2019年04月04日

【リレー時評】沖縄めぐる3つの報道課題=松元 剛(JCJ沖縄世話人)

 米軍の辺野古新基地建設に向けた埋め立ての賛否を問う県民投票は、住民投票の有効性の指標ともされる投票率50%を超え、反対が7割超となった。昨年9月の県知事選での玉城デニー知事の得票を約4万票も上回った。
 争点が新基地の是非に絞り込まれた上、全市町村実施にこぎ着けた。圧倒的な反対の民意の歴史的意義は重い。

 3月になって、岩屋毅防衛相は臆面もなく、県民投票の結果にかかわらず工事を継続すると決めていたと明らかにした。了承したのは安倍晋三首相だ。首相は昨年9月の県知事選と同様に、「結果を真摯に受け止める」と答弁したが、うわべだけの空虚さが際立つ。
 「国防は国の専管事項」と言い張り、沖縄に基地を押し付け続ける姿勢は、先の大戦から続く「沖縄切り捨て」の差別的構造の温存に映る。
 国会審議で野党側がこうした安倍政権の姿勢を追及しているが、「沖縄に寄り添う」「真摯に―」と言いながら民意無視を決め込む政権の姿勢は、メディア側が主体的に追及すべきではないか。

 一方、宮古、八重山への自衛隊基地新設も根強い反対を軽んじて進んでいる。沖縄戦は、国体護持、本土防衛のための「捨て石作戦」だった。多くの県民を軍と共に行動するよう仕向け、軍民混在の凄惨な戦場で死に追いやった。沖縄戦の教訓は、「軍隊は住民を守らない」である。
 安全保障問題で、頻繁に用いられる「島嶼防衛」をかいつまんで説明すれば、こうなる。島の戦闘は守備より攻撃が有利。攻め込まれたら、敵にいったん占領させた上で、逆上陸して島を奪い返す─。自衛隊が米軍を巻き込んで繰り返す「離島奪還」という奇妙な名称の訓練の核心である。
 間違いなく巻き込まれる住民の安全は二の次だ。自衛隊内の沖縄戦研究の蓄積を踏まえ、「第二の沖縄戦」が想定されている。「島嶼防衛」の危うさに対するメディアの検証は鈍いままではないか。

 平成の世が終わりを告げる4月末までの期間は、昭和天皇によって沖縄が切り捨てられた史実を検証する最後の機会だろう。
 1945年2月、近衛文麿元首相から早期和平を進言された、昭和天皇は「今一度戦果を挙げなければ実現は困難」と拒み、沖縄戦は不可避となった。47年9月、昭和天皇は米側にメッセージを送り「25年から50年、あるいはそれ以上」沖縄を米国に差し出す方針を示した。いわゆる天皇メッセージである。
 「象徴天皇」でありながら、昭和天皇がなぜ外交に深く関与し、沖縄の命運を暗転させた重大な方針を示したのか。「昭和天皇実録」などでもその経緯は未解明だ。沖縄に関する昭和天皇の「戦争責任」と「戦後責任」は明白だ。今に続く沖縄の基地過重負担に天皇制が及ぼした影響をあらためて検証し、その史実を後世にしっかり伝えることもメディアの役割ではないだろうか。それはもちろん、沖縄のメディアにも課せられている。
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2019年03月28日

【内政】 辺野古新基地阻止 世論が決め手 本土が民意示す番だ 沖縄市民グループが全国の地方議会への陳情準備=米倉外昭

沖縄県名護市辺野古の新基地建設の賛否を問う県民投票は2月24日に開票が行われた。投票率は52・48%と過半数を超えた。最も多かった「反対」は有効投票数の72%を超え、43万4273票に達した。これは全投票資格者(有権者)の37・6%に当たる。5市の市長が一時不参加を表明する事態があったが、曲折を経て全県実施が実現した。

23年ぶりの沖縄県民投票は歴史的な成功を納めた。それでも工事を止めることができていない。政府は県民投票告示後も工事を続行し、反対の民意が示された翌日も工事を強行し、現在に至っている。



3月1日、玉城デニー知事が安倍晋三首相と面談した。投票結果を伝え、工事中断と、日米両政府と県の3者協議機関の設置を求めた。しかし、ゼロ回答だった。

国会では連日、野党が政府の姿勢を追及し批判を続けている。しかし、首相らは「普天間飛行場の危険性除去のため」と繰り返し、民主主義否定、沖縄差別の姿勢をあからさまにしている。

埋め立て工事の土砂投入が始まってから3カ月が過ぎた。大浦湾の海流を変える新たな護岸の建設も始まり、25日には二つ目の区画に土砂投入を開始する方針だ。かけがえのない自然が圧殺されつつある。

大浦湾に広範囲にわたって軟弱地盤があることを、ようやく政府が認めた。海面から90メートルもの深さの部分もあり、地盤改良は極めて困難だ。砂ぐいを7万本以上打ち込むとしており、新基地完成まで13年、工費は2兆6500億円に達すると県は試算している。このまま進めても、十数年も普天間飛行場の危険が放置される。

さらに、普天間飛行場返還には、緊急時に民間の長い滑走路を使用するという条件もある。那覇空港を明け渡すことを意味し、事実上不可能だ。結局、新基地が完成しても普天間が返還される保証はないことになる。

それゆえ、玉城知事は辺野古固執こそが「普天間の危険を固定化する」と主張している。国が地盤改良のための設計変更や希少サンゴ移植などを申請しても県は承認しない。政府は展望がないまま既成事実をつくっているのである。



16日に玉城知事の支持母体「辺野古に新基地を造らせないオール沖縄会議」が那覇市内で1万人規模の県民大会を開く。

埋め立て承認「撤回」の執行停止決定を巡り、国を相手取って提訴するかどうかを、県は22日までに決定する。

玉城知事の知事選出馬に伴う衆院沖縄3区の補欠選挙は4月21日投開票だ。オール沖縄陣営のフリージャーナリスト、屋良朝博氏と自民公認・公明推薦の元沖縄北方担当相、島尻安伊子氏の事実上の一騎打ちである。7月には参院選がある。

「辺野古のへの字も言わない」という自公陣営の争点隠し戦術は、県民投票が成功したことでできなくなった。再び、新基地の是非、日本政府にどう向き合うかの判断が示されることになる。



次に選択を迫られるのは全国の人々である。4月に統一地方選、7月に参院選がある。沖縄の民意に対して、各政党や候補者は意思表示をすべきだ。沖縄に新たな基地を造ることに賛成か反対か、沖縄の民意を尊重するのか無視するのか。

沖縄の市民グループが全国の地方議会に国民的な議論を呼び掛ける陳情を行う準備をしている。

政府の沖縄差別政策、民主主義の破壊、軍事化と自然破壊を止めるための一番の近道は、全国の世論、国際世論が、新基地建設阻止の意思を明確に示すことである。

米倉外昭(琉球新報記者)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年3月25日号
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2019年03月15日

【今週の風考計】3.17─世界で頻発する大統領包囲の民衆デモ

南アメリカのベネズエラが未曾有の危機に立たされている。2013年に就任したマドゥロ大統領は、死去したチャベスの後継者とされ、酪農やコーヒー・肥料・靴などの生産、スーパーマーケット事業などを相次ぎ国営化した。
しかし米国などからの経済制裁に加え、原油価格が下落して事態は悪化。天然資源も人的資源も豊富なこの国が崩壊寸前の状態に陥っている。2015年の選挙で野党が多数派になった国会の権限を無効化し、批判勢力を暴力的に抑圧・弾圧した責任も免れない。
野党連合出身のグアイド国会議長は、自ら暫定大統領就任を宣言し、数千人規模の反政府デモを組織して立ち上がっている。だが米ロなどの大国が軍事介入し、さらなる混乱を招く暴挙は慎まねばならぬ。

隣国のブラジルでは、今年の元旦に就任したボルソナロ大統領の言動も要注意。「ブラジルのトランプ」と評されるが、政界汚職を一掃できるか、犯罪組織による暴力が激化する“殺人大国”の汚名を返上できるか、極めつけの右翼であるだけに軍部と二人三脚での独裁政治に走らないか、不安が広がっている。

転じて北アフリカに目を向けると、アルジェリアではブーテフリカ大統領の立候補に反発する数万人規模のデモが起きている。なんと82歳になる彼は、4期20年の長期政権を率いてきた。6年前に脳卒中を患って以降、公の場にほとんど姿を見せず、健康不安が囁かれているのに、4月18日の大統領選挙へ5選をめざして立候補を表明したからたまらない。
野党勢力が結集して「空前の反乱」を呼びかけている。経済成長率は1.4%まで落ち込み、とりわけ若年層の高い失業率への反発は増大している。

