2019年12月28日

【編集長EYE】政府推進の5G 人体への悪影響ひそむ=橋詰雅博

 国家安全保障会議(議長・安倍晋三首相)の事務局を担う国家安全保障局(局長・北村滋前内閣情報官)に来年4月に経済政策を立案する「経済班」が新設される。米国家経済会議(NEC)にならったこの日本版NEC≠ヘ、経済的手段を介して国の安全保障を追求する「経済安保」がその役割だという。手がける目玉政策が次世代の高速移動通信方式「5(ファイブ)G」の普及と促進だ。

 5Gは、超高速、大容量、低遅延、多接続が特長とされる。AI(人工知能)や自動走行車、ロボットなどにつなげて実用化すれば、あらゆるモノがネットでつながるIoTが実現されて日常生活が飛躍的に便利になると喧伝されている。経済班が練った計画をベースに安倍晋三政権は来春実用化サービス開始に向けて企業が5G投資を前倒しできるよう税制優遇支援策を打ち出し通信網の拡充を早急に実現しようとしている。ここには5G関連機器で先行する中国ファーウェイの市場への進出を阻む狙いがある。これはトランプ米政権の意向も反映されている。

 しかし5Gには人体への悪影響が懸念される。周波数が現在のスマホに用いられる4G(3、6GHz以下)よりも高く、最高が28GHzだ。携帯電話などの電磁波による頭痛やめまい、睡眠障害など「電磁波過敏症」が増えている。日本では人口の3〜6%が電磁波過敏症と言われる。しかも電磁波は周波数が高くなるほど波長が短いので、建物などに阻まれ、遠くまで届きにくい。このため5G基地局を約100bごとに設置が必要。東京では、都有施設、公園、電柱、地下鉄、バス停などに設けられる。

 そうなると電磁波被曝量が著しく増える。「健康への恐れがある」とベルギーのブリュッセル首都圏地域やスイスの4州などでは5G導入の一時停止を決めた。

 日本でも市民団体が基地局設置の反対運動を始めている。5Gのウラには健康を害する危険リスクが潜む。

 橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号
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2019年12月27日

【沖縄リポート】 辺野古埋め立て完了100年かかる?=浦島悦子

 辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会(土砂全協=土砂搬出予定地とされる西日本7県の市民団体などで組織)は12月2〜4日、沖縄島の中部、南部、北部の島ぐるみ会議各ブロックと共催で、「沖縄―全国の連帯で辺野古埋め立ては止められる!」連続学習会を開催した。3日間で300人以上の県民が参加し、今後計画されている大浦湾地盤改良工事の問題点や沖縄県土砂条例の改正について学んだ。

 学習会の講師はいずれも土砂全協顧問の3人。湯浅一郎氏(ピースデポ共同代表)は、「現在強行されている埋め立ては民主主義と地方自治の破壊であると同時に、生物多様性条約・国家戦略に真っ向から反し、国家による未来世代に対する犯罪行為」だと述べ、「マヨネーズ状」と言われる軟弱地盤の改良工事に使う砂杭7万7千本及び敷砂として必要な650万㎥(沖縄県の年間海砂採取量の3〜5年分)の砂採取は県内外に深刻な自然破壊をもたらすと強調した。

 北上田毅氏(沖縄平和市民連絡会/土木技師)は、「軟弱地盤問題は想像以上に深刻」「新基地の完成時期も総工費も全く見通しがつかない」と述べた。末田一秀氏(元大阪府環境行政担当)は地盤改良工事に使用される可能性の高い鉄鋼スラグの危険性と、沖縄県土砂条例(埋め立て用材に係る外来生物の侵入防止に関する条例)を、行政指導から法的強制力を持たせるよう改正する必要を説いた。

 連続学習会途中の3日は、沖縄防衛局が民間企業である琉球セメントの安和桟橋から不法に埋め立て土砂搬出を強行開始してから1年目に当たり、桟橋に隣接する護岸を挟んで海・陸連帯抗議集会が行われた。海には66艇のカヌーと抗議船4隻の80人、陸には150人が参加。土砂全協の阿部悦子共同代表、3人の顧問ほか各地からも駆けつけ、連帯を確認した。

 辺野古側埋め立て区域への土砂投入開始から1年目の12月14日には、辺野古で海上抗議行動が行われたが、1年間で投入できた土砂量は全体の約1%余。単純計算でも100年はかかる?ことになり、その間、海は日々破壊されていく。国民の血税の壮大な浪費を許さないためにも来年こそ、この愚行を止めたい。

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
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2019年12月26日

【香川支部】国家との対峙が戦争を妨げる 12・8高松集会=刎田鉱造

「12.8 日米開戦の日に考える」と題して集いを持ちました。主催はJCJ香川支部などが参加している「8・15戦争体験を語りつぐ集い実行委員会」。今年は8月15日が台風に直撃され中止のやむなきに至りました。そこで12月には同じテーマ、同じ講師で集いを持つことにしました。 
 「戦争で解決するしかないの〜社会の分断を超えて」と題して、饗場和彦・徳島大学教授の話を聞きました。「戦争の惨禍いくら語っても戦争は防げない」と話し、「理性で市民をだましにかかる政府・国家と対峙してこそ戦争をなくすことにつながる」と強い言葉で訴えました。

 会場とのやり取りで「先の戦争では日本だけが悪いわけではない」の声があり、これには「そのことだけをとらえて」全体のように話す傾向がある。注意しなくてはいけない」という意見が出されました。また戦争遺跡を調査する問題をめぐっては「韓国人徴用工を働かせた工場や彼らが作った橋など施設を記録していくことも大事だ」と今の課題が論議されました。
 この日午後からは高松駅前で日米共同訓練に伴いオスプレイが香川県の自衛隊演習場に来ていることに対する緊急抗議集会が開かれました。集い参加者も「オスプレイ来るな」とシュプレヒコールを上げました。

はねだ鉱造(香川支部)
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2019年12月02日

【支部リポート】 東海 「報ステ」元女性CPの講演に協力 活気があった3つの学習会

 8月1日に開幕した「表現の不自由展・その後」が脅迫・攻撃を受け3日で中止された。さらに南彰新聞労連委員長を講師に迎えて、充実した「8・15平和を語る名古屋集会」にしようと準備を進めていたのに、台風10号が直撃すると分かって、急きょ中止した悔しさを晴らそうと企画した勉強会が機縁となって、学習活動が活気づいた。

 昨年から続いている連帯ユニオン関西生コン支部という産別労組弾圧事件をテーマに選び、9月3日に愛知駐在の同支部執行委員、元座毅さんを講師に学習会を開いた。東海では大垣署市民監視事件など共謀罪の先取りと言われる事例が続発、同じ共謀罪型事件とあって、私たちは注目した。
 昨年8月からこれまでに、さみだれ式に組合員ら延べ87人が逮捕、1年以上も拘留されている人もいるのに、報道はほとんど沈黙。たまに取り上げれば警察発表の垂れ流しという奇怪さに、参加者から質問が相次いだ。

 同じ頃、愛知県の市民団体「町づくり懇談会」が10月27日、テレビ朝日のイベント事業戦略担当部長、松原文枝さんを招き「テレビ現場メディアの現場から」と題した講演をしてもらうが、この企画に協力してほしいと支部に依頼があった。
 松原さんは、人気番組「報道ステーション」のチーフプロデューサーとして活躍した人で、協力・提携に異論はない。当日は参加者約60人を前に、講演後の質疑で1時間余、現役の部長として答えづらい難問にも逃げずに、丁寧に回答し、学習活動の役割を見事果たした。
 それから1週間後の11月4日、今年度のJCJ賞を受けた山形放送制作のドキュメンタリー「『想画』と綴り方〜戦争が奪った子どもたちの心=vを見る会が開かれた。東京での上映会に参加した丹原美穂幹事が、その場で伊藤清隆・山形放送報道制作局長にお願いして、DVDを貸していただき実現した。

 戦前、文化教育は共産主義的だとして教壇を追われた青年教師・国分一太郎の見た悪夢と、現代における「表現の不自由」体験がピタリ重なったことを改めて痛感した。
 こう見てくると、3者3様の学習だったが、今後も多彩な活動を追求していきたい。

古木民夫  

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
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2019年11月30日

【沖縄リポート】 首里城焼失 琉球の歴史を見直すとき

 この間の沖縄での最大の事件といえば、やはり首里城の焼失だろう。10月31日の朝、テレビ画面に映った、燃え盛り崩れていく首里城の姿は私自身大きな衝撃だった。

 しかしその後の「首里城再建フィーバー」とも言えるような現象には、いささか違和感を覚えている。首里城は「沖縄の象徴・誇り」「県民の心のよりどころ」と誰もが口を揃え、燃えたその日から「再建」に向けた動きが始まり、日毎に勢いを増した。玉城デニー知事は翌11月1日、早速上京して政府に再建への協力を要請。菅義偉官房長官は「全力で取り組む」と応じた。
 地元紙は連日、紙面の多くを割いて若者たちや県内各界の募金活動、県外からの支援など「再建美談」を報道し、NHKは「再建に向けて官民がどれだけ協力できるかが課題だ」と繰り返した。自民党県連は「国営公園である首里城を、管理者である県が焼失させたことをまず(国に)謝罪すべきだ」と主張した。

 31日、辺野古の座り込み現場でも首里城焼失が話題になったが、「首里城が燃えるのを見たとき、あ、これは(政府に)利用される!と真っ先に思った」「首里城は大切だが、辺野古の海はもっと大切だ。自然がなければ文化も生まれない」などの意見が拍手を浴びた。
 集客力のあった首里城の焼失は沖縄観光にとって大きな痛手であり、一日も早い再建を願うのはわかる。沖縄戦で焼失した首里城を並々ならぬ努力でようやく復元(1992年)した研究者・技術者・関係者の悔しさも当然だ。しかし、今必要なことは、やみくもに再建を急ぐのではなく、これを機に、琉球・沖縄の歴史を日本・中国との関係も含めて県民自らがあらためて検証し、問い直す作業と並行しながら、時間をかけて行うことではないか。

 11月2日の『琉球新報』論壇で、沖縄出身の若き大学院生・町田星羅さん(宇都宮大学で琉球諸語復興の研究をしている)は、首里城焼失を琉球諸語の未来と重ねながら次のように述べている。
 「もう一つの琉球文化を支える私たちの言葉は、……最後の灯を燃やしている。この火が消えてしまう前にできることがある。歴史をひもとき、次世代に何を残すのか。私たちは今、自分を見つめ直す時期にある」

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
 
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2019年11月26日

【編集長EYE】 フリー置き去り ハラスメント指針案=橋詰雅博

 厚生労働省によると、2018年度に寄せられた個別労働相談のうちパワーハラスメントなどの「いじめ・嫌がらせ」は8万件超に上り過去最多。相談内容別でも25・6%を占めて7年連続トップだ。

 増え続けるハラスメントに関し、正社員より立場が弱いフリーランスの実態を日本俳優連合とMIC(日本マスコミ文化情報労組会議)フリーランス連絡会、フリーランス協会の3団体が調査し、9月末に公表している。1218人がアンケートに答えた中で具体的なケースはこんな内容だ。

・打ち合わせと称して、ホテルに呼び出されレイプされた(女性40代、映像制作者)

・元大学教授の財団理事長からヒヤリングの場所を日帰りが難しい距離にある別荘を指定された。双方の仕事場が都内にあるのに、毎回、別荘以外では会わないと電話で言われる(女性40代、研究職)

・社長から打ち合わせの後にホテルのバーに連れていかれました。早めに帰ろうとしたら、手を握られました。拒否して帰りましたが、以来、それまでべた褒めだった私の原稿をことごとくけなすようになりました(女性20代、脚本家)

・ファックスで送れば自宅でできる仕事なのに、夜中にわざわざ自宅から2時間もかかるオフィスに来るように強要された(女性50代、編集者)

・主催者の自宅で稽古をすると言われて行ったら、お酒を飲まされて性的な行為をさせられた(女性20代、女優)

 問題はこのようなフリーランスが5月に成立したハラスメント規制法の対象外になっていることだ。厚労省が10月末に労働政策審議会に提示した同法指針素案では、企業は注意を払って欲しいにとどまっている。これでは横行するフリーランスを取り巻くハラスメント状況は、一向に改善されないだろう。

 6月に採択されたハラスメント禁止を求める国際労働機関(ILO)条約の基準より緩い指針案は、フリーランスを置き去りにしようとしている。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
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2019年11月08日

吉田博二さんを悼む 音響技術の名手 元民法労連役員=茂木章子

 吉田博二さん死亡の一報を受け、私は驚愕と疑問そして失望に打ちのめされた。一年ほど前から病気の症状に適合する薬を探す治験のため突き一回近所の大病院に通院していると聞いていた。JCJに来るのは以前より減少していたが、いつも変わらず寡黙な笑顔で作業に集中、時にはきつい冗談を発しみんなの笑いを誘っていた。現役時代は会社も異なり職場も違うので彼との付き合いはなかった。少し伝わっていたのは組合の委員長時代の労務要件獲得と賃金アップの華々しい成果と武勇伝は喧伝されていた。

 博二さんが年々ごろJCJの会員になったか私の記憶は不確かだ。彼によるとJCJか民放組合の主催による沖縄支援に旅行会で私に拉致され有無を言わせず入会させられたと、あの笑顔で放言していたようだ。

 几帳面で正確性高くきれい好きの彼は、常に手を動かし機材の手入れもよく行い、零細運営社員の見本のようであった。JCJ本部の何個もある白いテーブルも、汚れはもちろんのことボールペンの傷も消しゴムや消毒液で黙々と吹いていた。この性格は飲み会でも発揮され、一定量のむとどんなに座がにぎわっていても、お先にと多めの支払いをして帰宅する。メディアの人達は良く飲み議論をし座を沸かせる種族といわれるが、彼はどんな席でも笑顔でうるさい連中の話を聞いていた。

 これからも集会・講演・小森チャンネル等の取材は絶えないが、吉田さんの音響の仕事は外部に依頼し、その都度出費となり頭の痛いことである。

 とにかく安心して一つの物事を任せ続けてきた吉田さんの存在感の大きさにあらためて感謝したい。   

 茂木章子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
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2019年11月05日

【リアル北朝鮮】 白頭山登頂で決断? 金委員長自立繁栄を強調=文 聖姫

 「敵がいくら執拗にあがいても、我々は我々の力でいくらでも良い暮らしができ、我々式で発展と繁栄の道を切り開いていけるというのが、試練と困難を踏みしめ奇跡と遺勲でより飛躍した2019年の総括」

 金正恩・朝鮮労働党委員長は中朝国境の三池淵郡を訪れた際、意味深な発言を行った。冒頭はそのひとつだ。16日発の朝鮮中央通信が伝えたが、訪問の日時は明らかにしていない。

 この視察で金委員長はこうも述べた。「米国を首位とする反共和国敵対勢力が朝鮮人民に強要してきた苦痛は、もはや苦痛ではなく、それがそのまま憤怒に変わった」。

 6月の金委員長とトランプ米大統領による電撃的板門店対面では米朝の実務者協議を開催することで合意、10月5日にストックホルムで実現したが、不発に終わった。協議には北朝鮮の金明吉首席代表と米国のスティーヴン・ビーガン北朝鮮担当特別代表が参加した。金首席代表は、「アメリカは、我々を大いに失望させた。アメリカは自分たちの古い立場や姿勢を手放さないようだ」と述べ(BBCニュース電子版2019年10月7日)、米国側は「アメリカは、創造的なアイデアを提示し、北朝鮮側と良い話し合いを行った」(モーガン・オーテイガス国務省報道官声明、前述のBBCニュース)と表明。双方食い違いを見せている。

 金委員長の三池淵での発言は、この米朝協議後になされたものとして注目される。もはや米国との対話には期待しないとも受け取れるからだ。

 金委員長は、自力更生、自力富強、自力繁栄などの言葉を連発し、(制裁という)圧力に屈せず、自力で道を開いていかねばならないと強調した。

 同じ16日発の朝鮮中央通信は、金委員長が白頭山頂に登ったことを、白馬にまたがった金委員長の写真とともに報じた。金委員長が白頭山に登るときは何かを決断する時であることが多い。金委員長の意味深な発言とともに注目される動きだ。

文聖姫(ジャーナリスト・博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
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2019年11月03日

【沖縄リポート】 軟弱地盤改良で米国が危惧=浦島悦子

沖縄島北部・本部半島の採石場から連日、運搬船16隻体制(1日当たり4〜5隻)で大浦湾に運ばれ、投入される埋め立て土砂。毎日朝・昼・午後の3回、基地ゲートから資機材を搬入するダンプやコンクリートミキサー車―。辺野古新基地建設工事は「順調に」進んでいるように見える。そして政府は、国民・県民、そして何よりも米国にそれをアピールしたがっている。

 しかし実際はそうでないことが、現場にいるとよくわかる。運搬船に土砂を運ぶダンプの1台当たりの積載量を荷台の底板が見えるほど減らしたり、埋め立て用護岸の前面に、必要性に疑問符のつく巨大なテトラポットを多数設置したり、時間稼ぎとしか思われない現状がある。昨年12月14日から始まった埋め立て土砂投入は、10カ月経った現時点で達成率は約1%にすぎない。

 事業者である沖縄防衛局が一番頭を悩ませているのが、大浦湾の埋め立て区域の広大な「マヨネーズ状」と言われる超軟弱地盤だ。防衛局はあくまで改良工事は可能とし、9月6日に「有識者」による「技術検討委員会(委員8人)」を発足させた。運輸省港湾技術研究所出身で辺野古工事の関連会社取締役でもある清宮理・早稲田大学名誉教授を委員長とし、「国の立場」の委員が大半を占める「御用機関」。それでも初会合では、大浦湾の軟弱地盤は羽田空港や関西国際空港とは異なる特有のものであり、完成後の沈下を懸念する声が出たという。

 10月5日、辺野古ゲート前で開催された県民集会で発言した土木技師の北上田毅さんは、防衛局が地盤改良工事の設計のために発注した委託業務を情報公開請求で入手し、「これまでにない内容に驚いた」と話した。業務の実施に当たって当初から完成まで4回にわたる米軍との協議を義務付けているという。「これは、地盤改良工事を日本政府に任せておくことはできず、米軍が直接指揮監督するということだ。軟弱地盤に対する米軍の危惧がいかに大きいかがわかる」「来年初めに防衛局は沖縄県に対し(地盤改良工事を含む)設計概要変更申請を出すと報道されている。県が不承認すれば工事は止まる。展望に確信を持って現場に結集しよう」と呼びかけた。

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
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2019年10月25日

不自由展「検閲」の爪痕 なお残る歴史認識、女性蔑視、民族差別… 公権力介入で芸術の力失う=古川美佳

 国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の一つ「表現の不自由展・その後」(以下、「不自由展」)が、脅迫やテロ予告を含む抗議(電凸)によって開催3日目で中止となるも、66日ぶりに全面再開、そして10月14日会期を終えた。入場者数は過去最高の65万人を記録したが、それは皮肉にもこの国の「表現の不自由さ」があらわになって、人びとの関心を呼んだからであろう。
 ふりかえれば、「不自由展」中止後直ちに識者やジャーナリスト、市民らから抗議の声明や署名がわき起こり、参加アーティストたちのステートメントやボイコットも生まれた。さらに、再開を求める連日の市民運動、アーティストたちによる対話の試み「Re Freedom」、そして何より「不自由展」実行委員会による「仮処分」申し立てが、「検証委員会」まで立ち上げた大村秀章知事と津田大介芸術監督が主張する「リスク管理」とまがりなりにもかみ合って、一時中止を復活させたといえよう。
 とはいえ、抽選による観客制限や荷物検査、撮影禁止等条件付き再開、文化庁によるトリエンナーレへの補助金不交付や河村たかし名古屋市長による不自由展再開抗議の座り込み等、公権力と文化行政の関係は疑問視されたままだ。

表現のタブー暗示
 「不自由展」を中止に追い込んだ批判や脅迫の標的となったのが日本軍「慰安婦」問題を表した〈平和の少女像〉(以下、〈少女像〉)と大浦信行の映像作品〈遠近を抱えて PartU〉だ。この事件がメディアで報じられるたびに〈少女像〉はたびたびTV画面に登場した。しかし大浦の作品は、「昭和天皇の肖像を燃やした」としてSNS上で作者の意図とはかけ離れた言説となって独り歩きし、作品そのものの画像や図版が取り上げられることはなかった。これまでも「反日」の象徴とばかり喧伝されてきた〈少女像〉の露出と、隠ぺいされる天皇の肖像という二つのアンビバレントは、令和の時代の「表現のタブー」を暗示している。
 ところで、〈少女像〉の制作者キム・ソギョン、キム・ウンソン夫妻は、1970~80年代韓国の民主化運動と呼応して生まれた民衆美術の作家だ。植民地、南北分断、独裁政権と続く歴史の激動にあって、民衆美術家たちは表現することで社会変革を試み、弾圧された。

 今回の「不自由展」をめぐっては、「芸術かプロパガンダか?」などの議論が上がった。
 だが、逼迫した政治状況を強いられてきた韓国では、「政治と美術はともにある」。〈少女像〉もこうした文脈で生まれ、若い世代にとっては今やMeToo運動の先駆けとして女性の人権を象徴するアイコンとなっている。「反日」のプロパガンダだと見なしたいのは、見る側の欲望ではないか。

核心問題はここだ
 現代社会を反映する優れた作品が数多く散見された今回のトリエンナーレの中でも、少女像と天皇の肖像から問題の核心が透かし見えてくる。すなわち、表現の自由を脅かした「検閲」の背後にあるのは、天皇や日本軍「慰安婦」、徴用工や沖縄米軍基地等をめぐる歴史認識、女性蔑視、民族差別問題なのである。
 8月2日の菅義偉官房長官の補助金交付に関わる発言、その後の文化庁の補助金不交付こそ、これらの問題に対する政府公権力の政治的イデオロギーのあらわれである。近隣アジア諸国との記憶闘争、そしていまなお日本人を巣食う「天皇タブー」に自覚的にならない限り、私たちは権力の奴隷と化し、国家を内破する芸術の力を失うことになるだろう。トリエンナーレは終わってなどいないのだ。

古川美佳(朝鮮美術文化研究者)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
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2019年10月04日

【編集長EYE】 「不自由展」いきなり中止は勇み足

3日で中止になった「表現の不自由展・その後」。表現・言論の自由を侵害、直ちに企画再開をという市民の抗議活動が止まない。「表現の自由を市民の手に全国ネットワーク」も6日東京都内で集会を開いた。

 同ネット世話人で武蔵野美術大学教授・志田陽子さんは、憲法学者の立場からこの問題を報告した。

 大会実行委員会がいきなり中止を決めたのは疑問だという。

 「会場は公共の施設です。従って行政当局や芸術監督などが、会場にふさわしい作品かどうかなどを協議し、オープンしたはずです。文化芸術基本法の前文では『表現の自由の重要性を深く認識し、文化芸術を行う者の自主性を尊重する』と書かれており、これに則り運営します。中止の理由は安全性が担保できないということですが、基本法の精神にそって、まず一時停止にする。そして安全性の問題が排除されれば、再開する。すぐに中止は文化芸術基本法に反します」

 問題は安全性の担保だ。ガソリンをばら撒くと県にファックスした脅迫者は警察に逮捕され、「9月5日に放送されたクローズアップ現代+から推測すると、嫌がらせ電話やメールはからかいが相当数と思いました」(志田さん)。実態が分かれば、再開を考えてもいいわけで、だから一時停止という措置にしておくべきだったというのだ。

 また河村たかし名古屋市長が中止を申し入れたことについて志田さんは「会場は表現の自由の空間が出来上がっています。公人がふさわしくない言ったときに、実行委員会は『受けつけません』と言うのが仕事です。発言は政治的な中立性から外れている」と批判した。

 河村発言や菅義偉官房長官が言及した補助金交付の検討は検閲≠ノ当たるのか。志田さんは「愛知県が設置した検証委員会が、中止は表現の内容が政治的にまずいからと結論を下したら検閲に当たります」と指摘した。

 会期は10月14日までだ。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
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2019年10月02日

「不自由展」中止に思う 河村市長発言が火をつける 嫌韓に抗議の日本女性に共鳴=加藤剛

あいちトリエンナーレは3年に一回開かれる国際芸術祭で2010年から始まっている。街角でポスターを見る程度の私は、これまで会場に足を運んだことはなかった。

 ところが8月1日のトリエンナーレ開会早々、企画の一つ「言論の不自由展・その後」への脅迫や政治家の介入発言で3日目に中止になった。ツイッターやメールでは「愛トレ」などの愛称が飛び交うほどで、私も初めて見に行った。

 主催する愛知県のホームページ(HP)などで動画や写真入りでこの企画が紹介されており、関心のある人たちは開会前からいろいろ反応していたようだ。企画を快く思わない人たちも情報を拡散した形跡が読み取れる。

 時あたかも日韓の政府同士の対立がけたたましい折の開幕で、反韓・嫌韓の潮流が水面下に淀んでいた。そんなこともあって「平和の少女像」が目の敵にされたのだろう。主催者に対し電話やメール、ファクスで抗議の声が大量に寄せられた。「少女像の展示をやめろ、さもなくばガソリン持参で」というファクスもあり、その上に河村たかし名古屋市長の「少女像展示は日本国民を踏みにじる行為」の発言も重なり、主催者は不自由展の中止を決めた。

 代表の大村秀章愛知県知事は理由について「会場の安全が保てないから」としているが、警備陣はガソリン男にしてやられるようなヤワではない。派遣された沖縄で暴言を吐きながら座り込みを排除し、その違法性を名古屋地裁に訴えられているほどだ。

トリエンナーレの主催者の会長代行でもある河村市長発言は「身内から飛んだ矢」の役割を果たしたと思う。

 エスカレートする嫌韓ムードへの抗議か、ある集会でこんな日本人女性を目にした。平和の少女像の展示に似た一組の椅子が壇上に置かれ、左側に像ではなく、その女性が韓国の民族衣装をまとって座っていた。集会の開始から終了までじっと座っていたが、大きな決断が読み取れた。私はその写真を自分のフェイスブックに載せた(事後に彼女の了承を得た)。彼女に対する攻撃があったら私は断固戦うつもりだ。 

加藤 剛(東海支部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
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2019年09月28日

【沖縄リポート】 本保港で労組が米軍車両を追い返す=浦島悦子

第4次安倍再改造内閣が発足した9月11日、沖縄では、第3次嘉手納爆音差し止め訴訟の控訴審判決が福岡高裁那覇支部で言い渡された。夜間・早朝の米軍機の飛行差し止めという原告の切実な訴えは、一審同様認められず、騒音による健康被害については一審より後退、賠償額も減額された。第1次提訴から37年が経ち、高齢化した原告らの疲れが目立つ。

 翌12日、辺野古新基地建設阻止の座り込みが続くゲート前行動には、嘉手納爆音訴訟原告団や裁判の応援に駆け付けた全国爆音訴訟団のメンバーらが多数参加し、今回の判決の不当性や、各地の状況を訴えた。嘉手納の原告は「基地がいったん造られたら、住民の権利を守ることはできない。

辺野古を嘉手納と同じような状況にしないために、新基地は絶対に造らせない!」と拳をあげた。

 辺野古新基地建設をめぐっては現在、沖縄県が国を提訴した2つの訴訟(関与取り消し訴訟と抗告訴訟)と、私も含む辺野古・大浦湾沿岸住民16人が提訴した抗告訴訟が並行して進行中だ。いずれも、沖縄県が行った「埋め立て承認撤回」(昨年8月31日)を、行政不服審査法を使って取り消した国土交通大臣の裁決は違法だと訴えている。

 住民の訴訟を支える辺野古弁護団は、これまでの判例等から、基地が造られてしまえば「第三者行為論(米軍基地の管理・運営権は米国が持っており、日本政府は関与できない)」で、住民がいくら被害を訴えても救済されないので、基地ができる前に止める緊急の必要性を主張している。

 一方、沖縄島北部の本部港では17日、沖縄県や本部町の不使用要請を押し切って米軍が強行しようとした民間港使用を、港湾労働者と市民らが阻止した。伊江島での海兵隊パラシュート降下訓練の救助艇として使われる小型船を牽引する米軍トレーラーを、全港湾沖縄地方本部の組合員50人が港の入口でピケを張り、港内に入るのを阻止。駆けつけた本部町民、市民らも含め約200人が早朝から夕刻まで、炎天下10時間に及ぶ行動で米軍車両を追い返した。参加したある市民は「自分たちの職場を軍事利用させないという港湾労働者のたたかいに感動し、辺野古のたたかいに勇気をもらった」と語った。

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
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2019年09月07日

【支部リポート】 北九州 抗議行動やまぬ香港 暴力警察の蛮行を目撃=杉山正隆

 「逃亡犯条例」の改正案を契機に起きた香港政府に対する市民による抗議活動は、6月9日の大規模デモから2カ月が経った。8月10日、現地に取材に入った。目抜き通りネイザンロードでは、10日夜9時過ぎ、黒服を着た市民らに、デート帰りと思われるカップル、高齢の男女らと警察隊がにらみ合いを続けていた。突然、20歳代の女性ら数人を警察官が警棒で数十回、激しく殴りつけ押さえつけて手錠を掛けた。

 数千人の市民らは「釈放しろ、警察は恥を知れ」と大合唱。もみ合いの後、警察車両数台と加勢の警察官100人ほどが人波を押しのけて到着。激しいヤジを浴びながら「容疑者」が警察車両に乗せられ尖沙咀警察署に連行された。その後、抗議の声が止まず、警察官らは催涙ガスを発射。市民らは逃げ惑い、脱げた靴や買い物袋などが現場に散乱した。

 翌11日の午後6時半。世界的に有名な雑居ビルの「重慶大廈」(チョンキン・マンション)前のネイザンロードに黒服の男女らがゴミ箱数個を置いた。これをきっかけに、通行が妨げられ、大混乱に陥った。集まった市民は数千人に上り「自由な香港」を訴えたのに対し、警察官らは警告したものの催涙ガスを発射。20歳前後と思われる男女4人が後ろ手に縛られ道路に数十分間座らされ、警察署に連行された。通すよう抗議する日本人に「黙れ、香港から出て行け」と警棒を突き出し怒鳴る警察官も。引き上げる警察官に「こんなに手荒なことをされた。ひどいじゃないか」と腕の傷跡を見せながら詰め寄るお年寄りの姿も見られた。

市民の間で警察への怒りの声が広がっている。催涙ガス弾やゴム弾を市民に発射し、警棒で歯が折れても若者を殴る、地下鉄構内など閉ざされた空間での催涙ガスの発射など行き過ぎた対応に「暴力警察」のイメージが浸透している。

 香港国際空港には9日以降、1万人近い市民が集まり、到着旅客らに「迷惑を掛けてごめんなさい。でも、香港の現状を知って下さい。支援して下さい」などと訴えた。裁判所は中止を命令、中国政府は「テロ」と断じた。

 香港がこれからどうなるのか。これからも注目したいと考えている。

杉山正隆

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年09月03日

【リレー時評】図書館の民間委託 弊害多し 新政策を=守屋龍一

 今夏の猛暑続きは世界規模。中国ではエアコンの効いた場所へ、避暑めあてに移動する「納涼族」が急増したという。書店内もイス持参の子ども連れがいっぱい。書棚の本を持ち出し読みふける映像に衝撃を受けた。
 日本だって地域の図書館は、「納涼族」格好の場所だ。お盆のさなか、住まいの近くにある図書館を訪れると、26℃に調整してある館内は高齢者ばかり。中には居眠りしている老人もいる。
 図書館の利用がこれでいいのか。5月末、岩波ホールで観た映画「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」を想起しながら、考えさせられた。

 6月24日、活字文化議員連盟・公共図書館プロジェクトが、〈公共図書館の将来─「新しい公共」の実現をめざす〉(答申)を発表した。子細に読むと頷ける点が多く、5つの提言についても示唆に富む内容が豊富である。
 まず小泉内閣が進めた規制緩和や民間委託、郵政民営化につながる政策の是非が問われ、公共図書館の運営についても、民間委託の指定管理者制度そのものにメスを入れる、これが緊急テーマに浮上したと指摘する。

 民間委託した図書館の貸出点数の推移を調査したところ、ほぼ2〜3年で貸出率が下がり、5年以上では20〜30%以上も減少し、住民の図書館離れが始まるという。
 さらに民間業者の目先の利益が優先し、長期に図書館の発展を目指す姿勢がない。地域に密着した図書館サービスの提供に向けて、必要不可欠な専門知識のある人材が育成・蓄積されない。
 まずやるべきは図書館職員の劣悪な労働条件の改善だと提言。司書の6割が非正規で働き、賃金は経験を積んだ30代後半でも月13万円。専門職としての能力に応じた十分な賃金を支払い、雇い止め≠見直し、司書が継続して安心して働ける労働環境づくりが必要だと説く。

 いま日本全国にある公共図書館は3300館。そのうち民間業者に指定管理者委託をしているのは640館を超える。なかでも図書館流通センター(TRC)の占有は激しく、333館(全体の65・5%)になる。
 昨年11月、神奈川県海老名市の公共図書館の管理運営を、市は図書館流通センターと「TSUTAYA図書館」(CCC)による合弁事業とし、今後5年間、毎年3・2億円の委託契約を更新。年間の税金投入は市が直営時の2倍となり、市民から批判の声が挙がる。
 公共図書館に納める図書も、いまや図書館流通センターが独占し、〈町の本屋さん〉は、公共図書館という安定した書籍の販売先を失ってしまった。
 図書納入にあたっては地域書店からの直接購入を優先し、装備作業は無償サービスではなく、福祉施設に業務委託して効用促進を図るなど、新たな地域循環型の経済効果を生み出す図書館政策の確立が必要である、と提言する。即実行を願う。

守屋龍一

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年08月28日

【沖縄リポート】 ストップ 海中不発弾の爆破処理=浦島悦子

 ジュゴンの死体漂着から4カ月を経た7月17日、解剖が実施され、同29日、実施主体である環境省(沖縄事務所)・沖縄県・今帰仁村の三者は解剖結果を報道発表した。

それによると、沖縄近海に生息するオグロオトメエイの尾棘刺入に起因する死亡の可能性が最も高いという。多数の鋸歯状の突起を有する長さ約23センチの尾棘が腸管を突き破って腸内を移動し、腸の内容物が腹部全体に充満していたというから、その痛み・苦しみは想像を絶する。死体漂着4日前に水中録音されたジュゴンの頻繁な鳴音は、断末魔の叫びだったのだろう。

沖縄美ら島財団、鳥羽水族館、国立科学博物館の獣医師6名が携わったという解剖結果におそらく間違いはないと思われるが、しかし、これで「幕引き」させてはならない。

亡くなったジュゴンの生息域は辺野古への土砂運搬船の航路と重なっており、直接の接触がなかったとしても運搬船の頻繁な航行が海生生物の生態を攪乱し、通常ありえない事故が起こった可能性は充分ある。今回の事故を遠因も含め究明すること、基地建設の進行に伴って行方不明になった2頭のジュゴンを含め、それ以外にも少なくないジュゴンの目撃情報をもとに琉球諸島全域調査を行うことを環境省や沖縄県に強く求めたい。

そしてもう一つ、ジュゴンの脅威となっているのが、不発弾の海中爆破処理だ。この8月1日にも中城村沖で実施されたが、沖縄戦の悪しき「置き土産」である不発弾は陸上だけでなく沿岸海域にも未だ多数残留しており、海で見つかったものは海上自衛隊が爆破処理するのが通例となっている。しかし、これによって沿岸域に住むジュゴンに直接影響するだけでなく、餌場である海草藻場を含め、沖縄の観光資源であるサンゴ礁生態系そのものを破壊してしまう。

水中にある不発弾はダイナマイトを仕掛けて誘爆しない限り爆発しないため、放置または海溝のような深い場所に移動して「水畜」するのが国際的な常識だという。この常識を行政や市民に広く知らせ、海中爆破処理をなくしていきたい。

ジュゴンの生存の脅威となる要素を一つひとつ取り除いていくことが、彼らを絶滅の危機に追い込んだ私たちの責任だと痛感している。

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年08月27日

【編集長EYE】 米国への忖度で「ひろしま」幻の映画に=橋詰雅博

 幻の映画「ひろしま」を10日午後、都内で見た。奇しくも、その日の夜11時、NHKがETV特集「忘れられたひろしま=`8万8千人が演じたあの日=`」(映画はETVで17日深夜放映)を放送した。上映を主催した憲法を考える会が配布した資料と特集番組から「ひろしま」が製作された経緯はこうだ。

 映画の原作は「原爆の子〜ヒロシマの少年少女のうったえ」だ。自らも被ばくした教育学者・長田新が原爆の惨状を残したいと、子供たち105人の被ばく手記を編纂し、本は1951年に出版された。累計27万部売れ、原爆の恐怖と悲惨さを多くの国民に知らせるきっかけになった。手記を寄せた少年が映画化を発案し、日本教職員組合が製作に乗り出す。カンパを募り、総額4千万(現在の貨幣価値で2億5千万)の製作資金を集めた。監督は「きけ、わだつみの声」などの作品を手がけた関川秀雄、助監督に熊井啓、音楽が伊福部昭で、一年後にあの「ゴジラ」のテーマ曲をつくった。当時の人気女優・月丘夢路が主演し、8万8千の市民が出演。これは日本映画史上空前絶後のスケールだ。原爆が投下された直後の広島市を再現した映画は53年に完成した。

 ところが国内上映直前にアクシデントに見舞われる。試写を見た大手映画会社が反米的と配給を拒否。どこがそうなのか、例えば「日本人が新兵器の『モルモット実験にされた』」というセリフを挙げた。

 筆者はこうも感じた。上映時間104分のうち惨状シーンは30分も続き、強烈な印象を受け、見ているうちに原爆を投下した米国に怒りがこみあげてきた。

 映画は自主上映で公開され、55年ベルリン国際映画祭長編映画賞に輝いたが話題にならず、いつの間にか忘れ去られた。現在、原爆のむごさを後世に伝えるため映画関係者が上映会を各地で開いている。しかし、外交、経済、防衛などあらゆる面で日本は、米国への忖度を続けている。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年08月08日

【支部リポート】 北九州 最新治療と医療支援学ぶ 歯科医ら国際エイズ学会へ=杉山正隆・久保ゆかり

今も全世界で毎年約200万人が新たに感染するHIV/AIDS。4000万人近くが差別や偏見にも苦しむ病禍だ。最新治療や医療的支援のみならず、背景にあるLGBTIQなど性的弱者や薬物依存、性労働などに関する問題解決を話し合う第10回国際エイズ学会会議(IAS2019)が7月21日〜24日、メキシコシティで開かれる。

 会議には160カ国から1万人の医師や研究者らが参加。取材に当たるジャーナリストは千人近くになる見込みだ。HIV/AIDSは、有効とされるワクチンの開発には至っていないものの、発症を遅らせるなど生活の質を上げる治療法はほぼ確立しており、「慢性病」の様相を呈している。

 国連のグテーレス事務局長は「18年前に国連がHIV/AIDSに関する最初の特別総会を開いた頃、『エイズのない社会』など想像できなかった。現在は子どもの新規感染はほぼ半減、成人でも2割減っている」と強調し、30年までにエイズの流行を終焉させる目標を打ち出す。

 国連は、HIV陽性者の90%が検査を受け自らの感染を知り、そのうちの90%が抗HIV治療を受け、そのうちの90%が体内のHIVを検出限界以下にする「90―90―90」を2020年に達成したい、とする。が、実際には「75―79―81」(17年)にとどまっているのが現実だ。

 日本では17年の1年間で1389人が新たに感染。1600人に迫る勢いだった。13年より勢いが衰えたものの「高止まり」にある。累積報告数は約3万人だが、実数は数倍とされる。

 IAS2019では、ワクチンなど最新の研究成果や、35年間で3500万人が亡くなった中、「自然治癒した」とされる2例目の完治例の発表に注目が集まっている。あらためて問題となっているLGBTIQや薬剤依存者、性労働者など「弱い立場の人々」への支援策などが話し合われる見込みだ。

 北九州支部から歯科医師と看護師の資格を持つ2人が正式な取材登録を経て会議を取材する。日本ではほとんど報道されないこうした問題にも取り組んでいく。 

杉山正隆・久田ゆかり

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年08月07日

【リレー時評】 異常気象を無視したニッポンとG20=中村梧郎

7月はじめに九州を旅した。

地球温暖化による集中豪雨。鹿児島や宮崎では死者が出た。異常降雨は三〇年前の一・五倍ほどだという。国は「行政の限界。自分の命は自分で守って」とTVで呼びかけた。動けない高齢者もいるのに国は救わないよ、との開き直りである。

地球環境問題が主題であったはずのG20は一体何の意味があったのか。日本は気候変動防止に背を向けていることが、会議を通じて逆にあぶりだされてしまった。

パリ協定はCO2排出ゼロの目標で合意した。

EUは2050年までに80〜95%を削減する。しかし、日本の削減目標は30年に26%。主要国の中でも最低である。加えて最大のCO2排出源である石炭火力発電を「基幹電源」と位置づけ、25基を新設する。電力企業や銀行はインドネシアなどへの輸出に奔走。原発を拒否したベトナムにも石炭火力を売り込む。日本はパリ協定からの離脱を決めたトランプ政権同様、協定を骨抜きにしたいようだ。

一方フランスは2021年、イギリスは25年までに石炭火力をゼロとする計画だ。豪雨災害が頻発しても日本は「脱石炭」を決して言わない。

G20の次の課題であったプラごみ問題。日本はここでもトリックを使う。「プラスチックは燃やせば良い」これを「サーマル・リサイクル」という…と。焼却はCO2を生み、塩ビはダイオキシンを出す。各家庭がプラを分別しても焼却炉では混焼されたりする。産廃炉を含めて2千基以上の炉が夜昼なくプラを燃やす。これを「リサイクルだ」と称するのは世界では否定されている。

その上で途上国への輸出問題がある。ベトナムのニャチャン港に山積みされた日本のプラごみとドラム缶群を見た。プラは熔かされて質の悪い樹脂となり、残りは野焼きされた。廃棄物の移動を禁ずるバーゼル条約違反だが「有価物」の名目だった。いま排出国への返還が始まっている。

地球の海には800万dのプラごみが漂う。それは砕けてマイクロ・プラスチックと化す。魚類はPCB等を吸着したプラを食べ生体濃縮を進める。危険はブーメランのように人体に還流する。

やれストローだレジ袋だと、国もメディアも消費者の使い捨てを標的にするが、これはプラ生産量3位の日本の、ほんの一部に過ぎない。20年前のドイツ。すでにレジ袋もプラ容器も無いのに驚かされた。倫理観ではない。プラ生産企業に回収責任を持たせたため市場に出なくなったのだ。

昨夏スウェーデンの女高生グレタが始めた温暖化阻止行動は今や125カ国に拡がった。今月、世界7千の大学は「気候危機」を共同で宣言した。

世界から取り残される災害大国・日本。国家が温暖化を顧みず「自分の命は自分で守れ」と言いだすようでは困るのだ。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年08月06日

安倍政権「生活破壊」 学者の会ら緊急アピール 暴走政治を阻止=古川英一

 6月下旬の夕方、東京神田の学士会館に、平和主義・立憲主義・民主主義を基本的な価値とする、学者や市民90人余りが集まった。集会は安保法制に反対するために4年前に設立された学者の会が、暴走する安倍政権への危機感から開いた。憲法や経済学などを研究する学者が次々に発言した。

愛敬浩二・名古屋大学教授は安倍自民党の憲法9条の改正案について「安倍首相は自衛隊を明記するだけで現状は変わらないと説明するが、その現状こそが問題だ。安全保障関連法ができて日本は戦争ができる国へと変わってしまった。9条を改正すれば米軍のグローバルな軍事展開に基地を貸すことを明確にすることになる」と述べ、安保法制を廃止し、ここまで変えられた国の在り方をそれ以前に戻すことを訴えた。

▽間宮陽介京都大学名誉教授は今の日本社会の「破壊」されている状況を列挙した。まず安倍政権が、立憲主義、憲法、そして教育や労働までをも暴走して破壊していること。さらにアベノミクスの失敗により経済が破壊されていること・・本来、経済の目的は国民一人ひとりの生活を向上していくものなのに、アベノミクスは経済成長のために一部の富裕層を優遇するものだと指摘。

大沢真理・東京大学名誉教授は、安倍政権の社会保障に対する考え方は「70歳まで働け、病気になるな、お上に頼るな」と、社会保障の強化どころかむしろ背を向けていると厳しく批判した。

 最後のアピールでは、「自らの蒙を開く研鑽の場としての大学は、未来を切り開くための『自由の砦』たりうるはずです」としたうえで、安倍政権の暴走をくいとめるために主権者としての行動を起こし、議会を動かしていこうと呼びかけた。

集会の中ではメディアの責任の重さを訴える声が上がった。市民が連帯していく仲立ちとなること、ジャーナリストとして私たちがやるべきことはこれからも続くのだ。

古川英一

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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