2025年11月14日

【25年JCJ賞贈賞式記念講演】犠牲を犠牲で終わらせない 「黒川の女たち」監督 松原文枝さん

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 私も9年前にワイマール憲法の教訓をテーマにした報道番組で、JCJ賞をいただいたことをとても誇りに思っています。今回の受賞者の皆さんが、社会に対して影響を持っていくことはとても大切なことだと思います。

「黒川の女たち」は岐阜県の旧黒川村から満州に開拓団として渡った女性たちの受けた性暴力の話です。団員を守るために未婚の女性15人がソ連兵に差し出しされました。帰国後も70年近く隠され、なかったことにされたことを、10年ほど前から当事者の女性たちが語り出しました。
 戦時下に女性を道具のように使う構造を知って欲しい。それを公にした女性たちの意思を引き継ぎ、当事者が語ったことの大きさを、本人たちを傷つけずに伝えていきたいと思いました。

「満州にいる時よりも帰国してからの方が哀しかった」と話す女性の言葉から、社会の受けとめ、今にもつながる被害者がレッテルを貼られる構図についてもわかってほしいと思いました。
 また彼女たちの子どもたちの世代にあたる人たちが、親の世代の責任を引き受けて謝罪し、碑文に加害性についても記しました。
 次の世代にきちんと歴史に向き合う、向かい合うことができる人たちがいることも映画の中で伝えたかったことです。
 一度は匿名でしか出てくれなかった女性が、証言をしたことで、再び会った時には笑顔でカメラに顔を出してくれました。まったく想像もしなかったことで、過去を引き受けることは未来を切り拓くことなのだと感じました。

 戦後80年を意識する中で、私は去年、証言をした女性が亡くなるその瞬間に偶然立ち会いました。
 この女性たちが成し遂げたことを残していく責務がある。女性たちの犠牲を犠牲だけで終わらせてはいけないのです。
 映画は思考を促す媒体で、見る人の問題意識を覚醒します。戦争を自分事として考えてほしい、為政者による歴史の書き換えをさせない、実在する当事者の証言は揺るぎない事実です。
 戦争の加害と被害を教訓にしていく、歴史の修正をさせてはいけない、それを映画という形で残していけたならと思いました。
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年10月25日号  
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2025年11月12日

【25年JCJ賞講評】差別・戦争・権力に抗う ネットメディアに注目=藤森 研

 戦後80年。いま日本が直面する危険への、熱のこもった警鐘に、ジャーナリストの本気の危機感が感じられた。
今年のJCJ賞の応募は新聞、出版、放送、ネット、映画の5ジャンル合わせて80点。推薦委員会を経て、JCJ賞選考委員会で議論した作品は16点だった。大きな紛糾はなく6点が賞に決まったが、受賞しなかった作品にも優れたものが多くあった。

 そこで、最終選考に残った16点の全てを、五つの作品群に位置づけて、今の時代状況と、ジャーナリズム活動を考えていきたい。
第一の作品群は、外国人差別に立ち向かったものだ。
 JCJ大賞の安田浩一氏の著書『地震と虐殺 1923−2024』は、関東大震災の際の軍や自警団による朝鮮人らの虐殺を調査した、力のこもったルポルタージュだ。
 102年前の惨事は今に「地続き」だ、というメッセージがひしひしと伝わってくる本だ。追悼文送付をあえてやめた小池都知事、ヘイト・デマを叫ぶ集団。今夏には、排外的主張が選挙で一定の支持を得た。総裁選でもそうだ。
 荒川沿いの追悼碑を守り、今も虐殺の史実を問い続ける在日コリアン2世は、「なぜそこまで熱心に?」という著者の問いに即答した。「私を殺さない人を増やすため」

 賞には至らなかったが、NHKのETV特集「フェイクとリアル 川口 クルド人真相」も排外主義を問う番組だった。SNSでのクルド人ヘイトの推移を分析し、背景を取材した。川口市内を勝手にパトロールしていたある男性は、自らを「川口自警団」と名乗った。ぞっとするような「地続き」がいま埼玉県南部にある。

 第二の作品群は、日本が直面する戦争への流れを、どう阻むかに取り組んだ報道だ。
 JCJ賞になった琉球新報のキャンペーンのタイトルは、「沖縄戦80年 新しい戦前にしない」。その直截さに、戦争は絶対にいやだという必死な思いが伝わる。
 対馬丸だけではなかった避難船沈没の悲劇の検証は、いま進む、先島住民の九州・山口避難計画の意味を考えさせずにおかない。新しい戦前にしないためには何が必要か? 「日米中の友好」「琉球列島の非軍事化」「健全な言論空間」「やっぱり選挙」など、識者たちの声も紹介している。

 今年は核被爆80年でもある。中国新聞はJCJ賞になった「ヒロシマドキュメント」を昨年8月から始めた。
 被爆当初はやけどや外傷による死だったが、8月20日ごろからは放射線での血液障害の死亡数が顕著になった、という「ふた山」型の事実を、私は初めて知った。
 核保有国のロシア、イスラエルは国際法を踏み躙り、いま人類は核危機に近づく。広島の発信の意味は重い。
受賞はしなかったが最終選考に残った3点も紹介する。
 吉田敏浩氏の著書『ルポ軍事優先社会−−暮らしの中の「戦争準備」』は、自衛隊への若者名簿の提供、軍事費の拡大の弊害、特定利用空港・港湾の指定など、日本の「新しい戦前」の現状を、過不足なくまとめている。
「沖縄タイムス」は、連載「悲(なちか)しや沖縄(うちなー)、戦争と心の傷」と「西田発言、神谷氏の『ひめゆり』発言に対する一連の報道」をエントリーした。応募締め切り後の、6月23日前後に大型の特集を展開した。
 テレビ朝日のテレメンタリーPlus「彷徨い続ける同胞」は、戦争の傷の長さを考えさせる。フィリピンで戦争により家族が離散し、迫害を恐れて現地で日本人であることを隠して生きてきた80代、90代の老人たち。「戦後80年」を、こうして生きてきた人たちもいる。

 第三の作品群は、いま現に、世界で起きている戦争を報じたものだ。
 「国境なき医師団」のメンバー萩原健氏の著書『ガザ、戦下の人道医療援助』は、悲惨なガザの実態を報告した。
 ほとんどの外国人ジャーナリストがガザに入れない中、萩原氏は空爆下の現地での、人道医療援助活動で見たことを克明に描く。地元民の争いに、「武装グループが威嚇射撃をした」と現地の仲間から萩原氏に連絡が来る。それは誰?と聞くと、「“政府”だよ」とだけ、お茶を濁すような答え。はっと思い当たり、問い詰めるのをやめた。そんなディテールが、たまらなく興味深い。ハマスのガザでの存在の仕方、住民との関係がほの見えた気がする。
 職業ジャーナリストの筆とは異なるが、たいへん貴重なジャーナリズム活動である。特別賞を贈るゆえんだ。
 ウクライナを描いたのは『移民・難民たちの新世界地図―ウクライナ発「地殻変動」1000日の記録』(村山祐介著)だ。ブチャのルポのほか、モルドバ、沿ドニエストルにも入り、ジョージアではロシアから避難してきた人たちの肩身の狭さを描いて考えさせる。賞は逃したが力作だ。

 第四に、警察という権力を監視した作品群がある。
 JCJ賞になったKTS鹿児島テレビ放送の「一連の鹿児島県警情報漏洩事件の報道 ドキュメンタリー『警察官の告白』」は、ウェブメディア「ハンター」の報道で明るみに出た鹿児島県警の隠蔽問題を、堂々と追いかけ、深い取材を重ねた力作だ。隠蔽された事件の被害者や、加害者とされる当事者にも、直接会っている。
 遠藤浩二氏の著書『追跡 公安捜査』は、警視庁公安部が見込み捜査をした末に、惨めに失敗した「国松警察庁長官狙撃事件」と「大川原化工機事件」を追った本だ。
 閉鎖的な公安警察にメスを入れた意味は大きい。日本の刑事司法の病いは、メディアが奮起しない限り治らない。
 やはり賞を逃したが、NHKスペシャル「法医学者の告白」は法医学にメスを入れた珍しい作品だった。検察、弁護双方の対立に、法医学が悪用される苦悩も描いている。

 第五の作品群は、ネットメディアの活発なジャーナリズム活動である。 
 JCJ賞となった「選挙運動費用・政治資金をめぐる一連の報道と、『選挙運動費用データベース』の構築」は、調査報道グループ・フロントラインプレスとスローニュースらによる地道な努力の成果だ。
 選挙運動費用収支報告書や領収書をこつこつと入力し、データベースを構築した。国会議員と企業の関係などが浮かび上がる。データベースをオープンにして、他のメディアや研究者、市民との共有を図る姿勢にも頷かされる。
 Tansa編集部による「自民支えた企業の半世紀」は、政治資金収支報告書のデータベースなどを基に、現在の諸課題にアタックしている。今回、賞は譲ったが、Tansaの探査報道には定評があり、活躍を期待したい。
 鹿児島県警の闇の告発で知られたニュースサイト「ハンター」の応募もあった。捜査資料を情報公開請求したが墨塗りだらけだったという報告だ。変わらず頑張っている。

 以上が15作品で、一つ足りない。
ETV特集「“法”の下の沈黙 優生保護法の罪1948−2024」は障害者への強制不妊手術がテーマで、上記五つの作品群には入らなかった。最高裁の違憲判決後も、ほとんどの当事者は沈黙している。その「沈黙」に焦点を当て、家族の複雑な思いなどを丹念に探っている。受賞とはならなかったが大事な視点だと思う。

 以上振り返ると、ネットメディアが構築した素材は、マスメディアにも開かれている。鹿児島県警の闇には、ハンターとKTSが結果的に轡を並べて挑んだ。
 媒体や社は違っても、切磋琢磨し、時には連帯してジャーナリズムが前進する可能性は開けている。今後へ、熱を込めてエールを送りたい。
        JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年10月25日号
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2025年10月14日

【JCJ賞】大賞に安田浩一氏 差別偏見あおる排外主義に警鐘=JCJ賞事務局

 JCJは2025年の第68回JCJ大賞に、関東大震災で朝鮮人や中国人、そして方言などで疑われた日本人を含んだ軍や警察、自警団による虐殺の資料や新たな記録を掘り起こし、なぜ虐殺が起きたのかに独自の地道な取材の積み重ねで迫った安田浩一氏の『地震と虐殺 1923−2024』を選んだ。
 また、JCJ賞には中国新聞社の被爆80年企画「ヒロシマドキュメント」、琉球新報社の沖縄戦80年企画「新しい戦前にしない」キャンペーン、鹿児島テレビ放送のドキュメンタリー「警察官の告白」に代表される鹿児島県警情報漏洩事件をめぐる一連の報道、ネットニュースの世界で活動する調査報道グループ・フロントラインプレスと調査報道サイトのスローニュース社による、選挙運動費用や政治資金を巡る一連の報道と「選挙運動費用データベース」構築の4点を選出した。

 さらにJCJ特別賞として、戦下のガザで国際NGO「国境なき医師団」の緊急対応コーディネーターとして数百人の人道医療援助チームを指揮した萩原健氏の6週間の活動記録『ガザ、戦下の人道医療援助』を選んだ。

 大賞の『地震と虐殺 1923−2024』で、著者・安田氏の取材は虐殺の現場を訪れることを含め徹底的だ。その足跡は首都圏の東京、千葉、埼玉、神奈川のみならず、大阪や福島など広い範囲にわたる。虐殺はデマによる人災で、そのデマは警察が流し、新聞もまた政府、国、軍と共に扇動者の側にいた。日本で跋扈する不都合な歴史の否認と排外主義は、差別と偏見を煽って広がる。私たちは「虐殺の時代」を繰り返さない社会を作る、との思いを共にする。

 中国新聞社は被爆80年企画を、当時13歳の女学生が軍都の日常を綴った未公開日記から始めた。だが記述は8月5日で途絶える。被爆者の5人にひとりと言われる朝鮮半島出身者の原爆被害の実相にも迫った。メディアが米軍のプレスコードで沈黙を強いられる中、懸命に記録を残そうとした画家や作家、歌人・俳人らの存在を報じた。ノーベル賞に結実した原爆被害による人生の破壊に抗う被爆者の格闘を伝えた。被爆地の新聞社の覚悟と取材班の努力に敬意を表する。

 琉球新報社は「新しい戦前にしない」を沖縄戦80年キャンペーンの「表題」として「戦さ世」拒否の信念を示した。第5部に至る長期連載は、1931年の満州事変から顧みて、沖縄の人々が軍国日本の南方進出に組み込まれ、アジア侵略の一翼を担った加害責任にも向きあった。見開き紙面で展開の歴史地理年表は、沖縄を拠点にアジアで何がなされたか、軍による民間人の集団強制死が南洋諸島や満州などでも繰り返されたことを明らかにした。記者が聞く家族の中の沖縄戦は出色の企画。勤労奉仕や地上戦、米軍の接収などを身近に浮かび上がらせた。

 鹿児島県警が組織ぐるみでもみ消そうとしたのは、警察官やその身内のわいせつ行為やストーカー、盗撮事件等々。腐敗を公益通報した警察幹部は逮捕された。鹿児島テレビ放送は、もみ消し発覚後の警察権力監視報道を継続して取り組み、「警察官の告白」など、映像の強みを生かした一連の番組報道で問題の本質を詳らかにした。

 フロントラインプレスとスローニュースは、与野党議員の政治とカネの問題を独自に掘り下げて報じるとともに「選挙運動費用データベース」を構築。選挙費用の収支報告書をネットで閲覧できるようにして公開を開始した。スローニュースは「日本で初めての試み」としており、フロントラインプレスの、国と契約がある企業による自民の国会議員が代表の支部への選挙直前の献金問題や、自分の政治団体に寄付をしたうえで還付申告し、税額控除を受ける手口などの報道成果とあわせ評価した。
         JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年9月25日号
 

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2025年09月13日

■2025年・第68回 JCJ賞受賞作品を発表

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 日本ジャーナリスト会議(JCJ)が優れたジャーナリズムの報道や作品を顕彰するJCJ賞の今年の受賞作品が決まりました。JCJ賞は1958年にスタートしてから今年で68回を迎えます。戦後80年の節目に当たる今年は選考の結果、平和を脅かし戦争へと向かう足音が聞こえる中で80年の歩みを検証し警鐘を鳴らす作品や、独自の視点や地道な調査報道で社会や政治の歪みを鋭くえぐりだしていく作品など、優れた6点の作品に決まりました。

【JCJ大賞】 1点
・『地震と虐殺 1923-2024』 安田浩一 中央公論新社

【JCJ賞】 4点
・被爆80年企画「ヒロシマドキュメント」 中国新聞社 取材班
・「沖縄戦80年 新しい戦前にしない」キャンペーン報道 琉球新報社 取材班
・一連の鹿児島県警情報漏洩事件の報道 ドキュメンタリー「警察官の告白」 鹿児島テレビ放送 取材班
・選挙運動費用・政治資金をめぐる一連の報道と、「選挙運動費用データベース」の構築 調査報道グループ・フロントラインプレスおよびスローニュース

【JCJ特別賞】 1点
・『ガザ、戦下の人道医療援助』 萩原 健 ホーム社発行 集英社発売

〈2025年 第68回JCJ賞受賞作品 講評〉

【JCJ大賞】 1点
●『地震と虐殺 1923−2024』 安田浩一 中央公論新社
地震とは1923年9月1日の関東大震災である。虐殺とは、デマによる朝鮮人、中国人、日本人を犠牲者にした人災である。デマは警察が流し、政府・国、軍とともに新聞もまた煽動者の側にいた。筆者は虐殺の現場を訪れる。中山競馬場駐車場では、虐殺の痕跡はどこにも残っていない。船橋では法界無縁塔を建立し、犠牲者の追悼式が行われた。東京、千葉、埼玉、神奈川から大阪、福島など広範囲にわたって筆者は当時の資料を掘り起こし、新たな記録を発見した。差別と偏見をなくすことはジャーナリズムの大事な働きの一つで、この作品はジャーナリズムの活動として大変優れている。「虐殺の時代」を繰り返すことがない社会を一緒に作っていく、との筆者の思いをともにしたい。

【JCJ賞】 4点 (順不同)
●被爆80年企画「ヒロシマドキュメント」中国新聞社 取材班 
核兵器による攻撃から80年。被爆地ヒロシマの新聞社として、原爆による被害とは何か、人生の破壊に抗う格闘の物語として伝えようとした、その努力と覚悟に敬意を表する。
連載は、1945年8月5日で途絶えた、当時13歳の女学生の未公開の日記から始まる。そこには建物疎開の作業に明け暮れる軍都広島の日常が綴られていた。
連載で特に目を引いたのは、被爆者の5人にひとりと言われる朝鮮半島出身者の被爆の実相に迫り、差別だけでなくさまざまな支援が広がったこと。また、プレスコードのもとでメディアが沈黙を強いられる中、画家・作家・歌人・俳人たちが懸命に記録を残そうとしたことなど、新たな知見が多く見られた。
昨年の日本被団協のノーベル賞受賞。そこに至るまでの被爆者本人たちの地道な努力が続けられてきた。連載は今年5月以降も続き、大きな業績となった。
核戦争の危機が叫ばれる今、これからも被爆の実相を伝え、核なき世界を現実のものとするために、熱い期待を込めてここにJCJ賞を贈る。

●「沖縄戦80年 新しい戦前にしない」キャンペーン報道 琉球新報社 取材班  
一般住民4人にひとりが命を奪われた沖縄戦から80年。政府は「台湾有事」をことさらうたい、沖縄の軍事要塞化を進めている。そんな中でスタートしたキャンペーンの表題は「新しい戦前にしない」。5部にわたる長期連載は、1931年の満州事変から顧みる。
沖縄の人々も日中戦争、満州移民、台湾や南方進出に深く関わり、アジア侵略の一翼を担った。戦争における被害だけでなく、加害責任にも向き合う姿勢は、キャンペーンをより力強く、説得力のあるものにした。
紙面づくりの面でも工夫が見られ、紙面を両面使った歴史地理年表は、沖縄を拠点にアジアで何がなされてきたのか、また、日本軍による民間人の集団強制死が沖縄だけでなく、満州や南洋諸島などでも繰り返された実態を明らかにした。
魅力ある企画も多く見られた。記者が聞く家族の中の沖縄戦。身内の人間が迫ることで、地上戦や勤労奉仕、米軍基地への接収の実相が等身大の物語として浮かび上がった。
琉球新報社が社をあげて取り組んだ信念と覚悟が見えるこの企画に対して、戦さ世が二度と訪れないようにとの強い願いを込めてここにJCJ賞を贈る。

●一連の鹿児島県警情報漏洩事件の報道 ドキュメンタリー「警察官の告白」 鹿児島テレビ放送 取材班
 旧薩摩藩士で日本警察の父≠ニ呼ばれた川路利良が草葉の陰で泣いている。鹿児島県警の警察官やその身内によるストーカーやわいせつ行為、盗撮事件等々と、これらを組織ぐるみでもみ消そうとする動きが頻発。腐敗を憂えて公益通報に踏み切った幹部警察官を逮捕することにさえ躊躇がなかった。
 事態は調査報道サイトなどの活躍で公になり、県警本部長が退陣に追い込まれたが、今後の組織改革については不透明な部分も大きい。警察権力への継続的な監視が必要である。
 そのような折に、鹿児島テレビ放送は問題の本質を詳らかにするドキュメンタリーを放送した。独自ダネ満載、というわけではないが、映像メディアの強みが存分に生かされた素晴らしい作品だ。
 ともすれば権力との癒着ばかりが指摘され、信頼を失いがちな近年の放送界にあって、勇気ある、否、ジャーナリズムとして当然の仕事を成し遂げた作品にJCJ賞を贈る。