アルジェリアの動きを気にしているのが、エジプトのシシ大統領だ。2014年に就任し、現在2期目・64歳の彼は2022年で任期満了の予定だった。だがシシ大統領を支持する議員が提出した、任期をさらに2期12年に延ばす改正案は、2034年までの在職(20年間)を可能とする内容。
 なんと8割の賛成多数で承認されてしまった。5月の国民投票にかけられ、過半数が同意すれば憲法改正が成立する。日本の永田町でも、安倍首相4選などの発言が飛び出している。
 シシ大統領に戻れば、人権活動家・ジャーナリストの拘束など、彼の強権姿勢は際立っており、「エジプトは記者にとって世界有数の監獄」と評されている御仁だ。

2018年に再選されたトルコのエルドアン大統領も、デモ禁止など国民への弾圧と取り締まりが激しい。仲間優先の縁故主義や独裁主義がはびこり、政治的な迫害や司法制度・法治への不信感、ビジネス環境の悪化などが、怒りに拍車をかけている。経済はぐらつき、通貨リラは急落。ついにトルコ国民も、17年には42%増の25万人超が外国へ逃げ出している。
 いま世界は大統領の言動を包囲する、怒りの民衆ネットワークを作り出している。(2019/3/17)
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2019年03月09日

【国内政治】 地に落ちた統計の信用 企業・大学などに悪影響計り知れず 政治的思惑か忖度か=岡田敏明

 国の統計をめぐる問題が注目を集めている。
 いったい何が起きているのか。厚生労働省が、毎月勤労統計を不正な方法で調査していた。全数調査すべきところを抽出調査していたが、いきなり全数調査に近づける補正が行われたことから名目賃金が異常に上昇。補正は2018年から行われたが、17年以前分は補正されなかったため対比ができなくなった。

基幹の4割に問題
 毎勤統計の不正を調査する特別監査委員会の報告書問題もあったほか、不正は厚生労働省だけではなく、政府の基幹統計全体のなんと4割に問題が見つかっている。政府は新年度予算案を修正、閣議決定をし直す異例の事態に追い込まれた。雇用保険などを過少給付されていた対象者はさらに拡大する可能性がある。
 さらに毎勤統計の調査対象の入れ替えでは、首相秘書官が「問題意識」を伝え、その結果賃金の伸び率が上ぶれしたことなども明らかになった。
 単なる行政ミスが重なったわけではない。政治的な思惑か、官僚サイドでの忖度が働いたのか。不正の隠蔽と虚偽報告等々、疑惑は広がっている。
 日本の統計の信用は、地に落ちた、というべきだろう。

統計委員会の役割
 政府は「世界に冠たる日本の統計」などと自賛し、国際協力として途上国への援助もしてきた。その統計が揺らぎ、国の信用が毀損している。
 今回の一連の報道で統計委員会という存在を知った人も多いと思う。実は、2007年5月に新統計法が成立、60年ぶりに統計の基本法が改正された。この法律で統計委員会が設置された。
 旧統計法は、戦前から戦中にかけての経験に対する反省を踏まえ、積極的に統計体系の整備を図るために、各種統計調査に共通することを規定。指定統計調査および届出統計調査に関する事項等を規定していた。

 旧法は本文23条という小さな法律だったが、世論調査・意識調査などを法の範囲外として意見や意識という面にまで国が入り込むことを避けたという特徴があった。新法は本文64条からなるが旧法の精神を継承し、公的機関が作成する統計全般を対象とした法律に改編された。これまで官庁統計とか政府統計と呼ばれていたものを「公的統計」という名前に統一し、併せて統計データの二次利用促進を明記している。

 最近は、統計を「社会の情報基盤」という言い方をする。新統計法は、社会に必要とされる公的統計が効率的に、しかも人々に役立つように作るためのルールを定める。公的統計の作成、提供の手続、 統計調査で集めた個人や会社の秘密の保護、 全体としてムダなく効率的に統計を整備していくための仕組みなどを規定する。
 5年に一度行われる国勢調査のように国の基本となる特に重要な統計を作るための調査を 「基幹統計調査」というが、 その作成から結果公表に至るまで、 調査を実施する機関は厳しく規制される。統計の数字を都合良く変えたり、 公表前に結果を漏らしたりすることも禁止されている。毎勤統計も56ある基幹統計の一つである。

 西村芿彦統計委員長は「統計委員会では、統計技術的観点から毎月勤労統計及び毎月勤労統計調査の精度向上に多くの審議時間を費やし、厚生労働省にその改善を促してきており本事案は極めて残念である」と厳しく指摘した。事態は深刻だ。
 統計法は基幹統計調査に関して調査対象になった人や会社に回答の義務を定める。回答拒否や虚偽回答には罰則もある。
 国の重要な統計が正確に作れなければ、国や自治体だけでなく、民間企業や大学、統計データを使うすべての人々への影響は計り知れない。国民生活に直結する。
 かつてマルクスが資本主義研究を「資本論」に結実させたのは統計があって可能だったし、最近のトマ・ピケティの「21世紀の資本」も統計あってこそ成し遂げられたことは記憶に新しい。

役所に分散が問題
 この統計不正問題の背景として考えておかなければならないのは、統計部門が「行政改革」の名によるリストラの対象になったことである。04年当時6247人居た統計職員が18年4月には1940人と3分の1以下にまで大幅に減らされている。そして関連予算が削減されていた。統計に対する思想的退廃が見て取れる。
不正の意図は、長年まかり通っていたのはなぜか。―全貌を明らかにするのは重要課題である。 同時に、日本の公的な統計が各府省で分散されているという問題がある。この分散型の統計制度に対し、統計委員会を設置することで「司令塔」としての役割が期待されたのであるが、この制度で十分かも検討すべきである。統計を統合した中央官庁を新たに設置することも重要な選択肢であることを指摘しておきたい。

岡田俊明(元青山学院大学招聘教授・税理士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
posted by JCJ at 17:12 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月05日

【内政】 天皇の戦争指導・責任を追及 88年JCJ賞受賞番組「遅すぎた聖断」上映 JCJ沖縄2月集会=杉山正隆

 JCJ沖縄2月集会「『遅すぎた聖断』学習会、ジャーナリズム各賞合同報告会・交流会」が9日、那覇市のRBCホールで開かれた。県内や、東京、北九州のメディア関係者30人が参加。沖縄戦がなぜ戦われたか、客観的な史料に基づき天皇の戦争責任などを考える「遅すぎた聖断 〜検証・沖縄戦への道〜」(1988年、RBC=琉球放送、40分)を上映。その後、番組を制作した仲里雅之ディレクター(当時)と大盛伸二カメラマン(同)から制作の狙いなどを聞き、質疑や討論が活発に行われた。

天皇制温存のため
 この番組にJCJ賞を贈呈したことを報じる88年8月25日付機関紙「ジャーナリスト」には、「ビデオを見た各委員はいずれもうなった。テレビでこれほど正面から天皇の戦争責任に迫り得た作品はこれが初めてではないか。日本軍による住民虐殺、20万に及ぶ戦没者をもたらした沖縄戦は、ただ国体護持=天皇制の温存のために戦われたのだ」と。また、「この番組を通じて『天皇の戦争責任』との言葉は一言も出て来ない。だが、積み重ねられた事実は、ものの見事に天皇・天皇制の責任を明らかにしている」と記されている。
 昭和が終わろうとする当時、天皇や君が代、日の丸などの問題をきちんと伝えなければ、との強い危機感が番組制作につながり、県内はもちろん、JCJ賞を受賞するなど県外でも反響が大きかった。

 メディア関係者からは、どんな苦労があったのか、タイトルを決定した経緯などの質問や、どう現役記者にバトンタッチしていけば良いのかアドバイスを求める声が上がった。
 仲里さんは「番組では事実を淡々と伝えていこうと思った。もちろん、どう受け止められるのか不安もあった。古本屋をまわり資料を探した」などと当時を振り返った。「沖縄では戦時中、皇民化教育が強くなされた。小さい頃からすり込まれた。それは皇族の結婚話を見ると、同じようなことが今もあるように感じる。最近の天皇の沖縄訪問の際に、戦時中と同じように『天皇陛下、万歳』の声が湧き上がり、提灯行列があった」とも。
 大盛カメラマンは「実は『遅すぎた聖断』に新しい事実は全く無かった。史実に、研究者の声などを丹念に組み合わせただけ。だから特に何も言ってないのだが、実は伝えたいことはしっかり言っている。ちゃんとしたメッセージを世に出したと今、見てあらためて感じる」と話した。

今の方が状況悪い
 参加者からは「番組を制作した30年前より今は悪くなっている点が少なくない」との危機感や、「沖縄のジャーナリズムを未来につないでいきたい」「沖縄ではきちんと伝えるべきニュースは報道されている。本土でのジャーナリストも工夫しつつ出来ることをすれば良い」「JCJの今後の取り組みに期待したい」などの声が上がった。
 各賞合同報告会では、沖縄タイムスが昨年のJCJ賞を、琉球新報が新聞労連大賞を、またラジオ沖縄や沖縄テレビ放送、FM沖縄などが主要ジャーナリズム賞を受賞するなど、昨年4月から現在までの13分野での受賞が報告された。各受賞者の代表からあいさつがあり、沖縄のジャーナリストの目覚ましい活躍に改めて感動した。

杉山正隆(JCJ運営委員)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
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2019年03月01日

【リアル北朝鮮】 米朝再会談を意識 「建軍節」例年とは違い静か=文聖姫

 2月8日は北朝鮮人民軍が創建された日だ。北朝鮮では「建軍節」と呼ぶ。実は、2017年までは4月25日が「建軍節」だった。この日は、金日成主席が朝鮮人民革命軍(抗日遊撃隊)を結成した日とされる。朝鮮人民軍は朝鮮人民革命軍の伝統を受け継いでいるから、朝鮮人民軍を結成した日が軍の創建日になるというのが、北朝鮮側の説明だった。
 しかし、歴史をさかのぼれば、当初は2月8日を「建軍節」としていた。それが前述のような理屈で4月25日に変わったのは1978年だった。そして、昨年、北朝鮮は従来の2月8日に「建軍節」を戻した。

 前置きが長くなったが、今年の「建軍節」は興味深かった。イベントを小規模化したのだ。昨年は建軍70周年だとして軍事パレードも行われた。だが今年は、慶祝公演とパーティーのみ。静かな建軍節だった。
 建軍節当日、金正恩朝鮮労働党委員長は人民武力省(防衛省)を訪問し、演説した。演説では、核やミサイルに関する言及はなかった。米国を非難する言葉も見当たらなかった。
 背景として考えられるのは、今月末にベトナム・ハノイで米朝首脳会談が開催されるという点だ。米国を刺激することを極力避けようとする北朝鮮指導部の意図がうかがえる。何もしないという選択肢は、北朝鮮の世論があるから考えられない。宴会や慶祝公演なら、ソフトなイメージが出せる。金委員長が人民武力省を訪れたのも絶妙な演出だった。

 さて、米朝首脳会談はどうなるのか。金委員長は今年元旦の新年の辞でこう語った。
「我々の主動的かつ先制的な努力に対し、米国が信頼性ある措置を取って相応の実践的行動で答えるなら、両国関係はより確実で画期的な措置を取っていく過程を通じて速いスピードで前進するでしょう」
 要するに我々も行動するから、米国も行動せよということだ。

文聖姫(ジャーナリスト、博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
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2019年02月18日

【お知らせ】JCJ2・22講演会:高須次郎<出版崩壊とアマゾン>

出版崩壊とアマゾン
─どう再生への道を拓くか─
いま出版界は存続の瀬戸際に立たされている。
値引き販売・取次外しなどのアマゾン商法″が席巻!
電子書籍の価格は自由、再販制度はズタズタ。
日本の書店・取次の倒産が続く─その出口を探る。

講演:高須次郎氏(緑風出版代表・前出版協会長)
日時:2月22日 (金)18時30分開会(18時15分開場)
場所:YMCAアジア青少年センター 3階会議室
〒101-0064 東京都千代田区猿楽町2-5-5 ☎ 03-3233-0611
JR「水道橋」駅東口下車、白山通りを神保町方面へ徒歩5分
アクセス地図 http://www.ayc0208.org/hotel/jp/access-access.html
参加費:800円(JCJ会員・学生500円)

《主催》 日本ジャーナリスト会議(JCJ)出版部会

JCJ出版部会2・22講演会チラシ(高須次郎氏).pdfJCJ出版部会2・22講演会チラシ
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2019年02月15日

【国際情勢】 「辺野古を守れ」署名21万筆 呼びかけた日系4世 ワシントンで訴え 民主主義踏みにじる=津山恵子・NY在住

ハワイ在住の日系4世の音楽家、ロバート梶原さん(32)がホワイトハウスに向けて始めた、沖縄・辺野古への土砂投入停止を訴える請願署名が、21万に届こうとしている(米東部時間1月17日現在208,691)。

 梶原さんは昨年12月8日、米ホワイトハウスが設ける請願サイト「ウィ・ザ・ピープル(We The People)」を利用し、新基地の是非を問う今年2月24日の県民投票まで、工事停止を検討するように、トランプ米大統領に求める署名を集め始めた。サイトは、署名開始から30日以内に10万署名が集まればホワイトハウスで請願を検討、60日以内に回答が来る仕組み。このため、請願内容は、ホワイトハウス内で再検討され、「不適切な影響がある」と判断された場合を除き、署名者全員にホワイトハウスがeメールで回答を送るという。

沖縄中城は私の血

梶原氏は、母方が沖縄県中城(なかぐすく)村出身の日系4世。子供の頃から祖父母から沖縄の文化と歴史を教えられ、沖縄の血を自分のアイデンティティーの一つととらえている。辺野古にも何度も訪れ、ウチナーグチ(沖縄の方言)を話し、琉球舞踊も踊る。

「12月上旬の工事開始の日が近づくにつれて、不安も増す一方で、希望も失せていた。日米政府は、沖縄の人々と、玉城デニー知事の声を無視した。でも、工事反対のデモを毎日している人々のことを考えると何もしないわけには行かず、少しでも彼らのことを知ってもらえればと、ほとんどやけくそで始めた」と、署名運動を始めた理由を話す。

英語のサイトにいかに署名するか、SNSを使って、日本語で説明する人も表れ、世界中に拡散し、沖縄県民や世界に住む沖縄出身の日系人が署名。わずか10日で目標の10万を達成した。タレントのローラさんや、クィーンの伝説ギタリスト、ブライアン・メイさんが、ツイッターを使って署名を訴えた。

ネットで中継流す

これをきっかけに、署名開始から30日の1月7日には、梶原氏が首都ワシントンDCを訪れ、米市民や沖縄県人会のメンバーなど30人が集まって、集会を開いた。梶原さんはこう訴えた。

「辺野古新基地は、日本と沖縄だけでなく、米国とアジア太平洋地域にとってマイナス

基地には、米国民の税金が使われるだけでなく、アジアの緊張を高める」

「沖縄の民主主義を無視することは米国が世界に誇る民主主義を踏みにじることです」

 参加者らは「トランプ大統領、私たちに答えてください!請願署名は19万以上集まりました!沖縄・辺野古の新米軍基地建設にNO!」などという垂れ幕を掲げ、梶原さんは集会の様子をライブでインターネットに流した。

辺野古の問題を米国メディアが報じることはあまりないが、防衛省の辺野古への土砂投入は、AP通信の記事をワシントン・ポストなどが素早くサイトに掲載した。

請願は市民の権利

梶原さんは市民運動家として、「ウィ・ザ・ピープル」については、以前から知っていたという。サイトによると、表現や報道の自由を保証するアメリカ合衆国憲法修正第1条は、「議会は、表現の自由、あるいは報道の自由を制限することや、人々の平和的集会の権利、政府に苦情救済のために請願する権利を制限することはできない」とし、国民が政府に直接請願する権利についても「市民の基本的権利」だとしている。

 梶原さんは、ワシントンの集会の最後に「チバリヨ(がんばれ)」と沖縄県民を激励。「決してあきらめない、というのが沖縄の生き方。平和的に、民主的に、というのも、沖縄のやり方だ。辺野古の新基地建設反対を引き続き、訴えていく」と、記者らに話した。

 梶原さんは、その後も毎日、基地建設反対を訴えるYouTubeビデオをアップし、SNSでシェア。トランプ大統領と閣僚、上院議員などに、署名の進展を伝える書簡とeメールを100通以上送った。ホワイトハウスからは、受信の確認メールが来たという。

 辺野古の是非を問う県民投票の波は、世界に広がっている。

津山恵子(ニューヨーク在住・ジャーナリスト)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
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2019年02月01日

【軍拡】 恐ろしい?兵器爆買い? 専守防衛は空洞化 ヒト・モノ・カネすべて米国に貢ぐ=山田厚史

 「従来とは抜本的に異なる速度で防衛力を整備する」―。昨年12月18日、閣議決定された中期防衛力整備計画(2019ー23年度)に記されていることを御存知だろうか。
 横ばい微増だった防衛予算を「これからはどんどん膨張させます」と安倍晋三内閣は宣言したのだ。財政難が叫ばれ、消費増税で国民に負担増を強いようという時に、軍事費は聖域扱いにして糸目をつけない。こんな臆面のなさをメディアはなぜ騒がないのか。

口実に過ぎない
 2019年からの5年間に27兆4700億円を軍事費に投入する。前の5年間は24兆6700億円だった。11%の伸びである。蓋が飛んだような2ケタ膨張である。
 中国の脅威、宇宙・サイバー空間での防衛などその理由を並べているが、口実に過ぎない。国会に提出された2019年度予算を見れば一目瞭然だ。
 陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージスアショア」の整備費が2基で1757億円。デラックスな兵器だが値段は実に怪しい。一基800億円といわれていたが、買う段になったら1200億円に跳ね上がった。維持・運用費や弾(ミサイル)など加えるとまだまだ上がるという。
 悪評さくさくの輸送機オスプレイと同じ。政府は一機100億円と説明していたが、アメリカから提示された金額は整備費など含める一機200億円だった。配備を決めたらあとはアメリカの言い値で上がっていく。
  そもそもイージスアショアは東欧などには米国の負担で配備されている。米国を守るための防空システムだから。日本に配備される予定地は秋田と山口。アメリカ本土やグアムの米軍基地へ飛ぶミサイルのコースにあるからと軍事専門家は指摘する。
 ステルス型のF35戦闘機は来年度6機で681億円。147機体制を目指すという。1兆2000億円かかるというが、そこで収まるかはアメリカ次第。F35を載せるため護衛艦「いずも」を空母型する。1000キロを超える適地を攻撃するミサイルの配備計画もある。自衛隊を縛る「専守防衛」の減速は空洞化されようとしている。
 兵器爆買い≠ェどれほどの有用性があるか。議論がないまま日米首脳会議で購入が密約され、「有償軍事援助」(FMS)と呼ばれる自衛隊装備のアメリカ依存が進む。売りつけておいて軍事援助とはよく言ったものだが、FMSは来年度7031億円。政権が発足した2012年(1380億円)の5倍。
 高額兵器は分割払いになる。契約すると将来の予算が約束される。教育や社会福祉の予算を圧迫するだけない。日本の防衛産業に回っていた予算を食いつぶしている。軍と結びつく米軍事産業を「独り勝ち」にさせるのはアメリカの戦略だ。やがて日本は、兵器を米国の有償軍事援助に頼るようになるだろう。

連携さらに深化
 9日、日本記者クラブで講演した在日米軍司令官ジェリー・マルティネス中将は「在日米軍5万4000人は平時の駐留で世界最大だ」と胸を張り「米軍と自衛隊の連携は一段と深化している」と同盟強化を讃えた。
 中期防衛計画は「日米防衛協力を一層強化」を謳い、「在日米軍の駐留をより円滑かつ効果的にするとの観点から、在日米軍駐留経費を安定的に確保する」としている。
 世界にも例がない大勢の軍人が日本にいるのも政府が駐留経費を負担しているからだ。国防予算を削らなければならない米軍にとって日本は有難い存在だ。その結果、沖縄に基地が集中し、首都圏の空は「横田空域」に覆われ、民間機は飛べない。占領時代を引きずる米軍の特権は日米地位協定によって認められている。地位協定の改定を問われると司令官は「変えないことはないが、今はそのタイミングではない。日米合同委員会で問題は解決している」とはねつけた。
 次の局面は共同運用だ。「幅広い分野における各種の協力や協議を一層充実させるとともに、在日米軍の駐留をより円滑かつ効果的にするための取組等を積極的に推進する」(中期防衛計画)。米軍と自衛隊の基地を相互に乗り入れ、共同訓練、演習などを一緒に行う。共同と言っても教えるのは米軍だろう。装備や武器の扱いも作戦も米軍主導だ。自衛隊は米軍の下請けになる。
 司令官がいう日米連携とは、日本がアメリカの軍事システムに組み込まれ、自衛隊員(ヒト)、装備(モノ)、税金(カネ)を差し出すことだ。
 安保法制を変え自衛隊は海外に出られる。国際紛争を武力で解決する国に平和憲法を掲げる日本が付き従う。それが連携の実態だろう。
 自衛隊を9条に書き込む憲法改正は、その協力体制を憲法に銘記することに他ならない。

山田厚史(朝日新聞記者OB)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
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2019年01月26日

【リアル北朝鮮】 「新年の辞」で経済単語38回も 斬新な発表に驚き

 1月1日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、恒例の「新年の辞」を発表した。YouTubeで発表の動画を見ながら、驚いた。こんな感じだ。

 新年午前12時の時報と同時に、朝鮮労働党中央庁舎が映し出される。カメラが建物の内部に入ると、深々とお辞儀をする男性。執事と言われる金昌善氏だ。間もなく金委員長が姿を現し、歩き始める。その後ろを、妹の金与正氏、側近の趙甬元氏、先ほどの金昌善氏が付き従う。

 場面は切り替わり、祖父の金日成氏、父の金正日氏の大きな肖像画などが背後に飾られた執務室と思しき部屋で、金委員長はソファに座り、「新年の辞」を発表した。

 斬新な発表の仕方もさることながら、その内容も例年とは異なっていた。経済問題が大半を占めたのだ。昨年の21回に比べ、「経済」という単語は38回も使われた。逆に防衛分野の言及はほとんどなかった。金委員長自ら、経済建設に全力を尽くす決意を披露したわけだ。

 昨年4月に開かれた朝鮮労働党中央委員会第7期第3回全体会議で、金委員長は核開発と経済建設を同時に推し進める並進路線の勝利を宣言し、経済建設に集中すると語った。自らの核開発の目標は達成できたから、今後は経済建設中心路線でいくというものだった。実際、北朝鮮は17年9月を最後に、核実験を封印した。豊渓里の核実験場も爆破した。

 16年5月の朝鮮労働党第7回大会で金委員長は「国家経済発展5カ年戦略」を提示したが、同戦略は来年が最終年だ。金委員長としては、どうしたって経済問題を解決させなければならない。

 金委員長は7日から10日まで、中国を訪問した。経済技術開発区を視察したという話も伝わってきている。

 新年にあたり自立経済を強調した金委員長だが、改革・開放路線を進めるしか解決の道がないことは十分に分かっているはずだ。中国の経験から学ぼうとしているかもしれない。

文聖姫(ジャーナリスト、博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
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2019年01月07日

【内政】 内乱予備罪で安倍首相を告発 最高検「返戻」に「補充書」で対抗 闘い続ける平野元参院議員=編集部

安倍晋三政権はこの5年半を超す過程で、戦後日本の歩みを支えた現行憲法を踏みにじる行為を次々と繰り返してきた。そして来年には、緊急事態条項を含む条文改憲に踏み込む姿勢を一段と鮮明にしている。こうした日本の民主主義の国家的危機に今年9月7日、安倍首相を内乱予備罪で告発する注目すべき告発状が最高検に提出された。

安倍政治の手法問う

告発は@平成26年7月1日の「集団的自衛権の行使を容認する閣議決定」A平成29年6月22日に野党が提出した「臨時国会召集要求」を約3ヶ月間も拒否。同年9月28日召集した衆院第194回国会臨時会を審議なしの本会議開催120秒解散行為B平成30年3月2日付朝日新聞報道を契機に表面化した森友国有地売却を巡る財務省決裁公文書改竄への対応の「不作為」行為が柱。これらについて告発は、@憲法統治の基本秩序壊乱を目的とした破憲閣議決定A憲法53条違反行為の国会召集拒否と審議なし解散B改竄事件への対応の不作為行為自体が国の統治機構の破壊と憲法統治の基本秩序を混乱、懐乱する現実の準備行為だと、厳しく指弾した。

大手メディアは黙殺

告発者は元参議院議員の平野貞夫氏と弁護士の山口紀洋氏。平野氏は長く衆議院事務局に勤め、平成7年の刑法改正には法務委員として関わった国会運営、国会法の生き字引。山口氏は45年に渡り水俣病裁判に取り組む経歴の持ち主。告発状提出時には記者会見もあったが、ほとんどの大手メディアは「見ざる聞かざる言わざる」を決め込んだ。そして最高検は「具体的犯罪事実が判然としていない」と、10月10日付で「返戻(ルビ=へん・れい)」を通知し、「受理したくない」姿勢を示した。

