◆100万ドル寄付が相次ぐ
トランプ大統領就任式が、この20日、ワシントンD.C.の合衆国議会議事堂の西側正面で開催される。その就任式基金に、米国のメディア大手のグーグルとマイクロソフトの2社は、100万ドル(1億5千万円)を寄付したと報じられている。すでに昨年末、メタとオープンAIの2社も同基金に100万ドル寄付すると発表している。アマゾン、アップル、ウーバーに加え、日本のトヨタも同額を寄付したと報じられている。
就任式基金には過去最高の1億7000万ドルの寄付金が集まったという。バイデン氏の2021年の就任式での寄付金総額は6300万ドル、なんと3倍近くになる。
トランプ氏は100万ドル以上を寄付した寄付者に対し、就任式に合わせて行われるトランプ氏本人や閣僚候補などとの夕食会などのイベントのチケットを含むボーナス特典を提供しているという。
◆Metaファクトチェック廃止
「検閲が過剰だ」という理由を述べ、フェイスブック、インスタグラムなどを運営するMetaがファクトチェックを廃止し、コンテンツ規制を緩める方針へ転換した。これまでパートナーシップを結んできたファクトチェック団体は民主党寄りで、「政治的に偏り、信頼を生むよりも壊してきた」と述べている。
◆「TikTok」マスクへ売却か
動画共有アプリ「TikTok」を巡っては、運営する中国企業「バイトダンス」社を通じた中国政府への情報流出など、安全保障上のリスクを懸念して、各国で規制の動きが進んでいる。米国では昨年、「TikTok」の米国事業を売却しなければ、米国内での「TikTok」配信を禁止する法律が成立し、この19日に発効する。
この緊迫する状況を受けて、「TikTok」の親会社「バイトダンス」に影響力を持つとされる中国政府が、米国の実業家であり、Xのオーナーであるイーロン・マスク氏へ、米国事業の売却を検討しているという。
トランプ次期大統領に近いマスク氏を、政府効率化省のトップに据える可能性が高いだけに、マスク氏が所有するXと共同で、「TikTok」の米国事業を運営する手法は、中国政府にとって都合がよいものと観測されている。
◆孫会長、1000億ドル投資
孫正義氏は昨年12月中旬、トランプ次期米大統領とフロリダ州の同氏の邸宅マール・ア・ラーゴで面談し、その後の記者会見で米国に今後4年間で1000億ドル(約15兆円)を投資すると発表した。孫氏は、この投資により米国でAIと関連インフラに重点を置いた、少なくとも10万人の雇用を創出すると語った。なお孫氏は2016年にトランプ氏が大統領選に勝利した際も、500億ドルの投資を発表している。
2025年01月17日
2024年12月11日
【国会前集会】「憲法を守れ」総選挙後初 2300人集会 安倍元首相襲撃裁判開かれぬ裏に 被爆国日本の国際的使命は=保坂 義久
自公与党が過半数割れしてから初めての大集会『憲法変えさせない!戦争反対!今こそ平和と人権11.3国会大行動』が、11月3日に国会正門前で開かれた。主催者の開会挨拶に続き、野党3党の代表が発言した。
国会内は右ぶれ
軍拡懸念は続く
社民党党首の福島瑞穂氏は、「自公過半数割れに追い込んだが、国会内は右ぶれしているともいえる」とし、「秘密保護法、共謀罪……重要土地規制法…」と法律名を並べて、平和憲法がいかに蔑ろにされているかを訴えた。さらに沖縄、南西諸島、九州における軍拡状況に懸念を示した。
共産党書記局長の小池晃氏は、「与党敗北に共産党機関紙『赤旗』の裏金問題報道、2000万円の自民党非公認議員への配布報道が大きな役割を発揮した」が、「議席を減らしたことは重大な反省点」と語った
立憲民主党の有田芳生氏は、「立憲民主党は50議席増だが、比例区では7万票しか増えていない。小選挙区では全国で147万票減らしている」と冷静に分析。「まっとうな野党とまっとうな労働組合と市民の力」で勝ち抜いていくと来年の都議選や参院選を展望した。
次に「日韓和解と平和プラットフォーム運営委員会」と「在日ビルマ労働組合」からのメッセージが読み上げられた。
参院選展望した冷静な分析も
市民の知る権利
侵害されている
メインスピーチは、安全保障法制に反対する学者の会呼びかけ人の高山佳奈子氏。刑法が専門の高山氏は、安倍晋三元首相襲撃事件の裁判がいまだ開始されないことをあげ、複雑な組織犯罪でもなく、容疑者の責任能力もあると思われる事件が、3年近く開かれないことは異常だと指摘、市民の知る権利が侵害されていると語った。
高山氏は安倍元首相襲撃の真相が明らかにされると不都合なのは旧統一教会。旧統一教会は今でも与野党の議員の選挙を手伝っているとした。高山氏は、「ある程度の年齢の人は、オウム真理教や旧統一教会の活動を知っているはず。それを知らないというのはウソをついているか、全く社会に関心がなく、政治家に向かない人」と皮肉をきかせて政治家の旧統一教会隠しを批判した。
学術会議の介入
拒否リスト存在
また日本学術時会議の任命拒否についても、裁判が起こされてその公判手続きの中で、菅義偉政権の前の安倍政権の時から、この人物が選任されたら拒否すると名指ししたリストの存在が明らかになったと語った。ただ詳しい経緯は資料が黒塗りでわからないという。
さらに国立法大学人法が改正されて、経済人を中心とした運営方針会議が学長よりも力を持つことなった。「国際法秩序の中で、被爆国日本に特別に課せられた使命は核軍縮を推進することだ」など、高山氏の論点は多岐にわたった。
住民の不安募る
オスプレイ配備
スピーチの最後は、木更津と横須賀で運動している市民からの報告。
まず自衛隊木更津基地でのオスプレイの機体整備と暫定配備に反対している護憲原水禁千葉県実行委員会の武藤美好氏が報告した。オスプレイの機体整備は、当初1機3、4カ月と説明されていたが実際には20カ月以上かかっている。オスプレイはこの2年間で4件の死亡事故を起こして、基地周辺住民は不安を募らせている。
ヨコスカ平和船団の新倉裕史氏は自衛隊が導入を決めた巡行ミサイル・トマホークについて発言した。新倉氏は「トマホークは、今年1月にもイエメンの港湾施設に対して使用された。ヨコスカに配備されている米軍の11隻のイージス艦は全てトマホークが配備されている」とし、湾岸戦争以来、アメリカの軍事行動で使用され続けてきたトマホークの導入に警告した。
最後の行動提起で参加者数は2300人と報告された
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年11月25日号
国会内は右ぶれ
軍拡懸念は続く
社民党党首の福島瑞穂氏は、「自公過半数割れに追い込んだが、国会内は右ぶれしているともいえる」とし、「秘密保護法、共謀罪……重要土地規制法…」と法律名を並べて、平和憲法がいかに蔑ろにされているかを訴えた。さらに沖縄、南西諸島、九州における軍拡状況に懸念を示した。
共産党書記局長の小池晃氏は、「与党敗北に共産党機関紙『赤旗』の裏金問題報道、2000万円の自民党非公認議員への配布報道が大きな役割を発揮した」が、「議席を減らしたことは重大な反省点」と語った
立憲民主党の有田芳生氏は、「立憲民主党は50議席増だが、比例区では7万票しか増えていない。小選挙区では全国で147万票減らしている」と冷静に分析。「まっとうな野党とまっとうな労働組合と市民の力」で勝ち抜いていくと来年の都議選や参院選を展望した。
次に「日韓和解と平和プラットフォーム運営委員会」と「在日ビルマ労働組合」からのメッセージが読み上げられた。
参院選展望した冷静な分析も
市民の知る権利
侵害されている
メインスピーチは、安全保障法制に反対する学者の会呼びかけ人の高山佳奈子氏。刑法が専門の高山氏は、安倍晋三元首相襲撃事件の裁判がいまだ開始されないことをあげ、複雑な組織犯罪でもなく、容疑者の責任能力もあると思われる事件が、3年近く開かれないことは異常だと指摘、市民の知る権利が侵害されていると語った。
高山氏は安倍元首相襲撃の真相が明らかにされると不都合なのは旧統一教会。旧統一教会は今でも与野党の議員の選挙を手伝っているとした。高山氏は、「ある程度の年齢の人は、オウム真理教や旧統一教会の活動を知っているはず。それを知らないというのはウソをついているか、全く社会に関心がなく、政治家に向かない人」と皮肉をきかせて政治家の旧統一教会隠しを批判した。
学術会議の介入
拒否リスト存在
また日本学術時会議の任命拒否についても、裁判が起こされてその公判手続きの中で、菅義偉政権の前の安倍政権の時から、この人物が選任されたら拒否すると名指ししたリストの存在が明らかになったと語った。ただ詳しい経緯は資料が黒塗りでわからないという。
さらに国立法大学人法が改正されて、経済人を中心とした運営方針会議が学長よりも力を持つことなった。「国際法秩序の中で、被爆国日本に特別に課せられた使命は核軍縮を推進することだ」など、高山氏の論点は多岐にわたった。
住民の不安募る
オスプレイ配備
スピーチの最後は、木更津と横須賀で運動している市民からの報告。
まず自衛隊木更津基地でのオスプレイの機体整備と暫定配備に反対している護憲原水禁千葉県実行委員会の武藤美好氏が報告した。オスプレイの機体整備は、当初1機3、4カ月と説明されていたが実際には20カ月以上かかっている。オスプレイはこの2年間で4件の死亡事故を起こして、基地周辺住民は不安を募らせている。
ヨコスカ平和船団の新倉裕史氏は自衛隊が導入を決めた巡行ミサイル・トマホークについて発言した。新倉氏は「トマホークは、今年1月にもイエメンの港湾施設に対して使用された。ヨコスカに配備されている米軍の11隻のイージス艦は全てトマホークが配備されている」とし、湾岸戦争以来、アメリカの軍事行動で使用され続けてきたトマホークの導入に警告した。
最後の行動提起で参加者数は2300人と報告された
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年11月25日号
2024年10月22日
【自民党総裁選】全候補「改憲、軍拡」に前向き 「裏金」「旧統一教会」再調査拒否=丸山 重威
9人の候補者が揃い、まさに「メディアジャック」状況で進められている自民党総裁選は、大宣伝の中で候補全員が「改憲・軍拡」を主張、選挙を前に、自民党キャンペーンを揃い踏みした。
もともと、総裁選は自民党内でトップをどうするか、の場。従って、政策論争はないのが当たり前で、議論をすればするほど、結果として、党全体の宣伝になる。
だが、メディアに露出して宣伝はしたいが、都合が悪い質問には答えるなと、「国民不在」の対応を指示していた。
自民党の総裁選選管は9月4日、所属議員に対し、「各種報道機関、団体、インターネット調査等から」アンケートが寄せられる見込みだが、この種のアンケートは「投票行動に影響を与える可能性が極めて大きいことから公正・公平な運営を図るため、その対応について自粛する旨、決定いたしました」「ご理解とご協力を」と要請(9月23日「赤旗」)した。
しかし、そんな中でも候補たちの「改憲」「裏金隠疑惑抹消」などの姿勢は隠しようもなく、報じられている。
「憲法改正」にはそろって前向き
改憲問題は、岸田首相が8月7日自民党の憲法改正実現本部で「憲法改正国民投票をするなら自衛隊明記をするべきで、論点整理してほしい」と促した。9人はこれを受けて、揃って憲法改正を主張。記者会見やアンケートでは、9人全員が自民党の@9条への自衛隊明記A緊急事態条項B教育無償化C参院の合区解消―の改憲4項目に「賛成」を表明した。
総裁選に最初に出馬表明した小林鷹之氏は、憲法審査会で議論されている緊急事態・議員任期延長案にも触れ「緊急事態条項と9条への自衛隊明記は『喫緊の課題』。早期の発議に向けて最大限の熱量で取り組む」と表明。小泉進次郎氏は「国民投票は一日も早く実施したい。国防、防衛力強化、予算増額、これは大賛成」と述べた。石破茂氏は9条2項の削除論者だが、「議論を振り出しからしても仕方がない」。
高市早苗氏が改憲論者であることは知られているが、茂木氏が「3年以内に改正を実現」、加藤勝信氏も「緊急事態条項の整備が最優先」としたほか、河野太郎氏も「なるべく早く発議へ持って行きたい」、林芳正氏も「任期中の発議したい」とした。
企業・団体献金殆どが禁止反対
総裁選、最大の問題は「政治とカネ」。しかし、本質的「企業・団体献金禁止」ができるかどうかについても、賛否を明らかにしなかった石破氏以外の全ての候補が禁止には反対。裏金問題についても「再調査する」はゼロだった。
小林氏は「企業・団体は社会で重要な役割を持っており、個人が善、企業が悪という考え方は取らない」と企業・団体献金の肯定論を展開した。 また、統一協会との関わりを「再調査するか」と聞かれ、「調査する」候補はゼロだった。
総裁選で突然クローズアップされたのは、小泉氏が言い出した「残業時間既成を柔軟化、労働市場改革として解雇規制を見直す」。この財界に呼応した主張には、河野太郎氏が同調した。財界が求める政策では、「成長分野に思い切った投資をする」(石破氏)、「先端半導体、GXなど戦略分野への投資拡大を加速する」(茂木敏充氏)「安全性が確認された原発の再稼働、リプレース、新増設に取り組む」(小林氏)などが目立った。
「軍事同盟」の強化を強調
今回の総裁選では、自民党内でも議論があるはずの 「軍拡・軍事同盟強化」についての論議がないことも目立つ。
小泉氏は「中国、ロシア、北朝鮮といった『権威主義体制』に毅然と立ち向かうために、防衛力強化を加速する」「日米同盟をさらに協会、レベルアップしていく」。「安倍元首相の後継」を自任する高市氏も、「無人機、極超音速兵器など新たな戦争の態様にも対応できる国防体制を構築する」「非核3原則についても議論しなければいけない」。と非たりとも前のめりだ。
河野氏にいたっては、「中国等の抑止のため、日本も原子力潜水艦を配備して東シナ海から太平洋へ出るところをしっかり首根っこを押さえる戦略をとる議論をしていかなければならない」などと、「戦争」を意識したかのような発言まで飛び出している。
× ×
こうしてみると、自民党の総裁選と言っても基本政策に何の変化もなくこれを加速する単なるキャンペーンの場だったことがよくわかる。
一方、立憲民主党の代表選挙は、自民党と重なり合う感じで行われた。しかし、ここではっきりしてほしかった」「自民党との対決」については曖昧なままだった。
野田佳彦、泉健太、枝野幸男、吉田晴美の4候補のうち、自民党との対決をはっきりさせたのは、結局、新人の吉田氏だけ。ここでも問題を残したが、新代表には、、野田氏が、代表選投票の結果、就任した。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年9月25日号
もともと、総裁選は自民党内でトップをどうするか、の場。従って、政策論争はないのが当たり前で、議論をすればするほど、結果として、党全体の宣伝になる。
だが、メディアに露出して宣伝はしたいが、都合が悪い質問には答えるなと、「国民不在」の対応を指示していた。
自民党の総裁選選管は9月4日、所属議員に対し、「各種報道機関、団体、インターネット調査等から」アンケートが寄せられる見込みだが、この種のアンケートは「投票行動に影響を与える可能性が極めて大きいことから公正・公平な運営を図るため、その対応について自粛する旨、決定いたしました」「ご理解とご協力を」と要請(9月23日「赤旗」)した。
しかし、そんな中でも候補たちの「改憲」「裏金隠疑惑抹消」などの姿勢は隠しようもなく、報じられている。
「憲法改正」にはそろって前向き
改憲問題は、岸田首相が8月7日自民党の憲法改正実現本部で「憲法改正国民投票をするなら自衛隊明記をするべきで、論点整理してほしい」と促した。9人はこれを受けて、揃って憲法改正を主張。記者会見やアンケートでは、9人全員が自民党の@9条への自衛隊明記A緊急事態条項B教育無償化C参院の合区解消―の改憲4項目に「賛成」を表明した。
総裁選に最初に出馬表明した小林鷹之氏は、憲法審査会で議論されている緊急事態・議員任期延長案にも触れ「緊急事態条項と9条への自衛隊明記は『喫緊の課題』。早期の発議に向けて最大限の熱量で取り組む」と表明。小泉進次郎氏は「国民投票は一日も早く実施したい。国防、防衛力強化、予算増額、これは大賛成」と述べた。石破茂氏は9条2項の削除論者だが、「議論を振り出しからしても仕方がない」。
高市早苗氏が改憲論者であることは知られているが、茂木氏が「3年以内に改正を実現」、加藤勝信氏も「緊急事態条項の整備が最優先」としたほか、河野太郎氏も「なるべく早く発議へ持って行きたい」、林芳正氏も「任期中の発議したい」とした。
企業・団体献金殆どが禁止反対
総裁選、最大の問題は「政治とカネ」。しかし、本質的「企業・団体献金禁止」ができるかどうかについても、賛否を明らかにしなかった石破氏以外の全ての候補が禁止には反対。裏金問題についても「再調査する」はゼロだった。
小林氏は「企業・団体は社会で重要な役割を持っており、個人が善、企業が悪という考え方は取らない」と企業・団体献金の肯定論を展開した。 また、統一協会との関わりを「再調査するか」と聞かれ、「調査する」候補はゼロだった。
総裁選で突然クローズアップされたのは、小泉氏が言い出した「残業時間既成を柔軟化、労働市場改革として解雇規制を見直す」。この財界に呼応した主張には、河野太郎氏が同調した。財界が求める政策では、「成長分野に思い切った投資をする」(石破氏)、「先端半導体、GXなど戦略分野への投資拡大を加速する」(茂木敏充氏)「安全性が確認された原発の再稼働、リプレース、新増設に取り組む」(小林氏)などが目立った。
「軍事同盟」の強化を強調
今回の総裁選では、自民党内でも議論があるはずの 「軍拡・軍事同盟強化」についての論議がないことも目立つ。
小泉氏は「中国、ロシア、北朝鮮といった『権威主義体制』に毅然と立ち向かうために、防衛力強化を加速する」「日米同盟をさらに協会、レベルアップしていく」。「安倍元首相の後継」を自任する高市氏も、「無人機、極超音速兵器など新たな戦争の態様にも対応できる国防体制を構築する」「非核3原則についても議論しなければいけない」。と非たりとも前のめりだ。
河野氏にいたっては、「中国等の抑止のため、日本も原子力潜水艦を配備して東シナ海から太平洋へ出るところをしっかり首根っこを押さえる戦略をとる議論をしていかなければならない」などと、「戦争」を意識したかのような発言まで飛び出している。
× ×
こうしてみると、自民党の総裁選と言っても基本政策に何の変化もなくこれを加速する単なるキャンペーンの場だったことがよくわかる。
一方、立憲民主党の代表選挙は、自民党と重なり合う感じで行われた。しかし、ここではっきりしてほしかった」「自民党との対決」については曖昧なままだった。
野田佳彦、泉健太、枝野幸男、吉田晴美の4候補のうち、自民党との対決をはっきりさせたのは、結局、新人の吉田氏だけ。ここでも問題を残したが、新代表には、、野田氏が、代表選投票の結果、就任した。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年9月25日号
2024年10月10日
【支部リポート】神奈川 虐殺の真相究明せよ 関東大震災 犠牲者追悼会=保坂 義久
関東大震災当時、朝鮮人や中国人が民衆に虐殺されてから101年。一市民の建てた慰霊碑のある横浜市の保土谷墓地で、9月7日に犠牲者追悼会が開かれた。
毎年、この追悼会では、実行委員による朗読劇が行われてきた。今年は新しく発見された資料に基づく「呼びかけ」が、それにあたる。
新資料は神奈川県知事から内務省にあてた公文書だ。虐殺された現場名や、犠牲者の特徴が記され、「呼びかけ」は追悼集会の実行委員たちにより一人ずつ読み上げられる。
「南太田町一九一二先、電車軌道内、2名虐殺される。氏名不詳」と、無機的に読み上げられる犠牲者の情報には、土工風などと犠牲者の風体も記されているが、名前は不明だ。
朗読劇の後に黙祷。引き続き、゙和仙氏が追悼の舞を舞い、神奈川朝鮮中高級学校中級部の生徒がアリランを歌った。
追悼会実行委員会の山本すみ子共同代表は主催者挨拶で、犠牲者には朝鮮半島に遺族がいるはずだから、調査を進めて犠牲者の名前を明らかにしたいと語った。
参加者スピーチは福島瑞穂参議院議員、弁護士の櫻井みぎわさん、ラッパーのFUNIさん。震災時の虐殺についての公文書が政府部内に存在しているか、再三国会で追及している福島議員は、戒厳令を発して民衆の不安を煽った当時の日本政府の責任と民衆の責任を共に追及しなければと強調した。
最後に、追悼会からの発信として、横浜市長に宛てたメッセージを採択した。
メッセージは、⓵関東大震災時虐殺の真相究明のための努力A神奈川追悼会への市長の出席または追悼文の送付B事実を記憶し教訓を継承するための追悼碑の建立C差別のない共生社会を築くための包括的差別禁止条例の制定を求めている。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年9月25日号
毎年、この追悼会では、実行委員による朗読劇が行われてきた。今年は新しく発見された資料に基づく「呼びかけ」が、それにあたる。
新資料は神奈川県知事から内務省にあてた公文書だ。虐殺された現場名や、犠牲者の特徴が記され、「呼びかけ」は追悼集会の実行委員たちにより一人ずつ読み上げられる。
「南太田町一九一二先、電車軌道内、2名虐殺される。氏名不詳」と、無機的に読み上げられる犠牲者の情報には、土工風などと犠牲者の風体も記されているが、名前は不明だ。
朗読劇の後に黙祷。引き続き、゙和仙氏が追悼の舞を舞い、神奈川朝鮮中高級学校中級部の生徒がアリランを歌った。
追悼会実行委員会の山本すみ子共同代表は主催者挨拶で、犠牲者には朝鮮半島に遺族がいるはずだから、調査を進めて犠牲者の名前を明らかにしたいと語った。
参加者スピーチは福島瑞穂参議院議員、弁護士の櫻井みぎわさん、ラッパーのFUNIさん。震災時の虐殺についての公文書が政府部内に存在しているか、再三国会で追及している福島議員は、戒厳令を発して民衆の不安を煽った当時の日本政府の責任と民衆の責任を共に追及しなければと強調した。
最後に、追悼会からの発信として、横浜市長に宛てたメッセージを採択した。
メッセージは、⓵関東大震災時虐殺の真相究明のための努力A神奈川追悼会への市長の出席または追悼文の送付B事実を記憶し教訓を継承するための追悼碑の建立C差別のない共生社会を築くための包括的差別禁止条例の制定を求めている。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年9月25日号
2024年06月16日
【内政】日本の民主主義の破壊 自民 地方自治法改正案=編集部
岸田政権は「非常事 態」を名目に国の指示権 を拡大する地方自治法改 正案を国会に提出。連休 明けの7日、衆院本会議 で審議入りした。同法案 には「対等」なはずの国 と地方の関係を主従関係 に逆戻りさせ、国の意志 を地方に強要する武器に しようと狙う危険な思惑 が透けて見えている。
「新しい戦前」を推し 進めるためのこの法案は、 戦前の反省から憲法92 条が明記する地方自治の 本旨「地方自治は国から 独立した団体によって運 営される」を内側から掘 り崩し、憲法を空洞化し て壊す「懐憲」法案に他 ならない。
「非常事態」
具体例答えず
日本は、法的拘束力が ある「指示権」を個別の 法律で定め、国の「指示 権」の規定は災害対策基 本法や感染症法などにあ るが、地方自治法にはな い。あるのは「助言・勧 告」権だ。法案はこれを 地方自治体への「指示権」 にするのが目的で、政府 は、「重大事態時の国の指 示権拡大は新型コロナ禍 で個別の法で対処できな い事態が起きた教訓を踏 まえたものだ」とする。
だが、政府は個別法で 対処できない「非常事態」 の具体的事例を説明せず 「現時点で想定しうるも のはない」(松本剛明・総 務相)と繰り返す。
個別法で対応
本当に不可能か
「非常事態」が想定で きないなら改正の必要は ないし、指示権を規定す る個別法で対応できない 事態が存在するのかも、 そもそも疑問だ。
今回の改正案は昨年 12月、岸田首相の諮問機 関「地方制度調査会」が 答申した「地方自治法上、 国が自治体に必要な指示 を行えるようにすべき だ」がベースだ。だが、 20年2月の大型クルー ズ船集団感染をめぐる混 乱は、未知のコロナウイ ルスへの国の対応と調整 遅れが原因だし、安倍首 相(当時)が、地方自治 体に事前の根回しもなく 独断で、全国の小中高と 特別支援学校に「一斉休 校」を突然要請。各地で 混乱を招いたことも記憶 に残る。それをすり替え、 国の指示が必要だとする のは本末転倒だ。
恣意的行使
懸念が拭えず
岸田政権は@非常事 態なら国は個別法に規定 がなくても自治体に対策 実施を指示できるとする が、前提条件の非常事態 の範囲は曖昧だ。A国と 地方の関係を「対等・協 力」と定めた地方分権の 原則は維持とするが、指 示権は国と地方を「上 下・主従」関係に再編す る。B指示前には事前に 自治体の意見を求めると するが、単なる努力義務 だ。C国会承認や国会報 告義務付けは「機動性を 欠く」ので盛り込まない とした。これは「国会」 の役割を全否定し、日本 の戦後民主主義を根幹か ら破壊する暴挙だ。
2012年の第2次 安倍政権以後、自民党は 数を背景に法をないがし ろにし、閣議決定による 政策決定を常態化。国会 を空洞化してきた。
岸田首相は、就任直後 に「安倍政治の継承」と 「改憲」を掲げ、大軍拡 を推し進めてきた。地方 自治法改正案も明らかに それと連動する。私たち は、これを座して見過ご してはならないと呼びか ける。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年5月25日号
「新しい戦前」を推し 進めるためのこの法案は、 戦前の反省から憲法92 条が明記する地方自治の 本旨「地方自治は国から 独立した団体によって運 営される」を内側から掘 り崩し、憲法を空洞化し て壊す「懐憲」法案に他 ならない。
「非常事態」
具体例答えず
日本は、法的拘束力が ある「指示権」を個別の 法律で定め、国の「指示 権」の規定は災害対策基 本法や感染症法などにあ るが、地方自治法にはな い。あるのは「助言・勧 告」権だ。法案はこれを 地方自治体への「指示権」 にするのが目的で、政府 は、「重大事態時の国の指 示権拡大は新型コロナ禍 で個別の法で対処できな い事態が起きた教訓を踏 まえたものだ」とする。
だが、政府は個別法で 対処できない「非常事態」 の具体的事例を説明せず 「現時点で想定しうるも のはない」(松本剛明・総 務相)と繰り返す。
個別法で対応
本当に不可能か
「非常事態」が想定で きないなら改正の必要は ないし、指示権を規定す る個別法で対応できない 事態が存在するのかも、 そもそも疑問だ。
今回の改正案は昨年 12月、岸田首相の諮問機 関「地方制度調査会」が 答申した「地方自治法上、 国が自治体に必要な指示 を行えるようにすべき だ」がベースだ。だが、 20年2月の大型クルー ズ船集団感染をめぐる混 乱は、未知のコロナウイ ルスへの国の対応と調整 遅れが原因だし、安倍首 相(当時)が、地方自治 体に事前の根回しもなく 独断で、全国の小中高と 特別支援学校に「一斉休 校」を突然要請。各地で 混乱を招いたことも記憶 に残る。それをすり替え、 国の指示が必要だとする のは本末転倒だ。
恣意的行使
懸念が拭えず
岸田政権は@非常事 態なら国は個別法に規定 がなくても自治体に対策 実施を指示できるとする が、前提条件の非常事態 の範囲は曖昧だ。A国と 地方の関係を「対等・協 力」と定めた地方分権の 原則は維持とするが、指 示権は国と地方を「上 下・主従」関係に再編す る。B指示前には事前に 自治体の意見を求めると するが、単なる努力義務 だ。C国会承認や国会報 告義務付けは「機動性を 欠く」ので盛り込まない とした。これは「国会」 の役割を全否定し、日本 の戦後民主主義を根幹か ら破壊する暴挙だ。
2012年の第2次 安倍政権以後、自民党は 数を背景に法をないがし ろにし、閣議決定による 政策決定を常態化。国会 を空洞化してきた。
岸田首相は、就任直後 に「安倍政治の継承」と 「改憲」を掲げ、大軍拡 を推し進めてきた。地方 自治法改正案も明らかに それと連動する。私たち は、これを座して見過ご してはならないと呼びか ける。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年5月25日号
2024年05月04日
【政治】経済安保法案を通すな 「修正案」で野党を抱き込む=丸山重威
「経済安保秘密保護法案」(重要経済情報の保護及び活用に関する法律案)は、反対運動の広がりよそに4月9日、実施状況を国会に報告し公表することを中心とした「修正案」が立憲民主党などの賛成で可決され衆院を通過。審議の舞台は参院に移った。
乗せられた立憲
同法案の中身は、2013年に安倍晋三政権下で成立した特定秘密保護法を経済分野にも適用し、厳罰化で縛ることを狙ったものだ。立憲の賛成は最初から「修正」の余地を残しておき一部「修正」で通してしまおうという自民党の「手法」に乗せられたものと言えよう。同じ手法は2021年春、憲法審査会での「改憲手続き法・改正」でも取られており、立憲民主党はまたも抱き込まれる「愚」を繰り返した。
民主主義が危うい
だが法案の根幹は「修正」でも何も変わっていない。法案の狙いを批判し、「警戒」していくことが必要だ。本紙2月号でも問題提起したが、経済安保新法は秘密保護法が対象とした「防衛」「外交」「スパイ防止」「テロ防止」の4分野の「極秘」「機密」をサイバー宇宙、AI、インフラ、国際共同開発など幅広い「秘密」にまで拡張したものだ。特に同法は、秘密情報の取扱者をチェックする「セキュリティ・クリアランス」制度導入で「選別」、統制の対象を民間人まで広げ5年以上の拘禁刑を違反者に課す仕組みになっている。
問題は運用だ。防衛産業育成と兵器輸出拡大を狙う政権が同法を恣意的に使えばどうなるかは大河原化工機事件を見るまでもない。岸田政権の政策への批判と警戒が必要だ。。
「世界平和アピール七人委員会」(1955年の結成以来、日本の政治・社会問題に独立的で公正な視点からアッピールを発し続ける)は8日、同法案への反対アピールを発表。「戦争ができる体制を下支えすべく、私たち個々人の自由と人々の権利を制限していく社会傾向が強まっている」と警鐘を鳴らし、「『重要経済安保情報保護法』は民主主義を危うくする」としている。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年4月25日号
乗せられた立憲
同法案の中身は、2013年に安倍晋三政権下で成立した特定秘密保護法を経済分野にも適用し、厳罰化で縛ることを狙ったものだ。立憲の賛成は最初から「修正」の余地を残しておき一部「修正」で通してしまおうという自民党の「手法」に乗せられたものと言えよう。同じ手法は2021年春、憲法審査会での「改憲手続き法・改正」でも取られており、立憲民主党はまたも抱き込まれる「愚」を繰り返した。
民主主義が危うい
だが法案の根幹は「修正」でも何も変わっていない。法案の狙いを批判し、「警戒」していくことが必要だ。本紙2月号でも問題提起したが、経済安保新法は秘密保護法が対象とした「防衛」「外交」「スパイ防止」「テロ防止」の4分野の「極秘」「機密」をサイバー宇宙、AI、インフラ、国際共同開発など幅広い「秘密」にまで拡張したものだ。特に同法は、秘密情報の取扱者をチェックする「セキュリティ・クリアランス」制度導入で「選別」、統制の対象を民間人まで広げ5年以上の拘禁刑を違反者に課す仕組みになっている。
問題は運用だ。防衛産業育成と兵器輸出拡大を狙う政権が同法を恣意的に使えばどうなるかは大河原化工機事件を見るまでもない。岸田政権の政策への批判と警戒が必要だ。。
「世界平和アピール七人委員会」(1955年の結成以来、日本の政治・社会問題に独立的で公正な視点からアッピールを発し続ける)は8日、同法案への反対アピールを発表。「戦争ができる体制を下支えすべく、私たち個々人の自由と人々の権利を制限していく社会傾向が強まっている」と警鐘を鳴らし、「『重要経済安保情報保護法』は民主主義を危うくする」としている。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年4月25日号
2024年01月28日
【おすすめ本】春増翔太『ルポ歌舞伎町の路上売春 それでも「立ちんぼ」を続ける彼女たち』―摘発リスク高いのになぜ「売る]? 彼女たちの再生のヒントを提供=坂爪真吾(NPO法人風テラス理事長)
繁華街での路上売春は、極めて摘発リスクの高い行為である。普通に考えれば「なぜわざわざそんな危ない真似をするのか」「風俗店やアプリで相手を見つければいいのでは」と思うだろう。
売買春に関わる男女にとって、路上のメリットは「相手の顔が見える」ことにある。風俗店ではサービスの直前まで相手の顔が見えない。アプリを介した出会いでも同様だ。売り手と買い手の双方にとって「事前に顔が見える」ことによる安心感は大きい。
「今すぐ現金が得られる」という点もメリットだ。風俗店で働くためにも、面接や身分証の提示などが必要になる。路上であれば、そうした手続きを踏まずに、その場で稼げる。
本書は、こうした「都合の良い果て」で生きる女性たち、その背後にある社会課題について、丹念な取材を通して明らかにした力作である。
路上売春の背景には虐待歴や精神疾患などの福祉的な課題があるが、彼女たちにとって福祉は「都合の良くない」世界である。シェルターに入ればスマホは使えないし、夜職で稼ぐこともできなくなる。しかし、「都合の良い果て」にもずっといられるわけではない。
取締や啓発と並行して、彼女たちが「都合の良くない世界」でも生きられる耐性やスキルを身に着ける機会を提供すること。そのために必要な他者との関係性を再構築し、社会への信頼を取り戻すこと。困難な茨の道だが、本書の中には、それらを実現するためのヒントがたくさん詰まっている。(ちくま新書900円)
売買春に関わる男女にとって、路上のメリットは「相手の顔が見える」ことにある。風俗店ではサービスの直前まで相手の顔が見えない。アプリを介した出会いでも同様だ。売り手と買い手の双方にとって「事前に顔が見える」ことによる安心感は大きい。
「今すぐ現金が得られる」という点もメリットだ。風俗店で働くためにも、面接や身分証の提示などが必要になる。路上であれば、そうした手続きを踏まずに、その場で稼げる。
本書は、こうした「都合の良い果て」で生きる女性たち、その背後にある社会課題について、丹念な取材を通して明らかにした力作である。
路上売春の背景には虐待歴や精神疾患などの福祉的な課題があるが、彼女たちにとって福祉は「都合の良くない」世界である。シェルターに入ればスマホは使えないし、夜職で稼ぐこともできなくなる。しかし、「都合の良い果て」にもずっといられるわけではない。
取締や啓発と並行して、彼女たちが「都合の良くない世界」でも生きられる耐性やスキルを身に着ける機会を提供すること。そのために必要な他者との関係性を再構築し、社会への信頼を取り戻すこと。困難な茨の道だが、本書の中には、それらを実現するためのヒントがたくさん詰まっている。(ちくま新書900円)
2023年08月22日
【憲法改正】改憲ありきで自民に接近 維新、国民「緊急事態条項」で=丸山重威
「軍拡予算」「軍需産業支援」に焦点が当たる中、日本維新の会(馬場伸幸代表)や、国民民主党(玉木雄一郎代表)が、憲法審査会などで改憲姿勢をあらわにし、次期総選挙や参院選に臨もうとしている。メディアがあまり報道しない中、改憲への動きとして注目する必要がありそうだ。
「緊急事態」で改憲条文
日本維新の会と国民民主党、衆院会派「有志の会」(代表・吉良州司氏)は3月30日、「緊急事態」で国会議員の任期を6カ月延長可能とする改憲条文案を共同で発表した。
条文案は@武力攻撃A内乱やテロB自然災害C感染症の大規模まん延―などの「緊急事態」で、「広域な地域で70日以上、国政選挙の実施が困難」と内閣が判断すれば、衆参両院の3分の2以上の議決で、議員任期を6カ月延長できるとにする。
三会派は国会閉会の6月19日にも、@緊急事態宣言は、国会の事前承認を経て内閣が宣言。宣言期間中の国会の閉会や衆院解散を禁止し国会の機能を維持するA平時の国会でも、衆参いずれかの総議員4分の1以上の要求があれば、内閣は20日以内に召集を決定する―などを決めた。
閉会時も改憲強調
国民民主党の玉木雄一郎代表は6月27日の会見で、この「緊急事態条項創設」の改憲について「秋の臨時国会で成案を得て、来年の通常国会に発議できるスケジュールで進めるよう働き掛けたい」。3月の会見では、日本維新の会の馬場伸幸代表が「改憲発議ができるよう、エンジン役を担っていきたい」とし、岸田首相が来年9月までの自民党総裁任期中の改憲を公言したことをあげ、「国民投票まで時間がない。改憲発議に向けた仕事を自民党に期待する」と主張。国民の玉木雄一郎代表は「自民党は具体的な成案作りに協力してほしい」と語っている。
この論議、一般にはいかにも唐突だが、憲法審査会は「議案がないから開会しないのはサボタージュ」という自民党の主張で、通常国会では衆院が16回、参院でも8回開会。岸田首相も「議論の深まり」と歓迎した。
しかし、緊急事態問題は、衆院解散時の「緊急集会」が憲法に規定されている参院では、ほとんど議論されでいない。
自民党などには「改憲の本丸は9条への自衛隊明記。議員の任期延長だけで国民投票などできない」という議論もある。
公明の「反対」表明
維新と国民が「改憲」を煽る中、公明党の北側一雄副代表は4月20日の衆院憲法審査会で、自民党の「9条への自衛隊明記」に「反対」を表明し、注目された。
自民党がたたき台で「必要な自衛の措置をとることを妨げず」との文言を盛り込んでいることについて「9条2項(戦力不保持)の例外規定と読まれる余地を残すことになり賛成できない」「自衛隊という組織を憲法上明記することによって、憲法上の国家機関とされ、防衛省の上位機関とみなされないか、検討が必要だ」とも述べた。
自民党が改憲のテーマにしているのは「9条への自衛隊明記」のほか、「緊急事態条項」「参院選挙区の合区解消」「教育の充実」。「自衛隊」以外は法改正で対応が可能。自公の連立解消が見え隠れする中、維新、国民が「改憲」を使って「新野党勢力」として自民に接近しようとしている、とも読めそう。慎重な対応が必要だ。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年7月25日号
「緊急事態」で改憲条文
日本維新の会と国民民主党、衆院会派「有志の会」(代表・吉良州司氏)は3月30日、「緊急事態」で国会議員の任期を6カ月延長可能とする改憲条文案を共同で発表した。
条文案は@武力攻撃A内乱やテロB自然災害C感染症の大規模まん延―などの「緊急事態」で、「広域な地域で70日以上、国政選挙の実施が困難」と内閣が判断すれば、衆参両院の3分の2以上の議決で、議員任期を6カ月延長できるとにする。
三会派は国会閉会の6月19日にも、@緊急事態宣言は、国会の事前承認を経て内閣が宣言。宣言期間中の国会の閉会や衆院解散を禁止し国会の機能を維持するA平時の国会でも、衆参いずれかの総議員4分の1以上の要求があれば、内閣は20日以内に召集を決定する―などを決めた。
閉会時も改憲強調
国民民主党の玉木雄一郎代表は6月27日の会見で、この「緊急事態条項創設」の改憲について「秋の臨時国会で成案を得て、来年の通常国会に発議できるスケジュールで進めるよう働き掛けたい」。3月の会見では、日本維新の会の馬場伸幸代表が「改憲発議ができるよう、エンジン役を担っていきたい」とし、岸田首相が来年9月までの自民党総裁任期中の改憲を公言したことをあげ、「国民投票まで時間がない。改憲発議に向けた仕事を自民党に期待する」と主張。国民の玉木雄一郎代表は「自民党は具体的な成案作りに協力してほしい」と語っている。
この論議、一般にはいかにも唐突だが、憲法審査会は「議案がないから開会しないのはサボタージュ」という自民党の主張で、通常国会では衆院が16回、参院でも8回開会。岸田首相も「議論の深まり」と歓迎した。
しかし、緊急事態問題は、衆院解散時の「緊急集会」が憲法に規定されている参院では、ほとんど議論されでいない。
自民党などには「改憲の本丸は9条への自衛隊明記。議員の任期延長だけで国民投票などできない」という議論もある。
公明の「反対」表明
維新と国民が「改憲」を煽る中、公明党の北側一雄副代表は4月20日の衆院憲法審査会で、自民党の「9条への自衛隊明記」に「反対」を表明し、注目された。
自民党がたたき台で「必要な自衛の措置をとることを妨げず」との文言を盛り込んでいることについて「9条2項(戦力不保持)の例外規定と読まれる余地を残すことになり賛成できない」「自衛隊という組織を憲法上明記することによって、憲法上の国家機関とされ、防衛省の上位機関とみなされないか、検討が必要だ」とも述べた。
自民党が改憲のテーマにしているのは「9条への自衛隊明記」のほか、「緊急事態条項」「参院選挙区の合区解消」「教育の充実」。「自衛隊」以外は法改正で対応が可能。自公の連立解消が見え隠れする中、維新、国民が「改憲」を使って「新野党勢力」として自民に接近しようとしている、とも読めそう。慎重な対応が必要だ。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年7月25日号
2023年04月19日
【支部リポート】北九州 国が強いるのは「違憲」 医師らの提訴めぐり学習会=久田ゆかり
軽快な音楽に乗せ著名タレントが所持を急ぐようアピールするマイナカード(マイナンバーカード)。来年にも健康保険証を廃止しマイナカードに健康情報をも集約する国策が今年4月から本格的に開始される。その第一歩である病院窓口等での「オンライン資格確認」に反対の声を上げる動きが医師・歯科医師から急速に高まり2月、「マイナ保険証は憲法違反」として東京地裁に提訴した。この動きは全国に波及し二次訴訟へと拡大する勢いだ。
東京などの医師ら274人が「病院窓口等でオンラインで資格確認をしたり必要な体制を整えさせるよう国が強いるのは違憲で、公法上の義務は無い」ことの確認を求め国を提訴した。会見した原告団長の佐藤一樹医師は「零細な医院までもが義務化されることで過疎地や離島では深刻な影響が出始めており廃業する医院が目立つ。従来のような自由な医療が受けられなくなる」と強調した。北九州支部は、この問題を深く知りたいとの声があり急きょ、杉山正隆支部長を講師に、週刊金曜日読者会と学習会を共催した。
杉山支部長は「病院に掛かる際には毎回、マイナカードの提示と顔写真撮影が必要で、持参しなければ自費扱いの10割負担となる。薬の重複を防ぐことが出来る等の利点もあるが、例えば、同じ病気で意見を聞きたくても、別の病院には掛かりにくくなる。日常的なWindows のupdateでマイナカードを読み取る等の機器に不具合が出たとの報告が全国各地から寄せられているが、こうした場合は診療は出来ない」などと4月以降、医療への掛かり方が激変することを解説した。
また、「マイナカードの常時所持は『実印を常に持ち歩く』ようなもので危険極まりない。紛失すると再発行まで1カ月ほど掛かり、基本的に病院等では10割負担となる。マイナカードの所持を拒否したり紛失時用に資格証を発行するが、資格証を利用すると窓口負担が高くなる等のペナルティがある」と話した。
参加者からは「国民から確実な徴税をし、病歴や投薬の情報、顔の情報を多数収集することで国民を管理するもの」「諸外国でも導入の動きはあったが、ほとんどの国では中止しており危ういものだ」等、懸念の声が多く上がった。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年3月25日号
東京などの医師ら274人が「病院窓口等でオンラインで資格確認をしたり必要な体制を整えさせるよう国が強いるのは違憲で、公法上の義務は無い」ことの確認を求め国を提訴した。会見した原告団長の佐藤一樹医師は「零細な医院までもが義務化されることで過疎地や離島では深刻な影響が出始めており廃業する医院が目立つ。従来のような自由な医療が受けられなくなる」と強調した。北九州支部は、この問題を深く知りたいとの声があり急きょ、杉山正隆支部長を講師に、週刊金曜日読者会と学習会を共催した。
杉山支部長は「病院に掛かる際には毎回、マイナカードの提示と顔写真撮影が必要で、持参しなければ自費扱いの10割負担となる。薬の重複を防ぐことが出来る等の利点もあるが、例えば、同じ病気で意見を聞きたくても、別の病院には掛かりにくくなる。日常的なWindows のupdateでマイナカードを読み取る等の機器に不具合が出たとの報告が全国各地から寄せられているが、こうした場合は診療は出来ない」などと4月以降、医療への掛かり方が激変することを解説した。
また、「マイナカードの常時所持は『実印を常に持ち歩く』ようなもので危険極まりない。紛失すると再発行まで1カ月ほど掛かり、基本的に病院等では10割負担となる。マイナカードの所持を拒否したり紛失時用に資格証を発行するが、資格証を利用すると窓口負担が高くなる等のペナルティがある」と話した。
参加者からは「国民から確実な徴税をし、病歴や投薬の情報、顔の情報を多数収集することで国民を管理するもの」「諸外国でも導入の動きはあったが、ほとんどの国では中止しており危ういものだ」等、懸念の声が多く上がった。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年3月25日号
2023年01月28日
【JCJオンライン講演会】2月4日(土)午後2時から4時 ロシアのウクライナ侵略と日本の安全保障 〜敵基地攻撃と軍事費大幅増の危うさ〜 講師:歴史学者 纐纈 厚さん(明治大学国際武器移転史研究所 客員研究員)
2007年に防衛庁が省に格上げされた当時から指摘されていたように、日本は軍事的力量や法制面で、「いつでも戦争ができる国」としてすでに登場している。そして今や、政府は軍事費の大幅増により、武器の爆買いをし、敵基地攻撃能力の保持を目指し、核の共有議論までしようとしている。
ロシアのウクライナ侵攻の長期化、北朝鮮、中国の動向などが口実とされている。このような事態を私たちはどう考え、どのような未来を見つけたらよいのか。今、しっかり立ち止まって論議を尽くさねばならない時ではないでしょうか。長年、日本の軍事的側面を研究分析してこられた纐纈厚さんに「日本の安全保障」について講演をお願いした。
【講師の略歴】
纐纈 厚(こうけつ・あつし)
1951年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。現在、明治大学国際武器移転史研究所客員研究員、山口大学名誉教授(政治学博士)、東亜歴史文化学会会長、植民地文化学会代表理事。この他に全国革新懇談会代表世話人、共同テーブル発起人、「重慶爆撃を継承する会」「中国文化財の返還を求める会」の共同代表などを務める。
参加費:500円
当オンライン講演会に参加希望の方はhttps://jcjonline0204.peatix.com/viewで参加費をお支払いください。
(JCJ会員は参加費無料。jcj_online@jcj.gr.jp に別途メールで申し込んでください)主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)03-6272-9781(月水金の13時から18時まで)https://jcj.gr.jp/
2022年07月14日
【メディアウオッチ】「逮捕された記者こそ被害者」札幌で「取材の自由」を考えるフォーラム 大学・道新に厳しい批判=高田正基
新聞労連と北海道新聞労組主催の「『取材の自由]を考えるフォーラム」が5月22日、札幌市で開かれた(写真)。旭川医科大を取材中の道新記者が昨年6月、建造物侵入容疑で大学職員に現行犯逮捕(常人逮捕)された問題をテーマにパネル討論が行われ、「記者逮捕は不当だった」「道新の説明はまるで警察発表のようだ」など、大学や道新に対し厳しい批判が相次いだ
日本ジャーナリスト会議などが後援し、道内外から会場、オンライン合わせて約60人が参加した。
パネル討論は吉永磨美・新聞労連委員長の司会で、ジャーナリストの金平茂紀氏、「放送レポート」編集委員の臺宏士氏、岩橋拓郎・新聞労連新聞研究部長、安藤健・道新労組委員長の4人が意見交換した(臺氏と岩橋氏はこの事件の労連検証チームメンバー)。
論点は@記者逮捕の妥当性A道新の会社対応の問題点B労組・報道機関はどう構えるべきか―の三つ。
■記者逮捕の妥当性
臺氏は、不適切発言や経費の不正支出が問題になった旭川医大学長の解任を審議する学長選考会議を取材するのは、報道機関として「知る権利」に応えるものだったとして「記者は形式的に侵入したかもしれないが、取材活動の一環であり、報道の自由がある」「当該記者こそ犯罪の被害者だというアプローチの検討も必要だった」と指摘した。
金平氏も「記者が大学に入ったことを建造物侵入という機械的な条文解釈で逮捕なんかできると思うのか」と大学側を批判した。
議論は記者逮捕が各メディアで大きく取り上げられなかったことにも及んだ。
岩橋氏は「同業他社が関係各方面に配慮し、事なかれ主義に走ったのではないか。他社がこの事案を過小評価した可能性もある」として「メディアは権力行使のありようについて鈍感であってはならない」と訴えた。
■記者逮捕の妥当性
労連検証チームのメンバーである岩橋氏は道新の対応について「初動、実名報道の是非、説明責任」の三つの問題があると指摘。建造物侵入罪が成立しない可能性があるにもかかわらず「外形的事実として争いようがない」「法律違反が成立している可能性が高い」という道新の判断はまるで捜査機関の言い分のようだと断じた。そのうえで「取材目的」という正当な理由があったと、当初から主張すべきだったと強調した。
記者がスマートフォンで会議を録音していた行為を、道新が「盗聴していた」と表現したことも問題視され、臺氏や金平氏は「記者が犯罪人であるかのような対応だ」「言論機関のマネジメントにかかわる人間が発する言葉か、と耳を疑った」などと厳しく批判した。
実名報道については「拙速な判断だった」(岩橋氏)という指摘の一方で、逮捕の不当性を訴えるためには実名もありうるとの意見もあった。
臺氏は「懲罰的な実名報道ではなく、誤った権力行使で逮捕されたという立場から実名を選択すべき事案だった」。安藤氏も「事実を記録して訴えるためには、だれが逮捕されたかという名前がないと戦えないというのが現時点の結論だ」とした。
道新の説明責任については「社内調査報告をホームページの会員登録をしなければ読めない記事に指定していた。メディアとしてよりオープンな態度が必要だった」(岩橋氏)、「調査報告の書きぶりに組合員から『責任を現場に押し付けているだけだ』という声が強く上がった」(安藤氏)など、発表手法や説明の不十分さが批判された。
■労組・報道機関の構え
吉永氏が「こうした事案はこれから増えてくるかもしれない」と懸念を示し、岩橋氏は「(新聞労連として)記者がもし逮捕されそうになったらどうするか、についてまとめた小冊子を作る予定だ」と報告した。
金平氏は「職業的な報道マンやジャーナリストへの根源的な疑いが出てきている」として、「ひるむな、萎縮するな」と現場記者たちにエールを送った。
♢
パネル討論のあと、道新労組と新聞労連がこれまでの取り組みを報告した。吉永氏は「メモ的録音は問題なのか、議論していくべきだ」と問題提起した。
高田正基(JCJ北海道支部代表委員)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年6月25日号
2022年01月05日
【リアル北朝鮮】来年も金正恩氏の誕生日は平日 経済の立て直しを優先?=文聖姫
今年も残すところあとわずか。来年のカレンダーも数々販売、配布されている。どんなものを購入しようか、あるいはいただいたカレンダーの中からどれを飾ろうか、などと悩む毎日である。
北朝鮮もカレンダーを発行しているが、韓国のKBSが入手したものを見ると、来年も金正恩総書記の誕生日である1月8日は祝日ではない。その代わり、「先代」である故金日成主席と故金正日総書記の誕生日は祝日になっている。
今年1月に開催された朝鮮労働党第8回大会で総書記に就任した金正恩氏は、すでに祖父や父と同じ「領袖」の位置に就いたと考えられる。それなのになぜ、いまだに誕生日は祝日にならないのか。また、肖像画や肖像バッジが出回っているという話も聞かない。
理由は二つ考えられる。一つ目は、先代の指導者を敬う謙虚さを示すことの方が人々に受け入れられやすいという点だ。それが道徳的にも評価されるからだ。
二点目は、いまだ人民生活の向上という執権当初からの課題を解決できていない状況で、自身の誕生日を祝日にはできないことをアピールする狙いがあるのではないかと思う。むしろ、誕生日にも精力的に働くことを示すことの方が人民受けしやすい。もちろん、北朝鮮が祝日でない理由について明らかにはしておらず、あくまで推測にしか過ぎないのだが。
金正恩氏は12月1日に開かれた政治局会議で、経済が安定的に管理されたと発言した。農業部門と住宅建設などで成果が出ている模様だ。5カ年経済計画1年目に何としても成果をアピールしたい思惑が垣間見える。金正恩氏が自身の誕生日を心から祝ってもらうためにも、経済の立て直しは必須の課題だろう。
※ ※
「リアル北朝鮮」は今号で終わりです。このコラムを通じて、少しでも北朝鮮の人々の息吹を感じていただけたら幸いです。ありがとうございました。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年12月25日号
北朝鮮もカレンダーを発行しているが、韓国のKBSが入手したものを見ると、来年も金正恩総書記の誕生日である1月8日は祝日ではない。その代わり、「先代」である故金日成主席と故金正日総書記の誕生日は祝日になっている。
今年1月に開催された朝鮮労働党第8回大会で総書記に就任した金正恩氏は、すでに祖父や父と同じ「領袖」の位置に就いたと考えられる。それなのになぜ、いまだに誕生日は祝日にならないのか。また、肖像画や肖像バッジが出回っているという話も聞かない。
理由は二つ考えられる。一つ目は、先代の指導者を敬う謙虚さを示すことの方が人々に受け入れられやすいという点だ。それが道徳的にも評価されるからだ。
二点目は、いまだ人民生活の向上という執権当初からの課題を解決できていない状況で、自身の誕生日を祝日にはできないことをアピールする狙いがあるのではないかと思う。むしろ、誕生日にも精力的に働くことを示すことの方が人民受けしやすい。もちろん、北朝鮮が祝日でない理由について明らかにはしておらず、あくまで推測にしか過ぎないのだが。
金正恩氏は12月1日に開かれた政治局会議で、経済が安定的に管理されたと発言した。農業部門と住宅建設などで成果が出ている模様だ。5カ年経済計画1年目に何としても成果をアピールしたい思惑が垣間見える。金正恩氏が自身の誕生日を心から祝ってもらうためにも、経済の立て直しは必須の課題だろう。
※ ※
「リアル北朝鮮」は今号で終わりです。このコラムを通じて、少しでも北朝鮮の人々の息吹を感じていただけたら幸いです。ありがとうございました。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年12月25日号
2021年12月10日
【リアル北朝鮮】中国との鉄道貿易再開?国境封鎖で物資が枯渇=文聖姫
中国と北朝鮮が鉄道貿易の再開を準備中だという。韓国統一部当局者が11月4日、そのように語ったと「聯合ニュース」4日付が報じた。ただし、具体的な再開の時点は予想できないという。
ここへ来て、中朝の鉄道貿易が再開の兆しを見せ始めた背景には何があるのか。新型コロナ禍で長引く国境封鎖によって、北朝鮮で物資が枯渇していることは想像にかたくない。
最近開かれた国会にあたる最高人民会議などでは、資源や原材料の再利用が再三強調されている。それだけ、原材料が不足していることの証だろう。物資の不足を何とか解消するためには、少しずつでも海外から物資を輸入する必要が生じているのではないか。それには貿易の90%を占めると言われる中国との貿易を本格的に再開することが一番の解決策だ。
もちろん、これまでも中朝貿易が完全に遮断されていたわけではないだろう。少し前には船を使って海上で物資を搬入しているという報道もあった。個人的な貿易がストップしているかどうかは確認のしようがない。今年3月から少しずつ貿易が再開されていたとも報じられてもいる。ただし、新型コロナ禍前の水準に回復しているとは到底言えないだろう。
ところで、鉄道を使った貿易というが、北朝鮮では列車がよく止まったり、遅延したりする。私も何度か列車で平壌から地方に行ったことがあるが、時間どおりに目的地に着けたためしがない。途中の駅で夜を明かすこともあるほどだ。
だが、そのおかげで北朝鮮の人々のたくましさを垣間見ることができた。線路上に、列車の客を目当てにした市が立つのだ。お弁当や酒、果物などを売る商売人たち。なかには洗面用の水を売る子供もいた。
ネットフリックスで配信中の「愛の不時着」でも、列車が止まると商売人たちが駆けつけて物を売るシーンが登場するが、北朝鮮での体験を思い出して、懐かしかった。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年11月25日号
ここへ来て、中朝の鉄道貿易が再開の兆しを見せ始めた背景には何があるのか。新型コロナ禍で長引く国境封鎖によって、北朝鮮で物資が枯渇していることは想像にかたくない。
最近開かれた国会にあたる最高人民会議などでは、資源や原材料の再利用が再三強調されている。それだけ、原材料が不足していることの証だろう。物資の不足を何とか解消するためには、少しずつでも海外から物資を輸入する必要が生じているのではないか。それには貿易の90%を占めると言われる中国との貿易を本格的に再開することが一番の解決策だ。
もちろん、これまでも中朝貿易が完全に遮断されていたわけではないだろう。少し前には船を使って海上で物資を搬入しているという報道もあった。個人的な貿易がストップしているかどうかは確認のしようがない。今年3月から少しずつ貿易が再開されていたとも報じられてもいる。ただし、新型コロナ禍前の水準に回復しているとは到底言えないだろう。
ところで、鉄道を使った貿易というが、北朝鮮では列車がよく止まったり、遅延したりする。私も何度か列車で平壌から地方に行ったことがあるが、時間どおりに目的地に着けたためしがない。途中の駅で夜を明かすこともあるほどだ。
だが、そのおかげで北朝鮮の人々のたくましさを垣間見ることができた。線路上に、列車の客を目当てにした市が立つのだ。お弁当や酒、果物などを売る商売人たち。なかには洗面用の水を売る子供もいた。
ネットフリックスで配信中の「愛の不時着」でも、列車が止まると商売人たちが駆けつけて物を売るシーンが登場するが、北朝鮮での体験を思い出して、懐かしかった。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年11月25日号
2021年11月01日
【リアル北朝鮮】南北通信回線再稼働 対韓は融和 対米は強気=文聖姫
10月4日午前9時、南北間のすべての通信回線が再開された。金正恩・朝鮮労働党総書記はこれに先立つ9月29日、最高人民会議第14期第5回会議で行った施政演説で、「北南関係が一日も早く回復し、朝鮮半島に堅固な平和が宿ることを願う全民族の期待と念願を実現するための努力の一環」として、10月初めから南北の通信回線を復旧すると表明していた。
北朝鮮は昨年6月9日、韓国の脱北者団体が金正恩氏を批判するビラを散布したことに反発し、南北の通信回線を一方的に遮断した。同月16日には、開城にある南北共同連絡事務所を爆破した。それから約1年後の今年7月に通信回線を復旧させたが、8月の米韓合同軍事演習などに反発して再び遮断していた。
今回再度通信回線を復旧させた背景には、南北関係を早期に改善させようという意図があるものと思われる。通信回線復旧を伝えた北朝鮮国営・朝鮮中央通信は4日、「通信回線の再稼働の意味を深く刻み、北南関係を収拾し、今後の明るい前途を開いていくうえで優先すべき重大課題を解決するために努力すべき」だとして、韓国が対北朝鮮敵視政策を撤回するよう求めた。
北朝鮮が南北関係改善を求める主な目的は、経済協力の再開にあるといえる。ただ、韓国の文在寅政権がいくら経済協力を再開したいと思っても、国連安保理決議に基づく経済制裁がある限り、簡単には進まない。通信回線の再稼働の意味を深く刻めというのは、通信回線を復旧させたのだから、次は韓国が行動するべきだろうというようにも聞こえる。
金正恩氏は施政演説で、アメリカに対しては、「われわれに対するアメリカの軍事的威嚇と敵視政策は少しも変わっていない」と牽制した。韓国に対しては融和姿勢をとり、アメリカに対しては引き続き強気の姿勢で臨んでいるように見える。まずは、韓国を動かし、その後は米国と、というシナリオなのかもしれない。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年10月25日号
北朝鮮は昨年6月9日、韓国の脱北者団体が金正恩氏を批判するビラを散布したことに反発し、南北の通信回線を一方的に遮断した。同月16日には、開城にある南北共同連絡事務所を爆破した。それから約1年後の今年7月に通信回線を復旧させたが、8月の米韓合同軍事演習などに反発して再び遮断していた。
今回再度通信回線を復旧させた背景には、南北関係を早期に改善させようという意図があるものと思われる。通信回線復旧を伝えた北朝鮮国営・朝鮮中央通信は4日、「通信回線の再稼働の意味を深く刻み、北南関係を収拾し、今後の明るい前途を開いていくうえで優先すべき重大課題を解決するために努力すべき」だとして、韓国が対北朝鮮敵視政策を撤回するよう求めた。
北朝鮮が南北関係改善を求める主な目的は、経済協力の再開にあるといえる。ただ、韓国の文在寅政権がいくら経済協力を再開したいと思っても、国連安保理決議に基づく経済制裁がある限り、簡単には進まない。通信回線の再稼働の意味を深く刻めというのは、通信回線を復旧させたのだから、次は韓国が行動するべきだろうというようにも聞こえる。
金正恩氏は施政演説で、アメリカに対しては、「われわれに対するアメリカの軍事的威嚇と敵視政策は少しも変わっていない」と牽制した。韓国に対しては融和姿勢をとり、アメリカに対しては引き続き強気の姿勢で臨んでいるように見える。まずは、韓国を動かし、その後は米国と、というシナリオなのかもしれない。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年10月25日号
2021年10月09日
【リアル北朝鮮】長引く経済的苦境 不良青年≠スちを建設現場に=文聖姫
8月28日は北朝鮮の「青年節」だ。今年は60周年とあって、とりわけ大きなイベントが開催された模様だ。地方も含め1万人以上の若者たちが平壌に集まり、大会などに出席しただけでなく、コンサートを観覧したり、夜会に参加したり。夜間営業が基本の遊園地で絶叫マシーンにも興じた。
そんな彼らにとって、一番の栄誉は金正恩朝鮮労働党総書記と会って写真を撮ったことだ。北朝鮮で最も栄誉とされるのは、「最高指導者との接見」だ。記念写真は家宝である。北朝鮮の家を訪れるとわかるが、歴代の最高指導者と写した写真は必ず家の一番良い場所に掲げられている。1万人といえば、本人の顔は米粒のようでほとんどわからないが、それでも一家の誉なのである。
ところで、この「青年節」に際し、金正恩総書記は、困難で過酷な経済建設現場に自ら志願して行くこととなった若者たちに祝賀文を送った。そこでこんなことを言っている。「私が何よりうれしいのは、立ち遅れた青年たちが愛国で団結した社会主義愛国青年同盟の一員らしく、母なる祖国のために自らを捧げる立派な決心を抱き、困難で韓国な部門に進出することで人生の再出発をしたことです」。
「立ち遅れた青年」とは、北朝鮮流にいえば、非社会主義行為を働いてきた若者たちを指すのであろう。非社会主義行為にはいろいろあるが、たとえば韓流ドラマをひそかに見ることも当てはまる。最近では服装の乱れなども非社会主義的行為とされる。それだけ当局が若者たちの非行に頭を痛めている証拠だろう。
金総書記は、困難で過酷な建設現場へと向かう、かつての不良青年たちに会い、写真まで撮った。何とかして若者たちの心をつかみ取りたいという気持ちが伝わってくる。
長引く経済制裁に相次ぐ自然災害、さらには新型コロナによる国境封鎖で経済的困難にある北朝鮮。最近の若者懐柔策を見ていると、北朝鮮の苦境が伝わってくる。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年9月25日号
そんな彼らにとって、一番の栄誉は金正恩朝鮮労働党総書記と会って写真を撮ったことだ。北朝鮮で最も栄誉とされるのは、「最高指導者との接見」だ。記念写真は家宝である。北朝鮮の家を訪れるとわかるが、歴代の最高指導者と写した写真は必ず家の一番良い場所に掲げられている。1万人といえば、本人の顔は米粒のようでほとんどわからないが、それでも一家の誉なのである。
ところで、この「青年節」に際し、金正恩総書記は、困難で過酷な経済建設現場に自ら志願して行くこととなった若者たちに祝賀文を送った。そこでこんなことを言っている。「私が何よりうれしいのは、立ち遅れた青年たちが愛国で団結した社会主義愛国青年同盟の一員らしく、母なる祖国のために自らを捧げる立派な決心を抱き、困難で韓国な部門に進出することで人生の再出発をしたことです」。
「立ち遅れた青年」とは、北朝鮮流にいえば、非社会主義行為を働いてきた若者たちを指すのであろう。非社会主義行為にはいろいろあるが、たとえば韓流ドラマをひそかに見ることも当てはまる。最近では服装の乱れなども非社会主義的行為とされる。それだけ当局が若者たちの非行に頭を痛めている証拠だろう。
金総書記は、困難で過酷な建設現場へと向かう、かつての不良青年たちに会い、写真まで撮った。何とかして若者たちの心をつかみ取りたいという気持ちが伝わってくる。
長引く経済制裁に相次ぐ自然災害、さらには新型コロナによる国境封鎖で経済的困難にある北朝鮮。最近の若者懐柔策を見ていると、北朝鮮の苦境が伝わってくる。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年9月25日号
2021年09月23日
【慰安婦問題】名乗り出て30年 記者たちが証言 開戦50年企画の取材記事 23年後に突然バッシング=須貝道雄
旧日本軍によって従軍慰安婦にされた韓国人女性、金学順(キム・ハクスン)さんが、自分は元慰安婦だったと記者会見で明らかにしてから30年。8月7日、東京のプレスセンターホールで、植村訴訟最終報告会を兼ね「金学順さんが名乗り出た時――記者たちの証言」のシンポが開かれた。金さんのカミングアウトがいかに世を変えたか、その言葉の重みを再確認する場となった。
金さんがソウルで初めて記者会見に臨んだのは1991年8月14日。韓国のメディア向けだった。この会見が国際的な反響を呼んだ。
日本人記者も会見の前後に様々に取材した。証言テープを聞いて金さんの存在をいち早く報じたのが当時、朝日新聞大阪社会部記者だった植村隆さん(現「週刊金曜日」発行人)だ。その事情を当時の朝日新聞ソウル支局長、小田川興さんは語った。
韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)の共同代表、尹貞玉(ユン・ジョンオク)さんから元従軍慰安婦の女性が「ついに名乗り出た」と連絡を受けた。「だれに取材させるか思案した。日韓の政治が動いている時で支局は多忙だった。その時、大阪にいる植村記者から電話が入った。話をすると、彼は『明日行きます』と。そこから物語が始まった」
植村さんは91年8月10日に金さんの証言テープを聞き、翌11日付の朝日新聞大阪版・社会面トップに「思い出すと今も涙」の見出しで記事を書いた。それが23年後に「ねつ造」だと不当なバッシングを受けることになる。
植村記事の直後に、北海道新聞ソウル支局長だった喜多義憲さんが金さんへの単独インタビューに成功し、8月15日付社会面に「日本政府は責任を」の記事と金さんの写真を載せた。
シンポで喜多さんは「(太平洋戦争の)開戦50年企画で慰安婦問題をやろうと7月ごろから取材していた。メディアと会うと決心する女性がもし現れたら、まず私に連絡してと(挺対協の)尹さんにダメもとでお願いしていた。そうしたら8月13日に尹さんから話が来て、本当かと驚いた。14日午後2時から金さんへのインタビューが実現した」
金さん(1924年生まれ)の父親は抗日運動にかかわり、日本軍に銃殺されたという。その反骨精神は娘にも引き継がれ、従軍慰安婦の問題を世に訴える「役割を担ったのではないか」と喜多さんは受け止めている。
植村バッシング問題のドキュメンタリー「標的」を制作した元RKB毎日放送の西嶋真司さんもソウル支局長時代の91年末、金さんを取材した。「13分のインタビュー映像がある。だがTBSが持っていて使えない。今はメディアが慰安婦問題をタブー視している」と現状を語った。
毎日新聞記者の明珍美紀さんは韓国メディア向けに開かれた8月14日の金さんの会見に出席していた。「後ろの方にいた。異様な熱気だった。ふり絞るような声と涙。迫力に圧倒されたのを覚えている」。明珍さんはその後、金さんと会い、9月28日付毎日新聞に「消えぬ朝鮮人慰安婦の傷」の見出しで「記者の目」を書いた。
シンポには元NHKディレクターの池田恵理子さんも出席し、慰安婦問題を歴史から消そうとする動きが1997年から始まった模様を明らかにした。
須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年8月25日号
2021年08月04日
【リアル北朝鮮】男女平等まで道半ば 金総書記長 時代錯誤な書簡=文聖姫
「夫が党と革命に忠実であるよう世話をし、子供たちを社会主義朝鮮の頼もしい担い手に育て、和やかで団らんな家庭を作るという女性たちの役割は誰も代われるものではありません」
男性と同じように女性が活躍することが当然のこととして認識されている世の中で、少々時代錯誤な感が否めない文章だ。金正恩総書記が6月20、21日に平壌で開催された朝鮮社会主義女性同盟第7回大会参加者に送った書簡(6月20日付)に含まれているものだ。北朝鮮が厳然として男性社会であることを如実に示していると思う。
党の幹部会議などの映像を見ても、参加者はほとんどが男性だ。たまに女性が登場しても、金総書記の妹、金与正氏や秘書的な役割を果たしていると思われる玄松月・朝鮮労働党副部長などといった「有名人」たちだ。なにしろ北朝鮮では「雌鶏歌えば家滅ぶ」ということわざが浸透しており、女性が政治に口を出すことを良しとしない雰囲気がある。金総書記の書簡も、そういった男尊女卑の考えが反映されているのではないだろうか。
問題は女性たちにもある。北朝鮮の女性たちはいまだに、良き妻、良き母となることが最も重要だと考えている。日本の区長にあたる女性の人民委員会委員長を男女平等の企画で取材したことがある。彼女は、夫や姑、子供たちの理解があったから仕事をやってこられたと言いながら、こう続けた。「自分が仕事で家をあけたり、家事や子育てができないことを申し訳なく思った」と。
北朝鮮で女性の社会進出率は意外と高い。日本の国会にあたる最高人民会議の代議員にも女性が多く含まれる。小学校や中学校の校長、協同農場の管理委員長などは圧倒的に女性たちだ。
現在の北朝鮮政府ができる前に組織された北朝鮮臨時人民委員会は1946年7月30日、男女平等権法令を採択した。それから75年、真の意味での男女平等への道はまだ半ばだ。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年7月25日号
男性と同じように女性が活躍することが当然のこととして認識されている世の中で、少々時代錯誤な感が否めない文章だ。金正恩総書記が6月20、21日に平壌で開催された朝鮮社会主義女性同盟第7回大会参加者に送った書簡(6月20日付)に含まれているものだ。北朝鮮が厳然として男性社会であることを如実に示していると思う。
党の幹部会議などの映像を見ても、参加者はほとんどが男性だ。たまに女性が登場しても、金総書記の妹、金与正氏や秘書的な役割を果たしていると思われる玄松月・朝鮮労働党副部長などといった「有名人」たちだ。なにしろ北朝鮮では「雌鶏歌えば家滅ぶ」ということわざが浸透しており、女性が政治に口を出すことを良しとしない雰囲気がある。金総書記の書簡も、そういった男尊女卑の考えが反映されているのではないだろうか。
問題は女性たちにもある。北朝鮮の女性たちはいまだに、良き妻、良き母となることが最も重要だと考えている。日本の区長にあたる女性の人民委員会委員長を男女平等の企画で取材したことがある。彼女は、夫や姑、子供たちの理解があったから仕事をやってこられたと言いながら、こう続けた。「自分が仕事で家をあけたり、家事や子育てができないことを申し訳なく思った」と。
北朝鮮で女性の社会進出率は意外と高い。日本の国会にあたる最高人民会議の代議員にも女性が多く含まれる。小学校や中学校の校長、協同農場の管理委員長などは圧倒的に女性たちだ。
現在の北朝鮮政府ができる前に組織された北朝鮮臨時人民委員会は1946年7月30日、男女平等権法令を採択した。それから75年、真の意味での男女平等への道はまだ半ばだ。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年7月25日号
2021年07月19日
問題法案 続々成立 改憲投票法 立民の修正案は疑問=編集部
コロナ渦のどさくさに紛れ、今国会にも「壊憲」の問題法案が続々出された。メディア報道も追いつかず、委員会所属者以外、衆参議員も法案検討の余裕すらない。本来、国会提出前の検討が重要だが、政策審議より政局優先の与党の姿勢が問題に拍車をかけている。
今国会では、8国会にわたって継続審議のまま手つかずだった改憲手続法(国民投票法)の改正が成立した。広告規制や改憲運動への資金規制、最低投票率など、公選法と違う改憲国民投票の意味や投票の公正を保障する議論が全くないまま、「今国会で結論を得る」という自民・二階、森山、立憲・福山、安住の幹事長・国対委員長会談に縛られ、参院でもあっさり通過、成立した。
「3年後を目途に見直す」という「付則」をつけた修正案をなぜか立憲民主党が出し、与党が丸呑み。どこで何が動いたかはわからないが、「政策」より「国会対策技術」が優先した結果だ。
一方で外国人の強制収容などの管理強化を狙った入管法改正は、国際的な批判やスリランカ女性の死もあり、自民党は今国会成立を断念した。
命と生活の問題
国民生活に直接関わる問題なのに、これもほとんど報じられないまま通ってしたのが、高齢者医療費の倍増。現在個人負担は1割の75歳以上の老人医療について、年間200万円(月16・6万円)の収入があると倍の2割になる法案。6月4日あっさり成立。
コロナ禍が日本の医療体制の脆弱さを明らかにした中、病院のベッド数削減と医師の長時間労働を進める「恥知らず」の医療法の改定も5月21日あっさり成立した。
1割以上の削減を行った病院に対して補助を強化、全国での病床数削減を狙い、OECD諸国では最低の医師養成数の削減を前提に過労死ラインを超える医師の長時間労働を認めている。
国民管理と監視
ひどかったのは膨大な「デジタル庁関連法案」の扱い。とにかく個人情報を政府に集中、自由に使うため一元管理するとの意図は明確なのにろくに議論ー使用を義務づけるなど、個々にみれば、数年かかる議論が必要なのに5月12日早々と成立した。
国民の情報を管理し、監視する体制は、基地などの周辺から合法化し、強化しようという「重要土地党調査規制法案」で具体化している。防衛施設のほか、原発、空港どの周辺を「注視区域」とするなど、所有者の調査や規制を可能にする。既に基地周辺での写真撮影やデモ、宣伝活動などが勝手に規制されており、さすがにこれは、最終版国会の焦点になった。
18―19歳を「特定少年」として厳罰化する少年法改定も成立した。犯罪防止には逆行である。
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年6月25日号
今国会では、8国会にわたって継続審議のまま手つかずだった改憲手続法(国民投票法)の改正が成立した。広告規制や改憲運動への資金規制、最低投票率など、公選法と違う改憲国民投票の意味や投票の公正を保障する議論が全くないまま、「今国会で結論を得る」という自民・二階、森山、立憲・福山、安住の幹事長・国対委員長会談に縛られ、参院でもあっさり通過、成立した。
「3年後を目途に見直す」という「付則」をつけた修正案をなぜか立憲民主党が出し、与党が丸呑み。どこで何が動いたかはわからないが、「政策」より「国会対策技術」が優先した結果だ。
一方で外国人の強制収容などの管理強化を狙った入管法改正は、国際的な批判やスリランカ女性の死もあり、自民党は今国会成立を断念した。
命と生活の問題
国民生活に直接関わる問題なのに、これもほとんど報じられないまま通ってしたのが、高齢者医療費の倍増。現在個人負担は1割の75歳以上の老人医療について、年間200万円(月16・6万円)の収入があると倍の2割になる法案。6月4日あっさり成立。
コロナ禍が日本の医療体制の脆弱さを明らかにした中、病院のベッド数削減と医師の長時間労働を進める「恥知らず」の医療法の改定も5月21日あっさり成立した。
1割以上の削減を行った病院に対して補助を強化、全国での病床数削減を狙い、OECD諸国では最低の医師養成数の削減を前提に過労死ラインを超える医師の長時間労働を認めている。
国民管理と監視
ひどかったのは膨大な「デジタル庁関連法案」の扱い。とにかく個人情報を政府に集中、自由に使うため一元管理するとの意図は明確なのにろくに議論ー使用を義務づけるなど、個々にみれば、数年かかる議論が必要なのに5月12日早々と成立した。
国民の情報を管理し、監視する体制は、基地などの周辺から合法化し、強化しようという「重要土地党調査規制法案」で具体化している。防衛施設のほか、原発、空港どの周辺を「注視区域」とするなど、所有者の調査や規制を可能にする。既に基地周辺での写真撮影やデモ、宣伝活動などが勝手に規制されており、さすがにこれは、最終版国会の焦点になった。
18―19歳を「特定少年」として厳罰化する少年法改定も成立した。犯罪防止には逆行である。
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年6月25日号
2021年07月02日
【リアル北朝鮮】5年ぶり党規約改正 集団指導体制へ転換か=文聖姫
北朝鮮で今年1月に開催された朝鮮労働党第8回大会では、5年ぶりに党の規約が改正された。最近、その内容が明らかになった。
『日本経済新聞』6月10日付によると、序文から「先軍」の文字が消え、「主体」も大幅に減ったという。「金日成同志と金正日同志の遺訓」という表現も削られた。先軍は金正日政権時代を象徴する言葉だ。金正日政権時代、北朝鮮では建国以来最悪と言われる経済難に見舞われた。その困難を乗り切るうえで、金正日総書記は軍事優先路線を掲げ、核兵器やミサイルの開発を進めた。主体は金日成主席が提唱した主体思想からきている。
先代を象徴する言葉が消えるか、大幅に減った点、さらには両先代の「遺訓」という表現が削除された点などを考えると、金正恩総書記がいよいよ“独り立ち”を宣言したものととれる。すでに自らの体制は十分に固まったといえるが、今後はさらに先代のやり方にこだわらず、自らの方法で国を運営していくと予測するのも可能だ。
今回の党規約改正では、「人民大衆第一主義」が打ち出されたという。第8回党大会で北朝鮮指導部は5カ年経済計画を発表した。具体的な内容は明らかにされていないが、同計画に沿って経済が運営されており、『労働新聞』などのメディアでは連日達成された成果が報じられている。一方で、思うように成果が出ていないのではないかとも思われる。というのも、6月に入り、立て続けに党の会議が開催されているからだ。そこでは、経済問題と人民生活の安定が強調されている。最近の論調を見ても、北朝鮮の喫緊の課題が経済の立て直しであることが分かる。
一方、改正された規約では、「第一書記」のポストを新設し、「金正恩総書記の代理人」と規定した。現段階では第一書記が誰なのかは明らかになっていない。だが、金正恩総書記に継ぐポストが新設されたことは、北朝鮮が集団指導体制を推し進める兆候ではないか。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年6月25日号
『日本経済新聞』6月10日付によると、序文から「先軍」の文字が消え、「主体」も大幅に減ったという。「金日成同志と金正日同志の遺訓」という表現も削られた。先軍は金正日政権時代を象徴する言葉だ。金正日政権時代、北朝鮮では建国以来最悪と言われる経済難に見舞われた。その困難を乗り切るうえで、金正日総書記は軍事優先路線を掲げ、核兵器やミサイルの開発を進めた。主体は金日成主席が提唱した主体思想からきている。
先代を象徴する言葉が消えるか、大幅に減った点、さらには両先代の「遺訓」という表現が削除された点などを考えると、金正恩総書記がいよいよ“独り立ち”を宣言したものととれる。すでに自らの体制は十分に固まったといえるが、今後はさらに先代のやり方にこだわらず、自らの方法で国を運営していくと予測するのも可能だ。
今回の党規約改正では、「人民大衆第一主義」が打ち出されたという。第8回党大会で北朝鮮指導部は5カ年経済計画を発表した。具体的な内容は明らかにされていないが、同計画に沿って経済が運営されており、『労働新聞』などのメディアでは連日達成された成果が報じられている。一方で、思うように成果が出ていないのではないかとも思われる。というのも、6月に入り、立て続けに党の会議が開催されているからだ。そこでは、経済問題と人民生活の安定が強調されている。最近の論調を見ても、北朝鮮の喫緊の課題が経済の立て直しであることが分かる。
一方、改正された規約では、「第一書記」のポストを新設し、「金正恩総書記の代理人」と規定した。現段階では第一書記が誰なのかは明らかになっていない。だが、金正恩総書記に継ぐポストが新設されたことは、北朝鮮が集団指導体制を推し進める兆候ではないか。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年6月25日号
2021年06月28日
台湾海峡有事と憲法 米国追従の日本 民間人も戦地へ 法の秩序を無視 メディアにも責任=徳山喜雄
ことしの憲法記念日は、例年に増して憂鬱な日となった。一つは新型コロナ対策の緊急事態宣言のなかで迎えたこと、もう一つは4月の日米首脳会談の共同声明が52年ぶりに「台湾」にふれ、日中の緊張がいっきょに高まったことだ。
「一つの中国」を譲らない中国と台湾の両岸問題は微妙で、取り扱いを間違えれば「爆発」しかねない。ジョー・バイデン米大統領は習近平国家主席を「専制主義者」と名指しし、3月末の就任後初の記者会見においても米中関係を「21世紀における民主主義と専制主義の闘い」と位置づけている。
中国の台湾侵攻
共同声明は、中国に対し対決姿勢を強める米国に日本が追従したかたちだ。憂鬱になるおおもとは、安倍晋三政権による2014年の憲法9条の解釈変更に端を発し、その翌年に可決された安全保障関連法(安保法制)の存在にある。
安保関連法によって日本は、自国が攻められたときにのみ個別的自衛権を発動するという段階から、緊密な関係にある米国が攻撃された場合も応戦するという役割を担うことになった。米軍司令官は「中国の台湾侵攻は、6年以内に起こりうる」と3月の米上院公聴会で証言しており、安保法制が発動されることに現実味がでてきた。
今夏の中国共産党の結党百周年と、22年の北京冬季五輪を終え、習主席が台湾問題を優先し軸足を置いたなら、台湾海峡に激しい波浪が押し寄せる可能性がある。米軍が出動するということになれば、日本はこれまでとまったく違った対応を迫られることになる。
安保法制では、日本の平和と安全に影響を与える「重要影響事態」となれば米軍の後方支援をおこなうことになり、台湾海峡有事によって日本の存立が脅かさる「存立危機事態」になれば自衛隊は集団的自衛権を発動して武力行使できるとする。仮に米軍基地がある沖縄が攻撃されれば、日本有事を意味する「武力攻撃事態」と考えられ、個別的自衛権を行使することになる。
兵站を担う民間
ここで留意したいのは、中国が台湾に侵攻し米軍が介入した際、戦地に送られるのは自衛隊員だけではないということだ。状況次第では、兵站のために民間の船舶や船舶従業員が動員されることになる。
専守防衛に徹してきた自衛隊の前線への兵站能力は限定的で、民間に頼らざるをえないというのが関係者の見方だ。医療行為のために医師や看護師らが派遣されることにもなりかねない。
中国の近年の覇権主義的な動きをみるにつけ、絵空事とは思えない。法律には成立後すぐに使われるものと、年月を経て使われるものがある。安保法制が可決されて6年になるが、10年を迎えるころにあるかもしれないのである。選択は間違っていなかったのか。(→続きを読む)
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「一つの中国」を譲らない中国と台湾の両岸問題は微妙で、取り扱いを間違えれば「爆発」しかねない。ジョー・バイデン米大統領は習近平国家主席を「専制主義者」と名指しし、3月末の就任後初の記者会見においても米中関係を「21世紀における民主主義と専制主義の闘い」と位置づけている。
中国の台湾侵攻
共同声明は、中国に対し対決姿勢を強める米国に日本が追従したかたちだ。憂鬱になるおおもとは、安倍晋三政権による2014年の憲法9条の解釈変更に端を発し、その翌年に可決された安全保障関連法(安保法制)の存在にある。
安保関連法によって日本は、自国が攻められたときにのみ個別的自衛権を発動するという段階から、緊密な関係にある米国が攻撃された場合も応戦するという役割を担うことになった。米軍司令官は「中国の台湾侵攻は、6年以内に起こりうる」と3月の米上院公聴会で証言しており、安保法制が発動されることに現実味がでてきた。
今夏の中国共産党の結党百周年と、22年の北京冬季五輪を終え、習主席が台湾問題を優先し軸足を置いたなら、台湾海峡に激しい波浪が押し寄せる可能性がある。米軍が出動するということになれば、日本はこれまでとまったく違った対応を迫られることになる。
安保法制では、日本の平和と安全に影響を与える「重要影響事態」となれば米軍の後方支援をおこなうことになり、台湾海峡有事によって日本の存立が脅かさる「存立危機事態」になれば自衛隊は集団的自衛権を発動して武力行使できるとする。仮に米軍基地がある沖縄が攻撃されれば、日本有事を意味する「武力攻撃事態」と考えられ、個別的自衛権を行使することになる。
兵站を担う民間
ここで留意したいのは、中国が台湾に侵攻し米軍が介入した際、戦地に送られるのは自衛隊員だけではないということだ。状況次第では、兵站のために民間の船舶や船舶従業員が動員されることになる。
専守防衛に徹してきた自衛隊の前線への兵站能力は限定的で、民間に頼らざるをえないというのが関係者の見方だ。医療行為のために医師や看護師らが派遣されることにもなりかねない。
中国の近年の覇権主義的な動きをみるにつけ、絵空事とは思えない。法律には成立後すぐに使われるものと、年月を経て使われるものがある。安保法制が可決されて6年になるが、10年を迎えるころにあるかもしれないのである。選択は間違っていなかったのか。(→続きを読む)
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