2020年02月13日

自民 新ポスターで改憲PR 首相「任期中」強調 市民団体 発議反対署名スタート=丸山重威

 2020年を迎えた政局は、「桜を見る会」問題のほかに「カジノ疑獄」「前法相夫妻の公選法違反」に火がつき、自衛隊派遣に踏み切った中東情勢も予断を許さない事態だ。しかし、安倍首相は、新春所感、伊勢記者会見で、改めて「任期中の改憲」を叫び、自民党は「改憲ポスター」を作成、改憲ムードを駆り立てるのに躍起だ。
 一方、憲法審査会を動かさなかった野党と市民は「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」「九条の会」など4団体による「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」が呼びかけて、新たに「安倍9条改憲NO!改憲発議に反対する全国緊急署名」の署名を開始。改憲勢力と地域で全面対決している。
国民の声と強弁
 首相の年頭所感では、「未来をしっかりと見据えながらこの国の形に関わる大きな改革を進めていく。その先にあるのが憲法改正」と表明した。
 第2次政権での年頭所感は8回目だが、憲法改正に言及するのは14年以来2回目で、自民党総裁任期が21年9月と迫る中、改憲姿勢を改めて鮮明にした。6日の伊勢神宮での記者会見でも「私自身の手で成し遂げていく考えには全く揺らぎはない」と強調。「参院選や最近の世論調査でも国民の声は改憲議論を前に進めよということ」「国会議員として改憲への国民的意識の高まりを無視することはできない」などと強弁した。
 さらに首相は、12日のNHK番組で、衆院解散・総選挙に関して「今は考えていない」としながら「解散すべき時が来たと思えば解散に躊躇はない」と発言。「補正予算を上げたあと、野党の準備が整わないうちに解散するのではないか」との観測も浮かんでいる。
国会は問題山積
 自民党が憲法改正を訴えるポスターを作るのは初めてで、キャッチコピーはともに「憲法改正の主役は、あなたです」。草原を背景にしたものと男女のイラストを配したものの2種類で、草原のポスターでは「話し合おう!考えよう!」、イラストのポスターは、「さあ、みんなで考えよう」と訴え、各4万枚を作り1月末から自民党の憲法集会などで活用する。
 平沢勝栄広報本部長は「一般の国民の理解をいただくには、もっとムードを盛り上げていく必要がある」と語り、安倍首相を起用しなかった理由を「憲法改正は首相がやるというより、国民がやることだ」と説明した。
丸山重威
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

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2020年02月10日

【リアル北朝鮮】 今年最初の視察は肥料工場 金委員長「食料」アピールか=文聖姫

 新年早々、イラン・イスラム革命防衛隊のソレイマニ司令官が米軍のドローン攻撃によって殺害されたとの衝撃的なニュースが世界を駆け巡った。イランは報復措置としてイラクにある米軍拠点を攻撃したが、米政府は軍事力を行使せず、寸でのところで軍事衝突は回避された。北朝鮮はこの事態をどう見ているのか。
 国営・朝鮮中央通信は11日、ソレイマニ殺害からイランの米軍基地攻撃に至るまでの出来事を客観的に報じたが、いまのところ北朝鮮政府の見解などは発表していない。米国をあからさまに非難することもしていない。
 また、潜伏して表に出てこないのでは?という大方の予想を裏切って、金正恩・朝鮮労働党委員長はソレイマニ殺害後に公の場に堂々と姿を現した。7日発朝鮮中央通信が、金委員長の肥料工場建設現場の視察を報じたのである。
 昨年12月28〜31日、北朝鮮の平壌では朝鮮労働党中央委員会第7期第5回総会が開かれた。事前に「重大な問題を決定する」と予告していた総会では、金委員長が「世界は遠からず朝鮮民主主義人民共和国が保有することになる新たな戦略兵器を目撃することになる」と宣言した。新たな戦略兵器とは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を指すのではないかと言われている。
 安保面ばかりが注目されたが、実はこの総会は、米国との交渉膠着が長引くことを予想して、制裁下でいかに難関を突破するかを協議する場であったと筆者はみている。結論的に言うと、金委員長は「正面突破戦」で難関を克服するよう全国民に呼び掛けた。
 そして、今年最初に視察する場所として選んだのが肥料工場の建設現場だった。最高指導者が食料問題解決のためにいかに尽力しているかをアピールする面もあろう。
 国の状況が目に見える形で悪くなっていると、総会で率直に語った金委員長。北朝鮮は今年、どう動くのか。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号


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2020年02月08日

2020年核廃絶へ正念場 初のNY原水禁世界大会 核禁止条約発効できるか=松村真澄

賞状授与.jpg
 日本のメディアは、五輪で大騒ぎしているが、2020年は、広島・長崎への原爆投下から75年の節目。在京紙では、唯一、東京新聞の連載、「2020年 核廃絶の『期限』」が目立った。このタイトル「期限」の由来は、03年、平和市長会議が「2020年ビジョン」を決議、「被爆者が存命のうちに核なき世界の達成」と訴えたのに基づく。1982年設立した同会議は、163カ国・地域、7861都市が参加している。
高まる国際世論
 核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は2017年のノーベル平和賞を受賞。これは核兵器禁止への国際世論の高まりを象徴していた。
 条約は、「核兵器の開発、実験、生産、製造、使用、保有」に加え「使用するとの脅威」をも禁止。50カ国が批准すれば発効するが、現在34カ国が批准しており、ICANなどは五輪期間中の発効を目指して各国に働きかけている。
 原水禁世界大会は今年初めてニューヨークで開催されることになった。呼びかけたのは、日本の原水協、原水禁、日本被団協の3団体のほか、米国のフレンズ奉仕委員会、英国の核軍縮キャンペーン、国際平和ビューロー、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)など。核不拡散条約(NPT)再検討会議の開催に合わせ、4月24日から26日まで、マンハッタンで大会を開き、集会やデモ、「ヒバクシャ国際署名」提出などを行う。  日本国内ではすでに代表の派遣運動が始まっている。
情勢はきびしい
 しかし、NPT発効50年といいながら、世界の核情勢は極めて厳しい。昨年5月の準備委員会では、イスラエルの核保有をめぐり米国が拒否、本年の本会議も前回15年会議同様、決裂の危険性が高いといわれている。
 米国、ロシアは新型核兵器を開発し、中国、インド、パキスタンは核兵器を増強、北朝鮮も核の力を強化しつつある。
 全ての加盟国に誠実に核軍縮交渉を義務づけたNPT6条に基づく中距離核戦力(INF)全廃条約は昨年失効、包括的核実験禁止条約(CTBT)は成立から20年を経て今も未発効だ。
 核保有国と非保有国との溝が深まる中、日本政府は「両者の橋渡しをする」と言いながら、核兵器禁止条約に反対し、唯一の戦争被爆国としての責任を放棄している。
 昨年日本を訪れたローマ教皇フランシスコは、核兵器禁止条約発効の必要性を述べ、被爆者と時間をかけて言葉を交わし、「核兵器使用と同様、保有も道義に反する」と語った。教皇は「被爆者の預言的な声が何よりも次世代への警告として役立つ」とも強調した。
 今年8月の原爆投下75年の広島の式典には国連グテレス事務総長が参加、IOCのバッハ会長も聖火リレーに合わせ5月に広島を訪問するという。ローマ教皇がつないだ平和のメッセージ・リレーは、2020年にも引き継がれる。
 日本政府も昨年の国連総会には「未来指向型の対話」を提案、核軍縮賢人会議の議長レポートは核兵器廃絶のための「困難な問題」への検討と対話を呼びかけた。日本の市民社会は政府に、この立場を更に前進させ、実効的に具体化するよう求めなければならない。
「核の傘」は戦争の「抑止」ではなく、相手国の胸元に突きつけた刃であり、相手国の軍拡を促すことだ。
 2020年は、核廃絶へ向けての正念場だ。
松村真澄(ピースボート国際担当)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

