2018年07月12日

《鳩山元首相インタビュー2》 国交正常化なしでは拉致解決せず 圧力一辺倒外交は破綻 東京五輪を対話のチャンスに=橋詰雅博

――日本人拉致問題の解決法は?

 トランプ大統領や韓国の文在演大統領に頼っていてはダメです。安倍晋三首相と金正恩委員長がお互い心を開く状態にならない限り、本音は出ません。ではどうすればいいのか。金委員長は「いつでも話し合いましょう」と言っているのだから、日朝会談を実現する。会談を通じて国交正常化に向けて話を進め、信頼を高める過程で、拉致問題をきちんと取り上げる。そうすれば明快な方向性が出てきます。

日本に分断の責任

 そもそも朝鮮半島の南北分断は、日本が半島を植民地支配(1910年から45年の35年間)したことに起因している。日本に分断の責任があります。世界はそういう立場から日本を見ている。韓国も北朝鮮も日本のおかげでこうなったという気持ちがある。国家の分断の歴史をつくった日本の責任は重い。お互い過去の歴史を冷静に見ながら拉致問題を話し合う。結局は、日朝国交正常化することが拉致問題の解決につながる。

――安倍首相の外交政策をどう評価していますか。

 安倍首相は、「大日本主義」すなわち日本を強い国家にしたいという願望がある。敵視する中国と北朝鮮の脅威論を高め世論を煽る一方で、日米同盟を強化し、自衛隊の増強と配備を拡大、自衛隊を海外派遣するため安保法制を成立させた。私は安倍首相が描く大日本主義に真っ向から反対です。武力による平和はあり得ない。中国も北朝鮮も日本に侵略する可能性はゼロです。しかし、とくに北朝鮮の脅威がなくなると自衛隊増強の理由などが成り立たないから、北朝鮮を悪者と決めつけ、「対話の時代は終わった」とか「最大限の圧力をかけ続ける」と経済制裁を含む圧力の強化というメッセージを発信している。諸問題を対話路線で解決を目指す世界の潮流から安倍外交はかけ離れている。

 南北首脳会談に端を発し中国、ロシア、アメリカが朝鮮半島の平和のため対話路線にのっている。支持率のアップを狙い拉致問題に取り組んでいるというポーズだけのPRはもう止めて、安倍首相は日朝会談に踏み込むべきです。

日中韓五輪会議を

――提唱する「東アジア共同体」構想にどんなプラスがありますか。

 この地域における経済の発展は重要だが、それ以上に不戦共同体≠構想でイメージしている。今までは北朝鮮はそこから抜けていた。米朝首脳会談によって、北朝鮮が不戦共同体に組み込める環境づくりの第一歩になった。ようやく方向性が見えてきた。

――2月の平昌冬季五輪に南北統一チームが参加し盛り上がった。20年の東京五輪、22年の北京冬季五輪に北朝鮮をどう組み込むか重要になってきますね。

 昨年11月末にヨーロッパでギリシャのパパンドレウ元首相と会ったとき、彼から「来年から4年間でアジアでは3回もオリンピックが開かれる。北朝鮮と対話するチャンス」とアドバイスされた。ギリシャはオリンピック発祥の地ですから五輪への思い入れが強いので、そういう言葉が出てきたのでしょう。私のおじぃちゃんの一郎が文部大臣とき、「スポーツ選手は、なみの外交官よりも外交官だ」と評価していたことをどこかの本で読んだことがある。米中関係の改善につながったピンポン外交=i1971年、名古屋市で開かれた世界卓球選手権に出場した中国選手が米国選手らを自国に招待)や今年の平昌五輪の成功を見ると、そう思います。日中韓の担当者レベル会議を設け、北朝鮮とどう協力するかなどを話し合い、平和の祭典に相応しい五輪にしてほしい。日本政府に動いてもらいたいですね。

人の命奪ったのに

――安倍首相夫妻が深く関与するモリカケ疑惑をどう思いますか。

 誰が見ても安倍首相はウソをついている。自身も分かっているけど、長く総理を続けたいから粘り腰を発揮している。私は失敗した人間だが、総理在任中、ウソは1回もついていない。それだけは言える。しかも森友学園問題では近畿財務局職員が自殺している。自殺者まで出ているのに総理を続けたいのか。人の命を奪ったという厳粛な事実をどう受け止めているのか。私なら、申し訳ないと毎日さいなまれる。潔く、総理を辞めるべきです。そうしないと日本の風土にとってよくない。子どもたちが大きくなっても、平気でウソをついてもいいという感情が頭の中に残ります。

 官僚も立身出世が目標だから官邸のいいなりです。国民不在の政治と行政に成り下がっている。こうした事態に陥らせた責任は、国民の信頼を失いかけているメディアと自己保身に走る与野党にもあります。

聞き手 橋詰雅博 河野慎二

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年6月25日号
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2018年07月10日

《鳩山元首相インタビュー1》 米朝首脳会談 半島非核化へ第一歩 「ディール外交」功を奏す=橋詰雅博

 トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との史上初の米朝会談は、「朝鮮半島の完全な非核化」に向けた具体策がなく、日本人拉致問題の前進もなかった。中身に乏しい会談だったが、歴史的な米朝首脳の対面は思わぬ成果を生み出し、米朝関係は改善に大きく踏み込んだ。東アジアの平和と安定を目指す「東アジア共同体」構想を唱える鳩山友紀夫元首相(71)は、本紙のインタビューに応じ、歴史的な米朝会談などについて語った。(橋詰雅博JCJ事務局長兼機関紙編集長)

米本土に攻撃可能

――米朝首脳会談をどう見ますか。

 会談に向かわせた大きな要因になったのは、北朝鮮が昨年11月に発射した大陸間弾道ミサイル「火星15号」(ICBM)の成功です。

 すでに核実験はうまくいっていたし、これでミサイルもアメリカ本土まで届くということが証明された。今までアメリカの核兵器やミサイルの威力におびえていた北朝鮮は、この成功でアメリカ本土を攻撃できる核弾頭搭載のミサイルを用意できたわけです。本当に届くかどうかわかりませんが、北朝鮮はアメリカと対等に交渉できると考えた。つまり自分たちも非核化を追求するが、アメリカも朝鮮半島から手を引いてほしいという交渉力を持つことで、非核化が現実的な意味をもつ出来事だったと思います。このことで、もしかしたら大きな動きが出てくると予測していたら、北朝鮮は翌年2月の平昌冬季五輪に参加し、アッという間に4月の南北首脳会談まで進展した。

 北朝鮮が金日成時代からほかのことを犠牲にしてまでずっと核・ミサイル開発を進めてきたのは、アメリカとの交渉能力を持つという一点だけだった。

一朝一夕は無理だ

――アメリカの政治状況の変化も要因に?

 戦争を仕掛け利益を求める軍産複合体にのるヒラリーが大統領だったら、米朝首脳は実現しなかったでしょう。トランプ大統領は軍産複合体と距離を置いている。アメリカファーストによって政治面でも経済面でも世界をリードしていくにはディール(取引)が必要とトランプ大統領は考えている。

 得意のディールで史上初の米朝会談をうまく乗り切れば、11月の中間選挙で勝てるし、2020年の大統領選での2期目の勝利を得られるという戦略を立てていたと思う。大統領がトランプだったから、アメリカも歴史的な会談のチャンスをつかむことができた。

――米国の方針「朝鮮半島の完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)は実現できるのでしょうか。

 1回の首脳会談でCVIDの達成は無理です。完全な非核化は一朝一夕に行かない。首脳会談はこの先も開かれる。北朝鮮が対米交渉能力を持ったということは、朝鮮半島を核のない平和な状態にしたいという思いも北朝鮮にあるのは確かだ。アメリカと北朝鮮がどうやって核兵器や武力の両レベルを下げていくかが課題です。交渉は時間かけて段階的にステップを踏んで進めていくべきです。おそらく非核化にメドをつけるには数年かかるでしょう。

《鳩山元首相インタビュー2》(12日付)に続く

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年6月25日号
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2018年06月28日

米軍基地 置きたいのは誰か 沖縄から見る米朝急接近=黒島美奈子

 戦後73年、沖縄に駐留し続ける在沖米軍。駐留の理由や根拠はその時々で変化してきた。

 最初の米軍基地は1945年4月1日、沖縄島の読谷村に上陸した米軍が南北へ侵攻しながら日本軍の飛行場跡や、住民の土地を次々と奪い建造された。理由は間近に控えた日本本土攻撃の拠点として。現在、日米両政府が名護市辺野古へ移設するという米軍普天間飛行場(宜野湾市)が造られたのもこの時期だ。

 戦後は、朝鮮戦争やベトナム戦争の出撃拠点として、沖縄の米軍基地はさらに拡大していった。同じころに本土では米軍基地の反対運動が激化。国民の反発を避けるためいくつかの基地機能が沖縄へ移転された。

「地理的優位性」

日本復帰後は、日米が結んだ「安全保障条約」によって米軍の沖縄駐留が継続することに。日本防衛の「地理的優位性」が沖縄にあると、日米が喧伝するようになったのはこのころからだ。

 しかし、冷戦が終わるころにはこの「地理的優位性」に疑義を唱える声が増える。そんな中で発生したのが1995年の米兵による少女暴行事件だった。事件をきっかけに日米は普天間飛行場の返還を宣言。沖縄にとって史上初の米軍基地縮小の道筋となる米軍再編ロードマップも誕生した。消えかけた駐留根拠。そこに再び息を吹き込んだのが北朝鮮のミサイル問題である。

 元内閣官房副長官補の柳沢協二氏は「軍隊をどこに置くかは財政的、政治的な理由で決まる」と言う(2018年4月28日付『沖縄タイムス』)。「米軍が対北朝鮮や対中国のために沖縄にいなければならない軍事的理由は元々ないが、それを説明する論理として脅威論が使われてきた」 

 脅威論を使ってきたのは日米両政府だ。日本や米国本土に一気にミサイルが飛んでくる危険性の高まりを沖縄への米軍駐留の根拠と明示。2017年度の防衛白書では北朝鮮などに「相対的に近い(近すぎない)」位置にあるという表現で沖縄の地理的優位性を強調した。

 だがこの根拠には疑問も湧く。なぜなら米国を敵対視する北朝鮮が、日本を攻撃対象とする理由として米軍基地の存在を挙げたからだ。それは、米軍の駐留根拠である日米安保こそが、戦争を誘発する危険性があることを示している。

「ほかの任務」とは

 米国と北朝鮮の首脳の歩み寄りを演出した6月12日の米朝首脳会談。終了後の記者会見でトランプ米大統領は、在韓合同軍事演習の中止に言及した。会談によって北朝鮮の脅威が多少なりとも薄れたことを示唆する発言で、日米が主張する沖縄への米軍駐留の根拠が揺らぎ始めた瞬間だった。

 ただ、在沖米軍四軍調整官のニコルソン中将は4月、米朝首脳会談を前に記者会見し、北朝鮮の非核化が実現した場合でもほかの任務への対応を理由に駐留は必要との認識を示した。会談の成果が沖縄駐留に与える影響を見通したかのような発言だった。

 ニコルソン氏が言う「ほかの任務」とは何か。東アジアの安全保障を盾に、米韓合同軍事訓練中止に即座に懸念を示した小野寺五典防衛相の態度がそれを暗示している。脅威の消失を理由に引き揚げようとする米軍を引き留める日本の姿である。

 沖縄に米軍基地を置きたがっているのはほかでもない日本だ。米朝首脳会談で見えたのはそんな事実だった。

(沖縄タイムス社会部副部長兼論説委員)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年6月25日号
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2018年06月27日

他国頼み 無策の証明 拉致問題 安倍「司令塔」発言に唖然=蓮池透

米朝首脳会談の実現は、懸案の日本人拉致被害者の解決につながるのだろうか。これについて、北朝鮮による拉致被疑者家族連絡会(家族会)元副代表の蓮池透さん(63)に寄稿してもらった。

☆ ☆

 昨年まで米朝関係は緊張を極め、「開戦前夜」「Xデーはいつか?」とまで言われるほどであった。しかし、今年に入り東アジアの情勢は劇的に変化した。4月27日ついに文在寅大統領と金正恩国務委員長による首脳会談が実現し、「板門店宣言」が発表された。さらに、米朝首脳会談も実現するなど、朝鮮半島の非核化、朝鮮戦争の終焉へ向けて一挙に南北融和が進み、世界は圧力局面から対話局面となったのである。そうした中で日本は「蚊帳の外」「周回遅れ」と誰もが認めているにもかかわらず、安倍晋三首相は、ひとり自覚もなくただ「拉致問題の解決」を唱えている。



首相は言行不一致

 以前から、拙著やさまざまな機会を通じて、安倍首相は拉致問題を政治利用する気はあっても、本気で解決する意欲などない、と訴えてきた。日本政界の現況を見れば、噓が公然とまかり通る憂慮すべき状態であり、その元凶である安倍首相は、政治家としての信念や矜持など全くない、ただ権力にしがみつくだけの言行不一致の人物だと考えている。

米朝首脳会談の知らせを聞いて焦った安倍首相は、4月12日に訪米し、トランプ大統領に会談で拉致問題を取り上げるよう要請した。しかし、拉致問題はもとより日本と北朝鮮の間の固有の問題である。それを「アメリカ・ファースト」を標榜するトランプ大統領が拉致被害者それも日本人を救出するだろうか。本来、北朝鮮側との独自交渉を早急に展開し解決すべきだった問題を、主体性や当事者意識を持つことなく他国頼みにするしかなかった。これこそ、日本がお手上げ状態で、これまで安倍首相がいかに無策であったかという事実の証明である。

 安倍首相が講じた手段は、北朝鮮に対する経済制裁などの「圧力」のみ。だが経済制裁により、北朝鮮がもがき苦しみ自ら拉致被害者を差し出してくる―この理屈は、幻想に過ぎない。そのツケが、現在の「蚊帳の外」状態という形で回ってきているのである。しかし「北朝鮮が圧力に屈した」と強がりの声が聞こえてくる。ただ呆れるばかりだ。極めつけは、家族らの集会で自分が拉致問題解決の「司令塔」だと発言した。遥かに厚顔無恥の域を越えており言葉がない。

 ここで大きな疑問が湧いてくる。安倍首相は、果たして東アジアの平和を望んでいるのだろうか、と。昨年の衆院選挙で、戦中を想起させる「国難」という言葉を使い「北朝鮮の脅威」を煽り勝利したのだから、北朝鮮は「脅威」でなくては困るのであろう。



独自ポリシーなし

 「祭りのあと」の状況で安倍首相は、拉致問題にどう対処するのか。「対話のための対話は意味がない」と主張していたのに、トランプ大統領が対話だと言えば「支持する」、首脳会談中止にも「支持する」、米国の言うことは何でも支持である。独自のポリシーなど微塵もない米国追従のなせる業である。しかし、いい加減に圧力一辺倒から対話へと路線変更することが基本であり、日朝首脳会談しか手段はない。ただし、「備え」がなければ、「全員返せ」「解決済み」の水掛け論で終わってしまうのは自明だ。そこには、拉致被害者に関する「インテリジェンス」が必須なのである。「解決済み」とは言わせない強力な「インテリジェンス」だ。

 果たして、安倍首相はそれを保持しているだろうか。そこは「外交の安倍」、当然「備え」はあるはず。1回目の小泉訪朝からすでに16年も経過しているのだから。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年6月25日号
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2018年06月25日

《編集長EYE》 反撃パワーがすごい韓国の放送局=橋詰雅博

 安倍晋三首相は陰に陽に放送局に手を突っ込み自分に都合のよい報道をさせようとしている。突然言い出した放送法4条撤廃はその代表格で、政権寄りの番組を増やす狙いがあった。政府の規制改革推進会議では反対意見が続出し、安倍首相に4条撤廃見送りを答申した。  

 しかし、首相は撤廃方針案を断念したわけではない。再び方針案を持ち出す危険性がある。

 政権批判報道を封じ込めるため放送局支配≠ニいう悪だくみをめぐらすのは時の権力者の常だ。民主化から31年たつ韓国でも、李明博大統領ら保守政権が強権を発動して放送局を占領≠オた。この言論統制に抵抗する記者やプロデューサーを中心にしたドキュメンタリー映画「共犯者」を都内で見た。李大統領(2008年から13年)は公共放送のKBS(韓国放送公社)と公営放送のMBC(文化放送、公営財団・放送文化振興会が大株主)にお友達をトップに送り込んで、政権批判の番組を廃止に追い込んだ。KBSとMBCの労働組合は抗議の声が上げたが、組合員は解雇、配置転換、停職、出勤停止、減給などの懲戒処分を受けた。

 権力と手を組み放送局を台無しにした「共犯者」元社長・幹部をカメラの前に立たせた崔承浩監督は、MBCの調査報道番組プロデューサーとして活躍したが、12年に不当解雇された。上映後、崔監督は 「権力による無慈悲な弾圧に対して言論の自由の確保と、市民からの『キレギ』(キジャ=記者とスレギ=ゴミの合成語。マスゴミとかゴミ記者の意味)と蔑まされたメディアの信頼を回復させるため私たちジャーナリストは闘ってきた」と強調した。

 長期ストライキなどの約9年間に及ぶ闘争でポチ社長≠追放し、KBSもMBCも正常な放送局にやっと戻る。崔監督は昨年末にMBC社長に就任した。昨年5月に革新系の文在演大統領が誕生したことも背景にある。

 ともあれ韓国放送局の権力への反撃はすさまじい。


(JCJ事務局長兼機関紙編集長)



JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年6月25日号
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2018年06月07日

改憲反対署名活動に不当な妨害 小金井署市民3人連行事件=橋詰雅博

 安倍晋三政権による憲法改正に反対する署名活動にブレーキをかけるようなイヤな事件が東京・小金井市であった。

護送車も来た

 事件のあらましはこうだ。

 ―小金井市に在住する70代から80代の市民3人が3月31日午前10時30分ごろ、賃貸マンションで戸別訪問を行い、インターホンを介して改憲反対の署名を要請した。また、留守宅のドアポストに署名活動にも触れている共産党の水上ひろし市議の市政報告を入れた。

 マンションは3階建てだが、2階と3階はメゾネットタイプで2階の室内階段から3階に上がる。部屋は1階と2階に9戸ずつある。正面の出入口を挟む左側と右側の各壁には〈ビラ配り、押売り、その他許可のない方の立入りを禁止します。管理者〉などと書かれたプレートが貼られている。ただし、出入口には門扉はなく、2階へは外階段から直接上がれる。訪問者をチェックする管理人もない。

 3人は別の賃貸マンションで署名要請の活動した後、帰り道の途中、問題のマンション前にいた私服警察官2人に呼び止められ「このマンションの敷地に入ったでしょう。ビラ禁止の張り紙を見てください」などと3人に言い、マンション住民から100番通報があったことを告げた。 

 11時すぎ、パトカー3台に護送車1台が到着。動員された警察官は制服と私服を合わせ10数人で、3人は「住居侵入罪」容疑で連行され、各人パトカーに乗せられ小金井警察署へ。

 水上市議から連絡を受けた東京都立川市の三多摩法律事務所に所属する2人の弁護士が13時30分ごろ、小金井署で3人と面会。市民と弁護士が小金井署から出たのは14時20分ごろだ―。

調書署名せず

 事情聴取された81歳の男性Aさんはこう言う。

 「警察官に連行されたのもパトカーに乗せられたのも初めて。あのマンションは誰でも自由に出入りできる構造になっている。『住居侵入』と言われ、ビックリした。事情聴取はおよそ1時間行われ、調書にはサインも押印もしませんでした。というのは上がることできないのに『3階まで行っただろう』と強要し、ざっと目を通した調書に言ってもいないのに『昨年の10月ごろから計画を練っていた』と書かれていたからです。取調官は『もう一度警察にくるのは大変だろうからここで調書にサインしろ』と迫りましたが、共謀罪の適用も考えているのではと思い、拒否しました。同じく連行された2人に後日、法律事務所で会いましたが、2人とも『調書にサインしていない』と言っていました」

 小金井署を出る直前に3人に向かって私服警察官が吐いた「必ず(調書に)署名してもらう。もう一度署に来てもらう」という言葉が、Aさんの頭の中に鮮明に残っているという。

 「自宅の電話が鳴るたびに警察からの呼び出しかと思い、不安にかられ、ストレスがたまります」(Aさん)

 三多摩法律事務所の長尾宜行弁護士は「住居侵入罪にあたらない。署名活動は憲法21条1項に定める表現活動であり、警察の取り調べは人権侵害行為だ」と捜査を批判している。また警察の狙いについて、水上市議は「改憲反対署名活動を萎縮させようとしているのではないか」と推測する。

4回抗議行動

 不当連行された3人を支援するグループは、捜査の中止と3人への謝罪を求め小金井署前で今まで4回、抗議行動をした。16日には「守る会」も結成した。

 本紙の捜査をやめないのはなぜかなどの質問に対し、事件を扱う警視庁広報課広聴係は16日「小金井警察署において、適切に対応したものと承知している」と答えた。木で鼻をくくったような回答にとうてい納得できない。事件の行方をこの先も注視していく。

(JCJ事務局長兼機関紙編集長)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年5月25日号
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2018年05月30日

《編集長EYE》 自衛隊憲法明記で社会は変貌する=橋詰雅博

 安倍晋三首相が主張する自衛隊を憲法に明記する案が国民投票で過半数を占め改憲が実現したら、社会はどう変わるのだろうか。

 安倍首相は「何も変わりません」というが、これもウソだ。5月12日に東京・千代田区の弁護士会館で行われた「憲法改正と国民投票」と題した集会にパネリストとして参加した伊藤真弁護士(日弁連憲法対策本部副本部長)は、国民に認められたことを理由に自衛隊があらゆる場面で前面に出てきて、国内外の社会の空気がガラリと変わる危険性があると指摘し、こう述べた。

 「力がものをいい、寛容性に欠ける社会や異論・反論・批判を許さない社会に変貌する。また、大学の研究も企業も自衛隊との関わりを積極的、肯定的にとらえて推進しようとする社会になる。今の対米従属はさらに促進される。自衛隊を軍隊と見なす外国は憲法に軍隊を書きこんだことで、日本は好戦国になったと判断する。日本の軍拡を恐れるムードが国際的に一段と高まる」

 加えて防衛費の増加、自衛隊配備の拡張、軍需産業の育成、武器輸出の推進、自衛官募集の強化、国防意識の教育現場での強制などが実施される。かくして国防の名目で自由や人権が抑圧される国に落ちぶれる。

 徴兵制≠フ復活もあり得る。

 「ロシアに脅威を抱くスウェーデンは、徴兵制を今年復活させ、テロを警戒するフランスのマクロン大統領も徴兵制復活に意欲を示している。徴兵制は国家的な一体感の醸成には効果的です。ただし、日本では徴兵制という言葉は使わないだろう。『ふるさと守る体験学習』とか『助け合い技術習得訓練』などといった柔らかな言葉を持ち出して、悲惨さを打ち消すように誤魔化すはず。集団的自衛権行使容認を解釈改憲で堂々とやる安倍内閣なら、徴兵制違憲の解釈など一晩で変える」(伊藤弁護士)

 拠り所の文民統制も公文書改ざん、隠ぺい、破棄といった現実の政治を見てしまうと、幻想≠ノ過ぎない。

(JCJ事務局長兼機関紙編集長)
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2018年05月14日

【沖縄リポート】県民投票めぐり世論揺れる=浦島悦子

 辺野古新基地建設の是非を問う沖縄県民投票をめぐって県内世論が揺れている。経済界を含む「オール沖縄会議」の顔でもあった金秀グループ、かりゆしグループが、県民投票実施に向けた理解を得られないとして相次いで脱会したことは、多くの県民に動揺を与えた。
 県内の学者・学生でつくる「『辺野古』県民投票の会」が投票条例制定に向けた署名運動を5月から始めると発表(請求代表者の中には金秀グループの呉屋守将会長も)したが、かりゆしグループや県議会会派の中で唯一、県民投票に前向きな「会派おきなわ」は、知事発議の県民投票を求めており、推進派の中でも足並みがそろっているわけではない。
 他方、辺野古のたたかいの現場では県民投票に否定的な声が圧倒的だ。名護市長選の敗北以降、座り込み行動への参加者は明らかに減っており、辺野古崎浅瀬への最初の土砂投入に向けた護岸工事が日々進む中で、最大の課題は現場に少しでも多くの人を集めることと知事の埋め立て承認撤回だ。4月7日に座り込み現場で開かれた県民集会(この日は久しぶりに500人以上が参加、ダンプの搬入はなかった)で、安次富浩・ヘリ基地反対協代表は「県民投票をやっている時間はない!」と断言した。
 先の名護市長選で、政府の権力と金力によって投票行動がいかにゆがめられたかを見てきた私は、県民投票を楽観視できない。また、結果がどうあれ、政府は都合の良い民意しか「民意」と認めないだろう。
 この間、明らかになった大浦湾の(マヨネーズに例えられる)軟弱な海底地盤、活断層の存在などにより「工事は必ず途中で頓挫する」と土木技師の北上田毅さんは断言しつつも、不可逆的な自然破壊を食い止めるためには、少しでも早く工事を止めること、11月の知事選がきわめて重要だと訴える。知事選に向けては金秀・かりゆしグループも、翁長雄志知事再選に全力をあげることで一致しているが、翁長知事の健康状態も心配だ。
 そんな沖縄から「本土」を見ていると何とももどかしい。溜りに溜まった膿が次々に出てきているのに、国民の怒りが政権を倒すほどに盛り上がらないのはなぜ?沖縄を苦しめる安倍政権を一刻も早く倒してほしい…!
(浦島悦子) 
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2018年05月01日

《編集長EYE》 日本は「ギャンブル依存症大国」へまっしぐら=橋詰雅博

 安倍晋三首相は日本でのカジノ解禁に前のめりだ。カジノを「経済成長戦略」と言い放ち、2016年末にカジノ解禁推進法を成立させた。そして与党の公明党を抱き抱き込んでカジノ実施法案を4月末に国会に提出し、強行成立を目論む。同法案のポイントは日本人及び国内在住外国人を対象とした入場料は6000円、日本人の入場回数は週3回、月10回まで、設置は最大3カ所だ。

 パチンコ店があちこちにある日本は、ギャンブル依存症の割合は成人の3・6%と推定されている。欧米諸国の1%台に比べて突出して高い。そこにカジノが出現したら、入場回数制限などの規制があっても、ギャンブル依存症がさらに増えると懸念されるのは当然だ。

 カジノで思い出すのは大王製紙前会長の井川意高さん。マカオやシンガポールのカジノで丁半バクチと同じようなルールのトランプゲーム・バカラの虜になった彼は、なんと106億8000円もスッてしまった。借金を返済するため子会社から金を借り入れ、特別背任容疑で11年11月に東京地検特捜部に逮捕される。最高裁で懲役4年の実刑判決が確定し、16年12月に仮出所。昨年10月に刑期が満了した。著書「熔ける」(幻冬舎文庫)によると、数百万円から20億円まで勝つなど〈億単位の勝利を収めた成功体験は忘れがい快哉をもたらした〉ことが破滅まで突き進んだ原因と書いている。

 先月取材した鶴見大学名誉教授でカジノ誘致反対横浜連絡会共同代表の後藤仁敏さん(歯学博士=解剖学)は「バクチでの勝利の味は頭から消えない」と前置きした上で、理由をこう述べた。

 「バクチで勝つと脳から快楽物質≠ェどんどんと出ます。世の中で自分ほど幸せな人間はいないという陶酔感にひたる。負けた記憶は消えるが、陶酔感はいつまでも残る。だからバクチにのめり込んで、ギャンブル依存症に陥る」

 カジノ解禁で日本はギャンブル依存症大国≠ヨまっしぐらだ。

橋詰雅博(JCJ事務局長兼機関紙編集長)


JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年4月25日号



 
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2018年04月20日

〈沖縄リポート〉名護新市長、答弁を職員にまる投げ=浦島悦子

 2月8日に就任した名護市の渡具知武豊新市長は早速13日に上京し、公約実現のために「財政面をはじめ政府からのご支援を賜るよう特別のご高配」をお願いする「要請書」を菅義偉官房長官に手渡した。要請は、学校給食費の無料化から下水道整備に至るまで十数項目にわたる。自助努力で築き上げてきた稲嶺市政から180度の方向転換だが、その極めつけが「国から優秀な人材を複数名確保(総務省、経済産業省、国土交通省等)」の要請だ。

 3月5日から定例の名護市3月議会が始まった。渡具知市長が冒頭の所信表明演説で何を語るのか、「官邸の名護出張所」にしないために「監視」しようと傍聴席を埋めた市民らは、それを聞いてあっけに取られた。基地問題については「県と国の裁判の行方を見守る」という以外、施政方針のほとんどが稲嶺進前市長のコピーだったからだ。選挙で公約した(そして、それで多くの票を集めた)はずの学校給食費や子ども医療費、保育料の無料化については一言も触れていない。
 
 12日から始まった一般質問では、稲嶺市政を支えてきた野党議員たちの鋭い質問に市長は答えきれず、丸投げされた各部長らが四苦八苦する姿が目立った。
 
 3月13日、沖縄県が政府による辺野古・大浦湾の岩礁破砕の差し止めを求めた訴訟で、那覇地裁は実質審理に入らず県の訴えを却下した。「三権一体」と言われる現状では予想内の判決だが、「行方を見守る」としていた渡具知市長がいつ「容認」を打ち出すのか、政府は待っているのだろう。しかし彼自身、議会答弁では「(市長選の結果は)基地を容認したものではない」と言わざるをえなかった。

 辺野古の現場では1日に300台以上のダンプや生コン車がゲートに入り、加えて海上輸送による石材搬入も加速している。政府は工程を無視して浅場の護岸工事を先行させ、いちばん埋め立てやすい工区を5月中に囲い込み、6月には埋立土砂を投入すると発表した。
 土砂投入すれば県民はあきらめるとの目論見だろう。その前に翁長知事が埋立承認撤回に踏み切ってほしい。私たちはそれを全力で支える。――それが、辺野古の現場で頑張っている県民の切実な声だ。

JCJ月刊機関紙月刊「ジャーナリスト」2018年3月25日号
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2018年04月02日

カジノ誘致 横浜市「白紙」に転換 ドン≠ェ反対の急先鋒 市民団体共同代表に聞く=橋詰雅博

 2016年12月に成立のカジノ解禁推進法に続き安倍晋三内閣は、カジノ実施法案を4月にも国会に提出する構え。日本人と国内在住外国人を対象とした入場料は2000円とか入場回数を1週間のうち3回まで、設置を5カ所に拡大などの案が提示されている。
 しかし、ギャンブル依存症への対策が心もとないなど批判の声は相変わらず強い。各種世論調査でもカジノ反対が圧倒的に多い。それでも安倍内閣はカジノ実現への強行突破を狙う。菅義偉官房長官(神奈川2区選出)のおひざ元の横浜市も誘致に名乗りを上げている。4年前に結成のカジノ誘致反対横浜連絡会共同代表の後藤仁敏さん(鶴見大学名誉教授・歯学博士=71)にいまの状況などを聞いた。

――林文子横浜市長(71)は2014年初頭にカジノ誘致推進を表明したが、方針は変わっていないのか。
 林市長のあの表明にはビックリ仰天しました。だが、3選を目指した昨年7月の市長選では、2人の対抗馬がカジノ誘致反対を訴えたので、彼女は「白紙」に転換。今まで通りカジノ誘致推進を主張したら当選が危ういと思い方針を変えた。なにしろ横浜市民の多くはカジノ反対ですからね。林市長は当選後も「白紙」の姿勢を変えていません。菅官房長官の圧力もあるだろうから、カジノ誘致推進に戻る可能性はありますよ。

――カジノの有力候補地はどこですか。
 市が再開発を目指す山下ふ頭が最有力地。しかし、港湾運送業者でつくる横浜港運協会の藤木幸夫会長(87)は「山下ふ頭にカジノはつくらせない」と宣言した。「横浜市に土地を売るな」と港湾業者にハッパをかけている。赤旗インタビュー(今年1月25日付)でも「山下ふ頭はばくち場ではありません」とキッパリ答えています。14日には同協会主催で「ギャンブル依存症を考える」をテーマにした公開勉強会も開いた。藤木会長は横浜エフエム放送社長や横浜スタジアム会長も務めるいわば横浜のドン=Bそのような人が相当な覚悟でカジノに反対しているので、山下ふ頭へのカジノ誘致は困難な状況です。横浜みなとみらい21(MM21)地区も候補地ですが、藤木会長は真面目に働いた人が報われる社会をつくるという考え方。従って根っからカジノに反対だと思います。

――政府の実施法案をどう見ますか
 入場者がギャンブル依存症やすってんてんになるのを防ぐため賭ける金額に制限を設けるのが一番重要だが、実施法案にはありません。そもそも併設されるホテルや国際会議場、イベント会場などの運営費の80%は、カジノの収益で賄われる。当然、収益アップが必要ですから、入場料はモデルとしたシンガポールより6000円も安く設定し、金額の制限はせず、ATMが設置され金融機関の出先もあってお金が容易に引き出せる。カジノ不要を唱える静岡大の鳥畑与一教授は「毒性の強いカジノ」と指摘しています。私もそう思います。

――反対運動をどう展開しますか。
 連絡会結成以降、不定期ながら市役所前でカジノ誘致に反対するスタンディング宣伝≠行っている。20日にも実施。累計約3万人の誘致反対署名を市役所に提出しています。スタンディング宣伝や署名活動は今後も続けます。林市長がカジノ誘致撤回を表明するまで粘り強く活動します。

聞き手 橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年3月25日号
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2018年03月27日

《編集長EYE》 電通が憲法改正国民投票を支配する=橋詰雅博

 2017年に新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、インターネットなどで費やした日本の総広告費は約6兆3900億円で、6年連続プラス。業界最大手の電通は国内売上高が1兆5600億円、海外も含む連結ベースの総売上高は約5兆2000億円だ。電通の総売上高は日本の総広告費の8割ほどに当たる。まさに巨大企業で、単体では世界一の広告代理店。

 だが一方では新入女性社員を過労自殺に追い込んだことで社会から糾弾され、16年末にブラック企業大賞≠ニして名指しされた。社員を酷使することで、ナンバーワンの地位を維持してきたゆがんだ構図が露呈した。

 そんな電通がここにきて注目されている。年内にも実施という憲法改正国民投票を巡り、電通が長年、広報戦略を担う自民党の改憲広告≠仕切るからだ。業界第二位の博報堂で18年間営業をしてきた著述家・本間龍さんは「電通が国民投票を支配する」と断言している。

 2月末に都内で講演した本間さんはこう指摘した。

 「国民投票運動ではテレビCMの影響力が大きい。インターネットとは違い、テレビCMは『ながら視聴』されるので、繰り返し行われると、視聴者への『刷りこみ効果』は絶大です。特に視聴率が高い夕方から夜11時台に流れるスポットCM(局が定めた時間帯に15秒間流れる)が勝負のカギになる。この時間帯にいかに大量にCMを流すかだ。これを実現するには巨額なお金が必要。また、このCMワクを事前に抑えなければならない。 

 改憲勢力の中心である自民党の資金力は護憲勢力のそれを圧倒している。政権党の自民を支える電通は、テレビCMでのシェアは35%とダントツ。加えて戦略立案もCM制作もCMワク購入も1社だけですべてやれる。従って自民党などの改憲勢力が国民投票で勝つ可能性は高い」  

 国民投票では有料テレビCMは投票日前2週間だけ禁止。規制を強化しないと自民党・電通の思うつぼだ。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年3月25日号


 
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2018年03月03日

「私は断固、闘い続ける」 17年働き突然雇い止め 派遣労働者・渡辺照子さんに聞く=橋詰雅博

派遣・契約社員やパート、アルバイトなどといった非正規労働者にとって今年は大きな転換点になる。2013年4月1日施行された改正労働契約法により同じ職場で仕事して通算5年を超えると、有期雇用から無期雇用に切り替えることができるのだ。この5年ルール≠ノ該当する無期雇用の人が4月1日以降、出現する。対象者は約400万人とみられ、雇用の安定が守られる。一方、簡単にクビを切れなくなるので、5年ルールを前に雇い止めに走る企業が多い。16年8カ月同じ職場で事務の仕事をしてきた派遣労働者の渡辺照子さん(58)も昨年10月に雇い止め通告され、昨年末失職した。渡辺さんに改正労働契約法の問題点などを聞いた。      ☆ ☆

――今の心境と、どういう風に生活していますか。

ダメージは大きい

 約17年間、同じ職場で働いてきました。仕事がなくなってしまったので、心身のバランスが崩れてしまった。同居する88歳の母親の面倒を見ていて、介護疲れもあってうつ状態。茫然自失ですね。失職は人生にとってダメージが大きいと言われていますが、まさにその通りです。

 無職ですが、雇い止めの当事者として体験を話してほしいなどの講演依頼が労働組合から、雇用問題をテーマにした原稿依頼もあります。でも講演料も原稿料も食べていける額ではありません。蓄えを取り崩して生活しています。ただ、住んでいる新宿の家は両親の持ち家ですので、家賃がないのが助かります。家賃があったらとても生活できません。

――派遣元(「パーソナルテンプスタッフ」)と派遣先(「地球科学総合研究所」)に対しどういう行動をとっていますか。

22日に社前抗議

 昨年11月に労組「派遣ユニオン」に個人加盟しました。専従で労働争議の経験が豊富な関根(秀一郎)書記長のアドバイスを受け、派遣元と団体交渉を2回行い、派遣先にも団体交渉を2回申し入れた。派遣先が団体交渉を拒否したので、事前に通告した通り22日に社前で関根書記長らと抗議行動をしました。法的手段に踏み出すかどうは企業側の対応しだいです。派遣ユニオンをバックアップする女性弁護士と相談はしています。

――改正労働契約法をどう見ていますか。

 私の場合、3カ月ごとに雇用契約を更新していました。雇い止めにならないか内心、ビクビクしながら働いていた。13年4月の施行後、5年間クビがつながれば、晴れて無期雇用に転換でき、雇用の不安からやっと逃れられると思った。そうしたらこういうひどい目にあわされた。

 そもそも無期雇用とっても、直ちに正社員になれるわけではない。待遇も同じになるとは限らない。改正法は正社員と非正規労働者の待遇格差を埋めるものではない。しかも無期雇用に転換するには労組を通じて実現可能です。私のような派遣労働者が派遣ユニオンに入ったことが企業側に知れたら雇い止めは必至。だから知っていてもユニオンに入れなかった。私は無期雇用後にユニオンに入り、団体交渉で待遇改善を要求して行こうと計画していた。計画倒れになってしまった。

罰則規定を設ける

改正法ではあの手この手で無期雇用に転換させない企業への罰則規定を設けるべきです。また、契約のない期間が6カ月以上ある場合、それより前は通算期間に含まれない(クーリング期間)とする抜け穴があります。無期逃れを許さないよう法律でしばりをかけてほしい。

――企業側の仕打ちをどう思いますか。

 仕事の過程でハラスメントを受け、サービス残業を強要され、ハードワークのため過労で職場に倒れるなど不当な目にあってきた。「次の契約更新はしない」という一言で派遣先から切られ、「ハイ、そうですか」と受け入れることはとうていできない。企業側は、派遣労働者は使い捨てでいい、まるでモノ扱いしている。絶対に許せない。私は闘い続けます。

聞き手 橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年2月25日号
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2018年03月01日

〈沖縄リポート〉権力むき出しの市長選=浦島悦子

 あまりにも異様な選挙だった。それは、期日前投票数(21.622)が当日投票数(15.522)を6000票以上も上回った前代未聞の事態にも如実に表れている。「国策」である辺野古新基地建設を阻む稲嶺進市長を何としても潰すという国家権力の意思と、その恐ろしさをひしひしと感じさせられた選挙だった。
 安倍自公政権のやり方は巧妙を極めた。選挙前に、市民・県民の大多数が反対する新基地建設に向けた工事を加速することによって「あきらめ感」を誘い、外堀を埋めた。「どうせ造られるのだから、もう苦しむのはやめて楽になろうよ」と甘くささやいた。
 自公推薦の渡具知武豊候補は新基地建設問題に一切触れない「争点隠し」を徹底。公開討論会などの要請もすべて断り、政策論争を避ける一方、稲嶺市政の8年間の実績を打ち消すように 「失われた8年」「停滞」「閉塞感」などのネガティブキャンペーンを繰り広げた。
 自民党幹部や現職大臣が次々と応援のため名護入りしたが、彼らは表には出ず企業回りに徹し、ふんだんなカネを使って水面下でさまざまな工作を行った。菅官房長官は「うちのような小さな会社にまで?」と経営者が驚くほど徹底的に市内各企業に電話を入れた。公明党は広い名護市域の隅々にまで全国動員した運動員を送り込み、甘言、強要、誘導などあらゆる手段を駆使して、人々を期日前投票所へ運んだ。唯一、表の役割を担った小泉進次郎氏は告示以降2回も名護入りし、街頭演説会に集まった若者たちをそのまま期日前投票所へ誘導した。
 警察は、稲嶺陣営を公職選挙法の厳格な適用によって締め付ける一方、渡具知陣営の違反は野放しにした。
その結果、約3500票差で渡具知氏が当選したが、20年以上「国策」に翻弄され、苦しみ続けた名護市民は、今回の選挙でさらに分断され、傷つけられた。渡具知新市長は「勝者」ではなく、翻弄された一人にすぎない。これは選挙に名を借りた国家犯罪だ。味を占めた安倍政権は、11月の沖縄県知事選でも同じ手口を使ってくるだろう。
 今後の各種選挙や国民投票も見据えて、名護市長選とは何だったのか徹底検証が必要だ。その教訓を踏まえ、本来の選挙のあり方を取り戻さなければ、民主主義の明日はない。
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2018年02月25日

《編集長EYE》 ICAN、金融機関にアプローチ=橋詰雅博

 国連での核兵器禁止条約の採択に貢献したことで、昨年、ノーベル平和賞を受賞したICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)。その事務局長のベアトリス・フィンさん(スウェーデン出身)は1月来日し、広島、長崎、東京で講演した。 

 フィン事務局長は「格兵器を持つことが力の象徴ではなく、恥の象徴だと認識させて、核兵器を持つ国に悪の烙印を押すことができれば、核保有国ももっと理にかなった考え方をするようになる」と訴えた。

 核保有国は「恥だ」という認識を世界に定着させるためICANは、さまざまな活動を展開する。1月初旬に本紙のインタビューを受けた(1月25日号に既報)ICAN国際運営委員の川崎哲さんは、その活動を4つに分ける。第一は核禁止条約の署名・批准を世界的に促進するため広島と長崎の被爆者による証言活動とメッセージ発信だ。第二が核武装国の「核の傘」の下にある日本のような協力国の核政策見直しを求める積極的なロビー活動。第三は将来の核武装国の核禁止条約参加を視野に入れて、核武装廃棄や検証措置をさらに精緻する議論を行う。第四が民間の金融機関などへの働きかけだ。核禁止条約が発効されれば、核兵器は国際法上、非人道兵器として認定される。そのような兵器の製造に関わる企業に融資することは社会的な責任を欠いたものと見なされる。対人地雷もクラスター爆弾も禁止条約発効(地雷は99年3月、爆弾は2010年8月)で、企業への融資が引き上げられて兵器の生産や貿易が大幅に縮小した。

 川崎さんはこう語った。

 「三菱UFJファイナンシャルグループは、『非人道兵器』のクラスター爆弾を製造する企業に対して今後、その資金使途にかかわらず、融資しない方針を昨年12月に発表した。例えば三菱UFJに核兵器の製造では、どう考えているのか≠ニいったアプローチは重要です」

 企業が相手ならば方針の転換は期待できそうだ。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年2月25日号
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2018年02月08日

リニア事件 JR東海は共犯者 「三位一体」で国民だます 関島保雄弁護士に聞く=橋詰雅博

 リニア中央新幹線の沿線住民738人が16年5月に品川―名古屋間の工事認可取り消しを国に求めた行政訴訟は、東京地裁で8回の口頭弁論が行われている。原告弁護団共同代表の関島保雄弁護士(70)に、リニア談合事件をどう見ているのかなどを聞いた。

――談合事件への感想は。
 大手ゼネコン4社が工事受注前に談合を当然やっていると思っていました。リニア新幹線はJR東海が全額自己資金で建設すると07年に表明。だから国も国会も国民も民間事業だから口を挟めないという流れできました。

「民間事業」口実に
――しかし、リニア新幹線は公益事業を対象とした全国新幹線鉄道整備法(全幹法)に基づいて建設されています。
 全幹法の場合、用地買収や建設残土の処分などで自治体を協力させることができて、環境アセスメント前に提出する工事計画などはアバウトです。環境アセスはおおざっぱなものにならざるを得ません。全幹法の適用はJR東海にとってメリットは大きいのです。それでいて民間事業を口実にJR東海はいろいろな問題から逃げています。背後に政治的な動きがあったとしか思えません。

――そのうえ安倍晋三首相は16年6月に財政投融資による支援を打ち出しました。
 総事業費約9兆円のうち3兆円を財投で賄っています。しかも超低金利で、30年間返済据え置きです。
これを実現するため安倍政権は独立行政法人「鉄道・運輸施設整備支援機構」の法改正を行い、財投資金よってリニア新幹線の工事を発注できるようにしました。全幹法を適用、さらに財投という名の税金が投入されたリニア新幹線は、今や国家的プロジェクト。国が様変わりさせておきながら民間事業のイメージを維持し、国民をだましています。

9兆円の利権隠す
 9兆円という大きな利権を隠すため国、JR東海、大手ゼネコンが三位一体となってリニア新幹線建設を進めてきています。談合によって工事費がはね上がったのだから発注元のJR東海は本来ならば被害者だが、共犯者と言っても過言ではありません。JR東海の葛西敬之・取締役名誉会長は安倍首相の財界応援団の有力メンバー。ここでも首相に近い民間人が有利になるよう政策がねじ曲げられていると思います。

――裁判への影響はありますか。
 ストレートに影響するとは言えないでしょう。しかし、この事件は、談合のような違法行為がさまざまな場面で起きているにもかかわらず強引に建設が進められている実態を裏付けるいい材料になります。原告側の主張に説得力の厚みが増します。

聞き手 橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年1月25日号
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ICANのノーベル賞受賞と被爆者運動への目─第五福竜丸展示館を訪ねて=木下壽國(ライター)

 国連での核兵器禁止条約の採択に尽力した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」が昨年、ノーベル平和賞を受賞した。メディアはこぞって、このニュースを大きく取り上げた。
 メディアが受賞に沸き立つ中、私は何十年ぶりかで東京都江東区の夢の島にある第五福竜丸展示館を訪れた。核兵器問題についてささやかながらも自分自身でなにかを感じてみたいと思ったからだ。訪ねたのは平日で、閉館時間に近かったこともあり、展示を見ている人は少なかった。

 館内では特別展<この船を描こう>というイベントをやっていて、小中学生の描いた第五福竜丸の絵がたくさん展示されていた。それを見た私はちょっとした感動を覚えた。船の姿をそのまま描いているのだろうと半ば見下していたのだが、なかなかどうして。想像力が豊かなのだ。
 中学2年生による「朝日を告げる福竜丸」などは、海をドーッ、ドーッと流れる川のように表現し、ちょっとした迫力を与える。そのほかの作品もそれぞれの想像力の中に船を自由に遊ばせていた。
 第五福竜丸の船体に沿って左回りに歩みを進めていくと、水爆ブラボー実験で汚染された太平洋の海域を赤丸などで表示するパネルがあった。一瞥して、改めて汚染地域の広さとひどさに驚いた。
(→続きを読む)
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2018年02月02日

核禁止条約反対「ムダな抵抗」 ノーベル平和賞のICAN国際運営委・川崎哲さんへのインタビュー=橋詰雅博

 国連での核兵器禁止条約の採択に尽力した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」へのノーベル平和賞は昨年、世界に深い感銘を与えた。しかし、唯一の戦争被爆国である日本政府は条約を黙殺=B日本の多くの国民はもとより世界の人々も安倍晋三首相の冷たい態度に落胆、失望した。安倍首相はICANに対してそっぽを向くが、どこまでも「核兵器なき世界」を追求するICAN国際運営委員でNGOピースボート共同代表の川崎哲さん(49)が本紙のインタビューに応じた。条約発効の見通し、将来日本の参加はあり得るのかなどに答えた。

 ☆     ☆

――核兵器禁止条約に署名した国は56カ国で、批准は3カ国(ガイアナ、バチカン、タイ)ですが、どう思いますか。

 まず核兵器禁止条約は反核運動として理想に近いもので、核兵器廃絶への道筋ができた。

メキシコ批准済み

 条約の批准に関してメキシコは昨年12月に議会で批准している。ただ、国連への文書提出が遅れている。正確に言えば批准国は4カ国。しかし、条約発効に必要な50カ国には遠く及ばす、国連で122カ国が条約に賛成したにもかかわらず署名は56カ国にとどまっている。

――署名・批准が進まない理由は何ですか。

 2つ挙げられる。一つはどこの国も政治課題を抱えていて、そちらを優先しているので署名・批准には時間がかかる。単純な理由です。もう一つは米国など核武装国(9)が「役に立たない条約だ」とネガティブキャンペーンを打って、「署名・批准するな」と言っているからだ。2つの理由でいまのような状態になっている。私は前者の理由が大きいと思う。

 昨年末、早期に禁止条約の署名・批准を求める国連決議に120カ国以上が賛成している。署名・批准へ各国の世論が盛り上がれば、批准国は増えるはず。決して核武装国の圧力に屈服してはいません。条約の署名・批准案を国会で審議する順位をより高めるため世論喚起が必要です。

――それにはどうすればいいですか。

 ICANの今年の課題だが、ピースボートの場合、いままでやってきた広島・長崎の被ばく者の方を海外にお連れして核兵器廃絶を訴えてもらう取り組みを継続させて発展させることです。生き残った被ばく者の話は、地元メディアが大きく報じるし、高いレベルの政治家にも被ばく者は会える。気運を高めれば、必ず批准は実現できる。

協力国を揺さぶる

――格武装国と、米国の核の傘に依存する日本のような核武装協力国(約30)をどう攻略≠キるのか。

 核兵器武装国の条約への参加は当面、望み薄。条約を速く発効させれば、武装国も無視できなくなる。これに力点を置く。このため格武装協力国を揺さぶる。私が見るところ、これらの国は一枚岩ではない。核兵器を受け入れる積極派とお付き合い程度の消極派に分かれる。

 北朝鮮の核・ミサイル開発に向きあう日本と韓国、ロシアの核兵器に脅威を抱くバルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)やドイツ、オランダ、ベルギー、トルコ、ポーランドなどの積極派を落すにはやはり時間を要する。このため消極派にターゲットを絞る。NATO(北大西洋条約機構、29カ国で構成)に加盟するノルウェーは議会で政府に条約加盟への可能性を検討するよう求める決議が可決される。同じくNATO加盟のアイスランドは自国の軍隊がなく、NATO駐留軍もいない。格兵器を受け入れる気持ちはさらさらない。米国の核兵器を配備して積極派と見られるイタリアでも、議会は、禁止条約に参加できるかどうか政府に求める動議を可決している。

 また、欧州では自治州の力が強い。条約賛成の自治州が中央政府にプレッシャーをかけると効果は大きい。消極派の国々や自治州などを落すのがICANの次の戦略だ。

条約は防衛に貢献

――日本が条約に署名・批准する可能性は。

 どんな総理大臣でも毎年8月に被爆地で核兵器廃絶を求める演説を行う。それなのに核兵器禁止条約に参加していない。先だって民放で核問題の特集番組を放送していたが、その実態を知らされた若いタレントは「えー」と驚いていた。多くの国民もこのタレントと同じで、それをよく知りません。日本は被爆国でありながら禁止条約に参加しないという二重性≠フ側面を持っている。このことを常識化させて、国民的な議論を巻き起こす。「条約にコミットしないのは被爆国として理解しがたい、おかしい」という声が大きくなると、日本政府の政策が転換する可能性がある。

 122カ国の賛成を得た禁止条約はいずれ発効する。格武装国と格武装協力国はムダな抵抗を止めるべきだ。条約は、核武装廃棄や国際的査察を義務付けるなども盛り込んでいる。自国防衛のためにも条約を役立てることをめざして知恵を絞ることが日本には重要です。

聞き手 橋詰雅博


JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年1月25日号
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2018年01月28日

リニア談合事件 税金3兆投入の仕掛け人は?JR東海への破格優遇に捜査のメスを=樫田秀樹

リニア巨額談合事件について、2015年度JCJ賞を受賞した「悪夢の超特急<潟jア中央新幹線」(旬報社)の著者でジャーナリストの樫田秀樹さんに寄稿してもらった。

          ☆     ☆

 昨年末からリニア中央新幹線の建設を巡る談合事件が報道されている。

東京地検特捜部はスーパーゼネコン4社(大林組、大成建設、清水建設、鹿島)の談合解明に努めているが、私が注視するのは、地検が果たして「リニア計画への3兆円の財政投融資(以下、財投)」の絵を誰が描いたかまで究明するかだ。

 15年11月、私は某準ゼネコンのベテラン社員から「弊社はリニア計画に参画しない」との話を聞いた。理由は単純明快。リニア工事ではペイしないからだ。

 07年、JR東海は「リニアの建設費9兆円を自己負担する」と公表し関係者を驚かせた。このうち、第一期工事となる品川―名古屋間で5兆5000億円だ。

銀行から融資無理

 ここで私は2つの疑問を抱いた。


@5・5兆円のうち東海道新幹線の収益を当てても、3兆円足りない。どう工面するのか。

A5・5兆円を工面できても、果たしてそれで竣工できるのか。

以下、拙著「リニア新幹線が不可能な7つの理由」(岩波書店)にも書いたが、若干の加筆をして説明したい。

JR東海の15年度末の純資産額は2兆円強だった。つまり3兆円を借りる担保がないため、銀行融資は難しいと予測されていた。

 仮に5・5兆円を工面できても、準ゼネコン社員が「参画しない」と表明したのは、「近年の新幹線は、当初予算の倍以上もかけて竣工している」からだ。従来の新幹線は、国と自治体とが建設費を出し合い、独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下、機構)」が建設し、竣工後にJR各社が機構に毎年「線路使用料」を払い運用されている。だが、リニア計画での当初の資金源はJR東海の自己資金だけ。だから、準ゼネコン社員は、「難工事で工費がかさんでも、JR東海は当初の契約金額以上は払わない」と予測した。 

国の金を引っ張る

そして言葉を続けた。

「だからゼネコンはうまいこと国から金を引っ張ろうとしているはず」

 その動きがあったのかは判らない。だがその7か月後の16年6月、安倍首相は突如「リニア計画に財投を3兆円投入」と発表した。

財投は、国債発行で集めた資金を財務省が35ある政府系特殊法人(財投機関と呼ぶ)に融資することで大規模事業を実現する制度だ。

 今回の財投投入で不可思議なのは、財投機関ではあるが、金融機関ではない機構に、16年11月、法改正までしてJR東海に融資できる機能をもたせたことだ。財投機関には「日本政策投資銀行」というれっきとした金融機関がある。

なぜここからの融資ではなかったのか。同銀行OBは「当行は民間銀行との協調融資と要担保が原則。担保のないJR東海への融資は無理」と語った。

債務不履行もある

実際、法改正直後から、機構は5回に分け3兆円をJR東海に融資したが、「無担保」に加え「30年据置き」という破格の条件だった。誰がこの絵を描いたのか。

 財投投入の方針は安倍首相の表明の何カ月も前から政府内部で話し合われていたはずで、16年から、リニアの工事契約が一気に増えたのは偶然なのだろうか。

 そして、私は懸念する。工期が伸びれば工費もかさむが、そのときにまた兆単位の財投を発動するのか。旧国鉄の28兆円の借金のうち約16兆円は財投での借金だ(その反省から現在の建設方式になった)。これを今国税で償還しているのは周知のとおりだが、もしJR東海が債務不履行に陥った場合、国税で償還するのだろうか。

 注視しなければならない。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年1月25日号
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2018年01月25日

《編集長EYE》 異様な「デベロッパーファースト」=橋詰雅博

 都民が東京都を相手取り、2020年東京五輪・パラリンピック選手村用地として都有地を不動産会社11社にたたき売りしたのは違法だとする住民訴訟の第2回口頭弁論が2月27日(火)、15時から東京地裁419号法廷で開かれる。周辺価格の10分の1でつまり9割値引きで売却されたことから8億円値引きされて国有地が売られた森友疑惑になぞらえて「都政版森友疑惑」裁判とも呼ばれている(本紙17年10月25日号で既報)。

 昨年11月17日の第1回口頭弁論では、小池百合子都知事らに差額分約1209億円の請求を求めた原告33人を代表して中野幸則さん(66)が意見陳述した。陳述の中で中野さんは「本件は都が官民癒着、官製談合のもとで、市街地でない土地を市街地再開発事業と称して、『大地主』・『監督官庁』・『施行者』を演じた一人三役の『一人芝居』であり、デベロッパーファーストとも言うべき異常なものです」と訴えた。そして「(都有地の)売却はやめて定期借地権に変更して、数十年後には土地をとり戻すべきではないか」と主張した。

 実は被告弁護団団長の外立憲治弁護士は、中野さんらの陳述を阻む行為に出ていた。原告が読むことを認めないよう求める上申書を提出したのだが、清水千恵子裁判長はこれを却下したのだ。その腹いせなのか、外立弁護士は、中野さんと原告代理人の各陳述が終わった後、事前提出していない陳述書を読み上げ「(原告の主張は)言いがかり」と反論。このいきなりの陳述に対して原告代理人が抗議する一幕があった。

 原告弁護団は「(上申書提出や通告なし陳述を行った)被告は、ムキになっている。焦りと危機感のあらわれ」と相手の胸中を推し量った。  

  訴訟を広く知ってもらうため2月17日(土)には「都有地投げ売りシンポジウム」を13時半から16時半まで専修大神田校舎で開く。「都政版森友疑惑」裁判にもっと都民は関心を。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年1月25日号
posted by JCJ at 15:17 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする