2019年09月27日

【内政】 埼玉知事選 野党共闘だけが勝因ではない 護憲・反戦のみでは与党に負ける

埼玉県知事選挙は8月26日に投開票が行われ、野党4党(立民、国民、社民県連支持、共産県委支援)が推す前参院議員(国民民主党)の大野元裕氏(55)が、自民、公明推薦でスポーツライターの青島健太氏(61)ら4人を破り初当選した。投票率は前回より約5%上昇し32・31%。立候補者は5人だが、大野氏と青島氏の事実上の一騎打ちで、得票は大野氏約92万票で青島氏約86万票。  

大野氏は参院議員だが知名度では、元プロ野球選手でメディアへの露出が多い青島氏が勝っていた。当初は青島氏優勢との見方だった。これに対して野党4党が「足並み」を揃え大野氏を推し、「自民・公明VS野党」の与野党対決という有権者にとって分かりやすい構図に持ち込むことができた。投票率も上がった。これが大野氏勝利の土台となった。  

しかし7月の参院選挙の結果でも分かるように与党堅調の流れの中で野党4党共闘だけでは勝てなかった。キーマンとなったのは、自民党と対峙してきた現職の上田清司氏(71)。大野氏を全面的に支援、知名度向上を図かり終盤での逆転をもたらした。  

知事選に限らず、選挙はそれぞれ特有の事情を抱えている。外から見ていては、分からぬ「内の事情」がある。上田氏の全面的支援、大野氏の地元で大票田の川口市での保守分裂、女性参院議員の知事選出馬断念などの環境が重なり、それらを、大野氏側は、上手く自分の「環境」とした。埼玉県の場合は、1972年に社会党の衆院議員だった畑和(やわら)氏が当選し革新県政が誕生した。当時は、東京都、神奈川県も革新都政、県政で革新が強い支持を得た。他の革新知事が退場するなかで、畑県政は5期20年続いた。保守県政を経て、民主党衆院議員だった上田氏が知事に当選し4期務めた。埼玉の都市部は、高度成長以来人口が増え、有権者は無党派層が多くなった。党派色は嫌うが、変化は求める。保守系が強い一方で変化を受け入れる選挙風土になった。大野氏自身も保守を地盤とし保守票を取り込んだ。そのような環境の中で大野氏は勝利した。要因が4野党共闘だけではない。  

今回の知事選では、国政レベルの争点はなかった。さまざまな事情や環境が絡んだ上での大野氏勝利であり野党共闘だけでは苦杯をなめたであろう。ここは冷静にみる必要がある。  

在京メディアは、知事選の結果をすぐに、国政への影響と結びつけようとする「くせ」がある。東京が地方を見るワンパターンの思考だ。だから、この原稿も「野党共闘」勝利とは書かない。JCJ機関紙だからこそ、あえて書かせていただいた。  

衆院選では野党共闘を築くとともに、選挙区ごとの特殊事情を踏まえ、あるいは乗り越えて、有利な環境作り出すことが勝利につながっていくであろう。「憲法守れ」「戦争反対」の訴えは大事だが、それだけでは、与党候補には勝てない。野党共闘を土台に、選挙区ごとの事情、「天・地・人」をいかに味方につけるか、それを、今回の埼玉知事選は、示唆しているのではなかいか。ちなみに参院補選は上田前知事が出馬を表明し「鉄板」なので勝利は揺るがない。

佐藤達哉(JCJ会員・さいたま市)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
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2019年09月19日

【おすすめ本】南 彰『報道事変 なぜこの国では自由に質問できなくなったか』─メディアの分断・選別に抗う記者の連帯を熱く訴える!=新崎盛吾(共同通信社)

 首相官邸が特定の記者排除を意図して、官邸記者クラブに文書で申し入れをした質問制限問題が広く報道されるきっかけとなったのは、日本新聞労働組合連合(新聞労連)が2月に発表した抗議声明だった。

 本書は、朝日新聞政治部から昨年9月、30代の若さで新聞労連委員長に就任した著者が、問題の経緯を明らかにし、全国の記者に連帯を呼び掛けたメッセージである。
 問題の発端は2017年6月、主に政治部記者が参加する官房長官の定例会見に、東京新聞社会部の望月衣塑子記者が登場したことだった。
望月記者は官邸側の制止を振り切って23回の質問を繰り返し、結果的に加計学園の獣医学部新設について「総理のご意向」と書かれた文書の存在を認めさせる原動力になった。記者会見という公の場での質問よりも、オフレコ取材を重視してきた政治部の慣習を揺るがす出来事でもあった。

 官邸側はその後、「質問が長い」「事実誤認が多い」などと望月記者にレッテルを貼って孤立を図り、メディアの分断を試みる。08年から官邸取材に関わってきた著者は、政権の長期化とともに強まる閉塞状況やメディア選別の動きに危機感を抱き、会社の枠を越えた連帯が必要だと訴える。
書名には太平洋戦争に至る契機となった満州事変に例えて、今が「知る権利」を守る重要局面だとの思いを込めたという。
 新聞労連の委員長は、朝日、毎日、北海道新聞、共同通信などの労組が交代で選出。会社を2年間休職し、専従で任に当たる。私も14年から16年まで務めた。労働組合の存在感が薄れる中、今も記者の連帯を目指す活動が続いていることに、安堵と希望を感じている。
(朝日新書790円)
「報道事変」.jpg
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2019年09月10日

【内政】 国民民主1本釣り? N国を抱き込みか 新戦略で改憲ねらう安倍「独裁政権」=丸山重威

7月21日投開票された第25回参院選は、自民・公明の与党は過半数を獲得したが、与党と維新などの憲法改定勢力は総議員の「3分の2」164議席に必要な85議席を割り込み、81議席だった。だが安倍晋三首相は翌日の記者会見で「国民は政治の安定を求めた」「改憲についても議論すべきだという国民の審判が下った」と強弁した。

メディアはこの発言を大きく取り上げたが、世論調査では、最優先課題を一つだけ聞いた朝日、読売では「年金・社会保障」が、朝日38%、読売41%でトップ、「改憲」はともに3%。2項目を聞いた共同でも「年金・医療・介護」が48・5%、「改憲」は6・9%。民意とは全くかけ離れていた。

 しかし安倍首相の意欲は旺盛。国民民主党の一本釣りや、NHKから国民を守る党(N国)の抱き込みなどで「改憲勢力3分の2」を達成、発議に持ち込む構えだ。

魚心あれば水心…

 この中で、野党共闘の一員、国民民主党の玉木雄一郎代表は25日のインターネット放送で、「私、玉木雄一郎は生まれ変わった。令和のの国会は議論の場にしたい。安倍総理と憲法改正の議論を進めたい。首相の4項目には必ずしも賛成ではないが進めたい」と発言。党内外から批判を浴び、翌日「国会の党首討論で議論する」と弁解した。

 選挙戦の中では例えば、定員2人の静岡選挙区では、立憲民主の徳川家広氏と争った国民民主党の榛葉賀津也氏を、自民支持のはずの地元財界の大物が応援した。また、国民民主党・企業団体委員長の桜井充参院議員は「榛葉氏が厳しいから、自民党の元大臣に、票を回してとお願いした」と語り、「改憲にらみの布石」との見方もあった(静岡新聞7月13日)。

 国民民主党は、8月15日には、立憲民主党と統一会派作りの協議を始めたが、安倍戦略は、国民民主の「切り崩し」を狙っている。

 さらに併せて狙われているのは、97万票、1・97%を獲得して政党要件に達した「N国」だ。立花孝志代表は、23日のインターネット放送で「とりあえず憲法改正に反対するが賛成と引き換えに首相にスクランブル放送を実現してもらう」と述べ、憲法改正の国会発議に条件付きで賛同する意向を示した。29日には「戦争発言」の丸山穂高議員を入党させ、30日には無所属の渡辺喜美議員と新会派「みんなの党」を結成。1日の初登院では安倍首相と議場で握手、感激の面持ちだった。