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2020年02月01日

カジノ疑獄 整備計画に変化 外資が群がる構図せん明に 横浜の反対集会に2千人=藤森研

雨の中のカジノ.JPG 
 安倍政権が成長戦略の柱として推進する、カジノ導入などのIR(統合型リゾート)計画に暗雲が広がり始めた。IR担当副大臣だった秋元司衆院議員が、事業参入を狙う中国企業からの収賄容疑で逮捕された。横浜市民らからは以前より誘致反対の声が挙がっており、計画が修正される可能性もありえよう。これを機に立ち止まって、ギャンブル依存症の日本の実態についても一度きちんと考えてみたい。
 秋元議員は否認しているようだが、贈賄側の供述や職務権限などから東京地検は強制捜査に踏み切った。事件の構図は、日本でのカジノに外国資本がよだれを垂らして群がって来るありさまを浮かび上がらせた。
横浜情緒を破壊
 横浜市民らによるカジノ誘致反対運動は至って活発である。昨年12月22日には氷雨にもかかわらず、横浜・山下公園に主催者発表で2千人もの市民が集まり、「カジノはいらない 勝手に決めるな」と声を挙げた。同市では、市長選で「白紙」を強調しながら、突然誘致を言い出した林文子市長への不信、風紀の乱れなど横浜情緒の破壊などへの反発も強いが、やはり大きいのはギャンブル依存症への不安だろう。集会でも、「ギャンブル依存症対策を取ると言うが、最大の依存症対策はカジノをつくらせないこと」「金が欲しいからと誘致する林市長こそカジノ依存症だ」などの発言が相次いだ。
 実は、日本は今すでに「ギャンブル依存症大国」である。厚生労働省の研究班が2014年に公表した調査結果によると、「ギャンブル依存症の疑いあり」が4・8%にのぼった。人口では536万人になる。同様の調査で諸外国は人口の1〜2%にとどまっていた。
「有病率」高い
 同省が2017年に発表した1万人面接調査によっても、生涯のうちに一度でもギャンブル依存症だった疑いのある人は推計3・6%、人口換算で約320万人。同じ判定基準で調査した海外各国は1〜2%以下の国が多く、日本の「有病率」は明らかに高い。
 主な原因は、パチンコ・パチスロの蔓延である。患者家族らの会の2015〜16年の調査では、パチンコ・パチスロが依存の対象として最も多く(92%)、ついで競馬(19%)、競艇(6%)などだった。
 最新データによると、世界中で合法的に導入されているゲーミングマシンは約740万台。うち半数以上の約430万台が日本にある。パチンコ・パチスロだ。日本はすでに「ギャンブル大国」でもある。それが高い依存症率を生んでいる事実を直視しなければならない。
 カジノを誘致する前に、政府もマスメディアも、すでにある日本のギャンブル依存状態に対し、きちんとメスを入れるべきだ
藤森研(神奈川支部代表)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号
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2020年01月30日

ズサン調査スクープから半年 陸上イージス配備計画見直しなるか 秋田魁記者・最新リポート

新屋演習場と住宅街.jpg
 地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を秋田市に配備する計画は、昨年6月に秋田魁新報が防衛省調査のずさんさをスクープして以降、大きく揺れ動き続けている。防衛省は配備候補地を「ゼロベース」で見直すとして再調査を実施中。住宅地に隣接した陸上自衛隊新屋演習場への配備計画が見直されるかどうかが今後の焦点だ。
官邸サイドが動く
 「『住宅地との距離も考慮して評価するよう防衛省に指示した』と、官房長官からそういう話を伺った」。昨年11月20日、首相官邸で菅義偉官房長官と面会した佐竹敬久秋田県知事は、直前のやりとりを報道陣にこう明かした。
 防衛省は、新屋演習場が配備に適しているかに関する調査のずさんさが秋田魁新報のスクープで明らかになって以降、「ゼロベースでの再調査」を掲げ、新屋演習場を含む青森、秋田、山形3県の国有地20カ所を対象に配備の適否を再検討する作業を進めている。そうした中で、省庁に大きな影響力を持つ菅氏が「住宅地との距離」を考慮要素に挙げた発言は大きな意味を持つ。住宅地に近い新屋演習場が大きなマイナスポイントを抱えることになるのは明らかであり、佐竹知事は5日後の会見で「初めてそういう具体的な発言が官房長官からあったということは、当然官邸サイドでも動いているということだと思う」と述べ、配備候補地見直しへの期待感をにじませた。
17議会が「反対」
 防衛省調査のずさんさが明らかになって以降、秋田では「反新屋」のムードが高まる一方だ。
 7月の参院選では、配備反対を訴えた野党統一候補の新人が、自民現職に勝利。8月には、秋田市を地盤とする冨樫博之衆院議員(秋田1区)が「新屋への配備はもう無理」という考えを防衛省に伝えたことを明らかにした。
 配備反対の請願や陳情を市町村議会が採択する動きも広がり、12月議会までに県内25市町村のうち17市町村の議会が採択した。
 昨年12月10日には、共同通信が「政府が新屋演習場への配備計画を見直す方向で検討に入った」とする記事を配信し、翌日付の秋田魁新報など全国の地方紙・ブロック紙が掲載。他の通信社や全国紙も同趣旨の報道で続いた。
「新屋」拒否は不変
自民、公明の県組織は新屋配備反対を公式には唱えていないが、12月20日には、自民党県連青年局が「人口密集地にあまりに近く、県民の不安が大きすぎる。適地であるとはとても言えない」とする意見をフェイスブックで公表するという動きもあった。
 こうした中、配備計画が浮上した当初は配備の是非についてあいまいな発言を繰り返していた佐竹知事や穂積志秋田市長の発言も様変わりした。「住宅地との近さが一番重要な視点。後戻りするかもしれないけれども、賢明な判断を求めたい」(10月21日の会見で佐竹知事)、「(新屋配備について)市民の理解を得るのは難しいと、河野太郎防衛相にはっきり伝える」(1月9日、秋田市新屋地区の新年会で穂積市長)。こうした発言は、住民の間でおおむね好感を持って受けいれられている。
 防衛省が行っている再調査の期限は3月20日。得られたデータを基に、3県20カ所の国有地を「ゼロベース」で見比べて配備候補地を決めるというのが、防衛省の示しているシナリオだ。
 再調査の結果、防衛省が再び新屋演習場への配備方針を打ち出したとしても、地元の理解を得られる可能性は限りなく低いのが、秋田県内の現状といえる。
松川敦志(秋田魁新報社編集委員)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

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2020年01月29日

判決「うれしい誤算」 責任とらせるまで追及続ける 森友疑惑情報開示 木村真市議寄稿

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 昨年12月17日、私が原告となって国を相手に争っていた森友裁判で、大阪高裁が原告側請求を全面的に認める判決を下した(国は上告せず、判決確定)。
2017年2月8日。私は、前年9月に豊中市内の国有地を森友学園に払い下げた売買契約書を公開請求したところ、売買金額や一部条文などが黒塗り・非公開とされたことは不当だとして、国を相手に裁判を起こした。この提訴をきっかけに売買金額が1億3千万円余という極端な低額であったことが分かった。安倍首相が「私や妻が関与していたなら、総理大臣も国会議員も辞める」と述べたことで、政局を揺るがす一大疑惑に発展した。その森友問題の発火点となった裁判で、国が全面敗訴したのである。
 昨年5月の大阪地裁判決では、金額を隠したことは違法とする一方、地下埋設物があることが記載された条文を非公開としたことについては適法とする、原告一部勝訴だった。こちらが控訴した高裁では弁論1回で結審した。間違いなく控訴棄却・原審維持だろうと思った。「忖度判決 恥を知れ!」というプラカードを20枚作成して傍聴者が手分けして法廷内に持ち込み、裁判長が「控訴を棄却する」という主文を読み上げた瞬間、私の「お前なんか裁判官辞めてまえ!」というヤジを合図に一斉に掲げるという段取りをしていた。
国は早期終結狙う
 ところが裁判長は「原審を変更する」。えっ?!「被控訴人(国)は控訴人(木村)に対し、(請求そのままの)11万円を支払え」。思わず隣の当方代理人弁護士さんに「勝ったってことですか」と尋ねると「全面勝訴や!」。傍聴席へ向かって「勝ったみたい」と声をかけると歓声が上がった。用意した抗議のプラカードは出番なし、「勝訴」の垂れ幕も用意しておらず(「不当判決」だけ持ち込んだ)、大阪弁護士会がノベルティ用につくった「勝訴」と書かれたタオルを持っている傍聴者がいたのでこれを拝借し、裁判所前で記念撮影した。
「嬉しい誤算」判決となったわけだが、喜んでばかりはいられない。情報公開訴訟として始めた裁判だが、その後すでに非公開部分の黒塗りは外れており、この勝訴で初めて明らかになることなど何もない。敗訴しても国は痛くもかゆくもないわけで、むしろ裁判を早期に終結させ、森友問題を「過去の問題」として片づけてしまおうということではないか。だから上告しなかったのだろうし、そもそも地裁判決後も、国は控訴しなかった。となると意外な判決ではないのかもしれない。
 しかし、この勝訴を弾みとして、森友問題の追及を続けていく。「お友だち優遇」「ウソと隠ぺい」「ごまかしと開き直り」は、森友問題だけに限ったことではなく、安倍政権の「体質」であることは、「桜を見る会」の一件からも明らか。森友問題をこのまま幕引きさせてしまえば、「桜」も「カケ」も、全てうやむやにされてしまうだろう。それはつまり、「権力さえ握っていれば、何をやっても構わない」ことを許してしまうことに他ならない。
流れ変わってきた
 翌日の18日には、東京地裁が、伊藤詩織さん準強姦事件で山口敬之氏に対して損害賠償を命じる判決を下した。民事とはいえ、「アベ友記者」をいわば「断罪」したわけだ。東西で2日続けての「嬉しい誤算」判決は、いよいよ流れが変わりつつあるのでは、とも思える。特別な力などない私たちができることは、しぶとく、しつこく、粘り強く食らいつくことだけ。しかるべき人物に、しかるべき形で責任を取らせるまで森友問題は終わらせない。つかんだ尻尾は放さない!
(大阪府豊中市議)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号


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2020年01月28日

性犯罪に甘い日本社会に一撃 同意ないと認定 伊藤詩織さん 他の被害者勇気づける判決

伊藤詩織写真.jpg
 海外からの注目も集めた判決が昨年12月、東京地裁で言い渡された。ジャーナリストの伊藤詩織さんが元TBS記者の山口敬之氏から受けた性暴力被害を訴えた民事訴訟で、伊藤さんに「全面勝訴」の軍配が上がったのだ。裁判では伊藤さんが性行為に同意していたかどうかが争点となり、判決は「被告が酩酊状態にあり、意識のない原告に対して同意がないまま本件行為に及んだ」「(同意があったとする山口氏の主張には)不合理な変遷があり、信用性に疑念がある」などとして、同意はなかったと認定。山口氏に330万円の賠償を命じ、同時に山口氏が名誉毀損などを理由に巨額賠償と謝罪広告を求めた反訴を棄却した。
「公表内容は真実」
 伊藤さんが負った心身の傷を思えば十分な賠償とは呼べない。だが、この判決が画期的だったのは、伊藤さんが記者会見や自著で被害を訴えたことを「公表内容は真実」「性犯罪を取り巻く法的、社会的状況を改善しようとした。公共性および公的目的がある」と評価したことだ。
 日本社会には性被害を甘く見る土壌がある。加害者は責任が問われず、被害者の方が落ち度を責められる二次被害も起きる。伊藤さんも2017年に被害を公表して以降、ネットで根拠のない「ハニートラップ説」が流されるなどした。だから、被害の訴えを正面から受け止めた判決は、他の性被害者をも勇気づけたと思う。一人の女性は「被害者にとって、社会に居場所があることを意味する」と話してくれた。
こうなると、この事件はやっぱりおかしい。伊藤さんが酩酊状態で意に反する性行為を強要されたのが明らかなら、なぜ準強姦の刑事事件として起訴されなかったのか。
 性被害を巡る日本の刑事司法は冷たい。理由は刑法の規定にある。17年の改正で罪名を変えた強制性交罪(旧強姦罪)、準強制性交罪は「同意なし」だけでは成立しない。被害者が抵抗できなくなるほどの暴行・脅迫があったか、抵抗できない状態にあったかなどの要件が必要になる。
 伊藤さんは15年春、就職先を紹介してもらおうと山口氏と懇談の後、ホテルで「性暴力を受けた」と訴えた。伊藤さんは刑事処分を求めたが、検察は起訴せず、その判断の妥当性を審査する検察審査会も「起訴しないことが相当」と伊藤さんの申し立てを退けた。
国策の匂い拭えず
 刑事事件にならず、真相に近づきたいと民事訴訟に訴えた結果が今回の判決だ。確かに民事は、被告が無罪推定を受ける刑事裁判とは異なり、当事者同士が争い、相手よりも主張が勝ればいい。しかし、だからと言って真実性が低いわけではない。また伊藤さんの事件には、こんな一般論では解けない「国策」のにおいもぬぐえないのだ。
 山口氏は政権に近い人物とされ、捜査に圧力がかかったのではとの見方もある。「捜査関係者から、上層部の判断で逮捕を止められたと聞いたことがある」。伊藤さんは勝訴後の会見でこう語り、自著でもそう記した。その真偽はひとまずおいても、性犯罪に甘い日本では刑事司法当局も例外ではないのだ。米ワシントンポスト紙が「時代後れの保守派に運営されている国」「日本人女性の権利の勝利」と判決を報じたように、事件は徹頭徹尾、日本社会の後進性を表していた。判決を不服とした山口氏は控訴を宣言した記者会見で「性被害者は会見の場で笑ったりしない」と言った。伊藤さんの人格を貶め、被害者を「型」にはめた、まさに後進的な考え方が示されたのだ。
 日本社会が性犯罪に対する認識を変えていけるのか。控訴審の行方もまた、世界から注目されることになる。
佐藤直子
(東京新聞記者、メディアで働く女性ネットワーク会員)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

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2020年01月24日

拡大運営委を2月26日(水)に、会費と購読料値上げがテーマ

 2020年度は、本部予算案は赤字を組まざるを得なくなっています。会員と読者の拡大はなかなか進まず、この危機的状態を乗り越えるには会費と購読料のアップが必要と考えています。午後2時から6時まで事務所で開く拡大運営委員会では本部・地方支部・部会の財政状態を明らかにした上で、値上げ問題を徹底論議し、結論を出す方針です。多くの地方支部の方の参加をとくに期待しています。


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2020年01月23日

【メディア気象台】 2020年1月中旬まで

◇新聞の総発行部数3780万1249部、前年比5.3%減
新聞協会加盟の日刊紙116紙の総発行部数は2019年10月現在で3780万部1249部だった。前年比(以下同)5.3%減。減少幅は過去最大だった18年と同じだった。部数でみると210万部327部落ち込んでいる。地区別でみると、減少幅は九州が最も大きく6.9%減、大阪(6.4%減)、四国(6.0%減)、東京(5.8%減)、関東(5.6%減)と続く。1世帯当たりの部数は0.04部減の0.66部。人口千人当たりの部数は20部源の30部となった。(「新聞協会報」1月1日号)
◇契約終了通知撤回を〜テレ朝に抗議声明
日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)は10日、テレビ朝日が昨年末、番組リニューアルを理由にして報道番組「報道ステーション」の社外スタッフ約10人に契約終了を通知したことに対する抗議声明を発表した。「真摯に番組制作に取り組んできた労働者の権利と尊厳を踏みにじる行為」であり、「10年前後の経験豊かなスタッフの大量排除は、事実上の番組解体につながるものだ」と批判。今回の強引な労務政策により、番組スタッフ以外にも不安が広まっていると指摘。「メディア関連労組として、雇用不安がジャーナリズムの萎縮につながることを危惧しています」と述べ、契約終了通知の速やかな撤回を求めた。(「しんぶん赤旗」1月11日付ほか)
◇新聞協会、個人情報保護法見直し案に意見
日本新聞協会は10日、個人情報保護法の改正大綱案への意見を発表した。同案には個人情報の不適切な利用に歯止めをかけるため、政府の個人情報保護委員会が先月公表したもの。協会は報道目的での個人情報の取り扱いに関する記述が不十分だとして再考を求めた。新聞協会は個人情報保護法の施行を背景として社会的な萎縮や匿名化が進み、取材活動に甚大な悪影響が出ていると指摘。保護法をたてに不祥事を隠す事業者などがいるとして「個人情報の適正な利用」を求めた。また、報道は規制の適用除外になることが国民に広く理解されるよう、法律の構成を改める必要性にも言及した。(「朝日」1月11日付ほか)
◇「旅券発給拒否は違憲」〜安田純平さん、国提訴
内戦下のシリアで約3年4か月拘束され、2018年10月に解放されたフリージャーナリストの安田純平さん(45)が、外務省から旅券(パスポート)の発給を拒否されたのは「外国への移動の自由を保障する憲法に違反する」として、国に発給拒否処分の取り消しと発給を求めて東京地裁に提訴した。安田さんの代理人弁護士が明らかにした。(「毎日」1月14日付ほか)
◇NHK同時配信認可〜ネット視聴、3月にもスタート
NHKのテレビ番組が放送と同時にテレビで見られる「常時同時配信」が、今春にスタートすることが決まった。総合テレビとEテレビが対象で、過去一週間分の番組がネットで視聴できる「見逃し配信」も始まる。総務省が14日、NHKが申請していた常時配信の実施基準を認可した。(「朝日」1月15日付ほか)
◇大分合同、4月から夕刊廃止
大分合同新聞社(大分市)は14日、4月1日から夕刊を廃止し朝刊に統合すると発表した。地域によっては配達員の確保が難しくなってきたことや、読者のライフスタイルの変化などで新聞を取り巻く環境が厳しくなったことなどを理由に挙げている。(「朝日」1月15日付ほか)
編集部


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2020年01月22日

3・11から9年「大川小の悲劇はなぜ起きたのか」2月13日ジャーナリスト講座

2020年2月13日(木)のJCJジャーナリスト講座は、東日本大震災から9年「大川小の非劇はなぜ起きたか〜「事後対応」という2次的人災に迫る」がテーマだ。
講師はライター兼フォトグラファーの加藤順子さん。大川小訴訟は19遺族・家族への約14億円の賠償で終結。だが、遺族たちがこだわった被告である石巻市側らの「事後対応の加害性」は判決で認められなかった。9年間、説明会や検証委員会、裁判などを取材してきた加藤さんが振り返ります。
時間:午後6時半から9時
会場:日比谷図書文化館4階小ホール
参加費:1000円
要予約:参加希望日、氏名、大学名(職業)、電話番号、メールアドレスを明記。sukabura7@gmail.comに申し込む
お問い合わせ:日本ジャーナリスト会議 電話03・3291・6475(月水金の午後対応)
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2020年01月06日

【リレー時評】近現代史を学んで戦争加害の実相を知る=白垣詔男

 昨年、韓国大法院(最高裁)が「徴用工問題」について被害者らに賠償を認めてから、「日韓関係」がおかしくなる一方だ。そうした事態を受けて、「日韓問題」「徴用工裁判」「中国人強制連行・強制労働」などを主題とした講演・学習会が多くなっている。幾つかの講演を聞いて私は、知らなかった日本の近現代史の詳細を知ることができた。
 その中で、「中国人強制連行・強制労働」裁判の弁護団の一員で福岡県春日市の法律事務所所属、稲村晴夫さんの話には学ぶことが多かった。
 私が知らなかった点は@「徴用工」と「強制連行の労工」の違いA強制連行・強制労働での中国人死者数が、「極寒地で劣悪の労働」と言われたシベリア抑留者の2倍近かったB戦後すぐ、中国人を強制連行・強制労働をさせた日本企業が国に損害賠償を求め、国が応じて補償したC中国人強制連行・強制労働についての2報告書(外務省と事業所が作成)を作成側が焼き捨てたが1部が持ち出されて、その内容をNHKがスクープ報道した―などだ。いずれも「周知の事実」とも思われるが私は知らなかった。
 まず、強制連行した韓国人を「徴用工」と呼び中国人をそう呼ばないのは、植民地だった韓国は「内地」で、中国は「外国」だったからだ。また、中国人労工に満足な賃金も食事も与えなかった加害企業が「中国人からモノを壊され、モノを取られた」と国に訴え、「被害金額」として三井は774万円、三菱は286万円(今の貨幣価値では数百億円から1千億円)を手当てしてもらった。国がどちらを向いているか現代にも通じる内容だ。
 そして、「NHKのスクープ報道」。これが明らかになったのは1993年で、政府も強制連行・強制労働を認めざるを得なくなった。当時の柿澤弘治外相はそれでも「反強制的な形でやられたことは遺憾」と、「強制」は認めず、謝罪ではなく「遺憾」でお茶を濁している。
これはNHKの功績だが、「アベチャンネル」化している現在のNHKでは、このスクープは幹部によって握りつぶされるのは確実と思われる。その時代は、まだ「みなさまのNHK」は健在だったことが分かる。この経過はNHK出版が書籍にしている。
 これ以外でも、中国人強制連行・強制労働問題は、一部企業と被害者らが「和解」した際、政府は口を挟まなかったが、今回の「徴用工問題」で安倍政権は、他国の判決にまで口を出し、加害企業にも「徴用工問題」については何の対応もしないよう口出しをした形跡があり、企業側も韓国最高裁判決を「黙殺」している。これもおかしなことだ。
 日本はアジア・太平洋戦争では被害者でもあり、それ以上の加害者でもある。こうした「加害の近現代史」を、私たちはもっと学び、まず「真実」知らなければならない。私は最近、深く反省をしている。
白垣詔男
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号

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2020年01月04日

【メディアウオッチ】 メディア労組 日韓の交流復活 共同でファクトチェックも=須貝道雄

南・呉握手 .jpg

 日本と韓国のメディア労働者間での交流活動が復活した。新聞、テレビなどの労働組合でつくる日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)と韓国の全国言論労働組合(言論労組=呉政勲委員長)は20005年以来、途絶えていた日韓の交流をこの秋に再開した。「共通の基盤作りをしたい」とMIC議長の南彰・新聞労連委員長は抱負を語っている。

事実と向き合う
12月7日、東京で「日韓新聞記者が語るメディアと憲法」(東京法律事務所9条の会主催)と題する催しが開かれた。講師の南委員長は11月24日にソウルを訪問し、言論労組と交流した様子を報告した。そこで確認したのは、2020年に韓国側を呼び日本でシンポジウムを開くこと、さらにニュースや言説の真偽を確かめるファクトチェックを両国でできないか検討することだった。
南氏はファクトチェックについて「歴史の事実とどう向き合うかの問題だ」と前置きし、ねじ曲げられた言説で不当なバッシングを受けた元朝日新聞記者の植村隆さんのことを指摘。日韓で事実の確認に取り組むことの大切さを話した。
MICと韓国言論労組が交流を再開するきっかけになったのは9月6日に新聞労連が発表した声明「『嫌韓』あおり報道はやめよう」だった。TBS系情報番組で大学教授が「韓国女性が入ってきたら暴行しないといかん」と発言し、『週刊ポスト』が「韓国なんて要らない」という見出しの広告を出した時だ。

香港政府に抗議
この声明に対し、韓国言論労組から呼びかけがあり、接点が生まれた。これまでに日韓で二つの共同宣言・声明を出した。「事実に基づいた報道で、国境を越えて平和と人権が尊重される社会を目指そう」(9月28日)と「東アジアの言論・表現の自由を守るため、市民の自由を弾圧する香港政府に抗議する」(11月25日)だ。
南氏は12月7日の集会で、日韓仲良し大特集を組んだ雑誌『東京グラフィティ』を紹介。「政治に流されず、しなやかな感性を生きる若手編集者がいることに勇気づけられた」と語り、こうした可能性を摘むことがないようにするのもメディア労組の役割だと強調した。
南氏と対談したハンギョレ新聞東京支局長のチョ・ギウォンさんは「韓国には『嫌日』はない。でも昔の植民地支配を正当化する政治家の発言に反感はある」と語り、一部政治家が日韓関係を危うくしていると指摘した。
 須貝道雄      
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号
posted by JCJ at 11:42 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月03日

【JCJ12月集会】「日韓関係とメディア」岡本・金平氏対談 歴史認識が問題の根底に 安倍政権の主張を垂れ流し報道 日本は「謝罪」韓国は「許す」勇気を=保坂義久

 今年大きく悪化した日韓関係。その本質は何か。JCJは12月8日、専修大学神田キャンパスで12月集会「日韓問題とメディア」を開いた。

 雑誌「世界」の編集長として長年、韓国の反体制運動と関わってきた岩波書店・岡本厚社長と、TBS「報道特集」のキャスター・金平茂紀氏が講演とクロストークした。

 7月に有志で声明「韓国は敵なのか」を発表した岡本氏は、1998年に当時の小渕恵三首相と金大中大統領が発表した日韓パートナーシップ宣言に言及。植民地支配により多大の損害と苦痛への反省とお詫びを表明した小渕首相と安倍現首相とでは、歴史認識で雲泥の差があると評した。

 また安倍政権が「韓国は国際法違反」と意図的に言い続けていること、それをメディアが口移しに繰り返していると批判。これが10年前なら「徴用工問題とは何か」などの特集記事が出ただろうと、近年のメディアの劣化を指摘した。 

<strong>恐怖と警戒抱く</strong>

安倍政権は韓国の反日感情を喚起してしまったが日本の報道はそれを批判せず、文在寅政権の反日政策の批判に終始してきた。岡本氏は、在日を含む朝鮮人について恐怖と警戒をもって見てきた日本人の視線がその根底にあるという。

 1965年の日韓基本条約の問題点も言及された。基本条約には植民地支配への謝罪や補償はなく、経済援助について当時の椎名悦三郎外相は「独立のお祝い金」と発言。第二条の「大日本帝国と大韓帝国との間で締結されたすべての条約及び協定はもはや無効」という文言も、韓国側では1910年当時から無効だったという解釈で、終戦までは有効とする日本の解釈とは異なっている。

<strong>拉致問題の影響</strong>

 金平氏は日韓関係悪化の根底にあるのは日本の歴史認識だという。今年8月に島根県で行われた日韓の大学生の合宿を取材した金平氏は、韓国の学生と比べ日本の学生は現代史について圧倒的に知識がないという。

 韓国が国際条約を守らないとする日本のメディア報道について、外務省で国際人権規約bの批准を担当した浅井基文氏の主張を紹介し批判した。 

日本も批准している人権規約bでは過去に被害を与えた人たちの損なわれた人権を回復する措置をとると定められている。

 金平氏はまた、今の日韓報道を制約しているフレームは拉致問題だと指摘した。1978年頃、日本海連続アベック失踪事件を産経新聞が報道した。当時、金平氏が公安二課に取材したところ「これは事件にならないよ」と言われた。公安は前から知っていたはずだが、事件化しなかった。

拉致という国家犯罪が、政治の思惑で道具に使われた。

<strong>金大中の言葉</strong>

 後半は会場から回収した質問用紙をもとに両氏がクロストークした。

 「日本人はドラスティックな改革を好まないのでは?」という問いに岡本氏は「日本では政権交代しても生活にたいした変化が起きないので、政に対する関心が薄いのでは」と答え、金平氏も「永田町で行われていることだけが政治ではなく、生きていくことは政治的」と強調した。

 また「韓国側がいう心からの謝罪とはなにか」について、岡本氏は「一国内のことだが」と断りながら、中南米などの独裁政権下で拉致・虐殺された被害者の家族は、独裁政権が倒れた後に、国民和解≠ニいうプロセスで「加害者が真実を語れば許す」との枠組みが示されたとしても、加害者のことを簡単には許せないものだと指摘した。

 それでも岡本氏は「日本は真実を認めて謝罪する勇気を、韓国は受け入れて許す勇気を」という金大中元大統領の言葉を引用した。

参加者は150人。

<strong>保坂義久</strong>

 <strong>JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号</strong>

 


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2020年01月02日

【リアル北朝鮮】米朝 再び緊張関係に突入か=文聖姫

 このコラムをみなさんが読んでいる頃には、北朝鮮で「重大な決定」が下されているかもしれない。今月4日、朝鮮中央通信は、朝鮮労働党中央委員会政治局常務委員会が党中央委員会第7期第5回総会を12月下旬に招集することを決定したと報じた。「朝鮮革命の発展と変化した対内外情勢の要求に即して重大な問題を討議、決定するため」という。「重大な決定」とは何かだが、ここで下手な推測はしないでおこう。ちなみに、北朝鮮は1993年に核不拡散条約(NPT)からの脱退を決める際にも党中央委員会を開催した。

 北朝鮮の国防科学院は12月7日と13日、西海衛星発射場で重大な実験を立て続けに行った。朴正天・朝鮮人民軍総参謀長は14日に談話を発表し、「実験の資料、経験、新たな技術はアメリカの核の脅威を牽制し、制圧するためのまた異なる戦略兵器開発にそのまま適用される」と述べた。「アメリカの核の脅威を牽制し、制圧するための」実験である点が気になる。  
 北朝鮮は10月2日には潜水艦弾道弾の実験を実施し、11月29日発朝鮮中央通信は金正恩・朝鮮労働党委員長の立ち合いのもと、国防科学院が超大型放射砲実験射撃を参観したと報じた。放射砲の戦闘適用性を最終検討するためのものだという。

 北朝鮮はアメリカとの非核化交渉の期限を今年末までとしている。その背景のひとつに、海外に派遣された北朝鮮の労働者の帰国問題があると筆者は考える。2017年12月22日、国連安全保障理事会が採択した決議には、海外に派遣された北朝鮮の労働者を24カ月以内に本国に送還させる内容が含まれている。北朝鮮にとって海外への労働者派遣は貴重な外貨獲得手段のひとつだ。諸外国がどれだけ制裁を履行するかにもよるが、北朝鮮にとっては痛手になることは間違いない。
 「重大な決定」の内容によっては、朝鮮半島情勢は再び緊張局面を迎えることになる。

文聖姫(ジャーナリスト・博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号
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2019年12月11日

【内政】有力議員の地元相次ぎ集会 自民「地方」を改憲の主戦場に 九条の会や法律団体 反対運動も活発化=丸山重威

 自民党は、10月11日憲法改正推進本部を開き古屋圭司本部長代行をトップとする遊説組織「憲法改正推進遊説・組織委員会」を新設、改憲の必要性を訴える全国遊説を始めた。「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」や、全国の「九条の会」の地域での改憲反対運動に対抗したもので、改憲の「主戦場」は地域になってきている。
 一方国会では、憲法審査会で、欧州に調査のため派遣した委員の報告を行い、ついでに自民改憲案も議論する自由討議を始めることを計画。実際に委員会を開いた。メディアは「2年ぶりに自由討議」などと報じた。

幹事長の地元から
 自民党の全国遊説は、10月18日、二階俊博幹事長のお膝元・和歌山の「憲法を考える県民集会」でスタート。続いて28日には、埼玉で憲法改正をテーマにした「地方政調会」を開いた。
 和歌山では1600人が参加、安倍首相が「幹事長が改憲議論の先頭に立つ決意で地元で集会を開いた。敬意を表する」とビデオメッセージ。
 埼玉では岸田政調会長が「きょうの日が令和の時代に憲法の在り方を考える契機になるよう願っている」と挨拶し、桜井よしこ氏が講演した。自民党は11月18日には岸田氏の地元・広島で、12月2日には福島でも地方政調会を開くという。

与野党で海外視察
 「20年改憲」を目標とする自民党は、臨時国会で憲法審査会を開き、国民投票法の改正と改憲案の説明に入りたいとしてきている。
 衆院審査会は9月中下旬、自民党・森英介氏を団長に、立憲・山花郁夫、自民・新藤義孝、公明・北側一雄氏ら与野党合同で、ドイツ、ウクライナ、リトアニア、エストニアを訪問した。
 外国視察で与野党委員の「懇親」を図るのは自民党の常套手段だが、11月8日に報告の委員会が開かれた。「2年ぶり自由討議」と報じられたのはこの委員会。社文法律センター、自由法曹団、青法協、日民協などの「改憲問題対策法律家6団体連絡会」は12日、「安倍改憲のための憲法審査会の開催に強く反対する」とする緊急声明を発表した。しかし、委員会は14日にも開かれ、維新の会が立憲民主党内の「不一致」を問題にしたりしている。

報道これでいいか
 11月7日にはもう一つ、注目されるニュースがあった。全国22の裁判所に提訴された、原告約7700人の「安保法制違憲訴訟」のうち、東京地裁が訴えを棄却する判決を言い渡した。
 4月22日の札幌地裁に続くもので、判決では「平和とは抽象的な概念で、個人の思想や信条によって多様な捉え方が可能。国民の権利として具体的な意味を確定はできない」「原告の精神的苦痛は義憤ないし公憤。限度を超えているとはいえず、法的に保護する利益ではない」などとした。
 在京紙では、東京新聞が社会面できちんと報じ社説でも取り上げたが、他は朝日が3社面3段で扱っただけで、後は3社面の横書きの雑報扱い。
 議論があった裁判で、専門家から言えば、珍しくない判決。しかし、憲法がこれだけ問題になる中、ニュースとして、これでいいのだろうか。

丸山重威

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
posted by JCJ at 15:32 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月10日

【ベネズエラ最新事情】報道の捏造次々明らかに 米の政権打倒作戦は失敗 イシカワ駐日大使ら真相を語る=吉原功

 本年初頭から3カ月近く、全国紙、NHK、民放キー局は連日のように南米ベネズエラの「政治的社会的混乱」を書き立て、言い募った。
 「政権不満が噴出、反乱兵が武器強奪」「野党の国会議長、暫定大統領宣誓、米、米州諸国次々承認」「トランプ氏、全力で圧力と声明」「政情混乱ベネズエラインフレ率1000万%!」「米、ベネズエラ石油に制裁」「国外逃避300万人」「ベネズエラ混乱マドゥロ政権に国際包囲網 欧米の多くグアイド氏支持」などなど延々と続く。4月以降、報道は激減したが姿勢は基本的に変わりない。

米宣伝戦略に乗る
 これらの報道から浮かび上がるのは、マドゥーロ大統領は人権弾圧する独裁者であり、経済政策の失敗によりベネズエラ国民を食糧危機・生命危機に陥れている張本人、暫定大統領を宣言したグアイド国会議長はそのベネズエラを民主化し経済を立て直す救世主といったイメージである。これは事実に基づいた正しいイメージなのであろうか。
 米国の宣伝戦略にみごとに乗ってしまった結果なのではあるまいか。ベネズエラの歴史と社会を多少とも知る人はそう懸念し、事実・真実を詳しく知りたいと思うのではなかろうか。

 10月末、その思いにピッタリの研究会が2回、JCJ事務所で開かれた。一回目はセイコウ・イシカワ駐日ベネズエラ大使の報告と最近ベネズエラを訪れたキューバ友好協会の宮本真樹子さんの見聞を聞き、二回目は哲学者・社会思想家西谷修さんの、米国をどう理解するかという報告、および来日したベネズエラ外務省マウリシオ・ブランコ北米局長のチャベス革命の基本点についての報告があり活発な質疑が交わされた。
 出席は研究者、ジャーナリストを中心にともに15名ほど。イシカワ大使は9月にもブエノス・アミーゴスという市民団体主催の会でベネズエラの近況を報告し、マウリシオ局長は11月初頭、日本記者クラブで講演を行っている。いずれも極めて内容の濃い報告で紹介できないのは残念だが、以下ではイシカワ大使の9月の報告を含めた概要を紹介しよう。

損害・困窮に耐え
 大使は、本年米国務省のHPに掲載され直ちに削除されたベネゼエラに関するファクト・シートから話をはじめた。2015年から19年までに150の措置をとったと誇るものだったが、内容は経済的政治的制裁措置であり、ベネズエラの「体制転換戦略」を示しており、社会変革のベネズエラ・モデルを潰し、石油などの資源を奪取するというチャベス革命後継続的に取られてきた戦略の延長線上にあると指摘した。
 そのクライマックスがグアイド議長の暫定大統領宣言。メディアによる大キャンペーンにより、たった50カ国だったがグアイド氏を暫定大統領として認めさせることに成功した。しかし米国のこのグアイド・プロジェクトは音を立てて崩壊しつつあると大使は強調した。
 2月の「人道支援物資」強行搬入も、3月の軍部へのクーデタ呼びかけも失敗している。コロンビア国境における「支援物資」炎上は政権側の放火、マドゥーロ大統領とコロンビア暴力集団との結託などの報道が捏造であることも次々に明らかになっている。
 そもそも米国とグアイド・サイドはベネズエラの民衆と軍部を見くびっていたのだ。生活が苦しくなればなびいてくるだろうと。米国の制裁により13年以降外貨収入が90%も下落し、政府や石油産業が国際的な融資元にアクセスできなくなり、国際金融機関に保管されているベネズエラの資産数十億ドルの凍結が命じられた。これにより医薬品、食料品、経済活動に必要なさまざまな原材料などがブロックされることになった。
 150以上の制裁措置によって、ベネズエラは2013年〜17年の間に3500億ドルもの損失を被った。この5年間のGDPのうち3年間は何も生産しなかったと同じ数字だ。経済が低迷し民衆生活の困窮が生ずるのは当たり前だろう。だが民衆はそれに耐え、団結をつよくしている。軍部もそのことをよく理解している。

国連人権理事国に
 グアイド・プロジェクトの崩壊をイシカワ大使は概要以上のように説明した。大使自身、大使の家族、駐日ベネズエラ大使館職員も米国の金融制裁の余波をうけて日本の銀行口座が凍結されていることを付け加えておこう。
 国際社会も「50カ国」とは逆の判断をした。米国の激しい反対工作にもかかわらず、9月にベネゼエラが国連人権理事会理事国に選出されたのである。民衆団結の強化については、一例として農村共同体と都市共同体が協力して農産物の生産と配布のシステムを形成、食料不足を補っていることをあげておう。

 吉原功(JCJ代表委員)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
posted by JCJ at 15:41 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月04日

【リアル北朝鮮】 南北関係 悪化の一途 金剛山の韓国側施設撤去へ=文聖姫

 「見ているだけで気分が悪くなるみすぼらしい南(注:韓国)側の施設を、南側の関係部門と合議して撤去させよ」
 金正恩朝鮮労働党委員長は10月下旬、金剛山を訪れ、韓国の現代峨山が建てたホテルやゴルフ場、文化会館、レストランなどを視察した後、これらを撤去するよう指示した。10月23日発の朝鮮中央通信が報じたが、訪問日時は明らかにされていない。

 昨年9月、平壌で開催された南北首脳会談を経て、金委員長と文在寅大統領は「9月平壌共同宣言」を締結した。そこには、「条件が整い次第」開城工業地区と金剛山観光事業をまず正常化させることがうたわれた。今年1月1日の新年の辞で金委員長は、「いかなる前提条件や対価を受け取ることなく、開城工業地区と金剛山観光を再開する用意がある」と語り、開城工業地区と金剛山観光の早期再開を韓国側に促した。だが、韓国側は動かなかった。

 冒頭の発言からは、金委員長の強い怒りがうかがえる。
 金委員長はこうも言っている。
 「金剛山がまるで北と南の共有物のように、北南関係の象徴、縮図であるかのようになっており、北南関係が発展しなければ金剛山観光もできないように言われているが、これは明らかに誤った認識だ」
 金剛山観光がもはや南北経済協力の象徴ではないことを示唆しているものとはいえまいか。

 そもそも金剛山観光は、2008年に起きた韓国人観光客射殺事件をきっかけに韓国政府によって中断された。後に開城観光も中断した。開城工業地区の操業中断も、2016年に朴槿恵政権によってなされたものだ。いわば韓国が独自に踏み切った措置で、国連の経済制裁とは関連がない。ならば、韓国政府の決断で再開もできるのではないか、というのが北朝鮮側の考えだろう。
 悪化の一途をたどる南北関係。当分改善は見込めないかもしれない。

文聖姫(ジャーナリスト・博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
posted by JCJ at 10:43 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月27日

【内政】 表現の自由侵害の恐怖 安倍政権に同調 自治体へ広がる 民主主義守るため抗う行動を=橋詰雅博

 安倍晋三政権がこのところ文化・芸術分野に手を突っ込み民主主義の根幹である表現の自由を脅かしている。加えて自治体も同調圧力を強める。

 国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」への補助金中止はその典型だ。慰安婦を題材にした平和の少女像などを展示した企画展「表現の不自由展・その後」の騒動を口実にした。萩生田光一文部科学省大臣は「県が、抗議が殺到して展示継続が難しくなる可能性を把握していながら文化庁(文科省の外局)に報告しなかった」と中止の理由を述べた。

後出し処分

 しかし、文化庁に提出する補助金申請書類には安全性の心配や展示内容を具体的に書く欄はない。気にくわない企画展(一時中止となったが、再開)を開いたので、トリエンナーレそのものに対して補助金を後出し処分≠ナ中止したのが真相だ。

 映画「宮本から君へ」は7月に助成金内定を取り消された。取り消した文化庁所管の独立行政法人「日本芸術文化振興会」は、出演者が不祥事を起こし(麻薬取締法違反で有罪のピエール瀧さんが出演)、公益性の観点から助成金交付は適当ではないとした。だが、要綱には公益性の観点から助成金交付を取り消すという文言はなかった。その後、要綱に公益性を入れ変更した。制作会社の河村光庸社長は「映画の内容は薬物とは全く関係なく、公益性という言葉も拡大解釈が可能。表現の自由を侵す行為で、絶対に認められない」と反論した。また、11月8日に文科省前で行われた表現の自由を取り戻す集会に河村社長はこうメッセージを寄せている。

 「公益性の概念で助成金を取り消せば、萎縮につながる。日本社会に同調圧力と忖度が広がっている」

 表現の自由侵害は自治体でも起きている。川崎市が共催した「しんゆり映画祭」で慰安婦の問題をテーマにしたドキュメンタリー「主戦場」の上映が中止になった。川崎市から登場者が提訴している映画を上映するのはどうなのかと言われた映画祭代表が上映を止めてしまったのだ。幸い、是枝裕和監督や市民らの強い抗議の結果、映画祭最終日に「主戦場」は上映された。ミキ・デザキ監督は「表現の自由の大勝利だ。圧力に負けずにこの映画を守ろうとサポートしてくれた人に感謝します」と語った。

展示を不可

 三重県伊勢崎市は、慰安婦を象徴する少女像の写真を片隅にコラージュした作品を市美術展覧会での展示不可にした。市は市民の安全性が担保できないと説明したが、制作者・花井利彦さんは「検閲は憲法違反。訴訟も視野に入れる」と闘う姿勢を見せている。

 オーストリアのウィーンにも飛び火≠オた。芸術展「ジャパン・アンリミテッド」で展示されていた安倍政権や福島原発事故を批判的に扱った作品などが問題視されたとして外務省は、日本との国交150年記念事業にふさわしくないと公認を撤回した。自民党国会議員が口出しする動きもあり、外務省が忖度した。芸術展の学芸員は「欧州では問題にならない作品。日本で検閲≠ェ強まっていると感じた」という。

 さいたま市の公民館だよりへの「九条俳句」不掲載訴訟の支援者で、「表現の自由を市民の手に全国ネットワーク」世話人代表の武内暁さんはこう言う。

 「こうした一連の出来事は市民感覚では検閲です。『9条俳句』裁判で勝訴(2018年12月)した後、安保法制反対など安倍政権を批判するチラシを検閲なし≠ナ公民館や図書館に置けるようになった。表現の自由が侵害されるようなことが起きたら、抗議の声を上げる。そうしないと萎縮や忖度が広がり、民主主義の基盤は揺らぎます」

 あきらめて黙っていてはダメだ。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
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2019年11月07日

【国際情勢】 中南米報道これでいいのか 革命40周年のニカラグアで考えた 人権弾圧無縁の国=吉原功 

日本の報道ではベネズエラやニカラグアなど中南米は、独裁政権下で大混乱しているように伝えられている。しかし本当にそうか。 JCJ代表委員の吉原功・明治学院大学名誉教授は、7月中旬、革命40周年の式展に招待され、ニカラグアを訪問した。以下は、吉原代表委員のリポート。(写真も)

【詩の工房】

十五歳のマリアは /銃でこづかれ犯された /

ロセンドのおばあさんは / ガーゼで首をしめられた /

ファンは殺菌剤を飲まされ / 呪いながら死んでいった /

国家警備兵に何度もレイプされマリ―ナは流産した

           ☆

1979年7月19日、中米ニカラグアでサンディニスタ民族解放戦線(FSLN)を中心とする長く苦しい民族自決運動が勝利し、米国の傀儡ソモサ独裁体制が崩壊した。革命政府は複数政党制、混合経済、非同盟の国家再建を目指す。国外逃亡した旧軍残党を中心とし米国の支援を受けた反革命コントラの攻撃にも対処しつつ、民衆の文化運動にも力をいれる。 各地に作られた「詩の工房」はその一つだ。農民、労働者、老若男女を対象に識字運動の一環として作詩をうながし生徒同士に意見交換させて最後に詩人が形を整えタイプし作品を残すというものだ。冒頭の詩はその運動から生まれた作品で『ニカラグアの詩の工房のアンソロジー』に収められている。ソモサ体制下で民衆がいかに悲惨な目にあわされていたかを端的に表現している。

街は平穏、報道ウソ

本年は、サンディニスタ革命の40周年にあたり7月19日に記念式典が挙行され、筆者は偶然にもその記念式典に参加する機会をえた。メキシコ経由でニカラグアの首都マナグアに入ると猛暑の日本より過ごしやすい気候だった。街々は近代的な豊かさにはほど遠いが、静かで平穏だった。昨年春、サンディニスタ政権打倒を叫ぶ大暴動事件が全国に吹き荒れ、欧米と日本のメディアが「政府に抗議する市民運動を徹底的に弾圧する独裁国家」と書き立てたのとは全く異なる風情だった。式典当日を含め警備の警官や軍隊はほとんど目に入ってこなかった。

式典の2日前、ニカラグア国民自律大学を訪れ、学長の話をきいた。経済学、医学、教育学、人類学、工学などの学部を要するニカラグア有数の大学だ。昨年の大暴動では学内が破壊され1500万ドルの物的損害に加え精神的被害も受け苦悩しているが、学問研究の向上に努めると同時に、社会事業、ボランティア、地方の青年向けの農業講座などにも力を入れ市民に受け入れられるような大学に発展するよう努力していると話してくれた。

その日の夜、FSLN本部で中心的に活動しているフォンセカとの会食が準備されていた。彼はサンディニスタ創設者の一人で革命運動中斃れたカルロス・アマドール・フォンセカの子息で、式典でのオルテガ大統領のスピーチと重なる貴重な話を聞くことができた。

 翌日、大暴動の動画映像を見たが解説してくれたのはかれだった。冒頭の詩を映像化したような凄惨場面がこれでもかこれでもかと続いた。

革命式典に20万人 

19日、式典会場は人々で溢れていた。会衆は20万人を超えていたと思われる。私たち外国からの参加者約500人は観覧席のような席に案内されたが人垣に遮られて全体は見えない。スピーチの最後にオルテガ大統領が立った。革命を勝利に導いたリーダーの一人だ。静かにはじまり次第に情熱をこめて概要つぎのようなことを会衆に呼び掛けた。「貧困と失業を根絶しよう。憎しみは混乱や戦争を生む。貧困を解消するには平和が絶対条件、愛こそは平和な社会の確立につながる。寛容が必要」。式典のテーマ「愛と平和」にピッタリの内容だ。

 愛と平和、それに寛容はサンディニスタの哲学だという。拷問、放火、火炙りをほしいままにした前年の大暴動参加者たちも恩赦によって解放されたという。

勝利の暁には寛容を

 フォンセカとともにサンディニスタを設立し、初期革命政府の内務大臣を務めたトマス・ボルヘは1980年、「われわれは彼らの生命を尊重しよう。復讐とは、彼らにいささかの憤りも抱かず、彼らがわれわれを処したより、比較できぬほどずっとよく彼らを処することだ。戦闘にあたっては妥協せず勝利のあかつきには寛容たれというわれわれの銘を実行することである」と述べた。40年後もそれが実行されているようだ。

 こうした国を米合衆国は、キューバ、ベネズエラとともに「人権弾圧の独裁国家」として制裁を加えている。メディアは米政府の言うことをそのまま事実と報道する。ニューヨーク・タイムスやワシントン・ポストなども例外ではない。日本メディアはそれを横流ししている。



JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
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2019年10月30日

「反ヘイト」対「ヘイト」裁判 差別報じた記事を名誉棄損で 神奈川新聞・石橋記者 報道委縮が狙い

 ヘイトスピーチを批判する記事を書いてきた神奈川新聞の石橋学記者(48)が差別主義者に訴えられた民事訴訟が9月24日、横浜地裁川崎支部で始まった。虚偽の発言を「デマ」と断じ、差別的言動を「ヘイトスピーチ」と非難した記事によって名誉を傷つけられたとして損害賠償を求めるもので、石橋記者と弁護団は「差別を自由に続けたい『ヘイト』対『反ヘイト』の主戦場」と位置づける。石橋記者は「裁判が報道を萎縮させる目的であるのは明らか。メディアこそが先頭に立って反差別の記事を書くべきで、彼らの言動がヘイトスピーチであると判決の中で認定させたい」と話している。

正当な論評だ

裁判を起こしたのは今年4月の川崎市議選に立候補した佐久間吾一氏(53)。自身が主催した講演会を「差別言動繰り返し」との見出しを掲げて批判した2月15日付けの神奈川新聞の記事を問題にした。

 署名入りの記事で石橋記者は、講演会のあいさつに立った佐久間氏が川崎市川崎区池上町の在日コリアン集住地区について「いわゆるコリア系の方が日本鋼管の土地を占領している」「共産革命の拠点が築かれ、いまも闘いが続いている」などと発言したことを取り上げ、在日コリアンに対する「悪意に満ちたデマによる敵視と誹謗中傷」と断じた。

 佐久間氏は「在特会」から生まれた極右政治団体「日本第一党」の瀬戸弘幸最高顧問と行動を共にし、選挙でも瀬戸氏をはじめとするレイシストの応援を受けた人物。記事は、佐久間氏や日本第一党が川崎市内で続けるヘイト活動の実態を踏まえたものだが、佐久間氏は「根拠なくかき立て統一地方選候補予定者である原告の名誉を著しく傷つけた」と主張する。対する石橋記者側は第1回口頭弁論で、佐久間氏の発言は差別をあおるためのデマで「記事には公益目的があり、新聞記者として正当な論評をした」と述べ、名誉毀損には当たらないと反論した。

 弁護団は石橋記者の無罪を証明するだけでなく、佐久間氏や瀬戸氏ら日本第一党の活動がヘイトスピーチであり、人権侵害であることを判決の中で認定させることを目指す。裁判には約50席の傍聴席からあふれる市民が詰めかけ、メディアを支える市民運動の姿勢を示した。

沖タイ1面で

取材には朝日、毎日、共同通信社、沖縄タイムス、琉球新報、RKB毎日放送などが駆け付けた。特筆すべきは沖縄タイムスで、本記を1面に掲載し、解説記事と池上町のルポを社会面で展開。筆者の阿部岳編集委員は石橋記者の「メディアこそが差別をなくす闘いの先頭に立つべきだと考えて書いてきた」との発言を引用。「だからこそ石橋記者個人も狙われた。もし石橋記者が敗訴すれば、差別的言動は差別というレッテルから逃れ、自由になり、再び爆発的に拡大するだろう」と警鐘を鳴らした。基地反対運動を標的にした沖縄ヘイトに対する問題意識に基づく報道で、裁判の行方の重要性を浮き彫りにした。

 次回の口頭弁論は12月10日。石橋記者は「ヘイトが横行する現状はメディアが役割を果たしてこなかった結果だという思いがある。無罪判決を勝ち取り、差別を批判する報道の正しさを証明したい」と話している。

編集部

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