●選挙運動費用・政治資金をめぐる一連の報道と、「選挙運動費用データベース」の構築 調査報道グループ・フロントラインプレスおよびスローニュース
フロントラインプレスは調査報道サイト「スローニュース」を通じて、与野党の国会議員の政治とカネの問題を独自の視点で掘り下げて報じた。沖縄県において、国と契約関係にある企業が選挙直前に自民党の国会議員を代表とする政党支部に献金をおこなってきた問題や、与野党の国会議員がみずからの政治団体に寄付し還付申告によって税額控除を受けている問題、自民党の政党支部が都道府県連から資金を受け取っているが都道府県連側には対応する支出記録がない事例が多数に及ぶ問題などである。これらは政治資金収支報告書の丹念な収集・分析を含む、地道な取材の成果と言える。
加えてフロントラインプレスは、日本大学法学部・安野修右准教授の研究室およびスローニュースと共同で、選挙運動費用収支報告書をネットで閲覧できる「選挙運動費用データベース」を構築し、公開を始めた。このデータベースは手書きの文字の検索も可能となっており、同じ費目について各候補者の記載を横断的に比較することもできる。選挙運動費用のデータベース化は日本で初めての試みとのことで、幅広いジャーナリストや研究者に活用の機会を開いている点も含めて、ネットメディアならではの取り組みとして評価できJCJ賞に値する。

【JCJ特別賞】  1点
●『ガザ、戦下の人道医療援助』 萩原 健 ホーム社発行  集英社発売
イスラエル軍による爆撃が続くパレスチナ自治区「ガザ」。かつての美しい海辺の街は、いまや瓦礫と血の臭いに満ちている。本書は国際NGO「国境なき医師団」の緊急対応コーディネーターとして、戦時下のガザにおいて人道医療援助チーム数百名の指揮を執った萩原健氏による6週間の活動記録である。
医療チームの活動は、まさに死と隣り合わせの日々だった。その中で中立の立場を保持しながら、ひとりでも多くのパレスチナ人の命を救おうと奮闘するするスタッフたち。活動期間が6週間という短期の設定は、それ以上の活動は人間の限界を超えるという本部の判断である。それほどに過酷で厳しい体験が、読む者の胸をえぐる。
ガザの状況はいま、本書で描かれた以上の悲惨さを増している。まさにジェノサイドである。日本ジャーナリスト会議(JCJ)は、少しでも人々の目がガザに注がれることを願い、1日でも早い戦火の終息を願って、本書とその著者に「特別賞」を贈る。これは、JCJから「ガザ」の人たちへのせめてものエールである。

■贈賞式:9月27日(土) 13:00~16:30  東京・水道橋 全水道会館・4階大会議室
     オンライン参加はこちらで受け付け:https://jcjaward2025.peatix.com
全水道会館
〒113-0033 東京都文京区本郷1丁目4−1 全水道会館ビル4階

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▼お問合せは、下記までお願いします。
日本ジャーナリスト会議(JCJ) 
 〒101-0061東京都千代田区神田三崎町3-10-15 富士ビル501号 
       TEL:03-6272-9781(月、水、金 13時~17時)
       e-mail:office(アットマーク)jcj.gr.jp
       古川英一(事務局長)、大場幸夫(JCJ賞推薦委員会)
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2025年09月09日

【2025年第68回JCJ賞贈賞式と記念講演】記念講演テーマ:戦後80年・映画「黒川の女たち」から伝えたいこと=松原 文枝監督 9月27日(土)13時から16時30分 全水道会館 リアル及びオンラインのハイブリット開催

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日本ジャーナリスト会議は、優れたジャーナリズム活動・作品を選定して、「JCJ賞」を贈り顕彰してきました。今年で68回を迎えます。
 贈賞式に先立つ記念講演には、現在ロングラン上映中の映画「黒川の女たち」の制作を手がけられた、松原文枝さんをお迎えし、「戦後80年・映画「黒川の女たち」から伝えたいこと」と題してご講演いただきます。松原さんは、ワイマール憲法の国家緊急権を悪用して、合法的にヒトラー独裁の始まりを検証した「独ワイマール憲法の教訓」(報道ステーション 2016.3)をはじめ、映画「ハマのドン」など社会性のあるテーマを深く掘り下げた作品を世に送り出し、そのご活躍は多岐にわたります。
 注目の贈賞式では、受賞者スピーチをリアルタイムにお聞きいただけます。

■記念講演テーマ:戦後80年・映画「黒川の女たち」から伝えたいこと

■講演者プロフィール:松原 文枝(まつばら ふみえ)
1991年テレビ朝日入社。政治部記者などを経て、2012年「報道ステーション」チーフプロデューサー。政治、選挙、憲法、エネルギー政策などを中心に報道。現在、ビジネス開発担当部長。2016年「独ワイマール憲法の教訓」でギャラクシー賞テレビ部門大賞。2019年放送ウーマン賞。2020年「史実を刻む」がアメリカ国際フィルム・ビデオ祭銀賞。映画「ハマのドン」がキネマ旬報文化映画ベスト・テン第3位。7月公開の映画「黒川の女たち」がロングラン上映。著書に『ハマのドン 横浜カジノ阻止をめぐる闘いの記録』(集英社新書)『刻印 満蒙開拓団、黒川村の女性たち』(KADOKAWA)など。

■zoomにてオンライン、見逃し動画配信アリ

■参加費 (会場・オンライン共通) : 一般・JCJ会員:1,000円
               : 学生:500円

■贈賞式会場でのリアル参加をご希望の方:会場は東京・水道橋の全水道会館・4階大会議室となります。 JCJ会員、非会員共に 1,000円。メールで来場予約をしていただき、会場受付でお支払下さい。

■会場参加申し込み:mailto:office@jcj.gr.jp?subject=JCJ賞贈賞式会場参加希望

■オンライン視聴申込:https://jcjaward2025.peatix.com

■ホームページ詳細:https://jcj.gr.jp/future/12197/
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2025年05月25日

【JJCJ賞締め切り迫る】2025年第68回日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞) 応募と推薦のお願い 5月30日(金)締め切り‼=JCJ事務局

日本ジャーナリスト会議(JCJ)は、年間のすぐれたジャーナリズム活動を顕彰するため、1958年以来「JCJ賞」を設け、贈賞してきました。今年は第68回となります。自薦または他薦によって応募といたします。今年度も優れた労作の多数応募を期待しています。

■日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞) 応募要項

〈ジャンルと応募資格〉
 @新聞 A出版 B放送 Cネットメディアの各部門のほか、映像作品、個人グループを問わず市民運動や地域活動なども含み、提出期限までの1年間に発表の作品(連載も含む)と活動が対象です。

〈提出条件〉
 応募、推薦には1件ごとにエントリーシートの添付が必要です。エントリーシートは、Word形式と手書き用のPDF版の2種類を用意しています。応募推薦要項とあわせ、JCJのホームページからダウンロード(https://jcj.gr.jp/recentactivity/13873/)できます。エントリーシートには応募、推薦内容と連絡先、担当者名、電話、メールアドレスを明記してください。

 新聞、雑誌の応募は作品のコピー。書籍は現物1冊。放送、ネットメディアは、応募作品の閲覧や作品データのダウンロードができるURLをご連絡ください。放送作品などの映像はmp4ファイル形式で。字幕付きの場合は字幕が再生できる仕様でお願いします。また、従来通りDVDでの応募も受け付けます。
〈エントリーシートの入手方法〉
  応募要項、エントリーシートはJCJホームページ(https://jcj.gr.jp/recentactivity/13873/)からダウンロードできます。word形式ですので文章を打ち込むことができます。 

〈提出期限〉
  ◆2025年5月30日(金) 郵送は当日消印有効

〈提出先〉
  〒101‑0061 東京都千代田区神田三崎町3−10−15富士ビル501号
    日本ジャーナリスト会議 「JCJ賞」 応募作品係 (赤で目立つように表記してください)

  ○日本ジャーナリスト会議 「JCJ賞」 応募作品係 (赤で目立つように表記してください) 
  ○応募作品は返却いたしません。選考経過,理由などについてのお問い合わせには応じておりません。
  ○選考結果は「ジャーナリスト」および主要新聞に公表ほか、JCJホームページに掲載致します。
  ○選考結果の確定は8月末、公表は9月上旬、贈賞式日程は追ってご案内します。



       2025年3月15日           日本ジャーナリスト会議
                           JCJ事務局長  古川英一
                    JCJ賞推薦委員会統括責任者  大場幸夫
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2025年03月25日

【JCJ賞情報】第68回日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞) 応募と推薦のお願い=JCJ事務局

 日本ジャーナリスト会議(JCJ)は、年間のすぐれたジャーナリズム活動を顕彰するため、1958年以来「JCJ賞」を設け、贈賞してきました。今年は第68回となります。
 自薦または他薦によって応募といたします。今年度も優れた労作の多数応募を期待しています。
■日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞) 応募要項

〈ジャンルと応募資格〉
 @新聞 A出版 B放送 Cネットメディアの各部門のほか、映像作品、市民運動や地域活動なども含み、個人・グループを問いません。提出期限までの1年以内に発表された作品 (連載の場合は同期間に発表したもの) を対象とします。

〈提出条件〉
 ◆ 書籍は、その現物1冊。

 ◆ 雑誌、新聞は、その掲載部分のコピー(カラーの場合はカラーで)の1セットです。
  上記の2項目については、1作品に1枚エントリーシートを必ず同封。特に連絡先、担当者、電話、メールアドレスは必ず明記。郵送または宅急便で下記の提出先にお送りください。 なお、FAX、メールによる送稿は受け付けません。

 ◆放送作品、ネットメディア作品は、閲覧できるURL、または作品データをダウンロード出来るURLを提出してください。
  ファイル形式はMP4 (mp4)でお願い致します。
  1作品に1枚エントリーシートを必ず明記。特に連絡先、担当者、電話、メールアドレスは必須です。放送作品は、元番組に字幕が付いている場合は、字幕も再生できる仕様にしてください。なお、動画URLの提出が困難な場合は、従来通りDVD送付も可とします。
 

〈エントリーシートの入手方法〉
  応募要項、エントリーシートはJCJホームページ(https://jcj.gr.jp/recentactivity/13873/)からダウンロードできます。このシートはword形式ですので文章を打ち込むことができます。 

〈提出期限〉
  ◆2025年5月30日(金) 郵送の場合は当日消印までが有効です。

〈提出先〉
  〒101‑0061 東京都千代田区神田三崎町3−10−15富士ビル501号
    日本ジャーナリスト会議 「JCJ賞」 応募作品係 (赤で目立つように表記してください)

  ○日本ジャーナリスト会議 「JCJ賞」 応募作品係 (赤で目立つように表記してください) 
  ○応募作品は返却いたしません。選考経過,理由などについてのお問い合わせには応じておりません。
  ○選考結果は「ジャーナリスト」および主要新聞に公表ほか、JCJホームページに掲載致します。
  ○選考結果の確定は8月末、公表は9月上旬、贈賞式日程は追ってご案内します。

                        2025年3月15日 日本ジャーナリスト会議
                          JCJ事務局長 古川英一
                          JCJ賞推薦委員会統括責任者 大場幸夫
  (問い合わせ先) JCJ事務所(受付は月・水・金曜日 13時〜17時)
   電話: 03–6272-9781 Eメール:office@jcj.gr.jp ホームページ:https://jcj.gr.jp
   〒101―0061 東京都千代田区神田三崎町3–10-15 富士ビル501号
   電話:03–6272-9781
   FAX:03–6272-9782
   電子メール:office@jcj.gr.jp
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2024年11月22日

【24年度JCJ賞贈賞式記念講演】神戸学院大学・上脇教授 政治とカネどう暴いたか 合法装う使途不明金 裏金づくり誘発=保坂 義久

                  
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 国民主権で普通選挙が あり、議会という国家機 関があるだけでは議会制 民主主義とは言えませ ん。議会の中に世論の縮 図を作らなければなりま せん。知る権利や政治活 動・選挙運動の自由の保 障も必要です。

 1994年の政治改革 では、民意を歪曲する方 向に改革が進みました。

 過去の衆院選挙の小選 挙区での第一党の議席占 有率と得票率をみると、 得票率が4割程度で8割 に近い議席を得ている。 12年以降の衆議院の比 例代表選挙も自民・公明 を合わせた得票率は、い ずれの選挙でも5割に達 しません。2013年以 降の参議院の選挙区選挙 でも第一党の得票率は4 0%前後、比例代表選挙 も連立与党の得票率は5 0%に達しいませんが、その 間、新自由主義的な政策 が強行され、格差社会に なり、戦争の出来る国づ くりが進みました。

 一方、自民党の党員数 は1991年のピーク時 には約547万人でしたが、第二次安倍政権 の直前の2012年末に は73万人まで激減しま した。

 自民党は政治資金をい かに持っているか。バブ ル時代でも200億円超 の収入でしたが、最近の 政治資金収入は平均24 0億円を超えます。その うち7割近くは政党交付 金です。政党交 付金の元は税金であり、 自民党は国営政党化して います。国営政党が民営化 を主張しているのです。

「政治資金オンブズマ ン」運動を立ち上げて政 治家の違法行為責任の刑 事告発をしてきました。 政治家が作った政治 資金報告書や選挙運動収 支報告書や領収書などの 客観的な証拠、必ず政治家の 側が作った書類に基づい て告発しています。

 調査報道も告発の重要 な証拠として活用してい ます。検察が起訴した事 件としては、19年11 月にしんぶん赤旗日曜版 が報道した安倍元首相の 後援会の「桜を見る会」 前夜祭の政治資金報告書 不記載。同じく19年1 1月に週刊文春が報じた 河合克行法務大臣夫妻の 車上運動員違法買収。21年3月にしんぶん赤旗 日曜版が報じた薗浦健太 郎議員の政治資金パーテ ィー収入不記載。22年 にしんぶん赤旗日曜版が 報じた政治団体パーティ ー券収入不記載。NHK の岡山放送局が伝えた 「伊原木隆太郎知事の寄 付上限を超える受領」などが あります。報道機関の努 力を活用させてもらって います。

 派閥の政治団体は企業 から献金を受け取れませ ん。そのためパーティー を開いて大量のパーティ ー券を売る。20万円を 超す大口の購入者は名 前や金額、日付などを記 載しなければならない規 則です。赤旗は政治団体 の報告書をチェックした と思いますが、これは膨 大な作業になります。政 治団体の数は全国で6万 近い。赤旗は金を持って いそうな業界の政治団体 などに当たりをつけて調 べて行ったと思います。 そして5派閥、3年分、 2500万円という不記 載を発見しました。

 私たちは5派閥のパー ティー収入明細収支報告 書の不記載について刑事 告発した。結果的に安倍 派では5年間の虚偽記入 額は6億7500万円、 二階派では2億6千万 円、岸田派は3年間で3 千万円の虚偽記載が発覚 しました。

 自民党は政策活動費 の名目で幹事長を中心に 1億円以上の使途を問わ ない金を支出していま す。この合法な装った使途不 明金システムこそが、派閥の裏金 づくりを誘発したと考え られます。こうした裏金 は地方組織にも広がり組 織対策費の名目で県議や 市議にまで支出されていま す。
      JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年10月25日号
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2024年11月08日

【24年度JCJ賞講評】『ルポ低賃金』が力作 琉球新報・東京新聞も高評価=鈴木 耕

 今年から新たに「ネットメディア」部門が加わりJCJ賞は、「新聞」「出版」「放送・映像」「ネットメディア」の4つの分野を対象に選考することとしました。
各分野から、様々な作品が推薦されてきて、選考委員会が9月1日に開かれました。もちろん賞に選ばれなかった作品が劣っていたということではありません。それぞれが、ひとつのテーマを追って懸命に作り上げた素晴らしい作品であったことは間違いありません。
 ここでは、惜しくも選に漏れた作品を中心に、今年の傾向などを振り返ってみたいと思います。
◎新聞部門
 琉球新報社の「うるま市石川陸自訓練場新設計画の断念に至る報道と特定利用港湾・空港への石垣港、那覇空港指定の特報」は見事なキャンペーン報道でした。
 東京新聞社会部特別取材班「東京電力福島第一原発事故と柏崎刈羽原発についての報道」は今回に関してはやや焦点が拡散している点で、残念ながら受賞を逃しました。

◎出版部門
 今回は全体として、素晴らしい著作が揃っていて受賞作との差異はほんのわずかだったと思われます。
 大森淳郎さんの『ラジオと戦争 放送人たちの「報国」』(NHK出版)作品の素晴らしさは衆目の一致するところで、著者の苦悩をもあぶり出した作品でした。
 『ルポ低賃金』(東海林智著、地平社)も素晴らしいルポ作品でした。
 半田滋さんの『台湾侵攻に巻き込まれる日本 安倍政治の「継承者」岸田首相による敵基地攻撃・防衛費倍増の真実』(あけび書房)は、緻密な解説が目からうろこの著作です。安倍政権から菅政権、そして岸田政権へと移る中で、ますますキナ臭さを増す日本の防衛安保政策の危うさを、資料を基に、しっかりと捉えています。

◎映像・放送部門
 NHKの人材と機動力を投入した作品が図抜けていました。受賞作の『冤罪≠フ深層』以外にも、Nスぺ『未解決事件File10 下山事件第2部』も戦後最大の謎に挑む迫力あるものでした。
 同じNHKのETV特集『膨張と忘却〜理の人が見た原子力政策』も、故人(吉岡斉さん)の遺した様々な文献資料を基に、日本の原子力政策の根本を問い直す視聴者を引き込む出来でした。
 NNNドキュメント24『半透明のわたし 生きる権利と生活保護』(北日本放送)も、貧困問題に焦点を定めた取材姿勢には好感を持ちました。この取材視点は大切なものと感じました。


◎ネットメディア部門
 新部門の応募作品は、8本。候補作品を探しましたが、ネット本来の機動性、動画や映像を加味するような新しい試みは、あまり見当たりませんでした。
 「経口避妊薬」の問題が調査報道という面で推薦作品となりましたが、ここからの新しい展開がこれからの課題だと感じました。
ネットメディア部門は、まだ認知度が浅く、これからもっと多くの応募作品が集まることを期待します。
来年度も、もっともっと優れた作品に出会えることを期待しております。
 他に最終選考作品ではありませんが、放送・映像化されたもの、新たな試みというべきものもありました。

◎映画・その他
 映画「ヤジと民主主義 劇場拡大版」(北海道放送)や、福島から問う「ALPS処理水」放出(相馬高校放送局)は地域出版社ウネリウネラ社の協力という珍しい形で、60分の映画にまとめられ、東京の地域映画祭の江古田映画祭で上映されました。
      JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年10月25日号

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2024年09月26日

【イベント】2024年度JCJ賞受賞昨品と贈賞式の案内 10月5日(土)13:00から日比谷図書文化館 日比谷コンベンションホール=JCJ事務局

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 【JCJ大賞】
◆しんぶん赤旗日曜版における「自民党派閥パーティー資金の<政治資金報告書不記載>報道と、引き続く政治資金および裏金問題に関する一連のキャンペーン」
【JCJ賞】(順不同)
◆上丸洋一『南京事件と新聞報道─記者たちは何を書き、何を書かなかったか』 朝日新聞出版
◆後藤秀典『東京電力の変節─最高裁・司法エリートとの癒着と原発被災者攻撃』 旬報社
◆NHKスペシャル「冤罪≠フ深層─警視庁公安部で何が」「続・冤罪≠フ深層─警視庁公安部・深まる闇」 NHK総合テレビ
◆SBCスペシャル「78年目の和解─サンダカン死の行進・遺族の軌跡」 SBC信越放送

■贈賞式
※開催日時:10月5日(土) 開場:12:30 式典:13:00〜
※会場:千代田区立日比谷図書文化館 日比谷コンベンションホール(〒100 0012東京都千代田区日比谷公園1–4)
※交通:地下鉄「霞が関」駅 B2出口から徒歩3分、日比谷公園内。
■贈賞式記念講演(オンライン講演)
上脇博之(神戸学院大学大学院教授)<政治とカネ─自民党裏金問題をどのようにして暴いたのか>
■JCJ賞受賞者のスピーチ

■参加申し込み
※現地会場への参加者は、会場費1000円。メール jcj_online@jcj.gr.jp で予約し、会場受付でお支払い下さい。
※オンライン参加の申し込みは https://jcjaward2024.peatix.com にて、参加費800円
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2024年09月13日

【2024年度第67回 JCJ賞】JCJ大賞 しんぶん赤旗日曜版 『自民党派閥パーティー資金の「政治資金報告書不記載」報道と、引き続く政治資金、裏金問題に関する一連のキャンペーン』、 JCJ賞4点。10月5日(土)午後1時から東京・日比谷図書文化館コンベンションホールで贈賞式

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 JCJ賞作品は次の通りです。
 【JCJ大賞】  1点
● 自民党派閥パーティー資金の「政治資金報告書不記載」報道と、引き続く政治資金、裏金問題に関する一連のキャンペーン しんぶん赤旗日曜版 
       
 【JCJ賞】   4点   (順不同)
● 上丸洋一(じょうまる・よういち)『南京事件と新聞報道 記者たちは何を書き、何を書かなかったか』 朝日新聞出版

● 後藤秀典(ごとう・ひでのり) 『東京電力の変節 最高裁・司法エリートとの癒着と原発被災者攻撃』 旬報社

● NHKスペシャル 「冤(えん)罪≠フ深層~警視庁公安部で何が~」「続・冤(えん)罪≠フ深層~警視庁公安部・深まる闇~」 NHK総合テレビ

● SBCスペシャル 「78年目の和解~サンダカン死の行進・遺族の軌跡」 SBC信越放送

JCJ賞贈賞作品一覧

【JCJ大賞】    1点
● しんぶん赤旗日曜版 自民党派閥パーティー資金の「政治資金報告書不記載」報道と、引き続く政治資金、裏金問題に関する一連のキャンペーン
 自民党の主要5派閥が政治資金パーティーのパーティー券大口購入者を、政治資金報告書に記載していなかったことをスクープした報道に始まった「しんぶん赤旗日曜版」の報道は、2023年から24年にかけての日本の政治を揺り動かした。
 公開されている膨大な政治資金報告書から、一つ一つを地道に積み上げ、検察の捜査にまでつなげ、それが大政治犯罪であることを明らかにした。
 政治資金パーティーという、小さな問題に見えた事件は、実は政治資金問題の中心的問題で、事件の大きさは、自民党が公表せざるを得なかった議員が衆院51人、参院31人、計82人に上っていた(24年4月14日号)ことに示されるとおり、そのスケールの点では、1975年の「田中金脈」報道や、88年の「リクルート事件」報道を超えるものだった。
 国会は安全保障政策の大転換を迎え、極めて重要な問題を抱えていたが、この問題に多くの時間を割き、秋に予想される、総選挙もしくは自民党総裁選を控え、「政治資金改革」は、いま、最大の政治的焦点となっている。こうした事態を引き起こしたのは、「しんぶん赤旗・日曜版」の報道がなくしてはできなかったことであります。

【JCJ賞】    4点 
● 上丸洋一 『南京事件と新聞報道 記者たちは何を書き、何を書かなかったか』 朝日新聞出版 
日本の侵略戦争の犯罪を象徴する「南京大虐殺」――南京事件は、西のアウシュヴィッツでのナチス蛮行に匹敵する戦争犯罪であるが、当時の日本の新聞記者は何を書き何を書かなかったかを追跡し、検証した力作。
 筆者は、2007~2008年朝日新聞夕刊の「新聞と戦争」で戦時報道を検討する連載の取材班に参加。「南京」シリーズを担当した。2020年フリーになったのを機に再び「南京事件」に向き合って、当時の新聞報道を調べる毎日が続く。「南京事件まぼろし説」「百人斬り」はじめ日本軍の蛮行、虐殺の数々に向き合い、真偽の確かめ作業が続く。当時の報道や記録を掘り起こし、記事を追い生存の記者を取材して検証する。気の遠くなるような作業のなかから、事実としてあったことは勿論、前後左右の状況、外国の記事も使っての多角的な検討により、あったはずの事実を浮き彫りにしている意義は大きい。
 戦場に行く記者、カメラマンは厳しい報道規制のもと、軍紀服従、検閲、報道規制、従軍記者心得により、「戦場一番乗り」「報道報国」「報道戦士」に絡め取られていく様を記事で検証しながら明らかにしているのが恐ろしい。
 終戦後、生存の記者への取材、戦友会の記録のなかで、多くの人々の意識が変わらず、責任も感じず、見たくないことはなかったことにする有様を突きつけられ、日本の教育と、洗脳された日本人の状況に愕然とさせられる。
 南京事件についての研究はすすみ、書物も多いが、新聞、放送など影響力の大きなジャーナリズムの有り様がますます重大である。
岸田政権による軍備拡大と戦争準備がすすめられるこの2024年、『南京事件と新聞報道』という力作を得たことの意義は大きい。

● 後藤秀典 『東京電力の変節 最高裁・司法エリートとの癒着と原発被災者攻撃』 旬報社 
 福島第1原発事故から14年、責任が明確にされた東京電力は避難者たちが起こした損害賠償請求訴訟を数多く抱えたままだ。その訴訟の過程で加害者である被告東電が原告の被害者たちを、あたかも安逸な生活を享受しながら無理難題を求めているかのように攻撃をする現象が生まれている。賠償を出し渋るための「変節」である。その背景にある最高裁と巨大法律事務所という司法エリートと東電との結びつきを探ったのが本書である。
著者は2022年に出された、国に原発事故の責任はないとした最高裁判決(6.17判決)を下した3名の判事の経歴・人脈を追い、彼らが巨大法律事務所をはじめ国や法曹界、産業界のさまざまな機関と密接に関わっていることを明らかにしていく。その構造は本書にある「電力会社・最高裁・国・巨大法律事務所の人脈図」を見れば一目瞭然だ。原子力規制庁のメンバーで一審では国側の指定代理人であった弁護士が控訴審では東電の代理人として登場するという事実には呆れるほかない。この弁護士はもちろん巨大法律事務所の所属である。
本書は原発問題をテーマとして書かれ、「原子力ムラ」には司法エリートも含まれていることがはっきりする。同様なことは日本の他の多くの分野でも起きているであろう。日本における司法の独立は国家の圧力との関係で問われてきたが、「民間」の巨大法律事務所というモンスター的存在が権力の補完機能として働いているという事実を具体例を挙げて告発した作品として推薦する。

● NHKスペシャル 「冤(えん)罪≠フ深層~警視庁公安部で何が~」「続・冤(えん)罪≠フ深層~警視庁公安部・
深まる闇~」  NHK総合テレビ
 「冤(えん)罪≠フ深層~警視庁公安部で何が~」(23年9月24日21:00~21:50)
 なぜ冤罪≠ヘ起きたのか。3年前、軍事転用が可能な精密機器を不正に輸出したとして、横浜市の中小企業の社長ら3人が逮捕された事件。長期勾留ののち、異例の起訴取り消しとなった。会社側が国と東京都に損害賠償を求めている裁判で23年6月、証人として出廷した現役捜査員は「まあ、捏造ですね」と、捜査の問題点を赤裸々に語った。公安部の中で、一体何が起きていたのか。法廷の証言と独自取材をもとに、徹底取材で検証する。
「続・冤(えん)罪≠フ深層~警視庁公安部・深まる闇~」(2月18日21:00~21:50) 
 警視庁公安部の冤(えん)罪¢{査を検証したNスぺ(昨年9月)第2弾。4年前、軍事転用可能な機器を不正輸出したとして、大川原化工機の社長ら3人が逮捕された事件。東京地裁は昨年末、捜査は違法だったと認め、国と都に賠償を命じる判決を言い渡した(国と都は控訴)。NHKは今回、さらに新たな内部資料を入手。経産省はなぜ警察の捜査方針を追認したのかそして、検察はなぜ起訴に踏み切ったのか。残された闇に迫る。

● SBCスペシャル「78年目の和解~サンダカン死の行進・遺族の軌跡~」(3月13日19:00~20:00) SBC信越放送
 太平洋戦争の末期、現在のマレーシア、ボルネオ島で「サンダカン死の行進」と呼ばれる悲劇が起きた。日本軍の無謀な命令により、道なきジャングル横断を強制された英豪軍の捕虜2400人余が飢えや病気、銃殺で死亡。生き残ったのは、脱走した6人だけだった。悲劇から78年、豪州兵捕虜の息子、ディックさんの呼びかけで、長野県の元日本軍兵士の遺族やスパイ容疑で処刑された地元住民の孫ら関係者が戦跡をめぐり、二度とこのようなことが起きないよう合同で「和解」を誓い合った。

お問合せは下記までお願いします。
日本ジャーナリスト会議(JCJ)  
 〒101‑0061 東京都千代田区神田三崎町3−10−15 富士ビル501号 
 TEL:03−6272−9781 FAX: 03−6272−9782 (電話受付は月、水、金13時〜17時) 
 メール: office@jcj.gr.jp
 直接のお電話: 古川英一(JCJ事務局長) 090‑4070-3172、大場幸夫 (JCJ賞推薦委員会)090‑4961-1249 

■贈賞式記念講演(オンライン講演となります)
  「政治とカネ 自民党裏金問題をどのようにして暴いたのか 」 上脇 博之(かみわき ひろし)神戸学院大学大学院教授
■講師プロフィール:
 上脇 博之(かみわき ひろし)1958年7月、鹿児島県生まれ。1984年3月、関西大学法学部卒業。1991年3月、神戸大学大学院法学研究科博士課程後期課程単位取得。北九州大学(現在の北九州市立大学)法学部 助教授・教授を経て、2004年から神戸学院大学大学院実務法学研究科教授、2015年から神戸学院大学法学部教授(現在に至る)。専門は憲法学。、政党助成金・政治資金、政治倫理、情報公開制度、改憲問題などを研究『検証 政治とカネ』(岩波新書・2024年)など著書多数。公益財団法人「政治資金センター」理事などを務める
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■オンライン参加お申し込み:
 https://jcjaward2024.peatix.com
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2024年03月17日

【お知らせ】2024 年度(第67 回) ⽇本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞) 応募と推薦のお願い=JCJ賞推薦委員会

 日本ジャーナリスト会議(JCJ)は、年間のすぐれたジャーナリズム活動を顕彰するため、1958年以来「JCJ賞」を設け、贈賞してきました。
 今年は第67回となります。自薦または他薦によって応募といたします。今年度も優れた労作の多数応募を期待しています。
  
■日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)募集規定
〈募集ジャンルと応募資格〉
 新聞、放送、出版、写真作品、ネットメディア作品のほか、市民運動や地域活動なども含み、個人・グループを問いません。
 提出期限までの1年以内に発表された作品 (連載の場合は同期間に発表したもの) を対象とします。

〈提出条件〉
 ◆ 書籍は、その現物1冊。放送作品はDVDを1本です。

 ◆ 雑誌、新聞は、その掲載部分のコピー(カラーの場合はカラーで)の1セットです。
  上記の2項目については、1作品に1枚エントリーシートを必ず同封。特に連絡先、担当者、
  電話、メールアドレスは必ず明記。郵送または宅急便で下記の提出先にお送りください。
  なお、FAX、メールによる送稿は受け付けません。

 ◆ネットメディア作品は、閲覧出来るURLをお知らせ下さい。
  1作品に1枚エントリーシートを必ず明記。特に連絡先、担当者、電話、メールアドレスは必須です。
  そしてメール(office@jcj.gr.jp)による受け付けをいたします。

 ○応募要項、エントリーシートはJCJホームページからダウンロードできます。
  このシートはword形式ですので文章を打ち込むことができます。 

〈提出期限〉
 ◆新聞、出版作品は5月17日(金) 
 ◆放送・ネットメディア・その他作品は5月24日(金)です。郵送の場合は当日消印までが有効です。

〈提出先〉
  〒101-0061 東京都千代田区神田三崎町3−10−15富士ビル501号
   日本ジャーナリスト会議 「JCJ賞」 応募作品係 (赤で目立つように表記してください)

 ○応募作品は返却いたしません。選考経過,理由などについてのお問い合わせには応じておりません。
 ○選考結果は「ジャーナリスト」および主要新聞に公表するほか、JCJホームページに掲載致します。
 ○今回の選考結果の確定は8月末、公表は9月上旬(昨年は9月6日)、入選者の贈賞式は9月下旬(昨年は9月23日)を予定しております。

                  2024年3月15日 日本ジャーナリスト会議
                      JCJ事務局長 古川英一
                      JCJ賞推薦委員会統括責任者 大場幸夫
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2024年01月06日

【オンライン講演】「後世に事実を」被爆者の願い叶えた 23年度JCJ賞『「黒い雨」訴訟』の著者・小山美砂氏語る=橋詰雅博

                       
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 2023年度JCJ賞受賞者オンライン講演のトップバッターは『黒い雨訴訟』(集英社新書、22年7月発行)の著者・小山美砂氏=写真=。「原爆『黒い雨訴訟』に学んだジャーナリストの仕事」と題した11月19日講演では毎日新聞記者としての広島被爆者取材やメディアの報道姿勢への疑問を語り、昨年末退職後、フリーランスになったジャーナリスト活動も報告した。

 大阪市出身の小山氏が縁もゆかりもない広島の原爆に強い関心を持ったきっかけは同志社大学メディア学科3年生のとき、広島被爆者の話に衝撃を受けたからだ。その人は「被爆者は後遺症に苦しんでいる。核兵器は今も世界で1万2000発もある。未来を生きる若者に被爆の惨状を伝えるため子供のころのつらい体験を語っている」と言った。原爆問題を伝えたいと毎日新聞に入社。初任地として希望した広島支局に2017年配属された。 

 記者3年目の秋「黒い雨」訴訟を取材。原爆投下直後、広島に降った放射線を帯びた黒い雨を浴び、深刻な健康被害に苦しむ人たちが国に援護を求めた裁判。小山氏は「黒い雨で病気に罹っている疑いがあるのになぜ被爆者ではないのか。これはおかしい」と疑問を抱いたのが黒い雨取材のスタートだった。

 取材を介して親交を深めた訴訟のリーダー的存在の高東征二氏と一緒に山間部で暮らす原告らを訪ね歩き多くの証言を得た。「黒い雨によって内部被ばくしたことで病気などの被害にあったと確信できた」(小山氏)。地裁、高裁で原告が勝訴し、国に上告を断念させた黒い雨訴訟原告勝利の結果、黒い雨被爆者への被爆者健康手帳の交付が認められた。
 本を書くに至った動機を小山氏は「70数年間、国の援護が認められなかった被爆者の『後世に事実を残したい』という願いが私の心にしみ込み、本にしなければいけないというモチベーションを持って取材してきた」と振り返った。

 裁判などを通じてメディアの報道姿勢に疑問を抱いたと小山氏は言う。
「国が否定する被害は書いてはいけないという暗黙のルールが報道機関にある。ジャーナリズムとして本当に正しいのかとすごく感じた。私の本への反響が大きかったのは福島原発事故の自主避難者の方たちです。被害にあったのに国は認めず支援がないとメディアに訴えてもなかなか報じてくれない、黒い雨被爆者と共通しているという。公的機関が認めないことを書くのは怖いし、大変だが、被害を訴える人の立場で私は書くべきだと思います。それがよりよい社会を築くことにつながるのではないでしょうか」

 原爆問題を継続して取材したいという理由で毎日新聞を退職。フリーランスのジャーナリストとして広島、長崎の被爆者取材、講演、雑誌・ネットメディアへの執筆など精力的に活動している。2冊目の本の出版も視野に。
「フリーは向いている」と明るく語る小山氏は手ごたえ感じる日々を過ごしている。
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年12月25日号

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2023年11月27日

【23年度JCJ賞記念講演】悪化進む貧困状況 中高年から若年層へ 女性の困窮も深刻化 雨宮処凛さん語る

                       
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  2006年、フリーター労組のメーデーデモで聞いた「生きさせろ!」の叫びから貧困問題にかかわり17年。当時、1600万人だった非正規雇用は、いまでは2100万人です。
 07年に反貧困ネットワークが結成され翌年暮れの年越し派遣村に505人が来ましたが、うち女性は5人。コロナ1年目の職を失った人の相談会では344人の相談者の2割近い64人が女性でした。
 今は相談者の3割がネットカフェなどにいます。派遣村の時は中高年の男性が多かったが、いまは男女ともに若い人たちが増えました。

コロナ禍で激増
 3年前立ち上げた「新型コロナ災害緊急アクション」という恒久的なネットワークにはこれまでに2000件くらいのSOSが来ました。いまも来ています。
 相談者は10代から30代が6割です。派遣村の時と違い、今はホームレス化がカジュアルになって、家が無くてもあせらない。あせるのは携帯が止められた時。携帯が無いと仕事も探せません。
 電話がきて「こちらに来てください」といっても電車賃がない。駆けつけてお金を渡し、近くの安いホテルを探してから、区役所に生活保護申請をすることになります。
 都内での炊き出しや食品配布でも、コロナ前は50〜60人でした。それがコロナでどんどん増えて、今年5月には750人ぐらいが並びました。コロナ前は、近隣の中高年のホームレス状態の人が並んでいたが、今は子連れのお母さんや若いカップルとか様々な人が来ます。コロナ後はずっと600人ぐらいの人が来ています。

命をつなぐ携帯
 携帯が止まっている人には2年間、無料で携帯を貸し出しています。でも、それは一部の人だけ。今は不動産の契約も固定電話より携帯の番号を求められる。一度携帯が止まると元に戻れない。
 生活保護を受けても、パートを始めるにも携帯が無いと不動産を契約できない。すると携帯を持ちたくても、住所がない持てない。同じところをぐるぐる回っている。
 今の日本では経済危機や災害、感染症流行など何かあると家を奪われるなど生活が破壊される人が一定数いて、どんどん増えています。

貧困報道の貧困
 この10数年の貧困報道は、表面に現れたものがブームになり、それが消費されて終るという感じをうけます。17年も現場にいると、取材に来る人も代わっていく。もちろん継続的に取材をしている人もいるし、新人を連れてきて一から教えるような人もいますが、一般的に継続されていない。貧困報道がどんどん「貧困」になっている気がします。
 今はこの社会は間違っているから変えようという正面突破と、こんな社会は間違っているから自分たちで勝手にやろうという二本立てでやっていきたいと考えています。
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年10月25日号
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2023年09月14日