議長交替まで狙う

多数派工作の一方で、いかにも独裁政権丸出しの動きも出てきた。

 首相の側近、萩生田光一自民党幹事長代行は26日夜のインターネット放送で、憲法改正論議が停滞するなら大島理森衆院議長の交替が必要だとの認識を表明。「今のメンバーでなかなか動かないとすれば、有力な方を議長にすることも考えなければならない」と述べた。衆院議長はいやしくも「三権の長」だ。与党の幹部が進退を云々するなど非常識きわまりない。

 1日、参院議長に就任した山東昭子氏は「憲法改正が国会できちんと議論されていないのは正常ではない」と述べ、「できるだけ憲法審査会などが活発に動くことを期待する」と述べた。さすがに、同席した小川敏夫副議長は、「数の力で結論に持っていく議論の在り方であってはならない」とクギを刺した。

 核兵器禁止条約への対応を求められながら、6日、9日の原爆忌にも無視する政府の姿勢が目立つ中で、7日には小泉進次郎氏と滝川クリステルさんが、何と首相官邸で結婚を発表した。小泉氏は「文藝春秋」9月号で菅義偉官房長官と対談、「憲法改正」にも言及。いよいよ「安倍改憲の広告塔」としての登場だ、との見方も出る。

お盆に帰郷した安倍首相は13日には、岸信介元首相、安倍晋太郎元外相などの墓参りをした。墓参後、「憲法改正は自民党立党以来最大の課題だ。国会においていよいよ本格的に議論を進めていくべき時を迎えている」と発言し、「改憲ムード」盛り上げを狙った。

 政権は、とにかく国会の憲法審査会を動かすことを狙っている。併せて、今年中にも予想される総選挙で多数を取り、改憲発議を一歩進めること目論む。安倍改憲阻止には事態を見据えた、機敏な対応が求められている。

丸山重威

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年09月04日

【内政】大分と宮城 東西参院選最激戦区からのリポート 安倍政権に大打撃=柳瀬陽之助・多々良哲

お上嫌いの風潮 脈々
 東京の知人が今回の参議院選挙を評して「大分はおそろしい」と感想を漏らした。新顔の革新系候補が、首相側近の有力保守候補を破ったからだ。
 九州各県の1人区のうち、革新が勝ったのは大分だけ。予想しない結果だった。大分弁で「おそろしい」を「おじい」という。
 3人が立った。事実上、保革の一騎討ち。激戦を制したのは安達澄(きよし)氏。無所属で、野党連合4党の推薦・支援を受けた。別府市出身、49歳。22年間のサラリーマンを辞め4年前、別府市長選に出たものの、苦杯をなめた。5人候補のうち最下位に近かった。
 シンボルカラーは出身の青山高校名から「青(ブルー)」を選んだ。白シャツに青ズボン、運動靴で県内を駆け巡った。若さと新鮮さをアピール。国政論争より「現場主義」「政治に地方重視」を強調した。
 相手は3期目を目指す自民・公明推薦の礒崎陽輔氏。自民党所属で61歳。総理補佐官として「2期12年の実績」を誇示した。安倍晋三総理や菅義偉官房長官、小泉進次郎氏らが応援に駆け付けた。

 開票の結果、新顔の安達氏が1万6655票差で初当選した。安達氏の勝因は野党連合3党と共産党の支援による「大分方式」が功を奏したほか、あえて政党色を出さず、無党派層を取り込んだ。
 これに対して礒崎氏の保守陣営は3期目のおごりと組織の劣化が災いしたようだ。むしろ自民党の「敵失」という見方もある。参議院大分選挙区は革新のDNAが脈々と流れる。革新候補が2004年以来3回、自民党候補を破った。
 昔から社会党の牙城でもある。比例代表で社民党前党首の吉田忠智氏(大分県出身)も返り咲いた。「トンちゃん」こと元総理の村山富市氏も95歳で健在である。

 今回の投票率は50・54%で過去最低だが、もともと大分人は選挙好き。昔から選挙後の訴訟の多いこと、「東の千葉、西の大分」とやゆされる。
 自民党副総裁や衆議院議長の大物代議士が総選挙で落選する怖いところ。反権力やお上嫌いの風潮もある。
 「九州は一つ」と言われるが、そんなことはない。瀬戸内海を隔てて関西とつながる大分県。他県とは違った異質なおじい風≠ェ吹いている。

柳瀬陽之助(別府市在住ジャーナリスト)


60日の新人VS60年世襲
 今回の参議院選挙宮城選挙区では、5月に名乗りを上げた新人「市民と野党の統一候補」石垣のりこ氏が、4期目を目指す自民党現職「名門政治家一家の3代目」愛知治郎氏に勝利した。その闘いは「60日の新人が60年間の世襲に勝った」と称された。
 その勝因の第一は、宮城における「市民と野党の共闘」の蓄積である。2016年の参院選勝利、17年の仙台市長選勝利、そして18年の女川原発県民投票を求める署名運動と、市民と野党が共同で物事を成し遂げる経験を積み重ねてきており、その中でお互いの信頼関係が醸成されていた。
 それを下支えしたのは、選挙以外の日常の様々な市民運動、すなわち憲法、原発、沖縄等々の諸課題を巡る地域の共同の取り組みであった。それらの活動が多くの有権者からの信頼を得ており、これが今回の勝利の土台となったことは間違いない。

 第二には、なんといっても候補者がよかったということである。石垣氏は親しみやすい庶民派であり、有権者の声を丁寧に聞く草の根選挙を展開しながら、その主張は鋭角であり、忖度もしがらみもなくハッキリと物をいう態度が有権者の共感を呼んだ。
 同時にそれは石垣選対のイメージ戦略でもあった。若い女性候補でありながら「笑わない」ポスター、「上げるべきは賃金であって消費税ではない」という断定調のキャッチフレーズが浸透し、SNSや動画配信を駆使したネット戦略によって若い世代にも届いていった。
 いわば石垣氏のパーソナリティ、政策、活動スタイル、そして言葉の力があいまって、政治をあきらめるなというメッセージとなって、無党派層の人々に一定届いたのではないか。7月17日仙台駅前に三千人が詰めかけた「れいわ新選組」街頭演説会で、石垣氏が山本太郎氏と並んで登壇した姿が、それを象徴していた。

 終わってみれば、宮城選挙区は全国最少の得票率差の激戦区であった。私たちは、権力が力任せに共闘つぶしに襲いかかる「官邸直轄選挙」の恐ろしさをひしひしと感じた。来るべき衆院選に勝利するためには、私たちの共闘のウイングを、政治を諦めていた無党派層の人々へも広げる言葉を、私たちは持たなければならない。

多々良哲(市民連合みやぎ事務局長)


JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年09月02日

【内政】市民連合「継続は力なり」実証 参院選報道 紋切型で争点伝えず メディアの知的劣化が著しい 上智大・中野教授に聞く=河野慎二

 先の参議院選挙で、市民連合と野党共闘は自公など改憲勢力を、3分の2割れに追い込んだ。安倍政権は「改憲ノー」の民意に深刻な打撃を受けている。画期的な成果を上げた要因と今後の展望、メディアの報道などについて、市民連合呼びかけ人の中野晃一上智大学教授に聞いた。

―参院選の最大の成果は、改憲勢力の3分の2を阻止したことですが、どう振り返りますか。
 まず何を措いても触れなければならないのは、投票率が低かったこと。5割を割って48.8%に終わったことは、市民連合としても重く受け止めています。低投票率についてはメディアの責任も重く、深刻です。その中で極めて重要なことは、自公などの改憲勢力が3分の2を割ったことです。
 特に、1人区で10勝したことは、率直に言って想定を超えるいい結果だと考えています。と言いますのは、統一地方選で候補者の一本化が遅れ、長野以外は新人候補ばかりで、それがこれだけ多くの自民党現職を打ち破ったのは凄いことです。

候補一本化に道筋
―今回も市民連合が大きな役割を果たしました。
 市民連合としては、13項目の政策合意で野党候補一本化の道筋を作れたことは大変良かった。前回、惜敗率が一番高かった愛媛で勝利したように、蓄積が極めて重要です。市民と野党の協力の継続が無ければ、これだけ短期間でこれだけの新人候補が勝てるはずはありません。まさに「継続は力なり」です。

―市民連合と立憲野党の13項目の政策合意は今後、どう内実化させて行くのですか。
 参院選直後、立憲民主党の枝野幸男代表が国民民主党の玉木雄一郎代表に、13項目の政策合意を基調にして院内統一会結成を呼びかけました。野党共闘を強化して行く過程で、13項目の枠組みが効いています。政策合意に完成版はありません。核禁条約盛り込みなど、常に先を目指して充実を図ります。

―衆議院の年内解散説も燻りますが。
 常識的には、年内の解散総選挙はないと見ますが、解散権を乱用する安倍専横政権ですから、先手々々を取って共闘体制を準備することが極めて重要です。もたもたすることは許されません。枝野代表の統一会派申し入れは、想像以上に早かった。よりリベラル色の強い立憲民主が仕掛けて、旧民進党系の再結集が始まりました。市民連合としても後押ししたい。

印象操作に「加担」
―メディアの参院選報道はどう見ますか。
 まず、自民党単独過半数割れについての報道が不十分です。自民党は公明党無しに法律一本も作れない政党です。その党首が改憲などを仕掛けられる訳がない。その辺をきちんと捉えないと、メディアが政権の印象操作に事実上加担しているとの批判を免れません。安倍戦略に乗って、煽って来た衆参同日選が無くなるや、テレビの報道量は激減し、新聞も一面トップで伝えなくなりました。
 重要な国政選挙の争点を伝えないメディアは、自由と民主主義を下支えする言論機関としての自覚が余りにもなさ過ぎます。参院選についてメディアは「議論がかみ合わない」「争点がない」と紋切り型に繰り返しました。しかし、安倍首相は「改憲」に踏み込んだ街頭演説を行い、野党は暮らしや年金など「生活争点」を訴え、争点は明確に存在していました。
 憲法には憲法を対置させないと争点にはならないという思い込みがあるようですが、メディアの知的劣化ではないのか。

 もう一点、メディアがもの凄く劣化したと思うのは、政権の業績評価をしなくなったことです。安倍政権は6年半、国民の税金を使って何をやってきたか。アベノミクスや3本の矢≠ヘどうなったのですか。何もやってないじゃないか。メディアは参院選の時に評価せずに、いつ評価するのでしょうか。

SNSの力と限界
―今回、SNSの影響力が注目されました。ジャーナリストへのメッセージもお聞かせください。
 SNSがメインストリームのテレビや新聞に対抗できる動きを作り得ることはあります。「れいわ新選組」の躍進はSNSと切り離せません。しかし、SNSは同じ意見が共鳴し合う情報のタコツボ化≠ニいう限界があります。新聞やテレビは、広く共通の土台を作るというプラットフォームですから、そこで広範な世論を形成するプロセスが出来ないと、国民を分断された言論状況の中に放置することになります。
 SNSでシェアされる情報は、発信元になるプロのジャーナリストが職業倫理に基づき、自分の良心に基づいて取材し、記事にしたものであるべきです。それが、SNSの拡散する中で、無くなってしまうのは非常にまずい。ぜひ、頑張ってほしい。

河野慎二

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
posted by JCJ at 11:25 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月01日

【今週の風考計】9.1─よみがえれ! 蒸気機関車「東村山D51」

蒸気機関車を見ると童心に帰る。お盆休みには<煙を吐いてシュッポ、シュッポ…>田舎へ帰る列車の窓から流れ込む煙の臭いが懐かしい。
 旅をしては秩父鉄道や大井川鐵道の蒸気機関車に胸躍らす。町を歩いては展示されている新橋駅前や中野紅葉山公園のC11型、川崎・生田緑地公園のD51型機関車に見とれる。まさに日本の文化遺産だ。

ところが筆者の住む東京・東村山市の運動公園に展示されている蒸気機関車「D51684」が、市民には何も知らされないうちに、解体・撤去されることになった。この3日から撤去工事が始まる。
市当局は5月末に目視による劣化度調査を行い、鉄錆が広がり枕木も腐食し、地震で脱輪・横転する危険性が高いとの報告を受け、6月7日の定例市議会で、修繕・維持費も高額になる以上、解体・撤去するとの方針を打ち出した。
 しかも議会最終日の7月2日には、解体工事費2030万円を盛り込んだ補正予算を提案し、審議も説明も不十分なまま自民・公明などの賛成で可決・成立させてしまった。展示されて43年間、市民の見学に供してきたのだが、ペンキの塗り直しは僅か4回。風雨にさらし放置してきた責任は免れない。

さっそく市民有志や全国のSLファンらが連絡を取り、「東村山D51684保存会」を立ち上げた。市民の力で<よみがえれ! 運動公園の機関車>を合言葉に、専門家や研究者の知恵を集め、また解体・撤去を取りやめた自治体の経験を活かしたいと張り切っている。
ちなみに市当局が挙げる修繕費1億2300万円は、「全国で実施されてきたSLの生態保存と比べて、ケタ違いの数字であり、必要のない作業を含め、意図的に膨らませていたとしか考えられません」と、SL修繕専門家は言う。
錆びた表面の薄い鉄板を張り替え、ペンキを塗りなおすなどの工事費は、100万円ほどで対応できるし、ボランティアによる協力やクラウドファンディングにも取り組めば、保存は実現可能だと強調している。解体・撤去の契約が成立しても、解体を取りやめた自治体は数多くある。諦めないで「東村山D51」を復活させよう!(2019/9/1)
posted by JCJ at 11:08 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月31日

【内政】SNS発信力で無党派まき込む れいわ新選組「着火剤」に活用 N国 炎上動画平気でアップ=畠山理仁

 インターネットの発信力が、テレビや新聞による「諸派の黙殺」を凌駕した。これが今回の参院選最大の特徴である。
 本来、すべての候補者は同じ条件で立候補している。しかし、既存メディアは政党要件を満たさない政治団体を「諸派」と位置づけ、ほとんど報道してこなかった。

 そんな中、今回は諸派の扱いを受けた「れいわ新選組」と「NHKから国民を守る党(N国)」がインターネットを活用して議席を獲得した。両党ともに政党要件(得票率2%以上)をクリア。これは参院選に非拘束名簿式が導入されて以降、初めての快挙である。
 参院選の期間中、れいわ新選組の山本太郎代表は街頭で何度も叫んだ。
「経団連に都合の悪いことを言う我々は『放送禁止物体』。テレビには映らない。だから、あなたの力で広げて下さい!」
 街頭演説終了後には、聴衆と写真撮影の時間を取った。それをSNSで拡散してもらうことで、選挙に出ている事実を世間に広げた。既存メディアに頼らない情報拡散の輪が広がっていた。

 インターネットを使った選挙運動が解禁されたのは、2013年4月の公職選挙法改正だ。それから6年が経ち、業界では「投票行動に与える影響は大きくない」というのが通説となっていた。
 この常識を大きく変えたのは、山本代表のプロデューサーとしての力だ。れいわ新選組はSNSでの発信を、支持拡大のための着火剤として活用していた。

寄付3万3千人超
 4月に山本代表が一人で立ち上げたれいわ新選組は、参院選の選挙資金を寄付で賄うことをインターネットで発表した。
 公示前日までに集まった寄付額は2億3133万円。選挙が始まると、SNSで街頭演説の告知を見た人たちが続々と街頭演説に駆けつけた。聴衆が1000人を超えることもあった。演説動画はネット上にアーカイブされ、ボランティアによる演説の文字起こしも迅速に掲載された。投票日前日には、寄付金額が4億円を超えた。
 しかし、それでもテレビや新聞は報じない。自主規制に縛られ、世の中の事象を速報する役割をほとんど放棄していた。