だが、両氏は「本件は首相の『憲法破壊』という国家の最重大事件。『返戻』は国民の告発権の侵害で検察の職務義務違反」として、「告発理由補充書」を提出した。闘いは新たな局面に入りさらに続く。

 ちなみに9月7日付告発状には第2次安倍政権成立以後の「破憲犯罪容疑3件」と、報道などで公知の63項目の具体的犯罪事実が証拠として提出されている。「判然としない部分」があるなら、それを明示すべきは検察側だ。

 今年8月1日付東京新聞朝刊は、大島理森・衆議院議長が「民主主義の危機。数々の不祥事に安倍政権は原因を明らかにし、改善策を」と異例の「所感」を表明したことを報じた。

中江兆民の「民主の主の字を解剖すれば、王の頭に釘を打つ」を引くまでもない。主権者である我々が問われている。

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
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2019年01月04日

【リアル北朝鮮】 米、金委員長の側近3人を制裁へ 人権問題に絡めて=文聖姫 

「表では両国間の敵対と対決の歴史に終止符を打とうと確約し、裏では対話の相手の尊厳と体制をこき下ろし制裁圧力策動に狂奔する米国の二重基準」

労働新聞2018年12月11日付論評は、米政府が「人身売買被害者保護法」に従った対北朝鮮制裁を続けることを決定(同年11月29日)したことに反発し、こう指摘した。

労働新聞が論評を掲載した前日の10日、米財務省は北朝鮮の人権蹂躙に責任があるとして、3人の北朝鮮幹部を制裁対象とした。崔龍海朝鮮労働党副委員長兼組織指導部長、鄭京沢国家保衛相、朴光浩朝鮮労働党副委員長兼宣伝扇動部長の3人。  

いずれも金正恩朝鮮労働党委員長の側近たちだ。特に崔副委員長は、金永南最高人民会議常任委員会委員長に継ぐナンバー3だが、実質的には金委員長の右腕とされる。

 また、崔副委員長が部長を兼務する組織指導部は、朝鮮労働党内において組織生活指導を担当し、朴副委員長が部長を兼務する宣伝扇動部は思想生活指導を担当する。

この両部署が、幹部を含めた党員の生活全般を統制している。組織指導部は党員の検閲も担当するといわれる。鄭氏が大臣を務める国家保衛省は秘密警察≠ニされ、スパイや反体制派を摘発する部署だ。つまり制裁対象になった3人が長を務める部署は、北朝鮮の人々を統制・監視する機関という共通点がある。

 今回の米財務省の措置に対し中国の陸慷外交部報道官は11日のブリーフィングで、「情勢を緩和するのに助けとなる事をすべきで、むしろ相反する事をしてはいけない」と米側を牽制した。膠着状態に陥っている米朝関係をさらに悪化させることへの懸念を示したものといえる。

 北朝鮮からは12日現在、反応は示されていないが、側近中の側近を制裁対象にされた金委員長が黙っているとは考えにくい。

文聖姫(ジャーナリスト、博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
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2018年12月31日

【国際情勢】 元徴用工の痛みを無視 日本報道 韓国側非難に終始=竹内康人

 2018年10月末、韓国大法院(最高裁)は、強制動員を不法な植民地支配と侵略戦争による反人道的不法行為とし、日本企業に対する強制動員被害者の慰謝料請求権を認定し、新日鉄住金に賠償を命じた。11月に入り、三菱重工業に対しても同様な判決を出した。
「強制動員慰謝料請求権」が確定したのである。それは戦争被害者の30年に及ぶ尊厳の回復をめざす運動の成果である。まさに歴史的、画期的な判決だ。

日本政府「解決済み」
 これに対し、安倍晋三首相は、日韓請求権協定により完全かつ最終的に解決している、国際法に照らせばあり得ない判断、徴用工ではなく旧朝鮮半島出身労働者の問題などとし、韓国政府を批判した。
 それを受け、メディアも「韓国は法治国家なのか」、「ボールは韓国にある」などと宣伝した。強制動員被害の実態を示すことなく、韓国側を批判する記事が多い。
 しかし問われているのは、日本の植民地責任である。
 
 日韓条約の交渉で、日本政府は韓国併合を合法とし、その立場を変えることなく日韓請求権協定を結び、賠償ではなく、経済協力金を出すとした。
 日本政府はいまも、植民地支配を合法とし、その下での動員も合法とする。そのうえで、請求権協定で解決済みと宣伝し、戦時の強制労働も認めようとしない。その責任をとろうとしないのである。
 このような植民地支配を不法と認めない対応が、逆に今回の韓国の大法院判決をもたらしたとみることができる。

 大法院は、日韓請求権協定で扱われたのは民事的な債権・債務関係であり、不法な強制動員への慰謝料請求権は適用対象外としたのである。
 このような判断は論理上、あり得るものであり、請求権協定に反する判断でもない。
 戦時に日本は総力戦をすすめ、朝鮮人の名前まで奪うという皇民化政策をすすめた。
 国家総動員態勢により、朝鮮からも資源を収奪し、朝鮮から日本へと約80万人を労務動員した。また、軍人や軍属で37万人余りを動員した。
 それは甘言や暴力などの強制力なしにはできないものだった。独立を語る者は治安維持法違反とみなされ、処罰された。
 日本の朝鮮統治を合法とすることは、三・一独立運動を不法とみなすことになる。それは三・一独立運動を国家形成の起点とする韓国政府を否定することにもなる。
 植民地合法論では、日韓の友好関係は形成しえないのである。

敗者をすり替える
 NHKは10月30日の「元徴用判決の衝撃」で、痛手を被ったのは被告企業ではなく、むしろ韓国政府だともいえるのでは、と解説した。判決に従えば、際限のない賠償責任を負わされるとし、問題が蒸し返されたとする側に立った。
 そして、企業は日本の裁判所が認めない限り、日本国内で賠償に応じる必要はない。元徴用工は韓国政府による救済措置に不満を持っている。韓国政府には被害者を救済する責任があると、結論づけた。
 NHKは、安倍政権の主張に同調し、韓国の判決の歴史的意義を明示することなく、敗者をすり替えたのである。

 朝日新聞の10月31日のソウル発の記事には、司法の命によって請求権協定が破壊され、日韓関係が破綻に近い打撃を受けかねないと記されていた。
 だが、今回の判決で破綻するのは、権力の側の論理だ。植民地合法論の下での経済協力金では、解決されないものがあるとされ、該当企業は賠償を命じられたのである。
 記事は権力の視座に立つのではなく、被害者の痛みに共感するものであってほしい。
日本の外務省も、2018年11月14日の衆議院の質疑で、請求権協定では、個人請求権は消滅せず、この協定に慰謝料請求権は含まれないことを認めた。
 しかし、メディアはこれを大きく報じなかった。
 安倍政権は、外務省が認めたように、慰謝料請求権については請求権協定では解決されていないという見地に立ち、問題を整理すべきである。

新たな合意形成を
 大法院判決により、強制動員慰謝料請求権は確定した。これを基礎に日韓両政府は、65年協定を克服する新たな日韓の合意形成に向かうべきである。
 植民地責任を明らかにし、植民地主義を克服する動きは、国際的潮流となった。被害者の目線に立ち、強制動員被害の包括的解決に向けて基金の設立など日本政府は改め知恵を絞るべきだ。
 強制動員について、その強制性を示す証言や資料は数多い。ジャーナリストはそのような証言や資料をぜひ紹介してほしい。そのペンの力は、未来を構想する共同性を導く。

竹内康人

たけうち・やすと
1957年生まれ、近代史研究、強制動員真相究明ネットワーク会員。著書に「調査・朝鮮人強制労働@〜C」「明治日本の産業革命遺産・強制労働Q&A」など。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
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2018年12月29日

【内政】 世界に逆行 民間任せ 外資参入 水道料金高騰へ 市民をないがしろ「改正法」=橋詰雅博

 改正水道法が成立した。これで水道事業の運営権を自治体から企業が買い取ることができる。この「コンセッション方式」は1900年ごろから世界各国に広がったが、2000年以降は水道事業を再び公営化する都市が急増している。水道料金の高騰や水質悪化などが原因だ。世界が再公営化に向かっているのに、日本はそれに逆行する形だ。民営化でどうなるのか。全国の水道職員らでつくる全日本水道労働組合の辻谷貴文書記次長(45)に聞いた。

――水道法を政府が16年ぶりに改正したのはなぜですか。
 人口減による給水収益の減少、老朽化した水道管更新費用の増大、水道職員の不足などが背景にあります。三重苦≠ェ長く続いてきたから水道事業に企業を参入させてしのごうというわけです。その手段として導入する「コンセッション方式」は、自治体には管理監督責任が残りますが、運営権はそれを買った企業に移り、水道料金は直接企業が受け取ります。契約期間は20年以上と長期にわたり、業務のやり方は企業にまかされます。

急増する再公営化
 ――ところが欧州などでは民営化の失敗が相次ぎ、水道事業は再公営化が潮流になっています。
 オランダのNGOトランスナショナル研究所によると、2000年から16年で、世界33カ国の267都市で、水道事業が再び公営化されています。
 例えばパリ市。水メジャー≠ニ呼ばれるスエズとヴェオリアの2つの多国籍企業が、85年から09年までの25年間、水道事業を運営してきました。この間、不透明な会計による利益隠しや必要な再投資を怠るなど不祥事が発覚。しかも水道料金は25年間で3・5倍にもなりました。料金が大幅アップしたのは株主配当や役員報酬、借入金の高い利子支払いのためです。契約期間が終了した後、高騰する水道料金が主な理由で、10年に再公営化に。翌11年には株主配当などが不要になったので、料金を8%値下げしました。
 ドイツのベルリン市も14年に再公営化しましたが、企業側から運営権を買い戻すため13億ユーロ(約1671億円)も企業側に支払いました。今年の7月に水道事業民営化の先進国・イギリスを訪ねましたが、民営化の時の「料金が下がる、水質がよくなる、サービスもよくなる」という約束が破られたと市民の怒りはおさまりません。労働党は「水道再公営化」の公約を掲げ、国民の7割が支持したと表明しました。

 ――欧州で商売がしづらくなった水メジャーなどは、アジアにターゲットを絞っていますね。
 スエズとヴェオリアは12年ごろからタイやシンガポール、フィリッピンなどアジア各国に進出しています。スエズはマカオ、ヴェオリアは日本にそれぞれ拠点を持っています。ヴェオリア日本法人などは浜松市の下水道事業の20年間運営権を25億円で手に入れました。

ノウハウ持つ外資
 改正水道法の成立で、水メジャーはいよいよ日本の水道事業市場に参入する可能性は高いです。浜松市の水道事業への参入に意欲を示しています。国内の水事業関連企業は水道事業運営のノウハウはありません。外資に頼るしかなく、水メジャーなどと組んで運営に乗り出すかもしれません。いずれにしても外資が主導権を握ることになります。

 ――日本でも民営化されたら、欧州のような水道料金の高騰などが起り得るのでしょうか。
 運営するのは企業ですから、株主配当や役員報酬、借入金の利子払いなどが生じます。これらの資金をねん出するには利益を上げる、施設のコストの削減が考えられます。となると水道料金の値上げ、コスト削減では例えば品質は落ちるが、価格が安い水道管を使うケースが出てくるかも。料金を引き上げたうえに仕事の手抜きで、施設の安全性は心もとないという状況に陥りかねません。
 また、地震や豪雨などに襲われて水道施設が壊れた場合、災害復旧の最終的な責任は管理者の自治体が負います。コストを切りつめたい企業は、責任がないなら災害に備えた投資をしぶりますので、災害時に被害がより大きくなる恐れがあります。

大都市進出を狙う
 ――企業が狙いそうな都市は。
 事業規模が大きくないと、儲かりませんから人口50万以上の都市が進出対象でしょう。大都市の東京都や大阪市を本命視≠オているはずです。大阪市は運営権の売却額を4000億円と試算しています。

 ――宮城県を始めいくつかの自治体は導入に前向きですが、市民はどうすればいいですか。
 運営権を企業に売り渡し、途中で問題が起きた場合、再公営化するには巨額な違約金の支払いが必要です。ベルリン市のケースは、その見本です。民営化に流されず、公営維持を訴え続け、方策を考えるべきです。

聞き手 橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
posted by JCJ at 10:35 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月28日

【リレー時評】ダイオキシンまみれの政治家は浄化するしかない=中村梧郎

 浦和駅東口から5分ほどの所に「片山さつき」の看板はあった。国会で「著書広告だ」とゴマ化そうとしたが、道から見えるのは大書された彼女の名前ばかり。いつの間にか撤去された。
 週刊新潮11月29日号は「片山さつきからダイオキシン」を特集した。産廃業者との汚れた関係を暴露したもの。静岡県御前崎市で産廃処分場を口利き誘致した話だ。業者にパー券を買わせたり、百万円の献金を受けたりもしている。市は四億円を産廃業者に出すのだという。
 前号では彼女の後援会「山桜会」の中村望会長が仙台の竹の内産廃≠乗っとったこと、「そこでは違法な投棄が繰り返され、放置された焼却炉からはダイオキシンが検出される有り様」と報じていた。

 廃棄物処分場の認可に政治家が関わるケースが頻発している。露骨なのは梶原拓・岐阜県知事時代のスキャンダルだ。御嵩町に処分場を作る業者と組む知事に対して町民の抗議が拡がった。NHKの解説委員だった柳川喜郎氏が住民に推されて御嵩町長に当選、公約は「ダイオキシン汚染の処分場は許さない」であった。
 町長は知事が進める認可に楔を打ち込みはじめた。しばらくして、柳川町長を二人の暴漢が襲撃した。頭蓋骨骨折の重傷だったが、県警は非常線を張らず、犯人を取り逃がす。産廃業者による町長宅の盗聴も発覚したが業者への捜索はしない(御嵩町史・通史編)。産廃がらみの殺人未遂だと報じられたものの、2011年犯人不明のまま事件は時効となった。

 廃棄物処理は不法投棄をすればボロ儲けとなる。その金は許認可権を持つ権力者に渡りやすい。片山大臣もオコボレを期待したのであろう。
ダイオキシン問題をメディアがあまり扱わなくなってから十数年が経つ。環境省は産業界の意向に従い、ダイオキシンを含む環境ホルモンリストを2004年に封じた。時流に乗りたい論者らも業界におもねって「ダイオキシンはメディアのカラ騒ぎ」といった雑文を撒き散らした。
 ダイオキシンは無害と言わんばかりのこの主張に自信があるのなら、京都で開催される「2019ダイオキシン国際学会」で発言したら良い。世界を前に愚かしさが際立つはずだ。

 ベトナムでは元米軍ダナン基地のダイオキシン汚染が発覚していた。住民の癌や異常出産も生じた。ベトナム政府は米国を糾弾、米議会は予算を組んで2012年に無害化に着手、18年に完了した。引き続きビエンホア基地の浄化も始めた。
 13年には日本・嘉手納基地返還跡地のサッカー場からダウケミカルのドラム缶が出て、枯葉剤のダイオキシンを検出した。しかし日本政府は米国に抗議をしない。住民の健康調査もやらない。
 ダイオキシンを出す業者や米国とつるむ与党政治家たち。ならば政権丸ごと浄化するしかない。
posted by JCJ at 10:53 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月27日

【国内政治情勢】 森友スクープ記者が寄稿 自殺職員の動機解明に全力 「国と大阪府の事件だ」=相澤冬樹

12月20日号週刊文春に手記を発表した元NHK大阪報道部の相澤冬樹さんに(56=現大阪日日新聞記者)森友学園疑惑などについて、寄稿してもらいました。


 森友事件は森友学園の事件ではない。国と大阪府の事件である。こう言うと違和感を持つ人もいるかもしれないが、おかしなことをしたのは学園よりむしろ国と大阪府だ。まずそこから語ろう。

 発端は、森友学園の籠池泰典理事長(当時)が、小学校を作りたいと思ったことだ。学園は幼稚園を運営していて、そこで教育勅語を園児に暗唱させるなど、自らの思想信条に基づいた独自の教育を行っていた。その教育を賛美する政治家も数多いた。しかし園児たちは卒園すると多くは公立の小学校に入る。そこで園児たちの多くは森友学園で学んだことを忘れていく。籠池氏はそれが残念だった。そこで、園児たちの進学先として小学校の設立を目指し、それに賛同する保護者たちも多かった。これはおかしな話ではない。思想信条の自由は日本国憲法で保障されているし、学校を設立したいと考えるのも自由だ。求められる規準を満たしているならば。

 ところが審査にあたる大阪府の私立学校審議会は、学校が資産や教員確保などの面で規準を満たしていないと考え、認可保留の判断を出した。妥当な判断だ。これに対し事務局を務める大阪府私学課が、1カ月後に臨時の審議会を開くよう求め、1カ月後に条件付きで「認可適当」の判断を出してもらったのである。なぜ行政がそこまでしてこの小学校を認可しようとしたのか?これが第1の謎だ。

