から問う「ALPS処理水」放出(相馬高校放送局)は地域出版社ウネリウネラ社の協力という珍しい形で、60分の映画にまとめられ、東京の地域映画祭の江古田映画祭で上映されました。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年10月25日号
2024年09月26日
【イベント】2024年度JCJ賞受賞昨品と贈賞式の案内 10月5日(土)13:00から日比谷図書文化館 日比谷コンベンションホール=JCJ事務局
【JCJ大賞】
◆しんぶん赤旗日曜版における「自民党派閥パーティー資金の<政治資金報告書不記載>報道と、引き続く政治資金および裏金問題に関する一連のキャンペーン」
【JCJ賞】(順不同)
◆上丸洋一『南京事件と新聞報道─記者たちは何を書き、何を書かなかったか』 朝日新聞出版
◆後藤秀典『東京電力の変節─最高裁・司法エリートとの癒着と原発被災者攻撃』 旬報社
◆NHKスペシャル「冤罪≠フ深層─警視庁公安部で何が」「続・冤罪≠フ深層─警視庁公安部・深まる闇」 NHK総合テレビ
◆SBCスペシャル「78年目の和解─サンダカン死の行進・遺族の軌跡」 SBC信越放送
■贈賞式
※開催日時:10月5日(土) 開場:12:30 式典:13:00〜
※会場:千代田区立日比谷図書文化館 日比谷コンベンションホール(〒100 0012東京都千代田区日比谷公園1–4)
※交通:地下鉄「霞が関」駅 B2出口から徒歩3分、日比谷公園内。
■贈賞式記念講演(オンライン講演)
上脇博之(神戸学院大学大学院教授)<政治とカネ─自民党裏金問題をどのようにして暴いたのか>
■JCJ賞受賞者のスピーチ
■参加申し込み
※現地会場への参加者は、会場費1000円。メール jcj_online@jcj.gr.jp で予約し、会場受付でお支払い下さい。
※オンライン参加の申し込みは https://jcjaward2024.peatix.com にて、参加費800円
2024年09月13日
【2024年度第67回 JCJ賞】JCJ大賞 しんぶん赤旗日曜版 『自民党派閥パーティー資金の「政治資金報告書不記載」報道と、引き続く政治資金、裏金問題に関する一連のキャンペーン』、 JCJ賞4点。10月5日(土)午後1時から東京・日比谷図書文化館コンベンションホールで贈賞式
JCJ賞作品は次の通りです。
【JCJ大賞】 1点
● 自民党派閥パーティー資金の「政治資金報告書不記載」報道と、引き続く政治資金、裏金問題に関する一連のキャンペーン しんぶん赤旗日曜版
【JCJ賞】 4点 (順不同)
● 上丸洋一(じょうまる・よういち)『南京事件と新聞報道 記者たちは何を書き、何を書かなかったか』 朝日新聞出版
● 後藤秀典(ごとう・ひでのり) 『東京電力の変節 最高裁・司法エリートとの癒着と原発被災者攻撃』 旬報社
● NHKスペシャル 「冤(えん)罪≠フ深層~警視庁公安部で何が~」「続・冤(えん)罪≠フ深層~警視庁公安部・深まる闇~」 NHK総合テレビ
● SBCスペシャル 「78年目の和解~サンダカン死の行進・遺族の軌跡」 SBC信越放送
JCJ賞贈賞作品一覧
【JCJ大賞】 1点
● しんぶん赤旗日曜版 自民党派閥パーティー資金の「政治資金報告書不記載」報道と、引き続く政治資金、裏金問題に関する一連のキャンペーン
自民党の主要5派閥が政治資金パーティーのパーティー券大口購入者を、政治資金報告書に記載していなかったことをスクープした報道に始まった「しんぶん赤旗日曜版」の報道は、2023年から24年にかけての日本の政治を揺り動かした。
公開されている膨大な政治資金報告書から、一つ一つを地道に積み上げ、検察の捜査にまでつなげ、それが大政治犯罪であることを明らかにした。
政治資金パーティーという、小さな問題に見えた事件は、実は政治資金問題の中心的問題で、事件の大きさは、自民党が公表せざるを得なかった議員が衆院51人、参院31人、計82人に上っていた(24年4月14日号)ことに示されるとおり、そのスケールの点では、1975年の「田中金脈」報道や、88年の「リクルート事件」報道を超えるものだった。
国会は安全保障政策の大転換を迎え、極めて重要な問題を抱えていたが、この問題に多くの時間を割き、秋に予想される、総選挙もしくは自民党総裁選を控え、「政治資金改革」は、いま、最大の政治的焦点となっている。こうした事態を引き起こしたのは、「しんぶん赤旗・日曜版」の報道がなくしてはできなかったことであります。
【JCJ賞】 4点
● 上丸洋一 『南京事件と新聞報道 記者たちは何を書き、何を書かなかったか』 朝日新聞出版
日本の侵略戦争の犯罪を象徴する「南京大虐殺」――南京事件は、西のアウシュヴィッツでのナチス蛮行に匹敵する戦争犯罪であるが、当時の日本の新聞記者は何を書き何を書かなかったかを追跡し、検証した力作。
筆者は、2007~2008年朝日新聞夕刊の「新聞と戦争」で戦時報道を検討する連載の取材班に参加。「南京」シリーズを担当した。2020年フリーになったのを機に再び「南京事件」に向き合って、当時の新聞報道を調べる毎日が続く。「南京事件まぼろし説」「百人斬り」はじめ日本軍の蛮行、虐殺の数々に向き合い、真偽の確かめ作業が続く。当時の報道や記録を掘り起こし、記事を追い生存の記者を取材して検証する。気の遠くなるような作業のなかから、事実としてあったことは勿論、前後左右の状況、外国の記事も使っての多角的な検討により、あったはずの事実を浮き彫りにしている意義は大きい。
戦場に行く記者、カメラマンは厳しい報道規制のもと、軍紀服従、検閲、報道規制、従軍記者心得により、「戦場一番乗り」「報道報国」「報道戦士」に絡め取られていく様を記事で検証しながら明らかにしているのが恐ろしい。
終戦後、生存の記者への取材、戦友会の記録のなかで、多くの人々の意識が変わらず、責任も感じず、見たくないことはなかったことにする有様を突きつけられ、日本の教育と、洗脳された日本人の状況に愕然とさせられる。
南京事件についての研究はすすみ、書物も多いが、新聞、放送など影響力の大きなジャーナリズムの有り様がますます重大である。
岸田政権による軍備拡大と戦争準備がすすめられるこの2024年、『南京事件と新聞報道』という力作を得たことの意義は大きい。
● 後藤秀典 『東京電力の変節 最高裁・司法エリートとの癒着と原発被災者攻撃』 旬報社
福島第1原発事故から14年、責任が明確にされた東京電力は避難者たちが起こした損害賠償請求訴訟を数多く抱えたままだ。その訴訟の過程で加害者である被告東電が原告の被害者たちを、あたかも安逸な生活を享受しながら無理難題を求めているかのように攻撃をする現象が生まれている。賠償を出し渋るための「変節」である。その背景にある最高裁と巨大法律事務所という司法エリートと東電との結びつきを探ったのが本書である。
著者は2022年に出された、国に原発事故の責任はないとした最高裁判決(6.17判決)を下した3名の判事の経歴・人脈を追い、彼らが巨大法律事務所をはじめ国や法曹界、産業界のさまざまな機関と密接に関わっていることを明らかにしていく。その構造は本書にある「電力会社・最高裁・国・巨大法律事務所の人脈図」を見れば一目瞭然だ。原子力規制庁のメンバーで一審では国側の指定代理人であった弁護士が控訴審では東電の代理人として登場するという事実には呆れるほかない。この弁護士はもちろん巨大法律事務所の所属である。
本書は原発問題をテーマとして書かれ、「原子力ムラ」には司法エリートも含まれていることがはっきりする。同様なことは日本の他の多くの分野でも起きているであろう。日本における司法の独立は国家の圧力との関係で問われてきたが、「民間」の巨大法律事務所というモンスター的存在が権力の補完機能として働いているという事実を具体例を挙げて告発した作品として推薦する。
● NHKスペシャル 「冤(えん)罪≠フ深層~警視庁公安部で何が~」「続・冤(えん)罪≠フ深層~警視庁公安部・
深まる闇~」 NHK総合テレビ
「冤(えん)罪≠フ深層~警視庁公安部で何が~」(23年9月24日21:00~21:50)
なぜ冤罪≠ヘ起きたのか。3年前、軍事転用が可能な精密機器を不正に輸出したとして、横浜市の中小企業の社長ら3人が逮捕された事件。長期勾留ののち、異例の起訴取り消しとなった。会社側が国と東京都に損害賠償を求めている裁判で23年6月、証人として出廷した現役捜査員は「まあ、捏造ですね」と、捜査の問題点を赤裸々に語った。公安部の中で、一体何が起きていたのか。法廷の証言と独自取材をもとに、徹底取材で検証する。
「続・冤(えん)罪≠フ深層~警視庁公安部・深まる闇~」(2月18日21:00~21:50)
警視庁公安部の冤(えん)罪¢{査を検証したNスぺ(昨年9月)第2弾。4年前、軍事転用可能な機器を不正輸出したとして、大川原化工機の社長ら3人が逮捕された事件。東京地裁は昨年末、捜査は違法だったと認め、国と都に賠償を命じる判決を言い渡した(国と都は控訴)。NHKは今回、さらに新たな内部資料を入手。経産省はなぜ警察の捜査方針を追認したのかそして、検察はなぜ起訴に踏み切ったのか。残された闇に迫る。
● SBCスペシャル「78年目の和解~サンダカン死の行進・遺族の軌跡~」(3月13日19:00~20:00) SBC信越放送
太平洋戦争の末期、現在のマレーシア、ボルネオ島で「サンダカン死の行進」と呼ばれる悲劇が起きた。日本軍の無謀な命令により、道なきジャングル横断を強制された英豪軍の捕虜2400人余が飢えや病気、銃殺で死亡。生き残ったのは、脱走した6人だけだった。悲劇から78年、豪州兵捕虜の息子、ディックさんの呼びかけで、長野県の元日本軍兵士の遺族やスパイ容疑で処刑された地元住民の孫ら関係者が戦跡をめぐり、二度とこのようなことが起きないよう合同で「和解」を誓い合った。
お問合せは下記までお願いします。
日本ジャーナリスト会議(JCJ)
〒101‑0061 東京都千代田区神田三崎町3−10−15 富士ビル501号
TEL:03−6272−9781 FAX: 03−6272−9782 (電話受付は月、水、金13時〜17時)
メール: office@jcj.gr.jp
直接のお電話: 古川英一(JCJ事務局長) 090‑4070-3172、大場幸夫 (JCJ賞推薦委員会)090‑4961-1249
■贈賞式記念講演(オンライン講演となります)
「政治とカネ 自民党裏金問題をどのようにして暴いたのか 」 上脇 博之(かみわき ひろし)神戸学院大学大学院教授
■講師プロフィール:
上脇 博之(かみわき ひろし)1958年7月、鹿児島県生まれ。1984年3月、関西大学法学部卒業。1991年3月、神戸大学大学院法学研究科博士課程後期課程単位取得。北九州大学(現在の北九州市立大学)法学部 助教授・教授を経て、2004年から神戸学院大学大学院実務法学研究科教授、2015年から神戸学院大学法学部教授(現在に至る)。専門は憲法学。、政党助成金・政治資金、政治倫理、情報公開制度、改憲問題などを研究『検証 政治とカネ』(岩波新書・2024年)など著書多数。公益財団法人「政治資金センター」理事などを務める
■オンライン参加お申し込み:
https://jcjaward2024.peatix.com
2024年03月17日
【お知らせ】2024 年度(第67 回) ⽇本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞) 応募と推薦のお願い=JCJ賞推薦委員会
日本ジャーナリスト会議(JCJ)は、年間のすぐれたジャーナリズム活動を顕彰するため、1958年以来「JCJ賞」を設け、贈賞してきました。
今年は第67回となります。自薦または他薦によって応募といたします。今年度も優れた労作の多数応募を期待しています。
■日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)募集規定
〈募集ジャンルと応募資格〉
新聞、放送、出版、写真作品、ネットメディア作品のほか、市民運動や地域活動なども含み、個人・グループを問いません。
提出期限までの1年以内に発表された作品 (連載の場合は同期間に発表したもの) を対象とします。
〈提出条件〉
◆ 書籍は、その現物1冊。放送作品はDVDを1本です。
◆ 雑誌、新聞は、その掲載部分のコピー(カラーの場合はカラーで)の1セットです。
上記の2項目については、1作品に1枚エントリーシートを必ず同封。特に連絡先、担当者、
電話、メールアドレスは必ず明記。郵送または宅急便で下記の提出先にお送りください。
なお、FAX、メールによる送稿は受け付けません。
◆ネットメディア作品は、閲覧出来るURLをお知らせ下さい。
1作品に1枚エントリーシートを必ず明記。特に連絡先、担当者、電話、メールアドレスは必須です。
そしてメール(office@jcj.gr.jp)による受け付けをいたします。
○応募要項、エントリーシートはJCJホームページからダウンロードできます。
このシートはword形式ですので文章を打ち込むことができます。
〈提出期限〉
◆新聞、出版作品は5月17日(金)
◆放送・ネットメディア・その他作品は5月24日(金)です。郵送の場合は当日消印までが有効です。
〈提出先〉
〒101-0061 東京都千代田区神田三崎町3−10−15富士ビル501号
日本ジャーナリスト会議 「JCJ賞」 応募作品係 (赤で目立つように表記してください)
○応募作品は返却いたしません。選考経過,理由などについてのお問い合わせには応じておりません。
○選考結果は「ジャーナリスト」および主要新聞に公表するほか、JCJホームページに掲載致します。
○今回の選考結果の確定は8月末、公表は9月上旬(昨年は9月6日)、入選者の贈賞式は9月下旬(昨年は9月23日)を予定しております。
2024年3月15日 日本ジャーナリスト会議
JCJ事務局長 古川英一
JCJ賞推薦委員会統括責任者 大場幸夫
今年は第67回となります。自薦または他薦によって応募といたします。今年度も優れた労作の多数応募を期待しています。
■日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)募集規定
〈募集ジャンルと応募資格〉
新聞、放送、出版、写真作品、ネットメディア作品のほか、市民運動や地域活動なども含み、個人・グループを問いません。
提出期限までの1年以内に発表された作品 (連載の場合は同期間に発表したもの) を対象とします。
〈提出条件〉
◆ 書籍は、その現物1冊。放送作品はDVDを1本です。
◆ 雑誌、新聞は、その掲載部分のコピー(カラーの場合はカラーで)の1セットです。
上記の2項目については、1作品に1枚エントリーシートを必ず同封。特に連絡先、担当者、
電話、メールアドレスは必ず明記。郵送または宅急便で下記の提出先にお送りください。
なお、FAX、メールによる送稿は受け付けません。
◆ネットメディア作品は、閲覧出来るURLをお知らせ下さい。
1作品に1枚エントリーシートを必ず明記。特に連絡先、担当者、電話、メールアドレスは必須です。
そしてメール(office@jcj.gr.jp)による受け付けをいたします。
○応募要項、エントリーシートはJCJホームページからダウンロードできます。
このシートはword形式ですので文章を打ち込むことができます。
〈提出期限〉
◆新聞、出版作品は5月17日(金)
◆放送・ネットメディア・その他作品は5月24日(金)です。郵送の場合は当日消印までが有効です。
〈提出先〉
〒101-0061 東京都千代田区神田三崎町3−10−15富士ビル501号
日本ジャーナリスト会議 「JCJ賞」 応募作品係 (赤で目立つように表記してください)
○応募作品は返却いたしません。選考経過,理由などについてのお問い合わせには応じておりません。
○選考結果は「ジャーナリスト」および主要新聞に公表するほか、JCJホームページに掲載致します。
○今回の選考結果の確定は8月末、公表は9月上旬(昨年は9月6日)、入選者の贈賞式は9月下旬(昨年は9月23日)を予定しております。
2024年3月15日 日本ジャーナリスト会議
JCJ事務局長 古川英一
JCJ賞推薦委員会統括責任者 大場幸夫
2024年01月06日
【オンライン講演】「後世に事実を」被爆者の願い叶えた 23年度JCJ賞『「黒い雨」訴訟』の著者・小山美砂氏語る=橋詰雅博
2023年度JCJ賞受賞者オンライン講演のトップバッターは『黒い雨訴訟』(集英社新書、22年7月発行)の著者・小山美砂氏=写真=。「原爆『黒い雨訴訟』に学んだジャーナリストの仕事」と題した11月19日講演では毎日新聞記者としての広島被爆者取材やメディアの報道姿勢への疑問を語り、昨年末退職後、フリーランスになったジャーナリスト活動も報告した。
大阪市出身の小山氏が縁もゆかりもない広島の原爆に強い関心を持ったきっかけは同志社大学メディア学科3年生のとき、広島被爆者の話に衝撃を受けたからだ。その人は「被爆者は後遺症に苦しんでいる。核兵器は今も世界で1万2000発もある。未来を生きる若者に被爆の惨状を伝えるため子供のころのつらい体験を語っている」と言った。原爆問題を伝えたいと毎日新聞に入社。初任地として希望した広島支局に2017年配属された。
記者3年目の秋「黒い雨」訴訟を取材。原爆投下直後、広島に降った放射線を帯びた黒い雨を浴び、深刻な健康被害に苦しむ人たちが国に援護を求めた裁判。小山氏は「黒い雨で病気に罹っている疑いがあるのになぜ被爆者ではないのか。これはおかしい」と疑問を抱いたのが黒い雨取材のスタートだった。
取材を介して親交を深めた訴訟のリーダー的存在の高東征二氏と一緒に山間部で暮らす原告らを訪ね歩き多くの証言を得た。「黒い雨によって内部被ばくしたことで病気などの被害にあったと確信できた」(小山氏)。地裁、高裁で原告が勝訴し、国に上告を断念させた黒い雨訴訟原告勝利の結果、黒い雨被爆者への被爆者健康手帳の交付が認められた。
本を書くに至った動機を小山氏は「70数年間、国の援護が認められなかった被爆者の『後世に事実を残したい』という願いが私の心にしみ込み、本にしなければいけないというモチベーションを持って取材してきた」と振り返った。
裁判などを通じてメディアの報道姿勢に疑問を抱いたと小山氏は言う。
「国が否定する被害は書いてはいけないという暗黙のルールが報道機関にある。ジャーナリズムとして本当に正しいのかとすごく感じた。私の本への反響が大きかったのは福島原発事故の自主避難者の方たちです。被害にあったのに国は認めず支援がないとメディアに訴えてもなかなか報じてくれない、黒い雨被爆者と共通しているという。公的機関が認めないことを書くのは怖いし、大変だが、被害を訴える人の立場で私は書くべきだと思います。それがよりよい社会を築くことにつながるのではないでしょうか」
原爆問題を継続して取材したいという理由で毎日新聞を退職。フリーランスのジャーナリストとして広島、長崎の被爆者取材、講演、雑誌・ネットメディアへの執筆など精力的に活動している。2冊目の本の出版も視野に。
「フリーは向いている」と明るく語る小山氏は手ごたえ感じる日々を過ごしている。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年12月25日号
2023年11月27日
【23年度JCJ賞記念講演】悪化進む貧困状況 中高年から若年層へ 女性の困窮も深刻化 雨宮処凛さん語る
2006年、フリーター労組のメーデーデモで聞いた「生きさせろ!」の叫びから貧困問題にかかわり17年。当時、1600万人だった非正規雇用は、いまでは2100万人です。
07年に反貧困ネットワークが結成され翌年暮れの年越し派遣村に505人が来ましたが、うち女性は5人。コロナ1年目の職を失った人の相談会では344人の相談者の2割近い64人が女性でした。
今は相談者の3割がネットカフェなどにいます。派遣村の時は中高年の男性が多かったが、いまは男女ともに若い人たちが増えました。
コロナ禍で激増
3年前立ち上げた「新型コロナ災害緊急アクション」という恒久的なネットワークにはこれまでに2000件くらいのSOSが来ました。いまも来ています。
相談者は10代から30代が6割です。派遣村の時と違い、今はホームレス化がカジュアルになって、家が無くてもあせらない。あせるのは携帯が止められた時。携帯が無いと仕事も探せません。
電話がきて「こちらに来てください」といっても電車賃がない。駆けつけてお金を渡し、近くの安いホテルを探してから、区役所に生活保護申請をすることになります。
都内での炊き出しや食品配布でも、コロナ前は50〜60人でした。それがコロナでどんどん増えて、今年5月には750人ぐらいが並びました。コロナ前は、近隣の中高年のホームレス状態の人が並んでいたが、今は子連れのお母さんや若いカップルとか様々な人が来ます。コロナ後はずっと600人ぐらいの人が来ています。
命をつなぐ携帯
携帯が止まっている人には2年間、無料で携帯を貸し出しています。でも、それは一部の人だけ。今は不動産の契約も固定電話より携帯の番号を求められる。一度携帯が止まると元に戻れない。
生活保護を受けても、パートを始めるにも携帯が無いと不動産を契約できない。すると携帯を持ちたくても、住所がない持てない。同じところをぐるぐる回っている。
今の日本では経済危機や災害、感染症流行など何かあると家を奪われるなど生活が破壊される人が一定数いて、どんどん増えています。
貧困報道の貧困
この10数年の貧困報道は、表面に現れたものがブームになり、それが消費されて終るという感じをうけます。17年も現場にいると、取材に来る人も代わっていく。もちろん継続的に取材をしている人もいるし、新人を連れてきて一から教えるような人もいますが、一般的に継続されていない。貧困報道がどんどん「貧困」になっている気がします。
今はこの社会は間違っているから変えようという正面突破と、こんな社会は間違っているから自分たちで勝手にやろうという二本立てでやっていきたいと考えています。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年10月25日号
2023年09月14日
【2023年度 第66回 JCJ賞贈賞式と記念講演】9月23日(土)13時から東京・全水道会館〈zoomで生中継をご覧いただけます〉
日本ジャーナリスト会議(JCJ)は、1958年以来、年間の優れたジャーナリズム活動・作品を選定して、「JCJ賞」を贈り、顕彰してきました。今年で66回を迎えます。
本年度は8月31日の選考会議を経て報道発表をさせていただき、9月23日(土曜)13時から全水道会館・4階大会議室にて贈賞式を執り行います。記念講演と併せオンラインでの参加が出来ます。
贈賞式に先立つ記念講演にはジャーナリスト作家であり反貧困への取り組み等多彩な活動を続けておられる雨宮処凛さんをお迎え。注目の贈賞式では受賞者のスピーチをリアルタイムに聞くことが出来ます。
■記念講演テーマ:貧困問題とジャーナリズム(仮題)
■講演者プロフィール:雨宮 処凛(あまみや かりん)
1975年、北海道生まれ。
作家・活動家。フリーターなどを経て2000年、自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。2006年からは貧困問題に取り組み、『生きさせろ! 難民化する若者たち』(2007年、太田出版/ちくま文庫)はJCJ賞を受賞。
著書に『非正規・単身・アラフォー女性』(光文社新書)、『相模原事件裁判傍聴記「役に立ちたい」と「障害者ヘイト」のあいだ』(太田出版)、『生きのびるための「失敗」入門』(河出書房新社)など多数。2020年以降のコロナ禍では、「新型コロナ災害緊急アクション」メンバーとして生活困窮者の支援に取り組む。その活動をまとめた著書に『コロナ禍、貧困の記録 2020年、この国の底が抜けた』(かもがわ出版)がある。最新刊は『学校では教えてくれない生活保護』(河出書房新社、2023年1月出版)。
■開催日時:9月23日(土)13:00〜17:00(zoomにてオンライン、終了後動画配信アリ)
■オンライン参加費:800円
※JCJ会員の方、通常の〈JCJ Online講演会〉は無料で参加出来ますが当会へのオンライン参加は800円となります。
※参加希望の方はPeatix受付ページ(https://jcjaward2023.peatix.com)、から参加費をお支払いください。
■贈賞式会場へのリアル参加をご希望の方:会場は水道橋の全水道会館・4階大会議室となります。
リアルでの参加費はJCJ会員、非会員共に 1000円。メールで来場予約をしていただき、会場受付でお支払下さい。
■主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)
■オンライン参加に関するお問い合わせ:jcj_online@jcj.gr.jp
■会場参加に関するお問い合わせ:office@jcj.gr.jp
2023年09月08日
【2023年度 JCJ賞】鈴木エイト氏の2冊の著書を大賞に。『自民党の統一教会汚染─追跡3000日』『自民党の統一教会汚染2─山上徹也からの伝言』(共に小学館)
日本ジャーナリスト会議(JCJ)は6日、2023年度のJCJ賞受賞作を発表した。
大賞は、統一教会の実態と自民党との関係を、20年の長きにわたって取材し、統一教会との孤独な闘いを続けてきたフリージャーナリスト・鈴木エイト氏の活動及び著作に対し贈賞となった。
そのほかに5点が、JCJ賞に選定された。受賞作は以下の通り。
●琉球新報社の<台湾有事の内実や南西諸島の防衛強化を問う一連の報道>
●小山美砂『「黒い雨」訴訟』(集英社新書)
●琉球朝日放送の<命(ぬち)ぬ水(みじ)─映し出された沖縄の50年>
●NHK Eテレの<ルポ死亡退院─精神医療・闇の実態>
●NHK Eテレの<市民と核兵器─ウクライナ 危機の中の対話>
贈賞式は9月23日(土) 13〜17時、 東京・全水道会館4階大会議室(JR水道橋駅・東京より北口下車) 、詳細はhttps://jcj.gr.jp/future/6783/ をクリックして把握してください。
大賞は、統一教会の実態と自民党との関係を、20年の長きにわたって取材し、統一教会との孤独な闘いを続けてきたフリージャーナリスト・鈴木エイト氏の活動及び著作に対し贈賞となった。
そのほかに5点が、JCJ賞に選定された。受賞作は以下の通り。
●琉球新報社の<台湾有事の内実や南西諸島の防衛強化を問う一連の報道>
●小山美砂『「黒い雨」訴訟』(集英社新書)
●琉球朝日放送の<命(ぬち)ぬ水(みじ)─映し出された沖縄の50年>
●NHK Eテレの<ルポ死亡退院─精神医療・闇の実態>
●NHK Eテレの<市民と核兵器─ウクライナ 危機の中の対話>
贈賞式は9月23日(土) 13〜17時、 東京・全水道会館4階大会議室(JR水道橋駅・東京より北口下車) 、詳細はhttps://jcj.gr.jp/future/6783/ をクリックして把握してください。
2022年11月21日
【23年度JCJ賞記念講演】法政大・上西充子教授 信頼される報道とは 政治は「津波」とは違う 事態は行動で変えられる 時機をとらえ問題提起を 言葉づかいにも疑問=須貝道雄
報道は「事実」を伝えるのだとメディアの人は言います。でも伝える事実を選択しています。たとえば2015年、安保法制が国会で議論されていた時、SEALDs(シールズ)の学生デモを初めのうちはあまり注目せず、大きく盛り上がってから報じていました。
伝える際の言葉遣いも疑問です。ニュースの見出しに「与党、菅首相答弁減らし成果 野党追及は決定打欠く」(2020年12月4日)とありました。「成果」って誰の評価ですか。「決定打欠く」は、野党はくだらないという印象を強める言葉です。
野党も権力監視を
また報道は「権力監視のため」といいますが、権力監視の役割を担うのは報道だけではありません。野党も権力監視をしている。その内容を伝えていますか。党首に詳しく話を聞いてオピニオン欄に載せてもいいはずです。権力監視のために発信している市民の活動もあまり報じていません。
国会の質疑でわざと論点をそらす答弁が、私のツイート(18年5月6日)がきっかけで「ご飯論法」として話題になりました。「朝ごはんは食べなかったんですか?」という質問に「ご飯は食べませんでした」と答え、パンを食べたことは黙って隠す答弁の仕方です。
こうしたやり取りをどう報じたらよいか。首相は「ご飯は食べなかった」と述べるにとどめた、と書くとする。とどめるって、そのほかに何があるのか不明です。首相は「ご飯は食べなかった」と答弁し、パンについては言及を避けた、ならわかりやすくなります。
勝手に既成事実化
決まっていないことをメディアが既成事実にしてしまう例が、東京五輪組織委員会の会長人事でありました。森喜朗会長が女性蔑視発言で辞任(21年2月)した際、各紙は「後任に川淵氏」「川淵氏を後任指名」などと報じました。森氏の指名により、川淵三郎氏が次期会長に決まったかのような報道で、ジャーナリストの江川紹子さんはツイッターで疑問を示しました。
森氏が指名しても、理事会で決めなければ人事は確定しないと記事では説明しますが、末尾で「後を託す形となった」「禅譲劇もまた『密室』で幕を閉じた」と結び、記者が幕を閉じてしまっています。でも川淵さんは会長になりませんでした。
ここで言いたいのは、政治は津波とは違うということです。津波は押しとどめられませんが、政治の津波は報じ方次第で、世の中の人々の行動によって、止められます。そこで大事になるのがタイミングをとらえた問題提起です。
2020年5月、「#検察庁法改正案に抗議します」という笛美さんの声がツイッター上で広がり、500万回以上ツイートされました。「文春砲」の報道とも重なり、法案は見送られました。
事態の進行中に、読者・視聴者が問題を理解し、関与できる報道のあり方をもっと工夫してほしい。適切な見出し、一目でわかるインフォグラフィックス(情報の視覚的表現)など考えていただきたい。国会の本会議で法案が通る直前に問題点を報道してもタイミングが遅く、事態を変えることはできません。
「野党は反発」という書き方も矮小化した表現です。誰がなぜ批判しているのか、その様子をきちっと伝えれば、世の中も反応します。「国会は茶番」と語られ、国会質疑は無意味だと人々が見るようになれば、喜ぶのは政府でしょう。人々の判断力を信頼し、それに資する報道を期待したいです。
須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年10月25日号
2022年09月15日
【お知らせ】第65回JCJ賞贈賞式・記念講演 9月24日(土)午後1時から5時まで 会場・東京の全水道会館・4階大会議室からオンライン配信 記念講演「何のために報じるのか」講師:上西充子・法政大学キャリアデザイン学部教授
「何のために報じるのか」。ジャーナリストの皆さんはこの問いに何と答えるでしょうか――。法政大の上西充子教授は根源的な問題を提起する。
「『知る権利』に応えるため」? けれど、「知る」ことの先に何を想定しているでしょうか。それとも、「事実を伝えるため」? とはいえ、伝える事実も選択されています。あるいは、「権力監視のため」? けれども、権力監視はジャーナリストだけが独占的に担うものではありません。国民も権力監視を行います。そのために必要な情報を報道は伝えているのか。
以上のような考察をする上西さんが、報道に携わる人たちに託す期待、願いとは何か、講演でたっぷりと語っていただく。
【上西充子さん・略歴】法政大学キャリアデザイン学部教授。専門は労働問題・社会政策。国会審議を解説つきで街頭上映する国会パブリックビューイングを2018年6月に始めた。「ご飯論法」で2018年の新語・流行語大賞トップテンを受賞。著書に『呪いの言葉の解きかた』(晶文社)、『国会をみよう 国会パブリックビューイングの試み』(集英社クリエイティブ)、『政治と報道』(扶桑社新書)など。
日本ジャーナリスト会議(JCJ)は、1958年以来、年間の優れたジャーナリズム活動・作品を選定して、「JCJ賞」を贈り、顕彰してきました。今年で65回を迎えました。8月31日の選考会議において、次の6点を受賞作と決定いたしました。
【JCJ賞大賞】 1点
● 映画「教育と愛国」 監督・斉加尚代
【JCJ賞】 4点(順不同)
● 「土の声を『国策民営』リニアの現場から」 (信濃毎日新聞)
● 風間直樹/井艸恵美/辻麻梨子『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』 東洋経済新報社
● 北海道新聞社編『消えた「四島返還」 安倍政権 日ロ交渉2800日を追う』 北海道新聞社
● 「ネアンデルタール人は核の夢を見るか〜“核のごみ”と科学と民主主義」 北海道放送
【JCJ特別賞】 1点
● 沖縄タイムス社と琉球新報社
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【9月24日は受賞者によるスピーチがあります。取材や企画で考えたこと、苦労したことなど毎回、スピーチの内容は濃く、参加者に感銘を与えています】
参加費:会場参加(30人まで・要予約)は1000円、オンライン参加は800円
・会場参加お申込みの方はJCJ事務所に下記メールかファクスで。先着順。参加費の支払いは当日、会場でお願いします。 office@jcj.gr.jp ファクス03-6272-9782
・オンライン視聴をお申込みの方は下記URLをクリックし、Peatixを通じてお手続きをしてください。https://jcjsyou.peatix.com/
・お問い合わせは onlinejcj20@gmail.com まで。
主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ) https://jcj.gr.jp/index.html
「『知る権利』に応えるため」? けれど、「知る」ことの先に何を想定しているでしょうか。それとも、「事実を伝えるため」? とはいえ、伝える事実も選択されています。あるいは、「権力監視のため」? けれども、権力監視はジャーナリストだけが独占的に担うものではありません。国民も権力監視を行います。そのために必要な情報を報道は伝えているのか。
以上のような考察をする上西さんが、報道に携わる人たちに託す期待、願いとは何か、講演でたっぷりと語っていただく。
【上西充子さん・略歴】法政大学キャリアデザイン学部教授。専門は労働問題・社会政策。国会審議を解説つきで街頭上映する国会パブリックビューイングを2018年6月に始めた。「ご飯論法」で2018年の新語・流行語大賞トップテンを受賞。著書に『呪いの言葉の解きかた』(晶文社)、『国会をみよう 国会パブリックビューイングの試み』(集英社クリエイティブ)、『政治と報道』(扶桑社新書)など。
日本ジャーナリスト会議(JCJ)は、1958年以来、年間の優れたジャーナリズム活動・作品を選定して、「JCJ賞」を贈り、顕彰してきました。今年で65回を迎えました。8月31日の選考会議において、次の6点を受賞作と決定いたしました。
【JCJ賞大賞】 1点
● 映画「教育と愛国」 監督・斉加尚代
【JCJ賞】 4点(順不同)
● 「土の声を『国策民営』リニアの現場から」 (信濃毎日新聞)
● 風間直樹/井艸恵美/辻麻梨子『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』 東洋経済新報社
● 北海道新聞社編『消えた「四島返還」 安倍政権 日ロ交渉2800日を追う』 北海道新聞社
● 「ネアンデルタール人は核の夢を見るか〜“核のごみ”と科学と民主主義」 北海道放送
【JCJ特別賞】 1点
● 沖縄タイムス社と琉球新報社
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【9月24日は受賞者によるスピーチがあります。取材や企画で考えたこと、苦労したことなど毎回、スピーチの内容は濃く、参加者に感銘を与えています】
参加費:会場参加(30人まで・要予約)は1000円、オンライン参加は800円
・会場参加お申込みの方はJCJ事務所に下記メールかファクスで。先着順。参加費の支払いは当日、会場でお願いします。 office@jcj.gr.jp ファクス03-6272-9782
・オンライン視聴をお申込みの方は下記URLをクリックし、Peatixを通じてお手続きをしてください。https://jcjsyou.peatix.com/
・お問い合わせは onlinejcj20@gmail.com まで。
主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ) https://jcj.gr.jp/index.html
2022年09月05日
【65回JCJ賞決まる】JCJ大賞 映画「教育と愛国」 JCJ賞4点 特別賞1点 24日(土)午後1時から東京・全水道会館で贈賞式
日本ジャーナリスト会議(JCJ)は、1958年以来、年間の優れたジャーナリズム活動・作品を選定して、「JCJ賞」を贈り、顕彰してきました。今年で65回を迎えました。8月31日の選考会議において、次の6点を受賞作と決定いたしました。
【JCJ賞大賞】 1点
● 映画「教育と愛国」 監督・斉加尚代
【JCJ賞】 4点(順不同)
● 「土の声を『国策民営』リニアの現場から」 信濃毎日新聞
● 風間直樹/井艸恵美/辻麻梨子『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』 東洋経済新報社
● 北海道新聞社編『消えた「四島返還」 安倍政権 日ロ交渉2800日を追う』 北海道新聞社
● 「ネアンデルタール人は核の夢を見るか〜“核のごみ”と科学と民主主義」 北海道放送
【JCJ特別賞】 1点
● 沖縄タイムス社と琉球新報社
JCJ賞 贈賞式:9月24日(土) 13:00〜 全水道会館・4階大会議室(東京・水道橋)
2022年JCJ賞贈賞作品一覧
【JCJ賞大賞】
● 映画「教育と愛国」 監督・斉加尚代
大阪の教育現場で長く取材してきた斉加尚代ディレクターが、2017年にMBSで放送した作品に追加取材をして再構成したドキュメンタリー映画。小学校の道徳教科書で「パン屋」が「和菓子屋」に書き換えられる。滑稽な書き換えだが、斉加は沖縄戦での集団自決について「軍の強制」が削除された問題とつながると感じた。ほとんどの出版社から取材を断られながら、「新しい歴史教科書をつくる会」を支持する立場の伊藤隆・東大名誉教授のインタビューを実現。「歴史に学ぶ必要はない」という、歴史学者としてはあるまじき発言に衝撃を受ける。教育への政治介入が強まる中で、教科書から史実が消える。5月の公開から2か月で、2万7千人が映画館に足を運んだ。教育への危機感が広がっている。
【JCJ賞】
● 「土の声を『国策民営』リニアの現場から」 信濃毎日新聞
日本列島の中央部の自然体系と地形、風土を大きく傷つけながら強行されているリニアモーターカー建設プロジェクト。現下で総工費約7兆円のうち約3兆円を政府が財政投融資で貸し出すという、「国策民営」の事業だが、長野など関係県や市町村にも大きな負担を押し付けられている。その必要性、有効性からも、「21世紀最大の無駄プロジェクト」に対しては、地元住民などの根強い反対運動が続く。86%がトンネル工事の同プロジェクトでは、残土の処理や運搬など「土」の処理が、大きな課題になっている。この「土」に焦点をあてながら、報道機関がとかく及び腰だったリニア問題に、正面から本格的に切り込んだ本企画は、斬新でインパクトが大きい。
● 風間直樹/井艸恵美/辻麻梨子『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』 東洋経済新報社
この闇の深さに慄然とさせられる。日本は精神疾患の患者数が400万人を超え、精神病床入院患者数約28万人、人口当たりでも世界ダントツ。そして日本の精神病院特有の強制入院制度「医療保護入院」がある。この実態を、東洋経済調査報道部メンバーが丹念に取材した。問答無用の長期入院、DVの夫の策略による入院、40年も退院できなかった男性、向精神薬の薬漬け、「一生退院させない」とおどされてパイプカットした男性、密室での虐待横行……など、家族のしがらみをも利用し、人権のかけらも見られない報告は生々しくおそろしい。少し広げて福祉行政問題にも言及がある。深刻な事態が予想される認知症急増という現在の日本に、警鐘を大きく打ち鳴らす一冊。
● 北海道新聞社編『消えた「四島返還」 安倍政権 日ロ交渉2800日を追う』 北海道新聞社
北方領土返還問題に関する安倍政権の日ロ交渉はこの上ない稚拙外交そのものであった。
本書は、従来の「四島返還」から歯舞・色丹の2島返還に独断で舵を切ってしまい、あげくプーチンに手玉にとられた安倍対ロ外交を7年以上にわたって追った地元紙の記録である。
交渉の背景に見えてくる米ロ関係の悪化、ロシアのクリミア支配、連繋の深まる中ロ関係、ロシアとその周辺諸国との領土交渉の経緯等々、日ロ交渉を考えるうえでのさまざまな要素を含め、広く深く取材と分析をしている。未発表の証言の掘り起こしやロシア周辺諸国の動向への目配りも光る、北方領土問題の全貌を理解する上での必読の書である。
● 「ネアンデルタール人は核の夢を見るか〜“核のごみ”と科学と民主主義」 北海道放送
原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる核のごみ。北海道寿都町と神恵内村で、全国初の核のごみに関する文献調査が行われている。人体に影響がない放射線量になるのは10万年後とされる。今から10万年前はネアンデルタール人がいた時代だ。彼らは核の夢を見ただろうか。私たちは10万年先まで安全に核のごみを管理できるのか。「迷惑施設」を地方に押し付ける構図は原発や米軍基地とも通じる。しかし、道内のテレビや新聞は交付金目当てに調査に応募した町長や反対派住民の動きを中心とした報道に終始している、この番組は、本来、国全体で議論すべき問題が地方に押し付けられている構図を鮮明にし、一人ひとりが考えるべきだとのメッセージを発信している。
【JCJ特別賞】
● 沖縄タイムス社と琉球新報社
沖縄タイムス、琉球新報の2紙は、ことし復帰50年を記念して、タイムスは「防人の肖像」、「50歳の島で」の企画などで、また新報は「沖縄の日本復帰50年の内実を問う」の特別号などで、ともに復帰50年を迎えた沖縄の基地の現実と、人々の生活を詳しく報道した。県内に2紙が併存するという、厳しい経営状況の下で、真実の報道を求めて切磋琢磨する2紙の活動は、日本の民主主義のために極めて重要である。
2紙はこれまで戦後77年の日本で、米軍統治下での闘いを含め、県民の人権と日本の民主主義のために、絶えざる報道と評論活動を続けてきた。その活動は、日本のジャーナリズム全体の中で特筆されるべき成果を生んでおり、その果たした役割は極めて大きく、本土の新聞が教えられ、手本とするものでもあった。
特に、「再び戦争のためにペン、カメラ、マイクをとらない」をモットーに活動してきたJCJとして、「反戦」を明確に掲げる沖縄2紙の活動は、特に頼もしいものでもある。
JCJは沖縄復帰50年に当たり、2紙のこの間の活動の努力と成果に対し、JCJ特別賞を贈り表彰する。
日本ジャーナリスト会議(JCJ)
事務局長 須貝道雄
JCJ賞推薦委員会 大場幸夫
【JCJ賞大賞】 1点
● 映画「教育と愛国」 監督・斉加尚代
【JCJ賞】 4点(順不同)
● 「土の声を『国策民営』リニアの現場から」 信濃毎日新聞
● 風間直樹/井艸恵美/辻麻梨子『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』 東洋経済新報社
● 北海道新聞社編『消えた「四島返還」 安倍政権 日ロ交渉2800日を追う』 北海道新聞社
● 「ネアンデルタール人は核の夢を見るか〜“核のごみ”と科学と民主主義」 北海道放送
【JCJ特別賞】 1点
● 沖縄タイムス社と琉球新報社
JCJ賞 贈賞式:9月24日(土) 13:00〜 全水道会館・4階大会議室(東京・水道橋)
2022年JCJ賞贈賞作品一覧
【JCJ賞大賞】
● 映画「教育と愛国」 監督・斉加尚代
大阪の教育現場で長く取材してきた斉加尚代ディレクターが、2017年にMBSで放送した作品に追加取材をして再構成したドキュメンタリー映画。小学校の道徳教科書で「パン屋」が「和菓子屋」に書き換えられる。滑稽な書き換えだが、斉加は沖縄戦での集団自決について「軍の強制」が削除された問題とつながると感じた。ほとんどの出版社から取材を断られながら、「新しい歴史教科書をつくる会」を支持する立場の伊藤隆・東大名誉教授のインタビューを実現。「歴史に学ぶ必要はない」という、歴史学者としてはあるまじき発言に衝撃を受ける。教育への政治介入が強まる中で、教科書から史実が消える。5月の公開から2か月で、2万7千人が映画館に足を運んだ。教育への危機感が広がっている。
【JCJ賞】
● 「土の声を『国策民営』リニアの現場から」 信濃毎日新聞
日本列島の中央部の自然体系と地形、風土を大きく傷つけながら強行されているリニアモーターカー建設プロジェクト。現下で総工費約7兆円のうち約3兆円を政府が財政投融資で貸し出すという、「国策民営」の事業だが、長野など関係県や市町村にも大きな負担を押し付けられている。その必要性、有効性からも、「21世紀最大の無駄プロジェクト」に対しては、地元住民などの根強い反対運動が続く。86%がトンネル工事の同プロジェクトでは、残土の処理や運搬など「土」の処理が、大きな課題になっている。この「土」に焦点をあてながら、報道機関がとかく及び腰だったリニア問題に、正面から本格的に切り込んだ本企画は、斬新でインパクトが大きい。
● 風間直樹/井艸恵美/辻麻梨子『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』 東洋経済新報社
この闇の深さに慄然とさせられる。日本は精神疾患の患者数が400万人を超え、精神病床入院患者数約28万人、人口当たりでも世界ダントツ。そして日本の精神病院特有の強制入院制度「医療保護入院」がある。この実態を、東洋経済調査報道部メンバーが丹念に取材した。問答無用の長期入院、DVの夫の策略による入院、40年も退院できなかった男性、向精神薬の薬漬け、「一生退院させない」とおどされてパイプカットした男性、密室での虐待横行……など、家族のしがらみをも利用し、人権のかけらも見られない報告は生々しくおそろしい。少し広げて福祉行政問題にも言及がある。深刻な事態が予想される認知症急増という現在の日本に、警鐘を大きく打ち鳴らす一冊。
● 北海道新聞社編『消えた「四島返還」 安倍政権 日ロ交渉2800日を追う』 北海道新聞社
北方領土返還問題に関する安倍政権の日ロ交渉はこの上ない稚拙外交そのものであった。
本書は、従来の「四島返還」から歯舞・色丹の2島返還に独断で舵を切ってしまい、あげくプーチンに手玉にとられた安倍対ロ外交を7年以上にわたって追った地元紙の記録である。
交渉の背景に見えてくる米ロ関係の悪化、ロシアのクリミア支配、連繋の深まる中ロ関係、ロシアとその周辺諸国との領土交渉の経緯等々、日ロ交渉を考えるうえでのさまざまな要素を含め、広く深く取材と分析をしている。未発表の証言の掘り起こしやロシア周辺諸国の動向への目配りも光る、北方領土問題の全貌を理解する上での必読の書である。
● 「ネアンデルタール人は核の夢を見るか〜“核のごみ”と科学と民主主義」 北海道放送
原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる核のごみ。北海道寿都町と神恵内村で、全国初の核のごみに関する文献調査が行われている。人体に影響がない放射線量になるのは10万年後とされる。今から10万年前はネアンデルタール人がいた時代だ。彼らは核の夢を見ただろうか。私たちは10万年先まで安全に核のごみを管理できるのか。「迷惑施設」を地方に押し付ける構図は原発や米軍基地とも通じる。しかし、道内のテレビや新聞は交付金目当てに調査に応募した町長や反対派住民の動きを中心とした報道に終始している、この番組は、本来、国全体で議論すべき問題が地方に押し付けられている構図を鮮明にし、一人ひとりが考えるべきだとのメッセージを発信している。
【JCJ特別賞】
● 沖縄タイムス社と琉球新報社
沖縄タイムス、琉球新報の2紙は、ことし復帰50年を記念して、タイムスは「防人の肖像」、「50歳の島で」の企画などで、また新報は「沖縄の日本復帰50年の内実を問う」の特別号などで、ともに復帰50年を迎えた沖縄の基地の現実と、人々の生活を詳しく報道した。県内に2紙が併存するという、厳しい経営状況の下で、真実の報道を求めて切磋琢磨する2紙の活動は、日本の民主主義のために極めて重要である。
2紙はこれまで戦後77年の日本で、米軍統治下での闘いを含め、県民の人権と日本の民主主義のために、絶えざる報道と評論活動を続けてきた。その活動は、日本のジャーナリズム全体の中で特筆されるべき成果を生んでおり、その果たした役割は極めて大きく、本土の新聞が教えられ、手本とするものでもあった。
特に、「再び戦争のためにペン、カメラ、マイクをとらない」をモットーに活動してきたJCJとして、「反戦」を明確に掲げる沖縄2紙の活動は、特に頼もしいものでもある。
JCJは沖縄復帰50年に当たり、2紙のこの間の活動の努力と成果に対し、JCJ特別賞を贈り表彰する。
日本ジャーナリスト会議(JCJ)
事務局長 須貝道雄
JCJ賞推薦委員会 大場幸夫
2021年11月25日
【21年度JCJ賞贈賞式記念講演】「私と沖縄」矛盾しわ寄せの島 TBS報道局 佐古忠彦さん
2017年から沖縄のドキュメンタリー映画を3本続けて作りました。TVの世界で長くやってきましたが、TVとは違った古くて新しい世界が映画にはあると感じています。
なぜ、沖縄なのか、私が沖縄に通い続けて四半世紀を超えています。TBSのニュース23、かつて筑紫哲也さんがキャスターをしていた番組に私も参加していました。筑紫さんは記者として沖縄への眼差しを持ち続けた人で、「沖縄から日本が見える、その矛盾がつまっている」と話していました。米軍が起こした交通事故で息子を失った父親が日米地位協定の壁に立ち向かい訴訟を起こした問題を取材したことなどから、私も沖縄へ深く関わるようになりました。そしてなぜ沖縄の今があるのか、という意識からどんどん過去の歴史を遡っていくようになりました。安全保障の問題は、イデオロギーになりがちですが、実は生活の問題で、主権国家としての振る舞いが問われている、その矛盾が一番押しつけられているのが沖縄です。
米軍統治下の政治家・瀬長亀次郎、カメジローの不屈の闘いを描いた番組は最初深夜の時間帯に放送されました。翌朝、視聴者からの反応の大きさに驚きました。今度は違った形で全国に届けたいと映画化に踏みきりました。映画館に多くの人が集まってくれたのを見て、涙が出そうになりました。
2作目はカメジローの230冊の日記をもとに、主権を取り戻して日本に還るための奮闘を描きました。辺野古への基地移転問題など、政府は、今も沖縄の民意に向き合おうとしていません。最近も埋め立ての土砂を、沖縄戦の犠牲者の遺骨が眠る南部から運ぼうとしています。戦時中最後の知事として送り込まれた島田叡についての映画は、その沖縄戦に立ち返った作品です。内務官僚として軍とともにする立場にあった島田が、最後に「個」として「人間」として何をしたのかを描きたかったのです。島田は全体主義に「個」が押しやられる中で、最後に「個」に自らが向き合うことができたのではないか。この映画をリーダー論としても見ていだだけると思います。
そしてカメジローもまた「個」の大切さを訴え、「個」の力が積み上げられて沖縄ができていた、と信じていたのです。民主主義とはどういうものか、沖縄がそれを示しているのではないか、私はこれまでと変わらない視点を持って、やっていきたいと思います。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年10月25日号
2021年11月05日
【JCJ賞情報】第64回JCJ賞贈賞式開く ジャーナリズムの本流太く
日本ジャーナリスト会議は9月25日、東京・文京区の全水道会館で第64回JCJ賞の贈賞式を開いた。今回は外国人労働者の使い捨て、入国管理制度の人権無視を世に問うた2作品がJCJ大賞に輝いた。スリランカ人女性が入管施設で非人間的な扱いを受け死亡する事件が3月にあり、日本の人権状況が国際的にも懸念される中で、徹底した取材で問題を掘り起こした2作品が高く評価された。
式では今年4月にJCJ代表委員になった山口昭男さん(元岩波書店社長)が開会あいさつをした。1955年に創設されたJCJの歴史に触れ「初代の議長は『世界』編集長の吉野源三郎氏だった。故郷へ帰ってきたなという感じだ。55年の頃と比べると今はジャーナリズムが劣化したと思わざるを得ない状況だ。しかし今回の受賞作を見ると、いやそんなことはない」と期待を示した。評論家・加藤周一氏から若いころに聞いた言葉を引用しながら「小さな流れ(マイノリティ)かもしれないが、歴史の中の本流を行っている。どんどん太い流れになることを願う」と受賞者にエールを送った。
続いて映画「生きろ 島田叡―戦中最後の沖縄県知事」などを制作したTBS報道局の佐古忠彦さんが「私と沖縄」のテーマで記念講演。JCJ賞選考委員の藤森研さんによる講評の後、賞状の贈呈と受賞者のスピーチに移った。
JCJ賞では、ETV特集「原発事故最悪のシナリオ=`そのとき誰が命を懸けるのか」でNHKディレクターの石原大史さん、「菅義偉首相 学術会議人事介入スクープとキャペーン」で、しんぶん赤旗編集局長の小木曽陽司さん、映画「標的」で監督の西嶋真司さん、特別賞で故・俵義文さん(『戦後教科書運動史』著者)のご家族、高瀬芙由美さんと、子どもと教科書全国ネット21代表委員の鈴木敏夫さんが思いを語った。
JCJ大賞となった『ルポ 入管―絶望の外国人収容施設』(ちくま新書)の著者、平野雄吾さんは共同通信エルサレム支局長で、ビデオメッセージを寄せた。同じく大賞のキャンペーン連載「五色(いつついろ)のメビウス ともにはたらき ともにいきる」では信濃毎日新聞報道部次長の牛山健一さんが取材の経緯などを話した。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年10月25日号
式では今年4月にJCJ代表委員になった山口昭男さん(元岩波書店社長)が開会あいさつをした。1955年に創設されたJCJの歴史に触れ「初代の議長は『世界』編集長の吉野源三郎氏だった。故郷へ帰ってきたなという感じだ。55年の頃と比べると今はジャーナリズムが劣化したと思わざるを得ない状況だ。しかし今回の受賞作を見ると、いやそんなことはない」と期待を示した。評論家・加藤周一氏から若いころに聞いた言葉を引用しながら「小さな流れ(マイノリティ)かもしれないが、歴史の中の本流を行っている。どんどん太い流れになることを願う」と受賞者にエールを送った。
続いて映画「生きろ 島田叡―戦中最後の沖縄県知事」などを制作したTBS報道局の佐古忠彦さんが「私と沖縄」のテーマで記念講演。JCJ賞選考委員の藤森研さんによる講評の後、賞状の贈呈と受賞者のスピーチに移った。
JCJ賞では、ETV特集「原発事故最悪のシナリオ=`そのとき誰が命を懸けるのか」でNHKディレクターの石原大史さん、「菅義偉首相 学術会議人事介入スクープとキャペーン」で、しんぶん赤旗編集局長の小木曽陽司さん、映画「標的」で監督の西嶋真司さん、特別賞で故・俵義文さん(『戦後教科書運動史』著者)のご家族、高瀬芙由美さんと、子どもと教科書全国ネット21代表委員の鈴木敏夫さんが思いを語った。
JCJ大賞となった『ルポ 入管―絶望の外国人収容施設』(ちくま新書)の著者、平野雄吾さんは共同通信エルサレム支局長で、ビデオメッセージを寄せた。同じく大賞のキャンペーン連載「五色(いつついろ)のメビウス ともにはたらき ともにいきる」では信濃毎日新聞報道部次長の牛山健一さんが取材の経緯などを話した。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年10月25日号
2020年11月16日
第63回JCJ賞贈賞式開く 各受賞者 取材への思い語る=須貝道雄
日本ジャーナリスト会議は10月10日、東京都千代田区のエデュカス東京で第63回JCJ賞の贈賞式を開いた。安倍晋三首相の「桜を見る会」私物化スクープと一連の報道でJCJ大賞となった「しんぶん赤旗」日曜版の山本豊彦編集長のほか、4人のJCJ賞受賞者が取材に挑んだ思いをスピーチした。
式ではJCJの選考委員が各受賞作を紹介した。『証言 沖縄スパイ戦史』(三上智恵さん=集英社新書)では、酒井憲太郎さんが「沖縄戦を引きずり、今もあの空間を生きている元少年兵の証言が圧巻だった」と述べた。『孤塁 双葉郡消防士たちの3・11』(吉田千亜さん=岩波書店)では、伊藤洋子さんが「約70人の消防士を丁寧に取材している。東電や国の対応のひどさに気づかされる」と指摘。
森友問題で自殺した財務省職員の遺書を『週刊文春』で公開した赤木雅子さんと相澤冬樹さんについて、藤森研さんは「勇気と信頼に基づいた二人の共同作業だったと思う」と結んだ。北海道放送「ヤジと民主主義〜小さな自由が排除された先に」(長沢祐さん)では、石川旺さんが「プラカードを持つ女性を排除するため『お茶飲む?買ってあげるよ』と言葉をかける女性警察官の姿に、命令に従うだけの平凡な人が巨大な罪を犯してしまう、元ナチスの戦犯・アイヒマンの『凡庸な悪』と重なった」と語った。
「しんぶん赤旗」日曜版のスクープでは、諌山修さんが「当初、多くの新聞が『桜を見る会』の問題を無視する中、ツイッターやテレビのワイドショーで燃え上がった」とメディア状況の変化を強調した。
一方、選考委員の鈴木耕さんは賞全体の講評をした。今回のJCJ賞には新聞23点、出版33点、放送37点、映画3点の応募があった。そのうち選に漏れた作品をいくつか取り上げ、解説した。
新聞では北海道新聞の「道警ヤジ排除問題」追及報道。北海道放送の作品と重複するため、どちらを選ぶかの議論の末に放送に決まった。毎日新聞の「NHKかんぽ不正報道への圧力に関する一連の報道」はNHKの報道機関としての資格を問う奥深い内容だった。出版では『かくされてきた戦争孤児』(講談社)が力作。85歳になる著者の金田茉莉さん自身が戦争孤児で、コツコツと拾い集めた孤児の証言は「胸に迫る」と評した。
放送では沖縄テレビ放送の「サンマ デモクラシー」が出色だった。米軍統治下の沖縄で、キャラウェイ高等弁務官が大衆魚のサンマに課税した。魚屋のおかみさんが1人で立ち向かい、裁判で課税撤回を勝ち取る様を描いた。
今年の贈賞式は新型コロナウイルス感染防止のため、関係者のみで開催し、その模様はライブで配信した。
須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年10月25日号
式ではJCJの選考委員が各受賞作を紹介した。『証言 沖縄スパイ戦史』(三上智恵さん=集英社新書)では、酒井憲太郎さんが「沖縄戦を引きずり、今もあの空間を生きている元少年兵の証言が圧巻だった」と述べた。『孤塁 双葉郡消防士たちの3・11』(吉田千亜さん=岩波書店)では、伊藤洋子さんが「約70人の消防士を丁寧に取材している。東電や国の対応のひどさに気づかされる」と指摘。
森友問題で自殺した財務省職員の遺書を『週刊文春』で公開した赤木雅子さんと相澤冬樹さんについて、藤森研さんは「勇気と信頼に基づいた二人の共同作業だったと思う」と結んだ。北海道放送「ヤジと民主主義〜小さな自由が排除された先に」(長沢祐さん)では、石川旺さんが「プラカードを持つ女性を排除するため『お茶飲む?買ってあげるよ』と言葉をかける女性警察官の姿に、命令に従うだけの平凡な人が巨大な罪を犯してしまう、元ナチスの戦犯・アイヒマンの『凡庸な悪』と重なった」と語った。
「しんぶん赤旗」日曜版のスクープでは、諌山修さんが「当初、多くの新聞が『桜を見る会』の問題を無視する中、ツイッターやテレビのワイドショーで燃え上がった」とメディア状況の変化を強調した。
一方、選考委員の鈴木耕さんは賞全体の講評をした。今回のJCJ賞には新聞23点、出版33点、放送37点、映画3点の応募があった。そのうち選に漏れた作品をいくつか取り上げ、解説した。
新聞では北海道新聞の「道警ヤジ排除問題」追及報道。北海道放送の作品と重複するため、どちらを選ぶかの議論の末に放送に決まった。毎日新聞の「NHKかんぽ不正報道への圧力に関する一連の報道」はNHKの報道機関としての資格を問う奥深い内容だった。出版では『かくされてきた戦争孤児』(講談社)が力作。85歳になる著者の金田茉莉さん自身が戦争孤児で、コツコツと拾い集めた孤児の証言は「胸に迫る」と評した。
放送では沖縄テレビ放送の「サンマ デモクラシー」が出色だった。米軍統治下の沖縄で、キャラウェイ高等弁務官が大衆魚のサンマに課税した。魚屋のおかみさんが1人で立ち向かい、裁判で課税撤回を勝ち取る様を描いた。
今年の贈賞式は新型コロナウイルス感染防止のため、関係者のみで開催し、その模様はライブで配信した。
須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年10月25日号
2020年09月10日
【2020年度第63回JCJ賞】 大賞はしんぶん赤旗日曜版 桜疑惑のスクープ報道=JCJ賞選考委員会
【JCJ大賞】 <安倍晋三首相の「桜を見る会」私物化スクープと一連の報道> しんぶん赤旗日曜版
しんぶん赤旗日曜版は2019年10月13日号で、桜を見る会に首相の地元山口の数百人の後援会員を大量招待していた事実をスクープした。参加者の証言をもとに、安倍事務所が取り仕切り、高級ホテルで開いた前夜祭に山口の参加者を招待、税金でもてなした疑惑を告発。政権与党にも招待数を割り当てていた実態を明らかにした。この記事を契機に田村智子参院議員が国会で追及し、「桜」疑惑が一気に国政の重大課題に浮上。地道な調査報道を重ね、安倍政権の本性を明るみにしたスクープは国政、メディアに大きなインパクトを与えた。
【JCJ賞】
●三上智恵 『証言 沖縄スパイ戦史』(集英社新書)
終戦末期の沖縄、中野学校出身者の指揮のもと、二つの「護郷隊」が諜報、防諜、宣伝、謀略の秘密戦を戦った。著者は映画「沖縄スパイ戦史」完成後も徹底取材を継続敢行した。少年ゲリラ兵、その隊長たち、全国で準備された住民による遊撃戦、地上戦の恐怖、虐殺者たち、軍の「戦争マニュアル」に至る、長く封印されてきた凄まじい証言ばかりである。ここに沖縄戦−国内唯一のゲリラ戦が浮かび上がる。そしてこれは現代への鋭い警告である。
●吉田千亜『孤塁 双葉郡消防士たちの3・11』(岩波書店)
2011年3月11日の巨大地震につづく福島第一原発の爆発。「おきるはずのない」事故がおきた。著者は、これまで報道されず記録もされていなかった現地消防士たちの必死の活動(住民避難誘導、救助活動、原発内の火災・給水活動等)を1年かけて克明に取材。刻々と変化する事態を追いつつ、125名中66名から聞き取ったエピソードを組み込んだルポルタージュが胸に迫る。事実の恐ろしさ、国と東電の後手後手で杜撰な対応を告発
●「 森友問題で自殺した財務省職員の遺書の公開 」赤木雅子 相澤冬樹
森友問題での安倍首相の「私や妻がかかわっていれば首相も議員も辞める」との答弁をきっかけに、当時の財務省佐川宣寿理財局長は公文書改ざんを指示する。改ざんを強要された近畿財務局職員赤木俊夫さんは抗い、経過を克明に「遺書」として残してくれた。それは妻雅子さんの決意とジャーナリスト相澤冬樹氏によって白日の下に曝された。断罪されるべき相手は明らかだ。改ざん事件発覚後、安倍政権による国の私物化の責任はまだ誰も負っていない。
●「ヤジと民主主義〜小さな自由が排除された先に〜」 北海道放送
2019年7月の参議院選の時に札幌で自民党の応援に入った安倍首相に、ヤジを飛ばした男女や無言でプラカードを掲げようとした人たちが警官に取り囲まれて排除された。番組では当時の映像を集め、元警察官や専門家、治安維持法違反で投獄された方などに問題点を聞き多角的に検証。特に撮影された現場の警察官の対応は命令に盲目的に従って権力行使をする末端という問題点を明瞭に映像化した。ヤジすら言えない社会の先に民主主義が問われていると警鐘を鳴らす。
なおJCJ賞の贈賞式は10月10日(土) 14:00〜 エデュカス東京(東京・麹町)で行います
しんぶん赤旗日曜版は2019年10月13日号で、桜を見る会に首相の地元山口の数百人の後援会員を大量招待していた事実をスクープした。参加者の証言をもとに、安倍事務所が取り仕切り、高級ホテルで開いた前夜祭に山口の参加者を招待、税金でもてなした疑惑を告発。政権与党にも招待数を割り当てていた実態を明らかにした。この記事を契機に田村智子参院議員が国会で追及し、「桜」疑惑が一気に国政の重大課題に浮上。地道な調査報道を重ね、安倍政権の本性を明るみにしたスクープは国政、メディアに大きなインパクトを与えた。
【JCJ賞】
●三上智恵 『証言 沖縄スパイ戦史』(集英社新書)
終戦末期の沖縄、中野学校出身者の指揮のもと、二つの「護郷隊」が諜報、防諜、宣伝、謀略の秘密戦を戦った。著者は映画「沖縄スパイ戦史」完成後も徹底取材を継続敢行した。少年ゲリラ兵、その隊長たち、全国で準備された住民による遊撃戦、地上戦の恐怖、虐殺者たち、軍の「戦争マニュアル」に至る、長く封印されてきた凄まじい証言ばかりである。ここに沖縄戦−国内唯一のゲリラ戦が浮かび上がる。そしてこれは現代への鋭い警告である。
●吉田千亜『孤塁 双葉郡消防士たちの3・11』(岩波書店)
2011年3月11日の巨大地震につづく福島第一原発の爆発。「おきるはずのない」事故がおきた。著者は、これまで報道されず記録もされていなかった現地消防士たちの必死の活動(住民避難誘導、救助活動、原発内の火災・給水活動等)を1年かけて克明に取材。刻々と変化する事態を追いつつ、125名中66名から聞き取ったエピソードを組み込んだルポルタージュが胸に迫る。事実の恐ろしさ、国と東電の後手後手で杜撰な対応を告発
●「 森友問題で自殺した財務省職員の遺書の公開 」赤木雅子 相澤冬樹
森友問題での安倍首相の「私や妻がかかわっていれば首相も議員も辞める」との答弁をきっかけに、当時の財務省佐川宣寿理財局長は公文書改ざんを指示する。改ざんを強要された近畿財務局職員赤木俊夫さんは抗い、経過を克明に「遺書」として残してくれた。それは妻雅子さんの決意とジャーナリスト相澤冬樹氏によって白日の下に曝された。断罪されるべき相手は明らかだ。改ざん事件発覚後、安倍政権による国の私物化の責任はまだ誰も負っていない。
●「ヤジと民主主義〜小さな自由が排除された先に〜」 北海道放送
2019年7月の参議院選の時に札幌で自民党の応援に入った安倍首相に、ヤジを飛ばした男女や無言でプラカードを掲げようとした人たちが警官に取り囲まれて排除された。番組では当時の映像を集め、元警察官や専門家、治安維持法違反で投獄された方などに問題点を聞き多角的に検証。特に撮影された現場の警察官の対応は命令に盲目的に従って権力行使をする末端という問題点を明瞭に映像化した。ヤジすら言えない社会の先に民主主義が問われていると警鐘を鳴らす。
なおJCJ賞の贈賞式は10月10日(土) 14:00〜 エデュカス東京(東京・麹町)で行います
2020年04月13日
【JCJ賞情報】2020年度(第63回)日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)─応募と推薦のお願い
2020年度(第63回)日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)
応募と推薦のお願い
応募と推薦のお願い
日本ジャーナリスト会議(JCJ)は、年間のすぐれたジャーナリズム活動を顕彰するため、1958年以来「JCJ賞」を設け、贈賞してきました。今年は63回となりました。
今年度も優れた労作の多数応募を願っています。そして今年度は今後の活躍と期待を込めて新人賞を設けました。自薦・他薦によって応募といたします。入賞作には賞状と記念品が贈呈されます。
ただし、今回のJCJ賞は、コロナ禍問題の影響により、JCJ賞の選考作業や贈賞の公表日が流動的にならざるを得ません。大幅な先送りもあり得ますことをお含み置きください。
■日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)募集規定
〈募集ジャンルと応募資格〉
新聞、放送、出版、写真作品のほか、市民運動や地域活動なども含み、個人・グループを問いません。
提出期限までの1年以内に発表された作品 (連載の場合は同期間に発表) を対象とします。
〈提出条件〉
郵送または宅配便で下記、提出先にお送りください。
◆書籍の場合はその現物1冊。放送作品はビデオ、DVDを1本。
◆雑誌、新聞の場合は、その掲載部分をコピー(カラー写真を含む場合はカラー複写)1セット。
※1作品に1枚、エントリーシートを必ず同封してください。特に連絡先担当者、電話、メールアドレスは必ず明記してください。FAX、メールによる送稿は受け付けません。エントリーシートはJCJ事務所に常備しますが、ここに添付のPDF版も活用してください。
●2020年JCJ賞エントリーシート.pdf
〈提出期限〉
◇新聞、出版作品は5月22日(金)
◇放送・その他の作品は5月29日(金)
〈提出先〉
〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-18-1 千石屋ビル 402号
日本ジャーナリスト会議 「JCJ賞」 応募作品係 (赤で目立つように表記)
※ 応募作品は返却しません。選考経過、選考理由などについてのお問い合わせには応じません。
※ 選考結果は7月中旬に主要新聞に発表するほか、JCJホームページに掲載します。
●なお今回、コロナ禍の影響のため選考作業、贈賞の公表日については、通年よりも大幅に先送りになる可能性があります。お含み置きください。
〈選考委員〉 (50音順・敬称略)
諌山 修(ジャーナリスト) 石川 旺(上智大学名誉教授) 伊藤洋子(元東海大学教授) 酒井憲太郎(フォトジャーナリスト) 鈴木 耕(編集者) 藤森 研(元朝日新聞論説委員)
〈問い合わせ先〉 JCJ事務所:電話 03-3291-6475 (月、水、金曜日の13時より18時まで)
Eメール:office@jcj.sakura.ne.jp
2020年4月13日
日本ジャーナリスト会議
JCJ事務局長 須貝道雄
JCJ賞推薦委員会統括責任者 大場幸夫
日本ジャーナリスト会議
JCJ事務局長 須貝道雄
JCJ賞推薦委員会統括責任者 大場幸夫
2019年12月09日
【JCJ賞見る会】山形放送「想画と綴り方〜戦争が奪った子どもたちの心〜」 戦時中の教育弾圧に焦点
大学の教室のスクリーンに映し出されるTVの映像。そこには、昭和の初期に農村で働く人たちの姿を克明に描いた絵が次々に映し出され思わず見入ってしまう。絵を描いたのは山形県の小学生だ。
自分の身の回りをありのままに描く「想画」の実践が行われた山形県の小学校、しかし指導にあたった教師は治安維持法で検挙されてしまう。番組は戦時中の教育弾圧を掘り下げ、「今」に警鐘を鳴らす。
山形放送が制作したドキュメンタリー「想画と綴り方〜戦争が奪った子どもたちの心〜」は2019年度のJCJ賞を受賞した。この作品を見る会が10月末、立教大学メディア社会学科の砂川浩慶教授のゼミなどが主催して開かれた。会場には、番組制作の責任者の伊藤清隆報道制作局長も招かれ、番組視聴後に学生も加わり、意見を交わした。視聴者と制作者が一体となった空間というのは実はとても嬉しいもので、伊藤さんには緊張感だけではなく笑顔もこぼれていた。
伊藤さんはこの番組を思い立った契機について、おととし安倍政権が強行に成立させた共謀罪が、戦前の治安維持法に似ているのではないかという危機感、さらにその頃、地元山形で「想画」を本にまとめようという当時の小学生たちの活動を知ったことをあげる。
「想画」をテーマに共謀罪の恐ろしさ、そして忖度や同調圧力が強まり閉塞感に覆われている今の社会に、「釘一本を打ち込む」番組を制作したいと考えたという。そして戦争を再び起こさないということが報道の一丁目一番地であり、だからこそ昭和の戦争の記憶を令和の時代にどう伝えていけるのかを問い続けていると、静かに決意を語った。
砂川さんに言わせれば、学生たちがいま一番接しているのはツイッターということだが、その砂川ゼミの学生からの「小中高では与えられたテーマに模範的に回答していたので、好きに書いて、と大学で言われた時、戸惑った」の声に伊藤さんはこう答えた。
「模範的は忖度や空気を読むことにつながる、何を表現するのか、まず自分と向き合い自分の心のうちと、取り巻く世界をどう表現していくのかを考えて欲しい」と励ましのエールを送った。
古川英一
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
自分の身の回りをありのままに描く「想画」の実践が行われた山形県の小学校、しかし指導にあたった教師は治安維持法で検挙されてしまう。番組は戦時中の教育弾圧を掘り下げ、「今」に警鐘を鳴らす。
山形放送が制作したドキュメンタリー「想画と綴り方〜戦争が奪った子どもたちの心〜」は2019年度のJCJ賞を受賞した。この作品を見る会が10月末、立教大学メディア社会学科の砂川浩慶教授のゼミなどが主催して開かれた。会場には、番組制作の責任者の伊藤清隆報道制作局長も招かれ、番組視聴後に学生も加わり、意見を交わした。視聴者と制作者が一体となった空間というのは実はとても嬉しいもので、伊藤さんには緊張感だけではなく笑顔もこぼれていた。
伊藤さんはこの番組を思い立った契機について、おととし安倍政権が強行に成立させた共謀罪が、戦前の治安維持法に似ているのではないかという危機感、さらにその頃、地元山形で「想画」を本にまとめようという当時の小学生たちの活動を知ったことをあげる。
「想画」をテーマに共謀罪の恐ろしさ、そして忖度や同調圧力が強まり閉塞感に覆われている今の社会に、「釘一本を打ち込む」番組を制作したいと考えたという。そして戦争を再び起こさないということが報道の一丁目一番地であり、だからこそ昭和の戦争の記憶を令和の時代にどう伝えていけるのかを問い続けていると、静かに決意を語った。
砂川さんに言わせれば、学生たちがいま一番接しているのはツイッターということだが、その砂川ゼミの学生からの「小中高では与えられたテーマに模範的に回答していたので、好きに書いて、と大学で言われた時、戸惑った」の声に伊藤さんはこう答えた。
「模範的は忖度や空気を読むことにつながる、何を表現するのか、まず自分と向き合い自分の心のうちと、取り巻く世界をどう表現していくのかを考えて欲しい」と励ましのエールを送った。
古川英一
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
2019年10月13日
【JCJ賞講評】 受賞逸した9作品を紹介 重大問題に切り込む=伊藤洋子選考委員
本欄では最終選考に残った14件中受賞した5作品を除く9作品を紹介する。
「奴隷労働―ベトナム人技能実習生の実態」花伝社 巣内尚子
ベトナム政府の労働力輸出政策と日本政府の労働力輸入政策が生じた「技能実習制度」により、多額の借金と長時間・低賃金に縛られる奴隷労働を生みだした。その実態を140人余りの人々の声からあぶり出した労作である。
「未和 NHK記者はなぜ過労死したのか」岩波書店 尾崎孝史
31歳で急死したNHK報道記者の事件は過労死認定されるが、NHKは死後4年間隠蔽する。取材から浮かび上がるのは巨大組織の理不尽さであり、安倍晋三政権による働き方改革の空しい実態である。
「紛争地の看護師」小学館 白川優子
「国境なき医師団」の一員として紛争地へ派遣され、被害者たちが抱える怒りを「私がそれを伝えなければ」と、自らの経験を記録。一時はジャーナリストを志した筆者は、見事なルポでその役割を果たした。
「安保法制下で進む! 先制攻撃できる自衛隊」あけび書房 半田滋
戦争ができる国固めを推し進めてきた安倍政権の狙いが活写される。中核となる18大綱が導く日本とは「政治主導による軍事国家という未体験ゾーンに突入しつつある」ものと鋭く分かりやすい。
「捜査当局の顧客情報取得」を巡る一連の報道 共同通信社社会部取材班 共同通信社
個人情報を網羅するポイントカードやクレジットカード情報が警察や検察の「捜査関係事項照会」なる内部手続きで日常的に取得され、捜査にフル活用されているという一連の報道は「監視社会化」への恐るべき警鐘である。
「公文書クライス〜ずさんな公文書管理の追求キャンペーン」毎日新聞社
公用メールが官僚の恣意的判断で破棄され、メモをとるな、議事録を残すな、首相の面談記録は「不存在」とするなど公文書の扱いに独自の取材を重ねる中で、秘密国家への横行が明らかになっていく。
「行ってみれば戦場〜葬られたミサイル攻撃」名古屋テレビ放送
湾岸戦争直前、米政権から自衛隊派遣要請を受けた日本政府は、民間貨物船を中東派遣船に。現地は戦場そのもの、実情を綴った船長報告書は無期限極秘文書とされた。この文書の発見をきっかけとして取り組んだ本作は当面する課題を突き付ける。
「法と恨(はん) 朝鮮女子挺身隊の戦後」北日本放送
戦時中軍需工場だった富山市の不二越は朝鮮からの少女たちが働いていた。過酷な労働を経て、帰国しても誤解と偏見に悩まされ苦しみ続けてきた訴えに“もう一つの徴用工問題”が浮かび上がる。
首相官邸の情報隠しと取材拒否、記者攻撃に対する毅然としたジャーナリズム活動と、それを支えた新聞社 受賞対象:望月衣塑子記者と東京新聞編集局
東京新聞の望月記者の取材活動はいまや誰もが認めるところだが、ご本人が取材班の一員である「税を追う」キャンペーンを大賞として顕彰することにより、記者活動の成果を讃えることとした。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
「奴隷労働―ベトナム人技能実習生の実態」花伝社 巣内尚子
ベトナム政府の労働力輸出政策と日本政府の労働力輸入政策が生じた「技能実習制度」により、多額の借金と長時間・低賃金に縛られる奴隷労働を生みだした。その実態を140人余りの人々の声からあぶり出した労作である。
「未和 NHK記者はなぜ過労死したのか」岩波書店 尾崎孝史
31歳で急死したNHK報道記者の事件は過労死認定されるが、NHKは死後4年間隠蔽する。取材から浮かび上がるのは巨大組織の理不尽さであり、安倍晋三政権による働き方改革の空しい実態である。
「紛争地の看護師」小学館 白川優子
「国境なき医師団」の一員として紛争地へ派遣され、被害者たちが抱える怒りを「私がそれを伝えなければ」と、自らの経験を記録。一時はジャーナリストを志した筆者は、見事なルポでその役割を果たした。
「安保法制下で進む! 先制攻撃できる自衛隊」あけび書房 半田滋
戦争ができる国固めを推し進めてきた安倍政権の狙いが活写される。中核となる18大綱が導く日本とは「政治主導による軍事国家という未体験ゾーンに突入しつつある」ものと鋭く分かりやすい。
「捜査当局の顧客情報取得」を巡る一連の報道 共同通信社社会部取材班 共同通信社
個人情報を網羅するポイントカードやクレジットカード情報が警察や検察の「捜査関係事項照会」なる内部手続きで日常的に取得され、捜査にフル活用されているという一連の報道は「監視社会化」への恐るべき警鐘である。
「公文書クライス〜ずさんな公文書管理の追求キャンペーン」毎日新聞社
公用メールが官僚の恣意的判断で破棄され、メモをとるな、議事録を残すな、首相の面談記録は「不存在」とするなど公文書の扱いに独自の取材を重ねる中で、秘密国家への横行が明らかになっていく。
「行ってみれば戦場〜葬られたミサイル攻撃」名古屋テレビ放送
湾岸戦争直前、米政権から自衛隊派遣要請を受けた日本政府は、民間貨物船を中東派遣船に。現地は戦場そのもの、実情を綴った船長報告書は無期限極秘文書とされた。この文書の発見をきっかけとして取り組んだ本作は当面する課題を突き付ける。
「法と恨(はん) 朝鮮女子挺身隊の戦後」北日本放送
戦時中軍需工場だった富山市の不二越は朝鮮からの少女たちが働いていた。過酷な労働を経て、帰国しても誤解と偏見に悩まされ苦しみ続けてきた訴えに“もう一つの徴用工問題”が浮かび上がる。
首相官邸の情報隠しと取材拒否、記者攻撃に対する毅然としたジャーナリズム活動と、それを支えた新聞社 受賞対象:望月衣塑子記者と東京新聞編集局
東京新聞の望月記者の取材活動はいまや誰もが認めるところだが、ご本人が取材班の一員である「税を追う」キャンペーンを大賞として顕彰することにより、記者活動の成果を讃えることとした。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
2019年10月12日
【JCJ賞受賞者挨拶】 福島原発事故直後の医師らの奔走と苦悩 NHK 鍋島塑峰ディレクター 教訓を生かせるか見たい
受賞にあたり、取材に応じて下さった医療関係者、諸先輩の顔が浮かび、番組作りに一緒に携わってくださった方々に感謝します。
私はディレクターとして2015年から3年間、福島局に勤務しました。福島で自分は何をテーマにし、取材するのか。その時、原発事故で避難する際、入院していた方々のうち亡くなった方が多くいることを知りました。事故直後に住民がどのように避難し、どうして命を救えなかったのか、国の被爆医療態勢はどうだったのか。それを最前線に飛び込んでいった医療者の目線で描こうと思いました。そして企画から放送まで3年がかかりました。
現場に入った医師たちは鮮明に記憶していて、そこに体温を感じました。医師たちは学会でその体験を発表し、その中で泣かれる人もいたし、もっとできたのではないかと後悔の念を持つ人もいました。原子力安全神話の中で十分な準備はなく、そして自分のことではなく他人事だと思っていたのです。医師たちは、過去ではなく、今にも通じる問題としての認識を深め、国の医療態勢の充実を訴えています。
番組の伝え方としては、医師たちが現場でスマホなどで撮影した3000枚の映像を元に時系列で伝える方法を取りました。事故直後には大手メディアは避難し、現地の記録はあまり残っていません。これに対し医療者は直後の映像を残していて、それは、歴史的にも価値があります。3000枚の一枚一枚に、そこから匂いが立ち上るような・・・それぞれの医師たちの記憶がこめられている写真をもとに、同じ時間、どこで何が起きていたのか、いわば横串にすることで、立体的に番組化していきました。
国策としての原子力政策、国の責任は一体どこにあるのか。事故の教訓をどういかしていくのかを見続け、問い続けていきます。
10年、20年、50年後にも、原発事故の直後に医療の最前線で何が起きていたのか、教訓としてくみ取れるような記録を残していきたいという思いで番組を作りましたJCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
私はディレクターとして2015年から3年間、福島局に勤務しました。福島で自分は何をテーマにし、取材するのか。その時、原発事故で避難する際、入院していた方々のうち亡くなった方が多くいることを知りました。事故直後に住民がどのように避難し、どうして命を救えなかったのか、国の被爆医療態勢はどうだったのか。それを最前線に飛び込んでいった医療者の目線で描こうと思いました。そして企画から放送まで3年がかかりました。
現場に入った医師たちは鮮明に記憶していて、そこに体温を感じました。医師たちは学会でその体験を発表し、その中で泣かれる人もいたし、もっとできたのではないかと後悔の念を持つ人もいました。原子力安全神話の中で十分な準備はなく、そして自分のことではなく他人事だと思っていたのです。医師たちは、過去ではなく、今にも通じる問題としての認識を深め、国の医療態勢の充実を訴えています。
番組の伝え方としては、医師たちが現場でスマホなどで撮影した3000枚の映像を元に時系列で伝える方法を取りました。事故直後には大手メディアは避難し、現地の記録はあまり残っていません。これに対し医療者は直後の映像を残していて、それは、歴史的にも価値があります。3000枚の一枚一枚に、そこから匂いが立ち上るような・・・それぞれの医師たちの記憶がこめられている写真をもとに、同じ時間、どこで何が起きていたのか、いわば横串にすることで、立体的に番組化していきました。
国策としての原子力政策、国の責任は一体どこにあるのか。事故の教訓をどういかしていくのかを見続け、問い続けていきます。
10年、20年、50年後にも、原発事故の直後に医療の最前線で何が起きていたのか、教訓としてくみ取れるような記録を残していきたいという思いで番組を作りましたJCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号