【2023年度 第66回 JCJ賞贈賞式と記念講演】9月23日(土)13時から東京・全水道会館〈zoomで生中継をご覧いただけます〉

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 日本ジャーナリスト会議(JCJ)は、1958年以来、年間の優れたジャーナリズム活動・作品を選定して、「JCJ賞」を贈り、顕彰してきました。今年で66回を迎えます。
本年度は8月31日の選考会議を経て報道発表をさせていただき、9月23日(土曜)13時から全水道会館・4階大会議室にて贈賞式を執り行います。記念講演と併せオンラインでの参加が出来ます。
 贈賞式に先立つ記念講演にはジャーナリスト作家であり反貧困への取り組み等多彩な活動を続けておられる雨宮処凛さんをお迎え。注目の贈賞式では受賞者のスピーチをリアルタイムに聞くことが出来ます。

■記念講演テーマ:貧困問題とジャーナリズム(仮題)
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■講演者プロフィール:雨宮 処凛(あまみや かりん)
1975年、北海道生まれ。
作家・活動家。フリーターなどを経て2000年、自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。2006年からは貧困問題に取り組み、『生きさせろ! 難民化する若者たち』(2007年、太田出版/ちくま文庫)はJCJ賞を受賞。
著書に『非正規・単身・アラフォー女性』(光文社新書)、『相模原事件裁判傍聴記「役に立ちたい」と「障害者ヘイト」のあいだ』(太田出版)、『生きのびるための「失敗」入門』(河出書房新社)など多数。2020年以降のコロナ禍では、「新型コロナ災害緊急アクション」メンバーとして生活困窮者の支援に取り組む。その活動をまとめた著書に『コロナ禍、貧困の記録 2020年、この国の底が抜けた』(かもがわ出版)がある。最新刊は『学校では教えてくれない生活保護』(河出書房新社、2023年1月出版)。

■開催日時:9月23日(土)13:00〜17:00(zoomにてオンライン、終了後動画配信アリ)

■オンライン参加費:800円 
 ※JCJ会員の方、通常の〈JCJ Online講演会〉は無料で参加出来ますが当会へのオンライン参加は800円となります。

 ※参加希望の方はPeatix受付ページ(https://jcjaward2023.peatix.com)、から参加費をお支払いください。

■贈賞式会場へのリアル参加をご希望の方:会場は水道橋の全水道会館・4階大会議室となります。
リアルでの参加費はJCJ会員、非会員共に 1000円。メールで来場予約をしていただき、会場受付でお支払下さい。

■主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)
    
■オンライン参加に関するお問い合わせ:jcj_online@jcj.gr.jp

■会場参加に関するお問い合わせ:office@jcj.gr.jp

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2023年09月08日

【2023年度 JCJ賞】鈴木エイト氏の2冊の著書を大賞に。『自民党の統一教会汚染─追跡3000日』『自民党の統一教会汚染2─山上徹也からの伝言』(共に小学館)

 日本ジャーナリスト会議(JCJ)は6日、2023年度のJCJ賞受賞作を発表した。
 大賞は、統一教会の実態と自民党との関係を、20年の長きにわたって取材し、統一教会との孤独な闘いを続けてきたフリージャーナリスト・鈴木エイト氏の活動及び著作に対し贈賞となった。
 そのほかに5点が、JCJ賞に選定された。受賞作は以下の通り。

●琉球新報社の<台湾有事の内実や南西諸島の防衛強化を問う一連の報道>
●小山美砂『「黒い雨」訴訟』(集英社新書)
●琉球朝日放送の<命(ぬち)ぬ水(みじ)─映し出された沖縄の50年> 
●NHK Eテレの<ルポ死亡退院─精神医療・闇の実態> 
●NHK Eテレの<市民と核兵器─ウクライナ 危機の中の対話>

 贈賞式は9月23日(土) 13〜17時、 東京・全水道会館4階大会議室(JR水道橋駅・東京より北口下車) 、詳細はhttps://jcj.gr.jp/future/6783/ をクリックして把握してください。
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2022年11月21日

【23年度JCJ賞記念講演】法政大・上西充子教授 信頼される報道とは 政治は「津波」とは違う 事態は行動で変えられる 時機をとらえ問題提起を 言葉づかいにも疑問=須貝道雄

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 報道は「事実」を伝えるのだとメディアの人は言います。でも伝える事実を選択しています。たとえば2015年、安保法制が国会で議論されていた時、SEALDs(シールズ)の学生デモを初めのうちはあまり注目せず、大きく盛り上がってから報じていました。
 伝える際の言葉遣いも疑問です。ニュースの見出しに「与党、菅首相答弁減らし成果 野党追及は決定打欠く」(2020年12月4日)とありました。「成果」って誰の評価ですか。「決定打欠く」は、野党はくだらないという印象を強める言葉です。

野党も権力監視を

 また報道は「権力監視のため」といいますが、権力監視の役割を担うのは報道だけではありません。野党も権力監視をしている。その内容を伝えていますか。党首に詳しく話を聞いてオピニオン欄に載せてもいいはずです。権力監視のために発信している市民の活動もあまり報じていません。
 国会の質疑でわざと論点をそらす答弁が、私のツイート(18年5月6日)がきっかけで「ご飯論法」として話題になりました。「朝ごはんは食べなかったんですか?」という質問に「ご飯は食べませんでした」と答え、パンを食べたことは黙って隠す答弁の仕方です。
 こうしたやり取りをどう報じたらよいか。首相は「ご飯は食べなかった」と述べるにとどめた、と書くとする。とどめるって、そのほかに何があるのか不明です。首相は「ご飯は食べなかった」と答弁し、パンについては言及を避けた、ならわかりやすくなります。

勝手に既成事実化

 決まっていないことをメディアが既成事実にしてしまう例が、東京五輪組織委員会の会長人事でありました。森喜朗会長が女性蔑視発言で辞任(21年2月)した際、各紙は「後任に川淵氏」「川淵氏を後任指名」などと報じました。森氏の指名により、川淵三郎氏が次期会長に決まったかのような報道で、ジャーナリストの江川紹子さんはツイッターで疑問を示しました。
 森氏が指名しても、理事会で決めなければ人事は確定しないと記事では説明しますが、末尾で「後を託す形となった」「禅譲劇もまた『密室』で幕を閉じた」と結び、記者が幕を閉じてしまっています。でも川淵さんは会長になりませんでした。
 ここで言いたいのは、政治は津波とは違うということです。津波は押しとどめられませんが、政治の津波は報じ方次第で、世の中の人々の行動によって、止められます。そこで大事になるのがタイミングをとらえた問題提起です。

 2020年5月、「#検察庁法改正案に抗議します」という笛美さんの声がツイッター上で広がり、500万回以上ツイートされました。「文春砲」の報道とも重なり、法案は見送られました。
事態の進行中に、読者・視聴者が問題を理解し、関与できる報道のあり方をもっと工夫してほしい。適切な見出し、一目でわかるインフォグラフィックス(情報の視覚的表現)など考えていただきたい。国会の本会議で法案が通る直前に問題点を報道してもタイミングが遅く、事態を変えることはできません。
 「野党は反発」という書き方も矮小化した表現です。誰がなぜ批判しているのか、その様子をきちっと伝えれば、世の中も反応します。「国会は茶番」と語られ、国会質疑は無意味だと人々が見るようになれば、喜ぶのは政府でしょう。人々の判断力を信頼し、それに資する報道を期待したいです。  
須貝道雄
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年10月25日号
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2022年09月15日

【お知らせ】第65回JCJ賞贈賞式・記念講演 9月24日(土)午後1時から5時まで 会場・東京の全水道会館・4階大会議室からオンライン配信 記念講演「何のために報じるのか」講師:上西充子・法政大学キャリアデザイン学部教授

 「何のために報じるのか」。ジャーナリストの皆さんはこの問いに何と答えるでしょうか――。法政大の上西充子教授は根源的な問題を提起する。
 「『知る権利』に応えるため」? けれど、「知る」ことの先に何を想定しているでしょうか。それとも、「事実を伝えるため」? とはいえ、伝える事実も選択されています。あるいは、「権力監視のため」? けれども、権力監視はジャーナリストだけが独占的に担うものではありません。国民も権力監視を行います。そのために必要な情報を報道は伝えているのか。
 以上のような考察をする上西さんが、報道に携わる人たちに託す期待、願いとは何か、講演でたっぷりと語っていただく。

【上西充子さん・略歴】法政大学キャリアデザイン学部教授。専門は労働問題・社会政策。国会審議を解説つきで街頭上映する国会パブリックビューイングを2018年6月に始めた。「ご飯論法」で2018年の新語・流行語大賞トップテンを受賞。著書に『呪いの言葉の解きかた』(晶文社)、『国会をみよう 国会パブリックビューイングの試み』(集英社クリエイティブ)、『政治と報道』(扶桑社新書)など。

 日本ジャーナリスト会議(JCJ)は、1958年以来、年間の優れたジャーナリズム活動・作品を選定して、「JCJ賞」を贈り、顕彰してきました。今年で65回を迎えました。8月31日の選考会議において、次の6点を受賞作と決定いたしました。
【JCJ賞大賞】    1点
● 映画「教育と愛国」 監督・斉加尚代
【JCJ賞】      4点(順不同)
● 「土の声を『国策民営』リニアの現場から」 (信濃毎日新聞) 
● 風間直樹/井艸恵美/辻麻梨子『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』  東洋経済新報社
● 北海道新聞社編『消えた「四島返還」 安倍政権 日ロ交渉2800日を追う』 北海道新聞社
● 「ネアンデルタール人は核の夢を見るか〜“核のごみ”と科学と民主主義」 北海道放送
【JCJ特別賞】    1点
● 沖縄タイムス社と琉球新報社
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【9月24日は受賞者によるスピーチがあります。取材や企画で考えたこと、苦労したことなど毎回、スピーチの内容は濃く、参加者に感銘を与えています】
参加費:会場参加(30人まで・要予約)は1000円、オンライン参加は800円
・会場参加お申込みの方はJCJ事務所に下記メールかファクスで。先着順。参加費の支払いは当日、会場でお願いします。  office@jcj.gr.jp   ファクス03-6272-9782
・オンライン視聴をお申込みの方は下記URLをクリックし、Peatixを通じてお手続きをしてください。https://jcjsyou.peatix.com/
・お問い合わせは onlinejcj20@gmail.com まで。
主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ) https://jcj.gr.jp/index.html


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2022年09月05日

【65回JCJ賞決まる】JCJ大賞 映画「教育と愛国」 JCJ賞4点 特別賞1点 24日(土)午後1時から東京・全水道会館で贈賞式

日本ジャーナリスト会議(JCJ)は、1958年以来、年間の優れたジャーナリズム活動・作品を選定して、「JCJ賞」を贈り、顕彰してきました。今年で65回を迎えました。8月31日の選考会議において、次の6点を受賞作と決定いたしました。

【JCJ賞大賞】    1点

映画「教育と愛国」 監督・斉加尚代

【JCJ賞】      4点(順不同)

「土の声を『国策民営』リニアの現場から」 信濃毎日新聞  
風間直樹/井艸恵美/辻麻梨子『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』  東洋経済新報社
北海道新聞社編『消えた「四島返還」 安倍政権 日ロ交渉2800日を追う』 北海道新聞社
「ネアンデルタール人は核の夢を見るか〜“核のごみ”と科学と民主主義」 北海道放送


【JCJ特別賞】    1点

沖縄タイムス社と琉球新報社


JCJ賞 贈賞式:9月24日(土) 13:00〜 全水道会館・4階大会議室(東京・水道橋)

2022年JCJ賞贈賞作品一覧

【JCJ賞大賞】    

● 映画「教育と愛国」 監督・斉加尚代

 大阪の教育現場で長く取材してきた斉加尚代ディレクターが、2017年にMBSで放送した作品に追加取材をして再構成したドキュメンタリー映画。小学校の道徳教科書で「パン屋」が「和菓子屋」に書き換えられる。滑稽な書き換えだが、斉加は沖縄戦での集団自決について「軍の強制」が削除された問題とつながると感じた。ほとんどの出版社から取材を断られながら、「新しい歴史教科書をつくる会」を支持する立場の伊藤隆・東大名誉教授のインタビューを実現。「歴史に学ぶ必要はない」という、歴史学者としてはあるまじき発言に衝撃を受ける。教育への政治介入が強まる中で、教科書から史実が消える。5月の公開から2か月で、2万7千人が映画館に足を運んだ。教育への危機感が広がっている。

【JCJ賞】      

● 「土の声を『国策民営』リニアの現場から」 信濃毎日新聞 

 日本列島の中央部の自然体系と地形、風土を大きく傷つけながら強行されているリニアモーターカー建設プロジェクト。現下で総工費約7兆円のうち約3兆円を政府が財政投融資で貸し出すという、「国策民営」の事業だが、長野など関係県や市町村にも大きな負担を押し付けられている。その必要性、有効性からも、「21世紀最大の無駄プロジェクト」に対しては、地元住民などの根強い反対運動が続く。86%がトンネル工事の同プロジェクトでは、残土の処理や運搬など「土」の処理が、大きな課題になっている。この「土」に焦点をあてながら、報道機関がとかく及び腰だったリニア問題に、正面から本格的に切り込んだ本企画は、斬新でインパクトが大きい。

● 風間直樹/井艸恵美/辻麻梨子『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』 東洋経済新報社

 この闇の深さに慄然とさせられる。日本は精神疾患の患者数が400万人を超え、精神病床入院患者数約28万人、人口当たりでも世界ダントツ。そして日本の精神病院特有の強制入院制度「医療保護入院」がある。この実態を、東洋経済調査報道部メンバーが丹念に取材した。問答無用の長期入院、DVの夫の策略による入院、40年も退院できなかった男性、向精神薬の薬漬け、「一生退院させない」とおどされてパイプカットした男性、密室での虐待横行……など、家族のしがらみをも利用し、人権のかけらも見られない報告は生々しくおそろしい。少し広げて福祉行政問題にも言及がある。深刻な事態が予想される認知症急増という現在の日本に、警鐘を大きく打ち鳴らす一冊。

● 北海道新聞社編『消えた「四島返還」 安倍政権 日ロ交渉2800日を追う』 北海道新聞社

北方領土返還問題に関する安倍政権の日ロ交渉はこの上ない稚拙外交そのものであった。
 本書は、従来の「四島返還」から歯舞・色丹の2島返還に独断で舵を切ってしまい、あげくプーチンに手玉にとられた安倍対ロ外交を7年以上にわたって追った地元紙の記録である。                                           
 交渉の背景に見えてくる米ロ関係の悪化、ロシアのクリミア支配、連繋の深まる中ロ関係、ロシアとその周辺諸国との領土交渉の経緯等々、日ロ交渉を考えるうえでのさまざまな要素を含め、広く深く取材と分析をしている。未発表の証言の掘り起こしやロシア周辺諸国の動向への目配りも光る、北方領土問題の全貌を理解する上での必読の書である。

● 「ネアンデルタール人は核の夢を見るか〜“核のごみ”と科学と民主主義」 北海道放送

 原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる核のごみ。北海道寿都町と神恵内村で、全国初の核のごみに関する文献調査が行われている。人体に影響がない放射線量になるのは10万年後とされる。今から10万年前はネアンデルタール人がいた時代だ。彼らは核の夢を見ただろうか。私たちは10万年先まで安全に核のごみを管理できるのか。「迷惑施設」を地方に押し付ける構図は原発や米軍基地とも通じる。しかし、道内のテレビや新聞は交付金目当てに調査に応募した町長や反対派住民の動きを中心とした報道に終始している、この番組は、本来、国全体で議論すべき問題が地方に押し付けられている構図を鮮明にし、一人ひとりが考えるべきだとのメッセージを発信している。

【JCJ特別賞】    

● 沖縄タイムス社と琉球新報社

 沖縄タイムス、琉球新報の2紙は、ことし復帰50年を記念して、タイムスは「防人の肖像」、「50歳の島で」の企画などで、また新報は「沖縄の日本復帰50年の内実を問う」の特別号などで、ともに復帰50年を迎えた沖縄の基地の現実と、人々の生活を詳しく報道した。県内に2紙が併存するという、厳しい経営状況の下で、真実の報道を求めて切磋琢磨する2紙の活動は、日本の民主主義のために極めて重要である。
 2紙はこれまで戦後77年の日本で、米軍統治下での闘いを含め、県民の人権と日本の民主主義のために、絶えざる報道と評論活動を続けてきた。その活動は、日本のジャーナリズム全体の中で特筆されるべき成果を生んでおり、その果たした役割は極めて大きく、本土の新聞が教えられ、手本とするものでもあった。
 特に、「再び戦争のためにペン、カメラ、マイクをとらない」をモットーに活動してきたJCJとして、「反戦」を明確に掲げる沖縄2紙の活動は、特に頼もしいものでもある。
JCJは沖縄復帰50年に当たり、2紙のこの間の活動の努力と成果に対し、JCJ特別賞を贈り表彰する。
日本ジャーナリスト会議(JCJ)
  事務局長 須貝道雄 
JCJ賞推薦委員会 大場幸夫  

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2021年11月25日

【21年度JCJ賞贈賞式記念講演】「私と沖縄」矛盾しわ寄せの島 TBS報道局 佐古忠彦さん

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2017年から沖縄のドキュメンタリー映画を3本続けて作りました。TVの世界で長くやってきましたが、TVとは違った古くて新しい世界が映画にはあると感じています。
なぜ、沖縄なのか、私が沖縄に通い続けて四半世紀を超えています。TBSのニュース23、かつて筑紫哲也さんがキャスターをしていた番組に私も参加していました。筑紫さんは記者として沖縄への眼差しを持ち続けた人で、「沖縄から日本が見える、その矛盾がつまっている」と話していました。米軍が起こした交通事故で息子を失った父親が日米地位協定の壁に立ち向かい訴訟を起こした問題を取材したことなどから、私も沖縄へ深く関わるようになりました。そしてなぜ沖縄の今があるのか、という意識からどんどん過去の歴史を遡っていくようになりました。安全保障の問題は、イデオロギーになりがちですが、実は生活の問題で、主権国家としての振る舞いが問われている、その矛盾が一番押しつけられているのが沖縄です。
米軍統治下の政治家・瀬長亀次郎、カメジローの不屈の闘いを描いた番組は最初深夜の時間帯に放送されました。翌朝、視聴者からの反応の大きさに驚きました。今度は違った形で全国に届けたいと映画化に踏みきりました。映画館に多くの人が集まってくれたのを見て、涙が出そうになりました。

2作目はカメジローの230冊の日記をもとに、主権を取り戻して日本に還るための奮闘を描きました。辺野古への基地移転問題など、政府は、今も沖縄の民意に向き合おうとしていません。最近も埋め立ての土砂を、沖縄戦の犠牲者の遺骨が眠る南部から運ぼうとしています。戦時中最後の知事として送り込まれた島田叡についての映画は、その沖縄戦に立ち返った作品です。内務官僚として軍とともにする立場にあった島田が、最後に「個」として「人間」として何をしたのかを描きたかったのです。島田は全体主義に「個」が押しやられる中で、最後に「個」に自らが向き合うことができたのではないか。この映画をリーダー論としても見ていだだけると思います。
そしてカメジローもまた「個」の大切さを訴え、「個」の力が積み上げられて沖縄ができていた、と信じていたのです。民主主義とはどういうものか、沖縄がそれを示しているのではないか、私はこれまでと変わらない視点を持って、やっていきたいと思います。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年10月25日号
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