2024年06月16日

【内政】日本の民主主義の破壊 自民 地方自治法改正案=編集部

 岸田政権は「非常事 態」を名目に国の指示権 を拡大する地方自治法改 正案を国会に提出。連休 明けの7日、衆院本会議 で審議入りした。同法案 には「対等」なはずの国 と地方の関係を主従関係 に逆戻りさせ、国の意志 を地方に強要する武器に しようと狙う危険な思惑 が透けて見えている。
 「新しい戦前」を推し 進めるためのこの法案は、 戦前の反省から憲法92 条が明記する地方自治の 本旨「地方自治は国から 独立した団体によって運 営される」を内側から掘 り崩し、憲法を空洞化し て壊す「懐憲」法案に他 ならない。

「非常事態」
具体例答えず

 日本は、法的拘束力が ある「指示権」を個別の 法律で定め、国の「指示 権」の規定は災害対策基 本法や感染症法などにあ るが、地方自治法にはな い。あるのは「助言・勧 告」権だ。法案はこれを 地方自治体への「指示権」 にするのが目的で、政府 は、「重大事態時の国の指 示権拡大は新型コロナ禍 で個別の法で対処できな い事態が起きた教訓を踏 まえたものだ」とする。
 だが、政府は個別法で 対処できない「非常事態」 の具体的事例を説明せず 「現時点で想定しうるも のはない」(松本剛明・総 務相)と繰り返す。

個別法で対応
本当に不可能か

 「非常事態」が想定で きないなら改正の必要は ないし、指示権を規定す る個別法で対応できない 事態が存在するのかも、 そもそも疑問だ。
 今回の改正案は昨年 12月、岸田首相の諮問機 関「地方制度調査会」が 答申した「地方自治法上、 国が自治体に必要な指示 を行えるようにすべき だ」がベースだ。だが、 20年2月の大型クルー ズ船集団感染をめぐる混 乱は、未知のコロナウイ ルスへの国の対応と調整 遅れが原因だし、安倍首 相(当時)が、地方自治 体に事前の根回しもなく 独断で、全国の小中高と 特別支援学校に「一斉休 校」を突然要請。各地で 混乱を招いたことも記憶 に残る。それをすり替え、 国の指示が必要だとする のは本末転倒だ。

恣意的行使
懸念が拭えず

 岸田政権は@非常事 態なら国は個別法に規定 がなくても自治体に対策 実施を指示できるとする が、前提条件の非常事態 の範囲は曖昧だ。A国と 地方の関係を「対等・協 力」と定めた地方分権の 原則は維持とするが、指 示権は国と地方を「上 下・主従」関係に再編す る。B指示前には事前に 自治体の意見を求めると するが、単なる努力義務 だ。C国会承認や国会報 告義務付けは「機動性を 欠く」ので盛り込まない とした。これは「国会」 の役割を全否定し、日本 の戦後民主主義を根幹か ら破壊する暴挙だ。
 2012年の第2次 安倍政権以後、自民党は 数を背景に法をないがし ろにし、閣議決定による 政策決定を常態化。国会 を空洞化してきた。

 岸田首相は、就任直後 に「安倍政治の継承」と 「改憲」を掲げ、大軍拡 を推し進めてきた。地方 自治法改正案も明らかに それと連動する。私たち は、これを座して見過ご してはならないと呼びか ける。
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年5月25日号
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2024年05月04日

【政治】経済安保法案を通すな 「修正案」で野党を抱き込む=丸山重威

 「経済安保秘密保護法案」(重要経済情報の保護及び活用に関する法律案)は、反対運動の広がりよそに4月9日、実施状況を国会に報告し公表することを中心とした「修正案」が立憲民主党などの賛成で可決され衆院を通過。審議の舞台は参院に移った。
乗せられた立憲
 同法案の中身は、2013年に安倍晋三政権下で成立した特定秘密保護法を経済分野にも適用し、厳罰化で縛ることを狙ったものだ。立憲の賛成は最初から「修正」の余地を残しておき一部「修正」で通してしまおうという自民党の「手法」に乗せられたものと言えよう。同じ手法は2021年春、憲法審査会での「改憲手続き法・改正」でも取られており、立憲民主党はまたも抱き込まれる「愚」を繰り返した。

民主主義が危うい
  だが法案の根幹は「修正」でも何も変わっていない。法案の狙いを批判し、「警戒」していくことが必要だ。本紙2月号でも問題提起したが、経済安保新法は秘密保護法が対象とした「防衛」「外交」「スパイ防止」「テロ防止」の4分野の「極秘」「機密」をサイバー宇宙、AI、インフラ、国際共同開発など幅広い「秘密」にまで拡張したものだ。特に同法は、秘密情報の取扱者をチェックする「セキュリティ・クリアランス」制度導入で「選別」、統制の対象を民間人まで広げ5年以上の拘禁刑を違反者に課す仕組みになっている。
 問題は運用だ。防衛産業育成と兵器輸出拡大を狙う政権が同法を恣意的に使えばどうなるかは大河原化工機事件を見るまでもない。岸田政権の政策への批判と警戒が必要だ。。

「世界平和アピール七人委員会」(1955年の結成以来、日本の政治・社会問題に独立的で公正な視点からアッピールを発し続ける)は8日、同法案への反対アピールを発表。「戦争ができる体制を下支えすべく、私たち個々人の自由と人々の権利を制限していく社会傾向が強まっている」と警鐘を鳴らし、「『重要経済安保情報保護法』は民主主義を危うくする」としている。
           JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年4月25日号
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2024年01月28日

【おすすめ本】春増翔太『ルポ歌舞伎町の路上売春 それでも「立ちんぼ」を続ける彼女たち』―摘発リスク高いのになぜ「売る]? 彼女たちの再生のヒントを提供=坂爪真吾(NPO法人風テラス理事長)

 繁華街での路上売春は、極めて摘発リスクの高い行為である。普通に考えれば「なぜわざわざそんな危ない真似をするのか」「風俗店やアプリで相手を見つければいいのでは」と思うだろう。
 売買春に関わる男女にとって、路上のメリットは「相手の顔が見える」ことにある。風俗店ではサービスの直前まで相手の顔が見えない。アプリを介した出会いでも同様だ。売り手と買い手の双方にとって「事前に顔が見える」ことによる安心感は大きい。

「今すぐ現金が得られる」という点もメリットだ。風俗店で働くためにも、面接や身分証の提示などが必要になる。路上であれば、そうした手続きを踏まずに、その場で稼げる。
 本書は、こうした「都合の良い果て」で生きる女性たち、その背後にある社会課題について、丹念な取材を通して明らかにした力作である。
路上売春の背景には虐待歴や精神疾患などの福祉的な課題があるが、彼女たちにとって福祉は「都合の良くない」世界である。シェルターに入ればスマホは使えないし、夜職で稼ぐこともできなくなる。しかし、「都合の良い果て」にもずっといられるわけではない。

 取締や啓発と並行して、彼女たちが「都合の良くない世界」でも生きられる耐性やスキルを身に着ける機会を提供すること。そのために必要な他者との関係性を再構築し、社会への信頼を取り戻すこと。困難な茨の道だが、本書の中には、それらを実現するためのヒントがたくさん詰まっている。(ちくま新書900円)
              
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2023年08月22日

【憲法改正】改憲ありきで自民に接近 維新、国民「緊急事態条項」で=丸山重威

 「軍拡予算」「軍需産業支援」に焦点が当たる中、日本維新の会(馬場伸幸代表)や、国民民主党(玉木雄一郎代表)が、憲法審査会などで改憲姿勢をあらわにし、次期総選挙や参院選に臨もうとしている。メディアがあまり報道しない中、改憲への動きとして注目する必要がありそうだ。

「緊急事態」で改憲条文
 日本維新の会と国民民主党、衆院会派「有志の会」(代表・吉良州司氏)は3月30日、「緊急事態」で国会議員の任期を6カ月延長可能とする改憲条文案を共同で発表した。
 条文案は@武力攻撃A内乱やテロB自然災害C感染症の大規模まん延―などの「緊急事態」で、「広域な地域で70日以上、国政選挙の実施が困難」と内閣が判断すれば、衆参両院の3分の2以上の議決で、議員任期を6カ月延長できるとにする。
 三会派は国会閉会の6月19日にも、@緊急事態宣言は、国会の事前承認を経て内閣が宣言。宣言期間中の国会の閉会や衆院解散を禁止し国会の機能を維持するA平時の国会でも、衆参いずれかの総議員4分の1以上の要求があれば、内閣は20日以内に召集を決定する―などを決めた。

閉会時も改憲強調
 国民民主党の玉木雄一郎代表は6月27日の会見で、この「緊急事態条項創設」の改憲について「秋の臨時国会で成案を得て、来年の通常国会に発議できるスケジュールで進めるよう働き掛けたい」。3月の会見では、日本維新の会の馬場伸幸代表が「改憲発議ができるよう、エンジン役を担っていきたい」とし、岸田首相が来年9月までの自民党総裁任期中の改憲を公言したことをあげ、「国民投票まで時間がない。改憲発議に向けた仕事を自民党に期待する」と主張。国民の玉木雄一郎代表は「自民党は具体的な成案作りに協力してほしい」と語っている。
  この論議、一般にはいかにも唐突だが、憲法審査会は「議案がないから開会しないのはサボタージュ」という自民党の主張で、通常国会では衆院が16回、参院でも8回開会。岸田首相も「議論の深まり」と歓迎した。
 しかし、緊急事態問題は、衆院解散時の「緊急集会」が憲法に規定されている参院では、ほとんど議論されでいない。
  自民党などには「改憲の本丸は9条への自衛隊明記。議員の任期延長だけで国民投票などできない」という議論もある。

公明の「反対」表明
 維新と国民が「改憲」を煽る中、公明党の北側一雄副代表は4月20日の衆院憲法審査会で、自民党の「9条への自衛隊明記」に「反対」を表明し、注目された。
 自民党がたたき台で「必要な自衛の措置をとることを妨げず」との文言を盛り込んでいることについて「9条2項(戦力不保持)の例外規定と読まれる余地を残すことになり賛成できない」「自衛隊という組織を憲法上明記することによって、憲法上の国家機関とされ、防衛省の上位機関とみなされないか、検討が必要だ」とも述べた。
 自民党が改憲のテーマにしているのは「9条への自衛隊明記」のほか、「緊急事態条項」「参院選挙区の合区解消」「教育の充実」。「自衛隊」以外は法改正で対応が可能。自公の連立解消が見え隠れする中、維新、国民が「改憲」を使って「新野党勢力」として自民に接近しようとしている、とも読めそう。慎重な対応が必要だ。
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年7月25日号
 

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2023年04月19日

【支部リポート】北九州 国が強いるのは「違憲」 医師らの提訴めぐり学習会=久田ゆかり

 軽快な音楽に乗せ著名タレントが所持を急ぐようアピールするマイナカード(マイナンバーカード)。来年にも健康保険証を廃止しマイナカードに健康情報をも集約する国策が今年4月から本格的に開始される。その第一歩である病院窓口等での「オンライン資格確認」に反対の声を上げる動きが医師・歯科医師から急速に高まり2月、「マイナ保険証は憲法違反」として東京地裁に提訴した。この動きは全国に波及し二次訴訟へと拡大する勢いだ。

 東京などの医師ら274人が「病院窓口等でオンラインで資格確認をしたり必要な体制を整えさせるよう国が強いるのは違憲で、公法上の義務は無い」ことの確認を求め国を提訴した。会見した原告団長の佐藤一樹医師は「零細な医院までもが義務化されることで過疎地や離島では深刻な影響が出始めており廃業する医院が目立つ。従来のような自由な医療が受けられなくなる」と強調した。北九州支部は、この問題を深く知りたいとの声があり急きょ、杉山正隆支部長を講師に、週刊金曜日読者会と学習会を共催した。

 杉山支部長は「病院に掛かる際には毎回、マイナカードの提示と顔写真撮影が必要で、持参しなければ自費扱いの10割負担となる。薬の重複を防ぐことが出来る等の利点もあるが、例えば、同じ病気で意見を聞きたくても、別の病院には掛かりにくくなる。日常的なWindows のupdateでマイナカードを読み取る等の機器に不具合が出たとの報告が全国各地から寄せられているが、こうした場合は診療は出来ない」などと4月以降、医療への掛かり方が激変することを解説した。

 また、「マイナカードの常時所持は『実印を常に持ち歩く』ようなもので危険極まりない。紛失すると再発行まで1カ月ほど掛かり、基本的に病院等では10割負担となる。マイナカードの所持を拒否したり紛失時用に資格証を発行するが、資格証を利用すると窓口負担が高くなる等のペナルティがある」と話した。
 参加者からは「国民から確実な徴税をし、病歴や投薬の情報、顔の情報を多数収集することで国民を管理するもの」「諸外国でも導入の動きはあったが、ほとんどの国では中止しており危ういものだ」等、懸念の声が多く上がった。
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年3月25日号

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2023年01月28日

【JCJオンライン講演会】2月4日(土)午後2時から4時 ロシアのウクライナ侵略と日本の安全保障 〜敵基地攻撃と軍事費大幅増の危うさ〜 講師:歴史学者 纐纈 厚さん(明治大学国際武器移転史研究所 客員研究員)

                           
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 2007年に防衛庁が省に格上げされた当時から指摘されていたように、日本は軍事的力量や法制面で、「いつでも戦争ができる国」としてすでに登場している。そして今や、政府は軍事費の大幅増により、武器の爆買いをし、敵基地攻撃能力の保持を目指し、核の共有議論までしようとしている。
 ロシアのウクライナ侵攻の長期化、北朝鮮、中国の動向などが口実とされている。このような事態を私たちはどう考え、どのような未来を見つけたらよいのか。今、しっかり立ち止まって論議を尽くさねばならない時ではないでしょうか。長年、日本の軍事的側面を研究分析してこられた纐纈厚さんに「日本の安全保障」について講演をお願いした。

【講師の略歴】
 纐纈 厚(こうけつ・あつし)
 1951年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。現在、明治大学国際武器移転史研究所客員研究員、山口大学名誉教授(政治学博士)、東亜歴史文化学会会長、植民地文化学会代表理事。この他に全国革新懇談会代表世話人、共同テーブル発起人、「重慶爆撃を継承する会」「中国文化財の返還を求める会」の共同代表などを務める。

参加費:500円
当オンライン講演会に参加希望の方はhttps://jcjonline0204.peatix.com/viewで参加費をお支払いください。
(JCJ会員は参加費無料。jcj_online@jcj.gr.jp に別途メールで申し込んでください)主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)03-6272-9781(月水金の13時から18時まで)https://jcj.gr.jp/
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2022年07月14日

【メディアウオッチ】「逮捕された記者こそ被害者」札幌で「取材の自由」を考えるフォーラム 大学・道新に厳しい批判=高田正基

                   
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 新聞労連と北海道新聞労組主催の「『取材の自由]を考えるフォーラム」が5月22日、札幌市で開かれた(写真)。旭川医科大を取材中の道新記者が昨年6月、建造物侵入容疑で大学職員に現行犯逮捕(常人逮捕)された問題をテーマにパネル討論が行われ、「記者逮捕は不当だった」「道新の説明はまるで警察発表のようだ」など、大学や道新に対し厳しい批判が相次いだ
 日本ジャーナリスト会議などが後援し、道内外から会場、オンライン合わせて約60人が参加した。
 パネル討論は吉永磨美・新聞労連委員長の司会で、ジャーナリストの金平茂紀氏、「放送レポート」編集委員の臺宏士氏、岩橋拓郎・新聞労連新聞研究部長、安藤健・道新労組委員長の4人が意見交換した(臺氏と岩橋氏はこの事件の労連検証チームメンバー)。
 論点は@記者逮捕の妥当性A道新の会社対応の問題点B労組・報道機関はどう構えるべきか―の三つ。

■記者逮捕の妥当性

 臺氏は、不適切発言や経費の不正支出が問題になった旭川医大学長の解任を審議する学長選考会議を取材するのは、報道機関として「知る権利」に応えるものだったとして「記者は形式的に侵入したかもしれないが、取材活動の一環であり、報道の自由がある」「当該記者こそ犯罪の被害者だというアプローチの検討も必要だった」と指摘した。
 金平氏も「記者が大学に入ったことを建造物侵入という機械的な条文解釈で逮捕なんかできると思うのか」と大学側を批判した。
 議論は記者逮捕が各メディアで大きく取り上げられなかったことにも及んだ。
 岩橋氏は「同業他社が関係各方面に配慮し、事なかれ主義に走ったのではないか。他社がこの事案を過小評価した可能性もある」として「メディアは権力行使のありようについて鈍感であってはならない」と訴えた。

■記者逮捕の妥当性

 労連検証チームのメンバーである岩橋氏は道新の対応について「初動、実名報道の是非、説明責任」の三つの問題があると指摘。建造物侵入罪が成立しない可能性があるにもかかわらず「外形的事実として争いようがない」「法律違反が成立している可能性が高い」という道新の判断はまるで捜査機関の言い分のようだと断じた。そのうえで「取材目的」という正当な理由があったと、当初から主張すべきだったと強調した。
 記者がスマートフォンで会議を録音していた行為を、道新が「盗聴していた」と表現したことも問題視され、臺氏や金平氏は「記者が犯罪人であるかのような対応だ」「言論機関のマネジメントにかかわる人間が発する言葉か、と耳を疑った」などと厳しく批判した。
 実名報道については「拙速な判断だった」(岩橋氏)という指摘の一方で、逮捕の不当性を訴えるためには実名もありうるとの意見もあった。
臺氏は「懲罰的な実名報道ではなく、誤った権力行使で逮捕されたという立場から実名を選択すべき事案だった」。安藤氏も「事実を記録して訴えるためには、だれが逮捕されたかという名前がないと戦えないというのが現時点の結論だ」とした。
道新の説明責任については「社内調査報告をホームページの会員登録をしなければ読めない記事に指定していた。メディアとしてよりオープンな態度が必要だった」(岩橋氏)、「調査報告の書きぶりに組合員から『責任を現場に押し付けているだけだ』という声が強く上がった」(安藤氏)など、発表手法や説明の不十分さが批判された。

■労組・報道機関の構え

 吉永氏が「こうした事案はこれから増えてくるかもしれない」と懸念を示し、岩橋氏は「(新聞労連として)記者がもし逮捕されそうになったらどうするか、についてまとめた小冊子を作る予定だ」と報告した。
 金平氏は「職業的な報道マンやジャーナリストへの根源的な疑いが出てきている」として、「ひるむな、萎縮するな」と現場記者たちにエールを送った。
     ♢
 パネル討論のあと、道新労組と新聞労連がこれまでの取り組みを報告した。吉永氏は「メモ的録音は問題なのか、議論していくべきだ」と問題提起した。
 高田正基(JCJ北海道支部代表委員)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年6月25日号
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2022年01月05日

【リアル北朝鮮】来年も金正恩氏の誕生日は平日 経済の立て直しを優先?=文聖姫

  今年も残すところあとわずか。来年のカレンダーも数々販売、配布されている。どんなものを購入しようか、あるいはいただいたカレンダーの中からどれを飾ろうか、などと悩む毎日である。
 北朝鮮もカレンダーを発行しているが、韓国のKBSが入手したものを見ると、来年も金正恩総書記の誕生日である1月8日は祝日ではない。その代わり、「先代」である故金日成主席と故金正日総書記の誕生日は祝日になっている。
 今年1月に開催された朝鮮労働党第8回大会で総書記に就任した金正恩氏は、すでに祖父や父と同じ「領袖」の位置に就いたと考えられる。それなのになぜ、いまだに誕生日は祝日にならないのか。また、肖像画や肖像バッジが出回っているという話も聞かない。
 理由は二つ考えられる。一つ目は、先代の指導者を敬う謙虚さを示すことの方が人々に受け入れられやすいという点だ。それが道徳的にも評価されるからだ。
 二点目は、いまだ人民生活の向上という執権当初からの課題を解決できていない状況で、自身の誕生日を祝日にはできないことをアピールする狙いがあるのではないかと思う。むしろ、誕生日にも精力的に働くことを示すことの方が人民受けしやすい。もちろん、北朝鮮が祝日でない理由について明らかにはしておらず、あくまで推測にしか過ぎないのだが。
 金正恩氏は12月1日に開かれた政治局会議で、経済が安定的に管理されたと発言した。農業部門と住宅建設などで成果が出ている模様だ。5カ年経済計画1年目に何としても成果をアピールしたい思惑が垣間見える。金正恩氏が自身の誕生日を心から祝ってもらうためにも、経済の立て直しは必須の課題だろう。
※  ※
 「リアル北朝鮮」は今号で終わりです。このコラムを通じて、少しでも北朝鮮の人々の息吹を感じていただけたら幸いです。ありがとうございました。
 文聖姫(ジャーナリスト・博士)
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年12月25日号
 


 
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2021年12月10日

【リアル北朝鮮】中国との鉄道貿易再開?国境封鎖で物資が枯渇=文聖姫

  中国と北朝鮮が鉄道貿易の再開を準備中だという。韓国統一部当局者が11月4日、そのように語ったと「聯合ニュース」4日付が報じた。ただし、具体的な再開の時点は予想できないという。
 ここへ来て、中朝の鉄道貿易が再開の兆しを見せ始めた背景には何があるのか。新型コロナ禍で長引く国境封鎖によって、北朝鮮で物資が枯渇していることは想像にかたくない。
 最近開かれた国会にあたる最高人民会議などでは、資源や原材料の再利用が再三強調されている。それだけ、原材料が不足していることの証だろう。物資の不足を何とか解消するためには、少しずつでも海外から物資を輸入する必要が生じているのではないか。それには貿易の90%を占めると言われる中国との貿易を本格的に再開することが一番の解決策だ。
 もちろん、これまでも中朝貿易が完全に遮断されていたわけではないだろう。少し前には船を使って海上で物資を搬入しているという報道もあった。個人的な貿易がストップしているかどうかは確認のしようがない。今年3月から少しずつ貿易が再開されていたとも報じられてもいる。ただし、新型コロナ禍前の水準に回復しているとは到底言えないだろう。
 ところで、鉄道を使った貿易というが、北朝鮮では列車がよく止まったり、遅延したりする。私も何度か列車で平壌から地方に行ったことがあるが、時間どおりに目的地に着けたためしがない。途中の駅で夜を明かすこともあるほどだ。
 だが、そのおかげで北朝鮮の人々のたくましさを垣間見ることができた。線路上に、列車の客を目当てにした市が立つのだ。お弁当や酒、果物などを売る商売人たち。なかには洗面用の水を売る子供もいた。
 ネットフリックスで配信中の「愛の不時着」でも、列車が止まると商売人たちが駆けつけて物を売るシーンが登場するが、北朝鮮での体験を思い出して、懐かしかった。
 文聖姫(ジャーナリスト・博士)
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年11月25日号 
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2021年11月01日

【リアル北朝鮮】南北通信回線再稼働 対韓は融和 対米は強気=文聖姫

 10月4日午前9時、南北間のすべての通信回線が再開された。金正恩・朝鮮労働党総書記はこれに先立つ9月29日、最高人民会議第14期第5回会議で行った施政演説で、「北南関係が一日も早く回復し、朝鮮半島に堅固な平和が宿ることを願う全民族の期待と念願を実現するための努力の一環」として、10月初めから南北の通信回線を復旧すると表明していた。
 北朝鮮は昨年6月9日、韓国の脱北者団体が金正恩氏を批判するビラを散布したことに反発し、南北の通信回線を一方的に遮断した。同月16日には、開城にある南北共同連絡事務所を爆破した。それから約1年後の今年7月に通信回線を復旧させたが、8月の米韓合同軍事演習などに反発して再び遮断していた。
 今回再度通信回線を復旧させた背景には、南北関係を早期に改善させようという意図があるものと思われる。通信回線復旧を伝えた北朝鮮国営・朝鮮中央通信は4日、「通信回線の再稼働の意味を深く刻み、北南関係を収拾し、今後の明るい前途を開いていくうえで優先すべき重大課題を解決するために努力すべき」だとして、韓国が対北朝鮮敵視政策を撤回するよう求めた。

 北朝鮮が南北関係改善を求める主な目的は、経済協力の再開にあるといえる。ただ、韓国の文在寅政権がいくら経済協力を再開したいと思っても、国連安保理決議に基づく経済制裁がある限り、簡単には進まない。通信回線の再稼働の意味を深く刻めというのは、通信回線を復旧させたのだから、次は韓国が行動するべきだろうというようにも聞こえる。
 金正恩氏は施政演説で、アメリカに対しては、「われわれに対するアメリカの軍事的威嚇と敵視政策は少しも変わっていない」と牽制した。韓国に対しては融和姿勢をとり、アメリカに対しては引き続き強気の姿勢で臨んでいるように見える。まずは、韓国を動かし、その後は米国と、というシナリオなのかもしれない。
 文聖姫(ジャーナリスト・博士)
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年10月25日号
 


 
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2021年10月09日

【リアル北朝鮮】長引く経済的苦境 不良青年≠スちを建設現場に=文聖姫

 8月28日は北朝鮮の「青年節」だ。今年は60周年とあって、とりわけ大きなイベントが開催された模様だ。地方も含め1万人以上の若者たちが平壌に集まり、大会などに出席しただけでなく、コンサートを観覧したり、夜会に参加したり。夜間営業が基本の遊園地で絶叫マシーンにも興じた。
 そんな彼らにとって、一番の栄誉は金正恩朝鮮労働党総書記と会って写真を撮ったことだ。北朝鮮で最も栄誉とされるのは、「最高指導者との接見」だ。記念写真は家宝である。北朝鮮の家を訪れるとわかるが、歴代の最高指導者と写した写真は必ず家の一番良い場所に掲げられている。1万人といえば、本人の顔は米粒のようでほとんどわからないが、それでも一家の誉なのである。
 ところで、この「青年節」に際し、金正恩総書記は、困難で過酷な経済建設現場に自ら志願して行くこととなった若者たちに祝賀文を送った。そこでこんなことを言っている。「私が何よりうれしいのは、立ち遅れた青年たちが愛国で団結した社会主義愛国青年同盟の一員らしく、母なる祖国のために自らを捧げる立派な決心を抱き、困難で韓国な部門に進出することで人生の再出発をしたことです」。
 「立ち遅れた青年」とは、北朝鮮流にいえば、非社会主義行為を働いてきた若者たちを指すのであろう。非社会主義行為にはいろいろあるが、たとえば韓流ドラマをひそかに見ることも当てはまる。最近では服装の乱れなども非社会主義的行為とされる。それだけ当局が若者たちの非行に頭を痛めている証拠だろう。
 金総書記は、困難で過酷な建設現場へと向かう、かつての不良青年たちに会い、写真まで撮った。何とかして若者たちの心をつかみ取りたいという気持ちが伝わってくる。
 長引く経済制裁に相次ぐ自然災害、さらには新型コロナによる国境封鎖で経済的困難にある北朝鮮。最近の若者懐柔策を見ていると、北朝鮮の苦境が伝わってくる。
 文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年9月25日号
 

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2021年09月23日

【慰安婦問題】名乗り出て30年 記者たちが証言 開戦50年企画の取材記事 23年後に突然バッシング=須貝道雄

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 旧日本軍によって従軍慰安婦にされた韓国人女性、金学順(キム・ハクスン)さんが、自分は元慰安婦だったと記者会見で明らかにしてから30年。8月7日、東京のプレスセンターホールで、植村訴訟最終報告会を兼ね「金学順さんが名乗り出た時――記者たちの証言」のシンポが開かれた。金さんのカミングアウトがいかに世を変えたか、その言葉の重みを再確認する場となった。
 金さんがソウルで初めて記者会見に臨んだのは1991年8月14日。韓国のメディア向けだった。この会見が国際的な反響を呼んだ。
 日本人記者も会見の前後に様々に取材した。証言テープを聞いて金さんの存在をいち早く報じたのが当時、朝日新聞大阪社会部記者だった植村隆さん(現「週刊金曜日」発行人)だ。その事情を当時の朝日新聞ソウル支局長、小田川興さんは語った。
韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)の共同代表、尹貞玉(ユン・ジョンオク)さんから元従軍慰安婦の女性が「ついに名乗り出た」と連絡を受けた。「だれに取材させるか思案した。日韓の政治が動いている時で支局は多忙だった。その時、大阪にいる植村記者から電話が入った。話をすると、彼は『明日行きます』と。そこから物語が始まった」
植村さんは91年8月10日に金さんの証言テープを聞き、翌11日付の朝日新聞大阪版・社会面トップに「思い出すと今も涙」の見出しで記事を書いた。それが23年後に「ねつ造」だと不当なバッシングを受けることになる。

 植村記事の直後に、北海道新聞ソウル支局長だった喜多義憲さんが金さんへの単独インタビューに成功し、8月15日付社会面に「日本政府は責任を」の記事と金さんの写真を載せた。
 シンポで喜多さんは「(太平洋戦争の)開戦50年企画で慰安婦問題をやろうと7月ごろから取材していた。メディアと会うと決心する女性がもし現れたら、まず私に連絡してと(挺対協の)尹さんにダメもとでお願いしていた。そうしたら8月13日に尹さんから話が来て、本当かと驚いた。14日午後2時から金さんへのインタビューが実現した」
 金さん(1924年生まれ)の父親は抗日運動にかかわり、日本軍に銃殺されたという。その反骨精神は娘にも引き継がれ、従軍慰安婦の問題を世に訴える「役割を担ったのではないか」と喜多さんは受け止めている。
 植村バッシング問題のドキュメンタリー「標的」を制作した元RKB毎日放送の西嶋真司さんもソウル支局長時代の91年末、金さんを取材した。「13分のインタビュー映像がある。だがTBSが持っていて使えない。今はメディアが慰安婦問題をタブー視している」と現状を語った。
 毎日新聞記者の明珍美紀さんは韓国メディア向けに開かれた8月14日の金さんの会見に出席していた。「後ろの方にいた。異様な熱気だった。ふり絞るような声と涙。迫力に圧倒されたのを覚えている」。明珍さんはその後、金さんと会い、9月28日付毎日新聞に「消えぬ朝鮮人慰安婦の傷」の見出しで「記者の目」を書いた。
 シンポには元NHKディレクターの池田恵理子さんも出席し、慰安婦問題を歴史から消そうとする動きが1997年から始まった模様を明らかにした。
須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年8月25日号
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2021年08月04日

【リアル北朝鮮】男女平等まで道半ば 金総書記長 時代錯誤な書簡=文聖姫

 「夫が党と革命に忠実であるよう世話をし、子供たちを社会主義朝鮮の頼もしい担い手に育て、和やかで団らんな家庭を作るという女性たちの役割は誰も代われるものではありません」
 男性と同じように女性が活躍することが当然のこととして認識されている世の中で、少々時代錯誤な感が否めない文章だ。金正恩総書記が6月20、21日に平壌で開催された朝鮮社会主義女性同盟第7回大会参加者に送った書簡(6月20日付)に含まれているものだ。北朝鮮が厳然として男性社会であることを如実に示していると思う。
 党の幹部会議などの映像を見ても、参加者はほとんどが男性だ。たまに女性が登場しても、金総書記の妹、金与正氏や秘書的な役割を果たしていると思われる玄松月・朝鮮労働党副部長などといった「有名人」たちだ。なにしろ北朝鮮では「雌鶏歌えば家滅ぶ」ということわざが浸透しており、女性が政治に口を出すことを良しとしない雰囲気がある。金総書記の書簡も、そういった男尊女卑の考えが反映されているのではないだろうか。

 問題は女性たちにもある。北朝鮮の女性たちはいまだに、良き妻、良き母となることが最も重要だと考えている。日本の区長にあたる女性の人民委員会委員長を男女平等の企画で取材したことがある。彼女は、夫や姑、子供たちの理解があったから仕事をやってこられたと言いながら、こう続けた。「自分が仕事で家をあけたり、家事や子育てができないことを申し訳なく思った」と。
 北朝鮮で女性の社会進出率は意外と高い。日本の国会にあたる最高人民会議の代議員にも女性が多く含まれる。小学校や中学校の校長、協同農場の管理委員長などは圧倒的に女性たちだ。
 現在の北朝鮮政府ができる前に組織された北朝鮮臨時人民委員会は1946年7月30日、男女平等権法令を採択した。それから75年、真の意味での男女平等への道はまだ半ばだ。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年7月25日号
 


 
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2021年07月19日

問題法案 続々成立 改憲投票法 立民の修正案は疑問=編集部

 コロナ渦のどさくさに紛れ、今国会にも「壊憲」の問題法案が続々出された。メディア報道も追いつかず、委員会所属者以外、衆参議員も法案検討の余裕すらない。本来、国会提出前の検討が重要だが、政策審議より政局優先の与党の姿勢が問題に拍車をかけている。
 今国会では、8国会にわたって継続審議のまま手つかずだった改憲手続法(国民投票法)の改正が成立した。広告規制や改憲運動への資金規制、最低投票率など、公選法と違う改憲国民投票の意味や投票の公正を保障する議論が全くないまま、「今国会で結論を得る」という自民・二階、森山、立憲・福山、安住の幹事長・国対委員長会談に縛られ、参院でもあっさり通過、成立した。
 「3年後を目途に見直す」という「付則」をつけた修正案をなぜか立憲民主党が出し、与党が丸呑み。どこで何が動いたかはわからないが、「政策」より「国会対策技術」が優先した結果だ。
 一方で外国人の強制収容などの管理強化を狙った入管法改正は、国際的な批判やスリランカ女性の死もあり、自民党は今国会成立を断念した。

 命と生活の問題
 国民生活に直接関わる問題なのに、これもほとんど報じられないまま通ってしたのが、高齢者医療費の倍増。現在個人負担は1割の75歳以上の老人医療について、年間200万円(月16・6万円)の収入があると倍の2割になる法案。6月4日あっさり成立。
 コロナ禍が日本の医療体制の脆弱さを明らかにした中、病院のベッド数削減と医師の長時間労働を進める「恥知らず」の医療法の改定も5月21日あっさり成立した。
 1割以上の削減を行った病院に対して補助を強化、全国での病床数削減を狙い、OECD諸国では最低の医師養成数の削減を前提に過労死ラインを超える医師の長時間労働を認めている。

国民管理と監視
 ひどかったのは膨大な「デジタル庁関連法案」の扱い。とにかく個人情報を政府に集中、自由に使うため一元管理するとの意図は明確なのにろくに議論ー使用を義務づけるなど、個々にみれば、数年かかる議論が必要なのに5月12日早々と成立した。
 国民の情報を管理し、監視する体制は、基地などの周辺から合法化し、強化しようという「重要土地党調査規制法案」で具体化している。防衛施設のほか、原発、空港どの周辺を「注視区域」とするなど、所有者の調査や規制を可能にする。既に基地周辺での写真撮影やデモ、宣伝活動などが勝手に規制されており、さすがにこれは、最終版国会の焦点になった。
 18―19歳を「特定少年」として厳罰化する少年法改定も成立した。犯罪防止には逆行である。
編集部
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年6月25日号


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2021年07月02日

【リアル北朝鮮】5年ぶり党規約改正 集団指導体制へ転換か=文聖姫

 北朝鮮で今年1月に開催された朝鮮労働党第8回大会では、5年ぶりに党の規約が改正された。最近、その内容が明らかになった。
 『日本経済新聞』6月10日付によると、序文から「先軍」の文字が消え、「主体」も大幅に減ったという。「金日成同志と金正日同志の遺訓」という表現も削られた。先軍は金正日政権時代を象徴する言葉だ。金正日政権時代、北朝鮮では建国以来最悪と言われる経済難に見舞われた。その困難を乗り切るうえで、金正日総書記は軍事優先路線を掲げ、核兵器やミサイルの開発を進めた。主体は金日成主席が提唱した主体思想からきている。
 先代を象徴する言葉が消えるか、大幅に減った点、さらには両先代の「遺訓」という表現が削除された点などを考えると、金正恩総書記がいよいよ“独り立ち”を宣言したものととれる。すでに自らの体制は十分に固まったといえるが、今後はさらに先代のやり方にこだわらず、自らの方法で国を運営していくと予測するのも可能だ。
  今回の党規約改正では、「人民大衆第一主義」が打ち出されたという。第8回党大会で北朝鮮指導部は5カ年経済計画を発表した。具体的な内容は明らかにされていないが、同計画に沿って経済が運営されており、『労働新聞』などのメディアでは連日達成された成果が報じられている。一方で、思うように成果が出ていないのではないかとも思われる。というのも、6月に入り、立て続けに党の会議が開催されているからだ。そこでは、経済問題と人民生活の安定が強調されている。最近の論調を見ても、北朝鮮の喫緊の課題が経済の立て直しであることが分かる。
 一方、改正された規約では、「第一書記」のポストを新設し、「金正恩総書記の代理人」と規定した。現段階では第一書記が誰なのかは明らかになっていない。だが、金正恩総書記に継ぐポストが新設されたことは、北朝鮮が集団指導体制を推し進める兆候ではないか。
  文聖姫(ジャーナリスト・博士)
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年6月25日号
 

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2021年06月28日

台湾海峡有事と憲法 米国追従の日本 民間人も戦地へ 法の秩序を無視 メディアにも責任=徳山喜雄

 ことしの憲法記念日は、例年に増して憂鬱な日となった。一つは新型コロナ対策の緊急事態宣言のなかで迎えたこと、もう一つは4月の日米首脳会談の共同声明が52年ぶりに「台湾」にふれ、日中の緊張がいっきょに高まったことだ。
「一つの中国」を譲らない中国と台湾の両岸問題は微妙で、取り扱いを間違えれば「爆発」しかねない。ジョー・バイデン米大統領は習近平国家主席を「専制主義者」と名指しし、3月末の就任後初の記者会見においても米中関係を「21世紀における民主主義と専制主義の闘い」と位置づけている。

中国の台湾侵攻

 共同声明は、中国に対し対決姿勢を強める米国に日本が追従したかたちだ。憂鬱になるおおもとは、安倍晋三政権による2014年の憲法9条の解釈変更に端を発し、その翌年に可決された安全保障関連法(安保法制)の存在にある。
 安保関連法によって日本は、自国が攻められたときにのみ個別的自衛権を発動するという段階から、緊密な関係にある米国が攻撃された場合も応戦するという役割を担うことになった。米軍司令官は「中国の台湾侵攻は、6年以内に起こりうる」と3月の米上院公聴会で証言しており、安保法制が発動されることに現実味がでてきた。
 今夏の中国共産党の結党百周年と、22年の北京冬季五輪を終え、習主席が台湾問題を優先し軸足を置いたなら、台湾海峡に激しい波浪が押し寄せる可能性がある。米軍が出動するということになれば、日本はこれまでとまったく違った対応を迫られることになる。
 安保法制では、日本の平和と安全に影響を与える「重要影響事態」となれば米軍の後方支援をおこなうことになり、台湾海峡有事によって日本の存立が脅かさる「存立危機事態」になれば自衛隊は集団的自衛権を発動して武力行使できるとする。仮に米軍基地がある沖縄が攻撃されれば、日本有事を意味する「武力攻撃事態」と考えられ、個別的自衛権を行使することになる。

兵站を担う民間

 ここで留意したいのは、中国が台湾に侵攻し米軍が介入した際、戦地に送られるのは自衛隊員だけではないということだ。状況次第では、兵站のために民間の船舶や船舶従業員が動員されることになる。
 専守防衛に徹してきた自衛隊の前線への兵站能力は限定的で、民間に頼らざるをえないというのが関係者の見方だ。医療行為のために医師や看護師らが派遣されることにもなりかねない。
中国の近年の覇権主義的な動きをみるにつけ、絵空事とは思えない。法律には成立後すぐに使われるものと、年月を経て使われるものがある。安保法制が可決されて6年になるが、10年を迎えるころにあるかもしれないのである。選択は間違っていなかったのか。(→続きを読む)
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2021年06月25日

憲法記念日 25条を使い倒せ 危機に乗じ、壊憲*@案続々 戦争できる国にまた一歩=丸山重威 

  施行から74年目の憲法記念日の5月3日。国会議事堂前で「変えよう政治!いのちを守り、平和をつくろう」と、「2021平和といのちと人権を! 5・3憲法大行動」が、オンラインを中心に行われた。
 まず、実行委員会を代表して「九条の会」事務局長の小森陽一さんが「菅政権の無策でコロナ感染が拡大し、貧困が加速している。国が社会保障、公衆衛生への努力を決めた憲法25条、男女平等の24条、財産権保護の29条が侵されている。13条で個人の尊厳が保障され、生命、自由、幸福追求の権利があることも主張しよう。戦争法反対以来、党派を超えた統一した運動が進んできた。いまや憲法を守り生かす側から政治を変える段階」と挨拶した。

政治を変えよう
 「これから『おとな食堂』に支援に行く」という雨宮処凜さんは「憲法25条を使い倒そう」、羽場久美子神奈川大教授は「米国の中国封じ込めに参加してはならない」、清水雅彦日体大教授は「もうこんな反権力政治は終わりに」と訴えた。
枝野・立憲、志位・共産、福島・社民、沖縄の風・伊波の各党代表が挨拶。いわ山本代表のメッセージが紹介された。
 続いて、田中優子前法大総長が「憲法と自民党の改憲草案を比較してみよう。価値観、人間観、国家観が全く違う。『公共の福祉』は『公益・公の秩序』に置き換え、自衛隊は国防軍にする。憲法は捨てるか守るかどちらかだ」と強調した。

異なる価値観
 最後に市民連合代表の山口二郎法大教授が「安倍、菅政権の8年半、憲法との乖離が目立った。それぞれの場所で声を上げよう」と述べた。
一方、菅義偉首相は産経新聞に「自民党の改憲4項目を元に議論を」と発言。改憲派集会のビデオメッセージで「国民投票法は改憲の第一歩」と強調した。(→続きを読む)
   
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2021年06月22日

【フォトアングル】護憲派の5・3国会議事堂前行動=酒井憲太郎

                           
酒井.jpeg

憲法記念日、護憲派は国会議事堂正門前で「5・3憲法大行動」を開いた。新型コロナウィルスの感染を極力回避するため、参加者にはマスクの着用とフィジカルディスタンスの確保を求められた。多くの人はオンライン中継での視聴で参加した。6日に衆議院憲法審査会で国民投票法の改正案を採決する直前で、会場には「採決反対」のプラカードが上がった。3日、東京・国会正門前 酒井憲太郎撮影
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年5月25日号
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2021年06月03日

【リアル北朝鮮】15年後には生活改善 反社会主義的行為を警戒か=文聖姫

 4月末、北朝鮮の平壌で青年同盟第10回大会が開催された。金正恩朝鮮労働党総書記は大会宛てに送った書簡で、次のように述べた。
 「今後5年を朝鮮式社会主義建設で画期的発展をもたらす効果的な5年、山河を今一度大きく変貌させる大変革の5年にしようと思っている」
 「今後15年ほどで全人民が幸福を享受する、繫栄した社会主義強国を打ち立てようと思う」
 前者は今年初めに開催された朝鮮労働党第8回大会で発表された5カ年経済計画を遂行することで、北朝鮮の経済を一変させる決意を示したものだろう。
 注目されるのは後者の方だ。金総書記は、15年後という期限を設定して、人々が豊かな生活を享受する国家を建設することを約束したのである。このことを若者の団体に宛てた書簡で表明したという点は興味深い。15年後と言えば、現在20歳の人が35歳になっている。男女を問わずバリバリ働いている頃だ。結婚して家庭を築いている人も少なくないと思われる。若者たちにあと少し頑張れば、きっと良い世の中になるという“希望”を持たせようとするものだが、15年は決して短いとは言えない。
 一方で書簡は、「反社会主義、非社会主義的な行為との闘い」に専念するよう呼び掛けている。たとえば、韓国ドラマを見るのも「反社会主義的行為」にあたる。最近では、日本でもハマる人続出の韓国ドラマ『愛の不時着』がいよいよ北朝鮮国内でも流行り出したという報道があった。真偽は定かではないが、韓国ドラマが北朝鮮国内で密に流行していることは昔から言われてきた。筆者も平壌で、韓国ドラマの女性主人公のファッションを真似したとしか思えない女性たちの集団を見かけたことがある。
 15年後には必ず幸せな生活を送れるようにして見せる――金総書記がそう発言した背景には、「反社会主義的行為」に走る若者への警戒感があるのかもしれない。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年5月25日号
 


 
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2021年05月07日

【リアル北朝鮮】五輪不参加の背景は? 撤回もあり得る=文聖姫

 北朝鮮は、おそらく世界で最も早く東京オリンピック・パラリンピックへの不参加を決めた国だ。同国の体育省が運営するホームページ「朝鮮体育」は4月6日、3月25日にテレビ会議方式で開かれたオリンピック委員会総会で、「悪性ウイルス感染症(新型コロナ)による世界的な保健危機状況から選手たちを保護するために、委員らの提議にもとづいて第32回オリンピック競技大会に参加しないことを討議決定した」と伝えた。「朝鮮中央通信」は先に、3月25日にテレビ会議方式で総会が開かれたことは報じていたが、五輪不参加を決めたことは伝えていなかった。
 北朝鮮が五輪不参加を決めた背景には新型コロナの蔓延がある。日本では東京、大阪など大都市圏で感染者数が減少していない。万が一派遣された選手団の中から一人でも感染者が出たら、全員が「濃厚接触者」となり、彼らの帰国さえおぼつかなくなるかもしれない。
 北朝鮮は昨年1月、どの国よりも早く国境を完全に封鎖した。現在でもそれは続いており、北朝鮮の命綱である中国との貿易額も大幅に落ち込んでいる。2020年の朝中の輸出入額は5億3905万ドル(約590億円)で、19年比で80・7%減少した。国境封鎖による物資不足は深刻さを増しているとされ、平壌に滞在する外交官らも「脱出」せざるを得ない。ロシア大使館の職員が家族とともにトロッコで鉄道を走る写真は象徴的だ。  
 そこまでして北朝鮮は新型コロナが流入する事態を抑えようとしている。これまで北朝鮮で感染者が出たとの報道はない。それだけに神経をとがらせているのだろう。
 ただ、金日国体育相は総会で、「新たな5カ年計画期間に国際競技でメダル獲得数を増やし続け」なければならないと強調していることから、五輪に参加する意思はあったことがうかがえる。不参加表明を撤回する可能性も100%ないわけではないと、筆者は考える。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年4月25日号
 

 
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