 さらには国有地の問題だ。小学校を建てるには土地がいる。森友学園は豊中市内の国有地を入手したいと考えた。売却交渉にあたるのは財務省近畿財務局だ。この土地はその前に大阪音楽大学が購入を望んだが、5億円から値を上げて数億円を提示しても財務局は売らなかった。ところが森友学園には地中のごみの撤去費用などを名目に鑑定価格から8億円余りも値引きして売ったのである。籠池氏が強引に値引きを迫ったと言う人もいるが、大阪人なら買い物にあたって「まけてや」と値引きを求めるのは普通のことだ。それに応じず適正価格で売るのが公務員だが、この件だけなぜ大幅に値引きして国有地を売ったのか?それが第2の謎だ。

 この2つの謎に、小学校の名誉校長が安倍昭恵首相夫人だという話が絡んで、政権の関与、安倍晋三首相自身の関与の有無が国会で議論されてきた。私にとって森友事件は、かつて世間を揺るがしたロッキード事件やリクルート事件に匹敵すると考え取材を進めてきた。

 近畿財務局は国有地の売却前、森友学園側に「いくらまでなら出せますか」と上限額を聞き出していた。学園側が求めたのではなく売る側の財務局が聞き出したのである。学園側は1億6000万円と答えている。これに対し財務局の担当者は「その範囲に収まるといいですね」とまで言っている。これは事実上「その範囲に収めます」という意味だろう。実際、売却額は1億3400万円で、まさに「その範囲に収まっている」のである。国民に損害を与えるような不当な値引きをした「背任行為」を強くうかがわせる話だ。私はこれを去年の7月26日に特ダネとして出した。

 ところがこれに東京の報道局長が激怒し、私の上司だった大阪の報道部長に電話をかけてきた。たまたまその時部長の前にいたので、電話口から「聞いてない」とか「なんで出したんだ」という怒声が聞こえてきた。電話を切った後、報道部長は「あなたの将来はないと思えと言われました」と苦笑いした。その瞬間、それは私のことだと感じた。実際、今年の人事異動で私は記者を外され非制作部門に移された。私は記者を続けるため、森友事件の取材を続けるためNHKを辞め、「何のしがらみもない」と社主が語る大阪日日新聞に移った。

 取材の最大のテーマは、すでに書いた2つの謎を解明し、背後に何があったのかを明らかにすることだ。しかし真相がそう簡単にわかるわけはない。引き続き粘り強く関係者への取材を続け、いつかは真相を解明して世に伝えたい。
 だが、それより先に解明せねばならない取材テーマがある。事件の渦中で自ら命を絶った近畿財務局の職員Aさんのことだ。彼は土地取引に深く関わった訳ではないが、その後の公文書改ざんに不本意にも巻き込まれ、苦悩の末に命を絶った。なぜ彼が追い込まれなければならなかったのか、その謎を解き明かさねば、Aさんは浮かばれまい。まずはここに力を注ぎたい。

 私はこのたび森友事件についての本を出した。題して「安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由(わけ)」事件の本質と、私の取材手法、そしてNHKでの報道の内情を書いている。
 作家の井上ひさしさんは「むずかしいことをやさしく やさしいことをふかく ふかいことをゆかいに ゆかいなことをまじめに そしてゆかいなことは、あくまでゆかいに」という言葉を残している。この本もその精神で書いたつもりだ。安倍政権を支持する方にこそぜひお読み頂きたいと思っている。
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2018年12月25日

【国内政治情勢】 辺野古埋め立ての県民投票 心配な協力拒否と投票率 玉城知事の具体策がカギ=福元大輔

 沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の移設に伴い、政府が約50`離れた同県名護市辺野古で進める埋め立て工事の賛否を問う県民投票が、来年2月24日に投開票される。地方自治法に基づく住民発議の住民投票が都道府県単位で実施されるのは、1996年沖縄での日米地位協定の見直しと米軍基地の整理・縮小の賛否を問う県民投票に次いで2例目で、沖縄の置かれた特殊事情が改めて浮かび上がる。

 辺野古埋め立て事業は2014年7月に着手、17年4月には埋め立て土砂投入に向け、沿岸部分を囲む護岸の建設が始まった。18年12月にはいよいよ土砂が投入されている。

若者がけん引役に

 この段階で若者を中心に18年5月からの2カ月間、手探りの活動で県民投票条例の直接請求に必要な数(有権者の50分の1)の4倍、9万2848筆の署名を集めた。1996年の日米合意以降、沖縄を分断してきた普天間返還問題、辺野古移設問題に決着をつけたい若者の熱意と県民の思いの強さを物語る。

 18年9月の知事選で辺野古反対を明言した玉城デニー氏が、政府・与党の全面支援を受けながら辺野古の賛否を示さなかった佐喜真淳氏に8万174票の大差で、過去13回の知事選で最多となる39万6632票を獲得した。それでも民意を顧みず、埋め立て工事を強行する政府に対し、県民投票はワンイシューでより明確な民意を突きつける意味合いが濃い。

 県議会では辺野古移設を推進する自民の県議らが「2択では県民感情をすくいきれない」と主張。「やむを得ない」「どちらでもない」を加えた4択を提案した。一方、「県の政策を決定づけるために、賛否の2択が望ましい」といった思いをくみ取り、玉城知事を支える県政与党の多数で条例案は可決した。

 条例が施行されても、投開票が円滑に実施されるか、分からない。それが都道府県単位の住民投票の難しさだ。投開票の事務は市町村が処理するが、県内11市のうち、保守系の市長や市議が県民投票に難色を示している。市議会で必要な予算案を否決、市長が事務を拒否する可能性が残っているのだ。県民投票に反対する意見書を複数の市議会が可決している。

 投開票の事務を拒否する市町村が出て、一部で投票できない事態になれば、県民投票の意義が薄れるほか、そういった動きがある中で全市町村で投票が実施されても、投票率の低下は免れない。多くの投票者が反対の民意を示したとしても投票率が低ければ、結果を軽視される懸念がある。

 政府が結果を尊重するきざしはこれっぽっちもなく、機運を盛り上げるのは難しい。

機運の醸成が必要

約480f、東京ドーム102個分の普天間飛行場だが、沖縄全体の米軍基地の2・5%にすぎない。それさえ、県内に移設しなければ返還できないのか、辺野古に新基地ができれば米軍の撤退は遠のき沖縄が未来永劫「基地の島」になるという指摘もある。極めて県全体の問題であり、県民投票で意思を表示するのはまっとうな手段だ。

 条例では「知事は県民投票の結果を尊重する」と定めている。では、尊重するとはどういうことか。知事が投開票の前に具体策を示すことで、賛成側を引き出し、機運を醸成する必要があるといった意見も出ている。

福元大輔(沖縄タイムス)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
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2018年12月20日

【国内情勢】 植村裁判・札幌訴訟 控訴へ 争点の「捏造」問わず 櫻井氏のズサンな取材を免責=中野広志

 元朝日新聞記者の植村隆氏がジャーナリスト櫻井よしこ氏と出版3社を名誉毀損で訴えた訴訟の判決言い渡しが、11月9日午後、札幌地裁であった。判決は植村氏の敗訴だった。植村氏の請求(謝罪広告の掲載と損害賠償の支払い)はすべて棄却された。植村氏と弁護団は判決直後の記者会見で「不当判決だ」と語り、控訴する方針を明らかにした。

身売り説に疑問符
 植村氏にとってはきびしく苦い判決となった。ただ、植村氏の名誉が毀損されたことまでが否定されたわけではない。判決は、櫻井氏の書いた記事は植村氏の「社会的評価を低下させた」とし、名誉を傷つけたことは認めた。さらに、櫻井氏が繰り返し主張してきた「人身売買説」(元韓国人慰安婦の金学順さんは継父によって人身売買され慰安婦にさせられた、という事実)については「真実であると認めることは困難である」と明確に判示した。櫻井氏の主張の最大のポイントである「人身売買説」に裁判所が疑問符を呈したのである。
 しかし、それでもなお、判決には大きな問題がある、と言いたい。とくに櫻井氏を免責にした理由である。判決は、名誉毀損だと認めた記述について、「真実だと信じるについて相当の理由がある」、つまり「真実相当性」が認められるとして、櫻井氏の責任を免じた。

「訂正」は櫻井氏側
 裁判例では、「真実相当性」が認められるには、「信頼できる合理的な資料」と「客観的な事情」が必要とされる。では、判決はどんな「資料」を重視したか。それは、櫻井氏が読んで引用したという韓国紙、月刊誌、金さんの訴状の3つである。しかし、裁判の過程では、櫻井氏の引用には間違いや恣意のあることが多数指摘された。つまり、櫻井氏の主張の根幹をなす資料の使い方は「合理的な」とはいいがたい。
「客観的な事情」とはなにか。櫻井氏の取材や調査の杜撰さは、本人尋問で決定的に明らかになった。櫻井氏は一部誤りを認め、櫻井氏の文章を掲載した産経新聞と月刊誌「WiLL」は訂正掲載に追い込まれた。櫻井氏には、取材を尽くし、資料を読み込む十分な時間がなかったわけではない。つまり、資料や関係者が現存せず、大急ぎで書かざるを得なかった、というような「客観的な事情」にも欠ける。

公平さ欠く論法
 ところが、判決には櫻井氏の読解力を「一般読者の普通の注意と読み方を基準として解釈しても不自然なものではない」と評価するくだりもある。櫻井氏はジャーナリストを自称する言論人であり、一般読者ではない。このような論法は、公平さを欠くと言わざるを得ない。
 櫻井氏の植村批判が杜撰な取材によって組み立てられていることは、2年半に及んだ審理で明らかになっている。しかし、皮肉なことに、判決も緻密さを欠く論法で櫻井氏を免責したのである。そして、最大の争点であった「植村記事捏造」が真実かどうかは不問にした。

差別と憎悪を拡大
 判決直後に出された弁護団声明は、「本日の判決は櫻井氏がジャーナリストであることを無視して、櫻井氏の取材方法とそれによる誤解を免責するものである」と指摘し、「これを敷衍すれば、言論に責任を負うべきジャーナリストと一般読者を同じ基準で判断することは、取材が杜撰であっても名誉毀損が免責されることになり、到底許されるものではない」と厳しく批判している。
 ジャーナリストが負うべき責任のハードルは下がった。これからは、杜撰な取材でも免責されるのだ! よもや、この判決をそのように誤読するするジャーナリストはいないだろう。しかし、ネット世界で日夜、差別と憎悪を拡大するメッセージを発し続ける人たちには、勇気と希望を与えただろう。
 判決直後の記者会見で植村氏は「悪夢のような判決です」と悔しさをにじませた。現実がいよいよ悪夢に近づいているということだろうか。

中町広志(元朝日新聞記者)

植村裁判とは=櫻井よしこ氏と西岡力氏(元東京基督教大教授)は、植村氏が朝日新聞記者だった1991年に書いた元韓国人慰安婦の被害体験の2本の記事を「捏造だ」と決めつけ、櫻井氏は四半世紀近く経った2014年4月頃から新聞、週刊誌、月刊誌、テレビ、ネット上で執拗な「名誉毀損」攻撃を繰り返した。そのため、右派勢力の間でくすぶっていた朝日新聞の慰安婦報道に対する批判が激化し、とくに植村氏個人が標的にされた。植村氏と家族は長期間、脅迫やいやがらせを受け、物心両面で大きな被害を受けた。植村氏が教授就任を予定していた大学や非常勤講師を務める大学にも契約解除などの圧力がかけられた。このようなバッシングの中で、植村氏は2015年1、2月に東京と札幌で起こした。東京訴訟の被告は西岡氏と文藝春秋、札幌は櫻井氏と新潮社、ダイヤモンド社、ワック。被告側は「植村記事は捏造」の主張は崩さず、バッシング被害との関連は否定した。東京訴訟は11月28日に結審し、2019年春までに判決が出る見通し。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年11月25日号
posted by JCJ at 14:09 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月19日

【国内情勢】 安田純平さん解放で再噴出 安易な「自己責任論」に決別を=編集部

シリアで武装勢力に拘束された安田純平さんが10月25日、約3年4ヵ月ぶりに生還した。消息が途絶えた15年6月は同年1月のIS、後藤健二さん殺害から間もなく、安否が心配されていた。それだけに困難な状況に耐え抜き、生き延びた安田さんの無事を心から喜ぶ。

だが、日本では、14年前の2004年「イラク3邦人人質事件」で吹き荒れた「自己責任論」がまた噴出した。安田さんがこの事件直後にも拘束され、3日後に無事解放された経歴がことさら強調されるなど不毛な極論が飛び交った。「国が行くなと言っているのに行ったのだから自業自得。助けなど求めるな」「国に迷惑をかけるな」「身勝手に我々の税金を使うな」等々だ。

今年夏、ネット公開された拘束映像で「私の名前はウマルです。韓国人です」と不可解な安田さんの発言が流れると、今度は「安田は在日」「反日だ」とヘイトと結びついた反応も飛び出した。解放の前後には、「何度も捕まってる人間の救出に何億も出すのはおかしい」「身代金がテロリストの活動資金になり、今後、より多くの人命が危険にさらされる」「身代金目的の自作自演だ」説まで飛び交った。

しかし、こうした言説に根拠はなく、勝手な憶測と一方的な決めつけによるものでしかない。

「自己責任」は元々経済用語。その使い方を「身勝手だ」「政府に迷惑をかけたことを謝るのが先だ」と被害者の「自己責任」にすり替えたのは、04年の事件でイスラム過激派からの自衛隊撤退要求に窮した政治家だった。そして今、自己責任論は政治権力といびつに結びつき、貧困や過労死をはじめ社会的・政治的問題の公的議論を封じ込め、「気に入らない」相手を攻撃する魔法の杖と化している。それは極めて危うい。

安田さんは帰国後、日本記者クラブや日本外国特派員協会で記者会見し、自らの言葉で事実確認なしの「自己責任論」の空疎さを浮き彫りにした。

今回はあの産経新聞でさえ「危険を承知で現地に足を踏み入れたのだから自己責任であるとし、救出の必要性に疑問をはさむのは誤りである。理由の如何を問わず、国は自国民の安全や保護に責任を持つ」(10月25日付社説)との見解を示した。

安易な「自己責任論」と決別し、ジャーナリズムやジャーナリストの役割について議論が深まればと願う。

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年11月25日号
posted by JCJ at 11:06 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月08日

【沖縄リポート】 協議の一方で 工事を進める安倍政権の茶番=浦島悦子

 10月30日、石井啓一国交大臣は、沖縄防衛局が申し立てていた県の辺野古埋め立て承認撤回の執行停止を決定した。玉城デニー知事が「自作自演」と批判し、国民の権利救済のための法律である行政不服審査法の国家権力による悪用・濫用だと全国の行政法学者から抗議が渦巻く中での暴挙だ。

 11月3日にキャンプ・シュワブゲート前で行われた県民抗議集会には1000人余りが参加し、稲嶺進・オール沖縄会議共同代表は「恥知らずの政府を許すわけにいかない。しなやかに、したたかにたたかい抜こう」と檄を飛ばし、10月14日の豊見城市長選で初当選し翌週に就任を控えた山川仁氏は、「政府は県民を分断しようと躍起になっているが、自民党も含めてそれを望む県民はいない」と語った。

 政府は11月1日から工事再開を宣言。「撤回」によって撤去されていた大浦湾の立ち入り禁止区域を示すフロートの再設置作業を開始したものの、実際の工事には行き詰まっているのが実態だ。9月末に襲来した大型台風によって、埋め立て土砂の搬出港である本部町塩川地区の岸壁が破損し、使用できないことが判明。本部町は防衛局の使用申請を受理しなかった。修復には数カ月を要する見込み。  

10月県議会で、辺野古埋め立ての是非を問う県民投票条例が可決され、半年以内(4月末まで)に実施されることになった。1日も早く埋め立て土砂を投入し、県民投票前に「後戻りできない」状況を作りたい政府が、今後どんな手を使ってくるのか。土砂搬送を陸路に変えるためには県への変更申請・許可が必要となるため当面は、県の新たな許可を必要としない工事で外堀を埋めていくと思われる。15日には、3カ月半ぶりにゲートからの石材・資材搬入が行われ、機動隊による「ごぼう抜き」も再開された。「対話」による解決をめざすデニー知事の要請で「協議」には応じつつ、一方で工事を進めるという茶番を県民は冷やかに眺めている。

 デニー知事は11日、沖縄の民意を携えて中間選挙直後の「父の国」米国へと旅立った。ミニ・トランプが跋扈する米国にとっても、沖縄の民主主義・多様性、寛容の政治は希望となりうると思う。分断を越え、平和へ向けた新たな回路を期待したい。

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年11月25日号
posted by JCJ at 15:19 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする