2020年10月29日

【フォトアングル】 原発もスガも去れ 経産省前テントひろば10年目集会=酒井憲太郎

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 9.11経産省前テントひろば10年目大集会が経産省前で開かれた。2011年3月11日東日本大震災の半年後、「撤去すべきは原発」と訴え、経産省前にテントを設置したのが始まりで、2016年8月に強制撤去されたが、本館玄関前に座り込んで脱原発を今も訴え続けて10年となった。安倍が辞任しても、フクシマは終わっていない。「安倍とともに原発も去れ」「スガも去れ」と講談師が講じた。=11日、東京・霞ヶ関の経産省本館正門前で、酒井憲太郎撮影
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号

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2020年09月19日

【フォトアングル】 日本の戦跡を撮り続ける安島太佳由さん=酒井憲太郎

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  終戦75年を記念する写真展、「太平洋戦争激戦地 慰霊景 沖縄・サイパン・ペリリュー・フィリピンを辿る」(写真)が東京新宿で開かれた。戦後生まれの安島太佳由氏は1995年10月鹿児島県トカラ列島悪石島で対馬丸慰霊碑、地蔵尊を見て、日本の戦跡をテーマに決めた。以来、戦争に関わる物を記録し、忘れてならない慰霊の景色は日本全国から海外へと広がった。=3日、東京・新宿、酒井憲太郎撮影
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年8月25日号

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2020年06月27日

【フォトアングル】 人種差別への抗議集会 東京・渋谷ハチ公前=酒井憲太郎

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人種差別に抗議するために、渋谷のハチ公前には多数の若者が集まった。日本人だけでなく、外国人も参加した。クルド人への暴行抗議にアメリカ、ミネアポリスでの人種差別殺人に抗議するブラックライブズマターからの呼びかけ賛同があった。集会のシュプレヒコールは日本語では「差別警官懲戒免職」など警察に対するもので、英語では世界で使われているという「No Justice, no peace ,no raicist, no police」を訴えた。=6日、東京・渋谷で、酒井憲太郎撮影
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年6月25日号
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2020年05月16日

インパール作戦 戦跡を訪ねた 直滑降の道 苦難を想像 現地に残る空気感を共有=おそどまさこ

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 多大な犠牲者を生んだ旧日本軍によるインパール作戦(1944年)。その戦跡を訪ねる旅をトラベルデザイナー、おそどまさこさんが企画し、8人の参加で1月末に実現した。何を見たのか、おそどさんからの報告だ。

 国は公式発表していないらしいが、「インパール作戦」の戦死者は3万人、傷病者の数は4万人といわれている。
「白骨街道」たどる
 私たちは、日本からインド東北部のコヒマに入り、インパールへ南下した。かつての日本軍の敗退路=白骨街道に隣接した舗装道路を一気に車で走り、国境を越えてミャンマーのタムに入った。
ミャンマーとインド東北部を分ける国境は、北から南へ縦に続く。西のインド側には2千b級の山が連なるアラカン山系、東のミャンマー側には川幅6百b、雨期には濁流で千bにも広がるチンドウイン河がある。
 日本軍は英軍が陣取るインパールの30キロ手前で力が尽きたようだ。武器弾薬、食料などの兵站が当初から不十分だった。
 インパールで印象に残ったことがある。連合軍の墓地では、たった一つの骨でも残っていれば、一人の戦死者とみなされ、一つの墓が創られていた。丁重な扱いに、日本との差を感じた。
冷や汗のドライブ
 日本側のインパール作戦の総司令官、牟田口廉也は将兵の命を軽く考えていた。「味方の将兵5000人を殺せば陣地(インパール)が取れる」。作戦本部で牟田口が話していたという。彼に仕えた若い少尉が記録を克明に残していた。戦争から生き残った元少尉は数年前に、車いす姿でNHKスペシャルの取材に応じ、「兵隊に対する考えはそんなもんです」と怒りをあらわにした。 
 ツアーの圧巻は終盤のチンドウイン河畔の村トンヘ(ミャンマー)から4WDの日本車に分乗して、日本軍が渡河した地点ホマリンへ行く道だ。今までに世界中、100回以上旅してきたが、度肝を抜かれた。スキーの直滑降のような、土と岩の急な山道の上り下りが50回ぐらい続いた。
 インパール作戦のスタート時に、日本軍がチンドウイン河を渡り終え、インド側の2千b級アラカン山系の複雑な山道を、戦車や大砲など部品を分けて進んだというのは、切り立った山のこういう直滑降の道のことを指すのではなかったか。
 そこを3万頭以上の牛馬も連れて、自分のリュックも、大砲も運ぶ。牟田口廉也が将兵たちに強いた様々な苦難を想像するには十分な2時間。命がけ、肝を冷やすドライブだった。
残る空気感を共有
  次の日は軍票(写真)を生まれて初めて見た。チンドウイン河をホマリンから船に乗って南下した。途中の村で散策していたら、村の若者がいた。彼が見せたもの。日本の政府が発行した戦地で通じるお金「軍票」だった。祖父が神棚にしまっていたという。
 戦時中に日本軍が使い、食料や牛馬を調達したと思われる軍票を、こんな田舎の村で、戦後75年たっても村人が大切に持っていた。現金化してやらず、踏み倒し続けていいものだろうか。
 旅の果たす役割は大きい。人々を歴史の現場に連れて行けるし、残されている空気感や痕跡を共有できる。「インパール作戦」の戦地を巡るツアーは21年2月にも計画してる。問い合わせは左記へ
osodomasako@gmail.com
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号

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2020年04月27日

【編集部EYE】 3ショット写真が8億値引きの転機に=橋詰雅博

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 近畿財務局OBの喜多徹信さん(71)と電話で話をした。森友学園事件の口火を切った大阪の木村真・豊中市議の紹介。喜多さんの後輩で、森友学園への国有地売却問題を担当し、自死に追い込まれた(18年3月、当時54歳)赤木俊夫さんの手記と遺書が公開され森友事件が再びクローズアップされたので、取材のお願いだった。
 喜多さんは取材の前にぜひ読んでほしいものが2つあると言った。19年春号『季論21』と、昨年10月兵庫県で行われた全国革新懇交流会記録集だ。
 早速入手。前者は2月にインタビューを受け、後者は全体会での発言。ちなみに喜多さんは1967年に近畿財務局に入り、60歳の定年後4年間の再任用を経て13年3月に退職した。46年間近畿財務局で国有地の売却や貸付の仕事に従事した。この間、全財務労組本部書記長も務めた。森友学園が土地取得を申し込んだのは退職3カ月後の6月だから、大阪地検特捜部から事情聴取は受けていないという。
 『季論』の記事によれば、国鉄民営化で近畿財務局に移ってきた赤木さんは正義感があふれ、〈親しく付き合ってきた仲間〉。財務局の審査で9億5千6百万の値段が付けられた土地がわずか1億3千4百万で売却が決まる大きな転機になったのは14年4月28日に持ち込まれた〈安倍首相の昭恵夫人と籠池夫妻が一緒に写った写真〉。そして〈後輩たちは「昭恵事案」とか「安倍事案」と呼んでいたらしいですが、「無理筋の仕事をさせられた」と言っていた〉。
 記録集発言では、公文書改ざんに関わった役人のほとんどが出世していることを指摘。例えば改ざんに抵抗したとされる楠敏志管財部長もナンバー2の総務部長に昇進。〈19年の定年後、神戸財務事務所の特別ポストに再任用され、会議室をつぶして彼の「個室」まで作ったそうです〉。
 喜多さん、森友事件は終わっていないと雑誌と記録集で力強く語っている。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号
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2020年04月17日

【スポーツコラム】 絆の重さ知った空白の3月=大野晃

 新型コロナウイルス感染症の感染対策で、3月は世界中からスポーツが消えた。戦争中のようだとの声も上がった。
 日本では、あらゆる競技会が延期、中止、休止や無観客試合に追い込まれ、米大リーグやフィギュア世界選手権など世界のビッグイベントが次々に延期、中止。東京五輪やパラリンピックの予選会も見通しが立たない。
 安倍首相の独断で全国一斉に小中高校が休校を要請されたことで、子どもたちの運動機会が制限され、大人には、屋外でも、集まったり、活動したりの自粛要請でスポーツ機会は失われた。
 家の中で体を動かしたり、外で走ったり、歩いたりできても、一人では楽しくない。テレビ中継などで競技を見ても、スタンドで仲間と観戦しながら大騒ぎする喜びがない。
 子どもからお年寄りまで、スポーツが楽しめないストレスは、プレーや競技ができないことより、仲間と集まることを制限されたことで強まったのではないか。
 仲間との絆や人と人とのつながりが、スポーツには欠かせないからだ。スポーツが消えたことは、災害時同様に、当たり前の生活を奪われたことを意味する。生活に欠かせないスポーツの権利は重い。消えて本質のわかる自粛期間なのだと思う。
 しかし、政府やマスメディアの視点には、それが欠落している。
 東京五輪・パラリンピックの延期や中止が重大問題とされているが、経済的影響や国の威信ばかりが注目され、五輪代表などトップ競技者の不利益には敏感だが、国民のスポーツ生活は、精々、健康・体力つくりしか眼中にないようだ。
 スポーツ庁や日本スポーツ協会による国民スポーツ生活の対策提示は皆無であり、スポーツ基本法は無視された。日本オリンピック委員会は世界に連帯を呼びかけることもなく、沈黙したままだ。
 国際連帯で、権利を尊重した科学的根拠のある感染対策を進める必要があるだろう。
大野晃
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年3月25日号

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2020年04月14日

【フォトアングル】 東電本店前抗議=酒井憲太郎

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 新型コロナの影響で多くの企画、デモ、抗議行動、集会が中止、延期と自粛に追いやられた。そんな中、断固として開かれた東京電力本店前の合同抗議、78回目だ。参加者は195名。発言のトップに立った鎌田慧氏は「10周年にはとにかく脱原発が国の方針になって行くような政治運動をやって行きたい。野党統一戦線で脱原発を実現させる。当面は、東海原発第二は再稼働させない。」と訴えた。参加者は「東京電力原発やめろ」とコールをして、「原発はいらない」「東京電力許さない」と歌った。=7日、東京都千代田区内幸町、酒井憲太郎撮影
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年3月25日号

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2020年03月31日

【編集長EYE】 学童保育の指導員 神経すり減らす日々が続く=橋詰雅博

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 安倍晋三首相が2月27日に新型コロナ禍対策のため専門家にも聞かず唐突に打ち出した全国の小中高校の一斉臨時休校。一方で保育所や放課後児童クラブ(学童保育所)は原則開所にした。だから仕事をもつ一人親や共働き家庭が子どもを預ける学童保育所は、朝から夕方まで長時間、子どもの面倒を見ている。
 東京の学童保育所で10年近く指導員(非正規職員)を務める元幼稚園教諭の女性の声を紹介しよう。彼女が勤めている学童保育所は、新型コロナ感染騒ぎの前は、100人超の小学1年生から3年生を平日の午後2時から6時まで預かっていた。指導員は10人前後だ。
 「28日に担当部署から一斉休校と学童保育の開所などが書かれたファックスが届きました。受け入れ準備が整っていないので3月2日月曜は午後1時から開きます∞3日以降は午前8時30分から開きます∞お子さんが家を出る前は、必ず体温を測り、37・5度あるなら、家で待機させてください≠ネどと書いたお手紙を子どもたちに持たせました。職員はメールで親にも知らせていたようです」
 「3月2日、来た子どもは半分以下でした。意外に少なかったですね。3日以降も60人ほどです。室内は学校より狭く子どもが密集するので感染が心配と思ったからか、子どもを祖父や祖母に預けたかもしれません。テレワークにより家で仕事ができるようになったので子どもと一緒にいるケースも考えられます」
 世話をする子どもの人数が減っても仕事の大変さは変わらない。
 「新型コロナ感染の防止のため以前よりも神経を使っています。窓や廊下に面したドアを常に開けて換気をよくし、子どもの手洗いは5、6回行い徹底させています。集団で遊んでいたら離れるように注意します。マスクを外す子はするように言います。勤務時間が長くなって、収入は増えますが、心労が絶えません」
 神経をすり減らす日々が長く続きそうだ。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年3月25日号

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2020年01月25日

【編集長EYE】安全性に疑義のゲノム編集食品うられる=橋詰雅博

 ゲノム編集した受精卵を用い双子を含む赤ちゃん3人を誕生させたことを公表した中国の研究者に対し、昨年暮れ広東省深圳市の裁判所は医学倫理の最低ラインを超えたと厳しく批判し、懲役3年と罰金3百万元(約4800万円)を言い渡した。ゲノム編集は、狙った遺伝子を自在に改変できる遺伝子操作の技術だ。発展途上国の爆発的な人口増による食糧難の解決策として期待がもてるとされる。農水畜産物の品種改良で利用が広がる。
 筑波大は、血圧上昇を抑えストレスを緩和する成分GABA(ギャバ)を数倍増やしたトマト、産業技術総合研究所は、生んだ卵にアレルギー物質が少ないニワトリ、大阪大や理化学研究所は、芽に含まれる天然毒素が極めて少ないジャガイモを開発した。京大は、肉の量が多いマッチョマダイ≠誕生させた。夢のバイオテクノロジーと評されるゆえんだ。
 とはいえ、ゲノム編集食品につきまとうのは安全性の問題。
昨年11月に都内で講演した 「食べものが劣化する日本」(食べもの通信社)の著者・安田節子さんはこう話した。
「米国コロンビア大学や米FDA(食品医薬品局)などの研究では、標的遺伝子を破壊・切断すると予期し得ない変異が起る恐れがあると指摘しています。つまりゲノム編集技術の安全性に疑義生じている。だからドイツやニュージーランドはゲノム編集食品を規制し、欧州連合(EU)司法裁判所も規制適用すべきと判断した」
 ところが安倍晋三首相は、ゲノム編集技術を成長戦略と位置付け大胆な政策を実行すると決めた。これを受けて厚生労働省は、昨年10月からゲノム編集食品について、国産も輸入品も届け出だけで販売できる新制度をスタートさせた。
 「新制度はゲノム編集などを使った遺伝子組み換え食品市場の拡大を狙うトランプ米大統領の意向にそったものです」(安田さん)
 疑念をはらせないゲノム編集食品。何らかの規制が必要だ。
 橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号
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2020年01月10日

【支部リポート】 福岡 「大きな敵と闘っている」 植村隆講演会に100人超=白垣詔男

 昨年秋、福岡支部に加入した西嶋真司さん(支部幹事、RKB毎日放送OB)の仲介で、今年8月4日(日)、元朝日新聞記者、植村隆さんの講演会を主催して開いた。懇意にさせてもらっている「九州民放OB会」に呼び掛けて共催になってもらった。

 支部主催の講演会は、直近がいつだったか思い出せないぐらい久し振りなので、何人入れる会場を確保すればいいのかから始まってチラシ作成、宣伝方法など五里霧中だった。

 一番、頭を悩ませたのが、「参加者が何人になるか」だった。そもそも植村さんを知っていて話を聞いてみようという人がどれぐらいいるのか。宣伝しすぎて参加者があふれてもいけないし、かといって参加者が極端に少ないと植村さんに失礼だし…。とりあえず、日刊紙にチラシを送ったが、反応がなかった。そこで、記者を知っている、そのうちの2紙に直接「告知」してくれるように頼んで書いてもらった。諸集会などでもチラシを配った。

 結果的に、80人弱座れる会場に100人超の参加者が集まり、座れない30人超は約2時間も立ったままだった。主催者としては心苦しい限りで、冒頭に「お詫び」を申し上げた。植村さんも話の初めに、座れない方々に「お詫び」をしてくれた。植村さんのお心遣いに頭が下がった。

 さて、講演会では、初めに西嶋さんが監督として制作中の、植村さんを主人公にした映画「標的」のダイジェスト版を上映、西嶋さんが解説をした。

 その後、登壇した植村さんは、自らの経歴を交えて、裁判についての説明、解説を熱く語った。その中で、植村さんが、安倍首相と裁判の被告・櫻井よしこさんの「親密な仲」を解説して「私は、大きな敵と闘っている」と解説したのが深く印象に残った。

 なお、当日集めた資料代は、「標的」制作に向けてクラウドファンディングで資金を集めていた西嶋監督に全額、カンパした。                   

白垣詔男

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号
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2019年12月31日

核兵器使用は犯罪 非武装こそ真の平和 ローマ教皇 被爆地・広島で訴え=沢田正

 ローマ教皇(法王)フランシスコ(82)は11月23日から25日にかけて初来日し、被爆地の長崎と広島で演説。「戦争のため原子力使用は犯罪。核兵器保有自体が倫理に反する」と断罪し、カトリック教会は「核兵器禁止条約を含め核軍縮と不拡散に関する国際的な法的原則に則り行動する」との決意を表明した。
 世界で13億人の信者を擁するカトリック教会の長である教皇の被爆地訪問は38年ぶり2回目。24日午前に訪れた長崎では爆心地公園で演説し、「武器の製造、改良、維持、商いに財が費やされ、日ごと武器はいっそう破壊的になっている。これらはテロ行為」と厳しく批判。世界の政治指導者に「核兵器は国家の安全保障への脅威に関して守ってくれるものではない。人道および環境の観点から核兵器使用の壊滅的な破壊を考え、核の理論による恐れ、不信、敵意の増幅を止めなければならない」と呼びかけた。

切り開く3つの力
 次いで夜に広島入りし、平和記念公園で被爆者やさまざまな宗教の代表者ら2000人が参加する「平和のための集い」に臨み、被爆者二人の証言を聞いたあとにスピーチ。「この場所のすべての犠牲者を記憶にとどめる。また生き延びた方々の強さと誇りに深く敬意を表する」と述べ、「思い出し、ともに歩み、守ること、この三つは、平和となる道を切り開く力があり、現在と将来の世代がここでおきたことを忘れてはならない」と被爆地の記憶の普遍性を指摘。また「紛争の解決策として核戦争の脅威による威嚇をちらつかせながらどうして平和を提案できるだろうか。真の平和とは非武装の平和以外にありえない」と世界に訴えた。
 バチカン(教皇庁)は東西冷戦時代、抑止力として核兵器を容認していたが、2013年就任の教皇は核抑止を否定。バチカン市国は17年7月に国連で採択された核兵器禁止条約を同9月に批准した。条約は50カ国が批准した90日後に発効する。全核保有国が条約に後ろ向きだが、教皇が滞日中にアンティグア・バーブーダが34番目の批准国となり、発効への流れはもはやとどめ難い。
 ストックホルム国際平和研究所によると、今年1月時点で世界の核弾頭数は9カ国計約1万3865個、前年より600個減ったものの世界を何回も破滅させる量だ。米ロが全体の約9割を保有するが、トランプ米政権は中距離核戦力(INF)全廃条約から一方的に離脱し、同条約は今年8月に失効。INFと並び核軍縮の要となってきた新戦略兵器削減条約(新START)も21年の期限切れ後の先行きは不透明だ。その一方で、両国とも新たな核巡航ミサイルの開発に乗り出すなど核軍拡に転じている。
 また米国の「核の傘」に依存、追随する日本政府は禁止条約に反対し、批准しないと公言している。

被爆者をよく理解
 今年3月末時点の被爆者健康手帳保持者の平均年齢は82・65歳。被爆者や被爆地の市民が、核なき世界の実現へ向けて教皇の発信力へ期待するものは大きい。
 教皇と握手した広島県被団協の佐久間邦彦理事長(75)は「広島のメッセージを世界に呼びかけてくださいと伝えた。生きて記憶を語り、核兵器をなくしていこうと言っている、被爆者のことをよく理解されている。原子力を戦争に使うのは犯罪といわれたことはうれしい」と語る。
 生後9カ月で爆心から3`の自宅で被爆、母に背負われて避難場所に向かう途中で黒い雨も浴びた。被爆者の相談活動に携わるが、今でも「被爆者手帳を取得したい」「原爆症の認定を受けたい」という相談を受けるという。「原爆は昔のことではなく今のこと。核兵器をなくすのは、今のわれわれ自身の問題ということを市民社会に訴えるのに教皇のメッセージは大きな意味がある」と、教皇の被爆地訪問を高く評価した。

沢田正(広島支部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号
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2019年12月30日

【出版部会例会】アマゾン「ひとでなし」企業だ 秘密主義、労働者酷使、税金逃れ 潜入ルポ・横田増生さん講演=土居秀夫

 出版部会では、あらゆる分野の支配を狙うアマゾンの実像を知ろうと、流通現場への潜入ルポを執筆・刊行した横田増生さんを講師に招き、「『amazon帝国』の現場を撃つ―いま何が起きているか」と題した講演会を11月22日、都内で開いた。

5人死んでいる
 横田さんがアマゾンの小田原流通センターに作業員として再度の潜入を果たしたのは2017年。02年の潜入時と比べ、東京ドーム4つ分というセンターの巨大化と、かつては本が中心だった商品の多様化に驚かされたが、何よりも労働者管理の徹底が凄まじかった。
 商品を棚から抜き取るピッキング作業にもハンディスキャナーが使われるようになって、各人の作業効率が記録・公表され、労働者を追い立てる。しかしいまだに手作業が中心で、自ら計測した横田さんは、センター内を一日20qも歩いたという。
 小田原センターでは13年以降、5人が死亡している。人が倒れても、現場から119番通報ができない。アルバイト作業員から上の社員まで情報が伝わるのに時間がかかって、手遅れになるのだ。秘密主義のアマゾンは、労働者の死亡について一切語らない。横田さんは自身の潜入経験から、ユニクロは「ろくでなし」だが、アマゾンは「ひとでなし」だと言い切った。

世界3位の市場
 イギリスでは11年、議会でアマゾン問題の公聴会が開かれた。以来、サンデーミラー紙やBBCなどが毎年のように潜入取材を行っているが、日本では自ら取材するマスメディアはない。今やあらゆる商品を扱うアマゾンにとって、日本はアメリカ、ドイツに次ぐ世界3位の市場だが、政治家も含めてものを言う人が少ないのはおかしい、と横田さんは訴えた。
 アマゾンの最大の問題のひとつが租税回避(タックスヘイブン)だ。創業者のジェフ・ベゾス氏は、創業前、アメリカ先住民居住地に本社を置いて税逃れを企てるなど、その手法は一貫している。いくつもの州では売上税をめぐる裁判を起こされ、アマゾンは敗訴した。とはいえ、アマゾンジャパンが日本で払った法人税は14年の10億円のみ。書籍だけでも2000億円近い売り上げがあるので、限りなく違法に近い状態だ。

狙われる出版界
 アマゾンは送料無料のプライム会員制、学生割引などで書籍の再販売価格維持制度を無視している。それだけでなく、中小出版社に対し、好条件の直接取引を持ちかけるが、最終的には本来書店の取り分であった価格の22%を40%にするなど、アマゾンが最も利益を得ることになる。これに反旗を翻すどころか、出版社の多くはアマゾンに対して口をつぐんでいると、横田さんは指摘した。
 講演の終わりに、ドイツのアマゾンで労働組合が結成され、ライプチヒでは1500人中700人まで組織したこと、組合員の増加に伴い時給が上がったことを紹介。労働者軽視を止めさせるには労働組合が必要だと、横田さんは強調した。そして、大手メディアがアマゾンの租税回避や労働の実態をもっと取り上げるべきだし、政官の監視と指導が欠かせないと締めくくった。
 講演後の質疑では、アマゾンの消費税の支払い方への疑問やフェイクレビュー、売り上げの半分以上を占めるマーケットプレイスの問題などが取り上げられ、充実した議論になった。 

土居秀夫

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号
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2019年12月29日

【ジャーナリスト講座】ワンテーマずっと追求 フリーランスライター・畠山さん=橋詰雅博

 「広報担当者から『あなたは誰ですか』と聞かれて、フリーランスライターと答えてもラチが明かないときは、『日本国民です』と言います。これキラー・フレーズ≠ナすよ」――フリーランスライターの畠山理仁さん(46)は大まじめにこう言った。 
 12月11日の「フリーランスの世界―その利点と難しさ」は、笑いと驚きが混じるちょっと愉快なJ講座だった。

勤め人経験ない
 講師の畠山さんは早稲田大学第一文学部在学中から雑誌などに原稿を書いてきた。勤め人の経験はなく、26年間もフリーでライター活動を続けている。 
 注力するテーマは政治家と選挙だ。とりわけ泡沫候補者≠精力的に取材。大手メディアから無視され、誰も関心を持たないからだ。勝ち目がなくても実現したい政策を訴えたくて出馬する泡沫を畠山さんは無頼系独立候補≠ニ呼ぶ。約20年間のその独自の戦いをまとめた著書「黙殺 報じられない無頼系独立候補≠スちの戦い」(集英社)は、2017年開高健ノンフィクション賞を受賞した。
 畠山さんはフリーランスの利点をこう挙げた。
・個人事業主だから上司も面倒な部下もいない
・毎日満員電車に乗らなくて済む
・嫌な仕事は断れる
・自分の興味や関心で仕事ができる
 畠山さんは「興味あるテーマを追い続けられるのが最大の利点」と言う。畠山さん場合、そのテーマは無頼系独立候補者だ。
「どの候補者もインパクトがあり、政治を真剣に考えている人が多い。よく『選挙に出れば』と言われるが、取材する方がはるかに面白い」(畠山さん)。

アルバイトも
 一方、不利な点は何か。
・会社の看板がない
・相手から信用されない
・潜在的無職
・お金のことが心配
 畠山さんは「やはり経済的に苦しい。ライターの仕事のほかに掃除や引っ越しの手伝い、エキストラなどのアルバイトもやっています。ノンフィクション賞の賞金300万円は借金の返済であっという間に消えてしまった」と話す。
 とはいえ落ち込んではいられない。
「後ろ向きの考えになったら精神的に参ってしまう。好きな仕事をやっていることを忘れないように心掛けています」(畠山さん)
 フリーランスの世界は厳しい。しかし、これと思ったテーマを長く深く取材ができる。

 橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号
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2019年12月28日

【編集長EYE】政府推進の5G 人体への悪影響ひそむ=橋詰雅博

 国家安全保障会議(議長・安倍晋三首相)の事務局を担う国家安全保障局(局長・北村滋前内閣情報官)に来年4月に経済政策を立案する「経済班」が新設される。米国家経済会議(NEC)にならったこの日本版NEC≠ヘ、経済的手段を介して国の安全保障を追求する「経済安保」がその役割だという。手がける目玉政策が次世代の高速移動通信方式「5(ファイブ)G」の普及と促進だ。

 5Gは、超高速、大容量、低遅延、多接続が特長とされる。AI(人工知能)や自動走行車、ロボットなどにつなげて実用化すれば、あらゆるモノがネットでつながるIoTが実現されて日常生活が飛躍的に便利になると喧伝されている。経済班が練った計画をベースに安倍晋三政権は来春実用化サービス開始に向けて企業が5G投資を前倒しできるよう税制優遇支援策を打ち出し通信網の拡充を早急に実現しようとしている。ここには5G関連機器で先行する中国ファーウェイの市場への進出を阻む狙いがある。これはトランプ米政権の意向も反映されている。

 しかし5Gには人体への悪影響が懸念される。周波数が現在のスマホに用いられる4G(3、6GHz以下)よりも高く、最高が28GHzだ。携帯電話などの電磁波による頭痛やめまい、睡眠障害など「電磁波過敏症」が増えている。日本では人口の3〜6%が電磁波過敏症と言われる。しかも電磁波は周波数が高くなるほど波長が短いので、建物などに阻まれ、遠くまで届きにくい。このため5G基地局を約100bごとに設置が必要。東京では、都有施設、公園、電柱、地下鉄、バス停などに設けられる。

 そうなると電磁波被曝量が著しく増える。「健康への恐れがある」とベルギーのブリュッセル首都圏地域やスイスの4州などでは5G導入の一時停止を決めた。

 日本でも市民団体が基地局設置の反対運動を始めている。5Gのウラには健康を害する危険リスクが潜む。

 橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号
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2019年12月27日

【沖縄リポート】 辺野古埋め立て完了100年かかる?=浦島悦子

 辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会(土砂全協=土砂搬出予定地とされる西日本7県の市民団体などで組織)は12月2〜4日、沖縄島の中部、南部、北部の島ぐるみ会議各ブロックと共催で、「沖縄―全国の連帯で辺野古埋め立ては止められる!」連続学習会を開催した。3日間で300人以上の県民が参加し、今後計画されている大浦湾地盤改良工事の問題点や沖縄県土砂条例の改正について学んだ。

 学習会の講師はいずれも土砂全協顧問の3人。湯浅一郎氏(ピースデポ共同代表)は、「現在強行されている埋め立ては民主主義と地方自治の破壊であると同時に、生物多様性条約・国家戦略に真っ向から反し、国家による未来世代に対する犯罪行為」だと述べ、「マヨネーズ状」と言われる軟弱地盤の改良工事に使う砂杭7万7千本及び敷砂として必要な650万㎥(沖縄県の年間海砂採取量の3〜5年分)の砂採取は県内外に深刻な自然破壊をもたらすと強調した。

 北上田毅氏(沖縄平和市民連絡会/土木技師)は、「軟弱地盤問題は想像以上に深刻」「新基地の完成時期も総工費も全く見通しがつかない」と述べた。末田一秀氏(元大阪府環境行政担当)は地盤改良工事に使用される可能性の高い鉄鋼スラグの危険性と、沖縄県土砂条例(埋め立て用材に係る外来生物の侵入防止に関する条例)を、行政指導から法的強制力を持たせるよう改正する必要を説いた。

 連続学習会途中の3日は、沖縄防衛局が民間企業である琉球セメントの安和桟橋から不法に埋め立て土砂搬出を強行開始してから1年目に当たり、桟橋に隣接する護岸を挟んで海・陸連帯抗議集会が行われた。海には66艇のカヌーと抗議船4隻の80人、陸には150人が参加。土砂全協の阿部悦子共同代表、3人の顧問ほか各地からも駆けつけ、連帯を確認した。

 辺野古側埋め立て区域への土砂投入開始から1年目の12月14日には、辺野古で海上抗議行動が行われたが、1年間で投入できた土砂量は全体の約1%余。単純計算でも100年はかかる?ことになり、その間、海は日々破壊されていく。国民の血税の壮大な浪費を許さないためにも来年こそ、この愚行を止めたい。

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
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2019年12月26日

【香川支部】国家との対峙が戦争を妨げる 12・8高松集会=刎田鉱造

「12.8 日米開戦の日に考える」と題して集いを持ちました。主催はJCJ香川支部などが参加している「8・15戦争体験を語りつぐ集い実行委員会」。今年は8月15日が台風に直撃され中止のやむなきに至りました。そこで12月には同じテーマ、同じ講師で集いを持つことにしました。 
 「戦争で解決するしかないの〜社会の分断を超えて」と題して、饗場和彦・徳島大学教授の話を聞きました。「戦争の惨禍いくら語っても戦争は防げない」と話し、「理性で市民をだましにかかる政府・国家と対峙してこそ戦争をなくすことにつながる」と強い言葉で訴えました。

 会場とのやり取りで「先の戦争では日本だけが悪いわけではない」の声があり、これには「そのことだけをとらえて」全体のように話す傾向がある。注意しなくてはいけない」という意見が出されました。また戦争遺跡を調査する問題をめぐっては「韓国人徴用工を働かせた工場や彼らが作った橋など施設を記録していくことも大事だ」と今の課題が論議されました。
 この日午後からは高松駅前で日米共同訓練に伴いオスプレイが香川県の自衛隊演習場に来ていることに対する緊急抗議集会が開かれました。集い参加者も「オスプレイ来るな」とシュプレヒコールを上げました。

はねだ鉱造(香川支部)
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2019年12月02日

【支部リポート】 東海 「報ステ」元女性CPの講演に協力 活気があった3つの学習会

 8月1日に開幕した「表現の不自由展・その後」が脅迫・攻撃を受け3日で中止された。さらに南彰新聞労連委員長を講師に迎えて、充実した「8・15平和を語る名古屋集会」にしようと準備を進めていたのに、台風10号が直撃すると分かって、急きょ中止した悔しさを晴らそうと企画した勉強会が機縁となって、学習活動が活気づいた。

 昨年から続いている連帯ユニオン関西生コン支部という産別労組弾圧事件をテーマに選び、9月3日に愛知駐在の同支部執行委員、元座毅さんを講師に学習会を開いた。東海では大垣署市民監視事件など共謀罪の先取りと言われる事例が続発、同じ共謀罪型事件とあって、私たちは注目した。
 昨年8月からこれまでに、さみだれ式に組合員ら延べ87人が逮捕、1年以上も拘留されている人もいるのに、報道はほとんど沈黙。たまに取り上げれば警察発表の垂れ流しという奇怪さに、参加者から質問が相次いだ。

 同じ頃、愛知県の市民団体「町づくり懇談会」が10月27日、テレビ朝日のイベント事業戦略担当部長、松原文枝さんを招き「テレビ現場メディアの現場から」と題した講演をしてもらうが、この企画に協力してほしいと支部に依頼があった。
 松原さんは、人気番組「報道ステーション」のチーフプロデューサーとして活躍した人で、協力・提携に異論はない。当日は参加者約60人を前に、講演後の質疑で1時間余、現役の部長として答えづらい難問にも逃げずに、丁寧に回答し、学習活動の役割を見事果たした。
 それから1週間後の11月4日、今年度のJCJ賞を受けた山形放送制作のドキュメンタリー「『想画』と綴り方〜戦争が奪った子どもたちの心=vを見る会が開かれた。東京での上映会に参加した丹原美穂幹事が、その場で伊藤清隆・山形放送報道制作局長にお願いして、DVDを貸していただき実現した。

 戦前、文化教育は共産主義的だとして教壇を追われた青年教師・国分一太郎の見た悪夢と、現代における「表現の不自由」体験がピタリ重なったことを改めて痛感した。
 こう見てくると、3者3様の学習だったが、今後も多彩な活動を追求していきたい。

古木民夫  

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
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2019年11月30日

【沖縄リポート】 首里城焼失 琉球の歴史を見直すとき

 この間の沖縄での最大の事件といえば、やはり首里城の焼失だろう。10月31日の朝、テレビ画面に映った、燃え盛り崩れていく首里城の姿は私自身大きな衝撃だった。

 しかしその後の「首里城再建フィーバー」とも言えるような現象には、いささか違和感を覚えている。首里城は「沖縄の象徴・誇り」「県民の心のよりどころ」と誰もが口を揃え、燃えたその日から「再建」に向けた動きが始まり、日毎に勢いを増した。玉城デニー知事は翌11月1日、早速上京して政府に再建への協力を要請。菅義偉官房長官は「全力で取り組む」と応じた。
 地元紙は連日、紙面の多くを割いて若者たちや県内各界の募金活動、県外からの支援など「再建美談」を報道し、NHKは「再建に向けて官民がどれだけ協力できるかが課題だ」と繰り返した。自民党県連は「国営公園である首里城を、管理者である県が焼失させたことをまず(国に)謝罪すべきだ」と主張した。

 31日、辺野古の座り込み現場でも首里城焼失が話題になったが、「首里城が燃えるのを見たとき、あ、これは(政府に)利用される!と真っ先に思った」「首里城は大切だが、辺野古の海はもっと大切だ。自然がなければ文化も生まれない」などの意見が拍手を浴びた。
 集客力のあった首里城の焼失は沖縄観光にとって大きな痛手であり、一日も早い再建を願うのはわかる。沖縄戦で焼失した首里城を並々ならぬ努力でようやく復元(1992年)した研究者・技術者・関係者の悔しさも当然だ。しかし、今必要なことは、やみくもに再建を急ぐのではなく、これを機に、琉球・沖縄の歴史を日本・中国との関係も含めて県民自らがあらためて検証し、問い直す作業と並行しながら、時間をかけて行うことではないか。

 11月2日の『琉球新報』論壇で、沖縄出身の若き大学院生・町田星羅さん(宇都宮大学で琉球諸語復興の研究をしている)は、首里城焼失を琉球諸語の未来と重ねながら次のように述べている。
 「もう一つの琉球文化を支える私たちの言葉は、……最後の灯を燃やしている。この火が消えてしまう前にできることがある。歴史をひもとき、次世代に何を残すのか。私たちは今、自分を見つめ直す時期にある」

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
 
posted by JCJ at 14:17 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月26日

【編集長EYE】 フリー置き去り ハラスメント指針案=橋詰雅博

 厚生労働省によると、2018年度に寄せられた個別労働相談のうちパワーハラスメントなどの「いじめ・嫌がらせ」は8万件超に上り過去最多。相談内容別でも25・6%を占めて7年連続トップだ。

 増え続けるハラスメントに関し、正社員より立場が弱いフリーランスの実態を日本俳優連合とMIC(日本マスコミ文化情報労組会議)フリーランス連絡会、フリーランス協会の3団体が調査し、9月末に公表している。1218人がアンケートに答えた中で具体的なケースはこんな内容だ。

・打ち合わせと称して、ホテルに呼び出されレイプされた(女性40代、映像制作者)

・元大学教授の財団理事長からヒヤリングの場所を日帰りが難しい距離にある別荘を指定された。双方の仕事場が都内にあるのに、毎回、別荘以外では会わないと電話で言われる(女性40代、研究職)

・社長から打ち合わせの後にホテルのバーに連れていかれました。早めに帰ろうとしたら、手を握られました。拒否して帰りましたが、以来、それまでべた褒めだった私の原稿をことごとくけなすようになりました(女性20代、脚本家)

・ファックスで送れば自宅でできる仕事なのに、夜中にわざわざ自宅から2時間もかかるオフィスに来るように強要された(女性50代、編集者)

・主催者の自宅で稽古をすると言われて行ったら、お酒を飲まされて性的な行為をさせられた(女性20代、女優)

 問題はこのようなフリーランスが5月に成立したハラスメント規制法の対象外になっていることだ。厚労省が10月末に労働政策審議会に提示した同法指針素案では、企業は注意を払って欲しいにとどまっている。これでは横行するフリーランスを取り巻くハラスメント状況は、一向に改善されないだろう。

 6月に採択されたハラスメント禁止を求める国際労働機関(ILO)条約の基準より緩い指針案は、フリーランスを置き去りにしようとしている。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
posted by JCJ at 11:31 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月08日

吉田博二さんを悼む 音響技術の名手 元民法労連役員=茂木章子

 吉田博二さん死亡の一報を受け、私は驚愕と疑問そして失望に打ちのめされた。一年ほど前から病気の症状に適合する薬を探す治験のため突き一回近所の大病院に通院していると聞いていた。JCJに来るのは以前より減少していたが、いつも変わらず寡黙な笑顔で作業に集中、時にはきつい冗談を発しみんなの笑いを誘っていた。現役時代は会社も異なり職場も違うので彼との付き合いはなかった。少し伝わっていたのは組合の委員長時代の労務要件獲得と賃金アップの華々しい成果と武勇伝は喧伝されていた。

 博二さんが年々ごろJCJの会員になったか私の記憶は不確かだ。彼によるとJCJか民放組合の主催による沖縄支援に旅行会で私に拉致され有無を言わせず入会させられたと、あの笑顔で放言していたようだ。

 几帳面で正確性高くきれい好きの彼は、常に手を動かし機材の手入れもよく行い、零細運営社員の見本のようであった。JCJ本部の何個もある白いテーブルも、汚れはもちろんのことボールペンの傷も消しゴムや消毒液で黙々と吹いていた。この性格は飲み会でも発揮され、一定量のむとどんなに座がにぎわっていても、お先にと多めの支払いをして帰宅する。メディアの人達は良く飲み議論をし座を沸かせる種族といわれるが、彼はどんな席でも笑顔でうるさい連中の話を聞いていた。

 これからも集会・講演・小森チャンネル等の取材は絶えないが、吉田さんの音響の仕事は外部に依頼し、その都度出費となり頭の痛いことである。

 とにかく安心して一つの物事を任せ続けてきた吉田さんの存在感の大きさにあらためて感謝したい。   

 茂木章子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
posted by JCJ at 10:06 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする