2022年07月14日

【メディアウオッチ】「逮捕された記者こそ被害者」札幌で「取材の自由」を考えるフォーラム 大学・道新に厳しい批判=高田正基

                   
取材の自由.png

 新聞労連と北海道新聞労組主催の「『取材の自由]を考えるフォーラム」が5月22日、札幌市で開かれた(写真)。旭川医科大を取材中の道新記者が昨年6月、建造物侵入容疑で大学職員に現行犯逮捕(常人逮捕)された問題をテーマにパネル討論が行われ、「記者逮捕は不当だった」「道新の説明はまるで警察発表のようだ」など、大学や道新に対し厳しい批判が相次いだ
 日本ジャーナリスト会議などが後援し、道内外から会場、オンライン合わせて約60人が参加した。
 パネル討論は吉永磨美・新聞労連委員長の司会で、ジャーナリストの金平茂紀氏、「放送レポート」編集委員の臺宏士氏、岩橋拓郎・新聞労連新聞研究部長、安藤健・道新労組委員長の4人が意見交換した(臺氏と岩橋氏はこの事件の労連検証チームメンバー)。
 論点は@記者逮捕の妥当性A道新の会社対応の問題点B労組・報道機関はどう構えるべきか―の三つ。

■記者逮捕の妥当性

 臺氏は、不適切発言や経費の不正支出が問題になった旭川医大学長の解任を審議する学長選考会議を取材するのは、報道機関として「知る権利」に応えるものだったとして「記者は形式的に侵入したかもしれないが、取材活動の一環であり、報道の自由がある」「当該記者こそ犯罪の被害者だというアプローチの検討も必要だった」と指摘した。
 金平氏も「記者が大学に入ったことを建造物侵入という機械的な条文解釈で逮捕なんかできると思うのか」と大学側を批判した。
 議論は記者逮捕が各メディアで大きく取り上げられなかったことにも及んだ。
 岩橋氏は「同業他社が関係各方面に配慮し、事なかれ主義に走ったのではないか。他社がこの事案を過小評価した可能性もある」として「メディアは権力行使のありようについて鈍感であってはならない」と訴えた。

■記者逮捕の妥当性

 労連検証チームのメンバーである岩橋氏は道新の対応について「初動、実名報道の是非、説明責任」の三つの問題があると指摘。建造物侵入罪が成立しない可能性があるにもかかわらず「外形的事実として争いようがない」「法律違反が成立している可能性が高い」という道新の判断はまるで捜査機関の言い分のようだと断じた。そのうえで「取材目的」という正当な理由があったと、当初から主張すべきだったと強調した。
 記者がスマートフォンで会議を録音していた行為を、道新が「盗聴していた」と表現したことも問題視され、臺氏や金平氏は「記者が犯罪人であるかのような対応だ」「言論機関のマネジメントにかかわる人間が発する言葉か、と耳を疑った」などと厳しく批判した。
 実名報道については「拙速な判断だった」(岩橋氏)という指摘の一方で、逮捕の不当性を訴えるためには実名もありうるとの意見もあった。
臺氏は「懲罰的な実名報道ではなく、誤った権力行使で逮捕されたという立場から実名を選択すべき事案だった」。安藤氏も「事実を記録して訴えるためには、だれが逮捕されたかという名前がないと戦えないというのが現時点の結論だ」とした。
道新の説明責任については「社内調査報告をホームページの会員登録をしなければ読めない記事に指定していた。メディアとしてよりオープンな態度が必要だった」(岩橋氏)、「調査報告の書きぶりに組合員から『責任を現場に押し付けているだけだ』という声が強く上がった」(安藤氏)など、発表手法や説明の不十分さが批判された。

■労組・報道機関の構え

 吉永氏が「こうした事案はこれから増えてくるかもしれない」と懸念を示し、岩橋氏は「(新聞労連として)記者がもし逮捕されそうになったらどうするか、についてまとめた小冊子を作る予定だ」と報告した。
 金平氏は「職業的な報道マンやジャーナリストへの根源的な疑いが出てきている」として、「ひるむな、萎縮するな」と現場記者たちにエールを送った。
     ♢
 パネル討論のあと、道新労組と新聞労連がこれまでの取り組みを報告した。吉永氏は「メモ的録音は問題なのか、議論していくべきだ」と問題提起した。
 高田正基(JCJ北海道支部代表委員)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年6月25日号
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2022年01月05日

【リアル北朝鮮】来年も金正恩氏の誕生日は平日 経済の立て直しを優先?=文聖姫

  今年も残すところあとわずか。来年のカレンダーも数々販売、配布されている。どんなものを購入しようか、あるいはいただいたカレンダーの中からどれを飾ろうか、などと悩む毎日である。
 北朝鮮もカレンダーを発行しているが、韓国のKBSが入手したものを見ると、来年も金正恩総書記の誕生日である1月8日は祝日ではない。その代わり、「先代」である故金日成主席と故金正日総書記の誕生日は祝日になっている。
 今年1月に開催された朝鮮労働党第8回大会で総書記に就任した金正恩氏は、すでに祖父や父と同じ「領袖」の位置に就いたと考えられる。それなのになぜ、いまだに誕生日は祝日にならないのか。また、肖像画や肖像バッジが出回っているという話も聞かない。
 理由は二つ考えられる。一つ目は、先代の指導者を敬う謙虚さを示すことの方が人々に受け入れられやすいという点だ。それが道徳的にも評価されるからだ。
 二点目は、いまだ人民生活の向上という執権当初からの課題を解決できていない状況で、自身の誕生日を祝日にはできないことをアピールする狙いがあるのではないかと思う。むしろ、誕生日にも精力的に働くことを示すことの方が人民受けしやすい。もちろん、北朝鮮が祝日でない理由について明らかにはしておらず、あくまで推測にしか過ぎないのだが。
 金正恩氏は12月1日に開かれた政治局会議で、経済が安定的に管理されたと発言した。農業部門と住宅建設などで成果が出ている模様だ。5カ年経済計画1年目に何としても成果をアピールしたい思惑が垣間見える。金正恩氏が自身の誕生日を心から祝ってもらうためにも、経済の立て直しは必須の課題だろう。
※  ※
 「リアル北朝鮮」は今号で終わりです。このコラムを通じて、少しでも北朝鮮の人々の息吹を感じていただけたら幸いです。ありがとうございました。
 文聖姫(ジャーナリスト・博士)
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年12月25日号
 


 
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2021年12月10日

【リアル北朝鮮】中国との鉄道貿易再開?国境封鎖で物資が枯渇=文聖姫

  中国と北朝鮮が鉄道貿易の再開を準備中だという。韓国統一部当局者が11月4日、そのように語ったと「聯合ニュース」4日付が報じた。ただし、具体的な再開の時点は予想できないという。
 ここへ来て、中朝の鉄道貿易が再開の兆しを見せ始めた背景には何があるのか。新型コロナ禍で長引く国境封鎖によって、北朝鮮で物資が枯渇していることは想像にかたくない。
 最近開かれた国会にあたる最高人民会議などでは、資源や原材料の再利用が再三強調されている。それだけ、原材料が不足していることの証だろう。物資の不足を何とか解消するためには、少しずつでも海外から物資を輸入する必要が生じているのではないか。それには貿易の90%を占めると言われる中国との貿易を本格的に再開することが一番の解決策だ。
 もちろん、これまでも中朝貿易が完全に遮断されていたわけではないだろう。少し前には船を使って海上で物資を搬入しているという報道もあった。個人的な貿易がストップしているかどうかは確認のしようがない。今年3月から少しずつ貿易が再開されていたとも報じられてもいる。ただし、新型コロナ禍前の水準に回復しているとは到底言えないだろう。
 ところで、鉄道を使った貿易というが、北朝鮮では列車がよく止まったり、遅延したりする。私も何度か列車で平壌から地方に行ったことがあるが、時間どおりに目的地に着けたためしがない。途中の駅で夜を明かすこともあるほどだ。
 だが、そのおかげで北朝鮮の人々のたくましさを垣間見ることができた。線路上に、列車の客を目当てにした市が立つのだ。お弁当や酒、果物などを売る商売人たち。なかには洗面用の水を売る子供もいた。
 ネットフリックスで配信中の「愛の不時着」でも、列車が止まると商売人たちが駆けつけて物を売るシーンが登場するが、北朝鮮での体験を思い出して、懐かしかった。
 文聖姫(ジャーナリスト・博士)
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年11月25日号 
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2021年11月01日

【リアル北朝鮮】南北通信回線再稼働 対韓は融和 対米は強気=文聖姫

 10月4日午前9時、南北間のすべての通信回線が再開された。金正恩・朝鮮労働党総書記はこれに先立つ9月29日、最高人民会議第14期第5回会議で行った施政演説で、「北南関係が一日も早く回復し、朝鮮半島に堅固な平和が宿ることを願う全民族の期待と念願を実現するための努力の一環」として、10月初めから南北の通信回線を復旧すると表明していた。
 北朝鮮は昨年6月9日、韓国の脱北者団体が金正恩氏を批判するビラを散布したことに反発し、南北の通信回線を一方的に遮断した。同月16日には、開城にある南北共同連絡事務所を爆破した。それから約1年後の今年7月に通信回線を復旧させたが、8月の米韓合同軍事演習などに反発して再び遮断していた。
 今回再度通信回線を復旧させた背景には、南北関係を早期に改善させようという意図があるものと思われる。通信回線復旧を伝えた北朝鮮国営・朝鮮中央通信は4日、「通信回線の再稼働の意味を深く刻み、北南関係を収拾し、今後の明るい前途を開いていくうえで優先すべき重大課題を解決するために努力すべき」だとして、韓国が対北朝鮮敵視政策を撤回するよう求めた。

 北朝鮮が南北関係改善を求める主な目的は、経済協力の再開にあるといえる。ただ、韓国の文在寅政権がいくら経済協力を再開したいと思っても、国連安保理決議に基づく経済制裁がある限り、簡単には進まない。通信回線の再稼働の意味を深く刻めというのは、通信回線を復旧させたのだから、次は韓国が行動するべきだろうというようにも聞こえる。
 金正恩氏は施政演説で、アメリカに対しては、「われわれに対するアメリカの軍事的威嚇と敵視政策は少しも変わっていない」と牽制した。韓国に対しては融和姿勢をとり、アメリカに対しては引き続き強気の姿勢で臨んでいるように見える。まずは、韓国を動かし、その後は米国と、というシナリオなのかもしれない。
 文聖姫(ジャーナリスト・博士)
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年10月25日号
 


 
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2021年10月09日

【リアル北朝鮮】長引く経済的苦境 不良青年≠スちを建設現場に=文聖姫

 8月28日は北朝鮮の「青年節」だ。今年は60周年とあって、とりわけ大きなイベントが開催された模様だ。地方も含め1万人以上の若者たちが平壌に集まり、大会などに出席しただけでなく、コンサートを観覧したり、夜会に参加したり。夜間営業が基本の遊園地で絶叫マシーンにも興じた。
 そんな彼らにとって、一番の栄誉は金正恩朝鮮労働党総書記と会って写真を撮ったことだ。北朝鮮で最も栄誉とされるのは、「最高指導者との接見」だ。記念写真は家宝である。北朝鮮の家を訪れるとわかるが、歴代の最高指導者と写した写真は必ず家の一番良い場所に掲げられている。1万人といえば、本人の顔は米粒のようでほとんどわからないが、それでも一家の誉なのである。
 ところで、この「青年節」に際し、金正恩総書記は、困難で過酷な経済建設現場に自ら志願して行くこととなった若者たちに祝賀文を送った。そこでこんなことを言っている。「私が何よりうれしいのは、立ち遅れた青年たちが愛国で団結した社会主義愛国青年同盟の一員らしく、母なる祖国のために自らを捧げる立派な決心を抱き、困難で韓国な部門に進出することで人生の再出発をしたことです」。
 「立ち遅れた青年」とは、北朝鮮流にいえば、非社会主義行為を働いてきた若者たちを指すのであろう。非社会主義行為にはいろいろあるが、たとえば韓流ドラマをひそかに見ることも当てはまる。最近では服装の乱れなども非社会主義的行為とされる。それだけ当局が若者たちの非行に頭を痛めている証拠だろう。
 金総書記は、困難で過酷な建設現場へと向かう、かつての不良青年たちに会い、写真まで撮った。何とかして若者たちの心をつかみ取りたいという気持ちが伝わってくる。
 長引く経済制裁に相次ぐ自然災害、さらには新型コロナによる国境封鎖で経済的困難にある北朝鮮。最近の若者懐柔策を見ていると、北朝鮮の苦境が伝わってくる。
 文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年9月25日号
 

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2021年09月23日

【慰安婦問題】名乗り出て30年 記者たちが証言 開戦50年企画の取材記事 23年後に突然バッシング=須貝道雄

30年前の金学順さんを報じた新聞記事A.jpg


 旧日本軍によって従軍慰安婦にされた韓国人女性、金学順(キム・ハクスン)さんが、自分は元慰安婦だったと記者会見で明らかにしてから30年。8月7日、東京のプレスセンターホールで、植村訴訟最終報告会を兼ね「金学順さんが名乗り出た時――記者たちの証言」のシンポが開かれた。金さんのカミングアウトがいかに世を変えたか、その言葉の重みを再確認する場となった。
 金さんがソウルで初めて記者会見に臨んだのは1991年8月14日。韓国のメディア向けだった。この会見が国際的な反響を呼んだ。
 日本人記者も会見の前後に様々に取材した。証言テープを聞いて金さんの存在をいち早く報じたのが当時、朝日新聞大阪社会部記者だった植村隆さん(現「週刊金曜日」発行人)だ。その事情を当時の朝日新聞ソウル支局長、小田川興さんは語った。
韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)の共同代表、尹貞玉(ユン・ジョンオク)さんから元従軍慰安婦の女性が「ついに名乗り出た」と連絡を受けた。「だれに取材させるか思案した。日韓の政治が動いている時で支局は多忙だった。その時、大阪にいる植村記者から電話が入った。話をすると、彼は『明日行きます』と。そこから物語が始まった」
植村さんは91年8月10日に金さんの証言テープを聞き、翌11日付の朝日新聞大阪版・社会面トップに「思い出すと今も涙」の見出しで記事を書いた。それが23年後に「ねつ造」だと不当なバッシングを受けることになる。

 植村記事の直後に、北海道新聞ソウル支局長だった喜多義憲さんが金さんへの単独インタビューに成功し、8月15日付社会面に「日本政府は責任を」の記事と金さんの写真を載せた。
 シンポで喜多さんは「(太平洋戦争の)開戦50年企画で慰安婦問題をやろうと7月ごろから取材していた。メディアと会うと決心する女性がもし現れたら、まず私に連絡してと(挺対協の)尹さんにダメもとでお願いしていた。そうしたら8月13日に尹さんから話が来て、本当かと驚いた。14日午後2時から金さんへのインタビューが実現した」
 金さん(1924年生まれ)の父親は抗日運動にかかわり、日本軍に銃殺されたという。その反骨精神は娘にも引き継がれ、従軍慰安婦の問題を世に訴える「役割を担ったのではないか」と喜多さんは受け止めている。
 植村バッシング問題のドキュメンタリー「標的」を制作した元RKB毎日放送の西嶋真司さんもソウル支局長時代の91年末、金さんを取材した。「13分のインタビュー映像がある。だがTBSが持っていて使えない。今はメディアが慰安婦問題をタブー視している」と現状を語った。
 毎日新聞記者の明珍美紀さんは韓国メディア向けに開かれた8月14日の金さんの会見に出席していた。「後ろの方にいた。異様な熱気だった。ふり絞るような声と涙。迫力に圧倒されたのを覚えている」。明珍さんはその後、金さんと会い、9月28日付毎日新聞に「消えぬ朝鮮人慰安婦の傷」の見出しで「記者の目」を書いた。
 シンポには元NHKディレクターの池田恵理子さんも出席し、慰安婦問題を歴史から消そうとする動きが1997年から始まった模様を明らかにした。
須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年8月25日号
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2021年08月04日

【リアル北朝鮮】男女平等まで道半ば 金総書記長 時代錯誤な書簡=文聖姫

 「夫が党と革命に忠実であるよう世話をし、子供たちを社会主義朝鮮の頼もしい担い手に育て、和やかで団らんな家庭を作るという女性たちの役割は誰も代われるものではありません」
 男性と同じように女性が活躍することが当然のこととして認識されている世の中で、少々時代錯誤な感が否めない文章だ。金正恩総書記が6月20、21日に平壌で開催された朝鮮社会主義女性同盟第7回大会参加者に送った書簡(6月20日付)に含まれているものだ。北朝鮮が厳然として男性社会であることを如実に示していると思う。
 党の幹部会議などの映像を見ても、参加者はほとんどが男性だ。たまに女性が登場しても、金総書記の妹、金与正氏や秘書的な役割を果たしていると思われる玄松月・朝鮮労働党副部長などといった「有名人」たちだ。なにしろ北朝鮮では「雌鶏歌えば家滅ぶ」ということわざが浸透しており、女性が政治に口を出すことを良しとしない雰囲気がある。金総書記の書簡も、そういった男尊女卑の考えが反映されているのではないだろうか。

 問題は女性たちにもある。北朝鮮の女性たちはいまだに、良き妻、良き母となることが最も重要だと考えている。日本の区長にあたる女性の人民委員会委員長を男女平等の企画で取材したことがある。彼女は、夫や姑、子供たちの理解があったから仕事をやってこられたと言いながら、こう続けた。「自分が仕事で家をあけたり、家事や子育てができないことを申し訳なく思った」と。
 北朝鮮で女性の社会進出率は意外と高い。日本の国会にあたる最高人民会議の代議員にも女性が多く含まれる。小学校や中学校の校長、協同農場の管理委員長などは圧倒的に女性たちだ。
 現在の北朝鮮政府ができる前に組織された北朝鮮臨時人民委員会は1946年7月30日、男女平等権法令を採択した。それから75年、真の意味での男女平等への道はまだ半ばだ。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年7月25日号
 


 
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2021年07月19日

問題法案 続々成立 改憲投票法 立民の修正案は疑問=編集部

 コロナ渦のどさくさに紛れ、今国会にも「壊憲」の問題法案が続々出された。メディア報道も追いつかず、委員会所属者以外、衆参議員も法案検討の余裕すらない。本来、国会提出前の検討が重要だが、政策審議より政局優先の与党の姿勢が問題に拍車をかけている。
 今国会では、8国会にわたって継続審議のまま手つかずだった改憲手続法(国民投票法)の改正が成立した。広告規制や改憲運動への資金規制、最低投票率など、公選法と違う改憲国民投票の意味や投票の公正を保障する議論が全くないまま、「今国会で結論を得る」という自民・二階、森山、立憲・福山、安住の幹事長・国対委員長会談に縛られ、参院でもあっさり通過、成立した。
 「3年後を目途に見直す」という「付則」をつけた修正案をなぜか立憲民主党が出し、与党が丸呑み。どこで何が動いたかはわからないが、「政策」より「国会対策技術」が優先した結果だ。
 一方で外国人の強制収容などの管理強化を狙った入管法改正は、国際的な批判やスリランカ女性の死もあり、自民党は今国会成立を断念した。

 命と生活の問題
 国民生活に直接関わる問題なのに、これもほとんど報じられないまま通ってしたのが、高齢者医療費の倍増。現在個人負担は1割の75歳以上の老人医療について、年間200万円(月16・6万円)の収入があると倍の2割になる法案。6月4日あっさり成立。
 コロナ禍が日本の医療体制の脆弱さを明らかにした中、病院のベッド数削減と医師の長時間労働を進める「恥知らず」の医療法の改定も5月21日あっさり成立した。
 1割以上の削減を行った病院に対して補助を強化、全国での病床数削減を狙い、OECD諸国では最低の医師養成数の削減を前提に過労死ラインを超える医師の長時間労働を認めている。

国民管理と監視
 ひどかったのは膨大な「デジタル庁関連法案」の扱い。とにかく個人情報を政府に集中、自由に使うため一元管理するとの意図は明確なのにろくに議論ー使用を義務づけるなど、個々にみれば、数年かかる議論が必要なのに5月12日早々と成立した。
 国民の情報を管理し、監視する体制は、基地などの周辺から合法化し、強化しようという「重要土地党調査規制法案」で具体化している。防衛施設のほか、原発、空港どの周辺を「注視区域」とするなど、所有者の調査や規制を可能にする。既に基地周辺での写真撮影やデモ、宣伝活動などが勝手に規制されており、さすがにこれは、最終版国会の焦点になった。
 18―19歳を「特定少年」として厳罰化する少年法改定も成立した。犯罪防止には逆行である。
編集部
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年6月25日号


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2021年07月02日

【リアル北朝鮮】5年ぶり党規約改正 集団指導体制へ転換か=文聖姫

 北朝鮮で今年1月に開催された朝鮮労働党第8回大会では、5年ぶりに党の規約が改正された。最近、その内容が明らかになった。
 『日本経済新聞』6月10日付によると、序文から「先軍」の文字が消え、「主体」も大幅に減ったという。「金日成同志と金正日同志の遺訓」という表現も削られた。先軍は金正日政権時代を象徴する言葉だ。金正日政権時代、北朝鮮では建国以来最悪と言われる経済難に見舞われた。その困難を乗り切るうえで、金正日総書記は軍事優先路線を掲げ、核兵器やミサイルの開発を進めた。主体は金日成主席が提唱した主体思想からきている。
 先代を象徴する言葉が消えるか、大幅に減った点、さらには両先代の「遺訓」という表現が削除された点などを考えると、金正恩総書記がいよいよ“独り立ち”を宣言したものととれる。すでに自らの体制は十分に固まったといえるが、今後はさらに先代のやり方にこだわらず、自らの方法で国を運営していくと予測するのも可能だ。
  今回の党規約改正では、「人民大衆第一主義」が打ち出されたという。第8回党大会で北朝鮮指導部は5カ年経済計画を発表した。具体的な内容は明らかにされていないが、同計画に沿って経済が運営されており、『労働新聞』などのメディアでは連日達成された成果が報じられている。一方で、思うように成果が出ていないのではないかとも思われる。というのも、6月に入り、立て続けに党の会議が開催されているからだ。そこでは、経済問題と人民生活の安定が強調されている。最近の論調を見ても、北朝鮮の喫緊の課題が経済の立て直しであることが分かる。
 一方、改正された規約では、「第一書記」のポストを新設し、「金正恩総書記の代理人」と規定した。現段階では第一書記が誰なのかは明らかになっていない。だが、金正恩総書記に継ぐポストが新設されたことは、北朝鮮が集団指導体制を推し進める兆候ではないか。
  文聖姫(ジャーナリスト・博士)
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年6月25日号
 

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2021年06月28日

台湾海峡有事と憲法 米国追従の日本 民間人も戦地へ 法の秩序を無視 メディアにも責任=徳山喜雄

 ことしの憲法記念日は、例年に増して憂鬱な日となった。一つは新型コロナ対策の緊急事態宣言のなかで迎えたこと、もう一つは4月の日米首脳会談の共同声明が52年ぶりに「台湾」にふれ、日中の緊張がいっきょに高まったことだ。
「一つの中国」を譲らない中国と台湾の両岸問題は微妙で、取り扱いを間違えれば「爆発」しかねない。ジョー・バイデン米大統領は習近平国家主席を「専制主義者」と名指しし、3月末の就任後初の記者会見においても米中関係を「21世紀における民主主義と専制主義の闘い」と位置づけている。

中国の台湾侵攻

 共同声明は、中国に対し対決姿勢を強める米国に日本が追従したかたちだ。憂鬱になるおおもとは、安倍晋三政権による2014年の憲法9条の解釈変更に端を発し、その翌年に可決された安全保障関連法(安保法制)の存在にある。
 安保関連法によって日本は、自国が攻められたときにのみ個別的自衛権を発動するという段階から、緊密な関係にある米国が攻撃された場合も応戦するという役割を担うことになった。米軍司令官は「中国の台湾侵攻は、6年以内に起こりうる」と3月の米上院公聴会で証言しており、安保法制が発動されることに現実味がでてきた。
 今夏の中国共産党の結党百周年と、22年の北京冬季五輪を終え、習主席が台湾問題を優先し軸足を置いたなら、台湾海峡に激しい波浪が押し寄せる可能性がある。米軍が出動するということになれば、日本はこれまでとまったく違った対応を迫られることになる。
 安保法制では、日本の平和と安全に影響を与える「重要影響事態」となれば米軍の後方支援をおこなうことになり、台湾海峡有事によって日本の存立が脅かさる「存立危機事態」になれば自衛隊は集団的自衛権を発動して武力行使できるとする。仮に米軍基地がある沖縄が攻撃されれば、日本有事を意味する「武力攻撃事態」と考えられ、個別的自衛権を行使することになる。

兵站を担う民間

 ここで留意したいのは、中国が台湾に侵攻し米軍が介入した際、戦地に送られるのは自衛隊員だけではないということだ。状況次第では、兵站のために民間の船舶や船舶従業員が動員されることになる。
 専守防衛に徹してきた自衛隊の前線への兵站能力は限定的で、民間に頼らざるをえないというのが関係者の見方だ。医療行為のために医師や看護師らが派遣されることにもなりかねない。
中国の近年の覇権主義的な動きをみるにつけ、絵空事とは思えない。法律には成立後すぐに使われるものと、年月を経て使われるものがある。安保法制が可決されて6年になるが、10年を迎えるころにあるかもしれないのである。選択は間違っていなかったのか。(→続きを読む)
(→続きを読む)
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2021年06月25日

憲法記念日 25条を使い倒せ 危機に乗じ、壊憲*@案続々 戦争できる国にまた一歩=丸山重威 

  施行から74年目の憲法記念日の5月3日。国会議事堂前で「変えよう政治!いのちを守り、平和をつくろう」と、「2021平和といのちと人権を! 5・3憲法大行動」が、オンラインを中心に行われた。
 まず、実行委員会を代表して「九条の会」事務局長の小森陽一さんが「菅政権の無策でコロナ感染が拡大し、貧困が加速している。国が社会保障、公衆衛生への努力を決めた憲法25条、男女平等の24条、財産権保護の29条が侵されている。13条で個人の尊厳が保障され、生命、自由、幸福追求の権利があることも主張しよう。戦争法反対以来、党派を超えた統一した運動が進んできた。いまや憲法を守り生かす側から政治を変える段階」と挨拶した。

政治を変えよう
 「これから『おとな食堂』に支援に行く」という雨宮処凜さんは「憲法25条を使い倒そう」、羽場久美子神奈川大教授は「米国の中国封じ込めに参加してはならない」、清水雅彦日体大教授は「もうこんな反権力政治は終わりに」と訴えた。
枝野・立憲、志位・共産、福島・社民、沖縄の風・伊波の各党代表が挨拶。いわ山本代表のメッセージが紹介された。
 続いて、田中優子前法大総長が「憲法と自民党の改憲草案を比較してみよう。価値観、人間観、国家観が全く違う。『公共の福祉』は『公益・公の秩序』に置き換え、自衛隊は国防軍にする。憲法は捨てるか守るかどちらかだ」と強調した。

異なる価値観
 最後に市民連合代表の山口二郎法大教授が「安倍、菅政権の8年半、憲法との乖離が目立った。それぞれの場所で声を上げよう」と述べた。
一方、菅義偉首相は産経新聞に「自民党の改憲4項目を元に議論を」と発言。改憲派集会のビデオメッセージで「国民投票法は改憲の第一歩」と強調した。(→続きを読む)
   
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2021年06月22日

【フォトアングル】護憲派の5・3国会議事堂前行動=酒井憲太郎

                           
酒井.jpeg

憲法記念日、護憲派は国会議事堂正門前で「5・3憲法大行動」を開いた。新型コロナウィルスの感染を極力回避するため、参加者にはマスクの着用とフィジカルディスタンスの確保を求められた。多くの人はオンライン中継での視聴で参加した。6日に衆議院憲法審査会で国民投票法の改正案を採決する直前で、会場には「採決反対」のプラカードが上がった。3日、東京・国会正門前 酒井憲太郎撮影
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年5月25日号
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2021年06月03日

【リアル北朝鮮】15年後には生活改善 反社会主義的行為を警戒か=文聖姫

 4月末、北朝鮮の平壌で青年同盟第10回大会が開催された。金正恩朝鮮労働党総書記は大会宛てに送った書簡で、次のように述べた。
 「今後5年を朝鮮式社会主義建設で画期的発展をもたらす効果的な5年、山河を今一度大きく変貌させる大変革の5年にしようと思っている」
 「今後15年ほどで全人民が幸福を享受する、繫栄した社会主義強国を打ち立てようと思う」
 前者は今年初めに開催された朝鮮労働党第8回大会で発表された5カ年経済計画を遂行することで、北朝鮮の経済を一変させる決意を示したものだろう。
 注目されるのは後者の方だ。金総書記は、15年後という期限を設定して、人々が豊かな生活を享受する国家を建設することを約束したのである。このことを若者の団体に宛てた書簡で表明したという点は興味深い。15年後と言えば、現在20歳の人が35歳になっている。男女を問わずバリバリ働いている頃だ。結婚して家庭を築いている人も少なくないと思われる。若者たちにあと少し頑張れば、きっと良い世の中になるという“希望”を持たせようとするものだが、15年は決して短いとは言えない。
 一方で書簡は、「反社会主義、非社会主義的な行為との闘い」に専念するよう呼び掛けている。たとえば、韓国ドラマを見るのも「反社会主義的行為」にあたる。最近では、日本でもハマる人続出の韓国ドラマ『愛の不時着』がいよいよ北朝鮮国内でも流行り出したという報道があった。真偽は定かではないが、韓国ドラマが北朝鮮国内で密に流行していることは昔から言われてきた。筆者も平壌で、韓国ドラマの女性主人公のファッションを真似したとしか思えない女性たちの集団を見かけたことがある。
 15年後には必ず幸せな生活を送れるようにして見せる――金総書記がそう発言した背景には、「反社会主義的行為」に走る若者への警戒感があるのかもしれない。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年5月25日号
 


 
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2021年05月07日

【リアル北朝鮮】五輪不参加の背景は? 撤回もあり得る=文聖姫

 北朝鮮は、おそらく世界で最も早く東京オリンピック・パラリンピックへの不参加を決めた国だ。同国の体育省が運営するホームページ「朝鮮体育」は4月6日、3月25日にテレビ会議方式で開かれたオリンピック委員会総会で、「悪性ウイルス感染症(新型コロナ)による世界的な保健危機状況から選手たちを保護するために、委員らの提議にもとづいて第32回オリンピック競技大会に参加しないことを討議決定した」と伝えた。「朝鮮中央通信」は先に、3月25日にテレビ会議方式で総会が開かれたことは報じていたが、五輪不参加を決めたことは伝えていなかった。
 北朝鮮が五輪不参加を決めた背景には新型コロナの蔓延がある。日本では東京、大阪など大都市圏で感染者数が減少していない。万が一派遣された選手団の中から一人でも感染者が出たら、全員が「濃厚接触者」となり、彼らの帰国さえおぼつかなくなるかもしれない。
 北朝鮮は昨年1月、どの国よりも早く国境を完全に封鎖した。現在でもそれは続いており、北朝鮮の命綱である中国との貿易額も大幅に落ち込んでいる。2020年の朝中の輸出入額は5億3905万ドル(約590億円)で、19年比で80・7%減少した。国境封鎖による物資不足は深刻さを増しているとされ、平壌に滞在する外交官らも「脱出」せざるを得ない。ロシア大使館の職員が家族とともにトロッコで鉄道を走る写真は象徴的だ。  
 そこまでして北朝鮮は新型コロナが流入する事態を抑えようとしている。これまで北朝鮮で感染者が出たとの報道はない。それだけに神経をとがらせているのだろう。
 ただ、金日国体育相は総会で、「新たな5カ年計画期間に国際競技でメダル獲得数を増やし続け」なければならないと強調していることから、五輪に参加する意思はあったことがうかがえる。不参加表明を撤回する可能性も100%ないわけではないと、筆者は考える。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年4月25日号
 

 
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2021年04月27日

デジタル庁の新設は隠れ蓑 狙いはマイナンバーでの国民支配=丸山重威

 菅義偉内閣が、今国会の看板政策として掲げる「デジタル改革関連法案」が、3月9日、衆院本会議で審議入りした。鳴り物入りで宣伝された「デジタル庁」の新設を決める法律。しかしこの法律の裏にあるのは、いろんな分野で使われているナンバーを、横に串刺しにして一元化、自由に利用して国民支配を可能にする危険な意図だ。
 既に、日民協、青法協、自由法曹団などの法律家団体と情報法学者などの「デジタル監視法案に反対する法律家ネットワーク」は、修正を求める意見書を出した。だがメディアの問題意識は乏しいのか、報道も少ない。政府・与党は予算関連法案として四月中に成立させたい、との意向も示されており、警戒が必要だ。

 個人情報を紐付け

 関連法は、@デジタル社会形成基本法案Aデジタル庁設置法案Bデジタル社会形成整備法案C預貯金口座登録・管理法案D地方公共団体情報システム標準化法案―など。このほかに、手続きで48の法律改正や、32の国家資格者へのマイナンバー義務づけが含まれている。いくつかの問題があるが、まず1つは、いままで別々のデータとして守られていた個人データについて、個人の情報管理権を無視して「データ共同利用権」を打ち出し、健康情報、税金情報、記入情報、運転免許、前科前歴情報などが、中央と地方で共通化され、紐付けされる点だ。
 その結果、これまで厳しく意識されていた、個人の「プライバシー」は医療や、個人関係、収入、財産など、いわゆる「センシティブ情報」まで国に吸い取られ、一元化される。医師、看護師、保育士などの国家資格にはマイナンバーを義務づけられ、警察―首相官邸にも結びつけが可能だ。
 つまり「行政が持つ個人情報すべてについて国による統一的な規制をする」ことになりこれまでの不十分と言われながら守られてきたプライバシーの権利が根底から覆されようとしている。

情報保護規定なし

法案には、プライバシーについての保護規定は全くなく、それを扱うデジタル庁をはじめとする情報機関に対する欧米のような監視システムもない。公権力がデータを網羅的に収集、検索することへの規制もない。
 さらに問題なのは、この法案、デジタル庁設置の宣伝に野党もメディアも惑わされ、内容について十分な検討も報道もされていないことだ。
 関連法では、デジタル庁設置法や、個人情報保護法からマイナンバー法までいくつかの法律改正で、これまでの原則が壊されているほか、手続きの見直しで48の法律を改正する。こうした「束ね法案」は、最近の政府の常套手段だが、こうした場合、法案だけでも膨大で、国会でも各党のプロジェクト・チームが検討できるかどうかがやっと、という場合が少なくなく、今回も同様だ。法案、要綱などを合わせると3000nに達している。そのため、メディアは今だに追いつかず、報道は不十分。一般国民は知らないうちに、自らの情報を国に握られ、支配される事態になりかねない。問題に警鐘を鳴らしたい。
丸山重威
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年3月25日号
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2021年04月05日

【リアル北朝鮮】地方の党首長による初の講習会 家族や親せきの私利私欲にも言及=文聖姫

 北朝鮮の平壌で3月3日から6日までの4日間、朝鮮労働党の市・郡責任書記が一堂に会する講習会が開催された。北朝鮮で同種の講習会が開催されるのは初めてのことだ。日本で言えば、市長や村長ら首長が一カ所に集まって講習会を開催するようなものだ。
 ではなぜ、この時期、このような講習会が開かれたのであろうか。北朝鮮では今年1月に朝鮮労働党第8回大会が開かれたが、そこでの主な議題は経済とともに党の活動家の働き方だった。党内において権勢を振るうことや官僚主義、不正腐敗に関して辛辣な批判が繰り広げられた。党内には新しい規律監督体系が樹立された。北朝鮮指導部が党内で起きている不正腐敗現象について深刻に受け止めている証であろうと思われる。
 講習会の2日目、金正恩党総書記は結語で、「自分自身が党と人民の面前で潔白であるだけでなく、家族、親せきたちも絶対に私利私欲を追求できないよう警戒」するよう述べた。責任書記自身だけでなく、家族や親せきにまで言及するのは極めて珍しい。実例が示されているわけではないが、実際にそのようなことが起きているのだろうことは想像に難くない。
 世界中で猛威を振るう新型コロナはいまだ収拾する気配はない。北朝鮮は厳格な国境封鎖を続けており、経済にも深刻な影響を与えている。人々も生きていくために必死だ。1990年代半ばから後半にかけての経済難の時代には、突然国家からの配給が中断されたりしたことで、餓死する人々も現れた。ただ、そのような時代を経て、北朝鮮の人々もたくましく、したたかになった。配給に頼らず、自力で物資を調達する人々も少なくない。
 党幹部の家族や親せきの中にも、その地位を利用して私利私欲を求める人々が出てくるのも自然な流れなのかもしれない。ただ、社会主義体制下で、平等を掲げる北朝鮮指導部にとっては許されないことなのかもしれない。
 文聖姫(ジャーナリスト・博士)
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年3月25日号
 

 
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2021年03月30日

進む権威主義国家化 罰則で失策を責任転嫁 政治と科学の境界領域 報道の焦点あてよ=徳山喜雄

改正コロナ法成立の紙面.jpg

 新型コロナウイルス感染症に直面し、多くの国民はマスク着用を励行し、飲食を伴う会合や外出を控えている。善良といえる国民に罰則を科す必要があるのだろうか。
コロナ禍対応の特別措置法と感染症法の改正案が国会で成立、2月13日に施行された。自民党は入院拒否した人に対する懲役刑や罰金など刑事罰のある政府案の規定を削除し、行政罰の過料に変更。営業時間短縮の命令に従わなかった事業者への過料は減額した。一見評価できそうだが、たとえ前科のつかない行政罰であっても違反者に罰を与えることに変わりはない。
 緊急事態宣言の前から、さらに解除後も罰則を科せる「まん延防止等重点措置」も新設された。これは改正特措法の核心部分で罰則をちらつかせながら、飲食店などを監視する期間が途切れずにつづき、運用次第では営業活動を大幅に制限することになりかねない。これでは、観光支援策「Go To トラベル」をはじめ菅義偉政権の相次ぐコロナ対応の失策に対し、感染拡大の責任を市民の側に転嫁しているようだ。国民に罰を与えることで抑えつけようとする菅首相の強権的な体質が見え隠れする。
スウェーデンの国際調査機関によると2019年現在の世界の民主主義国家と権威主義的な国家数は、「87対92」で権威主義国家が上回る。民主主義国家が過半数を割ったのは、2001年以来という。権威主義国家はアジアや中東などに多いが、世界の政治潮流は権威主義化し、欧州においても専制が進むハンガリーがその一つに数えられる。菅首相の政治手法も、官房長官時代から権威主義的と思えてならない。

 差別や偏見を助長

特措法や感染症法を改正し罰則を設けることで、営業をつづける事業者や入院拒否者が犯罪者扱いされ、差別や偏見が助長されないだろうか。日本はそれでなくても同調圧力が強く、コロナ禍では「自粛警察」が横行した。罰則が定められたことで相互監視が正当化され、疑心暗鬼が渦巻く密告社会になることはなんとしても避けたい。
 現状に沿わない罰則の創設は、悪法になりかねない。らい予防法やエイズ予防法で入院を強制し、差別を生みだした。国が謝罪し、これらの法律を廃止したという歴史を思い起こしてほしい。コロナ禍において、権力によって入院や検査を強いることがまっとうな医療とは思えない。信頼関係を築いての医療行為をベースとするのが、日本社会の現状に合っていないだろうか。
 政府案の修正協議は自民党と立憲民主党の2党間で進められ、わずか3日間の協議であっさりと合意、国会審議もそこそこに数日後の2月3日にスピード成立した。立憲民主と日本維新の会が賛成。国民民主党は「支援が不十分ななかで罰則は反対」、共産党は「罰則は感染症対策に逆行する」、などとして異を唱えた。罰則導入は、承服できないとする両党の意見は見過ごせない。

 菅氏の政治手法

 この改正案が成立した日に、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長の「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などという女性蔑視発言があった。さらに衛星放送事業者の役員を務める菅首相の長男による総務省幹部への接待問題が週刊誌報道によって浮上。参院選広島選挙区での大規模買収事件で有罪判決を受けた河井案里被告が参院議員を辞職した。
 同じ日に政権に打撃を与える出来事が3つも重なったのである。支持率が急落する菅首相に容赦なく「不運」が降り注いだ。法案の成立を急いだ立憲民主も「運と胆力」がない。改正案成立をもう1日先にしていれば、事態は一変していた。
 菅首相は日本学術会議の人事には越権行為ともいえる介入をし、女性蔑視発言をした森氏の進退については権限外として沈黙した。ちぐはぐなこの姿に、「つべこべ言わずに従え」という高圧的な菅氏の政治姿勢が透ける。(→続きを読む)
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2021年02月25日

憲法の回復を求めて 学術会議任命拒否問題 東京慈恵医科大学 小澤隆一教授

小沢写真.JPG

事務局からの電話
 2020年9月29日の夕方、大学の研究室に日本学術会議(以下、学術会議)の事務局長から電話がかかってきました。2日後の10月1日に総会が予定されている学術会議の会員に私が任命されないというのです。その理由を聞いても、「私もわからない。内閣府の人事課に問い合わせても教えてくれない」とのことでした。電話の向こうの事務局長も動揺している様子です。「とんでもないことが起きた」と即座に感じました。

学術会議での活動
 私は、2008年10月から12年間(第21期―第24期)、学術会議の「連携会員」としてその活動に誠心誠意参画してきました。たとえば、現在、北海道の寿都町と神恵内村で問題となっているいわゆる「核のゴミ」(高レベル放射性廃棄物)の処分問題について、どのように取り組んでいくべきか、学術会議は2012年に原子力委員会への「回答」(「回答 高レベル放射性廃棄物の処分について」)を提出し、2015年には、この回答をフォローアップする「提言」(「提言 高レベル放射性廃棄物の処分に関する政策提言――国民的合意形成に向けた暫定保管」)をまとめましたが、私はこれらに検討委員会の委員として関わりました。そこでの議論や提言作りの作業を通じて、学術会議が人文・社会・自然科学の知見を持ち寄って政府に対して独立した立場で政策提言を行うことの意義や重要性を「体感」しました。

道理ない任命拒否
 菅義偉首相による私を含む学術会議会員候補6名の任命拒否は、この間の国会審議を通じて、その道理のなさがより一層際立ってきました。首相は、国会での答弁で、任命拒否の理由として、「民間出身者や若手が少ない」、「出身や大学に偏りがみられる」などと言い出しましたが、これらは、学術会議自体のこの間の改革努力によって、是正されてきているものです。首相がなぜか口にしない会員の男女比もしかりです。また、過去には「事前調整」をしたのに今回はしなかったから任命を見送ったのだなどとも強弁しています。学術会議法のどこにも、推薦された会員候補の任命を首相がこうした理由で拒否できるとする法的根拠はありません。「事前調整」などは、学術会議の会員選考権の侵害そのものです。支離滅裂な理由を次々と持ち出す菅首相の態度は、法治主義に反するものとして断じて許されません。
 また、首相は、憲法15条1項で国民固有の権利とされている「公務員の選定・罷免権」を持ち出して自己の任命拒否の正当化をはかっています。この国民固有の権利の具体化は、国民を代表する国会の権限であり、その国会が定めた学術会議法は、会員の選定・罷免の実質的決定を学術会議に委ねています。首相にはこの法律を「誠実に執行」する義務があります。学術会議法に反する任命拒否こそ、憲法15条が定める国民の権利を侵害するものです。(→続きを読む)

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2021年02月12日

【リアル北朝鮮】指導体制 より強固に バイデン米政権を主敵と牽制=文聖姫

 朝鮮労働党第8回大会が1月5日から12日まで開催された。5年前の第7回党大会の日程が4日間だったのに比べて、今回は2倍の8日間。それだけ、北朝鮮指導部が現状を深刻に考えていたことを裏づけている。
 党大会では、金正恩氏が朝鮮労働党総書記に推戴された。妹の金与正氏は党中央委員会政治局委員候補から外れたことや党第一副部長から副部長になったことで降格したとの分析もあるが、必ずしもそうとは限らない。これまでの地位を守っていると見る向きもある。党の地位とは関係なく、金総書記を影でささえる存在であることは間違いないからだ。
 金正恩氏が党委員長から総書記になったことをどう見るべきか。もちろん、委員長であろうが総書記であろうが、金正恩氏が「最高尊厳」であることに変わりはない。朝鮮労働党総書記選挙に関する決定書によると、党総書記は「全党を代表し指導する党の首班」であり、「党の首班は全党の組織的意思を体現する革命の最高脳髄であり指導の中心、団結の中心」だという。これは祖父の故金日成主席や父の故金正日総書記と同等の地位に就いたことを内外に示す意図もあるのではないかと思われる。金正恩総書記による唯一指導体制はより強固なものになっていくことが予想される。

「対外政治活動を、わが革命発展の基本的障害物、最大の主敵であるアメリカを制圧し、屈服させることに焦点を定める」「アメリカで誰が政権を握ろうと、アメリカという実体と対朝鮮政策の本心は絶対に変わらない」
 金総書記は、大会報告のなかでこう強調し、バイデン次期政権を牽制した。核戦力強化に何度も言及しており、今後ミサイル実験などを行う可能性もある。一方で、中国の習近平国家主席から送られた祝電への礼電をメディアで速やかに公開するなど、中朝の蜜月をアピールすることに余念がない。 
 文聖姫(ジャーナリスト・博士)
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年1月25日号
 

 


 
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2021年01月05日

【リアル北朝鮮】 反動思想文化を排除 欧米からの流入に法で対処=文聖姫

 今年日本でも大人気を博した韓国ドラマ「愛の不時着」には、防弾少年団(BTS)をこよなく愛する北朝鮮の若い女性が登場する。彼女がこっそりBTSの動画を見ていたところを目撃した主人公の女性が、それをネタに彼女を脅して協力を強要する、というシーンが登場する。
 ドラマなので大げさに描写している部分もあるが、北朝鮮の人々の間で韓国のドラマや映画、K−Popが密に見られているという話は、昔からよく伝えられてきた。筆者自身は十数回の訪朝過程で、そのような現場を目撃したことはない。ただ、ある女優がドラマの中で履いていた上げ底の靴を履いた女性の集団を平壌で見かけたことがある。「もしや韓国のドラマの影響か?」と思った。
 2003年に滞在していた折、ハリウッド映画「タイタニック」の朝鮮語吹き替え版があるのを知った。最初は貸してくれると言っていた友人も、何があったのか、結局は貸してくれなかったので。実物は見ていない。しかし、「タイタニック」が北朝鮮当局からも奨励されていたのは事実だ。階級差別をきちんと描いているからだという話を聞いたことがある。内容によっては米国の映画でも許容されるということだ。
 だが、これは例外に過ぎない。基本的には韓国や欧米の映画やドラマを北朝鮮の国民が公に見るのは不可能だ。
 12月4日に開かれた最高人民会議(国会)常任委員会全体会議では、「反動思想文化排撃法」をはじめとするいくつかの法律が採択された。「反動思想文化排撃法」の条文は明らかにされていないが、朝鮮中央通信が報じたところによると、「反社会主義思想文化の流入、流布を徹底的に防ぎ、われわれの思想、精神、文化を守護する」ために必ず守るべき規則が記されているという。
 韓国や欧米のドラマや映画、音楽が国民の間に何らかの形で浸透しているのかもしれない。法律で取り締まらねばならないほど深刻なのだろうか。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年12月25日号


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