 山本代表の戦略が成功した理由は、ネットでの盛り上がりを過信しなかったことだ。ネットはあくまでも有権者を街に引き出す手段。実際の勝負は地道な草の根活動だ。そのため、有権者を巻き込むことに心を砕いた。
 まずは4月の結党会見で「候補者を何人擁立するかは、皆様の寄付額で決めます」と全国に呼びかけた。ゲームの行方を有権者に委ねるやり方は「AKB総選挙」にも似ている。誰もが当事者として参加でき、結果に関与できる仕組みだ。
 街頭演説会場には、ボランティアの登録窓口と寄付窓口を設置した。政治への不満は持ちつつも、政治と関わる入り口を見つけられなかった有権者たちが列をなした。
 寄付の最低金額は数十円。高額の寄付者は多くない。しかし、少額寄付を中心に、寄付者の数は3万3千人を超えた。

 候補者には、生きづらい日本の象徴である「当事者」を擁立した。しかも、ほぼ無名の新人だった。各候補者のドラマに感情移入した有権者は、ますます「政治は自分たちのものだ」という当事者意識を刺激された。
 比例で優先的に当選する特定枠に、2人の重度身体障害者を据えたことも大きい。山本代表が捨て身で臨むことで、支援者たちはさらに燃えた。
 こうした戦略には、つねにブレーンの存在が囁かれる。しかし、山本代表は笑って否定した。
「そんな人がいたら紹介してほしい。候補者は全部自分で口説いています。次の総選挙では、最大で100人立てたい」

反NHK票見込む
 N国の立花孝志代表はユーチューバーだ。13年の結党時から「19年の参院選で1議席取る」と豪語してきた。
 そこから6年間、地方議会選挙への挑戦を続け、仲間を増やし、勝ち方を研究してきた。候補者の携帯番号を公開し、有権者との距離も縮めた。
「地方議員はオイシイ仕事。当選するのは簡単」と立花代表は言う。
 実際、4月の統一地方選挙では、N国から26人の当選者が出た。その歳費の一部がN国の運営を支えている。

 躍進の背景には、国民のNHKに対する根強い反感がある。そのため、党の存在が認知されれば一定の得票が見込める。だからN国は炎上する動画も隠さずアップする。
 視聴者が増えれば広告収入が増える。敵が増えても党の存在は広まる。どちらに転んでも、N国は損をしない仕組みだ。

 当選後、N国は丸山穂高衆院議員を入党させ、渡辺喜美参院議員と新会派を結成した。タレントが批判的な発言をすれば、テレビ局に出向いて抗議もした。炎上上等な姿勢は以前と変わらない。
 政党要件をクリアした今、メディアは無視できない。両党が本格的に暴れるのは、これからだ。

畠山理仁(フリーランスライター)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年08月29日

【リアル北朝鮮】 9月以降の動きに注目 文大統領の呼びかけ拒否=文 聖姫

 日本が「終戦記念日」と称する8月15日は朝鮮半島で祖国解放記念日にあたる。韓国では光を取り戻した日として「光復節」と呼ぶ。

74年目のこの日を私は韓国の済州島で迎えた。街中に太極旗(韓国国旗)が掲げられている以外、イベント開催などの動きは済州島では見られなかった。知り合いに聞いても道庁主催の公式行事以外は特に企画されていないという。

だが、日本による半導体材料の輸出規制、ホワイト国からの韓国除外といった措置が取られたことに対し、韓国内では日本製品不買の動きなどが徐々に広がっていた。知り合いによると、商店で売っていた日本のビールが姿を消した。夏休みに家族で沖縄を旅行する予定だったが、取り消したそうだ。韓国・仁川と地方都市を結ぶ格安航空会社(LCC)便の運休も相次いでいる。

文在寅大統領は15日の光復節慶祝辞で、「日本が対話と協力の道に進むなら手をつなぐ」と、日本政府に呼びかけた。日本ではこのことばかりが強調されるが、むしろこの演説は北朝鮮への「ラブコール」といった側面が大きいのではないかと感じた。核を放棄しさえすれば、繁栄する経済強国を共に作れるのだというメッセージだ。文大統領は演説の最後でこう述べている。「我々の力で分断に勝ち、平和と統一に進むことが責任ある経済強国への近道だ。我々が日本を飛び越える道であり、日本を東アジア協力の秩序へと導く道だ」。南北が力を合わせれば日本に勝てるのだと北朝鮮に呼び掛けている風にも聞こえる。

しかし、北朝鮮は16日、祖国平和統一委員会報道官談話で文大統領の演説を強い調子で非難した。「いまこの時刻にも南朝鮮で我々(注:北朝鮮)に反対する合同軍事演習が行われている時に対話の雰囲気や平和経済や平和体制などとどの面下げていえるのか」。これがいまの北朝鮮の思いだ。軍事演習が終わる8月末までは動きはないだろう。

文聖姫(ジャーナリスト・博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年07月31日

【リアル北朝鮮】 電力不足解消の証? ビール缶の写真掲載=文聖姫

朝鮮総聯機関紙の朝鮮新報(2019年7月17日付2面)に興味深い写真が掲載されている。樹脂ボトルと缶の大同江(テドンガン)ビールである。

 拙著『麦酒とテポドン』(平凡社新書)でも紹介したことがあるが、北朝鮮の大同江ビールは実においしい。2003年に朝鮮新報平壌特派員をしていた頃は、ほぼ1週間に1度の割合でビール工場に通った。工場で直売するビールを5ケースぐらいずつ購入していた。支局の冷蔵庫にビールを入れておくと、すぐになくなった。「案内員」と称されるガイドら現地の人々にふるまっていただからだ。

 酔ってくると本音が出てくるのは北朝鮮の人たちも同じ。彼らから取材のときとは違う話が聞けるから、ビールの代金など安いものだった。

 大同江ビールは北朝鮮の人々に大人気。平壌市内には大同江ビールを飲ませる店がいくつもあった。ビアホールは仕事の帰りに一杯ひっかけていく労働者らでにぎわっていた。

だが、私が頻繁に訪朝していた2010年代の初め頃に缶ビールはなかった。缶ビール販売の再開は16年8月。大同江ビール工場のキム・グヮンヒョク工場長は、対外市場に出しても遜色のない「大同江ビール工場を代表するビール」(朝鮮新報朝鮮語版・電子版17年3月13日付)と自画自賛していたが、この発言を見る限り、缶ビールの海外輸出を目指していたことがうかがえる。同じ頃、平壌では外国人客も招待して「ビールの祭典」が開催された。ガイドブックまである。

もし、アルミ缶ビールの大量生産が可能になったとすれば、電力不足の解決にメドがついたともいえるかもしれない。もちろん、写真だけで判断するのは早計すぎるかもしれないが。

 世界的にも評価の高い大同江ビールだが、いまは経済制裁下で輸出もままならない。

文聖姫(ジャーナリスト・博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月27日

【沖縄リポート】 ハンセン病元患者 本土以上に過酷な運命=浦島悦子

 国の強制隔離政策によって、元患者だけでなくその家族も甚大な被害や差別を受けたとして561人が提訴したハンセン病家族訴訟で、熊本地裁は6月28日、国の責任を認め賠償を命じる判決が出た。安倍晋三首相は7月9日、控訴しないことを表明、12日には謝罪の首相談話を発表した。参議院選向けのパフォーマンスという側面は否めないにしろ、原告勝訴が確定した。

 しかし、原告や元患者の多くは、これを手放しでは喜んでいない。生死をも左右した深刻な差別被害に見合わない、あまりにも低額の賠償。2001年の熊本地裁判決(元患者による訴訟で隔離政策を違憲とし、国が謝罪)以降の被害については国の責任を否定し、原告のうち20人の請求を棄却したこと。そして、原告の約4割を占める沖縄の家族(250人)にとっては何よりも、米軍統治下の被害について日本政府の責任を認めなかったことは、あまりにも不当だ。

 沖縄の元患者・家族は、「本土防衛」のための捨て石とされた沖縄地上戦によって、「本土」とは異なる被害を強要された。1944年3月に沖縄入りした日本軍がまず行ったのが、軍民混在の地上戦に備え、「戦闘の邪魔になるハンセン病者の一掃」をめざす沖縄島全土での「患者狩り」=「軍収容」だった。こうして、沖縄愛楽園(「療養所とは名ばかりの強制収容所」=元患者の言葉)に定員の2倍以上も押し込まれた人々は、劣悪な居住環境や強制労働、不自由な体を押しての防空壕掘りなどで病気や後遺症を悪化させ、沖縄戦前後の1年間で300人近くが命を落とした。

 愛楽園の収容人数が1000人を超え、最も多かったのは戦後すぐだ。戦争による劣悪な衛生・栄養状態の中、ハンセン病を発症する人が増え、沖縄を占領した米軍は、日本の隔離政策を引き継いで強制収容を行った。しかしこれによって日本政府の責任が免罪されるとは思われない。沖縄の元患者・家族を、「本土」より格段に苛酷な状況に追い込んだのは、沖縄を戦場にし、米軍に売り渡した日本政府だからだ。

 原告・弁護団は「本土」と一律の補償を求める方針だが、むしろそれ以上に手厚い対策を取ってしかるべきだ。ある元患者は「(元患者以上に)それぞれの家族の状況は複雑だ」と語った。

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月16日

【参院選】 争点は「改憲」「安倍政治」 野党が政策合意 自民 若者対象の新広報戦略展開=丸山重威

2019年参院選は「老後の生活には2000万円の準備を」という金融審議会報告とその受け取りを拒否するという麻生太郎副総理・財務相の前代未聞の対応で同日選はなくなったが、自民党が5つの政策の中に「早急な改憲」を掲げ、「憲法」が争点の中心におかれることになった。

全一人区で統一

 一方、立憲民主党、共産党、国民民主党、社民党と、衆院の「社会保障を立て直す国民会議」の5野党・会派は5月29日、「市民連合」が示した安保法制(戦争法)の廃止など13項目の「共通政策」に合意。6月初めまでの協議で、参院選の1人区全32区での野党統一候補が決まった。

市民連合の政策を野党が合意しての統一は、2016年参院選、17年衆院選に続くもので、17年にはなかった「改憲発議」そのものへの反対や、「沖縄・辺野古新基地建設反対」、「消費増税中止」、「原発再稼働反対」「防衛予算削減」などが入り、国政の根本問題での共通の主張が明確にされた。メディアについても「放送事業者の監督を総務省から切り離し、独立行政委員会で行う新たな放送法制を構築する」が第13項に入っている。

「新時代」で宣伝

 これに対し自民党は6月7日「日本の明日を切り拓く」と題した参院選政策を発表した。

 内容は@力強い外交・防衛A強い経済B誰もが安心、活躍できる人生100年社会C最先端をいく元気な地方D復興・防災E憲法改正を目指す−の6項目を挙げ、都合のいいことを並べた「令和新時代・伝統とチャレンジ」とのキャンペーン。しかし、「改憲」には「早期の憲法改正」と具体化を強調した。

 その一方で、自民党は若者と女性を対象にした「#自民党2019」と名付けた新広報戦略を進めている。歌・ダンス・落語などで活躍する10代の若者たちが登場する動画を展開。女性誌「vivi」の6月10日のウェブ版は「わたしたちの時代がやってくる!権利平等、動物保護、文化共生。みんなはどんな世の中にしたい?」のタイトルの企画広告を掲載。どんな世の中にしたいかを投稿した人からモデルの思いを印刷したTシャツを贈るという。

ムード選挙狙う

自民党・安倍政権は、令和―代替わり―トランプと続いた社会フィーバーの流れの中で参院選と「改憲」発議を実現しようとの大戦略をつくってきた。この結果、5月の内閣支持率と不支持率はNHK調査支持48%、不支持32%、JNN(TBS系)支持59・1、不支持36・9%、共同通信支持50・1%不支持36・2%など、軒並み上昇、不支持率も減少の傾向を見せた。

 自民党は、世論調査で「参院選で投票したい政党・候補者は?」という質問に、「自民党」との答えが、全体では約40%なのに、18〜39歳では50%だったことを見た、という。

 自民党は「新聞を読まず、SNSを日常的に使う若年層の支持」を期待してムードに訴え、彼らの心を掴む」という作戦で、有権者の半数を占める無党派数の支持を獲得する作戦だ「新時代」に自民党、「新時代」に憲法改正、のムードを駆り立てようとしている。


JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
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2019年07月15日

【内政】 基地取材 大きく制限 改正ドローン規正法施行 新聞協会「極めて遺憾」=新藤健一

飛行禁止区域を米軍基地などにも広げる改正ドローン規制案が6月13日施行された。日本新聞協会編集委員会は遅ればせながら「極めて遺憾」との談話を発表した。

6月6日には、岩屋毅防衛大臣に要望書を提出し、「施設指定」と「飛行同意」の基準を作成、制限はこの範囲に限ることを求め、同意しない際は合理的理由について申請者の報道機関に誠実に説明するよう求めた。在日米軍施設・区域に関しても同様だ。

要塞地帯法の復活

改正案が成立前日の4月16日、参院内閣委員会では、社民党の福島みずほ議員が「これは要塞地帯法でないか」と質した。要塞地帯法は日露戦争後の明治32年7月、勅令で公布された。一定距離内を要塞地帯と指定し、地域内への立入り、撮影、模写、測量、築造物の変更、地形の改造、樹木の伐採などが禁止、制限された。罰則と軍機保護法で規制された。

 「ドローン規制法は、非常時には拡大解釈される恐れある」との危惧は去っていない。

 それだけではない。すでにドローン取材については、電波による妨害が行われているのではないか、との危惧がある。

辺野古で妨害?

沖縄の米軍基地をドローンで取材してきた琉球新報の花城太カメラマンは、「辺野古上空に近づくとコントローラーに障害物を検出しました、という警告が出て驚いた」という。「その瞬間、機体は前進できなくなる。高度を落とし低空50メートル位に入ると飛べるが、こうした現象は3、4か月前から始まっている。基地から妨害電波を出しているのだろうか」と語る。

 ドローン取材は、基地取材では極めて重要だ。例えば、辺野古建設に注目が集まる陰で、キャンプシュワブに隣接した辺野古弾薬庫では大規模な改造工事が進んでいる。

海兵隊唯一のこの弾薬庫は、以前から、核・生物・化学兵器貯蔵の疑惑が絶えない。私は「沖縄ドローンプロジェクト」が撮影した画像をもとにこれを報じたが、規制法が施行されるとこうした取材や市民の監視活動がやりにくくなることは明らかだ。(「週刊金曜日」3月17日号)

「基地隠し戦略」進む

いま、沖縄の辺野古新基地建設と併せ、南西諸島への自衛隊進出が進んでいる。

 与那国島には沿岸監視隊が配備され、宮古島には南西諸島全域の司令部が置かれ、大規模の駐屯地が作られた。石垣島にも、大規模の部隊配備が進んでいる。

防衛省は既に2012年、米軍のキャンプシュワブとキャンプハンセンの部隊と島嶼に置く自衛隊によるで共同作戦構想をたてている。

 南西諸島での自衛隊基地建設は、辺野古の米軍新基地建設と連動、「基地を見せないドローン規制」もこれと密接に関わっている。

新藤健一(フォトジャーナリスト)

 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
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2019年06月30日

【内政】 新基地問題「他人ごと」か 玉城知事「自分ごととして考えて」 沖縄キャラバン開始=鈴木賀津彦

 全国の人たちに「自分ごと」として考えてほしい|。沖縄県の玉城デニー知事は6月日、東京都千代田区のホテルで開かれた、名護市辺野古の新基地建設の見直しを訴える全国キャラバンの第1弾となるシンポジウムで講演し、こう強調した。沖縄県は今後、全国の主要都市を行脚するトークキャラバンを展開し、県の考えを説明していく方針。県民投票や知事選で示された建設反対の民意にもかかわらず、なぜ工事が強行されるのか、基地負担が集中する沖縄の現実を正確に伝え、日本の安全保障について全国的な議論を呼び起こす狙いだ。

 この日も沖縄防衛局がこれまでとは別の護岸も利用し土砂の陸揚げを始めたことに、玉城氏は、この護岸利用は当初計画にはないため、県は工事中止を求めて行政指導したことを説明、「法令順守の意識を欠いている」と強く批判した。下矢印1 辺野古工事のあり方について、「法律の解釈のねじ曲げが続くと、日本の民主主義も地方自治も成り立たない。そういう大きな問題として、自分ごととして考えてほしいと全国に伝えたい」と玉城氏は思いを述べた。

 政府が「辺野古が唯一の解決策」だというが、「どこと比べて唯一なのか、沖縄県民は説明を受けたことがない。唯一という理由、理屈が成り立っていないから、説明を求めている。説明できないものを実行するわけにはいかない」とし、工事の強硬は「国民のためではなく、アメリカのためだ。日本政府は自分たちもちゃんと動いているとアメリカに見せたいからだ」と説明した。

 全国キャラバンは県の主催で開催。既に愛知県や熊本県の市民団体から開催依頼があるほか、7月日には新潟県の苗場スキー場で開かれるフジロックフェスティバルにもアーティストとして招かれているという。

 今回は「We Love OKINAWA デニー知事・キックオフシンポジウム|沖縄の声を聞き、皆で考えてみませんか?」と題して開催、約200人が参加した。辺野古県民投票の会代表の元山仁士郎氏や、米シンクタンク「憂慮する科学者同盟」上級アナリストのグレゴリー・カラツキー氏らが登壇、弁護士で新外交イニシアティブ代表の猿田佐世氏の進行で、日米地位協定の問題や自衛隊の配備の状況など、沖縄が直面する課題を多角的に議論した。

 沖縄の現実を大きく伝えている本土のメディアが少ない一方で、SNSなどのネットメディアでは正確な情報に基づかないフェイクニュースや沖縄ヘイトが流れている。このため「沖縄の経済は基地が支えている」「辺野古移設に反対すると、普天間飛行場の危険が放置される」などの誤った認識も多く存在することから、知事を先頭に各地に出向き、正しい情報を届け、リアルに対話を広げていきたいという。

鈴木賀津彦

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
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2019年06月23日

【今週の風考計】6.23─G20大阪サミット<会議は踊る されど>

★28日からのG20大阪サミットを始め、今週は世界各地で国際会議が開かれる。

★25日はアラビア半島の東側・ペルシア湾内にある33の島からなる国バーレーンで、中東和平国際会議が開催される。イスラエルがゴラン高原を<トランプ高原>と改名し、さらに緊張を増長させているパレスチナとの和平をめぐる駆け引きが注目だ。
 またホルムズ海峡近くのオマーン湾で、タンカー2隻に加えられた爆撃に関連し、米国とイランの間で軍事行動へエスカレートしかねない危機が募る。会議の行方に世界の眼が集まる。

★26日にはベルギー・ブリュッセルでNATO国防相会議。加盟国のトルコが、ロシア製ミサイル防衛システムの導入を計画している事態に、米国が制裁を科すと警告している。この会議もまた紛糾しそうだ。
★27日、大阪で米中首脳会談が持たれる。米中貿易戦争の行方が占われる。トランプ大統領は、会談で貿易協議が進展しなければ、中国からの輸入品に追加関税を課すと表明。いっぽう中国は、米国のハイテク製品に不可欠なレアアースの輸出を、制限するとまでほのめかしている。米国はレアアースの供給を中国に依存しているだけに、頭の痛いアキレス腱となる。

★さて28日、初めて日本が議長国になるG20大阪サミット、「最高のおもてなしでお迎えしましょう」とハッパをかけるが、果たして肝心の世界経済に関する課題や貿易・投資・地球環境・気候・エネルギーなどのテーマについて、どれだけの成果が得られるのか。
★「自由貿易の重要性や貿易摩擦の緩和」に背を向け、保護主義に突っ走る米国トランプ大統領に、NOと言えず、シッポを振るだけの安倍政権では、<会議は踊る、されど進まず>が、正直な結果になるだろう。(2019/6/23)
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2019年06月09日

【内政】 あらゆる差別 撤廃へ 自民党の後進性暴く 上智大・中野教授に聞く=河野慎二

 メディアの過熱した天皇「代替わり」報道にうんざりした「10連休」が終わり、参議院選挙が約2カ月後に迫って来た。この選挙は、安倍改憲勢力を3分の2以下に追い落とせるか、最大の正念場を迎える。そこで「市民連合」の呼びかけ人である中野晃一上智大教授に話を聞いた。

 中野教授はまず、沖縄と大阪の衆院補選で自公与党が2敗したことについて「自民党にはショックだ。巻き返すために衆参同日選は選択肢としてありうる」と述べた。
 しかし、大義≠ニして企む消費税増税の3回目の延期については「アベノミクス失敗の容認に繋がる」と指摘し「自民党にとってこの選択はギャンブルだ。それでも同日選をやるというなら、そこまで追い込まれた選挙となる」と述べ、安倍一強が盤石ではないとの認識を示した。

 野党共闘について中野教授は「参院選1人区の候補一本化は既定方針だ。野党共闘の効果は各党が理解しており、一本化調整の必要性でも一致している。(合意は)時間の問題だ」と発言。「(11の1人区で勝利した)3年前と同等以上の結果を出すことは不可能ではない」と述べた。
 衆参同日選への野党の対応については「同日選は投票率を上げる。無党派の人たちが野党候補にも投票する。自民党には両刃の刃で、リスクは高い」と指摘。「同日選になれば、候補を衆参の選挙区で振り分け、一本化調整はやり易くなる。同日選を警戒しつつ、いざとなれば受けて立つ」と述べ、市民と野党の共闘に自信を示した。

攻め姿勢で変える
 中野教授は、今回の参院選勝利に向けて「政治を変える!プログレッシブ連合へ」という運動を呼びかけている。「なぜ、憲法を守ろうと言うのか。それは憲法を活かして、政治や経済をより良い方向に変えたいからだ。これまで安倍政治に反対するネガティブな発信になりがちだったが、これを分かり易く言語化、可視化してポジティブに発信したい」
「そのポジティブな声は、私たちの仲間の周りにいる、政治を諦めちゃった人たちにも届けて社会を前に進めたい。現状を維持するだけの守勢ではなく、攻めの姿勢で政治を変えて行きたい」とその狙いを熱く語った。

 参院選の論戦では、人間の尊厳や権利、ジェンダーの問題、あらゆる差別を乗り超える問題に集中することが重要と指摘。特に政治参加への男女均等を目指す「パリテ元年」の今年は、女性への差別撤廃が大きな争点になるとして「選択的夫婦別姓制度」や女性天皇の問題も取り上げて「自民党の復古的な後進性、逆進性を暴き出し、民意と大きく乖離している実態を訴えることが参院選の勝負を分ける」と強調した。

ニュー・ノーマル
 中野教授は、安倍晋三首相が第一次政権当時、メディアに「自由な政権批判を許した」ことを反省し、第2次政権では「NHKや朝日新聞への攻撃を軸にメディア支配の構図を作り上げた」と指摘。その中で「ニュー・ノーマ ル」と呼ばれる、現状を無批判に受け入れる風潮がメディアの現場に広がっていることに警鐘を鳴らした。
 同教授は「6年に及ぶ安倍一強支配がもたらす現実を当たり前のことと常態化し、正常なんだと受け入れる世代がある」と指摘し、様々な弊害を引き起こしている小選挙区制度を不易のものと決め込むメディアの無定見な対応を「ニュー・ノーマル」の一例と批判した。
 中野教授は、菅義偉官房長官に質問を重ねて真実に迫った東京新聞望月衣塑子記者の取材に「こういうことをしてもいいのかと目から鱗(うろこ)≠感じた記者も多い」と述べ、ジャーナリストが世代を超えて「ニュー・ノーマル」克服へのチエを出すことこそが「たくましい知性だ」と強調した。

 特に中野教授は、市民参加の遅れがメディアの危機を進め、政治の危機と連動していると指摘、「市民の側からも、メディアを切り捨てて溜飲を下げるのではなく、メディアの中で歯を食いしばって頑張っている記者やディレクターを叱咤激励することが極めて重要だ」と力を込めた。

河野慎二

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
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2019年06月04日

【リレー時評】「世界一の民主主義国」と孫総領事=白垣詔男

 私が所属している「日本コリア協会・福岡」は20年近く前から月刊紙「日本とコリア」を発行している。同協会はかつて「日朝協会福岡支部」と名乗っていたが、会の趣旨が「朝鮮半島関係者との友好親善」を掲げているので「日朝協会」では北朝鮮だけとの友好親善組織と誤解される恐れがあるために、福岡や他の数支部は「日本コリア協会」と改名した。東京にある「本部」は創設以来「日朝協会」と名乗っている。

 私は、約15年前から月刊紙「日本とコリア」の取材担当として活動している。同紙は原則として毎号、1、2面は「朝鮮半島と関係がある方」のインタビュー記事を載せている。インタビューは理事長(堀田広治さん)と私が、韓国人、在日韓国・朝鮮人、日本人を含むさまざまな「関係者」にお願いしている。
 今年3月号では駐福岡韓国総領事の孫鍾植(ソンジョンシク)さんにインタビューをさせていただいた。孫総領事は、韓国が朴槿恵(パククネ)大統領から文在寅(ムンジェイン)大統領に代わった直後に福岡に赴任されてこられた。政権が変わると、福岡の総領事も交代するのだ。

 孫総領事は、大阪の総領事館領事、東京の大使館公使などを歴任された。大変気さくな方で、インタビューから約1カ月後、「日本コリア協会・福岡」の堀田理事長と私を懇親会に招いてくださり、大いに歓談した。
 その中で私が一番驚いたのは、孫総領事が「韓国は世界で一番民主主義が発達している国です」と言われたことだ。もちろん私は、「沖縄には沖縄の民主主義があり、しかし国には国の民主主義がある」などと発言する閣僚がいる今の安倍政権は日本の民主主義をおろそかにしていると考えている。韓国の民主主義のほうが数段進んでいるとは思っていたが、総領事の口から「世界一の民主主義国家」という発言が飛び出し、一瞬沈黙した後、私は納得したが返事に困った。

 私は、韓国の民主主義の原点は100年前の「三・一民族運動」だと思っていた。その運動で朝鮮半島の方々が取った言動を支えた精神が、その後の韓国の民主主義を推進したと、今年の「三・一民族独立運動」の際、講演会などで学びながら思ったことだった。韓国のさまざまな民主運動にその精神が引き継がれ、記憶に新しいのは朴槿恵大統領退陣要求運動のキャンドル集会・デモにまで引き継がれている。
 「三・一運動」の原点は東京神田のYMCA会館で創案された、朝鮮半島から日本の大学へ来ていた留学生らによる「2・8独立宣言」であることを、恥ずかしながら私は今回初めて知った。
 その後の歴史を通じて韓国国民が民主主義を進展させたことは疑いようがない。
 「世界一の民主主義国家」と言われた孫総領事の顔を、私はまぶしく見つめ続けたことだった。
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2019年06月02日

【今週の風考計】6.2─<トゥク トゥク トゥク>と働くセミ

★ショーン・タン『セミ』(岸本佐知子訳・河出書房新社)に魅了された。A4変形版32ページの絵本である。表紙を開けると、見返し2頁にわたって、高さがバラバラな墓石を思わせる、蒼い鉛色の積み木が並ぶ。左下に、小さく蝙蝠のような飛形で飛ぶセミが一匹、描かれている。

★続いてページを繰ると、なんと薄みどり色のセミが背広を着て無機質なオフィスで働いている。しかもニンゲンからコケにされ、昇進もせず、17年間ケッキンなし、<トゥク トゥク トゥク>と働いてきた。
★そして定年、送別会もない、セミは高いビルの屋上に行く、そろそろお別れの時間、屋根の縁に立つ。それから一気に10ページにわたって、心を打つドラマが描かれる。
★朱赤で描かれる無数のセミの抜け殻が空を舞う。絵を見ながら、まさにセミの甦り、17年目の新たな出発への飛翔、そんな感動に包まれた。最終ページに、芭蕉の句<閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声>を載せている。

★ショーン・タンは、1974年オーストラリア生まれのマルチ・アーチスト、絵本のみならず彫刻、映画、舞台などで活動を続けている。絵本では『アライバル』ほか、アンデルセン賞をはじめ数々の賞を受賞、作品は世界中で翻訳出版されている。

★実は、彼について知ったのは、つい最近だ。先週末、1万歩ウオーキングがてら、「ちひろ美術館・東京」に立ち寄ったところ、<ショーン・タンの世界展>が併催されていたからである。
★展示されている作品を、まず一巡。そして二巡目で、一つ一つじっくり見入る。なんとも不思議な、奇妙で懐かしい、どこでもないどこかへ連れていってくれる余韻に浸った。すぐに『セミ』とショーン・タン展覧会の公式図録を買い求めた。今も座右において、このコラムを書いている。(2019/6/2)
ショーン・タン「セミ」.jpg
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2019年05月28日

【内政】日米地位協定改定で世論盛り上がる 全国知事会・地方議会が動く 国内法適用で「主権確立を」=吉田敏浩

 米軍優位の不平等な日米地位協定の問題が注目されている。地位協定は米軍に、基地の運営などに「必要なすべての措置をとれる」強力な排他的管理権を認めている。米軍機墜落事故でも米軍が現場を封鎖し、日本側は現場検証も事情聴取もできない。米軍は事故原因の究明は二の次で訓練飛行を再開し、日本政府は容認してばかりいる。

 基地周辺の住民による米軍機騒音訴訟で、騒音公害として違法性と損害賠償は認められるが、飛行差し止めは認められない。米軍の活動に日本政府の規制は及ばないため差し止めはできないと裁判所は判断する。米軍の活動に対し日本の行政権も司法権も及ばないのが実態だ。危険な低空飛行訓練も野放しである。

 米軍という外国軍隊により主権が侵害され、そして憲法で保障された人権も侵害されている。こうした現状に対し、昨年7月、各都道府県の知事からなる全国知事会は、初めて地位協定の抜本的見直しを求める提言を、全会一致で採択し、政府にも要請した。その「米軍基地負担に関する提言」では、地位協定は「国内法の適用や自治体の基地立入権がない」など、日本にとって主権の確立が「十分とは言えない現況」だと指摘した上で、こう求めている。

「日米地位協定を抜本的に見直し、航空法や環境法令などの国内法を原則として米軍にも適用させることや、事件・事故時の自治体職員の迅速かつ円滑な立入の保障などを明記すること」

 米軍に対し必要な規制をかけて人権侵害などを防ぐためには、地位協定を抜本的に改定し、米軍への国内法の原則適用を明記する必要がある。しかし、政府は改定に後ろ向きだ。「運用の改善」と称する小手先の対応ばかりで、米軍の特権を見直そうとする姿勢はない。しかも、駐留外国軍隊には特別の取決めがない限り受入れ国の法令は適用されない、との見解を示す。

 しかし、駐留外国軍隊への国内法の原則適用は、実は国際的な常識である。沖縄県がドイツ、イタリア、ベルギー、イギリスに調査団を送り、日米地位協定と比較してまとめた「他国地位協定調査報告書(欧州編)」によると、各国では米軍に対し航空法や環境法令、騒音に関する法令など国内法を原則適用している。低空飛行訓練も高度、飛行時間、訓練区域などに規制をかけている。横田空域のような米軍が航空管制を一手に握る空域もない(8面参照)。基地の排他的管理権も認めず、受入れ国の軍や自治体などの当局者の立入り権も保障される。日本とは異なり、「自国の法律や規則を米軍にも適用させることで自国の主権を確立、米軍の活動をコントロール」しているのだ。

 報告書は沖縄県のホームページに載っており、より広く知られてほしい。それは地位協定の抜本的改定に向けた世論の広がりにもつながるだろう。前述の全国知事会の提言を受けて、地方議会にも地位協定の改定などを求める意見書が出され、今年4月半ばの時点で、北海道・岩手など7つの道県議会と札幌市・長野市など122の市町村議会で決議された(「しんぶん赤旗」4月27日)。こうした取り組みの広がりも重要だ。
 ジャーナリズムが地位協定の問題点をさらに掘り下げ、米軍の特権を認める密約なども暴露し、改定の必要性を訴えることも望まれる。

吉田敏浩(ジャーナリスト・2017年「日米合同委員会の研究」でJCJ賞)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
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2019年05月27日

【リアル北朝鮮】米韓軍事演習の反発か「飛翔体」2回発射=文聖姫

 2017年11月29日の大陸間弾道ミサイル「火星15」発射以来、ミサイル発射を控えてきた北朝鮮だが、5月に入り、立て続けに2回、金正恩朝鮮労働党委員長指導のもと、火力攻撃訓練を行った。

 一つは4日に東海海上で前線および東部戦線防御部隊が行ったもので、二つ目は9日に西部戦線防御部隊が行ったものだ。  北朝鮮は8日、北南将領級軍事会談代表団報道官が朝鮮中央通信社の記者に答える形で、4日の訓練は「正常な訓練計画にのっとって我々の領海圏内で行われた」ものだと強調した。だから、米国も日本も「約束違反ではないとの立場を表明した」とも主張した。

 一方、米国防総省は9日、北朝鮮がこの日発射した「飛翔体」を弾道ミサイルと断定した。10日には岩屋毅防衛大臣も「短距離弾道ミサイルを発射」と記者会見で述べた。トランプ大統領は、「極めて深刻に見ている」(9日)と不快感を示している。

 北朝鮮はなぜ、ここへ来て立て続けに「飛翔体」を発射したのか。2月の米朝首脳会談が物別れに終わった後、米朝協議は進展していない。そうしたなかでの動きだけに気になるところだ。

 国営・朝鮮中央通信は、4月の段階で興味深い論評を配信していた。27日発の論評で、米韓が3月に実施した「同盟19―1」訓練と8月に実施予定の「同盟19―2」訓練を、「歴史的な北南、朝米首脳会談で実現した合意に対する違反」「朝鮮半島の平和雰囲気をつぶす挑発」だと非難していた。米韓が軍事訓練を行うなら、我々が通常の訓練をして何が悪いのか、ということなのだろうか。

 西部戦線で火力攻撃訓練が行われた9日、米司法省は石炭を輸送していた北朝鮮船籍の貨物船を差し押さえたことを発表した。北朝鮮外務省報道官は14日、談話を発表し、差し押さえが「新たな朝米関係樹立を公約した6・12朝米共同声明の基本精神を否定するもの」だと非難した。

 文聖姫(ジャーナリスト・博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
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2019年05月26日

【今週の風考計】5.26─15日夜、首相官邸から出た車の駐車場所

新聞に掲載の「首相動静」欄は、しっかり目を通したほうがよい。とりわけ最終行、18時頃からの面会・会食の相手には注意がカンジンだ。
その一例が5月15日の当該欄である。安倍首相は<午後7時30分、公邸、末延吉正東海大教授らと食事。10時6分末延氏ら出る。>と記されている。

末延吉正東海大教授といえば、山口県出身、建設業の御曹司。若い時から安倍晋三と面識があった。1979年に早大卒業後、テレビ朝日に入社。政治部長の時、部下に対する暴力事件で2004年に退職。
 現在はテレビ朝日の<大下容子ワイド!スクランブル>などでコメンテーターを務め、安倍首相を擁護しまくっている、典型的なマスコミ内の政権応援団の一人だ。

だが、ここに名前の載らない人物がいたという。幻冬舎の社長・見城徹氏が同席していた、という告発である。
「本と雑誌の知を再発見する」と謳うニュースサイト<LITERA>の編集部が、2019.05.21 10:55付けでWEBに公開している。
 その追撃取材によると、15日夜10時6分、首相公邸から出てきた車「黒いアルファード」が、渋谷区千駄ヶ谷にある幻冬舎本社の駐車場に停めてあったのを確認し、かつ官邸詰め記者が控えていた車のナンバーと照合したところ、一致したというのである。
首相公邸での15日夜7時30分からの会食に、同席していたもう一人の人物は、見城氏であるのは明らかだという。
 なぜ見城氏の名前だけが「首相動静」から隠されているのか。2014年7月から、彼の名は完全に秘密扱いになっている。その理由の解明が待たれる。

この15日前後は、見城氏にとって<嵐の1週間>となっていた。順に辿ってみたい。
 12日には、映画「空母いぶき」(5月24日公開)に総理大臣役で出演の俳優・佐藤浩市のコメントは、安倍首相を揶揄したものであり、「これは酷い。見過ごせない。」と、見城社長がツイッターで攻撃した。これに百田尚樹氏や阿比留瑠比氏ら安倍応援団と一緒になって、佐藤発言を歪曲して騒ぎが拡大。
4月に幻冬舎から刊行する津原泰水『ヒッキーヒッキーシェイク』の文庫版を、突然、出版中止。その背景には、百田尚樹『日本国紀』(幻冬舎)を、コピペ疑惑や事実誤認などについて指摘した津原泰水氏への対抗処置があるとされ、批判が起きていた。15日当日、対応は<訴訟するしかなくなる>と強気のツイートを投稿。
16日、幻冬舎で刊行した津原氏2作品の実売部数までツイッターで公表し、著名な作家たちから、厳しい批判の声が嵐のように巻き起こり、猛抗議を受けていた。
 高橋源一郎氏は、「出版社の社長が、<こいつは売れない作家だ>とばかりに部数をさらしあげるなんていうのは、出版人の風上にもおけない行為である」と、痛烈な苦言を呈した。
17日、テレビ朝日の600回「番組審議会」に委員長として出席。19日、見城社長は深夜にツイッターを閉鎖。20日には、テレビ朝日と藤田晋氏のサイバーエージェントが共同出資して始めたAbemaTVの「徹の部屋」に出演し、「お詫び申し上げます」と謝罪、同番組の終了を宣言した。
 同番組は、見城社長がホストを務める2時間生放送のトーク番組。これまで安倍晋三首相や百田尚樹氏、有本香氏などのメンバーが出演してきた。
23日、幻冬舎の見城徹社長と社員一同の名前で、改めて津原泰水氏へのお詫びを、自社のホームページに掲載した。

しかし、幻冬舎は作家の“実売部数さらし”は謝罪したが、文庫本の刊行中止については、言及も謝罪もない。「表現や出版の自由」を擁護し出版文化を担うはずの出版社が、中止の理由に口を閉ざすのであれば、自ら「表現や出版の自由」を抑圧・封殺したと、批判されてもいたしかたない。

さて、15日の夜7時30分から10時6分までの2時間36分、見城氏は安倍首相と末延吉正氏を交えた会食で、何を話し合ったのか。<謀は密なるを以って良し>を決めこみ、<藪の中>にしていいのだろうか。(2019/5/26)
posted by JCJ at 10:04 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする