2018年11月07日

【沖縄リポート】 ウチナーの未来はウチナーンチュが決める

 まさに「痛快!」だった。翁長雄志前知事の急逝に伴う沖縄県知事選(9月30日)は、内外の大方の識者の予想を覆し、安倍政権(自公・維新)の全面的支援を受けた佐喜眞淳候補を、翁長知事の遺志を継ぐ玉城デニー候補が8万票以上の大差で破り、当選した。

 徹底した争点隠しと、カネと権力を総動員した物量作戦が功を奏した2月の名護市長選に味を占めた政権側は、その「名護方式」(彼らは「勝利の方程式」と呼んだ)を今回知事選にも適用。前回知事選では自主投票だった公明党、前回は下地幹郎氏が立候補して3万票を獲得した維新の票を合わせれば佐喜眞候補が勝てると踏んでいた。

彼らのやり方は名護市長選にも増してすさまじかった。菅官房長官、小泉進次郎氏を筆頭に自公の大物政治家が次々と沖縄入り。公明党は全国から7千とも8千とも言われる運動員を送り込んだ。期日前投票は日を追うごとにうなぎ上り。企業動員の際、自分の書いた投票用紙を写メで報告させているという話に耳を疑った。ネット上ではデニー候補に対する誹謗中傷・デマが90%以上を占めていた。加えて、投票日前日には超大型台風24号が沖縄を直撃するというオマケまで付いた。正直怖かった。

これらのすべてを見事に打ち破ったウチナーンチュを私は心の底から誇りに思う。動員されても心を売らなかった人々、創価学会の三色旗を掲げて公然とデニーさんを応援した学会員、「デニってる」などの造語や斬新なアイデアで選挙を盛り上げた若者たち、ネットのデマを「ファクトチェック」で精力的に検証した地元紙…。「ウチナーの未来はウチナーンチュが決める!」と立ち上がった県民一人ひとりの総合力がこの勝利を導いたのだ。

翁長前知事がしっかりと築いた礎の上に県民はいま、デニー新知事とともに、自立・共生・多様性の「新時代沖縄」へ向けて出発した。

と、ここまで書いたとき、政府が埋め立て承認撤回の効力停止を求めて国交省に審査請求を行ったというニュースが飛び込んできた。14日の豊見城市長選で、デニー知事が支援した山川仁氏が当選し、この追い風を21日投開票の那覇市長選へ、と意気込んでいた矢先だ。国の言うことを聞かない沖縄への報復としか思えない。民意はまたも踏みにじられた!

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年10月25日号
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2018年11月06日

【神奈川支部例会】 本土との認識の差を実感 東海大生 沖縄取材体験を報告=保坂義久

神奈川支部では10月6日、神奈川県民センターで例会「若者は沖縄の今をどう見たか」を開いた。

2017年9月、沖縄戦跡のチビチリガマが沖縄在住の少年たちに損壊された事件は、沖縄でさえ戦争体験が若い世代に伝えられていないとして大きな衝撃を与えた。

東海大学文化社会学部広報メディア学科の羽生浩一教授のゼミでは、同年12月に沖縄を訪れ、映像を「歴史記憶を継承する難しさ」というDVDにまとめた。

今回の例会ではこのDVDを視聴し、沖縄取材に行ったゼミのOBと現役学生の話を聞いた。

DVDでは、地元の平和ガイドが、チビチリガマの集団自決と、昨年の損壊事件について解説。平和学習の見学から帰ってきた地元中学生にもインタビューし、沖縄国際大学と琉球大学の学生にも話を聞いた。最近の沖縄ヘイトといえる言説について琉球新報の島洋子経済部長にも取材している。

現場の空気感じる

DVD視聴後、ゼミOBと学生が報告した。今年3月に卒業し、テレビ番組制作の現場で働く阿子島徹さんは、仕事で行う街頭インタビューと沖縄取材体験を比較し、こちらでは10人に質問して1人か2人が答えてくれればいい方だが、沖縄では誰でも答えてくれると本土との違いを語った。

DVDではナレーションを担当し、現在は新聞社系の広告代理店で仕事をしている杉田颯さんは、空襲の被害の大きかった八王子出身、祖母が身内の犠牲に触れたがらないと自分の体験と重ね合わせた。

現在大学4年の寺牛恒輝さんは「友人が左派ヘイトの根も葉もない発言をリツイートしているのを見るとうんざりするが、自分も学ばない前は同じようだった。異なる立場でも互いに耳を傾けるのが大事だと思う」という。

3年生の高橋夏帆さんは、子どもの貧困をテーマにし、子ども食堂を取材した。食堂に入りづらい状況があると報告した。

澤村成美さんは、性的マイノリティーをテーマに決め、パートナーシップ制度について行政などに取材した。実際に辺野古のゲート前では、座り込む人が運び出される状況に驚いたが、作業終了時には互いに「お疲れ様」と声を掛け合うなど、現場でなければわからない雰囲気も感じたという。

中島こなつさんはガマを個人テーマにして調べていた。損壊事件について周囲のほとんどの学生は知らないという。

各自の報告の後、司会の野呂法夫支部運営委員から「様々な集会が開かれるが若者の参加は少ない。どうしたらいいか」と問いかけられた。

若者たちからは、直接話せるよう大学に出向いてほしいとかSNSの活用などの意見が出た。

記者の仕事を語る

後半は沖縄の新聞社でインターンシップ参加した体験を、沖縄タイムスで働いた高橋夏帆さんと、琉球新報で体験した専修大学3年の天野公太さんが報告した。

高橋さんのインターンシップは8月6日から12日間。3日目に翁長知事が亡くなり、あわただしい新聞社内を体験した。

通夜の取材にも同行させてもらったという。どんな緊急事態にも事実確認を疎かにしない新聞の制作現場を体験できてよかったと、高橋さんは語る。

天野さんが身近な人に沖縄に行くと話すと、「プロ市民とかいるんでしょ」という反応が返ってきたという。天野さんはSNSが出現する前の沖縄のイメージはもっと違っていたと指摘した。

天野さんは本土と沖縄との認識の乖離に気づかされたという。東京では米軍は決められたルールを守って訓練していると思われているが、現地へ行って、米軍がルールをも持っていないことを知った。

最後に藤森研支部代表が、JCJ賞資金のカンパを呼びかけた。集会の参加者は51人。

保坂義久

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年10月25日号
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2018年10月30日

【編集長EYE】 教育充実にも国家主義思想入り込む=橋詰雅博

 自民党は、衆参両院の憲法審査会で党の4項目改憲条文案を説明する。4項目は9条に自衛隊を明記、緊急事態条項の創設、参院選挙区の合区解消に加えて教育の充実だ。この中で教育の充実の中身は一般にあまり知られていない。その条文案では、第26条の第1項(教育を受ける権利)と第2項(教育の義務)は現行のままだが、第3項を加えている。加憲された文章は次の通りだ。

<国は、教育が国民一人ひとりの人格の完成を目指し、その幸福の追求にかくことのできないものであり、かつ、国の未来を切り拓く上で極めて重要な役割を担うものであることに鑑み、各個人の経済的な理由にかかわらず教育を受ける機会を確保することを含め、教育環境の整備に努めなければならない>

 9月初旬に都内で講演した前川喜平・元文部科学省事務次官(63)は、この第3項をこう批判した。

 「『教育は国の未来を切り拓く上で重要だから環境を整備する』としている部分が問題です。逆に言えば、国の未来を切り拓けそうもない人間は対象外と解釈できます。ここに安倍晋三首賞の国家優先思想が混じり込んでいます。今春から小学校で教科として取り入れられた道徳もその一環です。

 戦後は個人重視と国家主義がずっとせめぎ合ってきたが、第2次安倍内閣以降は、国家の力が強くなっている。全体主義と言い換えてもいい考えが台頭し、その勢いを増しています」

  前川さんは79年4月当時の文部省に入省し、2017年1月退官した。40年近く行政官を務めてきた。

 「長年の行政官生活で痛感したのは『こんな程度の政治家をなぜ国民は選ぶのか』でした。そんな有権者が日本におびただしくいます。やはり民主主義を勝ち取っていないことが淵源です」

 そして今の世の中をこれほどまでに悪くしているのは「忖度だ」と指弾した。

 本紙インタビューに応じた1年ほど前よりも、前川さんは舌鋒鋭く安倍首相を攻撃している。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年10月25日号
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2018年10月16日

【映画の鏡】 息子の戦死は誤報だった 『延命は踊る』 イスラエル家族が巻き込まれた悲劇=今井潤

冒頭で軍の役人が玄関で「ご子息が昨夜戦死されました」と告げると気を失って倒れる母。父は黙って平静を装うが、役人の対応にいら立ちを覚える。軍の関係者が葬儀の打ち合わせに来るが、父は「遺体はあるんだろうな」と怒りを抑えることが出来ない。

 再び玄関の呼び鈴が鳴る。「大変な間違いでした。亡くなったのは息子さんではなく、同姓同名の別人でした。息子さんは無事です」軍人たちに怒りを爆発させる父。それを必死にたしなめる母。

 イスラエル北部国境付近の軍の検問所。息子が勤務する検問所のシーンは、緊張感に欠けた気だるい雰囲気が漂う。ゆっくりと上がる遮断機。ラクダ一頭がのったりと通り過ぎる。ある兵士が仲間に疑問をもらす。「なぜ戦っているんだろう。何のために?」「戦ってますよ、心理戦を。知らない相手と」銃を持ちながら、マンボを踊る兵士。

 若い男女を乗せた車がやってくる。身分証を調べる兵士。女がドアーを開けた瞬間、何かが兵士の足元にころがり落ちる。「手りゅう弾だ」考える間もなく銃を撃つ息子。そこには空き缶がひとつ。車内から白煙と血が静かに流れ出てくる。

 大型レッカー車が現場に来て、車ごとすべてを土の中に葬りさる。上官はいう「われわれは紛れもなく、ここで戦争をしている。起きたことは仕方ない。この一件は最初からなかったことにする」

 息子は帰宅への道を車で走っている。ラクダを避けるため、左にハンドルを切った車はがけ下に転落していく。この静かなロングショットがエンドとなる。(公開は9月29日ヒューマントラスト有楽町他で)今井 潤

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年9月25日号
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2018年10月15日

【香川支部リポート】 戦争体験を語り継ぐ集い 「死の商人」への対応も論議=刎田鉱造

JCJ香川支部が参加する実行委員会の取り組み今年で39回目を迎えた「8・15戦争体験を語りつぐ集い」を8月15日に高松市で開きました。

武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)代表の杉原浩司さんを迎え「平和のために今、何ができるか」、「武器輸出大国ニッポン」でいいのかをテーマにした講演を軸にフロアからも熱心な論議が相次ぎました。

 講演で杉原さんは、2014年安倍晋三政権が閣議決定だけで武器輸出を解禁したもののすんなりと成約ができているわけではない実情を報告した。さらに軍学共同をめぐるせめぎ合いや歯止めないアメリカからの武器輸入など戦争依存症が進行する安倍政権の「先取り壊憲だ」と訴えました。

 軍学共同について、会場から「どこからお金がきてもテーマによっては軍事か民生かの境界はあいまいだ。やり方次第ではないか」という意見が出されました。「軍事研究をおいしくする側が盛んにいってくるのがその理屈だが、狙いははっきりしている」「お金の出所をチェックすることが大事だ」「本来、文部科学省からちゃんとした研究費を出させることが大事だ」と盛り上がりました。

 また、武器輸出をしようとする大企業に「どう対応するのか」も論議になりました。ハガキ一枚でも抗議の意志を伝える。消費者の声は企業にとって抑止力になる。大企業メーカーにもメーカーに融資する銀行にも消費者がアクションを起こすことが大事と話しが進みました。

 大量に武器をつくって、売って、戦争して儲ける―戦争中毒≠フアメリカは手強いと話が展開しました。こんな意見も出されました。「日本がもつ憲法9条、守ろうという運動だけでは内向きでないか」「日本が戦争しなければいいという話ではない。アメリカに対して戦争はやめろいうのが先だ」「それをやる政府をつくろう」「展望はあると思う」。そのために今やるべきことは……。「集い」は8・15にふさわしい話し合いの場となりました。

刎田鉱造

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年9月25日号
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2018年10月14日

【若い目が見た沖縄】 派遣第1号・専修大生 高江で初めて知った抗議理由=天野公太

 JCJでは今年度から「若い目が見た沖縄」をテーマに各支部などから推薦された若者を沖縄に派遣する企画を始めました。派遣に当たってはJCJが経費の一部を負担します。派遣第1号が専修大学文学部人文・ジャーナリズム学科3年生の天野公太さん(20歳)。神奈川支部から選出されました。天野さんに寄稿してもらいました。

 沖縄へ行くと話すと、「プロ市民とか、いるんだろ」とバイトの先輩が言った。政府と沖縄が対立して以後、かなりの若者の沖縄のイメージがそんな風に変化してきたように感じる。沖縄をたたく人々がかなり存在する。他方に基地撤去を願い続ける沖縄の人々がいる。とにかく自分で、現状を知りたいと強く思った。

 8月8日に訪れた時、高江のヘリパッドはすでに造成され、使われていた。それなのに抗議活動を続けている理由を、住民の方たちに聞いた。まず、米軍のヘリコプターやオスプレイの連日の騒音を挙げた。ブルドーザーが通る時のような90デシベルの場合もあるという。また、昨年10月には、住民の牧草地に米軍ヘリが不時着・炎上している。いつ落ちてくるのかわからない恐怖。私にも分かる気がした。
 しかしそれだけではなかった。ヘリパッドを含む高江の一帯は、絶滅危惧TA類のノグチゲラなど、貴重な動物が生息している森だと私は初めて知った。ノグチゲラの巣の上で米軍機が毎日爆音を立てていることを、どれだけの人が知っているだろう。ヘリパッドの近くで抗議活動をしていた那覇市在住だと言う女性は、「ただ高江の貴重な自然を守りたい」と話した。高江に住む男性は「なぜ抗議をしているのか。理由を知ってもらいたい」と肩を震わせて語った。
 沖縄を批判する人は、沖縄の人の話を聞かずに批判してはいないかと、考えさせられた。 

 名護市辺野古。8月12日、キャンプシュワブ前では、新基地建設の土砂投入を止めようと、多くの人が集まって声を上げていた。数十人。新聞やテレビで見るよりは少ないと感じた。近づくと高齢の方々が目立ち、若者の姿はほとんどない。いわゆる「プロ市民」と呼ばれるような団体は見受けられなかった。抗議はゲート前で行われていた。座り込んで動かない人もいた。
 海岸へ回ってみる。目の前に広がる辺野古の海は、青々として、息をのむほどに美しい。しかしその海の一角は、すでにオレンジ色のブイで囲まれてしまっていた。

 8月15日、再び高江を訪れた時、住民の男性に、抗議活動に若者が少ない理由を聞いてみた。「表現の仕方が違うのでは」というのが、答えだった。沖縄の若者は基地問題に関心がないのではなく、SNSなど、違うやり方で抗議をしようと考えているのだろうか。

 那覇市・奥武山陸上競技場で8月11日に開かれた、辺野古土砂投入に反対する県民大会にも行った。台風が接近して雨が降りしきる中、7万人(主催者発表)が集まった。その3日前に急逝した翁長雄志知事の追悼ということもあったのかもしれないが、一つの場所にこれほど人が集まることに私は驚かされた。他の県でこんなに住民が集まることはあるだろうか。沖縄の人々の基地問題に対する意識の強さを感じる。ここでは、集まっている中にたくさんの若者がいた。

 本土と沖縄に意識の差は確かにある。しかし、私はまだ沖縄に寄り添うことができると思う。それは、高江や辺野古で会った人たちが、私のような若者に対しても、真剣に「本土に現状を伝えてほしい」と語ったからだ。
 バイトの先輩や友人にも「一度、沖縄に行ってほしい」と言いたい思いを、強く感じている。

天野公太(専修大3年生)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年9月25日号
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2018年10月13日

【JCJ賞資金強化】 800万カンパ獲得、運動スタート 存続が危うい、1年間実施=大場幸夫

 JCJ賞資金強化大運動がスタートしました。8月18日にJCJ賞贈賞式の会場でカンパを訴えるリーフレットを参加者に配布し、運動は来年8月の贈賞式まで1年間、実施します。すでにリーフレットは読者の皆さんにも届いているはずです。
 改めて皆さんにこの運動へのご協力をお願いいたします。

 日本ジャーナリスト会議(JCJ)は、年間の優れたジャーナリズム活動を顕彰するため、1958年以来、JCJ賞を設け贈賞してきました。今年61回目を迎えました。
 新聞・放送・出版ジャンルのほか市民運動や地域活動の記録なども含み、個人・グループを問わず応募作を募り、推薦委員会が作品を絞り込んでJCJ賞選考委員会に推薦し、そこで選考・討議により受賞作品を決定してきました。いま国内外を問わず、「排外主義」や「フェイクニュース」が拡大され、情報開示どころか「真実」が隠蔽される憂慮すべき事態が進行しています。事実を追及し、真実を極め、権力の専制支配や横暴をチェックして広く市民に知らせるジャーナリズムの役割はますます重要になっています。
 こうした活動を担うジャーナリストや市民の奮闘を励ますJCJ賞は、これまで以上に期待されていると思います。私たちはこの責任を強く認識し、JCJ賞活動に多くの方々が参加してほしいと考えています。

 しかし、JCJ賞活動を支える資金は、2012年にカンパを訴え皆さまのご協力を得ましたが、それ以降も毎年の選考過程に80〜100万円の経費がかかり、この先10年維持できない状態になっています。JCJ賞の今後の活動を支えていただくために是非とも皆さんにご協力を求める次第です。

◆目標は800万円 、 個人1口2000円、 団体1口10000円、複数口のご協力を。
振込先:郵便振込は口座番号 00170-3-457209 日本ジャーナリスト会議JCJ賞資金
銀行は三井住友銀行神保町支店(001)普通預金 口座番号 2122916 日本ジャーナリスト会議JCJ賞資金

◆期間は18年8月から19年8月までの1年間。  

◆運動はJCJ賞資金強化実行委員会が進めます。 

大場幸夫

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年9月25日号
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2018年10月12日

【沖縄リポート】 翁長氏 死してなお県民動かす=浦島悦子

 沖縄県知事選(9月30日)の前哨戦とも言われた名護市議選(9月9日投開票)は、熾烈な選挙戦を経て与野党同数(定数26)の結果となった。14人の立候補者全員の当選をめざした野党(稲嶺前市政を支えてきた議員及びその後継者)は1議席減らしたものの、2月の市長選敗北の逆風の中でよく健闘したと思う(野党側当選者のうち1人は、告示直前に「中立」に立場を変えるなど複雑な様相もあるが)。  
 
 とりわけ私の住む東海岸では、辺野古新基地反対運動の中から生まれた現職議員(3期)に対し、渡具知現市長派の新人が立候補(地域住民は「刺客」と呼んだ)。地域の企業(いずれも零細だが、過疎の地域では大きな存在だ)を総動員して選挙活動を展開した。当新人は、名護市長選の直前に官邸主導で作られた「住民団体」の代表だ。
 これまでと違う選挙の様相に危機感を持った住民・市民の奮闘で現職議員は当選し、新人は次点で落選。ほっと胸をなでおろした。辺野古新基地建設の地元である名護市東海岸のうち久辺3区(久志・豊原・辺野古)をすでに抑え込んだ安倍政権が、残る二見以北10区を抑え込み、「地元はみな基地に賛成している」というお墨付きを得ようとした、その目論見を跳ね返した意義は大きい。

 息つく間もなく9月13日には県知事選が告示された。混迷していた「オール沖縄」の知事候補者選定は、翁長知事の残した遺言により急転直下、玉城デニー氏に決定。死してなお県民を動かす翁長氏の力を示した。
 翁長知事の遺志に従い沖縄県は8月31日、辺野古埋め立て承認を撤回し、海・陸ともに基地建設工事は止まっている。告示日の出発式をルーツ(母親の出身地)である伊江島で行った玉城デニー候補は、名護市街地で第一声を上げた後、辺野古の座り込みゲート前で多くの市民・県民の歓呼の声に迎えられ、翁長知事の遺志を継いで辺野古新基地建設を断固阻止する決意を述べた。

 沖縄女性と米軍人の間に生まれ、翁長知事が「戦後沖縄の歴史を背負った政治家」と称した玉城氏と、日本政府の意を受けた自公・維新が推す佐喜眞淳候補との厳しい超短期決戦が始まった。「マキテーナイビランドー」という翁長氏の声が聞こえてくるようだ。

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年9月25日号
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2018年10月08日

【リアル北朝鮮】 中露との友好をアピール 非核化への決意 本物か=文聖姫

 9月9日、北朝鮮は建国70周年を迎えた。軍事パレードには大陸間弾道ミサイル(ICBM)の姿はなく、5年ぶりに行われたマスゲームの演出も融和ムード漂うものだった。6月の米朝首脳会談での合意にもかかわらず、非核化交渉が進まないことを意識してか、米政権を刺激することは避けたようだ。それは、軍事パレードを実況中継しなかったことにも表れていた。

 そうしたなか、金正恩朝鮮労働党委員長がトランプ米大統領に書簡を送り、2度目の米朝首脳会談を要請していたことが明らかになった。米ホワイトハウスのサンダース報道官は10日、この事実を表明したうえで、米側がすでに調整に入っていると述べた。2回目の米朝首脳会談が遠からず開催されるかもしれない。

 一方で、金正恩委員長は、建国70周年に際して訪朝した中国の栗戦書・全国人民代表大会常務委員長、ロシアのマトヴィエンコ連邦評議会議長らと相次ぎ会談。中国とロシアが後ろ盾にあることをアピールした。どちらもナンバー3の大物。トップが直接来ることはなかったものの、中露ともに北朝鮮に配慮した形だ。軍事パレード終了後、金委員長は栗常務委員長とともにひな壇のバルコニーを歩きながら観衆に手を振り、マスゲームでは中国を意識した演出も見られるなど、北朝鮮は特に中国との良好な関係を大々的にアピールしたかったようだ。

 ところで、2度目の首脳会談では、パフォーマンスにとどまらず、実質的な進展が米朝双方に求められよう。北朝鮮の非核化への決意は本物なのか。

 金委員長は5日、訪朝した文在寅・韓国大統領の特使代表団と会見した際、次のように語ったと6日発の朝鮮中央通信は伝えた。

「朝鮮半島で武力衝突の危険と戦争の恐怖を完全に追い出し、この地を核兵器も核の脅威もない平和の拠り所にしようというのが我々の確固たる立場であり自身の意志だ」

文聖姫(ジャーナリスト・博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年9月25日号
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2018年10月01日

《編集長EYE》 国民投票テレビCMで民放連どう動く=橋詰雅博

 衆参国会議員による超党派の新しい議員連盟が8月末に発足した。「国民投票運動としてのテレビCM」に関して公平なルールを求める議連がそれ。学者やジャーナリストなどからなる市民団体「国民投票のルール改善を考え求める会」の議連結成の要請に応じたもので、会長に自民党の船田元・憲法改正推進本部長代行が就任した。立憲民主党の山尾志桜里衆院議員と国民民主党の桜井充参院議員が副会長に、立憲民主の杉尾秀哉と無所属の真山勇一両参院議員が事務局を担当する。

 市民団体は、資金潤沢な改憲勢力が賛成を勧誘するテレビCMを大量に流すと、資金に乏しい護憲勢力は対抗できず、不公平が生じるとしてテレビCMに一定のルールを設けるべきだと主張してきた。数回の会合を経て作成した国民投票運動期間中のルールは2案ある。一つは賛成派と反対派が同じ日の同じ時間に、同じ分数の放送を行う案だ。もうひとつは英国の実施事例をモデルにしたもので、異なる放送日で同じ回数・分数の放送を行い、最終的に視聴率が同じ程度になるように調整する案である。この2案は議連に提示していて、議連はこれをたたき台にしてルールづくりを行う。

 安倍晋三首相は来年夏の参院選挙前までに国民投票を実施すると言っており、国民投票法を改正してルールを導入するのは時間的に困難だ。このため議連は自らつくった案を民放各社が集まる日本民間放送連盟(民放連)やNHKに提示し、自主的にルールを策定するよう求めていく。

 記者会見で船田会長は、賛否分れるテレビCMについてこう述べた。

 「同じ時間帯に同一分量を流すのがふさわしい。国民投票法が法制化した11年前、民放連はテレビCMで公平が保たれるよう自主的に制度設計すると発表した。だが、実現しておらず、肩すかしをくらった。9月中にも民放連やNHKと意見交換したい」

 巨額な国民投票特需≠当て込む民放連の対応に注目だ。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年9月25日号

 

なお民放連は、9月20日にテレビCMを量的規制しない方針と決めました。

 
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2018年09月07日

【日韓学生フォーラム】 原爆と報道を考える場に 広島の式典取材し 中国新聞を訪問=古川英一

 8月6日の広島。地元の人に言わせると、今年は特別暑いとのこと。その暑さの中、私たちは広島で様々な声を聞き、そして発した。「私たち」とは、2回目を迎えた日韓学生フォーラムに参加した学生30人余りと、実行委員で同行したメディアの記者OBら総勢約50人のこと。ジャーナリストを目指す日韓の学生に、様々な現場を見てもらい、相互交流を図る企画だ。

空虚な首相挨拶

8月5日から3泊4日、学生たちは広島市内のゲストハウスで合宿≠オた。戦後73年の原爆の日に、原爆ドームに近い平和記念公園に向かった。

平和記念式典。朝から立っているだけで汗がふき出す。私は会場には入れず、公園の一角でスピーカーから安倍首相の挨拶を聞いた。

昨年の夏、国連で核兵器禁止条約が採択されたこと、さらに秋にICANがノーベル平和賞を受賞したこと、いずれも被爆地・広島の人々にとってはかけがえのない出来事であるはずだ。だが、安倍首相は一言も言及しなかった。

安倍首相が発した言葉は、私が広島で聞いた声の中で最も空虚なものだった。この空虚さに、一瞬途方に暮れた。原爆投下の悲惨さをどう伝え、核廃絶の声をどう国内外に広げていったらよいのか。問いが頭の中をめぐった。

6日午後に、中国新聞本社を訪問し、これらの問題と長年、格闘してきたジャーナリストの話を学生たちと一緒に聞いた。話し手は同紙の江種則貴特別編集委員だ。紙面づくりが一年でも最も忙しい日であるにもかかわらず、快く時間を割いてくれた。編集局の見学もできた。

新しい発見ある

江種氏は、広島には原爆の体験が根づいていること、同時に日常の暮らしと被爆体験が遠くなっていることを指摘した。広島を被害者としてとらえるだけでなく、戦争での日本の加害責任についても報道してきたという。「被爆者に加害責任を語ってもらおうとは思わない。加害責任を踏まえたうえで、広島はまず被爆者の声を伝えるのが役割だ」と語った。

飛び入りで、この場に参加したのは朝日新聞OBで、原爆報道に長年関わってきた岩垂弘さんだ。岩垂さんは「毎年8月6日は広島の地に立つ」ことを決意して実行してきた。「原爆の問題は根が深く、まだほとんど知られていない。広島を49回訪れても新しい発見がある」と話した。

翌7日は、元広島市長の平岡敬さんに講演してもらった=2面参照。中国新聞の記者時代に韓国人被爆者問題に取り組み、埋もれた被害を世にアピールした。この講演会は学生のほか、地元市民も参加できる日韓フォーラム独自の企画として開いた。

平岡さんは90歳を超えても、その内面から発するバイタリティに圧倒される。ソフトな語り口に、思わず引き込まれてしまう。「記者をつき動かしているのは、社会の不正義への怒りだ。そして弱者の立場に立つことが欠かせない。その一つが私にとって韓国人被爆者問題だった」と振り返った。

平岡さんは取材を通して韓国人被爆者の支援運動に関わっていく。迷いながらの行動だった。「ジャーナリストは当事者になってはならない鉄則がある。客観報道をすべきだと。その鉄則を踏み外して救援運動に加わった。当事者となることがいいのかどうか。でもそれは人間として許されるのではないか」。今でも平岡さんの自問は続くという。

学生たちは講演後も、昼食を一緒に取りながら、平岡さんを囲んで質問攻めに。平岡さんは「何のためにジャーナリストになるかが問われる。何でもいいから、自分はこういうことをやるために記者になる、ということを大事にしてほしい」と学生たちに助言した。

教師の像に感動

日韓フォーラムの最後は、参加者が期間中に一番感銘を受けたことを、スマホで撮影した写真を前に語る「マイベストショット」の時間だ。学生たちは夜遅く、未明まで語らい、交流を深めた。それぞれが見たもの、視点、感じ方は千差万別。その声をいくつか紹介したい。

広島県出身の女子学生は、平和記念式典の会場で黙とうの際、そっと亡き父親の遺影を取り出す男性を見た。聞くと被爆2世で、今は語り部の伝承者として活動をしているという。その姿を見て「大切な人を忘れないジャーナリストになりたい」と彼女は語った。

 韓国の女子学生は平和公園にある、教え子を抱きかかえる教師の像の前で、自分より弱い存在を助けようとした教師に感動する。そして被爆者の問題に取り組む日本こそが平和のメッセージを発信してほしいと呼びかけた。

日本、韓国、それに中国からの留学生と何人かで、メッセージを書いた灯ろうを流したという男子学生は「一緒に流した仲間がこれから何になるにせよ、同じ方向を向いて行けたならと淡い希望を感じ、少し幸せな気持ちになった」と話した。

広島で聞いた多くの声、自分たちが発した声はこれからの糧になっていくに違いない。昨年11月にソウルで初めて開催した「ジャーナリストを目指す日韓学生フォーラム」はまた一つ、大きな収穫を得た。      

古川英一

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年8月25日号
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2018年09月01日

《編集長EYE》 検察は政治資金規正法にうとい=橋詰雅博

 国会議員などの政治資金収支報告書を閲覧できる公益財団法人「政治資金センター」などが企画した「政治と金をどうチェックするのか」と題した集会が都内で7月初旬に開かれた。

 これに出向いた理由はパネラーとして興味深い人物がいたからだ。その人は前田恒彦さん(50)で、元大阪地検特捜部主任検事だ。名前と肩書で思い出された方もいるだろう。郵便不正に絡む厚生労働省の偽証明書発効で逮捕された厚労省元局長の村木厚子事件(2010年)を担当した検事だ。裁判で検察によるデッチ上げが明らかになり、村木さんは無罪が確定した。村木さんを犯罪者に仕立てあげるため前田さんは証拠物件のフロッピーディスクの中身を改ざんし、証拠隠滅罪で懲役1年6カ月の判決を受けた。また法務大臣から懲戒免職で処分された。12年5月に満期出所した。

 大阪・東京特捜部に合計約9年在籍した前田さんは、政治とカネの問題でこう語った。

 「政治資金規正法違反の虚偽報告は、形式犯(うっかりミスで法に触れる犯罪、悪質の度合いは低いとされる)扱いです。被疑者の記帳ミスと裁判所は甘い判断をし、下される判決は執行猶予付きです。これでは労多くして益少なし、大山鳴動してネズミ一匹だ。軽くみているから政治資金規正法の条文を読んでいる検事は極めて少ない。下地がなく、経験不足です。巨額やウラ金がなければ、政治資金規正法違反では踏み込まない」

 ただし脱税が悪質ならば起訴するケースはある。

 「目安は一般的には5000万円です。大バッチ≠キなわち国会議員ならば1億円という暗黙のルールがある。このルールに達していない事案なのに、内偵を進めたら法務省からストップがかかります」(前田さん)

 検察には政治資金収支報告書のデータベースはないそうで、頼るのはメディアだという。

 前田さんは法曹界に戻る意思はない。ブログで刑事司法に関する解説や主張を発信している。

橋詰雅博(JCJ事務局長兼機関紙編集長)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年8月25日号
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2018年08月30日

名古屋マンション建設反対で無罪確定 国に賠償求め提訴=加藤剛

 名古屋市瑞穂区白竜町のマンション建設反対運動で現場監督に暴力をふるったとして逮捕・起訴され、裁判で無罪が確定した同町の薬剤師奥田恭正(やすまさ)さんが7月24日、国・検察庁と愛知県(警察本部)に計1100万円の賠償を求めるともに、捜査で得た指紋やDNAなど個人情報の抹消を要求する訴訟を名古屋地方裁判所に起した。
 奥田さんは同時に現場監督や建設会社に対しても「あいまいな証言などで犯人扱いされ迷惑を蒙った」として計1100万円の損害賠償を求めて民事訴訟も提起した。

 奥田さんはマンション建設に反対する住民運動の代表で、一昨年10月「現場監督を両手で突き飛ばした」という暴行の容疑で逮捕・起訴された。
 しかし名古屋地裁は今年2月「防犯カメラの映像など警察側の証拠でも暴力行為は立証されず、現場監督の証言も二転三転あいまいで信用できない」として奥田さんに無罪を言い渡し、検察は控訴せず無罪判決が確定した。

 奥田さんは訴状の中で国家賠償を請求する理由として、警察が防犯カメラの動画を見せずに「映像に暴力場面が写っている」と言って自白を強要したこと、逃亡の恐れがないのに十五日間も勾留したことなどの不当な捜査を指摘し、無罪確定までの一年四か月の間容疑者・被告人の立場に立たされ「物心両面で多大な損害をこうむった」と主張した。

 奥田さんは訴状を提出したあと司法記者クラブで記者会見し次のように語った。
「無罪は確定したがこのままでは納得できない。高層マンションの建設に反対し抗議しに行ったら逮捕され、薬局が家宅捜索された。その後も拘留が続き、一年余の長期にわたり容疑者、被告の立場に立たされ辛い思いをした。無罪が確定したあとも警察は『あれは正当な捜査だった』と言い、謝罪の一言もない。現場監督は『このままでは自分がウソをついたことになるから控訴してほしい』と言って検察庁に控訴の要請まで行った。無実の市民を犯人に仕立てるデッチ上げは許されない」
 奥田さんは提訴の理由をこのように説明し、最後に「裁判をしている間に工事は進み一五階建てのマンションは出来てしまった。しかし環境を守る運動はこれからが本番だ」と強調した。

加藤 剛(東海支部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年8月25日号
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2018年08月16日

《支部リポート》 関西 6・18大阪北部地震 女児の死はやりきれない=井上喜雄

6月18日朝7時53分 どんと突き上げるような振動を伴う揺れが起こり直後にあちこちの携帯電話に緊急警報が流れ、緊急放送も地震を告げた。直下型地震のため揺れは事前に観測できず、警報は揺れの後だった。緊急警報も直下型の場合、役に立たない。

京阪神の在住者は1995年の阪神大震災の大きな揺れを経験している。今回はその時と比べれば揺れも小さく時間も短く感じた。(事実マグニチュードの数値は低かった)怖かったという感想もあまり聞かない。

ただ震源地は大阪北部(高槻・茨木市)で、このあたりにはいくつも断層帯が存在するとされており、熊本のようにこの地震の影響で近接する断層が連動したらとの小さな恐怖が1週間ほど続いた。

市民の多くが出勤前という時間帯のため大阪市内での人的被害は極めて少なく、壁に亀裂が入った、食器棚や本棚が倒れるなどの被害はあった。

死者は大阪市と震源に近い高槻市および茨木市で発生しており、ブロック塀の倒壊や家具が倒れたことによる圧死だった。高いブロック塀の危険性が、犠牲になった女子児童の死によって告発されたのがやりきれない。

結局、死者5名、負傷者は近畿2府5県で423名(うち重傷者10名)、住家の全壊3棟、半壊19棟、一部破損10,802棟だった。火災発生件数は大阪府と兵庫県で8件と少なく、阪神大震災のような直後に大出火の二の舞は避けられた。

JR在来線や私鉄各線、大阪地下鉄など鉄道は8時間以上ストップし帰宅時間帯までの復旧がならず、帰宅困難者が多く発生した。新淀川大橋を徒歩で渡り帰宅する人達の途切れない様子がTV中継され、物的損害以外の時間的被害の膨大さが浮き彫りにされた。

鉄道各社は自動改札の普及など以前と比べると大幅に人員が減っており災害が起こると復旧するにはかなりの時間を要する様子だ。

揺れの大きかった地域のスーパーやコンビニから水、パン、インスタント麺などがあっという間になくなっていたのは説明するまでもない。

井上喜雄(のぶお)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年7月25日号
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2018年08月15日

《リアル北朝鮮》 金委員長 経済停滞に激怒 幹部の責任を追及=文聖姫

  最近、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は機嫌が悪い。

 国営・朝鮮中央通信が17日に伝えたところによると、咸鏡北道の清津カバン工場や漁郎川発電所建設現場を現地指導した際、生産が滞っている状況や建設が進んでいない状況を厳しく叱責している。

 たとえば、漁郎川発電所では、内閣の責任者がここ何年間ダム建設現場に一度も現れていないとの報告を受けて激怒。「発電所建設をする気があるのかないのか」「なぜここに至るまで内閣は何の対策も取らなかったのか」「現場に来なければ実態が分からないし、実態が分からなければ対策を立てようがないだろう」などと内閣の態度を批判した。

 清津カバン工場でも怒りが爆発。「道党委員会は形式的に働いている」「党の方針を受け止め執行する態度がなっていない」「党の政策を貫徹するために懸命に取り組んで闘うという仕事の姿勢がなっていない」などと指摘した。

 金日成、金正日時代にも指導者が現場の状況を厳しく叱責した場面はあっただろう。ただ、このように表に出てくることはあまりなかった。こうした報道は労働新聞などを通じて国内の人々に浸透するだけでなく、朝鮮中央通信などを通じて海外の人々にも広く知れ渡る。金委員長はそのことも想定して、こうした報道を流させているのではないか。党中央委員会宣伝扇動部で第一副部長を務める妹の金与正氏の指示かもしれない。

 金委員長は、内閣や道党委員会の責任を追及していくことも明言した。漁郎川発電所では、「党中央委員会は内閣と省、中央機関の無責任で無能力な活動態度を厳しい目で注視してい

る」と警告。  

清津カバン工場では、カバン工場を建設した当時に道党委員長だった人物と党中央委員会の当該部署の活動を全面検討し、厳しく問責し調査するよう指示した。

文聖姫(ジャーナリスト・博士[東大])

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年7月25日号
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2018年08月04日

《編集長EYE》 捜査中止 小金井署「疑惑の事件」=橋詰雅博

 安倍改憲に反対する署名活動をしていた東京・小金井の市民3人が「住居侵入罪」の口実で小金井警察署に連行された3月末の事件(本紙5月25日号で既報)が解決した。

 5月30日に小金井署は3人の市民の弁護人に対し、電話で「これ以上の捜査は行わない。捜査を終結し、検察庁への書類送検もやらない。また刑事訴訟法上の微罪処分(軽微な犯罪で公訴提起を必要としない事件を警察段階で終結させる)でもない」と言ってきた。警察は捜査を断念・中止したのだ。市民3人の連行は不当だったことを警察自らが認めたのである。

 7月5日に市内で「不当連行事件 勝利報告」集会が行われた。

 改憲反対の署名活動を委縮させる狙いだった警察は、強引な捜査を行った。集会で弁護人の長尾宜行弁護士は、この事件の特異性をこう説明した。

 「トラブルは何も発生していないのに3人は強制連行された。権限の濫用を戒めた警察法2条2項に違反している。任意同行しか求められない状況下での強制連行は、刑事手続き上、重大な違法行為だ。事情聴取された3人とも、所属団体や署名活動の目的、いつ、どこで誰と相談したかなどを取調官から聞かれている。思想表現の自由、政治活動の自由を侵害するような取調です。

 警察権力の横暴さをむき出しにした戦慄すべき事件でした。その捜査を中止させた。民主主義が警察権力の牙をへし折った画期的な勝利です」

 小金井署を出る際、私服警察官から「もう一回、署に来てもらい調書に署名してもらう」と告げられた81歳の男性は 「精神的につらく、長い2カ月間でした。勝利によって民主主義が守られたと実感しています」と胸をなでおろした。

 3人が署名活動を行った出入り自由な問題のマンション(全18室)は警察が民間から建物を借りている「警察専用官舎」だった。共産党都議団の情報開示請求で分かった。警察によるつくられた「疑惑の事件」だった可能性が残る。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年7月25日号
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2018年07月12日

《鳩山元首相インタビュー2》 国交正常化なしでは拉致解決せず 圧力一辺倒外交は破綻 東京五輪を対話のチャンスに=橋詰雅博

――日本人拉致問題の解決法は?

 トランプ大統領や韓国の文在演大統領に頼っていてはダメです。安倍晋三首相と金正恩委員長がお互い心を開く状態にならない限り、本音は出ません。ではどうすればいいのか。金委員長は「いつでも話し合いましょう」と言っているのだから、日朝会談を実現する。会談を通じて国交正常化に向けて話を進め、信頼を高める過程で、拉致問題をきちんと取り上げる。そうすれば明快な方向性が出てきます。

日本に分断の責任

 そもそも朝鮮半島の南北分断は、日本が半島を植民地支配(1910年から45年の35年間)したことに起因している。日本に分断の責任があります。世界はそういう立場から日本を見ている。韓国も北朝鮮も日本のおかげでこうなったという気持ちがある。国家の分断の歴史をつくった日本の責任は重い。お互い過去の歴史を冷静に見ながら拉致問題を話し合う。結局は、日朝国交正常化することが拉致問題の解決につながる。

――安倍首相の外交政策をどう評価していますか。

 安倍首相は、「大日本主義」すなわち日本を強い国家にしたいという願望がある。敵視する中国と北朝鮮の脅威論を高め世論を煽る一方で、日米同盟を強化し、自衛隊の増強と配備を拡大、自衛隊を海外派遣するため安保法制を成立させた。私は安倍首相が描く大日本主義に真っ向から反対です。武力による平和はあり得ない。中国も北朝鮮も日本に侵略する可能性はゼロです。しかし、とくに北朝鮮の脅威がなくなると自衛隊増強の理由などが成り立たないから、北朝鮮を悪者と決めつけ、「対話の時代は終わった」とか「最大限の圧力をかけ続ける」と経済制裁を含む圧力の強化というメッセージを発信している。諸問題を対話路線で解決を目指す世界の潮流から安倍外交はかけ離れている。

 南北首脳会談に端を発し中国、ロシア、アメリカが朝鮮半島の平和のため対話路線にのっている。支持率のアップを狙い拉致問題に取り組んでいるというポーズだけのPRはもう止めて、安倍首相は日朝会談に踏み込むべきです。

日中韓五輪会議を

――提唱する「東アジア共同体」構想にどんなプラスがありますか。

 この地域における経済の発展は重要だが、それ以上に不戦共同体≠構想でイメージしている。今までは北朝鮮はそこから抜けていた。米朝首脳会談によって、北朝鮮が不戦共同体に組み込める環境づくりの第一歩になった。ようやく方向性が見えてきた。

――2月の平昌冬季五輪に南北統一チームが参加し盛り上がった。20年の東京五輪、22年の北京冬季五輪に北朝鮮をどう組み込むか重要になってきますね。

 昨年11月末にヨーロッパでギリシャのパパンドレウ元首相と会ったとき、彼から「来年から4年間でアジアでは3回もオリンピックが開かれる。北朝鮮と対話するチャンス」とアドバイスされた。ギリシャはオリンピック発祥の地ですから五輪への思い入れが強いので、そういう言葉が出てきたのでしょう。私のおじぃちゃんの一郎が文部大臣とき、「スポーツ選手は、なみの外交官よりも外交官だ」と評価していたことをどこかの本で読んだことがある。米中関係の改善につながったピンポン外交=i1971年、名古屋市で開かれた世界卓球選手権に出場した中国選手が米国選手らを自国に招待)や今年の平昌五輪の成功を見ると、そう思います。日中韓の担当者レベル会議を設け、北朝鮮とどう協力するかなどを話し合い、平和の祭典に相応しい五輪にしてほしい。日本政府に動いてもらいたいですね。

人の命奪ったのに

――安倍首相夫妻が深く関与するモリカケ疑惑をどう思いますか。

 誰が見ても安倍首相はウソをついている。自身も分かっているけど、長く総理を続けたいから粘り腰を発揮している。私は失敗した人間だが、総理在任中、ウソは1回もついていない。それだけは言える。しかも森友学園問題では近畿財務局職員が自殺している。自殺者まで出ているのに総理を続けたいのか。人の命を奪ったという厳粛な事実をどう受け止めているのか。私なら、申し訳ないと毎日さいなまれる。潔く、総理を辞めるべきです。そうしないと日本の風土にとってよくない。子どもたちが大きくなっても、平気でウソをついてもいいという感情が頭の中に残ります。

 官僚も立身出世が目標だから官邸のいいなりです。国民不在の政治と行政に成り下がっている。こうした事態に陥らせた責任は、国民の信頼を失いかけているメディアと自己保身に走る与野党にもあります。

聞き手 橋詰雅博 河野慎二

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年6月25日号
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2018年07月10日

《鳩山元首相インタビュー1》 米朝首脳会談 半島非核化へ第一歩 「ディール外交」功を奏す=橋詰雅博

 トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との史上初の米朝会談は、「朝鮮半島の完全な非核化」に向けた具体策がなく、日本人拉致問題の前進もなかった。中身に乏しい会談だったが、歴史的な米朝首脳の対面は思わぬ成果を生み出し、米朝関係は改善に大きく踏み込んだ。東アジアの平和と安定を目指す「東アジア共同体」構想を唱える鳩山友紀夫元首相(71)は、本紙のインタビューに応じ、歴史的な米朝会談などについて語った。(橋詰雅博JCJ事務局長兼機関紙編集長)

米本土に攻撃可能

――米朝首脳会談をどう見ますか。

 会談に向かわせた大きな要因になったのは、北朝鮮が昨年11月に発射した大陸間弾道ミサイル「火星15号」(ICBM)の成功です。

 すでに核実験はうまくいっていたし、これでミサイルもアメリカ本土まで届くということが証明された。今までアメリカの核兵器やミサイルの威力におびえていた北朝鮮は、この成功でアメリカ本土を攻撃できる核弾頭搭載のミサイルを用意できたわけです。本当に届くかどうかわかりませんが、北朝鮮はアメリカと対等に交渉できると考えた。つまり自分たちも非核化を追求するが、アメリカも朝鮮半島から手を引いてほしいという交渉力を持つことで、非核化が現実的な意味をもつ出来事だったと思います。このことで、もしかしたら大きな動きが出てくると予測していたら、北朝鮮は翌年2月の平昌冬季五輪に参加し、アッという間に4月の南北首脳会談まで進展した。

 北朝鮮が金日成時代からほかのことを犠牲にしてまでずっと核・ミサイル開発を進めてきたのは、アメリカとの交渉能力を持つという一点だけだった。

一朝一夕は無理だ

――アメリカの政治状況の変化も要因に?

 戦争を仕掛け利益を求める軍産複合体にのるヒラリーが大統領だったら、米朝首脳は実現しなかったでしょう。トランプ大統領は軍産複合体と距離を置いている。アメリカファーストによって政治面でも経済面でも世界をリードしていくにはディール(取引)が必要とトランプ大統領は考えている。

 得意のディールで史上初の米朝会談をうまく乗り切れば、11月の中間選挙で勝てるし、2020年の大統領選での2期目の勝利を得られるという戦略を立てていたと思う。大統領がトランプだったから、アメリカも歴史的な会談のチャンスをつかむことができた。

――米国の方針「朝鮮半島の完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)は実現できるのでしょうか。

 1回の首脳会談でCVIDの達成は無理です。完全な非核化は一朝一夕に行かない。首脳会談はこの先も開かれる。北朝鮮が対米交渉能力を持ったということは、朝鮮半島を核のない平和な状態にしたいという思いも北朝鮮にあるのは確かだ。アメリカと北朝鮮がどうやって核兵器や武力の両レベルを下げていくかが課題です。交渉は時間かけて段階的にステップを踏んで進めていくべきです。おそらく非核化にメドをつけるには数年かかるでしょう。

《鳩山元首相インタビュー2》(12日付)に続く

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年6月25日号
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2018年06月28日

米軍基地 置きたいのは誰か 沖縄から見る米朝急接近=黒島美奈子

 戦後73年、沖縄に駐留し続ける在沖米軍。駐留の理由や根拠はその時々で変化してきた。

 最初の米軍基地は1945年4月1日、沖縄島の読谷村に上陸した米軍が南北へ侵攻しながら日本軍の飛行場跡や、住民の土地を次々と奪い建造された。理由は間近に控えた日本本土攻撃の拠点として。現在、日米両政府が名護市辺野古へ移設するという米軍普天間飛行場(宜野湾市)が造られたのもこの時期だ。

 戦後は、朝鮮戦争やベトナム戦争の出撃拠点として、沖縄の米軍基地はさらに拡大していった。同じころに本土では米軍基地の反対運動が激化。国民の反発を避けるためいくつかの基地機能が沖縄へ移転された。

「地理的優位性」

日本復帰後は、日米が結んだ「安全保障条約」によって米軍の沖縄駐留が継続することに。日本防衛の「地理的優位性」が沖縄にあると、日米が喧伝するようになったのはこのころからだ。

 しかし、冷戦が終わるころにはこの「地理的優位性」に疑義を唱える声が増える。そんな中で発生したのが1995年の米兵による少女暴行事件だった。事件をきっかけに日米は普天間飛行場の返還を宣言。沖縄にとって史上初の米軍基地縮小の道筋となる米軍再編ロードマップも誕生した。消えかけた駐留根拠。そこに再び息を吹き込んだのが北朝鮮のミサイル問題である。

 元内閣官房副長官補の柳沢協二氏は「軍隊をどこに置くかは財政的、政治的な理由で決まる」と言う(2018年4月28日付『沖縄タイムス』)。「米軍が対北朝鮮や対中国のために沖縄にいなければならない軍事的理由は元々ないが、それを説明する論理として脅威論が使われてきた」 

 脅威論を使ってきたのは日米両政府だ。日本や米国本土に一気にミサイルが飛んでくる危険性の高まりを沖縄への米軍駐留の根拠と明示。2017年度の防衛白書では北朝鮮などに「相対的に近い(近すぎない)」位置にあるという表現で沖縄の地理的優位性を強調した。

 だがこの根拠には疑問も湧く。なぜなら米国を敵対視する北朝鮮が、日本を攻撃対象とする理由として米軍基地の存在を挙げたからだ。それは、米軍の駐留根拠である日米安保こそが、戦争を誘発する危険性があることを示している。

「ほかの任務」とは

 米国と北朝鮮の首脳の歩み寄りを演出した6月12日の米朝首脳会談。終了後の記者会見でトランプ米大統領は、在韓合同軍事演習の中止に言及した。会談によって北朝鮮の脅威が多少なりとも薄れたことを示唆する発言で、日米が主張する沖縄への米軍駐留の根拠が揺らぎ始めた瞬間だった。

 ただ、在沖米軍四軍調整官のニコルソン中将は4月、米朝首脳会談を前に記者会見し、北朝鮮の非核化が実現した場合でもほかの任務への対応を理由に駐留は必要との認識を示した。会談の成果が沖縄駐留に与える影響を見通したかのような発言だった。

 ニコルソン氏が言う「ほかの任務」とは何か。東アジアの安全保障を盾に、米韓合同軍事訓練中止に即座に懸念を示した小野寺五典防衛相の態度がそれを暗示している。脅威の消失を理由に引き揚げようとする米軍を引き留める日本の姿である。

 沖縄に米軍基地を置きたがっているのはほかでもない日本だ。米朝首脳会談で見えたのはそんな事実だった。

(沖縄タイムス社会部副部長兼論説委員)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年6月25日号
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2018年06月27日

他国頼み 無策の証明 拉致問題 安倍「司令塔」発言に唖然=蓮池透

米朝首脳会談の実現は、懸案の日本人拉致被害者の解決につながるのだろうか。これについて、北朝鮮による拉致被疑者家族連絡会(家族会)元副代表の蓮池透さん(63)に寄稿してもらった。

☆ ☆

 昨年まで米朝関係は緊張を極め、「開戦前夜」「Xデーはいつか?」とまで言われるほどであった。しかし、今年に入り東アジアの情勢は劇的に変化した。4月27日ついに文在寅大統領と金正恩国務委員長による首脳会談が実現し、「板門店宣言」が発表された。さらに、米朝首脳会談も実現するなど、朝鮮半島の非核化、朝鮮戦争の終焉へ向けて一挙に南北融和が進み、世界は圧力局面から対話局面となったのである。そうした中で日本は「蚊帳の外」「周回遅れ」と誰もが認めているにもかかわらず、安倍晋三首相は、ひとり自覚もなくただ「拉致問題の解決」を唱えている。



首相は言行不一致

 以前から、拙著やさまざまな機会を通じて、安倍首相は拉致問題を政治利用する気はあっても、本気で解決する意欲などない、と訴えてきた。日本政界の現況を見れば、噓が公然とまかり通る憂慮すべき状態であり、その元凶である安倍首相は、政治家としての信念や矜持など全くない、ただ権力にしがみつくだけの言行不一致の人物だと考えている。

米朝首脳会談の知らせを聞いて焦った安倍首相は、4月12日に訪米し、トランプ大統領に会談で拉致問題を取り上げるよう要請した。しかし、拉致問題はもとより日本と北朝鮮の間の固有の問題である。それを「アメリカ・ファースト」を標榜するトランプ大統領が拉致被害者それも日本人を救出するだろうか。本来、北朝鮮側との独自交渉を早急に展開し解決すべきだった問題を、主体性や当事者意識を持つことなく他国頼みにするしかなかった。これこそ、日本がお手上げ状態で、これまで安倍首相がいかに無策であったかという事実の証明である。

 安倍首相が講じた手段は、北朝鮮に対する経済制裁などの「圧力」のみ。だが経済制裁により、北朝鮮がもがき苦しみ自ら拉致被害者を差し出してくる―この理屈は、幻想に過ぎない。そのツケが、現在の「蚊帳の外」状態という形で回ってきているのである。しかし「北朝鮮が圧力に屈した」と強がりの声が聞こえてくる。ただ呆れるばかりだ。極めつけは、家族らの集会で自分が拉致問題解決の「司令塔」だと発言した。遥かに厚顔無恥の域を越えており言葉がない。

 ここで大きな疑問が湧いてくる。安倍首相は、果たして東アジアの平和を望んでいるのだろうか、と。昨年の衆院選挙で、戦中を想起させる「国難」という言葉を使い「北朝鮮の脅威」を煽り勝利したのだから、北朝鮮は「脅威」でなくては困るのであろう。



独自ポリシーなし

 「祭りのあと」の状況で安倍首相は、拉致問題にどう対処するのか。「対話のための対話は意味がない」と主張していたのに、トランプ大統領が対話だと言えば「支持する」、首脳会談中止にも「支持する」、米国の言うことは何でも支持である。独自のポリシーなど微塵もない米国追従のなせる業である。しかし、いい加減に圧力一辺倒から対話へと路線変更することが基本であり、日朝首脳会談しか手段はない。ただし、「備え」がなければ、「全員返せ」「解決済み」の水掛け論で終わってしまうのは自明だ。そこには、拉致被害者に関する「インテリジェンス」が必須なのである。「解決済み」とは言わせない強力な「インテリジェンス」だ。

 果たして、安倍首相はそれを保持しているだろうか。そこは「外交の安倍」、当然「備え」はあるはず。1回目の小泉訪朝からすでに16年も経過しているのだから。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年6月25日号
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