2019年02月18日

【お知らせ】JCJ2・22講演会:高須次郎<出版崩壊とアマゾン>

出版崩壊とアマゾン
─どう再生への道を拓くか─
いま出版界は存続の瀬戸際に立たされている。
値引き販売・取次外しなどのアマゾン商法″が席巻!
電子書籍の価格は自由、再販制度はズタズタ。
日本の書店・取次の倒産が続く─その出口を探る。

講演:高須次郎氏(緑風出版代表・前出版協会長)
日時:2月22日 (金)18時30分開会(18時15分開場)
場所:YMCAアジア青少年センター 3階会議室
〒101-0064 東京都千代田区猿楽町2-5-5 ☎ 03-3233-0611
JR「水道橋」駅東口下車、白山通りを神保町方面へ徒歩5分
アクセス地図 http://www.ayc0208.org/hotel/jp/access-access.html
参加費:800円(JCJ会員・学生500円)

《主催》 日本ジャーナリスト会議(JCJ)出版部会

JCJ出版部会2・22講演会チラシ(高須次郎氏).pdfJCJ出版部会2・22講演会チラシ
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2019年02月15日

【国際情勢】 「辺野古を守れ」署名21万筆 呼びかけた日系4世 ワシントンで訴え 民主主義踏みにじる=津山恵子・NY在住

ハワイ在住の日系4世の音楽家、ロバート梶原さん(32)がホワイトハウスに向けて始めた、沖縄・辺野古への土砂投入停止を訴える請願署名が、21万に届こうとしている(米東部時間1月17日現在208,691)。

 梶原さんは昨年12月8日、米ホワイトハウスが設ける請願サイト「ウィ・ザ・ピープル(We The People)」を利用し、新基地の是非を問う今年2月24日の県民投票まで、工事停止を検討するように、トランプ米大統領に求める署名を集め始めた。サイトは、署名開始から30日以内に10万署名が集まればホワイトハウスで請願を検討、60日以内に回答が来る仕組み。このため、請願内容は、ホワイトハウス内で再検討され、「不適切な影響がある」と判断された場合を除き、署名者全員にホワイトハウスがeメールで回答を送るという。

沖縄中城は私の血

梶原氏は、母方が沖縄県中城(なかぐすく)村出身の日系4世。子供の頃から祖父母から沖縄の文化と歴史を教えられ、沖縄の血を自分のアイデンティティーの一つととらえている。辺野古にも何度も訪れ、ウチナーグチ(沖縄の方言)を話し、琉球舞踊も踊る。

「12月上旬の工事開始の日が近づくにつれて、不安も増す一方で、希望も失せていた。日米政府は、沖縄の人々と、玉城デニー知事の声を無視した。でも、工事反対のデモを毎日している人々のことを考えると何もしないわけには行かず、少しでも彼らのことを知ってもらえればと、ほとんどやけくそで始めた」と、署名運動を始めた理由を話す。

英語のサイトにいかに署名するか、SNSを使って、日本語で説明する人も表れ、世界中に拡散し、沖縄県民や世界に住む沖縄出身の日系人が署名。わずか10日で目標の10万を達成した。タレントのローラさんや、クィーンの伝説ギタリスト、ブライアン・メイさんが、ツイッターを使って署名を訴えた。

ネットで中継流す

これをきっかけに、署名開始から30日の1月7日には、梶原氏が首都ワシントンDCを訪れ、米市民や沖縄県人会のメンバーなど30人が集まって、集会を開いた。梶原さんはこう訴えた。

「辺野古新基地は、日本と沖縄だけでなく、米国とアジア太平洋地域にとってマイナス

基地には、米国民の税金が使われるだけでなく、アジアの緊張を高める」

「沖縄の民主主義を無視することは米国が世界に誇る民主主義を踏みにじることです」

 参加者らは「トランプ大統領、私たちに答えてください!請願署名は19万以上集まりました!沖縄・辺野古の新米軍基地建設にNO!」などという垂れ幕を掲げ、梶原さんは集会の様子をライブでインターネットに流した。

辺野古の問題を米国メディアが報じることはあまりないが、防衛省の辺野古への土砂投入は、AP通信の記事をワシントン・ポストなどが素早くサイトに掲載した。

請願は市民の権利

梶原さんは市民運動家として、「ウィ・ザ・ピープル」については、以前から知っていたという。サイトによると、表現や報道の自由を保証するアメリカ合衆国憲法修正第1条は、「議会は、表現の自由、あるいは報道の自由を制限することや、人々の平和的集会の権利、政府に苦情救済のために請願する権利を制限することはできない」とし、国民が政府に直接請願する権利についても「市民の基本的権利」だとしている。

 梶原さんは、ワシントンの集会の最後に「チバリヨ(がんばれ)」と沖縄県民を激励。「決してあきらめない、というのが沖縄の生き方。平和的に、民主的に、というのも、沖縄のやり方だ。辺野古の新基地建設反対を引き続き、訴えていく」と、記者らに話した。

 梶原さんは、その後も毎日、基地建設反対を訴えるYouTubeビデオをアップし、SNSでシェア。トランプ大統領と閣僚、上院議員などに、署名の進展を伝える書簡とeメールを100通以上送った。ホワイトハウスからは、受信の確認メールが来たという。

 辺野古の是非を問う県民投票の波は、世界に広がっている。

津山恵子(ニューヨーク在住・ジャーナリスト)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
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2019年02月01日

【軍拡】 恐ろしい?兵器爆買い? 専守防衛は空洞化 ヒト・モノ・カネすべて米国に貢ぐ=山田厚史

 「従来とは抜本的に異なる速度で防衛力を整備する」―。昨年12月18日、閣議決定された中期防衛力整備計画(2019ー23年度)に記されていることを御存知だろうか。
 横ばい微増だった防衛予算を「これからはどんどん膨張させます」と安倍晋三内閣は宣言したのだ。財政難が叫ばれ、消費増税で国民に負担増を強いようという時に、軍事費は聖域扱いにして糸目をつけない。こんな臆面のなさをメディアはなぜ騒がないのか。

口実に過ぎない
 2019年からの5年間に27兆4700億円を軍事費に投入する。前の5年間は24兆6700億円だった。11%の伸びである。蓋が飛んだような2ケタ膨張である。
 中国の脅威、宇宙・サイバー空間での防衛などその理由を並べているが、口実に過ぎない。国会に提出された2019年度予算を見れば一目瞭然だ。
 陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージスアショア」の整備費が2基で1757億円。デラックスな兵器だが値段は実に怪しい。一基800億円といわれていたが、買う段になったら1200億円に跳ね上がった。維持・運用費や弾(ミサイル)など加えるとまだまだ上がるという。
 悪評さくさくの輸送機オスプレイと同じ。政府は一機100億円と説明していたが、アメリカから提示された金額は整備費など含める一機200億円だった。配備を決めたらあとはアメリカの言い値で上がっていく。
  そもそもイージスアショアは東欧などには米国の負担で配備されている。米国を守るための防空システムだから。日本に配備される予定地は秋田と山口。アメリカ本土やグアムの米軍基地へ飛ぶミサイルのコースにあるからと軍事専門家は指摘する。
 ステルス型のF35戦闘機は来年度6機で681億円。147機体制を目指すという。1兆2000億円かかるというが、そこで収まるかはアメリカ次第。F35を載せるため護衛艦「いずも」を空母型する。1000キロを超える適地を攻撃するミサイルの配備計画もある。自衛隊を縛る「専守防衛」の減速は空洞化されようとしている。
 兵器爆買い≠ェどれほどの有用性があるか。議論がないまま日米首脳会議で購入が密約され、「有償軍事援助」(FMS)と呼ばれる自衛隊装備のアメリカ依存が進む。売りつけておいて軍事援助とはよく言ったものだが、FMSは来年度7031億円。政権が発足した2012年(1380億円)の5倍。
 高額兵器は分割払いになる。契約すると将来の予算が約束される。教育や社会福祉の予算を圧迫するだけない。日本の防衛産業に回っていた予算を食いつぶしている。軍と結びつく米軍事産業を「独り勝ち」にさせるのはアメリカの戦略だ。やがて日本は、兵器を米国の有償軍事援助に頼るようになるだろう。

連携さらに深化
 9日、日本記者クラブで講演した在日米軍司令官ジェリー・マルティネス中将は「在日米軍5万4000人は平時の駐留で世界最大だ」と胸を張り「米軍と自衛隊の連携は一段と深化している」と同盟強化を讃えた。
 中期防衛計画は「日米防衛協力を一層強化」を謳い、「在日米軍の駐留をより円滑かつ効果的にするとの観点から、在日米軍駐留経費を安定的に確保する」としている。
 世界にも例がない大勢の軍人が日本にいるのも政府が駐留経費を負担しているからだ。国防予算を削らなければならない米軍にとって日本は有難い存在だ。その結果、沖縄に基地が集中し、首都圏の空は「横田空域」に覆われ、民間機は飛べない。占領時代を引きずる米軍の特権は日米地位協定によって認められている。地位協定の改定を問われると司令官は「変えないことはないが、今はそのタイミングではない。日米合同委員会で問題は解決している」とはねつけた。
 次の局面は共同運用だ。「幅広い分野における各種の協力や協議を一層充実させるとともに、在日米軍の駐留をより円滑かつ効果的にするための取組等を積極的に推進する」(中期防衛計画)。米軍と自衛隊の基地を相互に乗り入れ、共同訓練、演習などを一緒に行う。共同と言っても教えるのは米軍だろう。装備や武器の扱いも作戦も米軍主導だ。自衛隊は米軍の下請けになる。
 司令官がいう日米連携とは、日本がアメリカの軍事システムに組み込まれ、自衛隊員(ヒト)、装備(モノ)、税金(カネ)を差し出すことだ。
 安保法制を変え自衛隊は海外に出られる。国際紛争を武力で解決する国に平和憲法を掲げる日本が付き従う。それが連携の実態だろう。
 自衛隊を9条に書き込む憲法改正は、その協力体制を憲法に銘記することに他ならない。

山田厚史(朝日新聞記者OB)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
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2019年01月26日

【リアル北朝鮮】 「新年の辞」で経済単語38回も 斬新な発表に驚き

 1月1日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、恒例の「新年の辞」を発表した。YouTubeで発表の動画を見ながら、驚いた。こんな感じだ。

 新年午前12時の時報と同時に、朝鮮労働党中央庁舎が映し出される。カメラが建物の内部に入ると、深々とお辞儀をする男性。執事と言われる金昌善氏だ。間もなく金委員長が姿を現し、歩き始める。その後ろを、妹の金与正氏、側近の趙甬元氏、先ほどの金昌善氏が付き従う。

 場面は切り替わり、祖父の金日成氏、父の金正日氏の大きな肖像画などが背後に飾られた執務室と思しき部屋で、金委員長はソファに座り、「新年の辞」を発表した。

 斬新な発表の仕方もさることながら、その内容も例年とは異なっていた。経済問題が大半を占めたのだ。昨年の21回に比べ、「経済」という単語は38回も使われた。逆に防衛分野の言及はほとんどなかった。金委員長自ら、経済建設に全力を尽くす決意を披露したわけだ。

 昨年4月に開かれた朝鮮労働党中央委員会第7期第3回全体会議で、金委員長は核開発と経済建設を同時に推し進める並進路線の勝利を宣言し、経済建設に集中すると語った。自らの核開発の目標は達成できたから、今後は経済建設中心路線でいくというものだった。実際、北朝鮮は17年9月を最後に、核実験を封印した。豊渓里の核実験場も爆破した。

 16年5月の朝鮮労働党第7回大会で金委員長は「国家経済発展5カ年戦略」を提示したが、同戦略は来年が最終年だ。金委員長としては、どうしたって経済問題を解決させなければならない。

 金委員長は7日から10日まで、中国を訪問した。経済技術開発区を視察したという話も伝わってきている。

 新年にあたり自立経済を強調した金委員長だが、改革・開放路線を進めるしか解決の道がないことは十分に分かっているはずだ。中国の経験から学ぼうとしているかもしれない。

文聖姫(ジャーナリスト、博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
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2019年01月07日

【内政】 内乱予備罪で安倍首相を告発 最高検「返戻」に「補充書」で対抗 闘い続ける平野元参院議員=編集部

安倍晋三政権はこの5年半を超す過程で、戦後日本の歩みを支えた現行憲法を踏みにじる行為を次々と繰り返してきた。そして来年には、緊急事態条項を含む条文改憲に踏み込む姿勢を一段と鮮明にしている。こうした日本の民主主義の国家的危機に今年9月7日、安倍首相を内乱予備罪で告発する注目すべき告発状が最高検に提出された。

安倍政治の手法問う

告発は@平成26年7月1日の「集団的自衛権の行使を容認する閣議決定」A平成29年6月22日に野党が提出した「臨時国会召集要求」を約3ヶ月間も拒否。同年9月28日召集した衆院第194回国会臨時会を審議なしの本会議開催120秒解散行為B平成30年3月2日付朝日新聞報道を契機に表面化した森友国有地売却を巡る財務省決裁公文書改竄への対応の「不作為」行為が柱。これらについて告発は、@憲法統治の基本秩序壊乱を目的とした破憲閣議決定A憲法53条違反行為の国会召集拒否と審議なし解散B改竄事件への対応の不作為行為自体が国の統治機構の破壊と憲法統治の基本秩序を混乱、懐乱する現実の準備行為だと、厳しく指弾した。

大手メディアは黙殺

告発者は元参議院議員の平野貞夫氏と弁護士の山口紀洋氏。平野氏は長く衆議院事務局に勤め、平成7年の刑法改正には法務委員として関わった国会運営、国会法の生き字引。山口氏は45年に渡り水俣病裁判に取り組む経歴の持ち主。告発状提出時には記者会見もあったが、ほとんどの大手メディアは「見ざる聞かざる言わざる」を決め込んだ。そして最高検は「具体的犯罪事実が判然としていない」と、10月10日付で「返戻(ルビ=へん・れい)」を通知し、「受理したくない」姿勢を示した。

だが、両氏は「本件は首相の『憲法破壊』という国家の最重大事件。『返戻』は国民の告発権の侵害で検察の職務義務違反」として、「告発理由補充書」を提出した。闘いは新たな局面に入りさらに続く。

 ちなみに9月7日付告発状には第2次安倍政権成立以後の「破憲犯罪容疑3件」と、報道などで公知の63項目の具体的犯罪事実が証拠として提出されている。「判然としない部分」があるなら、それを明示すべきは検察側だ。

 今年8月1日付東京新聞朝刊は、大島理森・衆議院議長が「民主主義の危機。数々の不祥事に安倍政権は原因を明らかにし、改善策を」と異例の「所感」を表明したことを報じた。

中江兆民の「民主の主の字を解剖すれば、王の頭に釘を打つ」を引くまでもない。主権者である我々が問われている。

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
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2019年01月04日

【リアル北朝鮮】 米、金委員長の側近3人を制裁へ 人権問題に絡めて=文聖姫 

「表では両国間の敵対と対決の歴史に終止符を打とうと確約し、裏では対話の相手の尊厳と体制をこき下ろし制裁圧力策動に狂奔する米国の二重基準」

労働新聞2018年12月11日付論評は、米政府が「人身売買被害者保護法」に従った対北朝鮮制裁を続けることを決定(同年11月29日)したことに反発し、こう指摘した。

労働新聞が論評を掲載した前日の10日、米財務省は北朝鮮の人権蹂躙に責任があるとして、3人の北朝鮮幹部を制裁対象とした。崔龍海朝鮮労働党副委員長兼組織指導部長、鄭京沢国家保衛相、朴光浩朝鮮労働党副委員長兼宣伝扇動部長の3人。  

いずれも金正恩朝鮮労働党委員長の側近たちだ。特に崔副委員長は、金永南最高人民会議常任委員会委員長に継ぐナンバー3だが、実質的には金委員長の右腕とされる。

 また、崔副委員長が部長を兼務する組織指導部は、朝鮮労働党内において組織生活指導を担当し、朴副委員長が部長を兼務する宣伝扇動部は思想生活指導を担当する。

この両部署が、幹部を含めた党員の生活全般を統制している。組織指導部は党員の検閲も担当するといわれる。鄭氏が大臣を務める国家保衛省は秘密警察≠ニされ、スパイや反体制派を摘発する部署だ。つまり制裁対象になった3人が長を務める部署は、北朝鮮の人々を統制・監視する機関という共通点がある。

 今回の米財務省の措置に対し中国の陸慷外交部報道官は11日のブリーフィングで、「情勢を緩和するのに助けとなる事をすべきで、むしろ相反する事をしてはいけない」と米側を牽制した。膠着状態に陥っている米朝関係をさらに悪化させることへの懸念を示したものといえる。

 北朝鮮からは12日現在、反応は示されていないが、側近中の側近を制裁対象にされた金委員長が黙っているとは考えにくい。

文聖姫(ジャーナリスト、博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
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2018年12月31日

【国際情勢】 元徴用工の痛みを無視 日本報道 韓国側非難に終始=竹内康人

 2018年10月末、韓国大法院(最高裁)は、強制動員を不法な植民地支配と侵略戦争による反人道的不法行為とし、日本企業に対する強制動員被害者の慰謝料請求権を認定し、新日鉄住金に賠償を命じた。11月に入り、三菱重工業に対しても同様な判決を出した。
「強制動員慰謝料請求権」が確定したのである。それは戦争被害者の30年に及ぶ尊厳の回復をめざす運動の成果である。まさに歴史的、画期的な判決だ。

日本政府「解決済み」
 これに対し、安倍晋三首相は、日韓請求権協定により完全かつ最終的に解決している、国際法に照らせばあり得ない判断、徴用工ではなく旧朝鮮半島出身労働者の問題などとし、韓国政府を批判した。
 それを受け、メディアも「韓国は法治国家なのか」、「ボールは韓国にある」などと宣伝した。強制動員被害の実態を示すことなく、韓国側を批判する記事が多い。
 しかし問われているのは、日本の植民地責任である。
 
 日韓条約の交渉で、日本政府は韓国併合を合法とし、その立場を変えることなく日韓請求権協定を結び、賠償ではなく、経済協力金を出すとした。
 日本政府はいまも、植民地支配を合法とし、その下での動員も合法とする。そのうえで、請求権協定で解決済みと宣伝し、戦時の強制労働も認めようとしない。その責任をとろうとしないのである。
 このような植民地支配を不法と認めない対応が、逆に今回の韓国の大法院判決をもたらしたとみることができる。

 大法院は、日韓請求権協定で扱われたのは民事的な債権・債務関係であり、不法な強制動員への慰謝料請求権は適用対象外としたのである。
 このような判断は論理上、あり得るものであり、請求権協定に反する判断でもない。
 戦時に日本は総力戦をすすめ、朝鮮人の名前まで奪うという皇民化政策をすすめた。
 国家総動員態勢により、朝鮮からも資源を収奪し、朝鮮から日本へと約80万人を労務動員した。また、軍人や軍属で37万人余りを動員した。
 それは甘言や暴力などの強制力なしにはできないものだった。独立を語る者は治安維持法違反とみなされ、処罰された。
 日本の朝鮮統治を合法とすることは、三・一独立運動を不法とみなすことになる。それは三・一独立運動を国家形成の起点とする韓国政府を否定することにもなる。
 植民地合法論では、日韓の友好関係は形成しえないのである。

敗者をすり替える
 NHKは10月30日の「元徴用判決の衝撃」で、痛手を被ったのは被告企業ではなく、むしろ韓国政府だともいえるのでは、と解説した。判決に従えば、際限のない賠償責任を負わされるとし、問題が蒸し返されたとする側に立った。
 そして、企業は日本の裁判所が認めない限り、日本国内で賠償に応じる必要はない。元徴用工は韓国政府による救済措置に不満を持っている。韓国政府には被害者を救済する責任があると、結論づけた。
 NHKは、安倍政権の主張に同調し、韓国の判決の歴史的意義を明示することなく、敗者をすり替えたのである。

 朝日新聞の10月31日のソウル発の記事には、司法の命によって請求権協定が破壊され、日韓関係が破綻に近い打撃を受けかねないと記されていた。
 だが、今回の判決で破綻するのは、権力の側の論理だ。植民地合法論の下での経済協力金では、解決されないものがあるとされ、該当企業は賠償を命じられたのである。
 記事は権力の視座に立つのではなく、被害者の痛みに共感するものであってほしい。
日本の外務省も、2018年11月14日の衆議院の質疑で、請求権協定では、個人請求権は消滅せず、この協定に慰謝料請求権は含まれないことを認めた。
 しかし、メディアはこれを大きく報じなかった。
 安倍政権は、外務省が認めたように、慰謝料請求権については請求権協定では解決されていないという見地に立ち、問題を整理すべきである。

新たな合意形成を
 大法院判決により、強制動員慰謝料請求権は確定した。これを基礎に日韓両政府は、65年協定を克服する新たな日韓の合意形成に向かうべきである。
 植民地責任を明らかにし、植民地主義を克服する動きは、国際的潮流となった。被害者の目線に立ち、強制動員被害の包括的解決に向けて基金の設立など日本政府は改め知恵を絞るべきだ。
 強制動員について、その強制性を示す証言や資料は数多い。ジャーナリストはそのような証言や資料をぜひ紹介してほしい。そのペンの力は、未来を構想する共同性を導く。

竹内康人

たけうち・やすと
1957年生まれ、近代史研究、強制動員真相究明ネットワーク会員。著書に「調査・朝鮮人強制労働@〜C」「明治日本の産業革命遺産・強制労働Q&A」など。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
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2018年12月29日

【内政】 世界に逆行 民間任せ 外資参入 水道料金高騰へ 市民をないがしろ「改正法」=橋詰雅博

 改正水道法が成立した。これで水道事業の運営権を自治体から企業が買い取ることができる。この「コンセッション方式」は1900年ごろから世界各国に広がったが、2000年以降は水道事業を再び公営化する都市が急増している。水道料金の高騰や水質悪化などが原因だ。世界が再公営化に向かっているのに、日本はそれに逆行する形だ。民営化でどうなるのか。全国の水道職員らでつくる全日本水道労働組合の辻谷貴文書記次長(45)に聞いた。

――水道法を政府が16年ぶりに改正したのはなぜですか。
 人口減による給水収益の減少、老朽化した水道管更新費用の増大、水道職員の不足などが背景にあります。三重苦≠ェ長く続いてきたから水道事業に企業を参入させてしのごうというわけです。その手段として導入する「コンセッション方式」は、自治体には管理監督責任が残りますが、運営権はそれを買った企業に移り、水道料金は直接企業が受け取ります。契約期間は20年以上と長期にわたり、業務のやり方は企業にまかされます。

急増する再公営化
 ――ところが欧州などでは民営化の失敗が相次ぎ、水道事業は再公営化が潮流になっています。
 オランダのNGOトランスナショナル研究所によると、2000年から16年で、世界33カ国の267都市で、水道事業が再び公営化されています。
 例えばパリ市。水メジャー≠ニ呼ばれるスエズとヴェオリアの2つの多国籍企業が、85年から09年までの25年間、水道事業を運営してきました。この間、不透明な会計による利益隠しや必要な再投資を怠るなど不祥事が発覚。しかも水道料金は25年間で3・5倍にもなりました。料金が大幅アップしたのは株主配当や役員報酬、借入金の高い利子支払いのためです。契約期間が終了した後、高騰する水道料金が主な理由で、10年に再公営化に。翌11年には株主配当などが不要になったので、料金を8%値下げしました。
 ドイツのベルリン市も14年に再公営化しましたが、企業側から運営権を買い戻すため13億ユーロ(約1671億円)も企業側に支払いました。今年の7月に水道事業民営化の先進国・イギリスを訪ねましたが、民営化の時の「料金が下がる、水質がよくなる、サービスもよくなる」という約束が破られたと市民の怒りはおさまりません。労働党は「水道再公営化」の公約を掲げ、国民の7割が支持したと表明しました。

 ――欧州で商売がしづらくなった水メジャーなどは、アジアにターゲットを絞っていますね。
 スエズとヴェオリアは12年ごろからタイやシンガポール、フィリッピンなどアジア各国に進出しています。スエズはマカオ、ヴェオリアは日本にそれぞれ拠点を持っています。ヴェオリア日本法人などは浜松市の下水道事業の20年間運営権を25億円で手に入れました。

ノウハウ持つ外資
 改正水道法の成立で、水メジャーはいよいよ日本の水道事業市場に参入する可能性は高いです。浜松市の水道事業への参入に意欲を示しています。国内の水事業関連企業は水道事業運営のノウハウはありません。外資に頼るしかなく、水メジャーなどと組んで運営に乗り出すかもしれません。いずれにしても外資が主導権を握ることになります。

 ――日本でも民営化されたら、欧州のような水道料金の高騰などが起り得るのでしょうか。
 運営するのは企業ですから、株主配当や役員報酬、借入金の利子払いなどが生じます。これらの資金をねん出するには利益を上げる、施設のコストの削減が考えられます。となると水道料金の値上げ、コスト削減では例えば品質は落ちるが、価格が安い水道管を使うケースが出てくるかも。料金を引き上げたうえに仕事の手抜きで、施設の安全性は心もとないという状況に陥りかねません。
 また、地震や豪雨などに襲われて水道施設が壊れた場合、災害復旧の最終的な責任は管理者の自治体が負います。コストを切りつめたい企業は、責任がないなら災害に備えた投資をしぶりますので、災害時に被害がより大きくなる恐れがあります。

大都市進出を狙う
 ――企業が狙いそうな都市は。
 事業規模が大きくないと、儲かりませんから人口50万以上の都市が進出対象でしょう。大都市の東京都や大阪市を本命視≠オているはずです。大阪市は運営権の売却額を4000億円と試算しています。

 ――宮城県を始めいくつかの自治体は導入に前向きですが、市民はどうすればいいですか。
 運営権を企業に売り渡し、途中で問題が起きた場合、再公営化するには巨額な違約金の支払いが必要です。ベルリン市のケースは、その見本です。民営化に流されず、公営維持を訴え続け、方策を考えるべきです。

聞き手 橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
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2018年12月28日

【リレー時評】ダイオキシンまみれの政治家は浄化するしかない=中村梧郎

 浦和駅東口から5分ほどの所に「片山さつき」の看板はあった。国会で「著書広告だ」とゴマ化そうとしたが、道から見えるのは大書された彼女の名前ばかり。いつの間にか撤去された。
 週刊新潮11月29日号は「片山さつきからダイオキシン」を特集した。産廃業者との汚れた関係を暴露したもの。静岡県御前崎市で産廃処分場を口利き誘致した話だ。業者にパー券を買わせたり、百万円の献金を受けたりもしている。市は四億円を産廃業者に出すのだという。
 前号では彼女の後援会「山桜会」の中村望会長が仙台の竹の内産廃≠乗っとったこと、「そこでは違法な投棄が繰り返され、放置された焼却炉からはダイオキシンが検出される有り様」と報じていた。

 廃棄物処分場の認可に政治家が関わるケースが頻発している。露骨なのは梶原拓・岐阜県知事時代のスキャンダルだ。御嵩町に処分場を作る業者と組む知事に対して町民の抗議が拡がった。NHKの解説委員だった柳川喜郎氏が住民に推されて御嵩町長に当選、公約は「ダイオキシン汚染の処分場は許さない」であった。
 町長は知事が進める認可に楔を打ち込みはじめた。しばらくして、柳川町長を二人の暴漢が襲撃した。頭蓋骨骨折の重傷だったが、県警は非常線を張らず、犯人を取り逃がす。産廃業者による町長宅の盗聴も発覚したが業者への捜索はしない(御嵩町史・通史編)。産廃がらみの殺人未遂だと報じられたものの、2011年犯人不明のまま事件は時効となった。

 廃棄物処理は不法投棄をすればボロ儲けとなる。その金は許認可権を持つ権力者に渡りやすい。片山大臣もオコボレを期待したのであろう。
ダイオキシン問題をメディアがあまり扱わなくなってから十数年が経つ。環境省は産業界の意向に従い、ダイオキシンを含む環境ホルモンリストを2004年に封じた。時流に乗りたい論者らも業界におもねって「ダイオキシンはメディアのカラ騒ぎ」といった雑文を撒き散らした。
 ダイオキシンは無害と言わんばかりのこの主張に自信があるのなら、京都で開催される「2019ダイオキシン国際学会」で発言したら良い。世界を前に愚かしさが際立つはずだ。

 ベトナムでは元米軍ダナン基地のダイオキシン汚染が発覚していた。住民の癌や異常出産も生じた。ベトナム政府は米国を糾弾、米議会は予算を組んで2012年に無害化に着手、18年に完了した。引き続きビエンホア基地の浄化も始めた。
 13年には日本・嘉手納基地返還跡地のサッカー場からダウケミカルのドラム缶が出て、枯葉剤のダイオキシンを検出した。しかし日本政府は米国に抗議をしない。住民の健康調査もやらない。
 ダイオキシンを出す業者や米国とつるむ与党政治家たち。ならば政権丸ごと浄化するしかない。
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2018年12月27日

【国内政治情勢】 森友スクープ記者が寄稿 自殺職員の動機解明に全力 「国と大阪府の事件だ」=相澤冬樹

12月20日号週刊文春に手記を発表した元NHK大阪報道部の相澤冬樹さんに(56=現大阪日日新聞記者)森友学園疑惑などについて、寄稿してもらいました。


 森友事件は森友学園の事件ではない。国と大阪府の事件である。こう言うと違和感を持つ人もいるかもしれないが、おかしなことをしたのは学園よりむしろ国と大阪府だ。まずそこから語ろう。

 発端は、森友学園の籠池泰典理事長(当時)が、小学校を作りたいと思ったことだ。学園は幼稚園を運営していて、そこで教育勅語を園児に暗唱させるなど、自らの思想信条に基づいた独自の教育を行っていた。その教育を賛美する政治家も数多いた。しかし園児たちは卒園すると多くは公立の小学校に入る。そこで園児たちの多くは森友学園で学んだことを忘れていく。籠池氏はそれが残念だった。そこで、園児たちの進学先として小学校の設立を目指し、それに賛同する保護者たちも多かった。これはおかしな話ではない。思想信条の自由は日本国憲法で保障されているし、学校を設立したいと考えるのも自由だ。求められる規準を満たしているならば。

 ところが審査にあたる大阪府の私立学校審議会は、学校が資産や教員確保などの面で規準を満たしていないと考え、認可保留の判断を出した。妥当な判断だ。これに対し事務局を務める大阪府私学課が、1カ月後に臨時の審議会を開くよう求め、1カ月後に条件付きで「認可適当」の判断を出してもらったのである。なぜ行政がそこまでしてこの小学校を認可しようとしたのか?これが第1の謎だ。

 さらには国有地の問題だ。小学校を建てるには土地がいる。森友学園は豊中市内の国有地を入手したいと考えた。売却交渉にあたるのは財務省近畿財務局だ。この土地はその前に大阪音楽大学が購入を望んだが、5億円から値を上げて数億円を提示しても財務局は売らなかった。ところが森友学園には地中のごみの撤去費用などを名目に鑑定価格から8億円余りも値引きして売ったのである。籠池氏が強引に値引きを迫ったと言う人もいるが、大阪人なら買い物にあたって「まけてや」と値引きを求めるのは普通のことだ。それに応じず適正価格で売るのが公務員だが、この件だけなぜ大幅に値引きして国有地を売ったのか?それが第2の謎だ。

 この2つの謎に、小学校の名誉校長が安倍昭恵首相夫人だという話が絡んで、政権の関与、安倍晋三首相自身の関与の有無が国会で議論されてきた。私にとって森友事件は、かつて世間を揺るがしたロッキード事件やリクルート事件に匹敵すると考え取材を進めてきた。

 近畿財務局は国有地の売却前、森友学園側に「いくらまでなら出せますか」と上限額を聞き出していた。学園側が求めたのではなく売る側の財務局が聞き出したのである。学園側は1億6000万円と答えている。これに対し財務局の担当者は「その範囲に収まるといいですね」とまで言っている。これは事実上「その範囲に収めます」という意味だろう。実際、売却額は1億3400万円で、まさに「その範囲に収まっている」のである。国民に損害を与えるような不当な値引きをした「背任行為」を強くうかがわせる話だ。私はこれを去年の7月26日に特ダネとして出した。

 ところがこれに東京の報道局長が激怒し、私の上司だった大阪の報道部長に電話をかけてきた。たまたまその時部長の前にいたので、電話口から「聞いてない」とか「なんで出したんだ」という怒声が聞こえてきた。電話を切った後、報道部長は「あなたの将来はないと思えと言われました」と苦笑いした。その瞬間、それは私のことだと感じた。実際、今年の人事異動で私は記者を外され非制作部門に移された。私は記者を続けるため、森友事件の取材を続けるためNHKを辞め、「何のしがらみもない」と社主が語る大阪日日新聞に移った。

 取材の最大のテーマは、すでに書いた2つの謎を解明し、背後に何があったのかを明らかにすることだ。しかし真相がそう簡単にわかるわけはない。引き続き粘り強く関係者への取材を続け、いつかは真相を解明して世に伝えたい。
 だが、それより先に解明せねばならない取材テーマがある。事件の渦中で自ら命を絶った近畿財務局の職員Aさんのことだ。彼は土地取引に深く関わった訳ではないが、その後の公文書改ざんに不本意にも巻き込まれ、苦悩の末に命を絶った。なぜ彼が追い込まれなければならなかったのか、その謎を解き明かさねば、Aさんは浮かばれまい。まずはここに力を注ぎたい。

 私はこのたび森友事件についての本を出した。題して「安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由(わけ)」事件の本質と、私の取材手法、そしてNHKでの報道の内情を書いている。
 作家の井上ひさしさんは「むずかしいことをやさしく やさしいことをふかく ふかいことをゆかいに ゆかいなことをまじめに そしてゆかいなことは、あくまでゆかいに」という言葉を残している。この本もその精神で書いたつもりだ。安倍政権を支持する方にこそぜひお読み頂きたいと思っている。
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2018年12月25日

【国内政治情勢】 辺野古埋め立ての県民投票 心配な協力拒否と投票率 玉城知事の具体策がカギ=福元大輔

 沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の移設に伴い、政府が約50`離れた同県名護市辺野古で進める埋め立て工事の賛否を問う県民投票が、来年2月24日に投開票される。地方自治法に基づく住民発議の住民投票が都道府県単位で実施されるのは、1996年沖縄での日米地位協定の見直しと米軍基地の整理・縮小の賛否を問う県民投票に次いで2例目で、沖縄の置かれた特殊事情が改めて浮かび上がる。

 辺野古埋め立て事業は2014年7月に着手、17年4月には埋め立て土砂投入に向け、沿岸部分を囲む護岸の建設が始まった。18年12月にはいよいよ土砂が投入されている。

若者がけん引役に

 この段階で若者を中心に18年5月からの2カ月間、手探りの活動で県民投票条例の直接請求に必要な数(有権者の50分の1)の4倍、9万2848筆の署名を集めた。1996年の日米合意以降、沖縄を分断してきた普天間返還問題、辺野古移設問題に決着をつけたい若者の熱意と県民の思いの強さを物語る。

 18年9月の知事選で辺野古反対を明言した玉城デニー氏が、政府・与党の全面支援を受けながら辺野古の賛否を示さなかった佐喜真淳氏に8万174票の大差で、過去13回の知事選で最多となる39万6632票を獲得した。それでも民意を顧みず、埋め立て工事を強行する政府に対し、県民投票はワンイシューでより明確な民意を突きつける意味合いが濃い。

 県議会では辺野古移設を推進する自民の県議らが「2択では県民感情をすくいきれない」と主張。「やむを得ない」「どちらでもない」を加えた4択を提案した。一方、「県の政策を決定づけるために、賛否の2択が望ましい」といった思いをくみ取り、玉城知事を支える県政与党の多数で条例案は可決した。

 条例が施行されても、投開票が円滑に実施されるか、分からない。それが都道府県単位の住民投票の難しさだ。投開票の事務は市町村が処理するが、県内11市のうち、保守系の市長や市議が県民投票に難色を示している。市議会で必要な予算案を否決、市長が事務を拒否する可能性が残っているのだ。県民投票に反対する意見書を複数の市議会が可決している。

 投開票の事務を拒否する市町村が出て、一部で投票できない事態になれば、県民投票の意義が薄れるほか、そういった動きがある中で全市町村で投票が実施されても、投票率の低下は免れない。多くの投票者が反対の民意を示したとしても投票率が低ければ、結果を軽視される懸念がある。

 政府が結果を尊重するきざしはこれっぽっちもなく、機運を盛り上げるのは難しい。

機運の醸成が必要

約480f、東京ドーム102個分の普天間飛行場だが、沖縄全体の米軍基地の2・5%にすぎない。それさえ、県内に移設しなければ返還できないのか、辺野古に新基地ができれば米軍の撤退は遠のき沖縄が未来永劫「基地の島」になるという指摘もある。極めて県全体の問題であり、県民投票で意思を表示するのはまっとうな手段だ。

 条例では「知事は県民投票の結果を尊重する」と定めている。では、尊重するとはどういうことか。知事が投開票の前に具体策を示すことで、賛成側を引き出し、機運を醸成する必要があるといった意見も出ている。

福元大輔(沖縄タイムス)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
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2018年12月20日

【国内情勢】 植村裁判・札幌訴訟 控訴へ 争点の「捏造」問わず 櫻井氏のズサンな取材を免責=中野広志

 元朝日新聞記者の植村隆氏がジャーナリスト櫻井よしこ氏と出版3社を名誉毀損で訴えた訴訟の判決言い渡しが、11月9日午後、札幌地裁であった。判決は植村氏の敗訴だった。植村氏の請求(謝罪広告の掲載と損害賠償の支払い)はすべて棄却された。植村氏と弁護団は判決直後の記者会見で「不当判決だ」と語り、控訴する方針を明らかにした。

身売り説に疑問符
 植村氏にとってはきびしく苦い判決となった。ただ、植村氏の名誉が毀損されたことまでが否定されたわけではない。判決は、櫻井氏の書いた記事は植村氏の「社会的評価を低下させた」とし、名誉を傷つけたことは認めた。さらに、櫻井氏が繰り返し主張してきた「人身売買説」(元韓国人慰安婦の金学順さんは継父によって人身売買され慰安婦にさせられた、という事実)については「真実であると認めることは困難である」と明確に判示した。櫻井氏の主張の最大のポイントである「人身売買説」に裁判所が疑問符を呈したのである。
 しかし、それでもなお、判決には大きな問題がある、と言いたい。とくに櫻井氏を免責にした理由である。判決は、名誉毀損だと認めた記述について、「真実だと信じるについて相当の理由がある」、つまり「真実相当性」が認められるとして、櫻井氏の責任を免じた。

「訂正」は櫻井氏側
 裁判例では、「真実相当性」が認められるには、「信頼できる合理的な資料」と「客観的な事情」が必要とされる。では、判決はどんな「資料」を重視したか。それは、櫻井氏が読んで引用したという韓国紙、月刊誌、金さんの訴状の3つである。しかし、裁判の過程では、櫻井氏の引用には間違いや恣意のあることが多数指摘された。つまり、櫻井氏の主張の根幹をなす資料の使い方は「合理的な」とはいいがたい。
「客観的な事情」とはなにか。櫻井氏の取材や調査の杜撰さは、本人尋問で決定的に明らかになった。櫻井氏は一部誤りを認め、櫻井氏の文章を掲載した産経新聞と月刊誌「WiLL」は訂正掲載に追い込まれた。櫻井氏には、取材を尽くし、資料を読み込む十分な時間がなかったわけではない。つまり、資料や関係者が現存せず、大急ぎで書かざるを得なかった、というような「客観的な事情」にも欠ける。

公平さ欠く論法
 ところが、判決には櫻井氏の読解力を「一般読者の普通の注意と読み方を基準として解釈しても不自然なものではない」と評価するくだりもある。櫻井氏はジャーナリストを自称する言論人であり、一般読者ではない。このような論法は、公平さを欠くと言わざるを得ない。
 櫻井氏の植村批判が杜撰な取材によって組み立てられていることは、2年半に及んだ審理で明らかになっている。しかし、皮肉なことに、判決も緻密さを欠く論法で櫻井氏を免責したのである。そして、最大の争点であった「植村記事捏造」が真実かどうかは不問にした。

差別と憎悪を拡大
 判決直後に出された弁護団声明は、「本日の判決は櫻井氏がジャーナリストであることを無視して、櫻井氏の取材方法とそれによる誤解を免責するものである」と指摘し、「これを敷衍すれば、言論に責任を負うべきジャーナリストと一般読者を同じ基準で判断することは、取材が杜撰であっても名誉毀損が免責されることになり、到底許されるものではない」と厳しく批判している。
 ジャーナリストが負うべき責任のハードルは下がった。これからは、杜撰な取材でも免責されるのだ! よもや、この判決をそのように誤読するするジャーナリストはいないだろう。しかし、ネット世界で日夜、差別と憎悪を拡大するメッセージを発し続ける人たちには、勇気と希望を与えただろう。
 判決直後の記者会見で植村氏は「悪夢のような判決です」と悔しさをにじませた。現実がいよいよ悪夢に近づいているということだろうか。

中町広志(元朝日新聞記者)

植村裁判とは=櫻井よしこ氏と西岡力氏(元東京基督教大教授)は、植村氏が朝日新聞記者だった1991年に書いた元韓国人慰安婦の被害体験の2本の記事を「捏造だ」と決めつけ、櫻井氏は四半世紀近く経った2014年4月頃から新聞、週刊誌、月刊誌、テレビ、ネット上で執拗な「名誉毀損」攻撃を繰り返した。そのため、右派勢力の間でくすぶっていた朝日新聞の慰安婦報道に対する批判が激化し、とくに植村氏個人が標的にされた。植村氏と家族は長期間、脅迫やいやがらせを受け、物心両面で大きな被害を受けた。植村氏が教授就任を予定していた大学や非常勤講師を務める大学にも契約解除などの圧力がかけられた。このようなバッシングの中で、植村氏は2015年1、2月に東京と札幌で起こした。東京訴訟の被告は西岡氏と文藝春秋、札幌は櫻井氏と新潮社、ダイヤモンド社、ワック。被告側は「植村記事は捏造」の主張は崩さず、バッシング被害との関連は否定した。東京訴訟は11月28日に結審し、2019年春までに判決が出る見通し。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年11月25日号
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2018年12月19日

【国内情勢】 安田純平さん解放で再噴出 安易な「自己責任論」に決別を=編集部

シリアで武装勢力に拘束された安田純平さんが10月25日、約3年4ヵ月ぶりに生還した。消息が途絶えた15年6月は同年1月のIS、後藤健二さん殺害から間もなく、安否が心配されていた。それだけに困難な状況に耐え抜き、生き延びた安田さんの無事を心から喜ぶ。

だが、日本では、14年前の2004年「イラク3邦人人質事件」で吹き荒れた「自己責任論」がまた噴出した。安田さんがこの事件直後にも拘束され、3日後に無事解放された経歴がことさら強調されるなど不毛な極論が飛び交った。「国が行くなと言っているのに行ったのだから自業自得。助けなど求めるな」「国に迷惑をかけるな」「身勝手に我々の税金を使うな」等々だ。

今年夏、ネット公開された拘束映像で「私の名前はウマルです。韓国人です」と不可解な安田さんの発言が流れると、今度は「安田は在日」「反日だ」とヘイトと結びついた反応も飛び出した。解放の前後には、「何度も捕まってる人間の救出に何億も出すのはおかしい」「身代金がテロリストの活動資金になり、今後、より多くの人命が危険にさらされる」「身代金目的の自作自演だ」説まで飛び交った。

しかし、こうした言説に根拠はなく、勝手な憶測と一方的な決めつけによるものでしかない。

「自己責任」は元々経済用語。その使い方を「身勝手だ」「政府に迷惑をかけたことを謝るのが先だ」と被害者の「自己責任」にすり替えたのは、04年の事件でイスラム過激派からの自衛隊撤退要求に窮した政治家だった。そして今、自己責任論は政治権力といびつに結びつき、貧困や過労死をはじめ社会的・政治的問題の公的議論を封じ込め、「気に入らない」相手を攻撃する魔法の杖と化している。それは極めて危うい。

安田さんは帰国後、日本記者クラブや日本外国特派員協会で記者会見し、自らの言葉で事実確認なしの「自己責任論」の空疎さを浮き彫りにした。

今回はあの産経新聞でさえ「危険を承知で現地に足を踏み入れたのだから自己責任であるとし、救出の必要性に疑問をはさむのは誤りである。理由の如何を問わず、国は自国民の安全や保護に責任を持つ」(10月25日付社説)との見解を示した。

安易な「自己責任論」と決別し、ジャーナリズムやジャーナリストの役割について議論が深まればと願う。

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年11月25日号
posted by JCJ at 11:06 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月08日

【沖縄リポート】 協議の一方で 工事を進める安倍政権の茶番=浦島悦子

 10月30日、石井啓一国交大臣は、沖縄防衛局が申し立てていた県の辺野古埋め立て承認撤回の執行停止を決定した。玉城デニー知事が「自作自演」と批判し、国民の権利救済のための法律である行政不服審査法の国家権力による悪用・濫用だと全国の行政法学者から抗議が渦巻く中での暴挙だ。

 11月3日にキャンプ・シュワブゲート前で行われた県民抗議集会には1000人余りが参加し、稲嶺進・オール沖縄会議共同代表は「恥知らずの政府を許すわけにいかない。しなやかに、したたかにたたかい抜こう」と檄を飛ばし、10月14日の豊見城市長選で初当選し翌週に就任を控えた山川仁氏は、「政府は県民を分断しようと躍起になっているが、自民党も含めてそれを望む県民はいない」と語った。

 政府は11月1日から工事再開を宣言。「撤回」によって撤去されていた大浦湾の立ち入り禁止区域を示すフロートの再設置作業を開始したものの、実際の工事には行き詰まっているのが実態だ。9月末に襲来した大型台風によって、埋め立て土砂の搬出港である本部町塩川地区の岸壁が破損し、使用できないことが判明。本部町は防衛局の使用申請を受理しなかった。修復には数カ月を要する見込み。  

10月県議会で、辺野古埋め立ての是非を問う県民投票条例が可決され、半年以内(4月末まで)に実施されることになった。1日も早く埋め立て土砂を投入し、県民投票前に「後戻りできない」状況を作りたい政府が、今後どんな手を使ってくるのか。土砂搬送を陸路に変えるためには県への変更申請・許可が必要となるため当面は、県の新たな許可を必要としない工事で外堀を埋めていくと思われる。15日には、3カ月半ぶりにゲートからの石材・資材搬入が行われ、機動隊による「ごぼう抜き」も再開された。「対話」による解決をめざすデニー知事の要請で「協議」には応じつつ、一方で工事を進めるという茶番を県民は冷やかに眺めている。

 デニー知事は11日、沖縄の民意を携えて中間選挙直後の「父の国」米国へと旅立った。ミニ・トランプが跋扈する米国にとっても、沖縄の民主主義・多様性、寛容の政治は希望となりうると思う。分断を越え、平和へ向けた新たな回路を期待したい。

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年11月25日号
posted by JCJ at 15:19 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月25日

【今週の風考計】11.25─ゴーン容疑者の私腹と官民「不正の構図」

◆日産ゴーン会長と懸けて、<除夜の鐘>と解く、その心はゴーンと鳴って、go went gone ─100億持ち逃げ、コンチクショウ! 今はない東京・武蔵村山・日産工場の近くで部品修理をしていた老人のつぶやきだ。

◆1999年、「コストカッター」と呼ばれたカルロス・ゴーンは、全従業員の14%・2万1千人の首切りと5つの工場閉鎖を強行。各地の企業城下町では、多くの人が転居や転職を余儀なくされ、商店街の衰退も進んだ。40年にわたって約968万台を生産してきた武藏村山工場も例外ではない。いまだに跡地の利用も思うように進まず、かつての面影はない。
◆さらに2008年のリーマン・ショックの際にも、派遣社員など2万人の人員削減・下請け企業の半減・発注コスト切り下げを行った。だが「V字回復の立役者」と絶賛され、20年に及んだワンマン支配の結果は、どうだったか。

◆「日産は自分たちの運命を自分たちで決められない会社にしてしまった。責任は私たち歴代経営陣にある」と釈明するが、ものづくりの現場を荒廃させた罪は極めて重い。ゴーンの会長職と代表権の解任を決めた臨時取締会の翌日の11月23日を、<いい日産の日>としゃれている場合ではない。
◆日産は、つい2カ月半前、イグニッションキーの不具合によるエンジン停止のおそれを理由に、16車種3万8千台のリコールを、国交省に届け出たばかりだ。この一年、検査不正や品質データの改ざんが続出した。三菱マテリアル、神戸製鋼所、日立化成、免振装置の油圧機器KYB、宇部興産などなど、「法律に違反しても品質には問題がない」と開き直るモラルの退廃は、とどまるところを知らない。

◆極めつけは会計検査院が「森友学園」への国有地売却を巡る問題で下した結論だ。なんと約8億円の売却価格値引きの根拠をめぐって、財務省が行った決裁文書改ざんについては、処分を行わないというのだから始末に負えない。安倍政権ぐるみで免罪する「不正の構図」は、一掃しなければならない。(2018/11/25)

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2018年11月16日

【リレー時評】福岡市が市民団体の贈呈本を拒む=白垣詔男(JCJ代表委員)

 福岡市の市民団体「引揚げ港・博多を考える集い」が出版した体験記を、福岡市教育委員会を通じて市内の全中学校に寄贈しようと申し入れたところ拒否された。理由は「旧ソ連兵や中国人の蔑称が使われているから」。
 同団体は今年6月に「あれから七十三年 十五人の戦後引揚体験記」を出版、若い人にも読んでほしいと福岡県内のすべての高校や大学、福岡市立図書館など約400カ所に寄贈したが同市内の全中学校69校への配布は拒否された。

 同団体の事務局長は「現在は使ってはいけない蔑称だが、時代背景を伝えるため引揚者が書いた体験記を原文のまま使用。注釈と解説などを付けている」としたうえで「当時、なぜこのような差別用語が使われていたのかを教えるのも教育ではないか」と主張したが、市教委は「生徒に用語などを説明しながら読む必要があり、そのまま(中学校の)図書室に置くのは好ましくないと判断した」と同団体の主張には耳を貸さなかった。

 博多港には敗戦後、中国大陸や朝鮮半島から約139万人が引き揚げてきた。長崎県の佐世保港に次ぐ日本最大級の引き揚げ港で、1991年、市民が「引揚げ港・博多を考える集い」をつくり、その歴史を語り継ぎ、引き揚げを通して悲惨な戦争を二度としないよう訴えてきた。同団体は記念碑を建てるよう福岡市に働き掛け、同市は96年、彫刻家、豊福知徳さんに依頼して博多港を望む場所に「那の津往還」と名の付く引き揚げ記 念碑を完成させた。
同団体はその後、同市に「引き揚げ記念館」を建設するよう申し入れてきたが市は難色を示し、ようやく2011年、市民福祉プラザの1階に「引き揚げ関連常設展示場」をつくり、市民が寄贈した約2600点のうち引き揚げの際使われた腕章やリュックサックなどを展示するようになったが周知が不十分で、展示場を知る人は少ない。

 また、別の市民団体が主催して毎年開いている「平和のための戦争展」についても市は「戦争法廃止、原発反対など戦争展の趣旨にそぐわない内容の主張が政治的だ」との理由で後援を拒否している。同市は「戦争と平和の問題」には後ろ向きと言わざるを得ない。
 「中国人への蔑称」は、九州大学生体解剖事件を題材に取った遠藤周作の名作「海と毒薬」には、何の注釈もないまま使われているが、中学校の図書室で読むことができるようだ。
 そうしたことから、市民団体が発行した引き揚げ体験記を同市が贈呈受け取りを拒否した根底には「平和と民主主義」の実現に消極的で日本の近現代史を大事にしない安倍政権に通底するものを感じてならない。
 なお、福岡市の現市長は自民党福岡県連の重鎮、麻生太郎副首相・財務相の大きな支援を受けているというか、麻生さんの言いなりの市政運営をしているという指摘が多い。
posted by JCJ at 10:09 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月13日

《月間マスコミ評・新聞》沖縄の問いに社説はどう答えるか=六光路 弦

 沖縄県知事選は9月30日の投開票の結果、急逝した翁長雄志前知事の後を継いで、名護市辺野古への新基地建設阻止を掲げた玉城デニー氏が、安倍晋三政権が支援した佐喜真淳氏に8万票余の差をつけ圧勝した。
 
 仮に日米同盟を是とするなら、米軍基地の恩恵を受けるのは日本全体なのに、なぜ沖縄に過剰な基地負担を押し付けるのか―。沖縄の民意が突き付けた問いを、本土に住む日本人が正面から受け止める番だろう。
 
 沖縄の基地集中を巡っては、従来から地方紙の多くは安倍政権の強圧的な姿勢に批判的だった。知事選後は、さらに踏み込んで、日本本土に住む自分たちの問題として受け止めようとする地方紙の社説がいくつも目に止まった。
 
 一例を挙げれば西日本新聞は「『沖縄が反対している』と遠くから眺めるのではなく『じゃあ私たちはどうする』と踏み込み考えることが、沖縄と本土の溝を埋め、基地問題解決を促す力となるはずだ」と強調。中国新聞は「本土の私たちが傍観者にならず、沖縄とともに声を上げる姿勢が、政府のかたくなな態度を変える潮流になるはずだ」と訴えた。
 
 一方、読売新聞、産経新聞、北國新聞は、辺野古新基地建設は進めるべきだと主張した。驚いたのは産経だ。玉城氏に対し「移設を妨げる県の従来方針を改め、国との関係を正常化し、基地負担の軽減を進めていく現実的な立場をとってもらいたい」と、直截的な表現で事実上の公約撤回を要求した。読売も表現は遠まわしながら同様のトーン。それぞれ選挙翌日の社説だ。
選挙を通じて示された民意を尊重し、その代表として選ばれた首長に敬意を払うのは当然のことだ。産経や読売の主張は民主主義の否定にも等しい。このような主張を続けるのなら「新聞」を名乗ってはいけない。
 
 意外なのは、東日本大震災の被災地の地元紙、河北新報だ。翁長前知事の国との法廷闘争を時間の浪費と結論づけ「辺野古移設に反対なら反対として、実現可能な具体的な対案をある程度は提示するのは知事に求められた責任ではなかったか」と書いた。沖縄の基地問題も被災地の復興も、地域の自己決定権が問われているはず。被災地の読者の支持を得られただろうか。 

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年10月25日号   
posted by JCJ at 16:30 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月01日

【リアル北朝鮮】 朝中露が接近 制裁緩和へ 非核化の速度と幅に応じて=文聖姫

 北朝鮮と中国、ロシアの接近が注目を浴びている。

 11日、北朝鮮の朝鮮中央通信はモスクワで9日に開かれた朝中露外務次官級協議について伝え、おおむね次のように指摘した。

・3者(朝中露)協議では、朝鮮半島の平和と安定のために傾けている北朝鮮の努力を評価。

・朝鮮半島情勢の肯定的な流れが持続するよう、相応の措置を取ることが重要だという点で見解が一致。

・朝鮮半島に恒久的で強固な平和体制を構築し、相互の関心事となるすべての問題を合理的に解決するための意思疎通と協力を引き続き強化することで合意。

 そして、3者協議では共同報道文が発表されたと報じた。

 朝鮮中央通信では、共同報道文の詳細な内容は伝えられていないが、ロシア外務省によれば、北朝鮮が実施した核実験の廃棄などの動きを踏まえ、「北朝鮮への国連制裁は適時、見直す必要がある」と指摘。「一方的な制裁に反対する共通の立場を確認した」とされる(朝日新聞2018年10月11日付)。

 6月12日に史上初の米朝首脳会談がシンガポールで開かれた後も、国連の対北朝鮮制裁措置は解除されていない。アメリカは、北朝鮮の非核化が実現しない限り、制裁を解除させない方針だ。しかし、中露は北朝鮮の対話路線を支持し制裁の緩和を求めてきた。

 今回の共同報道文でも、「3者は朝鮮民主主義人民共和国が意義ある実践的な非核化措置を取ったことに注目し、適期に対朝鮮制裁措置の調節過程を稼働させるべき必要性があるという見解で一致した」(聯合ニュース18年10月11日)との文言がある。10月11日発の聯合ニュースは「調節過程」という言葉に注目。専門家の言葉を借りて、北朝鮮の非核化の速度と幅に応じて制裁緩和の速度と幅も調節すべきだという3カ国の協力的立場を反映させたものだと分析した。

文聖姫(ジャーナリスト、博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年10月25日号
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2018年10月27日

【政治情勢】 保革超え玉城知事生む 県民のアイデンティティー結集 辺野古ノー=次呂久勲

 「うちなーんちゅ、うしぇーてー、ないびらんどー!」その瞬間、この言葉が頭の中でこだました。

当確こんなに早く
 9月30日午後8時過ぎ、県知事選の投票を締め切った瞬間、玉城デニー氏の当確が速報された。当初、接戦が予想され、当落判明も午前0時ぐらいかと言われていた。
 当日、豊見城市の開票所で、票読みを担当していた私のもとへ、妹からの一通のメール「デニーさん当確出たね」。現場では当然ながら、まだ開票作業すら始まっていない。はたして、本当だろうか?こんなに早く当確出して大丈夫なのか?そうした心配も沸き上がったが、一人の県民として、素直に喜んだのと同時に、冒頭のあの言葉がよみがえったのだった。

 4年前の沖縄県知事選挙において、公明党沖縄県本部は、党本部との見解と異なり、辺野古新基地建設反対を表明し、自主投票の判断を下していた。しかしながら、今回は自民党とともに、佐喜眞淳氏に推薦を出し、全力を挙げて選挙活動を展開した。さらには、その知事選挙に出馬し、7万票近くも獲得した日本維新の会の下地幹郎衆院議員も支援に加わり、維新の会としても、佐喜眞氏を推薦していた。このことからみても、いくら4年前の選挙では、10万票もの大差で、翁長雄志氏が勝利したとはいえ、今回の選挙戦スタート時点で、すでに数万票の差がついていたことは想像に難くない。

 さらに8カ月前の名護市長選において、圧倒的有利とされ、事前の世論調査でもリードしていた稲嶺進氏が、3千票余りもの大差で、渡久地武豊氏に敗れたというトラウマも潜んでいた。
 それが故に、今回の8万票もの大差がつくとは予想だにせず、8時過ぎの当確に至っては驚きを隠せなかった。

肌感覚でわかるよ
 後日、真っ先に当確を出した放送局の記者に話を聞くと、「もう、デニーさんでしょ。取材していると肌感覚でわかるよ」と。さらに、投票日3日前に期日前投票を済ませた友人に話を聞くと、「(期日前投票所となった商業施設で)並んでる人みんな、デニーさんに投票したはずよ」と言うので、その理由を聞くと「並んでる人たちの表情が、あの(翁長さんを偲ぶ)県民大会に参加していたひとたちと同じだった。あの時の雰囲気そのままだった」と答えたのだ。
 政権与党は、2月の名護市長選の勝利以降、主要首長選で勝利を重ね、この県知事選を最大の決戦と位置付けていた。だからこそ、真っ先に立候補を表明した安里繁信氏との候補者一本化に成功し、自公維の推薦も取り付け、それこそ、名護市長選時と同じ枠組みを構築したのだった。
 そうした状況の中での、翁長前知事の死去。これは両陣営にとって、大きな誤算となったと言えよう。佐喜眞陣営にしてみれば、県内に漂う翁長氏への弔いムード、それは、8月11日に開催された県民大会(主催者発表7万人が参加)を見ても明らかだった。逆に、オール沖縄陣営に至っては、今回も翁長氏を擁立する意向だっただけに、後任の候補者を選定しなければいけない。超短期決戦の中で、お互いの陣営共に、頭を抱える中で、急遽浮上したのが、玉城デニー氏の名前だった。

イデオロギーより
 振り返ってみると、故翁長前知事は、以前からこの状況を頭に描いていたのではないだろうか。「イデオロギーよりもアイデンティティー」四年前の県知事選において、翁長氏が提唱した。それを強く感じさせるきっかけとなったのは、2013年11月25日、辺野古移設反対を掲げて当選した自民党国会議員が、公約を撤回し辺野古容認を表明した、その瞬間ではないだろうか。我々県民にとって深く刻まれている、あの、石破氏の後方で無表情のまま座っている5人の県選出の自民党国会議員の姿。沖縄県民の民意を、それこそアイデンティティーを踏みにじられた出来事であった。その後年末には、当時の仲井真弘多前県知事も辺野古埋め立てを承認、県民の怒りは沸点に達した。そして誕生したのが、翁長県知事なのである。
 沖縄県民は、ぶれずに、そのアイデンティティーを大事に、選挙において、ことごとく民意を示してきた。今回の県知事選においても、様々なデマや誹謗中傷、圧力等がはびこる中で、沖縄県民としてのアイデンティティーを老若男女問わず、決して見失わなかった結果が、この8万票もの圧勝ではないだろうか。
 「オール沖縄」は、野党共闘や革新統一といった言葉では括ることはできない。それこそ、保革を越えた、沖縄県民のアイデンティティー誇り、民意の結集なのだ。
 名護市長選後、菅義偉官房長官はこう述べた。「選挙は結果が全てです」と。沖縄県民は、結果を出した、いや、出し続けてきた。今度は、政府がこの民意を尊重し応えるべきだ。

「うちなーんちゅ、うしぇーてー、ないびらんどー!」

次呂久勲(JCJ沖縄世話人)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年10月25日号
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2018年09月27日

《ワールドウォッチ》アフリカが米中覇権争いの草刈り場=伊藤力司

 去る9月3、4の両日、北京の人民大会堂に53か国のアフリカ首脳を集めて第7回「中国アフリカ協力フォーラム」が開かれた。習近平中国国家主席は開会スピーチで、中国がアフリカ向けに600憶ドル(6兆6千億円)の資金援助を行うと発表して喝さいを浴びた。
 このフォーラムは江沢民時代の2000年に発足、以後3年ごとに北京とアフリカで交互に開かれ、猛スピードで経済大国化した中国のアフリカ進出に大きな役割を果たしてきた。今回は台湾と国交のある旧スワジランドを除く、アフリカ全53か国の首脳が出席した。
 言うまでもなく、国連加盟国193カ国中54か国を占めるアフリカは、地域としては最大グループであり、「アフリカの年」と言われた1960年にブラック・アフリカ諸国が独立して一大グループとなった。

 1960年と言えば日本では安保闘争の年。日米安保に反対する日本の労学市民による巨大な安保反対闘争で日米新安保改約は批准されたものの岸首内閣は退陣。後継の池田内閣の高度経済成長戦略に国民は騙され、日本の対米従属関係は今も続いている。
 そうした1960年、アフリカでは旧宗主国のくびきを外れた国々が様々な困難の中で新しい国造りに励む一方、国連など国際社会の場で反植民地主義の新興グループとして発言力を高めた。米国などもアフリカ勢を無視することはできなくなった。

 米ソ冷戦時代が続く中で、アフリカ諸国は米ソ両陣営から強い働きかけを受けながら、基本的に非同盟路線を貫いた。結果として、そのことが冷戦後21世紀の世界でアフリカ勢がひときわ注目される存在となるに至った要因であろう。
 毛沢東も習近平も「中国は覇権を求めない」と宣言している。しかしアメリカに次ぐ世界第2の経済大国になった中国は、アジアからアフリカ・ヨーロッパに「一帯一路」の通商路を開くことを宣言。そのために南アジアから中東・アフリカに膨大な投資を進めている。
 第2次大戦後世界の覇権を握ってきたアメリカだが、実はその覇権を放棄したいトランプ大統領と事実上アメリカの覇権に挑戦しつつある習近平主席の草刈り場になっているのが、今日のアフリカである。
posted by JCJ at 17:46 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする