2019年11月08日

吉田博二さんを悼む 音響技術の名手 元民法労連役員=茂木章子

 吉田博二さん死亡の一報を受け、私は驚愕と疑問そして失望に打ちのめされた。一年ほど前から病気の症状に適合する薬を探す治験のため突き一回近所の大病院に通院していると聞いていた。JCJに来るのは以前より減少していたが、いつも変わらず寡黙な笑顔で作業に集中、時にはきつい冗談を発しみんなの笑いを誘っていた。現役時代は会社も異なり職場も違うので彼との付き合いはなかった。少し伝わっていたのは組合の委員長時代の労務要件獲得と賃金アップの華々しい成果と武勇伝は喧伝されていた。

 博二さんが年々ごろJCJの会員になったか私の記憶は不確かだ。彼によるとJCJか民放組合の主催による沖縄支援に旅行会で私に拉致され有無を言わせず入会させられたと、あの笑顔で放言していたようだ。

 几帳面で正確性高くきれい好きの彼は、常に手を動かし機材の手入れもよく行い、零細運営社員の見本のようであった。JCJ本部の何個もある白いテーブルも、汚れはもちろんのことボールペンの傷も消しゴムや消毒液で黙々と吹いていた。この性格は飲み会でも発揮され、一定量のむとどんなに座がにぎわっていても、お先にと多めの支払いをして帰宅する。メディアの人達は良く飲み議論をし座を沸かせる種族といわれるが、彼はどんな席でも笑顔でうるさい連中の話を聞いていた。

 これからも集会・講演・小森チャンネル等の取材は絶えないが、吉田さんの音響の仕事は外部に依頼し、その都度出費となり頭の痛いことである。

 とにかく安心して一つの物事を任せ続けてきた吉田さんの存在感の大きさにあらためて感謝したい。   

 茂木章子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
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2019年11月05日

【リアル北朝鮮】 白頭山登頂で決断? 金委員長自立繁栄を強調=文 聖姫

 「敵がいくら執拗にあがいても、我々は我々の力でいくらでも良い暮らしができ、我々式で発展と繁栄の道を切り開いていけるというのが、試練と困難を踏みしめ奇跡と遺勲でより飛躍した2019年の総括」

 金正恩・朝鮮労働党委員長は中朝国境の三池淵郡を訪れた際、意味深な発言を行った。冒頭はそのひとつだ。16日発の朝鮮中央通信が伝えたが、訪問の日時は明らかにしていない。

 この視察で金委員長はこうも述べた。「米国を首位とする反共和国敵対勢力が朝鮮人民に強要してきた苦痛は、もはや苦痛ではなく、それがそのまま憤怒に変わった」。

 6月の金委員長とトランプ米大統領による電撃的板門店対面では米朝の実務者協議を開催することで合意、10月5日にストックホルムで実現したが、不発に終わった。協議には北朝鮮の金明吉首席代表と米国のスティーヴン・ビーガン北朝鮮担当特別代表が参加した。金首席代表は、「アメリカは、我々を大いに失望させた。アメリカは自分たちの古い立場や姿勢を手放さないようだ」と述べ(BBCニュース電子版2019年10月7日)、米国側は「アメリカは、創造的なアイデアを提示し、北朝鮮側と良い話し合いを行った」(モーガン・オーテイガス国務省報道官声明、前述のBBCニュース)と表明。双方食い違いを見せている。

 金委員長の三池淵での発言は、この米朝協議後になされたものとして注目される。もはや米国との対話には期待しないとも受け取れるからだ。

 金委員長は、自力更生、自力富強、自力繁栄などの言葉を連発し、(制裁という)圧力に屈せず、自力で道を開いていかねばならないと強調した。

 同じ16日発の朝鮮中央通信は、金委員長が白頭山頂に登ったことを、白馬にまたがった金委員長の写真とともに報じた。金委員長が白頭山に登るときは何かを決断する時であることが多い。金委員長の意味深な発言とともに注目される動きだ。

文聖姫(ジャーナリスト・博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
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2019年11月03日

【沖縄リポート】 軟弱地盤改良で米国が危惧=浦島悦子

沖縄島北部・本部半島の採石場から連日、運搬船16隻体制(1日当たり4〜5隻)で大浦湾に運ばれ、投入される埋め立て土砂。毎日朝・昼・午後の3回、基地ゲートから資機材を搬入するダンプやコンクリートミキサー車―。辺野古新基地建設工事は「順調に」進んでいるように見える。そして政府は、国民・県民、そして何よりも米国にそれをアピールしたがっている。

 しかし実際はそうでないことが、現場にいるとよくわかる。運搬船に土砂を運ぶダンプの1台当たりの積載量を荷台の底板が見えるほど減らしたり、埋め立て用護岸の前面に、必要性に疑問符のつく巨大なテトラポットを多数設置したり、時間稼ぎとしか思われない現状がある。昨年12月14日から始まった埋め立て土砂投入は、10カ月経った現時点で達成率は約1%にすぎない。

 事業者である沖縄防衛局が一番頭を悩ませているのが、大浦湾の埋め立て区域の広大な「マヨネーズ状」と言われる超軟弱地盤だ。防衛局はあくまで改良工事は可能とし、9月6日に「有識者」による「技術検討委員会(委員8人)」を発足させた。運輸省港湾技術研究所出身で辺野古工事の関連会社取締役でもある清宮理・早稲田大学名誉教授を委員長とし、「国の立場」の委員が大半を占める「御用機関」。それでも初会合では、大浦湾の軟弱地盤は羽田空港や関西国際空港とは異なる特有のものであり、完成後の沈下を懸念する声が出たという。

 10月5日、辺野古ゲート前で開催された県民集会で発言した土木技師の北上田毅さんは、防衛局が地盤改良工事の設計のために発注した委託業務を情報公開請求で入手し、「これまでにない内容に驚いた」と話した。業務の実施に当たって当初から完成まで4回にわたる米軍との協議を義務付けているという。「これは、地盤改良工事を日本政府に任せておくことはできず、米軍が直接指揮監督するということだ。軟弱地盤に対する米軍の危惧がいかに大きいかがわかる」「来年初めに防衛局は沖縄県に対し(地盤改良工事を含む)設計概要変更申請を出すと報道されている。県が不承認すれば工事は止まる。展望に確信を持って現場に結集しよう」と呼びかけた。

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
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2019年10月25日

不自由展「検閲」の爪痕 なお残る歴史認識、女性蔑視、民族差別… 公権力介入で芸術の力失う=古川美佳

 国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の一つ「表現の不自由展・その後」(以下、「不自由展」)が、脅迫やテロ予告を含む抗議(電凸)によって開催3日目で中止となるも、66日ぶりに全面再開、そして10月14日会期を終えた。入場者数は過去最高の65万人を記録したが、それは皮肉にもこの国の「表現の不自由さ」があらわになって、人びとの関心を呼んだからであろう。
 ふりかえれば、「不自由展」中止後直ちに識者やジャーナリスト、市民らから抗議の声明や署名がわき起こり、参加アーティストたちのステートメントやボイコットも生まれた。さらに、再開を求める連日の市民運動、アーティストたちによる対話の試み「Re Freedom」、そして何より「不自由展」実行委員会による「仮処分」申し立てが、「検証委員会」まで立ち上げた大村秀章知事と津田大介芸術監督が主張する「リスク管理」とまがりなりにもかみ合って、一時中止を復活させたといえよう。
 とはいえ、抽選による観客制限や荷物検査、撮影禁止等条件付き再開、文化庁によるトリエンナーレへの補助金不交付や河村たかし名古屋市長による不自由展再開抗議の座り込み等、公権力と文化行政の関係は疑問視されたままだ。

表現のタブー暗示
 「不自由展」を中止に追い込んだ批判や脅迫の標的となったのが日本軍「慰安婦」問題を表した〈平和の少女像〉(以下、〈少女像〉)と大浦信行の映像作品〈遠近を抱えて PartU〉だ。この事件がメディアで報じられるたびに〈少女像〉はたびたびTV画面に登場した。しかし大浦の作品は、「昭和天皇の肖像を燃やした」としてSNS上で作者の意図とはかけ離れた言説となって独り歩きし、作品そのものの画像や図版が取り上げられることはなかった。これまでも「反日」の象徴とばかり喧伝されてきた〈少女像〉の露出と、隠ぺいされる天皇の肖像という二つのアンビバレントは、令和の時代の「表現のタブー」を暗示している。
 ところで、〈少女像〉の制作者キム・ソギョン、キム・ウンソン夫妻は、1970~80年代韓国の民主化運動と呼応して生まれた民衆美術の作家だ。植民地、南北分断、独裁政権と続く歴史の激動にあって、民衆美術家たちは表現することで社会変革を試み、弾圧された。

 今回の「不自由展」をめぐっては、「芸術かプロパガンダか?」などの議論が上がった。
 だが、逼迫した政治状況を強いられてきた韓国では、「政治と美術はともにある」。〈少女像〉もこうした文脈で生まれ、若い世代にとっては今やMeToo運動の先駆けとして女性の人権を象徴するアイコンとなっている。「反日」のプロパガンダだと見なしたいのは、見る側の欲望ではないか。

核心問題はここだ
 現代社会を反映する優れた作品が数多く散見された今回のトリエンナーレの中でも、少女像と天皇の肖像から問題の核心が透かし見えてくる。すなわち、表現の自由を脅かした「検閲」の背後にあるのは、天皇や日本軍「慰安婦」、徴用工や沖縄米軍基地等をめぐる歴史認識、女性蔑視、民族差別問題なのである。
 8月2日の菅義偉官房長官の補助金交付に関わる発言、その後の文化庁の補助金不交付こそ、これらの問題に対する政府公権力の政治的イデオロギーのあらわれである。近隣アジア諸国との記憶闘争、そしていまなお日本人を巣食う「天皇タブー」に自覚的にならない限り、私たちは権力の奴隷と化し、国家を内破する芸術の力を失うことになるだろう。トリエンナーレは終わってなどいないのだ。

古川美佳(朝鮮美術文化研究者)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
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2019年10月04日

【編集長EYE】 「不自由展」いきなり中止は勇み足

3日で中止になった「表現の不自由展・その後」。表現・言論の自由を侵害、直ちに企画再開をという市民の抗議活動が止まない。「表現の自由を市民の手に全国ネットワーク」も6日東京都内で集会を開いた。

 同ネット世話人で武蔵野美術大学教授・志田陽子さんは、憲法学者の立場からこの問題を報告した。

 大会実行委員会がいきなり中止を決めたのは疑問だという。

 「会場は公共の施設です。従って行政当局や芸術監督などが、会場にふさわしい作品かどうかなどを協議し、オープンしたはずです。文化芸術基本法の前文では『表現の自由の重要性を深く認識し、文化芸術を行う者の自主性を尊重する』と書かれており、これに則り運営します。中止の理由は安全性が担保できないということですが、基本法の精神にそって、まず一時停止にする。そして安全性の問題が排除されれば、再開する。すぐに中止は文化芸術基本法に反します」

 問題は安全性の担保だ。ガソリンをばら撒くと県にファックスした脅迫者は警察に逮捕され、「9月5日に放送されたクローズアップ現代+から推測すると、嫌がらせ電話やメールはからかいが相当数と思いました」(志田さん)。実態が分かれば、再開を考えてもいいわけで、だから一時停止という措置にしておくべきだったというのだ。

 また河村たかし名古屋市長が中止を申し入れたことについて志田さんは「会場は表現の自由の空間が出来上がっています。公人がふさわしくない言ったときに、実行委員会は『受けつけません』と言うのが仕事です。発言は政治的な中立性から外れている」と批判した。

 河村発言や菅義偉官房長官が言及した補助金交付の検討は検閲≠ノ当たるのか。志田さんは「愛知県が設置した検証委員会が、中止は表現の内容が政治的にまずいからと結論を下したら検閲に当たります」と指摘した。

 会期は10月14日までだ。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
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2019年10月02日

「不自由展」中止に思う 河村市長発言が火をつける 嫌韓に抗議の日本女性に共鳴=加藤剛

あいちトリエンナーレは3年に一回開かれる国際芸術祭で2010年から始まっている。街角でポスターを見る程度の私は、これまで会場に足を運んだことはなかった。

 ところが8月1日のトリエンナーレ開会早々、企画の一つ「言論の不自由展・その後」への脅迫や政治家の介入発言で3日目に中止になった。ツイッターやメールでは「愛トレ」などの愛称が飛び交うほどで、私も初めて見に行った。

 主催する愛知県のホームページ(HP)などで動画や写真入りでこの企画が紹介されており、関心のある人たちは開会前からいろいろ反応していたようだ。企画を快く思わない人たちも情報を拡散した形跡が読み取れる。

 時あたかも日韓の政府同士の対立がけたたましい折の開幕で、反韓・嫌韓の潮流が水面下に淀んでいた。そんなこともあって「平和の少女像」が目の敵にされたのだろう。主催者に対し電話やメール、ファクスで抗議の声が大量に寄せられた。「少女像の展示をやめろ、さもなくばガソリン持参で」というファクスもあり、その上に河村たかし名古屋市長の「少女像展示は日本国民を踏みにじる行為」の発言も重なり、主催者は不自由展の中止を決めた。

 代表の大村秀章愛知県知事は理由について「会場の安全が保てないから」としているが、警備陣はガソリン男にしてやられるようなヤワではない。派遣された沖縄で暴言を吐きながら座り込みを排除し、その違法性を名古屋地裁に訴えられているほどだ。

トリエンナーレの主催者の会長代行でもある河村市長発言は「身内から飛んだ矢」の役割を果たしたと思う。

 エスカレートする嫌韓ムードへの抗議か、ある集会でこんな日本人女性を目にした。平和の少女像の展示に似た一組の椅子が壇上に置かれ、左側に像ではなく、その女性が韓国の民族衣装をまとって座っていた。集会の開始から終了までじっと座っていたが、大きな決断が読み取れた。私はその写真を自分のフェイスブックに載せた(事後に彼女の了承を得た)。彼女に対する攻撃があったら私は断固戦うつもりだ。 

加藤 剛(東海支部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
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2019年09月28日

【沖縄リポート】 本保港で労組が米軍車両を追い返す=浦島悦子

第4次安倍再改造内閣が発足した9月11日、沖縄では、第3次嘉手納爆音差し止め訴訟の控訴審判決が福岡高裁那覇支部で言い渡された。夜間・早朝の米軍機の飛行差し止めという原告の切実な訴えは、一審同様認められず、騒音による健康被害については一審より後退、賠償額も減額された。第1次提訴から37年が経ち、高齢化した原告らの疲れが目立つ。

 翌12日、辺野古新基地建設阻止の座り込みが続くゲート前行動には、嘉手納爆音訴訟原告団や裁判の応援に駆け付けた全国爆音訴訟団のメンバーらが多数参加し、今回の判決の不当性や、各地の状況を訴えた。嘉手納の原告は「基地がいったん造られたら、住民の権利を守ることはできない。

辺野古を嘉手納と同じような状況にしないために、新基地は絶対に造らせない!」と拳をあげた。

 辺野古新基地建設をめぐっては現在、沖縄県が国を提訴した2つの訴訟(関与取り消し訴訟と抗告訴訟)と、私も含む辺野古・大浦湾沿岸住民16人が提訴した抗告訴訟が並行して進行中だ。いずれも、沖縄県が行った「埋め立て承認撤回」(昨年8月31日)を、行政不服審査法を使って取り消した国土交通大臣の裁決は違法だと訴えている。

 住民の訴訟を支える辺野古弁護団は、これまでの判例等から、基地が造られてしまえば「第三者行為論(米軍基地の管理・運営権は米国が持っており、日本政府は関与できない)」で、住民がいくら被害を訴えても救済されないので、基地ができる前に止める緊急の必要性を主張している。

 一方、沖縄島北部の本部港では17日、沖縄県や本部町の不使用要請を押し切って米軍が強行しようとした民間港使用を、港湾労働者と市民らが阻止した。伊江島での海兵隊パラシュート降下訓練の救助艇として使われる小型船を牽引する米軍トレーラーを、全港湾沖縄地方本部の組合員50人が港の入口でピケを張り、港内に入るのを阻止。駆けつけた本部町民、市民らも含め約200人が早朝から夕刻まで、炎天下10時間に及ぶ行動で米軍車両を追い返した。参加したある市民は「自分たちの職場を軍事利用させないという港湾労働者のたたかいに感動し、辺野古のたたかいに勇気をもらった」と語った。

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
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2019年09月07日

【支部リポート】 北九州 抗議行動やまぬ香港 暴力警察の蛮行を目撃=杉山正隆

 「逃亡犯条例」の改正案を契機に起きた香港政府に対する市民による抗議活動は、6月9日の大規模デモから2カ月が経った。8月10日、現地に取材に入った。目抜き通りネイザンロードでは、10日夜9時過ぎ、黒服を着た市民らに、デート帰りと思われるカップル、高齢の男女らと警察隊がにらみ合いを続けていた。突然、20歳代の女性ら数人を警察官が警棒で数十回、激しく殴りつけ押さえつけて手錠を掛けた。

 数千人の市民らは「釈放しろ、警察は恥を知れ」と大合唱。もみ合いの後、警察車両数台と加勢の警察官100人ほどが人波を押しのけて到着。激しいヤジを浴びながら「容疑者」が警察車両に乗せられ尖沙咀警察署に連行された。その後、抗議の声が止まず、警察官らは催涙ガスを発射。市民らは逃げ惑い、脱げた靴や買い物袋などが現場に散乱した。

 翌11日の午後6時半。世界的に有名な雑居ビルの「重慶大廈」(チョンキン・マンション)前のネイザンロードに黒服の男女らがゴミ箱数個を置いた。これをきっかけに、通行が妨げられ、大混乱に陥った。集まった市民は数千人に上り「自由な香港」を訴えたのに対し、警察官らは警告したものの催涙ガスを発射。20歳前後と思われる男女4人が後ろ手に縛られ道路に数十分間座らされ、警察署に連行された。通すよう抗議する日本人に「黙れ、香港から出て行け」と警棒を突き出し怒鳴る警察官も。引き上げる警察官に「こんなに手荒なことをされた。ひどいじゃないか」と腕の傷跡を見せながら詰め寄るお年寄りの姿も見られた。

市民の間で警察への怒りの声が広がっている。催涙ガス弾やゴム弾を市民に発射し、警棒で歯が折れても若者を殴る、地下鉄構内など閉ざされた空間での催涙ガスの発射など行き過ぎた対応に「暴力警察」のイメージが浸透している。

 香港国際空港には9日以降、1万人近い市民が集まり、到着旅客らに「迷惑を掛けてごめんなさい。でも、香港の現状を知って下さい。支援して下さい」などと訴えた。裁判所は中止を命令、中国政府は「テロ」と断じた。

 香港がこれからどうなるのか。これからも注目したいと考えている。

杉山正隆

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年09月03日

【リレー時評】図書館の民間委託 弊害多し 新政策を=守屋龍一

 今夏の猛暑続きは世界規模。中国ではエアコンの効いた場所へ、避暑めあてに移動する「納涼族」が急増したという。書店内もイス持参の子ども連れがいっぱい。書棚の本を持ち出し読みふける映像に衝撃を受けた。
 日本だって地域の図書館は、「納涼族」格好の場所だ。お盆のさなか、住まいの近くにある図書館を訪れると、26℃に調整してある館内は高齢者ばかり。中には居眠りしている老人もいる。
 図書館の利用がこれでいいのか。5月末、岩波ホールで観た映画「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」を想起しながら、考えさせられた。

 6月24日、活字文化議員連盟・公共図書館プロジェクトが、〈公共図書館の将来─「新しい公共」の実現をめざす〉(答申)を発表した。子細に読むと頷ける点が多く、5つの提言についても示唆に富む内容が豊富である。
 まず小泉内閣が進めた規制緩和や民間委託、郵政民営化につながる政策の是非が問われ、公共図書館の運営についても、民間委託の指定管理者制度そのものにメスを入れる、これが緊急テーマに浮上したと指摘する。

 民間委託した図書館の貸出点数の推移を調査したところ、ほぼ2〜3年で貸出率が下がり、5年以上では20〜30%以上も減少し、住民の図書館離れが始まるという。
 さらに民間業者の目先の利益が優先し、長期に図書館の発展を目指す姿勢がない。地域に密着した図書館サービスの提供に向けて、必要不可欠な専門知識のある人材が育成・蓄積されない。
 まずやるべきは図書館職員の劣悪な労働条件の改善だと提言。司書の6割が非正規で働き、賃金は経験を積んだ30代後半でも月13万円。専門職としての能力に応じた十分な賃金を支払い、雇い止め≠見直し、司書が継続して安心して働ける労働環境づくりが必要だと説く。

 いま日本全国にある公共図書館は3300館。そのうち民間業者に指定管理者委託をしているのは640館を超える。なかでも図書館流通センター(TRC)の占有は激しく、333館(全体の65・5%)になる。
 昨年11月、神奈川県海老名市の公共図書館の管理運営を、市は図書館流通センターと「TSUTAYA図書館」(CCC)による合弁事業とし、今後5年間、毎年3・2億円の委託契約を更新。年間の税金投入は市が直営時の2倍となり、市民から批判の声が挙がる。
 公共図書館に納める図書も、いまや図書館流通センターが独占し、〈町の本屋さん〉は、公共図書館という安定した書籍の販売先を失ってしまった。
 図書納入にあたっては地域書店からの直接購入を優先し、装備作業は無償サービスではなく、福祉施設に業務委託して効用促進を図るなど、新たな地域循環型の経済効果を生み出す図書館政策の確立が必要である、と提言する。即実行を願う。

守屋龍一

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年08月28日

【沖縄リポート】 ストップ 海中不発弾の爆破処理=浦島悦子

 ジュゴンの死体漂着から4カ月を経た7月17日、解剖が実施され、同29日、実施主体である環境省(沖縄事務所)・沖縄県・今帰仁村の三者は解剖結果を報道発表した。

それによると、沖縄近海に生息するオグロオトメエイの尾棘刺入に起因する死亡の可能性が最も高いという。多数の鋸歯状の突起を有する長さ約23センチの尾棘が腸管を突き破って腸内を移動し、腸の内容物が腹部全体に充満していたというから、その痛み・苦しみは想像を絶する。死体漂着4日前に水中録音されたジュゴンの頻繁な鳴音は、断末魔の叫びだったのだろう。

沖縄美ら島財団、鳥羽水族館、国立科学博物館の獣医師6名が携わったという解剖結果におそらく間違いはないと思われるが、しかし、これで「幕引き」させてはならない。

亡くなったジュゴンの生息域は辺野古への土砂運搬船の航路と重なっており、直接の接触がなかったとしても運搬船の頻繁な航行が海生生物の生態を攪乱し、通常ありえない事故が起こった可能性は充分ある。今回の事故を遠因も含め究明すること、基地建設の進行に伴って行方不明になった2頭のジュゴンを含め、それ以外にも少なくないジュゴンの目撃情報をもとに琉球諸島全域調査を行うことを環境省や沖縄県に強く求めたい。

そしてもう一つ、ジュゴンの脅威となっているのが、不発弾の海中爆破処理だ。この8月1日にも中城村沖で実施されたが、沖縄戦の悪しき「置き土産」である不発弾は陸上だけでなく沿岸海域にも未だ多数残留しており、海で見つかったものは海上自衛隊が爆破処理するのが通例となっている。しかし、これによって沿岸域に住むジュゴンに直接影響するだけでなく、餌場である海草藻場を含め、沖縄の観光資源であるサンゴ礁生態系そのものを破壊してしまう。

水中にある不発弾はダイナマイトを仕掛けて誘爆しない限り爆発しないため、放置または海溝のような深い場所に移動して「水畜」するのが国際的な常識だという。この常識を行政や市民に広く知らせ、海中爆破処理をなくしていきたい。

ジュゴンの生存の脅威となる要素を一つひとつ取り除いていくことが、彼らを絶滅の危機に追い込んだ私たちの責任だと痛感している。

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年08月27日

【編集長EYE】 米国への忖度で「ひろしま」幻の映画に=橋詰雅博

 幻の映画「ひろしま」を10日午後、都内で見た。奇しくも、その日の夜11時、NHKがETV特集「忘れられたひろしま=`8万8千人が演じたあの日=`」(映画はETVで17日深夜放映)を放送した。上映を主催した憲法を考える会が配布した資料と特集番組から「ひろしま」が製作された経緯はこうだ。

 映画の原作は「原爆の子〜ヒロシマの少年少女のうったえ」だ。自らも被ばくした教育学者・長田新が原爆の惨状を残したいと、子供たち105人の被ばく手記を編纂し、本は1951年に出版された。累計27万部売れ、原爆の恐怖と悲惨さを多くの国民に知らせるきっかけになった。手記を寄せた少年が映画化を発案し、日本教職員組合が製作に乗り出す。カンパを募り、総額4千万(現在の貨幣価値で2億5千万)の製作資金を集めた。監督は「きけ、わだつみの声」などの作品を手がけた関川秀雄、助監督に熊井啓、音楽が伊福部昭で、一年後にあの「ゴジラ」のテーマ曲をつくった。当時の人気女優・月丘夢路が主演し、8万8千の市民が出演。これは日本映画史上空前絶後のスケールだ。原爆が投下された直後の広島市を再現した映画は53年に完成した。

 ところが国内上映直前にアクシデントに見舞われる。試写を見た大手映画会社が反米的と配給を拒否。どこがそうなのか、例えば「日本人が新兵器の『モルモット実験にされた』」というセリフを挙げた。

 筆者はこうも感じた。上映時間104分のうち惨状シーンは30分も続き、強烈な印象を受け、見ているうちに原爆を投下した米国に怒りがこみあげてきた。

 映画は自主上映で公開され、55年ベルリン国際映画祭長編映画賞に輝いたが話題にならず、いつの間にか忘れ去られた。現在、原爆のむごさを後世に伝えるため映画関係者が上映会を各地で開いている。しかし、外交、経済、防衛などあらゆる面で日本は、米国への忖度を続けている。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年08月08日

【支部リポート】 北九州 最新治療と医療支援学ぶ 歯科医ら国際エイズ学会へ=杉山正隆・久保ゆかり

今も全世界で毎年約200万人が新たに感染するHIV/AIDS。4000万人近くが差別や偏見にも苦しむ病禍だ。最新治療や医療的支援のみならず、背景にあるLGBTIQなど性的弱者や薬物依存、性労働などに関する問題解決を話し合う第10回国際エイズ学会会議(IAS2019)が7月21日〜24日、メキシコシティで開かれる。

 会議には160カ国から1万人の医師や研究者らが参加。取材に当たるジャーナリストは千人近くになる見込みだ。HIV/AIDSは、有効とされるワクチンの開発には至っていないものの、発症を遅らせるなど生活の質を上げる治療法はほぼ確立しており、「慢性病」の様相を呈している。

 国連のグテーレス事務局長は「18年前に国連がHIV/AIDSに関する最初の特別総会を開いた頃、『エイズのない社会』など想像できなかった。現在は子どもの新規感染はほぼ半減、成人でも2割減っている」と強調し、30年までにエイズの流行を終焉させる目標を打ち出す。

 国連は、HIV陽性者の90%が検査を受け自らの感染を知り、そのうちの90%が抗HIV治療を受け、そのうちの90%が体内のHIVを検出限界以下にする「90―90―90」を2020年に達成したい、とする。が、実際には「75―79―81」(17年)にとどまっているのが現実だ。

 日本では17年の1年間で1389人が新たに感染。1600人に迫る勢いだった。13年より勢いが衰えたものの「高止まり」にある。累積報告数は約3万人だが、実数は数倍とされる。

 IAS2019では、ワクチンなど最新の研究成果や、35年間で3500万人が亡くなった中、「自然治癒した」とされる2例目の完治例の発表に注目が集まっている。あらためて問題となっているLGBTIQや薬剤依存者、性労働者など「弱い立場の人々」への支援策などが話し合われる見込みだ。

 北九州支部から歯科医師と看護師の資格を持つ2人が正式な取材登録を経て会議を取材する。日本ではほとんど報道されないこうした問題にも取り組んでいく。 

杉山正隆・久田ゆかり

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年08月07日

【リレー時評】 異常気象を無視したニッポンとG20=中村梧郎

7月はじめに九州を旅した。

地球温暖化による集中豪雨。鹿児島や宮崎では死者が出た。異常降雨は三〇年前の一・五倍ほどだという。国は「行政の限界。自分の命は自分で守って」とTVで呼びかけた。動けない高齢者もいるのに国は救わないよ、との開き直りである。

地球環境問題が主題であったはずのG20は一体何の意味があったのか。日本は気候変動防止に背を向けていることが、会議を通じて逆にあぶりだされてしまった。

パリ協定はCO2排出ゼロの目標で合意した。

EUは2050年までに80〜95%を削減する。しかし、日本の削減目標は30年に26%。主要国の中でも最低である。加えて最大のCO2排出源である石炭火力発電を「基幹電源」と位置づけ、25基を新設する。電力企業や銀行はインドネシアなどへの輸出に奔走。原発を拒否したベトナムにも石炭火力を売り込む。日本はパリ協定からの離脱を決めたトランプ政権同様、協定を骨抜きにしたいようだ。

一方フランスは2021年、イギリスは25年までに石炭火力をゼロとする計画だ。豪雨災害が頻発しても日本は「脱石炭」を決して言わない。

G20の次の課題であったプラごみ問題。日本はここでもトリックを使う。「プラスチックは燃やせば良い」これを「サーマル・リサイクル」という…と。焼却はCO2を生み、塩ビはダイオキシンを出す。各家庭がプラを分別しても焼却炉では混焼されたりする。産廃炉を含めて2千基以上の炉が夜昼なくプラを燃やす。これを「リサイクルだ」と称するのは世界では否定されている。

その上で途上国への輸出問題がある。ベトナムのニャチャン港に山積みされた日本のプラごみとドラム缶群を見た。プラは熔かされて質の悪い樹脂となり、残りは野焼きされた。廃棄物の移動を禁ずるバーゼル条約違反だが「有価物」の名目だった。いま排出国への返還が始まっている。

地球の海には800万dのプラごみが漂う。それは砕けてマイクロ・プラスチックと化す。魚類はPCB等を吸着したプラを食べ生体濃縮を進める。危険はブーメランのように人体に還流する。

やれストローだレジ袋だと、国もメディアも消費者の使い捨てを標的にするが、これはプラ生産量3位の日本の、ほんの一部に過ぎない。20年前のドイツ。すでにレジ袋もプラ容器も無いのに驚かされた。倫理観ではない。プラ生産企業に回収責任を持たせたため市場に出なくなったのだ。

昨夏スウェーデンの女高生グレタが始めた温暖化阻止行動は今や125カ国に拡がった。今月、世界7千の大学は「気候危機」を共同で宣言した。

世界から取り残される災害大国・日本。国家が温暖化を顧みず「自分の命は自分で守れ」と言いだすようでは困るのだ。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年08月06日

安倍政権「生活破壊」 学者の会ら緊急アピール 暴走政治を阻止=古川英一

 6月下旬の夕方、東京神田の学士会館に、平和主義・立憲主義・民主主義を基本的な価値とする、学者や市民90人余りが集まった。集会は安保法制に反対するために4年前に設立された学者の会が、暴走する安倍政権への危機感から開いた。憲法や経済学などを研究する学者が次々に発言した。

愛敬浩二・名古屋大学教授は安倍自民党の憲法9条の改正案について「安倍首相は自衛隊を明記するだけで現状は変わらないと説明するが、その現状こそが問題だ。安全保障関連法ができて日本は戦争ができる国へと変わってしまった。9条を改正すれば米軍のグローバルな軍事展開に基地を貸すことを明確にすることになる」と述べ、安保法制を廃止し、ここまで変えられた国の在り方をそれ以前に戻すことを訴えた。

▽間宮陽介京都大学名誉教授は今の日本社会の「破壊」されている状況を列挙した。まず安倍政権が、立憲主義、憲法、そして教育や労働までをも暴走して破壊していること。さらにアベノミクスの失敗により経済が破壊されていること・・本来、経済の目的は国民一人ひとりの生活を向上していくものなのに、アベノミクスは経済成長のために一部の富裕層を優遇するものだと指摘。

大沢真理・東京大学名誉教授は、安倍政権の社会保障に対する考え方は「70歳まで働け、病気になるな、お上に頼るな」と、社会保障の強化どころかむしろ背を向けていると厳しく批判した。

 最後のアピールでは、「自らの蒙を開く研鑽の場としての大学は、未来を切り開くための『自由の砦』たりうるはずです」としたうえで、安倍政権の暴走をくいとめるために主権者としての行動を起こし、議会を動かしていこうと呼びかけた。

集会の中ではメディアの責任の重さを訴える声が上がった。市民が連帯していく仲立ちとなること、ジャーナリストとして私たちがやるべきことはこれからも続くのだ。

古川英一

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年08月05日

【支部リポート】 神奈川 薄氷を踏む景気あやうい 狙い外れたアベノミクス 神奈川新聞・田崎記者が話す=保坂義久

神奈川支部は7月6日、横浜市の神奈川婦人会館で例会を開いた。神奈川新聞経済部記者・田崎基さんが「アベノミクスの嘘」を話した。

 田崎さんは異次元緩和といわれる金融政策、10兆円規模の公共投資など機動的な財政政策、規制緩和などで民間投資を促す成長戦略によって経済成長させるアベノミクスのシナリオを説明した。

 そのシナリオは、政府が国債を発行し、国債を買った金融機関が日銀に売却。日銀は紙幣を印刷してそのカネを銀行に支払う。大量の円が出回り円安になることで輸出系企業の利益があがり、それが給与や設備投資に回る。また、金利が下がってカネが市場に回り、需要が喚起されることで物価が上昇するはずだった。

 しかし、企業の利益は増加したものの実質賃金は上がらず、消費支出指数は低下した。

 肝心の需要が伸びなかった理由について田崎さんは、日本に有望な成長分野がない、企業が思いのほか利益を賃金に還元しなかった―この2点をあげた。

企業が増えた利益を賃金に回さずに済んだのは、経営方針に沿い非正規雇用を拡大させて、コストのかかる正規雇用の社員を減らしたからだと分析する。

また、せっかくの成長分野である再生エネルギーや蓄電池への投資を企業がためらったのは原発維持政策が原因ではないかと話す。

 田崎さんは所得階級別の世帯数割合を過去と比較したグラフでアベノミクスの結果を示した。生活が苦しい層が増えて、中間所得層が減っていることが一目瞭然だ。

にもかかわらず安倍政権を支持する若者が増えているのは、増大し続ける貧困層の現実を伝えきれていないからだと田崎さんは自戒を込めていう。

アベノミクスに批判的な学者などは、国債への信認が失われ暴落する危険性を指摘するが、そもそも景気は大きく冷え込んでいる。

 田崎さんは全ての地方銀行で貸倒引当金の積み増しが進んでいることをあげた。地銀は「今の景気は薄氷の上を歩くように危うい」と見て先手打っている証拠だという。

保坂義久

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年08月03日

植村東京訴訟 地裁も不当判決 被告の謝罪も賠償も棄却=編集部

 元従軍慰安婦の証言を伝えた1991年の記事で、執拗な「捏造記者」攻撃の標的にされた元朝日新聞記者植村隆氏の名誉棄損訴訟で東京地裁(原克也裁判長)は6月26日、名誉が棄損されたことを認めながら植村氏への謝罪と損害賠償請求を棄却。西岡力被告らを免責する「不当判決」を下した。植村氏は7月9日、「原判決には事実認定と法解釈に誤りがある」として控訴。植村氏の名誉回復の闘いは札幌訴訟(櫻井よしこ被告ら)に続き、高裁に舞台を移して続く。

名誉毀損認めるが

 判決は、西岡被告の植村氏への「捏造」との表現が事実の適示だと認め、植村氏の名誉が毀損されたことを認めた。つまり西岡被告と文芸春秋の表現と記事が「名誉棄損に該当する」と、植村氏が「捏造記者」でないことを認めているのである。

 だが原克也裁判長は西岡被告らを「免責」した。法廷で代読された判決理由要旨によれば「各表現は、公共の利害に関する事実について専ら公益を図る目的で行われた」「各事実について、その重要な部分が真実または真実と信ずる相当の理由…の証明がある。かつ、意見ないし論評の域を逸脱したものでもない」という。

 だが本当にそうか?判決は西岡被告が植村氏を「捏造記者」とした@金学順さんが妓生に身売りされた経歴を知りながら記事に書かなかったA義母の裁判を有利にするため、意図的に事実と異なる記事を書いたB「金さんが女子挺身隊として日本軍に強制連行された」と、意図的に事実と異なる記事を書いた、の3点について判断を下した。

 判決は@、Aの西岡被告の「真実性」を否定した。だが「推論として一定の合理性がある」と、真実相当性を持ち出して免責した。さらに最大の問題はBで、いきなり「真実性」を認めたことだ。つまり原裁判長は何の根拠もなく「植村には(金さんが)騙されて慰安婦にされたとの認識があったのに、意図的に強制連行と書いた」と認定し、西岡被告を免責したのだ。

判例の基準逸脱

これについて弁護団は「声明」で、「植村氏が嘘と知りながらあえて書いたか否か、本人に全く取材せず『捏造』と表現した(西岡被告)を免責しており、従来の判例基準から大きく逸脱したもの」と、厳しく批判。「また、金学順氏自ら『私は挺身隊だった』と述べており、騙されて中国に行ったが、最終的には日本軍に強制連行され慰安婦にされたと述べていた。騙されて慰安婦にされたことと強制連行の被害者であることは矛盾するものではない」と指摘した。また、裁判後の記者会見で弁護団の一人は「裁判所の認定は真実をねじ曲げ植村氏だけでなく「慰安婦」制度の被害者の尊厳をも踏みにじった」と、強い怒りを表明した。

10月10日 札幌結審

一方、札幌訴訟控訴審は7月2日、札幌高裁で第2回目の口頭弁論が行われた。裁判長が人事異動で交代し、新裁判長の冨田一彦・部総括判事(前神戸地裁部総括判事)の下、審理更新手続きと提出証拠の確認の後、植村氏が再度、意見陳述。「証拠をきちんと検討し、公正な判決を出していただきたい」と改めて訴えた。また、弁護団は一審の問題点を指摘した計3通の意見書・陳述書をもとに一審判決の取り消しを求める準備書面の要旨を説明。さらに弁論終結を求める櫻井側弁護団に対して弁論続行を求め、@東京、札幌両地裁判決に共通する問題点への主張書面A梁順任さん陳述書の補充書面提出を表明。

冨田裁判長の裁定で、次回口頭弁論を10月10日午後2時半から開き、その日に結審との日程が決まった。

歪んだ歴史観正せ

植村訴訟の札幌、東京両地裁は、ともに植村氏への「捏造記者」攻撃は名誉毀損だが、謝罪、賠償を免責するとの「不当」判決を下した。だが裁判では真の「捏造者」が櫻井、西岡両被告だったことが暴かれた。「問われているのはこの国のデモクラシーの根幹。だから怒りは静かです」。判決後、植村氏はこう述べた。両地裁の判決は「従軍慰安婦」を「公娼制度の下で戦地において売春に従事していた女性」と記述した。そこにあるのは「慰安婦」制度が被害者がいる強制売春だということを無視した「歪んだ歴史観」そのものだ。闘いはまだ続く。

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月30日

【編集長EYE】 武村元官房長官 会見の心構えを語る

 新聞労連は6月下旬に東京都内でシンポジウム「官邸会見の役割を考える」を開いた。

 このシンポには菅義偉官房長官と東京新聞社会部・望月衣塑子記者との官邸バトル≠ェ背景にある。これの波紋は大きかった。官房報道室長が内閣記者会に望月排除≠ほのめかすような申し入れをした。これに対して新聞労連などマスコミ労組は報道の自由を制限し、国民の知る権利を阻むと官邸前で抗議行動を展開。シンポはこの問題を広く知ってもらうため企画された。

 現在、菅長官との会見は平日の午前11時と午後2時の2回実施されている。金曜日の午後は記者会に非加盟だが、特定の雑誌記者やフリージャーナリストが出ている。

 シンポに出席した細川護熙内閣(93年8月から94年4月)で官房長官を務めた武村正義さんは「私の頃は2回の会見に加えて記者懇談会を午後3時と夕方に行った。1日に4回記者とお付き合いした」と振り返った。

 続けてこう言った。

 「官房長官は政府の広報官です。情報を隠さない∞捏造しない∞身構えない≠モットーに会見に臨んだ。従って知らないことは『知らない』と答え、答えられないことは『答えられない』と言った。質問の制限や拒否は官房長官の姿勢としてよくないと思っていた」

 加計学園疑惑で「総理のご意向」と書かれた政府の内部文書を菅官房長官は「怪文書」と打ち消したが、これについても語った。

 「あるものを隠すという発想は取らなかった。クロをシロと言いくるめるウソを繰り返すと政府は信頼を失う。そういうことはしませんでした」

 同じくシンポに出席の毎日新聞政治記者30年・与良正男さんによると、官邸側はこちらの都合の悪い話を報じない新聞・テレビがあると自信を深めている。状況を打ち破る糸口はあるのか。

 「(望月記者のような)気概のある人が多く出てくれば、政治は変わると思う」(与良さん)

 そうなればいいのだが……。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月07日

【支部リポート】 香川 出撃の空から遺書を投げた学徒 西日本放送「海は知っている」=刎田鉱造

5月12日に例会を持った。RNC・西日本放送が4月28日に放送した番組「海は知っている」〜詫間海軍航空隊〜をみる。昭和18年6月に水上機の実機訓練基地として設置された詫間海軍航空基地(香川県三豊郡詫間町)で20年4月から5月にかけて特攻戦死者57人を数える歴史を掘り起こした番組だ。地元出身の2人の大学生が特攻に出撃させられる。家族の思い、出撃の空から実家近くに遺書を投げ落としていった学徒兵の姿などを丁寧に描いて感動を呼ぶ。

 跡地は現在、化学会社や香川高専詫間校の敷地になっており、いまの若者たちの戦争してはいけないという声、語り継いでいくことの大切さの訴えで締めくくっている。

 出撃機はフロート付きの水上偵察機でとても体当たり攻撃に適した機体ではない。最後には機体がなくなって練習機までかり出したという。そういう機体で敵地に向かった若者たちの思いは実家の寺に残した長い遺書、本堂の端から端までの巻紙に毛筆でしたためたものににじみ出している。

 映像でコメントをしている証言者の大半は80代以上だ。もういましか実体験者の話を聞く機会はない。県内の戦争遺跡、体験を記録したものをライブラリー化する。足りないものを掘り起こすことを課題にして、力を注ぎたい。

刎田鉱造

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
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2019年07月05日

【沖縄リポート】 ジュゴンの死因を明らかに=浦島悦子

 去る3月18日、今帰仁村運天漁港に死体となって漂着し、現在、今帰仁漁港冷凍冷蔵施設に保管されている雌のジュゴン(個体B)の解剖が近く行われるという情報を受けて、私たち「北限のジュゴン調査チーム・ザン」と今帰仁村民有志は、死因究明がきちんと行われるよう「解剖の責任主体・解剖行程・費用の内訳の開示、結果の公開」などを求める要請書を6月3日、環境省・沖縄県・今帰仁村に送付した。

翌4日付『琉球新報』は、解剖について5月27日の今帰仁村議会臨時会で関係予算18万5千円が可決されたと報道したが、金額があまりに低いことに疑問を持った私たちは、議会議事録を調べてみて驚いた。それによると、採択されたのは「ジュゴン標本化事業」の補正予算であり、その内訳は「標本化に向けての監修アドバイザー」としての県外大学准教授の報償費2万円と旅費10万7千円、ジュゴンを保管している施設の賃貸料及びジュゴンの移動費のクレーン車の使用料5万7千円となっている。つまり、今帰仁村の予算は解剖後の標本化のためのものであり、「死因究明のための解剖」の予算ではないことが判明したのだ。

 同じく4日の報道によると、個体B漂着の4日前、沖縄防衛局は周辺海域(辺野古埋め立て土砂運搬船も航行する海域)に設置した水中録音装置にジュゴンの異様な鳴音を「通常を大きく上回る頻度で確認」していたが、3日に開いた環境監視等委員会で、ジュゴンの死に新基地工事の作業船の影響はないと報告した。

 しかし、防衛局が公開した資料を見ると、民間船のAIS(船舶自動識別装置)は生データが表示されているが、土砂運搬船の航路は生データではなく防衛局が作図したものであり、「影響はない」ことを裏付けるものではない。海上抗議行動メンバーによると、土砂運搬船は、抗議行動に察知されないよう、最近はGPSの電源を切って運行しているという。

 死因をうやむやにしたまま解体・標本化されてしまうのではないかと危機感を持った私たちは10日、前記3者宛てに「拙速な解剖を行わない」よう求める緊急要請を行った。しかし、2回の要請にも環境省はなしの礫。真相を闇に葬らせてはならない! 

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
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2019年07月04日

【若い目が見た沖縄】 借金苦 ブータン留学生 業者「月25万」と騙す=竹内章浩

JCJは30歳以下の若者を沖縄に派遣し、自由なテーマで取材してもらう「沖縄特派員」を今春、始めた。前号に続き、北海道支部の公募で選ばれた北広島市の通訳、竹内章浩さん(写真)の報告を紹介する。

    ◇

「沖縄の人々は温かく、気候にも恵まれていた。東京では毎日電車に揺られ、勤務時間は6時間なのに、通勤時間を入れると計11時間。東京での生活は『真の』日本というものを味わっている気がします」

2月、沖縄で会ったブータンからの留学生アイリーン(仮名)は今、東京で「沖縄にとどまるべきだった」と後悔していた。2017年、ブータン政府が始めた「学び・稼ぐプログラム」。700人超が来日し、全国の日本語学校などに送り込まれた。アイリーンと友人二人は沖縄行きを指示された。

「日本へ行き、日本語を勉強すれば大学、大学院に進めるし、正規雇用先を見つけ月25万円稼ぐことも容易である」。3人は、来日前のオリエンテーションでこう聞かされたという。アイリーンはブータンの大学を卒業したが、国内なら初任給は7万円前後だ。

留学プログラムはブータン政府のお墨付きだが、業者が介在し、日本へのビザ申請や、日本語学校の学費などとして、約150万円を徴収する。3人はブータンの銀行から借りて、業者に払った。日本の知識がほとんど無く、高い給与ですぐ返済できるという言葉を鵜呑みにした。那覇の別の男性学生も、来日して1年が経つが、返済は借金の5%にも満たないと話した。

バイト先は、コンビニの店員、コンビニ向けの弁当製造工場、ホテルでの清掃、日本語ができる場合は居酒屋だ。バイトを2、3か所掛け持ちし、生活費と学費を稼ぐのがやっとで、肝心の日本語の勉強に費やす時間はほとんど無い。正規雇用や進学の道はますます遠のく。

「今は我々のビザも切れてしまった。業者はとりあえず我々の学生ビザを延長するために、東京の私立大学に入学するのが唯一の解決策と言っている。だれも彼らの言うことに従いたくはない。でも、おそらく彼らの言う通りだ」。その入学先が、行方不明学生で問題となっているあの東京福祉大学だった。

ある日本語学校元職員は、学生の囲い込みに問題がある、と言う。出稼ぎ目的の学生をかき集め、日本語学校から系列の専門学校、大学などに進学させ、稼ぐ。

沖縄でブータン留学生を取材したのは、北海道でも、あるブータン留学生から「約束と違う。だまされた」と聞いていたからだ。沖縄、東京、北海道――。各地で現在進行形のこれらの問題は、それほど世論の関心を呼んでいない。日本がグローバル化の流れに乗っていくのなら、日本に来てよかったと思われるような環境作りが急務だ。 

竹内章浩

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
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