2019年06月23日

【今週の風考計】6.23─G20大阪サミット<会議は踊る されど>

★28日からのG20大阪サミットを始め、今週は世界各地で国際会議が開かれる。

★25日はアラビア半島の東側・ペルシア湾内にある33の島からなる国バーレーンで、中東和平国際会議が開催される。イスラエルがゴラン高原を<トランプ高原>と改名し、さらに緊張を増長させているパレスチナとの和平をめぐる駆け引きが注目だ。
 またホルムズ海峡近くのオマーン湾で、タンカー2隻に加えられた爆撃に関連し、米国とイランの間で軍事行動へエスカレートしかねない危機が募る。会議の行方に世界の眼が集まる。

★26日にはベルギー・ブリュッセルでNATO国防相会議。加盟国のトルコが、ロシア製ミサイル防衛システムの導入を計画している事態に、米国が制裁を科すと警告している。この会議もまた紛糾しそうだ。
★27日、大阪で米中首脳会談が持たれる。米中貿易戦争の行方が占われる。トランプ大統領は、会談で貿易協議が進展しなければ、中国からの輸入品に追加関税を課すと表明。いっぽう中国は、米国のハイテク製品に不可欠なレアアースの輸出を、制限するとまでほのめかしている。米国はレアアースの供給を中国に依存しているだけに、頭の痛いアキレス腱となる。

★さて28日、初めて日本が議長国になるG20大阪サミット、「最高のおもてなしでお迎えしましょう」とハッパをかけるが、果たして肝心の世界経済に関する課題や貿易・投資・地球環境・気候・エネルギーなどのテーマについて、どれだけの成果が得られるのか。
★「自由貿易の重要性や貿易摩擦の緩和」に背を向け、保護主義に突っ走る米国トランプ大統領に、NOと言えず、シッポを振るだけの安倍政権では、<会議は踊る、されど進まず>が、正直な結果になるだろう。(2019/6/23)
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2019年06月09日

【内政】 あらゆる差別 撤廃へ 自民党の後進性暴く 上智大・中野教授に聞く=河野慎二

 メディアの過熱した天皇「代替わり」報道にうんざりした「10連休」が終わり、参議院選挙が約2カ月後に迫って来た。この選挙は、安倍改憲勢力を3分の2以下に追い落とせるか、最大の正念場を迎える。そこで「市民連合」の呼びかけ人である中野晃一上智大教授に話を聞いた。

 中野教授はまず、沖縄と大阪の衆院補選で自公与党が2敗したことについて「自民党にはショックだ。巻き返すために衆参同日選は選択肢としてありうる」と述べた。
 しかし、大義≠ニして企む消費税増税の3回目の延期については「アベノミクス失敗の容認に繋がる」と指摘し「自民党にとってこの選択はギャンブルだ。それでも同日選をやるというなら、そこまで追い込まれた選挙となる」と述べ、安倍一強が盤石ではないとの認識を示した。

 野党共闘について中野教授は「参院選1人区の候補一本化は既定方針だ。野党共闘の効果は各党が理解しており、一本化調整の必要性でも一致している。(合意は)時間の問題だ」と発言。「(11の1人区で勝利した)3年前と同等以上の結果を出すことは不可能ではない」と述べた。
 衆参同日選への野党の対応については「同日選は投票率を上げる。無党派の人たちが野党候補にも投票する。自民党には両刃の刃で、リスクは高い」と指摘。「同日選になれば、候補を衆参の選挙区で振り分け、一本化調整はやり易くなる。同日選を警戒しつつ、いざとなれば受けて立つ」と述べ、市民と野党の共闘に自信を示した。

攻め姿勢で変える
 中野教授は、今回の参院選勝利に向けて「政治を変える!プログレッシブ連合へ」という運動を呼びかけている。「なぜ、憲法を守ろうと言うのか。それは憲法を活かして、政治や経済をより良い方向に変えたいからだ。これまで安倍政治に反対するネガティブな発信になりがちだったが、これを分かり易く言語化、可視化してポジティブに発信したい」
「そのポジティブな声は、私たちの仲間の周りにいる、政治を諦めちゃった人たちにも届けて社会を前に進めたい。現状を維持するだけの守勢ではなく、攻めの姿勢で政治を変えて行きたい」とその狙いを熱く語った。

 参院選の論戦では、人間の尊厳や権利、ジェンダーの問題、あらゆる差別を乗り超える問題に集中することが重要と指摘。特に政治参加への男女均等を目指す「パリテ元年」の今年は、女性への差別撤廃が大きな争点になるとして「選択的夫婦別姓制度」や女性天皇の問題も取り上げて「自民党の復古的な後進性、逆進性を暴き出し、民意と大きく乖離している実態を訴えることが参院選の勝負を分ける」と強調した。

ニュー・ノーマル
 中野教授は、安倍晋三首相が第一次政権当時、メディアに「自由な政権批判を許した」ことを反省し、第2次政権では「NHKや朝日新聞への攻撃を軸にメディア支配の構図を作り上げた」と指摘。その中で「ニュー・ノーマ ル」と呼ばれる、現状を無批判に受け入れる風潮がメディアの現場に広がっていることに警鐘を鳴らした。
 同教授は「6年に及ぶ安倍一強支配がもたらす現実を当たり前のことと常態化し、正常なんだと受け入れる世代がある」と指摘し、様々な弊害を引き起こしている小選挙区制度を不易のものと決め込むメディアの無定見な対応を「ニュー・ノーマル」の一例と批判した。
 中野教授は、菅義偉官房長官に質問を重ねて真実に迫った東京新聞望月衣塑子記者の取材に「こういうことをしてもいいのかと目から鱗(うろこ)≠感じた記者も多い」と述べ、ジャーナリストが世代を超えて「ニュー・ノーマル」克服へのチエを出すことこそが「たくましい知性だ」と強調した。

 特に中野教授は、市民参加の遅れがメディアの危機を進め、政治の危機と連動していると指摘、「市民の側からも、メディアを切り捨てて溜飲を下げるのではなく、メディアの中で歯を食いしばって頑張っている記者やディレクターを叱咤激励することが極めて重要だ」と力を込めた。

河野慎二

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
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2019年06月04日

【リレー時評】「世界一の民主主義国」と孫総領事=白垣詔男

 私が所属している「日本コリア協会・福岡」は20年近く前から月刊紙「日本とコリア」を発行している。同協会はかつて「日朝協会福岡支部」と名乗っていたが、会の趣旨が「朝鮮半島関係者との友好親善」を掲げているので「日朝協会」では北朝鮮だけとの友好親善組織と誤解される恐れがあるために、福岡や他の数支部は「日本コリア協会」と改名した。東京にある「本部」は創設以来「日朝協会」と名乗っている。

 私は、約15年前から月刊紙「日本とコリア」の取材担当として活動している。同紙は原則として毎号、1、2面は「朝鮮半島と関係がある方」のインタビュー記事を載せている。インタビューは理事長(堀田広治さん)と私が、韓国人、在日韓国・朝鮮人、日本人を含むさまざまな「関係者」にお願いしている。
 今年3月号では駐福岡韓国総領事の孫鍾植(ソンジョンシク)さんにインタビューをさせていただいた。孫総領事は、韓国が朴槿恵(パククネ)大統領から文在寅(ムンジェイン)大統領に代わった直後に福岡に赴任されてこられた。政権が変わると、福岡の総領事も交代するのだ。

 孫総領事は、大阪の総領事館領事、東京の大使館公使などを歴任された。大変気さくな方で、インタビューから約1カ月後、「日本コリア協会・福岡」の堀田理事長と私を懇親会に招いてくださり、大いに歓談した。
 その中で私が一番驚いたのは、孫総領事が「韓国は世界で一番民主主義が発達している国です」と言われたことだ。もちろん私は、「沖縄には沖縄の民主主義があり、しかし国には国の民主主義がある」などと発言する閣僚がいる今の安倍政権は日本の民主主義をおろそかにしていると考えている。韓国の民主主義のほうが数段進んでいるとは思っていたが、総領事の口から「世界一の民主主義国家」という発言が飛び出し、一瞬沈黙した後、私は納得したが返事に困った。

 私は、韓国の民主主義の原点は100年前の「三・一民族運動」だと思っていた。その運動で朝鮮半島の方々が取った言動を支えた精神が、その後の韓国の民主主義を推進したと、今年の「三・一民族独立運動」の際、講演会などで学びながら思ったことだった。韓国のさまざまな民主運動にその精神が引き継がれ、記憶に新しいのは朴槿恵大統領退陣要求運動のキャンドル集会・デモにまで引き継がれている。
 「三・一運動」の原点は東京神田のYMCA会館で創案された、朝鮮半島から日本の大学へ来ていた留学生らによる「2・8独立宣言」であることを、恥ずかしながら私は今回初めて知った。
 その後の歴史を通じて韓国国民が民主主義を進展させたことは疑いようがない。
 「世界一の民主主義国家」と言われた孫総領事の顔を、私はまぶしく見つめ続けたことだった。
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2019年06月02日

【今週の風考計】6.2─<トゥク トゥク トゥク>と働くセミ

★ショーン・タン『セミ』(岸本佐知子訳・河出書房新社)に魅了された。A4変形版32ページの絵本である。表紙を開けると、見返し2頁にわたって、高さがバラバラな墓石を思わせる、蒼い鉛色の積み木が並ぶ。左下に、小さく蝙蝠のような飛形で飛ぶセミが一匹、描かれている。

★続いてページを繰ると、なんと薄みどり色のセミが背広を着て無機質なオフィスで働いている。しかもニンゲンからコケにされ、昇進もせず、17年間ケッキンなし、<トゥク トゥク トゥク>と働いてきた。
★そして定年、送別会もない、セミは高いビルの屋上に行く、そろそろお別れの時間、屋根の縁に立つ。それから一気に10ページにわたって、心を打つドラマが描かれる。
★朱赤で描かれる無数のセミの抜け殻が空を舞う。絵を見ながら、まさにセミの甦り、17年目の新たな出発への飛翔、そんな感動に包まれた。最終ページに、芭蕉の句<閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声>を載せている。

★ショーン・タンは、1974年オーストラリア生まれのマルチ・アーチスト、絵本のみならず彫刻、映画、舞台などで活動を続けている。絵本では『アライバル』ほか、アンデルセン賞をはじめ数々の賞を受賞、作品は世界中で翻訳出版されている。

★実は、彼について知ったのは、つい最近だ。先週末、1万歩ウオーキングがてら、「ちひろ美術館・東京」に立ち寄ったところ、<ショーン・タンの世界展>が併催されていたからである。
★展示されている作品を、まず一巡。そして二巡目で、一つ一つじっくり見入る。なんとも不思議な、奇妙で懐かしい、どこでもないどこかへ連れていってくれる余韻に浸った。すぐに『セミ』とショーン・タン展覧会の公式図録を買い求めた。今も座右において、このコラムを書いている。(2019/6/2)
ショーン・タン「セミ」.jpg
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2019年05月28日

【内政】日米地位協定改定で世論盛り上がる 全国知事会・地方議会が動く 国内法適用で「主権確立を」=吉田敏浩

 米軍優位の不平等な日米地位協定の問題が注目されている。地位協定は米軍に、基地の運営などに「必要なすべての措置をとれる」強力な排他的管理権を認めている。米軍機墜落事故でも米軍が現場を封鎖し、日本側は現場検証も事情聴取もできない。米軍は事故原因の究明は二の次で訓練飛行を再開し、日本政府は容認してばかりいる。

 基地周辺の住民による米軍機騒音訴訟で、騒音公害として違法性と損害賠償は認められるが、飛行差し止めは認められない。米軍の活動に日本政府の規制は及ばないため差し止めはできないと裁判所は判断する。米軍の活動に対し日本の行政権も司法権も及ばないのが実態だ。危険な低空飛行訓練も野放しである。

 米軍という外国軍隊により主権が侵害され、そして憲法で保障された人権も侵害されている。こうした現状に対し、昨年7月、各都道府県の知事からなる全国知事会は、初めて地位協定の抜本的見直しを求める提言を、全会一致で採択し、政府にも要請した。その「米軍基地負担に関する提言」では、地位協定は「国内法の適用や自治体の基地立入権がない」など、日本にとって主権の確立が「十分とは言えない現況」だと指摘した上で、こう求めている。

「日米地位協定を抜本的に見直し、航空法や環境法令などの国内法を原則として米軍にも適用させることや、事件・事故時の自治体職員の迅速かつ円滑な立入の保障などを明記すること」

 米軍に対し必要な規制をかけて人権侵害などを防ぐためには、地位協定を抜本的に改定し、米軍への国内法の原則適用を明記する必要がある。しかし、政府は改定に後ろ向きだ。「運用の改善」と称する小手先の対応ばかりで、米軍の特権を見直そうとする姿勢はない。しかも、駐留外国軍隊には特別の取決めがない限り受入れ国の法令は適用されない、との見解を示す。

 しかし、駐留外国軍隊への国内法の原則適用は、実は国際的な常識である。沖縄県がドイツ、イタリア、ベルギー、イギリスに調査団を送り、日米地位協定と比較してまとめた「他国地位協定調査報告書(欧州編)」によると、各国では米軍に対し航空法や環境法令、騒音に関する法令など国内法を原則適用している。低空飛行訓練も高度、飛行時間、訓練区域などに規制をかけている。横田空域のような米軍が航空管制を一手に握る空域もない(8面参照)。基地の排他的管理権も認めず、受入れ国の軍や自治体などの当局者の立入り権も保障される。日本とは異なり、「自国の法律や規則を米軍にも適用させることで自国の主権を確立、米軍の活動をコントロール」しているのだ。

 報告書は沖縄県のホームページに載っており、より広く知られてほしい。それは地位協定の抜本的改定に向けた世論の広がりにもつながるだろう。前述の全国知事会の提言を受けて、地方議会にも地位協定の改定などを求める意見書が出され、今年4月半ばの時点で、北海道・岩手など7つの道県議会と札幌市・長野市など122の市町村議会で決議された(「しんぶん赤旗」4月27日)。こうした取り組みの広がりも重要だ。
 ジャーナリズムが地位協定の問題点をさらに掘り下げ、米軍の特権を認める密約なども暴露し、改定の必要性を訴えることも望まれる。

吉田敏浩(ジャーナリスト・2017年「日米合同委員会の研究」でJCJ賞)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
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2019年05月27日

【リアル北朝鮮】米韓軍事演習の反発か「飛翔体」2回発射=文聖姫

 2017年11月29日の大陸間弾道ミサイル「火星15」発射以来、ミサイル発射を控えてきた北朝鮮だが、5月に入り、立て続けに2回、金正恩朝鮮労働党委員長指導のもと、火力攻撃訓練を行った。

 一つは4日に東海海上で前線および東部戦線防御部隊が行ったもので、二つ目は9日に西部戦線防御部隊が行ったものだ。  北朝鮮は8日、北南将領級軍事会談代表団報道官が朝鮮中央通信社の記者に答える形で、4日の訓練は「正常な訓練計画にのっとって我々の領海圏内で行われた」ものだと強調した。だから、米国も日本も「約束違反ではないとの立場を表明した」とも主張した。

 一方、米国防総省は9日、北朝鮮がこの日発射した「飛翔体」を弾道ミサイルと断定した。10日には岩屋毅防衛大臣も「短距離弾道ミサイルを発射」と記者会見で述べた。トランプ大統領は、「極めて深刻に見ている」(9日)と不快感を示している。

 北朝鮮はなぜ、ここへ来て立て続けに「飛翔体」を発射したのか。2月の米朝首脳会談が物別れに終わった後、米朝協議は進展していない。そうしたなかでの動きだけに気になるところだ。

 国営・朝鮮中央通信は、4月の段階で興味深い論評を配信していた。27日発の論評で、米韓が3月に実施した「同盟19―1」訓練と8月に実施予定の「同盟19―2」訓練を、「歴史的な北南、朝米首脳会談で実現した合意に対する違反」「朝鮮半島の平和雰囲気をつぶす挑発」だと非難していた。米韓が軍事訓練を行うなら、我々が通常の訓練をして何が悪いのか、ということなのだろうか。

 西部戦線で火力攻撃訓練が行われた9日、米司法省は石炭を輸送していた北朝鮮船籍の貨物船を差し押さえたことを発表した。北朝鮮外務省報道官は14日、談話を発表し、差し押さえが「新たな朝米関係樹立を公約した6・12朝米共同声明の基本精神を否定するもの」だと非難した。

 文聖姫(ジャーナリスト・博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
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2019年05月26日

【今週の風考計】5.26─15日夜、首相官邸から出た車の駐車場所

新聞に掲載の「首相動静」欄は、しっかり目を通したほうがよい。とりわけ最終行、18時頃からの面会・会食の相手には注意がカンジンだ。
その一例が5月15日の当該欄である。安倍首相は<午後7時30分、公邸、末延吉正東海大教授らと食事。10時6分末延氏ら出る。>と記されている。

末延吉正東海大教授といえば、山口県出身、建設業の御曹司。若い時から安倍晋三と面識があった。1979年に早大卒業後、テレビ朝日に入社。政治部長の時、部下に対する暴力事件で2004年に退職。
 現在はテレビ朝日の<大下容子ワイド!スクランブル>などでコメンテーターを務め、安倍首相を擁護しまくっている、典型的なマスコミ内の政権応援団の一人だ。

だが、ここに名前の載らない人物がいたという。幻冬舎の社長・見城徹氏が同席していた、という告発である。
「本と雑誌の知を再発見する」と謳うニュースサイト<LITERA>の編集部が、2019.05.21 10:55付けでWEBに公開している。
 その追撃取材によると、15日夜10時6分、首相公邸から出てきた車「黒いアルファード」が、渋谷区千駄ヶ谷にある幻冬舎本社の駐車場に停めてあったのを確認し、かつ官邸詰め記者が控えていた車のナンバーと照合したところ、一致したというのである。
首相公邸での15日夜7時30分からの会食に、同席していたもう一人の人物は、見城氏であるのは明らかだという。
 なぜ見城氏の名前だけが「首相動静」から隠されているのか。2014年7月から、彼の名は完全に秘密扱いになっている。その理由の解明が待たれる。

この15日前後は、見城氏にとって<嵐の1週間>となっていた。順に辿ってみたい。
 12日には、映画「空母いぶき」(5月24日公開)に総理大臣役で出演の俳優・佐藤浩市のコメントは、安倍首相を揶揄したものであり、「これは酷い。見過ごせない。」と、見城社長がツイッターで攻撃した。これに百田尚樹氏や阿比留瑠比氏ら安倍応援団と一緒になって、佐藤発言を歪曲して騒ぎが拡大。
4月に幻冬舎から刊行する津原泰水『ヒッキーヒッキーシェイク』の文庫版を、突然、出版中止。その背景には、百田尚樹『日本国紀』(幻冬舎)を、コピペ疑惑や事実誤認などについて指摘した津原泰水氏への対抗処置があるとされ、批判が起きていた。15日当日、対応は<訴訟するしかなくなる>と強気のツイートを投稿。
16日、幻冬舎で刊行した津原氏2作品の実売部数までツイッターで公表し、著名な作家たちから、厳しい批判の声が嵐のように巻き起こり、猛抗議を受けていた。
 高橋源一郎氏は、「出版社の社長が、<こいつは売れない作家だ>とばかりに部数をさらしあげるなんていうのは、出版人の風上にもおけない行為である」と、痛烈な苦言を呈した。
17日、テレビ朝日の600回「番組審議会」に委員長として出席。19日、見城社長は深夜にツイッターを閉鎖。20日には、テレビ朝日と藤田晋氏のサイバーエージェントが共同出資して始めたAbemaTVの「徹の部屋」に出演し、「お詫び申し上げます」と謝罪、同番組の終了を宣言した。
 同番組は、見城社長がホストを務める2時間生放送のトーク番組。これまで安倍晋三首相や百田尚樹氏、有本香氏などのメンバーが出演してきた。
23日、幻冬舎の見城徹社長と社員一同の名前で、改めて津原泰水氏へのお詫びを、自社のホームページに掲載した。

しかし、幻冬舎は作家の“実売部数さらし”は謝罪したが、文庫本の刊行中止については、言及も謝罪もない。「表現や出版の自由」を擁護し出版文化を担うはずの出版社が、中止の理由に口を閉ざすのであれば、自ら「表現や出版の自由」を抑圧・封殺したと、批判されてもいたしかたない。

さて、15日の夜7時30分から10時6分までの2時間36分、見城氏は安倍首相と末延吉正氏を交えた会食で、何を話し合ったのか。<謀は密なるを以って良し>を決めこみ、<藪の中>にしていいのだろうか。(2019/5/26)
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2019年05月16日

【植村東京訴訟】 異例 5月10日再び口頭弁論 札幌では控訴審始まる=編集部

 慰安婦記事を「捏造」したとされた元朝日新聞記者植村隆さんの名誉回復を求める東京訴訟の行方が大きく揺れ動いている。昨年11月28日の最終弁論で結審し、3月20日判決の予定が原克也裁判長らの公正を妨げる異例の訴訟指揮で大幅に変更されたためだ。地裁は判決の1カ月半前に突然「弁論を再開する」と言い出し、被告の西岡力氏、文芸春秋社側に新証拠「吉田清治証言」関連証拠(朝日新聞社第三者委員会報告書全文)の提出を指示し、3月20日の期日を延期。新たに5月10日に弁論が再開されることとなった。

「捏造」はどっちだ
 地裁が新証拠とする「吉田清治証言」とそれを報じた朝日新聞記事と植村さんは何の関係もない。全く関わってもいないのだ。だからこそ、この4年間にわたる法廷で「吉田証言」は争点にすらなってこなかった。改めて確認すれば植村東京訴訟は、植村さんが1991年に執筆した記事を巡ってのものだ。それは@元従軍慰安婦の経歴をもつ韓国人女性が初めて名乗りを上げ、自分の体験を証言し始めたことAその証言テープを入手し、内容を報じたものだった。被告西岡氏は、その記事を「意図的な捏造」等と誹謗中傷する言説を文芸春秋社出版物で繰り返してきた。そして、審理の中で争われたのも「(のちに自ら名前も明らかにした金学順さんが)『挺身隊の名で連行された』と証言したかどうか」であり、その過程で明らかにされたのは、植村さんを「捏造記者」と決めつけ、誹謗中傷した被告西岡氏自身が、自ら論拠とした金さんの訴状や証言、それを報じた韓国紙記事を引用する際、実際にはない記述を書き加えたり、その重要部分を無視するなどの「捏造」と言っても過言ではない行為を繰り返していたという事実だった(それらは本紙過去記事で具体的に参照できる)。

なぜ今「吉田証言」
 ではなぜ今、「吉田清治証言」なのか。我々は、植村さんの名誉が毀損された事実を認め、西岡被告の「論」に丸乗りして櫻井よしこ被告が展開した「人身売買」説を「真実と認めることは困難」と判示しながらなお、争点の「捏造」を問わず、「慰安婦問題に関する朝日新聞の報道姿勢や…記事を執筆した原告批判」には「公益性が認められる」とした昨年11月の札幌地裁不当判決を想起せざるを得ない。歴史や事実に基づかず、今の流行におもねったあの「ネトウヨ」判決の論理が浮かびあがる。

沈黙は報道の自死
 植村さんの記事は記者として当たり前の取材をし書かれたものだ。にもかかわらず、のちのご都合主義的判断基準で一方的に誹謗中傷され断罪されるとしたら報道は成立しない。ジャーナリズムは死滅する。沈黙している現役記者のみんなに言おう。札幌地裁判決を「是」としたら、植村さんとその家族が受けた被害は明日、我が身に降りかかってくるのだということを。

 今回の東京地裁原克也裁判長の訴訟指揮について植村弁護団は「当事者の攻撃防御権を著しく侵害するもので、訴訟法の根本理念に反し、裁判の公正を著しく妨げるものだ。そうした手続きが裁判所主導で進行している点もまた異常だ」と言う。2月の再開以来、弁護団による忌避申し立てで中断していた植村東京訴訟の口頭弁論は5月10日午後3時から、地裁706号法廷で開かれるが、再結審、判決日指定も予想され予断を許さない。一方、札幌では4月25日午後2時半、札幌高裁で植村裁判控訴審がいよいよスタートした。植村訴訟への引き続きの支援と裁判への傍聴を呼びかける。

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
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2019年05月09日

《ワールドウォッチ》イラン 米を「テロ支援国家」と認定=伊藤力司

 トランプ米政権は4月8日、イランの軍事組織「革命防衛隊」をテロ組織に指定した。これを受けてイラン最高安全保障委員会は即日米国を「テロ支援国家」と認定し、中東地域を統括する米中央軍や関連組織を「テロ組織」に指定したと発表した。シリアの戦乱が収まったのに、米・イランの敵対関係激化で中東は新たな危機を迎えようとしている。
 革命防衛隊は1979年のイラン革命を主導した故ホメイニ師らイスラム聖職者による政権を守護するために創設された軍隊で、イラン正規軍とは別に陸海空軍12万5千人の兵力を持つ。シリアのアサド政権やアフガニスタンの反政府勢力タリバン、イエメンのイスラム教シーア派武装組織フーシ派を積極的に支援してきた。
 トランプ政権は昨年5月、米欧など6か国がイランと結んだ核合意から一方的に離脱し、外国にイランとの石油取引を禁止するなどの厳しい対イラン制裁に踏み切った。しかしシリア内戦でイランとロシアが支援したアサド政権が勝ち残り、欧米が支援した反政府側が敗れた結果、イランは中東における勢力圏を大幅に拡大した。その結果、アメリカの友邦イスラエルはこれまで以上にイランの脅威を意識するようになった。トランプ大統領としては、盟友ネタニヤフ・イスラエル首相の危機を放置するわけにはいかない。イランの脅威を世界に呼びかけたわけだ。
 一方、イラン側では革命防衛隊幹部が「米軍に対して(過激派)『イスラム国』(IS)と同列に対処する」と警告。イランは射程2千キロの弾道ミサイルを持っているとして「米軍はイランから2千キロ離れる必要がある」と指摘、軍事力行使を辞さない構えを示した。
 またイラン最高安全保障委員会の声明は、米国の決定に対し「根拠がなく、地域の平和への脅威だ。明白な国際法違反だ」と非難。「テロ掃討を担う革命防衛隊は国民の尊敬を得ている」と強調、また「今回の決定がもたらす『危険な事態』の責任は米国にある」と訴えた。双方の言い分はともかく、緊張の絶えない中東はなまたしても危険の度を強めている。


 JCJ月間機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
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2019年05月01日

【内政】 維新・足立議員 NHKディレクター攻撃 質問に名を借り「公開リンチ」に踏み込む=諸川麻衣

 3月19日の衆議院総務委員会でのNHK予算案審議において、公共放送とジャーナリストに対する重大な攻撃が行われた。日本維新の会の足立康史議員が、NHKのある番組制作者が弁護士の集まり(東京法律事務所九条の会)で行った講演について、個人名を挙げて問題視したのである。

 議員は、「九条の会は政治的行動をする政治団体なのに、政治団体として届け出がなく、違法の疑いが高い」「共産党が東京法律事務所の弁護士を候補に擁立した事実がある」とし、「違法な政治団体が名前を偽ってNHKのディレクターにNHKスペシャルと同じ名前の講演会を主催した。その団体は、破防法の調査対象団体である共産党と一体。こういうところにディレクターが行って、講演している。私は不適切だと思う。少なくとも、NHKの番組の公正公平さについて、視聴者に疑念を抱かせる活動であった。もうNHK終わりますよ、こんなことやってたら」と追及した。

 放送関係者が、自分の手がけた番組について、さまざまな分野の組織や団体に呼ばれて話をすることはごく普通のことであり、相手が暴力団やアレフなどでない限り、「左だから、右だからダメ」ということはない。BBCは、ニュースや番組の制作者だけでなく技術職員なども市民と対話して、協会の業務や存在意義に理解を得ることを重視している。NHK側もこの日、「就業規則で定められた手続きに則り、上司の許可を得て行われたものであり、NHKの番組に対する理解促進につながるという観点から許可した」と当然の答弁をした。

 九条の会が違法な政治団体だと決めつけ、あたかも東京法律事務所が共産党候補を擁立したかのように描き、さらに破防法を持ち出して共産党を危険な団体だと印象づける…このような三重の「言葉の詐術」に基づいて番組制作者の勤務外活動を問題視するのは、質問に名を借りた一種の公開リンチ≠ナはないないだろうか。実際、足立議員は、江田康幸委員長から再三「誤解を招くような表現は控えてください」などと注意されていた。

 議員の狙いは、組織ジャーナリストの市民としての行動を委縮させること、またNHKに今後、職員の同様な勤務外活動への許可を抑制させることにあったのではないか。だとすれば、これは放送の自主・自律と市民の政治的自由に対する大変危険な攻撃だと言わざるを得ない。特に、個人名まで出すのは、名指しされた本人だけでなく、仮に家族があればそちらまで危険にさらしかねず、「一線を超えた」凶暴さを感じる。筆者は思わず、戦前の天皇機関説排撃や滝川事件を想起し、あの暗黒の時代にここまで近づいてしまっていたのかと慄然とした。

諸川麻衣

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
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2019年04月27日

【内政】 野党の自滅 北海道知事選 ヒト・モノ・カネなし「保守王国」へ転落=徃住嘉文

47都道府県唯一の与野党対決といわれた北海道知事選の内実は、離合集散の果ての野党の自滅と、戦前の官選知事に戻ったかのような与党の後進性という政治の低迷だ。

「色がバラバラだ」。3月31日、札幌で開かれた野党統一候補、石川知裕元衆院議員(45)の街頭演説に、ベテラン運動員は仰天した。イメージカラーの青が、候補のたすき、のぼり、チラシで微妙に違う。「ぱっと色を見ただけで有権者の深層心理が候補に繋がるよう、色番号を統一して発注する。選挙戦の基本の基なのに…」。運動員は天を仰いだ。

3月25日の参院予算委。JR北海道への国の財政支援の答弁で、麻生太郎財務相が札幌を「奥地」「奥地」と繰り返した。質問者は北海道選出の国民民主党、徳永エリ氏だが「適切ではない」と言うだけ。前日には、桜田義孝五輪相も「(3.11の時)国道とか交通、東北自動車道も健全に動いていたからよかった」と失言していたが、徳永氏は「発言で失敗しないでほしい」と怒らない。

 政界だけでない。リベラルで知られる地元新聞も「奥地」発言について一面コラムで「函館ではそう言う」「発言は不適切とも言えまい」と報じた。麻生氏が繰り返す民主主義や人権への暴言と同根ではないかという問題意識に筆は至らず、ネットでは「横路孝弘元衆院議長、鳩山由紀夫元首相らが健在だったら、あんなこと言わせなかった」との嘆きが流れた。

すべての原因をひとつに求めることが無理とはいえ、かつての社会党王国は、民主党、民進党、立憲と国民へと続く離合集散で、その力を減じてきた。広い北海道を回るには少なくとも知事選の2年前には候補を決めるのが常道だ。その2年前に起きたのは民進党の分裂。市町村レベルで立憲、国民の組織が固まったのは昨年。立憲は半年前、逢坂誠二政調会長擁立に動いたが、3カ月前に断られ、今年2月、急遽、石川氏を擁立した。短期決戦を制する人、物、金は、もはやなかった。

他方、最高裁からNHKまで人事掌握を追求する安倍晋三政権にあって、知事選はまるで地方人事のようだった。5選の声もあった高橋はるみ知事は、後継に鈴木直道夕張市長(38)を示唆しながら明言を避け、自民党道議や地元経済界は元国交省北海道局長担ぎ出しに走った。

 鈴木氏は、東京都職員から財政破たんした夕張市に応援で入り2011年、夕張市長に当選した。破たん時の総務相が菅義偉官房長官。法政大の先輩で、再建をめぐり頻繁に相談する間柄だ。道議側にすれば、国の言う通りに動く若いよそ者の破産管財人に過ぎず、知事になれば自分たちの既得権益に口出しするかもしれない。気心の知れた元役人の方が安心という流れに高橋知事も乗りかけたところ、政治生命を絶たれる、と察知した鈴木氏は1月29日、無所属での出馬を表明。すると、公明党が真っ先に推薦を決め、これに官邸の意向を読んだ動きが広まるなどして自民の推薦が決まった。菅長官が札幌入りし「夕張再生のめどをつけたのは鈴木候補。安倍政権は経済再生が最優先」と仕上げをした。

 鈴木氏は公約で、北電泊原発再稼働、高レベル放射性廃棄物処分場などの賛否を語らず「道民目線で考える」と抽象論に終始した。自民党は道議会でも過半数を制し、安倍首相を「北海道みたいなところで勝ったのは大きい」と喜ばせた。リベラルで知られた先の地元紙の函館支社は、知事選出馬がささやかれていた昨年10月、鈴木市長を招いて、講演会を開いてもいる。リベラルの牙城は、右派の王国になるかもしれない。

徃住嘉文(北海道支部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
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2019年04月26日

【内政】 大阪W選 維新が圧勝 広がり定着する「穏健」支持層=松本創

 大阪ダブル首長選挙での大阪維新の会圧勝について、著書「誰が『橋下徹』をつくったか」で2016年度JCJ賞を受賞したノンフィクションライター・松本創さん(元神戸新聞記者)に寄稿してもらった。

 大阪都構想をめぐる大阪維新の会と公明党の対立に端を発した4月7日の大阪府知事・市長選挙は、維新の圧勝に終わった。松井一郎氏は知事から市長へ、吉村洋文氏は市長から知事へと入れ替わり、新たに4年の任期を得た。同日の府議選・市議選でも維新は大きく議席を伸ばし、府議会では過半数を獲得。市議会でも過半数まで2議席と迫った。法定協議会のハードルはまだあるとはいえ、都構想、つまり大阪市の廃止・解体を問う2度目の住民投票へ、大きく動いたことは間違いない。

 自公を中心とする反維新陣営には、「脱法的な入れ替え選挙を仕掛けられ、候補者選定が遅れた」「司令塔不在で組織の体をなさず、自滅した」「維新との関係に配慮する党中央の支援を受けられなかった」など、戦術ミスや体制の不備を敗因とする声がある。確かに、選挙期間中も不協和音ばかり聞こえてきた。自民党大阪府連が、政党としての機能不全を露呈した選挙だったと言えるだろう。
 だが、それは本質ではない。維新支持の広がりと定着にこそ、主因はあると見るべきだろう。

無党派層が集まる
 選挙期間中、両陣営の街頭演説を数カ所ずつ見て回った。組織動員臭が拭えない反維新に対し、維新側は無党派層が自然発生的に集まっている印象を受けた。橋下徹氏が率いた3年半前までの「熱狂」とは違う。特別熱心に活動するわけでも、強い政治的志向を持つわけでもない「穏健」な支持層が、着実に積み重なっている感があった。
 聴衆に話を聞けば、関空の好調、インバウンドの増加、万博招致などを評価する声があった。公園や地下鉄の民営化で街が明るくなったと喜ぶ人もいた。ここには、民主党政権の遺産や前任者から引き継いだ施策も混じっているのだが、まとめて「維新政治の成果」と受け止められていた。

 今回の選挙に至る経緯、維新の政治手法、また都構想に首を傾げる声もあるものの、大きな問題とは見ていない。そんな「正しさ」は、いわば「重箱の隅をつつく」批判であり、大事なのは、大阪の景気浮揚と成長、そして都市格の復権なのだろうと、彼らの言葉に感じた。
 維新支持の動向を詳細に分析した善教将大・関西学院大学准教授によれば、支持者は維新を〈「大阪」という抽象的な都市空間〉の利益代表者と見ているという。個々人の生活や仕事には直結せず、市や区という狭い意味の地元とも異なる「より集合的な大阪」の利益を彼らは求めている、と。

合理的な選択結果
 それは多分にメディアによって作られたイメージではないか、根深く強烈な「対東京」意識が根底にあるのではないかという疑問も生じるが、善教氏は、維新支持は決してポピュリズムではないと強調する。自律的かつ合理的に「大阪の代表者」を選択した結果だ、と。
 都構想反対の一点で結集した反維新陣営は、この点を見誤った。大阪市解体の不利益を述べるばかりで、ではどうやって大阪を成長させるかという具体策を提示しきれなかった。有権者に届く言葉を持てなかった。真の敗因はそこにある。

 今回の圧勝で、都構想住民投票へ向けた動きが加速する。奔流に飲み込まれることなく冷静に、客観的な事実や問題点を示せるか。維新支持者も含めた有権者に届く言葉を持てるか。反維新陣営にも、在阪メディアにも、そこが問われている。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
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2019年04月25日

【内政】 官邸 内閣記者会の分断狙う 新時代拓く記者のネットワークを=南彰

 テレビ朝日記者の勇気ある告発によって明らかになった財務省事務次官のセクハラ問題から1年。新聞労連の女性組合員が中心に企画した院内集会「いま、つながろう セクハラのない社会へ」が4月15日に開かれた。
 16人の登壇者が様々な職域で起きているセクハラ被害の実態や国内法の不備などを報告したが、その一人、バズフィード・ジャパンの古田大輔編集長が指摘した。
 「ジェンダー平等への意識が低い2つの業界がある。政治とメディアだ。女性記者は男性記者と比べものにならないくらい攻撃に遭いやすい。記者会見での発言も『女のくせに』と批判され、守られない」
 多くの集会参加者が思い浮かべたのは、東京新聞社会部の望月衣塑子記者だ。菅義偉官房長官の記者会見で政権の問題を追及しているが、首相官邸による執拗な質問制限に遭っている。

記者排除の意図
 具体的には、@質問の順番を後回しにするA質問を指名する際に「この後公務がある」と質問数を1〜2問に制限するB質問中に司会の官邸報道室長が数秒おきに「簡潔にしてください」などと妨害している。
 極め付きが、官邸報道室長名で内閣記者会の掲示板に貼り出した文書だ。望月記者の質問内容を一方的に「事実誤認」と断定し、「度重なる問題行為について深刻なものと捉えており、問題意識の共有をお願い申し上げる」と申し入れた。「記者の質問の権利に何らかの条件や制限を設けること等を意図したものではありません」と言い訳が記されているが、一連の経緯を踏まえれば、記者排除の意図は明確である。
 記者と政府の間には情報量に圧倒的な差がある。仮に質問に誤りがあれば、官房長官がその場で正して、理解を求めていくのが筋だ。その上で今回の申し入れが悪質なのは、記者の質問の方が正確にもかかわらず、「事実誤認」「問題行為」というレッテルを貼ってきたことだ。

 申し入れでは、沖縄・辺野古で政府が進める米軍新基地建設の工事現場で「赤土が広がっている」と望月記者が質問したことを問題視しているが、赤土が広がっていることは誰が見ても明白な事実である。官邸の行為は記者の質問内容にまで政府見解を当てはめようとするものだ。記者登録制を設けて自由な取材・報道を制限し、「大本営発表」一色に染まっていった戦前に通ずる危険なものである。
 新聞労連が2月5日に官邸の申し入れ文を公表。「官邸の意に沿わない記者を排除するような今回の申し入れは、明らかに記者の質問の権利を制限し、国民の『知る権利』を狭めるもので、決して容認することはできません」とする抗議声明を出した。その後、各地の記者に官邸の異常な統制に対する問題意識と危機感が広がった。

各地に飛び火も
 3月14日に日本マスコミ文化情報労組会議の主催で行った官邸前集会には約600人が参加。7人の現役記者がスピーチに立った。
 広島から駆けつけた中国新聞の石川昌義記者は、加計学園理事長の記者会見の話を例にしながら、官邸で起きていることが各地に飛び火する危機感を訴えた。
 「加計孝太郎さんの記者会見が岡山でありました。地元の記者クラブの人しか参加できない、時間もごく短時間にする。(官邸の)こうした行儀の悪い振る舞いは隠したいことがある人たちにすぐ広まってしまう。押しとどめるためにも僕たちがしっかり声をあげていかないといけない」

 官房長官会見をめぐる問題の発端は、加計学園の獣医学部新設をめぐり「総理のご意向」と書かれた文部科学省の文書が報じられた際に「怪文書のようなものだ」と菅氏が虚偽答弁をして隠そうとしたことだ。官邸は内閣記者会の分断を図りながら、その追及の中心にいた望月記者を排除しようとしている。
 そうした動きにあらがう原動力が、財務省セクハラ問題をきっかけに結成された「メディアで働く女性ネットワーク」だ。連携しながら、新しい時代を切り開くジャーナリストのネットワークを築いていきたい。

南彰(新聞労連委員長・朝日新聞記者)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
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2019年04月04日

【リレー時評】沖縄めぐる3つの報道課題=松元 剛(JCJ沖縄世話人)

 米軍の辺野古新基地建設に向けた埋め立ての賛否を問う県民投票は、住民投票の有効性の指標ともされる投票率50%を超え、反対が7割超となった。昨年9月の県知事選での玉城デニー知事の得票を約4万票も上回った。
 争点が新基地の是非に絞り込まれた上、全市町村実施にこぎ着けた。圧倒的な反対の民意の歴史的意義は重い。

 3月になって、岩屋毅防衛相は臆面もなく、県民投票の結果にかかわらず工事を継続すると決めていたと明らかにした。了承したのは安倍晋三首相だ。首相は昨年9月の県知事選と同様に、「結果を真摯に受け止める」と答弁したが、うわべだけの空虚さが際立つ。
 「国防は国の専管事項」と言い張り、沖縄に基地を押し付け続ける姿勢は、先の大戦から続く「沖縄切り捨て」の差別的構造の温存に映る。
 国会審議で野党側がこうした安倍政権の姿勢を追及しているが、「沖縄に寄り添う」「真摯に―」と言いながら民意無視を決め込む政権の姿勢は、メディア側が主体的に追及すべきではないか。

 一方、宮古、八重山への自衛隊基地新設も根強い反対を軽んじて進んでいる。沖縄戦は、国体護持、本土防衛のための「捨て石作戦」だった。多くの県民を軍と共に行動するよう仕向け、軍民混在の凄惨な戦場で死に追いやった。沖縄戦の教訓は、「軍隊は住民を守らない」である。
 安全保障問題で、頻繁に用いられる「島嶼防衛」をかいつまんで説明すれば、こうなる。島の戦闘は守備より攻撃が有利。攻め込まれたら、敵にいったん占領させた上で、逆上陸して島を奪い返す─。自衛隊が米軍を巻き込んで繰り返す「離島奪還」という奇妙な名称の訓練の核心である。
 間違いなく巻き込まれる住民の安全は二の次だ。自衛隊内の沖縄戦研究の蓄積を踏まえ、「第二の沖縄戦」が想定されている。「島嶼防衛」の危うさに対するメディアの検証は鈍いままではないか。

 平成の世が終わりを告げる4月末までの期間は、昭和天皇によって沖縄が切り捨てられた史実を検証する最後の機会だろう。
 1945年2月、近衛文麿元首相から早期和平を進言された、昭和天皇は「今一度戦果を挙げなければ実現は困難」と拒み、沖縄戦は不可避となった。47年9月、昭和天皇は米側にメッセージを送り「25年から50年、あるいはそれ以上」沖縄を米国に差し出す方針を示した。いわゆる天皇メッセージである。
 「象徴天皇」でありながら、昭和天皇がなぜ外交に深く関与し、沖縄の命運を暗転させた重大な方針を示したのか。「昭和天皇実録」などでもその経緯は未解明だ。沖縄に関する昭和天皇の「戦争責任」と「戦後責任」は明白だ。今に続く沖縄の基地過重負担に天皇制が及ぼした影響をあらためて検証し、その史実を後世にしっかり伝えることもメディアの役割ではないだろうか。それはもちろん、沖縄のメディアにも課せられている。
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2019年03月28日

【内政】 辺野古新基地阻止 世論が決め手 本土が民意示す番だ 沖縄市民グループが全国の地方議会への陳情準備=米倉外昭

沖縄県名護市辺野古の新基地建設の賛否を問う県民投票は2月24日に開票が行われた。投票率は52・48%と過半数を超えた。最も多かった「反対」は有効投票数の72%を超え、43万4273票に達した。これは全投票資格者(有権者)の37・6%に当たる。5市の市長が一時不参加を表明する事態があったが、曲折を経て全県実施が実現した。

23年ぶりの沖縄県民投票は歴史的な成功を納めた。それでも工事を止めることができていない。政府は県民投票告示後も工事を続行し、反対の民意が示された翌日も工事を強行し、現在に至っている。



3月1日、玉城デニー知事が安倍晋三首相と面談した。投票結果を伝え、工事中断と、日米両政府と県の3者協議機関の設置を求めた。しかし、ゼロ回答だった。

国会では連日、野党が政府の姿勢を追及し批判を続けている。しかし、首相らは「普天間飛行場の危険性除去のため」と繰り返し、民主主義否定、沖縄差別の姿勢をあからさまにしている。

埋め立て工事の土砂投入が始まってから3カ月が過ぎた。大浦湾の海流を変える新たな護岸の建設も始まり、25日には二つ目の区画に土砂投入を開始する方針だ。かけがえのない自然が圧殺されつつある。

大浦湾に広範囲にわたって軟弱地盤があることを、ようやく政府が認めた。海面から90メートルもの深さの部分もあり、地盤改良は極めて困難だ。砂ぐいを7万本以上打ち込むとしており、新基地完成まで13年、工費は2兆6500億円に達すると県は試算している。このまま進めても、十数年も普天間飛行場の危険が放置される。

さらに、普天間飛行場返還には、緊急時に民間の長い滑走路を使用するという条件もある。那覇空港を明け渡すことを意味し、事実上不可能だ。結局、新基地が完成しても普天間が返還される保証はないことになる。

それゆえ、玉城知事は辺野古固執こそが「普天間の危険を固定化する」と主張している。国が地盤改良のための設計変更や希少サンゴ移植などを申請しても県は承認しない。政府は展望がないまま既成事実をつくっているのである。



16日に玉城知事の支持母体「辺野古に新基地を造らせないオール沖縄会議」が那覇市内で1万人規模の県民大会を開く。

埋め立て承認「撤回」の執行停止決定を巡り、国を相手取って提訴するかどうかを、県は22日までに決定する。

玉城知事の知事選出馬に伴う衆院沖縄3区の補欠選挙は4月21日投開票だ。オール沖縄陣営のフリージャーナリスト、屋良朝博氏と自民公認・公明推薦の元沖縄北方担当相、島尻安伊子氏の事実上の一騎打ちである。7月には参院選がある。

「辺野古のへの字も言わない」という自公陣営の争点隠し戦術は、県民投票が成功したことでできなくなった。再び、新基地の是非、日本政府にどう向き合うかの判断が示されることになる。



次に選択を迫られるのは全国の人々である。4月に統一地方選、7月に参院選がある。沖縄の民意に対して、各政党や候補者は意思表示をすべきだ。沖縄に新たな基地を造ることに賛成か反対か、沖縄の民意を尊重するのか無視するのか。

沖縄の市民グループが全国の地方議会に国民的な議論を呼び掛ける陳情を行う準備をしている。

政府の沖縄差別政策、民主主義の破壊、軍事化と自然破壊を止めるための一番の近道は、全国の世論、国際世論が、新基地建設阻止の意思を明確に示すことである。

米倉外昭(琉球新報記者)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年3月25日号
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2019年03月15日

【今週の風考計】3.17─世界で頻発する大統領包囲の民衆デモ

南アメリカのベネズエラが未曾有の危機に立たされている。2013年に就任したマドゥロ大統領は、死去したチャベスの後継者とされ、酪農やコーヒー・肥料・靴などの生産、スーパーマーケット事業などを相次ぎ国営化した。
しかし米国などからの経済制裁に加え、原油価格が下落して事態は悪化。天然資源も人的資源も豊富なこの国が崩壊寸前の状態に陥っている。2015年の選挙で野党が多数派になった国会の権限を無効化し、批判勢力を暴力的に抑圧・弾圧した責任も免れない。
野党連合出身のグアイド国会議長は、自ら暫定大統領就任を宣言し、数千人規模の反政府デモを組織して立ち上がっている。だが米ロなどの大国が軍事介入し、さらなる混乱を招く暴挙は慎まねばならぬ。

隣国のブラジルでは、今年の元旦に就任したボルソナロ大統領の言動も要注意。「ブラジルのトランプ」と評されるが、政界汚職を一掃できるか、犯罪組織による暴力が激化する“殺人大国”の汚名を返上できるか、極めつけの右翼であるだけに軍部と二人三脚での独裁政治に走らないか、不安が広がっている。

転じて北アフリカに目を向けると、アルジェリアではブーテフリカ大統領の立候補に反発する数万人規模のデモが起きている。なんと82歳になる彼は、4期20年の長期政権を率いてきた。6年前に脳卒中を患って以降、公の場にほとんど姿を見せず、健康不安が囁かれているのに、4月18日の大統領選挙へ5選をめざして立候補を表明したからたまらない。
野党勢力が結集して「空前の反乱」を呼びかけている。経済成長率は1.4%まで落ち込み、とりわけ若年層の高い失業率への反発は増大している。

アルジェリアの動きを気にしているのが、エジプトのシシ大統領だ。2014年に就任し、現在2期目・64歳の彼は2022年で任期満了の予定だった。だがシシ大統領を支持する議員が提出した、任期をさらに2期12年に延ばす改正案は、2034年までの在職(20年間)を可能とする内容。
 なんと8割の賛成多数で承認されてしまった。5月の国民投票にかけられ、過半数が同意すれば憲法改正が成立する。日本の永田町でも、安倍首相4選などの発言が飛び出している。
 シシ大統領に戻れば、人権活動家・ジャーナリストの拘束など、彼の強権姿勢は際立っており、「エジプトは記者にとって世界有数の監獄」と評されている御仁だ。

2018年に再選されたトルコのエルドアン大統領も、デモ禁止など国民への弾圧と取り締まりが激しい。仲間優先の縁故主義や独裁主義がはびこり、政治的な迫害や司法制度・法治への不信感、ビジネス環境の悪化などが、怒りに拍車をかけている。経済はぐらつき、通貨リラは急落。ついにトルコ国民も、17年には42%増の25万人超が外国へ逃げ出している。
 いま世界は大統領の言動を包囲する、怒りの民衆ネットワークを作り出している。(2019/3/17)
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2019年03月09日

【国内政治】 地に落ちた統計の信用 企業・大学などに悪影響計り知れず 政治的思惑か忖度か=岡田敏明

 国の統計をめぐる問題が注目を集めている。
 いったい何が起きているのか。厚生労働省が、毎月勤労統計を不正な方法で調査していた。全数調査すべきところを抽出調査していたが、いきなり全数調査に近づける補正が行われたことから名目賃金が異常に上昇。補正は2018年から行われたが、17年以前分は補正されなかったため対比ができなくなった。

基幹の4割に問題
 毎勤統計の不正を調査する特別監査委員会の報告書問題もあったほか、不正は厚生労働省だけではなく、政府の基幹統計全体のなんと4割に問題が見つかっている。政府は新年度予算案を修正、閣議決定をし直す異例の事態に追い込まれた。雇用保険などを過少給付されていた対象者はさらに拡大する可能性がある。
 さらに毎勤統計の調査対象の入れ替えでは、首相秘書官が「問題意識」を伝え、その結果賃金の伸び率が上ぶれしたことなども明らかになった。
 単なる行政ミスが重なったわけではない。政治的な思惑か、官僚サイドでの忖度が働いたのか。不正の隠蔽と虚偽報告等々、疑惑は広がっている。
 日本の統計の信用は、地に落ちた、というべきだろう。

統計委員会の役割
 政府は「世界に冠たる日本の統計」などと自賛し、国際協力として途上国への援助もしてきた。その統計が揺らぎ、国の信用が毀損している。
 今回の一連の報道で統計委員会という存在を知った人も多いと思う。実は、2007年5月に新統計法が成立、60年ぶりに統計の基本法が改正された。この法律で統計委員会が設置された。
 旧統計法は、戦前から戦中にかけての経験に対する反省を踏まえ、積極的に統計体系の整備を図るために、各種統計調査に共通することを規定。指定統計調査および届出統計調査に関する事項等を規定していた。

 旧法は本文23条という小さな法律だったが、世論調査・意識調査などを法の範囲外として意見や意識という面にまで国が入り込むことを避けたという特徴があった。新法は本文64条からなるが旧法の精神を継承し、公的機関が作成する統計全般を対象とした法律に改編された。これまで官庁統計とか政府統計と呼ばれていたものを「公的統計」という名前に統一し、併せて統計データの二次利用促進を明記している。

 最近は、統計を「社会の情報基盤」という言い方をする。新統計法は、社会に必要とされる公的統計が効率的に、しかも人々に役立つように作るためのルールを定める。公的統計の作成、提供の手続、 統計調査で集めた個人や会社の秘密の保護、 全体としてムダなく効率的に統計を整備していくための仕組みなどを規定する。
 5年に一度行われる国勢調査のように国の基本となる特に重要な統計を作るための調査を 「基幹統計調査」というが、 その作成から結果公表に至るまで、 調査を実施する機関は厳しく規制される。統計の数字を都合良く変えたり、 公表前に結果を漏らしたりすることも禁止されている。毎勤統計も56ある基幹統計の一つである。

 西村芿彦統計委員長は「統計委員会では、統計技術的観点から毎月勤労統計及び毎月勤労統計調査の精度向上に多くの審議時間を費やし、厚生労働省にその改善を促してきており本事案は極めて残念である」と厳しく指摘した。事態は深刻だ。
 統計法は基幹統計調査に関して調査対象になった人や会社に回答の義務を定める。回答拒否や虚偽回答には罰則もある。
 国の重要な統計が正確に作れなければ、国や自治体だけでなく、民間企業や大学、統計データを使うすべての人々への影響は計り知れない。国民生活に直結する。
 かつてマルクスが資本主義研究を「資本論」に結実させたのは統計があって可能だったし、最近のトマ・ピケティの「21世紀の資本」も統計あってこそ成し遂げられたことは記憶に新しい。

役所に分散が問題
 この統計不正問題の背景として考えておかなければならないのは、統計部門が「行政改革」の名によるリストラの対象になったことである。04年当時6247人居た統計職員が18年4月には1940人と3分の1以下にまで大幅に減らされている。そして関連予算が削減されていた。統計に対する思想的退廃が見て取れる。
不正の意図は、長年まかり通っていたのはなぜか。―全貌を明らかにするのは重要課題である。 同時に、日本の公的な統計が各府省で分散されているという問題がある。この分散型の統計制度に対し、統計委員会を設置することで「司令塔」としての役割が期待されたのであるが、この制度で十分かも検討すべきである。統計を統合した中央官庁を新たに設置することも重要な選択肢であることを指摘しておきたい。

岡田俊明(元青山学院大学招聘教授・税理士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
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2019年03月05日

【内政】 天皇の戦争指導・責任を追及 88年JCJ賞受賞番組「遅すぎた聖断」上映 JCJ沖縄2月集会=杉山正隆

 JCJ沖縄2月集会「『遅すぎた聖断』学習会、ジャーナリズム各賞合同報告会・交流会」が9日、那覇市のRBCホールで開かれた。県内や、東京、北九州のメディア関係者30人が参加。沖縄戦がなぜ戦われたか、客観的な史料に基づき天皇の戦争責任などを考える「遅すぎた聖断 〜検証・沖縄戦への道〜」(1988年、RBC=琉球放送、40分)を上映。その後、番組を制作した仲里雅之ディレクター(当時)と大盛伸二カメラマン(同)から制作の狙いなどを聞き、質疑や討論が活発に行われた。

天皇制温存のため
 この番組にJCJ賞を贈呈したことを報じる88年8月25日付機関紙「ジャーナリスト」には、「ビデオを見た各委員はいずれもうなった。テレビでこれほど正面から天皇の戦争責任に迫り得た作品はこれが初めてではないか。日本軍による住民虐殺、20万に及ぶ戦没者をもたらした沖縄戦は、ただ国体護持=天皇制の温存のために戦われたのだ」と。また、「この番組を通じて『天皇の戦争責任』との言葉は一言も出て来ない。だが、積み重ねられた事実は、ものの見事に天皇・天皇制の責任を明らかにしている」と記されている。
 昭和が終わろうとする当時、天皇や君が代、日の丸などの問題をきちんと伝えなければ、との強い危機感が番組制作につながり、県内はもちろん、JCJ賞を受賞するなど県外でも反響が大きかった。

 メディア関係者からは、どんな苦労があったのか、タイトルを決定した経緯などの質問や、どう現役記者にバトンタッチしていけば良いのかアドバイスを求める声が上がった。
 仲里さんは「番組では事実を淡々と伝えていこうと思った。もちろん、どう受け止められるのか不安もあった。古本屋をまわり資料を探した」などと当時を振り返った。「沖縄では戦時中、皇民化教育が強くなされた。小さい頃からすり込まれた。それは皇族の結婚話を見ると、同じようなことが今もあるように感じる。最近の天皇の沖縄訪問の際に、戦時中と同じように『天皇陛下、万歳』の声が湧き上がり、提灯行列があった」とも。
 大盛カメラマンは「実は『遅すぎた聖断』に新しい事実は全く無かった。史実に、研究者の声などを丹念に組み合わせただけ。だから特に何も言ってないのだが、実は伝えたいことはしっかり言っている。ちゃんとしたメッセージを世に出したと今、見てあらためて感じる」と話した。

今の方が状況悪い
 参加者からは「番組を制作した30年前より今は悪くなっている点が少なくない」との危機感や、「沖縄のジャーナリズムを未来につないでいきたい」「沖縄ではきちんと伝えるべきニュースは報道されている。本土でのジャーナリストも工夫しつつ出来ることをすれば良い」「JCJの今後の取り組みに期待したい」などの声が上がった。
 各賞合同報告会では、沖縄タイムスが昨年のJCJ賞を、琉球新報が新聞労連大賞を、またラジオ沖縄や沖縄テレビ放送、FM沖縄などが主要ジャーナリズム賞を受賞するなど、昨年4月から現在までの13分野での受賞が報告された。各受賞者の代表からあいさつがあり、沖縄のジャーナリストの目覚ましい活躍に改めて感動した。

杉山正隆(JCJ運営委員)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
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2019年03月01日

【リアル北朝鮮】 米朝再会談を意識 「建軍節」例年とは違い静か=文聖姫

 2月8日は北朝鮮人民軍が創建された日だ。北朝鮮では「建軍節」と呼ぶ。実は、2017年までは4月25日が「建軍節」だった。この日は、金日成主席が朝鮮人民革命軍(抗日遊撃隊)を結成した日とされる。朝鮮人民軍は朝鮮人民革命軍の伝統を受け継いでいるから、朝鮮人民軍を結成した日が軍の創建日になるというのが、北朝鮮側の説明だった。
 しかし、歴史をさかのぼれば、当初は2月8日を「建軍節」としていた。それが前述のような理屈で4月25日に変わったのは1978年だった。そして、昨年、北朝鮮は従来の2月8日に「建軍節」を戻した。

 前置きが長くなったが、今年の「建軍節」は興味深かった。イベントを小規模化したのだ。昨年は建軍70周年だとして軍事パレードも行われた。だが今年は、慶祝公演とパーティーのみ。静かな建軍節だった。
 建軍節当日、金正恩朝鮮労働党委員長は人民武力省(防衛省)を訪問し、演説した。演説では、核やミサイルに関する言及はなかった。米国を非難する言葉も見当たらなかった。
 背景として考えられるのは、今月末にベトナム・ハノイで米朝首脳会談が開催されるという点だ。米国を刺激することを極力避けようとする北朝鮮指導部の意図がうかがえる。何もしないという選択肢は、北朝鮮の世論があるから考えられない。宴会や慶祝公演なら、ソフトなイメージが出せる。金委員長が人民武力省を訪れたのも絶妙な演出だった。

 さて、米朝首脳会談はどうなるのか。金委員長は今年元旦の新年の辞でこう語った。
「我々の主動的かつ先制的な努力に対し、米国が信頼性ある措置を取って相応の実践的行動で答えるなら、両国関係はより確実で画期的な措置を取っていく過程を通じて速いスピードで前進するでしょう」
 要するに我々も行動するから、米国も行動せよということだ。

文聖姫(ジャーナリスト、博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
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2019年02月18日

【お知らせ】JCJ2・22講演会:高須次郎<出版崩壊とアマゾン>

出版崩壊とアマゾン
─どう再生への道を拓くか─
いま出版界は存続の瀬戸際に立たされている。
値引き販売・取次外しなどのアマゾン商法″が席巻!
電子書籍の価格は自由、再販制度はズタズタ。
日本の書店・取次の倒産が続く─その出口を探る。

講演:高須次郎氏(緑風出版代表・前出版協会長)
日時:2月22日 (金)18時30分開会(18時15分開場)
場所:YMCAアジア青少年センター 3階会議室
〒101-0064 東京都千代田区猿楽町2-5-5 ☎ 03-3233-0611
JR「水道橋」駅東口下車、白山通りを神保町方面へ徒歩5分
アクセス地図 http://www.ayc0208.org/hotel/jp/access-access.html
参加費:800円(JCJ会員・学生500円)

《主催》 日本ジャーナリスト会議(JCJ)出版部会

JCJ出版部会2・22講演会チラシ(高須次郎氏).pdfJCJ出版部会2・22講演会チラシ
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